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万人が宇宙へ旅立つ時代へ日本のロケット開発と共に歩んできた道
横田 清美
1994年入社
基礎工学研究科 物理系 機械工学専攻修了
宇宙輸送技術部門 イプシロンロケットプロジェクトチーム
ファンクションマネージャ
REASON入社の理由
誰でも宇宙へ行けるロケットを作ればよい
中学1年生の時、宇宙の写真集にあった地球の写真を見て、「この感動を伝えられるようになりたい」と宇宙飛行士に憧れました。高校生の時に視力が落ち、宇宙飛行士の夢は諦めましたが、「宇宙飛行士になれないなら、誰でも宇宙に行けるようなロケットを作れば良いのでは」と考えJAXA(当時はNASDA)を目指しました。他の企業と違い、NASDAはどの部署に配属されても確実に宇宙開発に携われることが魅力でした。
WORKわたしの仕事
時代を彩る最先端のロケットを創り、宇宙へ送り出す
宇宙開発に携わること27年、何度か異動を経験する中で、前部署と全く違う業務になっても、それまでの経験は必ず次の部署でも役立ち、「無駄なことは何一つない」と実感するようになりました。
現部署では「イプシロンロケット」シリーズの開発・運用に携わっており、現在は強化型イプシロンロケットの運用、新たな「イプシロンSロケット」の開発や、将来に向けた研究を実施するチームで飛行解析系と安全評価業務ラインのマネージャーを務めています。イプシロンロケットはすでに4号機まで打ち上がっており、毎回ロケットに搭載する人工衛星に合わせた開発を行ってきました。並行して開発中のイプシロンSロケットは、今よりもっとユーザーにとって使いやすく、かつ低コストで、国際競争力のあるロケットになる予定です。
これまでのキャリアの中で一番印象に残っているのは、H2Bロケット1号機の打上げです。当時はH2Bロケットの打上げ隊と、搭載する宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)初号機側の運用隊の両方に携わっていたこともあり、開発したH2Bロケットの初打ち上げを種子島で実施した後、すぐに筑波宇宙センターに戻り、HTV初号機のISSへのランデブ運用に参加し、ISSへのドッキング、分離、再突入まで全ての成功を見届けました。実はこのランデブ・ドッキングの技術には、入社初期の6年間の中で携わった技術試験衛星VII型「きく7号」(ETS-VII:愛称「おりひめ・ひこぼし」)にて、世界で初めて成功したドッキング技術が継承されていたのです。自分が関わった技術が時を経て実用化された瞬間で、まさに感無量でした。
新人の頃から、大変な時や追い詰められた状況の時こそ、冷静に笑顔でチームを引っ張っていく先輩たちの姿を見てきました。そこには仕事を一緒に楽しもうという気持ちと、必ず解決できるという強い意志が感じられ、それによって周囲のモチベーションも上がるのです。私自身もそんな先輩たちのようになりたいと思ったものです。
今の職場では、部下が動きやすく、かつチームとして成果が出せるよう、それぞれの能力や性格に応じた指示やフォローをしたいと心がけています。互いに力を補い合いながら、チーム力を最大化できる環境、また仕事を通してそれぞれの能力がさらに伸ばせる場をつくりたいと考えています。
FUTURE将来の想い
自ら研究・開発した宇宙機やロケットが活躍する感動を分かち合いたい
入社前から夢だった、「宇宙飛行士でなくても誰でも宇宙に行ける」輸送機の実現に向け、さらに研究開発を進めていけたらと思います。JAXAは、ロケットなどの宇宙輸送機、人工衛星、地球観測、宇宙探査、宇宙ステーションや有人活動ほか、様々な宇宙開発を実施しています。また開発や研究の一部だけを担うのではなく、先進的研究からそれを実現するプロジェクトの立ち上げ、実行、打上げ、運用まで全てを通して実施できるのが魅力で、それを多くの仲間や様々なメーカーと共に作り上げていけるのも楽しいことです。「未来の宇宙輸送」の検討は既に始まっています。そのプロジェクトを中心となって推進し、実現し、運用していくのは次の若い世代の皆さんです。自分が研究・開発してきたものが打ち上がる感動をぜひ味わってください。
CAREER PATHキャリアパス
入社してからこれまでのキャリア
1st year
技術研究本部(現研究開発部門)の誘導制御開発室に配属
ランデブ・ドッキングの研究に携わり、「おりひめ・ひこぼし」(ETS-VII)のランデブ・ドッキング実験にも参加した。
7th year
宇宙輸送システム本部(現宇宙輸送技術部門)のH2Aプロジェクトチームに配属
H2AとH2Bロケットの開発・運用に携わる。ロケット搭載ソフトウェアの研究開発等を実施。
18th year
H3ロケットの初期検討を開始
21st year
宇宙輸送ミッション本部鹿児島宇宙センター射場技術開発室に配属
種子島で射場系(ロケットの追尾)の整備・運用を担当。
23rd year
第一宇宙技術部門イプシロンロケットプロジェクトに配属
ファンクションマネージャとしてイプシロンロケットの開発・運用に携わる。
THE OTHER SIDE OF THE MOON私の一面
普段の仕事が技術系なので、休日は逆に美術館巡りや観劇、映画鑑賞など、文化系の娯楽を楽しみます。フラワーアレンジメントや音楽も好きです。