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地球をモニタリング最先端の「目」で地球を捉え未来を予測する
山本 晃輔
2017年入社
工学研究科 社会基盤工学修了
第一宇宙技術部門 地球観測研究センター
REASON入社の理由
専門性を活かす宇宙の仕事 認め合える仲間と共に
限られた人生の内多くの時間を割くことになるであろう職業を考えた時、自分の中で譲れない軸は「感動を未来へつなぐこと」でした。様々な人間が、それぞれの分野で途方もない時間とエネルギーを費やして作り上げた感動が世の中にはたくさんあり、それらを後世に遺したい。そのためには、まず地球を守り、最終的には宇宙を拓く技術を獲得する必要がある。自分の専門である水文(すいもん)学の知見を活かしながらその思いを実現できる場所として、日本で最初に思いつく組織と言えばJAXAでした。
インターンやOB訪問を重ねる中で、仕事内容のみならず働く人々の人柄やマインドセットにも惹かれていき、漠然とした志望が確固たるものに変わりました。JAXAには文理問わずバラエティ豊かな人材がいて、考え方が異なることも多々ありますが、多様性を認め合いながら宇宙・航空分野の難解な課題に挑戦し続けている点に特に魅力を感じ、JAXAで働いている人たちと次世代へ夢を与える仕事がしたいと思いました。
WORKわたしの仕事
地球科学の最前線 国内外で奮闘する
入社時から所属する地球観測研究センター(EORC: Earth Observation Research Center)は、JAXAが運用する地球観測衛星の校正・検証、アルゴリズム開発、データ利用研究を一貫して担う部署で、JAXAから一般に公開されている衛星プロダクトのほとんどがここで開発されています。中でも私が担当する全球降水観測(GPM)主衛星は、NASAと共同で実施する降水観測に特化したミッションであり、地球水循環の精緻化と降水科学の高度化を目指しています。
また、衛星観測データの利用研究として、大学等とも連携しながら、陸上の水循環シミュレーションモデルの開発・運用も行っています。地球水循環を理解するには、宇宙から全球を均質に観測する衛星からの情報は欠かせませんが、数基の衛星のみでは時空間的に密な情報は得られず、将来予測も不可能です。そこで、衛星観測データを計算機シミュレーションモデルに融合させ、陸上の水がいつ・どこに・どのくらい存在しているのかを、高い時空間解像度で推定・予測するシステムを開発しているのです。例えば、時々刻々変化する河川の流量を様々な場所で推定できれば、近年多発する洪水被害の軽減につながります。衛星とモデルの双方の特性を適切に理解した上で、互いの長所を活かしながら開発を進める面白さがあり、またそれと同時に、宇宙からの情報を身近な防災情報へ橋渡しするやりがいと責任も感じながら取り組んでいます。
国際会議や海外出張などの機会も多々あります。入社して間もない頃、いきなり参加させてもらった将来衛星ミッション検討のための国際会議で、その雰囲気に気圧されていた時、上司から「見当外れでも初歩的でもいいから、どんどん質問しなさい。何か残さないと参加している意味がないよ。」と肩を押していただいたことを、今も鮮明に覚えています。大切なことは、立場の違いを忖度した謙虚さではなく、本質を理解するための貪欲な姿勢であるということ。当たり前のことですが、大きな組織では埋もれがちでもあるそういった姿勢を、個々人が保ちやすい風土がJAXAにはあると思います。
地球科学研究の第一線で、常に新しい情報に触れながら取り組めること、また若手の頃から大きな仕事をどんどん任せてもらえる環境も貴重です。入社早々から大学等との研究プロジェクトの運営を任せてもらえたおかげで、(時にはミスをしつつも)チームとしての目標管理が上手くこなせるようにもなりました。
FUTURE将来の想い
地球以外の星にも「目」を
EORCは言わば、様々な「目」(=衛星・センサ)で地球をモニタリングし、どのような惑星なのかを詳細に理解することを目的とする部署です。学生時代から研究してきた陸上の水循環について、衛星とモデルを用いてさらに精緻に解明したいです。また、こうした地球科学研究で得られた知見は、地球以外の星に「目」を向けるときにも必ず役立つと思っています。将来的には、他の惑星や天体についても研究し、自分自身が宇宙飛行士となって現地調査に行きたいですね。
入社前のオリエンテーションで聞いた、「JAXAの仕事は”All for Mankind”。それを自覚して日々過ごしてほしい。」という先輩の言葉を今でも思い出します。日々の仕事は決して華々しいものばかりではありませんが、その先に美しい地球や宇宙が広がっていて、その解明を通して人類社会に貢献し得るという事実は、私にとっては一番の原動力となっています。自分自身と対話を重ね、あなたにとっての一番を見出してみてください。
CAREER PATHキャリアパス
入社してからこれまでのキャリア
1st year
地球観測研究センター(EORC)に配属
日米主導の国際的な協力体制で進めている全球降水観測(GPM)計画主衛星の利用研究グループに配属。データ利用研究の一環として、陸域水循環シミュレーションシステム(Today’s Earth)の開発に携わる。他大学・機関との共同研究プロジェクトで、その運営を担当。
2nd year
将来の衛星搭載降水レーダミッションの検討に携わる
NASAのエアロゾル・雲・対流・降水(ACCP:Aerosol, Clouds, Convection and Precipitation) 観測ミッション検討に参加し、米国と共同でのミッション実現手法を検討。
3th year
Today’s Earth関連で大学の協力研究員としても解析研究を継続
システム運用が軌道に乗り、社会的な認知度が向上。(洪水災害の予測精度が良かったことが後の分析で判明し、翌年理事長賞を受賞)
THE OTHER SIDE OF THE MOON私の一面
一番の趣味は音楽。友人とギターやピアノを演奏したり、DTM (Desk Top Music)でR&B、ジャズ、ラテンなど様々なジャンルの作曲にもチャレンジしたりと、気の向くままに楽しんでいます。休日もだらだらと仕事脳を引きずらないように、全く違う趣味に没頭し、気分をうまくリセットできています。