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皆に知ってもらいたい、考えて欲しいスペースデブリのこと
松田 郁未
2009年入社
環境情報学府修了
追跡ネットワーク技術センター SSAシステムプロジェクトチーム
REASON入社の理由
宇宙に関わる仕事がしたい 一本の道として繋がる幼少期からの想い
幼い頃によく星座の図鑑を眺めていたことから、宇宙に興味を持つようになりました。将来は何等か宇宙に関わる仕事がしたいと思い、大学は航空宇宙工学も学べる工学部の海洋空間のシステムデザインコースに進み、研究室では探査機が小惑星へ到達するための軌道設計とその解析の研究等に取り組みました。思い返せば、進路はいつも宇宙に繫がる選択をしていたと思います。
就職活動では宇宙産業に全く関係のない業種も検討しましたが、エントリーシートの「やりたいこと」を記入する時に浮かんだのはやはり宇宙に関わる仕事で、これまでの強い想いを改めて認識しました。そして中でも、JAXAが最も多岐に渡る分野から宇宙に携わることができ、かつ宇宙開発の現状をより広い視野で捉えることができると感じました。
WORKわたしの仕事
ソフトからハードまで、最初から最後まで経験できる スペースデブリ観測システムを作り上げる
入社後、宇宙機(人工衛星や宇宙探査機等)の打上げ後に投入された軌道を確認し、データの送受信や監視制御を実施する追跡ネットワーク技術センターに配属となり、人工衛星の軌道管理を担当する軌道力学チームに所属することになりました。大学院での研究から得た知識に直結する部署・チームへの配属です。しかしながら、大学での研究と現場で実際に触れる業務は全く違うもので、人工衛星の軌道については一から学びなおすことになりました。入社前からの専門知識より、入社後の学びの姿勢の方がより重要であると言えます。
軌道力学チームではJAXAの人工衛星の軌道管理とともに、人工衛星と同じように地球を周回しているスペースデブリ(宇宙ゴミ)の観測と解析を行っています。例えば、JAXAの人工衛星とスペースデブリが衝突する危険性があれば、避けるために軌道を変更することを衛星運用側に提案します。現在は、SSA(Space Situational Awareness/宇宙状況把握)システムプロジェクトチームに所属し、スペースデブリを観測するためのレーダーシステム、光学望遠鏡システム、および、それらの観測データ等を解析するための解析システムを整備中です。米国がこの分野をリードしていますが、SSAシステムが完成すれば、日本のスペースデブリの観測能力も向上します。
私は主に、解析システムの開発を担当しています。同時に、レーダーシステム、光学望遠鏡システム、それらの観測データを扱う解析システムはそれぞれ別のメーカーが開発に携わっていますが、3つのシステムを統合するのがJAXAの役目であり、その役割も担っています。熟練の技と知識を持つメーカーの技術者とコミュニケーションを取りながらシステムを作り上げていく過程は大変面白いです。このようにソフトからハードまで多岐に渡る分野に触れながら開発できるのはJAXAならではであり、システム整備の過程を最初から最後まで経験できることにもやりがいを感じています。
スペースデブリの分野は社内でも関わる部署が多く(ロケット、人工衛星、有人部門、研究開発部門、管理部門)、また社外でもメーカーや省庁等、関係者が多岐に渡ります。アプローチは様々ですが、宇宙に興味を持ち集まった仲間と仕事ができ、刺激を受ける毎日です。多分野の人々と関わることで、様々な視点で「宇宙開発」を考えられるようになりました。とはいえ、時には厳しい現実に直面することもあります。JAXAは税金を使用して事業を行う組織ですから、何のための宇宙開発なのか、その意義を常に問われます。「はやぶさ」のように成功が注目されるプロジェクトもあれば、宇宙よりも現実を見るべきという厳しい声もいただく中で、常にその意義と向き合いながら仕事に取り組むように心掛けています。行動次第で、宇宙への夢はさまざまな形で実現できるものだと思うのです。
FUTURE将来の想い
システムの完成に向けて励む その先に進める道は無数にある
当面の目標はSSAシステムを完成させ、より多くのスペースデブリの観測を可能にすることです。今後はさらに他業種が参入し加速する宇宙開発において、スペースデブリ問題は避けては通れない重大な問題であり、地上の様々なゴミ問題と同様に周知が必要な分野です。今後も経験を積んで、一人前のスペースデブリ技術者となり、宇宙環境保全への貢献を目指していきたいと考えています。
さらに先のことについては、日々悩む毎日ですが、いつか特定の分野を主軸にキャリアを形成したいと思えば、その意欲次第で想いを実現できる環境がJAXAにはあります。そしてそんな時、本人の意志を尊重してくれるのがJAXAという組織の魅力です。ここでしかできないことを一緒にやりましょう!
CAREER PATHキャリアパス
入社してからこれまでのキャリア
1st year
追跡ネットワーク技術センター(旧:追跡ネットワーク技術部)に配属
軌道力学チームにて、スペースデブリの観測・解析を担当すると共に、人工衛星の軌道管理に携わり、現在に至る。
8th year
同センター内のSSA(Space Situational Awareness/宇宙状況把握)システムプロジェクトチームに配属
スペースデブリを観測・解析するための新しいシステムを整備するプロジェクトに携わる。プロジェクトの一員となったことで、プロジェクトマネジメントについても学びたいと思うようになった。
THE OTHER SIDE OF THE MOON私の一面
入社当初は色々な部活に顔を出していました。野球、サッカー、バトミントン、ただし、選手としてではなく観客としてですが。趣味であるスポーツ観戦によりリフレッシュできることに加え、選手の普段(仕事中)とは違う一面を見られるのも楽しみの1つでした。この時繋がった方々には、今でも仕事でお世話になっています。