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想いは国境を越え人類の未来のために動く
谷口 富貴
2009年入社
法学研究科修了
調査国際部国際課
REASON入社の理由
人類のために働くJAXA
大学院では国際公法の、主に児童の権利条約について研究してきたことから、将来は人類全体の利益のために働きたいとう強い思いがありました。就職活動時は、官民問わず様々な企業の説明会に参加しましたが、JAXAだけが唯一「私たちは日本のためだけでなく、人類のために働いています」と言っていたことが印象に残り、応募しました。また当時はJAXA内で、文系の大学院卒がまだ珍しい時代でしたが、JAXAでならこのキャリアを生かして働くことができるという気持ちと、文系職員が少ないからこそ様々な道を自分で拓いていくチャンスがあると思いました。
WORKわたしの仕事
大事にした「相手の立場に立って考えること」
入社後は法務担当からスタートし、文部科学省へ出向(国際宇宙ステーション(ISS)の政策策定支援)、その後ISSの広報担当となり、入社前から描いてきたキャリアパスを歩むことができました。困難に直面することは多々ありましたが、何とか乗り越えてこれたのは、「思いっ切りやってきて!谷口にしかできないよ!」と信じてくれる仲間がいたからです。だからこそ私も仲間を信じ、そして相手の立場に立って物事を考える土台ができました。JAXAの仲間の存在は、私の一番のモチベーションであり、私も仲間にとって同じ存在でありたいと思っています。
入社8年目にパリ駐在員事務所の所長代理の公募に申し込み、初の女性駐在員となりました。最初は珍しさから駐在先で多くの方々に話しかけていただき、これをきっかけに困ったときには頼りあう仲になった欧州の仲間もたくさんいます。 特に女性同士の連携と信頼は強固なもので、欧州宇宙業界でも「女性は強し」を実感しました(笑)。
水星探査機「ベピコロンボ」と小惑星探査機「はやぶさ2」など、ちょうど当時は日欧共同ミッションのイベントが数多くあったため、合同の広報活動を提案しました。欧州宇宙機関(ESA)、ドイツ宇宙機関(DLR)、フランス宇宙機関(CNES)と共に広報を企画し、JAXAがリードしたのです。「相手の立場に立って考える」が最も重要なポイントでした。一緒に徹夜したり喧嘩したり泣いたりしながら(笑)やり遂げた広報活動のおかげで、駐在員という枠を越えて、人として認めてもらえたと強く感じています。「Fukiでないとだめだ」と言ってくれる人がいるというのは、私個人の強みでもあり、組織の強みでもあります。スタンドプレーはダメですが、一人ひとりがJAXAの代表として恥ずかしくない働きをする意識が必要だと学びました。
現在は調査国際部でアメリカとの国際連携協力及び国際宇宙探査を主に担当しています。アメリカとは重要な案件が多数あり、日々状況が変わる中で着実に進めていくのは、かなり体力と精神力を使います。しかしこれらの業務が、「今後の新しい宇宙活動の礎となっていくのだ」と思うと、誇らしくやりがいがあります。
「相手の立場に立って考えること」はJAXAでのキャリアを通じて根付き、土台となっています。契約相手、政府、国際パートナー、学者、宇宙を応援してくださる皆様。様々な相手と関わって進めていく事業ですので、それぞれの背景などを理解し、共に仕事を創り上げていけるよう常に心がけています。今自信をもってこう言えるのは、パリで様々なバックグラウンドの人達と働いた経験のお陰です。
FUTURE将来の想い
国際業務と法務で築く 自分だけのキャリアの創造
JAXAを客観的に見ること、物事を多角的に見ることをこれまでのキャリアで学びました。それから、体が資本だということも。がむしゃらに働いていたこともありますが、いまはワークライフバランスをとりながら、仕事の成果を出せるよう、健康を保てるようにと意識しています。
これまでは先輩たちの背中を見ながら成長させていただきました。今後は、自ら独自のキャリアを創っていく段階だと思っています。国際業務と法務の2つを柱として、事務系職員のキャリア形成の選択肢を増やし、示していきたいです。
「JAXAで何がやりたいか」というよりは、「やりたいことをJAXAで叶えることができるか」という視点で見てみてください。皆さんは、JAXAを選ぶ立場でもあります。WIN-WINの関係を築ける対等な気持ちで検討してください。一緒に働ける日が来ればとてもうれしいです。頑張ってください。
CAREER PATHキャリアパス
入社してからこれまでのキャリア
1st year
総務部法務課に配属
JAXAの中の規定や国際パートナーとの研究開発協力の協定の確認を担当。「国際宇宙物体登録の通報」に関するフォーマットの世界的な統一を提案した。また、「ケープタウン条約宇宙資産議定書」の策定に日本政府からの代理派遣として対応できたことは、国際法を学んだものとして嬉しく誇らしいことだった。
3rd year
文部科学省研究開発局 宇宙開発利用課へ出向
東日本大震災直後であったこともあり、宇宙は日本の科学技術政策の(残念なことに)小さな一部に過ぎないことを思い知る。大臣の発言要領作成などを通じて、相手に伝わる言葉で、わかりやすく、JAXAの活動と成果を説明できなければならないことを学ぶ。
5th year
有人宇宙技術部門事業推進部に配属
ISS活動(日本実験棟「きぼう」、無人補給船HTV、宇宙飛行士)の広報を担当。実験など理解が難しい宇宙飛行士の活動内容を受け手にわかりやすく伝えることに注力した。国際担当として、米・露と交渉。「相手の立場に立って考える」「一緒に仕事を作り上げる」「わかりやく日本の要望を伝える」を基礎とした。
8th year
パリ駐在員事務所に駐在
「長めの海外出張」をイメージしていたが実態は全く異なる。出張者がつつがなく相手機関と話しができるのは、日々駐在員が人脈をつなぎ、必要な情報交換を行い、そして相手方の状況や懸念を把握してこそ。信頼関係が一番重要。
11th year
調査国際部国際課に配属
米州担当及び国際宇宙探査担当として国際協力の推進に携わる。国際宇宙探査に関する議論が急ピッチで行われ(アルテミス合意)、検討チームの一員として活動。10年に一度の大きなミッションが出来上がる瞬間に、大国であるアメリカを担当しながら関与できるというのはキャリアの総決算のようである。
THE OTHER SIDE OF THE MOON私の一面
休日は宇宙関係のエンターテイメントは見ません。乗馬が趣味なので、できるだけ自然豊かなところで地球を感じながら何時間も、時には何日も馬と一緒に過ごします。一番の趣味は耳掃除です。