ホルマリン漬けのガラス瓶の中には…
しばらくして「教育部実習部」に配属になっていた清水さんは上官に連れられて、少年隊員たちの立ち入りが禁止されていた実験棟2階のある一室へ。
「標本室と呼ばれていた場所でした。入るとホルマリンのツーンとしたにおいが充満していて、目も明けられないほどでした。目が痛くてポロポロと涙が流れて……」
痛む目をこすりながら見渡すと、棚には大きなガラス瓶がびっしりと並べられていた。入っていたのはホルマリン漬けにされた人間の一部だった。臓器、骨、手足、縦に切られ脳がむき出しになった頭部、臓器のない子ども、数ヵ月の胎児――。それらがいくつも並べられていたのだ。
ショックを受ける清水さんは生涯忘れられないものを目にする。
「切られたおなかから赤ちゃんが見える状態の女性のホルマリン漬けでした」
むせかえるにおいとホルマリン漬けの母子。
上官はここにあるホルマリン漬けは「マルタ」だと説明し、「口外しないように」と固く念を押した。
その夜は一睡もできなかった。