「話すことは禁止、一切の秘密でした」
日曜日は休日。ときどき近くの町に遊びに行くこともできたという。国内では激化する空襲も、戦闘もない平和な日々だった。そのうちに少年たちはそれぞれの仕事に割り振られた。
「職場では滅菌消毒させられた白衣が支給されました。衛生関係の仕事をするんだろうな、くらいの知識しか持っていません。自分たちが何をさせられるのか、ここがどんなことをする場所なのかもわかっていませんでした」
清水さんが持ち帰った通貨。小遣いとして支給されたもの(清水さん提供)
清水さんは「見習い技術員」になるものとばかり思っていた。割り当てられた仕事はねずみのおしりから体液を採取し、かんてんの入ったシャーレで「何かの菌」を培養するというもの。シャーレを指定の位置に置くと次の日には無くなっていた。
「誰が持っていって、何の研究をしているのか知りませんでした。自分たちの隊がしていることを話すことは禁止、一切の秘密でした」
当時の清水さんは、細菌兵器のことも人体実験のこともまったく知らなかった。