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「水戸市民会館」に「南洋理工大学南校舎棟 “GAIA”」と、続けざまに大規模木造を手掛ける伊東豊雄氏。伊東氏が考える木の魅力、そして木の学校建築が持つ可能性とは。GAIAで得た感触を基に語る。

近年、木材を多く使った大規模な建物の設計が目立ちますね。

 国立競技場のプロポーザル以来、大規模木造の設計に意欲的だったので、今回の「南洋理工大学南校舎棟 “GAIA”」は大きなチャンスだと感じました。これだけ多くの木材を使用する建築は世界を見渡してもそうそうありませんから。

 同時に大きなチャレンジでもありました。単に鉄骨や鉄筋コンクリート(RC)を木に置き換えたような設計では、木の魅力を引き出せません。いかに大規模な建物で木の魅力を引き出すか。力強さと柔らかさを両立させることを目指しました。

 GAIAは全長約210mの非常に長い建築で、集成材の柱と梁による力強いラーメン架構で構成しました。

 その一方で、建物の形状を直線ではなく、緩やかな弧状にしたことで、空間にうまく柔らかさを与えられたと思います。廊下は一気に見通せず、歩くと少しずつ視野が変わっていくような楽しみをつくりました。藤森泰司アトリエがデザインした木製家具も空間の柔らかさを強化するのに一役買ってくれました。

 共用部に吹き抜けやトップライトを設け、自然光や風を採り入れたのも空間に柔らかさを与えるためです。森の中にいるような半屋外的な空間を、学生たちは思い思いに利用しているようです〔写真1〕。

〔写真1〕森の中のような空間が広がる
〔写真1〕森の中のような空間が広がる
共用部は集成材の柱梁とCLT(直交集成板)の床に囲まれた空間になっている。写真手前がラウンジ。奥はイベントスペースでトップライトから自然光が降り注ぐ(写真:中村 絵)
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 シンガポールは高温多湿の気候ですが、空調設備を使わなくても、爽やかな風が吹き抜ける心地良い空間が実現しました。日本でも同じようなことができるんじゃないかと考えさせられましたね。