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「虎に翼」解説(8)最終回 三淵さんが残した「少年友の会」

初回放送日:2024年10月1日

連続テレビ小説「虎に翼」の背景を解説するシリーズの最終回。今回は主人公のモデル・三淵嘉子さんが残した「少年友の会」の活動について詳しく解説します。

放送内容

目次
  • 『虎に翼』解説⑧最終回 三淵さんが残した『少年友の会』

『虎に翼』解説⑧最終回 三淵さんが残した『少年友の会』

連続テレビ小説「虎に翼」の背景を解説するシリーズも今回が最終回です。
今回は、主人公のモデル三淵嘉子さんが残した少年少女を支援するボランティア団体「少年友の会」の活動を紹介します。

【少年友の会とは?】

Q:「虎に翼」を解説するシリーズも最終回です。

A:そこで最後にドラマでは入りきれなかった、三淵さんの業績をもう1つ紹介しようと思います。それがタイトルにある「少年友の会」です。
「少年友の会」は家庭裁判所に協力して、非行のあった少年少女の社会復帰や健全育成の手助けをしているボランティア団体です。
今から58年前の1966年に、三淵さんが中心の1人となって作った団体です。

【少年友の会が作られたいきさつ】

三淵嘉子さんは1962年から東京家庭裁判所で少年審判を担当します。
ここはドラマと同じです。
少年少女の場合、一時的に民間の施設などに預けて生活指導をしてもらう「補導委託」という仕組みがあります。

Q:ドラマでも、美雪さんという少女が、補導委託されましたね。

A:彼女は補導委託で施設に預けられて立ち直ったと判断され、不処分になったというストーリーでした。
補導委託は今も実際にある取り組みの1つです。

三淵さんが書き残した回想によれば、当時、家庭裁判所へ送られた少年少女の中には、親がいない、あるいは今で言うネグレクトなども多く誰も面会に来ず差し入れもない少年少女も多かったそうです。
補導委託の際に、着の身着のまま着替えも生活道具も持っていない子どもが少なくなかったそうです。
こうした子どもたちを何とか支援したい。三淵さんは野田愛子さんなど後輩裁判官らと一緒に、東京家裁所長だった内藤頼博さん、通称「ライハクさん」に相談します。

Q:ライハクさんって、ドラマの「ライアンさん」ですね。

A:そうです。そして1966年、ボランティア団体「少年友の会」を作り、親の支援を受けられない子どものサポートをすることになりました。もちろん、三淵さんも内藤頼博さんも会員になりました。

【活動は全国へ広がる】

Q:家庭裁判所の中に、ボランティア団体を作ったのですか。

A:最初は東京だけでしたが、徐々に活動は全国へ広がりました。
2009年に北海道から沖縄まで全国の50の家庭裁判所ごと対応する形で「少年友の会」が作られ、いまでは会員数1万人に上っています。
調停委員や裁判所OB、地域の人などが会員です。
その活動は、補導委託される少年少女への物資の援助、保護者に代わって少年審判への付添人、学習指導や地域の清掃活動などさまざまです。

Q:三淵さんが作った会が今も活動を広げているのですね。

【三淵さんをしのぶ集まり】

A:今年4月に連続テレビ小説「虎に翼」が始まるのに合わせて、この少年友の会のメンバーたちが、三淵さんゆかりの神奈川県小田原市を訪ねました。

参加したのは、少年友の会のメンバー30人あまり。この日は小田原市の三淵さんのお墓を訪ねました。この中には三淵さんの部下だったという方や、一緒に仕事をした人もいます。
近くには、「甘柑荘」と呼ばれる建物があります。三淵さんの義理の父、初代最高裁長官の三淵忠彦が建てた別荘です。今は金曜日と日曜日に一般公開されています。室内には三淵嘉子さんの生涯を伝える資料も展示されています。

東京少年友の会前理事長、山﨑恒さんは「少年の可塑性・変わりうる力を信じる。これも三淵さんが常に頭に置いて行動している。それを引き継いで、大事にしていかなければならない。何より少年を信じていかなければならない」と話していました。

【取り組みの1つ「委託バッグ」】

            「“委託バッグ”と支援物資」(大阪家庭少年友の会)

スタジオにはいろんなものが置かれています。
これはリュックサックに入っているものです。これは「大阪家庭少年友の会」の取り組みの1つ、通称「委託バッグ」です。実物を借りてきました。
この中には、洋服や肌着、洗面具、目覚まし時計、文具用品などが入っています。
さきほど補導委託の際に、着の身着のままで支援が受けられない少年少女がいるという話をしました。そこでこのバッグを男女やサイズ別に用意して、委託先へ向かう少年少女へ直接渡すそうです。バッグは会員の寄付や「赤い羽根共同募金」の助成金が使われています。

Q:そのままリュックサックを背負って補導委託先へ行けるわけですね。知らない場所へ預けられるのは不安でしょうから、うれしいですね。
でも、三淵さんの時代と比べると、生活用品もない少年少女は今では少ないんじゃないですか。

A:ところが「大阪家庭少年友の会」によれば、大阪だけでも年間10個程度、今もこのバッグは支給されるそうです。虐待やネグレクトで、家裁へ送られても面会も差し入れもない少年少女は、いまも決して少なくないそうです。
特に2020年度は年間18個と急増し、事務局では新型コロナによる不況で貧困家庭が増加したことなども背景では、と話していました。

【三淵さんの「愛の裁判所」理念はいまも】

Q:いまも支援が必要な少年少女がいるのですね。

A:このバッグには、友の会からのメッセージも同封されています。「補導委託になったあなたへ」というタイトルです。内容の一部を紹介します。

「委託期間中は、環境が変わるのですから、健康に十分気をつけて、新しい生活に慣れるよう努力してください」「少しでも早く立ち直り、立派な社会人になってください。私たち一同は期待しています。悩みや心配事があったら手紙をください」(「大阪家庭少年友の会」からのメッセージの一部)

Q:「少年友の会」の皆さんの温かい気持ちが伝わってきます。

A:このメッセージは、三淵さんが最後まで掲げ続けた「愛の裁判所」の精神を受け継いでいます。会はいまも全国で活動を続けています。
三淵さんゆかりの「少年友の会」が皆さんの周りにもあることと、そして、取り組みへの理解を深めてもらえればと思います。

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