マイナンバーカードが偽造されまくり4ヶ月で334億円盗まれた? SNS型投資詐欺の被害額【ファクトチェック】

マイナンバーカードが偽造されまくり4ヶ月で334億円盗まれた? SNS型投資詐欺の被害額【ファクトチェック】

偽造マイナンバーカードによって4カ月の間に334億円が盗まれたとする言説が拡散しましたが、誤りです。この被害額はマイナンバーとは関係ありません。334億円の被害額は、全国の警察が2024年1-4月に認知したSNS型投資詐欺によるものです。

検証対象

2024年9月7日、「【過去記事】マイナンバーカード『偽造されまくり4ヶ月で334億円盗まれましたw』」という投稿がX(旧Twitter)で拡散した。2024年9月10日現在、73万回以上の表示回数と6600件以上のリポストを獲得している。

検証過程

拡散したのはネット掲示板のスレッド

拡散した言説のリンク先は「Tweeter Breaking News―ツイッ速!」というインターネット掲示板まとめサイトだ。日本ファクトチェックセンター(JFC)は過去にもこのサイトを検証している(検証1検証2検証3)。

リンク先にはさらに、専門家が個人で記事を投稿するYahoo!ニュース エキスパートの記事へのリンク(※検証記事が公開後に内容が修正されています)があり、その記事の一部が以下のように引用されていた。

「2023年1月から4月までの4ヶ月間(120日間)、SNSを使ったマイナンバー偽造カードなどによる事件件数は2,508件、被害額は334億3,000万円」

Yahoo!ニュースの記事は、詐欺グループが偽造マイナンバーカードを本人確認書類として偽って使用したことで、本来のマイナンバーカードに紐づけられた銀行情報などが悪用されていると指摘しているが334億円に上る詐欺被害のすべてがマイナンバーカードと関連しているとは書いていない。

マイナンバーカードや運転免許証の券面偽造の詐欺件数増加をうけて政府は2024年6月、マイナンバーカード搭載のICチップ読み取りを本人確認時に義務づけることを決定した(TBS)。

334億円はSNS型投資詐欺による被害額

拡散した言説が引用した記事が参照しているのは、警察庁の公表資料だ。

警察庁は2024年6月14日、SNS型投資詐欺などの認知・検挙状況に関する資料を公表した(「令和6年1月~3月におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」)。

SNS型投資詐欺とは、SNSを通じて必ず儲かると声をかけて入金させ、金銭をだまし取る詐欺だ。多くは投資家や著名人と偽ってSNSでメッセージを送ってくるという(警察庁・「SNS型投資詐欺」)。

この資料によると、2024年1月から4月にかけてのSNS型投資詐欺の認知件数は2508件で、被害総額は334億3000万円だった。また、被害金が犯人の手に渡った方法のうち89.5%(1521件)が振込みで、次に多かったのは暗号資産7.5%(128件)だった。

「SNS型投資・ロマンス詐欺」の認知件数・被害額の推移(令和5年1月~令和6年4月)(警察庁資料)

判定

偽造マイナンバーカードによって4カ月の間に334億円が盗まれたとする言説は、誤り。拡散した言説が引用した記事は、偽造マイナンバーカードによって334億円の被害額が出たとは書いていない。また、記事が参照する警察庁の資料によると、334億円の被害はSNS型投資詐欺によるもので、9割近くは振込みによる被害だった。

検証:リサーチチーム
編集:宮本聖二、古田大輔

更新

このファクトチェック記事公開後に、本文中で触れたYahooニュース記事が修正されました。被害額334億円がマイナンバーカードに関するものではないことが明確になっています。(2024年9月11日)

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

ファクトチェックやメディア情報リテラシーについて学びたい方は、こちらの無料講座をご覧ください。ファクトチェッカー認定試験や講師養成講座も提供しています。

理論から実践まで学べるJFCファクチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

もっと見る

深圳の男児死亡事件、中国人が日本人を騙って謝罪文? 改変した画像【ファクトチェック】

深圳の男児死亡事件、中国人が日本人を騙って謝罪文? 改変した画像【ファクトチェック】

中国・深圳の男児死亡事件に関連して、中国人が日本人を騙る謝罪文を作成したという言説が画像とともに拡散しましたが誤りです。画像は改変されています。 検証対象 2024年9月26日、中国広東省深圳(しんせん)で日本人学校の男子児童が登校中に刺されて死亡した事件で「中国人が日本人を騙って『日本人が全て悪い』という謝罪文を書いた」という内容の投稿が中国語で書かれた謝罪文の画像とともに拡散した。 画像は、花束に中国語で書かれたメッセージカードが添えられている。右側には「私たち日本人の大人がすべて悪い」「全ての日本人成年より」などの和訳が書かれている。 10月1日現在、530万の閲覧があり、8200を超えるリポストがついている。投稿について「嘘しか言わない」「悪質極まりない」などのコメントの一方で、「これコラですよ」という指摘もある。 この画像の投稿を検索すると、最も古いものは2024年9月23日のものだった。 検証過程 拡散した画像をGoogleレンズで検索すると、花束の形は一致しているが、メッセージカードに書かれた文章が異なる画像が見つかった。 メッセー

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
1970年代のファンタオレンジ、添加物はたった3つ? 表示義務の変更【ファクトチェック】

1970年代のファンタオレンジ、添加物はたった3つ? 表示義務の変更【ファクトチェック】

1976年に販売されていたファンタオレンジについて「使われている添加物はたった3つ」と主張する画像が拡散しましたが、根拠不明です。香料や酸味料は、原料の機能等をまとめて表示しており、単一の物質とは限りません。現在は表示義務があり、当時はなかった添加物もあります。 検証対象 2024年9月16日、「1970年代のファンタオレンジ🍊 使われている添加物はたった3つ」というコメントともに、「1976年 ファンタオレンジ」と書かれたオレンジ色の缶の画像が拡散した。この投稿には「今の日本が『添加物大国』と化しどれだけ添加物に汚染されているのかがよく分かる」とも書かれている。 この投稿は9月27日時点で2100件以上リポストされ、表示回数は110万回を超える。投稿について「アイスクリーム類もそうですよね」というコメントの一方で「法律が変わりましたからね 当時は材料表記に関する規制はなかったはずです」という指摘もある。 検証過程 コカ・コーラ社はFacebookで、歴代のパッケージを投稿しており、検証対象の画像は一番左のパッケージに近い。ただし、検証対象は250m

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
自民党総裁選、デマの標的になったのは?/能登地方の大雨/新たなワクチン偽情報/中国からの認知戦【今週のファクトチェック】

自民党総裁選、デマの標的になったのは?/能登地方の大雨/新たなワクチン偽情報/中国からの認知戦【今週のファクトチェック】

自民党総裁選挙に関してさまざまな偽・誤情報が拡散、時間経過とともに誰がどのようにその標的になったのか、解説します。10月から始まる新型コロナワクチンの定期接種を前に偽情報が出てきました。中国の豪雨の映像を使って、能登地方の大雨被害だとする言説が拡散しました。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 今週のファクトチェック解説 ファクトチェックやメディアリテラシー、偽情報対策について、JFCで解説した記事を紹介します。 自民党総裁選で偽・誤情報の標的になっているのは誰か その理由は【解説】 自民党総裁選をめぐって、偽・誤情報が拡散しています。候補者の誰が、なぜ標的になるのか。偽・誤情報の作成者・拡散者の特徴や動機について、日本ファクトチェックセンター(JFC)がこれまで公開した検証記事やSNS、検索データなどをもとに解説します。 自民党総裁選で偽・誤情報の標的になっているのは誰か そ

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
「高市早苗じゃないと日本は終わります」と石丸伸二氏が発言? 別人の発言【ファクトチェック】

「高市早苗じゃないと日本は終わります」と石丸伸二氏が発言? 別人の発言【ファクトチェック】

自民党総裁選に関連して「高市早苗じゃないと日本は終わります」と東京都知事選で次点だった元安芸高田市長の石丸伸二氏が発言したとする言説は誤りです。石丸氏ではなく、石丸氏を応援していたドトールコーヒー創業者の鳥羽博道氏の発言です。 検証対象 2024年9月24日、「『高市早苗じゃないと日本は終わります』と石丸伸二。そんな日本は終わった方がいいに決まっている」という言説が拡散した。 2024年9月27日現在、この投稿は2800回以上リポストされ、表示回数は37万件を超える。投稿について「その通り」「自民党終わりにしましょう」というコメントの一方で、「石丸さんはそんな事一言も言ってません」という指摘もある。 検証過程 投稿には「『高市早苗じゃないと日本は終わります』石丸伸二応援団長・ドトールコーヒー鳥羽会長が、自民党総裁選で「保守のプリンセス」を応援する理由」(2024年9月24日)という現代ビジネスがYahoo! ニュースに掲載した記事が添付されている。 記事は、2024年7月の東京都知事選で石丸氏の後援会長を務めた鳥羽氏のインタビューだ。鳥羽氏は自民党総

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)