米大統領選でトランプ氏が大きくリード? 過去報道の切り取り【ファクトチェック】
アメリカ大統領選をめぐり、9月11日のテレビ討論後に「トランプ氏が大きくリード」という言説が拡散しましたが、誤りです。根拠としていたのは過去の世論調査の一部で、全体を見ると接戦という内容でした。
検証対象
アメリカ大統領選をめぐって、テレビ討論会のあと「トランプ大統領は大きくリードしています。CNNがパニックになり始めています」という投稿が34秒間のニュース動画とともに拡散した。
動画は、CNNのニュース映像で、ジョージア州でハリス氏27%・トランプ氏71%、アリゾナ州でハリス氏31%・トランプ氏65%など、トランプ氏が圧倒的に優勢な数字が並んでいる。
この投稿は、9月12日現在、120万の閲覧数と2400件のリポストがあり、「もうハリスは完全に化けの皮が剥がれたからな」「嘘、フェイクニュースのCNN」といったコメントのほか、「これ白人の支持率ですよね」という指摘もある。
検証過程
添付された動画の内容からCNNにドメイン指定し、期間も設定して検索(参照:JFC講座 実践編2)すると、CNNが公開している記事が見つかる。
9月4日に公開されたCNNの世論調査を示す記事で、ジョージア州、アリゾナ州、ネバダ州など激戦6州での支持率を紹介している。拡散した動画はその中で「投票に行きそうな、非大卒の白人」に限った支持率の比較をしている場面だ。
オリジナルのニュースでは、最初に投票に行きそうな有権権者全体の状況を示している。それによると、ウィスコンシン州でハリス氏50%・トランプ氏44%、ミシガン州でハリス氏48%・トランプ氏43%など、ハリス氏がトランプ氏を上回っていることがわかる。
その後に、女性有権者、男性有権者など細かい分析になっている。
この世論調査は、画面の左上に「Aug23-29」とあるように、二人が初めて直接対峙したテレビ討論会より2週間前のもので、最新ではない。
テレビ討論会後の支持率は
討論会直後、CNNは討論会を見た登録有権者605人を対象に緊急調査した。その結果、63%がハリス氏が優勢だったと答えたと報じている(CNN Flash Poll: Majority of debate watchers say Harris outperformed Trump onstage)。
日本国内では、NHKが「複数のアメリカメディアがハリス氏がトランプ氏を防戦に回らせたと報じている」と伝えている(米大統領選 テレビ討論会 複数の米メディア 『トランプ氏防戦』) 。
判定
9月11日の米大統領選テレビ討論の後に、トランプ氏が大きくリードという言説が拡散したが誤り。言説が根拠とするのは過去の世論調査報道の一部を切り取ったものだ。
検証:宮本聖二
編集:古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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