知事選で東京都が読売新聞に不正に2億円支払う? 選挙広告の費用【ファクトチェック】
都知事選をめぐって、東京都が読売新聞に不正に2億円を支払ったと指摘する言説が拡散しましたが、誤りです。立候補者を紹介する選挙広告のための新聞社への支払いです。
検証対象
2024年9月9日、X(旧Twitter)に「東京都知事選の不正が明らかに。国民の税金で東京都が読売新聞に2億円払っていた事が判明。立花氏が開示請求。百合子終わったなー」という投稿があり、拡散した。
投稿に添付された動画は、元国会議員の立花孝志氏が同日に投稿したもので「東京都知事選挙で、東京都知事が読売新聞に支払った約2億円は高すぎる」と書いている。
これらの投稿に「小池百合子完全にこれアウトだろ」「都に2億円百合子が返さなければいけないな、そして辞職」といったコメントから「選挙広告なので何も問題ない」という指摘もある。
検証過程
拡散した動画は請求書と書かれた文書に金額が並ぶ。「小池百合子さんが当選した理由とも言えるでしょう、読売新聞が小池百合子さんに請求した金額、なんと1億9684万2690円」という声も収録されている。
立候補者の新聞広告費を東京都が負担
公職選挙法149条に「立候補者は新聞に広告を載せることができる」という規定がある。第4項には「衆議院議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙については、公職の候補者は、総務省令で定めるところにより、同一寸法で、いずれか一の新聞に、選挙運動の期間中、二回(参議院選挙区選出議員の選挙にあつては五回(参議院合同選挙区選挙にあつては、十回)、都道府県知事の選挙にあつては四回)を限り、選挙に関して広告をすることができる」とある。
日本ファクトチェックセンター(JFC)が都選挙管理委員会に取材したところ、動画の請求書に記載された金額は、この広告を新聞に掲載するための経費だった。小池都知事個人のために支出されたものではない。
「新聞広告の費用は東京都が負担する。広告費については、総務省からの通知で単価の上限額が決められており、東京都はそれにしたがっている。どの新聞に掲載するかは立候補者に任せている。今回立候補者が最も多く掲載を選んだのが読売新聞だった。読売新聞は発行部数が多いので広告の単価は高くなる。今回の選挙には過去最多の56人が立候補しており、今回の新聞広告費用も比例して高くなった」(都選管)
選挙広告を掲載する新聞社は、政党や立候補者向けの新聞広告資料を公開している(朝日新聞、毎日新聞、読売新聞)。
判定
東京都知事選にかかった費用の支払いについて、小池知事の不正を指摘するような言説が拡散したが、誤り。公費負担による立候補者の広告の新聞社への支払いの請求が、東京都知事宛てになっている。
あとがき
選挙広告は、多くの有権者に候補者のことを知ってもらうために存在し、そのために公費負担が認められています。特定の候補者を有利にするための不正な支出ではありません。
ただし、多額の選挙広告費用を新聞社に支払うことについて、有権者のメディア接触時間に占める新聞の割合が低くなっている以上、そのあり方を再考すべきではないか、という議論もあります。
検証:宮本聖二
編集:古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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