アーカイブ「話の肖像画」

コメディアン・志村けん<8>笑いには力がある、体が続く限り笑わせたい

2006年3月27日付の産経新聞に掲載した連載「話の肖像画」のアーカイブ記事です。肩書、年齢、名称などは掲載当時のまま。

バカ殿様のコント魂

――4月から始まる舞台「志村魂」では、バカ殿様や松竹新喜劇の名作など定番を取り上げますね

面白いものは何回見ても面白いと思うんですよ。名作というものを残していくのも必要だしね。新しいことばかりではなく、わかりやすい、べたなコントも大事なんです。それで笑わすには腕が必要ですからね。

――笑いには若さや体力が必要だといわれますが、56歳の今、体力に自信は

舞台でバカ殿様をやるのは、体力勝負ではありますね。喜劇俳優の三木のり平さんの晩年の舞台を見たときにね、すごくゆっくりした動きなんだけど、椅子(いす)から真後ろに落ちるとか、いざというときの動きがすごく大きく見えたんです。いい年になっても、動きを速く見せるための技があるんですよ。

――舞台公演は今後も続けていきますか

やっと実現した企画なので、年に1回はやっていきたい。地方だと生でこういうコントに触れることは少ないと思うので、次は主要都市を回りたいね。生で見ることの喜びはテレビとは全く違いますよ。その感動で、人生が動いたりするのでね。

――舞台はもうからないといわれますが

まあ、食っていければいいんじゃないですか。舞台でもうけようとは思わないし。もう50歳過ぎてんだから、好きなことをやらしてもらったっていいでしょう。お金は残らないかもしれないけど、心の中に違うものがたくさん残りますから、そっちのほうが大事だな。

――コントの演出などはやりませんか?

ぼくは、何でも出るのが前提。裏方に回って演出するぐらいなら、自分でやります。演出されるのは嫌い。自分で自分を演出するのが好きなんです。舞台では、今まで考えたいろんなぼくのキャラクターやネタをどんどん出しますよ。

――志村さんにとって笑いってどういうものですか

パワーを与えるとか元気づけるとかね、笑いにはそういう力があるんです。面白いものを見て、明日もがんばろうと思ったりするでしょう。自分がまず一番楽しんで、今後もそれが伝わればいいかなと思っています。

――いかりや長介さんは後年、俳優として活躍しましたが、これからは?

映画に出たこともありますが、俳優でやっていこうという気は毛頭ないですね。ぼくはコントがあったから今までやってこれたし、コントという帰るところがある。体が続く限りはコントだけです。ネタの財産はいっぱいあるんですよ。未完成のまま出してしまったネタを引っ張り出して、それを完成させていくこともしたい。その中で、新しいキャラクターも生まれてくるでしょうしね。(聞き手 田窪桜子)

=おわり

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