アーカイブ「話の肖像画」

コメディアン・志村けん<6>頭はいつもネタのこと、映画は半端じゃない数を見る

2006年3月25日付の産経新聞に掲載した連載「話の肖像画」のアーカイブ記事です。肩書、年齢、名称などは掲載当時のまま。

バカ殿様のコント魂

――昭和60年に「8時だヨ!全員集合」が終了しましたね

「全員集合」終了のパーティーも覚えていないんです。その時は、加藤茶さんと2人で次の番組(「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」)をやることが決まっていて、その内容をどうするかで頭がいっぱいでした。

――2人になってもネタは自分たちで考えていた?

作家は何人かついていたけど、ほとんどのネタを自分たちで作っていました。笑いをやる人の使命ですよ。自分で脚本もネタも考えて周りの演出もできなくちゃいけない。そうしないとスタッフがついてこないからね。

――ネタはどうやって生まれてくるのですか

「何かないか、何かないか」といつも考えていますよ。「だいじょぶだぁ」は、長兄の嫁さんが福島の喜多方出身で、向こうのお父さんが何かっていうと「だいじょぶだぁ~、だいじょぶだぁ~」って言うのが面白いなあと思ったのがきっかけ。うなってしぼりだすネタもあるし、ふっと思いつくネタもあります。

――飲んでいるときもネタを考えている?

コント番組を2本やっているころは、ほとんど寝ていなかったです。ネタができたら番組スタッフを連れて飲みに行くでしょう。でも結局、ディレクターとこうしたほうがいいとかネタの話になる。収録した日は反省会。ずっとネタのことは抜けないけど、そういう性分なんでしょうね。好きなことをやっているわけだし、その労力は当たり前だと思います。

――ネタの材料はどこから探してくるのですか

映画はとにかく半端じゃない数を見ます。もう習慣ですね。今は新しく出るDVDはとりあえず全部買う。常に手元に見てない映画が10数本ないと落ち着かないですね。一時期は、休日は最低3本見ると決めてました。「ごきげんテレビ」をやっていたころは午前3時、4時に帰ってきても、それから必ず何か映画のビデオを見ていました。

――内容を楽しめないですね

シチュエーションや構成、照明とかばかり見ていますから、役者や監督の名前は知らない、タイトルも覚えてない。ここはいいと思うと、ビデオを止めてコントのアイデアの絵を描いて、この状況で何をやったら面白くなるかと考える。それでもネタが出なくて煮詰まったときは、原点に返ります。

――原点とは

ぼくにとってはチャプリンを見るか、ビートルズを聴くかです。コントだったら、ベンチ1個のシチュエーションで、誰が何をすれば面白いかを考えるんです。

(聞き手 田窪桜子)

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