アーカイブ「話の肖像画」

コメディアン・志村けん<1>喜劇人には生の舞台が一番、志村けん一座を旗揚げ

2006年3月20日付の産経新聞に掲載した連載「話の肖像画」のアーカイブ記事です。肩書、年齢、名称などは掲載当時のまま。

バカ殿様のコント魂

《この春、志村けん一座を旗揚げし舞台「志村魂」を上演する。人気キャラクターのバカ殿様、松竹新喜劇の名作、新作コントの3部構成だ。バカ殿様が生で観客の前に登場するのは「8時だヨ!全員集合」(昭和44年から60年までTBS系で放送されたバラエティー番組)以来。コントをさらに追求し続けている》

――今なぜ、舞台でコントをやろうと思ったのですか

50歳になる前からやりたかったのが、やっと実現したんです。お客さんの前でコントをやると反応がすぐ返ってくる。そのいい緊張感と、心地よい疲れは忘れられない。こっちの狙ったタイミングがずばりお客さんにはまったときの感覚は、言葉では表せない。喜劇人にとって生の舞台が一番ですよ。

――テレビでのコントとは違ってくるのですか

テレビでも、ある程度の客席を設定してやる場合は変わらないですね。ただ、スタジオだとスタッフしか相手にしないので、実際にうけているかどうか分からなくなるんです。スタジオでもコントを週に1回でも収録していればいいですが、今は2週間に1回。やはり勘が鈍ります。

――テレビの公開録画ではいい緊張感は味わえない?

お金を払っていないお客さんが、せいぜい100人ぐらいですから。舞台は、実際にお金を払って足を運んでくださるのですから、こっちも真剣勝負。幕があく前は緊張しますよ。

――「志村魂」は異なるタイプのコントが並びます

もともとこういう形をやりたかったんですよ。松竹新喜劇は「一姫二太郎三かぼちゃ」。よくできてますよ。わかりやすくてね。これは家族愛、兄弟愛の話。自分で見ても結構泣けるんですよ。世の中にそういうのがなくなってきたので、家族をテーマにしたいという思いがあって。ぼくが男3人兄弟だったことも少しあります。

――バカ殿様は?

テレビでやっているようなコントを40分ぐらいの芝居仕立てにします。演出のラサール石井さんがどうしてもやりたいというので、「全員集合」的要素も入れてね。ぼくが登場するたびに、おなじみのキャラクターになっているとかね。バカ殿は「全員集合」の公開生放送で2回やっただけで、そのあとは全部スタジオ。生の舞台でやったことはないので、お客さんの反応が楽しみなんです。

(聞き手 田窪桜子)

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