衝撃事件の核心

「放射能の検査で侵入できる」女児宅で体を触った男は漫画模倣か 作者に警察「配慮」要請でネット「場外戦」に

裁判が行われたさいたま地方裁判所=さいたま市浦和区高砂
裁判が行われたさいたま地方裁判所=さいたま市浦和区高砂

性犯罪防止か、表現の自由か-。病気や放射能の検査を装って女子小学生の家に侵入して体を触るなどの犯行を繰り返していた無職男の事件が波紋を呼んでいる。男が放射能の検査を装う手口が描かれた成人向け漫画同人誌を読んでいたことから、埼玉県警が漫画の作者に配慮を求めたためだ。インターネットでは「表現の自由の萎縮を招きかねない」「被害者が出るよりはいい」といった意見が飛び交った。作者は県警の主張を受け入れ、「こんな事件2度と起こらなければいいのに」とSNSでコメントした。一連の事件の公判は始まったばかりだが、思わぬ場外戦が繰り広げられている。

自転車で“女児探し”

この事件で、住居侵入と強制わいせつの罪でさいたま地裁(石川慧子裁判官)に起訴されたのは、埼玉県草加市北谷の無職、矢崎勇也被告(35)。22日の初公判で「間違いありません」と起訴内容を認め、検察側の冒頭陳述を聞きながら涙を流す一幕もあった。

検察側によると、犯行当時、妻子がいたというが、休日に自宅にいる際、犯行を思い立っては自転車で女児を探しに行き犯行に及んでいた。自転車で追い抜きざまに小学校高学年くらいの女児の体を触るなどの犯行を30〜40件繰り返していたという。

起訴状などによると、昨年6月29日夕、病気の検査を装い、同市内に住む小学校高学年の女児の自宅敷地内に侵入して体を触り、7月20日昼には「検査するね」などと言って在宅していた同市の小学校高学年の女児の体を触るなどしたとしている。女児宅に上がり込むと、女児の衣服をはだけさせ上半身を触ったり、ズボンと下着の間から下半身をのぞき込むなどの卑劣な犯行に及んでいた。

証拠調べでは、被害者の「また来たらどうしよう。捕まえてろうやにいれてほしい」という気持ちや、被害者の父親の「この手で殴ることもできないので1番重い罰を与えてほしい」という処罰感情が明かされた。

草加市で被害約20件

草加市では平成26〜29年3月、少女が体を触られるなどの被害が約20件確認されており、県警捜査1課と草加署の合同捜査班が捜査を続けている。13日には、「放射能の調査をする」と嘘をついて家の中に入り女子中学生の体を触ったとして、合同捜査班が、住居侵入と強制わいせつの疑いで、矢崎被告を再逮捕し、さいたま地検に送検した。

再逮捕容疑は昨年1月8日午前11時35〜40分ごろ、同市内の女子中学生(当時)の家に「放射能を調べる調査をしたいから入っていいですか」と言って侵入し、玄関で「死にたくなければ声を出さないで」などと脅迫して体を触ったとしている。矢崎容疑者は保護者がいないことを事前に確認していた。

同課によると、矢崎容疑者は「放射能の検査といえば侵入できると考えた」と供述しているという。

「社会に与える影響配慮を」

この事件では、検査を装う悪質な犯行態様に類似した成人向け漫画同人誌があり、矢崎被告もその作品を読んでいたことなどから、埼玉県警が作者を訪問して「模倣される可能性があることや社会に与える影響を考慮してください」と伝えた。

作者がこの件についてソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に「チャイムが鳴って玄関開けたらガチ警察の方2人が用があるって訪ねてきて」などと書き込んだことから、表現の自由をめぐりネット上で話題となった。

作者は「『表現の自由が侵された』とか『警察の圧力に屈した』とか『前例ができた』とかいう類の話だとは思ってほしくない」、「『こんな事件2度と起こらなければいいのに』という気持ちは同じ」などとコメント。ネットユーザーは「先生のマンガには大勢の同好の士が救われていると思います」「これまで通り取り組んでいただけたらと願っています」などと擁護する反応が多く見られた。

一方で「好き放題書いてきて、それに影響受けて犯罪者が出て、被害者が出てしまった。普通の人間なら漫画家活動自体を自重すると思う」「こういう作品描く人も好きな人も異常でしょ」などの辛辣な意見もあった。

捜査関係者は「被疑者が作品を読んでいたという供述があり、作品や事実関係を確かめるために訪問し、その中で『作品に気をつけてほしい』とお願いした」と説明している。

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