コンサルタント

小泉 拓

情報通信研究部 センサ・メディア情報技術チーム

小泉 拓Hiroshi Koizumi

2010年入社

大学院では、現実世界における現象の数理的構造を解き明かす数理工学を専攻した。就職に際しては、好きな数学を活用し、社会課題を解決する仕事に就きたいと考えており、様々な業界の中で興味を持ったのがシンクタンク。みずほリサーチ&テクノロジーズの自然科学分野に力を入れている点が入社の決め手になった。

基盤先端情報技術の技術開発支援。
研究者の構想を具現化する。

情報通信研究部は、クライアントに対して研究戦略の提言から、最先端の技術開発やコンサルティングを行うことで、クライアントの事業発展に貢献することをミッションとしています。なかでも、画像・信号処理、テキストデータ、センサデータ、数値シミュレーションデータ等を対象とした、基盤先端情報技術の研究開発が主な支援対象となっています。私自身は、流体解析や構造解析、信号処理、自然言語処理、その他AI・データサイエンス技術等の分野に関する研究開発に関わっており、クライアントが抱える研究構想や研究課題に対して、研究者とコミュニケーションを図りながら、ソフトウェア開発や改善策の提案を行うなど研究支援を行っています。
クライアントの多くは公的な研究所や大学の研究機関となり、実際に対面するのは各分野の専門家である研究者になります。研究者の多くは常に多忙を極めており、手を動かす時間は限られています。そんな研究者をサポートする上では、研究者の研究コンセプトを深く理解し、研究者の考えたものを具現化することが重要です。
たとえば、過去に携わった研究開発のテーマの一つとして、自動車等の「形状」の最適化があります。最適化により軽量化を図り、燃費向上を実現するのが目的です。そして、この最適化に活用されるのが数値シミュレーションです。コンピュータ上で材料分布等を変化させながら、構造計算と最適化を同時に行い、最適な形状を見出していきます。このような他分野にまたがる複雑なプログラムを研究者と対話しながら実装し、研究者が実行したいと考えているものをカタチにしていく役割を担っています。

「資料作成」で痛感した
研究の意義・価値を伝える大切さ。

仕事を進める上で重要なのは、研究の背景や意義を知ることだと思っています。何を実現したいのか、どこに課題を感じているのか、何を大切にしているかなど、研究者の考えを深く理解することで、クライアントと成果物のイメージの齟齬をなくすことに加え、自分が知らなかった世界の知見を得ることができます。
また、相手にどうすれば理解してもらえるか、考え抜くことも必要不可欠です。それを痛感したのが、クライアントに向けた資料作成でした。提出した資料について、クライアントである研究者から「資料内の図が何を表し、何を主張したいのかがわからない。見た人が理解できる資料でなければ、まったく意味がない。」と厳しく指摘されたのです。他者が理解できなければ意味がない。当たり前のことですが、当時はその視点が不十分でした。それからは資料作成への意識が大きく変わりました。図・グラフ等の適切な配置や色使いといったビジュアル面はもちろん、「示した図・グラフの中で見るべきポイントはどこか」「それが何を意味し、そこから何を読み取ることができるのか」を意識してコメントや文章表現の推敲を重ね、次第に真意が伝わる資料を作り上げられるようになっていきました。この経験をきっかけに、研究の成果を出すことだけでなく、それを多くの人に分かりやすく伝えること、そのために手を尽くすことの大切さを改めて認識しました。

「アウトプット」だけではなく、
「アウトカム」を生み出す大切さ。

入社当初から関わってきた研究で、宇宙航空に関するものがあります。入社5年目の頃から3年間、JAXAへの出向も経験しました。当時は、流体の研究者に囲まれる中、自分なりの研究テーマを設定することを求められました。ところが、私には流体に関する知見はほとんどなく、研究するどころか研究者の話すらわからない状態。非常に困惑しましたが、そんな中でも当時注目され始めていた
AI・データサイエンスに着目しました。これらの技術を、自分の強みである数学力や実装力と組み合わせて、流体解析に応用するという研究をスタート。
流体の分からないところは周囲の研究者に聞きながら、逆にAI・データサイエンスの技術は噛み砕いて説明する、というスタンスで上手く協業しながら研究を進められたと思います。その際、印象的だったのは、AI技術そのものに関する質問の他に、ハードウェアとして実現できるのか、性能は保証できるのか、性能が向上するとしてもコストに見合うのか、それによって世界がどう変わるのか等といった、技術を応用した先を意識した質問が多いことでした。
私たちは通常、「アウトプット」を求められます。それはソフトウェアや分析結果といったものですが、この取り組みを通して実感したのは、それらを主体的に活用して生み出された成果である「アウトカム」の大切さです。「アウトプット」に留まるのではなく、その先の世界である「アウトカム」を意識することで、より良い研究や提案が出来るようになる。そのことを強く意識付けられた研究開発の現場でした。

広がるAIの可能性とともに、
知見を深め、アウトカムを創り出す。

当社には様々な専門家がおり、分野横断的な案件にも対応できる強みがあります。私が扱うAI・データサイエンス領域は多彩な分野に応用が可能ですから、他部門と連携・協働して進めるプロジェクトも少なくありません。社会政策コンサルティング部とは、文書の分類や特定の単語のマスキングを自動化するAIの開発や、就職支援におけるAI活用の検討を実施しました。また環境エネルギー第1部とは、化学物質に関する情報の信頼性の判断にAIを活用する試みも行いました。他にも、エコノミストと連携してAIによる景気動向指数の予測に取り組むなど、その可能性は大きく広がっています。
私自身、今後はもっとAIの専門性を高めていきたいと思っています。当社のAIを活用したビジネス創出を担う「AI Powerhouse」を兼務し、先端技術のR&Dや新事業開発、AI開発に関するガイドライン作成など、多彩な活動を行っています。こういった活動を通じて知見を深めることで、より良いアウトカムにつながる研究開発を行っていきたいですね。

1日のスケジュール

  • 9:00

    出社。事務処理

  • 10:00

    数値シミュレーションに関する最新の文献調査、情報収集。

  • 11:30

    昼食。

  • 12:30

    AIモデルの開発。

  • 14:00

    クライアントとのWeb会議。プロジェクトの進捗報告、課題共有。

  • 15:00

    数値シミュレーションソルバー(数値計算を実行するアルゴリズム)の開発。

  • 17:00

    クライアント説明資料の作成。

  • 19:00

    退社。

10年後、20年後の未来を見据えて。
AI・データサイエンス技術の可能性に
向き合う。

AI・データサイエンスの技術進歩は目まぐるしく、画像や音声などでは当たり前に使われるようになっています。しかし流体解析や構造解析、信号処理などの科学技術分野にもそのまま適用できるかというとそう簡単なことではなく、現在では応用例も限られています。そのような科学技術分野に関しても、AI・データサイエンス技術の適用を可能とするチャレンジをしていくことで、業務領域を拡大していきたいと考えています。
私たちの取り組みは、すぐに結果が出て、直ちに社会にインパクトを与える性格のものではありません。10年後、20年後の未来を見据えた研究開発だからこそ、社会の変化や未来を捉えながら、社会実装される日を目指して、ひたむきに研究開発活動に取り組むことが大切だと思っています。

※所属部署は取材当時のものになります。