創造職人Files
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常にフラットに。
心に好きと探求心を持って挑む
Vol.11 カメラマン 佐藤勝彦 篇
クリエイターを通して職種にフューチャーする“創造職人Files”。第十一回はカメラマンでありスイッチャーも担う佐藤勝彦。カメラマンの世界を探求し続け、あらゆるジャンルの映像を撮影することが楽しくてたまらないと言う。佐藤を魅了し続けるカメラマンの仕事とは。
奥深いカメラマンの世界の虜に
カメラマンからチーフカメラマンを経て、今はスイッチャーの仕事もしており、レギュラーで『ぽかぽか』(フジテレビ系)(※1)を担当しています。その他にも様々なジャンルでカメラマンやスイッチャーを担当しています。昨日はKアリーナ横浜で開催されたコンサートのスイッチャーをしていました。
スイッチャーはカメラマンを経験しなければできない仕事です。それぞれのカメラマンが、撮った映像のどこを切り取って放送するかを瞬時に判断します。特にバラエティは演者の皆さんがどんなリアクションをしてどんな発言をしてくるか分かりません。なかでも『ぽかぽか』のような生放送のバラエティ番組のスイッチャーは一瞬一瞬が勝負です。担当して一年になるのですが未だに緊張の連続です。担当した当初は緊張で眠れませんでした。
大好きだった親戚のおじさんの影響でカメラマンの道を志し学校に通い、あっという間にカメラの世界の虜になりました。奥が深くていくらでも掘れる。日々進化する機材の特徴を知った上で、そのハード(機材)を使って、どう撮るかを考えて撮影監督に提案するのはカメラマンの役目です。ハードだけが良くてもそれに相応しいソフト(映像)を撮らなければ意味がない。ハードとソフトのバランスが合致してはじめて良い映像になるのだと思います。
「テレビの世界へ行きなさい」尊敬する先輩の助言でこの世界へ
新卒で入社したのはミュージックビデオ等を多く撮っている映像会社でした。そこで4年ほど仕事をしていたのですが、ある日、尊敬するライブカメラマンの先輩に「カメラマンを極めたいならテレビの世界に行きなさい。テレビのカメラマンの技術力はすごい」と言われ、テレビの世界に入りました。当時、共テレが[KR-advance]という4K映像にも対応できる高性能な中継車を持った頃で、その技術に携われるということも幅を広げたかった自分にとって、とても魅力的でした。
カメラアシスタントからスタートして報道やバラエティ、ライブ等、様々なジャンルの撮影を担当しましたが、気を配るポイントはジャンル毎に違っていて、どれも魅力的で楽しい日々でした。そして先輩の言う通り、ライブカメラマンとテレビ番組を撮るカメラマンというのは勝手が違いました。
演出がある程度決まっているものに関しては、事前に勉強して「良い準備」ができますが、不確定要素の多いものは常に現場の状況を把握しながら自分の裁量で画を撮ることが求められます。もちろんスイッチャーから「こういう画を撮って」と指示を受けることもあります。ですが僕がスイッチャーでいる時はなるべくカメラマンの裁量に任すようにしています。その方が良い画が撮れるような気がするんです。あるライブのスイッチャーを担当した時に本当だったらアーティストを追うはずのカメラマンがトンボを撮っていました。「なんでトンボ?」と思ったのですが、それが歌詞と見事にリンクしていました。
「今、これを撮るべき」というカメラマンそれぞれの判断が最適化されることによって映像がどんどん良くなっていくと思います。そういう“現場力”というのか、カメラマンとしての技術がテレビを経験することでどんどん磨かれていく。それを経験した上でライブやコンサートのカメラマンをやると動きが変わってくる。先輩はそれを言いたかったのだと思います。
偏らない。常にフラットな自分で仕事に挑む
様々なジャンルのカメラマンやスイッチャーを担当しますが、常にフラットでいるように気をつけています。昨日ライブ撮影をして今日は報道を担当する。なんていうことはしょっちゅうで、その都度スタッフも変わります。昨日ライブを撮影していたからその余韻が残っていて報道の撮影が上手くいかない、なんてことは現場のスタッフにしてみたら、まったく関係のない話ですよね。偏ることなくフラットに自分軸を持って仕事に挑むように心がけています。
撮影に入ったら一つの番組やコンテンツの中で、「今までは序盤で、ここからアクセル全開にする!」といったようなモードの確認というか、空気を読みながらディレクターの演出要求を逃さないように気を配っています。そこに乗っていけないとカメラマンとしてもスイッチャーとしても仕事ができていないということになると思います。
役得もたくさん!探求心を持って“好き”を大切に
【FUJI ROCK FESTIVAL】にチーフカメラマンとして参加した時に、大ファンだった海外アーティストのライブ撮影をすることになり、ステージ上を自ら担当しました。そんな役得をたくさん味わえるのもカメラマンの良いところかもしれません(笑)。
カメラマンもスイッチャーも「好き」という気持ちがないとできないと思います。特にスイッチャーは内発的にモチベーションを上げることができません。カメラマンが撮った画を放送するために切り替えていくのが役割なので。あらゆる映像を観て、「これはどんな機材で、どうやって撮っているんだろう」と興味を持つ。そして「好きだな」と思う映像があったらその監督を調べてみる。すると思いがけずどれも同じ人だったりします。そうなると「ああ自分はこういう映像が好みだったのか」と改めて認識できるし、そこからまた勉強することもできる。僕はそうやって探求していくことが本当に楽しいです。
今、若手のスタッフたちがすごく面白いなって思います。そういう若手たちを育成しつつ、才能の塊のような人たちと一緒に面白い映像を撮っていけたら最高ですね。
※1 『ぽかぽか』(フジテレビ系)。毎週月曜日〜金曜日の11:50〜13:50生放送。MCは岩井勇気・澤部佑(ハライチ)、神田愛花。
佐藤勝彦
技術センター 制作技術部 コンテンツ技術グループ
カメラマン
カメラマン歴17年。現在は『ぽかぽか』(フジテレビ)、【FUJI ROCK FESTIVAL】、【東京2020夏季パラリンピック】、【AFCチャンピオンズリーグ】他、多くのカメラマン、スイッチャーを担当。
(2024年3月取材)