『ローン・オフェンダー』は、特定の組織に属さず、人知れず過激化してテロや凶悪犯罪を起こす個人のことで、計画から実行まで1人で行うため、事件の前兆をつかみにくいとされています。
国内でもおととし、安倍元総理大臣が銃撃されて死亡した事件や、去年、岸田総理大臣に向けて爆発物が投げ込まれた事件など、治安上の大きな脅威になっています。
こうした中、警視庁が来年度、組織改編を行い、ローン・オフェンダーの捜査や対策に専従であたる課を、公安部に新設する方針を固めたことが、関係者への取材で分かりました。
警察の各部門が得た不審者にまつわる情報を集約して、捜査の司令塔としての役割を果たすほか、危険物の購入に関わる情報や、SNS上の書き込みなどへの警戒も強化して、事件の前兆の把握や、未然防止のための対策につなげます。
一方、警察当局が「過激派」と位置づけている中核派や革マル派などの組織を担当してきた公安部の2つの課は1つに統合し、情勢に応じて人員を柔軟に運用していくとしています。
ローン・オフェンダー対策専門の部署が警察にできるのは全国で初めてで、警視庁の幹部は、NHKの取材に対し、「組織改編によってあらゆる情報を分析する体制を強化し、新たな脅威に対応したい」としています。
警視庁 ローン・オフェンダー対策専門の部署 公安部に新設へ
組織に属さず、人知れず過激化した個人「ローン・オフェンダー」によるテロや凶悪犯罪が国内外で相次ぐ中、警視庁が来年度、ローン・オフェンダーの捜査や対策に専従であたる課を、公安部に新設する方針を固めたことが、関係者への取材で分かりました。テロや犯罪の前兆をつかみ、未然防止につなげるための体制を強化します。
専門家「どの程度の監視なら許容できるか議論必要」
テロ対策などに詳しい日本大学危機管理学部の福田充教授は、「ローン・オフェンダー」が国内外で起こした過去の事件では、SNS上で犯行を示唆するような投稿を行うなど、何らかの予兆があるケースが多いとしたうえで、「ネットに危険な書き込みをしたり、ヘイトデモに参加したりするなど、目立つ行動をとる個人を事前に把握することが、テロや犯罪を抑止するため有効な対策になる。警察当局が、部署を横断する形で、さまざまな情報を共有すること、さらに、不審な人物や投稿の情報を警察に共有するなど、市民の目も大切だ」と述べました。
一方、福田教授は、当局による過度な監視は個人の自由やプライバシーを奪うことにもつながるとして、「安全を守ることは大事だが、リスクを完全に排除しようと徹底的な監視社会にすれば生きづらさも生む。どの程度の監視なら許容できるのか、社会でバランスを議論していく必要がある」と話しています。