17日付朝日新聞は、平成25年参院選の公示直前に当時の安倍晋三首相と旧統一教会会長が自民党本部で面会していた写真を根拠に、両者が選挙支援の確認をしていたとトップ記事で報じました。この面会の存在をもって「党と教団の組織的関係はない」とする自民党の見解に疑義が深まったと問題視しています。しかしながら、立証責任を果たすことなく、反論ができない故人を臆測で批判している朝日にこそ逆に問題があると考えます。
まず、公民権をもつ国民で構成され、党に対する支持を表明している団体の訪問を自民党が拒む理由はありません。政党はその政策実現のために国民の支持を求める存在であり、党の政策に共感する団体に対し政治に関わる諸情報を提供することは、ごく普通に行われている正常な政治活動です。そもそも参政権は国民個人に等しく与えられた権利であり、その権利の行使を個人の属性を根拠に問題視することは基本的人権を侵害する行為といえます。
この面会に問題があるとすれば、それは選挙支援と引き換えに、自民党政権が不当な利益を旧統一教会に供与した場合に限られます。組織的な関係の有無は、組織に対する利益の供与の有無で判断されるものです。
ここで、事実に立脚すれば、安倍政権は、旧統一教会に利益を与えるどころか決定的な不利益を与えています。30年、安倍政権は霊感商法による契約を無効化する消費者契約法の改正を断行しました。全国霊感商法対策弁護士連絡会によれば、旧統一教会を巡る相談件数は安倍政権時に激減しています。つまり自民党は、これらの事実をもって、教団と組織的な関係がないことへの説明責任を既に果たしているといえます。
朝日は、自民党に対し党と教団との組織的関係が「ない」とする見解を検証するよう求めていますが、これは論理的に立証不可能な悪魔の証明(「ない」ことの証明)に他なりません。朝日がこの面会をもって組織的関係が「あった」と問題視するなら、朝日側に自民党から旧統一教会への利益の供与が「あった」ことの立証責任があります。
過去に朝日は、森友学園や加計学園疑惑を巡って安倍政権に悪魔の証明を求め続け、不合理に日本の政治を混乱させました。今回も半年前に入手した写真を突如公開し、国民生活に関わる活発な議論を行っている自民党総裁選に水を差しました。このような悪魔の証明を強いる報道姿勢は甚だ無責任であり、報道倫理に反するものと考えます。
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藤原かずえ
ふじわら・かずえ ブロガー。マスメディアの報道や政治家の議論の問題点に関する論考を月刊誌やオピニオンサイトに寄稿している。