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ニュースウオッチ9⑫反省しないNHK、再発防止策のウソ

⑪ワクチン被害者遺族らが国を提訴からの続き/

ニュースウオッチ9の当該回は、BPO倫理委から「放送倫理上問題あり」と判断されました。

これを受けてNHKは、再発防止の取り組みに関する報告書をBPOに提出しています。その内容は過去のBPO案件で出されたものの焼き直しであり、実効性には疑問を感じます。

再発防止策が本当に効果のあるものなのか、チェックシート試写の2点に着目して見ていきましょう。


1. 増え続けるチェックシート

提案票(企画書)を上司らがろくに確認しないまま、企画を通してしまったということで、「ニュースの提案チェックシート」なるものが新たに導入されました。企画書を読んだ後に、これでチェックするのでしょうかね。二度手間になるだけのような気がします。チェックシートを導入した途端に、企画書をきちんと読むようになるとは思えない。おざなりにチェック覧に印つけて済ませるケースが続出しそう。チェックシートのためのチェックシートが必要になるかもしれません。

※ニュース企画用のチェックシートといえば、「ニュースの確認シート」というものがすでにあるのです。これは2022年にBS1「河瀬直美が見つめた東京五輪」がBPOから「重大な放送倫理違反」を指摘された際に、再発防止策の一環としてNHKが新たに導入したものです。
さらに遡ること2015年に、クローズアップ現代の「出家詐欺」報道がやはり重大な放送倫理違反だと判断された時にも、NHKは「取材・制作のチェックシート」と「匿名での取材・制作のチェックシート」を導入しています。いま現在NHKの制作現場では、いったい何種類のチェックシートがあるのでしょうね?

この手の「チェックシート」は、導入当初は真面目に運用されても、徐々に趣旨が忘れ去られて形骸化していくものです。テレビ局の人たちはただでさえ忙しいのに、書類ばかり増えたら面倒なだけでしょう。ほとんど読まずにチェックをつけてハンコ押していても、おかしくはありません。

チェックシートで虚偽捏造や誤報が防げるなら、BPOは要らないですよ…

NHKは問題が発生するたびに、新たなチェックシートを導入しますが、しばらくするとまた同じ過ちを繰り返す。つまり効果がないということです。

シートはどこまで増えるのでしょうか。いったいシートが何種類になったら、それが無意味であることに気づくのか(すでに気づいていて、確信犯的にやってるのかもしれないですけど)。チェックシートがあることでかえって、確認作業が雑になっている可能性すらあるのに。

再発防止効果の検証がされているのか、怪しいものです。 「とりあえずチェックシート増やしとくか」という思考停止に陥っている可能性が高い。再発を防止するどころか、逆効果かもしれないのに、いっこうに改まる気配はありません。


2. はた迷惑な「にわかディレクター」の養成

今回はなんともう一つ、チェックシートが加わりました。「取材提案チェックシート」といいます。取材経験に乏しい編集マンやカメラマンが企画提案する際に、リスクチェックとサポートのために使うらしい。この仕組みがあれば「職場内での経験やノウハウの共有、サポート」は万全だと言わんばかりですが、本当に大丈夫?

そんなに骨を折ってまで、専門外のスタッフに取材をさせる意味はあるのか?という、根本的な疑問が湧き上がってきます。経営計画にもあるように、NHKは職員の専門性を売りにしている。だったらそれぞれの持ち場で専門性を発揮すればいいわけで、専門外の業務にあえて手を出すまでもありません。無用なリスクとコストを招くだけです

百歩譲って、門外漢の未経験者に場数を踏ませたいのであれば、「ワクチン被害」という深刻なテーマは避けるべきでしょう。他にいくらでも「暇ネタ」があるはずです。

NW9では、ワクチン被害者遺族を取材対象にするという、難易度の高い取材であるにも関わらず、ほとんど取材経験のない映像編集の職員が担当しました。前々回の記事で書いたように、私はインタビュー映像を文字起こししながら何度も繰り返し見ましたが、この担当者のふるまいはインタビューアとして適切ではありませんでした。

NW9の取材担当者は取材経験が浅いうえに、コロナ関係の遺族への取材も初めてでした。そのような人間がいきなり現場に出て遺族にインタビューしたところで、うまくいくはずがありません。質問の仕方が悪くてご遺族が答えに詰まってしまい、カメラマンが横から助け舟を出す場面もありました。取材担当者の無神経な言動に、気分を害したご遺族もおられます。

専門外のスタッフを “にわかディレクター” に仕立てて、深刻な問題に苦しむ人や立場の弱い人のもとに送り込むのは、無駄な努力どころか有害です。取材先に迷惑がかかるのはもちろん、今回のように重大な権利侵害をされたら目も当てられない。看板番組の制作に関わることやディレクターになることが、出世の入口なのかもしれませんが、外部の人間をステップアップに利用するのは許されることではありません。


3. 試写をするほど真実から遠ざかる

チェックシートと並んで再発防止策の柱となるのが「試写」です。通常の試写の他に、別部署のスタッフや専門性のある人たちが参加しておこなわれる「複眼的試写」があります。NW9では、番組最後の短い映像(エンドV)であることから、複眼的試写がおこなわれませんでした。今後は放送時間に関わらず、内容次第でこの試写を実施することになりました。

NHKでは番組がBPO案件化するたびに、複眼的試写の対象を拡大してきました。2022年にBS1の番組が虚偽字幕で問題になった時にも、「複眼的試写を実施しなかったためにチェック機能が働かなかった」と見なして、これを問題発生の一因としています。はたしてNHKのこの見解は正しいでしょうか? 試写をすればヤラセも捏造も虚偽も、未然に防げるのでしょうか?

答えはNOです。試写ではこれらの問題は少しも解決できません。

試写もチェックシートと同じで、回数を増やせばいいというものではない。むしろ弊害の方が大きいとすら言えます。何度も試写を重ねていくにつれて、どんどんオリジナルから遠ざかっていき、最終的に出来上がったのが元の話とは似ても似つかない代物だった、ということがあるのです。私はクロ現でこれをやられました。試写が虚偽・捏造報道を生むメカニズムについては、以前にnoteの記事にしています。

番組の編集責任者など、エライ人たちが参加するのは最終段階の試写で、NHKでは「編責試写」などというようです。そこに至るまでに、取材担当のディレクターや映像編集の担当者、直属の上司(デスク)などが試写をしながら編集していきます。この段階で事実と異なる捏造・改変がされていたら、もうお手上げなんですよ。その後で「編責試写」をやろうが「複眼的試写」をやろうが、エライ人たちはおかしな点にはほとんど気づかない。それ以前の編集段階で巧妙に手を加えられているからです。だから、試写にチェック機能なんか無いんです。

NHKは2022年に、BS1スペシャル「河瀬直美が見つめた東京五輪」 について、BPOから「重大な放送倫理違反」の判断を下されています。この時には虚偽の字幕が問題視されました。BPO倫理委の委員会決定が出た直後、ある地方紙は驚きをもって次のように書いています。

耳を疑うのは、内部で試写を重ねるごとに字幕が少しずつ見直され、逆に事実をゆがめる方向に変わったことだ。

「神戸新聞NEXT」2022年9月16日の社説より

当時のNHKの報告書には、ディレクターとその上司が試写を重ねるたびに字幕が改変されていく様子が書かれています。事実確認も内容の精査もなく、恣意的に字幕に手を入れている。これは明らかに意図的な捏造です。番組の責任者が試写に参加する頃には、VTRに登場する人物の属性も発言内容も、事実から大幅に乖離していました。


4. 試写の真の狙いは何か

試写によって虚偽・捏造が強化されるのなら、いったい何のために試写はあるのでしょうか?

実は試写の目的は、「事実確認」でも「不正防止」でもありません。真の狙いはリスク回避とは別のところにある。視聴率を稼げるか?という点を見ているのです。重要なのは、視聴者の耳目を引くような、わかりやすくてセンセーショナルな仕上がりになっていることなのです。

NW9のエンドV作成にあたっては、総勢9名で試写が2回おこなわれました。1回目の試写では、参加者から次のような指示・指摘がされています。

・編集責任者は、もっと前向きな発言はないのか、何人かのインタビューを落としてもいい、遺族も前向きになっているといえる言葉があるなら使ってほしい、と担当者と担当デスクに修正を指示した。

・1つの団体だけを紹介すべきではないという指摘があり、表示しないことになったが、その場で、あるいはその後に、当該団体がどのような団体なのか調べたスタッフはいなかったという。

BPO放送倫理検証委員会「NHKニュースウォッチ9 新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族をめぐる放送についての意見」p.8-9より


NHKはニュースやドキュメンタリー番組で、「つらい出来事を乗り越えて前向きに頑張っている」ストーリーを作りたがる傾向がありますが、遺族に「前向きな発言」を求めるのは酷な話です。インタビューの場でも、担当者がその方向に無理やり話をもっていこうとして、遺族の不興を買っていました。

オンエアされた映像を見ると、遺族の発言を不自然な箇所で切り取っているのがわかります。

修正前:「被害者、遺族の人たちの声を、実際に届けていただきたい」
修正後:「遺族の人たちの声を、実際に届けていただきたい」

団体名「NPO法人駆け込み寺2020」も削除され、エンドVは試写での指示通りに修正されました。コロナワクチン被害者遺族であることを隠蔽するような編集の仕方です。遺族の本意とズレていることは言うまでもありません。


5. 誤字すら見落とすお粗末な試写

BPOの意見書でも指摘されていましたが、編集責任者などエライ人たちが前もってインタビューの文字起こしに目を通していれば、試写の場で矛盾に気づいたはずです。つまり、エンドVであたかもコロナウイルス感染死遺族であるかのように紹介されている人たちが、実際にはコロナワクチン接種後死遺族であって、彼らが真に訴えたいことがエンドVでは全く伝わらない、番組の趣旨とは噛み合っていない、ということです。

試写に参加した編責の一人は、文字起こしは読んでいないと否定しました。ところが、読んでいるところを複数のスタッフに目撃されています。おそらくこれは編責が責任逃れについたウソなのでしょう(同上BPO意見書p.9)。

現場の人間から上役までみながグルになって、虚偽報道に加担したとも言われています。口裏合わせの密談をするには、試写の場はうってつけですよね……。そのような不正を検出したり、防止したりする仕組みが必要ですが、今のところ試写の段階でそれが組み込まれている様子はありません。

かりに編集責任者がウソをついておらず、本当に文字起こしを読んでいなかったとしても、その怠慢は責められるべきです。準備不足のまま試写に臨んでも、矛盾点を見抜けるわけがないのです。

リスク回避のために試写をおこなっても、そこに参加する人間が主体的かつ真摯に取り組まなければ、チェック機能は働きません。どんなにエライ人を連れてこようが、別部署から人を呼ぼうが、準備不足だったり居眠りしたりしては意味がない。専門知識のあるスタッフを参加させても同じことです。

試写をリスク回避のためのチェックの場と位置づけるのであれば、おかしな点があったら担当者に詳しい説明を求め、それでも足りなければ裏付けのための追加取材を求める必要があります。ところが、9人がかりで試写をしていながら、重要な事項について踏み込んだ確認がなされなかった……それが重大な結果を招いたと、BPOは指摘しています(BPO意見書p.14)。先に挙げたBS1スペシャル「東京五輪」虚偽字幕問題でも、これと同様の事態が起こり、BPOに同じような指摘をされています。

2年前の再発防止策は功を奏することがなかったのです。


試写のチェック機能が働いていないことを示す証拠を以下に挙げて、この記事を締めくくります。

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2023年4月19日放送のクローズアップ現代「広がる女性のひきこもり」より。「現在」の日常を撮った映像に、「過去」の体験談を別場面で語った音声+テロップをかぶせている。過去の話なのに現状がそうであるかのようにミスリードさせる。このような編集が出演場面全体にわたってほどこされた

これは私がクローズアップ現代に出た時のVTR映像の一部です。テロップに明らかな誤字があり、「強迫」とすべき箇所が「脅迫」になっている。
試写を何度もしたことは、関係者から直接聞きました。それでもこの程度の誤字すら見落とされるのです。


⑬本気の再発防止策がNHK崩壊を食い止めるへ続く


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ニュースウオッチ9⑫反省しないNHK、再発防止策のウソ|はむた@捏造報道と闘う会
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