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福島の甲状腺検査について


 現在、福島県では、2011年の福島第一原発事故当時18歳以下であった子どもたちを対象に、甲状腺超音波検査を実施しています。学校世代の対象者には学校の授業時間を利用して、学校検診と同じように行われています。
 しかし、この検査は学校検診として行われている視力検査や尿検査とは異なり、子どもたちに重大な健康被害を起こしうる検査です。学校で行われていたとしても、検査は義務ではなく、受診は検査を希望した人のみであり、受けないことで何らかの不都合が生じることはありません。
下記の説明をお読みになって、受診するかどうかご判断ください。

1.福島の被ばくの状況についての国際的な専門家の見解

国連の放射線専門調査機関であるUNSCEARは、福島原発事故での放射線被ばくによる住民の健康影響は考えにくい、という報告を出しています。すなわち、福島県の子どもたちの健康状態は日本の他の地域の子どもたちと何ら変わりがないということです。したがって甲状腺の病気を心配する必要はありませんし、他の地域で実施されていない甲状腺の検査を受ける必要もありません。

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UNSCEAR最終報告では、2000本ほどの論文を審査、うち約500本が参照されている。

2.無症状の段階で超音波検査を受けても子どもたちに健康上のメリットはありません

子どもの甲状腺がんは非常にまれな病気で、今までは首に大きなしこりがある等、かなり進行した状態で発見された後に治療されてきました。しかし、子どもの甲状腺がんは性質がおとなしいので、そのような状態で治療を開始しても死亡することはまれでした(生涯生存率は95%以上です)。このようなおとなしい性質のがんを超音波検査で超早期に見つけることで死亡率の低下やその後の経過の改善につながる、というデータはありません。すなわち、受診することでの健康上のメリットが得られるという証明はされていません。

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5年生存率100%、30年生存率99% (甲状腺乳頭がん)

3.甲状腺超音波検査は過剰診断という深刻な健康被害を伴う検査です

甲状腺がんのうち症状が出るのはごくわずかであり、ほとんどの甲状腺がんは小さいままで一生涯健康に影響を与えません。このような無害ながんを診断してしまうことを過剰診断、といいます。未成年で超音波検査を受けた場合、見つかるがんの大半が過剰診断であり、それ以外も何年も先に発見され手術をしても間に合ったがん(前倒し診断のがん)であると考えられます。このような性質をもつ若年者の甲状腺がんに対して甲状腺超音波検査を30歳まで受け続けると、200人に一人が過剰診断の被害を受けると推定されています   (*1)。

過剰診断の場合、本来受ける必要のなかった手術を受けてしまうリスクが発生します   (*2)。

実際、これまで福島の甲状腺検査で甲状腺がんと診断された子どもたちの大半が既に手術を受けています。また、「がん」という病名を子どものうちにつけられてしまうことが様々な問題を起こします。生活の質(QOL)は、他の生死にかかわるようながんと診断された子供たちと同程度に低下します。たとえば、がんにかかっている子ども、とみなされることで、社会的に様々な不利益を被るリスクがあります。また、通院の負担、健康保険に入れない、ローンが組めない等の経済的不利益が発生します。また、がんと診断されること自体が、再発の不安におびえるなど本人や保護者に大きな心理的負担を与えます。

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POFF 『みちしるべ 福島県「甲状腺検査」の疑問と不安に応えるために』より

仮に遠い将来に症状が現れるようながんの前倒し診断であったとしても、進学・就職・結婚・出産などの重要なライフイベントを乗り越えて落ち着いた後に診断・治療しても間に合ったはずのものであれば、早く見つけてしまうことがかえって害になってしまいます。

このような問題点を考慮して世界保健機構(WHO)のがん専門部会であるIARCは、「たとえ原発事故後であっても甲状腺の一斉検査(スクリーニング)はするべきでない」という提言を出しています。

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福島では放射線量が少なかったので、今後も放射線による健康影響は見られないとUNSCEARが報告

4.検査を受けても放射線が健康に影響しているかどうかはわかりません

原発事故による放射線によって健康に影響がでているかどうかは甲状腺超音波検査を受けても個別にはわかりません。甲状腺のしこりがあるかどうかが分かっても、それが放射線によって生じたものかどうかは、超音波検査ではわからないのです。また、住民の放射線被ばくの量が少なかったため、仮に住民全員を甲状腺超音波検査で調べたとしてもそのデータを使用して放射線の影響の有無を科学的に判断することは困難であり、調査自体が無意味であることを、このような調査の専門家が指摘しています。

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甲状腺のしこりが放射線によって生じたものかどうかは、超音波検査ではわからない
これだけ少ない放射線量では、放射線影響について調べるのも困難

5.保護者の不安を解消する目的で子どもに検査を受けさせることについて

今まで述べたように、無症状の子どもに甲状腺超音波検査を受けさせることは、子どもにとっては健康上の害が利益を上回ります。子どもたちの健康を最優先に考えれば検査を受けることは推奨されません。一方で、保護者が心配だから、という理由で子どもに検査を受けさせることについては、そのことが引き起こす問題点をよく考える必要があります。保護者が心配のために子どもに検査を受けさせ、甲状腺に異常がなかったとしても、放射線の影響がなかったという証明にはなりません。何らかの所見があったら、放射線の影響かどうかはわからないにも関わらず、放射線の影響が生じたと懸念することが起こります。そしてがんが発見された場合には、子どもたちの人生を変えてしまうような害が生じます。保護者の心配で検査を受けさせることは、このように医学倫理上の問題をも含んでいるのです。

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その検査、本当にこどものことを思って、メリットデメリットを調べられるだけ調べ、考えた上で? 自分の不安解消のための、押し付けになってない?話し合っていますか?子どもは親を思いやっている。


補足

*1 検査においては、過剰診断を防ぐために小さな腫瘍は診断しない、等の対策がとられていますが、そのような対策の有効性を証明するデータはまだありません

*2 手術を受けた場合、甲状腺が出すホルモンが不足し、一生涯ホルモン剤を飲まなくてはいけなくなることもあります。また、まれではありますが、声が出せなくなる、血中のカルシウムが不足する、といった手術の合併症がでたりすることもあります。

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甲状腺ホルモンやカルシウム不足を補う薬が一生必要となる可能性(通院も続きます)


子どもを過剰診断から守る医師の会(SCO)作成


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こどもたちを甲状腺がんの過剰診断の害から守ることを目的に結成された甲状腺専門医を中心とした医療者の会です。過剰診断に関する役立つ情報をつぶやいていきます。 略称 SCO
福島の甲状腺検査について|Mamoru Koujyo
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