折り紙 美しさを超えて
- 2023年08月03日
長野県大町市に住む折り紙作家 布施知子さん。
これまでに制作した作品は国内だけでなく、世界中から評価され注目を集めています。
今、制作した折り紙の技術が教育や産業などさまざまな分野の可能性を広げています。
彼女の折り紙の世界を取材しました。
「無限折り」「螺旋」「コイル折り」 世界的に評価を受ける作品たち
流れゆく川を表現した、この作品。
実はこれ、20メートルの1枚の紙から出来ています。
無数の折り目を、複雑に重ねる「無限折り」という技法で作られました。
制作したのは大町市に住む折り紙作家の布施知子さん。
37年前に、自然に囲まれた山あいの古民家に移住し、個性あふれる作品を世に送り出してきました。
何重にも細かく規則的に折り続けることで生み出す「螺旋」。
筒状にした紙を、つぶしながら折り込んだ「コイル折り」
その作品はヨーロッパ各地で個展が開かれるなど、海外からも高い評価を受けています。
布施さんが折り紙をはじめたのは、小学2年生のころ。
長期入院していた時、薬の包み紙を折ることに夢中になったのがきっかけでした。
とりあえず折ってみるというところから始まっているので、面白い折り方を偶然見つけるとき、楽しい。興味の赴くままにやっているのかな。
芸術を超え 工業製品としても注目
布施さんのアイデアは、芸術だけでなく工業製品にも活用されています。
防水加工された紙を使い、お皿としても使うことが出来るこの製品。
折り畳んだ状態で、水を入れても開かずこぼれません。
その秘密は折り目の角度にあります。
折り目を垂直に入れると、中にものを入れても開く力が外側に向けて広がり開いてしまいます。
そこで布施さんは折り目を斜めにすることにしました。
外へ開こうとする力がカップの中は時計回り、外側は逆方向にかわり開きません。
布施さんは折り方や角度の違う試作品を何度も作り、製品化にこぎつけました。
数を折ってみてだんだんそこに収れんしていったという感じ。
面白いなと思って、「キャー、できた」みたいな
布施さんのアイデアで、多い時には月に30万個も発注されるヒット商品になりました。
布施さんと共に商品化を手掛けた食品容器製造業者の大原さんはその発想力に驚かされたと言います。
布施さんの折り紙は 教育現場にも
布施さんの作品は学術的にも注目を集めています。
この日は数学教師などで作る教育団体が講演を依頼。およそ50人が参加しました。
布施さんの折り方には、数学的な美しさがあるというのです。
折り始めの部分は直角二等編三角形。短い片を1とすると、長い辺の比は三平方の定理によってルート2となります。
さらに折り進めた部分は中心から伸びる直線がルート3、4、5と綺麗に並んでいるのです。
参加者たちは折り紙を授業に活用することで子供たちに数学を身近に感じてもらおうと考えています。
参加者の高校数学教師
すごくわかりやすかったと思います。
数学やっているものでも気づかされることがすごく多かったと思いますね。
数学教育協議会 委員長 伊藤潤一さん
「図形というのは触ったり見たり動かしたりする中で少しずつ分かってくるんですよ。
算数や数学の授業を補完するすごく重要な手段ではないかと思います」
ただ夢中に これからも折り続ける
あらゆる分野で可能性を広げる折り紙作品。
布施さんは、今日も1枚1枚夢中で折り続けていきます。
自分自身が一番驚きたいというか。こんなのが出来ちゃったんだという。
折られていく線に従っていって綺麗なものができたらうれしいですね。