ニュースウオッチ9⑩かみ合わないインタビュー
※⑨「証言の食い違い」からの続き/
NW9の担当者は騙し討ちのように遺族会から取材許可を取り付け、取材日当日を迎えました。インタビューの場では何が起こっていたのでしょうか?
遺族会のYoutubeチャンネルには、インタビュー動画が全編公開されています。文字起こしをしながら見てみました。
具体性を欠く担当者の発言
担当者は取材を始めるにあたって、3人の遺族の前でこんな発言をしています。
「全国に、こういう声があるんだってことを届けることで、喜んでいる場合じゃないってことを伝えたい。」
「このまま忘れられてしまうことを……許しちゃいけないっていうか、そういう気がしますね」
不自然なほど具体性が欠けています。「こういう声」とはどういう声なのか? 「忘れられてしまう」ものは何なのか? その内容が語られることはありませんでした。インタビューに先立って担当者が遺族会に送付した、取材依頼メールや取材要項(企画書)と同じ傾向が見られます。
具体的な内容を口にすると、「話が違う」と言われて取材中止になってしまうからでしょう。事実、ご遺族の方はBPOのヒアリングで、ワクチン問題を扱わないと聞いていればインタビューは継続するはずがないと、証言しています(BPO放送倫理委員会決定第44号 p.7より)。
誘導尋問の失敗
もう一つ気になったのが、「担当者は遺族に何を言わせたかったのか?」ということです。インタビューでの質問は的外れなだけでなく、誘導尋問的でもありました。
「満員電車でマスクしてなかったりですとか、コロナなんて無いよ、みたいな声が聞こえてきたりですとか確かになりつつあると思うんですけど、その辺りってどう思われますか?」
「街を行く人々というか、社会と言いますか、5類になって喜んでおられる人たちの、マスク外して、過去の事だとかって思われている人たちに対しては、 どう思われますか?」
5類移行によって「マスクが外せた」と喜ぶ人、コロナ禍を過去のものとして忘れたがっている人がいるという前提で、そういった人たちを責めるような口ぶりです。「どう思われますか?」と質問する形をとっていますが、特定の方向への誘導が感じられます。5類移行で日常を取り戻し、コロナ禍を忘れて「喜んでいる」世間の人々を批判するよう、仕向けているのです。
おかしいと思いませんか? 批判の矛先が間違ってはいないでしょうか?
インタビューに答えた遺族は、ワクチン被害を訴える会に属しています。その会が批判する対象は何よりもまず、ワクチン接種を推進した国と自治体であって、「5類移行で浮かれている世間の人々」ではないのです。
担当者とご遺族の一人、佐藤さんとのやり取りには、その矛盾があらわになっています。とても印象的なシーンなので、少し長いですが以下に引用します。
担当者:未来に望むこととか、伝えたいメッセージありましたら、お願いします。
佐藤さん:私の母もワクチンを打っていなければ、今でも元気に過ごしていたと、私は思っています。打つことによって救われた命もあったのかもしれないですけれども、あるかもしれないんですけれども、やっぱり苦しんでいる人、副反応だったりとか、亡くなった方もたくさんおられるのを、もっと世の中の国民に知らせるべきだと、私は思います。そこが欠けてる。そして、そういう被害と言いますか、そういう人たちへのフォロー、対応っていうのを、国がしっかりすべきだと私は思います。
担当者:これでその、5類への、その、フタをされてしまったような感じがすごいしてしまって、佐藤さんおっしゃられた、欠けているもの、欠けているどころか無かったことになる。もしかしたら5年もせぬうちに、そうなってしまう世相になっちゃうような気もしていて……。僕らが、我々メディアが伝えるべき、もっともっとこういうことを伝えてほしいな、っていうのありますか?
佐藤さん:本当の声を伝えてほしいです。ワクチン反対遺族の会に私は属しています。私が体験したこと、本当に目で見たことを、私は話しているんですね。だけどそれでもまだ、「ほんまなんか?」っていう声もやっぱり届けられる。そうじゃなくって、もっとこう、そういうことあった、事実だっていう被害者、遺族の人たちの声を、実際に届けていただきたい。※
担当者:け、結果として、結果として、なんか、それでもまだ満員電車でマスクしてなかったりですとか、「コロナなんて無いよ」みたいな声が聞こえてきたりですとか、確かになりつつあると思うんですけど、その辺りってどう思われますか?
佐藤さん:(無言)
担当者:質問が……すみません、考え直していいですか?
伝えたいメッセージは何か? と聞かれた佐藤さんは、ワクチンの被害をマスコミが伝えること、国が被害者への対応をすることを主張しています。この答えはワクチン被害者遺族としてしごくまっとうなものですが、担当者の期待通りではなかったようです。担当者は性懲りもなく、5類がどうのとか、フタをされて無かったことになるとかいうように、先ほどと同じような誘導尋問的な質問を試みます。企画書のストーリーに沿って番組を作らなければならないからです。
ところが、佐藤さんはそれに屈して主張を曲げることはしませんでした。被害者の本当の声を届けてほしいと、重ねて訴えています。担当者は状況をコントロールできないことへの動揺を見せつつ、同じような質問を繰り返します。佐藤さんはついに押し黙ってしまいました。
矛先を逸らす忖度報道
こんなに無様なインタビューも珍しいと思うのですが、この後すぐにカメラマンが助け舟を出しています。その質問もやはり欺瞞的なものでした。
国とか自治体とかって対応ももちろんそうですけども、普通に暮らしてる、我々と同じように暮らしてる人たちにとっても、このコロナっていうものはどういう意識、意識というほどのことではないのかもしれないですけども、多分いろんな、そういったあったことっていうのをどういう風に心に留めておいてほしいとかっていうのは、何かあったりされますか。どうですか?
カメラマンは担当者の発言を噛み砕いて、より詳しく表現しました。それによって、先行する質問でぼかされていた意図が、前面に出てきているのです。
制作側の本音は、「国や自治体の対応は批判するな。その代わりに世間一般の風潮を叩いてくれ」ということなのです。遺族の批判の矛先が世間一般へと向かえば、国や自治体の責任は不問にされ、ワクチン問題は見えなくなる。制作側にとっては好都合です。
別の遺族が自治体や国の対応のひどさを訴えた時にも、担当者は「ちょっとその、自治体側の対応については、また改めてしっかり…」などと言って、3度も話をさえぎっています。国や行政の責任は遺族にとっては問題の本質であるのに、聞く耳を持とうとしません。
マスコミの偏向報道について指摘し、ネットでたくさん流れている情報がテレビではまったく無いと話したご遺族もおられます。かなり的を射た指摘だと思うのですが、その部分が番組で取り上げられることはありませんでした。
エンドVでの遺族の位置づけ
そもそも「コロナ遺族」を番組に出そうと考えた動機からして、不純だったのではないか…… 私はそう疑っています。「コロナ禍での悲しみや嘆きの声を決して忘れてはならない」などと、担当者はもっともらしいことを言っていますが、おそらく建前にすぎない。真摯な問題意識があったようには見えません。
5類移行で明るさを取り戻した街の光景とは対照的な、遺族の深い悲しみを描くことで、演出効果を狙っているのでしょう。制作側にとってワクチン被害者遺族会の人たちは、番組作りの道具であり素材にすぎないのです。
だから、「ご遺族にはワクチンの副反応の告発や政府や行政への批判はしないてほしい。台本に沿ったコメントをしてくれればいい」という腹積もりだったのではないでしょうか? 世間一般の風潮を責めるようなコメント「マスク外して喜んでるのはけしからん」「コロナ禍を無かったことにするな」を欲しがっているのが、インタビュー動画を見れば明らかです。それは遺族会の方々の意向を捻じ曲げることに他なりません。
NW9の制作者たちが人の死と遺族感情、ワクチン問題を軽く扱っていることには、大いに問題がありますね。ご遺族のインタビューを特集番組ではなく、「エンドV」と呼ばれる番組最後のごく短いコーナーで取り上げたことにも、その姿勢が現れています。当該回のエンドVを見る限り、ちょっとした「イメージ映像」のような印象なのです。
逆に言うと、短いコーナーだからと軽く見て、配慮を欠いた番組作りをしていたのでは?とも考えられます。いずれにせよ、軽率であったことは否めません。
【追記】ワクチンについての質問
「ワクチン」という言葉をかたくなに使わなかった担当者が、インタビューでは「ワクチンをどう思うか」と質問しています。これに対して遺族の方々は、ワクチンについても、接種を推進した国やマスコミについても、不信感をあらわにしています。
担当者は聞くだけ聞いて深堀りはしていないので、何のために質問したのか、意図がよくわかりません。担当者が「ワクチン」の語を口にしたのは、インタビュー中でその箇所だけです。番組ではこの部分がまったく使われていません。
ワクチンについて一応質問しておけば、アリバイ作りになるとでも思ったのでしょうか? あるいは、的外れな質問を繰り返す取材姿勢を不審に思う遺族を、油断させるためだったのか?(実は深く考えないで、何となく質問しただけかも……)
※⑪に続く
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