(上手に悩むとラクになる)「睡眠キャンセル」に要注意
今年、SNSで「風呂キャンセル」という言葉が話題になりました。本当は風呂に入りたいのにあきらめて寝てしまうことでした。
すると今度は「睡眠キャンセル」という言葉が登場しました。もろもろの事情で寝ようとしないことを指していますが、これは注意が必要です。睡眠時間を削っているのですから、長期間続くと、明らかに体に悪いのです。
私が専門とする注意欠如・多動症(ADHD)の方々も、さまざまな睡眠の問題を抱えています。ADHDの大人の方々に「睡眠キャンセル」の実情を尋ねてみると、いくつかのタイプがありました。対策もご紹介します。
まず、「もっと楽しみたい過活動タイプ」。やりたいことが多すぎて寝るのがもったいない人たちです。朝から晩までみっちりとスケジュールを入れていて、「24時間じゃ足りない」と思わせるタイプです。
このタイプには、24時間の予定を書き込めるバーティカル手帳や円グラフなどをみせて、「ここに入る分だけの活動を」と視覚的に示すといいでしょう。
次に、「やるべきことが終わっていない無計画タイプ」。いざ寝ようとすると、今日中にやるべきことが終わっておらず、寝たいのに寝られないというタイプです。
このタイプの方には、その日にやることを「ToDoリスト」にしてもらいます。それぞれのタスクを、日々のルーチン(朝食、通勤、昼休み、夕食後のお風呂など)とセットにしてこなすようにすると、忘れにくいでしょう。
次は「明日を迎えたくない現実逃避タイプ」。仕事が嫌だとか、気まずい相手と顔をあわせるのが嫌だとか、明日への嫌悪感から逃れたい気持ちは誰にもありますね。その行きすぎた例がこのタイプになります。
このタイプの方には、どんなことが不安で怖くてつらいのかを聞いていきます。考えないようにし続けるより、勇気を出して向き合い、ひとつずつ対策を考えていく方がマシなのです。
最後に「まだ眠くない過覚醒タイプ」。ブルーライトやカフェインが入眠を妨げることはよく知られています。こうしたものをたくさん見たり摂取したりしている方は、取り方やタイミングに注意しましょう。
睡眠の問題が気になる場合には、医療機関を受診して、診断を受けてみることもおすすめします。(臨床心理士・中島美鈴)
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