日本ではこれまで大規模なデモが何度も行われてきました。デモはその当時の政策や情勢に対しての抗議であり、今の日本を形作ってきた軌跡でもあります。
時代を知るためには、デモの情報から読み解くことも一つの手段と言えます。
日本ではこれまでにどのような大規模デモが行われてきたのか、歴史の背景などともに振り返っていきます。
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デモ活動とは
デモとは「デモンストレーションの略称であり、特定の意思や主張を持った人が集まり、集団でその意思や主張を他に示す行為」です。
つまりデモは、テロや暴動と違い主義主張はあるものの、それらを行進やストライキなどで示すため、暴力的な行為には及ぶことは少ないとされています。
また日本を含め多くの国ではデモを行うとき、警察の許可を必要とします。
集会や行進では一般道などを占有することになり、暴動などに発展する可能性があることから、警察に許可を受けたものでなければ取締りの対象となります。
これは各都道府県の条例などで定められているため、デモを行う場合は事前の確認と申請は必須となります。
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日本で過去に行われたデモ活動とは
デモは情勢などの変化や政策への反対など様々な考えや思想のもとで行われます。
日本でも、許可の範囲内でデモを行うことは認められています。そのため過去にも様々なデモが行われてきました。
日本で過去に行われた代表的なデモを紹介します。
1945年米よこせ大会
第二次世界大戦後、アメリカの統治下にあった日本では深刻な食糧危機に陥っていました。
その状況にたまりかねた大阪の鴻池新田の主婦たちが、1945年10月に米穀配給公団に押し掛けて遅配・欠配分の米を要求しました。
この騒動は「米よこせ運動」と呼ばれており、その後各地に波及し、1946年には東京都世田谷区で「米よこせ大会」が開かれています。
さらに1946年5月19日には皇居前広場で「飯米獲得人民大会(食糧メーデー)」も開かれ労働者や主婦らが集結して食糧事情の現状を訴え、人民民主政府樹立を要求しましたが、「暴民デモ許さず」とのマッカーサーの声明により運動は鎮静化されました。
(出典:消費者庁「入門!消費者問題の歴史」)
1960年安保闘争
1959年3月、日米安保条約の改定交渉が本格化する中で、日本社会党や日本労働組合総評議会などにより「安保条約改定阻止国民会議」が結成され「1960年安保闘争」が始まりました。
1952年に結ばれた日米安全保障条約が1958年から1960年に行われた改定の過程で、改定後の安全保障条約(新安保条約)に対して、国民が反対運動を行いました。
新安保条約では相互と協力が追加されており、米軍基地の日本への設置権利や日本政府の要請があれば日本での内乱への介入が可能であるという内容が盛り込まれていました。
このような内容に対する反発などから、大規模な反対運動が展開されることとなりました。
(出典:警察庁「社会情勢とともに変貌する大衆・労働運動」)
1968年全共闘運動大学紛争
1968年全共闘運動大学紛争はその前提として、日大闘争(日大事件)が語られます。
日本大学では当時、学生自治が認められていませんでした。その中で大学側の不正が発覚したことで学生の不満があらわになり、学生による抗議デモが行われました。
さらに東京大学では学生への不当処分を皮切りに、大学側に対する抗議活動が行われるという東大紛争(東大事件)も勃発。
これら2つはそれぞれ全共闘運動として、全国の大学へ広がっていきました。そして1968年には67大学、翌年は127大学で紛争が勃発しています。
1969年8月に「大学の運営に関する臨時措置法」の施行を契機に学内外の努力で、紛争は沈静化していきました。
(出典:文部科学省「七 学生運動と学生活動」)
1995年沖縄県反基地運動
1995年9月に起きた「米兵による女児暴行事件」や駐留軍用地特別措置法案審議、普天間基地代替ヘリポート建設などをめぐり、地元住民などが反基地運動の集会を行い、連帯する集会やデモが全国で実施されました。
また米海兵隊が実施していた「県道104号線越え実弾砲撃演習」の本土移転に反対する集会やデモなどが全国で開催されるなど、反基地運動が全国規模で行われていました。
(出典: 警察庁「社会情勢とともに変貌する大衆・労働運動」
2011年以降は反原発デモが活発化
2011年3月11日に起こった東日本大震災によって、福島原発で事故が発生しました。
原発事故を受けて全国各地で開催された集会やデモは、組織的な運動が展開されました。また、幅広い世代の市民がツイッターなどのソーシャル・ネットワーキング・サービスによる呼び掛けで集まり、盛り上がりを見せました。
参加人数が多かった主な集会やデモについて、以下の表にまとめました。
開催日 | デモや集会に至った経緯 | デモや集会が開かれた場所 | 主催者発表参加人数 |
2012.3.11 | 福島第一原子力発電所事故から1年経過したことを節目として各地で反原発を訴える集会やデモが行なわれた。 | 福島県郡山市 | 約1万6,000人 |
日比谷公園 | 約1万4,000人 | ||
国会議事堂周辺 | 約1万人 | ||
2012.5.5 | 国内で唯一稼働していた北海道電力泊発電所3号機が定期検査のため停止したことで、国内の原子力発電所が全て停止。都内で集会、 デモが行われた。 | 東京都内 | 約5,500人 |
2012.7.16 | 国会議員や著名人、全国の労働組合などが多数参加して大規模な集会やデモが行なわれた。 | 代々木公園 | 約17万人 |
2012.6.29 | 3月 29 日以降、毎週金曜日、首相官 邸前で、首都圏を中心に反原発 集会、デモなどを主催しているグルー プや個人によるネットワーク組織が抗議行動。その中でも6月29日は、政府が関西電力大飯発電所3、4号機の再起動を正式に決定し たことで、参加者が集まった。 | 首相官邸前 | 約20万人 |
2012.7.29 | 「7.29 脱原発国会大 包囲」と題して、「原発反対」、「子供を守れ」などと訴える集会、デモが行 われた。警察官に暴行した男2人が、公務執行妨 害罪で現行犯逮捕。 | 国会議事堂周辺 | 約20万人 |
(出典:警察庁「原子力政策をめぐる動向」)
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2013年特定秘密保護法反対デモ
2013年12月に特定秘密保護法案が成立。
この法律ではテロリズム防止措置などを定めていますが、特定秘密保護という名の如く、公になっていないものにつき、漏洩することで国の安全保障が著しい支障を与える恐れがある情報については行政機関の長が秘密指定を行い、機密守秘とする内容になっています。
これに対して憲法に違反しているとの反発が起こり、廃案を求める抗議集会やデモが行われ、国会議事堂に対して行進が実施されています。
(出典:内閣官房「特定秘密保護法関連」)
(出典:参議院「憲法違反の特定秘密保護法の撤廃に関する請願」)
2014年集団的自衛権をめぐる動向及び反戦・反基地運動
集団的自衛権をめぐり、2014年4月から全国各地で反対集会やデモが行われました。
これは集団的自衛権が解釈によって憲法にある第9条に違反しているとの考えなどから反発の声が挙がり、全国各地での抗議デモに発展しています。
また沖縄県にある普天間飛行場を名護市辺野古へ移設する問題をめぐり、海底ボーリング調査の中止などを訴え、移設先のキャンプ・シュワブゲート前などで抗議行動が行われています。
(出典:警察庁「第5章 公安の維持と災害対策」)
2015年平和安全法制をめぐる動向
平和安全法制とは日本国内および国際社会の平和および安全のための切れ目のない体制の整備を目指しており、安全確保のため自衛隊法や国際平和協力法など一部を改正する法整備です。
平和安全法制をめぐり、2015年5月中旬から国会議事堂周辺などで断続的な抗議行動が行われました。
参議院での採決前の2015年8月30日には、国会議事堂周辺などに約12万人もの抗議活動参加者が集まりました。
しかしこのデモは反対派ばかりではありませんでした。安保法制に賛成する動きもあり、反対デモだけでなく賛成デモも行われていました。
(出典: 内閣官房「「平和安全法制」の概要」)
(出典: 警察庁「第6章 公安の維持と災害対策」)
2015年沖縄県普天間基地移設におけるデモ
現在も沖縄の普天間に置かれている米軍基地ですが、沖縄県辺野古へ移設することが決まったものの、2015年に移設計画の撤回や工事中止などを訴え、キャンプ・シュワブゲート前で抗議行動が行われました。
これが普天間基地移設問題です。2015年5月17日に那覇市内で開催された集会においては約35,000人が参加し、都内では国会議事堂周辺などで抗議行動が行われました。
(出典: 警察庁「第6章 公安の維持と災害対策」)
2017年憲法改正をめぐるデモ
日本では戦後70年以上、憲法は制定されてから改正されることはありませんでした。しかし、現政権では憲法改正に向けた動きがあります。
現在は憲法改正案の段階ですが、その案の中でも特に注目を集めるのが第九条における国防軍の要綱の追加になります。
この憲法改正を巡り、2017年5月3日に都内で抗議行動が行われ、約55,000人の参加者が集まりました。
またテロ等準備罪の新設などを内容とする組織的犯罪処罰法の改正を巡って、2017年6月10日には国会議事堂周辺で約18,000人による抗議行動が行われました。
(出典:警察庁「第6章 公安の維持と災害対策」)
政治や情勢が色濃く反映されるデモ
デモは政治や情勢が色濃く反映されます。その時代に議決された政策への反発や、国内情勢への不満などから集会やデモは行われています。
このような集会やデモについて知ることで、人々の考えや考えに基づく行動を知ることができ、当時の情勢についてもわかります。
そして情勢はデモなどの影響を受けて変わることもあります。世界ではデモにより政策などが一変した例もあるのです。
デモに注目することで、今の情勢を知る手がかりとなります。国内や世界の情勢を知るためにもデモや暴動などを注視していくことはとても重要なことです。