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第65話 抑えられない気持ちに歯止めはない

 3人に特技のことに関して教えてもらいながら本日は終了となった。ある程度の基本知識は理解した。前の浅野との戦闘で生命力を消費する感覚もなんとなく掴めてきたので後は実践を、というところか。

 ということでそろそろ寝ないといけない時間なのだが……。


「…………眠れないな」


 こういう時どうすればいいんだろうか。とりあえず水でも飲むか?

 居間へと向かうと何故かコウハが起きていた。その目はどこか虚というか儚げな雰囲気を感じる。

 コウハはソファに座ってボーッとしているようだ。しかしやはりいつもと雰囲気が違う。放っておけずに声を掛ける。


「コウハ?」

「っ……刀夜殿…………」


 驚いた様子のコウハ。瞬時に目に生気が戻ってくる。あのコウハが俺の気配に気付かないなんて何かあったのだろうか?


「どうした? 大丈夫か?」

「…………うむ、私は大丈夫だ」


 本当に大丈夫だろうか? とりあえず物凄く落ち込んでいるのは分かる。

 俺はコウハの隣に座るととりあえずその手を握る。コウハの手はどこか力無く、いつもの凛々しいながらも初心な感じは全くなかった。


「…………刀夜殿が一番苦しいのにどうして私が落ち込んでいるんだろうな」

「え?」


 俺が一番苦しい時期……? ああ、浅野の件のことか。でもコウハも落ち込んでいると。


「何かあったのか?」

「いや……大したことじゃない。ただ私は無力だなと思っただけだ……。何が最強だ……刀夜殿の友人1人守れていない……」


 それを気にして落ち込んでいたのか。俺はゆっくりとコウハを抱き締めるとその背中を優しく撫でた。


「気にしなくていいって。あれは仕方ないことだった。でも……何か他に方法はあったかもしれないな」

「うむ……すまない刀夜殿…………私も刀夜殿の力になりたかったのに……」


 少し震え始めたコウハ。このまま優しく抱き締めて背中を撫で続けよう。そう思った矢先に事件は起こったわけだが。


「あ、すまん。背中撫でてたらブラのホック外れた」

「何してるんだ刀夜殿!?」

「いや、たまたまだからな? でもなんかちょっと得した気分」


 真っ赤になったコウハの顔を見ながら少し癒される。うんうん、コウハはやっぱりこうじゃないと。


「人が落ち込んでいる時に……」


 今度は別の意味でわなわなと震えるコウハ。これはやり過ぎてしまっただろう。


「悪い悪い。慰めようと思ったんだが…………アスールはどうやってるんだろうな。俺にはどうやら慰める力はないらしい」

「刀夜殿が鈍いからだろう」


 うわー、辛辣。これは相当怒ってるな。なんとか機嫌を直してもらわないといけない。


「なぁコウハ。どうせなら……」


 俺はコウハに詰め寄るとコウハは顔を真っ赤に染めてどんどんと後ずさる。そのまま押し倒すようにコウハとソファで眠る。


「と、刀夜殿?」

「…………俺だって色々きつかったよ。アスールに慰めてもらえてなかったら多分腐ってたろうしな」

「そ、そうなのか……」

「それにお前も後ろから支えてくれた。だから精一杯礼はしたい」

「そ、そそ、それって!」


 俺はどんどんとコウハに顔を近付けると優しく唇を奪った。最初は少しの時間、回数を重ねるごとにどんどんと時間が増えていく。

 長い長いキスが終わるとコウハの目はトロンとしており、頬は上気したように桃色に染まっていた。

 乱れた呼吸が大きく吸われるたびに大きな胸が上下してかなりエロい。このまま止まらなくなりそうだ。


「と、刀夜殿……わ、私は……」

「続き……してもいいか?」

「…………」


 顔を真っ赤にして俯いたコウハ。しかしきちんと小さく頷いてくれたので俺はそのままコウハの服のボタンを外していく。


「ん…………」


 服を脱がすと赤いブラが露わになる。ホックを外してしまったせいか既にズレていて本来なら隠すべき部分が少し垣間見えてしまっている。

 俺はゆっくりとコウハの胸に手を這わせながらコウハの耳元で囁く。


「俺のことを心配してくれるお前が好きだ。俺のことで悩んでくれるお前が好きだ。俺のことを想ってくれるお前が好きだ」

「と、刀夜殿……」

「もう我慢出来ない……」

「…………うむ♡」


 優しく抱き締め返してくれたコウハと長い夜を過ごした。

 何かを忘れる為に誰かと愛し合うことはしたくない。しかし俺のことで悩んでくれるコウハが愛おし過ぎて止まらなかった。

 そのまま朝まで過ごしてしまい、俺はソファでコウハの胸に抱かれながらだらだらと過ごす。もちろん服は着ているが。


「ふふ……」

「いきなりどうした?」

「いや、刀夜殿があんなにも熱心に求めてくれるのが嬉しくてな。いつもはクールなのに優しい感じがしていたから」


 そうだろうか? 割と余裕がない時の方が多い気がするが。


「私が何度も気持ち良くなってしまっていたのに全然止まってくれなかったな……」

「わ、悪い……」

「いや、それだけ刀夜殿が私を求めてくれたということだろう? ふふ、凄く嬉しい」


 慰めるように胸に抱き寄せて頭を撫でるコウハ。物凄く癒される。このまま甘えながら眠ってしまいたいくらいだった。


「それにしてもどうして今日はそこまで求めてくれたんだ? もしかして気を紛らわせたかったからか?」

「そんなわけないだろ。そんな理由で恋人を抱いたりするかよ。その……やる前に耳元で言ったろ……」


 恥ずかしくて顔が赤くなる。コウハの顔が見れずに胸に顔を埋めて隠した。


「やる前に……も、もしかして私の事が好きだと言ってくれたあれのことか……?」

「…………好き過ぎて我慢出来なくなっただけだ」

「刀夜殿……」


 何やら俺を呼ぶ声に熱が帯びていた気がした。もしかしてうっとりしているんだろうか?


「刀夜殿、顔を見せてくれないか?」

「恥ずかしいからあんまり見せたくないんだが……」

「確かに顔真っ赤だ」


 顔を上げるとコウハは俺をからかった後に優しく唇を合わせてくる。何度も何度も。


「……刀夜殿が愛おしくて私も止まらなくなってしまった。すまない」

「全然謝ってるような顔じゃないけどな」


 謝られているはずなのに物凄く笑顔なんだが。申し訳なさそうな顔ひとつしていない。


「刀夜殿も同じことをしただろう?」

「そうだな」


 別に怒っていない。それどころかコウハが可愛過ぎて仕方ないくらいだ。


「俺がずっと上だけど下に行こうか? 重いだろ?」

「そんなことはない。刀夜殿1人支えられなくて恋人など務まらないだろう?」

「いや、そんな話じゃないんだが……。というか身体強化魔法使ってるのか」


 わざわざ使ってまで支えてくれなくてもいいだろうに。そういうのは男の仕事だ。


「別にいいじゃないか。それよりももっとくっついてくれていいんだぞ?」

「これ以上どうしろって言うんだ?」

「こうするんだ」


 片方の手が繋がれてしまう。もう片方の手は背中に回され密着していない部分などないのでないかというくらいにくっつく。

 胸元に顔を埋める形になるので当然柔らか過ぎる感触が感じられる。しかも少し服をはだけさせたせいか地肌に触れてしまっているので余計に密着度は増した気がした。


「大胆だな」

「あんなことをした後なんだ、恥ずかしさもないだろう」

「そうかもな」


 確かにその通りだろう。さっきまでお互い裸で愛し合っていたんだしな。


「恥ずかしさもないって割にはドキドキしてるな」

「そ、それは刀夜殿もだろう?」

「…………そうだな」


 このままの体勢で2人落ち着く。ドキドキして全然落ち着きはしないが全く嫌な気分ではない。むしろこのまま過ごしていたいくらいだ。

 浅野を殺してからというもののただでさえ優しかったこいつらが更に優しく接してくれるようになった。

 でもやはり余計な気を遣わせてしまっているのだろう。この体勢もそうだ。俺は今慰められているのだろう。


「なぁコウハ」

「うむ、どうかしたか?」

「この体勢もいいんだがやりたいことがあるんだがいいか?」

「え? うむ」


 がっちりと拘束されていた身体が離れると俺は一旦上体を起こした。コウハも釣られて上体を起こす。


「刀夜殿?」

「んじゃ行くか」

「え、ど、どこにだ!? ってお姫様抱っこ!?」


 コウハをお姫様抱っこで抱えると自室へ。そのままコウハを寝かせると俺はベッドに座る。


「刀夜殿……?」

「今だけでもゆっくりしててくれ。俺も付いてるから」


 コウハの頭を出来るだけ優しく撫でると気持ち良さそうに目を細めてくれる。俺はコウハがよく眠れるまでずっと続けていた。


「これが刀夜殿がやりたかったことなのか?」

「俺を慰めてくれて……俺の為に悩んでくれるお前だからな。余計に無理して欲しくなくてな」

「刀夜殿……」


 俺と同じでコウハもよく無理をする。同族から恐れられているのだ、俺なんかよりも辛い目に遭ってきているはずなのだ。

 それでも俺を優先してくれるコウハにはどうしてもゆっくりして欲しい。俺の事なんかで悩んだり苦しんだりして欲しくなかった。


「なら私も甘えてもいいだろうか?」

「当たり前だろ? して欲しい事全部言ってくれ」

「では添い寝をして欲しい」


 添い寝? その程度でいいならお安い御用だが……。

 コウハに言われた通りベッドに入って隣に寝転ぶといきなり抱き締められる。コウハから満足そうな息が漏れる。


「はふぅ……もうこのままずっと刀夜殿と離れたくない」

「さっきまであんなに一緒に抱き締め合ってたのにな」

「それでもだ。やはり私はこの体勢の方が好きだ」


 という事らしい。コウハがこうして望んでくれるのならこのままでもいいのかもな。


「ふふ……刀夜殿♪ 刀夜殿♪」


 まるで鼻歌のように俺の名前を何度も呟くコウハである。なんかめちゃくちゃ恥ずかしくなってきたんだが。


「お前休む気ないだろ?」

「今から寝ても仕方がないだろう? それに私はこのまま刀夜殿を抱き締められるだけで満足だ」

「……そうか。じゃあもう飯の時間がくるまでずっとこうしていようか」

「うむ!」


 イチャイチャで気を紛らわせただけでコウハの気持ちには何の解決もしていない気がした。コウハが嬉しそうなのでひとまずはこれで良しとした。しかし結局徹夜してしまったが今日の研究所捜索に影響が出なきゃいいんだが。

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