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 Spectee(スペクティ、東京・千代田)はSNS(交流サイト)の投稿や気象データから災害関連情報を収集し、アラートを上げたり地図上に表示したりする防災サービス「Spectee Pro」を手掛ける。能登半島地震では石川県庁に避難経路の判断材料になる災害情報を提供したほか、被災地域に取引先工場がある企業には状況を可視化しサプライチェーン管理に貢献した。一方、被災状況によってはSNSから得られる情報が少なくなるという問題が見つかった。

 Spectee Proは災害関連情報をリアルタイムで収集し、アラートを上げるサービスだ。情報源となるのはX(旧Twitter)などのSNS投稿、YouTubeなどの動画投稿、降水量や花粉飛散状況といった気象データ、渋滞情報といった交通データ、河川や道路に設置されたカメラ映像など。スペクティの村上建治郎CEO(最高経営責任者)は「大きなトラブルが無ければ国内では1日当たり400~500件ほどのアラートを上げることが多いが、トラブル発生時は10倍~20倍ほどに増える」と話す。エリアや知りたい情報を指定して地図上に重ねて表示することもできる。初期導入費用は30万円、Standardプランの月額利用料は15万円から(いずれも税別)だ。

「Spectee Pro」のサービスイメージ
「Spectee Pro」のサービスイメージ
(出所:スペクティ)
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 特徴はAI(人工知能)と人、両者によるチェックを介することだ。データ収集と解析にはAIを用いる。例えば浸水被害を訴える投稿写真に水が映っていない場合は、明らかに正確な投稿ではないと判断する。その後は改めてAIが過去の偽投稿などを基に文章や画像の確からしさを解析したり、投稿アカウントの信用度などをスコアリングしたりして偽情報を取り除く。最終的には専門の確認チームが人手で確認し、正確だと判断できた情報についてアラートを発信する。

Spectee Proの確認フロー
Spectee Proの確認フロー
(出所:スペクティの資料を基に日経クロステック作成)
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かつては判定の完全自動化を目指す

 村上CEOは「生成AIで作成した画像はAIにしか見抜けない」と指摘する。生成AIが作り出す画像の精度は日に日に向上しており、人間が見分けるのは難しい。一方、AIなら生成AIが人工的に作った画像をデータ構造から特定できる。

 半面、AIが見抜けるのは「データとして不自然でないかどうか」が中心だ。視覚的に判断するわけではないため、頭が猫でそれより下は人間、といった異常な画像でもAIは正常と判定してしまうことがあるという。AIの判定ロジックを解析してチェックをすり抜ける「AIをだますAI」も開発されつつある。

 AIが苦手としていても、人間ならば判定可能という画像も大いにあるわけだ。スペクティには約20人の確認チームが在籍する。電話で確認したり、自社開発した専用ツールを活用して他のデータと照らし合わせたりして確認する。

 実はサービスを開始した2014年の時点ではAIによる判定の完全自動化を目指していた。しかし実際は発生している災害も偽投稿と誤判断してしまうなど、正確性を保つのが難しいと判断した。2015年ごろに人手で確認するというフローに変更したところ、逆に「人によるチェックがあるほうが安心だ」と評価されることが増えたという。

能登半島地震ではサプライチェーン管理でも貢献

 Spectee Proのユーザーには国や自治体の災害対策本部が多く含まれるという。石川県庁も導入しており、2024年1月に石川県を襲った能登半島地震においては、Spectee Proの情報が避難指示の判断材料などに使われたという。加えて民間企業のサプライチェーン管理にも貢献した。例えばある製薬関連企業では、地震発生後、まず被災地域に入る取引先工場を特定した。被災状況に関するアンケートを自動送信し、人的被害や建物損壊の有無などの被災状況を一元的に管理した。翌日にはすべての取引先工場の被害状況を確認できたという。

 能登半島地震では道路が寸断され、物資の運搬が難航した。Spectee Proは通行規制状況の判断に当たり、国土交通省の道路カメラに加え、トヨタ自動車提供の車両走行データも判断材料とした。実際に道を通行した車両のカーナビからデータ収集しているため、高い精度を得られたという。平時の通行量との差分から寸断の有無を推測するといった使い方も可能だった。