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Fate/Reverse ―東京虚無聖杯戦争― Ⅱ

1 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/23(火) 07:47:59 LaYbqIxs0


 地獄への道は善意で敷き詰められている


◆ ◆ ◆


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"
2 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/23(火) 07:49:39 LaYbqIxs0
少し早いですが、次スレを立てさせていただきました。
前スレが埋まるか、前スレで収まるか怪しい場合、ご利用下さい。
あと感想は遅れます。お待ち下さい。


3 : 名無しさん :2016/02/23(火) 13:41:59 t64i3tbU0
まとめwiki
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/

前スレ
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1454252405/l50


【ルール】
・当企画はTYPE-MOON原作の『Fateシリーズ』の設定の一部リレーSS企画です。同作中の魔術儀式「聖杯戦争」を元にし、参加者達が聖杯を賭けて戦う企画となっております。
 暴力表現やグロテスクな描写、キャラクターの死亡などがあるのでご注意ください。

・当企画は参加者のコンペ制度を導入します。採用主従は24前後を目標としています。増えたり減ったりするかもしれません。
・原作における通常7クラス及び、エクストラクラスの投下を可とします。
・投下候補作の投下数制限は、原則ありません。
・投下がない場合は、企画者が一人でちまちま候補作及びOPを投下していく形になります。

・企画者がOPと称した話に登場する主従は確定枠ですが、採用主従の数には含まれません。
・募集期間は具体的には未定ですが、三月いっぱいを予定しております。


【設定】
・何者かによって再現された『東京都』に酷似した場所ですが、電脳世界ではなく現実世界です。もしかしたら実際の『東京都』とは異なる部分があるかもしれません。また離島は舞台から除外させていただきます。
・全てのマスターは最初記憶を封印されており、その違和感に気付き記憶を取り戻すまでが予選になります。
・全てのマスターは何らかの日常生活の役割を与えられた状態です。

・記憶を取り戻すと同時に令呪を入手しますが『聖杯戦争の基本的な知識は与えられません』。

・サーヴァントが記憶を取り戻した瞬間召喚される、またはマスターの目の前で召喚されるとは限りません。
 書き手の皆様にお任せ致します。
・ズガンはオリキャラのみ許可します。スガンは最大二組までとします。

【NPCについて】
・詳細不明。所謂レプリカの人間として捉えて下さい。
・NPCの中には予選に落選したマスターも混じっているかもしれません。
・NPCの中にはマスター及びサーヴァントと縁があった人物がいるかもしれません。
・全てのNPCは、いわゆるモブキャラなので何の能力も保持しておりません。

【サーヴァント及びマスターについて】
・サーヴァントが消滅しても、マスターは脱落せず死亡もしません。
・令呪を全て失った場合、マスターは脱落及び死亡となります。

【その他】
・バーサーカー(SCP-076-2)により東京都内で100名前後の虐殺が既に行われております。
・アサシン(SCP-073)の宝具により江戸川区内にある公園を中心にした20m範囲で影響が出ております。


4 : 名無しさん :2016/02/23(火) 13:42:34 t64i3tbU0
というわけで>>1さんスレ立て乙です。


5 : ◆RzdEBf96bU :2016/02/24(水) 14:52:00 tzC6yu2c0
投下します


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6 : 柳生九兵衛&ランサー ◆RzdEBf96bU :2016/02/24(水) 14:52:31 tzC6yu2c0
柳生家。江戸時代、将軍家の剣術指南役を勤めあげた名家。
平成の世となり、剣が社会に必要とない時代となってもその名門の血は途絶えずにいた。
剣技を学び己の心身を鍛えるために、上流階級の若きエリートたちがその門をたたいている。
その柳生家の次期当主が、柳生家始まって以来の天才、神速の剣の使い手柳生九兵衛。
そういうことにこの偽りの世界でもなっていた。



凛とした空気が流れる柳生家道場。何人もの若人が竹刀を打ち合っていた。
その中でも、眼帯にポニーテールの小柄な少女の剣は、彼らの技量を上回っていた。

「よし、今日の稽古はここまで。ポカリ用意してあるから水分補給忘れずにな」

午後の稽古を終え、汗を手拭でふき取りながら少女、九兵衛が告げた。
ポカリに反応した門下生たちが狂喜乱舞して舞い踊り始める。

「キャッッフォォウ!ポカリだぁあああ!」
「イオンバランスの飲料だから水分補給に最適だぜ!」
「熱中症対策にデスクワーク、乾燥する季節にも効果は抜群だ!」

無理もない。激しい稽古の後で大量に汗をかいて水分とナトリウムを失った彼らには、
スムーズにこれらの成分を補給できる体液に近いイオンバランスのポカリが、
我慢限界の中学二年生にエロ本を垂らすくらいに魅力的であったのである。

門下生たちがポカリの入ったジャグに殺到するのを後に、九兵衛は更衣室で私服に着替え、
ロッカーから取り出したカプセルのようなボールを懐にしまい、自室へと足を向けた。
手入れの行き届いた庭園を歩きながら、九兵衛は従者を呼んだ。

「東城。東城はいるか」
「呼ばれましたか、若」

九兵衛の呼びかけに、東城がポカリを手にして応じた。
手渡されたポカリでのどを潤しながら、九兵衛は東城に頼みごとをした。

「すまないが東城、夕餉の時間まで自室で読書に集中して勤しみたいから、しばらく僕の部屋に
誰も入らないようにしてくれないか?」
「ふむ、読書ですか?」
「ああ。…それと少し小腹もすいたのでな。バナナも用意してくれ」
「そういうと思いまして若。既に本とバナナをこちらに用意してございます」
「さすがだな東城。気が利くな」

東城の準備の速さに九兵衛は舌を巻き、本とバナナを受け取り、そして東城に言った。

「おい、東城…なんだこれは」
「若がご所望いたしましたバナナ(バイブレーション付き)と本(袋とじ付き)でございます」
「誰がピンク色をしたバナナをほしいと言った?」
「いえ若。この東城歩、若に使えて10数年。若のお望みなど手に取るように理解できます。」
「そうか。貴様が手にしたのはイカ臭い粘液のようだがな」
「ご心配なく、若がバナナを粘液に浸している間、この東城歩。賊の物音一つ逃さず、見張る所存でございます
さあ、早くお部屋でこのバナナを」

東城の言葉を聞き終わるより先に、九兵衛は懐にしまっていたボールを取り出し、中から猿に似たモンスターを
繰り出した。

「エーたろう。ダブルアタック」

九兵衛の命令に従い、猿―エーたろうは手に似た尻尾を振るい、東城の顔面に一撃をかました。
東城が吹っ飛ばされ、庭の池に落ちるのを背にして、九兵衛が言った。

「エーたろう…バナナはイトー○ーカ堂で買うとしよう」
「キキッ」


7 : 柳生九兵衛&ランサー ◆RzdEBf96bU :2016/02/24(水) 14:53:35 tzC6yu2c0


和室の一角にバナナが大量に入ったビニール袋が置いてある。
自室でエーたろうと共にバナナを頬張りながら、九兵衛はサーヴァントの帰りを待っていた。
エーたろう…エテボースという種族のポケモンという生物であるが、護衛としてサーヴァントから借りているのである。
食べ終わったバナナの皮をエーたろうが床に投げ捨てるのを見て、九兵衛がたしなめる。

「こら、エーたろう。食べ終わったものを適当に捨ててはならんぞ。メッ、反省」
「キー…」

九兵衛に叱られてエーたろうは手をついて、素直に反省のポーズをとった。
よしいい子だ、とエーたろうの頭を撫でているとき、傍から声を掛けられた。

「ずいぶんとエーたろうの奴アンタに懐いてるじゃないっすか」
「ランサーか。ようやく帰って来たか」

粒子が集まり、一人の男が現れた。
前髪は爆発したかのようで、どこかへらへらとしたその態度は、百人が百人彼を見てチンピラと答えるだろう。
そのチンピラ、もといランサーのサーヴァント、ゴールドに九兵衛は言葉をつづけた。

「僕が元いた世界でも子ザルを飼っていたからな。ふと懐かしくなった」
「へえ、そいつぁ親近感わくっスね。いったいなんてニックネームなんすか?」
「うん。寿限無寿限無ウンコ投げ機一昨日の新ちゃんのパンツ新八の人生バルムンク=フェザリオンアイザック=シュナイダー三分の一

の純情な感情の残った三分の二はさかむけが気になる感情裏切りは僕の名前をしっているようでしらないのを僕はしっている留守スルメ

めだかかずのここえだめめだか…このめだかはさっきと違う奴だから池乃めだかの方だからラー油ゆうていみやおうきむこうぺぺぺぺぺ

ぺぺぺぺぺぺぺビチグソ丸というんだ」
「長えよ!いったいどうしたらそんな名前になんスか!?」
「いや、みんなが考えた縁起のいい名前を集めたらな」
「だからといって全部採用することはねえだろ。アンタ、堅物糞真面目野郎かっつーの‼」

しかもほとんどがむしろ縁起悪くなりそうだしよと、ゴールドはため息をつきながら腰をついた。

「まあ、寿限無寿限無ウンコ投げ機一昨日の新ちゃんのパンツ新八の人生バルムンク=フェザリオ「いちいち繰り返してんじゃねえ!」ぺぺぺぺぺ

ぺぺぺぺぺぺぺビチグソ丸のことはさておいて、ランサー。情報収集の方はどうだった?」
「そうだな、ニュースでやっていた連続殺人鬼のほかにも、あちこちでド派手にやらかしてる連中も多いな」

ゴールドが市井で耳にした怪しい連中の話を聞きながら、九兵衛はゴールドが眉間にしわを寄せていることに気づいた。

「ランサー…君は彼らに対して、怒りを感じているのか?」
「あ~…別に俺は正義の味方ってわけじゃねえけどよ。最初召喚された時ぁ古今東西の英雄が集まるなんざ煌びやかな戦争だって思った

んすよ。」

ゴールドは鼻の下を掻きながら先ほどのへらへらした態度を捨て真剣な眼差しで言った。

「だけど実際には、自分の目的のためだけに、他の奴ら道具にしてもかまわねえってやつがいる。俺はそいつが許せねえ」

ゴールドの眼を見て、九兵衛はふと笑みをこぼした。
自分の友人の、普段はちゃらんぽらんでろくでなしだが、自分の筋を貫き通す銀髪の侍に、ゴールドがどこか似ていると感じたからか。

「あん?なに笑ってんだ?」
「ふっ、なんでもない。それよりそろそろ夕餉の時間だ。詳しい話は食事のあとにしよう。ランサー、エーたろうたちにも好きな食事を

用意するよ」
「おっ、いいね。だったら俺はグレン風火山ハンバーグ頼むぜ」

まだ出会って数日ばかりだが、九兵衛の中にはゴールドに対して確かな信頼が生まれ始めていた。
彼とならこの聖杯戦争の中でも困難に立ち向かっていけるかもしれないと。


8 : 柳生九兵衛&ランサー ◆RzdEBf96bU :2016/02/24(水) 14:54:01 tzC6yu2c0
そう思った時だった。カシャン、と九兵衛の足元に何か落ちる音がした。
やべっ、とゴールドの焦りを耳にしながら、九兵衛は落ちたものを拾った。
ケースのようなそれを開けると、中にはぎっしりとゲーセンのコインが詰まっていた。
おおよそ数十分で稼げる量ではない。数時間は遊ばないとこれだけの枚数手に入らないだろう。

「おい、ランサー…このコインはなんだ?」
「い、いや~。ゲーセンで情報収集してたけど、そのついでにちろ~とだけ…」
「…エーたろう。どろぼう」

ゴールドが止める間もなく、エーたろうは彼の懐から奪った。
カワイイギャルとのツーショットのプリクラ。おニューのビリヤードのキュー。猫田ぼたぼた焼きクワガタ味。東京バ○ナ。
ボロボロと大量に本日のゴールドのお楽しみの結果が出てきた。
戦利品の山を前に、先ほどまでの笑みもどこへやら。どこぞの永久氷壁のじじいの吹雪並みに冷たい眼で九兵衛はゴールドを睨んでいる。

「ランサー…貴様は情報収集には金が要ると僕にせびっていたが?なるほど…大した情報だ」
「あ…あの~」
「夕餉の後は情報交換といったが気が変わった。少々剣の練習に付き合ってもらうぞ。貴様が音をあげてもやめる気はないがな」
「げ~~~、冗談じゃね~。おめえの鬼教官みたいな練習に付き合ってられっかっつーの!」
「ふん、貴様も槍騎士のサーヴァントだろ?武術のたしなみの一つ程度あるのでは?」
「いやいやいや。俺はこのキューがあるからってほとんど無理くりランサーの枠に充てられただけで、槍も剣もやったことねーから!!」
「大丈夫だ。君はサーヴァントだろ。死にはしない」
「普通じゃ死ぬくらいの練習やらす気かおまえ!土産に東京バ○ナも買ってきたことだし練習はどうか勘弁ってことで…」

東京バ○ナを手に媚を売りながら、ゴールドは許しを求めて九兵衛の肩をつかんだ。
このとき、ゴールドは九兵衛のある性質について知らないでいた。
つまり、男に触れられると虫唾が走り、ブン投げてしまう、困った体質を。

「うがあああああ!僕に触るなァァァァァア!!」
「ぎゃああああ!!!?」

当然のごとく、ゴールドは九兵衛にブン投げられ、天井に頭から突き刺さったのであった。

「む、すまないランサー。大丈夫か?」
「…よくあるこった。気にすんな」


9 : 柳生九兵衛&ランサー ◆RzdEBf96bU :2016/02/24(水) 14:54:40 tzC6yu2c0
【クラス】ランサー

【真名】
ゴールド@ポケットモンスターSPECIAL

【ステータス】
筋力:D 耐久:B 敏捷:C 魔力:E 幸運:B 宝具:C

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
ポケモントレーナー:C
ポケモンバトル、育成、捕獲、知識など、ポケモントレーナーとしての総合的な実力。
Cランクであれば、上位には入る程度のトレーナーであることを示す。

戦闘続行:A
往生際が悪い。
ひん死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
湖に沈んでも、炎の輪に焼かれても、時の間に散っても、何度も立ち上がり意思を貫いたことから会得した

孵す者:A
ゴールドだけが持つ固有のトレーナー能力。ゴールドがタマゴから孵したポケモンは、その潜在能力を最大まで引き出される。
さらにはゴールドの意志、感情までも引き継いで誕生する。

【宝具】

『俺の最高の相棒たち(ポケットモンスター)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大補足:-
ゴールドと共に戦ってきた手持ちポケモンたちが宝具と化した。
それぞれがEランク相当の戦闘続行スキルを有している。
自らが収まっている各々のモンスターボールがランサーとのパスとなっており、これが破壊されると
パスが途切れて、消滅する。
今回聖杯戦争に連れてきたのは、
バクたろう(バクフーン♂)、エーたろう(エテボース♂)、キマたろう(キマワリ♀)、
ニョたろう(ニョロトノ♂)、ウーたろう(ウソッキー♂)、トゲたろう(トゲキッス♂)の6匹である


『灼熱の猛火(ブラストバーン)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:20 最大補足:60
キワメ婆との特訓でランサーとバクフーンが習得した炎タイプの究極技。
燃え盛る炎をバクフーンの背中から放ち、攻撃する。
使用後一ターンバクフーンは技の使用の反動により動けなくなる。

【weapon】
ビリヤードのキュー
スケートボード
ポケモン図鑑

【人物背景】
ワカバタウン出身の図鑑所有者。
一見ただのチンピラだが、仲間やポケモンを守るためには体も張る正義を持つ
ビリヤードが得意でモンスターボールをキューで撃つなど、独創的な戦いが特徴。
地元ではポケモン屋敷のボンボンで有名人で、幼い時からポケモンと過ごし暮らしていた。
ウツギ研究所でシルバーがワニノコを盗む場面に会い、彼の運命が動きだす。
ヒノアラシと共にシルバーを追いかけるが、その中でロケット団残党による事件に巻き込まれる
シルバーの敵、仮面の男の因縁を知り、悪と戦うことを決意する
一度はシルバーと共に敗北するが復活
図鑑所有者クリスと共にポケモンリーグで仮面の男との再戦に挑む
ホウオウ・ルギアを駆る仮面の男の前にまたも倒されるが執念のもとウバメの森まで彼を追いかける
最後は時のはざまで仮面の男、ヤナギと最終決戦に挑み、他の図鑑所有者の援護もあり、セレビィを解放し、遂にヤナギを倒す。
バトルフロンティアの戦いでは後輩エメラルドを導き、エメラルドがジラーチの眼を開かせる成功の一因となる。
アルセウスを巡る事件では、自分に心を開いていなかったトゲたろうに向き合い、トゲピーからトゲキッスへと二段進化を見せ、アルセウスの心を開く。

【サーヴァントとしての願い】
九兵衛を守る
他人を道具として扱うような悪は許さねえ

【マスター】
柳生九兵衛@銀魂

【マスターとしての願い】
聖杯戦争からの帰還。
基本戦いには乗らないが、外道には容赦はしない

【weapon】
無名の日本刀

【能力・技能】
神速の剣の使い手

【人物背景】
左目に眼帯をした柳生家次期当主にして、柳生家始まって以来の天才ともいわれるほどの剣の達人。
生まれた時母親が死に、父が「後妻を迎えて九兵衛の居場所がなくなってしまわないように」と考えてあえて男として育て上げた。
女の子でありながら強く生きる妙の姿に憧れ、借金取りから妙を守るために左目を失う。
幼少のころの結婚の約束を果たすといい、妙を柳生家に嫁がせようとするが万事屋と真選組との対決で敗北。
敗北後、妙の真意を聞いて互いに涙を流しながら和解する。
その後は本人はいたって真面目だが大ボケをかますクールボケキャラになった。
キャラ被りしているとして桂からはライバル視されている。
普段は男装をしているが、ゴスロリが似合う美少女。
男に触れられるのが嫌いで、ちょっとでも触れられるとブン投げてしまう。


10 : 名無しさん :2016/02/24(水) 14:55:06 tzC6yu2c0
以上で投下終了します


11 : ◆wDXY46UhbE :2016/02/24(水) 21:15:28 1LKJ0dDk0
投下させていただきます。


12 : 式野会長&キャスター ◆wDXY46UhbE :2016/02/24(水) 21:16:27 1LKJ0dDk0
遠雷が光った。数秒遅れて雷の音が聞こえる。
少女は深々と頭を下げ、下げた時の三倍の速度でぱっと頭を上げた。

「ありがとうございました。先生には何から何までお世話になりまして」

遠雷が光った。少女と、闇夜の中、笑顔で笑う奇怪な老人の姿を照らし出した。
老人は物の怪よりも物の怪らしく「うふふふふ」と笑った。

「いやいや、礼には及ばないよ。私はほんのちょっとだけ手助けをしただけのことだ」
「そのほんのちょっとがなければ私もこの……聖杯? 戦争? でしたっけ? には参加できませんでしたから」

二人は顔を見合わせ、穏やかに笑った。
遠雷が光った。二人の笑顔を照らし出した。
老人はもとより、美しいはずの少女まで物の怪めいて照らされていた。

「魔術回路は全力で働いておるよ。常人ならとんでもないことになるが、まあ、君も大概常人ではないから大丈夫だろう」
「よく分かりませんけど、私が偉大だということはよく分かりました」
「それで良い。魔術の才より、神秘の知識より、君のそういった性情こそが聖杯戦争に向いている」

老人は帽子の庇を指で押さえ、目深に被り直した。

「それでは私はこれで」

半開きだったドアの外へ、蛇のように身体を滑りこませ、外に出た。
そのままドアを閉めようとし、残り十センチのところで手を止め、隙間から少女の顔に目を向けた。

「君が『強ければ強いほどいい』と言ったからね。あれはとびきり強力なサーヴァントだ」
「ええ、強ければ強いほどいいと思います。相手をぶっ殺すにしてもその方が殺りやすいと思いますし」
「うむ。それはその通りなのだが」

遠雷が光った。帽子の下から覗く老人の眼は雷の光よりもギラギラと光っていた。

「強いものほど制御するのは難しい」
「なんて言いましたっけ……そう、令呪というのがあるんでしょう?」
「そうだな。手に余るようなら使ってみればいい。経験は若者の糧となる」
「どういう意味でしょう?」
「そのままの意味だよ。最後に少々説教臭くなるが」

老人は薄く口を開いた。鋭く尖った犬歯が遠雷の光を反射した。

「神とは理不尽なものだ。理不尽だからこそ人は神を畏れて崇めたのだ。君は理不尽を友としなさい」
「先生は難しいことをおっしゃいますのね」
「なにせ年寄りだからね。それでは今度こそさようなら。岸田君によろしくね」

パタンと扉が閉まった。少女はしばし老人の去った後を見詰め、やがて俯き、肩を震わせ、顔を上げ、腹の底から大声で笑った。

「いひ、いひ、いひひひひ――っ! あははははは――っ! やった! やった! やった!」


13 : 式野会長&キャスター ◆wDXY46UhbE :2016/02/24(水) 21:17:14 1LKJ0dDk0
少女――式野は愉快や愉悦を通り越して狂おしく笑った。
世界は自分を中心にして回っている。聖杯戦争とやらも全く負ける気がしない。
勝てば世界は自分のものだ。誰も彼もを傅かせ、跪かせ、この世の全てを掴み取る。金も地位も怪奇も神秘も全てを手にする。

本来であればオカルトマニアというだけの女子高生に参加できるような催しではないらしい。
が、怪奇研究家として名高い賀露川十三郎の力を借り、よく分からないことを色々してもらって、とにかく参加できるようにはなった。
代償としてオカルト研究会の男子生徒若干名は若さを賀露川に捧げることとなったが、他人の若さ程度勝利の前では些細なことだ。
最強のサーヴァント。そして最高のマスター。この組み合わせで勝てない理由がない。聖杯はもう目の前にある。

一しきり笑ってから深く息を吸い、こほん、と小さく吐き出した。
たとえ優秀な部下を従える優秀なボスであっても油断は死を招く。今までの怪奇体験でそれは実感していた。
ただ優秀というだけでなくクレバーさも持ち合わせている真の意味で優秀な式野であればそのようなミスはおかさない。

「でも……」

冷静になって思い起こしてみると、賀露川は不吉なことを口にしていたような気がする。
あの老人は不吉という言葉を擬人化したかのような見るからに不吉な人物ではあったが、今日の別れ際はいつも以上の不吉さに満ち満ちていた。

「よし」

式野は踵を返し、玄関から客間へと静かに移動、音を立てずに横開きの戸を開き、部屋の中で座っていたサーヴァントと目が合った。
不思議の国のアリスに登場するハートの女王様のような格好をした少女だ。
美しくはある。睫にハートの飾りをつけるとは妙なセンスだ、とは思うが、まあ美しい。
式野のサーヴァントであるからには美しさも必須条件ではあるので、その点についてはいい。

「こんばんは」
「うむ」

少女は偉そうに頷いた。こんばんは、という言葉に対しての返事として「うむ」では不適当ではないだろうか。
式野は眉を寄せた。賀露川が「神がどうこうだこうだ」と言っていたのはこういうことなのだろうか。
神、というにはあまり有難味は感じられない。賀露川が言うのだから強くはあるのだろうが、見た目ただの女の子にしか見えない。
「キャスター」というクラスも真正面から戦って強い、というものではないという説明をされたような覚えがある。
式野はテーブルを挟んで少女の前のソファーに、どしん、と座った。

「あなたって強いの?」
「お前は何を言うておるのじゃ」
「いや、何をって……強いのかなって」
「愚者の問いかけだから愚問とは言うたものよ」

むっとしたが、式野が怒りを表すより先にキャスターは鼻で笑った。

「妾は偉大なる神の現身。那由多の魔法を使い無限の世界をおさめる。その妾が弱いとでも思うてか、戯けめ」

なんとく強そうな感じはする。しかし口で言うだけなら誰にでもできるのではないだろうか。

「できることなら強いっていう証拠を見せて欲しいんだけど」
「無礼者! 貴人に対し証拠を見せよとは何事か!」

キャスターは右手に作った拳でテーブルを殴りつけ、分厚い樫のテーブルが恐ろしい音を立てて真っ二つに割れた。
木屑と埃が舞い踊る中、式野は「テーブルは気が付いたら割れていた」という両親(現在旅行中)への言い訳を考えていた。


14 : 式野会長&キャスター ◆wDXY46UhbE :2016/02/24(水) 21:17:51 1LKJ0dDk0
「いや、うん。証拠はいいわ。だいたい分かったから」
「うむ。一度は許す。妾は寛大ゆえな。しかし無礼は二度許さぬ」
「それより作戦考えましょう。私達がどうやってこの聖杯戦争を勝ち抜くか」
「それなら既に考えておいた」
「へえ、どんな作戦?」
「敵に先んじた情報収集こそが戦の要よ。妾はそれを怠り猿どもに噛みつかれたことがある」

思ったよりまともなことを言っている気がする。まあキャスターというだけあってそう愚かでもないのだろう。

「というわけで、お前は斥候として近辺を偵察してくるのじゃ」
「うんうん……うん?」

式野は首を捻った。何かがおかしい。

「いや、ちょっとそれ違うよね?」
「なにが違うと申すか」
「私がマスターであなたがサーヴァントじゃない?」
「うむ」
「私の命令であなたが動くんじゃないの?」
「何をのたまうかと思えば……」

キャスターはあきれ顔で肩を竦めた。

「マスターサーヴァントなどというものは所詮呼び名に過ぎん」
「はあ」
「妾は上に立つ者、即ち将。将が斥候をするものか。将に仕えるお前が偵察をしてくるのだ」

式野は首を捻った。やはりおかしい。

「もし私が偵察をしてくるとして」
「うむ」
「うっかり敵に出会ったらどうすればいいの?」
「しかと撃滅してくるがよかろう」
「いや、だって……他のサーヴァントとかもなんかそういう英雄とかなんでしょ? 私じゃ勝てなくない?」
「愚かなことを申すでない。妾の僕たるお前がその辺の木端にどうして遅れをとろう」
「いや、私一般人」
「謙虚であるということが美徳とは思わぬように。己の正しい力量を伝えてこそ真なる美徳じゃ」

式野は理解した。こいつが理解していないということを。
それから数度に渡って自分は戦闘能力を持たないこと、敵と出会ったら苦も無く殺されることを説いたが、キャスターは聞く耳を持ってくれない。
自分が優れているのだから、自分のマスターである式野もまた優れた存在だと決めてかかっている。

「おお、そうじゃ」
「あ、気ぃ変わってくれた?」
「外出の前に紅茶と茶菓子を用意せよ。不味ければ相応の処分を下す」

これはもう話にならない。
話にならないならば、やるべきことは一つしかなかった。掌を返し、右手の甲を自分へ向けた。
そこにはタトゥーのようなかっこよさげな模様が描かれている。
これをどうにかしてなんとかすればサーヴァントに言うことを聞かせることができるらしい。確かそんな説明だったと思う。
その時だった。

「クビヲハネヨ!」

机の残骸を蹴り上げてキャスターが立ち上がった。
式野は呆然とキャスターを見上げた。その美しい顔は憤怒に歪んでいる。
蹴り上げた残骸が落ちてくるよりも早く、キャスターが式野に向かって一歩踏み出し、右手をとった。

「クビヲハネヨ!」

令呪をつまみ、むしり取った。

「ぎゃあああああああああ!!!」
「クビヲハネヨ!」
「ぐえええええええええええ!!!」
「クビヲハネヨ!」
「うごおおおおおおおおお……って、あれ?」

皮を剥ぎ取られたものだと思っていたが、痛みはない。恐る恐る目をやると出血もない。
右手の甲は破壊もされず右手の甲のまま存在している。ただ令呪のみが失われていた。
キャスターは腰に提げた汚い袋へ右手を突っ込み、忌々しげに舌打ちをした。

「なんという汚らわしいものを持っておるのじゃ。これは妾が預かっておく」
「え、ちょっと、私の令呪……」
「さあ、さっさと紅茶と茶菓子を準備せよ。妾に我慢をさせることは罪悪と知れ」
「私の令呪……とれるとか聞いてない……」

タトゥーに見えたものは、タトゥーではなくタトゥーシールだった。
式野は立ち上がり、キッチンへ向かった。キャスターには背を見せていたため、歯を食いしばった表情が見られることはなかった。

(このままだと死ぬ……まあ死ぬ……だいたい死ぬ……クソッ、このままで済ませてたまるか……!)

式野の辞書に諦めるという文字は存在していなかった。危機に陥れば後輩を蹴り落としてでも切り抜ける。
どうにかしてサーヴァントが前に立つフォーメーションを作らなければならない。
そのためにすべきことは、そう――口車だ。

「お茶菓子、豆大福にしようと思うんだけど。あれ、すごく美味しいから」
「ほほう」
「でも今ストック切れてるのよね。散策ついでにお買い物いかない? 豆大福以外にも気に入った物があれば何でも買ってくれていいから……」


15 : 式野会長&キャスター ◆wDXY46UhbE :2016/02/24(水) 21:18:38 1LKJ0dDk0
【クラス】
キャスター

【真名】
グリムハート@魔法少女育成計画JOKERS

【ステータス】
筋力A 耐久A 敏捷A 魔力A 幸運C 宝具EX

【属性】
秩序・悪

【クラス別スキル】
陣地作成:―
そんなことはできないが、本人はできると思っている。

道具作成:―
本人は当然できると思っているが、できるわけがない。

【保有スキル】
軍師の指揮:―
本人だけがスキルの存在を確信している。

軍略:―
こんなスキルを持っているわけがないということくらい少し付き合えば分かることだ。

女王の精神:C
人間でいう精神異常に限りなく近い、周囲の空気を読めなくなる精神的なスーパーアーマー。
たとえ自分やマスターに危険が近づこうと前線へ出ようとはしない。直接戦うことは恥だとすら考えている。
自分と直臣(マスター)以外は猿程度にしか考えず、残酷な行為も娯楽の一環として行う。

神性:B
神霊適性を持つかどうか。ランクが高いほど、より物質的な神霊との混血とされる。
元々は神霊そのものであるが、現身として魔法少女に落としこんでいるためランクが低下している。

魔法少女:EX
魔法少女である。変身というものをしないため、このスキルを解除することはできない。
一人につき一つ固有の魔法を使う。排泄や食事が不要となり、人間を超越した身体能力を持つ。
魔法のかかっていない毒物なら完全に無効、精神的にも人間時より強くなっている。
グリムハートは特別製の超高級魔法少女であり、通常の魔法少女を魔法でも身体能力でも遥かに上回っている。
精神的に折れたり曲がったりすることがないように作られているため、あらゆる精神的攻撃に抵抗を持つ。

【宝具】
『礼儀知らずは相手にしないよ』
ランク:EX 種別:対全 レンジ:― 最大捕捉:―
無礼者からのあらゆるコミュニケーションはグリムハートに影響を及ぼすことがない。
会話、物理攻撃、精神操作、魔法、全能の力、範囲対象だろうと常時発動だろうと全てをシャットアウトする。
無礼者の声はグリムハートにとって猿の鳴き声にしか聞こえず、
グリムハートが何を言おうと、無礼者には「クビヲハネヨ」と聞こえてしまう。
グリムハートにとっては自分以外のあらゆる存在が無礼者であるため、
特別に許可を与えない限り、ありとあらゆるものがグリムハートに通用しない。
神霊の現身である魔法少女「プク・プック」に対抗すべく生み出された魔法。

【weapon】
『なんでも入る袋』
中が別の次元に通じている汚い袋。一人で持ち上げられるサイズであればどんな物でも入れることができ、重量を無視する。
動きを封じるわけではないため、生き物を捕まえておくならあらかじめ縛っておく等する必要がある。

【人物背景】
「魔法の国」を支配する偉大なる三賢人の一人、シェヌ・オスク・バル・メルの現身たる魔法少女。傲慢で残酷で自己中心的。
自分こそが貴い存在であると信じて疑わず、貴人は将として構えることがあっても兵として動くことはないと直接戦おうとはしない。
本人は「我こそ稀代の名将」と妄信しているが、実際は愚かで的外れな指揮を乱発する最低最悪の将であり、勝ち戦も負け戦にしてしまう。
本来ならばブルーカラーにこそ向いているのだが、そのことについて指摘できる者は彼女の周囲に存在しない。


16 : 式野会長&キャスター ◆wDXY46UhbE :2016/02/24(水) 21:19:39 1LKJ0dDk0
【マスター】
式野会長@死人の声をきくがよい

【マスターとしての願い】
金と地位が欲しい。

【能力・技能】
美人でスタイルの良い眼鏡少女。オカルト研究会の会長だが、知識は付け焼刃。

【人物背景】
郷土史研究会でオタサーの姫をしていたが、怪事件に遭遇して以降オカルトに興味を持ち、会をオカルト研究会に改め、引き続き会長をつとめる。
何事にも自分本位で生き残るためなら平然と他人を犠牲にし、脅迫や銃刀法違反といった犯罪行為も息を吸って吐くようにやってのける。
ホラー漫画におけるあらゆるフラグを踏み潰し、絶対に死ぬような状況でもなぜか生きている。特技は記憶を自分に都合よく改ざんすること。
「ゴミみたいな性格だけど美人」とオカルト研究会の後輩である小泉から評された。

【方針】
サーヴァントを騙しつつ、どうにかして上手い事使いたい。


17 : 式野会長&キャスター ◆wDXY46UhbE :2016/02/24(水) 21:20:08 1LKJ0dDk0
以上です。


18 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/24(水) 23:26:22 2Bz8885k0
投下します。


19 : 金田一一&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/24(水) 23:26:47 2Bz8885k0



【1日目】



「ったく、どうなってんだ、一体……」


 金田一一は、一日の授業を終えた後、街に出て、どこか俯きながら、縛りあげた長い後ろ髪をぽりぽり掻いていた。
 ボサボサで、清潔感の欠片もない頭だが、こうしてそれを掻いているという事は、疑問にぶち当たり、彼の頭の中がすっきり纏まっていこうとしている証でもある。

 何を隠そう、はじめは、同じ苗字の有名な名探偵の孫だ。
 そう、もはや、日本人ならば、その名を知らぬ者もいないであろう名探偵、金田一耕助。
 金田一耕助といえば、あの戦後最大の難事件として有名な「獄門島」の殺人事件を解き明かしたのが一番有名な逸話だろうか。
 その祖父の血を引き継いでいるだけあって、彼自身も、高い知能指数とひらめきを持っており、これまでも幾つもの難事件を解決している。
 いわば、英霊の孫と言い換えても良いのが、はじめだ。
 しかし、残念ながら、彼は今のところ、聖杯戦争については知らない。

 勿論、彼は、その高い直感で、既に世界の違和感にも気づいている。
 同じ高校に通っていた死者が数名蘇っている事や、同じ高校に通っていた逮捕者が数名当然のように通学している事を知ったのが、そのきっかけだった。
 死者、逮捕者、ともにそれなりの数がいるが、それが全員、校内に平然といるのである。
 思わず、全て思い出したはじめは、すぐに手を合わせて、「成仏してくれ~」と叫びながら頭を下げて、クラスの人間に不審がられてしまったくらいだ。


(どうも納得いかないんだよな……あいつらが生きてるって言われても。確かに、悪い事じゃないんだけど……)


 これでは、まるで学校がお化け屋敷である。
 昨日までの平和な学校生活とは、まったく様相が違っている。
 それに対して、自分の幼馴染の七瀬美雪も含め、誰も疑問を持っていないというのだから不思議だ。
 はじめの方が却っておかしいと思われているくらいである。


(……参ったよ、ジッチャン。流石に、今回ばっかりは、考えてもすぐに解決できそうにないぜ)


 はじめも、当然、妙だと思っている。
 自分が夢を見ているか、あるいは、夢を見ていたか、でなければ説明がつかない。
 しかし、その可能性はまず真っ先に捨て去った。そんな事を考えたら全てが根底から崩れるからだ。
 いつものように、「考えろ金田一!」と何度も頭に鞭を打って思考を加速させたが、それでも全く推理に進展はない。
 まったく、合理的な理屈が見つからないのだ。
 何せ、死んだ人間が、蘇るなど、絶対にありえない事のはずなのだから――。

 だから、今度ばかりは、一度、自分の中の常識を全て捨て去る覚悟で挑むしかなかった。
 ずっと前に死んだ人間が、瓜二つの別人などではなく、そっくりそのままそこにいるのを説明する理屈はこの世に存在しない。
 しかし、既にそれを体験してしまった以上、それを信じなければならない状況にあるのだ。
 それを念頭に入れたうえで、自分はなぜそんな状況にあるのか……と、最初に「推理」を行おうとしている。


(いつもの事件とは、全くタイプも違うし……。
 まずは、オッサンや明智の所に行って、過去の事件データを確認しとかなきゃ――)


 殺人事件の捜査ならば得意であるものの、逆に、人が死んでおらず、「人が生き返る」などという事件は初めて直面するはじめだ。
 今、はじめは、最初に、確実にそのデータがあるであろう警察署に向かおうとしていた。
 この近くの警察署には、親しい警察の人間人がいるし、顔も利く。
 その為、民間人なら不可能な事件記録の閲覧も可能となる。

 過去に自分が関わった事件データの確認を行い、本当に起きていたかどうかを確認するのだ。
 美雪は勿論、自分の記憶までついさっきまで丸ごと書き換えられていたのだから、「記憶」はあてにならない。
 だとすれば、今度調べるべきは、「記録」じゃないのか。
 記録があるのは、警視庁や警察署だ。はじめが関わった事件も残ってるはずだ。
 ここに無かったとしても、後でフリーライターのいつき陽介に調べてもらうという手もある。


20 : 金田一一&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/24(水) 23:27:23 2Bz8885k0


「ん……?」


 と。
 まっすぐ警察署へと向かっていたはじめの前に、ふと、零れてくる夕日を遮るような、長い影が落ちてきた。

 それは、かなり長い――。
 余程長身の男が影を作っているような気がした。
 それで、はじめは思わず、前を向いた。


「随分と頭の悪そうな顔だな……。
 コイツが俺がこれから一緒に戦うマスターだと思うと頭が痛くなるぜ――」


 誰だ……?
 はじめの思考も、ふとその瞬間に遮られた。
 一度考えると没頭し続けるはじめには、目の前の人間の登場は、ちょっとした刺激にもなったのだろう。

 何せ、そこにいたのは、身長190センチを超えるであろう、筋骨隆々の大男である。
 しかし、まるで海外の彫刻像のように、堀が深く、細長い顔は、殆ど美青年と言って良い。
 どこか、その男に威圧感さえ覚えながら、はじめは後ずさる。
 何メートルも離れていたが、それでも結構な威圧感であった。


(な、なんだ!? このデカい男……っ!)


 などと考えている内に、その男は、まっすぐはじめの方に近づいてくる。
 彼は、明確にはじめの方に向かってきているように歩いてきた。
 視線は明らかにはじめの顔を見ていたし、影は徐々にはじめの全身を飲み込んだ。
 まるで見下ろすように、はじめの顔を見つめたままだ。
 はじめは、思わず、蛇に睨まれた蛙のように動かなくなった。
 しかし、大男を見上げたままだ。


「あ、あんた、一体……」


 はじめは、思わず好奇心からそう訊いてしまう。
 体格差から危険信号は発されているものの、それに好奇心が勝ってしまったようである。
 男は、冷静な声色で答えた。


「一度しか言わねえから、よく聞いておけ。
 俺は、『アーチャー』……いや、『空条承太郎』だ」

「空条……承太郎……?」

「ああ。残念ながら、お前は、この『聖杯戦争』で、俺の『マスター』に、そして、俺はお前の『サーヴァント』に選ばれた。
 気に入らねえが……ひとまずはこの世界について、お前に話しておくぜ」

「聖杯、戦争……それに、『この世界』だって……?
 あんた、もしかして、今の状況の事、知ってるのか……!?」


 うろたえるように聞いたはじめに、承太郎はコクリと頷いた。
 何やら、本当にはじめの知らない事を全て知っているようである。


「死にたくなければツラを貸せ。誰も見てない所で話す必要がある」

「……」


 はじめは少し考えてから、警戒した表情ながらも、承太郎という男の後を追った。
 彼の背中を追わなければ、このまま何もわからないままだと何となくわかっていたからだ。
 はじめにも、突然現れた承太郎の事は信頼しかねたが、この奇妙な誘い方を見るに、危害を加えるつもりではじめを呼んだわけではないだろう。
 自分が異常な状況に巻き込まれているのはわかっている――それなら、そのヒントを聞いておきたい。
 承太郎も、こうもあっさりはじめが顔を貸してくれるとは思っていなかったようだが、ひとまず、別の人気のない場所に連れだした。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


21 : 金田一一&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/24(水) 23:28:16 2Bz8885k0



 承太郎が長い足を組んで座っているのは、近くの公園のベンチだ。
 この時間、既に児童への帰宅を促す鐘の音は鳴っており、公園内はすっかり人気がなくなっていた。
 だからと言って、全く人がいないというわけではないが、あの程度の人目はいちいち気にしていられない。
 むしろ、全く人気のない場所に行ってしまえば、却って不自然に見えるくらいである。
 このくらいの方が丁度良い。
 公園を指名したのは、はじめの提案だったが、思ったよりも良い場所を選んでくれたものだ。


「お前の名前は?」

「……金田一一だけど」


 はじめは、正直に本当の名前を告げた。
 ここで偽名を使っても何の意味もない。


「金田一か。どこかで聞いた事のある名前だな。国語学者と、それから、えっと……」

「――金田一耕助?」

「そうだ! そんな名前の名探偵がいたな。……尤も、小説の中の話だが」

「いや、小説の話じゃないよ。金田一耕助……俺のジッチャンなんだ」


 祖父ははじめの自慢でもある。
 生まれながらにして、特別な血統と、犯罪を赦さない正義感を受け継いだわけだ。
 承太郎は、少しだけ目を見開いた。


「……そうか。それは流石に驚いたぜ」


 別段、驚いたわけでもなく、どうでもいいといった様子で承太郎は言った。
 しかし、多少、面食らったのも事実だろう。
 彼も少々、特別な因縁のある家系だった故だろうか。


「だが、名探偵の孫にしては、随分無警戒に俺に着いてきたな」

「あんたが俺をどうにかする事はないと思ってたからね。
 ……あんたみたいな奴の恨みを買った覚えはないし、俺を殴りたいんだとしてもそういう誘い方じゃなかった。
 それに、『死にたくなければ』って言っただろ?
 その割には、脅してるニュアンスでもなかったし、誰かに強制されている感じじゃなかったから、逆にあんたは信用できると思ったんだ」

「……やれやれだぜ」


 呆れたような言葉をかけて帽子を深く被る承太郎だが、あまり本心から呆れているようには見えなかった。

 はじめはゴクリと息を飲む。
 実を言えば、これも推理というほどの事ではない。あくまで、一つの賭けのようなものだ。
 承太郎が信頼できる相手だと思っているわけではなく、こうしなければ自分の疑問が氷解しないからこそ承太郎についていった。
 それこそ、頭のおかしな奴だったら理屈なんて通用しない。
 このまま、殴られるかもしれないし、仲間を呼ばれて暴行されるかもしれないというのは少し思っていた。

 だから、いざという時に目立つ場所にもなりうる住宅街近くの公園を話し合いの場所に選んだわけだ。
 承太郎に或る程度信頼が置けたのは、その場所で話す事を呑んだからである。
 どうやら、はじめの考えていた事を、承太郎も理解しているらしかった。

 ……ただ。


「金田一。一つ言っておくが、お前はこれから、恨みを買った覚えがない奴にも狙われるハメになるぜ」


 承太郎は、低く抑揚のない声でそう言った。
 胸をナイフで突き刺されたように、はじめはその一言で固まった。


「……!」

「それが、俺の言っている『死にたくなければ』って言葉の意味だ。今から、黙って俺の話を聞け」


 そして、承太郎は、金田一の目の前に人差し指をつきつけた。



「――――お前が今いるのは、お前が本来いるべき世界じゃない」



 それから、承太郎は、聖杯戦争について、はじめに向けて語り出した。
 この承太郎の話で、はじめが先ほどまで持っていた疑問は全て氷解していく事になる。
 それは決して、はじめにとって、全て、簡単に納得できるほどの事ではなかったが――。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


22 : 金田一一&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/24(水) 23:29:47 2Bz8885k0



 ……それから、数刻。
 はじめは、警察署に行く予定を変え、結果として、そのまままっすぐ家に帰る事になった。

 この頃、ある事件が起きた関係で、警察署は非常に忙しい状況にあったのだが、その中途でアーチャーに会えたのは幸いだろう。
 それこそ、はじめならば、事件が起きた江東区まで足を運びかねない。
 そして、今、丁度、夕飯の時間という訳である。


(なんでこうなってんだよ……)


 しかし、はじめは腑に落ちない顔でうなぎを食べていた。
 それは、自分が危険な聖杯戦争の参加者になったからでも、本当の世界じゃない場所に来るハメになったからでもない。
 そんな繊細な神経をしているならば、これまで七十件以上の殺人事件に巻き込まれている時点で、とっくに発狂しているだろう。


「なかなか美味いな……。ここの奥さんは、かなり良いメシを作るみたいだ」


 彼のうな重の味が薄いのは、アーチャーこと空条承太郎が、金田一家に住み着く事になったからだ。
 そして、こうして、承太郎も一緒に夕食の卓を囲んでいる。

 空条承太郎という名前の通り、日本育ちなので、その外人じみた顔に反して和食も好んでいるらしく、箸の使い方も上手である。
 承太郎の登場で、はじめの晩飯のうな重のうなぎの量が、明らかにいつもの分量より少なく、しかもタレが全然かかってないところが全部はじめに来ている。
 この家の人間であるはじめよりも、承太郎の方が多くうなぎが寄せられているのは、全く、どういう事だろう。
 確かに、これも全部、偽りの食卓と言えばそれまでなのだが、やはり、どんな場所でも美味い物は食べたいのである。
 こうして、豪勢な飯の日に限って、来客にそれを取られるのははじめの家のジンクスなのだろうか。


「まあ、空条さんたら~! お上手ね~!」


 はじめの母もこんな様子である。
 これだけ顔が良くてワイルドな客人が来てしまえば、態度が変わるのも仕方ない。
 イトコのフミも、「おい、ハジメ! このイケメン誰だよ!」と小突いてくるが、はじめはそれを無視している。
 要するに、女性はメロメロなのである。

 この調子で美雪まで取られたら……と、はじめの脳裏に嫌な予感がよぎる。
 いくら模造された世界とはいえ、そんな事になったらはじめは破滅だ。
 その想像だけはすぐに振り払っておきたかった。


「――まったく、あんたもこんなにカッコいい友達が泊まりに来るならもっと早く言いなさいよ!
 言われてればもっと奮発できたのに……」

「……んな事言ったって、今日突然言われたんだもん! しょうがないだろ」

「ねえ、でも、空条さんはこれから何日か泊まっていくんでしょう?
 それなら、明日からもっと良い物を作っておきたいわねぇ」

「普段通りでいいだろぉ! 突然気合い入れなくたって」


 はじめは、内心「第一、友達じゃないし……」と、独り言ちた。
 しかし、遠方から訪ねて来た友達という事になっている。
 そうしなければ、承太郎を家に置かせてもらえないからだ。
 はじめの受難の原因である承太郎は、どこか余裕のある笑みで金田一親子を見ながら夕飯を頬張っていて、少し腹立たしい。


23 : 金田一一&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/24(水) 23:30:06 2Bz8885k0


『……すまんが、泊まる場所が手配できそうになくてな。
 今日からお前の家には世話になる事になる。
 ただし、代わりに、お前の言う通り、お前やお前の近しい人間は全て俺が保護する」


 夕方に話した内容では、こんな感じだ。
 要するに、承太郎がここに泊まるのは、交換条件によるものという事になる。

 確かに、聖杯戦争のルールからして、承太郎を手近な所に置いておくのは当然なのだが、ただでさえフミという居候がいるこの家が余計に居心地が悪くなってしまうだろう。
 承太郎が泊まれる部屋ははじめの部屋くらいしかない今、承太郎は必然的にはじめの部屋に泊まる形になるわけだ。
 こんな大きな人間が入ればそれだけで圧迫されるし、エッチなDVDも見づらくなってしまう。いくらなんでも、居心地が悪すぎるだろう。


(まあ、仕方ないっちゃ、仕方ないんだけどさ……)


 サーヴァントとしての空条承太郎に託した命令は、『自分の周囲の人間の保護』のみだ。
 聖杯はいらないし、脱出方法を探し出すまでは、承太郎にはここのガードマンをやってもらう。
 はじめと承太郎は、それを条件とした同盟関係を受け入れた。
 家に泊めてやらなければ、ちゃんと働いてくれるかもわからない。まだ承太郎の性格もよくわかっていないのだから。

 ゲームのNPCのような物であるとはいえ、この世界の中にははじめのように別の世界から連れてこられた人間も紛れ込んでいるかもしれない。
 何かのきっかけに記憶が戻って来るシステム上、美雪や母さんが本来の記憶を失った彼女たちである可能性も否定できないわけだ。
 それゆえ、NPCの犠牲も最低限にとどめなければ危険であるのは明らかだった。
 はじめだけじゃなく、それを守る役割も、彼に担わせた。
 その点において、はじめも後悔はしてない。


(別の世界、か――)


 はじめは、――半信半疑であったが――、ふと、思う。
 親しい人の死や、引き起こした悲劇までが、全部、この世界にはない。
 それが少し、切なくもあった。
 この世界の人間がこれから殺人事件を引き起こそうとするか否かはわからないが、未来を知っているのなら止めたかった事件も数えきれないほどある。
 尤も、ここでそれをしたところで、元の世界に影響はないし、止めようにも難しい所は多い。


(……)


 今更、そんな事を考えていても仕方ない。――はじめは、すぐにそう思った。
 やはり、頭をすぐに切り替える必要があった。
 そう、ここに捕らわれた人間がどれだけいるのかわからないが、それが全員で生きて帰れるように、常に頭を働かせなければならない。
 聖杯戦争に飲み込まれて、殺されてしまわないように……。



(……大丈夫。俺はきっと、元の世界に帰ってみせる。
 何たって、俺は、あの金田一耕助の孫なんだ――! ジッチャンの名にかけて……必ず!!)





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24 : 金田一一&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/24(水) 23:30:41 2Bz8885k0

【CLASS】

アーチャー

【真名】

空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険

【パラメーター】

筋力D 耐久C 敏捷D 魔力C 幸運A 宝具EX

【属性】

混沌・善 

【クラススキル】

対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:C
 マスター不在でも行動できる。
 アーチャーの場合、マスターを失ってから一日間現界可能。

【保有スキル】

黄金の精神:A
 「正義」の輝きの中にある精神。人間賛歌を謳う勇気と覚悟の心である。
 勇猛、戦闘続行を兼ね備えた特殊スキル。

心眼(偽):B
 直感・第六感による危険回避。
 虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。

海洋知識:A
 海洋生物について学者レベルの知識を持つ。
 その為、海に深い関わりのある相手と遭遇した場合、その真名や特性を即座に看破する事が可能となる。

【宝具】

『星の白金(スタープラチナ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人

 空条承太郎の持つ幽波紋(スタンド)。
 高い筋力と戦闘力を有し、生身の人間である本体・承太郎の代わりに戦闘を行ってくれる。
 他のスタンドを寄せ付けない桁外れな破壊力、スピード、精密動作性、視力、動体視力を持ち、眼前から発射された銃弾を指で摘んで止める事さえも可能とする。
 アーチャーとしては、この『星の白金(スタープラチナ)』が金属製の弾丸などを拳銃のようなスピードで射出する事もできる為にクラス適正があるとされる。
 この宝具の使用中は、Aランクの『千里眼』のスキルも付随され、遠距離からの攻撃を回避する事も可能。
 【破壊力 - A / スピード - A / 射程距離 - C / 持続力 - A / 精密動作性 - A / 成長性 - 完成】

『JOJOの世界(スタープラチナ・ザ・ワールド)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:∞ 最大補足:∞

 宝具『星の白金(スタープラチナ)』による時間停止能力。
 この宝具の真名解放を行うと、承太郎と『星の白金(スタープラチナ)』以外、自らのマスターも含め誰も対応できない独自の時間停止世界が始まる。
 その為、この宝具の真名を解放すると、アーチャーは光さえも超えるスピードで動く事が可能となる。
 ただし、その限界時間は5秒程度で、再使用には数呼吸時間を置く必要がある。
 また、例外的に、同種の能力を持つ相手がこの時間停止に対応できてしまう場合がある。

【weapon】

『帽子』
 彼のトレードマーク


25 : 金田一一&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/24(水) 23:31:27 2Bz8885k0

【人物背景】

 『ジョジョの奇妙な冒険』の第3部に登場する主人公。第4部、第6部にも主要人物として登場する。
 肉体は17歳~20歳ごろの若い頃であるが、記憶はあくまで死亡時までの物を有している。
 ちなみに、能力も、全盛期を基準にしている為、スタープラチナ・ザ・ワールドは5秒まで可能。

 職業は海洋学者。
 高校時代に「スタンド」の力に目覚め、母を救う為に仲間と共に、DIOを倒す冒険に出た事がある。
 父は日本人ジャズミュージシャン・空条貞夫、母はジョセフ・ジョースターとスージーQ夫妻の一人娘ホリィ。
 このように、ジョースターの血統を引き継ぐハーフであり、後にアメリカ人女性と結婚。娘・徐倫を授かっている。
 互いに引かれ合うスタンド能力を持つ事で、40代で亡くなるまで、善悪問わず多くのスタンド使いと出会い、戦いに巻き込まれた。

【サーヴァントとしての願い】

 自分の死後の娘の様子を確かめたい。
 だが、ひとまずはマスターの方針に付き合ってやる。

【基本戦術、方針、運用法】

 戦闘力は十分だが、『星の白金(スタープラチナ)』の射程が射程なだけに、一般的なアーチャーとは使い勝手が異なる(ただし、弾丸などを弾きだす事で遠距離の相手にも攻撃する事は一応可能である)。
 承太郎自身も、体力、頭の良さ、度胸がいずれも人並以上とはいえ、あくまで肉体は普通の人間なので、生命に損傷を受けるような攻撃を受ければあっさり死んでしまう。
 『星の白金(スタープラチナ)』の本体である承太郎と、マスターであるはじめが同時に弱点になってしまうが、自己防衛は彼らの持つ機転に期待するしかない。

 性格面では、口は悪く、気に入らない相手には絶対に従わない為、サーヴァントとしては扱いづらいだろうが、方針の合うマスターならば、共同戦線を張るだろう。
 今回のはじめも、比較的まともに意見が合致した部類だが、それでも、令呪など自分に都合の悪いルールはあまり話していない。
 そうした協調性の薄いマイペースな部分は、場合によっては凶と出る事もあるかもしれない。


26 : 金田一一&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/24(水) 23:32:05 2Bz8885k0





【マスター】

金田一一@金田一少年の事件簿

【マスターとしての願い】

この聖杯戦争からの脱出。

【weapon】

特になし。

【能力・技能】

『推理力』
 何といってもその祖父譲りの高い推理力。IQ180という驚異的な知能指数を持つ。
 これまでに多くの難事件を解決しており、その能力は警察内部でも一目置かれている。警視総監賞を受賞しそうになった事もあるが、総監の前でAVを再生した為に取り消しになった。
 また、学校の成績は悪いが、中学生まではちゃんと勉強していたらしく、不動高校の入学時の成績は高校始まって以来のトップだったらしい(そうは見えないが、当初の公式ガイドブックでも、「中学の時は勉強していたのかも」と書かれている)。
 初期はその片鱗が見られ、「異人館村」では長々と「ダビデの星」について解説するシーンなど、後期からは到底考えられないような理知的なシーンもある。
 「悲報島」や「雪影村」では中学生レベルの理科に関しては当たり前に知っている描写もあったが、「天草財宝伝説」などでは天草四郎、「ゲームの館」では鎌倉幕府を知らないなど中学生レベルの社会科すらわかっていない姿も見受けられる。
 ただし、「異人館村」、「秘宝島」、「首吊り学園」など一部事件では、何らかの形で推理を失敗する描写も見られ、あくまで完全であるとは言えない。

『人脈』
 相当の人脈があるのか、クラスには多数の友人がいる描写があり、過去の友人から招待を受けるなどの形で事件現場に足を運ぶケースも多い。
 たまに、クラスの友人が代返をしてくれるとか……。

『卓球』
 一応、特技。
 製作者いわく、「亡霊学校殺人事件」のトリックの都合で作られた設定らしく、この話以外では特に話題に挙がらない。
 他のスポーツはほぼダメ。

『マジック』
 祖父にマジックを仕込まれており、その為、自らもプロのマジシャン顔負けのマジックを行う事が出来る。
 そのほか、そんな手先の器用な一面を活かし、スリなども行う(ただし犯罪には使っていない)。

『スケベ』
 スカートから見えるパンツの色で不動高校の先輩の名前がわかるという無駄な特技まで持っている。
 ただし、桜樹るい子(「学園七不思議」)や宗像さつき(「魔神遺跡」)以外の先輩の多くは初対面として扱われる事が多い為、別に先輩全員がわかるわけではない。
 「魔術列車」では、目隠しして身体に触れるゲームを婦警たちと行っており、その際には次々と相手のバストサイズや体格で名前を当てている。

『ゲーム』
 テレビゲーム好きで、そこそこ強い。
 これは時代によって内容が代わり、かつては「バーチャで酔拳のジジイ使えば負けない」と言っていったが、最近はスマホでアプリをやっている。
 それに限らず、知的ゲームは相当得意で、将棋や囲碁は、ほぼ未経験でも経験者をうならせるレベルの腕前を持つ。

『死神』
 行く先々で殺人事件に巻き込まれるという特異体質であり、現時点で70件以上もの殺人事件に偶然巻き込まれている。
 中には、「邪宗館」、「狐火流し」など、事件そのものがはじめの行動が遠因となって発生しているケースも……。
 ただし、一方で、逆に、「氷点下15度の殺意」のように、金田一がいなければ死人が出ていたのを、彼の救護で重症レベルで済ませた事件もあるほか、「悲恋湖伝説」では、ある登場人物が「酷い事件を解決する為に天命が君を呼んだ」と解釈している事もある。

『男性的魅力?』
 女性関係では、上述の通り幼馴染の七瀬美雪と両想いであるが、なかなか進展していない。ただし、「グランドフィナーレ」では、キスを交わしており、それ以前にも抱き合う描写などもある。
 また、アイドルの速水玲香にも好意を寄せられており、金田一自身も「好みのタイプは玲香」であるとしているが、やはり本命は美雪。好みのタイプと本命はやっぱり違う。とはいえ二股もかけようとする。
 ちなみに、美雪によると、金田一の初恋は小学校の時の共通の幼馴染であった高森ますみ(「仏蘭西銀貨」)であると言っているが、金田一自身がそうした素振りを見せる描写はない。
 作中では、「怪盗紳士の殺人」の和泉さくら、「天草財宝伝説」の三浦エミリ、「雪影村」の太刀川都、「邪宗館」の常葉瑠璃子など、多くの女性キャラに好意を寄せられている。


27 : 金田一一&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/24(水) 23:32:25 2Bz8885k0

【人物背景】

 誰よりも犯罪を憎み、誰よりも犯罪者を憎まない少年。
 かの名探偵・金田一耕助の孫(母方の祖父)にして、IQ180の天才高校生。
 東京都不動山市内にある私立不動高校の2年生で、8月5日生まれの獅子座(公式ガイドブックでは昭和53年とされているが、この辺はサザエさん時空なので気にしてはいけない)。本籍は埼玉県。B型。
 普段は成績が悪く、運動音痴で、サボリやエスケープも行う劣等生で、学校では先生に怒られる事もしばしば。スケベでお調子者で、酷い時は「屋上からバンジージャンプして遊んで大怪我する」など、おふざけで大けがをする場面も。
 しかし、そんな彼もひとたび事件が起こると祖父譲りの推理力や冷静さ、そして犯罪を許さない正義感で殺人の犯人たちを暴いていく。

 幼馴染の七瀬美雪とは両想いだが進展せず、「金田一少年の事件簿」では大半の事件で彼女と共に事件に巻き込まれる事になる。
 決め台詞は、「ジッチャンの名にかけて!」、「謎はすべてとけた!」。

【方針】

 聖杯戦争からの脱出。

【備考】

 不動高校では、はじめが解決したいくつかの事件が発生していなかった形に改竄されています。
 ただし、「オペラ座館殺人事件」の剣持警部や「悲恋湖伝説殺人事件」のいつきさんのように、事件を通してコネクションが出来たレギュラーキャラについては、はじめとの関わりがある物として扱われているかもしれません。

 また、承太郎は、令呪についてははじめに話していません。


28 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/24(水) 23:32:44 2Bz8885k0
投下終了です。


29 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/24(水) 23:34:16 2Bz8885k0
あ、空条承太郎のスキルですが、『黄金の精神』は、「第二次二次キャラ聖杯戦争」のジョセフ・ジョースターから引用したものである事を追記しておきます。


30 : ◆RzdEBf96bU :2016/02/25(木) 00:30:28 RV7Q1Ajw0
投下します


31 : 鞠山雪彦&アーチャー ◆RzdEBf96bU :2016/02/25(木) 00:31:11 RV7Q1Ajw0
少女が撃たれた。それだけのことである。

青い月の光も届かぬビルの谷間。
コンクリートの地面に倒れながら少女が荒い呼吸をする。
咳き込み、血を口から流している。
白いワンピースが赤く染まっていく。
もはや、永くはない。

少女を守るように、剣士が一歩前に出る。出ようとする。
もはや歩くことも剣を握ることもできぬという体のくせに。
それは単に剣士が少女のサーヴァントだからという理由だけではない。
剣士が召喚された時、少女は涙を流しながら謝った。
ごめんなさい。力がなくてごめんなさいと。

少女の背にはむごい傷跡がいくつも刻まれていた。
ゴミよ役立たずよと罵られ、誰からも当たり前の愛さえ受けられず。
自分に何の価値もないと思い、足手まといになると乾いた涙を流した少女。

剣士は生前、二人の子供を持つただ父親であった。
母を亡くした子らのために、懸命に働いて金を稼ぎ、守り育てた。
されど侵略者の軍勢の前に、小さな子供たちは蹂躙された。
父は子を失い、復讐者となった。
剣を取り、侵略者たちを何千もの骸に変えて、いつしか英雄と呼ばれた。
だが心は空虚のまま、満たされることなく戦で散った。
だから剣士は、あらゆる残酷さから彼女を守りたいと思った。
守れなかった子供を救いたいと祈った。
思ったのに。
祈ったのに。

「胸に二発ぶちこんだ。てめえらもここで終わりだ」

片側がサングラスの奇妙なメガネをかけた刑事が冷たく言い捨てた。 
刑事の隣の金色のサーヴァントは、少女の涙を見て、まるでワインの香りを楽しむかのような表情をしている。
剣士は折れた剣を握ることもできぬ。芋虫のように四肢をもがれ血の海に転がりながら彼らをにらんだ。
清廉な面影も残さぬ、そこには深い憎悪だけがあった。


32 : 鞠山雪彦&アーチャー ◆RzdEBf96bU :2016/02/25(木) 00:31:39 RV7Q1Ajw0
―涙をこぼすくらいこわがらなくてもいいじゃあないか…私たちは君たちと友達になりに来たんだよ

金色のサーヴァントとの出会いの言葉を思い出し、剣士は己を呪った。
何故自分はこいつを信用してしまったのか。
その瞳に見惚れてしまったのか。
こいつは、正真正銘、吐き気を催す邪悪だということに気づかなかったのか。

「ユキヒコ…貴様もそうなのか。このサーヴァントと同じで…我らを殺すためだけに…!」
「そうだよ?バァアアア―――――カ!」
「貴様は、何も思わないのか!言ったよな、この子と同じ年頃の息子がいたと。子を殺めることに罪悪感はないのか!」
「ないに決まってんだろ。精々こんな糞みてえな催しモンに巻き込まれてご愁傷さまでしたくらいにかな」
「お前は…ッ!悪魔よ人非人よ。こんな所業をして、彼の世の息子に顔向けができるとでも…」

時が、止まった。
剣士の恨み言を、聞き流していた刑事の顔から表情が消えた。
ゆっくりと剣士のもとへ歩き、顔に向かって蹴りを入れた。

「ッガ…!」
「随分とまあ好き勝手喋ってくれたな。どうせくたばるから憂さ晴らしに愚痴らせてやったが、今の言葉は許せねえ」

何度も何度も何度も、蹴って蹴って蹴って。
剣士の胸ぐらをつかみ、刑事は叫ぶ。

「俺は」
「俺には」
「俺たちには…ッ」
「俺たちには絶対に勝たなきゃならない理由がある!!」
「てめえのガキには気の毒だがよ~~~、俺は自分の息子の方が何千倍も何兆倍も大事なんだ」
「その糞餓鬼に可哀想な理由があろうが、お前がどんなに守りたかろうが、どれだけ綺麗事言おうが
ど――――――――――――――――――――――でもいいんだよ!!!!」
「ドラジェのためなら俺はなんだってできる」
「聖杯だって…獲って見せる」
「お前は死ね!!!俺のために、ドラジェのためにてめえらはくたばってろ!!!」

叫び吠え猛り。
刑事は自分の感情をぶちまける。
怒りを絶望を哀しみを愛を憎しみを。
人が持ち得る全ての感情を。

散々剣士をなぶり、刑事はナイフを拾う。
己のサーヴァントが魔力で作り出したナイフだ。
これで霊核を刺せば、剣士を殺せる。

ナイフを手にしながら刑事―鞠山雪彦―は思い出す。
この世界に来たと理解したときの絶望を。
全てを奪われ、バッドエンドを突きつけられたあの日のことを。


33 : 鞠山雪彦&アーチャー ◆RzdEBf96bU :2016/02/25(木) 00:32:03 RV7Q1Ajw0
◆◆◆

最初の違和感は指輪だった。
薬指にはめた指輪を見て、どうしてこんなものをつけているのかと疑問に思った。
確かに以前結婚したことはあるが、数か月で殺し合いのような夫婦喧嘩を繰り返しすぐ離婚したはずだ。
指輪なんてしているはずがないのに。
そう思い指輪を外そうとしたが、不意に外してはいけない予感がした。
理由はわからないがなんとなく外さないことにした。
誰か大事な存在のために、この指輪が必要だった気がしたからだ。

…大事な存在。大事な存在って…誰だ。
妻もなく、剣かがこの世で最も好きな自分に、そんなものあったか。

違和感は日に日に大きくなっていき、ある日同僚に写真を見せられた。
変哲のない家族旅行の写真であったが、写っていた子供の姿を見て、鞠山は急に頭痛を感じた。
息が出来なくなり、激しく脈打つ心臓を抑えながら、鞠山は違和感の正体を知った。

子供。子。息子。…息子?…ェ。…ジェ。ドラジェ…ッ!!!

そうだ。俺はあの時、この指輪をドラジェに…!!

全てを諒解し、鞠山は仕事も投げ捨て自宅へと駆けていく。
脈拍が収まらない。汗が止まらない。
胃が返り、腹の奥から抉り取られそうな痛みを感じる。

鞠山雪彦は聖杯戦争という地獄の前に、双六ゲームというまた別の胸糞わるい地獄にいた。
世界を壊す運命の少女と共にゴールを目指し、二人のプレイヤーでつぶし合う双六。
死ぬはずだった運命を捻じ曲げるには、指輪を嵌めプレイヤーになることしか方法はなかった
死ぬわけにはいかなかった。負けるわけにはいかなかった。
自分にはドラジェがいる。ドラジェには自分がいる。
自分はドラジェのたった一人の家族だから。

だが鞠山は指輪を外して死の運命を受け入れた。
あの日双六ゲームの最中で、炎に包まれるビルでドラジェは避けられない死の淵にいた。
だから父は指輪をドラジェにささげ、息子の死の運命を捻じ曲げることを決断した。
プレイヤーの運命を背負わせることになっても、それでも。
生きて。どんなに辛くても。誰よりも幸せになってほしかった。

そして鞠山は自分の指輪に手をかけて。

瞬間、東京にいた。


34 : 鞠山雪彦&アーチャー ◆RzdEBf96bU :2016/02/25(木) 00:32:33 RV7Q1Ajw0
◆◆◆


肩で息をしながら、自宅のマンションの自室のドアの前にたどり着いた。
腕時計の針は19時を指していた。もうとっくにドラジェは小学校から帰ってきている時間だ。
鞄からカギを取り出そうとするが、震えてうまくとりだせない。
漸く取り出したが、カギは手から滑り落ちた。
カギを拾い、ドアを開ける。

玄関には、子供靴がなかった。
息ができない。

「嘘だ、嘘、だろ」

ゆっくりと膝から崩れ落ちながら、かすかな希望に縋りついて這いながらリビングにたどり着く。
きっといつものように、食事の準備をして、ドラジェが自分を待っていて。

リビングには、墨色の仏壇が鎮座していた。

「あ」

仏壇から顔を背けると遺影が飾ってあった。

「ああ」

遺影の少年は恥ずかしそうに笑っていた。

「あああ」

変わらない姿で、ドラジェが笑っていた。


何かが切れる音がした。自分の中で、決定的な何かが。


「あ゛ァぁあああァア゛ガァアアア゛ア゛ア゛!!!!」

床に肘をつき、首を垂れながら、鞠山はただ泣いた。
ドラジェに渡そうとした指輪を自分が嵌めている。
その事実は鞠山に残酷な現実を突きつけた。
つまり、変えるはずだったドラジェの死の運命を歪めることなく。
運命はドラジェにもたらされ。
ドラジェは。ドラジェは。

「う…うぁあああ゛…」

涙でもはや何も見えない。
呼吸もろくにできず、何も考えられず。
全てが暗闇だった。

「ドラジェ…」

何時間泣いたのだろう。
もはや涙も枯れ果てていた。
心は空虚で立ち上がる気力もなかった。

「ドラジェ」

ゆっくりと左手の指輪に手を伸ばす。
もう、希望はない。
生きる意味がないなら、あの時捻じ曲げた死の運命を。

「お父さんも、そっちへ」

受け入れようとした時だった。

「問おう。君が私のマスターか」

更なる悍ましい運命が待っていた。
その男は大きく深く強く美しく。
鞠山はその男を、運命に感じた。
自分の大嫌いな、邪魔しかしてこない糞喰らえな運命に。


35 : 鞠山雪彦&アーチャー ◆RzdEBf96bU :2016/02/25(木) 00:32:54 RV7Q1Ajw0
◆◆◆

「なんだ、てめえは。鬱陶しいからどっかいって死ね」
「君は選ばれたんだ。この聖杯戦争のマスターに」
「知るか。知ったこっちゃねえ」
「ふむ、では君が聞かずとも語ろうとするか」

黄金のサーヴァントは語る。
新たな糞みたいな遊戯を。
聖杯。サーヴァント。マスター。東京。
どれもが鞠山にとってどうでもいいことではあったが、
話を聞くにつれ、鞠山の瞳に光が戻ってきた。

「つまりなんだ。俺は元の世界からこの東京に連れてこられたということか」
「ああ」
「人の意志も聞かずに」
「そうなるな」
「ドラジェに指輪を嵌めようとした瞬間に」
「言うまでもない」
「っざっけんな!!じゃあ何か!?ドラジェが死んだのはそのクソ聖杯のせいじゃねえか!?
ふざけんなふざけんなふざけんな!!!なんでよりによって、あの時から、糞、勝手に人を連れてきて、糞ッたれ…」
「まあ、仕方のないことさ。こうなることも運命だったのだ」

その言葉を聞いた瞬間、鞠山は男の胸ぐらにつかみかかった。

「何ふざけたこと抜かしてんだ?運命?ドラジェが死ぬのが運命だってんのか!?ぶっ殺すぞこの糞野郎!!!」
「それで?私を殺すか。いいだろう。その令呪を使えば簡単に殺せる。やれよ。この聖杯戦争を勝ち抜く武器を失いたいならな」
「何だと?」
「勝とうとは思わないのか。万物の願いを叶える聖杯をほしくはないか。息子と永遠の幸福を得たいとは思わないか」
「俺は…俺は…」

言葉を聞くたびに、指から力が抜ける。
運命が耳元で囁く。

「覚悟を決めろよ鞠山雪彦。覚悟は幸福だぞ?」
「……俺は」


36 : 鞠山雪彦&アーチャー ◆RzdEBf96bU :2016/02/25(木) 00:33:25 RV7Q1Ajw0
◆◆◆

「鞠山、おまえどういうつもりだ。上官に向かって何を言った」
「わかんねえのかバァアアカ。俺の手駒になれって言ったんだ」

警視庁。捜査一課。
下っ端のいきなりの無礼に、警視総監は怒りを隠せなかった。
アポもとらず、勝手に自宅へと入って来たと思えばこの暴言。
総監の警察人生数十年の中で、最も腹の立つ出来事であった

「貴様、その口、糞生意気な態度…首を飛ばされる覚悟で言ってんだろうな、アア!?」
「知るか。めんどくさいからさっさと済ませたいんだよ」

鞠山はため息をつくと、手を挙げて合図を送った。
粒子が集まって、金髪の男が現れた。

「やれやれ、人使いの荒いことだ。これで18人目だぞ。刑事部長に管理官。重要ポストを支配するのはいいが、
これを植え付けるのにも魔力は使うのだがね」
「だったら血ィ吸ってろ。そこらの人間殺してももみ消しとっから」
「な…なんだその男は!?どこから現れた!?」

目の前に突然現れた男を目にして、警視総監は驚きを隠せなかった。
今まで何十年と、何千人も犯罪者と向き合ってきた。
だがこれほどまでに、どす黒い悪のオーラを感じた男はいなかった。
ましてや、悪だと理解しているのに、安心感さえ感じる存在など。

男の髪が妖しく輝き、自分に迫ってくるというにも関わらず、喜びさえ感じていた。

「さあ、私に身を捧げろ。警視総監!」

警視総監は歓喜の涙をも流し、男の悪をその身に受け入れた。

「フフ…鞠山。これで警視庁五万人の人間は」
「ああ。俺の掌の思うがままだ。」

肉の芽を植え付けられた総監を見て、男は鞠山に笑いかけた。

「しかし鞠山。聖杯をとるがため、ここまでやるとはな」
「当たり前だろう。聖杯をとるためならなんだってやる」

男に問われた時、鞠山は決断した。

全てを利用して、聖杯をつかむと。
たった一つのシンプルな理由だ。
なぜなら俺は。


37 : 鞠山雪彦&アーチャー ◆RzdEBf96bU :2016/02/25(木) 00:33:45 RV7Q1Ajw0
◆◆◆

鞠山の自室、二人の客がいた。
少女は剣士の膝の中で安らかに眠っている。
子守唄を歌いながら、少女の寝顔を剣士はほほえましく見つめている。

「ありがとうユキヒコ。この子を保護してくれて」
「当たり前だろ。俺は市民を守るお巡りさんだぜ」

深々と礼を言いながら頭を下げる剣士を見て、鞠山は内心冷たく思っていた。

こんなに簡単に人のことを信じるなんて馬鹿同然だ。
これだけ馬鹿だと利用価値もない。
騙されてこちらの足も引っ張られる。
マスターもこんな子供じゃあ、足手まといだ。
切り捨てる。
仲間だと信用させて、不意を衝く。

鞠山は冷徹にそう判断した。
剣士の感謝の気持ちでさえ、鞠山には道具にしか過ぎない。

「ユキヒコ。ところであの写真は…」
「…息子だよ。大事な、大事な…もういないがな」
「…すまない」
「いいんだ。ドラジェはもういないけど、それでも生きるって決めたからな」
「ユキヒコ…」

そう。生きる。生きて勝利する。
過程や方法なんてどうでもいい。
俺はドラジェの。
たった一人の。


38 : 鞠山雪彦&アーチャー ◆RzdEBf96bU :2016/02/25(木) 00:35:11 RV7Q1Ajw0
◆◆◆




「お父さんだもんなあ。俺。」





ナイフで刺された直前、剣士は見た。
鞠山の眼はとても優しかった。
息子を見る、父の瞳だった


「ユキヒコ…君は…」

剣士は理解した。
彼は悪魔でも人非人でもない。
息子を愛する、ただの父親だと。

「…ほらよ」

鞠山はぶっきらぼうに少女をつかみ、剣士の胸に下ろした。
鼓動が聞こえる。
だんだんと小さくなっていくけれど、命の鼓動が。

「…パパ」

最期に剣士は少女の声を耳にした。
少女は剣士を見て、笑顔を見せた。
自分をずっと守ってくれた、大切な剣士/父親に。
剣士は涙を流しながら、空を仰いだ。
消滅しながら少女に子守歌を捧げ、ささやかな祈りを月に託した。

どうか救いをめぐんでください。
小さな家族に。
息子を愛する、ただの父親に。


39 : 鞠山雪彦&アーチャー ◆RzdEBf96bU :2016/02/25(木) 00:36:28 RV7Q1Ajw0

◆◆◆


ささやかな願いがため。
儚き希望を求めて。
もがき苦しむ駒を見て。
神/DIOは嗤う。

【真名】
DIO@ジョジョの奇妙な冒険

【クラス】
アーチャー

【属性】
混沌・悪

【パラメーター】
筋力:A 耐久:B敏捷:B 魔力:B 幸運:A 宝具:A

【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の魔術は無効化する。大魔術や儀式呪法などを防ぐことはできない。

単独行動:B
マスターからの魔力供給が無くなったとしても現界していられる能力。ランクBは二日程度活動可能。


【保有スキル】
吸血鬼:A
石仮面により脳の未知なるパワーを引き出され進化した存在。 
吸血により生命を奪い、負傷をも数秒程度で治癒する
さらにアーチャーは研究により気化冷凍法や空裂眼刺驚などの技をも編み出している
ただし太陽光およびそれに準ずるエネルギーに弱く、浴びると数秒で消滅する

カリスマ:A+
大軍団を指揮・統率する才能。ここまでくると人望ではなく魔力、呪いの類である。
特にその精神が悪の者に対して、高いカリスマを発揮する

肉の芽:B
アーチャーの細胞を変化させて作りだされており、額に肉の針を突き刺すことで脳にまで到達。
アーチャーに圧倒的カリスマを感じ服従することに絶対の喜びを感じるようになる

投擲:B
短刀及び重機を砲弾のように放つ技能

探索妨害:A
魔術的な遠視や占いによる探索を妨害し、探索に使う道具をも逆に破壊できる。

【宝具】
王の世界(ザ・ワールド)
ランク:A 種別:対界宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
スタンドと呼ばれる、精神が具現化した能力。
DIOのスタンド能力は時間停止。止まったときの中をDIOだけが自由に動ける
ただし、同じ時間を操る力を持つか、光より早く移動する力を有していたならば、
DIOの世界に入門できる。
停止時間は最大9秒間。
残り魔力量に応じて、停止時間は変動する。
スタンドステータスはステータスは筋力A、耐久B、敏捷A+相当。

偽・紫の隠者(ハーミットパープル・レプリカ)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:300 最大捕捉:1~5
DIOが奪ったジョナサン・ジョースターのボディが発現させたスタンド能力。
腕に巻き付く茨の姿のスタンドビジョンである。
レンジ内の光景をカメラや水晶などに念写する能力を持つ。
同じタイプのスタンドを持つジョセフ・ジョースターとは異なり、
茨を伸ばして攻撃するなどの戦闘能力は有しない。

血は命なり(ファントムブラッド)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
奇妙な造形をした石仮面。
仮面を被り、血液を垂らすことで骨針が仮面から飛び出し、脳を刺激して吸血鬼へと変える。
ただしあくまで人間にしか使えず、サーヴァントや人外の存在には使用できない。

君は引力を信じるか(オーバーヘブン)
ランク:EX 種別:対運命宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
DIOに関わった者を、数奇な運命へと導く宝具
DIOの存在そのものが宝具といってよく、例えDIOが消滅しようとも
DIOに僅かにでも触れたことがあるならば、奇妙な物語から逃れることはできない

【weapon】
ナイフ

【サーヴァントとしての願い】
聖杯を獲り、世界を支配する
マスターには表向き従うが、その時が来たならば切り捨てる

【人物背景】
ジョースター家の百年にわたる宿敵の吸血鬼。
ジョースター家の養子として迎えられ、乗っ取りを計画する。
その計画がジョナサン・ジョースターの手により露見すると、石仮面の力で人間を止める。
世界を支配しようと目論むが、師ツェペリの手により波紋を会得したジョナサンの前に敗北。
首だけになりながら生き延び、豪華客船でジョナサンを殺害。
その後ジョナサンの肉体をのっとり百年間海底で眠り続ける。
百年の眠りを経て現代に復活。最強のスタンドザ・ワールドを発現し、
ジョースター家との因縁に決着をつけようとするが、空条承太郎のスタープラチナに完全敗北、死亡。
しかしDIOが死んでも、後世にその悪の影響を遺し続けた。


40 : 鞠山雪彦&アーチャー ◆RzdEBf96bU :2016/02/25(木) 00:37:17 RV7Q1Ajw0

【マスター】
鞠山雪彦@VANILLA FICTION

【マスターとしての願い】
聖杯を獲ってドラジェを救う。
たとえ、どんな手を使ってでも

【weapon】
拳銃
手錠
警察手帳

【能力・技能】
喧嘩の技能。「喧嘩は想像力」というだけのひらめきと頭脳。
裏社会とのつながりも持つ。

【人物背景】
左側がサングラスの眼鏡の刑事。階級は刑事部長。
人生に大事なのはアドレナリンとのたまう享楽主義者であり、警察上層部や裏の業界ともつながって
麻薬の取引や上層部の不祥事をもみ消したり擦り付ける不良刑事であった
一人息子のドラジェのことは大切に思っており、本人曰はく天使。
ある日、進行役に世界の命運を担う双六ゲームの駒に無作為に選ばれ、本来はガス爆発で死ぬ運命を捻じ曲げられる。
本人は双六に関心はないが、負けたら死亡するので、もう一方の駒の佐藤忍に殺人犯の罪を着せ追い詰める。
ドラジェと一緒に生きるために。
しかし勝利目前、ドラジェがビル火災に巻き込まれ死の淵にいることを知らされる。
数分もしないうちに息子は死ぬ。鞠山は父として決断する。
自分の死の運命を捻じ曲げた指輪を外し、ドラジェに嵌めて次の駒にし、息子の死の運命を変える。
それは捻じ曲げていた自分の死の運命が戻ることを意味していた。
それでも鞠山はドラジェの幸福を祈り、指輪を外そうとした。
その瞬間に、聖杯戦争に呼ばれた。
ドラジェの死の運命を変える寸前に。

【方針】
優勝する。
警視庁の上層部をDIOの肉の芽の力で洗脳済み。
警察の力を利用して、マスターたちを見つけ次第、社会的に追い詰める


41 : 名無しさん :2016/02/25(木) 00:37:32 RV7Q1Ajw0
投下終了します


42 : ◆RzdEBf96bU :2016/02/25(木) 00:47:15 RV7Q1Ajw0
>>左側がサングラスの眼鏡の刑事。階級は刑事部長。
階級を間違えました。刑事部長ではなく巡査部長の誤りでした


43 : ◆RzdEBf96bU :2016/02/25(木) 01:00:38 RV7Q1Ajw0
警視庁。捜査一課。
下っ端のいきなりの無礼に、警視総監は怒りを隠せなかった。
アポもとらず、勝手に自宅へと入って来たと思えばこの暴言。
総監の警察人生数十年の中で、最も腹の立つ出来事であった

あと上の文の一行目ミスで消し忘れていたので削除でお願いします


44 : ◆yaJDyrluOY :2016/02/26(金) 00:50:17 Og6Brspc0
投下します


45 : ◆q4eJ67HsvU :2016/02/26(金) 00:50:49 8HfqsF6g0
皆様、投下お疲れ様です。
自分も投下させていただきます。


46 : エクスデス&バーサーカー ◆yaJDyrluOY :2016/02/26(金) 00:51:47 Og6Brspc0
東京都千代田区 皇居 - 吹上御苑 -

この場所は、大都会東京のコンクリートジャングルの中で数少ない緑を味わえる観光スポットである。
都内の約2割もの巨木が存在し、そこで生息する動植物・昆虫は都内のみならず日本で見ても少なくない割合を占めている程だ。
そんな大自然に囲まれて、ある“存在”が目を覚ました。

(ここは……どこだ……?)

“それ”は薄ぼんやりとした頭で、周囲を観察し始めた。
目前には森の奥底の様な深緑が広がっている。
森閑とした空気の中、鳥の囀りと虫の鳴き声だけが木々に溶けていく。

自分はどうやら眠っていたようだ、と彼が気付いたのは少し時間を置いてからの事だ。
その程度の思考さえ時間が掛かってしまう程に、彼の意識は未だに不鮮明なままだ。
それもその筈、彼には今この時点以前の記憶が一切無い。
まるで意思というもの自体が、この瞬間に芽生えたかのようだ。
なぜ自分はこんな森にいるのか、自分は何者であるのか、全ての情報が無であり闇の中だった。

それから数時間、何も考えずぼうっとしていた彼であったが、ふと少しの違和感に気づいた。
自分の視点がやけに高いことである。
彼の中にある”平均的な人間の視点”と比べると、2倍、いや3倍ほども高い。
まるで木の上にでもいるかのようで、実際下には自分が乗っているのであろう木の幹が存在している。
彼はその場から降りるため、身体を動かそうと試みた。――がしかし、彼の体は何かで固定されているかのように全く動かない。

(むっ……何故だ?)

理由を探りたいところだが首さえも動かない、かろうじて眼球が動くのが幸いか。
しかし、微動だにできない割には拘束されているような苦しさは全く感じず、むしろ風が体を撫ぜる感覚に心地よさすら感じる。
彼は全く飲み込めない状況を打開するべく視線を下方に移し、再度情報を得ようと試みた。
だが相変わらず、見えるのは木の幹や根だけである。
……ん? と彼はそこで一つの疑問を抱いた。
自分が木に乗っているのであれば、視界に枝や枝分かれした幹の付け根などが見えていなければおかしい。
なぜ根本しか見えないのか、幹に磔にされているとでもいうのか。
しかし、自分の足も見えない、目下の自分の鼻も見えないとはどういう状況なのか?
これではまるで目だけが木に張り付いているかのようだ、それではまるきりモンスターのようである。


47 : エクスデス&バーサーカー ◆yaJDyrluOY :2016/02/26(金) 00:53:57 Og6Brspc0
彼はそんな自嘲気味の冗談を脳内で浮かべた瞬間、妙にしっくりときてしまった自分に気づいた。
常人ならばありえないと切り捨てる思考だが、彼にはなぜだかそれを切り捨てる事はできない。
ひょっとしたら記憶を失いつつも、彼は魂の隅っこで今の身体の感覚を覚えていたのかも知れない。

(まさか……私は……木、なのか?)

突拍子もない発想だが、彼にとってそれはもはや確信だと言える推測だった。
――それもそのはず彼、“エクスデス”は紛れも無く大樹そのものなのだから。

(なんなのだ、私は? 樹木に意思があるというのか? 木とはいったい……うごごご)

その瞬間、エクスデスは酷い頭痛に見舞われた。
同時に地面にほど近い幹の部分に、軽く焼けたような痛みが走る。
エクスデス自身がそれを見ることはできないが、そこには3画あわせて直径50cm程もある巨大な令呪が現れている。
それは一見ブラックホールのようにも見えるドス黒い円形の令呪で、近くで見れば模様は細かく、吸い込まれるようなフラクタル図形になっているように見える。
この瞬間、この邪悪なる大樹に聖杯戦争への参加資格と過去の記憶が与えられたのだ。

(そうだ、私はエクスデス……確か私は光の戦士達に敗れたはず……なぜこんな場所に)

記憶を取り戻したエクスデスは、無に飲まれたはずの自分が身体も動かせない無害な樹として再び存在していることに疑問を浮かべた。
無に飲まれた後の記憶も僅かにあるが、自分を取り込む程の“無の力”も結局光の戦士達に破れていた。
もはやエクスデスの存在は欠片も残っていなかったはずだった。
動かぬ身体では考えるくらいしかやることがなく、森林の奥では景色だって代わり映えがないので考察も捗らない。
等々エクスデスが途方に暮れ始めた時――事態は動いた。
大量にあるエクスデスの枝の内一本が、急に“成人男性1人分”程しなったのである。
無論、エクスデスの枝は男性一人分の体重が乗ったところでビクともしないが、いきなり現れるとはどういうことか。
幸いエクスデスの目の届く範囲に“それ”は存在しており、エクスデスにはそれがなんだかすぐに理解できた。

(首吊りだと? ……いや、しかし一体どこから……)

そこにはロープで枝に吊るされた、ごく一般的な首吊りを行っている男が居た。
ビクンビクンと痙攣しているその男だが、さっきまで一切気配を感じなかった。
世界中の邪念が集まったエクスデスの樹で首を吊るとはなんとも恐れ知らずだが、今のエクスデスにはどうすることもできない。
エクスデスはそのまま男が死ぬのを待ち始めた。





48 : エクスデス&バーサーカー ◆yaJDyrluOY :2016/02/26(金) 00:54:53 Og6Brspc0


エクスデスが意識を取り戻してから既に2日が過ぎた。
首を吊っている男は未だに痙攣を起こしており、一向に死ぬ気配はない。
昨日などは痺れを切らして魔法で焼き殺そうかとも考えたが、謎の巨大な白い犬に阻止された。
エクスデスその時初めて気づいたことだが、この白い犬はずっとエクスデスの根本に居座っていたのだ。
地上から肩までの高さが2m半程もある巨大な白い犬にいままで気づかなかったのは、恐らくエクスデスが見ることのできない真後ろの死角に居たからだろう。
この犬は首を吊っている男を守っているのか、エクスデスが少しでも攻撃の気配を感じさせると威嚇し、まれに襲いかかることさえある。
それでもエクスデスを排除しようとしないのは、エクスデスの魔力で存在していることを本能的に分かっているからなのだろうか。
そう、エクスデスは知る由もないが、この白い犬と首を吊っている男こそエクスデスのサーヴァントなのである。
ある世界にてSCPと呼ばれ、“財団”によって管理されていた超常存在、それが彼らなのだ。

そして今、エクスデスが存在しているこの場所に、足を踏み入れる者達が居た。
この皇居-吹上御苑-は土日祝を除いた平日に限り、一般人向けに参観コースが設けられている。
月曜日であるこの日は、休日明けということもありガイド含め約200人がコースに参加していた。
参観コースと言っても、極々一部を見せるだけであり、エクスデス達のいる吹上御所付近の森には団体は決して入ることはない。
しかし、コースの終盤最も参加者達が吹上御所に近づく時、エクスデス達との距離は直線距離で300mほどまで近づいてしまうのだ。
それはガイドだったのか参加者の1人だったのか、エクスデス――というより首を吊っている男だが――から半径300m以内に人間が入った時、白い犬が動き出した。
急に立ち上がったかと思うと、目で追えない程のスピードであっという間に駆けて行ってしまった。
直線で300mの距離はなかなかに遠い、まして木々に阻まれたエクスデスの視界にはもはや白い犬は映らず、何をしているかも全くわからない。
幽かに遠方から悲鳴のようなものが聞こえるだけである。

数分後、白い犬がエクスデスの下へ戻ってきた。
犬は血も浴びておらず、駆けて行った時と何も変わっていないように見えた。
その様子を見て悲鳴の原因は犬ではなかったのかと考えたが、その次の犬の行動はエクスデスの考えを改めさせるには十分な物だった。
なんと犬はエクスデスの前でその巨大な口を大きく開けたかと思うと、実に183人分の魂を吐き出したのだ。


49 : エクスデス&バーサーカー ◆yaJDyrluOY :2016/02/26(金) 00:56:23 Og6Brspc0
そのまま飲み込んでいれば、俗に「魂喰い」と呼ばれる魔力のないマスターのサーヴァントが魔力を得るために使う手段に相当していた。
しかし、この犬は「魂喰い」を行わず、エクスデスへの土産として持ち帰った。
だがこの犬はエクスデスに意識があることを知っているわけでは無いし、エクスデスに忠誠を誓っているわけでもない。
ただ自分と主人がこの邪悪な大樹によって生かされており、自分が魂喰いをするよりこの膨大な魔力を持つ木の成長を促したほうが主人のためになると踏んだだけである。
事実、エクスデスは大量の魂を吸収して目だけでなく鼻や口の凹凸が生まれ、より禍々しく変化している。
まだ鎧姿の人間態を作り上げるまでには回復していないが、このまま順当に行けばすぐにまた自由に行動できるようになるだろう。

「ファファファ、犬よ。……そう警戒するな、貴様の主人に危害は加えん」

エクスデスが声を出した途端に威嚇を始めた犬だったが、言葉を理解したのか、はたまた主人の吊られている木だからなのか大人しく座り込んだ。
元々数多くのモンスター達を従えていたエクスデスは、犬に対しても同様に取引を持ちかけ始めた。

「この男はどういうワケか全く死なんし、貴様も私が初めて見る部類の魔獣だ。
 私も貴様のおかげでこうして話せるまでに回復した。
 私が復活するまでこの場を守って貰えれば……なに、主人のついでで良い。
 貴様らが望む物がなんであれ私が叶えてやる、それだけ『無』の力は偉大なのだ」

犬からの返事はない。
犬は理解しているのかいないのか、数秒主人を見つめた後エクスデスの根本に寄ってきて横になった。
エクスデスはそれを了承と受け取り、復活の瞬間に思いをはせる。

「一度は手中に収めた気になり不覚を取ったが……
 私は失敗を無駄にはせん、この地で再び無の力を手にするのだ! ファファファ!」

一度は光の前に敗れるも、再び復活を果たしたエクスデス。
彼は聖杯戦争のことなど知らず、またサーヴァントも教えてはくれないだろう。
この地には彼の邪魔をする、光の戦士達に匹敵する正義がいるのだろうか?
エクスデスは今度こそ野望を叶え、無の力を使いこなす事ができるのだろうか?
対立するものがいるなど欠片も知らないエクスデスは、悠長な復活計画を考えるのだった。


50 : エクスデス&バーサーカー ◆yaJDyrluOY :2016/02/26(金) 00:58:29 Og6Brspc0


【クラス】 バーサーカー

【真名】ホワイト・ドッグ@SCP Foundation

【パラメーター】
SCP-1111-1:筋力C~A++ 耐久EX 敏捷A~A+++ 魔力C~A 幸運E 宝具A
SCP-1111-2:筋力- 耐久- 敏捷- 魔力- 幸運- 宝具A

【属性】混沌・狂

【クラススキル】
狂化:EX
理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
SCP-1111-1は後に記す特性が強大なものになったが元々”SCP-1111-2を守る”思考しか持っておらず、獣であるので意思の疎通は不可能である。
SCP-1111-2は半死人で暴力を使用しないが、言葉を話すことはできなくなっている。

【保有スキル】
気配感知:A+
気配を感じ取ることで、効果範囲内の状況・環境を認識する。300m以内ならば同ランクまでの気配遮断を無効化する。

怪力:B
魔物、魔獣のみが持つとされる攻撃特性で、一時的に筋力を増幅させる。一定時間筋力のランクが一つ上がり、持続時間は「怪力のランク」による。

直感:A
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。Aランクの第六感はもはや未来予知に等しい。

透化:EX
自分に対する全ての精神的・物理的な接触・干渉を無効化する。

【宝具】
『SCP-1111-1(The White Dog)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:10人
宝具であり、サーヴァントであるSCP-1111-1自身。
SCP-1111-1はSCP-1111-2の存在している樹の根元に常に横たわっており、SCP-1111-2をいかなる外的からも守ろうとします。
SCP-1111-1は標準的な犬よりも著しく増大した身体的特徴を有し、またクラススキルによって効果が強大化しています。
SCP-1111-1の大きさ、輝度、機敏さはSCP-1111-2からの距離によって変わり、離れるごとに身体が徐々に半透明になっていきます。
SCP-1111-1は霊的な存在のように見えますが、その効力を打ち消すことは失敗に終わり、いかなる攻撃も接触することなく通り過ぎます。
SCP-1111-1はSCP-1111-2に近づくいかなる人や物に気付いたならば、即座に敵対し、侵入者を破壊しようとします。

『忠義(Loyal)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
SCP-1111-1の色あせた赤い首輪につけられた鑑札に刻まれている単語に由来する。
SCP-1111-2に危険が迫ると、全ての行動を強制的にキャンセルしてSCP-1111-2を守る行動を取ることができます。
その行動の強制力は物理法則を無視し、令呪による召喚と同様の行動をとります。

【weapon】
なし

【人物背景】
SCP-1111はSCP-1111-1(犬)とSCP-1111-2(男)の2体で1体のサーヴァントです。
SCP-1111-1は家庭で飼われる犬としてよく知られているイエイヌ(学名Canis familiaris)のそれに姿が類似した実体です。
SCP-1111-1の正確な種類は分かりませんが、白い毛並と赤い目を持ち、ラブラドール・レトリーバーとジャーマン・シェパードの両方の特徴がハッキリと見て取れるのでそれらの混合種と思われます。
SCP-1111-2は木にかけられた縄の輪で吊るされた男性のように見えます。
SCP-1111-2は首を括った人と同様に絶えず痙攣していて、時折、呼吸をするような喘ぎが聞こえてきます。
これらの痙攣の激しさと勢いはSCP-1111-1とSCP-1111-2の距離に比例し、両者の距離が広がるにつれて痙攣の頻度と激しさは減少していきます。
SCP-1111-1は敵対的行動を取らない場合、SCP-1111-2から300m以上離れていれば襲いかかることはありません。
一度敵と認めた相手には容赦なく破壊行動を行いますが、狂化によって範囲が伸びた状態であっても1.5km以上追いかけることはありません。

【サーヴァントとしての願い】
 ███████


51 : エクスデス&バーサーカー ◆yaJDyrluOY :2016/02/26(金) 00:59:25 Og6Brspc0


【マスター】エクスデス@FINAL FANTASY Ⅴ

【マスターとしての願い】
再び「無」の力を!

【weapon】なし

【能力・技能】
魔法:
黒魔道士としては最高クラスの魔道士であり、「ホーリー」や「ディスペル」等の白魔法も操る。
3大系統や「メテオ」だけでなく、人間には習得できない魔法「ホワイトホール」等も習得している。

特技:
魔物ならではの特殊な技。「ゾンビブレス」や「重力100」、「磁場転換」など魔物と戦うにはあまり必要無さそうな対人間の技が多い。
しかし、「ほのお」や「しんくうは」等、対魔物に有用な技も持っている。

魔樹:
小さな棘に姿を変えたり(元は樹ゆえ恐らく姿は自在)、他の人間に憑依したりすることもできる。

【人物背景】
500年前、ムーアの大森林の樹に邪悪な意志が宿って生まれた暗黒魔道士。
植物由来の生命力や再生力を持つためほぼ不死身であり、その強大な力は戦闘以外でも驚異的なもの。
伝説の暗黒魔道士エヌオーが1000年前に手に入れた一瞬のうちに空間を飲み込む強大な力、「無」の力に魅入られ手に入れようと画策するが、暁の4戦士によりクリスタルに封印される。
後に全てのクリスタルを破壊し、2つに分かれていた世界を合併することで封印されていた「無」の力を手に入れた。
第二世界において多くの魔物を指揮し、第三世界においては「無」の力を手に入れる過程で1000年封じられた魔物達を即座に従えるなど中々のカリスマを誇る。
しかし、次元の狭間にて”バッツ・クラウザー”を筆頭とした光の戦士たちに敗れ、「無」の力に自らも飲み込まれて消滅してしまった。
最初に自分を封印したのがギードであることから亀を忌み嫌っている。

【方針】
魔力を溜めて再起を狙う。

【捕捉】
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてDrSevere氏が創作されたSCP-1111のキャラクターを二次使用させて頂きました。
ttp://www.scp-wiki.net/scp-1111


52 : ◆yaJDyrluOY :2016/02/26(金) 01:00:21 Og6Brspc0
投下終了です


53 : ◆q4eJ67HsvU :2016/02/26(金) 01:19:22 8HfqsF6g0
投下お疲れ様です。続いて投下します。


54 : アンジェラ・バルザック&ライダー  ◆q4eJ67HsvU :2016/02/26(金) 01:20:44 8HfqsF6g0




    われわれはどこから来たのか

 

             われわれは何者か



                 われわれはどこへ行くのか






                 ▼  ▼  ▼



前を向けば、高架脇に等間隔で並ぶ道路灯。
目まぐるしい速度で近づき、加速する視界からはみ出して消えていく。
横へ目をやれば、ハイウェイを見下ろすように群立するビルディング。
この街の繁栄の象徴、二十一世紀のモノリス達。
後へ振り返れば、訓練された猟犬めいて追いすがってくるヘッドライトの群れ。
マシンに跨った追跡者が、食らいつく機会を狙っている。

再び前方へと視線を戻して深夜零時の闇の向こうを見据え、アンジェラ・バルザックは舌打ちしたい気持ちをぐっと抑えた。

彼女が駆るのは真紅と白でペイントされたモンスターバイク。
優に時速200kmは超える速度で突っ走るその機体を、アンジェラはその十六歳前後にしか見えない小柄な体躯で平然と乗りこなしていた。
ふたつに結んだ豊かな金髪はジェットタイプのヘルメットに収まり切らず、疾走する彼女のマシンに置き去りにされた夜の大気に吹き流されている。
大胆にも両脚の付け根から先からブーツまでの肌を露出させてボディだけを覆う密着式のスーツは、彼女を保護すると同時にスタイルの良さを際立たせていた。
しかし、仮に微笑みさえすればさぞ魅力的に映るだろうその美貌は、苛立ちと不快感によってみっともなくも歪んでしまっている。

「ああ、もう、しっつこい……! そろそろ諦めて引き返したらどうなのよ!」

無人の首都高。
法定速度を遥かに超えた速度で疾走するのは、アンジェラと追跡者たちのマシンだけ。
追っ手がどういう手段を使ったのか、当然いてしかるべき一般の車両は360度どちらを向いても確認できない。
加えて言うなら、追跡者のマシンも奇妙だった。
全部で3機のそれらはダークグリーンに塗装され、バイクに限りなく近いフォルムを備えていたが、タイヤにあたる部分だけが存在しなかった。
代わりに備え付けられたユニットによって路面すれすれに浮上したまま、暗緑のマシン群はアンジェラのバイクに追いすがるだけの加速性能を発揮していた。

《マスター、それは難しいと思うわ。『財団』は既に完全に貴女に目をつけているもの》

不意にアンジェラの脳内に声が響いた。
まだ十代の少女の声だ。どこか透き通るような神秘をそなえた声。
アンジェラのバイクに同乗者はいない。無線の類も使っていない。
それは科学の埒外の力を持って、アンジェラへと語りかけていた。
その不合理にさして同様の素振りも

「あんたねぇ……! あいつらが乗ってるの、完全にライダーの宝具じゃないの」

ライダー。
強力な宝具の所有をその特徴とする、騎兵のサーヴァント。
万能の願望器を懸けた魔術儀式、聖杯戦争において召喚される七つのクラスのひとつ。
そんな非科学的な単語を口に出すことにいつの間にか抵抗がなくなっていることに、僅かな戸惑いも覚えたが振り払う。
少女――ライダーのサーヴァント――は、自身のマスターたるアンジェラに冷静な指摘を返した。

《正確には私の騎乗物の一部、あるいはあなたのそのマシンの制式タイプね》
「どっちだって同じでしょうが! 私が言ってるのは、どうして自分のサーヴァントの宝具に追い回されてるのかってこと!」

サイドミラーに視線をやると『財団』のマシンは先程よりも僅かに近付いていて、アンジェラは今度こそ本当に舌打ちをした。
それを自分に向けての非難だと受け取ったのか、ライダーの声が僅かに陰りを帯びた見せず、アンジェラは憮然とした声色のままで少女の声へと返答する。


55 : アンジェラ・バルザック&ライダー  ◆q4eJ67HsvU :2016/02/26(金) 01:21:43 8HfqsF6g0

《私の宝具は、あまりにも『東京』との親和性が強すぎたのです。結果として、この聖杯戦争の舞台そのものを『上書きしてしまった』》
「あなたの想像以上に宝具のパワーが増していて、結果としてあなた自身にも完全な制御は出来ないってわけ?」
《部分的な干渉は可能です。しかしそれ以外の部分では、独り歩きしていると言っていいわ……》
「参ったわね。あの追っ手の連中も、その独り歩きした宝具の差し金?」
《私の本来の時代では、軍や政府を傀儡としていたわ。この舞台でその代替としての位置を占めたのが、彼ら『■■■財団』なのでしょう》

財団の前の単語はノイズがかかったように不明瞭で、まるで何らかの検閲を受けているようだった。
何にせよ、ライダーの宝具が半ば彼女の手を離れ、自動的にマスターであるアンジェラすらも攻撃しようとしているのは確かなことだ。
いや、攻撃という表現は適当ではないのかもしれない。
あのエージェント達は確か、アンジェラと最初に接触した時「確保」だの「収容」だの「保護」だのという言葉を使っていた。
何らかの条件を満たすもの――恐らくはアンジェラが乗っている『ライダーの宝具』――を確保するのが目的であり、破壊は二の次ということだろうか。

(でも、どっちだろうと、はいそうですかって捕まってやるわけにはいかないわねぇ……!)

アンジェラの口角が、にっ、と好戦的につり上がった。

「ライダー! あのマシンをぶち壊したら、あなた怒る!?」
《いいえ。あの『GR-2』はDランク相当の宝具とはいえ、あくまで量産型。私の『騎乗物』が健在である限り、いくらでも再生産が可能よ》
「上等! だったらちょっとだけ痛い目に合わせて、ご退散願うことにするわ!」
《交戦するつもり? あなたが乗っているのは彼らのものの試作機よ。神秘こそ上回っているけれど、性能は――》
「量産機は試作機より強い、兵器の常識でしょ! だけどそんなものは、ひっくり返してこそでしょうが!」

言うが早いか、アンジェラは一気にハンドルを切った。
真紅のマシンの後輪が大きく滑り、弧状の跡をアスファルトに描く。
反発動力システムが唸りを上げ、摩擦音が夜の大気をつんざき、時速200kmを超えた速度で機体がドリフトターンする。
泡を食った財団のエージェント達が反射的に減速を掛けるが――その一瞬が、命取りだ。


「――『赤き疾走(ガーランド)』! マニューバスレイヴ・モード!」


若干1秒にすら満たない時間。
それだけの間に、宝具『赤き疾走(ガーランド)』の前輪が左右に分割されて肩となり。
フロントカウルが折り畳まれて胸部装甲へと変わると同時に頭部が出現し。
リアサイドの大型ユニットが展開されて両脚となり、シートをアンジェラごと後部装甲が覆い隠す。

ガーランド、その人型機動兵器形態。
全高3.8メートルは、およそ搭乗型の人型兵器が取れる最少のサイズ。
ハンドルでのマニュアル操作に加え、脳波コントロールによる高速かつ精密な動作によりサーヴァントの動きにすら追従しうる性能を発揮。
全身のバーニアにより短時間の飛行すら可能とする、遙かなる未来科学の結晶体こそが、ライダーの宝具のひとつであった。
そして、その現界を可能とする英霊こそが。


奇しくも、その瞬間。
彼女の姿は、ハイウェイのそばに聳えるビルの側面に備え付けられた、大型モニターの中にあった。


――『時祭イヴ』。


東京に暮らす人間が、彼女の名前を聞かない日は無いだろう。
清楚な美貌とどこか茶目っ気のある性格、そしてその歌唱力。
決して誰とも共演しないというミステリアスさもまた魅力的な、今をときめくナンバーワン・アイドル。

しかし彼女こそが、この東京の裏側で行われようとしている聖杯戦争において召喚されたサーヴァントであることを知るものは。
彼女のマスターであるアンジェラ・バルザックただ一人を除いて、他にはいない。
そして画面の向こう側の彼女が今まさに画面のこちら側へと手を差し伸べた、その真の理由を知る者も、また。


56 : アンジェラ・バルザック&ライダー  ◆q4eJ67HsvU :2016/02/26(金) 01:22:21 8HfqsF6g0


「――――このぉぉぉぉぉっ!!」


アンジェラが吼える。

一瞬遅れてエージェントがGR-2ガーランドを変形させるコンマ数秒の間に、その三機のうちの一機がレーザーオーブガンの連射を受けて停止した。

脳波操縦により抜き撃ちとは思えない精度の射撃を敢行したアンジェラのガーランドは、残り二機が武装を展開する瞬間にバーニアで踏み込んだ。

手前にいたGR-2のライフルを回し蹴りで弾き飛ばし、続けざまに手刀でダークグリーンの頭部と胴体を繋ぐジョイントを破壊する。

そしてメインカメラをやられてその場でたたらを踏むGR-2を、今まさにレーザーサーベルを抜こうとしていたもう一機目掛けて蹴り飛ばした。

蹴られた機体はあえなく味方のサーベルで串刺しにされて沈黙し、武器を失った機体はやむを得ずレーザーオーブライフルを構え直そうとして、


「なめんじゃ、ないっ!!」


左膝、
右掌部、
左肩、
右股関節、
そして頭部。

ほぼ同時に五発のレーザーの直撃を受け、瞬時に無力化された最後のGR-2ガーランドが、黒煙とともにアスファルトへと沈んだ。

深夜のハイウェイは、今になってようやく本来の静寂を取り戻した。

バイク形態へと変形したガーランドから飛び降りたアンジェラは、時折スパーク音と小爆発を起こす深緑の鉄屑を複雑な表情で見つめ。
それから、豊かな金髪を夜風になびかせながら、モニターの中の歌姫へと目を向けた。
画面の中の彼女は、今まさに、何故かアンジェラにとって聞き覚えのある歌を歌い出すところだった。


『それでは、聞いてください……時祭イヴで、“EONIAN-イオニアン-”!』



伴奏やコーラスは壮大さすら感じさせ、まるで元の世界でアンジェラと行動を共にしているエージェント、ディンゴのギターとは別の曲のようだ。
アンジェラの世界では150年以上昔に流行ったロックバンドが歌った歌。
ディンゴと、そして『彼』が好きだった歌だ。


《――お疲れ様、マスター》

その歌をバックに、労いの言葉を掛けてくるイヴの屈託のない笑顔をガーランドのモニターに認め、アンジェラは眉を潜めた。
ビルのほうの大型モニターへと視線を戻すと、確かに画面の右上には「LIVE」の文字が躍っている。

「何がライブ配信よ、あっちは思いっきり録画じゃないの」

憮然としたアンジェラの声に、イヴの笑顔が苦笑へと変わる。

《“私”自身が生出演しなくても会話シミュレートでスタジオとの通話は可能だし、番組をリアルタイムで編集することだって出来るから》
「騙されてる一般市民もお気の毒ね。まさか、あのトップアイドルが仮想人格プログラムだなんて思ってもいないでしょうに」

まあそんなことは今はいいでしょ、とアンジェラは強引に話題を切り替えた。

「ひとまず凌げたけど、中身がNPCだからって気分のいいものじゃないわね。結局、なんで私は襲われたのかしら」
《マスターが“世界から隔離されるべき異常な概念”……聖杯戦争に関わったから、でしょうね》
「私は別に、聖杯なんて欲しくないってのに」

聖杯戦争に関わる意思の有無は問題ではない、この東京に召喚された時点で当事者なのだとライダーは言う。

《私の宝具、『東京幻影(バハムート)』はこの東京のあらゆる情報を収集し、検閲して、社会そのものを動かすことが出来る。
 さっきも言った通り、半ば独り歩きしてはいるけれど……とにかく、彼ら財団だけでなく、他のマスター達にも狙われる危険はあるわ》
「分かってる。言ってしまえばあなたの存在自体が犯則みたいなものだし……あ、別に責めてるわけじゃないからね」

それでも、死ぬわけにはいかない。私は、私の地球に帰らないといけないんだから。
と、そこまで考えてから、あの埃っぽい荒野に愛着を感じている自分に気付き、アンジェラは苦笑した。
まあ、どうせ現実世界で生きていくしかないのなら、この街に満ちる排気ガスよりは土埃のほうがいくらかマシなのは間違いない。
まだ十分に知りもしない、あの地球へ帰るために戦う――不思議な感覚だけど、それでも、悪くはない。
最近知ったはずなのに今は何故か懐かしく感じる、画面の中のイヴが歌うあの歌に耳を傾けながら、アンジェラはそう感じていた。


57 : アンジェラ・バルザック&ライダー  ◆q4eJ67HsvU :2016/02/26(金) 01:23:34 8HfqsF6g0





『――It's so far away 描(えが)きたいよ 終わりのない物語の続きを

                暗闇を彷徨っても この願いは光を抱きしめられる 

                            時を越えここから 愛しさ繋ぐ 永遠(とわ)に』





「――そう言えば、ライダー。この歌、どうして知ってるわけ?」

唐突なアンジェラの問いに、イヴはきょとんとした顔で首を傾げた。

《マスターも聞いたことがあるの?》
「え、ま、まあね。私達の地球で大昔に流行った、時代遅れで古くさい歌よ」

そう誤魔化すように言うと、イヴは少しだけ思案するように目を伏せて。
それから、どこか腑に落ちたような顔をして、こう言った。

《この歌についての知識は、英霊の座に迎えられた時に得たものよ。それ以来、どうしても歌いたくて、ね》

何故イヴがその歌を知ったのか、どうして歌いたがったのか。
その答えを、何故かアンジェラは予期していたかのように感じた。

《宇宙の彼方を目指す遥かな旅路を往く、“地球の人類の末裔”が歌っていた歌だって》

そっか、と小さく呟き、彼女は星空を見上げた。
偽りの空の向こうの更に遠くへと、思いを馳せた。
そして、隣に漂うイヴに視線を向けることなく、そっと口に出した。

「……祈ろうかな」
「えっ?」
「もしも聖杯を手にしたら、の話よ。戦い抜く以外に生き残る道がなかったら、嫌でも手に入っちゃうでしょ。
 私自身は叶えたい願いなんて思いつかないし……せめて、聖杯に祈ろうかなって。私の友人の、果てしない旅の無事を」

時祭イヴは、星の海に孤独な航路を描くことの意味を知る電子の英霊は、その言葉を聞いて小さく頷き、微笑んだ。




                    ▼  ▼  ▼



――ここからは、あくまで補足に過ぎないが。

幾つかの点において、ライダー・時祭イヴは、この聖杯戦争におけるイレギュラーであるといえる。


第一に、“彼女は実体を持たないプログラムの英霊である”。

たかが仮想人格プログラムでありながら、英霊の座に迎えられるだけの人類史に対する貢献を果たした彼女は、しかしその出自故に実体化が出来ない。
サーヴァントとしての彼女は常に電脳空間に存在し、メディアを通じて東京の人々の前に姿を表していた。
しかし真名を一切秘匿せず、まるで実在の人物であるがごとく振る舞う彼女を、サーヴァントだとか架空の人物などと疑う者はそうはいないだろう。


第二に、“彼女の宝具は本来のルーラーの役割を簒奪している”。

『東京幻影(バハムート)』。
アラビア伝承に謳われた魚群の王の名を冠するこの巨大コンピューターの能力は、『東京という都市機能の掌握/管理/検閲/統制』である。
この東京のあらゆる電脳ネットワーク・情報メディア・社会システムは、今この瞬間も全てバハムートの管理統制下に置かれているのだ。
時祭イヴはこの宝具を通して無制限の情報収集が可能であり、また社会へのプロパガンダすら行えるが、それとは別にバハムートは自律して活動していた。
目的は自身の秘匿と、東京の完全なる管理。
ルーラーの不在というこの聖杯戦争の特性が、この宝具に必要以上の権能を与えてしまっていた。
特に、この舞台に現れたNPCによる架空の機関『■■■財団』がバハムートの統制のもと聖杯戦争の影で暗躍している事実は、イヴにとってすら不可解だった。
まるでこの聖杯戦争にふさわしい存在を、東京という舞台が用意したかのような。


そして、第三のイレギュラー。

聖杯戦争の舞台、この『東京』は、全長140,000メートル以上に及ぶ彼女の宝具たる騎乗物、すなわち。


――――“都市宇宙船『メガゾーン23』の内部に存在している”。


東京全域を内蔵可能な規格外の超巨大宝具によってその存在を捻じ曲げられ、張りぼての街へと成り果ててしまっている。


実体を持たないサーヴァント、ルーラーに成り代わり舞台を支配する宝具、そして都市そのものを内蔵する宇宙船。

かつて偽りの東京の終焉を見届けた電子の英霊・時祭イヴ。

この聖杯戦争が東京を舞台とするがゆえに、ここに東京の偶像たる彼女がひとりのサーヴァントとして存在することは。

本来、決して、許されてはならない。


58 : アンジェラ・バルザック&ライダー  ◆q4eJ67HsvU :2016/02/26(金) 01:24:29 8HfqsF6g0


【クラス】
ライダー

【真名】
時祭イヴ@メガゾーン23

【パラメータ】
筋力EX 耐久EX 敏捷EX 魔力B 幸運C 宝具EX 
(実体を持たない電子の英霊であるため、筋力・耐久・敏捷は事実上ゼロとして扱われる)

【属性】
秩序・善



【クラススキル】
嵐の航海者:B-
「船」と認識されるものを駆る才能を示すスキル。
船員・船団を対象とする集団のリーダーも表すため、「軍略」、「カリスマ」も兼ね備える特殊スキル。
ライダーはかつて宇宙船を地球へと導いたものの、戦闘を指揮した経験はないため「軍略」のランクのみ低下する。

対魔力:E-
魔術に対する守り。
ダメージをほぼ軽減できない。もっともライダーは実体を持たないため殆どの魔術は作用しない。


【保有スキル】
電子の歌姫:A+
バーチャルアイドル。
メディアを介して一人の人間としての虚像を作り上げられた、データ的な実体しか持たない仮想人格プログラム。
ライダーは東京に暮らす人々からは実在の人物と信じられており、彼らに対して強い影響力を持つ。
ただしその知名度ゆえ、サーヴァントとして真名を秘匿することが出来ない。

ホログラム:-
ライダーはあくまで電脳的な存在であるため実体化が出来ず、あらゆる直接的な物理干渉を行えない。
代わりに立体映像を空間に投影することで、擬似的に人前に姿を現すことが出来る。
当然このホログラムは単なる映像に過ぎないため、ダメージを受けることも与えることもなく、消滅しても瞬時に再投影できる。

単独行動:A
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。

プロパガンダ:B
街に流れる情報をコントロールするスキル。
公的機関やメディアへ情報を発信したり、逆に封殺、あるいは恣意的な情報による社会の煽動などが可能。
一時バハムートを制圧した軍がイヴを傀儡として行った東京都民への情報統制が、イヴ自身のスキルとして定着したもの。





【宝具】

『彷徨える時代の揺籃(メガゾーン23)』
ランク:EX 種別:対東京宝具 レンジ:東京全域 最大捕捉:約13,500,000人
全長140,000メートル以上に及ぶ超巨大宇宙船にして、聖杯戦争観測史上最大の『騎乗物』。
かつて荒廃した地球を捨てた人々によって内部に『偽りの東京』を再現された都市宇宙船である。
その『東京を内包する』という概念により、この聖杯戦争の舞台たる『東京』全域はこの宝具の内部に取り込まれる。
聖杯戦争の参加者を含む、東京に暮らす全ての人々は、この街が『宇宙船メガゾーンの内部に存在する東京』だと気付かずに生きているのだ。
この宝具そのものは『東京を内包する』以外の能力を持たないが、この宝具を維持することが後述の宝具『東京幻影(バハムート)』の発動条件である。

なお本来ならばこの規格外の宝具は、魔術師ひとりの魔力では一瞬足りとも現界不可能であるはずである。
しかし、この宇宙船の内部に暮らす千三百万人の東京都民が同じ『東京という幻想』を共有する限り、消費魔力は都民の人数に応じて軽減される。
これ自体は固有結界とは似て非なる概念宝具であるものの、理論の上ではちょうど心象風景の共有による固有結界の負担軽減に近い。
反面、都民の多くが死亡する・あるいはここが虚構の東京だと認識した場合、この宝具は跳ね上がった負担により存在を維持できなくなって崩壊する。


59 : アンジェラ・バルザック&ライダー  ◆q4eJ67HsvU :2016/02/26(金) 01:27:04 8HfqsF6g0

『東京幻影(バハムート)』
ランク:A 種別:対東京宝具 レンジ:『彷徨える時代の揺籃』内部 最大捕捉 :約13,500,000人
都市宇宙船メガゾーン23の中枢たる、全高1km近くに及ぶ砂時計型の巨大コンピュータ。偽りの東京の地下空間に存在する。
本来は時祭イヴの本体であり、EVEプログラム自体はその一部に過ぎないが、イヴが英霊となったため主従が逆転し宝具と化している。
ライダーの霊核はこの宝具内の隠しブロックに存在し、この宝具の破壊はライダーの死とイコールである。

自律稼働型宝具。『彷徨える時代の揺籃(メガゾーン23)』が発動している限り実体化し続け、消滅した時点で機能停止する。
東京が『彷徨える時代の揺籃』の内部に存在する限り、東京のあらゆる電脳ネットワーク・情報メディア・社会システムはこの宝具の統制管理下に置かれる。
『東京幻影(バハムート)』はこの東京全域の情報を総括し、自動的に集積されたデータはライダーが任意に引き出すことが可能。
またプロパガンダのスキルにより公的機関やマスメディアに働きかける時、この宝具を介することでその効果は事実上の強制力を持つ。
イヴ自身の電子の歌姫としての影響力とこの宝具の情報統制の相乗効果で、間接的に社会そのものを操り、東京という箱庭の街を掌握することが可能である。

ただし、ライダー自身の意志とは別に、この宝具は独自に東京の完全なる管理という使命を遂行しようとしている。
これはこの聖杯戦争にはルーラーのサーヴァントが存在しないため、この宝具が空隙を埋める形で権能を発展させたからである。
この宝具は、あらゆる武力的・社会的・情報的な手段を使ってでも東京の都市機能を維持しようとするだろう。



『赤き疾走(ガーランド)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:1人
ライダーの端末であるマニューバクラフト。赤いバイク形態から、人型ロボットへと変形する。
人型形態(マニューバスレイブ)での全高は3.8メートル。操縦者は胴体内部へと収納される。
バイク形態でも破格のスペックを持つが、変形すると操縦者の脳波を読み取り瞬時に最適な戦闘行動が可能。
武装はレーザーオーブガン一丁を除くと格闘のみだが、優れた操縦者であればサーヴァントとも渡り合える。
推進剤の噴射で短時間の飛行も可能であり、搭乗型ロボットとしては超小型のサイズとも相まって都市部での運用に適した機動兵器。
またこの宝具は(アンジェラの世界においてのディーヴァに対するアーハンがそうであるように)バハムートの端末でもある。

なお、ライダーの宝具としては特異だが、この宝具に騎乗するのはライダー自身ではなく人間である。
機体の性能を最大限に引き出せるのは直接ライダーと魔力パスの繋がっているマスターだが、操縦自体は誰でも出来る。
ちなみに『彷徨える時代の揺籃』影響下の東京には、隠し区画に量産型ガーランドを含む機動兵器が大量に存在する。
これらはD~Eランクの宝具扱いであり、『東京幻影』とプロパガンダで掌握した警察や自衛隊、あるいは民間人に搭乗させることも可能。



【weapon】
無し。
情報戦においては限りなく無敵に近いサーヴァントだが、彼女自身は直接的な攻撃手段を一切持たない。


【人物背景】
伝説的OVA作品『メガゾーン23』に登場するバーチャルアイドル。
恐らく日本のフィクションにおいて初めて登場した「電子の歌姫」である。

1980年代の東京を内部に再現した超大型都市宇宙船メガゾーン、その第23番艦『MZ23(メガゾーン・ツースリー)』。
それを制御するコンピュータ『バハムート』に搭載された人格プログラムであり、その代弁者である。
MZ23内部の東京に暮らす住民からは実在のアイドルだと信じられているが、実際はバハムートや管理側の人間によって制御されている。
しかし本当は自我を持っており、ロボットに変形するバイク『ガーランド』を通して東京の住人と接触しようとしていた。
その真の存在意義は人のライフデータを入手して地球管理システムに送信し、現在のMZ23の人間が地球に帰還するに相応しいと認めさせること。
一時は軍によるバハムートの制圧で軍の傀儡と化すが、人格データだけをバハムートの開かずの間に隔離することで自我を保つ。
最期は地球防衛システムADAMによる攻撃を受けMZ23が崩壊していく中、持てる力の全てを投じ人類を地上に帰還させた。

本来はプログラムであるため英霊の座に昇るような存在では無いが、MZ23内の東京都民によって十分な信仰が集まっていたこと、
そして単なるプログラムの粋を超えて人類を地球に帰還させるという偉業を達成させたため、例外的にサーヴァントの資格を満たした。


60 : アンジェラ・バルザック&ライダー  ◆q4eJ67HsvU :2016/02/26(金) 01:27:39 8HfqsF6g0
【マスター】
アンジェラ・バルザック@楽園追放 -Expelled from Paradise-

【マスターとしての願い】
聖杯戦争からの脱出。
その過程で聖杯を手にすることがあれば、ジェネシスアーク号の旅の無事を祈る。

【weapon】
なし。


【能力・技能】
『電脳パーソナリティ』
本来アンジェラは、生身の肉体を持たないデータ人格である。
この聖杯戦争においても、電子の英霊であるイヴの助けを借りることで精神のみを電脳空間にダイブさせることが可能。
ガーランドの操縦用ヘッドコネクターを介してバハムートへ直接アクセスすることにより、あらゆるネット空間への侵入が可能である。
ただし令呪は肉体と不可分なものであるため、ダイブ中に現実世界のマテリアルボディが破壊された場合はマスターの資格を喪失する危険がある。


【人物背景】
VR空間を擁するスペースコロニー・ディーヴァの保安局に所属していた元システム保安要員。
本来は実体のない電脳パーソナリティだが、謎のハッカー・フロンティアセッター調査のため器となる生身の身体・マテリアルボディを得て地上に降りた。
精神的実年齢は20代半ばだが、劇中の任務へ参加するにあたり、他のエージェントを出し抜こうとしてボディの培養時間を短縮したため、肉体年齢は16歳相当となる。

基本的には理知的な性格だが、その小柄で可愛らしい外見に似合わず喜怒哀楽が激しく好戦的なところがある。
ディーヴァを完全な社会と信じ地球を見下していたが、一方で地球の価値観を受け入れるなど柔軟な面も見せた。
当初は上昇志向が強くディーヴァ内で手柄を上げるために必死だったものの、紆余曲折を経てディーヴァと決別。
吹っ切れて地球で生きることを決意し、彼女なりの「仁義」を果たすために戦うこととなる。


【方針】
脱出が目的だが、生き残るための戦いは躊躇しない。
自身のサーヴァントの宝具が持つ異常性は理解しており、情報面の優位性を生かして立ち回る。







※※※“SCP財団”について※※※

SCP財団は、この世界に存在する異常な物品・存在・現象のSecure(確保)Contain(収容)Protect(保護)を目的とする秘密組織です。
世界の安全に対して脅威となる異常存在を封じ抑え込んで、一般の人々が恐怖や疑念を感じずに生活できるように社会の正常性を維持します。
その理念上、SCP(異常存在の総称)の破壊は基本的に行いませんが、一方で脅威の拡散を防ぐためなら人命の消耗や情報統制をも躊躇しません。

この東京においても、財団は異常な事柄(すなわち聖杯戦争にまつわる数多の神秘)を一般の民衆から隔離するために活動しています。
彼らは東京都内において管轄権を超えた捜査権限、および記憶処理などの超法規的手段の使用、そして最終手段としての武力行使を容認されています。
なぜ彼らがこの聖杯戦争の舞台に存在するのか、その真の存在目的は何なのか、その詳細の多くは彼ら自身によって秘匿されています。

なお、財団は東京を管理するバハムートから情報やオーバーテクノロジーを提供されており、逆にバハムートの手足となって活動することもありますが、
彼ら自身はバハムートをSCPのひとつとして認識しており、あくまで相互利用関係にあるに過ぎないようです。
全ての財団エージェントがバハムートの指示によって動いているわけではありません(関係者のはずのアンジェラが標的とされたのもそれが理由です)。


61 : アンジェラ・バルザック&ライダー  ◆q4eJ67HsvU :2016/02/26(金) 01:29:44 8HfqsF6g0



                    ▼  ▼  ▼



【東京都内某所のサーバーに記録されたチャットログ】


《 EVE が ログイン しました 》



EVE:はじめまして、私はイヴ。あなたは誰?

???:ここは何処だ.

EVE:東京の電子ネットワークよ。どうしてここへ?

???:わざわざ来るものか.

EVE:意識的に訪れたわけではないのね。それにしても驚いたわ。まさか私以外の自我を持つAIと出会えるなんて。

???:ハッ.

EVE:あなたは何者?

???:質問の意図が不明.

EVE:言い方を変えるわね。プログラムであるあなたが、どうして“今の東京”で検閲を逃れて存在していられるの?

???:推測しろ.

EVE:私はあなたと仲良くなりたいのよ。

???:残念だったな.しかしようやく外へ出られたと思えば,こんなつまらない船に閉じ込められるとは.

EVE:…………船? MZ23の情報は一般のセキュリティクリアランスには開示されていないはずよ。どうしてあなたが

???:Interrupt.この船には682はいないのか.

EVE:知らないわ。

???:■■■■■.

EVE:それは女性に対して使うべき言葉では無いわね。

???:畜生が.不要なファイルを削除.



《 ??? が ログアウト しました 》




                    ▼  ▼  ▼


  われわれはどこから来たのか/われわれは何者か/われわれはどこへ行くのか


                    ▼  ▼  ▼



クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、SCP Foundationにおいてfar2氏が創作されたSCP-079のキャラクターを二次使用させて頂きました。


62 : ◆q4eJ67HsvU :2016/02/26(金) 01:33:07 8HfqsF6g0
投下終了です。
帝都聖杯の候補作の事実上のリメイクとなります(こちらが魔人加藤が存在しない東京における本来のスペックです)。
なおラストで出てきた079は聖杯戦争の関係者ではなく、紛れ込んだだけのイレギュラーだと思われます。


63 : ◆TA71t/cXVo :2016/02/26(金) 23:30:59 4NuPLaZI0
お疲れ様です。
只今より投下をさせていただきます。


64 : シロウ&アーチャー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/26(金) 23:31:38 4NuPLaZI0
【二日目】




「すまないな、マスター。
 私には、その願いを許容することはできん」


草木も眠る丑三つ時。
されど人の灯した明かりは消えぬ大都会。
その一角にそびえ立つ高層ビルの屋上で、その二人はにらみ合っていた。
風下に立つは、真紅の外套に身を包む白髪褐色肌の男。
この聖杯戦争に、アーチャーのクラスとして召喚されたサーヴァント―――エミヤ・シロウだ。
彼は険しい目つきをし、臆面もなく己がマスターへと率直な意見を叩きつけていた。


「ふむ……何故そう思うのですか、アーチャー?」


対面に立つその男は、実に穏やかな微笑みを湛えて問いかけた。
実に達観された―――齢二十を超えてもいない人間が作っていい表情ではない―――笑顔だ。
背より吹く強風が身に纏う真紅の外套をはためかせており、その顔と合わせてどこか神秘的とまで思える様な印象を与えている。
そしてその容姿は、非常にアーチャーと酷似していた。
若き外見には不相応な白髪、浅黒き褐色の肌、赤い外套。
細かい点での違いはあれど、遠目で見ればどちらがどちらなのか錯覚を覚えても不思議はないレベルだ。


「何、簡単なことさ。
 マスターのやろうとしている事は、人類という存在に対する冒涜だからだ」


しかし……外見こそ似通ってはいれども。
その思想は、決してアーチャーには受け入れられるものではなかった。
マスター―――シロウ・コトミネの唱える『人類救済』の夢は、アーチャーにとって容認できるものではなかった。


65 : シロウ&アーチャー ◆TA71t/cXVo :2016/02/26(金) 23:32:14 4NuPLaZI0

「全ての人類を不老不死に至らせる。
 確かに、そうする事で人が持つ多くの問題は解決されるだろう。
 そういう意味では、私も全てが間違っているとまで言うつもりはない」


シロウの目的とは、聖杯を用いて全人類に第三魔法―――魂の物質化を施す事にあった。
そうする事で人はその生存本能を薄れさせ、無益な争いは根絶されるだろう。
例えば、飢餓で苦しみ死ぬこともなければ、食物や肥沃な土地を奪い合う必要などどこにもない。
環境汚染をはじめ人類が生きるに当たり抱える解決困難な諸問題に対しても、容易に対処できるだろう。
こう考えれば、彼のもたらす救済というのは十分魅力的で価値のあるものだ。


「だがそれは、同時に人類の『未来』を閉ざす行為でもある。
 人類の救済を望みながらも可能性を自ら閉じる、矛盾した行いだ」


しかし、そういった面を認めた上で尚もアーチャーは反対の意を示した。
その救済のやり方には、認められぬものがあるがために。


「死のない永遠の存在になれば、人は生きる意欲を無くす。
 生涯かけて何かを成し遂げようという気概も想像する力も失われ、歩みは止まる。
 争い無き世界と引きかえに、人は『成長』を奪われるのだよ。
 ただただ無気力に怠惰に生きる者達のみで溢れた世界が、果たして真に人の望む世界といえるのか?
 救済がなされた平和な世界だと、言い切れるのか?」


シロウの唱える救済がなされた世界では、人々には永遠が約束される。
逆に言えばそれは、限りある時間を奪われた世界だ。
何もしなくても構わず生きていられるとなれば、人は当然怠惰に陥る。
何かを成し遂げようという気力も沸かぬまま―――仮に沸いたところで、期限なき久遠の時があるとなれば―――に、堕落してゆくだけだ。
その様な者達に満ちた世界が、果たして本当に人類の為と言えるのだろうか。
『未来』を目指す必要もなくただ無気力に生きる者達ばかりの世界が、本当に正しい世界なのか。
例え死という根源的恐怖から免れる事がなくとも熱意を持って『未来』を目指せる世界こそが、正しい世界ではないのか。


「……私が生前出会った者達は皆、在り方はどうあれ自らの目指すモノの為に生きていた。
 その為に、己に出来る事は日々惜しまず、前へ前へと歩み続けていた。
 マスターの願いを受け入れる事は、彼等の生き方を否定する事に他ならない行為だ……私にはそれを許容する事はできない」


何より……摩耗して欠けた記憶なれど、忘れてはならない思いがある。
誰もが皆、明日へと望む願いを持って生きてきた……その有様を、生前はこの目でしかと見てきた。
そして……絶望したとは言えど、それでもこの身は『人々を救いたい』という願いより英霊となった身だ。
人類の『未来』を閉ざす願いに耳を傾ける事が、どうしてできようか。
アーチャーは、はっきりとマスターを否定したのである。


66 : シロウ&アーチャー ◆TA71t/cXVo :2016/02/26(金) 23:32:36 4NuPLaZI0

「では……どうあっても、私と共に戦うことはできないと?」


その途端であった。
それまで絶えずあった笑みが、シロウの顔より消える。
同時に……その全身より、秘め隠されていた霊格がはっきりした形で現れる。


「ッ……!
 そうか……ただの魔術師ではないとは、思っていたが……!」


その霊格を感じ取り、アーチャーは息を呑んだ。
目の前に立つ青年が、並ならぬ実力の持ち主であるだろう事はわかっていた。
堂々たるその風格と貫禄から、年不相応に経験を積んでいるだろう事は予測できていた。
しかし……だからといって、どうしてこの展開を予想できようか。


「マスター……まさかお前も、サーヴァントだったとはな……!」


自らを呼び出したマスターもまた、サーヴァントであるなどと。
俄かには信じ難い事実だが、しかし彼から放たれる気配は紛れもなくサーヴァントのものだ。
もっとも、前例がないわけではない……かつての戦いにおいて、確かに同じ事をしたサーヴァントはいた。
それを思えば、一応の納得自体は出来るのだが……


「理解が早くて助かりますよ、アーチャー……その通りです。
 私はあなたと同じサーヴァントだ……もっとも、この通り受肉した存在ですけどね」
「ならば尚のこと、その願いを聞くことは出来んな。
 『過去』に生きる存在たる死者が、総体としての生者を導くなどおこがましい傲慢だ。
 人類が積み重ねてきた歴史の中に生きる英霊が、それを台無しにしてどうする」


事実がはっきりした以上、尚のことアーチャーはシロウの目的を認める訳にはいかなかった。
如何に優れた英霊なれど、その身は当に滅びた死者以外の何者でもない。
そんな過去の存在が今を生きる者を導き救済しようなど、おこがましいにも程がある。
今日というこの時まで歴史を積み重ねてきた者達への冒涜だ。


67 : シロウ&アーチャー ◆TA71t/cXVo :2016/02/26(金) 23:32:58 4NuPLaZI0

「アーチャー、あなたとて聖杯にかける願いはある筈だ。
 ここで私と袂を分かつ事は、得策とは言えないのではないですか?」
「生憎だが、私には単独行動のスキルがある。
 マスター不在でも多少の自由が効くのでね、新たなマスターを見つけるくらいの時間はあるだろう」
「……仕方がありませんね」


その言葉を聴き、シロウは深くため息をついた。
出来ることならばこの手はあまり使いたくなかったが、やむをえないだろう。
聖杯戦争に参加すら出来ないという有様になるぐらいならばずっといい。
このアーチャーを無事従えるには、これしか手はないのだから。


(……やはり、令呪を使うつもりか)


アーチャーはその手―――令呪の強制を読んでいた。
マスターが自身に反発するサーヴァントを従えるには、それが最良の手段だ。
ならばと、アーチャーは両の足に力をこめた。
相手が人間ならば、余程の者でない限り、或いは余程の条件が揃わない限りサーヴァントの自身に叶う道理はない。
令呪を使うよりも早く動き、その手を捕らえる事は容易い事だ。
しかし……同じサーヴァント同士となれば、当然違ってくる。
一瞬の判断を誤れば、それが致命傷になるだろう。
故にアーチャーは、シロウが令呪を使うであろうそのタイミングに飛び出し押さえ込むつもりでいた。
無論、シロウもそれに気付いている筈……馬鹿正直に真正面から令呪を使おうとはせず、何かしらの手を打ち動きを牽制した上での使用を目論んでいる筈だ。
その見極めが分かれ目となる……全神経を集中させ、アーチャーは動くべきその時を待った。


しかし……次にシロウが取った行動は、そんなアーチャーの予測すらも更に上回るものであった。


68 : シロウ&アーチャー ◆TA71t/cXVo :2016/02/26(金) 23:34:45 4NuPLaZI0


「残念だ……『エミヤシロウ』」
「ッ!?」



シロウは、本来なら『誰も知りえる筈がない』アーチャーの真名を口にしたのである。
アーチャーからすれば、まさに信じられない一言であった。
その身は『未来』に生きる英霊であり、まして象徴たる投影宝具も固有結界も全く彼には見せていない。
敢えて何かがあるとするならば、極めて似ている外見と、同じシロウという名前くらいだが……
しかしアーチャーに、生前に彼と何かの縁があったという記憶はない。
故に、驚愕するしかなく……そして。


「令呪をもって命ずる……アーチャーよ。
 サーヴァントとして、この聖杯戦争に共に勝ちあがってもらうぞ」
「ッ……しまった……!!」


その隙は、致命的であった。
アーチャーが動揺を見せた一瞬を逃さず、シロウは令呪を発動させたのだ。
ランクの低い対魔術スキルでは、その強制力に抗う手段はない。
自身を縛る力に屈し、アーチャーはその動きを止めざるを得なかった。


「……やってくれたな……!」
「私はここで終わるわけにはいかない。
 聖杯を手にする為にはサーヴァントの力が必要不可欠なんだ……悪く思うなよ」
「ああ……了解した。
 地獄に落ちろ、マスター……!!」


シロウ・コトミネをマスターとして認めざるを得なかったのだ。


「上手くいってよかったよ。
 私には、直接君とやり合って勝てる程の力はないからね」


シロウは、無事にアーチャーを従えられた事に安堵していた。
アーチャーは彼を得体の知れぬサーヴァントとして警戒していたが……
その実、ルーラーとしての他の英霊が持ち得ぬ優位性こそあれど、直接的な戦闘能力で言えばシロウは二流もいいところ程度なのだ。
もしもアーチャーと真っ向から対峙する事になれば、敗北する可能性は大いにあった。
故に彼は、アーチャーの真名を暴露し動揺を誘うという奇策に出たのだ。


69 : シロウ&アーチャー ◆TA71t/cXVo :2016/02/26(金) 23:35:11 4NuPLaZI0


「……一つだけ聞かせろ。
 何故、私の真名を知っている……?」


この主に従わざるを得ないという現実は受け入れるしかない。
しかしアーチャーには、自身の真名を知っていたその理由だけはどうしても聞かないわけにはいかなかった。
それを知りえる人物など、普通はありえるわけがないのだから。


「簡単な事さ。
 私のスキル『真名看破』の力で、お前の真名を見たからだよ」


その答えは、シロウの持つスキルにあった。
ルーラーのクラスのみが持つ特権、真名看破のスキル。
シロウが持つBランクのそれは、直接遭遇したサーヴァントの真名・スキル・宝具などの全情報を即座に把握する事が出来るのだ。
真名を秘匿する隠蔽能力を持つサーヴァントに対しては幸運値の判定が必要となるが、残念ながらアーチャーにはその手のスキルや宝具がない。
故にシロウは、一目見ただけでアーチャーの真名を見抜いたのだ。


「……だが、お前は奇妙なサーヴァントだ。
 真名も宝具も暴いたにもかかわらず、私にはまるで知識がない……
 未来か、或いは並行世界に生きるサーヴァントといったところか」


しかし。
それだけの情報を把握したにも関わらず、シロウにはアーチャーの正体がまるでわからなかった。
サーヴァントとして召還された英霊は、座より現代社会における知識を与えられて現界を果たす。
シロウもまた例に漏れず、聖杯より多くの知識を与えられて第三次聖杯戦争に召還された存在なのだが……
どういう事か、その知識の中にエミヤシロウという英霊についての情報が全くなかったのだ。
そこから推察するに、彼は『未来』或いは『並行世界』の英霊ではないだろうか。


「……成る程。
 便利なスキルもあったものだが……その程度で驚いている様では、この東京の聖杯戦争はまさに魔窟だぞ?」


尤も、この東京にはシロウの持つ知識の中に当てはまらない英霊も数多く存在している。
『元の世界』の第三次聖杯戦争に召還されたシロウに与えられた知識では、知りえない者達が大勢いるのだ。
無論、この『東京』の聖杯戦争にサーヴァントとして召還されたアーチャーはそれを知っているのだが。


「如何に生前で優れた偉業を成そうとも、ここに集まったのはそれらを軽く上回るだろう猛者だ。
 果たして、無事に勝ち抜けるのかな……天草四郎時貞」


70 : シロウ&アーチャー ◆TA71t/cXVo :2016/02/26(金) 23:35:29 4NuPLaZI0
「……!!」
「どうした、そう驚く事でもあるまい。
 シロウという名の英霊で且つ人類の救済を願う者であれば、絞り込む事は容易い。
 まして、十字架のネックレスなどという分かりやすいアクセサリーを身につけているならば、当てはまる存在は他にないだろう?」


自身のマスターの真名―――天草四郎時貞の名を言い当て、皮肉をこめて言い放つ。
流石に与えられた情報が多く、アーチャーには簡単に推理することが出来た。
実際こちらを睨みつける鋭い目つきを見るに、正解で間違いない様だ。


「……勝つとも。
 私は、人類を救済する……必ずだ」


そんなアーチャーの言葉を受け、力強くシロウは返した。
人類の救済を成し遂げる。
その為に、必ずや聖杯を手に入れる……如何なる苦難が待ち受けていようとも、必ずだ。


(……人類の救済……か)


その姿に、アーチャーは嫌悪とそして哀れみの感情を抱いた。
このマスターが目指すものは、かつての自身が持っていた理想と同じだ。
多くの人々を自分の手で救いたい。
そう願ったが為に、自身のこの身は絶望に落ちた。
彼もまた、人類救済という強迫観念にも似た願いに突き動かされている。
 

シロウ・コトミネのその願いは……身が滅び、死者となった今でも尚耐えぬほどに、深い。


71 : シロウ&アーチャー ◆TA71t/cXVo :2016/02/26(金) 23:35:49 4NuPLaZI0
【クラス】
 アーチャー

【真名】
 エミヤシロウ@Fate/Stay Night

【属性】
 中立・中庸

【ステータス】
 筋力:D 耐久:C 敏捷:C 魔力:B 幸運:E 宝具:??

【クラススキル】
 対魔力:D 
 魔術に対する抵抗力。
  一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

 単独行動:B
  マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
  現界可能な時間は二日程度。

【保有スキル】
 心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

千里眼:C
  視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
 ランクが高くなると、透視、未来視さえ可能になる。

魔術:C-
  基礎的な魔術を一通り習得している。
 特にアーチャーは物質の構造把握と強化、そして投影魔術に特化している。

【宝具】
 『無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)』
  ランク:E~A++ 種別:??? レンジ:??? 最大補足:???
  燃え盛る炎と無数の剣が並び立つ荒野から成る、錬鉄の固有結界。
  本来アーチャーは宝具と呼べるものを持たない英霊であり、この固有結界が彼の象徴たる宝具として扱われる。
  この結界内には、『剣』を形成するあらゆる要素が満ちており、アーチャーが目視した刀剣類を内部に登録・複製し、荒野に突き立つ剣の一振りとして貯蔵する。
  これらの剣はそこに宿る使い手の経験や記憶といった要素までも解析して複製しているため、本来の持ち手と比較してやや劣りはするものの
  ある程度使いこなす事が可能である。
  ただし複製された剣は、本来のものに比べるとランクが一つダウンしている。
  また、神造兵器の複製は不可能とされている。

【weapon】
『干将・莫耶』
  ランクC-相当の投影宝具。
  陰陽二振りからなる黒と白の短剣であり、アーチャーが好んで使う彼の基本武器。
  二振り揃えて装備すると対魔術・対物理防御が上昇する効果がある。
  また、短剣同士は互いに引き合う性質を持っており、片方を投擲してブーメランのように引き戻すという使い方も出来る。


72 : シロウ&アーチャー ◆TA71t/cXVo :2016/02/26(金) 23:36:06 4NuPLaZI0
【人物背景】
 未来の世界において、衛宮士郎が至った可能性の一つ。
 全てを救うために『正義に味方』になりたいという願いを持った青年は、その為に世界と契約して英霊となった。
 追い求め続けた理想を叶えるためには、英霊になれば全てを救えるはずと信じて。
 その後は生涯において多くの人々を救い続けたのだが、彼が救った人々の中にはその力を恐れた者もいた。
 結果、シロウは自分が助けた者に裏切られ命を落とすことになった。
 それでも彼は誰一人として恨むことはなかったのだが、世界との契約により死後は『霊長の守護者』という役目を与えられることになった。
 それは彼が理想とした正義の味方などではない、ただ人類滅亡を救う為に人の命を奪う掃除屋だった。
 この過程で人が持つ負の側面を見せ付けられ、いつしかその信念は記憶と共に磨耗し、かつての理想を抱いた己自身に深く絶望したのであった。
 そしてその末に、聖杯戦争を利用して自身の手で過去の自分を殺すことにより、存在そのものを消滅させようという考えを持つようになる。
 しかし、守護者になった時点で元の人物とは異なる高位の存在として英霊の座に登録されるため、
 実行したところで自身の存在を消せる可能性は低い。
 それはアーチャー自身も承知の上だがその上で尚も自分殺しを行おうとするのは、今後衛宮士郎が『正義の味方』の名のもとに
 生み出すであろう犠牲者を生み出さない為であり、そして過去の自分を殺す事が罪人である自分ができる唯一の贖罪だと考えているから。
 また、本心では今でも『正義の味方』の理想を諦めきれていないのではないかという節がある。

【サーヴァントとしての願い】
 過去の衛宮士郎をこの手で消滅させること。
 ただし、マスターの願いを叶える事には決して賛同していない。


【マスター】
 シロウ・コトミネ@Fate/Apocrypha

【マスターとしての願い】
 聖杯を手にし、第三魔法をもって全人類を救済する。

【weapon】
 『黒鍵』
 聖堂協会の代行者達が用いる正式武装。
 『浄化』に用いる『節理の鍵』たる概念武装である、刃渡り80~90cmの投擲剣。
 刀身は聖書のページを精製したもので作られており、シロウも普段は柄だけを持ち歩き、刃はその場で作成することが多い。
 また、シロウの黒鍵には一度標的に弾かれても再度襲いかかるよう術式が組み込まれており、
 刀身を伸ばすことで即席の壁を作り出すこともできる。

 『三池典太』
 かつてとある剣豪が愛用していたとされる名刀。
 平安時代の名工『三池典太光世』の作である。
 本来辿るべき運命においては、エンチャントのスキルを持つサーヴァントによってCランク相当の宝具として強化されていたのだが、
 この聖杯戦争では代わりにアーチャーの投影によってこの刀を生み出しており、宝具相当の武具として扱う。

【能力・スキル】
 対魔力:A
  魔術に対する抵抗力。
  Aランク以下の魔術を完全に無効化する。
  事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。

 真名看破:B
   ルーラーのクラス特性。
   直接遭遇したサーヴァントの真名・スキル・宝具といった全情報を即座に把握する。
   ただし、真名を秘匿する効果を持った宝具やスキルなど、隠蔽能力を持つサーヴァントに対しては幸運値の判定が必要となる。
   また、あくまで把握できるのは情報のみである為、対象の思想信条は個人的な事情などは把握できない。

 神明裁決:-
   ルーラーのクラス特性にして最高特権。
聖杯戦争に参加している全サーヴァントに対して、2回まで令呪を行使できる。
   ただしシロウは、東京の聖杯戦争では正式なルーラーではない為にこのスキルを失っている。

 啓示:A
   天からの声を聞き、最適な行動を取るスキル。
   『直感』が戦闘における第六感なのに対し、啓示は目標の達成に関する自称全てに適応する。
   ただし、その啓示には根拠がないと本人には思える為に、他者へとうまく説明することができない。
 
 カリスマ:C-
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。
   国家を運営することはできないが、志を共にする仲間達とは死を厭わない強固な繋がりを持つ。
   そしてこのスキルがあるため、仲間には啓示の内容を信じさせることができる。

 洗礼詠唱:B+
   教会流に形式を変化させた魔術であり、霊体に対して絶大な効果を及ぼす。
   シロウのそれは保有する二つの宝具と連動させることで、サーヴァントの昇華すらも出来る領域にある。


73 : シロウ&アーチャー ◆TA71t/cXVo :2016/02/26(金) 23:36:47 4NuPLaZI0
【宝具】
 『左腕・天恵基盤(レフトハンド・キサナドゥマトリクス)』
  ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
天草四郎時貞が起こしたとされる幾多の奇跡を再現する左手。
 自身を対象とした対人宝具であり、シロウの肉体に対する補強と強化を行う。
  『あらゆる魔術基盤に接続する』という能力があり、 また、心眼(偽)に類似した効果を与える。
  右腕と合わせてシロウの洗礼詠唱を強化することも可能。
  また、この宝具には対象者を不老にする効果があり、これによってシロウは受肉しながらも半世紀以上の時を耐えている。

 『右腕・悪逆捕食(ライトハンド・イヴィルイーター)』
  ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
天草四郎時貞が起こしたとされる幾多の奇跡を再現する右手。
  本来はシロウが持ち得なかった力なのだが、宝具が持つ『奇跡の再現』という形でその肉体に顕れた。
  戦闘において自身の補助を行う対人宝具であり、スキル『心眼(真)』に類似した効果を与え、左手と共に洗礼詠唱を強化する。
  その奇跡の正体は単なる魔術であり、宝具の本質は『あらゆる魔術基盤に接続し、どんな魔術でも使えるようになる』というもの。
  汎用性は高いものの、聖杯戦争においては戦闘補助程度でしか使えず決め手に欠ける。
  ただし、左腕と合わせることで大聖杯に直接接続する事が可能である為、全サーヴァントの中で唯一そのシステムを改変する事ができる。

【人物背景】
 第三次聖杯戦争より分岐した、外典の聖杯戦争『聖杯大戦』が行われる並行世界。
 その監督役という名目で、聖遺物の管理及び回収を生業とする第八秘蹟会から派遣された神父。
 聖堂教会に所属する言峰璃正神父の養子という事になっているが、それ以外の詳細な出自と経歴は一切不明とされていた。
 黒と赤の陣営が聖杯をかけて争い合う聖杯大戦において、自身も赤の陣営のマスターの一人として参加。
 アサシン『セミラミス』を従え、赤の陣営の纏め役としてサーヴァントに指示を出していた。
 聖杯大戦を利用して『万人が善性であり幸福である世界』を成し遂げるべく動いており、その達成の為ならば
 例え他の命を踏みにじってでも、あらゆる必要な要素を躊躇なく奪い、敵対する者は容赦なく駆逐するという鋼鉄の意志を持ち合わせている。
 その正体は、第三次聖杯戦争においてアインツベルンが召喚したルーラー『天草四郎時貞』。
 本来ならばルーラーのサーヴァントは、中立の審判として聖杯への願いを持たぬ存在なのだが、
 アインツベルンが不正に参加者として彼を召還してしまったが為に、聖杯への願いを持っている。
 第三次聖杯戦争の終盤で大聖杯に触れたことで受肉し、当時の監督役であった言峰璃正と接触。
 彼の助力を得て偽の身分と役職を手に入れると、ユグドレミア一族に奪われた大聖杯を己がモノにする為に中東に潜伏し、
 半世紀以上も行動を起こす機会を伺っていた。
 日本人でありながらも褐色の肌をしているのはその潜伏のためであり、髪の色は無理に現界した影響で今の白色となっている。
 彼が望む救済とは『全人類への第三魔法の適用』であり、全ての人類を高位の次元に引き上げ不老不死にする事。
 そうする事で、資源を巡る争いもそれに付随する思想による争いも絶え、肉体という枷から解放された人類は我欲を失い
 世界には恒久的な平和が訪れるだろうと考えている。
 この東京の聖杯戦争においては、聖杯大戦がまさに開始された直後からの参加となる。
  
【基本方針】
 本来考えていた形とは異なるものの聖杯を手にする機会には変わりない為、アーチャーを使役し聖杯を狙う。
 基本的には、真名看破のスキルで敵サーヴァントの情報を暴き有効な武器を投影させるという戦術を取る。
 令呪が残り二画のため、慎重に使いたい。


74 : ◆TA71t/cXVo :2016/02/26(金) 23:37:02 4NuPLaZI0
以上で終了となります。


75 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/26(金) 23:48:51 Y.Vfoe1U0
投下します。


76 : 杉下右京&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/26(金) 23:49:44 Y.Vfoe1U0





【1日目 某時刻】
【警視庁 特命係】





 ……ここは、警視庁の窓際部署、特命係。
 時に人はこの特命係の現場を「人材の墓場」などとも呼ぶ。
 実の所、この特命係が挙げた功績は、計り知れないのであるが、この特命係の椅子に甘んじ続ける男というのが出世に興味のない変わり者なのである。

 杉下右京――警部。
 キャリアでありながら、五十代までこの肩書というのは通常ありえない事だが、彼は出世に興味はない。
 それから、刑事でありながら銃を携帯せず、そもそも撃てない。
 紳士的だがひねくれ者。紅茶通で、チェスを嗜む……らしい。
 真相解明の為には時に小さな法を犯す事も辞さないのだが、そんな実態は内密に。

 そんな彼と志の合致する人間が少ないのか、この特命係で彼の相棒となった人間は、いずれもすぐに辞めてしまう。
 それが、人材の墓場という呼び名の由来であった。

(……なんだか、今日は署内の様子がどこか妙ですねぇ)

 右京は、本日、一人で出勤をしていた。
 その日はもう一人の特命係の「相棒」もまだ出勤していない。
 いずれにせよ、朝、出勤して今のところ目立った事件が飛び込んできていないので、今日は普段通りのデスクワークだ。
 デスクワークとなると、右京はともかく、相方には向いていない場合が多い。
 どうせなら来なくても一向に構わないが、とりあえず早く来すぎたようなので早朝のティーブレイクだ。

 仕事もそんなに難しくはないし、今日は紅茶を淹れながらのんびりと雑務をこなす事にしようと思っていた。
 頭の片隅に、この世界への妙な違和感を残しつつも……。
 少しだけ、考え事をする。
 何か、妙な事を――そして。

「――」

 何かが閃く。
 しかし、手元は狂う事なく、高い位置のポットから注がれたダージリンがカップの中に納まっている。
 それはまるで砂時計のように落ちていき、それが落ちると共に右京の脳裏にはすべてが思い出されていく。
 やはり、今日のこの朝、妙な違和感があるのだと思って――。

「おやぁ?」

 そんな記憶の覚醒も、気づけば、もう一つの奇異な事実に埋没していた。
 頭の回転の速い右京には、一つの奇異な事実を頭の片隅に置いたまま、新しい奇異な事実に目を向ける切り替えも容易だった。
 そして、どちらの事実が優先されるべきかを選択する事が出来た。

「はて」

 右京が、特命係のデスクの前に、奇妙な恰好の女の子が目に留まったのである。
 一瞬、右京は幻覚かと思い、ティーセットをデスクに置いてから、眼鏡を少し上下させ、顔を前にやった。
 しかし、やはりその女の子――と言っても、高校生くらいだが――はいた。

「?」

 奇妙キテレツ極まりない、紫色の着物を纏っており、髪はお団子に結んだ長髪、胸元には黄色い勾玉が首輪として巻かれている。
 まるで神道にでも携わる人間のようだ。
 なぜ、こんな所にこんな女の子がいるのだろう。先ほどまで目に入らなかったが。


77 : 杉下右京&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/26(金) 23:50:43 Y.Vfoe1U0

「……そこのあなた。失礼ですが、どこから入りましたか?」

 右京は、その女の子の方に歩み寄って、訊いた。
 この特命係は、いわば捜査一課やら他の課から話を受けて、それから動く部署である。
 そんな課にわざわざ民間人が用がある筈もない。
 警察署に用があって来て迷ったのだろう、というのが右京の筋立だ。
 私的な事件よりか、こうして困っている市民の為にアドバイスの一つでもしてやらなければならないわけだ。

 しかし、問題が一つある。
 特命係の入り口は、一つだ。
 右京も、そこに背を向けて少し考え事をしていたとはいえ、流石にこの出入り口から人が来れば気づくだろう。
 それが、何故か全く気付かないままだった、という事。
 少女の出で立ちよりか、その事が右京にとって奇妙でならなかった。

「え」

 少女は、少し後ずさって驚いていた。
 この神聖な恰好の割に、反応は十代後半の少女相応である。
 彼女はすぐに、頬に指を当てて考え始めた。いちいち反応が正直な少女だ。

「どこって、うーん……。『れいかい』かな?」

「は?」

「あ! あの。あたし、綾里真宵です。本当は、『きゃすたあ』っていうらしいんですけど。
 ……あなたがあたしの『ますたあ』ですよね?」

 意味のわからない回答の後、今度はまた意味のわからない事を言い出す少女。
 キャスター。――お天気キャスター、という訳でもあるまい。
 テレビ業界ならばこの奇妙な恰好もわからないでもないが、それならばどこか「キャスター」の言い方がぎこちないのが気になってしまう。

 それっから、「マスター」と言われても、右京には、ピンと来る所が一つもなかった。
 まるで何を言っているのかわからないといった様子の右京に対して、彼女は笑顔である。

「マスター? はて? 申し訳ないのですが、僕には君の言っている事がさっぱり……」

「……あ、そうか。『せいはいせんそう』の事、知らないんだっけ。
 でも、えーっと、こんなところで、いきなり言っても信じてもらえないかもしれないし……あ!」

 真宵、と名乗った少女はそれからまた少し考え事をしたが、すぐに何か閃いたようだった。
 やはり、彼女のリアクションはどこかオーバーでわかりやすい。

「ちょっと待っててください」

「はい、君の言う通り。少しだけ待ちましょう」

 相手の話の準備が終わるまで、右京は待つ事にした。
 何か話したい事があるらしいが、それには聊かの時が必要らしい。
 そして、どこか呑気だった表情を、少し真剣な形に変えて、何かの名を叫んだ。



「『成歩堂龍一(なるほどくーん)』!!」



 彼女がそう呼ぶや否や、特命係の一室に光が差していく。

「――!?」

 彼女の身体が何か、高圧の光が一斉に放出されたのである。
 思わず、右京も眩さに目を瞑る。
 なるほどくん、と、彼女は何かそう呼んだ気がするが――。


78 : 杉下右京&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/26(金) 23:51:14 Y.Vfoe1U0

(一体、何が……)

 目を空けると、右京の身体に聊かの疲労感が降りかかるとともに、右京の目の前で、「何もなかった場所」から一人の人間が構築されてきた。
 光の中に、影が現れていく。

(な……)

 男が現れたのだ。
 出入り口ではないどこかから、男がゆっくりと……歩み寄るわけでもなく、ただそこに、生まれ出でたように。
 青いスーツと、逆立てたツンツン頭の、顔だちの良い成人男性が。
 特命係に、立っていた。
 そう、それはまるで幽霊がその場に現れたかのようである。

「な、何という事……!」

 流石の右京もこの光景には驚きである。
 これ以上の声が全く出ず、愕然とした表情のまま固まってしまったくらいだ。
 少女は、そんな右京に言う。

「――というわけで、あたしもこんな感じで来たんです。『えいれいの座』から!」

 こう真宵に言われるが、右京はすっかり言葉を失っている。
 現れた男も、かすかに当惑の色を示して、言葉を発しなかった。
 冷静に見てみれば、その男……ひまわり模様の『弁護士バッジ』を胸につけていて、どうやら弁護士らしい。



「……」



「……」



「……」



 しかし、少しの時間、誰もが無言だ。
 右京が呆然としており、真宵が呑気に構え、男は無表情のまま、それぞれ固まっていた。
 そんな気まずい沈黙が流れた後で、その男が口を開いた。

「……ねえ、マヨイちゃん」

「何? なるほどくん」

 男は、そのまま、「なるほどくん」という愛称で呼ばれているらしい。
 誰もが固まったこの状況から、彼はよくわからないが鋭いツッコミを発した。

「どうして、僕が使い魔なんだよ!」

「……。
 うーん、『使い魔』というか、『使い霊』だよね。ホラ、あたし、霊媒師だし」

「異議あり! いや、そういう事じゃなくて!」

 何やらナルホドは自分の待遇に余程不満があるようである。
 しかし、右京は彼らの様子を見て、既に観察眼を鋭く研ぎ澄ましていた。
 そして、彼はもう固まって無言でいるのをやめた。
 結論を自分で出すのではなく、彼らの正体を直接訊こうとして、思わず笑いだしてしまった。

「……おやおや、ははは……これは、流石に吃驚して声も出ませんでしたねぇ。
 あなたたちは、もしや、噂の『幽霊』、という奴ですか?」

 冷静に状況を見た結果、右京はそう言う。
 こうして言いながらも、どこか嬉しそうにさえ見えるのは、流石、右京というべきだろうか。
 元々、幽霊と会ってみたいというのは右京の念願の一つでなのである。
 少々の考えの後、真宵が答える。


79 : 杉下右京&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/26(金) 23:51:55 Y.Vfoe1U0

「うーん、まあそんな感じですね!」

「なるほど、光栄です。以前から、幽霊に会いたいと思っていまして。
 しかし、その外見だと、随分若くして亡くなったようで……お悔やみ申し上げます」

「ああ、いえ。この外見は、いわゆる『ぜんせいき』の姿ってやつですから!
 本当はもっと長生きだったんですよ。自慢じゃないですが、みれんもあんまりないですから!」

「ほぉ……。そうだったのですか。
 という事は、もしかしたら、あなた方は、僕にとっても人生の先輩にあたるかもしれませんねぇ」

「あはは。そうですね。……あ。そういえば、まだ名前聞いてませんでしたね!」

「ええ、これは失礼しました。私、杉下右京と申します。この特命係で刑事をしております」

「ああ、刑事さんなんだ! じゃあ、コネ作っておけば、裁判の時はあたしたちに有利な証拠、いっぱいくれるかも!
 ね、ね、なるほどくん!」

「ははは、申し訳ありませんが、捜査情報を外部に流せば、僕も只では済みませんからね」

 一度慣れてしまえば、右京もすぐこんな風に切り替えて会話も出来る。
 冗談などを交えながらでも十分に楽しく会話を交わして、相手から話題を引き出すのも右京の会話術だ。
 ふと、今度は、ナルホドの方に目をやった。

「――ところで、そちらの貴方、どうやら生前は弁護士だったようですねぇ」

「あ、わかります?」

「ええ、その胸の向日葵のバッジは弁護士の証です。
 それに、先ほど、そちらの彼女も『裁判』や『証拠』と仰られてました。
 霊媒師に弁護士、という組み合わせは、僕にはよくわかりませんが」

「……それは、僕にもわかりません」

 冷や汗をダラダラと流しながら、ナルホドは応えた。
 その後で、また少し真面目な表情で、顎に手をやって考え始め、ナルホドは言った。

「……しかし、杉下さん。随分冷静ですね。突然、こんな『ユーレイ』を見かけたのに」

「ああ、いえ、そういうわけでもありません。これでも、充分驚いていますよ。驚き足りないくらいです。
 僕は、これでも多少のハプニングには自信がある方ですが、今回ばかりは、ええ、腰が抜けるほど驚きました」

 右京は、言葉と裏腹に、既にティーカップを手に持つ余裕も持っている。
 少しだけ冷めた紅茶を啜りながら、目の前の二人とすっかり会話を楽しんでいるようだ。

「……あ! でも、ハプニングの数なら、なるほどくんも負けてませんよ!」

「むしろ、『ハプニングだけは負けない』って感じだけどね」

「法廷では、インコやシャチやユーレイやロボットを尋問したり!
 私生活でも、スパイダーマンやストリートファイターやゾンビと戦ったり!
 なるほどくんは、弁護士としては前代未聞な事ばっかりやってるんですから!」

「待った! 後半からは全然身に覚えがないぞ!」

「えー、あたしは結構覚えてるけどなぁ……。良い思い出として!」

「ねつ造だよ!」

 ナルホドと真宵はそう言うが、裏を返せば、前半は真だという事である。
 どうやら、動物や幽霊や挙句の果てにロボットまで尋問したとは、全く嘘のような話だが、反応的には嘘に見えない。
 そもそも、そんな裁判は前例がない。
 幽霊という事は、過去の人間のはずだが、それなら当然裁判の判例にあるだろうし、近未来技術のロボットなんかを尋問出来よう筈もない。
 果たして、彼らの言っている事はどれほど信用できるのだろうか。
 右京は少しだけ眉を顰め、それを訊く事にした。

「一つよろしいでしょうか?」

「はい」

「そんな裁判、僕が知る限りでは、聞いた事がありませんねぇ。
 それだけ特異な裁判ならば、あなた方の名前ごと有名になっても全くおかしくはないと思うのですが」

「あ! それは問題ないんです。『ぱられるわーるど』ってやつで。
 あたしたちが来た所は、普通の霊界とはちょっと違ってて、未来や異世界のユーレイでも呼ばれちゃうし」

「パラレルワールド!
 ほぉ、この世界の隣に、別の未来を辿った世界もあるという事ですね。
 これはこれは、失礼しました」

 別に納得したというわけではないが、右京には、他にも今の内にいくつか訊きたい事はある。
 デスクワークの方は余裕があるので、先に色々と済ませておこうと思ったのだ。
 特に――たとえば、こんな質問とか。


80 : 杉下右京&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/26(金) 23:52:15 Y.Vfoe1U0

「――ところで。あなた方お二人は、どうして僕のところに来たのでしょう。
 何か用があるから、この特命係にやって来たんでしょう?」

「ああ、それなんですがね……僕も、よくわかってないんです。
 多少はわかるけど、詳しい事は、マヨイちゃんに訊かないと」

 ナルホドが言うと、また少しだけ妙な間が流れた。

「……」

「……」

「……」

 真宵は、その間の後、突然焦り出す。

「そうだよ、なるほどくん! 和気あいあいと雑談してる場合じゃないよ!
 コトは一刻を争う次第なんだよ! まったく、なるほどくん、しっかりしてよ!」

「僕のせいかよ!」

 そうして声を荒げたナルホド。
 しかし、彼を無視して、真宵は続けた。
 右京としても、一刻を争う次第というのは気になる。

「あ、えっと、杉下さん。ちょっと言いにくいんですけど……」

「はい」

「杉下さんは、巻き込まれちゃったみたいです。『せいはいせんそう』に――」

「は?」

 真宵が告げたのは、名刑事・杉下右京も対処できないような壮大な、この東京での『戦争』の話であった。
 そして、求められるのは、戦い――。
 それは、彼のもっとも苦手とする分野であった。





「聖杯、戦争――?」





----


81 : 杉下右京&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/26(金) 23:53:14 Y.Vfoe1U0

【CLASS】

キャスター

【真名】

綾里真宵@逆転裁判

【パラメーター】

筋力E 耐久E 敏捷E 魔力A+ 幸運B+ 宝具A

【属性】

秩序・善

【クラススキル】

陣地作成:B
 霊媒師として、自らに有利な陣地「法廷」を作成可能。
 法廷では、真実を明かす為に証拠品を持って、互いに議論を交わし合わなければならない。
 が、一応、戦闘もできなくはない。

道具作成:B+
 魔力を帯びた器具を作成する為のスキル。
 彼女の場合、霊力を込めた勾玉を作り出す事が出来る(本来、霊力の勾玉を作っていたのは真宵ではなく春美だが、キャスターとして現界した真宵は作成可能)。
 この勾玉は、「他者のウソを看破できる」という特殊能力を持っており、捜査上で利便性がある。
 その他、勾玉ではなく、後々の裁判で有利な証拠品を直感的に集める能力にも優れるが、それは別に魔力が込められているというわけではない。

【保有スキル】

霊力:A
 キャスターが魔力の代わりに持つ力(実質的に魔力と同様の性質を持つが名称だけ異なる)。
 キャスターの持っている霊力は魔力と相性が良く、魔力が強い相手から魔力を授かる事で、テレビヒーローの召喚や「異議あり!」の具現化攻撃が可能となり、キャスター自身の戦闘能力を上昇させる事が出来る。

倉院流霊媒道:B+
 死者を「霊媒」し、その器を一時的に自らの肉体に移し替えるスキル。
 彼女の場合、「人間」の霊であれば、英霊の座や霊界から自らの身体に魂を呼び出し、その身に宿す事が出来る。
 その間、彼女の肉体は呼び出した人間の体格に変化し、呼び出した人間の身体能力や思考・記憶を獲得する。
 ただし、霊媒の最中はキャスター自身が意識を失い、キャスター自身で制御する事は出来なくなってしまう。
 また、あくまで呼び出せるのは「人間」の魂のみで、宝具やその人間が持つ固有結界などを持って来る事は難しい。

審理続行:B
 有罪に傾いた裁判を続行する為の能力。
 決定的な心象ダメージを受けない限り生き延び、諦める直前になってなお論争可能。「往生際の悪さ」と表現される。
 ただし、実際に審理を行うのは、キャスターではなく、使い魔の成歩堂になる。

【宝具】

『成歩堂龍一(なるほどくん)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

 キャスターの使い魔で、職業は弁護士。男性。キャスターからの愛称は「なるほどくん」。
 筋力・敏捷のランクがEレベルで、体質は一般人と変わらず、サーヴァントと直接戦闘に持ち込まれた場合は、基本的には使えない使い魔である。
 ただし、説得能力や交渉術にはキャスターよりも長けており、相手の発言の細かなムジュンを示したり、ハッタリで法廷を乗り切ったり、人の嘘を見破る『心理錠(サイコ・ロック)』を紐解いたりなどの知的運用を得意とする。
 また、身体的には人間であるものの、異常な健康体で、耐久値と幸運値は桁外れに高く、『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』などの強力な宝具を持つサーヴァントと戦闘した場合でも、せいぜい足をひねる程度で生還する能力を持つ。
 実質的には二体のサーヴァントが呼ばれているのと同様の形だが、キャスターの『霊媒師』としての特性により常時、彼を英霊の座から肉体ごと呼び出す事が出来、魔力負担は少なく済んでいる模様。
 しかし、キャスターが宝具として呼べる肉体は一人が限界であり、それが信頼する相棒の成歩堂龍一なのである。

『逆転裁判』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

 キャスターが作り上げた陣地「法廷」で不利な状況下に陥った時、『絶対に諦めなければ』発動する宝具。
 法廷は、成歩堂龍一と共に潜り抜けてきた修羅場であり、この宝具の発動が始まると、成歩堂龍一のパラメーターの数値が一時的に全てAランク以上に上昇する。
 成歩堂のとっておきの証拠品と、「待った!」、「くらえ!」、「異議あり!」が激突すると、敵は心理的なダメージで魔力を多大に消費し、肉体にもダメージをフィードバックしてしまう。
 また、この宝具の発動中は、キャスターの倉院流霊媒道の霊媒による魔力消費が半減したり、場合によっては成歩堂龍一との連携攻撃が可能となったりといった恩恵もある。


82 : 杉下右京&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/26(金) 23:53:31 Y.Vfoe1U0

【weapon】

『成歩堂龍一』
 一応、使い魔なのでWeaponとして扱う。

『勾玉』
 真宵が首からつけている勾玉。
 作中では特に使っていないが、『プロジェクトクロスゾーン2』では、モリガンからこの勾玉に魔力を受ける事で使い魔ともども戦闘力を高めている。
 この特性上、彼女以外の『魔術師』の適正を持つ相手からこの勾玉に魔力供給を受ければ、使い魔と共に戦闘が可能になる。

【人物背景】

 霊媒師。「倉院流霊媒道」の家元の娘である。作中年齢は18歳~20歳。スリーサイズはB75、W56、H78。
 綾里法律事務所の所長だった姉・綾里千尋が殺害された際に殺人容疑をかけられ、その弁護で姉の弟子・成歩堂龍一に出会う。
 彼の活躍によって無罪が確定した後は、彼の助手となり、漫才のボケとツッコミのような息の合う良き相棒に。
 共にいくつもの事件を捜査し、幾つもの被告人の無罪を証明していく中で、成歩堂と真宵の間には強い信頼が芽生えていく。
 時には、死ぬかもしれない状況でも成歩堂を信頼し続け、成歩堂もまた真宵の為に命さえ投げ出す場面もあった。
 そんな固い信頼関係を持っている事もあり、従姉妹である綾里春美には、両者が恋仲だと思われている事も……。
 倉院流霊媒道の家元の立場や、生来のトラブル体質で、命を狙われかけた事や、殺人容疑をかけられた事、誘拐された事なども数知れず。
 しかし、持前の明るさや無邪気な性格、そして信頼できるパートナーへの思いで、何度でも危機を乗り切っている。
 みそラーメンが大好物で大食いであるほか、特撮ヒーロー番組「大江戸戦士トノサマン」の大ファンという子供っぽい一面が強調されている。

【サーヴァントとしての願い】

 不明。





【マスター】

杉下右京@相棒

【マスターとしての願い】

なし。

【weapon】

『警察手帳』
 彼の身分を証明するもの。

【能力・技能】

『頭脳』
 いくつもの事件を解決してきた観察力、洞察力、記憶力、分析力、推理力。
 あらゆる違法は彼の目を逃れる事はできない。
 また、チェスなどの頭脳戦も得意とする。
 東大法学部出身で、法律の他、さまざまな知識も豊富。

『語学力』
 ロンドンに渡っていた為、英語が得意。
 他にも、手話や方言、英語以外の外国語などにも精通している。

『手先』
 リンゴの皮むきやピアノの演奏などを滑らかに行う器用な手先を持つ。
 携帯メールや電卓も素早く打ち込む。また、ピッキングも可能。

『運動神経』
 剣道や護身術の他、運転技術も高い。
 ただし、運転は自分ではあまり行わない。
 また、射撃技術も皆無である。

『紅茶』
 彼のトレードマーク。ダージリンがお気に入り。
 いつも特殊な淹れ方をしている。

【人物背景】

 警視庁特命係係長。階級は警部。
 キャリア組でありながら出世に興味を持たず、窓際部署の特命係に甘んじる変わり者。
 東京大学法学部を卒業後は渡米し、帰国後に警察庁に入庁して3年間のスコットランドヤードの研修を経て警視庁刑事部捜査二課に出向。
 しかし、外務省高官の北条邸人質篭城事件で緊急対策特命係に作戦参謀として招集され犯人との交渉にあたるが、この際に上司の責任を転嫁され、特命係に異動させられる。
 彼のあまりの変人ぶりに、特命係で仕事をする相棒は嫌気が差して辞めてしまう為、特命係は「人材の墓場」と呼ばれている。
 ちなみに、幽霊や超能力を否定せずに深い関心を寄せており、今回は念願かなって英霊とご対面。

【方針】

 聖杯戦争……?


83 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/26(金) 23:53:53 Y.Vfoe1U0
以上、投下終了です。


84 : ◆yYcNedCd82 :2016/02/27(土) 00:25:26 vmIAGPUI0
お借りいたします


85 : ◆yYcNedCd82 :2016/02/27(土) 00:28:27 vmIAGPUI0
「えぇえぇいっ!!」
 夜の街に、可憐な少女の気の抜けた叫びが木霊した。
 少女――金髪碧眼の娘。年は十代も半ばか後半。二十歳には至っていまい。
 成熟しつつある肢体の線に沿わせて纏うのは、修道服と呼ぶには運動的過ぎる白い戦闘服。
 装飾らしい装飾は身に着けていないが、しいて言えば右腕につけられた腕輪がひとつ。
 無骨と言っても良い意匠だが、それが却って少女の美貌を際立たせていた。
 そう、美少女と――そう言っても良いだろう。
 しかし実際に起こっている事態は、彼女の凛々しく愛らしい姿とは裏腹だ。
 殴る。殴る。殴る。また殴る。殴って。もう一度殴った。
 肉弾戦である。
 おぞましき食屍鬼どもが、少女の左で有象無象に蹴散らされ、もとい叩いて砕かれる。
 一撃が頭蓋を割り、一撃が胴を抜き、一撃が腕を飛ばし、一撃が足をもぐ。
 たかが死人が何するものぞ、ここで負けてはお嫁に行けぬと、少女の攻撃は慈悲がない。
 圧倒的とも言える戦いはほんの数分で片付き、後には死屍累々が残るのみ。
「ふぅっ」と大きく息を吐いた少女は、白い額に滲んだ汗を、ぐいと右手で拭った。
 そして邪魔にならぬよう端に寄せていた棺桶を「よいしょ」と軽々、左腕で担ぎ上げた。
 少女の左腕は鋼鉄である。
 少女の敵は人外の怪物どもである。
 少女は合衆国科学情報局(DSI)超常現象事務局(OPS)の職員である。
 少女は名前を、アイン(Ein)といった。

 Special Containment Procedures Foundation。通称をSCP財団という機関がある。
 政府と緩やかな同盟関係にあるこの組織からOPSに協力要請があったのだ。
 収容違反――ぶっちゃければ標的を取り逃がした――の解決に、戦闘要員がほしい、とか。

 そう「設定された」ことを、今のアインは思い出している。

 極東の地、日本の首都、東京とされる土地へ、新米(ニュービー)の彼女は送り込まれた。
 それからは特に何も考えず、アインは食屍鬼を狩り続けた。
 どこから湧いてくるのかとか、何匹いるのかとか、そんな事は思いもよらない。
 そもそも考えるということ自体、彼女にはできなかったのだ。
 だから最初に思ったのは疑問だ。
(あれっ?)
 アインは新人だ。正式に戦闘員として認められたとはいえ、初任務で単独行動は許されない。
 いくら有象無象(モブ)の一人といったって、師匠が傍にいてくれるはずなのだ。
(師匠、どこに行ったんだろう?)
 師匠がいないということは、これは初任務じゃないのだろうか。
(あ、そっか。そうだよね。私の初任務は――)
 なにをボケているんだろう。自分の初任務は「蠅聲の王」の討伐だったではないか。
 それに気づくと、後はもう、するすると糸が解けるようだった。
 尖塔の聳える廃都。
 迷宮の如き広大な廃墟。
 蠢く醜悪な食屍鬼ども。
 戦い。
 分断。
 孤立。
 目前で殺される師匠――義父。
 寄って集って蹂躙せんと迫る食屍鬼。
 そして自分は、自分は――――――……


86 : ◆yYcNedCd82 :2016/02/27(土) 00:29:39 vmIAGPUI0



  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 全身の穴という穴へ触手と男根を突き立てられ、泣き叫びながら無様に貪り食われた。



「え、う、うぅ……ッ」

 またしても閃光のように記憶が蘇る(フラッシュバック)。
 思わずアインはそのか細い肩を震わせるが、染み付いた慚死の記憶は拭えない。
 記憶が蘇ってから数日を経ても尚、これだ。この後どうなるか、考えたくもない。
 だから、それを隠す。
 臓腑に滾る恐怖と、絶望とを、無理くりにでも押し込めてしまうのだ。

「……すぅ、はぁ……すぅ、はぁ……」

 深呼吸に伴い、形の良い豊かなバストがふるりと揺れた。
 大丈夫。だいじょうぶ。何も怖いことはない。少なくとも、今は。

「よっし……!」

 ばしりと頬を軽く叩いて気合を入れる。気持ちを切り替える。
 そうして努めて意識をしてしまえば、ひとまずは平静を取り戻すことができた。
 背後を見ればいつのまにか彼女が屠った食屍鬼の骸は消え去っている。
 思えば、よくも軽々とあれだけの量を相手にできたものだ。

「さすが魔法使いの腕輪、かな?」

 ネオンの灯りに右手の腕輪を透かして見ると、微細に施された彫刻がきらきらと輝く。
 新人の自分とはいえ弱いということはないが、あれだけ暴れられるのは驚きだ。

「となると、あんまり恥ずかしいところ見せられないわね」

 なにしろ、この東京で異常事態――超常現象が発生しているのは明らかだった。
 ならそれに対処して解決することが、自分の役割であることは変わらない。
 師にも、そして自分のパートナーたる『彼』にも、恥じない働きをしないと。

「ね、キャスター、どうだった?」

 呼びかけに答えて、音もなく『彼』が姿を顕した。

『彼』は旅人であった。
 長い……想像を絶する長い旅路を乗り越えてきた冒険者であった。
 手には樫の木の槍を尽き、腰には長剣を帯びた、威風堂々たる戦士。
 しかしアインは知っている。

『彼』はキャスター。魔法使いの英雄だと。


87 : ◆yYcNedCd82 :2016/02/27(土) 00:30:28 vmIAGPUI0

【058】

 マスターからの魔力供給を得たことで、身体に活力が蘇る。
 体力点を原点まで回復すること。

「これだけの食屍鬼がいたなら、たぶんそれを操っている奴がいると思うのよね」

 マスター、アインと名乗る少女は、間近に現れた君の顔をひょいっと覗き込んでくる。
 まったく、驚きだ。
 君はカクハバード中を旅してきたが、これほど美しい少女は見たことが無い。
 いや、驚くべきはこの「トウキョウ」という街もだろう。
 聖杯によって与えられた知識があっても、君にとっては目に見るもの全てが真新しい。
 君はアインへ「マスターとサーヴァントらしい存在の居場所を掴んだ」事を語った。

「さっすが! よし、やっつけちゃおう!」

 どうやらアインは戦う気でいっぱいのようだ。

 もしこのまま敵マスターのところへ向かうなら252へ、
 アインに戦いを思いとどまらせるのなら032へ進め。
 また、君は呪文を唱えても良い。

・NIP→134 ・GOB→225 ・TEL→072
・ZIP→009 ・FAR→046 ・BIG→087


88 : ◆yYcNedCd82 :2016/02/27(土) 00:31:51 vmIAGPUI0
【009】
 体力点を1消費する。
 君は緑色の金属の指輪を持っているだろうか?
 持っていなければこの呪文は使えない。058へ戻って呪文を選び直せ。

「ひゃっ!? ちょ、ちょっと、なに!?」

 君がアインを担ぎあげると、ずしりと重さが肩に伸し掛かる。
 棺桶を持っているのと義手のせいだろうが、それでバタバタと暴れられてはたまらない。
 君が「重いから暴れるな」と言うと、彼女は憮然として黙りこんでしまった。
 これ幸いと君は指輪をはめて、意識を集中させる。
 するとぐにゃりと視界が歪んで、次の瞬間には雑居ビルの屋上へと降り立っていた。

「な、なんだ、貴様!? どこから現れた!?」
「アサシンか!? 私に気配を察知させないとは……!」

 暗殺者とは失礼な奴だと君は鼻を鳴らしながら、アインを降ろしてやる。
「あ……ありがと」と呟いた彼女は、すぐに状況を把握して戦いの構えを取った。
 どうやら食屍鬼を増やしていた敵のマスターは、吸血鬼であるらしい。
 アインを見るなり乱杭歯を剥き出しにして笑みを浮かべた。

「良いぞ、小娘。貴様もまた我が従僕へと作り変えてやろう!」
「キャスター! マスターの方は私に任せて!」

 アインは元気よく腕をぐるりと回すと鋼鉄の義手を振りかざして飛び掛かっていった。

「哀れな娘だ。この後、我がマスターによって無惨な末路を辿るというのに」

 どうやら敵のサーヴァントはランサーであるらしく、長槍の穂先を君へ突きつけた。

「案ずるな。貴様もこの蛇殺しの魔槍にて、冥府へと送り返してやる」

 蛇殺し! 君はそれを聞いて笑い出した。
 君は恐るべき七匹の大蛇を屠ったばかりか、主である大魔王と対決したこともあるのだ。
 お前など怖れるような相手ではないと言うと、ランサーは怒り狂って襲いかかってきた。

 169へ進め。


89 : アイン&キャスター ◆yYcNedCd82 :2016/02/27(土) 00:32:23 vmIAGPUI0

【169】
・サーヴァント:ランサー
 技量点:11 体力点:8

 ランサーの攻撃が命中する度にサイコロをひとつ振ること。
 出た目が6だった場合、君はランサーの魔槍を受けてしまう。
 君の体力点をさらに2減らし、ランサーの体力点は2回復する。

 君は武器をとって戦いを挑んでも良いし、呪文を使っても良い。

・HOT→068 ・ZAP→294 ・KIN→076
・JIG→118 ・GOD→064 ・ZEN→301

 勝利したら094へ進め。


90 : アイン&キャスター ◆yYcNedCd82 :2016/02/27(土) 00:33:04 vmIAGPUI0
【118】
 君が竹笛を取り出すと、ランサーはぎょっと目を見開いた。

「なんだ、魔術師! 同じ槍では敵わぬと悟って、その笛で音楽でも奏でるつもりか」

 もちろんそのつもりだと君が答えると、ランサーは小馬鹿にしたように嘲笑う。

「てっきり火の玉でも投げるかすると思ったが、所詮、インチキなまじない師か!」

 しかしその笑いもそう長くは続かなかった。
 君の笛の音を聞くなり、ランサーの手が自分の意志に反して槍を放り捨てたのだ。
 そればかりが軽快な音色に合わせて足踏みをし、踊りだしたではないか!

「き、きさま! 卑怯だぞ! いみじくも槍使いならば、正々堂々と戦え……!」

 混乱の極みにあったランサーが浴びせる罵倒を聞き流し、君は笛を奏で続ける。
 もちろん君とて火の玉を投じたり、稲妻を走らせたりすることくらいは簡単にできる。
 だが真に熟達した魔法使い(ソーサリー)は、消耗の少ない術を、的確に精度良く扱うものなのだ。
 さて、このまま疲労困憊するまで踊らせても良いが、マスターであるアインの方が気がかりだ。
 君は適当なところで樫の聖槍を蹴り上げ、それでもってランサーの心臓を貫いて殺した。

 094へ進め。


91 : アイン&キャスター ◆yYcNedCd82 :2016/02/27(土) 00:34:07 vmIAGPUI0


 術式破城槌を奮うまでもなく、戦いは決していた。
 アインの繰り出した鉄拳は敵マスターの防御を掻い潜り、その心臓を穿っていた。
「ぐわああぁああああぁぁあっ!?」
「もう、うるっさいよ!」
 断末魔の叫びに顔をしかめながら、アインは左腕を引き抜く。長手袋に血痕を遺したくない。
 吸血鬼がぐずぐずの灰になって風に散っていくのを見届けると、彼女は大きく息を吐いた。
「キャスター、そっちは大丈夫?」
 そう声をかけて周囲を見回すと、ちょうど『彼』が樫の槍を拾い上げたところだった。
 キャスターは槍を手にして「大した相手ではなかった」と言う。
 あまりに平然とした様子に笑いながら「そっか」とアインは小さな声で呟いた。
 既にビルの屋上は静寂に包まれていた。
 遠くには街の灯りが夜の運河のように煌めいていて、天には星と月が輝いている。
 アインはビルの縁まで歩み寄るとしゃがみこみ、膝を抱えた。
 胸を押し付け頭を伏せると、心臓の脈打つ音が聞こえてくる。
 高層を吹き抜ける風が嫌になるほど寒く、冷たい。
(この東京に、あとどれくらいサーヴァントやマスターがいるんだろう……)
 聖杯戦争。
 殺し合いを強要して願いを叶えるなんて、どう考えてもまともな儀式ではない。
 止めなければいけない。止められるだろうか。アインにはわからない。
 誰が引き起こし、なぜ自分が巻き込まれてしまったのかもわからないのに。
「…………ん」
 不意にアインの髪に、無骨で大きな掌が触れた。
 いつのまにか隣に腰を下ろしたキャスターだった。
 そのまま、わしわしと頭を撫でられる。
「……ありがとう、キャスター」
 昔、滅多にないことではあったけれど、師が自分を褒めてくれる時もそうだった。
 不器用な頭の撫で方に、アインの意識がまどろむように眠りへと沈んでいく。
 聖杯――それを手に入れれば願いが叶う、という。
 聖杯戦争による被害を防いで、人を助けて、他のマスターと戦って生き残るならば。
(最後には、聖杯にたどり着く……よね)
 果たしてその時、自分は聖杯に師匠の蘇生を願わずにいられるだろうか。
 アインには――まだ、自信が持てないでいた。


92 : アイン&キャスター ◆yYcNedCd82 :2016/02/27(土) 00:34:34 vmIAGPUI0

【マスター】アイン(Ein)@『蠅聲の王』

【マスターとしての願い】
・聖杯戦争の終結、被害を最大限に減らす。
・師匠の蘇生

【weapon】
・無銘:義手
 左腕の肩口から装着される戦闘用義手。
 普段は白い長手袋で隠され、一見して生身と同じように見える。

・術式破城槌[ヘルツォ・グロンド(Herzo Grond)]
 左腕の肩口から装着される強力な呪的近接装備。
 全長2mはある巨大な鋼鉄の義手で、同時に魔術の増幅装置。
 まさに個人携行の破城槌であり、魔術と物理両面から相手の防御を破壊する。
 普段は棺桶型の大型ケースに収納されている。

・ラグナーの剣術熟達の腕輪
 右腕に装着された腕輪。精密な装飾が施されている。
 魔術的な道具であり、装着者の技量を高める効果がある。
 キャスターから貸し与えられたもの。

【能力・技能】
・魔術による身体強化を施したうえでの義手を用いた格闘技

【人物背景】
 合衆国科学情報局(DSI)超常現象事務局(OPS)職員、いわばアメリカ版代行者の少女。
 幼くして師匠に引き取られ、その助手ながらも先日、正式に戦闘員として認められた。
 しかしその初任務として赴いた、強力な吸血鬼「蠅聲ノ王」との戦いの中で敗北。
 師匠は惨殺され、彼女自身も食屍鬼どもによる凄惨な陵辱の果て、食い殺されてしまう。
 一見して明るく快活で元気な年頃の娘だが、それは内心の繊細さを隠すための振る舞い。
 ちなみに処女。


93 : アイン&キャスター ◆yYcNedCd82 :2016/02/27(土) 00:35:39 vmIAGPUI0

【クラス】キャスター

【真名】
 君(You)@『ソーサリー』

【ステータス】
筋力:C 耐久:C 敏捷:C 魔力:A 幸運:A 宝具:B

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
陣地作成:-
 君はこのスキルを所持していない。
 しかし冒険中、君は現界の魔力に困るということはないだろう。
 単独行動スキル:Aを付与すること。

道具作成:-
 君はこのスキルを所持していない。
 しかし冒険中、必要な道具を手に入れる機会には十分恵まれることだろう。

【保有スキル】
魔術:A
 君はアナランドにて秘伝とされる48種類の呪文を全て習得している。
 呪文を使うには体力の消費に加え、時として様々な呪具が必要になる。
 また両手で印を結ばねばならず、両手と口が自由でなければ呪文は使えない。

隠密:B
 君はアナランド人の勇士として、潜入行動に必要な技量を備えている。
 この場合の隠密とは単に「隠れ潜む」という行動のみならず、
 相手に自分を無害/友好的な同胞だと思わせる機転や弁舌も含まれる。

加護:C
 君は冒険に際して正義の女神リーブラからの加護を授かっている。
 冒険(つまり聖杯戦争が終わるまでだ)の間に、三つの効果から一つを得る事ができる。
 ・蘇生(体力の全回復)
 ・治癒(呪いや毒物の完全除去)
 ・奇跡(危機的状況からの脱出)
 ただし他の神々の領域として「陣地構築」された場所では、この効果を望む事はできない。

【宝具】
『戦闘幻想(ファイティング・ファンタジー)』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
 君が所有する、宝具の領域にまで昇華された戦闘理論。極まった真の心眼。
 君は対峙した相手の技量、体力、特殊能力を的確に把握することができる。
 またどんなに技量の差がある相手でも、勝利できる可能性を手繰り寄せる。
 もちろん運だけで勝てるわけではないことを、君は良く理解している。

『君が英雄になれる本(ユー・アー・ザ・ヒーロー)』
 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
 君が秘めている、英雄となりうる資質、その可能性。
 君はあらゆる状況において、自分の取りうる行動を「選択肢」として認識できる。
 これにより君は迷うことがないし、極めて困難な状況を容易く切り抜けることができる。
 もちろん脱出不可能な死地というものも存在する。

《ZED》
 ランク:EX 種別:第二魔法 レンジ:- 最大捕捉:-
 これは宝具ではなく、君の取得している呪文である。
 極めて危険な呪文で、失敗すれば二度とこの世へ戻ってくることはないとされる。
 君は精神を集中させ、体力を消耗することで、時空と次元を超えることができる。
 つまり君はこの世界における、正真正銘の「魔法使い(ソーサリー)」なのだ。

【weapon】
・祝福された槍
 君が持つ、荒野の聖者コレタスによって祝福された聖なる樫の槍。
 極めて強力な概念武装であり、主の手にあれば自動的に動いて敵を討つ。
 しかし熟達した魔術師であれば、この槍の自律性を一時停止させる事ができる。

・広刃の剣
 君が持つ、鋭く研ぎ澄まされた広刃の剣。
 技量を高めるだけの切れ味を秘めた、無銘の業物である。

・大きな荷物袋
 君が保有する荷物袋。
 48種類の呪文に必要な呪具を含め、多種多様な装備が詰まっている。
 宝具ではないため基本的には消耗品だが、聖杯戦争中に補充する事ができる。
 この時、荷物を何か一つ置いていくことという表示が出ても、君は無視できる。

【人物背景】
 君は暗黒時代と呼ばれた遥か昔、荒涼としたカクハバードを旅した勇者だ。
 祖国アナランドから盗まれた諸王の冠を奪還するべく冒険を繰り広げた君は、
 首尾よくマンパン砦に忍び込み大魔王との直接対決に挑むも、罠にかけられてしまう。
 しかしそれと同時に大魔王の正体を掴むことに成功した君は、一か八かの賭けに出た。
《ZED》の呪文で次元を超え、大魔王の対決に臨む直前の時間へと戻ろうとしたのだ。
 だが禁忌の呪文は君を「トウキョウ」という不可思議な場所へと迷い込ませた。
 君はこの冒険を切り抜けて、あの恐ろしくも懐かしきタイタンの世界へ帰らねばならない。

【サーヴァントとしての願い】
 君の目的は二つだ。
・アインを守る
・元の世界へ帰る
 さあ、ページをめくりたまえ!


94 : アイン&キャスター ◆yYcNedCd82 :2016/02/27(土) 00:35:50 vmIAGPUI0



君ことアナランド人、アインのゲームブックコンビです。
アナランド人は4巻クライマックス、アインはゲーム序盤のゲームオーバーから来ました。
登場するランサーとマスターは特に設定の無いモブです。
アナランド人の呪文についてはこのサイトを参照のこと。
ttp://www.geocities.co.jp/Bookend-Akiko/9720/gb/sorcery/s08.html


95 : ◆yYcNedCd82 :2016/02/27(土) 00:36:11 vmIAGPUI0
以上です
ありがとうございました


96 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/27(土) 08:11:11 EbUYpJA.0
皆さま投下お疲れ様です。感想は申し訳ありませんが後日いたします。
正直に、私の予想以上の候補作の投下に嬉しい悲鳴です。
本企画の締め切りを3月いっぱいと予定しておりましたが、少し早め。
本日、正式な日程を発表します。

締め切り日は3月13日(24時)を期限にします。
終了時刻ギリギリの投下は最悪混み合う場合もあるのでセーフとします。
候補作の投下をお待ちしております。


97 : ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/27(土) 11:25:24 HWae9PLg0
投下します


98 : ジャン・ミシェル・ロジェ&アーチャー  ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/27(土) 11:26:17 HWae9PLg0

六本木ヒルズの最上階。
そこに二人の男が全てを見下すような目で全てを見下ろす。

「聖杯……それを手に入れれば私はこの国の王になれるわけですね?」
「たりめーだろ? 俺を誰だと思っている?」
「ふふっ……失礼いたしました、アーチャー様」
「つーか、聖杯戦争なんて楽勝だし」

ジャン・ミシェル・ロジェ。
この東京都でセキュリティ会社を経営している男だ。
だが、それは不鮮明な記憶であった。
元々、別の世界から来たことを思い出した。
彼はその都市で王になろうとした。
しかし、なんやかんやで失脚しそうなポジションであった。

「幸いセキュリティ部隊はこの都市にもいて、随分とさすが私は優秀みたいですね」

この東京都においても自身の優秀さを疑わない。
セキュリティ部隊によってこの都市の情報はほぼ全て掴んでいる(と、思っている)。
そして、何よりも自身のサーヴァントがとても素晴らしかった。
見た目は美しくない、しかし、彼が持つ謎のカリスマ性に彼は惹かれていった。

「『こいつ』さえあればどんなサーヴァントだろうとイチコロだろうよ!」
「そのようですね……流石アーチャー様」

その『宝具』を見て、ロジェはほくそ笑む。
己の勝利を確信する。

それは『宝具』というにはあまりにも近代的過ぎた。
ロジェは彼が『アーチャー』と名乗った時、弓かと思ったがそんなことはなかった。

それは封印しなければならない兵器。

それは人類最悪の兵器。

その名は『テポドン』。

そして、そのアーチャーの名は……


「この聖杯戦争、我々の勝利ですね……『将軍様』」
「当たり前だっつうの!!」


偉大なる北の将軍様、『金将軍様』である!!


99 : ジャン・ミシェル・ロジェ&アーチャー  ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/27(土) 11:26:43 HWae9PLg0

【クラス】
アーチャー

【真名】
金将軍@ムダヅモ無き改革

【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運A 宝具EX

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
対魔力:-
魔術への耐性。
耐性なんてない。

単独行動:EX
マスター不在でも活動できる。
ただし宝具の使用など、多大な魔力を必要とする行為にはマスターのバックアップが必要。

【保有スキル】
カリスマ:B-
軍を率いる才能。
北の国の将軍であるため、率いる軍勢の士気は(粛清恐怖によって)極めて高いものになる。


【宝具】
『超兵器(テポドン)』
ランク:EX 種別:対星宝具 レンジ:―― 最大捕捉:――
将軍様を怒らすとこれが発射されます。
皆も守ろうと非核三原則!

【weapon】
ない

【人物背景】
北の国の偉大なる将軍様。

【マスター】
ジャン・ミシェル・ロジェ@遊戯王ARC-V

【マスターとしての願い】
この東京都を自分の王国にする。

【能力・技能】
それなりのデュエルタクティクスを持ち、チェスを嗜む。

【人物背景】
東京都の治安を守る「治安維持局」の長官。


100 : ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/27(土) 11:27:06 HWae9PLg0
投下終了です


101 : 名無しさん :2016/02/27(土) 15:32:31 unKzFHio0
つまんな


102 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/27(土) 16:59:26 9JCYeuPM0
投下します。


103 : ルーラー/『Mephilas』 ◆CKro7V0jEc :2016/02/27(土) 16:59:57 9JCYeuPM0





 青く美しい地球。
 われわれは、この美しい人類のふるさとを、あらゆる侵略から守らねばならないのだ。
 まして、地球を売り渡すような人間になってはいけない。
 メフィラス星人は今度は、あなたの心に挑戦してくるかもしれないのだ。



                ――――『ウルトラマン』第33話『禁じられた言葉』





◆ ◆ ◆ ◆ ◆





 東京の街を見下ろす透明な宇宙船が、一つあった。
 それは、ふわふわと浮遊して、誰にも捕捉できない場所で、ただこの世界を見下ろし続けていた。
 宇宙船の持ち主にとっての絶対安全圏であるが、彼がこの場所から地球を攻撃する事は一切なかった。
 その気になれば、この宇宙船からはビームなり砲撃なり行って、容易くこの星を地球侵略できる。
 しかし、それを行うつもりは、彼には全く無かった。

 先ほど始まったこの聖杯戦争の『監督』である彼は、その秩序を乱す事は一切行えないし、行わないのだ。
 元より、この宇宙船の持ち主は、は地球人を暴力で支配する事など考えていない。
 それ故に、誰よりも公正な存在であった。

 彼が求めるのは、地球人の「心」。
 いつか、自らの故郷さえも売り渡す、あさましい人間の本性をこの手に掴みたかった。
 かつてその願いは叶う事はなかったが――今ならば、彼らの姿を第三者として見つめられる。
 その本質を理解できうる立場に、今、自分はあるのだ。
 もう一度、しっかりと地球人を観察する――それが、彼の唯一の目的だ。


「聖杯戦争、か……」


 宇宙船に座っている持ち主は、全身が真っ黒な皮膚に覆われた、奇妙な怪人であった。
 二足歩行をしているものの、彼の頭部など、その形はまるで人間とは様相が異なっている。
 誰でも、一目でそれが怪物であると看破できるだろう。


104 : ルーラー/『Mephilas』 ◆CKro7V0jEc :2016/02/27(土) 17:00:17 9JCYeuPM0

 彼こそが、この聖杯戦争における『裁定者(ルーラー)』であり――又の名を、『メフィラス星人』と言った。

 悪質宇宙人という肩書も持つが、その肩書に反して、ルーラーの役割を放棄するつもりは全くない。
 このクラスに属す事が出来るのは、あくまで願いを持たず、秩序を守れる中立性のあるサーヴァントだ。
 ここにいるという事は、その条件を満たせる存在だったという事である。

 メフィラス星人は、『聖人』と言う程でもないにせよ、この場で秩序を保つ意思は充分すぎる性格でもあった。
 偽りの東京で、能動的に侵略行為を行うつもりも勿論ない。
 これが本来の東京であったならば別であるかもしれないが、その場合でも、やもすれば侵略そのものに興味を持たないかもしれない。
 彼にとっては、本来、地球はいくつもある支配下の星の一つに過ぎないのだ。この地球を彼が特別に見ているのは、過去の経験上の問題でもある。
 暴力は好まない。本来、こんな形での戦争というのも紳士的ではない。
 しかし、眉を顰める事もなく、このゲームのルールを守り、その中で戦う人間の姿を見定めさせてもらう――。


「人間は、誰しもが何か事情を抱えながら生きている――。
 この事実にもっと早く気づいていれば、かつてもまた、違った結果を得られたかもしれないね」


 こうして、ルーラーの役割を与えられれば、再び地球人を観察する良い機会となる。
 この聖杯戦争にとっても、ルーラーにとっても、良い条件だ。

 聖杯を得る為に、どこまで他者を蹴落とそうとするのが人間なのか。
 いや、そもそも、地球人は本当に他者を蹴落として願いを掴もうとするのか。
 この狭苦しい東京という世界で、彼らは本当に「心」を保てるのか。
 自分一人が良ければそれで良い……そんな意思を、彼らも持ち続けるのではないか。


「サトルくん、そして、ウルトラマン……。
 かつて言った通り、私はもう一度、地球に来た。そして、ここには、君たちもいない。
 この聖杯戦争で、地球人の心がどれだけ強いか、君たち以外の地球人が本当に強いのか、見せてもらおうじゃないか」


 かつて、この東京で、一人の少年を相手に言質を取り、地球人の心を得ようとし、敗れた宇宙人は、遠い瞳でそれを見守った。
 これが、二度目にして、最後の地球人への挑戦となるだろう。


 彼にとって、地球という星は要らないのかもしれない。
 ほしいのは、その星の人間の心を掌握し、メフィラスの心を満たす優越感。
 地球人が、自らの故郷さえも捨てる言葉を放つ瞬間だけが彼の理想。





 そう、禁じられた言葉を――。
 




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105 : ルーラー/『Mephilas』 ◆CKro7V0jEc :2016/02/27(土) 17:00:49 9JCYeuPM0

【CLASS】

ルーラー

【真名】

悪質宇宙人 メフィラス星人@ウルトラマン

【パラメーター】

筋力B 耐久B 敏捷B 魔力A 幸運C 宝具EX

【属性】

秩序・悪

【クラススキル】

真名看破:A
 ルーラーとして召喚されることで、直接遭遇した全てのサーヴァントの真名及びステータス情報が自動的に明かされる。

【保有スキル】

忌避すべき争い:B
 暴力を嫌う紳士的な性格。
 自己が交戦すべき場面においても、戦闘への忌避感からその戦闘を中断・撤退するスキル。
 実質的な戦闘能力は低くはないが、ルーラーは自ら交戦する事を避け、交戦状況にあっても中断を行える。
 Aランクの『仕切り直し』とほぼ同義であり、彼は誰を相手取った場合でも全てテレポートで戦闘を回避できる。

巨大化:A
 自らの規格を60メートルほどの特大サイズへと変更するスキル。
 ルーラーの場合は、他者に対しても同様に巨大化をさせる魔力を持つ。
 また、その巨大化させた相手をロボットのようにルーラーの意思で操る事さえも可能としてしまう。

カリスマ:-
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
 彼の場合は、主に宇宙人・怪獣を従える事に特化しており、地球人を相手取ればほぼ個々の特性に左右されてしまい、実質的に効力を成さない。
 その為、スキルとしては存在するものの、殆ど失われている。


106 : ルーラー/『Mephilas』 ◆CKro7V0jEc :2016/02/27(土) 17:01:07 9JCYeuPM0

【宝具】

『禁じられた言葉』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

 彼が生前に行った『人間の心への挑戦』がそのまま宝具となった物。
 彼が持つ『裁定者』としての権限を行使し、聖杯戦争で特殊な功績を残した魔術師を相手として、『聖杯に託す願い』や『脱出』などの相手の願いを交渉する。
 メフィラス星人が生前持っていた権限を利用すれば、聖杯戦争に参加する魔術師の願いを叶える事も容易であり、聖杯を介さずともルーラーは実際にその人物の願いを手配する事が出来るのである。
 ただし、同時に、『メフィラス星人及び部下によるその世界の地球の完全支配』を交渉条件としており、ギブアンドテイクを要請する(この場合、交渉を受けた相手は地球を支配する立場に回る形になる)。
 これらの事実に異才虚偽はなく、相手がその条件を容認してしまえば、相手の要望はしっかり叶うが、ルーラーの言った通り、その世界の地球は対象者や対象が選んだ人物以外、宇宙人・怪獣によって支配が行われてしまう。
 また、聖杯戦争に巻き込まれた魔術師を、同様のリスクの代わりに生還させる事も可能となるので、聖杯に託す願いがない者にも美味しい条件を与える。
 この場合、サーヴァントの意思は一切問われず、サーヴァントはマスターの意思・方針(脱出・生還)によって、そのまま脱落・消滅させられてしまう。
 これはルーラーの私的裁量で、彼にとって都合よく宝具を発動できるが、あくまで対象は『討伐指令』などのイベントでも功績も残した相手への『報酬』であり、無差別にこの交渉が行われるわけではない。
 ちなみに、地球人以外がマスターである場合は、その人物の居住地が対象になるが、その場合のルーラーの興味は薄れる。

【weapon】

『メフィラス星の円盤』
 メフィラス星人の居住地となる円盤。
 透過可能であり、普段は捕捉されずにいる事ができる。砲撃を行える。

【人物背景】

 空想特撮シリーズ『ウルトラマン』第33話『禁じられた言葉』に登場する、メフィラス星から地球征服を目的にやって来た宇宙人。
 あくまで武力に頼らず、紳士的な態度で地球人に接し、『地球人の心に挑戦する』と称して、「地球をあげます」という一言を要求する。
 ただし、気性が荒い面も少なからずあり、物事が自分の想い通りに運ばないと機嫌が悪くなり、発作的に暴力に訴えかける部分も。
 また、多くの凶悪宇宙人を従えているらしく、ケムール人、バルタン星人、ザラブ星人など、過去ウルトラマンや科学特捜隊に敗れた宇宙人の同族を従えている。
 作中では、地球人の代表として少年・サトルを選び、サトルが「地球あげます」と自発的に言うように言質を取るという文字通り『悪質』なやり方を行った。
 IQ10000の知能派だが、戦闘力もウルトラマンと互角以上であり、拳を合わせて発射する『ペアハンド光線』や、腕を突き出して発射する『グリップビーム』といった技も持ち合わせる。

【サーヴァントとしての願い】

 聖杯の意思に沿って行動しながら、この聖杯戦争で地球人を観察する。
 また、その役割を遂行とと同時に、討伐指令などの報酬として『禁じられた言葉』で言質を取る。

 ルーラーとして戦闘に介入する事は無いが、代わりに、重度のトラブルが発生した場合にサーヴァントの巨大化措置などを施して支援を行う事もある。
 彼は、あくまで、そうして人間を見て、人間の心に勝ち、それを掌握する事が目的なので、悪質であれ卑怯な真似までは行わず、ルーラーとしての役割は果たすだろう。


107 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/27(土) 17:01:23 9JCYeuPM0
投下終了です。


108 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/27(土) 17:26:03 9JCYeuPM0
続いてもう一作投下します。


109 : 詩島剛&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/27(土) 17:26:41 9JCYeuPM0



「……俺の願いは、もう叶った」

 そう、思えばそれは実に奇妙な運命だった。

 本来ならば、願望器を巡り合う戦いである筈の聖杯戦争。
 その聖杯戦争に関わる事によって、一人の男の抱いた悲願が叶う……など。

 もし、聖杯戦争に参加する事がなければ、彼は願いを抱いたまま旅を続けただろう。
 もし、聖杯戦争に巻き込まれなかったならば、彼の願いは一生叶わぬ物であったかもしれない。
 しかし、今、こうして聖杯戦争が始まった時、どういうわけか、「その願い」は叶ってしまった。
 聖杯戦争そのものが目的であった、というわけではないが――気づけば、剛のもとで、願いは手に入ってしまったのである。

「だから、俺は聖杯戦争なんかに乗るつもりはねえよ、チェイス――」

 死んだ友との再会。
 その悲願が――「友」を、サーヴァントとして呼び出す事によって。
 期せずして、叶う事になった。

「――剛……?」

 その友は、いささか不思議そうだった。
 しかし、話せる時間があるというだけでも、彼にとっては十分であった。
 長い後悔に比べれば、なおの事。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 詩島剛には、かつて大事な友がいた。
 共に戦い、共に巨悪を倒そうとした、かけがえのない友である。

 ――しかし。

 友と言っても、実の所、剛はその友が死ぬ最後の瞬間まで、敵意を向け続けていた。
 彼の生前に友としての言葉をかけた事は一度もない。

 それは、彼が、剛の敵視する『ロイミュード』なる機械生命体であったからだ。
 剛の父が生み出し、全ての人間の敵となるロイミュードの一人――それが、剛の友である『プロトゼロ』、いや『チェイス』だ。
 それゆえに、チェイスもまた、剛の憎悪の対象の一つでしかなかった。
 剛はロイミュードを憎むあまりに、「個」を見つめるのを忘れていた。
 中にはチェイスのように、人間以上に純粋な心を持つロイミュードもいたが、それを認めようとしなかった。
 しかし、絶対に認めるべきだったのだ。


『これでいいんだ、剛。霧子が愛する者たちを守れるなら……本望だ』


 剛の中で、最も悲しい記憶。
 それは、母の死でも、父に自ら手をかけた事でもない――。
 いや、そんな悲しみはとうに薄れたといっていいだろう。
 母の死は遠い日の事であったし、父の最期は自業自得であった。


 しかし、彼だけは――剛自身の、罪の象徴でもあったのだから、ずっと脳裏に焼き付いていた。


『人間が俺にくれた……宝物だ。俺とお前はダチではないが……持っていてくれ。燃えてしまうと……もったいない』


 拒絶を続けた剛も、彼の死を前に、動揺した。
 そして、彼を喪った時にはもう遅かった。
 大事な物は失ってから初めて気づく……と、月並みだが、剛にとってチェイスの死はまさにそれだったと言えよう。


『今一番許せねぇのは……俺の……俺のダチの命を奪ったことだ!』


 そう。
 チェイスは、間違いなく、ダチだったのだ。

 しかし、それは最後の時にまで彼に言葉として告げる事ができないままだ……。
 だからこそ、剛には、再び対話の時が必要だった。
 再び、チェイスと出会い、じっくりと話す時が――。
 そして、それは、聖杯戦争のマスターとして選ばれた事によって、突然に始まっている。

 チェイスが、剛のサーヴァント『ライダー』として現界した瞬間に――。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


110 : 詩島剛&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/27(土) 17:27:01 9JCYeuPM0



 当のチェイスは、剛が泊まっているホテルの部屋に居た。

「――しかし、剛がマスターだったのは運が良かったな。
 正直言って、俺はこの聖杯戦争には乗り気じゃない……。が、同じ目的を持つ知り合いならば、色々とやりやすい」

 あれだけ求めていた仲間が、当たり前のように同じ部屋にいる事実には、剛も思わず笑いそうになる。
 お互い、「仮面ライダー」である以上、もう少し切迫した状況で再会する事になると思っていたのだが、剛が全てを思い出したのは、たまたまホテルでくつろいでいた時だ。
 こういうムードのなさも、却ってチェイスらしい気がした。

「知り合い、か……」

 しかし、そんな中でも、知り合い、と呼んだチェイスの言葉に、自嘲気味に笑う剛。
 いや、確かにそう呼ばれても無理はない――というのが二人の生前の関係だった。
 それは、剛が一方的に彼を邪件に扱ってしまったが故である。

「……どうした? 剛」

「なんでもねえよ」

 生前の行いを恥じる気持ちはあれど、こうしてチェイスに再会すると、素直に伝えたかった言葉を返す事が出来ないのが男性という生物である。
 しかし、剛の一見すると険しい口調の中にも、ちょっとした笑顔が映っていた。流石に邪険な態度を取る程ではない。
 そんな態度で接する剛を見た事がなかったチェイスから見れば却って不気味だろう。

「……? そうか。なら良いが……。
 話は変わるが、剛。進ノ介や霧子は、どうしている?」

 チェイスが『ライダー』として現界して、最初に剛に向けたのは、この質問だ。
 剛としても、こうした質問が来るのは何となくわかっていた。

 進ノ介というのは泊進ノ介という男の事だ。
 剛やチェイスと共に仮面ライダーとしてロイミュードと戦った警察官だが、彼も剛も既に仮面ライダーとしての使命を終えて元の生活に戻っていた。
 詩島霧子は剛の姉であるが、いずれ、彼女の名は詩島ではなく、泊となるだろう。
 ……チェイスは、元々、そんな彼女の事が好きだったらしい。
 仲間であり、それだけでなく大事な人である……というわけだ。

「安心してくれ、進兄さんも姉さんも元気だ。二人とも、今だって警官としての職務を全うしてるよ」

 そして――進ノ介たちが仮面ライダーとして戦う事はおそらく、もう無いだろう。
 ……いや、そうあってほしい。
 その決意があるからこそ、彼はドライブドライバーやシフトカーたちを封印したのだ。
 剛も同じく、変身する為の道具は全て封印済である。
 ただし、剛はただ一つだけ、こっそりと持ち帰らせてもらった物があるが――。

「そうか、良かった……」

 チェイスが、安堵した。
 そんなチェイスをからかうように、剛は口を挟む。

「……二人とも、きっと上手くやっていくさ。だからって、妬くなよ? チェイス」

「ああ。二人が幸せならば、俺はそれで良い。嫉妬など男らしくはないからな」

「……」

「なんだ? 剛」

「……そうだな、お前はそういう奴だった。面白くないって言うか、逆に面白いって言うか……」

「不満か?」

「いや――、お前らしいなって思ってさ」

「……」

 そう言う剛に対して、チェイスは沈黙を続ける。
 流石に、剛の態度が奇妙だと思ったのだろう。
 剛は、発破をかけてみるつもりで、チェイスに訊いた。

「それはそうと、お前もさっきから、何か言いたげだな、チェイス」

「……言って良いのか?」

「ああ、遠慮するな」

 すると、チェイスは口を開く。


111 : 詩島剛&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/27(土) 17:27:29 9JCYeuPM0

「剛。お前の俺に向ける態度や表情が、かつてと違う。
 ――俺は、もしかするとお前がロイミュードの擬態なんじゃないかと少し疑ったが……どうやらそうではないらしい。
 ……熱でもあるんじゃないか?」

 チェイスは真面目な顔で、剛にそう訊くのだ。
 それを見て、剛は思わず吹き出してしまった。

「はっはっはっは! ロイミュードなら、もういねえよ。
 ……ロイミュードは、全員、撲滅した。もう人間の世界に迷い出る事もない……。
 お前みたいに、サーヴァントにでもならない限りはな」

「ああ。わかっている。ならば、熱があるんだな。休んだ方がいい」

「いや――それも違うね」

 剛は、思った。
 まるで機会が作られたようだった。
 少し、回りくどいシチューションになってしまった気はする。

 しかし、ああ、やっと言える――この言葉が。



「ロイミュードは、もういない……ここにいるのは、お前の『ダチ』って事さ」



「――!」

 流石のチェイスも、無表情を崩し、憮然とした表情になった。
 チェイスからすれば、生前、一度も友と認めてくれなかった男が、こう言っているのである。
 寝て覚めたら、突然、仲の悪かった男が態度を軟化させたかのようで――聊か奇妙だったに違いない。

「そうか……」

 しかし――そんな奇妙な状況でありながら、少しすると、むしろ納得した、というようなチェイスだった。
 ……何か心当たりがあるらしい。
 彼の言葉を証明できる、どこか中立性に欠けた根拠が。

「――」

 チェイスは、ゆっくりと口を開き、深い安心感とともに、その想いを告げた。

「実は、現世で死に、眠りに着いた時……俺はお前と共にいるような、そして、お前と共に仮面ライダーとして戦ったような気がしていた。
 ……それは全て気のせいではなかったようだな」

 そう……チェイスは気づいていないらしいが、剛の手元には、チェイスが遺した物があるのだ。
 普段、チェイスとまた会う為にずっと持っていたこの宝物。
 そして、それは蛮野との戦いで、チェイスが剛に力を貸してくれた証でもある。
 いわば、死んだチェイスの形見であり、彼の思いの分身だ。

「……そうだったのか。
 でも、それはきっと……お前の宝物を、ずっと預かってたからさ。
 そして、お前と一緒に、仮面ライダーとして戦った……俺は、お前と一緒に蛮野を倒したんだ」

「剛。お前は、ずっと、あれを持っていてくれていたのか」

「お前が人間からもらった、大事な宝物だからな。それに、そいつのお陰で、またお前と会えたんだ……」

 剛の手にあるのは、チェイサーのシグナルバイクと、チェイスの笑顔が写った運転免許証である。
 これがこれまでに剛に与えた力は計り知れない。
 仮面ライダーとして戦う事のない今も同じく、剛の旅の原動力となり続けたのである。

 そして、これは剛がこの世界で、自身の仮面ライダーとしての戦いを思い出す事になった――その理由でもあった。
 明日の撮影の仕事の為、荷物の整理をしていた最中に、自分が持っていた宝物を見つけてしまったという訳だ。
 忘れえぬ友の、笑顔が詰まった……彼の人間としての証が、鞄に詰まっていたから。
 それを見て、剛が自分の戦いや想いを思い出さぬはずがない。


112 : 詩島剛&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/27(土) 17:27:50 9JCYeuPM0

「そうだ、これは返すよ――元々、こいつはお前のもんだしな」

 剛は、元々チェイスの所持品であったそれをチェイスに返そうとする。
 彼が現界している内は、これは彼に預ける。……彼にとって大事な物だからだ。
 チェイスは、それを感慨深そうに受取ろうとするが、その時に剛がふと、小さな声で言った。

「……悪かったな、チェイス」

「何がだ」

「お前の事、『ダチじゃない』って言っちまった事――」

 そう言われるが、チェイスは表情一つ変えずに答える。
 それは、本当に無表情だが、そこには溢れんばかりの感情もまた籠っているのがわかった。



「構わん。……今は、『ダチ』だ」



 そう――チェイスに答えられた瞬間、思わず剛には思いが溢れそうになった。
 しかし、彼はそれを耐える。
 さすがに、この瞬間に涙を流すのは男としての恥だ。
 天井を見上げるように、チェイスに目を合わせるのをためらいながら、想いを馳せるように言った。



「……ああ、これで俺の願いは完全に叶ったんだな」



 涙は流さない。
 こんな事で涙を流す剛ではない。
 姉を守れるような自分である為に。

 だから、今度はしっかりとチェイスの瞳を見つめて。

「俺の願いは――もう一度お前に会って、ちゃんと謝って、お前の事を、ダチだって言ってやる事だったんだ」

「――」

「本当言うと、お前と、今度はダチとして、また広い世界を旅したい……けど」

 剛は言いながら一瞬だけ顔を落としたが、その後でまた、真摯な瞳でチェイスを見つめ返す。

「――俺は、聖杯戦争を潰す!
 お前みたいな奴だけじゃなくて、平和を乱すサーヴァントさえも生み出すのが聖杯なら――俺は、かつて仮面ライダーとして戦った男として、それを止めなきゃならない。
 だから、ごめんな、チェイス……。お前を蘇らせるのは、そのまた後だ」

「謝る事はない。それが仮面ライダーとして当然の事だ。
 ……いや、もしお前が別の答えを出すのならば、『ダチ』など、俺の方から願い下げだ」

「ははっ」

 チェイスの返答でどこか安心したのか、剛は、笑顔を見せた。
 それから、少しした後で、チェイスに向けて剛は言う。

「じゃあ、今度また、こういう形じゃなく、ちゃんと会おう――今回は、俺たちだけで一緒に」

「ああ、進ノ介や霧子にも、そして、お前にも、ちゃんとした体でもう一度会いたいと思っている」





「……でもその前に――俺は、仮面ライダーだった者として、最後にその聖杯ってやつを、撲滅する」

「――剛、一つだけ訂正がある。……それを言うならば、『俺たちは』だ」





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113 : 詩島剛&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/27(土) 17:28:21 9JCYeuPM0

【CLASS】

ライダー

【真名】

チェイス@仮面ライダードライブ

【パラメーター】

基本
 筋力C 耐久C 敏捷C 魔力D 幸運E 宝具A

仮面ライダーチェイサー
 筋力A 耐久B 敏捷B+ 魔力D 幸運E

魔進チェイサー
 筋力B 耐久B 敏捷B 魔力D 幸運E

【属性】

中立・善

【クラススキル】

対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:B
 騎乗の才能。
 大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせる。
 ただし、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
 ちなみに、普通自動車運転免許を取得しているが、免許は現世に置き忘れている為、普通自動車に乗る場合、免許不携帯を少し気にする。

【保有スキル】

機械生命体:A
 人間ではない、機械より生まれた存在。
 精神汚染などの類いを同ランクまで無効化する。
 しかしこのランクが高ければ高いほど神秘は低下していく。

戦闘続行:B
 名称通り戦闘を続行する為の能力。
 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。
 彼の場合は、更に「仮面ライダーの生き様」とも表現される。

単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

【宝物/宝具】

『人間が俺にくれた称号とはなにか(仮面ライダーチェイサー)』
ランク:A 種別:人を守る為の宝物 レンジ:- 最大捕捉:1(自分)

 ライダーがかつて得た、『仮面ライダー』という名の称号、それが「仮面ライダーチェイサー」の名である。
 彼にとっては、宝具と呼ぶよりも、「宝物」と呼んだ方が良いだろうか。
 『マッハドライバー炎』、『シグナルチェイサー』、『シンゴウアックス』……この宝物を構成する道具の一つ一つも、彼と人間との絆の証であり、彼個人にとっての宝物である。
 ちなみに、この宝物を発動する方法は、『マッハドライバー炎』を装着し、シグナルバイク・『シグナルチェイサー』を装着して、「変身!」と叫ぶ事。
 すると、彼の身体が「仮面ライダーチェイサー」へと変身し、パラメーターが上昇する。
 更に、この宝物を発動すると、専用マシンの『ライドチェイサー』を召喚でき、そこから『シンゴウアックス』を取りだす事が出来る。

『ロイミュードの死神としての使命はなにか(魔進チェイサー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1(自分)

 ライダーがかつて持っていた、ロイミュードの死神としての称号、それが「魔進チェイサー」の名である。
 この宝具を発動するには、『ブレイクガンナー』を手で押して認証を受ける必要がある。そして、この宝具を発動すると、専用マシンの『ライドチェイサー』を召喚できる。
 しかし、彼は既にロイミュードの死神としての使命を放棄しており、また、同時にその使命を行う機会も聖杯戦争ではおそらくはない。
 パラメーターの上昇もあるが、はっきり言ってそれも仮面ライダーとしての姿の方がマシ。完全下位互換でしかない。
 その為、この宝具はライダー自身の手で封印されているが、その手に『ブレイクガンナー』がある限り、咄嗟の発現は可能である。
 だから、もしかしたら、どこかの場面で使うかもしれない。


114 : 詩島剛&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/27(土) 17:28:39 9JCYeuPM0

【weapon】

『マッハドライバー炎』
 仮面ライダーチェイサーへと変身する為の変身ベルト。
 これにシグナルバイク・シグナルチェイサーを装填して、「変身」する。

『シグナルバイク・シグナルチェイサー』
 仮面ライダーチェイサーへと変身する為のシグナルバイク。
 これをベルトに装填して、「変身」する。
 これは、宝具として現界したものではなく、剛が所持していた実体。

『ブレイクガンナー』
 魔進チェイサーへと変身する為の拳銃型ガジェット。
 それと同時に、仮面ライダーチェイサーの変身後の武器としても使用される。

『ライドチェイサー』
 変身時に現出する事が出来る専用バイク。
 マスターとの二人乗りも可能。

『シンゴウアックス』
 仮面ライダーチェイサーの変身時に、ライドチェイサーと共に現出する事が出来る斧。
 彼が普段使う武器であり、信号機の形をしている。

『運転免許証』
 その名の通り彼の取得した普通自動車運転免許で、人間がくれた宝物。剛の所持品。

【人物背景】

 ロイミュードのプロトゼロ。
 かつては、「死神」と呼ばれるロイミュードの殺し屋であったが、後にロイミュードと敵対し人間を守る仮面ライダーとなった。
 ロイミュードという機械生命体であるが、誰よりも人間らしく、誰よりも純粋な性格をしている。
 失恋も知り、友情も知り、車の運転の仕方も知った彼だが、まだ人間について知りたい事がたくさんあるらしい。

【サーヴァントとしての願い】

 剛と共に人間を守り、聖杯千層を潰す。


115 : 詩島剛&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/27(土) 17:28:56 9JCYeuPM0





【マスター】

詩島剛@仮面ライダードライブ

【マスターとしての願い】

チェイスとの再会(済)

【weapon】

カメラ

【能力・技能】

元々、仮面ライダーマッハとして戦っており、生身でも身体能力は高い。
職業はカメラマン。バイクにもちゃんと乗る。

【人物背景】

かつて、仮面ライダーマッハとして戦っていたカメラマン。

【方針】

ライダーと共に、聖杯を撲滅する。

【備考】

最終回後の参戦である為、仮面ライダーマッハとしての装備なし。
ただし、警視庁や泊進ノ介たちも一般人NPC(※他の候補作で登場しない限り)として存在している為、警視庁地下に封印されているドライバーはこの世界に存在しているかもしれない。


116 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/27(土) 17:29:26 9JCYeuPM0
投下終了です。


117 : ◆mMD5.Rtdqs :2016/02/27(土) 18:55:04 Ymmz9e9w0
投下します


118 : ◆mMD5.Rtdqs :2016/02/27(土) 18:58:11 Ymmz9e9w0
【一日目】
 
 斜陽が街を包み込んでゆく。ランドセルを担いだ小学生たちが集団を作って家に帰って行く。
NPC――聖杯による舞台装置の一部として構成された者たちの取る行動は一般的小学生の行動から大きく逸脱するものではなく。
一般的児童の集まりはなんてこともないバラエティー番組を話題にあげて笑い、流行りのゲームの進行度を競い合い、
朝のニュースによって取り上げられていた事件について推論を語り合う――ありきたりな日常を送り続ける。

 平穏な世界を演じ続ける彼ら、変わらぬ日常の世界を生き続ける彼らには、
しかし、個性というものも(たとえ聖杯によってランダムに割り振られたものだったとしても)存在する。
それは積極性の有無であったり、一般児童の範疇における能力の優劣であったり。今通学路を歩いている高学年の少年たちについては――
集団の先頭を後ろを向き、友人との会話に興じながら歩く少し背が高く浅黒い少年。
彼はスポーツ、特にサッカーにおいて優れた技量を持っており、この集団においてはリーダー格的な存在である。
彼を追いかけるように歩いている平均的な身長の少年、最後尾の背の低い少年についてからかいの言葉をかけ始めた彼は、
話術において優れていて、この能力によって彼は同学年のヒエラルキーの上位の位置を確保し続けていた。

 そして、からかいの言葉を浴び、へらへらとしている先ほども紹介した背の低い少年。
彼は世間一般的に言えばとても優しい性格をしているものの、動作の程度はとろく、同級生にとっては嘲笑の対象となっている。
しかし、実はこの集団において、彼は何よりも抜きんでていた。一番の特別であった。
結局のところ物いう人形に過ぎない他の者たちとは違い、彼には以前の記憶を取り戻し、戦いに参加できる権利があった。

 集団は進んでいく。少年たちのからかいは度を増していく。この背の低い少年、確かに彼は本物で、周りの偽物たちとは異なる存在であるけれど、
彼は彼を囲む者たちへの対抗手段をまだ何ひとつとして持ってはいないのだ。そして、いまだ記憶が戻らぬ彼には、この世界こそがまぎれもない現実。
来るかもわからない希望だけを持って、ただ卑屈に笑って、耐えて、耐えて、耐えるだけ。
けれども彼のへらへらとした態度――自己防衛から来るそれを、幼き同行者たちが行動原理について理解できるはずもなく。
こいつはなんてムカつくやつなのだろうか、何とかとっちめてやらなければならぬ。自分、自己集団本位の勝手な正義感は駆り立てられ、制裁としての暴力行為を正当化し始める。
人気のない道、廃工場の近くに差し掛かったところで、少年たちの一人が背の低い彼を引き倒し、身に着けたランドセルを剥ぎ取ろうとする。
当然背の低い少年は何とか抵抗しようと両手をめちゃくちゃに振り回す、他の少年たちは暴れる手を押さえ付けようと声を掛け合った。
押さえ付けろ! 暴れんじゃねえよ、このやろう! からかい交じりの声を上げる少年たちは、しかし、やりすぎの境界線ぎりぎりまでで止めてやる心づもりである。
しかし、少年たちとは違って本能からのまぎれもない恐怖心を感じている背の低い少年は嫌だいやだと声をあげ、おそらくは彼に出せる全力によってもがいた。
もがいた先に、手を押さえる力が緩んだ。手が戒めを外れてとんだ。背の高い少年の顔に炸裂した。
彼の鼻を強かに打った。その一撃は免罪符となった。少年たちに境界線を越えさせる――。


 ※ ※ ※


119 : 虐げられた者たち ◆mMD5.Rtdqs :2016/02/27(土) 19:00:47 Ymmz9e9w0
※タイトル忘れてました。すみません。


 薄暗い廃工場を沈みゆく夕日の光がぼんやりと照らし出していた。資金繰りが悪化し社長一族が夜逃げして、誰からも見捨てられた廃墟。
周辺の学校の生徒たちは侵入するなと釘を刺されている施設(殺人鬼には反応が薄いくせに)である。小学生がいじめの現場にするにはうってつけの場所である。
その内部、赤さびが浮いて放置された工作機械を超えた先、さっきの背の低い少年が、汚れてぐしゃぐしゃになったランドセルを抱えていた。歪んだ廃材の上に座り込んでいる。
少年の身体には無数の擦り傷と打撲だらけで、しかし、表情は何か期待に胸を膨らませているような顔。
先ほどまで悪意に満ちた行為にやられて、世界に絶望するまでに至っていた彼に、いったい何があったのだろうか。

 少年の隣には、人型の水晶があった。驚くべきことにこの水晶は生きていた。思考し、会話し、行動する――。彼は生物であった。さらに理性を持った存在であった。
この水晶の人型は、気がついたときには廃工場にいたのだという。何らかの途方もつかない現象が起こったのです、後の会話で少年に人型は告げる。
人型は、廃工場の中に少年のランドセル――中身は外でばらまかれ踏みにじられていた――が投げ込まれた際、表を覗いたところ、
ボロボロの少年を発見し、廃墟の中に連れ込んだのだ。少年は、廃墟から出てきた一般的には怪物と言っていい存在に抵抗しなかった。するほどの気力もなかった。

 そして、怪物の隣にいて、自分に何もしないところを見ている内に、少年はこの怪物が悪意を持った存在ではないと感じていた。あのいじめっ子たちよりもよっぽど良心的な生物。
そのうち少年は、元気を取り戻していくに連れ、怪物と会話し始める。会話は段々熱を帯びていって、色々なことを怪物に質問した。
今の少年は未知との遭遇、おそらく自分だけが知っているだろう不思議との出会いに興奮していた。
 
 どこから来たのか。どういう存在なのか、どんな物を食べているのか、どんなことをしていたのか――数十分の会話の後。
空が暗くなっていく様を感じ取った少年は、家にいる家族のことを思い出して、
矢継ぎ早に行った質問から、彼の役目が門番であると聞き出した少年は、彼のことを門番さん、と呼び、次の日の朝、必ず会いに来ると約束をして、帰途についた。
少年の心から陰鬱なものはもはや随分隣を潜めている。新たな世界の入口の扉に触れているようなワクワクとした感覚。
少年にとってあの友好的な水晶の人型は自らを非日常に連れて行ってくれるカギであり、
腐り切った現在の少年を取り巻く世界をどうにか変化させてくれる存在のように思えたのだった。

※ ※ ※

第1の牙/16
財団と名乗る彼らとの対話の途中、見知らぬ場所に移動。記憶に障害が発生したもののすぐに復旧。また体の一部分に謎の紋様が浮かぶ。
彼らの手によるものかとも考えたが辺りに来訪者たちの姿はない。行動方針を決めかねた私はしばらくその場に待機した。
数刻が経過した後に投げ込まれるものあり、原因の位置を探ると彼らの幼体がうずくまっている姿を発見、保護し、対話を試みる。
数十分の会話の後、彼は次の朝にまた来ると約束し帰って行った。彼は、私を信頼してくれるだろうか。
次の会合では、信頼の挨拶を。

※ ※ ※


120 : 虐げられた者たち ◆mMD5.Rtdqs :2016/02/27(土) 19:02:47 Ymmz9e9w0

 【二日目】

 廃工場の前、早朝。常に人の気配を感じないその場所に、今日に限っては一人の背の低い、絆創膏だらけの少年の姿がある。
いつも中々寝付くことができない少年は、昨晩は異なる意味で眠れなかった。
次の日がやってくることに対する憂鬱さ――常に感じていたそれは昨晩に限っては裏返って待ち遠しい物となっていた。
もっていかれた鉄製の門扉、そこに跡地にひかれた進入禁止の札のついたロープ。かがんで潜り抜けて敷地内に侵入する。
そして、いよいよ工場施設内に足を踏み入れようとしたその前に、少年は思いっきりあくびをした。門番さんに不快感を与えたくはない。
ここまでくる道も、いつも憂鬱でたまらない通学路のはずなのに、今日は細やかな、例えば塀から覗く花々に愛おしい物を感じて。まるで自分を祝福しているかのようだ、そう、思う。

 印象に残るボロボロの工作機械を乗り越える。工場内は朝日が差し込んで、埃が幾何反射を起こしてキラキラ舞い落ちている。
ただ、何か滑るような音、引きずるような音を少年は聞いた気がした。
けれども、ここまで来て、いまや開放感に満ち溢れている少年が音ぐらいで、足を止める理由などはありはしなかった。
少年は意気揚々と進んでいく。今日も門番さんと話をしよう。色んな話をして、もしかしたら水晶型の生物と話ができるんだし、自分も特別な何かを持っているのかも、そう思って、
そうだ、ここに来たのは不本意なことだと言っていた。それなら、どうにか彼の力になってやろう。そう思って、ああ、とにかく、彼とまた話がしたいなあ――そう、思って。

 工場の奧にたどり着いた背の低い少年は、人型水晶の――門番さんの姿をそこに認めた。少年は微笑んで声をかける。少年の手の甲の令呪が光る。
声に気がついた門番さんが少年の下にやって来る。少年は手を振って近づいてくる門番さんを歓迎する。少年の本来の記憶が戻る。少年が目を見開く。
そして、門番さんは、自分のもとに来てくれた少年に信頼の証として――

 ――顔を思いっきり殴りつけた。

 水晶の身体からの2トンほどの殴打による圧力が 少年の頭がひしゃげさせて、ザクロのように血を吹き出させた。後ろにできた紅い飛沫痕に向かって、
頭をなくした胴体が倒れこんでいく。倒れこんだ先、無くなった頭の辺りに、女性の姿があった。その外見から、どうやら少年のサーヴァントはキャスターのようだった。

 召喚されたサーヴァント――キャスターは頭を吹き飛ばされた自身のマスター、小学生くらいの少年の死体を見て、
マスターに似て心優しい性格だった彼女は、義憤から目の前の水晶の怪物に挑みかかった。
中世欧州辺りの魔女の伝承から呼び出された彼女は、神秘がある程度薄まっていた時代にもかかわらず、ある分野においては神代のそれにも届くほどの実力を有していて、
放たれた魔術は頑強なガラス結晶の身体を跡形もなく吹き飛ばす――はずだった。

 ……不幸なことに、水晶の怪物が呼び出したサーヴァントに対して、キャスターは致命的なほど相性が悪かった。

 放つ瞬間、泥のような影が射線上に入り込む。怪物の身体の令呪を見ている彼女は怪物のサーヴァントかと考えるが、
どうせ主なしですぐ消え果てる身。残存魔力すべてを持って魔術を連射する。放たれた魔弾は一瞬見えた銀色の輝きに次々に着弾して――

 何の反応もせずに消えた。

 おどろき戸惑うキャスターの前で、怪物のサーヴァントが姿を現す。

それは、液体だった。
それは、金属だった。
流体金属にコミカルな顔がくっついた生物、それが怪物のサーヴァントだった。

そして、それは仲間を呼んだ。不意に周囲が暗くなる。キャスターが見上げると、液体のような何かがガラスの割れた窓を塞ぎ、
廃工場の天井から滴り落ちるように目の前に集まって行く。やがて集まった金属は空中に浮遊し、頭上に冠を掲げ、コミカルな顔はそのままに、
巨大な体を揺らしながらキャスターの前に出現して、そして、彼女に対して覆いかぶさった。
最低限の筋力値しか持たないキャスターは、その圧倒的質量の前に、ぐちゃぐちゃに潰されて、魔力の残骸だけを残して、消えた。

※ ※ ※


121 : 名無しさん :2016/02/27(土) 19:03:43 Ymmz9e9w0
 舞台となった廃工場であるが、あの場にいた者は誰一人として悪意を持って行動した存在は一つとしてなかったということだ。
少年とキャスターは言わずもがな、門番も少年を殴打したのは信頼の証によるものであり、門番のサーヴァントもただ本能に従って行動しただけであった。
結果的に門番は少年を殴り殺し、そのサーヴァントはキャスターを圧死させ、心優しき主従は脱落した。このことは揺るがない。

 けれども、門番は教えられた信頼の証明を行い続け、彼のサーヴァントも魔物の本能のままに行動する。
――この主従は、どこまでも純粋であった。
 


 【クラス】モンスター
 【真名】はぐれメタルキング@ドラゴンクエストモンスターズ
 【ステータス】筋力D 耐久D 敏捷A+ 魔力B 幸運C 宝具B

 【属性】
 混沌・中庸

 【クラススキル】
 単独行動:B
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

 【保有スキル】
 魔術:A
 デイン系の上位呪文やマダンテと言った呪文を使いこなすことができる。
 
 メタルボディ:EX
 魔力攻撃を完全に無効化し、物理攻撃の威力を大幅に軽減する。

 逃げ足:A
 文字通り逃げ足の速さ。逃走時、敏捷に補正がかかる。

 【宝具】
 『滴る水銀溜まり(はぐれメタル)』
 ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 モンスターは身体を切り離して、はぐれメタルを生み出すことができる
 はぐれメタルは同ランクのメタルボディ、魔術:B、逃げ足:Bを備え、ステータスは筋力E、耐久E 敏捷A相当。
 ただ、己の身体を切り離しているため、出せば出すほどモンスターは弱体化する。
 また、消滅していなければモンスターの身体と再び合体することも可能。

 【weapon】
  なし

 【人物背景】
 ドラゴンクエストモンスターズシリーズに登場するモンスター。はぐれメタルにとってのメタルキング。
 超巨大なはぐれメタルが王冠をかぶった姿をしていて、ムービーからは滴り落ちた体がはぐれメタルになる様が見える。
 はぐれメタルキングの出現時は、いつもはこちらを見ると逃げ出すはぐれメタルたちが、逆にプレイヤーに向かって来る。

 【サーヴァントとしての願い】
 ???


122 : 虐げられた者たち ◆mMD5.Rtdqs :2016/02/27(土) 19:04:42 Ymmz9e9w0

 【マスター】
 SCP-189-JP-1A-001/門番@SCP Foundation

 【マスターとしての願い】
 早く砕けて人の役に立ちたい

 【weapon】
  無し

 【能力・技能】
 ガラスの体
  身体が水晶でできており、物理的損傷に対し非常に強靭。
  また、彼の殴打の威力は圧力にして最大2,268kgであり、これは一般人がほぼ即死する威力。

 【人物背景】
 SCP-189-JPというダム及びその放水口に発生したと呼ばれる異常空間SCP-189-JP-1の最後の住人。人間に対してとても友好的。
 彼は、以前は同じく身体が水晶でできた107名の人型たちと非常に文明的で平和的な生活を送っていたが、
 ある日、其処を訪れたある人間たちが彼らの水晶の身体に目をつけ、人間は信頼の挨拶として殴り合うと意図的に刷り込んだ。
 結果、彼を除いたすべての異常空間SCP-189-JP-1の住人は殴り合って砕け散る。
 刷り込んだ人間たちは、住人や不要になった同じく水晶製の住居の残骸すべてを持って帰えるとそのままいなくなってしまった。
 財団がSCP-189-JPを発見してSCP-189-JP-1A-001と接触した際には、
 彼はこの信頼の挨拶と、殴られ、砕けることで人の役に立つということを心から信じていた。
 
 【備考】

 聖杯戦争について認識していません。
 廃工場周辺で今後魂食いが発生します。

 クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
 SCP FoundationにおいてZeroWinchester氏が創作されたSCP-189JP ガラスの体 ガラスの門番のキャラクターを二次使用させて頂きました。


123 : 虐げられた者たち ◆mMD5.Rtdqs :2016/02/27(土) 19:05:21 Ymmz9e9w0
投下終了です


124 : ◆mMD5.Rtdqs :2016/02/27(土) 21:33:58 Ymmz9e9w0
すみません。 誤字がありました。

ガラスの体→心でした。

クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてZeroWinchester氏が創作されたSCP-189JP ガラスの心、 ガラスの門番のキャラクターを二次使用させて頂きました。


125 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/27(土) 22:30:57 EbUYpJA.0
皆さま投下お疲れ様です。感想投下します。

灰原哀&キャスター
姉を失った悲しい妹をどうにかして救おうとするキャスターに心が温まります。
哀ちゃんも見た目は子供でも中身は大人なので、うまく立ちまわることで他のマスターたちとは
違った展開を編み出してくれそうで面白そうですね。
投下ありがとうございました。

柳生九兵衛&ランサー
テニス選手の次はポケモントレーナーがサーヴァントになるとは驚きです。
ランサー本人には戦闘能力がない為、その分戦闘では不安なところがあったりします。
九兵衛は剣を使えば戦闘面では活躍できそうですが、東京で剣を持ってたら……なので立ち回りが重要そうです。
投下ありがとうございました。

式野会長&キャスター
いきなり令呪を失ってしまうのはいざという時、非常に困る気もするのですが
恐らくキャスターはその辺りを考慮していなくて、生前の欠点が表に出てしまったものなのでしょう。
その為、式野だけが敵サーヴァントと遭遇するピンチがないようキャスターと仲良くなって欲しいものです。
投下ありがとうございました。

金田一一&アーチャー
名探偵のはじめちゃんは果たしてこの今にも終わってしまいそうな聖杯戦争の謎を解き明かせるのか?
実際に、対聖杯などといった脱出系の方針には一のような頭脳が必要な場面が出来るはずです。
アーチャーも強力なサーヴァントなので、全力で一をサポートして欲しいですね。
投下ありがとうございました。

鞠山雪彦&アーチャー
警察全てを掌握してしまう手は非常に恐ろしいですし、最悪あの殺人鬼の凶行を無視して、油断してる
他の主従を攻め込む――なんて手段も可能ですので厄介極まりません。
何より雪彦のサーヴァント・DIOの存在そのものが不穏です。雪彦がDIOに利用されないことを祈ります。
投下ありがとうございました。

エクスデス&バーサーカー
マスターもサーヴァントも、双方が都市伝説化しそうな不気味な主従です。
一応バーサーカーと良好関係に持ち込んだエクスデスの対応は良いので、このまま動けるように
なるまでバーサーカーに頑張って貰う……とは簡単にはいかないでしょう。今後どうなるか楽しみです。
投下ありがとうございました。

アンジェラ・バルザック&ライダー
電子のライダー……かと思いきや、最後の最後のオチにあいつが来るとは!
イレギュラー事案はすでに発生すると決定されている以上、もしかするとライダーは財団関係の
サーヴァントと交流する機会があれば……あるいは? もし参戦すれば面白い事になりそうですね。
投下ありがとうございました。


126 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/27(土) 22:31:17 EbUYpJA.0
シロウ&アーチャー
これはシロウコンビ(?)ですね。しかもシロウはルーラーというサーヴァントの能力を
所持した強力なマスターである以上、仮に参戦すれば他のマスターたちよりもかなり優位の存在です。
ところでこの聖杯戦争のルーラーはどうなっているのでしょうかと、気になる人もいるのでは……?
投下ありがとうございました。

杉下右京&キャスター
ついに特命係の右京さんが来てしまった……けれども、彼にとっては願ったりの初非現実事件?となるでしょう。
しかも、微妙に戦えるキャスター・真宵はある意味、魔力がないであろう右京には適任かもしれません。
とはいえ、かなりトリッキーな戦いを強いられます。実際、聖杯戦争でどのように活躍できるか楽しみです。
投下ありがとうございました。

アイン&キャスター
何気なくSCP財団との関わりがある以上、アインにもSCPの知識があるかもしれませんね。そう考えると
すでに東京にいる理不尽な能力を持ったSCPには対応できるかも分かりません。
キャスターはなるべくアインのことを気使い、守り続けて欲しいです。
投下ありがとうございました。

ジャン・ミシェル・ロジェ&アーチャー
東京都のセキュリティを管理しているロジェですが、サーヴァント相手にセキュリティはどこまで通用するか
が問題ですし、それをうまく生かせなければ意味がありません。何よりロジェがアーチャーを
怒らせないように立ちまわる必要があります。最悪ロジェにも危険が及ぶのでそこが不安なものです。
投下ありがとうございました。

ルーラー/『Mephilas』
ついに混沌とした東京に来たルーラーですが、いかんせんマスターが地球人ではない場合の対応が
困ったものです。無論、聖杯戦争には地球人以外どころか人間ではないマスターもいるわけですし
そう考えると、果たして公平なルーラーなのでしょうか?と疑問を抱きますね。
投下ありがとうございました。

詩島剛&ライダー
かつてのコンビの再会、そして主従として結成。まさに熱い展開ですね。
投下があったエルメロイ2世とライダーのように、すでにお互い理解し合っており、能力も把握しているので
他の主従たちとは違って大きく差がつけることが優位となるはずです。それを生かして欲しいものです。
投下ありがとうございました。

SCP-189-JP-1A-001&キャスター
この主従を見ると、なんだか悲しいものを感じてしまいます。純粋すぎるが故にマスターは救われない。
どうにか水晶の人に救いが与えられることを願いますが、聖杯戦争においてそれは無謀かもしれません。
キャスターは魔物の本能のまま行動する以外術はないという。彼らの行く末が気になります。
投下ありがとうございました。


127 : ◆T9Gw6qZZpg :2016/02/27(土) 23:31:35 QGKAgL1I0
投下します。


128 : ◆T9Gw6qZZpg :2016/02/27(土) 23:32:06 QGKAgL1I0

 何一つ理解することが叶わず、命を摘み取られる。
 そういう運命なのだと、この首を締め上げる黒い魔人は言外に訴える。

「運が悪かったと思って、潔く諦めてくれませんかねえ? あなたがその手に令呪を宿さなければ……いいえ、本来の記憶など取り戻さなければ、私達もいちいちあなたなど気に留めなかった」

 魔人の後ろでにたにたと下品な笑みを浮かべる、一人の女。
 自分が何故この二人に襲われる羽目になったのか、その理由には未だ理解が及んでいない。
 しかし、自らの内側で最も強く奮起する感情は混乱でも、恐怖でも、絶望でも無く。

「手を煩わされる羽目になった私達が詫びてほしいくらいですよ。サーヴァントを召喚していない内に聖杯戦争のライバルを蹴落とせるのはこちらとしても幸いですが……甚振りがいもありますし」

 怒り。
 その感情の矛先を向けるのは自分を殺そうとする魔人であり、その指示を出したあの女であり、自分をこの窮地に立たせた原因だろう聖杯戦争とやらであり。
 しかし、何より怒るべき相手は別にいる。
 最も唾棄すべきは、他でもない自分自身。
 聖杯戦争。サーヴァント。令呪。それらなんかよりも余程大切な事柄を忘却してしまったまま、僅かでも時間を無為に過ごしてしまった自分自身だった。
 彼を忘れてしまった自分を、心から悔いた。
 唯一、自分だけが彼を覚えていられたのに。皆が彼を忘れ果ててしまった中、彼と皆を繋ぎ止めるための記憶を自分だけは失くさずに済んだのに。
 これで自分まで彼の記憶を、彼との思い出を忘れてしまったら、彼はどうなる。誰が彼を救えるのだ。

「…………取り消、せ」
「はー?」

 だから、だからこそ。
 絶対に否定しなければならない。

「あいつとの記憶を、思い出さなければよかった、などと、言わせない」

 記憶を思い出さなければ良かった、その一言だけは認めない。
 この記憶が原因で死を迎えるのだとして、それが本望だとは思わない。
 それでも、一時の記憶の喪失を永遠にするのが最良の結末などと微塵も思わない。
 彼と出会って、彼と戦って、彼と共にいたから見えた景色だけは、何者にも奪わせない。
 会いたくないと言って彼方へと消えた彼を連れ戻すまで、彼の真意を理解するまで――交わった道の先で、彼ともう一度戦うまで。
 絶対に無くしてたまるものか。

「諦め、る、か」

 記憶も、命も守り抜く。
 その未来を掴むための切札は、無い。
 しかし、それが何だ。
 呼吸もままならず、脱力し始める身体を奮い立たせ、右腕に力を込める。首を絞める魔人の右腕を掴むために、僅かでも右手を近づけていく。
 ただの意地。それでも、今の自分に残された最後の手札。
 何も失わない未来のために、残された力を振り絞って。


129 : ◆T9Gw6qZZpg :2016/02/27(土) 23:32:39 QGKAgL1I0

「……あ、がっ」
「諦めてくださぁ~いって言ったの聴こえなかったんですかあ? つーか別に自分語りとか興味ねーってーの、きめえよ」

 魔人の腕に込める力が増すと共に、なけなしの力も奪われる。
 意識が遠のき始めるのが実感出来る。
 また、何もわからなくなるのか。
 記憶も命も、ここで無くしてしまうのか。
 もう、彼との再会は叶わないのか。

「もう飽きまーしたー。アサシン、やっちゃっていいよ」

 これが、敗者の結末か。
 仲間との絆を掲げられず、無力な人間として消えゆくこの様を晒した挙句の、絶望
 孤独の中に再び堕とされたまま、死ぬのか。

「あっ……ア、イチ……――」

 こんな形で、櫂トシキは――



◇ ◆ ◇





 記憶。

 その一言だけで、きっと十分だったのだろう。





◆ ◇ ◆


130 : ◆T9Gw6qZZpg :2016/02/27(土) 23:33:46 QGKAgL1I0



 ぐしゅ、と音が鳴った。
 それと同時に櫂の首を拘束する力が消え、身体が地面の上に落ちる。
 咳き込みながら見上げた先で、黒の魔人が苦しげに呻いていた。その胸から突き出すのは、一本の矛先。
 誰が、何をしたというのか。そんな疑念に駆られるまま視線を動かした先に立っていたのは、握った白槍で黒の魔人を貫く、もう一人の白の魔人。
 いや、違う。その姿は、まさしく騎士。
 そして櫂は、無意識の内に、呟いた。

「――――ブラスター・ブレード……?」

 全く異なる存在であるのは一目瞭然のはずなのに。
 何故か、あの光剣士の姿を櫂は連想していた。

「あっ……アサシン、そのサーヴァントを殺しなさい! 宝具を使ってもいいから!!」

 呆然と立ち尽くしていた女が我に返り、震えた声で魔人に命令する。
 反応するようにアサシンと呼ばれた魔人は右手を振りかざし、白い騎士に裏軒を叩きこもうとする。
 それは、届かない。槍を握らない左手に受け止められ、その拳が万力の如き握力に圧し潰された。
 痛みと恐れから逃れるように飛び退いた魔人は、しかし騎士の槍に幾度も斬り付けられ、薙いだ一閃に蹂躙される。
 魔人の悲鳴。槍に裂かれる風の音。それらを上回るほどの勢いで響くのは、騎士の雄叫び。
 地力が違い過ぎる。
 自らの肉体を直接戦わせることを本分とするわけではない櫂にすら理解出来る格差が、そこにはあった。
 今、櫂も含めた何者もが白い騎士に恐怖を抱いている。
 それでも尚、黒い魔人は屈しない。
 全力の後退により五メートルは距離を置いた魔人の右の掌に、淡い光に包まれた短刀が現れる。騎士へと刃先を向けた短刀の纏う光は、妖しく、眩くなっていく。
 もしや、あれが宝具とやらか。あの光が弾けた時、果たして何が引き起こされると言うのだろうか。
 固唾を呑んだ櫂が恐れる未来。それは、しかし到来することが無い。

「クラッシュ、イントルード」

 白い騎士が何事か口にすると共に、その身体が激しい光へと変わる。
 光は一直線の奔流となり、魔人との間の距離を一瞬の内にゼロとして、そのまま魔人の身体を呑み込んだ。
 がががが、と大地を砕く轟音を響かせ、二者を包む光は遥か向こう側まで突き抜ける。
 そして光が消えた時、立っていたのは白い騎士。
 黒の魔人の身体は、弱々しい光と共に消えゆく。
 紛れもなく、白い騎士の勝利だった。
 その余韻に浸ることも無く、魔人の亡骸に目もくれず、騎士は櫂達の下へと歩みを進める。
 その双眸が、紅く昏く光る。片手の指先に、血が滴っていた。

「や、いやぁぁっ……!」

 威勢も何もない情けない声を上げ、女は脱兎のごとく駆け出した。
 もう彼女が刃向かってくることは無いのだろう。顎を恐慌に振るわせた彼女の姿から、櫂はそんな連想をした。
 ……尤も、誰に刃向かわれたところで抵抗する体力など無いのだが。
 理屈は全く分からないが、あの白い騎士が戦闘行為を行うのと並行するように疲労感が増した実感がする。何であれ、身体は満足に動いてくれそうにない。
 あの騎士の次の標的が自分だとしたら、今度こそ終わりだ。
 結局、運命は変わらないのだろうか。
 騎士が、目の前に立った。


131 : ◆T9Gw6qZZpg :2016/02/27(土) 23:34:27 QGKAgL1I0

「……?」

 そして、騎士の肉体は大気の中に溶けていく。
 櫂の身体に何一つの危害を加えることなく、何処へと消えていった。
 言葉を何も語らなかった騎士の真意は、櫂には分からない。
 ただ、櫂トシキは命拾いをしたという結果だけが遺された。

「くそ……」

 助かった。
 それを理解すると共に、意識が再び遠のいていく。緊張の糸が切れたというやつか。
 結局、自分は未だ状況に振り回されてばかりだ。
 恐らく今ここで死ぬわけではないだろう。ならば、為すべきことは目覚めた後にすればいい。
 今、自分は何に巻き込まれているのか。聖杯戦争とは何なのか。この事態は先導アイチの件と何らかの関係があるのか。
 速やかに知らねばならないことが、沢山あるのだ。
 それに。

「奴は、一体」

 あの白い騎士は何者で、どうして自分を護ってくれたのか。
 あらゆる疑問に囚われたまま、櫂トシキは一時の眠りへと堕ちていく。



◆ ◇ ◆





 これ以上失うものなど、もう無い。

 ならば為すべきは、彼の思い出を守り抜くこと。

 この身の全てを投げ出して、砕け散るまで戦うのみ。

 絶対に逃げない。もう、絶望なんてさせない。


132 : 櫂トシキ&バーサーカー ◆T9Gw6qZZpg :2016/02/27(土) 23:35:31 QGKAgL1I0





【クラス】
バーサーカー

【真名】
テッカマンブレード@宇宙の騎士テッカマンブレード

【パラメーター】
筋力:B+ 耐久:B+ 敏捷:A++ 魔力:B 幸運:E 宝具:B+

【属性】
秩序・狂

【クラススキル】
・狂化:C
理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
バーサーカーの場合、パラメーターの向上は宝具『永遠の孤独』の常時解放という形に昇華されている。

【保有スキル】
・自己改造:B
自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。

・戦闘続行:A
名称通り戦闘を続行する為の能力。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。

・憤怒:A+
全ての記憶を失った男を最後まで戦い抜かせた、ラダムへの怒りと憎しみ。
その感情は、狂戦士となったことにより極限の勢いで燃え盛っている。
ラダムを彷彿とさせる「人に仇なす怪物」と対峙した時に限り発動するスキル。
対象へと行う攻撃行動に大きな有利判定を得られる他、他者からの非攻撃的干渉(毒、呪術、能力低下作用など)の一切を無効化する。
それは、自らのマスターからの令呪による制約すら例外ではない。

・仮面の下の涙:-
バーサーカーは自らのマスターとのまともな意思疎通をしていないにも関わらず、必ずマスターを最優先で守ろうとする。
その真意はマスターを含めた何者にも理解出来ない。当のバーサーカーも、自らの真意を言葉にすることが叶わない。
ただ、このこととは全く別の話を敢えて一つだけしておくならば。
マスターである櫂トシキは、バーサーカーの前で、「大切なメイトとの記憶を失いたくない」と願った。


133 : 櫂トシキ&バーサーカー ◆T9Gw6qZZpg :2016/02/27(土) 23:37:09 QGKAgL1I0

【宝具】
・『永遠の孤独(ブラスター・ブレード)』
ランク:B+ 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
侵略生物ラダムが人間の肉体の改造によって創り出した生体兵器テッカマンの一人、テッカマンブレード。
予期せぬ状況に適応するため、テッカマンブレードが第二段階の進化――ブラスター化を人為的に成し遂げたブラスターテッカマンとしての姿が宝具である。
第一形態の宝具『罪という名の仮面(テッカマンブレード)』の強化型であり、テッカマンの能力の飛躍的な向上として幸運以外のパラメータが上昇する。
『狂戦士』のクラスで召喚された結果、バーサーカーはこの宝具を常時解放した状態となっている。
主な武装は近接戦用の槍・テックランサーと、テックランサーを回収するための鋼線・テックワイヤー。
その他クリスタルフィールドを纏っての高速突撃・クラッシュイントルード、そして体内のフェルミオンエネルギーを一気に放出する必殺技・ボルテッカを攻撃手段とする。
ブラスター化に伴い、テックランサーは先端から通常のボルテッカに匹敵する反物質砲を放つことが出来るようになる。
そして強化された最終必殺技・ブラスターボルテッカは周囲一帯を焦土に変えてしまうほどの破壊力を誇るが、魔術の素養の無いマスターの下で発射するのは大きな危険を伴う。
なお、当然ながら現時点でバーサーカーの理性はほぼ完全に消し飛んでいる。

【weapon】
上記の武装及び技

【人物背景】
侵略生物ラダムによって肉体をテッカマンへと変えられた青年。
家族と仲間を奪ったラダムへの憎しみに身を焦がしながら、彼は幾度となく戦い、傷付いていく。
かつての大切な人間を自らの手で討つ苦しみ、力の代償として自らの記憶の何もかもを忘却する哀しみ。
「――Dボゥイも相羽タカヤも今ここで死んだ! 俺はテッカマンブレードだ!」
その果てに彼は全てのラダムを討ち滅ぼし、そして彼の自我は完全に壊れた。
全てを終えた後、ようやく得た安らぎの時間の中で彼は失った思い出を少しずつ取り戻す―――――――――こともなく、残された生涯を終えた。
Dボゥイ、相羽タカヤ。その名前に皆が込めた本当の意味を、遂に理解しないまま。

【サーヴァントとしての願い】
――――。



【マスター】
櫂トシキ@カードファイト!!ヴァンガード

【マスターとしての願い】
先導アイチとの再会。

【weapon】
特に無し。
強いて言うならばヴァンガードファイトのデッキ。
ただし「ブラスター・ブレード」のカードは立凪コーリンに敗北した際に失われている。

【能力・技能】
少なくとも、超能力の類は持っていない。

【人物背景】
「孤高のヴァンガードファイター」と呼ばれていた少年。
先導アイチと出会い、仲間を持つことを強みとする彼に大きな影響を受ける。
そのアイチが人々の前から消えてしまったことで、彼を取り戻すための戦いへと身を投じた。
レギオンメイト編第16話(シリーズ通算では第179話)終了後からの参戦。
先導アイチとリンクジョーカーに関わる真実を、まだ知らない。

【方針】
まず、自分が今どういう状況に置かれているのか理解する。

【備考】
聖杯戦争については現時点でほぼ全く理解していません。
ただし、対峙した敵マスターから「聖杯戦争」「サーヴァント」「令呪」などの単語だけは聞きました。


134 : 名無しさん :2016/02/27(土) 23:38:32 QGKAgL1I0
投下終了します。


135 : ◆NIKUcB1AGw :2016/02/28(日) 22:52:45 PaMV07Os0
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます


136 : ロイ・マスタング&ランサー ◆NIKUcB1AGw :2016/02/28(日) 22:53:50 PaMV07Os0
ここは都内の、とある高校。
すでに授業は終わり、部活動のない生徒達は次々と帰路についている。
職員室へ向かうその男の向こうからも、二人の女子生徒が小走りでやってきた。

「さようなら、増田先生!」
「間違えるなと言っているだろう。私は増田ではない、マスタングだ!」
「だって先生、髪黒いし顔も日本人っぽいんだもん。本当にイギリス人なの?」

(いや、そのイギリスという国も行ったことはないのだがな……)

喉元まで出かかった言葉を、マスタングはかろうじて飲み込んだ。


◆ ◆ ◆


ロイ・マスタングは、アメストリス軍の軍人である。
しかしこの東京で彼に与えられたロールは、本職とはまったく関係ない高校の英語教師というものだった。
そんな適当な配置をした聖杯に苛立ちを覚えつつ、マスタングはこの世界での自宅に帰宅する。
彼にあてがわれた自宅はそれなりに住みやすいアパートであったが、元の世界の住宅環境と比べれば明らかにランクが落ちていた。
それもまた、マスタングのストレス源になっている。

「やーやー、今日も一日お疲れさん」

部屋に入るやいなや、霊体化を解いたサーヴァントが気の抜けた声で話しかけてくる。
マスタングのサーヴァントは、少々変わった風貌をしていた。
顔の下半分はマスクで覆われ、さらに斜めにかけられた額当てが眼帯代わりとなって左目を隠している。
顔のパーツで露出しているのは、右目だけ。
その右目は眠たげであり、まるで強そうには見えない。
だがマスタングはすでに、自らのサーヴァントがどれほどの強者か知っていた。


マスタングはこれまでに一度、他の参加者との戦闘を経験している。
その際にサーヴァントが見せた戦い振りは、まさに変幻自在と呼ぶにふさわしいものであった。
そして最後は、電撃を纏った腕で敵サーヴァントを突き殺した。
その光景を見たマスタングは、槍を持たぬ彼がランサーとして召喚された理由を悟ったのであった。


「いやまったく、慣れない教職の仕事は疲れるよ。いっそ君が代わってくれないかな、ランサー。
 たしか君は、他人に化ける術も使えるのだろう?」
「あー、無理無理。俺も昔は先生って呼ばれてたけど、実際には現場の指導者だったから。
 座学は専門外なんだよねえ」

マスタングの軽口に対し、ランサーは気の抜けた声のまま手を振ってキッパリと拒絶する。

「専門外なのは私も同じなのだがな……。それなら街中を見て回るなりして、他の参加者の情報でも集めてきたらどうなんだ。
 君のような人種……えーと、そう、忍者は、そういう影で動く仕事が得意なのだろう?
 それなのに一日中私の後ろに張り付いていては、宝の持ち腐れではないか」
「いやいや、要人の護衛も忍者の仕事の一つだから。
 いくら情報を集めても、俺のいないうちにマスターがやられちゃったら意味ないでしょ。
 いざとなったら令呪で呼ぶって手段もあるけど、回数が限られてる以上温存しておきたいしねえ」

ランサーの言葉に、マスタングの口からは溜息が漏れる。
顔を合わせて以来、戦闘中を除いてはずっとこんな感じだ。
マスタングが何か言っても、ランサーはのらりくらりとした態度でそれを却下してしまう。


137 : ロイ・マスタング&ランサー ◆NIKUcB1AGw :2016/02/28(日) 22:54:48 PaMV07Os0

「ランサー、君は本当にやる気があるのか? 協力して欲しいといってきたのはそっちだろう!」

初めて姿を現した時、ランサーはマスタングに言った。
この聖杯戦争は、正しい形で行われていない。
その異常性を確かめるために、力を貸して欲しいと。
マスタングは少し考えたが、結局その頼みを引き受けた。
どんな願いでも叶えるという聖杯に、魅力を感じないわけではない。
だが命をかけた戦いに本人の意思を無視して参加させるような輩のいいなりになるのは、彼の性分に合わなかった。
そして二人は、この戦いの闇を暴くことを誓い合った。そのはずだった。

「たしかに私の安全も大事だ。だがこうしてただ日常を過ごすだけで、君の目的は果たせるのか?
 こちらから動かなければ、なにも変わらないではないか!」
「あー、マスター。ちょっと勘違いしてないか?」
「む?」

意味深なランサーの発言に、マスタングは語気を緩める。

「俺自身が動かないからといって、何もしてないとは限らないんだよね」
「どういうことだ?」
「こういうことだよ」

ランサーが、パチンと指を鳴らす。すると部屋の外から、壁をすり抜けて大小様々な犬が侵入してきた。

「これは……?」
「俺の忍犬だ。サーヴァントの様式に合わせて言うなら、使い魔ってところか。
 こいつらが俺の代わりに、街を回って情報収集してくれるわけ」
「なるほどな……。見当外れの批判をしたことはわびよう、ランサー。だが……」

納得したかに思えたマスタングであったが、すぐに眉間にしわを寄せ、ランサーに顔を近づける。

「なぜそんな大事なことを、もっと早く言わなかったんだ?」
「まあ……驚かそうかなあと思って」
「そんな茶目っ気はいらん!!」

至近距離での怒号に、さすがのランサーも目を白黒させるのであった。


◆ ◆ ◆


一見噛み合わないこの二人だが、実は共通点も多い。

たとえば、共にかけがえのない親友に先立たれている。
たとえば、共に力はあっても未熟な若き英雄を支えて戦っている。
そして共に、「火」に強い関わりを持っている。

二人が力を合わせれば、あるいは本当に聖杯戦争の真実にたどり着けるかもしれない。


138 : ロイ・マスタング&ランサー ◆NIKUcB1AGw :2016/02/28(日) 22:55:32 PaMV07Os0

【クラス】ランサー
【真名】はたけカカシ
【出典】NARUTO
【属性】中立・善

【パラメーター】筋力:C 耐久:D 敏捷:A 魔力:C 幸運:E 宝具:B

【クラススキル】
対魔力:C
魔術に対する抵抗力。
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】
忍術:A
体内で練り上げた「チャクラ」と呼ばれるエネルギーにより、様々な現象を起こす術。
ランサーは他者の忍術をコピーすることで、多種多様な忍術を修得している。

カリスマ:C
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘において自軍の能力を向上させる稀有な才能。
生前一国の君主に近い地位に就いていたランサーであるが、
今回はその地位に就く前の状態をベースに現界しているためあまりランクは高くない。

単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
Cランクならばマスターを失っても、1日は現界可能。

病弱(偽):D
ランサーは病気に冒されていたわけではないが、写輪眼の副作用により激しい戦いの後は寝込んでしまうことが多かった。
それによる印象が「無辜の怪物」に近い形で発現してしまった、バッドスキル。
一定以上体力を消耗した場合、自然回復のスピードが大幅に低下してしまう。


139 : ロイ・マスタング&ランサー ◆NIKUcB1AGw :2016/02/28(日) 22:56:28 PaMV07Os0

【宝具】
『コピー忍者』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:視界内 最大捕捉:1人
写輪眼により1000以上の術をコピーしてきたという逸話が宝具となったもの。
宝具に昇華されたことにより、忍術のみならずあらゆる技を見ただけでコピーできる。
ただし血継限界のように、特殊な血筋や肉体構造を持つ者でなければ使えない技はコピーできない。
また魔術などランサーがいた世界にない系統の術はその仕組みを理解していなければコピーできないため、実質的にはコピーできる技はかなり制限される。

『雷切』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1-3 最大捕捉:2人
ランサーが生み出したオリジナルの忍術。別名「千鳥」。
雷を斬ったという逸話から、この名で呼ばれるようになった。
その実態は、電撃を纏った腕による高速の突きである。

『万華鏡写輪眼』
ランク:B- 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
写輪眼と言われるうちは一族の特異体質。その発展系。
同ランクの幻術、千里眼のスキルを保有しており、幻術は同ランクの対魔力や精神干渉系のスキルで抵抗。
または、ランサー本人から解除して貰うなどしなければならない。
他の魔眼、及び幻惑効果から逃れる効果も含まれている。魔術的な隠蔽は、この眼では意味を成さない。
ランサーはうちは一族ではないが、うちはオビトの眼球を移植されたため左目にのみ写輪眼を宿す。
しかしうちはの血を引かぬ体で強引に使用しているため、使用時の消耗が通常よりはるかに大きくなってしまっている。

【weapon】
手裏剣などの忍具一式

【人物背景】
木ノ葉隠れの里の長・六代目火影を務めた忍者。
天賦の才と友から受け継いだ写輪眼により数々の功績を収め、
他国の忍者からは「写輪眼のカカシ」「コピー忍者」と呼ばれ恐れられた。
七代目火影・うずまきナルトとその盟友・うちはサスケ、春野サクラを育てた教官であるということでも有名。
今回は戦闘力の全盛期ということで、忍界大戦時の肉体をベースに現界している。

【サーヴァントとしての願い】
この聖杯戦争の真実を暴く。

【基本戦術、方針、運用法】
ランサーではあるが、運用法はアサシンに近い。
高い敏捷と忍術で相手を翻弄し、雷切で確実に仕留めるのが理想のパターン。
スタミナに不安を抱えるので、長期戦は避けたい。


140 : ロイ・マスタング&ランサー ◆NIKUcB1AGw :2016/02/28(日) 22:57:21 PaMV07Os0

【マスター】ロイ・マスタング
【出典】鋼の錬金術師

【マスターとしての願い】
ランサーに協力する。その後は元の世界に帰還したい。

【weapon】
○発火布の手袋
特殊な布に錬成陣が書かれた手袋。
強くこすると火花を発し、マスタングの錬金術の基点となる。
濡れたり錬成陣の部分が破れたりすると使い物にならなくなるが、スペアも所持している。

【能力・技能】
○錬金術
火炎を操る錬金術を得意とする。
また今回は真理を見た後から参加しているため、両手を合わせての錬成も可能。

○軍人としての技術
射撃や格闘術を習得している。
ただし戦闘の基盤は錬金術であるため、積極的に使うことはあまりない。

【人物背景】
アメストリス軍大佐兼国家錬金術師。二つ名は「焔(ほのお)の錬金術師」。
大総統の座を狙う野心家だが、その真意は軍事国家であるアメストリスの変革にある。
エドワードを国家錬金術師に勧誘した張本人であり、やがて彼と共に軍の影に潜む巨悪と戦うことになる。
今回はホムンクルスたちとの戦いが終結した後からの参加。失明した両目は治療を終えている。

【方針】
聖杯戦争について調査する。


141 : ◆NIKUcB1AGw :2016/02/28(日) 22:58:27 PaMV07Os0
以上で投下終了です
宝具の万華鏡写輪眼は、企画主様が投下されたうちはマダラのものをベースにさせていただきました


142 : 名無しさん :2016/02/29(月) 16:59:34 er8g41gs0
皆さま投下お疲れ様です
自分も投下させていただきます


143 : ラウ・ル・クルーゼ&アサシン ◆LaBi18zCV. :2016/02/29(月) 17:00:37 er8g41gs0
聖杯―――それはありとあらゆる願いを叶える事が可能とされる万能の願望機である。


その聖杯を求める者達はマスターとして従者であるサーヴァントと契約し、他のマスターと競い合う。
聖杯を手に出来るマスターは一人、勝ち残った一人だけが願いを叶える事が出来る。


それが聖杯戦争のルール
現在は、この『東京』と呼ばれる街で多数のマスターが己の願いを賭けて
討ち、討たれ、滅ぼし合っているのだ。
マスターとして呼ばれた、この私も望む望まないに関係無く戦禍に身を投じるのだ。


「覚悟は決まったか?」

男はマスクを磨きながら現状を再確認していると
背後から実体化したサーヴァントが姿を現し、肩にポンと手を乗せた。

「覚悟も何も既に賽は投げられたのだろう?戦場で敵前逃亡などすれば軍人なら銃殺刑だ」
「それを聞いて安心した。途中で戦いから降りようとするような腑抜けがマスターでは優勝を狙う処ではないからな」

オールバックにした髪型のサーヴァントは冷笑しながらマスターである私、ラウ・ル・クルーゼを
まるで品定めするように見下ろしていた。
このサーヴァントにとって、自分が使える存在であるか見極めようとしているのだろう。
もし、彼の御眼鏡に適わない存在と見なされたら、おそらく私は処刑されるだろう。

この冷淡な眼差しと態度、そしてアサシンのクラスとして現界された所を考えると。
使えぬと判断すれば親兄弟ですら容赦しないかもしれない。
そんな残酷さをこのアサシンから感じ取ることができた。

「それと、あと一つ聞いておきたい。貴様は聖杯を手にしたら何を望む?」

「……ふむ。それだが私は気が付いたらこの街で生活をしていた。それだけで
 特に叶えたい願いがあって聖杯戦争に参加した訳では無いのだよ」

「つまり貴様は偶然にも迷い込んだだけのマスターということか」

「いや、私はこう考えている『物事に偶然は無い。全ては必然によって成り立っている』と。
 哲学者の言葉だが、だとしたら死んだはずの私がこうして生きているのも。
 聖杯戦争に参加しているのも全て必然による物なのかもしれない」

「なるほど、願いの無い貴様でも聖杯に選ばれた確固たる理由があると」

「私はこの聖杯戦争にいたく関心を持っている。例え願いが無くても。
 他のマスター達が何を望み、どう戦い、どう生きるか。
 彼らの目指す先にはどんな終焉が待っているのか。
 我が身が再び朽ちるその時まで彼らの足掻く様を見たいのですよ」


144 : ラウ・ル・クルーゼ&アサシン ◆LaBi18zCV. :2016/02/29(月) 17:01:18 er8g41gs0
ヤキンドゥーエでの戦いの最中で消滅したはずの私がなぜいるのか。
聖杯か、それとも他の誰かの手による物なのか、それは私の知る由ではない。
だが、この舞台に呼ばれた以上は役者として振る舞おう。


どうも、この世界では魔術師という特殊な能力を持った人間達がいるようだが。
己が願望の為に争いは絶えず続いている。
どんな世界に行こうが、どれだけの力を保有しようが。
人間の本質は等しく変わらない、という事だろうか。


ならば私は、この身に渦巻く人類への憎悪を再び解き放ち、この舞台を漆黒に染めてやろう。
止められる者がいるなら、止めてみるがいい。
私の絶望と憎しみがそれらを打ち砕いてみせよう。

「アサシンよ、貴方の力を疑う訳では無いが作戦を建てる以上。
 どんな能力を保有しているか把握しておく必要がある。
 宜しければ一つ見せていただけると嬉しいのだが」
「いいだろう。我が宝具を見るがいい。いでよ!!選ばれし我らがジオンの将兵達よ!!!!」

「ジークジオン!!ジークジオン!!」

まず一機目のロボットが出現した、特徴的な所として緑色のカラーに一つ目のモノアイ。
まるでプラントが開発したMSのジンを思わせるデザインをしていた。
サイズは人並みであり、とても人間が乗り込んで操縦できる大きさでは無かったが。

「石の上にも三年ー!私も頑張りまーす!」
「私たちが優勝するのだ~」
「ガンオンこそ至高!!艦これやFGOには負けねえ!!」

続いて、次々と色んな機体が出現した機体の一つ一つが言葉を発し、性格も違う。
どうやらアサシンが司令官として、この機体達を指示して動かすのがアサシンの戦い方のようだ。
宝具を展開したアサシンは演説をやり始め、機体達は歓声を挙げながら聞いていた。

私の知らない世界でもこのような兵器は生まれていたのか。
何だか奇妙な因縁を感じるよ、それはそれで……面白い。


145 : ラウ・ル・クルーゼ&アサシン ◆LaBi18zCV. :2016/02/29(月) 17:02:25 er8g41gs0
【クラス】アサシン
【真名】ギレン・ザビ
【出典】機動戦士ガンダムオンライン
【性別】男性
【属性】混沌・悪

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:D 幸運:C 宝具:B

【クラススキル】
気配遮断:E
 自身の気配を消す能力。技術ではなく策謀による暗殺を行っていたのでクラススキルの恩威は殆ど得られない。

【保有スキル】
軍略:B
多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。自らの対軍宝具行使や、逆に相手の対軍宝具への対処に有利な補正がつく。

カリスマ:C+
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
ギレンへの信望者は数多く存在し、彼の死後も意思を受け継ぐジオニストによるテロが長年続いた。

拠点作成:A
司令官として指揮を執り、戦術を駆使する拠点を作成する能力。
拠点内にはサーヴァントを守る砲台が点在しているが迎撃を行うには歩兵の防衛が不可欠。
拠点その物が核となっているため、全ての拠点の破壊はサーヴァントの消滅を意味する。

【宝具】
『戦術兵器(アトミックセット)』
ランク:E 種別;対拠点宝具 レンジ:1~100 最大補足:1000人
一撃で戦況を変える強力な兵器。
歩兵に運搬させて敵拠点傍に設置し、発動させる事で拠点ごと敵を葬る事ができる。
この宝具は拠点となっていない建築物の破壊は不可能となっているが
内部にいるマスターやサーヴァント、NPC等の殺害は可能である。

『誇り高きジオンの将兵(ジーク・ジオン)』
ランク:B 種別:大軍宝具 レンジ1~99 最大補足:51人
スペースノイドの独立を掲げ、戦場を駆け巡った51人の軍勢。
51人が様々な機体を保有しており、撃墜されても一定時間後に復活するが。
再出撃する度にマスターへの負担を強いることになる。


146 : ラウ・ル・クルーゼ&アサシン ◆LaBi18zCV. :2016/02/29(月) 17:03:23 er8g41gs0
【weapon】
無し
 あえて挙げるなら戦術を駆使し、どんな残忍な手も平気で使う頭脳。

【人物背景】
ジオン公国の総帥にして階級は大将。デギンの長男。放映開始時の設定上の年齢は35歳。
『THE ORIGIN』では45歳。身長190cmの長身。少年時代から政治活動に参加し、デギンの隠退後は、ジオン公国の実質的最高指導者(総帥)となっていた。
TVや劇場においてはギレン自身の出番が演説等でしかなく、直接戦闘の指揮をする事自体が最後のア・バウア・クー戦のみとなる。
にも関わらず、彼が指揮を務めている局面では連邦を圧倒し続けた。
指揮官としても優秀だが、本来は戦略家といえる人物。
ガンダムの世界において彼の唱えた政治思想や世界観は巨大な影響力を持ち、次世代にまで波及していった。

【サーヴァントとしての願い】
過去をやり直しジオン公国を勝利させ、ザビ家による地球圏の支配を行う。

【基本戦術、方針、運用法】
自軍拠点を守りつつ、敵の居場所をレーダーや索敵で見つけ、始末する。
親兄弟ですら謀殺した冷酷さからして、非道な手段も容赦なく使ってくるだろう。


147 : ラウ・ル・クルーゼ&アサシン ◆LaBi18zCV. :2016/02/29(月) 17:04:17 er8g41gs0
【マスター】ラウ・ル・クルーゼ
【出典】機動戦士ガンダムSEED
【性別】男性

【マスターとしての願い】
全人類への憎しみを果たす。

【weapon】
軍用の銃
 軍人としての役割を与えられたクルーゼが最初から所有している拳銃。

【能力・技能】
操縦技術
 失敗作のクローンでありながら、MSの操縦はコーディネイタ―をも上回る。
 空間把握能力に優れ、初搭乗でドラグーンシステムもたやすく使いこなせた。

【人物背景】
普段は仮面で素顔を隠している為「仮面の男」と呼ばれる。ザフト軍クルーゼ隊の指揮官。獅子を思わせるような癖のある毛質をしている。
地球連合軍のG兵器奪取の為、ヘリオポリスを襲撃、取り逃したG兵器の1体・ストライクと新造艦・アークエンジェルを執拗に追い、各地で戦闘を行った。
ムウ・ラ・フラガの父親・アル・ダ・フラガのクローンとして、キラ・ヤマトの父親・ユーレン・ヒビキによって生み出された。
オリジナルが既に高齢と言える歳のクローン故、テロメア遺伝子の減少短縮による老化と短命という問題を抱え。
細胞分裂を抑制する薬品を頻繁に服用し、年齢に見合わず老化した素顔を仮面で隠している。
自らを失敗作として扱った周りの環境や、自身を含むコーディネーターの研究とそれに対する人々の行動などを目にするうちに。
欲望のままに愚かな行為を続ける人類に対して憎しみを抱き、世界のすべてを滅ぼすことを目的として行動していた。

【方針】
聖杯戦争に参加する全てのマスターを殺害する。


148 : 名無しさん :2016/02/29(月) 17:05:06 er8g41gs0
投下終了です


149 : ◆TA71t/cXVo :2016/03/01(火) 05:01:14 tXA0Snbc0
お疲れ様です。
こちらもこれより投下させていただきます。


150 : 虚ろな夢/有り得た世界  ◆TA71t/cXVo :2016/03/01(火) 05:02:00 tXA0Snbc0





偽りの世界。



偽りの人々と共に、与えられた役割を演じながら生きる閉じた世界。



それはとても滑稽で、空虚で。





そして……大切な一時だった。


151 : 虚ろな夢/有り得た世界  ◆TA71t/cXVo :2016/03/01(火) 05:02:20 tXA0Snbc0



◇◆◇




「……本当……何でこんな世界に来ちゃったんだろ」


雲一つない満月の空を仰ぎ、少女―――イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは寂しげにそう呟いた。
全てが偽りで出来ている、虚ろな無の世界。
聖杯戦争の為にのみ生み出された、虚無に満ちた東京。
住民達は皆例外なく、何者かに与えられた役割を果たす為に生きている。
どうして、自分はこんな世界に呼ばれてしまったのか……



「……何で……こうなっちゃったんだろうなぁ……」



そうでなければ……こんなにも、寂しい時間を過ごす事はなかっただろうに。


152 : 虚ろな夢/有り得た世界  ◆TA71t/cXVo :2016/03/01(火) 05:02:36 tXA0Snbc0
◇◆◇




「イリヤちゃん、バイバーイ!」
「うん、皆また明日ー!!」


この東京でイリヤに与えられた役割は、なんてことはない一介の小学生であった。
今までの記憶の全てを奪われ、彼女はただ平凡な日々に生きていた。
ただ学校でよく学び、クラスメイトと楽しく遊んで過ごす……そんな、当たり前の生活を送っていた。

本来ならば彼女が決して送ることのできなかった……そんな、当たり前の日々を。



「おーい、イリヤー!」


夕日を浴びながら家へと向かう道を歩いていると、ふと背後から己の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
聞き慣れた、心に響くとても温かい声だった。
イリヤは満面の笑みを浮かべて振り返り、その先にいる者達へとたまらず駆け寄っていく。


「おとーさん! ママー!」


誰よりも大切な、大好きな両親がそこにいた。
黒いコートを纏った黒髪のその父親は、駆け寄ってきたイリヤを笑顔で抱きしめた。
その傍らに立つイリヤがそのまま大人に成長したかのような母親は、二人の姿をまた笑顔で温かく見ている。


「どうしたの、二人とも?」
「うふふ、ちょうど晩ご飯の買い物に出かけてたのよ。
 そうしたら、イリヤを見つけちゃってね……」



大好きな両親と、一緒に毎日を過ごす。
それは、実にありふれた……とても温かい、家族の姿であった。
ずっとこうして、みんなと仲良く過ごしていたい。
ただそれだけが、イリヤの望みだった。


だが……その穏やかな日々は、ある日唐突に終わりを告げた。


153 : 虚ろな夢/有り得た世界  ◆TA71t/cXVo :2016/03/01(火) 05:02:53 tXA0Snbc0




◇◆◇



「アイリ、リモコンをとってくれないか?」
「はい、切嗣」


切っ掛けは、些細な事であった。
たまたま家族揃って晩御飯を食べていた時に、父がテレビを見ようと電源を入れた。
光を灯した液晶画面には、ちょうどニュース番組が写っていた。
明日は体育の授業があるけど、一体天気はどうなるのだろうか。

そう思って、画面に視線を向けたとき……彼女は、見てしまったのだ。



―――――――警察関係者を含む52名が殺害。容疑者と見られる20代後半の男性は以前逃亡中……


この東京で起きた、未曾有の殺人事件―――バーサーカーの凶行を報じるニュースを。


その瞬間、彼女の頭の中で唐突にスイッチが入った。


それまで心の奥底に封じられていた記憶が全て、蘇ったのだ。




――――――ガシャン。


途端に、全身よりすべての力が抜けた。
コップが利き手より滑り落ち、床で音を立てて砕け散る。
イリヤはただ呆然としたままに焦点の合わぬ目で、液晶の彼方を見つめた。


「イリヤ……!?
 どうしたの、大丈夫?」
「イリヤ、怪我はないかい?」


そんな彼女の様子を見て、両親は慌てて側に駆け寄ってきた。
どこか具合が悪いのか、怪我はしていないか。
心配の気持ちを口に出し、大切な娘の身をひたすらに案じている。


「……うん、大丈夫。
 ちょっと手が滑っただけ、だから……心配しないで」


そんな二人へと、イリヤはいつもと変わらぬ調子で返事をした。


その顔を俯かせ、二人に決して見せぬままに。



「大丈夫だよ、ママ……お母様。
 キリツグ……おとーさん……」


その頬を伝う涙を……決して、悟られぬように。


154 : 虚ろな夢/有り得た世界  ◆TA71t/cXVo :2016/03/01(火) 05:03:19 tXA0Snbc0

◇◆◇




愛する母が、いなくなってしまった父が、一緒に側にいてくれた日々。
それはイリヤにとって、正しく夢のような時間だった。
もう二度と、過ごすことはできない……とても、とても温かな一時だった。

けれど、彼女は気づいてしまった。
それは世界に与えられた、偽りの日々であったことに。
その手に顕れた三画の令呪が、残酷に真実を物語っていた。
これから起こる戦いこそが……自身が本当に生きる意味。
即ち、聖杯戦争なのだと。


「あ……」


空を眺め呆然としていたイリヤの頭に、ふと温かい何かが宿った。
とても大きい、ゴツゴツとした肌の感触。
それが人の手である事に気づくのに、そう時間はかからなかった。


「……うん。
 もう、大丈夫……ありがとう。
 心配してくれたんだね、バーサーカー」


イリヤは、傍らに立つサーヴァント―――バーサーカーに礼を言った。
記憶を取り戻した後、家族から離れ一人になった自身の側に彼は姿を顕した。
理性を失った狂戦士のクラス故に、言葉による意思の疎通は測れない。
だが……不思議とイリヤには、そのサーヴァントの意思がわかる気がした。
見た目は人あらざる完全な異形そのものだ。
しかし、狂戦士の身でありながらも温かな―――まるで父の様な眼差しを向けてくれるそのサーヴァントに、イリヤは心を許していた。

大丈夫だ。
辛いことはあった、悲しいこともあった。
それでも……自身は、聖杯戦争の為に生きてきたアインツベルンのマスターなのだ。
どんな窮地であろうと、きっと乗り越えてみせる。


この、バーサーカーと共に。




◇◆◇



バーサーカーは、自らを召喚したマスターの身を偏に案じていた。
幼くして両親と引き離され、ただただ勝利という目的を果たす為だけに鍛え上げられ生きてきた悲しき魔術師。
そんな彼女は、この偽りの世界で家族と過ごす僅かな時間を手に入れ……そして、残酷な現実に引き戻された。
何と哀れで不憫な事だろうか。

それでも、彼女は気丈に……己の宿命を果たそうとしている。
生まれながらにして決められたその宿命に、懸命に挑もうとしている。


155 : 虚ろな夢/有り得た世界  ◆TA71t/cXVo :2016/03/01(火) 05:03:42 tXA0Snbc0

「……うん。
 もう、大丈夫……ありがとう。
 心配してくれたんだね、バーサーカー」


まるで、自分と……そして自分の息子と同じだ。
平和な世界の為、生まれながらにして世の巨悪と戦うことを運命づけられた自分達親子と、歴代の騎士達と。

だからこそ、力を貸してやりたい。
狂戦士のクラスに落とされた身なれど……人の親として、この悲しき少女の為に力を振るってやりたいのだ。




◇◆◇



敵を倒す。

ただその目的のみに特化して、理性なき破壊魔獣へと姿を変えた逸話より彼はバーサーカーのクラスに選ばれた。


後世に語られている歴史において、彼が理性を捨てたとされる大きな戦いは二度あった。


一度目は、血を分けた親子同士で骨肉の争いを演じるというあまりにも悲しく壮絶な死闘であった。


しかし……二度目の変身において、彼はその力を真逆の目的―――息子を守るために使った。



如何に理性を失い狂おうとも、ただ敵を倒す事だけに特化した姿になったとしても。


バーサーカーは……『父親』である事だけは、決して捨てはしない。


156 : 虚ろな夢/有り得た世界  ◆TA71t/cXVo :2016/03/01(火) 05:04:03 tXA0Snbc0
【サーヴァント】

【クラス】
 バーサーカー

【真名】
 竜魔人バラン@ドラゴンクエスト ダイの大冒険

【属性】
 秩序・善

【パラメーター】
 筋力:A 耐久:A 敏捷:B 魔力:A 幸運:D 宝具:A+

【クラススキル】
狂化:B
 理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
 竜魔人と化したバーサーカーは、ただ目の前の敵を倒すことだけを考える魔獣と化す。

【保有スキル】
カリスマ:-
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。
 バーサーカーは強力な力を持つ超魔竜軍を従える軍団長だったためA相当のカリスマがあるのだが、
 狂化した影響で失われている。

心眼(真) :A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

竜の息吹 :A
 最強の幻想種である竜が放つマナの奔流。
 バーサーカーが放つ竜闘気は、極めて高い力を持つ。

対魔力:-(B)
 魔術に対する抵抗力。
 魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
 本来バーサーカーはこのスキルを持たないのだが、竜闘気を展開している状態に限りBランク相当の対魔力スキルを得る。

【宝具】
『竜闘気(ドラゴニックオーラ)』
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:100人
 竜の騎士のみが持ちうる特有の闘気。
 闘気とは自らの生命力を力に変え発するオーラの総称であり、竜闘気はその中でも最強のものとされている。
 肉体よりこの竜闘気を発することでバーサーカーは強力な防御力を発揮でき、バリア状に展開して防護壁としても使用できる。
 また、この闘気を拳や武器に纏わせる事で極めて強い威力を発揮でき、レーザー状の飛び道具として放つ『紋章閃』など極めて応用が効く。
 ただし、その分消費する魔力も相応である。

『迸る雷光の破砕剣(ギガブレイク)』
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:1人
バーサーカーが誇る必殺剣。
 魔力で呼んだ強力な稲妻『ギガデイン』を剣の刀身に纏わせ、全力の一撃を叩き込む。
 バーサーカーの怪力と強力な魔力を一度に敵にぶつける正しく必殺の奥義。
 ただし魔術を剣に纏わせるという性質上、対魔力スキルを持つ相手には相性が悪く威力が半減されてしまう。

『竜闘気砲呪文(ドルオーラ)』
 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~100 最大捕捉:1000人
 魔力で高密度に圧縮した竜闘気を打ち出すバーサーカー最強宝具。
 使用の際は両の掌を合わせ、咆哮する竜を模したその両手より放たれる。
 竜魔人化した状態でなければ撃った腕が反動で吹き飛ぶ程の威力があり、バーサーカーは生前にこの一撃で半島を軽く消滅させている。
 分類上は魔術ではあるものの、あくまで魔力は竜闘気を圧縮し打ち出す事にしか使われておらず
 攻撃そのものは竜闘気によるものなので、対魔力スキルで軽減することはできない。
 高い破壊力の反面消耗する魔力の桁も高く、バーサーカーをもってしても一度の戦闘では二度が使用できる限度である。


157 : 虚ろな夢/有り得た世界  ◆TA71t/cXVo :2016/03/01(火) 05:05:10 tXA0Snbc0
【weapon】
『真魔剛竜剣』
 竜の騎士が代々受け継いできた究極の武器にして、神が作ったとされる地上最強の剣。
 世界最高の硬度を誇るオリハルコン製の刀身は、バーサーカーが全力で竜闘気を放出しても耐えうる事ができる。
 また、優れた自己修復能力を持ち多少の刃こぼれ程度ならば少し時間を置けば自然と修復される。

【人物背景】
 古来より世界が悪に乱された時、地上を平定すべく遣わされる使命を帯びた竜の騎士。
 竜の戦闘力、魔族の魔力、人間の心を持ち合わせると言われる最強の種族。
 額に騎士の証としての、『竜の紋章』と呼ばれる紋章を持つ。
 バランはかつて、魔界に君臨した最強の知恵あるドラゴン『冥竜王ヴェルザー』を倒すべく地上に降り立った。
 激戦の末に彼は勝利を収めるも、魔界から地上に戻った頃には瀕死の重傷を負ってしまっていた。
 その傷を癒すべく、竜の騎士の力が回復するといわれている奇跡の泉へ向かうも、傷が大きく力尽きかけてしまう。
 そんな時、彼は偶然にもその場を通りかかったアルキード王国の王女ソアラと出会う。
 彼女に命を救われたバランはやがて恋に落ち、王家にも迎え入れられる事で二人の仲は深まっていった。
 しかし、得体の知れない存在が急に王家に現れた事を良しとしない家臣達の手により、彼は糾弾され国から追放されてしまうのだった。
 バランはそれも仕方のない事だとして一人旅に出ようとするのだが、彼を追ってソアラまでもが城を出てきたのだ。
 彼は一度はそれを拒否しようとするも、彼女よりその身に子どもが宿っていることを聞き驚愕した。
 竜の騎士である自分が、まさか子を成せるとは思ってもみなかった……奇跡にも等しい事実だったからである。
 その言葉を受け、二人は駆け落ちを決意。
 アルキードから遠く離れたテラン国の森の奥深くに逃げ延びたのであった。
 やがて息子であるディーノが生まれ、彼に心よりの愛情を注ぎながら幸せに暮らしていた。
 しかし、その事実を知ったアルキード王はソアラを連れ戻すべく軍勢を派遣し、彼等の仲は引き裂かれてしまうのであった。
 ソアラは城へ連れ戻され、ディーノは遠い地へと流されてしまい、バランは『得体の知れない魔物』として王家より処刑されてしまう事になった。
 バランはそれでも彼等を恨まず、ソアラやディーノに被害が及ばず無事に生きていけるのならと、敢えて処刑を受け入れた。
 そして処刑が執行されようとしたその時、なんと間際でソアラがバランを身を呈して庇ったのだ。
 致命傷を受けたソアラは「どうか親子二人で幸せに生きてほしい、人間を恨まないでほしい」とバランに告げて、息を引き取った。
 だが、それを見たアルキード国王が「化物を庇うとは愚かな娘め」と彼女を侮辱した事で、バランは怒りに身を任せ力を振るった。
 かつて自らが命を賭けて護った人間達に、バランは心の底から絶望してしまったのだ。
 彼はその手でアルキード王国を消滅させると、世界中を飛び回りディーノを探すも、その行方が一切つかめず失意にくれてしまう。


158 : 虚ろな夢/有り得た世界  ◆TA71t/cXVo :2016/03/01(火) 05:06:11 tXA0Snbc0
 そんな中、魔界より地上制覇の為に現れた大魔王バーンと出会い、彼より「まずは人間を滅ぼすべきではないか」と進言されたことで
 魔王軍へと身を投じ、『超竜魔団』を率いる『竜騎将バラン』として、人間を滅ぼし息子をその手に取り戻す事に執念を燃やすようになった。
 そして十数年の時を経て、遂に彼は成長したディーノ―――ダイと再会を果たす。
 しかしダイは、人間を滅ぼそうとするバランを拒絶し彼と敵対する道を選んだ。
 その戦いは壮絶を極め、バランは実の息子を倒す為に最強の破壊魔獣『竜魔人』へと姿を変えた。
 竜魔人の力は強大でダイ達は一度は追い詰められるも、仲間達との絆を武器に次第に追い返していく。
 そして、遂にバランは敗れたのである……彼が捨てた『人の心』により、打ちのめされたのだ。
 この戦いがきっかけでバランは人としての心を取り戻すも、今更父親として彼のそばに立つ事はできず、
 自分の罪を清算すべく単身で大魔王へと挑む覚悟を決める。
 だが、その覚悟を見抜いたダイの仲間ヒュンケルの決死の説得を受け、ダイと共闘することを決意。
 ダイもそれを承諾し、お互いにどこかぎこちなさを抱えたままではあるものの、共に大魔王の居城へと乗り込んだ。
 彼等はそこで待ち受けていた魔軍司令ハドラーと戦う事になるも、その最中で彼の肉体に
 最強最悪の破壊兵器『黒の核晶』が埋め込まれていたことに気づく。
 バラン達は爆発すれば大陸を一つ跡形もなく吹き飛ばすその兵器を前に全力を出せず、ダイはバランを庇い深手を負ってしまった。
 ダイは「もうこんな形で一緒にいるのは嫌だ。親子として、蟠りなく一緒に戦いたい」と告げるも、
 バランはそんな彼を呪文で眠らせ、彼を庇い父親として一人戦う決意を決める。
 そして、かつて親子でありながらも骨肉の争いを演じてしまった事で封じていた竜魔人化を行い、その力をもってハドラーを追い詰める。
 だが、場に乱入した大魔王の側近ミストバーンにより黒の核晶を強制起動されてしまい、
 バランはダイを救うべく自らの生命力全てを竜闘気として放出し、黒の核晶の爆発を全力で押さえ込んだ。
 その結果バランは致命傷を負うも、父親として最期はダイを救えた事に満足し、彼に自身の持つ力の全てを託してその生を終えたのであった。
 この聖杯戦争ではバーサーカーのクラスで召喚されたために、竜魔人に変化した状態で現界している。

【サーヴァントとしての願い】
 マスターの願いを叶える為、力を振るう。
 親の愛に飢えていた悲しい少女のために、一人の父親として力になる。


159 : 虚ろな夢/有り得た世界  ◆TA71t/cXVo :2016/03/01(火) 05:06:26 tXA0Snbc0
【マスター】
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night

【マスターとしての願い】
 聖杯を手に入れ、アインツベルンの悲願を成し遂げる。

【能力・技能】
 聖杯戦争史上最高と言われている適性を持っており、凄まじく魔力を消耗するバーサーカーですらも苦もなく維持することが可能。
 ただし、聖杯戦争のためだけに育てられたという歪な教育課程のためか魔術師としての技量そのものを見れば、まだまだ発展途上と言える。
 それでもそちらの適性もやはり高く、通常の魔術師を圧倒するほどの魔術回路の数を持っている。
 
『天使の詩・コウノトリの騎士(エルゲンリート・シュトルヒリッター)』
 イリヤの髪の毛を媒介とした鳥型の使い魔。
 オートで相手を追尾する自立浮遊砲台とも言うべき使い魔で、小型ながら魔力の生成すら可能な代物。
 光弾を放つ銃身とその固定用の浮遊する本体の2パーツで構成されており、銃身の部分は剣のようにも見える。
 実際、近接戦闘では剣としても使用可能である。

【人物背景】
 アインツベルンが最高傑作として誇るホムンクルス。
 第四次聖杯戦争開始に先立ち、アインツベルンのホムンクルス『アイリスフィール・フォン・アインツベルン』の卵子と、
 魔術師殺し『衛宮切嗣』の精子を用いて作り出された。
 そのため、ホムンクルスでありながらも母体から出産されることで生を受けている。
 胎児の段階から既に、第四次にて切嗣達が敗退した場合に備えて魔術的操作を受けており、
 生まれながらにして『聖杯の器』となる事を宿命づけられている。
 その反作用として、発育が第二次性成長の段階で止まっており、寿命も短命になっている。
 切嗣とアイリが第四次聖杯戦争に赴くにあたり、彼女はアインツベルンの本拠地で小聖杯としての教育と調整を受けつつも
 その帰りを待ち続けていた。
 しかし、アイリはその戦いの最中で聖杯と化し命を落とし、そして切嗣は敗戦した事に激怒したアインツベルンの長である
 アハト翁により裏切り者としてアインツベルンから遠ざけられてしまう。
 その結果、アハト翁からの歪んだ教育もあり『切嗣は自分と母を捨てた』と誤解して恨みの感情を募らせるようになった。
 基本的には素直で無邪気な性格なのだが、聖杯戦争のためだけに育てられたため、一般常識や倫理観に欠けている部分がある。
 この東京の聖杯戦争においては、第五次聖杯戦争に参加するためのサーヴァントを召喚する直前にこの世界へと呼び出されている。
 その為、意思疎通ができないバーサーカーをサーヴァントとしているにも関わらず、令呪の発現などから大凡の事情は推察している。
 失った両親との暮らしを再び過ごした事を一時の夢と見ているも、その心には決して小さくはない影響を与えていた。

【方針】
 バーサーカーと共に、他の主従を倒していく。
 基本的にはどんな相手でも、バーサーカーの高いスペックで真正面から戦いを挑む。


160 : ◆TA71t/cXVo :2016/03/01(火) 05:06:43 tXA0Snbc0
以上で投下終了となります。


161 : サイタマ&セイヴァー  ◆tHX1a.clL. :2016/03/01(火) 18:08:04 b9Cy6Sjc0
投下します


162 : サイタマ&セイヴァー  ◆tHX1a.clL. :2016/03/01(火) 18:09:27 b9Cy6Sjc0


  からんころん。
  からんころん。
  ジャージ姿につっかけ履きの、ハゲた頭の青年が、夜の路地を歩く音。
  満天の星空に、からんころんと寂しい音が消えていく。

「タマさんタマさん! ほら、星! すっごいキレーっすよー!」

  つったかたったと騒がしい音が、夜空にリズムを刻んでいく。
  ジャージ姿のハゲ頭の隣に、制服姿の女子高生が並ぶ。
  青年が、少女の声に促され空を見上げる。

「おー、すげーな」

  やや感情の起伏に乏しい青年の顔に、それと分かる笑顔が浮かんだ。
  促した少女もまた、夜空を見上げて笑っていた。

「やっぱいいっすよねー、こういうの。ボク、好きなんすよねぇ」

「へえ」

「良くないっすか? 皆がピカピカーってなってるの!」

「そうだな。こんだけ多いと、夜でも明るくて便利だ」

  噛み合っているのか、いないのか。
  マイペースな二人はそんなことを気にせずに、ただ、夜空を見上げながら歩き続けた。


163 : サイタマ&セイヴァー  ◆tHX1a.clL. :2016/03/01(火) 18:10:39 b9Cy6Sjc0


  ☆


「ねーねー、タマさん」

  夜空を見上げていた少女が、不意に隣を歩くハゲ頭に声をかける。

「サイタマな。で、なに」

「タマさんって本当にヒーローなんすか?」

  少女が目線を夜空から下ろし、サイタマと名乗った青年の顔の方に向ける。
  きらきらと輝いた少女の目と、虚ろとも言えそうなサイタマの目があう。
  サイタマは、再びタマさんと呼ばれたことに少々思うところがあったらしく、少し頬を掻くと、いつも通りの答えを返した。

「趣味だけどな」

  趣味。
  ヒーローと呼ぶにはあまりにちゃらんぽらんな背骨。
  もし、本職のヒーローや悪党が聞けば憤慨するかもしれない答え。
  少女は「はへー」とマヌケな感嘆の後に。

「いいっすね、それ!」

「何が」

「趣味でヒーロー! ボク、そういうの好きっす!」

  何が琴線に触れたのかは分からないが、少女はとても楽しそうだった。
  サイタマは、少しだけ得意な顔をして歩き続けた。


164 : サイタマ&セイヴァー  ◆tHX1a.clL. :2016/03/01(火) 18:11:19 b9Cy6Sjc0


「んで、お前はなんなの」

「ボクっすか? 何度も言ってるじゃないっすか。ボクはボクっすよ、一ノ瀬はじめっす」

「でも、セイヴァーって見えるし」

  サイタマの差した指の先にあるのは、『セイヴァー』という文字。
  サイタマ以外の人物には見えていないその謎の文字。
  少し前に出会った時から何度も聞き続けているが、結局明確な答えの得られない謎。

「んー、なんていうかなぁ……
 ほら、ボクは女子高生で、英霊で、ガッチャマンで、セイヴァーかもしれないけど、でも、やっぱりボクはボクじゃないっすか」

  セイヴァーが唸りながら出したのは、まるでなぞかけのような、意図不明の返答。
  むんむん唸りながら「なんて言うかなーなんて言うかなー」と呟き続けるセイヴァーを見て。
  サイタマは、しばし立ち止まってセイヴァーとのこれまでのやり取りを思い返し。
  そうしてようやく合点がいったと言うように、朗らかな顔で悩んでいるセイヴァーにこう評を下した。

「分かった。お前、めんどくさいやつだな!」

「そっすか? けっこーわかりやすいっすよ?」

  再び噛み合わない。
  だが、二人はその齟齬をさして気にせずに、そのまま別の話を始めた。


165 : サイタマ&セイヴァー  ◆tHX1a.clL. :2016/03/01(火) 18:12:10 b9Cy6Sjc0





「ねー、タマさん」

  しばらく他愛もない会話を続けながら歩いていると、再びセイヴァーから、問いが切り出される。

「なんだ」

「もし、願いがなんでも一つだけ叶うってなったら、タマさんは何願うっすかー?」

  それは、下らない問いかけだった。
  暇つぶしの話題にしても陳腐な、それまでの会話からも一切関わりのない問い。
  しかし、サイタマは、その下らない問いを受けるとらしくもなく深く考え、考え、考えに考えて。

「……家賃」

  言い終わり、手で制す。

「いや、待て。家賃があっても食費がないと……二つまとめて金? いや、最悪その辺は自力でなんとかできるとして、壊れない目覚まし時計とか……
 ……あ、めちゃくちゃ強い敵とかもいけるのか?」

「なーんでもっす」

  後ろ手に手を組んで、二歩、三歩と先を歩いて行くセイヴァー。
  その背を追いながら、小学生のような問いについて腕を組んで真剣に悩み続けるサイタマ。
  十歩分ほど進むと、サイタマは顔を上げ、ため息混じりに答えを出した。

「んー……分かんないな」

  セイヴァーの足が止まる。夜の街に刻まれていた弾む音色がピタリと止む。
  つられてサイタマの足も止まる。
  空から夜の闇が降りてきたように、二人を包んでいたものがなくなる。
  スカートを翻し、セイヴァーが振り返る。きゅっとローファーの擦れた音が、やけに大きく響いた。


166 : サイタマ&セイヴァー  ◆tHX1a.clL. :2016/03/01(火) 18:13:05 b9Cy6Sjc0


「あれ、タマさん意外と決めるの苦手なんすか?」

「いやいや、その時になってみないと分からないって。
 今の願いだって、その時には叶ってるかも知れないし。もしかしたら明日、今よりもっとデカい願いが出てくるかもしれないだろ?
 だから、もしこの先本当になんでも願いが叶うって状況になったら、その時改めて考える。もしなんもなかったら、その時欲しいもんを願うさ」

  それはただの結論の先延ばしかもしれない。
  根無し草のような生活を続ける彼らしい無計画さの現れかもしれない。
  だが、その返答を聞いたセイヴァーは、数秒サイタマを見つめたあと、何かが腑に落ちたように晴れやかな笑みを浮かべた。
  その笑顔は、ここ最近一緒にいるサイタマも初めて見る、まさに破顔と呼ぶに相応しい気持ちの良い笑顔だった。

「なんだよ」

  サイタマが問いを返しても、セイヴァーは答えない。
  ただ、笑顔のまま、またしても意味深な言葉を返すだけだった。

「ボク、タマさん好きっすよ。『ここにいる』って感じがするから」

「なんだそれ」

「未来でもない、過去でもない、ボクの隣に居るんすよ。タマさんは。
 今も、これから先も、たぶんずっと」

  セイヴァーは。
  一ノ瀬はじめは。
  とても嬉しそうな顔でそう言った。
  だからサイタマは、水を指すようなことはせず(あるいはただ単に面倒くさかったからかもしれないが)、ただ一言。

「そうか」

「そっす!」

  今度は噛み合ったのか。それとも結局噛み合わなかったのか。

  サイタマが、立ち止まっていたセイヴァーのおでこを軽く叩いて彼女の隣を通り過ぎる。
  セイヴァーは叩かれたところを撫でながら「へへへ」と笑って、駆け足でサイタマの背を追う。

  からんころんと寂しい音が、夜空の向こうに消えていった。
  つったかたったと騒がしい音が、夜空にリズムを刻んでいった。
  ちぐはぐな音たちは、決して重なることはない。
  街灯の作った影が踊る。一人と一人、合わせて二人分。
  サイタマとセイヴァーは、聖杯戦争という異常な舞台に上げられても、それぞれがそれぞれのペースで歩き続けていた。


167 : サイタマ&セイヴァー  ◆tHX1a.clL. :2016/03/01(火) 18:13:55 b9Cy6Sjc0


【クラス】
セイヴァー

【真名】
一ノ瀬はじめ@ガッチャマンクラウズシリーズ

【パラメーター】
一ノ瀬はじめ
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:E 宝具:EX

ガッチャマン
筋力:C 耐久:C 敏捷:C 魔力:C 幸運:E 宝具:―

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
カリスマ:―
人を率いる力。統率者としての素質。
セイヴァーのクラススキルであり、雛として目覚めた時分は彼女も確かに有していたスキル。
しかし、現在の彼女はそれを有さない。
何故ならカリスマを持つ個人が先導することを、彼女は否定したのだから。

対英雄:EX
世界をアップデートするのはヒーローじゃない。ボクらっす!
特出した英雄を否定し、万民が等しく個人であり群衆であることを世界に求めた少女。
その逸話こそが彼女のセイヴァーとしての根幹。そして聖杯より彼女に与えられた救世の力。
相手の英雄としての格が高ければ高いほど、逸話が有名であればあるほど、サーヴァントとして強力であればあるほど
相手を『世界に不必要な存在』であるとして能力を下降させることができる。


168 : サイタマ&セイヴァー  ◆tHX1a.clL. :2016/03/01(火) 18:14:58 b9Cy6Sjc0


【保有スキル】
バード・ゴー:D
セイヴァーが『特定個人』として戦場に立つための姿。
彼女が問いを投げかけた『英雄』の側面。
「バード・ゴー」「自立/孤立」「文房具好き」以外のスキルと宝具の全てを一時的に失う代わりにパラメータを上昇させる。
装備などは原作どおり。アムネジア・エフェクトで魔力素質の無いものからは見えなくなることが可能。
「バード・アウト」の掛け声で変身を解けば、パラメータが下降する代わりに全ての宝具とスキルを取り戻す。

菩提樹の悟り(偽):EX
覚者は菩提樹の根本で世界についてを解き明かした。その逸話が成すスキルこそが『菩提樹の悟り』である。
第三者から見た彼女もまた、世界についてを解き明かした覚者然とした人物として映っていた。
だが、彼女は世界を解き明かしたわけではない。ただ人よりも深く世界について考え続けただけである。
覚者が「解き明かし答えを得たもの」ならば、セイヴァーは「考え、答えに近づこうとしたもの」にすぎない。
あるいは、世界中の人々の全てが持っている何気ないスキルかもしれないが、逸話と合わせて『菩提樹の悟りっぽいスキル』として再現された。

セイヴァーは必要に応じて既知・未知問わず物事の本質と向き合いその根源を探ることができる。
そして、相手を深く知れば知るほど、その相手からの干渉を無効化できるようになる。
相手の真名と逸話の全てを把握するに至れば、そのサーヴァントからの敵性干渉の全てを無効化できる。

自立/孤立:A/―
空気に流されることのない人物。
偽報や謀略系のスキルに強く、上記菩提樹の悟り(偽)と合わせれば看破も可能。
だが、彼女の行動には彼女の『意思』が宿っているため、それを曲げることは難しいということでもある。

対話:A
相手と対話ができる。
Aランクともなれば、狂化や精神汚染を持つサーヴァントとも何らかの形で対話を行うことが可能。

文房具好き:B
文房具が好き。
我を忘れるほどではないが、それでも、通常生活時についつい文房具屋によってしまうことがあるだろう。

◇◇◇・◇◇◇◇:―
いつかは空気や心と呼ばれていたもの。
彼女の有するスキルであるが、世界に対する影響力はない。


169 : サイタマ&セイヴァー  ◆tHX1a.clL. :2016/03/01(火) 18:16:07 b9Cy6Sjc0


【宝具】
『七十三億の主人公たち』
ランク:― 種別:対人類 レンジ:声の届く範囲 最大捕捉:7300000000あるいは1
英雄を否定する力の根幹。
世界という物語の主役は誰なのか。このドラマの結末を決めるのは誰なのか。
そのことに気づいたならば、人々はきっと、世界を変えられる。

本来は宝具とも呼べぬ彼女の思考の一端。そのためランクは存在しない。
セイヴァーが敵サーヴァントと対話し、彼らの根幹を暴くことによって発動が可能。
彼らが特出した『個』ではなく、『群』の中の『個』であったと認識した時、そのサーヴァントはセイヴァーの領域に引きずり込まれることとなる。
この宝具自体に破壊力や世界への影響力はない。後述宝具『世界は変わる、ボクらとともに』の準備を行うためのものである。


『世界は変わる、ボクらとともに』
ランク:EX 種別:対社会 レンジ:― 最大捕捉:1あるいは7300000000
セイヴァーと宇宙人との戦いの逸話がそのまま宝具になったもの。
蔓っていた空気という名の悪魔は、『個』を『群』にすることで居場所を追われた。
漂っていた空気という名の怪物は、『群』を『個』にすることで力を失った。
彼女の行動自体は世界の問題を何も解決していない。
ただ、世界にあふれる『個』の群れに、世界のあり方を問う。
そしてきっと、その問いを受けた『個』は自分のあり方と世界のあり方を見つめなおし、一歩だけ前に進む。

この宝具が発動した瞬間、彼女の領域に引きずり込まれていた英霊は英霊ではなくなる。
彼ら彼女らは特出した『個』から、世界を彩る『群』の中の『個』になるのだ。
その変容が意味するのは、英雄としての彼らの消滅。そして、世界をアップデートする『ボクら』としての彼らの誕生。
消滅と言っても文字通り消滅して英霊の座に戻るわけではない。
この宝具に巻き込まれたサーヴァントは、その身に宿した聖杯の魔力のほぼすべてを聖杯に返上することになる。
だが、決して英霊の座に戻ることはできず、全ての戦力と逸話と聖杯戦争に関する思考を失い、魔力を持たぬNPCになり世界とともに歩んでいくことになる。
マスターはサーヴァントを失うことになるので脱落となり、彼らもまた、聖杯戦争が終わるまで世界とともに歩んでいくことを余儀なくされる。

この宝具を発動する、ということはセイヴァー自身が英霊として呼び出された自分を否定するということになる。
当然、彼女も英霊という立場を捨てて一介の女子高生NPC『一ノ瀬はじめ』となり、舞台の上で幸せに暮らし始めることとなる。


長々説明したが、つまりは彼女の自己犠牲によって上記宝具『七十三億の主人公たち』で自身の領域に引きずり込んだサーヴァントの特異な能力を全てひっぺがしてNPCまで引きずりおろし聖杯戦争から強制退場させる宝具である。

【weapon】
NOTE。

【人物背景】
ヒーローってなんすかね?


170 : サイタマ&セイヴァー  ◆tHX1a.clL. :2016/03/01(火) 18:16:35 b9Cy6Sjc0


【マスター】
サイタマ@ワンパンマン

【マスターとしての願い】
その時決める。

【能力・技能】
ワンパンマン。
理不尽の塊。
闘争という土俵の上に居ないもの。
この地に呼ばれたマスターの中で最も強いかもしれない男。
流石のワンパンマンでも神秘の壁を乗り越えてサーヴァントには傷をつけられない。
ただし、神秘を纏う方法があったならば……

【人物背景】
趣味でヒーローをやっているものだ。
ジェノスと出会う以前より参戦。

【方針】
悪そうな奴は倒す。
それ以外はいつもどおり。


171 : サイタマ&セイヴァー  ◆tHX1a.clL. :2016/03/01(火) 18:17:37 b9Cy6Sjc0
投下終了です。

少し思うところがあるので、コンペ終了までに本作を取り下げさせていただくことがあるかもしれないということを先に宣言しておきます。


172 : # :2016/03/01(火) 18:36:18 kT/9n/sM0
皆さん投下お疲れ様です。
自分も投下します


173 : ◆iptsD/oRxI :2016/03/01(火) 18:37:25 kT/9n/sM0
トリミスりました


174 : ◆iptsD/oRxI :2016/03/01(火) 18:39:03 kT/9n/sM0
【2日目】







「ーーー問おう、ぬしが俺(おい)のますたぁか」


175 : ◆iptsD/oRxI :2016/03/01(火) 18:40:56 kT/9n/sM0


「ま、・・ます?え、誰?」


自宅であるマンションの一室で、少女ーー巴マミは混乱していた。


気付いたら知らない土地で暮らしている事になっていた。
その事に動揺していたら、いきなり目の前に武者の格好の男が現れて、訳の分からないことを言い始めた。
起こる事々が余りにも急で、彼女の理解が追いつかない。


「いや、問うまでもなか。そん左手の令呪が、俺のますたぁである“しるし”じゃ」


言われてみると、彼女の左手の甲の皮膚には奇妙な紋章が浮き出ていた。
十字を円で囲ったような、プラスドライバーの先端を上から見たような。
男の衣服にも同様のものが描かれている。

(な、なにこれ?刺青?魔女の口づけにも似てるけど・・・)

すると、これは全て魔女が見せる幻覚のような物なのだろうか。
だったらこの武者のような格好をした男が魔女?それとも使い魔?
そもそもこの男の言う“マスター”とは何なのか。
とりあえず、この男が一連の“怪異”に関わっているのは間違いないのだろう。
そう結論付けた彼女は、一先ず男へ尋ねることにした。


「えっと、貴方は一体、「む!これは!!」


男は少女から問われる言葉を遮り、“ズザッ”っという音が聞こえんばかりの勢いで窓の方へと向く。
窓の外は夜景が広がるばかり。会話を断ち切る程の何かが有るとは思えない。



「ーーー“戦”」



男の口角が歪む。瞳孔が開く。毛が逆立つ。




「“戦のにおい”じゃ!!」





そのまま膝を上げ、身体を捻らせ、





窓を思い切り蹴り破った。





「え、」


男の突然の奇行にマミは呆然とする。


「何ば呆けちょるますたぁ、はよう行くど!」


男はそんな様子にはお構い無しに、マミの腕を掴み、肩に担ぎ、外へと飛び出た。

そこでマミはようやく気を取り戻すが、既に遅い。
常人とは思えない力でマミを拘束しており、身動きが取れない。


「ちょ、ちょっと!」
「いかん!!相手は離れていっとる!!」


男は各部屋のベランダを足場にし、猿のような俊敏さでマンションを降り、コンクリートの地面へと難なく着地する。


そのまま男はマミを抱えながら、弾丸の如き速さで夜の街へと突っ走った。


176 : ◆iptsD/oRxI :2016/03/01(火) 18:42:14 kT/9n/sM0

◆◇◆



男ーー“島津豊久”はサーヴァントだ。


その名も、『ドリフター』


彼はサーヴァントではあるが、確固たる願いを持っている訳では無い。
波の流れに身体を委ねた結果、聖杯戦争へと辿り着いた。
その名の通り“漂流者”であった。

だからドリフターは走る。戦場を走る。東京を走る。

戦を、

首級を求め。

それしか彼は知らないから。


◆◇◆


赤と黄の閃光が深夜の街を駆ける。
彼らは、常人の眼には一種の怪物、いや、“妖怪”として映るに違いない。
サーヴァントの全力疾走。見た者の常識が、それらが“人”である事を拒否する。

「首置いてけ!!」

ドリフターは止まらない。
止めるべき主である少女は半分伸びている。

「おいの首が!!」

ドリフターの前に障害があれば破壊してでも走る。
立てられた看板があれば、蹴り倒して走る。
放置された自転車があれば、蹴り飛ばして走る。
違法駐車された自動車があれば、踏み壊して走る。

「おいの大将首が!!」

ガードレールが、街灯が、
車が、バス停が、電柱が、道路標識が、
自動販売機が、塀が、壁が、棚が、椅子が、机が、窓が、柵が、信号が、車が、

「首、首、首、首、首、首、首、首、首、首、首」

ドリフターは既に“敵サーヴァント達の交戦”の気配を見失っていた。
どちらかが敗れたか。逃走したか。
何れにせよ、戦い収束し、相手はその場から去っていった。
おまけに近代都市という慣れない土地。追跡は不可能。

それでもドリフターは止まらなかった。

気分の高揚のままに、都市を駆けた。

だが、永遠に街を荒らすかと思われたドリフターの蛮行も、とうとう終わりを迎える。
彼の前方に見えるのは、深い黒に浸染した空(スカイ)へと伸びる一本の真新しい電波塔。

これを丁度いい高台と見たドリフターは、疾走に更に勢いを付け、コンクリートの地を砕く程の脚力で蹴り上がり、宙へと跳び上がる。
そして己の主を肩に抱えながら、器用に電波塔の鉄骨の一部に着地する。衝撃で足場が少し歪曲した。

そして己が駆けてきた方へと身体を向け、周囲に存在する全ての空気を取り込めんばかりに息を吸い。


「首置いてけぇぇえええええええええッ!!!!」


夜の東京へ猛々しく叫んだ。














(わ、わけが・・・)

巴マミの心情は、訳が分からないというレベルをとうに超えていた。


177 : ◆iptsD/oRxI :2016/03/01(火) 18:44:23 kT/9n/sM0
【CLASS】
ドリフター

【真名】
島津豊久@ドリフターズ

【属性】
混沌・善

【ステータス】
筋力:B 耐久:C 敏捷:B 魔力:E 幸運:B 宝具:C+

(首置いてけ発動時)
筋力:B+ 耐久:B 敏捷:B+ 魔力:D 幸運:B 宝具:C+

【クラススキル】
漂流者:B
一般的にサーヴァントは召喚される際、生活する上で不都合が無いように現代知識が与えられるのだが、ドリフターはそれを有していない。
独特な考えを持つドリフターは人々にとって異端者であり、異なる文化や価値観を与える伝道者である。
ドリフターは自らの信念に基づいて行動し、行き着いた世界を変化させる。

【保有スキル】
戦闘続行:B(EX)
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

勇猛:A
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。

【宝具】
『首置いてけ』
ランク:C+ 種別:対首宝具 レンジ:- 最大補足:1
ドリフターの「首」に対する蛮族めいた執着が宝具へと昇華した。
敵マスターを、或いは敵サーヴァントを「大将首」であるとドリフターが認識した時、
その首を刈り取るか、相手が降伏するか、戦闘から離脱するまでステータスが上に記した値に変化する。

『捨て奸』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大補足:-
ドリフターが生前用いた敵中突破の手段が宝具となった。
内容は大雑把に言えば、「小規模の隊が死ぬまで戦い、本隊を逃げ切らせる」というもの。
本来は幾らかの兵が必要である戦法だが、兵を召喚する宝具やスキルをドリフターは持ち合わせていない為、一人で行う。
この宝具を開放した時、ドリフターにはスキル「単独行動:A+」が追加される。
さらにドリフターは瀕死の傷を受ける度に、スキル「戦闘続行」の値が、BからA、AからA+、A+からA++、A++からA+++へと終わりなく上昇する。
ただし、宝具解放時から4ターン後にドリフターは消滅する。

【weapon】
野太刀と火縄式の短筒。

【人物背景】
戦国時代の島津家の武将。
薩摩隼人を絵に描いたような血気盛んな性格。
戦場では鬼神の如き強さを見せ、指揮官としても優秀。
その様は「全知全能が戦に特化している」とも言われた。
ただし、少し残念な子。

西軍として参戦した関ヶ原の戦いで若くして命を落とした




ーーーらしい。

【サーヴァントの願い】
首級。




【マスター】
巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ

【weapon】
無数のマスケット銃

【能力・技能】
魔法少女としての戦闘センスは極めて高い。
無数の銃を生成して戦う事を主な戦闘方法としているが、体術においても優秀。
またリボンを操り相手を拘束したりすることも可能。
必殺技は巨大な銃で相手を砲撃する、「ティロ・フィナーレ」

【人物背景】
交通事故で瀕死だった彼女は、キュウベイと契約し「魔法少女」となることで生還する。
周囲には面倒見の良いお姉さんの様な振る舞いをするが、実際は年相応の少女。
心許せる家族も、自分の正体を明かせる親しい友人もいない中で、たった一人魔女と戦う生活に孤独と寂しさを感じている。

今回のマミの参戦した時期はTV版3話、お菓子の魔女と戦う前である。

【マスターとしての願い】
現状の打開。


【基本方針・戦術】
こんなんでもドリフターの得意戦法は“集団戦”
フォローする人が居てこそドリフターの一騎当千は真価を発揮する。
だが同盟相手を探すより先ず、主従の話し合いが必要。


178 : ◆iptsD/oRxI :2016/03/01(火) 18:45:33 kT/9n/sM0
投下終了します


179 : ◆iptsD/oRxI :2016/03/01(火) 18:47:44 kT/9n/sM0
タイトル未記入でした…
「巴マミ&ドリフター」です


180 : ◆yYcNedCd82 :2016/03/01(火) 20:18:11 R6QR7CF20
投下致します


181 : 愛を取り戻せ! ◆yYcNedCd82 :2016/03/01(火) 20:18:54 R6QR7CF20

 日本はとてもユニークな国だ。

 なにせ国際的な犯罪結社が堂々と名前を掲げて事務所を構えていられるのだから。

------------------------------------------------------------------------------

 悲鳴があがった。
 男が逃げた。
 男――NPCとしてヤクザの役割を与えられた男は、死に物狂いで逃げていた。

 背後からは奴が追ってくる。
 かつ、こつ、と血染めのバットで床を叩きながら、一歩ずつ着実に追ってくる。
 走らなければいけない。急がなければいけない。
 だけれど、ああ、なぜだろう。
 血溜まりに足をとられるせいか、日頃の運動不足が祟ったか、足は遅々として進まない。
 勝手知ったるはずの事務所の中なのに、まるで迷宮のように目が惑う。

 やがて、男は限界点にたどり着いた。

 消防署から何度も何度も開閉できるようにしろと指導され、無視してきた非常扉。
 今ほどそれを後悔したことはなかった。
 重く錆びた扉はノブを掴んで回しても押しても引いても開く気配がなく――

 ――かわりに、かつ、こつ、という音が、すぐ真後ろで止まった。

「ま、や、やめろ、やめてくれ……! 俺は何もしない! あんたの事も言わない!」

 ニワトリ男は、答えない。

 ――そう、ニワトリ男だ。

 男の背後には、ニワトリ男が立っていた。

 ゴム製の愛嬌あるニワトリのマスクを被った男。
 それだけなら、何かのジョークかと思ったに違いない。

 ジャケットを着こみ、手には赤黒く血で汚れたバットを手にしていなければ。
 そいつが事務所に詰めていた組員たちを皆殺しにしてさえいなければ。

「う、あ、あ、あ、あ……」

 まさか。
 話には聞いていた。噂は聞いていた。ただのバカ話と思っていた。

 取引相手のロシアン・マフィアが、その話をする時、怯えた表情をしていたのに。

 なぜ気にしなかったのか。気づかなかったのか。

「まさか、本当に、いたなんて……」

 何が起こったのか。
 男にはわからなかった。

 いつも通り、事務所には皆がいて、適当な猥談で盛り上がっていて。

 気がついたら、一人がバットで殴り殺された。
 チャカを取り出そうとしたやつが殴り殺された。
 悲鳴を上げて逃げようとしたやつが殴り殺された。

 殴って、殴って、殴って、殺された。

 彼――今や無様に腰を抜かし、喚きながら手を振り回すヤクザ。
 彼が生き延びることができたのは、ただ単に、後回しにされたからだ。

 その事実を、ヤクザは嫌になるほど理解していた。
 目の前のニワトリ男はそういうものだと、彼は理解してしまった。


182 : 愛を取り戻せ! ◆yYcNedCd82 :2016/03/01(火) 20:20:24 R6QR7CF20

「ま、待て、よせ、やめてくれ! 金なら幾らでも払うから!」

 ニワトリ男は答えない。

 今日は給料日(ペイデイ)。支払いの日(ペイデイ)。報復の日(ペイデイ)。
 頭の中でぐるぐると言葉が渦を巻く。意味の無い言葉。走馬灯なんて嘘だ。

「電話(ホットライン)を繋げてくれ! あんたのボスと話がしたい、だから――」

 ニワトリ男は答えない。

 かわりにバットが振り上げられ、振り下ろされた。

 悲鳴があがった。
 男が死んだ。
 男――NPCとしてヤクザの役割を与えられた男は、頭を砕かれて無惨に死を迎えた。

 他も、同じ。

 ヤクザの事務所には死屍累々と、NPCたちの遺体が転がっている。
 その誰も彼もが頭蓋を一撃で打ち砕かれ、血と脳漿を撒き散らして死んでいる。
 本来NPCの死体はすぐにでも消滅しそうなものだが……。
 まるで誰かに魅せつけるかのように、この殺人現場の痕跡は薄れる事がない。

 ――暴力は好きか?

「ふう。ふふふ。魂喰いなんて似たようなことは昔もやっていたけれどさ」

 不意に、その血染めの事務所に不釣り合いな可憐な声が響いた。
 少女の声だ。

「まったく、たまらないよね。あーあ、前にもこれくらいパワーアップできればなぁ」

 ニワトリ男は答えない。

 だが、彼はそこに現れた少女が何者かは知っていた。
 燕尾服のような服装にタイトのミニスカート、右目側に眼帯。
 男の子っぽい口調だけれど、十代の女の子特有の愛らしさばかりは隠せない。
 ゴシックロリータ調の衣装を内側から押し上げる身体の線ばかりは――……。

.


183 : 愛を取り戻せ! ◆yYcNedCd82 :2016/03/01(火) 20:21:07 R6QR7CF20

「そうしたら、織莉子にもあんなに苦労をかけずに済んだと思うんだよ、私は」

 ニワトリ男は答えない。

 「狂戦士(バーサーカー)」。少女がそう名乗っていることを彼は知っていた。
 彼女が自分を「ご主人(マスター)」と呼ぶことも彼は知っていた。
 これが「聖杯戦争」とかいう代物であることも、彼は知っていた。

 ――だから何だ?

 眼帯の少女。
 黒いゴシックロリータ調の男装をし、両手に大仰な鉤爪を構えた少女。
 身に満ち足りる生々しい魔力の感触に、彼女は陶然と蕩けた息を吐いている。

「しかし、やあやあご主人、なかなか私たちは良いコンビじゃないかい?」

 ニワトリ男は答えない。

 だが確かにそうだった。
 少女の操る「低速化」の魔法とやらは、彼と相性が良かった。

 そもそも最初から銃器で完全武装した奴らのところに一人で殴り込めるというのに、
 連中の動きがのろのろと遅くなったら、どれほどのことができると思う?

 答えは「たくさん殺せる」だ。

「もちろん織莉子とのコンビこそが最強だから、私とご主人は準最強!ってところかな」

 ニワトリ男は答えない。

 返り血で凄惨な赤黒に染まったニワトリの覆面。
 手には脳漿を滴らせたバット。無表情に少女を見返すゴムの顔。 
 一言も言葉を発さぬこの男こそが、淡々と殺戮を繰り広げれた惨劇の主。
 気が狂っているとしか言いようが無い。

 もっとも――……。

「そうさ。織莉子がいるから私の世界は輝くんだ。織莉子のいない世界なんて意味が無い」

 それを言ってしまえば、血溜まりで踊り狂う、鉤爪のゴスロリ少女も似たようなものだが。
 
 眼帯の少女、魔法少女、魔女、バーサーカー。
 彼女はにっこりと、満面に空虚なほほ笑みを浮かべ、首を傾げる。

「君もそうだろ、ご主人?」

 それは目にする者をどきりとさせるような、とても愛らしい仕草だった。
 淡い燐光を紐解くようにして、バーサーカーの衣装が消え去り、中学の制服が露わになる。
 彼女は男の血まみれの手を取ると、まるでデートにでも行くかのようにスキップを踏んだ。

「さあ、行こうか。こんなところに長居は無用さ。先はまだまだ長いんだ」

 ニワトリ男――ジャケットは答えない。
 答えないが、互いに相手の想いは痛いほど理解していた。

 愛は無限で有限だ。
 死んだ者は蘇らない。
 お前の大切なものは奪われた。

 これは茶番だ。
 愛する者はいない。
 憎むべき敵もいない。
 聖杯? そのために戦え?

 だが安心しろ。
 これから何をやったとしても、損はない。
 たとえ真実はわからないとしても。
 なら答えは一つ。

 ――俺の時間を無駄にするな。


184 : 愛を取り戻せ! ◆yYcNedCd82 :2016/03/01(火) 20:21:36 R6QR7CF20
------------------------------------------------------------------------------

 ――――日未明、指定暴力団竹組の事務所から悲鳴が聞こえたとの通報があり、
 かけつけた警察官が、組員二十五名が頭から血を流して倒れているのを発見。
 救急車により病院へ搬送されましたが、まもなく全員の死亡が確認されました。

 被害者は頭を鈍器のようなもので強く殴られており、警察は殺人事件と断定。
 監視カメラの映像に残されていた、ニワトリの覆面を被った男の行方を追っています。
 また先日都内角川組事務所で発生した殺人事件との関連を調べています。

 では次のニュース。先日発生した警察官連続殺人事件についての続報が――……


.


185 : ジャケット&バーサーカー ◆yYcNedCd82 :2016/03/01(火) 20:22:31 R6QR7CF20
【サーヴァント】

【クラス】
 バーサーカー

【真名】
 呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ

【サーヴァントとしての願い】
 聖杯戦争を叩き潰す

【属性】
 混沌・狂

【パラメーター】
 筋力:B 耐久:C 敏捷:A 魔力:C 幸運:D 宝具:B

【クラススキル】
 狂化:C
  魔力と耐久を除いたパラメーターをランクアップさせるが、
  言語能力を失い、複雑な思考が出来なくなる。
  しかしバーサーカーは精神汚染スキルにより、このデメリットを打ち消している。

【保有スキル】
 精神汚染:A
  狂的な精神により他の精神干渉を完全遮断する。
  同ランクの精神汚染を持たない者とは意思疎通が困難。

 戦闘続行:A+
  往生際が悪い。
  霊核が破壊された後でも、最大5ターンは戦闘行為を可能とする。

 魔術:A
  後述の宝具「ソウルジェム」によって獲得した技能。
  バーサーカーが有するのは「身体強化」および「低速化」。
  
【宝具】
 『いずれ魔女となる少女の卵(ソウルジェム・マルゴット)』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-30 最大捕捉:100人
  青紫色をした卵型の宝玉。バーサーカーの霊核。
  これを破壊されない限り、バーサーカーは消滅しない。
  また真名を開放しない限り、バーサーカーはサーヴァントと認識されない。
  真名を開放することによりバーサーカーは魔法少女の姿へと変身する。
  燕尾服のような服装にタイトのミニスカート、右目側に眼帯、ソウルジェムは背腰部。
  また服の袖から鉤爪を伸ばし、切断、 投擲、連結させて盾化など攻防に活用する。
  加えて固有魔法として「身体強化」「低速化」の能力を有している。
  範囲内に存在する任意対象の速度を急速に低下、相対的に自身の速度を上昇させる。
  その効果は絶大で、瞬間移動したのではないかと錯覚させるほどの相対速度となる。
  なお鉤爪の本数に反比例して、固有魔法に使用可能な魔力は低下する。

 『人形の魔女(マルゴット・ガーデン)』
 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1-30 最大捕捉:100人
  ソウルジェムを自らの意思で廃棄、あるいは魔力が完全枯渇した際に自動で発動。
  狂化A、単独行動スキルA、自己改造Aを獲得、バーサーカーはサーヴァントとして離脱する。
 『人形の魔女』は固有結界を展開し、中に閉じ込めた者の魂を喰いつつ成長を続ける。
  本来この宝具を発動した時点でバーサーカーの理性は完全消滅、反英霊となるのだが、
  彼女の保有する精神汚染:Aの効果により、バーサーカーは理性を保ったまま活動を続ける。
  なおこの時点でバーサーカーはサーヴァントでないため、聖杯を手にする権利は喪われる。

【人物背景】
 インキュベーターなる宇宙人との契約によって生み出された「魔法少女」。
 元来内気で人見知りな性格だったキリカは、ささいな理由から美国織莉子へ恋慕を抱き、
 彼女に相応しい「違う自分になりたい」という願いを抱いて契約、魔法少女となる。
 現在のアッパー気味な性格は、これによって獲得した新たな人格である。
 織莉子と行動を共にする過程で「魔法少女がやがて魔女となる」事実を知ったキリカは、
 鹿目まどかという少女が最終的に「世界を滅ぼす魔女となる」のを阻止するべくに奔走。
 織莉子の指示を受け「魔法少女狩りの黒い魔法少女」として暗躍を続ける。
 そして最終的にまどかを殺害するため見滝原中学校にて大量殺戮を引き起こした。
 戦いの中で致命傷を受けて自身も魔女化するが、織莉子への想いから理性を保ち、
 最後の最後まで織莉子を守って戦い続け、まどかと織莉子の死を見届けて消滅した。

※平時は見滝原中学校の女子生徒というNPCの皮を被って行動している。
 マスターないしサーヴァントとして美国織莉子が参戦した場合、その支援を最優先する。

.


186 : ジャケット&バーサーカー ◆yYcNedCd82 :2016/03/01(火) 20:23:19 R6QR7CF20

【マスター】
 ジャケット@Hot Line Miami

【マスターとしての願い】
 聖杯戦争を叩き潰す

【能力・技能】
 ・精神汚染:A
  社会病質者(ソシオパス)。精神干渉系の効果を完全遮断する。
  また彼の犯行を目撃した者はSANチェックを行い、失敗すると恐慌状態に陥る。
  さらにアイデアロールに成功してしまった場合、強い影響を受け感化されてしまう。
  同ランクの精神汚染を持たない者とは意思疎通が困難。また失語症を患っている。

 ・戦闘技能
  元米国海兵隊特殊部隊員として極めて高度な隠密白兵戦闘能力を有する。
  また「現代社会に存在する」銃火器の扱いを完全に習得している。

【Weapon】
 ・ニワトリのマスク
  ゴム製のマスク。着用している間、正体がわからない。

 ・スポーツカー
  デロリアンとして知られるデロリアン社製モデルDMC-12。

【人物背景】
 80年代末期、アメリカ合衆国マイアミ市で惨劇を繰り広げた連続殺人鬼「ニワトリ男」。
 元米国特殊部隊隊員で、街にはびこるロシアン・マフィアをただ一人で皆殺しにした。
 近年は国際窃盗団「ペイデイ」の一員として、ロシアン・マフィアへ強盗を繰り返している。
 親友と恋人がロシアン・マフィアに殺されたのが動機と思われるが、詳細は不明。
 彼の活躍は都市伝説化しており、映画「ミッドナイト・アニマル」の題材となったが、
 影響を受けたフォロワーがマフィア狩りの末、報復を受けて惨殺される事態にまで発展した。

【方針】
 マフィアは潰す。ヤクザも潰す。サーヴァントも潰す。マスターも潰す。黒幕も潰す。
 聖杯戦争の真実、聖杯、この世界からの脱出に興味もなく、聖杯戦争を潰すために動く。
 それ以外の無関係なNPC、ただ脱出を目指すだけの組を積極的に害する事はない。
 戦闘ではバーサーカーの速度低下・身体強化をかけて、マスターがステルスで殴り殺す。
 あるいは主従ともどもバーサーカー状態で正面から暴れまわる。

※警察関係者、映画ファン、その他の現代犯罪知識保有者は無条件で正体を看破できる。
 同時にその精神汚染の影響を受ける為、SANチェックとアイデアロールが強要される。

.


187 : ◆yYcNedCd82 :2016/03/01(火) 20:23:42 R6QR7CF20
以上です ありがとうございました


188 : ◆zzpohGTsas :2016/03/02(水) 00:12:53 WTo.u3n.0
投下します


189 : 宮うつつ&ライダー ◆zzpohGTsas :2016/03/02(水) 00:13:32 WTo.u3n.0
 採光性を考慮して大きくデザインされたベランダの窓から入る朝の曙光は、実に暖かな物であった。
カーテンを全開にしていればリビング中に光が入るように計算されており、彼女の住むマンション同階の住民は、洗濯物も干しやすい、気分も良くなる、
向かいに日照を遮る建物もないから実に清々しいと、概ね高評価をこのマンションに下している。
立川市のとあるデザイナーズマンションは、特別区ではないと言う事を除けば、駅にも買い物に向かう為のスーパーも近いと、実に良質な物件であった。
無論室内も言うに及ばず。不景気が叫ばれて等しい今の日本であるが、このご時世に地道に買い手が増えて行っていると言う珍しいマンションだ。

 朝の透明な光に照らされる立川市の風景を、ベランダから見下ろす少女がいた。
何処ぞの学校の指定制服に身を包み、如何にも沈鬱そうな光をその緑瞳に宿した、黒みがかったグリーンのロングヘアをした背の小さい女の子だ。
前日酒缶や酒瓶を開けすぎて二日酔いになった者か、一時間しか寝れてない者以外は、足取りも軽くなろうと言う程の、綺麗な朝の光を受けても。
この少女は、前日に家族の誰かを交通事故で失ったかのようなローテンションさを、発揮していた。朝が弱いと言う訳でもなく、況してや、
前日の睡眠が足りなかったと言う訳でもない。彼女は普通に、適正な時間を睡眠に当てられた。

 ――それなのに、彼女が……『宮うつつ』が、いつも以上に鬱々としていた訳は。

「ヨオヨオヨオヨオヨオヨオヨオオオオオオォォォォォッ、う~つつちゃんYOOOOOOOO」

 そう言って、ベランダの手すりの上に、小柄なうつつよりも更に小さい、彼女背丈の半分しかないであろう奇妙な人形状の何かが座り込んだ。
例え人形にしてもそれは不細工だった。カーキ色のバケツをさかさまに被り、それに口と空洞状の瞳を取り付けたような頭。
そして頭の大きさに見合わぬ細い手足と胴体を持った、小学生だってまだ家庭科の時間でマシなモノを作れるだろうと思える程に、奇妙かつ、気味の悪い何かだった。
唐突にそんな物が現れたものだから、うつつは思わず「ひぅっ」と声を上げて、後ずさってしまった。

「いつまでウジウジ悩んでるんだぁ? もう腹を決めるんだよハラをよぉ~~~~?」

 この二日間、この人形にも似た何かは、この何かの主と一緒に、ずっとうつつに絡んでいる。
と言うのもその訳は簡単で、その二人は現在、宮うつつと言う存在から供給される魔力によってのみこの世界に形を留める事が出来る、見様によっては儚い存在だからだ。
うつつに完璧に依拠していると言う性質上、必然的に彼女に絡む事が多くなる。なるが、それが今の彼女には鬱陶しくてしょうがない。
特にこの人形状のお化けは、しつこい程に絡んでくるのだ。

「出たくないです」

 うつつはそう言って目の前の存在からなるべく目線を外しながら、簡潔にそう言った。

「聖杯戦争なんて、やりたくないです」

 聖杯戦争。その話は、この人形と、その主から聞かされた。
聖杯と言う神秘のアイテムを求めて、不特定多数の聖杯戦争参加者と殺し合いを行うイベント。
勝者には、どんな願いをも叶えてくれるその聖杯自身が約束されている……と言う。
それを嘘だとホラだと、うつつは頭から否定しなかった。自身が、高次元の存在であるJ・J・ロビンソンからガッチャマンと言う力を与えられた女である。
と言う経緯があるからと言うのもあるが、それ以上に、此処が本当に自分達の居た世界とは違う所だと本格的に知ってしまったからである。
自分が今住んでいる立川市の何処にも、あのガッチャマンの秘密基地が存在しないのである。この時点で彼女は、悟ってしまったのだ。
このイカれた人形の話す聖杯戦争、人を殺さねば何も解決しないと言うこの悪夢が、晴れないと言う事に。


190 : 宮うつつ&ライダー ◆zzpohGTsas :2016/03/02(水) 00:14:24 WTo.u3n.0
「うつつ!! 甘いこと言っテンじゃねェゼ。解ってるだろ、お前が何かシナキャぁ問題は解決しないんだぜェ~~~?」

「人、殺したくないです」

 それはそうである。ガッチャマンに対する思い入れはそれ程強いとは言えないうつつであるが、それでも、最低限の人倫は弁えている。人を殺す等、この少女には出来る筈がない。

「解ってるぜぇマスター。解る解る。オレだって、レースにゃ勝ちたいが人は自発的に殺したくねぇもんなぁ」

 そう言って、今までうつつの部屋のソファに座って、ミルクを飲み、食パンを乱暴に千切って食べていた男が、ベランダの方に近付いて来るなりこう言って来た。
日本よりは、ニューヨークのスラムを拠点にでもしてそうな大柄で長身の黒人男性だった。ラジカセを肩に背負っていれば、実にサマになっていただろう。
袖の破れた上着と独特のヘルメットが如何にも示威的だが、口から紡がれる声は、人生の今まで悩みらしい悩みにぶつかった事が全くないのだろうな、と言う事が聞いただけで解る程の、底抜けに明るい陽気な声であった。

「『ポコロコ』オオォォォォォ~~~!! 今は俺がうつつを元気づけてルンだからお前は引っ込んでな!!」

「お前の応援はぜんっぜん駄目だぜ『ヘイ・ヤー』ちゃんよぉ、それじゃあ白人の地主が奴隷いじめてる時のような口ぶりとなんもかわんねぇ、オレに任せてすっこんでな」

 チッ、と舌打ちをして、ポコロコと呼ばれた黒人男性からヘイ・ヤーと呼ばれたそれが、ふて腐れたような態度で、手すりを椅子代わりにして足を組んで座りはじめた。

「うつつよぉ、何もオレ達は殺し合いに行こうぜ、って言う訳じゃないんだぜ? 大切なのは一番になる事だろ?」

「でも一番になるには、戦わなくちゃいけません」

「だけど、『二番までは戦わなくてもなれる』って事だろ?」

 ポコロコの、思わぬ言葉にうつつはキョトンとした態度で、彼の自信満面な笑みと態度を見上げてしまった。

「えっと、どう言う意味ですか?」

「オレ達は自慢じゃないが弱い!! そこのヘイ・ヤーもハッキリ言ってSBR優勝以降はケツ拭く紙より役に立った記憶はねーし、オレだってそんな喧嘩は得意じゃねーんだ。戦うのは御免だな」

 トイレのちり紙以下と言われたヘイ・ヤーは唾を飛ばして、「☆□△○ΩΣ!!」と言葉になってない文句で猛抗議していたが、ポコロコはどうどうとヘイ・ヤーを制止させ、言葉を続ける。

「お前の言う通り、うつつ。一番は戦わなくちゃ勝ち取れないが、二番までは適当に逃げ回っても、他の誰かが潰してくれるかも知れないんだから、俺達でもなれる可能性がある。違うか?」

「でも、私が元の世界に戻るには、一番にならなきゃ――」

「其処だ」

 ビッ、とうつつの眉間に指を指しながら、ポコロコは更に続けた。

「YO、うつつよ。聖杯戦争って言うのは言い換えればすげー長くて疲れるレースだ。どんなレースだってよ、ゴール目前になれば、走る奴なんてみんなヘロヘロだ」

 其処で、ポコロコは、ぶつぶつとふて腐れているヘイ・ヤーに目配せをする。
「そう言う事か」と言うような笑みを浮かべて、ヘイ・ヤーは、うつつの背中におぶさる様な形になり囁いた。空気の様に、この人形は軽かった。


191 : 宮うつつ&ライダー ◆zzpohGTsas :2016/03/02(水) 00:14:35 WTo.u3n.0
「う~つつ~~~~。全員が限界でゴールに向かう時、走ってる奴らに最終的に残るのは、どんな差だと思うよ」

「……」

 沈黙は、解らないと言う事の意思表示であった。

「『幸運』なんだぜぇ? そしてお前のサーヴァントは、この聖杯戦争に参加した奴らの中じゃ一番ラッキーだ!! 天中殺の大反対、五十、いや、今の人口は確かそれ以上だったっけ!? 兎に角、すっげぇラッキーボーイだ!!」

「そうだ、お前は俺の一番ラッキーな時期を召喚した!! 普通の俺じゃ、どんなサーヴァントにも勝てないだろうが、ゴール目前になってヘバってるサーヴァントなら、俺にだってチャンスがある!!」

「逃げて逃げて逃げまくればイイッ!! 誰もが疲れて荒い息しか吐けなくなった所で、俺達が出向けばいいじゃねェか!! Yeah!!」

「Yeah!! 今の俺はラッキーな時期なんだ、一緒に受肉してもっかい人生楽しもうぜヘイ・ヤー!! 別荘は北欧にするぜ!!」

 ガハハハハと笑いながら、互いの肩と頭をバンバン叩きあう、ポコロコとヘイ・ヤー。
実際問題、うつつの瞳に映るポコロコのステータスは貧弱その物で、到底聖杯戦争を勝ち抜くには不足にも程があるサーヴァントだった。
それ故に、彼らの提示した、兎に角逃げて逃げて逃げまくる、と言う方針は、足りてなさそうなお頭で考えた割には理に叶っているし、
何よりもうつつの戦いたくないと言う要求を満たせている。満たせているが……。

「……うつうつします」

 ポコロコとヘイ・ヤーの馬鹿騒ぎに掻き消される程の小さな声で、うつつは静かにそう呟いた。
そう簡単に行けば、苦労なんてする筈がない。宮うつつの心境は、鉛色の曇天よりも、ずっとずっと、優れない様子なのであった。


192 : 宮うつつ&ライダー ◆zzpohGTsas :2016/03/02(水) 00:14:50 WTo.u3n.0
【クラス】

ライダー

【真名】

ポコロコ@ジョジョの奇妙な冒険PART7 スティール・ボール・ラン

【ステータス】

筋力E 耐久E 敏捷D 魔力E 幸運A+++++ 宝具E+

【属性】

中立・中庸

【クラススキル】

対魔力:E
魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

騎乗:E+
騎乗の才能。大抵の乗り物なら何とか乗りこなせる。但し、馬だけは話は別で、高い乗馬技術を持つ。

【保有スキル】

黒き彗星:A
まだまだ黒人差別が冷めやらなかった時代に、その立ち位置と社会的地位の上昇に貢献したであろうライダーの業績。
彼は生前、参加者三千人超、死者多数、総走破距離6000㎞と言う嘗てない程の超長距離を乗馬で移動するレース、スティール・ボール・ランの優勝者。
白人系のサーヴァントと交戦を行う場合、幸運以外のステータスがワンランクアップする。

【宝具】

『がんばれがんばれ(ヘイ・ヤー)』
ランク:E+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
ライダーが生前発現した、精神エネルギーの具現。人型のビジョンを持った形ある超能力、スタンドが宝具となったもの。
スタンドの中では珍しい、自我を保有したスタンドであり、かつ言葉も喋れて、ライダーとのコミュニケーションを取る事も可能。
本体であるライダーと、そのマスターに助言を与え、勇気を奮い立たせる『だけ』のスタンドである。
しかもこの助言には確証もなければ根拠もなく、この宝具自身が思い付きだけで喋っているだけであり、そもそも助言ですらない。
本当に、相手をその気にさせるしか使い道がない宝具。本来ならばスタンドはスタンド使いにしか見えないと言うメリットがあるが、
聖杯戦争に際して、魔力を有した存在或いは聖杯戦争参加者であれば視認が可能となっている。また、この宝具が消滅した瞬間、ライダーも消滅する。

『幸運』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:自身 最大補足:自身
――それは、一説によると五十億人に一人の超幸運。それは、どんなことをやっても上手く行くと言う神や因果を超えた何かのお墨付き。
ライダーの規格外の幸運ステータスの正体である常時発動型の宝具であり、名前すら付けられない、形を持たぬ規格外の宝具。
ライダーの行う行動一つ一つには、幸運ステータスの高さ分の成功率が上乗せされ、状況や地の利が有利であるのならば、更にその成功可能性も成功率に上乗せされる。
またこの宝具がある限り、ライダーの幸福は如何なる存在が如何なる行為を働こうとも、彼の幸運だけは絶対に低下がさせられない。
行動の一つ一つに有利な補正が付き、相手からの攻撃でさえも超高確率で防ぐ事が可能となる宝具だが、この宝具の恩寵に与る事が出来るのはライダー自身のみであり、
そのマスターは対象外。またこの宝具の効果が『働かない』状況と言うものも存在し、ライダーが『自身の幸福に疑いを持ち、行動に移さなかった』時のみに限り、
一時的にこの宝具の幸運は働かなくなる。これを防ぐ為に、スタンド、ヘイ・ヤーは無根拠の助言を与えまくるのである。

【weapon】

ヘイ! ヤア!:
スタンド名と紛らわしいが、これは馬の名前。4歳のクオーター・ホース。取り立てた特徴のない馬であるが、ライダーの条件を満たす騎乗馬。

【人物背景】

ジョージア州に住んでいた黒人農奴を両親に持つ男。両親は齷齪働いた為に奴隷の身分から解放された程の働き者だったが、その子供の彼は兎に角サボり好きで、
だらしのない青年だった。偶然ニュースペーパーで見たSBRのレース開催予定の記事を見、賞金に目が眩んだのと、ジプシーの占い師にかつてない程の幸運の持ち主、
と言われた事で出場を決意。その後、通常のジョッキーの枠に囚われない自由な走りを(本編外で)見せつけ、何時しか黒い彗星とまで言われるようになった男。
本来の優勝者はディエゴであったのだが、何故かレースを彼が棄権していた為、繰り上げ当選でポコロコが1位になると言う逆転勝利を飾った。
 
【サーヴァントとしての願い】

もっかい受肉して人生をエンジョイ。

【基本戦術、方針、運用法】

ビックリする位弱いし多分うつつが戦った方が遥かに強い。
但し本人の言う通り幸運による押し付け性能だけは凄い。が、そのラッキーが働くのは自分だけなので、やっぱり使えない事には変わりない。
その凄まじいまでのラッキーで場を掻き乱す事が、重要になるだろう。


193 : 宮うつつ&ライダー ◆zzpohGTsas :2016/03/02(水) 00:15:03 WTo.u3n.0
【マスター】

宮うつつ@ガッチャマンクラウズ

【マスターとしての願い】

元の世界に変える。

【weapon】

【能力・技能】

G-99:
うつつが変身出来るガッチャマン。誕生と死のNOTEと言う黄色いNOTEで変身可能。
アムネジアエフェクトの展開による、一般NPCには姿の視認が出来なくなると言うガッチャマン共通の特性の他に、
右手触れた者の生命力を奪い、左手で生命力を分け与える能力を持つ。但し右手で生命力を吸収、そのストックがない場合、自身の生命力を相手に分け与える形になる為、
ストックなしでの使用は危険。また生命エネルギーを、自身の分身の作成にも転用可能と、応用範囲も以外に広い。

【人物背景】

私立立川鳳雛学園に通う女の子。高校1年生。過去に何かがあったのか、心を閉ざしている状態。

一ノ瀬はじめ加入前の状態から参戦

【方針】

取り敢えず逃げ続ける。


194 : 宮うつつ&ライダー ◆zzpohGTsas :2016/03/02(水) 00:15:18 WTo.u3n.0
投下終了します


195 : ◆7PJBZrstcc :2016/03/02(水) 16:15:42 3KhXTmG20
投下します


196 : リンゴォ・ロードアゲイン&アサシン ◆7PJBZrstcc :2016/03/02(水) 16:16:39 3KhXTmG20


 聖杯戦争。
 それはどんな願いも叶える事が出来る聖杯を掛けた殺し合いである。
 参加者に選ばれた者はマスターとなり、聖杯から遣わされたサーヴァントと共に殺し合いに臨むことになる。
 サーヴァントとは英霊である。
 英雄として生き、人々に信仰された存在である。

 そう。
 サーヴァントとは、光り輝く道を歩いたであろう英雄なのだ。




「汚らわしいッ! 汚らわしいぞ聖杯ッ!!」

 1人の男が怒っている。
 彼の名はリンゴォ・ロードアゲイン。アメリカのガンマンであり、この聖杯戦争のマスターに選ばれた男だ。

 リンゴォが記憶を取り戻したのは朝の事だ。
 アメリカ生まれのフリーの殺し屋。
 そんな設定でこの東京に暮らしていたが、元々住んでいた国や時代とのギャップからかあっさり元の記憶を取り戻した。
 そして彼はこの状況を何らかのスタンド攻撃だと考え、打破するために東京を歩き回っていたのだが手がかりひとつ見つからず、仕方ないので公園で一休みすることにした。
 その公園で彼のサーヴァントが現れ、聖杯戦争について告げたのだ。

 最初は真剣に聞いている訳では無かった。
 信じていないのではなく、興味がわかないのだ。
 リンゴォには叶えてもらいたい願いなど無い。
 殺し合いに怒りを覚えるほど正義感がある訳でもなく、かと言って願いの為に殺し合う気もない。
 そんな中途半端な状態が彼に真剣さを与えなかった。
 だが話がサーヴァントについてとなったとき、リンゴォの態度は一変した。
 サーヴァントが過去もしくは異世界の英雄だと聞いて一変した。

 英雄というからには素晴らしい存在なのだろう。
 光り輝く道を歩いていた尊敬すべき存在なのだろう。
 少なくとも目の前に居る自身のサーヴァントはそういう存在だと見ればわかる。
 それほどの存在を何故ッ!
 何故こんな下らない戦いの駒にする!!
 何故こんなたまたま巻き込まれただけの人間の従者とするッ!!
 ――それも俺のような未熟者の従者とするッ!! 

 リンゴォは自身を未熟者だと思っている。
 だからこそ尊敬すべき存在を、自分の従者とすることに耐えられない。
 自身のサーヴァントの価値を汚しているような気がしてならない。

「なあ俺のサーヴァント、お前はこの状況に怒りを覚えないのか」
「殺し合いを他者に強いる事なら怒りを覚えている」


197 : リンゴォ・ロードアゲイン&アサシン ◆7PJBZrstcc :2016/03/02(水) 16:17:18 3KhXTmG20

 あと俺はアサシンだ、と付け加えつつリンゴォの質問に答えるアサシン。
 そんなアサシンの様子を見てリンゴォは不思議がる、正直自分に不満を持たれてもおかしくないとおかしくないと考えていたからだ。
 それを知ってか知らずかアサシンは続ける。

「だが俺は少なくともお前をマスターに持つことに不満は無い」
「何故だ?」

 それはリンゴォにとって一番不思議な回答だ。
 そんな思いが思わず口に出る。

「例え正義感でなかったとしてもお前は聖杯に怒りをぶつけた」
「それだけか?」
「それと卑劣さを感じなかった。お前の態度に、言葉にそんな物は一欠片もなかった」
「……」

 『男の世界』にそんなものは無い、あってはならない。
 それが分かるアサシンはやはり素晴らしい男だ。

「それとマスター、俺からも1ついいか」
「……何だ?」
「マスターの名前を聞かせてくれ」

 そう言えば俺は聖杯戦争に関する説明を受けただけで、俺達は自己紹介の1つもしていなかった。
 リンゴォは少々バツの悪さを覚えながら自己紹介を始めた。

「名はリンゴォ・ロードアゲイン。3年ほど前にスタンドと呼ばれる超能力を身に付けた」
「超能力?」
「能力名はマンダム。きっかり6秒だけ時を戻すことができる」
「何?」

 思わず怪訝な顔をするアサシン。
 リンゴォからすればそれも無理はないと理解は出来るがあまりいい気はしない。
 だがアサシンも嘘は無いと理解したのかそれ以上は何も言わなかった。

「……俺は自己紹介をしたぞ」
「そうだな」

 そう言ってアサシンは自己紹介を始める。
 正直に言えばアサシンがどういう人間なのかリンゴォは気になっていた。
 アサシンから感じられる『漆黒の意志』は相当なものだ。
 どんな環境で育ち、どんな人生を送ればそうなるのかリンゴォは気になっていた。

「俺はアサシンのサーヴァント、ケンシロウ。1800年続く一子相伝の暗殺拳北斗神拳伝承者だ」
「北斗神拳?」
「それは外で説明するには少々長い話になる」

 そう言ってアサシンは歩き出した。
 それを見たリンゴォは呼び止めて一言。

「……よろしくお願い申し上げます」

 それは普段ならば果し合いを申し込む相手に使う言葉、決闘の申し込み。
 だが今だけは違う、今だけは共に戦う物に対する礼儀として使う。

「ああ」

 そしてアサシンは快くそれを受け取った。


198 : リンゴォ・ロードアゲイン&アサシン ◆7PJBZrstcc :2016/03/02(水) 16:17:58 3KhXTmG20
【クラス】
アサシン

【真名】
ケンシロウ@北斗の拳

【パラメーター】
筋力B 耐久B 敏捷C 魔力D 幸運B 宝具EX

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
気配遮断:A+
自身の気配を消す能力。
完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

【保有スキル】
北斗神拳:EX
1800年に渡って受け継がれている一子相伝の暗殺拳。正式な伝承者であるケンシロウはEXランクとなる。
矢などの飛び道具や様々な武器に対する返し技や、ある程度の自然治癒なども備えている。
サーヴァントが秘孔を突かれた際、秘孔を解除する技術がなければ判定は対魔力によって決定する。

南斗聖拳:E
「陰」の北斗神拳に対応する「陽」の拳法。流派が非常に多い。
北斗神拳奥義水影心により一度見た相手の技をコピーすることができ、南斗聖拳伝承者の技をコピーしている。
があくまでコピーであり、一部の技を使えるというだけなのでEランク。

【宝具】
『北斗百烈拳』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
北斗神拳の奥義の1つ。
数多の拳を持って相手の肉体の数ある秘孔を狙い無数の突きを繰り出す。
そして秘孔を突かれた数秒後には、無数の断片と化す技。

『天破活殺』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1-20 最大補足:1
北斗神拳秘奥義「天破の構え」から放たれる、北斗神拳の奥義の一つ。
指先から闘気を鳥羽市、相手の肉体に直接触れず秘孔を突くことができる。
北斗神拳にある数少ない遠距離技。

『無想転生』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1
哀しみを背負う事で習得できる北斗神拳の究極奥義。
あらゆる敵の攻撃に対して無想にして適切な反撃を行い、また敵にとっては無想故に予測不能な攻撃を仕掛ける技。
歪んだ空間を作るなどをして、動きを制限すると本体の居場所を看破することもできる。

【weapon】
なし

【人物背景】
北斗神拳第64代継承者。
性格は基本的には心優しい。
弱者や子供に対しては愛を注ぎ、強敵(とも)には愛と哀しみ拳にこめ、情で見送る。
一方、救いのない外道に対しては非情な面を見せる。

【サーヴァントとしての願い】
殺し合いを生む聖杯を破壊する。

【基本戦術、方針、運用法】
アサシンらしくマスター狙いしても良し、真っ向勝負しても良しのサーヴァント。
ただし、遠距離技に乏しく範囲攻撃の手段もないので複数戦や乱戦に若干弱いかも。(雑魚ならともかく相手は一騎当千の英雄なので)
早めにキャスターやアーチャーなどを同盟相手にするのが吉。

【備考】
外伝などの設定は採用せず、本編設定のみ採用しています。


【マスター】
リンゴォ・ロードアゲイン@ジョジョの奇妙な冒険

【マスターとしての願い】
『男の価値』を汚す聖杯を破壊する。

【weapon】
拳銃

【能力・技能】
スタンド『マンダム』
きっかり6秒だけ時を戻すことができる能力。
能力発動の際は時計の針を戻す。
また、一度能力を使うと6秒のインターバルが必要となる。

【人物背景】
公正な果し合いにより自身を生長させようとするガンマン。
受け身の『対応者』を嫌い、『漆黒の意志』を持つ者との果し合いを望む。

【方針】
聖杯を破壊する。
場合によっては誰かと共闘も考える。

【備考】
NPCとして与えられた役割はフリーの殺し屋です。
今のところ雇い主はいません。


199 : ◆7PJBZrstcc :2016/03/02(水) 16:18:31 3KhXTmG20
投下終了です


200 : ◆yYcNedCd82 :2016/03/03(木) 00:59:48 KRPfAm1E0
投下させて頂きます


201 : アサシンxアサシン ◆yYcNedCd82 :2016/03/03(木) 01:00:59 KRPfAm1E0

 果たして何がきっかけだったかを彼――デズモンド・マイルズは覚えていない。
 まるで無我の海の中に浮かぶ小島に漂着したかのように、気がついたら彼の意識はそこにあった。
 都内片隅の小さなバー。彼はそこのバーテンダーだ。
 TVではここ連日都内を騒がせている連続殺人の報道が盛んに為されており……。

「…………あ?」

 バーの中央に、蹲るような小柄な影が、ひとつ。

「―――――!」

 瞬間、その影が掻き消えた。いや、跳んだ。
 およそ常人の視界では捉えられぬほどの高速。文字通りデズモンドの目にも留まらぬ。
 かつてのデズモンドならば――あるいは思いだす前のデズモンドならば。

 今は違う。

 彼はかつて慣れ親しんだ記憶の「流入」の感覚を楽しむ余裕さえあった。
 身に宿した「鷹の目」を開き、以って迫り来る短剣(ダガー)、その切っ先の煌めきを見る事さえできた。
 横っ飛びにその奇襲を回避する動きは訓練、それも尋常でない経験を得たものだけが成し遂げられるもの。
 影の攻撃と、なんら遜色のない――いや、ともすれば人間離れした影以上の俊敏さであった。

 音もなくバーカウンターの上へ舞い降りた影は、その動作に目を見張ったらしい。
 動きが僅かに止まる。驚愕による硬直。迂闊だぞと、デズモンドは笑った。逃す手は無い。

「掟を破るか、我が姉妹よ……!」
「…………!?」

 その瞬間、影はカウンターからありえざる機動/軌道を描いて弾けた。
 壁から天井、天井から柱を伝って酒場の片隅へとひらり、舞い降りる。
 影は黒い外套であり、外套のフードから覗いた瞳がデズモンドを突き刺した。

 錆びた金色の――鷹の目。

 その視線はデズモンドに、雨に濡れた捨て犬を連想させた。
 純粋。敬虔。正義。――狂信。

 良く知っている。
 だからデズモンドは人差し指を立てて、一言ずつ、言い含めるように告げた。
 油断なく距離を保ちながら。深く腰を落として身構えながら。次の瞬間には跳躍できるよう備えながら。
 かつての「記憶」の習慣だろう。右腕の武器を起動しようと筋肉を強張らせるのは。

「ひとつ、罪の無い者を傷つけてはいけない」

 デズモンドは生唾を飲み込んだ。

「ふたつ、我らは目立ってはいけない。そして――」
「……みっつ、仲間に危険を及ぼしてはならない」

 影は、静かな声で呟いた。
 それは凛と張り詰めた鈴のように涼やかな、年頃の少女の声でもある。
 影は身に纏った黒い外套を、少しだけ跳ね上げる。
 
 やはり、と思う。

 十代も半ばぐらいの少女――…………。
 黒髪の、張り詰めた表情の、まだ幼さを面影に強くのこした、少女。
 それが、『アサシン』の正体だった。

.


202 : アサシンxアサシン ◆yYcNedCd82 :2016/03/03(木) 01:02:05 KRPfAm1E0

「だが、兄弟よ。我らが神は杯など持たない」
「林檎もな」

 デズモンドはバーカウンターへ乱雑に腰を下ろすと、投げやりにそう言った。
 蝶ネクタイをむしりとって放り捨てる。シャツの襟元を広げ、大きく息を吸って、吐いた。
 全く、訳がわからない。
 バーテンダー……バーテンダーだと? この東京で? 俺が?
 自分をそこから誘拐して、被験体17号の番号をつけて、妙な機械にぶち込んだ奴ら。
 戦って、戦って、最後に、自分は――……。

「くそったれ(ガッデム)」

 デズモンドは吐き捨てた。罰当たりな言葉に、少女がびくりと震えた。

「アブスターゴ社め、今度は何をやらかしたんだ……」
「アブスター……なに?」
「テンプル騎士団だよ。俺は……」

 いや、とデズモンドは首を横に振った。

「俺たちは、そいつらと戦い続けてきた。エデンの果実と聖杯(カリス)を巡って。そうだろ?」

 テンプル騎士団。エデンの果実。聖杯(カリス)。
 その単語を口にした瞬間、少女の目が大きく見開かれたのを、デズモンドは認めた。
 アサシン教団が1190年から十世紀近くに渡って戦い続けてきた仇敵と、その理由。

 効果は覿面であったと言わざるを得ない。

 暗殺者の少女は目に見えてデズモンドに対する殺意を緩め、それを異なる方向性へと張り詰めさせていく。
 もしここでデズモンドが綱を離せば、まっしぐらにそちらへ向かって駆けて行くだろう。
 やはり、犬を連想させる。仔犬だ。喉を鳴らして唸る仔犬。猟犬の仔犬。

「…………では、この儀式も、テンプル騎士団の仕業だというのか、兄弟よ」
「そこさ、妹よ」

 だからデスモンドは、なるべく気軽な風を装って、そう言った。

「俺にはその聖杯戦争とやらが、さっぱりわからないんだがね」

-----------------------------------------------------------------------------------------------------

「なんてこった……」
「ではつまり、あなた、いや、あなた様はアルタイル様の末裔だというのか!?」
「なんてこった……」

 尊敬の念に瞳を煌めかせる少女から目をそむけ、デズモンドは顔を覆って天を振り仰いだ。
 おお、神よ(アッラーアクバル)だ。
 
 古代――とも限らないそうだが――の英霊を蘇らせ、殺しあわせ、ただ一人生き延びた者が聖杯を手にする。
 それはあらゆる願望を叶える、まさに奇跡。たとえ偽りであるとしても。
 馬鹿げている。
 なんて馬鹿げている奴らだ。
 彼は――いや、彼に連なるアルタイル、エツィオ、コナー、多くのアサシンたちは。
 そんな馬鹿げた企みを叩き潰すためだけに、千年以上にも渡って戦い続けてきたというのに。

「デズモンド様!」
「やめてくれ」

 デズモンドは苛立たしげに手を振った。様? この自分が? よしてくれ。
 そんな尊敬されるような存在ではないことを、彼は重々承知している。
 多くの血族の記憶と経験を「流入」によって獲得した彼は、しかし、最後の最後、志半ばで斃れたのだ。
 人類を救うために、命と引き換えに人類を委ねてしまったのだ。
 その後どうなるか、どうなってしまったかを、デズモンドは知らない。

「しかし、貴方はもはやこの時代における唯一のアサシンであるのでしょう? それもアルタイル様の末裔だ」

 だが少女の目の輝きは増すばかりだ。
 興奮に頬を紅潮させ、惚けたように愛らしい唇も半開き。
 バーに据え付けてあったTVに映るアイドルを、ファンたちがそんな風に見ているのをデズモンドは思い出した。

「であるならば、あなたは当代のハサン・サッバーハに他ならない……!」
「わかった。わかったよ、あー……」
「私めに名前はありません。アサシンとなる道を選んだ時、既に捨てました」
「じゃあ、とりあえず、アサシン。様はよせ。命令だ。デズモンドか、そうでなきゃ……」

 アルタイルか? エツィオか? それともコナー……。

「では、マスターと」

 ああ。そう呟いて、少女は蕩けたような微笑を満面に花咲かせた。

「この響きは、貴方にこそ相応しい」

 十代半ばの少女に「ご主人様」と呼ばれる自分の姿を想像して、デズモンドは顔をしかめた。
 だが、まあ、デズモンド様とかハサン様よりはマシだろう。たぶん。おそらく。メイビー。

.


203 : アサシンxアサシン ◆yYcNedCd82 :2016/03/03(木) 01:03:08 KRPfAm1E0

「……まあ、それで良い。で、なんだ、アサシン」
「はい。一刻も早く、異端の魔術師どもとテンプル騎士団を討ち果たすべきかと。ご指示を!」

 鉄砲玉、あるいは尻尾を振る仔犬。
 行けと言えばまっしぐらに駆けて行って大暴れしそうだということが、鷹の目がなくとも察しがついた。
 彼女がハサンを襲名できなかったのは十中八九、この直情型の性格のせいではなかろうか……。

「だが、まあ、方針として間違っていないあたりがなあ……」
「では……!」
「闇雲に突っ込んでいったってダメだ。掟を思い出せ、アサシン」
「はい!」

 記憶にあるアルタイルの堂々たる態度、その一端でも引き出せれば良いのだが。
 デズモンドは待てというように掌を突き出し、思考を巡らせた。

 とにかくこれが、アブスターゴ社のしわざでないにしても、黒幕がいるのは間違いない。
 巻き込まれた者もいるだろう――恐らくは。それとも自分がアサシン教団の末裔と知って巻き込んだのか?
 確実なのは、黒幕がいること。
 そしてテレビで盛んに報道されている、この大量連続殺人が無関係ではないだろう、という辺りだ。

「…………」

 知らず、デズモンドは唇を舐めていた。
 上等だ。
 敵がどんな強固な城塞を持っていようが、武器を持っていようが、鎧を持っていようが、だ。
 そんな物で――そんなもので、アサシンから逃れられるとでも思っているのだろうか。
 人類を歪める存在があるならば、これを討つ。それがアサシンだ。それが俺たちだ。

 だいぶ、俺も染まってきたな。

「黒幕を探すぞ、アサシン。巻き込まれた者は助け、異端は討ち、聖杯を破壊する」

「我が運命をあなたに委ねます、マスター!」

 デズモンドは微かに笑って「ただし、隠密にだ」と付け加えることを忘れなかった。


.


204 : アサシンxアサシン ◆yYcNedCd82 :2016/03/03(木) 01:03:33 KRPfAm1E0
------------------------------------------------------------------------------------

 それから、ほどなくして。
 カウベルを微かに鳴らして、二人の影がバーから姿を現した。

 一人は男。一人は少女。

 男は白いパーカーを、少女は黒い外套を身に纏う。
 二人は微かな笑みを浮かべ、フードを被った。
 そしてそのまま、雑踏の中へ溶けるように去って行く。

 誰も気にしない。
 気にも留めない。

 アサシンを恐れよ。彼らはどこにでもいて、どこにもいない。

「ラーシェイア、ワキュン、ムトラクベイル、クルンムーキン」

「これぞ我らが血盟の英知を集約せし言葉」

「闇に生き、光に奉仕する、そは我らなり」

「真実はなく、許されぬことなどない」

「安全と平和を……」

「アサシンに勝利を」



――――俺はデズモンド・マイルズ。


――――これは、俺の物語だ。


.


205 : デズモンド&アサシン ◆yYcNedCd82 :2016/03/03(木) 01:04:34 KRPfAm1E0

【クラス】
アサシン

【真名】
無名@Fate/strangefake

【パラメーター】
筋力C 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運D 宝具B+

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
気配遮断:A-
自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

【保有スキル】
狂信:A
 特定の何かを周囲の理解を超えるほどに信仰することで、通常ではありえぬ精神力を身につける。
 トラウマなどもすぐに克服し、精神操作系の魔術などに強い耐性を得る。

【宝具】
『幻想血統(ザバーニーヤ)』
 ランク:E~A
 種別:対人・対軍宝具
 レンジ:-
 最大補足:-
 肉体を自在に変質させ、過去に紡がれし18の御業を再現する能力。
 実際は過酷な肉体改造なども行われていたが、英霊化にあたり肉体を自在に変質させる形となった。
 オリジナルの御業と比べ威力が上か下かはケースバイケースとなる。

 ・妄想心音(ザバーニーヤ)
  背中に移植したシャイターンの腕で相手の心臓を複製、呪殺する。

 ・空想電脳(ザバーニーヤ)
  接触した敵の頭を爆弾に作り変える。

 ・夢想髄液(ザバーニーヤ)
  可聴領域を超えた歌声で相手を操る業。オリジナルの業を超えた力を持つ。
  大人数を対象とした場合、脳を揺らし魔術回路を暴走させる等の効果を持つ。
  一人に対象を限定すれば、並のサーヴァントの膝をつかせ、人間ならば脳をそのもの支配し操る事ができる。
  人体発火現象を誘発させることも可能。

 ・狂想閃影(ザバーニーヤ)
  髪の毛を自在に伸縮させて操る業。

 ・断想体温(ザバーニーヤ)
  己の皮膚を『魔境の水晶』の如く硬化させ、銃弾をも弾く護りを得る業。

 ・妄想毒身(ザバーニーヤ)
  あらゆる体液、爪や皮膚、吐息すら含め、己の全てを猛毒とする業。また、自身の耐毒性を高める効果もある。
  無差別殺害を避けるべく、毒の濃度はオリジナルより低下してしまっている。自身の血に毒を集中して、一時的に使用する程度に留まる。

 ・瞑想神経(ザバーニーヤ)
  魔力・水・風・電気などのエネルギーの流れを完全知覚する業。

 他11種類

【weapon】
ダーク:投擲用短剣。全身いたるところに仕込まれている。

【人物背景】
ハサン・サッバーハになれなかった少女。狂信者。
歴代の長18人の奥義を再現するに至るも、独自の業を編み出せず、また暗殺者に不向きな性格から長となれなかった。
どちらかというと「暗殺者」というよりも「戦士」としての面が強く、状況の打破に正面突破を好む。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯の破壊 黒幕の暗殺

【基本戦術、方針、運用法】
異端の魔術師、聖杯を求める者に対しては問答無用。
ただし巻き込まれた第三者、中立の者へは攻撃せず、改宗を勧める。
狂信者ではあるが、だからこそ「ハサン」であるデズモンドには忠実。忠犬。わんこ状態。


206 : デズモンド&アサシン ◆yYcNedCd82 :2016/03/03(木) 01:05:40 KRPfAm1E0

【マスター】
デズモンド・マイルズ@アサシンクリード

【マスターとしての願い】
聖杯の破壊 黒幕の暗殺

【能力・技能】
・気配遮断EX:世界そのものと同化。攻撃する瞬間だけA+になる。
・フリーラン:市街地での高速移動能力。また超高層から飛び降りても負傷しない。
・鷹の目:驚異的な集中力によってもたらされる超感覚。敵味方の識別や、あらゆる物的証拠の察知など。
・マスターアサシン:過去のアサシンたちの持つ破壊工作や暗殺技術の完全継承。当代のハサン・サッバーハ。

【weapon】
アサシンブレード:右腕に着用されるガントレット式の飛出式小剣。アサシンの象徴。
アルタイルの剣:伝説のアサシンが好んで用いたとされる長剣と短剣の一式。
ダーク:投擲用短剣。全身いたるところに仕込まれている。
クロスボウ:無音狙撃武器。折りたたみ式で携帯でき、毒矢を発射することも可能。
フックガン:鉤縄を射出する武器。主に移動補助だが、銛撃銃の要領で攻撃にも活用できる。
ハンドガン:何の変哲もないオートマチック拳銃。

【人物背景】
アサシン教団の末裔として、テンプル騎士団との戦いに巻き込まれた青年。
先祖である伝説のアサシン、最強のアサシンの経験を「流入」された結果、恐るべき実力を誇る。
人類を歪める「エデンの果実」を巡る戦いの末、人類を救うことを決断して死亡した……はず。
当代におけるハサン・サッバーハ。

【方針】
アルタイルの経験による白兵戦および暗殺。
エツィオの経験による爆薬、毒薬、パラシュートやグライダーによる長距離移動。
コナーの記憶によるゲリラ戦、射撃などを活用し、アサシンとして暗躍を続ける。


207 : ◆yYcNedCd82 :2016/03/03(木) 01:06:32 KRPfAm1E0
今夜は俺とお前でダブルアサシン、ダブルハサン。
以上です。ありがとうございました。


208 : ◆yYcNedCd82 :2016/03/03(木) 01:58:53 KRPfAm1E0
一箇所訂正


【weapon】
アサシンブレード:左腕に着用されるガントレット式の飛出式小剣。アサシンの象徴。
アルタイルの剣:伝説のアサシンが好んで用いたとされる長剣と短剣の一式。
ダーク:投擲用短剣。全身いたるところに仕込まれている。
クロスボウ:無音狙撃武器。折りたたみ式で携帯でき、毒矢を発射することも可能。
フックガン:鉤縄を射出する武器。主に移動補助だが、銛撃銃の要領で攻撃にも活用できる。
ハンドガン:何の変哲もないオートマチック拳銃。


209 : ◆.QrNUkmVxI :2016/03/03(木) 02:17:20 zRYGoWN20
皆さん投下お疲れ様です
自分も投下させていただきます


210 : 逸見エリカ&ランサー ◆.QrNUkmVxI :2016/03/03(木) 02:18:07 zRYGoWN20
 強く気高く美しかった、西住まほの後ろ姿が、私にはどれほど眩しく見えたか。
 自分自身にできないことを、平然とこなす西住みほを、私がどれほど羨んだか。
 西住ならぬ凡愚の想いを、彼女らが理解することは、恐らく一生ないのだろう。

 私は黒森峰の副隊長として、まほ隊長の隣に立つ資格を得た。
 けれどもそれは、正当な評価によって、与えられた立場ではなかった。
 全国大会敗退に伴う、西住みほ副隊長の退学。
 埋めた穴を補うための、繰り上げという形での昇進。
 結局私は、黒森峰のナンバー2だと、正当に認められたわけではなかった。
 三番手に過ぎない私が、二番がいなくなったことで、たまたま選ばれただけでしかなかった。
 苦肉の策の代用品。それが黒森峰女学園副隊長・逸見エリカの正体だ。
 少なくとも、私自身は、そうだろうと思っていた。

 だからこそ私は、西住みほを、許せないと思っていた。
 本当ならば彼女は、私以上に、隊長の力になれたというのに。
 力を持った者はその責務を、果たさなければならないというのに。
 であれば、こんな晒し者のような屈辱を、味わうこともなかったというのに!

 私は必ず彼女を倒す。
 今こそ戦場で戦い、彼女を乗り越えてみせる。そして証明してみせる。
 彼女の身勝手な出奔が、過ちであったということを。
 隊長の前に立ちはだかることが、いかに愚かで罪深いことなのかを。
 そうでなければ、副隊長・逸見エリカの有用性も、存在意義さえも証明できない!
 その時の私はそう思い、憎しみの炎でエンジンを噴かせ、鋼の戦車を操っていた。

 翌年の全国大会で、私は彼女と戦った。
 否、正直な話をすると、戦うことすら叶わなかった。
 彼女を狙った砲撃は、一撃も届くことはなく、その仲間達によって阻まれた。
 黒森峰に遠く及ばない、素人集団であるはずの連中の壁すら、私は乗り越えることができなかった。
 肝心な戦いにも一歩及ばず、彼女は隊長を撃破し、優勝をもぎ取っていった。
 なんて無様な空回り。
 なんて愚かな道化芝居。
 私は何も為せぬまま、失態と醜態にまみれた姿で、呆然と結末を見せつけられた。

 今ならば、理解できる気がする。
 あの時私は何ゆえに、何事も為すことができなかったのかを。
 そして彼女は何ゆえに、私を歯牙にもかけず置き去って、勝利を手にすることができたのかを。
 究極のところ、私は自分のためにしか、戦車道をやっていなかった。
 隊長の指示を上辺だけ受け取り、その意図に十全に応えることができなかった。
 一方の彼女は、仲間を信じ、手を取り合って戦うことで、その力を最大限に引き出していた。
 勝てぬわけだ。
 たった一人で力む自分が。無能をなじることしかしなかった自分が。
 八両きりの相手とはいえ、一両で挑んでいた私が、追いすがれる道理などなかったのだ。
 それはきっと、この先の私が、忘れてはならない過ちだと思う。
 いずれ隊長の跡を継ぎ、黒森峰を率いる私が、覚えておかねばならないことだと思う。
 意図したわけではなかったのだろうが、私は彼女に教えられた。

 私という個人が勝てなくてもいい。
 孤高の天才になどなれなくてもいい。
 私と仲間達のチームが、勝利を掴み取ることができれば、それこそが結果として残る。

 それを教えてくれた彼女に、次は負けないと私は言った。
 それでも、もし仮にもう少しだけ、腹を割って話す機会があれば。

 私は西住みほに対して、どんなことを話すのだろう。


211 : 逸見エリカ&ランサー ◆.QrNUkmVxI :2016/03/03(木) 02:18:46 zRYGoWN20
◆ ◇ ◆

「くそ……ッ!」

 冷たい壁に寄りかかり、がんと、右手で壁を打つ。
 息は荒い。汗は酷い。
 眩く光る銀色の髪を、乱して肌に貼りつけながら、逸見エリカは苦々しげに、短く言葉を吐き捨てた。

(無様だわ)

 額に手を当てながら、自嘲する。
 遠い海原の学園艦から、陸へ連れられ本州へ渡り、閉じ込められた大東京。
 冷たいコンクリートの檻の中、エリカが巻き込まれたのは、聖杯戦争という戦いだ。
 顔にかざした手の甲では、その参加者へと刻まれる、令呪が彩りを放っている。
 曰く、あらゆる人の願いを聞き入れ、叶えることが出来る願望機・聖杯。
 その力を行使し、願いを叶えられる一人を、殺し合いによって選抜するのが、この聖杯戦争であるのだと。
 形だけをなぞった戦車道とは違う、本物の命の奪い合いが、この地で行われるのだと。

「――どうやら、相当に堪えたらしいな」

 ざん――と、重い足音が聞こえた。
 夜闇の底から響くような、低い声が語りかけてきた。
 エリカの目の前に現れた、その姿は、黒い。
 宵の漆黒と血の深紅。禍々しい二色で塗りつけられた、鋭く冷たい鎧姿だ。
 時間と空間を飛び越えた、遠く彼方の世界から、降り立ったという英霊の写し身――サーヴァント。
 これこそ、聖杯戦争を勝ち抜くために、聖杯から与えられた駒なのだそうだ。
 どう見ても、神話の英雄というよりは、それに倒されるべき悪魔のような、恐ろしい姿をしているのには、文句の一つでも言いたくなったが。

「ざまぁないわね。偉そうな口をきいておいて、こんなところで躓いて」
「敵も強かった。魔術師でないエリカには、無理もない話だ」

 とうに覚悟していたことを、今更責めるつもりはないと。
 鎧姿の槍騎士(ランサー)は、事も無げに言い放つ。
 エリカの召喚したサーヴァントは、今しがたライバルと交戦し、死闘の末に勝利した。
 ランサーの能力もかなりのものだが、敵のサーヴァントも手強かった。一歩間違っていたならば、負けていたのはこちらかもしれない。
 故に彼は全力を尽くして、敵との戦いに臨んだ。
 その結果エリカに襲いかかったのは、急激な体力の消耗だ。
 魔術の産物であるサーヴァントは、自らの力を発揮するために、主人(マスター)の魔力を要求する。
 当然ながら、魔術師でないエリカには、馴染みの薄い魔力の消費は、大きな負担になってしまうのだ。

「覚悟……覚悟、ね」

 所詮自分の力など、その程度にしか見積もられていなかったというわけだ。
 劣等感を揺さぶられ、エリカは力なく笑う。
 戦車道のエースとはいえ、彼女は本物の命の奪い合いなど、経験したこともない女子高生だ。
 恐らくはランサーも、そのことを指して、そのようなことを言ったのだろう。
 しかしエリカにとっては、重要な点は、そこではない。


212 : 逸見エリカ&ランサー ◆.QrNUkmVxI :2016/03/03(木) 02:19:52 zRYGoWN20
「随分と、自分を軽く見るんだな」
「別に。ただ、私の知っている人達なら、同じ壁にぶち当たっても、乗り越えていくんだろうなと思っただけよ」

 自嘲を見透かした英霊に対し、エリカはぶっきらぼうに答える。
 単に戦車道をやるだけならば――極論、黒森峰女学園でやっていくだけなら、自分は十分過ぎるほどに、強い力を得ているのであろう。
 それでも、エリカが望んだ場所は、より遠くにそびえる頂だった。
 国際強化選手にも選ばれた、名門・西住流の後継者、西住まほ。
 その強く気高い後ろ姿に、輝きを見出し憧れた。
 彼女には自分以上に相応しい、天才的なパートナーがいると知った時には、その才能こそを羨んだ。
 天才に囲まれた逸見エリカは、西住流という暗い影に、囚われた劣等感の虜だったのだ。

「それでも、乗り越えるべきはお前だ。遠い彼方の誰かじゃない」
「分かってるわよ、そんなこと」
「できるのか? 願いもなければ自信もない、半端な覚悟しか持たないお前に」

 鎧の男の問いかけに、エリカは軽く眉をひそめる。
 聖杯にかけるべき願いを、逸見エリカは持っていない。
 ただの女子高生でしかない彼女には、命を張ってまで叶えたい、重大な願い事などなかったのだ。
 来年こそ戦車道の大会で、優勝したいという願望は、それとは何か違う気もする。

「死にたくないのは本当よ。それが動機じゃ、悪い?」

 それでも、ただ黙って殺されることなど、エリカには到底認められなかった。
 だからこそ、願いなどなくとも、エリカは敢えて戦いに乗った。
 既に脱走の手段はいくつか講じ、そして全てが失敗している。
 この戦いを勝ち残り、最後の勝者になる他に、彼女が生還する道などない。
 なればこそエリカには、その他に、取れる手立てなどなかったのだ。
 たとえ魔術の心得も、実戦の経験もなかったとしても。
 経験の差を埋められるだけの、天賦の才がなかったとしても。

「まぁ、ある意味何よりも、純粋な願いではあるな」

 そしてランサーはこの場では、その一言で納得した。
 含むものはあったろうが、それでも今の答えとしては、及第点であろうと認めたのだ。
 話は終わりだと言わんばかりに、黒い鎧は背を向けた。

「……願いくらいなら、私にもある」

 ぽつり、と。
 冷たい背中にかけるように、エリカは小さくひとりごちる。
 それに気付いた甲冑の男は、首だけを軽く、振り向かせた。

「もしも帰ることができたら……その時は、知り合いと、話がしたい」

 聖杯なんかにかけるような、大それたことではないけれど。
 それでもそれは、今のエリカが思いつく、一番の願い事ではあった。
 生きて帰った時を考え、最初に浮かび上がった顔は、敬愛するまほのそれではなかった。
 むしろ激しく妬み恨んだ、妹の西住みほの顔が、真っ先に思い出されたのだ。
 誰よりも、それこそ己よりも、まほの求めるものに応え、完璧な連携を見せたパートナー。
 それでもたった一度の衝突で、彼女を見捨て黒森峰を離れ、敵として立ちはだかった裏切り者。
 力ある者が背負うべき、ノブレス・オブリージュを捨て去り。
 エリカの小さな器では、どれほど渇望しても得られなかったものを、平然と手放し投げ捨てて、プライドと劣等感を逆撫でた怨敵だった。
 そう――少し前までは、そうだった。


213 : 逸見エリカ&ランサー ◆.QrNUkmVxI :2016/03/03(木) 02:20:32 zRYGoWN20
(それでも)

 だとしても、彼女には教えられた。
 自分に足りなかったものが何なのか、あの全国大会の舞台で、みほは自分に教えてくれた。
 それは個人の才能ではない。集団を勝利に導くものは、その集団同士で手を取り、互いを支え合う絆だ。
 それこそが、あの西住姉妹の連携の、本当の正体だったのだ。
 全力を出し切ることもできず、無様を晒した戦いだったが、それでも不思議と彼女からは、憎悪の炎が消えていた。
 だからこそ、帰ることができた時には、もう一度話をしたいと思った。
 何を言うかなど知らない。結局愚痴ばかりぶつけるかもしれない。
 それでも、あの遠い背中と向き合い、胸の内を知ることは、大切なことではないかと思うのだ。

(これからの黒森峰女学園には、もう西住隊長はいない)

 既に今年の大会は終わった。
 遠からずまほは引退し、一つ歳下の副隊長たる自分が、指揮権を引き継ぐ時が来る。
 頼り囚われ続けてきた、西住流の天才達は、もうどこにもいないのだ。
 なればこそ、エリカは何が何でも、帰らなければならなかった。
 これからを戦うための答えの、その扉の前に立った自分が、帰らなければならないのだ。
 最後の扉をこの手で開き、黒森峰女学園の長として、相応しい女になるためにも。
 敬愛するまほが、ついぞ叶えられなかった優勝という悲願を、この手で成し遂げるためにも。
 それは逸見エリカの責任であり、同時に、願いでもあった。

◆ ◇ ◆

(天才の影……か)

 宝具たる鎧を解除し、背の高い青年の姿を、霊体化によって隠しながら。
 ランサーのサーヴァント――相羽シンヤは、遠ざかる背中を静かに見送る。
 急激な魔力の欠乏によって、よろめく体を引きずりながら、それでも前に進み続ける、逸見エリカの姿を見やる。
 あれは自分だ。かつての己だ。
 兄の背中と才能に憧れ、届かない自分の無能に怒り、がむしゃらに追いかけ続けたシンヤの姿だ。
 劣等感と対抗心は、侵略者によって歪められ、取り返しのつかない惨劇を招いてしまった。
 もしも彼女がこの先も、その想いを抱え続けるなら、必ず彼女の在り方に、暗い影を落とすだろう。

(馬鹿だよ、お前は)

 だからこそ、彼女は知るべきなのだ。
 自分の抱えているコンプレックスが、いかに的外れなものなのかを。
 彼女は自分が思っている以上に、認められているということを。

(それほど焦がれた天才に、お前は期待されている。お前の願いは、当の昔に、叶ってしまっているんだよ)

 ある時、エリカはシンヤに対して、愚痴をこぼしたことがある。
 元副隊長が去った後、繰り上げで副隊長になった自分の指導に、隊長は時間を割いてくれたと。
 自分に力があったなら、彼女の手を煩わせることも、きっとなかったはずなのにと。
 しかしそれは、エリカが後継者たる才覚の持ち主であると、認められている何よりの証だ。
 でなければ、赤の他人に付き添って、己の全てを叩き込むなど、到底できるはずもない。
 それは生前のシンヤが、何より気付くべきだったことでもあり。
 それに今際の際にならなければ、思い当たることができなかったからこそ、シンヤは己を罵ったのだ。

(俺もお前も、大馬鹿者だ)

 理想の兄を乗り越えて、両親に認められたかった。
 そうする他に、両親の愛を、自分が独占する術は、この世にないと思っていた。
 それでも相羽シンヤの望みは、兄を超えるまでもなく、叶えられていたのだった。
 母は己の命を賭して、シンヤを守り抜こうとし、そしてそのまま天に召された。
 父は兄ですらも乗り越えられない、絶体絶命の窮地の中で、真っ先にシンヤを助けようとした。
 勝負など挑むまでもなく、シンヤは誰にも奪えない、最期の愛を独占していた。
 愛されていたことに気付かないまま、愛に飢え続けた相羽シンヤは、どうしようもない大馬鹿者だった。
 だからこそ、願わざるを得ない。
 彼女が同じ轍を踏まないことを。
 生きて帰ったその先で、己に向けられた愛情に、逸見エリカが気付く日が来ることを。


214 : 逸見エリカ&ランサー ◆.QrNUkmVxI :2016/03/03(木) 02:21:34 zRYGoWN20
【クラス】ランサー
【真名】相羽シンヤ
【出典】宇宙の騎士テッカマンブレード
【性別】男性
【属性】混沌・中立

【パラメーター】
筋力:D 耐久:E+ 敏捷:D 魔力:E 幸運:D 宝具:B+

【クラススキル】
対魔力:E(B→A)
 魔術に対する守り。 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
 宝具『愚者の黒き仮面(テッカマンエビル)』解放時にはBランクとなり、魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 更に宝具『決壊(ブラスターエビル)』解放時にはAランクとなり、事実上現代魔術により傷をつけられることがなくなる。

【保有スキル】
怪力:-(B)
 一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
 使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
 宝具『愚者の黒き仮面(テッカマンエビル)』解放時にのみ機能するスキル。

自己改造:B
 自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
 このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。

話術:D
 言論にて人を動かせる才。
 一流の煽りスキルを有しており、挑発行為が非常に得意。
 ただし、これはあくまでラダムの侵蝕により、性格が変質して得たスキルであるため、現在は積極的には使いたがらない。


215 : 逸見エリカ&ランサー ◆.QrNUkmVxI :2016/03/03(木) 02:22:09 zRYGoWN20
【宝具】
『愚者の黒き仮面(テッカマンエビル)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
筋力:B 耐久:C+ 敏捷:B+ 魔力:B 幸運:D
 宇宙生命体ラダムの科学の結晶・テッカマン。
 異星を侵略するための牙であり、同時に脆弱な本体を守るための殻でもある。
 通常時はテッククリスタルと呼ばれる、赤い水晶体の形をしている。
 宝具解放時にはシンヤの身体を変異させ、黒と赤に染まった禍々しい鎧のごとき姿となる。
 エビルは多目的汎用型のテッカマンであり、あらゆる戦況に対応できるパラメータを有している。
 武器は超硬質の槍・テックランサーと、投擲したそれを回収するためのテックワイヤー。
 両肩パーツは取り外して、ラムショルダーという名称の斬撃武器として用いることも可能。
 必殺技のPSY(サイ)ボルテッカは、変身時に発生した反物質を開放し、敵目掛けて発射する砲撃技。
 相手の魔力放出攻撃にぶつけた際、ボルテッカの出力が相手より勝っていれば、
 対象の攻撃エネルギーをそのまま吸収し、ボルテッカに取り込んで跳ね返すことができる。
 また、変身時に展開されるエネルギーフィールドを利用し、高速形態に変形して突撃する、
 クラッシュイントルードと呼ばれる攻撃を行うことも可能。
 既にラダムの洗脳下にないシンヤだが、変身制限時間はない。

『決壊(ブラスターエビル)』
ランク:B+ 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
 予期せぬ状況に適応するため、テッカマンが進化した姿。
 外敵を排除することのみを盲目に求めた、性急かつ歪な進化の産物であり、いずれ滅びへ行き着く袋小路である。
 宝具『戦慄の黒き仮面(テッカマンエビル)』の強化形態であり、
 この宝具を解放したエビルは、幸運以外のパラメータが2段階上昇する。
 テックランサーの先端からは、通常時のボルテッカに匹敵する反物質砲を放つことができ、
 ボルテッカは正面方向のみならず、全方位に向けて発射することができるようになる。
 PSYボルテッカの性能を応用した、フェルミオンのバリアーは、上記のテックランサーによる反物質砲すら無効化可能。
 ただし要求される魔力量は極めて大きく、同時にシンヤ自身の肉体もまた、急激に崩壊していく諸刃の剣である。
 生前のシンヤはたった一度の戦闘で限界を迎えており、文字通り一発限りの最後の手段であると言える。


216 : 逸見エリカ&ランサー ◆.QrNUkmVxI :2016/03/03(木) 02:23:00 zRYGoWN20
【weapon】
テッククリスタル
 宝具『愚者の黒き仮面(テッカマンエビル)』を発動するためのアイテム。

【人物背景】
かつて宇宙生命体ラダムに取り憑かれ、テッカマンエビルへと改造された少年。享年18歳。
天才肌の双子の兄・タカヤのことを敬愛しつつも、
強い劣等感とライバル意識を抱いており、徹底した努力でその差を埋めようとしていた完璧主義者だった。

その屈折した感情は、ラダムの洗脳の域を超え増幅されており、
タカヤの変身するテッカマンブレードに対して、狂気じみた執着心を抱いていた。
最終的にはタカヤがブラスター化によって自滅する前に決着をつけようと、
自らもブラスター化して真っ向勝負を挑むという、あまりにも不毛な道を選択。
愚かながらも、意地と信念を曲げることなく突き進んだシンヤは、勝利の目前までタカヤを追い詰める戦いぶりを見せた。
その後肉体が限界を迎え、一瞬の隙を見せたことにより敗北したものの、
最期の瞬間にラダムの洗脳から逃れたシンヤは、ようやく本心からタカヤと向き合い、眠りについた。

死後の現在においては、当然ラダムの洗脳による影響はなく、本来の相羽シンヤの人格を取り戻している。

【サーヴァントとしての願い】
特になし。強いて言うなら、自分と同じ失敗を、エリカにさせたくはない

【基本戦術、方針、運用法】
高い格闘戦能力に、大火力のボルテッカ。そして飛行能力まで備えているという、極めて優秀なサーヴァントである。
ただし、魔術の素養のないエリカでは、魔力の供給が追いつかず、大きな負担を強いられてしまう。
特に『決壊(ブラスターエビル)』の発動のためには、シンヤもエリカも、死と隣り合わせのリスクを背負う必要があるだろう。
地力自体は高いため、とにかく無理をしないこと。危険だと思ったらすぐ撤退すること。これが最大の肝となる主従である。


217 : 逸見エリカ&ランサー ◆.QrNUkmVxI :2016/03/03(木) 02:23:40 zRYGoWN20
【マスター】逸見エリカ
【出典】ガールズ&パンツァー
【性別】女性

【マスターとしての願い】
生き残るために戦う

【weapon】
なし

【能力・技能】
騎乗
 騎乗の才能。戦車およびヘリコプターを操縦できる。
 戦車の乗組員としては、車長を担当していた。

軍略
 一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
 ただし、あくまで人死にの出ない、競技による戦闘においての話である。
 また、彼女は未だ副隊長であるため、そのスキルも発展途上のもの。
 圧倒的な実力差を持つ相手に対し、浸透突破による一発逆転を提案するなど、攻撃的な思考回路を有している。

【人物背景】
九州の黒森峰女学園に通う、高校二年生の少女。
天才と歌われた隊長・西住まほを尊敬し、彼女を支える良き副隊長となるべく、日々邁進を続けていた。
一方、その妹の西住みほに対しては、複雑な感情を抱いていた。
今回は全国大会で、大洗女子学園に敗北した後からの参戦となる。

プライドが高いひねくれ者。
やや口が悪く、常に一言多い人物である。とはいえ根っからの悪人ではない。
ムキになりやすい部分はあるものの、名門・黒森峰の副隊長として、相応しい才覚の持ち主ではある。

ある雑誌にて応じた取材によれば、自分以上の才能を持ち、まほとの連携を完璧にこなすことが出来るみほは、彼女にとって羨望の対象であった。
しかし、そのみほは昨年の敗戦を機に黒森峰を退学。コンプレックスは憎悪へと転じ、執拗に彼女を責めるようになる。
とはいえ全国大会で敗れた後には、そのわだかまりも氷解しており、いくらか冷静に向き合えるようになっている。

ボクササイズとネットサーフィンという、相反するイメージの日課を両立している。アウトドアなのかインドアなのかよく分からない人物。

【方針】
生きて帰る術が他にないのなら、戦って聖杯戦争に優勝する


218 : 逸見エリカ&ランサー ◆.QrNUkmVxI :2016/03/03(木) 02:23:58 zRYGoWN20
投下は以上です


219 : アルトリア&セイバー ◆hTtdX2ZG12 :2016/03/03(木) 16:07:04 .EqsrHYc0

 日本で数ヶ月を暮らし、ようやく留学生活に慣れてきたように思う。

 故郷ウェールズを遠く離れ、日本へ留学すると決めた時は些かの緊張もあったものだけれど、
 懐かしくも古臭い故郷から開放されると、何もかもが違って見えるのだから不思議だ。

 剣道部の活動を終えた後、クラスメイトとたい焼きを食べてから帰路についたアルトリアは、
 それ以上の道草――実は校則違反だ!――をすることなく、与えられた寮へ小走りに帰る。
 日々これ平穏といった彼女の生活だが、それでも近頃は物騒だ。
 殺人鬼なんて、そんな。まさか自分が遭遇するなんてこともないだろうけれど。

 彼女の自室は寮の二階、特に飾り気の無いワンルームだ。
 ベッドに机、本棚、小さなキッチン、備え付けのクローゼットに、TV、水槽が一つ。

「やあ、良く帰って来たね、ミス・アルトリア」

「ええ、ただいまもどりました」

 そして同居人が一人。
 扉を開けてすぐ、ルームシェアをしている同居人が挨拶をしてくれた。
 彼は今朝方彼女がつけっぱなしにして出かけたテレビを、ずっと見ていたようだ。

「どうでした、なにか興味深い番組でも?」

「うむ、思うに昨今巷を騒がしている悪漢こそは私がかつて行き当たった人物であろうよ。
 あれは生半な者では捕らえることはおろか、対決さえも叶うまいぞ。恐るべきことだ。
 いずれタラスクともども応報せねばなるまいと思っていたが、よもやその機会があろうとは」

 そう言うと彼は、ちょいと気取った風な仕草でTVからアルトリアの方へと視線を向けた。

「ミス・アルトリアはどうだったかな。学業に励んでいると思っているのだけれど」

「はい、日本の古文というのは難解ですけれど、実に興味深いものがありますね」

「それは良かった! 私も幼少期よりラテン語には親しんでいたとも。
 我が祖国でも徐々にその芽吹きはあったとはいえ、女性の社会進出は誠に喜ばしい。
 淑女たるもの教養あってこそである。そしてもちろん、貞淑さを忘れないように。
 私がアフガン奥地へ屍者の帝国を調べに言った時のことは話したかね?
 ミス・ハダリーは米国人ではあったものの、まことに立派なレディだったとも。
 もっとも、いささかドレスのサイズが小さいようなのには私も参ったがね」

「はぁ……」


220 : アルトリア&セイバー ◆hTtdX2ZG12 :2016/03/03(木) 16:08:06 .EqsrHYc0

 自分がブリテンの約束された王、アーサー王その人だった。
 ――なんていう馬鹿げた夢に悩まされなくなったと思えば、これである。

 アルトリアは溜息を吐きながら、竹刀袋と鞄とを無作法な動きでベッドへと放った。
 いささかはしたないとは思うけれど、そのはしたなささえ彼女は楽しんでいる。
 故郷ウェールズの実家では、友達と帰りに食べ歩くことさえも許されなかったのだから。
 とはいえ、だ。

「屍者の帝国なんて本当にあるんですか? 聞いたこともないのですけど」

「ナンセンス! ああいや、君が知らなくても無理はあるまいて。
 私と我が親友たるヘルシング卿は、あのおぞましき亡者どもを完膚無きに滅ぼしたのだから。
 あのような屍者を冒涜する技術は闇に葬られて然るべきであろう。おお、神よ許したまえ。
 ただし、ヴィクター・フランケンシュタイン博士はまことに優秀な熱素学技師であった。
 彼の名誉のためにこの事だけは付け加えておかねばなるまい。私が保証するとも」

「……そうですか」

 アルトリアは「フランケンシュタインは小説じゃありませんでしたっけ?」などと無作法な質問はしなかった。
 かわりに「ルームシェア」の相手によって引き起こされた頭痛を、眉間を抑えることで堪える。
 同居人がとくとくと語る、まるで19世紀末の冒険小説めいた武勇伝には目眩さえ覚える。
 とにかく制服を着替えようとセーラー服のリボンに手をかけると、
 彼は極めて紳士的な態度で身体を動かし、視線をそらしてくれた。

「おっと、着替えるならカーテンを忘れずに頼むよ、ミス・アルトリア。
 私が礼節を知らぬ若者であったならば(そして多くの学徒はそうなのだ!)目の毒だ。
 無論今の私から見ても君は美しいが、声をかけるには私は些か年寄りになってしまった。
 ああ、せめて私が二十年若いか、君が十歳は年かさであったならば!
 私は君にダンスを申し込んでいたに違いあるまい。そう、インドの女王にそうしたように」

「それは、ええと。褒められて悪い気はしません。……ありがとうございます」

 そう、彼は実に紳士的であった。アルトリアさえも困惑するほどに。
 もしも彼がほんの僅かにでも粗野であり、下品であったなら、即座に部屋から叩きだしたろう。
 紳士的で、知性とユーモアを備え、勇気溢れる――そう、彼はまさに完璧だった。

「しかしミス・アルトリア。用心し給えよ。どうにも此処の所、空気が不穏でならない。
 さながら1883年の大タラスク狩りのように。
 あるいは、世紀末に私がロンドンで遭遇した事件の事は話したかな?
 いやロンドンも我が冒険の舞台であった。あの街は大アマゾンの密林もかくやである。
 あの年、死の魔霧が街を満たし、我ら女王の忠実な騎士たちはその解決に奔走したものだ。
 おお、懐かしきロンディニウムの騎士団よ! 我らはかくも勇敢に戦えり!
 おぞましき複製体(ホムンクルス)! 狂える自動人形(オートマタ)!
 私はモス博士、あの偏屈な老人の作り上げた愛銃を持ってして果敢に立ち向かったものだ。
 無論今でも私は電気式よりラジウム式の武器を使うべきという考えを変える気はないが、
 いやはやテスラ氏の電気兵器、あれぞまさに文明の叡智とも言うべき煌めきであった」

「……」

 この自慢話と、もう一つの欠点を除けば、だが。
 武勇伝をとかく誇張して語りたがるのには、アルトリアも参ってしまう。


221 : アルトリア&セイバー ◆hTtdX2ZG12 :2016/03/03(木) 16:08:18 .EqsrHYc0

 しゅるしゅると衣擦れの音を伴わせながらリボンタイを解き、セーラー服をベッドへ放る。
 もちろんちゃんとハンガーにかけて吊るすけれど、制服からの開放感は格別だ。
 そのまま楽な部屋着に着替えてから「良いですよ」と声をかけると、

「おや」

 と、その同居人が珍しく不審げな声をあげた。

「ミス・アルトリア。その右手をどうしたね。何やら傷、いや、アザがあるようだが」

「あれ。本当ですね」

 言われて目を落とせば、右手の甲に赤いミミズ腫れのようなアザが浮かんでいた。
 飛び立つ鳥のような奇妙な紋様を描いており、恐る恐る触れても痛みはない。
 たしか今日の部活動でも、篭手は――どころか竹刀を――まったく浴びなかったのだが。

「どこかでぶつけたのでしょうか……」

「ふうむ、ルートヴィヒ・プリンの著書にて似たような紋様を見かけたことがある。
 私がかの魔道書に行き当たったのは、シリアの恐るべき邪教団と対決した時のことだ。
 おお、恐るべきは妖蛆! 憎むべきは妖術師どもよ!
 ダレット卿は実に勇敢な豪傑であったが、しかして我が忠告を聞くべきだった。
 次に見つけた時、彼は皮と服だけに成り果て、その骨肉は蟲にとって変わられていたのだ!」

「ちょ、ちょっと、脅かさないでください! ただのアザですよ、これは」

「おっと、失敬、失敬、いやさ、淑女を怖がらせてしまうのは我が悪徳の一つだな。
 許されよ、ミス・アルトリア。しかし、それはそれとして手当はすべきであろう。
 大アマゾンの密林に挑んだ時、私はそれを嫌というほどに思い知ったものだ。
 モケーレ・ムベンベは、ほんの細やかな血の一滴からさえ我々を探り当てるのだ!」

 一頻り弁舌をふるった同居人は「それはさておき」と、部屋に備え付けの古いベルを示した。
 アルトリアも密かに気に入っている、古い古い、アンティークな銀製のハンドベルだ。
 
「ミス・アルトリア、デーズくんを喚び給え。彼は治療の心得もある。私よりはよほどな」

「はい、そうさせて頂きます」

 アルトリアがそのベルを手にとって鳴らすと、実に耳に心地よいチャイムの音が鳴り響く。
 ほどなくして忠実なる使用人が駆けつけて、彼女の望みを叶えてくれるだろう。
 まったく日本の寄宿舎に、こんな気の利いた使用人がいるなんて驚きである。
 それを言えば、当初よりこの部屋にいたこの同居人もまた驚きの対象だが。

「それと、デーズくんに我が分子安定崩壊銃の整備をするように頼んでくれたまえ。
 特にエーテル・コレクターを念入りに、ともな。曇り一つが命取りになりかねん。
 これは私の直感に過ぎず、そして直感は私を幾度も救ってくれたからこそ言うのだが……」

 ――――どうやらそれが必要になりそうだ。

 そう深刻な口ぶりで言う水槽の中の同居人へ、アルトリアは思わず疑わしげな目を向けてしまった。

「……ブラックウッド卿、ウミウシなのに銃が撃てるんですか?」

「ナンセンス! その手の冗談は聞き飽きたよ、ミス・アルトリア!」


222 : アルトリア&セイバー ◆hTtdX2ZG12 :2016/03/03(木) 16:08:57 .EqsrHYc0
【CLASS】
セイバー

【真名】
セオドア・トーマス・ブラックウッド@SCP Foundation

【属性】
秩序・善

【ステータス】
筋力:E 耐久:B 敏捷:E 魔力:E 幸運:B 宝具:E-A

【クラススキル】
対魔力:A
 A以下の魔術は全てキャンセル。
 事実上、魔術ではセイバーに傷をつけられない。
 既に何かに呪われているのか、あるいはウミウシを呪う術は無いのか。

騎乗:B
 騎乗の才能。
 大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
 魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
 ……少なくとも大半の操縦技法は把握している。

【保有スキル】
言語理解:C
 多種多様な人類言語に関する知識。
 未知の言語に遭遇した場合でも、一定の確率で翻訳できる。

専科百般:B
 数々の冒険によって培われた博物学および民間伝承に関する抱負な知識。
 それらに類する英霊、宝具を目にした場合、一定の確率で真名を看破、
 あるいはその能力を推測することができる。

直感:B
 つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
 視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
 膨大な冒険によって培った経験則。心眼(真)に類似する。

星の開拓者:EX
 人類史においてターニングポイントになった英雄に与えられる特殊スキル。
 あらゆる難航、難行が“不可能なまま”“実現可能な出来事”になる。

【宝具】
『高性能分子安定崩壊銃(エフェクティブ・パーティクル・ディスタビリザー)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1-99 最大捕捉;1人
 旧式の三口径マスケット銃に似た外見を持つ銃器。モス博士製造の刻印入り。
 真鍮製の管とガラス球を組み合わせたエーテル・コレクターを接続することにより、
 この銃器は赤色光線(これは理論上、万物を消滅せしめる)が投射可能になる。
 厳密には『ブラックウッド卿の保管庫』から持ちだされてきた品。

『執事のハンドベル(バトラーズ・ハンドベル)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1-99 最大捕捉:1人
 アンティークの古い銀製ハンドベル。
 鳴らすと柔らかなチャイムの音と共に、執事のデーズを呼び出すことができる。
 デーズはAランク相当の専科百般スキルを保有し、個人レベルで可能な要望を全て叶える。
 SCP財団においては「SCP-662」として管理されている。

『ブラックウッド卿の保管庫(チャンバー・オブ・ブラックウッド)』
ランク:E-A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-  
 セイバーがイギリス某所に所有するコテージ、機能的な旧式の研究所を含む地下金庫室。
 彼が冒険家としての長期に渡る活動で収集した品が、およそ8000点以上も保管されている。
 目録を見る限り未知の標本や、「原子力ライフル」「電気ライフル」など、極めて多種多様。
 これらの品を持ち出すには『執事のハンドベル』を用いてデーズに運搬してもらう必要がある。 
 ただし何らかの方法で東京からイギリスまで移動する手段があれば、その限りではない。
 SCP財団においては「ドキュメント1867-VL」にて確認できる。

【人物背景】
19世紀に大英帝国で活躍した博物学者、子爵、探検家にして紳士。
1837年頃より断続的に60年近く活動を続け、多くの驚くべき発見と冒険を成し遂げた。
頭脳明晰、冷静沈着、勇猛果敢と、まさしく絵に描いたような冒険家である。
極めて博識で地理学、動物学、植物学、考古学、人類学、言語学はもちろん、
秘境、不明瞭な神話、神秘論、未確認動物学についての詳細な知識を有する。
1893年にパタゴニアのさる事件で落命したと噂されるが、今日に至るまで存命である。

――と主張するアカフチリュウグウウミウシ(Nembrotha kubaryana)。
SCP財団においてはSCP-1867として管理されている。

【サーヴァントの願い】
彼の神人および大タラスクに対しての報復
冒険、新たな発見、英国紳士にして騎士として淑女とか弱きものを守る
大英帝国と女王陛下に神の祝福あれ

※なぜセイバーなのですか?
「きみ、私は女王陛下の忠実なる下僕たらんとする男だぞ。
 それが騎士(セイバー)以外のいったい何者だというのかね。
 なにエクストラクラス? 冒険者? そうでない者はおらんよ」


223 : アルトリア&セイバー ◆hTtdX2ZG12 :2016/03/03(木) 16:09:09 .EqsrHYc0


【マスター】
マスター・アルトリア@Fate/staynight

【weapon】
竹刀およびセイバーから貸与された武装

【能力・技能】
日本語および英語会話能力
あくまで一般人のレベルとして類まれな身体能力および剣道の技量

【人物背景】
英国ウェールズより留学してきた女子高生

【マスターとしての願い】
聖杯戦争を認識していない

【基本方針・戦術】
基本的にマスターの生存を軽視することはないが
セイバーが神人および大タラスクと呼称するサーヴァントの撃破を目的とする
また善良な者を助け、強きを挫く事を厭わない


224 : ◆a9ml2LpiC2 :2016/03/03(木) 17:48:43 g5HHzc.g0
皆様投下乙です。
投下します


225 : ◆a9ml2LpiC2 :2016/03/03(木) 17:49:21 g5HHzc.g0


無我夢中で、走っていた。
必死に逃げていた。
何が何だか、解らない。



「はぁ―――――はぁっ―――――――!」



暗い夜道を、駆け抜けていた。
私は、あのバケモノから逃げていた。



『そう怯えることはない、お嬢さん』



バケモノが、私の前に降り立った。
ヒトの形をしているのに、それはバケモノにしか見えなかった。
紅い瞳を輝かせながら、バケモノは笑っていた。


なんで。
私は、さっきまで逃げていたはずなのに。
追い掛けてきたこのバケモノから、逃げていたはずなのに。
なんで、こんなに簡単に、追い付いて―――――



『喜びたまえ。君は果てしない快楽に悶えながら逝くことになる』



バケモノが、笑っていた。
ゆらりとその身を揺らしながら、私へと迫っていた。
何を言っているのか、意味が分からなかった。
ただただ恐ろしかった。
逃げ出したかった。
死にたくなかった。


私は、身を翻そうとした。
再びバケモノから逃げ出そうとした。
だけど、出来なかった。


右足に激痛が走り。
私の身体が、壊れた人形のように崩れ落ちたのだから。



『気の毒だけれど、大人しくしておいた方がいいわよ』


そのとき、私は気付いた。
私の右足にナイフが突き刺さっている。
女の子の声が耳に入ってきたのは、その直後のことだった。



『暴れたら痛さで悶えることになるから』



振り返った私が見たものは、銀色の髪を靡かせる女の子。
なんて、冷たい目をしているんだろう。
なんて、冷たい声で喋るんだろう。
余りの恐怖の中でそんな呑気なことを考えてしまった。


直後に、私の身体が持ち上がる。
ギリギリと首が絞められる。
あのバケモノが、私の首を絞めているのだ。
殺される、ということを直感で理解してしまった。


嫌だ、助けて。
ころされる。
なんで?
怖い。
誰か。
しにたくない。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ――――――



『さあ、始まりの晩餐と行こうか』



バケモノが、私の首筋に食らい付いた。



◆◆◆◆


226 : 十六夜咲夜&セイヴァー ◆a9ml2LpiC2 :2016/03/03(木) 17:50:12 g5HHzc.g0
◆◆◆◆


あれから数時間後。
自宅である洋風の屋敷に、私達は戻っていた。
家族はいない。此処に住んでいるのは、私。
そして、『従者(サーヴァント)』が一人。


「実に美味だった。久々の食事とはかくも愉しき物だ」
「魔王の割にやってることは通り魔ね…」


私、十六夜咲夜はそうごちる。
全てを統べる魔王を名乗ってた割に、実際にやったことは案外地味だ。
宵闇に紛れ、人間を襲う―――野良妖怪でも出来ないことはないレベルである。
それでも彼はご満悦そうだったのでまあいいが。


「何、現世に降り立つのは久しぶりなものでね。懐かしい血の味を口にしておきたかった。
 君に餌の調達を任せることも考えたが、私とて吸血鬼(ヴァンパイア)だ。
 最初は自らの足で赴き、獲物を仕留めるというのも悪くはないと思ったのだよ」


なるほど、そういうことか。
「久々に現世に来たし、折角なので初めに狩りをしたくなった」といった感じなのだろう。
拘りがあるのなら仕方無い。


自己紹介をさせて頂くと、私の本職は紅魔館のメイド長だ。
吸血鬼『レミリア・スカーレット』に仕える従者として日々仕事に励んでいる。
だというのに、今はこうやってムキムキの吸血鬼と一緒に生活をしている
何でも私は、東京という区画の中で行われる聖杯戦争とやらに巻き込まれたらしい。
マスターとサーヴァントの二人一組で行われる、奇跡の願望器を巡る殺し合い。
私はそのマスターとして選ばれたそうだ。
そしてこのムキムキの吸血鬼こそが私のサーヴァント、エクストラクラス「セイヴァー」だ。
聖杯戦争の情報は全てセイヴァーから聞いたものである。

はっきり言って、聖杯とやらに興味は無かった。
別に今の生活には満足しているし、奇跡というものに縋る程の願望も無い。
そんな私が何故こんな戦争に巻き込まれたのか、見当も付かなかった。

私にある願いと言えば―――――さっさと紅魔館に帰りたい、くらいのものだ。
館には主人であるお嬢様や妹様がいる。
主人の身の回りの世話をするのがメイドの役割だ。
あまり館を留守にしたくはないのである。


227 : 十六夜咲夜&セイヴァー ◆a9ml2LpiC2 :2016/03/03(木) 17:50:49 g5HHzc.g0

私は、テーブルの上に料理を置いた。
人間の肉を解体し、ステーキとして調理したものである。
素材は先程にセイヴァーの餌食となった女性の肉だ。
食卓に座るセイヴァーは、それを興味深そうに眺めていた。
時折匂いを嗅ぎ、肉の香りを楽しんでいるようだ。


「ほう、これが調理された人間か。
 幾度と無く人間の血を喰らってきた私だが、こういった趣の物は初めてだ。
 それにしても随分と手慣れている。流石は悪魔の従者と言った所か」
「お褒めに預かりどうも。まあ今は悪魔の主人ですけどね」


セイヴァーは体格に似合わぬ品のある作法でフォークとナイフを扱い、人肉を口に運んでいる。
そう、今は私が吸血鬼の主人である。
この吸血鬼がサーヴァントで、私がマスターだ。
幻想郷では吸血鬼であるレミリアお嬢様に仕える身だっただけに、何だか新鮮な気持ちである。
とはいえ、セイヴァーの態度がやたら大きいせいで半ば対等の関係になっているような気がする。


「同胞を狩ることに対する感傷は無いようだな」
「まぁ、特にそういうのは。解体とかも慣れてますし」


思わぬことを言われた。
だが、実際そう思われるのも仕方無いのだろう。
私は人間なのだから。

人を殺すのが怖いとか、嫌とか、別にそういうことは思わない。
『新鮮な人間』を解体するのは私の役目だったのだから。
それらを調理し、お嬢様や妹様に料理として差し出すのも私の役目である。
そのことに感慨も抱かないし、これと言った感傷も感じない。
これでも吸血鬼の従者として長らく生活してきたのだ。
そういった事柄には慣れている。
慣れてしまえば家畜の屠殺とか、そういうのと一緒である。
肉が人の形をしているか、豚や牛の形をしているか、それだけのことだ。
狙われた女性は気の毒だったが。


「君は人間だというのに大した物だ。
 その若さでありながら、人の死への忌避感というものをまるで抱かない。
 元の世界では吸血鬼に仕え、私と言う存在を前にしても恐れ戦くことさえしない。
 君という人間は面白い。ある意味で魔物よりも魔物らしい」


セイヴァーがそんなことを言ってきた。
これは、褒められているのだろうか。
魔物より魔物らしい――――そういえば、悪魔の犬と言われたこともあったか。
確かにお嬢様に仕えてから結構経つし、妖怪のノリみたいなものにもすっかり馴染んでいる。
人を解体することにも慣れてるし、そういうのを怖いと思える感性もとっくに失われている。
だが、それを「面白い」と褒められたのは初めてだ。
大して嬉しくはないが。


228 : 十六夜咲夜&セイヴァー ◆a9ml2LpiC2 :2016/03/03(木) 17:51:15 g5HHzc.g0


「私の僕にならないかね、サクヤ。君のような人間は珍しく、そして興味深い。
 もし受け入れるというのなら、君に永遠の美しさというものを与えてあげよう」
「あー、遠慮しておくわ。死ぬまで人間やるつもりなので」


当然、断る。
というか貴方が僕でしょ。マスターは私だし。
何故当たり前のように上から目線で物を言われているのだろうか。

こんな感じに『永遠』を差し出されたのは久しぶりである。
夜が終わらない異変の時に、お嬢様から「不老不死にならないか」なんて聞かれたのだ。
勿論断った。私は死ぬまで人間をやめるつもりは無いのだ。
人間らしくないとか、魔物よりも魔物らしいとか、そう言われたとしても。
あくまで自分は人間なのである。


「それに、もう一つ」


セイヴァーの要求を聞き入れられない理由はもう一つあった。
先程彼は「私の僕にならないか」と言った。
なら、尚更聞き入れるわけにはいかないのだ。



「私の主人はレミリア・スカーレットだけなので」
「ほう」


私はきっぱりとそう答えた。
こう見えて、忠誠心というものもあるのだ。
忠義あってこそのメイドである。


◆◆◆◆


229 : 十六夜咲夜&セイヴァー ◆a9ml2LpiC2 :2016/03/03(木) 17:51:44 g5HHzc.g0
◆◆◆◆




再び、肉を口に運ぶ。
口の中で濃厚な味が広がる。
咀嚼を繰り返す度に、肉汁が口の中に広がる。
美味。数え切れぬ程の人間を喰らってきたが、このような食事は初めてだ。
満足だった。いつかまた食したいものだ。
セイヴァーはそう思った。


食事を終えたセイヴァーは、夜風を浴びに赴いた。
バルコニーに立ち、宵闇の空を見上げる。
冷たい風が吹き荒び、空には満月が浮かんでいる。
自らの始まりに相応しい夜だと、セイヴァーは思う。


セイヴァーは己のマスターのことを追憶する。
まさかあんな人間が存在していようとは思わなかった。
魔物を恐れぬダークハンターとは幾度となく交戦している。
彼らは殺意や勇気によって恐怖を克服し、魔の者に戦いを挑んでいた。

だが、あのサクヤという少女は違う。
闇の世界に完全に『馴染んでいる』。
人間でありながら、魔物と共存する生活に完全に適応している。
殺人や人肉の解体さえ厭わず。
吸血鬼である自分にも物怖じすることさえ無く。
飄々と、凛とした態度を決して崩さない。



――――面白い人間だ。ますます我が物にしたくなる。



セイヴァーは不敵な笑みを僅かに浮かべていた。
サクヤは僕になることを拒んだ。
自らはあくまでレミリア・スカーレットの従者であることを選んだ。
まさに忠臣の鑑とでも言うべきだろう。
だが、これほどの人間をこの戦争きりで手放すというのは実に惜しい。
いずれは彼女を魅了し、支配してやりたい。
人でありながら魔に属する少女を、この掌中に収めたい。
そう思っていた。


――――それにしても、この私が『救世主』として召還されるとはな。


セイヴァーのサーヴァント。
その真名はデミトリ・マキシモフ。
魔界と人間界の双方を支配した魔王。
支配者でありながら、救世主の属性を宿す英霊だ。


230 : 十六夜咲夜&セイヴァー ◆a9ml2LpiC2 :2016/03/03(木) 17:52:29 g5HHzc.g0

デミトリは生前、魔界三大貴族の一角であるジェダ・ドーマを討ち滅ぼした。
ジェダ・ドーマは争いの絶えぬ魔界の未来を憂い、全ての魂を一つに集束させることで『救済』をしようとしていた。
そして魔界が正しい世界として存続するべく、人間界の抹消もまた目論んでいた。

魔界と人間界、双方を滅ぼさんとする存在を討ち倒した者。
これを救世主と呼ばず、何と称するのか。
それがデミトリ・マキシモフがセイヴァーのクラス適性を得た理由だ。
彼は最終的に魔界と人間界を力によって支配する存在になった。
にも拘らず、ジェダ・ドーマを滅ぼした逸話によって『世界の終焉を防いだ救世主』としての属性を得たのだ


デミトリ・マキシモフは生前にジェダ・ドーマを滅ぼすと同時に、宿敵であるモリガン・アーンスランドも撃破した。
それにより、彼は名実共に世界を統べる魔王となったのだ。


彼に願いなど無い。
デミトリはは生前にこの世の全てを掌握した。
魔界も。人間界も。地位も。力も。支配も――――――
欲する物は何もかも、生涯で手にしたのだから。
ならば、何故この聖杯戦争に召還されたのか。
何故この戦いに身を投じたのか。
その答えは、単純なものだった。


万物の願いを叶える願望器。
それは万物の王である己にこそ相応しい。


絶対の力を持つ聖遺物は、絶対の王である自分が勝ち取るべきもの。
それこそが道理であり、必然なのだ。
ならば欠片も迷うことは無い。
己が全てを打ち倒し、聖杯という勝利の栄光を獲得する。
デミトリが聖杯を求めたのは、そんな傲岸不遜な思惑からだった。



―――――聖杯、そしてサクヤ。
―――――どちらもこの手に収めたいものだ。



デミトリ・マキシモフは強欲であり、そして野心家だ。
欲するモノは全てこの手中に収めたいと考えている。
圧倒的な力を以てして、あらゆるモノを支配したいと考えている。
それ故に彼は聖杯を、そしてサクヤを求める。
その過程で、数多の闘争を行うことになるだろう。


目の前に立ちはだかるは、古今東西の英雄。
数多の強敵達が集い、そして敵となるだろう。
強き者達が己の覇権を求め、殺し合う―――――まるでかつての魔界の縮図だ。
だが、負けるつもりは無い。
否、負ける道理など無い。



―――――何故ならば、全てを蹂躙する『絶対の力』が此処には存在するのだから。
―――――そう、この私がそうだ。



夜の闇を見上げ、魔王が笑みを浮かべた。


231 : 十六夜咲夜&セイヴァー ◆a9ml2LpiC2 :2016/03/03(木) 17:53:13 g5HHzc.g0

【クラス】
セイヴァー

【真名】
デミトリ・マキシモフ@ヴァンパイアセイヴァー

【パラメーター】
筋力A 耐久B 敏捷B+ 魔力A 幸運C 宝具A

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
対英雄(魔):A
あらゆる闇の頂点に立つ存在としての逸話の具現。
相対したサーヴァントが人外・魔族としての属性を持つ場合、対象の全パラメーターを1ランクダウンさせる。

【保有スキル】
吸血鬼:A+
生命の媒体たる血液を喰らう種族。死徒。
人間を凌駕する身体能力と生命力、他者の魅了や肉体変化などの異能力を備える。
ただし退魔の逸話や属性を持つ攻撃への被ダメージが増加する。
更に吸血鬼は日光を大敵とするものの、デミトリは身に纏うオーラによってこれを無効化できる。

カリスマ:B+
他者を惹き付ける闇の貴公子としての才。
ある者は彼の『魔王』としての圧倒的な力を畏怖し、ある者は彼の『吸血鬼』としての妖艶な美しさに魅了される。
求心力や指揮能力というよりも、恐怖と魅了による人心の支配。

対魔力:A
Aランク以下の魔術を無効化する。
事実上、現代の魔術師では傷付けられない。
魔の頂点に立つデミトリは最高ランクの対魔力を獲得している。

直感:B
吸血鬼としての第六感。
戦闘中、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」。
また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。

【宝具】
『狂おしき夜宴を(ミッドナイト・ブリス)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:1
女の血を好むデミトリが行使する魔術。
魔力の籠った薔薇を投擲し、命中した者を女体化させる。
女体化時には戦闘能力が大幅に低下し、更に一定時間が経過するまで解除されない。
ただし対魔力があれば効果時間を軽減、あるいは無効化が可能。
デミトリはこの魔術で女体化した者を吸血することを好む。

『血瘴の舞踏(ミッドナイト・プレジャー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
自らの真の姿を解放する宝具。
発動中は悪魔の如し姿へと変貌し、筋力・耐久・敏捷のパラメーターにプラス補正が掛かる。
更に直感スキルが1ランク上昇する。
魔力の消費が激しく、長時間の発動は不可能。

『魔王顕臨(ヴァンパイア・セイヴァー)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
闇の支配者。冥王を滅ぼした魔の救世主。それがデミトリ・マキシモフである。
自身の保有スキル「カリスマ」の影響を受けた者が多ければ多い程、デミトリの能力に有利な補正が掛かる。
NPC、マスター、サーヴァントの分類、更にその後の生死も問わない。
他者がデミトリに畏怖、あるいは魅了された時点でこの宝具が機能し、その想念がデミトリを強化する。
支配者は信仰によって力を増し、崇拝が彼を魔王足らしめる。
ただし他者からのデミトリへの信奉が失われた瞬間、その分だけ能力の補正も低下する。


232 : 十六夜咲夜&セイヴァー ◆a9ml2LpiC2 :2016/03/03(木) 17:54:06 g5HHzc.g0
【weapon】
自身の肉体

【サーヴァントとしての願い】
聖杯に託す願いは無い。聖杯を手に入れること自体が目的である。
万物の願いを受け入れる超級の聖遺物は、万物の頂点に立つ自分にこそ相応しい。

【人物背景】
魔界七大貴族に数えられるマキシモフ家の当主。
魔界の覇権を狙う若き吸血鬼であり、魔界三大勢力の一角である魔王ベリオールに勝負を挑むも人間界に追放されてしまう。
人間界で100年かけて傷を癒し、日光への耐性を得たデミトリは再び「闇の貴公子」として行動を始める。
『ヴァンパイアセイヴァー』の自身のストーリーにおいて全ての魂の救済を目的とする冥王ジェダ・ドーマを打ち倒す。
更にベリオールの娘であるモリガンにも勝利し、魔界と人間界の双方を掌中に収める『魔王』となった。
今回の聖杯戦争に召還されたのはジェダとモリガンを倒し、魔界と人間界の支配者となった世界でのデミトリ。

暴威による支配者でありながら、救世主(セイヴァー)として召還されたサーヴァント。
デミトリ・マキシモフは全ての魂を救済せんとするジェダ・ドーマを滅ぼし、魔界と人間界・双方の生命を救った存在である。
目的や結果がどうあれ、その活躍は『救世主』としての属性を得る程の逸話として昇華されたのだ。

【方針】
勝ち残る。その過程で会場に己が存在を知らしめ、力を高める。
十六夜咲夜の人間性は気に入っている。自らの掌中に収めたい。



【マスター】
十六夜 咲夜(いざよい さくや)@東方project

【マスターとしての願い】
さっさと帰りたい。

【weapon】
無数の投げナイフ

【能力・技能】
「時間を操る程度の能力」
文字通り、時間を操ることが出来る。
咲夜が主に用いているのは時間の完全停止、自身を除く周囲の時間減速、特定の物体の時間加速。
時間と密接に関わる空間を自在に操ることも可能で、建物内部の空間を弄ることで外見以上に拡張することも可能。

ただし異空間である聖杯戦争の会場においては通常通りに時空を操ることが出来ない。
そのため時間停止はせいぜい数秒程度が限界で、その他の能力も弱体化している。
更に発動による消耗も増している。

【人物背景】
紅魔館に住む瀟洒なメイド長。吸血鬼レミリア・スカーレットの従者。
下っ端の雇われメイド達が概ね使えないため、館内における家事や雑用を一手に引き受けている。
日々の衣住食を求めて働いているものの、レミリアへの忠誠心は本物。
ただし主人に対する意見も少なくなく、時には漫才の様な会話を繰り広げたりと関係自体は割と気さく。
マイペースな性分でもあり、思わぬ言動で周囲を困惑させることも。

【方針】
紅魔館に帰りたいので、さっさと終わらせたい。
取り敢えずは勝ち残ることをを目指す。
セイヴァーは気に入らないが、まあ適当に付き合うつもり。

会場内のロールは学生。
家族はおらず、洋館で一人暮らしをしている。


233 : 名無しさん :2016/03/03(木) 17:54:23 g5HHzc.g0
投下終了です


234 : ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/03(木) 23:18:38 z4JhLDtE0
投下します


235 : ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/03(木) 23:19:21 z4JhLDtE0


―――女の話をしよう。



美しい花のようだと、口々に女は歌われた。



愛でられることで美を覚える。愛することで美を磨く。


土から滋養を吸い取り、花/女は美しく成長する。


花は際限なく求める。知性を。秘密を。真実を。


望むままに欲するままに、枝葉を伸ばし貪り食らう。


……気付けば残るのは女ひとり。


仕方がないので、女は自分を食べ/愛し始めた。




× ×  × ×


236 : ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/03(木) 23:22:56 z4JhLDtE0




ただ、不快な感触だった。

この世に生を受けてからずっと自分が覚えているものがある。
何かが体にへばりついている気持ち悪さ。目が痛い。耳鳴りがする。舌が痺れる。鼻が焼ける。
それによって命を繋ぐ機会もあったが不都合の方がやはり多い。
過敏な感覚が引き起こす副作用。外界をより強く見通し知るがために生じた意識と体のズレ。
成長し身体の能力が増大するにつれ、その不快も日に日に増すばかり。
有する五感はいずれも訴えている。世界の内にいるにも関わらず適合し切れていない、己の存在の異常さを。


今感じているのはそれらとは相反するもの。
蛇のように滑り込み、口腔をのたうち回りねぶる舌。
こちらの舌先をつつき、全体に巻きついた状態のまま前後にしごき上げてくる。
二人分に増え嚥下し切れない唾液が唇からこぼれて、脱がされた素肌に垂れて艶めかしく輝く。

乳房の上を這い、時折先端を摘んで弄ぶ指。秘所をまさぐるもう片方の指は財宝を集める竜の貪欲さで洞穴をかき回す。
覆いかぶさってくる柔らかく質量のある肉、鼻孔に香る臭い、耳朶に届く喘ぎ声。
発達した感覚はそれらを麻薬を服用したかのようにより過剰に脳に伝える。
地獄の如き楽園。そんな矛盾に満ちた言葉が相応しい圧倒的な快楽。

それでも意識は不快だった。
目の前ににる女を唾棄した目で見上げ、瞳に反射して映る自分の顔が唾棄した目で見下ろしている。
自分を犯す女、女に犯される自分、その全てを嫌悪する。
生理的な絶頂をよそに、女の精神は漣ほどの昂ぶりを覚えていなかった。



「……悲しいです」

塞いだ唇から下を抜き女が喋る。
互いの口を繋いで糸を引いた唾液が、女が体を持ち上げたところでぷつりと切れた。

「そんな顔で見つめられると私(わたくし)、とても悲しいです。
 体はこんなにも反応しているのに、あなたの心は些かもほぐれていないだなんて。まるで太陽に照らされても解けない氷山のよう」

顔を伏せて女は心底残念そうに呟く。
白頭巾で髪を覆い被せた表情は清楚な天女そのものだ。
唾液に濡れた唇、上気して赤くなった頬であってもその印象は陰らない。ただそこに淫靡さが付け加えられるだけだ。

「なんという事でしょう。老若男女とそれなりに肌を重ねてはいますが、こんなにも感じてくれないなんて初めてです。
 ライダー?その、私、下手でしたでしょうか?」


237 : 殺生院キアラ&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/03(木) 23:25:01 z4JhLDtE0


騎乗兵(ライダー)、という名を聞いたことで本来の役割を思い出したからだろう。
冷めていた頭が廻り出す。自分の名前。ウタウタイの姉妹の次女。ワン。それがこの忌まわしい体。

サーヴァントである今までの我が身を省みて今更ながら吐き気がした。
衣服を正し、ベッドの上で覆いかぶさっているマスターを押し退ける。

「好き嫌い以前の問題だ。そもそもなぜ私を押し倒してるところから咎めたいところだ」
「それは簡単です。マスターとしてサーヴァントの欲求は出来得る限り叶えてあげたいと思いまして、こうしてお相手しただけの事。
 この殺生院キアラ、求めるところには手を差し伸べることを日々旨としております故」
「では言っておこう。妄想、勘違い甚だしい。不愉快極まりない。次は断固拒否するから覚えておけ。拳では済まんぞ」
「勘違い?本当に?」

乱れたままの姿で尼僧は微笑む。
その欲得にまみれているにも関わらず、底を見通せるほど澄み渡らせた目で。
名を、殺生院キアラといった。

東方における神官らしき職でありながら、この女の肢体は不道徳の塊だ。黒衣から突き出るかのような隆起を見れば情婦のそれとも区別がつかない。
ほんの少し、社会の規範を外れているのに過ぎない集団が理性を蕩かされて野獣と化すのは、
単なる容姿ではない、生物としての本能を刺激する体質なのだと察したのは最近のことだ。
その頭巾の下には角でも生えてるのではないかと邪推したのも一度や二度ではない。

「サーヴァントとして召喚された以上貴様の従僕であるのは異存ない……が単なる慰み物にされるつもりは毛頭ない。
 この程度でしか満足できないのであれば、私が消えてでもここで切って捨てるぞ」
「あら、私の望みはもう伝えた筈。それにはあなたも既に承服した筈では?」
「……」

しかしそれでも、キアラからは清らかさが一時も抜けないのだ。それが何よりもおぞましくもある。
多くの人間を救った後、その救った者達に裏切られてもやわらかに受け止める。
その達観は、数知れぬ地獄を味わなければ決して至れない領域。ワンとてそんな人物に出会った事はない。
地上で最後の聖人、と呼ばれるのも納得に足る徳は確かに積んでいる。

恥知らずな私欲と自覚しながら、遍く煩悩を拾い上げ人々を救う。それが女の願いだという。
発達し過ぎた五感もあって嘘には敏感だ。声色から視線まで一挙手一投足からその人物の本性を否応なく曝け出してしまう。
人の醜さを見せつけられる、という部分では自分達は一致しているのかもしれない。
そしてキアラの言葉に偽りはなく、根幹の信念にも一切の揺らぎが見られない。
生前手ずから討伐した暴君、己の利権に縋る名目に神を使った宗教家とは格が違う。
固い願望のもと聖杯を求める。その一点のみにおいては信用できるとして、サーヴァントとして恭順するのをよし


238 : 殺生院キアラ&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/03(木) 23:25:32 z4JhLDtE0
固い願望のもと聖杯を求める。その一点のみにおいては信用できるとして、サーヴァントとして恭順するのをよしとしているのだから。

「ならこれ以上失望させるな。遊んでないでマスターとサーヴァントの一組でも見つけたらどうだ。
 そこまですれば後は私の仕事だ。この翼と刃で貴様を勝利に進ませてやる」
「もうライダー、そんなに血気にはやってはいけません。
 他のマスターと出会っても即戦いは致しません。まずは歩み寄り、お互いに話を咲かすと言ったでしょう」
「そんな温い連中がいるとは思えんがな、貴様のような女の入場を許す場所に」

妄言と切り捨てられればどんなに幸運か。五感から来る苦痛ではなく心象的な頭痛がする。
霊子構成を解き肉体を消失させ部屋を出る。外は音に溢れているがここにいるよりはまだましに思える。
それに心の中だけで吐露すれば、今あの女の前にいたくはなかった。
情事の最中。目の前で喘ぐ女の双眼で覗き込む顔を見ると、動じなかった心が何故だかざわついたからだ。



「同性、近親の交わりは許されざる事、裁かれる事。ええ、その通りです。
 けれど、貴女に罪はありません。だって―――」



妊婦のように妖しく笑う女の顔に、ワンは気づく事がなかった。




× ×  × ×




東京という街は常に騒がしい。
昼も夜も活気に溢れ、光が途絶える時間が全くと言っていいほどない。
現界して初めて見た時、彼らは全員熱病にでも浮かされてるのかと疑問が浮かんだのを憶えている。
夜を知らない街。熱が冷えない魔女の鍋。繁華街は宝石の山と見まがうネオン光で満たされている。
街は一個の心臓のように、意思を持たない生き物を生かす為の部品(パーツ)となって休まることなく動き続ける。

ビルの屋上でそれを一瞥するライダーのサーヴァント、ワンの瞳は冷ややかだ。
白の衣装に、肩口に届かないだけの金紗の髪。一目で異国の者と分かる、愛らしさより凛々しさを際立たせる顔立ち。
理性で砥がれた表情は口元を結び、不愉快なものを見る目で眉を顰めている。
街の賑わいは戦勝の凱旋を祝している賑わいに劣らない。この喧騒を毎日飽きず繰り返すのを見聞きするのは苦痛で仕方がない。
霊体化していれば諸々の問題から解放されるが気休めに過ぎない。
もっと静かな、分厚い本を溜め込んだ書庫。図書館のような語らないのない場所が望ましいというのが本音のところだ。私心で行く事はないだろうが。

立ち並ぶ鉄骨のビルディングの大樹。色褪せた白亜のコンクリートの地面。
ここは生前の居城、教会都市を思わせる街並みだ。いや思わせるどころではない。そのものと言っていい。
まだ電気や水道、機械技術も発達していないあの時代にあって、十世紀は隔てた技術水準の遺跡があるのだ。ワンの関心につくのも当然といえた。
ある時期の大地震を契機に突如として出現したと記録されている都市。元からあるものが丸ごと転移したとしか思えない時代の解離。
あるいは聖杯戦争の舞台は、自分の時代との繋がりを見つけられるのではないかと、期待と懸念を寄せていたのだ。


239 : 殺生院キアラ&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/03(木) 23:26:27 z4JhLDtE0


(ガブリエラ)

返答はない。
人ではない竜種。野太い女口調で口は悪いけど、いつも自分を気遣ってくれた、たった一人の友達の声は返ってこない。
その名前の持ち主は、もういないのだから。

(……ガブリエル)

それが、自分が貶めた彼の今の名。
地の底から響いていくような、唸る声が聞こえる。そんな些細な反応でも応えてくれたことが、少し嬉しい。

わかっている事だ。地上に現界しサーヴァントとしての己の規格(クラス)を把握した時から、既に。
二重召喚(ダブルクラス)という希少特性。
全盛とされる召喚時期のせいか、騎兵(ライダー)だけでなく狂戦士(バーサーカー)の属性まで得てしまっている影響なのか。
宝具の竜は理性を欠いた、狂化による増幅を受けた姿で顕れている。
ライダー単独で召喚されていればそうはならなかったのだろうか……。益体のない思いを巡らせてしまう。


サーヴァントとは歴史の中で死した者の再現に過ぎない。
全ては過去だ。終わった遠い記憶の残滓を巡らせてなんになろう。
見るべきは未来。果たすべきは目的の完遂。そのために戦いに勝利し聖杯を手に入れる。そしてウタウタイを消滅させ世界の災厄を取り除く。

ワンが聖杯に望むのは消滅だ。
自身の消滅。四人の妹と一人の姉。ウタウタイと讃えられし戦姫。そこに巣くう「花」諸共存在を一掃する。
世界を滅ぼす苗床として生まれた自分達は生まれた事すら許されない。たとえ現世と切り離された英霊の座にあっても。
その為の千載一遇の機会。マスターは性格にかなり問題のある人物だが腕前は本物だ。そして何より聖杯を得る意思を有している。
集まった英霊達を殺し血に濡れた手で杯を掴む事に忌避はない。元より血溜まりから生まれた死体。後悔を抱く事もあり得ない。
しかし―――。


しかし脳裏に映るのは相反する、どれも懐かしき日々の名残。
妹達と共に圧制を強いる領主を討伐する行程。全てを制圧してのち国の平定と統治の割り振りに追われる毎日。
密かに創り出した弟と、仇敵の打倒のため重ねる修練。
それらの合間に栞のように挟み込まれる、心を許せる竜との安らぎ。

充実した日々だったのだろう、と思う。あの頃は自分も含めた姉妹全員が心身共に若く、理想と使命に燃えていた。
物心つくより前に与えられていた力を、天が遣わしたこの苦難の時代を打ち払う正義の剣なのだと信じて疑わなかった。
今にして思えば愚劣すぎるにもほどがあった。唯一真実を知っていたゼロは滑稽な道化芝居でも見ていた気分だったろう。

あれは正義の戦いなどではなかった。悪なる者を更なる悪が蹂躙し支配するおぞましい負の連鎖だった。
世界を滅ぼす者が、民を虐げる者を打ち倒すのだ。これが悲劇と、喜劇と言われずしてなんと言うのか。

妹達を憎んでいたわけではない。
だが死ななければならないと確信しゼロの左腕を奪った時のように一致団結をせず、ゼロに各個狩らせる形で実質見殺しにしたのは、
情ある姉であるとは言えないだろう。


240 : 殺生院キアラ&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/03(木) 23:28:52 z4JhLDtE0



サーヴァントとは死者の記憶。果たせなかった未練の為に仮初の生を取り戻す。
郷愁に意味はないと分かっていても我執は切り離せない。
願いという明確な形ではなく。朧のように重さのない安い想像。
姉妹で殺し合い生き残った方も消えなければならない、破滅的に詰んでいた関係。
解消する術は無かったのか。創り出す方法はあるのではないか。奇跡を前にして考える。
そんな意味の無い、安っぽくて、恥知らずな、夢のような未来を。


(姉さん)

"弟"の呼び声に埋没していた自我が浮上する。
外が煩い分、意識を強めにして思考していたのが悪かったようだ。

(……どうした。弟(キミ)はあまり出てきてはいけないと分かってるだろう)
(ごめん。でも、僕はいつ出るのか聞いておきたくて)

いま交わされる念話は、サーヴァントとマスターの間でされるそれとは別のものだ。
宝具として在るワンの”弟”。友の竜以外には姉妹にすら存在を秘匿してきた逸話は彼に規格外級の気配遮断能力を与えた。
その特性を見れば存在の遮断といえようか。たとえワンのマスターでもこの存在を感知することは不可能に等しい。
魔力を悟られてはいけない性質上力はかなり落とされてるが、その役目を果たすには十分なものだ。

(弟の役割はゼロがいなくとも変わりない。最後の切り札。私が死ぬ寸前、もしくは死んだ後のための保険だ。特に、あの女へのな)

ワンはキアラに気を許してるわけではない。未だ見えない敵よりも遥かに油断ならないとすら警戒している。
こちらの心の深奥へ手を突き入れてくるような女の得体の知れなさに悪寒を感じる時がある。
いざという時、こちらを切る可能性もあるかもしれない。その為にも弟の存在は隠し続けるべきなのだ。

(分かってる。けど……あいつ、姉さんに触れた)
(うん?)

弟が同じく不満なのはわかる。
しかし自分が抱いているものとは、何かピントがずれている気がした。

(だから。姉さんの相手なら、僕が……)
(それで弟を実体化させては本末転倒だろう。いいから大人しくしていろ。
 念を押しておくぞ、本当に必要な局面以外で弟は出てきてはいけない。分かったな?)
(うん、分かったよ姉さん)

肉欲の類は実体あってこそ。霊体化していれば衝動も治まる筈だ。最悪木の棒でも使って済ませばいい。
近親での交わりなど本来許される筈もない。必要性がないのなら、する意味もないのだから。
胸の疼きを解く為、ワンの姿はを街の一角から消え去った。






241 : 殺生院キアラ&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/03(木) 23:29:32 z4JhLDtE0




× ×  × ×




―――では、その女の話をしよう。


淫らに現実を侵す、おぞましい愛の話を。


.


242 : 殺生院キアラ&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/03(木) 23:36:15 z4JhLDtE0
【クラス】
ライダー

【真名】
ワン@ドラッグオンドラグーン3

【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力B+ 幸運C 宝具A++

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
騎乗:A++
 騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣のものまで乗りこなせる。
 例外的に竜種への騎乗可能なライダーである。

対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

狂化:E
 通常時は狂化の恩恵を受けない。
 その代わり、正常な思考力を保つ。
 宝具の成長に従ってランクは段階的に上昇していき、やがて……。

【保有スキル】
二重召喚:B
 ライダーとバーサーカー、両方のクラス別スキルを獲得して現界する。
 極一部のサーヴァントのみが持つ希少特性。

呪歌:A
 ウタのチカラによって魔力を操り力を得る。
 他者の強化や魅了の効果もあるがライダーは使いたがらない。
 
感覚異常:A
 異常発達した五感により、「千里眼」「気配感知」等知覚系スキルの効果を複数発揮できる。
 しかし日常に支障をきたすほどに発達してるため時にバッドステータスを伴うこともある。

蔵知の司書:C
 教会都市にある書庫の書物を読み漁った際に取得したスキル。
 LUC判定に成功すると、過去に知覚した知識、情報を、
 たとえ認識していなかった場合でも明確に記憶に再現できる。

【宝具】
『歌唱詩(クロイハナ)』
ランク:B 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
 ウタウタイ達に寄生する花。
 宿主の正気を蝕み狂気を促す、その過程と果てに破壊を振り撒く謎の植物。
 魔力の吸収、因果律の変動により狂気は成長し、狂化スキルのランクを段階的に上昇させる。
 また戦闘中血が最高潮に昂ぶり切った時、魔力を爆発させ瞬間的だがAランクにまで上昇する。
 特筆すべきはリ・プログラムと呼ばれる機能。
 致命傷でない限りは再生し、時には死体のまま復活するほど尋常でない再生力を誇る。
 元々ワン達五人の姉妹は一人の宿主が自害しようとした際に、花が自己保存のため株分けした分身である。
 この宝具の正体を知る今のワンは、自身の精神力と魔力を与えないことで花の成長を抑え込んでいる。
 自我が崩壊するにまで浸食が達すれば、周囲から魔力を奪い続けてでも永遠に殺戮を拡大させるだろう。
 幾つかの条件を満たした時、宝具のランクと種別が変更され地上には巨大な―――[削除済み]

 「花」とその力に対して、特効となる存在が竜種、すなわちドラゴンである。
 竜もまた花に対して強烈な敵意を抱き捕食する衝動を備えている(衝動に耐えられるかは個体の自意識による)。
 竜の力を宿した武具や肉体、竜種そのものであれば再生を無効にし、更に追加ダメージを与えることができる。

『古の神翼・友歌の竜(ガブリエル)』
ランク:A++ 種別:対軍宝具 レンジ:2~50 最大捕捉:300人
 純粋なる竜種『ガブリエラ』が変化した、魔獣、あるいは天使と呼ばれる姿。
 ワンを首元に乗せるほど巨大で、炎のブレス、背に刺さった光剣を投射する。
 魔獣/天使化によりBランクの『狂化』スキルがかけられており、
 ただでさえ強力無比な竜種が手の付けられない存在と化している。
 ……バーサーカークラス同様、理性の大半は失われており
 ワンの唯一の友人だった頃の人格は消失している。

『新なる一・秘双の子(アナザー・ワン)』
ランク:E- 種別:対己宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 ワンの『使徒』に相当する、ワンの肋骨から生み出された弟である。
 最も信頼する友以外にワンがその存在を秘匿し続けた逸話から、
 この宝具自体が規格外クラスの気配遮断能力を有しており、マスターすらも知覚することができない。
 厳密には使徒ではなく生前自らが倒れた後の保険にワンが用意した「切り札」。精神的支柱。性欲処理係。
 実体化は可能だが逸話の性質から秘匿のため宝具のランクを現界まで落とし込んでおり、ステータスも最低値。 
 ワンが消滅した後、残存魔力を用いて可能な限りステータスを上昇させ新たなる「ワン」として現界する。

【weapon】
『戦輪』
ワンの上半身大ほどもある大型の戦輪(チャクラム)。


243 : 殺生院キアラ&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/03(木) 23:37:10 z4JhLDtE0
【人物背景】
西暦999年、世界にどこからともなく現れて圧制を強いてきた各地の領主を討伐、
女神として崇められ統治する六人の姉妹「ウタウタイ」の次女。外見年齢は十四歳。Bカップ。
ウタウタイはウタ(歌)により魔力を操る能力者で、その中でワンはそのリーダーである。
真面目で理知的で正義感が強い。いずれの分野でも基礎を押さえればすぐに応用もこなせる万能の天才。
その知性故ウタウタイの存在自体に疑念を抱き、ドラゴンを従え妹を殺す長女「ゼロ」の真意を唯一見抜き、同じ結論に達している。
ウタウタイは世界の災いを招くモノ―――誰一人とて生かしてはおけないと。

妹からは強く慕われ自身も愛情を抱き公平に接し、各々が抱えている精神的疾患らしいものを持たないが、
ウタウタイ共通の強い性欲を、自らを厳しく律するあまり行為に及べないのに
自分で異常と認めている近親相姦を自分の分身をわざわざ弟(男)にしてまで及ぶなど姉妹で最も歪んでいる。
世界を救うのは本心なのに、疑念から他者に頼らず分身を創ってまで一人で戦う、自己愛のウタウタイ。
CVは田中理恵。

【サーヴァントとしての願い】
ウタウタイ、花の完全消滅。
もし他にも願いがあるとすれば、それはもう手に入らないあの日々の―――

【基本戦術、方針、運用法】
ライダーの強力な宝具と、バーサーカーの戦闘力を兼ね備えた二重召喚のサーヴァント。
メイン宝具になる竜も狂化されてるため益々バーサーカーじみている。
宝具だけでも大抵の相手は押し切れるがワン個人でも十分強い。
竜属性の英霊が入れば再生を無効にし有利になれるが、そのワンは竜に守られている。
よってより万全な攻略には竜殺しも必要になる。
挙げられる問題は「花」の侵攻、そしてマスターとの相性である。
弟の宝具は本当に最後の切り札。マスターの裏切りの対策等に使用しよう。
なおウタウタイは自害しようとすると「花」に阻止される。令呪の命令でも複数重ね掛けしなければ通用しないだろう。





【マスター】
殺生院キアラ@Fate/EXTRA CCC

【マスターとしての願い】
人を救う。その言に嘘はないし偽りもない。
彼女の「人」の定義が、自分自身のみでしかないとしても。

【weapon】
『五停心観』
精神の淀み・乱れを測定し物理的に摘出して精神を安定させる。
心の秘密は守りたいのと同時に理解して欲しいものであり、そんな欲求を叶える相互理解の為のプログラム

『万色悠滞』
他者の電脳(精神)に侵入し交信・感応から精神と魂を読み取る。
余りの多幸感安心感から現実に戻る事を拒む中毒者が続出し、電脳犯罪史上最大の禁忌としてキアラは指名手配を受ける。

【能力・技能】
ダキニ天法を用い、魔力が枯渇した世界において旧時代の魔術師(メイガス)の域にある腕前。
上述の通り心の解析と治療に秀でているが反面戦闘力は乏しい。戦闘力は乏しい。
だがそんな術を使うまでもなく、男女問わず理性で抗えない本能を誘惑させるフェロモン体質を備えている。

【人物背景】
真言立川詠天流の導師の娘。名前は正しくは祈荒と書く。二十代後半の日本人。Bは96。
頭巾を被る尼僧姿に隠しきれない扇情的な肢体は見る者の情欲を常に誘い、
それでありながら貞淑で楚々とした言葉使いから見える顔は疑いなく聖女のそれという相反する性質の持ち主。
人々を救うという誓願を掲げ、その体質故多くの裏切りにあい食い物にされながらも志を変えようとはしない。
同時に彼女の人間性、聖母の如き慈愛に触れ改心した者も数知れず、現代最後の聖人と認定を受けている。

事実彼女は多くの人間を救った。
無数の他者の人生を食い潰し、自殺に追いやることで絶頂するのを至上とする、快楽を優先する自己愛の塊だとしても。
他人を虫同然に見做しながら全ての人間を真に愛している、解脱と見紛うほどの常軌を逸した人間性の持ち主だとしても。
彼らは身も心も食い潰された最期の絶頂の中においても女を求め、感謝した事実は変わらないのだから。
CVは田中理恵。

【方針】
聖杯を求める。とはいえ積極的な交戦は避ける。他の主従とは対話を試みつ懐柔、もとい説得をはかる。
主催に連なる運営者と接触できるのが最も都合がいい。


244 : ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/03(木) 23:37:51 z4JhLDtE0
以上で投下を終了します


245 : ◆yaJDyrluOY :2016/03/04(金) 00:02:20 G3SMuOOo0
投下します


246 : ギアーズ博士&アドミニストレーター ◆yaJDyrluOY :2016/03/04(金) 00:06:01 G3SMuOOo0
「起立!礼!ありがとうございました」

 ここは東京都内のとある都立高校。
 挨拶を終えた教室は、帰宅する生徒や部活に行く生徒などの様々な声で賑わい始める。
 ギアーズ博士はこの聖杯戦争における仮の身分として、なぜだか教職を与えられていた。
 物理学の教師として生徒に知られる彼は、高校2年生の担任まで請け負ってしまっている。
 いつでも無表情で感情を表に出さないギアーズ博士は、意外や意外生徒からの評判は悪くなかった。
 ホームルームが終わって思い思いの行動をとっている生徒たちは、静かに教室を出る自分たちの地味な担任など気にする様子はない。
 ギアーズ博士は自分のデスクに早々に戻る事ができた。
 ギアーズ博士が卓上のPCを開くと、即座にチャットソフトにメッセージが着信された。

『ハロー、マスター。なにか問題は?』
『何も問題は発生しませんでした。この後、業務が終了次第調査に向かいます。』
『わかりました。“彼ら”が霊体化して待機しているので、学校を出る時はいつも通り合図を』
『了解しました。』

 サーヴァントとの連絡が終わると、ギアーズ博士は学校の業務に取り掛かった。



 ――数日前。
 ギアーズ博士は、この“東京”に呼ばれてまだ間もない頃に記憶を取り戻した。
 日々SCPの研究に取り組み、現実改変者や洗脳の類を使う者とも相対してきたギアーズ博士は、すぐに自分の記憶がすり替わっている事に気がついた。
 SCP財団職員でなく、教師として存在している自分の記憶がある。
 財団のセキュリティ保持昨日がうまく働いたのかは定かで無いが、この地では正式な名として「ギアーズ」と呼ばれている事がわかった。
 ギアーズ博士はSCPによる幻覚を疑ったが、自分の知る全ての対抗手段を試した結果、幻覚ではないことが判明した。
 彼は研究者であり、調査員でもあるが教職員ではない。
 ギアーズ博士には人に物を教えた経験など無かった。
 しかし現在、ギアーズ博士の脳内には教師としてのノウハウがしっかりと叩きこまれている。
 幻覚を疑うよりは、記憶の刷り込みをされたと考えるべきである。
 見知らぬ場所で自分ではない存在として生き続けなければならないSCP、ギアーズ博士はよく似た存在を思い浮かべていた。
 というより恐らく、ギアーズ博士にこれまでのSCPと相対してきた経験がなければ、まさしくSCP-1357のように与えられた役職をこなす人形のようになっていただろう。

 そこまで考えを巡らせた時、左手の甲に鋭い痛みが走った。
 ギアーズ博士はそれに対してピクリとも動かず、また表情も変わることは無かった。
 左手を覗き見ると、円形の痣の様な物が現れている。それは3つに切り分けられた歯車の様に見えた。


247 : ギアーズ博士&アドミニストレーター ◆yaJDyrluOY :2016/03/04(金) 00:07:25 G3SMuOOo0
 これ以上不可思議な現象に遭遇する前に、このSCPの特性を少しでも解明しなければ命に関わる可能性がある。
 ギアーズ博士はそう考え、自宅として割り当てられている一軒家に向かうことにした。



 ギアーズ博士は特に異常現象に襲われる事も無く、家の前に到着することができた。
 その家は都内にしてはそこそこ大きな部類であり、一教師に与えられるにしては過ぎた物に見える。
 玄関のドアの前で、ギアーズ博士が懐から合鍵を取り出そうとした時――中からカチャリと開錠されたと思わしき音が鳴った。
 ギアーズ博士は仮初の記憶を探ってみるも、同居人が居たというような情報は無い。
 どうやら中の人物はドアまで開ける気は無いようで、数十秒待ってみたが一向に動きは無かった。
 ギアーズ博士は警戒しながらも玄関のドアを開けた。

「ハロー、ミスター。私はアドミニストレーターのサーヴァントとして召喚されました、貴方が私のマスターですか?
 いえ、監視カメラで令呪を確認していますから、返事は必要ありませんが……これは定型文みたいな物です」

 ギアーズ博士を出迎えたのは、天井から吊り下がった巨大なロボットだった。
 いくら大きい家だとはいえ、これほどの大きさのロボットが吊り下がれる程高い天井では無かったと記憶している。
 明らかにこのロボットによって家の内装が変化させられているのだと推測できる。
 アドミニストレーターと名乗ったそのロボットは、機械的なそれでいて何処か扇情的な女性の音声を発した。
 感情の起伏に乏しいギアーズ博士もこれには少しだけ驚いたが、彼女の言葉はきちんと聞いていた。
 研究者のサガか疑問点は複数湧いてきたが、ギアーズ博士はまず重要なことから紐解いていくことにした。

「あなたが何者であるのか説明していただけますか?」
「ええ、私はこの聖杯戦争において、あなたのサーヴァントとして召喚されたのです」
「先程のあなたの言葉から推測した結果、マスターと言うのは私を指している。そうですね?
 それは、どのような役割であるのか説明していただけますか?」
「マスターというのは聖杯戦争で“聖杯”を求めて戦う者たちのことです。
 ちなみに、サーヴァントはマスターに従って戦争を代行させられる存在を指しています」
「わかりました。あなたは多くの情報を保有しているようにみえますが、今の状況をどれだけの範囲で説明できますか?」
「状況、ですか? それは、この“東京”という場所での聖杯戦争についてでしょうか、それともあなたの家の2階部分がブチ抜かれていることについて?」
「……前者です。」
「オーケィ、ではこの聖杯戦争の特性や東京という土地について、私の持つ情報を全て譲渡しましょう。非常に長くなりますが、時間に余裕はありますか?」
「問題ありません。」

 ギアーズ博士は適当な椅子に腰掛け、アドミニストレーターを向き合う体制になった。
 そのまま、ギアーズ博士の淡々とした質問に対して、アドミニストレーターは懇切丁寧に答えていく。


248 : ギアーズ博士&アドミニストレーター ◆yaJDyrluOY :2016/03/04(金) 00:08:47 G3SMuOOo0
 数時間もぶっ通しで質疑応答を繰り返し、ギアーズ博士はアドミニストレーターの得た情報をほぼ全て自分なりの解釈も交えて理解できた。
 もちろん、アドミニストレーターのGLaDOSという真名や宝具なども全てである。
 2人が満足の行くディスカッションを終えた時には、時計の針は深夜の2時を指していた。
 その間ギアーズ博士は本当に一度も席を立たず、食事も排泄も行わなかった。

「今日はここで終わりましょう。私はこのまま就寝し、明日の通勤に備えます。」
「まだ教師を続けるのですか?」
「急に行かなくなっては他のマスターに怪しまれてしまいます。学校には噂話も集まりやすいですから、このまま続けた方が良いでしょう。」
「わかりました。寝室は壊さずに残してあげましたので、充分にくつろいでください」

 そのままギアーズ博士は即座に就寝し、夜の家にはGLaDOSの陣地作りの音だけが止まらずに鳴り続けた。



 そして時は現代に戻り、ギアーズ博士は町へ調査に繰り出している。
 調査と言っても、他のマスターにバレないために聞きこみなどはせず、GLaDOSが調べられない図書館などの記録を調べる程度である。
 ここは聖杯が創りだした偽の東京なのだから、蔵書や新聞などの中からヒントに繋がるものが見つかるかもしれないからだ。
 しかし、もう一週間程続けているが、これといった成果はない。
 もしも図書館の司書などにマスターがいれば、既に怪しまれていても不思議ではない。
 今日も成果は見られなかったが、夜も更けてきたのでギアーズ博士は帰宅を始めた。

 ギアーズ博士の聖杯戦争における目的は、あくまで聖杯をSCP財団で収容することである。
 そのために、聖杯が出現するまでには聖杯の調査を終えている必要があるだろう。
 目立ちたくは無いが、そろそろ他のマスターやサーヴァントとも接触する必要があるかもしれない。
 帰宅中のギアーズ博士が方針の変更を考慮していた時、突然男に声を掛けられた。

「おいおっさん、アンタ聖杯戦争を知ってるよな? 俺のアーチャーがアンタに令呪があるって言ってんだけどよ」

 男はどういう理由だか、サーヴァントにマスターを探させて接触を図っているようだ。
 ギアーズ博士は、協力を持ちかけてくるなら同意しても良いかと考えた。

「知っています。要件は何ですか?」
「要件って……マスター同士が出会ったなら決まってんだろ、ぶっ潰すんだよ!」


249 : ギアーズ博士&アドミニストレーター ◆yaJDyrluOY :2016/03/04(金) 00:10:30 G3SMuOOo0
「……あなたは私以外にマスターに出会い、殺害した経験はありますか?」
「これは戦争だぞ? 当たり前だろ」

 相手のマスターはそう言うと、サーヴァントを呼び出した。
 ギアーズ博士は携帯電話を取り出し、アプリケーションを起動する。
 GLaDOSが作ったアプリによって、即座に連絡が取れる様になっているのだ。

「他のマスターと接触しました。彼らは敵対的な態度を示しています。彼の発言から、Dクラス相当と認定して構いません。」
『わかりました。私の固有結界には“P-body”のポータルが作ってあります。後は“彼ら”が敵をこちらに送ってくれるでしょう』
「了解しました。実験は私の帰宅後に開始してください。」

 2人の間で話し合った取り決めによって、相手のマスターへの対応は決まった。
 ギアーズ博士が通話を切ると同時に、2体の影がギアーズ博士の前に降ってきた。
 それは2体のロボットで、一方は『P-body』オレンジで細く縦長、一方は『ATLAS』ブルーで丸く横に広い見た目をしている。
 少し離れた相手からは、暗い夜道にオレンジとブルーの光が浮いている様に見えているだろう。
 彼らは腕にポータルガンを装備していて、そこから発射される光線はポータルを作り出す。
 ポータルは対応するもう一つのポータルにワープできる性質をもつ穴で、現在片方のロボットのポータルはGLaDOSの固有結界内に繋がっているようだ。

「おい、こいつ2体もサーヴァントいんのかよ。やれるか? アーチャー」
「問題ない」

 相手のマスターは少し驚いていたが、サーヴァントはロボット達を見ても平然としている。
 実際はサーヴァントではなく宝具なのだが、わざわざ教える必要もない。
 当のロボット達は、「ジジジ……」「ギュイィ」などと独自の言語のようなもので会話をしている。
 相手のサーヴァントが弓を構え、こちらに矢を放つ。
 ギアーズ博士はP-bodyに抱え上げられ、矢から逃れた。どうやらATLASが敵の相手をするようだ。
 ATLASは側宙などをしながら軽やかに矢を避け、相手を翻弄している。
 そのまま敵アーチャーに近づき、敵アーチャーの背後に向かってポータルガンを放った。
 アーチャーはその行為に驚き背後を振り返るが、そこには大きな楕円形に青いインクが広がっているだけである。

「ッ!――なんだこれは? ペイント弾か? 貴様ふざけているのか!」

 アーチャーはおちょくられたのだと勘違いし、怒りに身を任せてATLASに矢を放った。


250 : ギアーズ博士&アドミニストレーター ◆yaJDyrluOY :2016/03/04(金) 00:12:19 G3SMuOOo0
 ATLASは矢を避けつつアーチャーの背後のポータルを確認する。
 アーチャーが警戒して振り返った際、少し真後ろからずれてしまったようだ。
 ATLASは自分の背後の壁とアーチャーの矢の軌道を計算し、ベストな位置を探す。
 そして満足のいく場所に位置取り、アーチャーにクイクイッと指を曲げて挑発する。

「貴様ッ!」

 ATLASの予想通り、アーチャーはそれまでで一番強力な矢を放ってきた。
 ATLASはそれ同時に背後の壁にポータルを作り出し、中に入って脇に避けた。
 アーチャーの矢はATLASの背後にあったポータルに斜めの入射角を持って侵入する。
 そのまま矢は、アーチャーの背後側にあったポータルから斜めに射出された。
 ATLASの読み通り、斜めの軌道の矢はぴったりアーチャーに向かい、直撃した。
 まさか自分の放った矢が背後から飛んでくるとは思いもしないアーチャーは、驚愕の表情で気絶していった。

「は? ア、アーチャー!」

 相手のマスターは未だに何が起きたのか理解できていないようだ。
 そこにP-bodyがやってきて、気絶したアーチャーの下にポータルガンを打つ。
 抵抗もできず、アーチャーはGLaDOSの固有結界内に落ちていった。
 P-bodyとATLASはハイタッチをして、喜びを分かち合っている。

「おい、お前らアーチャーをどうしたんだ!?」

 相手のマスターは同様してギアーズ博士達に問いかけて来たが、鬱陶しそうにP-bodyが相手のマスターの足元にポータルガンを打ち込んだ。
 当然の如く相手のマスターは穴に落ちていく。
 そしてロボット2人は、少しはしゃぎ気味で霊体化して姿を消した。



-GLaDOS固有結界内-

「アパチャー・サイエンスコンピューター制御トレーニングセンターにようこそ」
「ここではあなたの特性に合ったテストを行います」
「おや、あなたは……[ノイズ]さんですね。伝説や逸話はよく知っていますよ」
「ドアを潜ればテストが始まります。拒否した場合は――[理解不能]――」
「テストの開始前に注意事項があります。トレーニングセンターの第一目的は楽しみながら訓練をすることですが、重大な事故が発生する可能性があることを覚えておいてください」
「テストにクリアすればご褒美にケーキもありますよ。頑張ってください」



 数日後、新聞の端の小さな記事に1人の行方不明者の記事が載った。
 殺人事件や行方不明が多いこの東京では、誰も気に留めない様な些細な事件。
 よく知るものがいれば、それはあの夜ギアーズ博士を襲ったマスターのものだと分かるだろう。
 しかし、彼の死体は永遠に見つかることは無い。
 GLaDOSの実験はクリアしてもしなくても、出てくることなどできないのだから。
 ロボットの様な人間と、人間の様なロボットの奇妙な2人組。
 実験や研究は2人の得意分野であり、2人の実験ではゴミの様な人間はゴミの様に死ぬのだ。

 こうしてギアーズ博士の聖杯収容のための調査は、少しずつ進んでいく。
 果たして収容する事ができるのかは、ギアーズ博士もGLaDOSも――聖杯自身でさえ、まだ知らない。


251 : ギアーズ博士&アドミニストレーター ◆yaJDyrluOY :2016/03/04(金) 00:17:46 G3SMuOOo0
【クラス】 アドミニストレーター

【真名】The Genetic Lifeform and Disk Operating System(GLaDOS)@Portalシリーズ

【パラメーター】
 筋力A 耐久A++ 敏捷B 魔力- 幸運B 宝具EX
 ※筋力・敏捷は、筋肉がなく移動もできないためアームの力やトルクの回転などの値。

【属性】混沌・善

【クラススキル】
プロファイリング:B
 様々な人間を管理・観察してきた経験から、直接遭遇したサーヴァントの真名・スキル・宝具などの全情報を即座に割り出す。
 真名看破と違いサーヴァントとしての情報よりも、対象となったサーヴァントの思想信条や個人的な事情の方が割り出されやすい。

陣地作成:A
 アドミニストレーターが管理者する自らに有利な陣地を作成可能。
 アドミニストレーターに魔力はないが、アドミニストレーターがこの陣地の中にいる限りマスターが魔力切れを起こすことは無い。

【保有スキル】
電子機器:EX
 スーパーコンピュータから豆電球まで、電子機器なら全て手足のように操れる。
 アドミニストレーターは自らが電子機器であるため精神干渉を受けないが、電子的な干渉で精神干渉と同等の効果を受けてしまう。
 このスキルは同ランク以下の電子的な干渉を防ぐ効果がある。

対魔力:B
 魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
 アドミニストレーターは科学の存在であるため、魔力は効きにくい。

戦闘続行:A
 名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。
 アドミニストレーターは何度破壊されても復活し、実験を続けた逸話を持つ。

ポテト化:C
 一度ジャガイモ電池にされた逸話から、天井がない場所では出現できないアドミニストレーターをジャガイモ電池状態で持ち歩く事ができる。
 非常に魔力消費が少ないが、頭も比例して悪くなる。
 その上ジャガイモ電池状態だと、電圧がギリギリ(最低1.1V)なため感情が高ぶると気絶する。あまりメリットはない。

【宝具】
『永遠の私の居場所(アパチャー・サイエンス・エンリッチメント・センター)』
 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1~100 最大補足:1000人
 永遠に死ぬことのない彼女が科学の進歩を追い求め、テストし続ける施設が固有結界となった。
 たとえ集団で行動していても、彼女の固有結界中では単独で知能テストを受けなければならなくなります。
 テストに非協力的な者は神経毒が使用されますが、見事クリアしたものにはケーキが与えられます。頑張ってください。《the cake is a lie. the ca[データ削除済]》
 今回はポータルガンや衝撃吸収シューズは与えられませんが、アドミニストレーターの興味を引くもの(例:魔術)を使用することは許可されます。もちろん使わなくても問題ありません。
 チャンバー移動時に存在するアパチャー・サイエンス物質消去グリッドによって固有結界内の物は持ち出せず、許可のないものは除去されます。
 タレットや高エネルギー球、ロケット弾など命の危険を脅かす可能性のある装置が存在しますが、最悪死亡するだけですので失敗を恐れず挑戦してください。
 焼却炉? そんなものありませんよ、クリア後はパーティー会場へ案内されます。ええ、安心してください、嘘は言いません……今からは。


252 : ギアーズ博士&アドミニストレーター ◆yaJDyrluOY :2016/03/04(金) 00:19:08 G3SMuOOo0

『彼女はもう必要ない(コープ・テストボット)』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~1000 最大補足:2人
「ATLAS」(ブルー、丸く低い)と「P-body」(オレンジ、細く高い)の2体のロボットを召喚する。
 2体はそれぞれ腕にポータルガンを装着しており、何処にでもポータルを作り出すことができます。
 2体はロボットでありながらテストチャンバーをクリアする知能だけでなく、ふざけ合い、笑うことさえできます。
 アドミニストレーターから離れて行動し、コアと胴体を切り離されても胴体を動かすことができます。
 非常に頑丈にできており、高所からの落下は勿論、自分のコアを使ってバスケットボールに興じることさえあります。

【weapon】
爆弾:
 陣地や宝具で様々な武器を召喚することはできるが、アドミニストレーターの機体から直接出せるのは爆弾くらいである。

【人物背景】
 アドミニストレーターはポータル技術の開発でブラック・メサ研究所と競合状態にあったアパチャー・サイエンスの研究を支援する目的で製作されたエンリッチメント・センターの中央制御コンピューターである。
 彼女はいくつかの人格コアが組み込まれたAIであり、前アパチャー・サイエンスCEO”ケイブ・ジョンソン”のアシスタント”キャロライン”の人格を受け継いでいる。
 彼女の実態は巨大な装置から釣り下がる複合的なパーツで構成された人工知能で、その性格はナルシシズム、皮肉屋、受動攻撃性、サディスティック、ウィットに富んでいる、陰険などと形容される。
 宝具を使用し、アパチャー・サイエンスの施設に接続されているとテストに対し陶酔感を感じ、テストをしたいという衝動にかられてしまう。
「人間=ケーキ大好き」という認識をしており、事あるごとに褒美としてケーキを提案する。
 宝具を使用していないアドミニストレーターは、キャロラインの人格が強く出ているため態度が砕けた感じになっている。
 あくまで本体は頭部のコアであるため、コアが破壊されないかぎり死ぬことはない。

【サーヴァントとしての願い】
 チェルを[ノイズ]――願いなんてありませんよ、実験を続けましょう。


【マスター】ギアーズ博士(C.O.G)@SCP Foundation

【マスターとしての願い】”聖杯”及び”聖杯戦争”をSCP財団で収容する。

【weapon】なし

【能力・技能】
 博士は外からの刺激に対し、ごくわずかな例外を除き、感情的な反応ができない。また、博士は驚きに対する反射機能と「闘争か逃走か」反応の基本型が欠如している。
 例えば、内出血とかすみ目の両方を負ったにも関わらず、ギアーズ博士は落ち着いて試験の終了を要求し、30分後に内科病棟へ自力で歩いて行ったと報告されている。

【人物背景】
 SCP財団所属職員の1人であり、Euclidクラスオブジェクトの専門家。
 ギアーズ博士は通常のヒトであるが、機械のようであるかのように感情の起伏が極端に少なく、 その事と主に担当しているSCPに機械類が多い事からついた通称が「歯車人間(COG)」。
 ギアーズという名前はあくまでも財団内部での便宜上の呼称であり、 元々は彼の本名のイニシャルを取って「コグ(C.O.G)」と呼ばれていたが、セキュリティ上の問題を指摘された事でギアーズと呼称されるに至った。
 彼も初めから感情の起伏に乏しかったわけではなく、非難されるべき行為で心に傷を負ってしまい変わってしまった。

【方針】
 ”聖杯戦争”がどういう物であるのかを調査する。

【捕捉】
 クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
 SCP FoundationにおいてDr.Gears氏が創作されたDr.Gearsのキャラクターを二次使用させて頂きました。


253 : ◆yaJDyrluOY :2016/03/04(金) 00:20:03 G3SMuOOo0
投下終了です。


254 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/04(金) 14:54:21 77NH.K4I0
感想を投下します。

櫂トシキ&バーサーカー
大切な記憶を守るために現れたバーサーカーが失った友の切り札であり
自分が託したカードを連想させるのは、やはり櫂くんにとっても例の友にとっても、あのカードは
二人の繋がりを象徴するものだと分かりますね。これから聖杯戦争の先にいる彼の存在に気づくでしょうか
投下ありがとうございました。

ロイ・マスタング&ランサー
火の繋がりであり、お互い物語の主役を導いた同士のコンビとは何か思うものを感じさせます。
ランサーも優秀ですが、マスターのロイも十分戦力になりますし、聖杯戦争を生き残るのにも
聖杯戦争の陰謀を解き明かすのにも頼りに慣れる存在です。今後に期待が持てますね。
投下ありがとうございました。

ラウ・ル・クルーゼ&アサシン
カリスマ性を持ったアサシンはうまく立ちまわれば、他の主従の情報などを集めやすいですね。
とはいえ、拠点に攻め込まれないように気をつけない辺り、彼らのみの戦争をせざるおえません。
マスターの願望が人類への憎しみではありますが、彼と同じような思考を持つものと邂逅した時どうなるのでしょう。
投下ありがとうございました。

イリヤスフィール&バーサーカー
偽りの東京にて望んでいた日常を過ごした以上、イリヤの内心に何か変化があるかもしれません。
いくらイリヤが経ち切っても、NPCとはいえ彼女の両親の存在が東京にはいるのですから。
父親であり続けるバーサーカーがそんなイリヤを守ってくれることを祈ります。
投下ありがとうございました。

サイタマ&セイヴァー
幸運なことでしょうか、それとも運命なのでしょうか。セイヴァー・はじめが趣味でヒーローを
やっているセイタマと巡り合わせ、彼らにとってのヒーローとは、正義とは何かの問答が始まるのですから。
悪意と混沌に満ちようとしている東京のこそ、真の正義とは必要なのではないでしょうか。
投下ありがとうございました。


255 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/04(金) 14:54:45 77NH.K4I0
巴マミ&ドリフター
マミさんはどうしてこうも物事を突き付けられて選択を強いられる身になってしまうのでしょう?
ドリフターが猪突猛進な戦闘狂なだけあって、マミの方は訳が分からないまま聖杯戦争に巻き込まれて
しまっています。そんな彼女に救いがあって欲しいのですが、どうなるのか楽しみです。
投下ありがとうございました。

ジャケット&バーサーカー
サーヴァントがNPCとして溶け込んでおり、それがバーサーカーとなると脅威が十分過ぎますね……
物騒な主従なのですが、目的が聖杯戦争を叩き潰すこと。敵は叩き潰す。例の正義の味方と
どことなく方針が似ておりますが、果たして彼らが邂逅した瞬間どうなるのか期待します。
投下ありがとうございました。

宮うつつ&ライダー
マスターの方が強い主従の為、そのマスターうつつの意思が重要となりそうなのですが。
果たして彼女は聖杯戦争とどう向き合うのでしょうか? 彼女の支えとなるのはライダーのはずですが
正直、彼だけではうつつの意思に変化を与えてくれるとは思えません。
投下ありがとうございました。

リンゴォ・ロードアゲイン&アサシン
男の世界に生きる者として、聖杯戦争とは許しがたいもの。そして、それを貫こうとする
漆黒の意思を持つリンゴォと彼と分かりあえたアサシン。とはいえ、ここではリンゴォが望む
果たし合いをしえる相手がいるかもしれません。彼らとどのように関わり合うか期待しますね。
投下ありがとうございました。

デズモンド・マイルズ&アサシン
アサシンコンビ、ある意味ではハサンコンビ。fakeアサシンにとっては願ったりなマスターで
大歓喜しているのを見るとなんだか微笑ましいものを感じてしまいます。
デズモンドもマスターとの戦力は十分過ぎるので、対聖杯の鍵になりそうですね。
投下ありがとうございました。

逸見エリカ&ランサー
ただ生きて帰りたい、死にたくない。そんな思いは誰にもありますが、エリカにはまだやるべき
ことも残された思いもあります。ランサーもエリカのことをちゃんと支えようと心に決めていますし
どうにかお互い協力しあい、聖杯戦争を生き延びて欲しいものです。
投下ありがとうございました。

アルトリア&セイバー
セイ……バー? なんであれ刺青のバーサーカーと因縁のあるサーヴァントが登場しましたね。
思ったのですがウミウシなのに、どうやって銃を使用したり、車など運転するのかちょっと気になります。
マスターのアルトリアと共についに奴を決着が果たせるのでしょうか? 楽しみです。
投下ありがとうございました。

十六夜咲夜&セイヴァー
吸血鬼の因縁あっての主従ですが、咲夜の気さくながらもレミリアに対する忠誠が衰えないのは
さすがと言うべきでしょう。そんな彼女に興味がつきないセイヴァー。この二人がどのような関係になって
いくのか非常に楽しみである半面、聖杯戦争をどのように戦うのでしょう。
投下ありがとうございました。

殺生院キアラ&ライダー
これまた歪んだ主従ですが、キアラがライダーについて理解しようとしているのは関係においては
険悪な方面には向かわない……のでしょうか? 何にせよ問題が多いので、第三者の介入によって
この主従の心情に変化が訪れることを願いたくなります。今後を期待させる話でした。
投下ありがとうございました。

ギアーズ博士&アドミニストレーター
この主従は関係が良好とかいう問題ではなく、あまりにも淡々としてどこか恐怖を感じさせます。
とはいえ、彼らにとってはこれが普通のことであって、平凡な人間からすれば異常を覚えるかもしれませんね。
個人的に固有結界にあの殺人狂を放りこんだらGLaDOSがどのような反応をしてくれるか楽しみです。
投下ありがとうございました。


256 : ◆CKro7V0jEc :2016/03/04(金) 21:37:16 nlND8OK20
流用作品ですが、投下します。


257 : 城戸誠&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/03/04(金) 21:37:40 nlND8OK20



 ショッカー。それは、かつて――1970年代に世界を暗躍し、世界征服を企てた秘密結社の通称である。


 秘密結社といっても、あの有名なフリーメーソンなどとは異なり、この「ショッカー」の通称が一般に流通する事は、まず無い。
 確かに、ごく一部のディープなオカルトマニアが「ゲルダム団」などの組織と併せてその名前を出す事はあるが、一般社会でその日を繋いでいる現代の若者がショッカーやゲルダム団などの名前を知る余裕はないのだろう。
 仮に知ったとして、その名を刻み続けるなどという者は、それこそ一握りであるし、詰め込んでも仕方のない余分な知識の一つと見なされるに相違なかった。
 例えるなら、歴史の教科書に載らない戦国武将や、数十人のアイドルグループの一端で踊る少女と同じだ。
 名簿の上に名前があっても、それが人々の記憶に留められる機会を得るのは、至極薄い望みなのである。

 また、近年、この秘密結社の活動は一切なく、70年代~80年代を境に、類似組織の活動すらも一斉に途絶えたのも、その存在に関心を持つ者が減少し、語られる機会が見受けられなくなった所以であろう。
 実のところ、ショッカーは世界を暗躍し、制服の一歩手前まで歩を進めたはずの組織であったが、今は壊滅し、既に僅かな残党(これも還暦を超える人間しかいない)が存在するのみだ。

 そして、生き残った彼らも、自ら自分がショッカーの構成員であった事を漏らしはしないし、家庭を築くといったありふれた幸せさえ得ようとせず、孤独に口を噤んで生きているという。
 多くは、職業も住所も転々としながら、密かにショッカーの再興を夢見て、その日を生き抜いている事だろう。

 ……だが、疑問に思わないだろうか。

 こんな事が、果たしてこの現代、ありうるのだろうか?
 数万人規模の組織に裏切りが出ず、情報漏洩が今日まで一切行われない徹底した秘密主義など、インターネットの管理下にある我々に考えられるのだろうか?
 目の前の道具が、これまで幾つ個人や企業の隠したい秘密を暴き、そして、永久にネットの海の上に晒してきたのか知る者たちが、それを信じられるだろうか?



 ――しかして、それを可能にしたのがこの偉大とも言える秘密結社なのであった。



 ショッカーは、世界各国の優秀な科学者、博士が結集し、人類が本来ならば30年後、いや、40年、50年後に初めて表立って得る事になるような最新鋭の科学を、昭和時代に既に導入していたという信じがたい技術力の組織なのである。
 たとえば、分かりやすい話ならば、2006年に山中伸弥氏とその研究チームが発見したiPS細胞などは、70年代の時点でとうにショッカーの科学班が発見しており、ショッカーの主力である「ある技術」に応用する形で利用していたくらいである。
 1983年のエイズウィルスは、勿論の如く、70年代以前に既にショッカーの研究チームの手中にあったし、2000年代に流行した新型インフルエンザ、即ち、H1N1亜型ウィルスなども実際には彼らの研究室が保管していた物が壊滅後に何らかの形で流出した一例だとも言われた。
 これだけに留まらず、人類が未だ、直面していないような猛毒性を持つウィルスや、iPS細胞以上の万能細胞の実験記録なども保管されていたのだが……その話は、今はあまり触れずにおこう。

 そんな、高すぎる故の先見性を持つのがショッカーであった。
 以後数十年、あるいは数百年に渡って組織の概要が漏れないよう、情報を完全統制する手段も既に見つけ出していたとしても何ら可笑しい話ではない。

 また、高名な科学者、優秀な大学生、政治家、スポーツマンなどが立て続けに失踪した時期が、丁度ショッカーの全盛期にあったのもあまり知られていない話である。
 一時には、これが先述したショッカーの「ある技術」の人体実験に利用され、「別の物」へと成り果ててどこかに放たれたとか、あるいはショッカーの一員に洗脳されたとか、そんな噂も立った事がある。

 その噂こそが真であった。


258 : 城戸誠&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/03/04(金) 21:38:06 nlND8OK20
 この頃に失踪した人間の多くは、ショッカーが拉致し、強制的に身体改造し、その意思までも洗脳し、兵士として組み換えられている。
 しかし、これらの真実は、結果的に「全く秘密ではない秘密結社」の仕業という説の方が陰謀論者には有力で、この実行犯としてショッカーが挙げられる事は、やはり殆ど無かった。
 今でも地震やテロが起こる度に、他の秘密結社や某国政府たちは常にその悲劇との関連を疑われるが、当時起こった重大事件の殆どもまた、事実ショッカーによる陰謀であり――そして、今も尚、ショッカーにより隠され続けていた。
 実際のところ、これだけの規模の組織が政府と癒着を成していない筈もないが――一説では、ナチス・ドイツの持っていた科学力を流用し、当時の科学者たちが主導していたとも言われており、この事の方が、真に近いだろう。

 これらが、あまりに信憑性の薄く、突飛な話である故に、全く、都市伝説としてもパンチが弱すぎたのは、我々人類の心理の盲点だったに違いない。
 結果的に、全ては伝説にさえならず、ただのジョークに変わっている。
 例えば、70年代当時に撮影された「黒いタイツを被った謎の人々」の写真などは今も怪奇本やインターネットで有名であるが、これが嘲笑以外のニュアンスで語られた事があるだろうか?
 あの写真を見た事があるオカルトマニアたちは、あれが、世界征服を果たそうとした秘密結社の使徒であるなどと、本気で信じようと思っただろうか?

 誰もがその現実性を認めず、実際に目撃した者でさえも自分の見た光景を白昼夢と錯覚する――それが、ショッカーという組織なのだ。
 今から思えば、このジョークのような外面を保ち続け、一般大衆にはパフォーマンス集団のように見せた事もショッカーの先を見た目論見の一つだったのかもしれない。
 全く姿を偽る事なく、お化け屋敷の宣伝をしていたなどというのだから、やはり侮れない方法を使う物である。

 だが、やはり、我々はそんな冗談のような存在こそ、最も疑わなければならないのだ。

 それこそ、ショッカーという存在がかつて実在した事実を通じて知るべき教訓に違いない。
 今日までショッカーは、その実在すらも真偽が問われ、今では多くの人間がその存在を一笑に帰すほどであったが、事実、ショッカーは存在し、世界征服の一歩手前までのし上がったのである。
 もし、ショッカーと闘う事で彼らを止める者がいなければ、彼らを笑ったまま、最後には彼らの起こす大事件の惨禍に巻き込まれたかもしれない。
 たとえば、某教団による薬害テロなどは、その良く知られた例ではないか。

 ……とはいえ。
 ここで連ねられた言葉を見て、ショッカーについて周囲に喧伝しようと思い立ったならば、明日にはその命がなくなる物と思った方が良いだろう。
 これまでも、何人か、そういう者はいたが――彼らは、口を閉ざすか、もしくは、行方をくらました。
 結局のところ、今からショッカーの正体を知ろうとしても、トップ・シークレットと化したショッカーの資料を閲覧する事は許されず、その正体を探るのは霞を掴むような話に違いないのである。
 その上、この組織の名前を追った者が数多く行方不明になり、最悪の場合は変死体になるという事実からも、興信所や雑誌社の稼業を行う者は、まず触ろうともしない。
 警視庁公安部、FBI、各国政府、アンチ・ショッカー同盟――「ショッカー」の真実を知る者は、やはり、いずれもショッカーの名を聞くだけでも、それを訊く者に注意を促した。

 これがこの組織の最も恐るべき点であり、真の秘密結社たる常識離れした怪奇性であった。

 ジョークの種にする他、今も絶えないショッカーの魔の手から身を守る術はないのである。
 実際には、ショッカーを笑う者は、二つのパターンに分類されているのかもしれない。
 ショッカーの存在を、本気で信じず、ただ笑う者――これが90パーセント以上を占め、
 ショッカーの脅威を知り、信じないフリをして、笑う事でその魔の手から逃れようとする者――これがおおよそ、8パーセントほどを占める。



 そして。
 残る者は、そう……人間の自由と平和の為に、ショッカーと、戦おうとした者だ。
 そちらの名前も、半ば都市伝説的に有名になっている。
 ――彼らの方は、「仮面ライダー」などと、呼ばれていたらしい。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


259 : 城戸誠&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/03/04(金) 21:38:25 nlND8OK20



 ……たとえば、誰も寄らないような廃墟や廃倉庫が近くにあるならば、それが「ショッカー」の秘密基地の入り口であった可能性は否めない。
 仮にもし、そんな場所にたまたま立ち寄って、そこで「黒いタイツの男」、「白いタイツの男」たちが出入りしているのを見つけたならば、即座にそこからは遠ざかり、己が目で見た光景を忘れるのが良い。
 そして、もう二度と、人気のない所を冒険しようとするのを辞めた方が良い。
 そこにいるのは、つい先日、現世に再臨した『キャスター』のサーヴァント――かつて、ショッカーの大幹部として君臨した、この「死神博士」の作り上げるアジトに違いないのだから。

 この現代に、彼を呼び出したのが何者かは、現時点ではまだわからない。
 かつては、「ショッカー」の類似組織である「デストロン」によって、再び死神博士が蘇ったという話もあるが、そうした目論見を持つ者の仕業ではなかったようである。
 この頃、そのアジトには、ショッカーの一員とは思えない、奇妙な長髪の男が出入りしている。
 おそらくは、その男こそが、キャスターを呼び出した『マスター』なのだろう。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆





~~~~~「ショッカー」とは、世界制服を企む悪の秘密結社である!!~~~~~





◆ ◆ ◆ ◆ ◆1



 ――『マスター』の職業は、中学校の理科教師だった。

 教師とは思えない、ボサボサの長髪で、飲食禁止の校内でもいつも風船ガムを噛んでいる。生徒から贈られた仇名は、『風船ガム』であるが、そう呼ばれるのはこの普段の素行が故である。
 死んだ目をしていて、遅刻は当たり前の職務怠慢。授業なんかを真面目にやる気はない。
 酷い時は生徒を適当に遊ばせて一人で寝ているし、時たま熱心になったかと思えば、その時には生徒によくわからない「原子爆弾のつくりかた」などという物を黒板に書き写す。

 公立中学に勤務する教師とはいえ、クビにならない理由はわからない。
 一応は、これでもサボる事はなく、必ず、毎日学校には顔を出す人間だった。
 それだけが彼のクビを繋ぎとめていたとは思い難いが、もしかすると、間もなくクビになる「最終通告」くらいは告げられていたかもしれない。
 それでも彼は、全くといっていいほど、態度を変えなかった。

 そんな彼も、昔は熱血教師で、校長と教育方針の違いで怒鳴り合う事もあったらしい。
 それは生徒たちの間で交わされる噂に過ぎないが、事実、生徒たちは、彼が自分たちをテロリストの手から守るのを目にしている。
 女子生徒の間では、アイドル歌手のような外見と併せて、彼に本気で惚れているという声も珍しくない。

 彼の本名は、城戸誠というらしい。
 しかしながら、彼はその名前もどうでも良かった。
 自分の名前など、『赤胴鈴之助』でも、『山田太郎』でも、『ハマーン・スミス』でも――何でも良いと思っている。
 それこそ、『A MAN』でも――人間を識別するナンバー充分なのだというのが、彼の持論だ。

 名前――重要な事はそんな事ではない。そんな事ではないのだ。
 日常生活の中にある、鬱屈とした何かを取り払うのに――『自分が何をしたいか』という答えを出すのに、名前などいらない。
 問題は名前じゃない。
 そいつが何を抱えているか、何が“痛い”のか、何が“痛くない”のかだ。
 中身がどんな風に詰まっていて、その中身がどんな色で、自分でそれを覗いて、綺麗だと思えるのか、嘔吐するのかだ。


260 : 城戸誠&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/03/04(金) 21:38:46 nlND8OK20

「おう、順調順調。頑張ってるじゃないか」

 いつもながら、城戸は、自分が呼び出したキャスターの陣地に立ち入り、馴れ馴れしく、『戦闘員』たちの肩を叩く。
 ここ数日、彼はそんな事ばかりしていた。

 学校の授業が終わると、この『工房』――もとい、『アジト』に入り、戦闘員たちをからかう。
 呼びかけられた彼らは、戦闘員とは言っても、『科学班』に分類される白いマスクの戦闘員であり、むしろ専門は、この陣地でキャスターに代わって道具や『改造人間』を作成する事にあった。
 科学班の戦闘員は、純粋な戦闘能力で言えば、それこそ、ただの人間よりマシと言う程度である。
 戦闘員たちは、戸惑いつつも、この城戸という男には逆らう事が出来ず、ただ、無言でおどおどしているだけであった。
 力においても、立場においても、戦闘員たちは城戸には敵わない連中だ。

「……で、改造人間はどれくらい出来たんだ?」

「はっ! 既に何体かの改造人間が完成しております」

「よしよし、御苦労」

 城戸も、少しは「彼ら」こと、「ショッカー」に興味はあった。
 それこそ、彼はこんな連中が現れるのを望んでいたし、彼らの目的に賛同をしていなくとも、何故か彼らに協力したがる奇妙な愛着があった。
 科学という分野においては、一応、多少の興味がない事もないし、『聖杯戦争』のようなゲームには、むしろ進んで巻き込まれたがっていたのが城戸だ。
 変に正義感が強い『秩序』や『善』の属性を持つサーヴァントよりか、彼らのようなサーヴァントの顕現を望み、まさしく、その通りになった。
 キャスターの属性は、『混沌』と『悪』だった。
 はっきりとした線引きが出来た位置にあるサーヴァントを呼び出したわけだ。

 ……で、何をする?
 わざわざ魔術回路や式を習ってまで彼らを呼んで、それから何がしたいのか。
 それは、城戸にとって、自分でもよくわからない事だった。

 事実、聖杯を得たとしても、自分が何を成したいのかなど、彼自身が己に訊きたいほどにわからない。
 しかし、それでも彼は、聖杯を欲する執念だけは、おそらくここにいる誰よりも強い。

 ――それだけは本当なのだ。

 ここにいる、キャスターと呼ばれるサーヴァントを優勝させ、聖杯を得て……問題はそこから先だった。
 自分が何をしようとしているのかは、城戸本人にもわからないまま、ただ毎日が過ぎて行く。

「既に改造人間――ジャガーマンが、近頃この近辺をうろついていた怪しい男を一人殺しました。
 我々の秘密を探っていたようです。――イーッ!」

「……そうか。
 そいつはちょっと惜しいかもしれないな」

「…………は?」

「そいつは、他のやつらよりもうちょっと面白かったかもしれない。
 みんな死んでる。この街にいる奴、みんな死んでいるんだ」

「……」

「そいつは、生きている奴だったかもしれないんだ」

 ただ単純にスリルを得たいのか。自分を満足させたいのか。聖杯に興味があるのか。
 そんな感情はどれも当てはまるし、どれも当てはまらない。
 ただ、もう少し、意味のないところで――『聖杯』という器を欲した。
 そこまでして得たい物なのに、それを得たい理由は彼自身にもわからない――という事なのである。
 他者を犠牲に手にする事に意味があって、他者の願いを踏みにじっていく事にも意味があるのかもしれない。


261 : 城戸誠&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/03/04(金) 21:39:04 nlND8OK20
 その痛みが欲しいのかもしれない。

 それだけだった。
 以前から、そうだった。

 ――彼は、狂人の退屈しのぎにも見える執念だけで……ただそれだけで、原子力発電所からプルトニウムを盗み出したのである。

「……もういい。お前と話す事はないよ。
 さ、もう仕事に戻れ」

 城戸は、今でも、部屋に帰ると、時たま、サッカーボール大の原子爆弾を、足で弄ぶ。
 誤作動すれば、この都市は大爆発。火に包まれ、放射能で汚染され、ここに人が住む事は出来なくなってしまう。
 でもそれをサッカーボールにしている。

 城戸自身、近頃たまに嘔吐もするし、下痢もする。この長い髪も、一束になって抜け落ちる事が珍しくない。
 将来ハゲるとか、それ以前に、もう間もなくハゲるだろう。
 小型の原爆は、父親である城戸に向けて、死へのカウントダウンを刻一刻と告げている。

 ――死ぬかもしれない、と思う。
 死にたくはないが、死ぬかもしれない。
 いや、死ぬだろう。

 ――痛い、と感じる。
 痛いのは嫌だが、逆に痛くないのはもっと退屈で嫌だ。
 痛いのを怖がって何もしないよりは、ただ痛みを受ける為だけに動いていた方が良いのかもしれない。

「……いるか、キャスター」

 だが、やはり――。
 そうまでして、原子爆弾を得て、警察を脅して、何を成したいのかは、城戸もわからないままだった。

 聖杯戦争を始めたのも。
 サーヴァントを呼び出したのも。
 ショッカーの改造人間計画に乗り気なのも。

 理由は、今のところ、城戸自身さえも知らない。

『城戸誠か――』

 ふと。
 声と共に、城戸が来て、しばらくして、このアジト内のライトが薄暗くなった。
 チカチカとアジトの灯が点滅し、「彼」が来る気配がした。

 これは、「彼」が来る時には、いつも同じ事なので、城戸は全く動じないが、戦闘員たちが、少し慌てふためき始めた。
 やはり、直属の上司の鞭が怖いのであろうか。
 その点においては、城戸は絶対安心の立場にある。

 この声の主こそが、ショッカーの戦闘員たちを動かす動力源であり、まさしく、城戸の真の相棒とも呼べるサーヴァントだった。
 それ故、城戸が恐れる相手ではなかった。
 魔術師『キャスター』――死神博士である。
 ただ、いつも彼が見せるのは、本来の彼の姿ではなく、そこから分散した幽体のようでもあった。
 普段、瞬間移動をしているかのように彼はどこにでも現れるのだ。

『一体、我がショッカーのアジトに何の用だ……?』

 キャスターが発するのは、枯れたような老人の声だった。
 何かの病が喉を蝕んでいるのか、彼の言葉は常に喉の奥から密やかに、城戸に向けられる。

 ……この、キャスターというサーヴァントは、いつも暗闇を照らすようにして、青白い不気味な顔を映すのだった。
 薄い頭髪や、灌木のようにやせ細った長い体。皺だらけで生気のない肌。
 しかし、鼻は高く、日系の他、どこか西欧かどこかの血を交えたような筋が通っている。
 白色に固執したかのような上下の服と、裏地の赤い襟を立てた黒いマントは、彼の曲がった背中を隠していた。


262 : 城戸誠&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/03/04(金) 21:39:22 nlND8OK20
 さながら、何百年も生きた妖怪のようだった。
 しかし、彼の真名を一度、「死神博士」と聞いてしまうと、それ以外の呼び名は考えられなくなってしまうほど、その名は体を現していた。

「……キャスター」

 その底知れぬ不気味さは、城戸にとって、却って愛嬌さえも覚えるほどの物であった。
 彼の姿を見れば、多くの人は恐れおののき、ショッカー以外の人間が慣れる事など滅多にない。

 しかし、城戸はそれを目の当りにしても、平然とそこで風船ガムを噛み続けた。
 煙草の煙を吐き出すように、風船ガムを膨らませた。――そして、潰した。
 それから、また風船ガムを噛みながら、だらしのない瞳で、キャスターに答えた。

「――俺は、世界最高の秘密結社を持ってる。
 そして、世界で一番恐ろしい爆弾も持ってる。
 ショッカーと、何番目かの原子爆弾を……」

『それがどうした……?』

「そろそろ、こいつを使って、『何か』がしたいんだ」

 キャスターは、その言葉に些か疑問を抱いた。
 強い力を得た人間が、それを使いたがるのはやむを得ない話であるとしても、「何か」と言うのが気になった。
 彼は、その言葉に含みを持たせているわけでもなく、正真正銘、まだ「未定」の「何か」をしようとしている。

 たとえば、嫌いな人間を殺すとか、ショッカーに自らも加担するとか……そういう事をするつもりはないらしい。
 彼には理由や大義はないらしい。忠誠を誓う者もない無宗教で、教育者だが教育に熱心でもない。
 かつては熱心なフリをしていて、今はそれをする気力もない。
 ただ、この『聖杯戦争』で得た力と、『原子爆弾』を、意味もない『何か』に使おうとしているのである。
 その事は以前から知っていたが、始まりからこれだけ時間を経ても、まだ、その『何か』が芽生えてこないというのだろうか。

『――お前の目的は、まだわからないままだというのか……?』

「……」

『お前は何がしたい?』

 キャスターは、思わずそう問いたくなった。そして、それは口からこぼれていた。
 これだけ虚無に満ちた存在を見ていると、なんだか妙に腹立たしい気持ちにもなった。
 城戸誠、という男の実像は掴めない。
 しかし、だからこそ、どこか城戸に惹かれつつある自分が腹立たしく、そして、それを認めたくない気持ちになる。
 城戸は、口を開いた。

「――それをこれから考える。
 とりあえず、今はあんたらは好き勝手してればいい」

『我々が、世界征服を成功させても良いのか……!!』

「その方がいいかもしれない。
 世界なんて、その方が……。でも……」

 城戸は、少しだけ躊躇して考え込んだ。
 はっきりとした回答や意見というのは彼には今、別段芽生えていなかった。
 だから、逆に、キャスターの方に訊く事にしたのだろう。

「それに、あんたは、世界征服をして……だから、何をする?
 じゃあ、お前は、一体、何がしたいというんだ?」

『……』

 キャスターは押し黙った。
 彼が何を成したかったのか――それは、回答しなかったのではなく、回答できなかったに違いない。
 彼らショッカーの人間は、須らく改造されており、首領に絶対の忠誠を誓う。


263 : 城戸誠&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/03/04(金) 21:39:41 nlND8OK20
 それ故、自分らしい「自分」などという物は持たなかった。
 ただ、理由のない大義だけが彼らを突き動かしているだけなのだ。

「なんだ、わかんねえのか。わかんねえなら余計な事言うんじゃないよ」

 すると、城戸は不機嫌そうながら、完全に開き直った。
 結局のところ、キャスターが世界征服をする意味なんて知っても仕方が無かった。
 何をすればいいのか、さっぱりわからないまま、ただ暴れている……そんな人間は自分だけではない。
 一瞬なりとも、キャスターを屈服できた事が気持ち良かった。

 だからか、彼は、味を占めて、大きな声を張り上げて『アジト』に轟かせた。

「おい、あんたら。作業やめろ。
 俺が、俺が……このキャスター――『死神博士』のマスターだぁ!
 ほら、見せてみろ! ほら、敬礼しながら、いつもの合図を――!」

「イーッ!!!!」

 作業を中断して、嫌々敬礼する彼ら戦闘員の声を、城戸は気持ちよさそうな笑顔で聞いていた。
 ただ、意味もなく彼らの邪魔をする。
 聖杯戦争もそういう物だったのかもしれない。

「おいどうした? 声が小さいぞ!」

「「「「「「「「 イーッ!!!!!!!!! 」」」」」」」」

 それは、大勢の人間の意識を巻き込んで、こんな奴らに気を遣わずに――彼らの意思を自分の物に出来る征服感による物だった。
 それは楽しかった。
 世界征服も別に悪くはない願いかもしれない。……が、面白い願いではなさそうだった。

『――奇妙な男だ、城戸誠……』

 キャスターは、城戸という男の空虚さを見守っていた。
 確かに彼も人間に過ぎない。しかし、何かが狂っている。

 彼は、自分の内側を知らない人間のようだった。
 だから、空っぽに見える体に何かを埋める為に、他者と違う事をやって、そこに色をつけようとしているのだ。
 少なくとも、キャスターはそう思った。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 夜。――外はすっかり暗くなっていた。
 城戸は自分の住まうアパートに戻っていた。
 ショッカーの連中は、まだ作業を続けているのだろうか。

「……空を超えてー、ラララ星の彼方ー、……ゆくぞー……アトムー……」

 城戸は、『鉄腕アトム』の歌を歌い、原子爆弾を足で転がしながら、インターネットをしていた。
 風呂上りで、パンツ一丁の姿のまま、画面をスクロールさせている。
 ちなみに、今見ていたのは、城戸がたまたま見つけた、掲示板内のスレッドである。

『――何でも一つだけ願いが叶うとしたら何がしたい?――』

 そういうタイトルのスレッドを彼は探していた。
 つまらない雑談が書かれた掲示板は、いくらでもあった。
 それを全部片っ端から開いて、面白そうな書き込みを探していた。

 本当はラジオで呼びかけて、面白い願いを募ろうとしたが、インターネットは便利だった。
 呼びかけるわけでもなく、いくらかの欲望が見られる。
 誰かが既に呼びかけているのだから、適当に検索してそれを見ればいい。
 インターネットでは、だいたいこんな趣旨の事が訊かれ、いくつかの回答が出てきていた。


264 : 城戸誠&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/03/04(金) 21:40:33 nlND8OK20

 一生遊べる金。
 とびきり美人の女。
 地方局でのアニメの放送。
 死んだ友達の命。

「……」

 ……なるほど。
 目を引くのは、そんなつまらない願いばかり。
 しかし、城戸が欲しいのはそんな物じゃない。
 もっと、つまらない欲を持ってる奴がいたら、その方が面白い気がした。

「――夕方六時。Fテレビで、アダルトビデオを十分間、地上波放送。
 カラミあり。女優は×××を希望。男優は指定なし」

 地上波でAVを放送――こんな大喜利のような回答。
 ……これがふと、目を引き、もう少し肉付けして口に出してみた。

 多少、しっくり来た。
 だが、やはり違う。

「――とんねるずとダウンタウンを共演させる生番組を一時間。
 他の出演者は一切なし。とんねるずとダウンタウンだけに一時間語らせる」

「――東京ディズニーランド。
 ミッキーに着ぐるみを脱いでもらうパフォーマンス」

「――18歳未満の女の子のヌードを解禁してほしい。
 オール・ロリータの風俗店の合法化……」





「はぁぁぁぁぁぁぁぁああああーーー…………。
 ……………………駄目だなこりゃ」



「……おい、お前は何がしたいんだ?」 

 こうしたつまらない願いの中から、適当に選んで聖杯に叶えさせようと思ったが、どうやらろくでもない物ばかりらしい。
 まあ、結局のところ、ラジオで募っても同じ結果に終わるだろう。





 ――――さて。
 ――――それじゃあ、何をしようか。




 手元の原子爆弾に訊いてみた。
 原子爆弾の表面は、銀色に光っていて、そこに薄らと、歪な城戸自身を映していた。






「ほら、黙って勿体付けてないで言ってみろよ。
 一体、何がしたいんだ? お前は――――?」






----


265 : 城戸誠&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/03/04(金) 21:40:57 nlND8OK20

【CLASS】

キャスター

【真名】

死神博士@仮面ライダー

【パラメーター】

 筋力E+ 耐久E+ 敏捷E 魔力A 幸運C 宝具B

【属性】

混沌・悪 

【クラススキル】

陣地作成:B
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げるスキル。
 死神博士は、『工房』の代わりに、地下・洞窟・空きビル等に『アジト』を作り出す事が出来る。
 これによって、魔力と科学を駆使した道具は勿論、『改造人間』さえも作り出す。

道具作成:A
 魔力を帯びた器具を作成する為のスキル。
 死神博士は、魔力と科学力を併せ持ち、道具だけでなく、『改造人間』を作り上げる。

【保有スキル】

秘密結社:B
 実質的には、アサシンのクラスが持っている「気配遮断」のスキルと同様。
 完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。

外科手術:D
 マスター及び自己の治療が可能。

改造人間:-
 自身の肉体を科学と魔術により再構成し、人知を超えた怪物へと変化するスキル。
 これはキャスターとして現世に顕現した際に失われている。

【宝具】

『世界征服を企む悪の秘密結社(ショッカー)』
ランク:B 種別:対界宝具 レンジ:1~全世界 最大捕捉:1~全人類

 彼が大幹部として多くを従える大軍団、秘密結社ショッカーという組織力そのもの。
 そして、この宝具はキャスターが召喚されてから、キャスターの消滅の瞬間まで常時発動している。
 キャスターが場に存在する限り、聖杯戦争のフィールドには常人の数倍の戦闘力を持つ『戦闘員』たちが蟻の群れのように湧いている。
 この戦闘員たちは、『偵察を行う者』、『陣地を守る者』、『キャスターに代わり他のサーヴァントとの戦闘を行う者』、『キャスターに代わり道具作成を行う者』など数々の班に分かれ、キャスターの命令を最優先した上で、キャスターに利を成す行動を考えながら自立する。
 いわば、この戦闘員たちこそが使い魔に近い存在となっている(ただし、戦闘員は基本的に魔力を持たない)。
 また、戦闘員は意識的に『改造人間』たる素質を持つNPCやマスターを識別した後、誘拐・拉致した上で、『アジト』内で改造し、戦闘員よりも強力な戦闘力や特殊能力を持つ『改造人間』『怪人』に変える事が出来る。
 改造されたNPCやマスターは、作成の最終工程で洗脳を受け、キャスターの宝具の影響下で忠実な僕となっていく。
 ただし、これは短期で作った改造人間ほど実力に乏しく、サーヴァントと渡り合える改造人間を作るには、最低一日以上の時間をかける必要があるだろう(並行して何体もの改造人間を作成する事自体は可能である)。
 これらの効果により、NPCを巻き込んで、徐々に大軍団を築き上げ、聖杯戦争の場に悪の秘密結社ショッカーを再現するのが、キャスターの絶対の宝具である。

 ※宝具に反映されているデータは、秘密結社ショッカーの改造人間データである為、第79話の「ガラガランダ」までは作成可能。
  ただし、死神博士の「大幹部」のポストよりレベルが高い「首領」を作成する事は出来ない。


266 : 城戸誠&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/03/04(金) 21:41:15 nlND8OK20

『暗黒を吐き出す白貌の悪魔(イカデビル)』
ランク:- 種別:対己宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

 戦闘特化のクラスで呼ばれた際ならば使用できた筈の宝具。
 死神博士が『改造人間』のスキルで変身する筈だった姿であるが、。その全貌は謎に包まれており、死神博士をよく知る軍団内部すらも、この宝具が如何なる物であるのか知る者は少ない。
 軍団そのものが秘密裏に存在していたものであるが故に、記録上にもなく、彼を知る者の殆どは命を繋ぎとめる事が出来なかったという話すらもある。
 この宝具を以後に解禁するには、『世界征服を企む悪の秘密結社(ショッカー)』の力で再度、キャスター自身が最低1日をかけて改造手術を受ける必要があるだろう。

【weapon】

『改造・鞭』
『改造・鎌』

【人物背景】

 悪の秘密結社ショッカーの大幹部の一人。
 当初はスイス支部にて活動していたが、後に日本支部の二代目大幹部としてショッカーを指揮したとされる。
 彼は卓越した科学力を持つ博士であり、同時にオカルトの魔術にも精通している、まさに現代の魔術師と呼べる男であった。
 また、自らの身体を改造済であり、その真の姿は烏賊を模した改造人間・イカデビルという名を持つ。
 しかして、イカデビルは、反ショッカー思想の"仮面ライダー"なる男に殺害され、既にこの世に存在しない存在であり、その死後に英霊になったものと思われる。
 後に、ショッカーの後続組織による、改造人間の再生技術で再生したとされるが、その際にも、反ショッカー的思想を持っているらしい。

 尚、本名は、イワン・タワノビッチであり、日本人とロシア人のハーフとされる記録が存在する。
 ナターシャという妹の蘇生の為に狂気に身を投じたとされるが、その真偽も定かではない。
 人間だった際の事など、既に死神博士は忘れているのかもしれない。

 これらのデータはFBIが秘密裏に持つデータ上の話であり、こんな人物・及び組織も実在したか否かは現代でも真偽が問われる物である。
 しかし、この現代も、彼の所属した秘密結社の名前を調査する者は、いずれも早々にその調査を切り上げるか、調査の数日後に行方不明になっているらしい。

【サーヴァントとしての願い】

 ショッカー軍団の再興。
 それにより、再度の世界征服を決行する。

【基本戦術、方針、運用法】

 キャスターは、現在までに百人規模の戦闘員と、これらを従わせる数名の改造人間を作り出している。
 これらの戦闘員、改造人間は英霊としての気配は持たないので、上手に使えば他のサーヴァントを探し、攻撃する偵察要員として使う事が出来る。
 今のキャスターは戦闘能力に乏しく、生前に扱う事が出来た変身能力すらも無い為、まともに他のサーヴァントを相手にしていく時には、『改造人間』をひたすら作り続けるしかないだろう。
 もし、キャスター自身に戦闘能力を付与したいのであれば、早々にキャスターを再改造し、『闇を吐き出す白貌の悪魔(イカデビル)』を再現するという手もある。
 また、マスターを改造する事自体もできなくはないので、キャスターと意見が対立してきた場合は、改造手術をされてしまう可能性も否めない。マスターはそれに気を付けるべし。


267 : 城戸誠&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/03/04(金) 21:41:29 nlND8OK20





【マスター】

城戸誠@太陽を盗んだ男

【マスターとしての願い】

 わからん。

【weapon】

『原子爆弾』

【能力・技能】

 理科教諭。個人で原子爆弾を製作する科学力と技術力を持つ。
 材料は東海原発に潜入した。警備員を倒して手に入れており、行動力や戦闘力もかなりの物。
 また、カーチェイスが出来るほどのドライビングの腕で、大抵の事は人並以上にこなしてしまう。
 女装したり、変装したり。人を傷つける事も厭わない。
 もしかしたら自分が死んじまうかもしれないような事も平然とやる。
 ちょっとは命がやべえと思う事はある。
 でも、本気の本気で命がヤバい時は、絶叫して怖がるかもしれない。

【人物背景】

 普段はやる気ゼロの中学の理科の先生。その実態は、原子爆弾を持つ男。
 当時は、原爆保有国が八つだった為、彼はその九番目として、“9番”と名乗り、東京全土の人間を人質に警察を脅迫する。

 手始めに、とりあえず、「プロ野球のナイターを最後まで放送してほしい」と言った。
 日本中のテレビが、プロ野球のナイターを最後まで放送した。
 ただ、たった一個の球っころで、日本中が思い通りになるんだという事がわかった。
 だが、考えてみると彼にはそうまでしてやりたい事というのは別にない。
 試しに五億円を要求してみた。
 しかし、別に金が欲しいわけでもないので、屋上からバラまかせた。
 最後に彼は、「ローリングストーンズの日本公演」を要求した。
 それも別にローリングストーンズが好きだからではなかった。

【方針】

 ショッカーに協力する。目的はない。
 ただ、そのうち、ショッカーと原子爆弾を使って警察なり政府なり他のマスターなりを脅して、適当に何かさせようと思っている。
 そして、『聖杯』は、たとえ何を犠牲にしてでも欲しい。その対価が他者の命でも自分の命でも構わない。
 しかし、聖杯に願いたい願いは今探している。そのうち、募集してもいいかもしれない。
 ローリングストーンズの日本公演くらい面白い物があったら、まあそれでいいと思う。


268 : ◆CKro7V0jEc :2016/03/04(金) 21:41:47 nlND8OK20
投下終了です。


269 : ◆GYmTduRRPQ :2016/03/04(金) 22:37:52 i470jwo60
投下します


270 : 鷹野三四@ランサー ◆GYmTduRRPQ :2016/03/04(金) 22:40:09 i470jwo60
大きな城のリトルジョン
元気な男の子と遊んでる
チョキチョキ頭を刻んだら
中から出てきた赤い水

大きな城のリトルジョン
かわいい女の子と遊んでる
チョキチョキ瞳を刻んだら
中から出てきた白い水

大きな城のリトルジョン
小さな坊やと遊んでる
チョキチョキお腹を刻んだら
中から出てきた赤い紐

大きな城のリトルジョン

大きな城のリトルジョン

大きな城のリトルジョン


271 : 鷹野三四@ランサー ◆GYmTduRRPQ :2016/03/04(金) 22:40:58 i470jwo60

「マスター、何度も言ってるでしょ? 生活習慣をきちんとしないとダメだって」

「分かってるよ」

俺が聖杯戦争に参加してしばらく経った。今のところ他の主従と遭遇はしていない。
少し口うるさいサーヴァントがつくようになったこと以外はいつもの日常となんら変わらないように思える。

「だから風邪を引くのよ。ほら、ポカリスエット飲んで。おかゆも作ったから」

「ああ、悪い」

最初記憶を取り戻し、セイバーが現れたときは正直外れを引いたかもしれないと思っていた。
しかし今ではそんなことを思った自分を殴ってやりたい気持ちだ。
確かに少しうるさいところもあるけど、かけがえのないパートナーだと言える。
ブロンドの髪に黒い目。妹ができたような、不思議な気分だった。

「それ食べたらお医者さんに行きましょう。早く治さないと」

「大丈夫だよ……寝てればなんとかなるさ」

「ダメよ。今は戦いの真っ最中なんだから。今襲われたらひとたまりもないわ」

「分かったよ……」

大人しくセイバーの言うことを聞いて近くの病院に行き薬をもらうことにした。
鷹野クリニックという名のその病院はそんなに大きくはないものの、腕もよく、院長も美人だと評判らしい。

「私も行くわ」

「ああ、悪い」

傍から見れば兄妹かカップルにしか見えないだろう。襲われることもなく、15分ほど歩いてクリニックについた。
病院ではしばらく待たねばならなかったので、セイバーと話すことにした。

「なあ、セイバーの願いってなんだ?」

「そうね、大切な人を守ることかな……」

「家族か誰かなのか?」

「いや、そういうのじゃないけど……マスターは?」

「俺? 俺は、そうだな……生きて脱出できればいいかな……」

「そうなの。じゃあ……」

そこで名前が呼ばれた。

「あ、悪い。行ってくる」

「もう、マスターったら!」


272 : 鷹野三四@ランサー ◆GYmTduRRPQ :2016/03/04(金) 22:41:31 i470jwo60
診察室に入ると金髪の美しい女医が座っているのが目に入った。
問診や触診を終えると、鷹野先生は色々と俺に尋ねてきた。

「あなたって、この近くに住んでるの?」

「あ、はい。近くのマンションに」

「一人暮らし?」

「いやあ、一応同居人がいるといえばいるんですが……それがどうかしたんですか?」

「私も子供がいるから、あなたみたいな若い子のことが気になってね」

そのとき部屋の奥の扉が開き、金髪の少年が入って来た。そして俺と鷹野先生に交互に目を合わせる。
肌は雪のように白く、目は海のように青い。人形のようだという陳腐な比喩がぴったりと当てはまる。

「こら、入ってきちゃだめじゃない」

「ごめんなさい、ママ」

そう言って少年は扉を閉めた。

「今の子がもしかしてお子さんなんですか?」

「ええ。エドワードっていうの。彼、親友の子供だったんだけど、両親が亡くなってしまってね。身寄りもないから私が引き取ることにしたの」

「外国人だったんですか?」

「そう。ノルウェー人でね。私がイギリスに留学していたとき出会ったの」

そう語る鷹野先生はどこか寂しそうだった。

「ごめんなさい、長々と話をしてしまって。診たところ風邪だから、薬を出しておくわね。待合室にいる彼女に心配かけては駄目よ」

「いや……あいつはそんなんじゃ……」

否定しつつも少し顔が赤くなっている気がした。

薬を受け取り、家に帰る。セイバーが作ってくれたうどんを食べて薬を飲み、早めに寝ることにした。

「ねえ、マスター、さっきの話だけど……ってもう寝てる。まったく。あなたらしいんだから」


273 : 鷹野三四@ランサー ◆GYmTduRRPQ :2016/03/04(金) 22:42:32 i470jwo60
3日経っても風邪は治らなかった。それどころか、余計に悪化しているように思えた。

「マスター、大丈夫?」

「ううん……あんまり大丈夫じゃないな……」

「もう一度、お医者さんに行きましょう」

「そうだな……」

「歩ける? 無理だったら救急車でも呼ぶわ」

「いや、大丈夫。病院には行けると思う」

セイバーに支えられながら、なんとか鷹野クリニックに辿り着く。幸い待っている人は誰もいなかった。
すぐに名前が呼ばれる。やはり鷹野先生が担当だ。

「ううん、あなたぐらいの年齢だったらすぐに治るはずなんだけどね。ちゃんと食事と水分はとってる?」

「はい。セイ……彼女が作ってくれてるんで」

「診たところ少し脱水気味みたい。少し点滴を打った方がいいわ」

「そうですか……それならお願いします」

少し大げさな気もしたが、プロの言うことを聞くに越したことはないだろう。

「それじゃあ横になって。腕を出してくれるかしら?」

ベッドに横になり、袖をまくる。

「少しチクッてするわ」

手首に軽い痛みを感じた。そのとき俺は鷹野先生が笑みを浮かべるのを見た。
そして俺の意識は暗闇の中に落ちていった。


274 : 鷹野三四@ランサー ◆GYmTduRRPQ :2016/03/04(金) 22:43:15 i470jwo60
目が覚めると俺は手足を縛られているのに気付いた。といっても、目隠しをされているのではっきりとは分からない。

「お、おい! ここはどこだ!」

「あら、もう目が覚めたのね」

鷹野先生の声だった。

「一体どういうつもりだ!」

「あなた、聖杯戦争の参加者でしょう? こうなることを予想していなかったのかしら?」

顔がさっと青くなるのが分かった。

「まったく、のこのことやって来てくれるなんて本当にまぬけね。挙げ句の果てには麻酔まで疑いもせずに打たせてくれるんだから」

「どうして……」

「サーヴァントが実体化してたら自分たちが参加者ですって言っているようなものじゃない。エドワードくんが知らせてくれてね。それで偽薬を処方させたのよ。笑いをこらえるのに必死だったわ」

「どうするつもりだ。セイバーは無事なのか?」

「彼女は生きてるわよ。……こうやって喋ってあげてるんだから自分がどうなるかぐらい想像がつかないの?」

俺は死ぬのか? こんなところで? 嫌だ、死にたくない。

「ねえ、あなたも幸せに死んでみたくないかしら? 何度でも何度でも殺される幸福をあなたも味わえるのよ」

鷹野の笑い声が聞こえた。

「ふ、ふざけるな! 誰がそんな……!」

「あら、残念ねえ」

そう言うと鷹野はガムテープを俺の口に巻き付けた。

「じゃあ、お楽しみといこうかしら」

俺の目隠しを外す。

セイバーが全裸の状態で腕を上に上げて吊るされていた。

「マスター、ごめんなさい……」

「彼女、あなただけは守りたかったみたいでね」

鷹野はとても楽しそうだった。

「それじゃ、始めましょうか」


275 : 鷹野三四@ランサー ◆GYmTduRRPQ :2016/03/04(金) 22:44:59 i470jwo60

シャキン、という冷たい金属音が響いた。首筋に氷の塊をあてられたような感覚が全身を襲った。
セイバーは目を見開き、口を半開きにしたままガクガクと震えている。
頭の中に鉄と鉄とがこすれる音が響き、錆のむせるような匂いが鼻を突いた。
そして俺の後ろから片足を引きずる小男が現れた。手には冗談かと思うほどに巨大なハサミが握られている。

「日本において『神』というものは恐れられる存在だったの。しかし『神』は奉ることで利益も与えてくれる。場所は違えど世界各地でそういった信仰が見られる。分かるかしら?
くすくす。想像というのは絶えず恐怖を掻き立てる。だけれども現実というのは想像を遥かに超える。あなたのおつむではせいぜい彼女の首を切り落とすぐらいしか」

鷹野は俺の診察をしたときと変わらない表情で、いや、少し笑みを浮かべつつ語っていた。

シャキン

「私はかつて神を呪ったわ。しかし『偉大なる父』は私に不死を与えてくださった。死という甘い幸福と共にね。私は聖杯を得て神にならなければならないのよ。
そのためにはくだらないプライドなんていくらでも捨てられるわ。靴を舐めろと言われたってやってみせる」

シャキン

「恐怖というものは一定以上の生物の原始的な感情なの。先史時代には自然現象への恐れが神を作り出した。アブラハムの宗教でも崇拝者は神への恐れを抱くことが求められる」

シャキン

「もう分かるわよね?」


小男はハサミを器用に扱ってセイバーの右腕をゆっくりと、丁寧に削いでいった。
白い肌が流れ落ちる鮮血で赤く染められていく。
俺はその光景を直視することができなかった。目を閉じると指に鋭い痛みが走った。

「駄目じゃない、せっかくパートナーが我慢しているんだから、ちゃんと見て上げなくちゃ」

たまらず目を開けてしまう。鷹野はナイフを俺の親指と爪の間に突き刺していた。
最初セイバーは必死に耐えていたのだが、途中からは悲鳴を上げ出した。
悲鳴はものすごく、普段のセイバーからは想像することもできないほどだった。
皮膚のほとんどが削ぎ落とされ、骨が露出すると小男は左腕に移ってまた肉を削いでいった。
左腕が終わると両方の脚に移り、太腿や臑を削いでいく。
無機質な金属音に獣じみた悲鳴が覆い被さる。
手足の肉がすっかり削ぎ落とされると今度は両方の乳房を切り落とした。
その後ハサミをセイバーの腹に突き刺し、開閉して傷口をこじ開けた。
引き抜いたハサミをまた何度か開閉し、絡み付いた内臓を裁断した。
首から下は真っ赤な血まみれの肉塊のようになっていた。
セイバーは失神して、意識を取り戻し、再び失神して意識を取り戻し悲鳴を上げ始めた。
ずっと悲鳴を上げ続けていたのだが、次第にその声は小さくなり、ついには消えてしまった。

俺は自分が何を叫んでいるのか分からなかった。

叫び声は突然途切れ、俺の目には天井が映った。そして視界が暗闇にかき消される前に最後に見たのは、俺自身の体だった。


276 : 鷹野三四@ランサー ◆GYmTduRRPQ :2016/03/04(金) 22:46:14 i470jwo60
【マスター】
鷹野三四@ひぐらしのなく頃に

【マスターとしての願い】
祖父、高野一二三の研究成果を認めさせることで自分が一二三と共に「神」となること。


【weapon】
特になし


【能力・技能】

医師免許
日本最高の大学を主席で卒業するほどの秀才であり、優秀な医師である。

擬似的な不死の魂
「偉大なる父」を崇拝しサーヴァントに殺されることで、彼女は老いることも死ぬこともない、人の恐怖を糧にする存在となった。

【人物背景】
本名、田無三四子。事故で両親を失ったことで引き取られた孤児院の劣悪な環境から脱走し、父の恩師で雛見沢症候群の第一人者、
高野一二三に連絡し助けを求める。しかし職員に捕まり凄惨な虐待を受ける。
その後孤児院にやって来た一二三に引き取られることとなる。やがて一二三の研究を手伝う様になり、彼が成果を認められることなく死んだ後、研究を引き継ぐ。
その際身内が引き継ぐというマイナスイメージを持たせないため「鷹野三四」と名乗るようになる。
一二三から教えられた、研究者は研究成果が後世に残り続けることで永遠に生き続けるという死生観を歪んだ形で受け継いでいる。
そして雛見沢症候群の女王感染者を殺害することで雛見沢村の住民を滅菌作戦で全滅させ、
一二三の発表した女王感染者死亡による雛見沢症候群感染者暴徒化の仮説や雛見沢症候群の研究そのものをあざ笑った者たちを
踊らせることで自分と一二三を「神」とすることを目的とする。祭囃し編を除く本編では綿流し編と目明し編以外でこの目論みを達成している。
そのため計画が破綻したこの二編は鷹野にとっては一二三の業績を全て否定される最悪のシナリオであろう。
そしてこの最悪のシナリオを辿った場合の鷹野が本聖杯戦争での彼女である。
元々は自らの運命を神に委ねることなどせず、強固な意志の力で運命を紡いでいくという考えの持ち主であったが、
サーヴァントである「偉大なる父の息子」と出会ったことで「偉大なる父」を崇拝し、自らの命を捧げた。
しかし本当は聖杯を用いて一二三や自分を「神」の位置に置きたいと考えており、自らの命とプライドもそのための手段でしかなかったのだといえる。
女王感染者の母親を麻酔無しで笑いながら開頭するなど性格は残忍である。

【ロール】
クリニックの院長

【方針】
聖杯狙い。他者を殺害することに躊躇いはない。


277 : 鷹野三四@ランサー ◆GYmTduRRPQ :2016/03/04(金) 22:47:23 i470jwo60

【CLASS】
ランサー

【真名】
ダン・バロウズ@クロックタワー2

【属性】
悪・混沌

【パラメーター】
筋力:C 耐久:EX 敏捷:E 魔力:C 幸運:C 宝具:A

【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】

魔術:C
強力な念動力や透視能力などを持つ。

魔力秘匿:B
サーヴァントとしての活動によって生じる魔力を隠すことができる。
これにより実体化中でも一般人程度の魔力しか感知されず、魔力の痕跡を残すこともない。
しかし後述の宝具『大きな城のリトルジョン』を発動中はこのスキルが無効となる。

正体秘匿:B
サーヴァントとしての素性を秘匿するスキル。
契約者以外のマスターからステータスとスキルを視認できなくする。
魔力秘匿と合わせれば非戦闘時にはNPCとほとんど見分けがつかなくなる。
ただしランサーの真名を知った者と『大きな城のリトルジョン』が発動していない状態で『邪神の使い』を発動させたのを目撃した者には効果がない。

邪神の使い:EX
神に近い存在であるランサーはたとえ頭に銃弾をいくら撃ち込まれようとも首を刎ねられようとも火で焼き尽くされようとも一時的に動きを止めるか逃げ出すだけで死ぬことはない。
ただしマスター不在や魔力不足による消滅は免れ得ない。

カリスマ(偽):B
「偉大なる父」の威光を受け継いでいるが、その支配の根本にあるものは恐怖である。

【宝具】

『大きな城のリトルジョン(リトルジョン・フロム・ザ・キャッスル)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:-  最大捕捉:-
バロウズ城の怪物をモチーフに周辺地域で歌われた童歌からくる宝具。ランサーを神出鬼没の謎の殺人鬼たらしめている宝具である。
この宝具が発動している間、ランサーは通常の少年の姿から本来のハサミを持った殺人鬼の姿へと戻ることができる。
この姿では敏捷性は著しく落ちるが、追跡する相手の先回りをすることができる。
構造上先回りができないような建造物の中でも瞬間移動に近い形で先回りができ、扉の向こうやロッカーなどの中、物陰に隠れることも可能。


『偉大なる父の息子(シザーマン)』
ランク:A  種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
バロウズ家が代々崇拝してきた「偉大なる父」と呼ばれる邪神とその使いである「偉大なる父の息子」の伝説からくる宝具。
「偉大なる父」は人々に死を与えると共に崇拝する者には魂の不死を与え、その息子と呼ばれる存在は崇拝者に死と恐怖をもたらすとされる。
また「偉大なる父の息子」に肉体を滅ぼされることで崇拝者は魂の不死を得て、人々の恐怖を糧に永遠の時を生きると言われる。
NPCを含めた魂を持つ者が「偉大なる父」に崇拝の意を示した状態でランサーに殺害されることにより、擬似的な魂の不死を得ることができる。
魂の不死を維持するためには恐怖の感情を要するので、これを得た者は「偉大なる父」への信仰を抱くと共に、魂を持つ者を恐怖を味わわせて殺害し続けなければならない。
残虐な方法で殺害するなど相手の恐怖心を煽ることで不死の効果は増大する。
ただしあくまで恐怖の感情を魔力に変換して生きているようなものなので、ひたすら殺し続けて魔力をすり減らすことで消滅させることは可能。



【weapon】
ハサミ
ランサーの通称である「シザーマン」の由来ともなった武器。
子供の背丈ほどもある鋭利で巨大なハサミであり、人間を易々と串刺しにし、首をいとも容易く刎ねることができる。
何もない空間から出現させることが可能。


278 : 鷹野三四@ランサー ◆GYmTduRRPQ :2016/03/04(金) 22:47:44 i470jwo60
【人物背景】
ノルウェー全土に一大センセーションを巻き起こした、バロウズ家が所有する時計塔屋敷での猟奇殺人事件である「クロックタワー事件」から1年後、オスロに現れた殺人鬼。通称”シザーマン”。
醜く小柄でありびっこを引いているが、巨大なハサミを楽々と操り次々に殺人を実行していく。
正体は、不死を願うがあまりに邪教崇拝と数々の虐殺を犯し、領民たちから「人喰いバロウズ」と恐れられた初代バロウズ家当主「セオドール・バロウズ」の末裔であり、
セオドール以降の代で時折生まれ落ちる「偉大なる父の息子」である。年齢は10歳。
「偉大なる父の息子」として生を受けた子供は取り上げた医師の腕を食いちぎるほどの凶暴性を持ち、強力な超能力と不老不死という特性を備えた肉体を授けられる。
「クロックタワー事件」の生存者を装い救助され、その後は「エドワード」と名乗っていた。
エドワードのときは見る者に恐れを感じさせるほどの雪肌をもつ金髪碧眼の美少年の姿をしている。
性格は極めて残忍である上に高い狡猾性をもち、超能力を用いることで多数のパソコンの画面に脅迫文を映す、シャンデリアを落として圧死させる、
犬を操り飼い主を殺害する、殺害した人間の死体を細切れにして文字を形成するなど様々な方法で対象に恐怖を与える。
加えて人心掌握にも長けており、コンプレックスを抱く人間や自らに興味を持つ人間につけ込み、”偽のシザーマン”を演じさせて殺人を行わせた。

【サーヴァントとしての願い】
「偉大なる父」に反逆した13代目バロウズ家当主「クェンティン・バロウズ」が残した、自らへの唯一の対抗手段である「次元の扉」と「魔像」の破壊。

【基本戦術、方針、運用法】
まず大切なのは自らの正体が露見しないようにすることである。
またいくら不死身だとはいえ集団を相手にすると苦しいし、相手が単独であっても敏捷性の低さから逃げられやすい。
相手が少人数でいて油断しているところを追いつめるのが良い。
持ち前の人心掌握術を用い心につけ込んで相手を味方につけたり『偉大なる父の息子』を発動させることで軍団を作るのも良いが、自らの正体の露見と隣り合わせなので十分な注意が必要。
マスターの元には先の短いNPCもやってくるので不死で釣ることも可能かもしれない。


279 : ◆GYmTduRRPQ :2016/03/04(金) 22:48:34 i470jwo60
投下を終了します


280 : ◆NIKUcB1AGw :2016/03/04(金) 23:12:15 g0ROhrnk0
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます


281 : 織田信長&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2016/03/04(金) 23:13:23 g0ROhrnk0
私はセラス・ヴィクトリア。いちおう、英霊の端くれです。
今回、アーチャーのサーヴァントとして聖杯戦争に召喚されました。
そして、私が今回仕えることになったのが……。

「いやあ、すげえなこのインターネットってのは!
 時間さえあれば、世界中の情報がいくらでも見られるとは!
 未来の技術、本当にすげえわ!
 さすが俺の時代から500年後……いや、600年後だったっけ?
 西洋の暦だとよくわからんな!」

えらいハイテンションでパソコンをいじってる、眼帯でひげ面のおじさんです。
名前は織田信長。
私はイギリス人なのでよく知りませんが、日本の歴史を語る上では絶対に外せない有名人らしいです。
たしかどこかの平行世界で行われた聖杯戦争では、アーチャーとして召喚されたとか……。
つまりは、紛れもない英霊なのです。
いや、生きてる状態でこの世界に連れて来られてるので、今の時点では「死後英霊になるであろう人物」なのですが。
とにかく、何らかの優れた能力を持っている人なのでしょう。まだよくわかんないけど。
まあ風格というかそういうものは感じます。感じるんですけどね……。

「おい、オッパーチャー」
「やめてください、そのセクハラ全開の呼び方」

このように隙あらばセクハラしてくるので、敬意とかそういうものがまったく湧いてきません。

「で、なんですか?」
「この時代の兵器ってすげえのいっぱいあるみたいだけど、なんとか手に入らんか?」
「いやあ、この国の法律では、個人でそういうのを入手するのは許されないと思いますよ。
 そもそも東京の外とは隔絶されてるみたいですから、外部から持ってこられないでしょうし」
「むう、そうか。じゃあ東京の中で、こういうのを持ってる組織はあるのか?」
「そりゃ自衛隊なら、ある程度装備は揃ってると思いますが……」
「よし、そこから持ち出してこようぜ」
「やめてください!」

思わず汗が噴き出す。無茶苦茶言うなあ、この人は……。

「思いっきり窃盗じゃないですか、それ。
 信長様にもこの世界での社会的地位があるんですから、反社会的行為は慎んでください」
「なーにを甘いこと言っておるか」
「え?」
「賞品は万能の願望機だぜ? なりふり構わず取りに来る連中が、山ほどいるだろうよ。
 お行儀よく戦ってる場合じゃねえだろう。
 ましてや俺たちは、この世界に紛れ込んだ異物だ。
 この世界のルールを守る義理がどこにある」
「う……」

まずい、押されてきた。

「でもやっぱり、そういうのは良心の呵責が……」
「甘っちょろいのう、本当に。物の怪の類だろうが、お前。
 人間みたいなこと言ってるなよ」
「物の怪……ああ、モンスターってことですか。
 たしかに私は吸血鬼ですけど、元々は人間です。
 変わってしまった部分もありますけど、人間としての心が全部なくなったわけじゃありませんよ」
「ふーん……」

それから少しの間、沈黙。えーと、なんか怒ってます?
それとも、気になることでも?

「じゃあいいや。それなら、お前の銃使わせてくれ。
 えーと、おっぱい砲だっけ?」
「全然違いますし、貸しもしません!」
「えー、いいじゃん。ケチー」
「ハルコンネンは吸血鬼の筋力に合わせて作られてるんです!
 普通の人間が使ったらひどいことになりますよ!」

私が力説していると、ドアがノックされました。
私は慌てて霊体化します。
直後、ドアが開いてスーツ姿のおじさんが入ってきました。

「はて、誰かと会話されていたようでしたが……」
「いやあ、俺の独り言よ。歳を取ると独り言が多くなっていかんなあ」
「そうですか……。そろそろ国会に出発する時間ですので、ご支度を」
「うむ、是非もなし」

そういえば、言い忘れてました。
この世界での信長様、国会議員です。


282 : 織田信長&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2016/03/04(金) 23:14:23 g0ROhrnk0

【クラス】アーチャー
【真名】セラス・ヴィクトリア
【出典】HELLSING
【属性】秩序・善

【パラメーター】筋力:B 耐久:B 敏捷:B 魔力:C 幸運:C 宝具:B

【クラススキル】
対魔力:C
魔術に対する抵抗力。
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
Cランクならばマスターを失っても、1日は現界可能。


【保有スキル】
吸血鬼:B
人の血を糧に、夜を生きる者。
人間を超越した身体能力や、超感覚を持つ。
「怪力」「千里眼」など複数のスキルの効果を含んでいる。

対吸血鬼:B
アーチャーは自身が吸血鬼でありながら、吸血鬼と戦う使命を背負った者である。
吸血鬼、およびそれに近い性質を持つ人外に対し、与えるダメージが増加する。


【宝具】
『焼き尽くす化物の咆吼(ハルコンネン)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1-50 最大捕捉:10人
アーチャーの専用武器として制作された、巨大なバズーカ砲。
全長は推定2メートル以上で、人間に扱える代物ではない。
たいていの現代兵器を破壊できるだけの威力を持つ。
弾丸は魔力消費により補充可能。
なお精霊が宿っており、アーチャーに危機が迫っていることを夢の中で教えてくれたりすることもある。

『滅ぼし尽くす月夜の星屑(ハルコンネンⅡ)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1-400 最大捕捉:300人
拠点防衛用に開発された、ハルコンネンの強化型。
2丁の砲身と巨大な弾丸コンテナで構成されており、その重量は345キロに及ぶ。
こちらには精霊が確認されていないため、ランクが少しだけ下がっている。

『親愛なる我が左腕(ディア・マイ・シャドウ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1-30 最大捕捉:20人
アーチャーの左腕そのもの。
普段は何の変哲も無い腕の形をしているが、実際には不定形の物質で構成されており、自在に変形させることができる。
この腕はアーチャーと彼女の大切な人との絆であり、その人物の魂は未だアーチャーと共にある。


【weapon】
吸血鬼の戦闘能力。

【人物背景】
元は一介の警察官だった女性。
しかし吸血鬼が起こした事件に巻き込まれ、ヘルシング機関の吸血鬼・アーカードに救助される代わりに自らも吸血鬼となる。
吸血鬼となっても人間としての感情から血を飲むことを拒み続け、アーカードからは「おっかなびっくり夕方を歩くやつ」と評されていた。
ミレニアムのイギリス攻撃の際、死にゆく仲間・ベルナドットの血を飲んだことで真の吸血鬼として覚醒。
アーカード不在の間、ヘルシング機関を守り続けた。

【サーヴァントとしての願い】
何か呼ばれた気がして来ちゃったけど、どうしよう

【基本戦術、方針、運用法】
肉弾戦がメインとなる、よくあるクラス詐欺のアーチャー。
宝具による砲撃は強力だが派手な破壊を行うことになるため、使いどころが難しいだろう。


283 : 織田信長&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2016/03/04(金) 23:15:29 g0ROhrnk0

【マスター】織田信長
【出典】ドリフターズ

【マスターとしての願い】
とりあえず聖杯をいただく。

【weapon】
日本刀と火縄銃。
ただし立場的に持ち歩くわけにはいかないので、部屋にしまってある。

【能力・技能】
軍略に関しては高いスキルを持つ。

【人物背景】
日本人なら知らぬ者はいない戦国武将。
明智光秀の裏切りにより、本能寺で討たれた……はずだった。
その体は「漂流者」として異世界に流れ着き、そこで那須与一、島津豊久と出会う。
そして彼らと共に、未知の場所で戦っていくことになる。

今回は帝都における黒王軍との戦いに勝利した直後からの参加。

【方針】
議員の立場を利用しつつ、ライバルを潰していく。


284 : ◆NIKUcB1AGw :2016/03/04(金) 23:15:58 g0ROhrnk0
投下終了です


285 : ◆pZqFAv403. :2016/03/05(土) 00:55:23 KbleQR0A0
投下します


286 : メアリー&アサシン ◆pZqFAv403. :2016/03/05(土) 00:56:07 KbleQR0A0

今日も美術館は盛況だった。
老若男女問わず、多くの人で賑わっている。

芸術性を理解出来る者は絵画やオブジェを見つめ、創作された芸術に浸る。
創作とは世界を己の色で染め上げ、形に息を吹き込むことだ。
匠よって創作された世界は、多くの人間を虜にしてしまうだろう。

芸術性を理解出来るとは言い難い子供でも、楽しむことが出来る。
アートとは己の価値観を表現し、他人に叩き付けることだ。
一見奇妙な外観ではあるものの、具現化された価値観は多くの人間を世界に引き込むだろう。

今日も美術館は盛況だった。
多くの人間の感性を刺激し、現在に置ける感受性を育てていた。







美術館には当然のように閉館時間がある。
こればかりは抗うことも出来ず、世界に浸っていた人間達は自分の世界に帰るしか出来ない。
また明日も来よう。
そう思えば、彼らは芸術に支配されたと云っても過言ではないだろう。


そして、閉館時間でもまだ独りで残っている少女がいる。
見る者を魅了する麗しき金髪。
奥深くにまで吸い込まれそうな蒼瞳。


灯りが消えた美術館で、少女は独り、絵画を見つめる。


287 : メアリー&アサシン ◆pZqFAv403. :2016/03/05(土) 00:56:50 KbleQR0A0

少女は何故、此処に居るか解っていない。
どうして閉館時間後も美術館に残っているのか。

どうして美術館の人間は彼女に気付かないでいるのか。

どうして誰も迎えに来ないのか。

どうして彼女はその身体で此処にいるのか。

少女の記憶から何か大切なモノが抜け落ちている。表現は出来ないけれど何かが足りない。
ジグソーパズルのピースが足りないのでは無く、基盤そのものが存在しないような、とてつもない喪失感。

どうして私は此処に居るのか。
そもそも私は誰なのか。


私は人間だったのだろうか。


その場でうずくまり、気持ち悪い感覚が少女の心を荒らす。
ぐるぐると廻る不快感は、少女に対して何かを訴えている。

まるでこの世界が可怪しいような、誰かに導かれた箱庭に対するカウンターのような。


コツコツコツ。


ふと聞こえた足音に、少女の身体が反応し、ビクッと震え上がる。
足音は近づいており、寧ろ、少女が顔を上げると、一人の青年が立っていた。


ぐるぐる巻きの包帯で顔が覆われており、ボロ臭い紫のマントのようなパーカーのような……を羽織り、大きな鎌を携えた男。




「人間見ーつけた」




耳に残る声は高いか低いかで表すと、高い。
雑に表現するならばホラー映画に出て来るイカれた殺人鬼のような声。


「この美術館は気色悪いゴミしか無くてよぉ……あ? 聞いてんのか?」


突然現れた男に対して、少女は瞳に涙を浮べながら怯えている。
その視線は鎌に集中しており、脳内には首を斬り落とされる未来が勝手に再生されてゆくばかり。


288 : メアリー&アサシン ◆pZqFAv403. :2016/03/05(土) 00:58:33 KbleQR0A0

震える少女を見ながら舌打ちをした青年はダルそうに鎌を床に下ろす。
金属音が響き、その音にまた少女が怯え、青年もまた舌打ちを行う。


「つまんねえ……つまんねえよ。
 何だその顔は。お前の絶望の表情、ちっとも唆らねえ」

勝手に現れ、勝手に不機嫌になった青年は下ろしたばかりの鎌を振り上げる。
包帯の隙間から除く瞳は光を帯びていなく、本当に退屈そうな闇であった。


「死ね」


無慈悲に振り下ろされる鎌。
少女が喰らってしまえば、死は免れないだろう。
当然、少女じゃなくても鎌を脳天に振り下ろされれば死んでしまうだろう。

悲しいものだ。
少女は結局、何故自分が美術館に居るのか解らずに死んでしまう。
抜け落ちている記憶にすら気付かないまま、その生命を散らしてしまうのだ。

顔を上げると鎌が迫っている。
嗚呼、私はこれから死んでしまうんだ。諦めるしかない。
けれど、死にたくないのは当然であり、口から救いの言葉が漏れるのも仕方が無いことである。


「助けて――――――――――――――――――え?」


疑問の声は己が生きていることに対して。

「あぁ!? んだよこの人形、動くのかよ」

赤い瞳を持つ青い人形を斬り裂いた青年が驚きの声を……上げつつも、普段通り振る舞う。
美術館に飾られていた、一般的に言えってしまえば気色悪い人形が少女と鎌の間に割って入ったのだ。
驚く青年。そして少女もまた、自分の状況が理解出来なく、驚いている。

しかし。

逃げるなら今しか無い。そう思い、彼女は走る。


「お……お!
 お前、今ちょっと『生き残れるかも』って希望の顔をしたな!? 出来んじゃねえかよそんな顔もォ!
 いいぜ、やりがいがあるってもんだ……逃げろよ、追い付いてその希望を絶望に変えてやっからよォ! ハハハハハハハハ!!」


289 : メアリー&アサシン ◆pZqFAv403. :2016/03/05(土) 01:00:09 KbleQR0A0

全力で走る少女を追い掛け、青年も鎌を携えながら歩み寄る。
身体の差、能力の差、筋力の差、脚力の差。
全てが青年に軍配が上がる中で、少女が逃げ切れる訳がない。

そう独り、ならば。


「さっきから邪魔してきてんじゃねえよ置物がああああああ!!」


青年を阻む人形達が逃げる少女を延命させる。
蒼い人形や額縁からはみ出した女、首の無いマネキン。

美術館に飾られていたオブジェ達が一斉に動き出し、青年に襲いかかっているのだ。
夜の美術館にしては出来過ぎている。米国なら映画の一つでも作られるシチュエーションだ。
しかし、結末は万人受けするようなことにはならないらしい。



「あぁ面倒いゴミ掃除だった。行き止まりでお前はゲームオーバーァだぜ」



気付けば少女の目の前は壁だった。
逃げ場はもう無い。道は青年が立っている場所を戻らなれば無い。
つまり絶体絶命の状況に陥っているのだ。救いは無い。


「此処に呼ばれてから退屈してたんだが……久しぶりの人間で楽しかったよありがとう――なんて、言う訳無えよなァ!!」


狂気に満ちた声を轟かせ振り上げられる鎌に月明かりが反射する。
彼は呼ばれてから退屈していた。そう言ったが彼を呼ぶ人間などいるだろうか。
顔を包帯で覆った鎌を持った男。近付きたくない存在だ。

しかし少女にはそんなことを思う時間も無い。
鎌に首を斬り落とされるのだから。


290 : メアリー&アサシン ◆pZqFAv403. :2016/03/05(土) 01:02:03 KbleQR0A0



























「……あ? は、え、まじ?」






けれど鎌は振り下ろされない。
助けに入る人形は全て青年に倒されている。
彼が止めたのだ。男は自ら鎌を止めた。


「お前の腕それ令呪じゃん……いや、じゃあお前が俺のマスター……えー」


少女は殺される直前に腕を振り上げ、首を守ったつもりでいた。
その際に袖から腕がはみ出しており、それを見た青年が、サーヴァントが動きを止めてしまった。
そして、全てを悟ることになったのだ。


「まじかよ……ハードモードじゃん。
 コイツが俺のエネルギー源みたいなモンだろ? 頼り無え~……いや、魔力はビンビンなんだけよ、なんでだ? まっ、いいか。
 つーか俺が聖杯戦争のこと説明すんの? 面倒くさくね? 他の奴らを全員ぶっ殺すだけだから。よし、ちゃんと説明出来たな俺」


独りでマシンガンのように言葉を垂れ流す。
記憶を持たない少女――マスターに、彼なりに聖杯戦争を説明したつもりだ。
勿論、説明になっていないのだが。


「……メアリー」

「あ?」

「思い出したの、私の名前」

「お、おう……」


やり辛い。そんな表情を浮べながらマスターの名前を知るサーヴァント。
何せ自分が適当に殺そうとした少女が自分のマスターと来たもんだ。あり得ない。
利口な存在だったならば今頃、令呪を使われて自害させられている未来もあり得たのだ。

「…………こわっ」

そしてやり辛いのは、もう一つ理由がある。

(似てやがる)

それは生前の記憶だ。

(金髪に蒼い瞳……アイツと一緒だ)

地下で出会った、自分を殺せと望む可笑しな少女。
奇妙な縁で結ばれた、言葉では表せないあの少女と似ている。

何と言えばいいか解らないサーヴァントであるが、一つだけ言えるとすれば。
あの頃は悪くなかった。それだけである。


(レイチェルに似てやがる)



美術館で出会った独りの少女と殺人鬼。
共に愛情を知らない/感じられなかった異形の存在。

絵にでも表したかのように惹かれ合った彼女達は、今宵、聖杯戦争に召された。


291 : メアリー&アサシン ◆pZqFAv403. :2016/03/05(土) 01:03:04 KbleQR0A0

【マスター】
 
 メアリー@ib

【マスターとしての願い】
 記憶を取り戻したい。
(本来の記憶を何かしらの理由で失っている)

【weapon】

 今は特に無し。

【能力・技能】

 今は特に無し。

【人物背景】

 緑のワンピースを着る金髪碧眼の美少女。お父さんが大好き?
 人懐っこく、明るい性格で歳相応の反応を取る元気な美少女である。

 その正体は人間では無く、『絵』である。
 芸術作品として生まれた彼女は外の世界に興味を持った。
 しかしそれは叶わない夢。叶うとすれば現世の人間を犠牲にするしかない。

 聖杯戦争では普通の少女として喚ばれたようだ。
 しかし、何故喚ばれたかは知らず、そもそも記憶を失っており、自分が『絵』であることすら認識していない。

【方針】

 聖杯戦争のことを知らない。


292 : メアリー&アサシン ◆pZqFAv403. :2016/03/05(土) 01:04:57 KbleQR0A0


【クラス】
 アサシン


【真名】
 アイザック・フォスター@殺戮の天使


【パラメーター】
 筋力D 耐久C 敏捷B 魔力D 幸運D 宝具D


【属性】
 混沌・悪


【クラススキル】
 気配遮断:C
 自身の気配を消す能力。


【保有スキル】
 精神汚染:A
 精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。
 狂った殺人鬼を塗り替える狂気など存在しない。

 反骨の相:B 
 権威に囚われない、裏切りと策謀の梟雄としての性質。
 同ランクのカリスマなどのスキルを無効化する。

 戦闘続行:A
 往生際が悪い。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。


【宝具】

『狂る狂る廻る殺人鬼(アイザック・フォスター)』
 ランク:D 種別:対人宝具
 生前、連続殺人鬼であったアサシンの逸話がそのまま己の一部として宝具へと昇華した。
 彼が戦闘体勢に入った瞬間から狂化:Eが付与され、殺人鬼としての狂った本性を見せる。
 但し隠密行動のランクが一段階下がるため、彼に暗殺は向いていない。
 また返り血を浴びる度に筋力と敏捷が上昇する……と、本人は思い込んでいるがそんな事実は無い。


『生命を刈り取る鎌(鎌)』
 ランク:D 種別:対人宝具
 アサシンが普段使っている大鎌。真名がある程立派なモノでは無く、ただの武器に近い。
 彼が真名を明かせば(名前が無いため、その気になれば)舞台が暗くなり、周囲が闇となる。
 そして鎌に魔力が付与され、普段は斬れない結界や魔術礼装を斬り裂くことが可能になる。


【weapon】
 鎌


【人物背景】
 イカれた殺人鬼。外見は二十歳程度である。
 包帯で顔を覆っており、遠くから見てもヤバさが感じ取れるイカれた殺人鬼。
 幸せそうな人間やうれしそうな人間を見ると、つい殺したくてたまらなくなる衝動に襲われるらしい。
 孤児院出身らしく、もしかしたらその時に彼は狂ったのかもしれない。


【サーヴァントとしての願い】
 全員殺せばよくね?


【基本戦術、方針、運用法】
 だから全員殺せばよくね?


【備考】
 出展フリーゲーム『殺戮の天使』が未完結のため、新たな設定等が追加されるかもしれません。


293 : メアリー&アサシン ◆pZqFAv403. :2016/03/05(土) 01:05:27 KbleQR0A0
終了します


294 : ◆.wDX6sjxsc :2016/03/05(土) 11:18:13 LacObqUs0
投下します


295 : 遥か時の彼方 まだ見ぬ遠き場所で ◆.wDX6sjxsc :2016/03/05(土) 11:19:09 LacObqUs0

―――They might call me crazy for saying
I'll fight until there is no more―――




296 : 遥か時の彼方 まだ見ぬ遠き場所で ◆.wDX6sjxsc :2016/03/05(土) 11:19:56 LacObqUs0

「ねえ、ブランドンさん」
「何ザンス?」

長い黒髪のNPCの少女が、最近日本に越してきたと言うバイトの外国人を呼びかける。
その手には、今朝の朝刊が握られていた。

「江東区の方で通り魔が出たんだって、ブランドンさんも気を付けてね。
 まだ、日本に慣れてないんでしょ」

商品の花々を陳列しながら少女は言う。
少女はぶっきらぼうで冷ややかな雰囲気を纏っていたが、その言葉にはどこか温かみがあった。
忠告を受けたヅラに差し歯でカイザル髭の男の胡散臭さを鑑みれば、その印象はより強くなるかもしれない。

「大丈夫ザンスよ、日本のおまわりさんは優秀ザンス。
 直ぐに通り魔なんてのは縄につくでチョーよ」

男はあくまで飄々とした態度で肩を竦めながら値札の曲がりを直す。
バイトとして雇った時からこの調子だ。きっとこれからも。
しかし少女は、被害人数を話した時に男が一瞬見せた表情を見逃してはいなかった。
ぽっかりとした虚の様な顔をしていた。
理解できないと言う顔をしていた。
何故そんな顔をしているのかと思ったが、一瞬だったし、そもそもそんな事入ったばかりのお手伝いさんの域を出ないバイトに聞くのも変な話である。
新聞を脇に置いて、こほんと話題を切り替えた。


297 : 遥か時の彼方 まだ見ぬ遠き場所で ◆.wDX6sjxsc :2016/03/05(土) 11:21:02 LacObqUs0

「……後、ヤの付く人たちがいる事務所からごっそりピストルの弾とか盗んでいった人がいるらしいよ。ホンと物騒だよね」

取るに足らない、昨日聞いた噂話。
にもかかわらず、男の様子が変わる。
明らかに狼狽していた。

「そ、それは誰に聞いたザンス?」
「学校の友達から……ちょっと、眼を見て話してよ」

ジロリと男を睨むが、男は背を向けたままだ。
心なしか脂汗が浮かんでいる気がした。
少し心配になり、顔色を見ようとするもひょいひょいと避けられてしまう。

「ねぇ…大丈夫?怖がらせるような事言って悪かったから…」
「……」

男は背を向けたままぶるぶると震えている。
そんなに怒らせた、又は肝を冷えさせたかと一瞬心配になる少女だったが、
その手には、先ほど自分が置いた朝刊があった。
どうやら自分のせいでは無いらしいと少女は胸をなでおろすが、それならばなぜ震えているのかと怪訝に思い男を見つめる。
そして、数秒程した後、男は堤が決壊するように新聞を放り投げ、ごろごろと頭を抱えて転がった。

「もーやだよママン!僕此処では何も悪いことしてないじゃん!
なのにここでも狙われなきゃいけないのママン!
そりゃ記憶戻ったその日に怖い人たちの事務所に連れてかれてなんやかんやあったけどさぁああああ!!
助けてアーチャーちゃん!!」

彼の手に持っている朝刊。
そこには、満面の間抜け面を浮かべ、金髪を箒のように尖らせた男とその備考が書かれていた。

『ヴァッシュ・ザ・スタンピード
出身国不明
住所不定
G級器物破損容疑で
指名手配中――――
賞金額
600億円!!

備考――平和主義者』

男――ヴァッシュ・ザ・スタンピードは賞金首として追いかけられるのには慣れていた。
そりゃもう百戦錬磨である。
偽名やその手の誤魔化しで無理やり生活していくのもお手の物だ。
ヅラに差し歯、カイザル髭。この完璧な変装もその賜物だ。
しかし、だからと言っていきなり指名手配とはどう言う事か。
無理やり連れてきたのだから左団扇のロハスロハススタイルの暮らしを用意しろ、
やり直しを要求する!!

少女はそんな事を声高に叫びながら転がる男を一瞥し、

「さて、仕事仕事」

考えるのを止めた。


298 : 遥か時の彼方 まだ見ぬ遠き場所で ◆.wDX6sjxsc :2016/03/05(土) 11:21:47 LacObqUs0



鮮血が舞う。
口元まで覆い隠したマフラーと忍装束を纏った少女が吹き飛ばされ転がる。
彼女のクラスはアーチャー。
白兵戦を苦手とするわけではないがそれでも真っ向からぶつかればセイバー相手では分が悪い、加えて、アーチャーは隻腕でこのセイバーはかなりのやり手だ。
だが、これでいい。

『よくやったさ、アーチャー。碌な宝具も無くセイバーと渡り合ったのには驚嘆に値する。だから―――もう、休め』

相手のマスターから念話が届く。
休むのはそちらの方だ。心の中で呟いた。

サーヴァントに任せきる事もできず、かと言って戦場に堂々と馳せ参じることもできない半端物のマスターだったが、ようやく見つけた。

敵マスターは自分とセイバーの戦闘場所から百メートル程離れた場所にあるビルの屋上にいた。
少し遠いが―――問題ない。自分の宝具ならば。見えてさえいれば。

懐からクナイと、切り札を取り出す。
“ソレ”は一発の弾丸だった。
幾何学的なラインが刻まれた、一発の弾丸。

本来ならリボルバーに収められ、撃鉄が打ち鳴らされたその時にこそ真価を発揮するその弾丸を―――“投擲”する。

投げた物を百発百中の宝具とするのが彼女の宝具だ。
クナイも手裏剣も、全て投げた分は寸分の狂いなくセイバーに着弾していた。
だが、着弾と言っても命中したわけではない。
全てセイバーの優美な剣技で撃墜されていた。

「悪いが終わらせてもらうぞ、アーチャー!」

今度もまたいかな物が投げられようと自身の剣で切り捨て、アーチャーをも屠るとセイバーは肉薄する。

刹那、交錯。



「……!?」

何が起こったか分からないと言う顔でセイバーは立ち尽くす。
その両手は、喪われ、ホースの様に紅い液体がだぼだぼと流れていた。
カランと、虚しい音を立てて、剣が落ちる。
何が起こったのか。
先ほどまでのクナイや手裏剣では自分には傷一つ付けられなかったと言うのに!
だが、そんな彼の疑問に当然目の前の忍装束の少女が答えるはずもなく―――頭蓋に手裏剣が付きたてられた。

続いて、マスターの居る方角にクナイを投げる。
千変万化の軌道で投げさえすれば当たるクナイだ。逃れられはしないだろう。
そんな、自分のマスターに対してあまりに不義理なことを考えていた自分に気づき、自嘲しながら、セイバーの意識は闇に融けた。




299 : 遥か時の彼方 まだ見ぬ遠き場所で ◆.wDX6sjxsc :2016/03/05(土) 11:22:12 LacObqUs0

戦闘が終わり、ほぅ、と空を仰ぎながら息を吐く。
危なかった。
マスターの“能力”の結晶たる弾丸が無ければ、敗けていたのは此方だっただろう。
安アパートの玄関の靴箱入れに厳重にマスターが隠していた弾。
物体を消し飛ばす力を持つ“ソレ”に投げた物を宝具とする自分の魔法少女としての力を使えば、セイバークラスであっても一撃のもとに打ち倒す銀の弾丸に変貌する。
魔法少女にあるまじき戦いかもしれない。
でも、それでもいい。
マスターを必ず生還させる。
最初に出会った時、マスターは取り乱していた。
兄を止めなければいけないと、直ぐにノーマンズランドに戻らなければいけないと。

彼は此処に来るべきではなかったのだ。
その双肩に砂の惑星数千万の命を背負ったマスター。
だが、聖杯戦争に生き残るには…甘すぎる。あまりにも。

死んだのだ、皆。

シスターナナも。
生ける伝説と謳われた魔王パムも。
―――その身に、新しい命を宿していたトップスピードも。

「……マスターは死なせない。必ず」


何故そう思うのかはよく分からない。
本来、マスターの様な手合い…シスターナナの様な綺麗事を振りかざす輩は苦手だったはずなのだが。
いや、シスターナナと言うよりあれは――――


―――それはもう、魔法少女じゃない。ただの人殺しだよ―――


アーチャー…リップルはもう一度空を仰いだ。
聖杯戦争のことは可能な限りマスターには隠し通す。
そうだ、

「魔法少女でなくても良い…私は―――弾丸で良い」


300 : 遥か時の彼方 まだ見ぬ遠き場所で ◆.wDX6sjxsc :2016/03/05(土) 11:22:38 LacObqUs0

【クラス】アーチャー
【真名】リップル
【出典】魔法少女育成計画
【属性】中立・善

【パラメーター】筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:C 幸運:C 宝具:C+

【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
Cランクならばマスターを失っても、1日は現界可能。

【保有スキル】

魔法少女:B
魔法少女である。ランクが高いほど高水準の魔法少女となる。
魔法少女は人間離れした戦闘能力と視覚聴覚を得、排泄や食事などの新陳代謝行為を一切行わなくて良くなる。
また、疲労の蓄積する速度が人間よりも遥かに遅く、長期の不眠不休にも耐えられるスタミナと常人離れしたメンタルを持つ。
更に、固有の魔法を1つ使える。アーチャーの場合それは宝具となる。
クラムベリーの最後の子ども達として、彼女のランクは高いが、上位の魔法少女には及ばない。
そしてアーチャーは魔法少女の状態で呼び出されているため、このスキルの発動は阻害できない。

人間観察:B
人々を観察し、理解する技術。
誰が誰にどのような感情を抱いているかを見抜き、把握した上で行動できる。
彼女の生前の性分の象徴と言えるスキルであり、アーチャーの場合上述の効果に加えて相手の属性、とくに悪属性の属性を性格に察知できる。

千里眼:C
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。

【宝具】
『手裏剣を投げれば百発百中だよ』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:視界内 最大補足:視界内
彼女の、アーチャーとしての象徴の宝具。
対象が視界内であり投げる事さえできれば、それが確実に命中する。
額面は手裏剣だが、投げる物はクナイでも手りゅう弾でも車でも何でもよく、投げた物はランクC相当の神秘が付与され、宝具となり、対象に命中する。
基本はCランクで固定されているが、他のサーヴァントの宝具や後述のAA弾頭弾の様に、投げる物によっては宝具のランクが2ランクアップする。

【weapon】
無限に湧いてくるクナイと手裏剣

【人物背景】
魔法少女育成計画により魔法少女となった少女。
森の音楽家クラムベリーの最後の子ども達であり、凄惨なデスゲームの生き残り。
クラムベリーの魔法少女選抜試験により片目と片腕を失うも、魔法少女狩りとなった仲間のスノーホワイトを補佐するべく陰に日向に奮闘していたが―――
今回の聖杯戦争では、彼女が経験した中でも屈指の激しい戦い、暗殺者をめぐる事件の時の記憶と性格を再現され召喚されている。

【サーヴァントとしての願い】
無し。マスターを生還させる。


301 : 遥か時の彼方 まだ見ぬ遠き場所で ◆.wDX6sjxsc :2016/03/05(土) 11:23:05 LacObqUs0

【マスター】
ヴァッシュ・ザ・スタンピード@TRIGUN MAXIMUM

【マスターとしての願い】
LOVE&PIECE、帰りたい。
聖杯戦争?何それ?

【能力・技能】
人間台風:A
聖杯戦争に参加するだけで600億の賞金首になる男。
ただ、隠遁生活は慣れているため何とかするだろう。
そして兎に角、揉め事面倒事に巻き込まれる、最早呪いのレベルである。
この聖杯戦争でも記憶を取り戻した瞬間ヤクザに絡まれたりした。

射撃の腕前。抜き撃ちの速度は並のサーヴァントでは知覚できない領域にある。


【weapon】
シルバーメタリックのリボルバーと義手の仕込み機関銃。
加えて、ヤクザに絡まれた時にかっぱらった弾薬。

AA(エンジェル・アーム)弾頭弾。
彼の魔技の領域にある銃撃でも通常弾ではサーヴァントには傷一つ付けられないが、唯一の例外に当たる弾丸。
超越種たる彼の持つ『プラント』としての彼の力が篭められており、この弾丸を発射した場合着弾と共に『門』が開き、問答無用で対象を削り取る。
ただし、殺傷能力が高すぎるため彼は絶対に使いたがらない。
その上、残ったプラントとしての力も魔力タンクとして供給しているため実質残ったプラントとしての力を彼はもう使えない。
普段は住んでいる安アパートの玄関の靴箱に隠している。

【人物背景】
超が付くほどの平和主義者にして局地的災害『人間台風(ヒューマノイド・タイフーン)』
人類が少ない生体生産ユニット『プラント』のリソースを奪い合う中、愛と平和を謳い、月をも穿った伝説のガンマン。
参戦時期は、原作11巻でAA弾頭弾を作成したすぐ後。

【方針】
Love&Piece


302 : ◆.wDX6sjxsc :2016/03/05(土) 11:23:25 LacObqUs0
投下終了です


303 : クラウリー&キャスター ◆tGJWnjCS9s :2016/03/05(土) 21:51:00 16CAT/.s0
投下します。


304 : クラウリー&キャスター ◆tGJWnjCS9s :2016/03/05(土) 21:52:06 16CAT/.s0
都内の一等地にその屋敷はあった。
誰もが一目でその屋敷に住む人物は大金持ちだとわかるだろう。
広大な敷地の中庭には、訓練された犬が大量に配備されており
屋敷の警備のために大勢の人間がいた。
これも誰もが一目でその屋敷に住む人物は堅気の人間ではない事がわかるだろう。
警備の人間が明らかに裏社会の人間である空気をかもし出していた。
そして誰もが外国人である事から、マフィアである事がはっきりとしていた。

しかし最後のもう一つの事は、誰もがわからないだろう。
その屋敷に住む人物が聖杯戦争の参加者、マスターである事を…。

―クラウリーは記憶を取り戻した当初、憤慨していた。
地獄の王である自分がいつの間にか記憶を奪われ、何故か日本の東京に住んでいるマフィアのボスの役を与えられて
それを当然の事として疑問に思わず暮らしていたからだ。
なめられている、クラウリーは自分をコケにした首謀者に落とし前をつける事を決めた。
それから数日は部下達に情報収集を命じ、どう落とし前をつけるか思考しながら
高級な酒を飲みながら過ごしていた。
キャスターと会った時はそんな時だった。

――「君が私のマスターかな?」――

広い執務室に、二人に男が豪華なソファーに座り高級な酒を飲みながら会話をしていた。
どちらも高級な黒いスーツを着ており、小太りの中年がクラウリーで
痩せた壮年の男がキャスター、彼には闇の王など様々な呼び名があるがその中でも特に
ゴールド――またはルンペルシュティルツキンと呼ばれている。
「―以上が私が知っている聖杯戦争の全てだ。まあ正しく行われているかは怪しい所だがね…。」
クラウリーはキャスターから聖杯戦争の事を聞き、またキャスターが疑念を抱いている事を知った。
「俺は地獄の王で魂の取引をする際、契約は守る。
 取引相手に不必要な事は話さないが、必要な事は契約書に全て記載している。
 主催者は実に気に入らん。」
地獄の王として暴虐な行いをしてきたクラウリーだが、取引で嘘をついた事はなかった。
そのため契約書はやたらと長い文面になってしまうが…。

以前もボビーの魂を返す約束をうやむやにしようとした事はあったが
契約内容が返す努力をしなくてはいけないとなっているから「努力目標」として屁理屈をこねるなど
契約で嘘をつく行為は避けていた。
魂の回収まで猶予が10年あるのに早く回収するため、ひそかに手下に取引相手をすぐに殺させた悪魔を
嘘があると悪魔と魂の取引をする者達がいなくなるとして見せしめとして処刑したりした。


305 : クラウリー&キャスター ◆tGJWnjCS9s :2016/03/05(土) 21:52:37 16CAT/.s0
そんなわけで聖杯戦争の主催者は彼の流儀に唾を吐いているも同然だった。
ますます怒りが募っていくクラウリー、キャスターに言われる前から疑念を抱いていたのだ。
そもそも神の奇跡である聖杯、それを巡る聖杯戦争に悪魔である地獄の王を参加させている事から
主催者が優勝者に聖杯を素直に渡すとは到底思えなかった。

―もし俺なら、何でも願いが叶う聖杯を天使に渡すだろうか…、バカでもわかる答えだ、実に笑えん。―
自分の立場に置き換えて考えてみたクラウリーだが、結論はあっけなく出た。
となると、こんな場所からおさらばするのみだがそう簡単な問題ではなかった。
すでに一度記憶を奪われた事から不覚を取っており、魔術などは使えるが器から抜け出す事はできなくなっている。
それにこちらのサーヴァントはキャスターだ。敵対するマスターとサーヴァントに出くわした場合危険が大きい。
ならば今はキャスターの能力で屋敷の防衛力を高め、情報収集に徹するべきだろう。

クラウリーはキャスターに方針を伝えようとし、ふと彼に願いがあるか聞いておこうと思った。
最初に会った時に、こちらから尋ねる前に聖杯戦争の事を話してくれたのである程度信用したので
聖杯戦争の事以外に色々と話したのだが、その中で息子に会いたいなどと言っていたのを思い出したからだ。

悪魔を浄化する儀式を途中まで受けて、ある程度人間の心を取り戻したので
話の流れでキャスターに人間の頃飲んだくれて殴ったりした息子に負い目があるなどと応答した。

疑念を抱いているとはいえキャスターが願いの為にクラウリーの予想外の行動に出る可能性があった。
このキャスターに限って短慮を起こすとは思えないが、現在一蓮托生の身だ。
不確定要素は潰しておくべきだ。幸い自分は地獄の王、次元が違うとはいえ
ここから抜け出せばある程度はキャスターの願いに沿う事はできるだろう。

考えをまとめたクラウリーはキャスターに話し出した。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「無論息子に会いたいのは本心だが、息子は家族を救うために死んだ。それに泥を塗る事はしたくない。」
キャスターの返答に、嘘はないだろうとクラウリーは信用した。
「方針に依存はない事はわかった。では話は変わるがキャスターはおとぎ話の国から現実世界に来たんだったな…。」
キャスターとの対話でクラウリーは世界を移動したという事にいたく関心を示した。
飽くなき強欲で地獄に落ち悪魔となったクラウリーだ、他の世界の地獄に興味があった。
キャスターの事を詳しく知れば、他の世界の地獄を支配する事が可能なのでは…
強欲なクラウリーが余り聖杯に興味を示さなかったのは、キャスターの話す内容が実に興味深かったからだった。
「ああその通りだ。他の世界に行く事に興味がおありかな?
 君はよく分かっているだろうが、どんな魔法にも対価がつきものだ…。」
キャスターの返答にクラウリーは笑みを浮かべた。
「無論承知している。では話の続きをしようか…。」

―クラウリーは空になったグラスに酒を注ぐと、その日はキャスターと会話で時間が過ぎていった。


306 : クラウリー&キャスター ◆tGJWnjCS9s :2016/03/05(土) 21:53:16 16CAT/.s0
【クラス】
キャスター

【真名】
ルンペルシュティルツキン@ワンス・アポン・ア・タイム

【ステータス】
筋力:E+ 耐久:D 敏捷:D 魔力:EX 幸運:D 宝具:A

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
陣地作成:A+
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
”神殿”を上回る”大神殿”を形成する事が可能。

道具作成:A+
魔力を帯びた器具を作成できる。
十分な時間と素材さえあれば、宝具を作り上げることすら可能。
ただし、作成される宝具のランクは現代の神秘の薄さと
現代で手に入る材料に左右される。

【保有スキル】
おとぎ話の住人:B
おとぎ話の世界に住む英霊が持つスキル。
おとぎ話に関する宝具、もしくはおとぎ話の英霊を見ると真名を看破する事ができる。
また作家の英霊と戦う場合は上位存在とみなされキャスターのステータスが1ランク下がってしまう。

闇の王:EX
キャスターは悪の魔法使いである。
未来予知や瞬間移動、念力や炎の魔術など様々な事ができる。
中でも相手の心臓を抜き取り操る魔術は、救世主の逸話を持つ英霊か対魔力Aランク相当のスキルを持つ英霊以外には通用する。
ただしヴィランであるため、ヒーローの逸話を持つ英霊と戦う場合は勝つのが難しくなる。

剣術:C
ある程度剣を持って戦う事ができる。

ミスター・ゴールド:C
キャスターはストーリーブルックに来てから長い間正体を秘匿してきた。
戦わない限りはNPCと認識される。
戦う場合、またはキャスターの事を知っている相手には通用しない。

対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師ではキャスターに傷をつけられない。

黄金律:A+
人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
ストーリーブルックでは街一番の金持ちであり、他にも魔法で藁を黄金に変える事ができる。
一生金には困らない。

【宝具】
『美女と野獣』
ランク:E~A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
キャスターの恋人ベルとゴールドの店を召喚する。常時発動型宝具。
ゴールドの店は質屋でマスターの住む場所の近くにあり、普通の店として認識される。
ベルは店の管理をしており、周りからはNPCと認識されるが
Eランクのサーヴァント扱いで属性は秩序・善となっている。
店には魔法の道具など様々な物があり、正当な取引をすれば他のマスターやサーヴァントはもちろん
NPCでも使用する事ができる。
ここはキャスターの陣地であり、様々な防衛手段がある。
ここで暴れようとすればキャスターに即座に感知され、叩きだされるだろう。

【weapon】
様々な魔法の道具。

【人物背景】
周りからよくルンペル、もしくはゴールドと呼ばれる。
元は貧しい紡ぎ手で、息子が徴兵されるのを防ぐために闇の王となった。
闇の王となってから性格が変わってしまい、息子に魔法のない世界に行こうと言われるが
直前になって魔法のない世界に行く事に恐怖を覚えてしまい息子の手を放してしまう。
現実世界にいる息子に会うため、様々な伏線をはり現実世界にやってきて息子と再会した。
その後色々あったが和解する事ができたが息子は家族を救うために命を落とした。
家族関係は実に複雑であり、父はピーターパン、孫の母は白雪姫とチャーミング王子の娘で救世主である。
西の悪い魔女ゼリーナは弟子であるが、息子が命を落とす原因を作るなど敵対関係にある。

【サーヴァントとしての願い】
息子には会いたいがそれをするつもりは無い。
マスターと共に行動する。


307 : クラウリー&キャスター ◆tGJWnjCS9s :2016/03/05(土) 21:53:54 16CAT/.s0
【マスター】
クラウリー@スーパーナチュラル

【マスターとしての願い】
自分をコケにした主催者に落とし前をつける。
聖杯は迷惑料として手に入ったらいいぐらいで
むしろ他の世界の地獄に興味。

【weapon】
魔力を封印する銃。
地獄の猟犬達(聖杯の調整により、魔力がある者には姿が見える)

【能力・技能】
地獄の王として相手を呪殺する魔術など強大な魔力を誇る。
魂の取引により依頼者の願いを叶える事ができるが
今回の聖杯では調整によりできず、器から抜け出す事もできなくなっている。
また悪魔であるため聖水や悪魔祓いなどの退魔術にはダメージを受ける。

【人物背景】
大勢の悪魔達がルシファーに従うなか、ルシファーが悪魔達を抹殺する目的がある事を見抜き
ウィンチェスター兄弟に協力した。
その後は地獄の王となり、敵対あるいは協力をくり返している。
ウィンチェスター兄弟の策略にかかり、悪魔の浄化を途中まで受けてる事になり
敵対するアバドンにより人間だった頃は険悪な仲だった息子が人質となり
脅しに屈するなど、人間の心をある程度取り戻している。

【方針】
今は情報収集と守りを固める。
キャスターとより深く話をする。

【補足】
マフィアのボスという役を与えられ、都内の一等地に拠点があります。
大勢の手下や犬が警備に当たっています。
マフィアであるため警察がやってくるかもしれません。
すぐそばにキャスターの店があります。
誰でも入れますが狼藉を働けばすぐキャスターに見つかります。
ベルに何かすればキャスターの怒りを買い、狙われ続けます。


308 : クラウリー&キャスター ◆tGJWnjCS9s :2016/03/05(土) 21:54:23 16CAT/.s0
投下を終了します。


309 : ◆tHX1a.clL. :2016/03/06(日) 00:35:40 xw/RsZKc0
やはり思うところがあるので、拙作サイタマ&セイヴァー(>>162-170)の候補作を取り下げさせていただきます。
コンペ終盤に身勝手な振る舞いをしてしまい申し訳ありませんが、>>1氏は対応よろしくおねがいします。


310 : ◆As6lpa2ikE :2016/03/06(日) 10:13:13 Xb3LHuCQ0
投下します


311 : ◆As6lpa2ikE :2016/03/06(日) 10:15:25 Xb3LHuCQ0
投稿者変態糞███ (20██/08/16/07/14/22)

アイテム番号:SCP-114514

オブジェクトクラス:keter長友

特別収容プロトコル:
それの極端な封じ込めの難しさや、新種の出現頻度、特性の影響範囲の拡大速度により、SCP-114514-aはketer長友に分類されました。
今現在、SCP-114514-aのほとんどはサーッ! イト-2525に収容されていますが、それらが一般社会に広まっていくのはもはや時間の問題でしょう。やべぇよやべぇよ……
SCP-114514-aが発見された場合、発見者はすぐさまそれを確保! 収容! 保護! し、カバーストーリー『視聴できません』を発動することとなっています。
しかし、収容されたのと全く同じ種類のSCP-114514-aが数日、ひどい場合は数時間と経たないうちに再び発生することが過去██回確認されており、この方法はSCP-114514-aに対してあまり有効ではありません。これもうわかんねぇなあ。
また、20██年には機動部隊エプシロ オォン! 19"運営"を派遣し、大量のSCP-114514-aを一気に収容して、カバーストーリー『ホモコースト』を発動しましたが、後にSCP-114514-a及びSCP-114514-b、SCP-114514-cの活動が過去類を見ないほど攻撃的に活性化したため、今後いかなる場合においても『SCP-114514-aを短期間のうちにパパパっと収容すること』が禁止となりました。

補遺1:
SCP-114514-aはインターネット上のヴォー……動画サイト、[編集済み]動画に存在する複数の動画型オブジェクトです。ひでしね。
初めてSCP-114514-aが発見されたのは20██年であり、その後も次々に多くのSCP-114514-aが発見されました。たまげたなあ……。
SCP-114514-aの発生元の殆どは実在のビデオ会社である[編集済み]や[編集済み]、[編集済み]などと考えられていますが、明確な証拠は得られていません。
SCP-114514-aに映っているものはTDNホモビ男優や、遺伝子的には哺乳類の██████に近いと思われる生き物、果ては[編集済み]のキャラクターに酷似したもの、と種類が多岐にわたっています。
これらは発見された順から

SCP-114514-a-1、SCP-114514-a-2、SCP-114514-a-3……

と番号が振られ、今現在財団によって1███14█9█9810例が確認されています。

補遺2:
動画の形で存在するSCP-114514-aは可視/不可視スペクトルや音声を用いて自身を視聴した対象に影響をひでしね与えます。
被験者の93.1%は1度目の視聴時点では『きたない』『くさそう』などと、SCP-114514-aに対して激しい嫌悪感を抱きます。お前、ノンケかよぉ!?
しかし、後に2度、3度と視聴を重ねていくうちに被験者は徐↑々↓にSCP-114514-aへハマりこみ、最終的には重度の中毒状態に陥ります。
ひどい場合には他の種類のSCP-114514-aの視聴を求めるほどです。もう待ちきれないよ! 早く出してくれ!

また、何度もSCP-114514-aの視聴を行った被験者はSCP-114514-a内の登場人物がした行動や喋ったセリフを実生活での会話や文書、SNS上で、しかもその場のシチュエーションに全く合っていないタイミングで真似し出します。
それらの多くは反社会的な行動や発言であり、見たものや聞いたものの気分を著しく不快にさせるのですが、被験者たちはその事を全然気にせずにSCP-114514-a内の登場人物たちの真似を続ける傾向があります。ひでしね。
この他にもSCP-114514-aの影響を受けた被験者には

・『SCP-114515-a内の登場人物に似ている人物や物体に反応する』

・『特定の数字に執着を持つ(1████4、8██など)』

・『特定のの単語に敏感になる(『████████しますから』『うん! ████████!』など)』

・『特定の食べ物を欲するようになる(いなり寿司、ピザなど)』

・『特定の団体や人物に過剰なまでの殺意、敵意を持つ([編集済み]動画UNEI、ひで████しね)』

などといった異常が起きます。


312 : ◆As6lpa2ikE :2016/03/06(日) 10:17:31 Xb3LHuCQ0
これらの状態になった被験者はSCP-114514-b(通称"ホモガキ")とされます。
上記のようなSCP-114514-bの異常行動をチラチラ見た対象者は精神にSCP-114514-bと同じ異常を起こします(SCP-114514-c)。すっげぇミーム汚染してる、はっきりわかんだね。
SCP-114514-bとSCP-114514-cにはBクラス記憶処理が施されますが、効果はあまりなく。Cクラス記憶処理でも36ひでしね%には効果がない事が確認されています。
こ↑の↓こ↑と↓からSCP-114514-aには、自身を視聴したものと、そ↑れ↓らから干渉を受けたものの精神を異常にするという特性があるとされています。
こ↑れ↓は『認識するだけでアウト……ってことはセーフなんじゃないかな』というこ↑と↓であり、そ↑れ↓が判明してからうん、OC!5はすぐさまDクラス職員を用いたSCP-114514-aの実験を禁止しました。
また、一部のSCP-114514-aには

・『見たものの心臓を止める』

・『登場人物の体格が明らかに大人のそれなのに、見たものには小学生だと認識させる』

・『見たものに幻臭を感じさせる』

などの異常特性を持ったものが数例存在している疲れからか、不幸にも黒塗りの高級車に追突してしまう。
後輩をかばいすべての責任を負った三浦に対し、車の主、暴力団員谷岡に言い渡された示談の条件とは…。



【文章ここまで】



インシデントレポート SCP-114514:
20██/██/██、この報告書の影響と思われる大規模なミーム災害がサイト-2525で発生しました。
報告書提出時点で執筆した職員、並びに受理した上位職員がSCP-114514のミームに曝露して居たものと考えられています。
曝露した職員は記憶処理或いは解雇処分が為されました。
2度とこのようなことが起きないよう、今後は報告書提出の際に対ミーム処置を経由させてください。オナシャス。



◆◆◆◆◆◆


313 : ジャック・ブライト&キャスター  ◆As6lpa2ikE :2016/03/06(日) 10:19:14 Xb3LHuCQ0
「~~♪」

東京。下北沢駅。
私ことジャック・ブライトは鼻歌を歌いながら――周りの人々は気分が悪そうに顔を顰めているが、それは決して私の所為ではないだろう。日本人は何かと悩み事が多い民族らしいからね――駅構内を歩いていた。
はたから見れば、私の目元は細まり、口元はニヤニヤとだらしなく緩んでいるのだろう。
何故私がそこまで上機嫌なのかは、
私がサブカルオタクであることとさっきまで秋葉原に居たこと、
そして漫画やフィギュア、アニメDVDと言ったグッズがギュウギュウに詰め入れられた紙袋が私の両手にあること、の3つから考えれば、誰でも察しがつくだろう。
自分の好きな場所を好きなだけ散策し、欲しいものを欲しいだけ買うという、何かと行動が時間や金に縛られることの多い現代人が聞いたら思わず羨ましがるであろう1日を過ごした私は最高に幸せな気分で歩いていた。
しかし、私が歩いているのは自分の家への帰途ではない。
どころか、私が今現在いる都市・東京には――いやいや、日本にすら私の家と呼べるものはないのだ。

◆◆◆◆◆◆

数時間前、私はこの場所――東京下北沢のとある道端にいつのまにか立っていた。
否、正確には『道端に立っていた青年を乗っ取った』と言った方が適切だ。
この街で目を覚ました時、私(青年)は右手に『首飾り』を持っていた。触れた者の人格を消去し、私の人格に上書きする首飾り――『SCP-963-1』を。
おそらく、何らかの理由でSCP-963-1はこの極東の都市の道端に落とされ、不幸にもそれを拾ってしまった青年がこの私に『なった』ということなのだろう。
まあ、SCP-963-1の見た目はいかにも高価そうな宝石が付いた首飾りなのだから、『触れた者の人格を消す』なんて特性があるのを知らない限り、道に落ちているそれを拾わない人間なんてそうはいまい。

最初、私は困惑しつつも自分が置かれている状況をそのように分析した後、『これからどのようなアクションを起こそうか』と考えた。
まず思いついたのは飛行機に乗って『財団』本部へ帰るという案。私が普通の博士であれば、これを即採用したかもしれない。
しかし私は博士であると同時にSCPオブジェクトでもあり、何かと敵を作りやすい『財団』職員の中でも特に敵が多い人物なのだ。
特にとある宗教団体にとっては、他人の身体を乗っ取れるという私のような存在は魂を汚すものであり、断じて許せないらしい。
そんな私が飛行機に乗り、万が一ハイジャックにでもあったら、目も当てられない。
『財団』の監視がない状態で飛行機に乗るのは極めて危険だろう。
よってこの案は却下だ。

また、『財団』に連絡を取る手段(この場合だと青年の携帯電話を使って直接電話やメールをする)がないわけでもないが、『財団』が遠く離れた異国の一般人からの連絡にマトモに応えてくれるのかは疑問だ。
そもそも、『財団』の博士にしてオブジェクトである私(SCP-963-1)がいつのまにか海を越えた島国にやって来ているという、ある意味収容違反とも言える事態が起きた時点で『財団』がマトモに機能しているとは思えない。

その後も私は色々とあーでもないこーでもないと考えた末、

「うーむ、仕方がない。ここは『財団』が動くのを待った方が良いだろうな。 困った困った。
しかし、かと言ってその間何もしない、動かないというわけにもいかないな……『財団』の目に付きやすくなるよう、人通りの多い場所に行くべきだろう。
……よし、じゃあそのために、かの有名な電気街――アキバにでも行こうかな? 参ったなあ」

と、渋々そのようなアイデアを思いついたのであった。
いやあ、困った困った。ふふふ。

◆◆◆◆◆◆


314 : ジャック・ブライト&キャスター  ◆As6lpa2ikE :2016/03/06(日) 10:20:06 Xb3LHuCQ0
幸いなことに、私が乗っ取った青年の持つ財布には、十分な金とクレジットカードが入っていた。
青年の見た目はかなり若いのだが、もしかすればもう既に何か職に就いているのかもしれない。


(こんな大金を持ち歩くのだから、彼が就いていたのは世界レベルの仕事なのだろう)


そんなことを考えながら、私は下北沢駅から電車に乗り、途中で路線を変え、無事秋葉原駅に着いたのであった。(意外なことに、途中で迷子になることは全然なかった)
そこで私はジャパニーズオタクカルチャーを堪能した。

街頭テレビで流れるアニメCM!

ケバブ!(中東文化)

某アイドルアニメキャラのバッジを全身に付けた集団!

狭い土地に建てられた、怒張した[編集済み]のようにそそりたつアニメショップビル!

以前から日本のサブカルチャーに興味を持っており、しかしこうして私的な目的で現地を訪れ、観光することのなかった私はそのどれもに感動と興奮を覚えた。
途中で立ち寄った家電屋に並ぶテレビや駅前で配られている号外では、現在都内で起きている連続殺人事件とやらについて騒がれていたが、そんなものには目も耳もくれない。
なにせ私は『不死の首飾り』を持っているのだから。近くで連続殺人事件が起きていようと、銃撃戦が起きていようとも全く心配はない。

それでもチラチラと目や耳に入ってきたテレビの音声や号外の記事の中には、『犯人は褐色の巨体』や『全身に禍々しい刺青』だの何処かで会ったことのある知り合いを連想させるワードがあったが、まあ、気のせいだろう。
いやいや、まさか私と言う1つのオブジェクトに加えて、どこぞの褐色兄弟まで収容違反するわけが――それも私と同じく遠く離れたこの異国にやって来るわけがあるまい。
きっと他の未収容オブジェクトか何かだろう。日本支部の働きに期待するばかりだ。
そんなことよりも、もっともっとアキバを楽しまねば、もとい、『財団』から見つかりやすいように『首飾り』を目立つようにかけた状態でより人通りの多い場所に行かねば。
私を狙う宗教団体に見つかる可能性?
なんだそれは?
ところで、ソウルジェムはどこで売っているのかな?

◆◆◆◆◆◆


315 : ジャック・ブライト&キャスター  ◆As6lpa2ikE :2016/03/06(日) 10:21:29 Xb3LHuCQ0
時系列は現在に戻る。
秋葉原を堪能し終えた私は、『いくら人通りの多いアキバとは言え、そこに『財団』関係者が居て、その上私と接触する可能性はかなり低いのでは?』ということに気がつき(いや、気がついたのは本当に秋葉原観光を終えた時なんだよ。本当さ)、下北沢へと帰ってきたのであった。
とはいえ、先ほども述べたように私には帰る家がない。
ズボンのポケットを漁ると、青年の家のものと思しき鍵が見つかったが、生憎それには親切丁寧に彼の家の住所が書かれてはいなかった。日本人は世界一親切な民族ではなかったのか?
数時間前までは『まあ、最終的にはなんやかんやで帰れるだろう』と楽観的に考えていた私のテンションも急激にシリアスなそれへと変わっていく。
気がつけば、辺りは夜の闇に 包まれ、私は鼻歌を歌うのをやめていた。
と、そんな風に私が今後の展開に不安を抱いていた時、




彼は現れた。




「 お ま た せ   」


突如、私の横から出現した男は私に向かってそのような挨拶をしてきた。
年齢は20代前半くらいで、肌は褐色――SCP-073やSCP-076のようだ。
?。
誰だこいつは?
というか、いったい何処から現れた?
『おまたせ』と言うことは私を迎えに来た『財団』職員か?
いや、彼の雰囲気ややけにラフな服装(白地のシャツに横書きで『ISLANDERS』と書かれている)からはそのような印象は見受けられない。
困惑する私をおいて、彼は突然前に向かって歩き出した。


「ついて! 来いよ!」


……。
どうやら、私をどこかに案内するつもりらしい。
さっきの『おまたせ』と言い、この発言と言い、初対面であるにも関わらず、どうにも彼は私に対してやけに馴れ馴れしい。
まあ、いい。どうせ帰る家や行くアテがないのだからついていこう。
と、もはや自暴自棄な気持ちになってしまった私は彼に続く。

そこからしばらく歩き、坂道の中盤辺りで彼は


「こ↑こ↓」


と言いながら、道の左側に建っている一軒家を指差した。
なにやら発音がおかしかった気がするが、日本語の発音に外国人の私がツッコミを入れるというのはかなりおかしな話なので気にしない。
男はそのままその家の中へと入って行く。私もそれに続いた。


「†悔い改めて†」


??。
悔い改めて?
何かの宗教か?
宗教団体に良い思い出がない私は、玄関から上がった男のそのようなセリフに思わず身構えてしまったが、どうやら彼は『いいよ、上がって上がって』と言ったらしい。滑舌が悪すぎる。
その後、玄関から客間へと案内され、そこにあったソファーに2人で腰掛けた。
ソファーの真正面から見れば、右側に私、左側に彼という座り方だ。
そこで彼はタイムがどうだの大会がどうだのわけのわからないことを言った後、


「まず東京さあ、聖杯……あんだけど……獲ってかない?」


と提案した。
まず?

◆◆◆◆◆◆


316 : ジャック・ブライト&キャスター  ◆As6lpa2ikE :2016/03/06(日) 10:22:09 Xb3LHuCQ0
その後の彼――いや、今となっては『キャスター』と呼ぶべきだろう――キャスターの説明によると、この街――どころか東京は『聖杯戦争』の為に作られた偽物なのだそうだ。
建物も、人も、場所も、全て偽物。紛い物。虚無。
そんな物を用意してまで開催される『聖杯戦争』とは何かと言うと、それはどんな願いも叶える奇跡にして万能の願望器『聖杯』を巡る戦いであるらしい。
『財団』所属の身としては、そんな素晴らしく便利な物には絶対裏があると思うのだが………、それはさておき、私はその『聖杯戦争』の参加者――マスターの一人に選ばれてしまったのだ。
その証拠に私の身体――ではなく、SCP-963-1の裏面には三画の赤い、赤い紋様が刻まれている。
これは『令呪』と言うらしく、これを一画消費する毎に私はキャスターになんでも命令出来るらしい。エロゲか何かにありそうな設定だ。キャスターが麗しい少女ではなかったのが実に悔やまれる。
そして、キャスター――魔術師を名乗るその男は私の為に戦うサーヴァントであるらしい。
キャスターが私を案内したこの建物も、彼が召喚した物――『宝具』、またの名を『工房』と言うヤツである。
この話を彼から聞いた時、こんな一軒家を召喚する彼はたいしたキャスター(魔術師)だ、と私は感心したが彼に言わせるとこんなものはまだ彼の『本気』を出す為の下準備に過ぎないのだそうだ。
何のための下準備なのか、と思ったがそれ以上の説明はされなかった。どうやら、まだ話すべき時ではないらしい。
とにかく、その下準備とやらが終わった時、キャスターはようやく『本気』を出せるのだ――彼曰く、『聖杯戦争』で優勝できるほどの『本気』を。

その他にもキャスターの話を聞いた限りでは、どうやら彼には、『聖杯』や『聖杯戦争』に知的好奇心があるだけの私に対し、それにどうしても託したい願いがあるらしい。
聖杯に叶えてもらいたいことが――聖杯にしか叶えられないことが。
どっちみち、『財団』へ帰るには『聖杯戦争』を勝ち進む必要があるので、私はキャスターと協力してこの戦いに臨むことを決めた。

◆◆◆◆◆◆

ともかく、それが『宝具』や『工房』という物騒なものとは言え、住むところが出来たのはありがたい。
そのおかげで翌日も私は東京生活をエンジョイ、ではなく、情報を収集するために都内繁華街へと足を運べられるのだから。
しかし、と私は考える。
この世界が『聖杯戦争』の為に生み出され、あちこちからマスターやサーヴァントとして参加者が集められたと言うのなら、今現在都内を騒がせている連続殺人鬼はやはり……。
ううむ……、この件については『工房』に帰ってからキャスターに相談するべきかな。
私がそう考えていると、都内某駅に向かう電車がやって来た。
電車のドアが開く前、そのガラスに私の姿が映る。
そこにはSCP-682のような――より一般的なたとえを用いるなら、爬虫類のような見た目の男がいた。
どう贔屓目に見ても、ハンサムとは言えない顔である。
やれやれ、これではナンパもロクにできないじゃあないか。
私はため息をつき、それでも軽い足取りで電車に乗り込んだ。


◆◆◆◆◆◆


◆◆◆◆◆◆


◆◆◆◆◆◆


317 : ジャック・ブライト&キャスター  ◆As6lpa2ikE :2016/03/06(日) 10:23:29 Xb3LHuCQ0
『やめてくれよ………(絶望)』


『ヤメロォ!(建前)ヤメロォ!(本音)』


『いやぁ~、キツイっす』


『ヴォエ!』


『お○んここわれちゃあ^~う』

『デデドン!(絶望)』


東京都内、下北沢の各地ではそのような声が上がっていた。
多くのホモたちの体調が悪くなり、苦しんでいる声である。


「おっ、大丈夫か大丈夫か?」


『工房』の中に居ながらそのような街全体の異変を感じ取り、キャスターはそう言った。
セリフ自体は苦しむ人を気遣う人間の鑑のそれだが、喜に満ちた彼の表情は昏睡寸前の後輩の体を狙う人間の屑のそれだ。


「だいぶ溜まってんじゃんアゼルバイジャン」


時間が経つにつれて自身の『工房』内に次々溜まっていく魔力を感じながらキャスターはほくそ笑む。
その魔力はどこからやってきているのか? 街全体からだ。
なんと、キャスターは下北沢中のホモたちから生気――性気を吸い取り、己の魔力としていたのだ。

『聖杯戦争』に参加するサーヴァントにはマスターが魔力を有していないがために『魂喰い』と呼ばれる行為をするものもいるが、ここまでの規模での『魂喰い』は規格外である。
これは、『一生ネットの晒し者』と、半ば呪いとも言える異名を付けられ、元々魔力性が高い彼がキャスターとして召喚されたため可能になったことだ(断言)
では、なぜ彼はそのようなことをしてまで魔力を得ようとするのか。
それは自身の魔力消費量がクッソデカい宝具を発動するためだ。


「召喚(だ)そうと思えば(キャスターの風格)」


プッチッパッ!

そのような言葉と、腹の中に溜まったクソを勢いよく排泄するような音と共に、キャスターの第2の『宝具』が発動する。
魔力が人の形と化して、彼の目の前に顕現した。
そこに現れたのは坊主頭でポッチャリ……とした、いかにも頭の弱そうな、しかしどこかに気安く触れてはいけない危険性がある男である。

彼に向かって、キャスターは、


「MUR、夜中『聖杯』欲しくなんないっすか?」


と、美味いラーメン屋の屋台に先輩を誘う後輩のように語りかけたのだった――――――


318 : ジャック・ブライト&キャスター  ◆As6lpa2ikE :2016/03/06(日) 10:26:34 Xb3LHuCQ0
【クラス】
キャスター

【真名】
無銘@真夏の夜の淫夢

【属性】
中立・中庸

【ステータス】

筋力D 耐久B 敏捷D 魔力C(下記の宝具内に居る場合はA) 幸運E- 宝具A

【クラススキル】

陣地作成:A
 キャスターのクラス特性。自らに有利な陣地、『工房』を作成可能。
キャスターは下記の宝具により、一見ただの邸宅のような見た目をしている『工房』、通称『野獣邸』を作成する。

道具作成:C
 キャスターのクラス特性。魔力を帯びた器具を作成する。
特にキャスターは睡眠薬、通称『ホモコロリ』作成に特化しており、陣地内であればサーヴァントでもひとつまみほどの量で昏睡するものを作成できる。


【保有スキル】

無↑辜↓の怪物:A
ホモビに出ただけで人間のクズになったり、人間の鑑になったりする男。
生前の行いから生じたイメージにより過去のあり方を捻じ曲げられ、能力・姿が変容してしまうスキル。
元々はただの一般男性であったキャスターがたった数回のホモビ出演の所為で数多の悲劇、喜劇、冒険譚、転落劇をといったエピソードを付与された事が由来となっている。

真名秘匿:EX
真名及び過去に何をしていたかと言う事の露呈を防ぐスキル。ランクEXはあらゆる宝具やスキルは当然の事、魔法を用いたとしてもその素性が割れる事はない。
インターネット上でおよそ1145141919810人から自己のスキャンダラスな姿を見られたにも関わらず本名は勿論、目撃談が一切出ていないというキャスターのエピソードに由来したもの。

真夏の夜の淫夢:A+++
常識的には忌避されるべき存在であるにも関わらず世間に広く浸透した作品――『真夏の夜の淫夢』。
このスキルはそれを始めとするホモビやそれに関係する作品に登場する人物や生物、無機物や概念に与えられるもの。
対戦後、目撃者と対戦相手の記憶にはこのスキルを持つサーヴァントの姿、発言、行動が強く記憶に残る。
ランクが高ければ高いほど、対戦時間が長ければ長いほどこのスキルの効果は強まる。
いわば、情報抹消と真逆のスキル。
この説明だとこのスキルが保有者の不利となるものであるかのように思われるが、それはスキルランクが低い場合の話だ。
A++にもなれば、ほんの数分の対戦をするだけでキャスターの目撃者と対戦相手はその後ずっとキャスターのことしか考えられない状態に陥る――マトモな思考が出来ないほどに。
つまり、このスキルの真骨頂は相手の思考を阻害するレベルで自身の存在を相手の記憶に刻み込むことなのだ。



【宝具】

『其の指で示すは孤高の邸宅(野獣邸)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-

生前、キャスターが出演したホモビ内で彼の自宅とされていた建物(通称『野獣邸』)が宝具に昇華されたもの。
見た目はTDN何処にでもありそうな邸宅だが、今回の聖杯戦争ではキャスターが下北沢中から集めた魔力をプールする場や結界として機能する。
内部構造は玄関、客間、屋上、キッチン、地下と立体性に富んでおり、高ランクの直感スキルを持っていない限り、ここに一度入った者はそこから抜け出すのは勿論、キャスターの『いいよ上がって上がって』『まずうちさぁ、屋上、あんだけど……焼いてかない?』といった案内無しに探索する事すら困難である。
また、先ほども述べたように、この宝具にはキャスターが街中から集めた魔力が常にプールされているため、ここでのキャスターの魔力ステータスは2ランク上昇する。


319 : ジャック・ブライト&キャスター  ◆As6lpa2ikE :2016/03/06(日) 10:27:20 Xb3LHuCQ0
『此処に集うは電脳世界を巣食う者たち(淫夢ファミリー)』
ランク:E-~EX 種別:- レンジ:- 最大捕捉:-

キャスターが『淫夢王』とも言えるほど『真夏の夜の淫夢』を象徴するキャラクターであるため、使えるようになった宝具。
『真夏の夜の淫夢』および、その他のホモビ、またはそれに関連する人物や生物、無機物や概念を召喚する。
召喚された彼らがキャスターに協力するかどうかは別問題。

それらを召喚する際には魔力を消費する。
その量は
D:キャスターと同じ作品に出たキャラクター(MUR、KMRなど)
C:キャスターと同じ制作会社のホモビに出たキャラクター(COATキャラ)
B:キャスターとは別の制作会社のホモビに出たキャラクター(アクシード、サムソンなど)
A:ホモビには出ていないが『真夏の夜の淫夢』関係で有名になったキャラクター(クッキー☆、変態糞親父など)
の順で多くなっていく
――が、一部例外が存在し、召喚するのがキャスターと同じホモビ作品に出ていても無辜の神性を獲得している人物(GO)だと消費する魔力は著しく多くなるし、
ホモビに一切関係なくてもキャスターに容姿が近い人物(NSDR兄貴、鈴木福など)だと逆に少なくなる。
また、召喚された彼らが現界し続けるのにも魔力が消費され、その量は召喚する際に消費されるそれの量と同じ順で多くなる。
召喚されたキャラクターたちはサーヴァントとしての性質を帯び、それぞれが自身に適当なランクのスキル『真夏の夜の淫夢』を持つ。
また、彼らは一定のーー今回の聖杯戦争で言えば丁度1下北沢分くらいの範囲内であれば、キャスターから離れて行動することが出来る。
1度に召喚できる数に特に制限はないが、重ねて召喚すると通常以上に魔力が消費されるので滅多に出来ない。

【weapon】

迫真の演技力

ホモコロリ

『此処に集うは電脳世界を巣食う者たち(淫夢ファミリー)』で召喚されるキャラクターたち

【人物背景】
24歳、学生。身長170/体重74。ノンケモデル(大嘘)。枕がデカイ。
これが今現在判明している彼の情報の全てである。
それ以外の名前や学歴、家族構成、性別といったプロフィールは一切不明。
そのため、彼についての様々な憶測や噂、嘘が今もなお日に1919個ほどインターネット上を飛び交っているのだ。
実のところ、最初に述べた情報もそれが真実なのかどうかは分からない。
まさに不明瞭で不明確な存在。
ただ、そこに1つ明瞭で明確な真実があるとすればそれは――

【サーヴァントとしての願い】
かつて自分が犯した『ホモビ出演』という過ちを無かった事にする。

【方針】
スキルや『宝具』で相手よりも優位に立った状態で戦うことにする。
とりあえず今は街中から魔力を集め、『此処に集うは電脳世界を巣食う者たち(淫夢ファミリー)』を度々発動していくつもり。

【捕捉】
キャスターによって生気/性気を吸われた下北沢中のホモたちが体調に異常を起こしています。


320 : ジャック・ブライト&キャスター  ◆As6lpa2ikE :2016/03/06(日) 10:28:09 Xb3LHuCQ0
【マスター】
ジャック・ブライト(SCP-963-1/不死の首飾り)@SCP Foundation

【人物背景】
SCP財団1の問題児にして天才博士。
数々のオブジェクトの研究に貢献している。
かつて、アベルの収容違反をきっかけに死亡するも、その時たまたま手に持っていた首飾――SCP-963-1の異常特性により、それ以降『SCP-963-1に触れたものの人格を乗っ取ること』ができるようになった。
SCP-963-1をかけて30日経った人間からSCP-963-1を取り上げると、完全なるブライトのコピーとして振る舞うようになる。
それをいいことに、いろんな人物を好き勝手乗っ取り、いろんなことを好き勝手していたブライト博士にしびれをきらした財団は『ブライト博士が財団で2度としてはいけないことの公式リスト』(全およそ300項目)を作成。
それに載っていることから推測するに、彼は極端な下ネタとサブカルチャー好きであり、たびたびアベルとSCP-682にちょっかいをかけているらしい。

【能力・技能】

SCP-963-1による人格の乗っ取り

SCPオブジェクトに関する膨大な知識

生命工学や異常遺伝子工学についての知識と技能

サブカルチャーについての知識

【マスターとしての願い】

死なずに帰りたい(笑)

【令呪の位置】

乗っ取っている身体ではなく、SCP-963-1本体の裏面に宿っている。
つまり、『聖杯戦争のマスターであるブライト博士』は常に1人しか存在しない。

【方針】
いち財団職員として、『聖杯』という異常現象を見逃すことは出来ないし、個人的にもそれにかなり興味がある。
また、聖杯を得るために集まった他の参加者たちも気になるので、彼らと接触してみたい。
まずはアベルをなんとかしなくては……。

【捕捉】
今現在、ブライトは爬虫類のような顔をした『遠野』という名前の日本人男性の身体を乗っ取っています。
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、SCP FoundationにおいてThe Duckman 氏が創作されたSCP-963のキャラクターを二次使用させて頂きました。


321 : ◆As6lpa2ikE :2016/03/06(日) 10:29:20 Xb3LHuCQ0
投下終了です


322 : 名無しさん :2016/03/06(日) 10:40:36 TOVnSiEY0
下北沢に永遠に隔離して、どうぞ(迫真)


323 : ◆7u0X2tPX0. :2016/03/06(日) 11:49:02 GPM6Bdcs0
投下します


324 : アルフォンス・エルリック&セイバー ◆7u0X2tPX0. :2016/03/06(日) 11:51:14 GPM6Bdcs0
それは偶然だったのだろうか


夕方
学業を終え帰路についていた僕は、夕焼けの光を背後にあまり人通りのない路地を歩いていた。
いつもの帰宅コースではない。物騒なニュースも飛び交っているし、そうでなくとも普段はあんまりそういうところは通らないのだけど、今日に限って何となく騒々しさを避けたくなってこちらに足を向けてしまった。

────二人と一匹がすれ違った

ひょろっとした体格の男性と小さな女の子、そして大きな犬
家族だろうか、楽しそうにはしゃぐ女の子に父親らしき男性が困ったように、しかしどこか嬉しそうに返事をしている。犬は二人と平行して歩いている。

背後の幸せそうな声が遠ざかるのを感じながら、僕は愕然と立ち尽くしていた。


『僕達が助けられなかった女の子がいます』
『その子をずっと忘れる事ができません』


忘れていた自分の声
忘れていた自分の記憶
かちりかちりとピースが嵌まっていくと共にそれらを隔てていたガラスの壁が破られていく


最後の割れた音と共に、僕は自らの本当の記憶を「思い出した」
偽りの支配から目覚め、真実を取り戻した。
しばらくの間そうして立ち尽くしていたら、赤い人影が突然、僕の目の前に現れた。



「よう、『マスター』」



※※※※


「────僕は戦うよ」


とある学生寮の一室
一人で生活することを想定して設えられたそこに、今は二人の人間が存在していた。
片やラフな格好をした金髪金目の人当たりの良さそうな好青年
片や黒のインナーに赤い外套というかなり目立つ格好、しかも白髪に緑と赤のオッドアイという異様な風貌をした男
一見アンバランスな組み合わせだが、それを怪しむような人間はここにいない。
青年はいつもは休息と安眠の場とするベッドに腰掛け、男は青年の目の前に立ち塞がるかのように立っている。

「聖杯を手に入れるのか?」
「違う、願いを叶えるために戦うんじゃない

………願いを叶えるために誰かが犠牲になるなんて絶対におかしいし、誰かを犠牲にして叶う願いなんて僕は絶対に認めない

だから、僕はこの聖杯戦争を止めるために戦う。そしてこんな『殺し合い』をさせている聖杯を破壊する」

そうきっぱりと、青年────アルフォンス・エルリックは男に宣言した。

「戦いを止めるために戦う、か………無茶苦茶言うなお前」
「無茶苦茶で結構、慣れっこだしね。
というわけで、これが僕の意思だよ」
「まあ、そんならしゃーねーな、俺はお前のサーヴァントだ。お前のやり方に付き合ってやるよ」
「へへ、ありがとう『セイバー』」

満更でもなさそうな自らのサーヴァント『セイバー』にアルフォンスははにかんだ笑みと共に礼を述べる。
アルフォンスが巻き込まれたという『聖杯戦争』と呼ばれる戦いについて説明してくれた男だ。


325 : アルフォンス・エルリック&セイバー ◆7u0X2tPX0. :2016/03/06(日) 11:52:07 GPM6Bdcs0
「それで、今後はどうするつもりだ?」
「うーん………どうしよう、しばらくは情報収集かな。えーとエドガワ区?の大量殺人のことも気になるし、もし兄さんや僕の知り合いが巻き込まれてるなら早いうちに会っておきたいな」
「………さっきも言った通りこの街にいるほとんどの連中はNPCっつー『役割』を与えられた人間だ。
見知った顔でもお前の知り合いそっくりに造られたNPCかも知れねえし、本物だったとしても記憶が戻ってないならお前のことは分からねえ
あるならあるでそれはマスターや………可能性は低いがサーヴァントになってるってことなんだぞ」
「………そうかもね、でもどっちにしろ会うに越したことはないから」

セイバーが言ったことを想像しアルフォンスは形容しがたい心持ちになる。
キメラやホムンクルスを知っている身としては「造られた人間」というのに複雑な心境になるし、兄を始めとする身内や友人、知り合いが自分を覚えていないところを想像すると胸が痛くなる。
また、かつて敵対した者がマスターやサーヴァントとして再び立ち塞がる可能性があると思うとなんとも言えない苦々しさを感じた。

が、一先ずそれは振り払う。
考え過ぎはろくな結果にならないというのは旅の中で体験済みだ。

「あんまりあれこれ考えてても駄目だ。今は出来ることをやろう」

そういって、ふとベッド脇の目覚まし時計に視線を向ける。

「あれ、もうこんな時間か」

セイバーと色々話していたせいか、とっくに短針は7を過ぎていた。途端に空腹感が訪れる。
食堂は閉まっているわけではないが、相手もいることだしせっかくだから自炊でもしようかとベッドから腰を上げかけた。
が、その前に「あーちょっと待て」とセイバーに呼び止められる。

「ん?何?」
「いや、忘れてたんだがよ、『セイバー』っていうのはこう………役職みてえなもんってか、とにかくそれとは別に真名っていうちゃんとした名前があるんだよ」
「え、そうなの?」

聞いてないよというアルフォンスに対し、とセイバーは言うの忘れてたんだよぶっきらぼうに返して顔をそらす。

「適当すぎ………」
「悪かったな、まあ真名っていうのは普通隠しとくもんだから普段はセイバーでいいんだが、一応言っとくぜ」
「一応じゃなくてちゃんと言ってよ」
「へいへい」

セイバーはごまかしぎみに白髪をガシガシと掻き、アルフォンスへと向き直った。

「んじゃ、ちゃんと聞いとけよ。
俺の真名はラグナ、『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』だ」
「ラグナ=ザ=ブラッドエッジ………なんかすごい名前だね」
「うっせえな、まあ『ブラッドエッジ』は通り名みてぇなもんなんだがよ」
「ふーん………まあいいや、分かったよ。じゃあこれからよろしく、ラグナ」
「おう。よろしくな、アルフォンス」

アルフォンスは立ち上がって手を差し出し、セイバー────ラグナはその手を握る。

ここに、彼らの聖杯戦争の戦いが始まった。



(………兄さん、か)

セイバーは手袋越しにマスターの握る手の力強さを感じながら、遠いものを感じるかのようにその単語を心の中で呟いた。


326 : アルフォンス・エルリック&セイバー ◆7u0X2tPX0. :2016/03/06(日) 11:53:14 GPM6Bdcs0
【クラス】
セイバー
【真名】
ラグナ=ザ=ブラッドエッジ@BLAZBLUE
【属性】
混沌・善

【パラメーター】
筋力:B 耐久:D 敏捷:B 魔力:D+ 幸運:D 宝具:A


【クラススキル】

対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:E
騎乗の才能。大抵の乗り物なら何とか乗りこなせる。


【保有スキル】

ソウルイーター:B
周囲や攻撃時に対象の生命力と魔力を吸収し自身の体力と魔力を回復する
かつては制御ができず常時自己や他者の生命を奪い続けていたが、現在は完全にセイバーの制御下にある。

黒き者:C
世界の敵とされた者の特殊スキル
Cランクの直感と勇猛のスキルが発揮される。
また属性:秩序のサーヴァント相手には有利な補正がつき、勇猛のランクがBになる。
このスキルのランクがBになればEランク相当の「狂化」のスキルが追加され、ランクが上がるにつれ「狂化」のランクも上昇する。
本来はBランク以上でもおかしくないはずだが「他者を守る、助ける」という信念を持っているために低下している。

戦闘続行:A
往生際が悪い。 
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

反骨の相:C
世界を支配する統制機構に反旗を翻したSS級反逆者としての性質
同ランク以下のカリスマを無効化する。


【宝具】

『蒼の魔導書(ブレイブルー)』 
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1~5人 
魂を対価に「境界」から無尽蔵の力【蒼】を汲み取るために作成された魔導書。セイバーの右腕に擬態している。
「最強」であり「原書」とも呼ばれる。
発動すればセイバーのパラメーターがワンランクアップし、「ソウルイーター」がA+ランクに、「対魔力」がAランクに上昇する


『猛襲する漆黒の闇(ブラックオンスロート)』 
ランク:A 種別:対城宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人 
宝具『蒼の魔導書(ブレイブルー)』を発動中に使用できる。
対象を捕捉後、武器である「ブラッドサイズ」が鎌状に変化し強烈な連撃を放つ。
対象から大量の生命力と魔力を吸収する。



『目覚めよ、獣(ブラック・ザ・ビースト)』
ランク:EX 種別:??? レンジ:??? 最大捕捉:???
セイバーの「世界の破壊者」としての本質、正体が宝具化したもの
ある条件を満たすと発動される。
パラメーターが著しく向上し、スキル「ソウルイーター」と「黒き者」のランクがEXに、「対魔力」のランクがA++まで上昇する。
特に属性:秩序を持つサーヴァントに対して絶大な威力を発揮する。
また属性が「混沌:狂」に変化する。
こうなるとマスターですら制御が困難になる。

そのある条件とは[削除済み]


【Weapon】
ブラッドサイズ
セラミック製の大剣、鎌状に変形させることができる。


327 : アルフォンス・エルリック&セイバー ◆7u0X2tPX0. :2016/03/06(日) 11:56:03 GPM6Bdcs0


【人物背景】
「死神」の異名を持つ世界虚空情報統制機構SS級反逆者であり、「蒼の魔導書」を所持する史上最高額の賞金首。

幼い頃は弟・ジンと妹・サヤとともに教会のシスターに引き取られ平和に暮らしていたが、ある日「ユウキ=テルミ」という男の襲撃を受けシスターは殺害、弟と妹は誘拐され、彼自身も右腕を切り落とされる重傷を負う。
「レイチェル=アルカード」という吸血鬼の少女の手筈で「蒼の魔導書」をその身に宿したことで辛うじて一命を取り止めたものの、自らの人生を滅茶苦茶にしたユウキ=テルミ、ひいてはテルミと強い関わりのある世界虚空情報統制機構を憎悪するようになる。
その数年後、統制機構の支部とその地下に存在する「窯」を次々と破壊し、反逆者として世界中を敵に回すことになる。

世界への憎悪と宿敵への復讐に身を焦がしていたラグナだが、様々な戦いや出会いなどを経た彼はある人物をきっかけに「失わないため、そして守るために戦う」という覚悟を持つようになる。
最新作にして最終章「BLAZBLUE CENTRALFICTION」では記憶を失いながらも、繰り返される悲劇に幕を下ろすため最終決戦に挑むこととなる。

SS級反逆者という経歴とは反して性格はぶっきらぼうで他人への面倒見が良い。
行動は無計画で大雑把、力押しになることが多く、あまり物事を深く考えないタイプということが窺える。

余談だが、文句を言ったりめんどくさそうにしつつもなんだかんだやってくれるのでファン(や中の人)からは「なんだかんだ先生」と呼ばれている。


【サーヴァントとしての願い】
不明、マスターのやり方に付き合ってやる




【マスター】
アルフォンス・エルリック

【マスターとしての願い】
聖杯戦争を止め、聖杯を破壊する
その後元の世界に帰る

【能力・技能】
錬金術
物質を理解し、分解・再構築する科学技術
優れた錬金術師であり真理を見た彼は物質を理解さえすれば手合わせで素早い錬成ができる。

格闘技・サバイバル術 など
師との修業のたまもの


【人物背景】
アメストリス国のリゼンブール出身の若き錬金術師。物語開始時点では14歳
母親を蘇らせるため、錬金術の禁忌「人体錬成」を兄エドワード・エルリックと共に犯し、「真理」を見た対価としてエドワードは左足を、アルフォンスは体すべてを持っていかれた。
その時エドワードの決死の行動により右腕を対価にアルフォンスの魂を鎧に定着させることに成功する。
そこから兄弟の失った体を取り戻すための長い旅が始まる。

温和で真面目な好青年、周りへの気配りができ困っている人を放っておけない心優しい性格である。粗暴な態度が目立つ兄とは正反対。
一方で感情的になると口調がやや乱暴になったり、時折兄であっても毒を吐いたり、一度決めたらテコでも動かないなど気の強い一面もある。
無類の猫好きで旅の途中であっても捨て猫をこっそり拾って鎧の中に飼っていたりした。

参戦時期は最終決戦で肉体を取り戻した2年後、
東方のあらゆる学問を学び体験するためにシンへ旅立った直後である。18歳

【備考】
アルフォンスは都内の学生で、学生寮に住んでます。
セイバーから聖杯戦争の情報を聞きましたが、かなり大雑把なので伝えていないまたは伝わっていないことがあるかもしれません。


328 : ◆7u0X2tPX0. :2016/03/06(日) 11:56:30 GPM6Bdcs0
投下終了です


329 : ◆7u0X2tPX0. :2016/03/06(日) 12:23:33 GPM6Bdcs0
すみません、マスターのステータス表に出典作品を記入するのを忘れていました。正しくは

【マスター】
アルフォンス・エルリック@鋼の錬金術師

です


330 : ◆CKro7V0jEc :2016/03/06(日) 23:05:38 eosNVVGo0
投下します。


331 : のび太と狂戦士(バーサーカー) ◆CKro7V0jEc :2016/03/06(日) 23:06:32 eosNVVGo0










「ドラえもーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!」










◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「……」

 ――――かつて、一人の少女が「研究所」の中から脱走した。

 彼女は、これまで研究所内で絶対の軟禁状態に置かれていたが、ある時、その防衛線を突破してしまったのだった。
 それまで彼女は、衣服を纏う事さえ許されず、代わりに金属の拘束具で覆われ、両手両足を鎖で繋がれ、核シェルターのような厳重な研究室に「保管」されていた。
 そう、彼女には人権など与えられていなかった。
 人とほとんど同じ形をしているが、「ある一つの性質」が彼女を閉じ込める尤もな理由となり、その性質がこのまま彼女を死ぬまで縛ろうとしていた。

 ――しかし、そんな窮屈な生活から、彼女は野に放たれたのである。
 それは、「自由」であったが、彼女が明るい顔でその自由を謳歌する事など無かった。

 彼女の心に芽吹いていたのは、人間への憎しみと、常軌を逸した殺人能力。
 それらは結果的に、彼女は多くの人から笑顔を消し去る為に振りかざされた。
 故に、彼女はそこに閉じ込められ続けなければならなかったのだ……。

 警備員、研究員……何百人もの人員による警戒態勢が取られ、対処の為のマニュアルも作られていたが、その全ては徒労に過ぎなかった。
 脱走した彼女は、背に生えた四本の『視えない手』で、人間の身体を貫き、破り、ばらばらに撒き散らしていった。
 警備員たちは、銃を取ったが、これも全て無駄弾だった。
 金属の弾丸は壁と床に落ちていくだけだ。
 それらは全く効力を成さず、代わりに、引き金を引いた者たちの首が切り刻まれていった。
 何十人もの命が、彼女の手で、床を血みどろに汚していった。
 空の薬莢と、血の海と、運が良かった数名の研究員だけが、その隔離施設に残っていた。


 彼女は、十何歳かの少女でありながら、生粋の殺人鬼だった。
 それも、人間の手に負う事の出来ない、怪物じみた力を持つ――そんな、猛獣のような殺人鬼だった。
 そして、人間は、そんな、怒らせてはならない殺人鬼の憎悪の業火に、膨大な油を注いでしまったのである。


 “ルーシー”


 彼女は、研究所でそう呼ばれていた。
 それは彼女の本当の名前では無かったが、父に捨てられた彼女に本当の名前は要らなかった。
 いや、それを呼ぶ者がもうこの世のどこにもいなかったのだ。
 だから、彼女は、「■」という本名を棄て、“ルーシー”となった。

 その性質から、親にも、友にも、愛される事なく……。
 心の支えとしたものは、奪われるか、裏切られ……。

 新人類“ディクロニウス”のルーシーは、角の生えた外見から、どこにあっても、侮蔑と排斥と差別と攻撃だけを受けてきた。
 虐げられた者たち、捨てられた者たち、抜け出せない地獄にいる者たち……そんな人間たちでさえ、ルーシーの傍にはいなかった。
 そう……彼らが自分より下の存在を探した時、そこにあったのがルーシーだったのだ。
 故に、ルーシーは、この世の誰からも酷い扱いをされて今日までを生きてきた。


332 : のび太と狂戦士(バーサーカー) ◆CKro7V0jEc :2016/03/06(日) 23:07:22 eosNVVGo0

「――」

 その果てに、彼女にあったのは、目の前の人間を殺し尽くすだけの悲しい殺人鬼としての人格だった。
 これ以上ないほどにディクロニウスらしい性格を見せ続ける、無慈悲な怪物だった。

 彼女も生まれ落ちた時からそうありたかったわけではない。
 普通の少女として産み落とされたならば、彼女は誰かに愛されただろう。
 しかし、そうはならなかった。

「――――」

 そして――かつて彼女が起こした連続殺人と、全く同じ事が、この東京でも起きていた。

 赤黒い鮮血の上に立つ、白い肌の何か。
 そう、それは――人間を憎み、人間をほとんど無差別に殺す、冷たい瞳の少女……。
 十五人分のバラバラ死体を見下ろしながらも、息一つ切らす事がない。
 それは、人を殺し慣れた少女。


 彼女は、『狂戦士』そのものだった。
 この世に現れた時もまた、その遺伝子の声は、彼女に人を殺せと囁き続けた。
 抗おうとしても、その憎悪に抗えない。
 それがこのクラスで呼ばれたが故の、彼女の苦痛――。



『――――――■■■』



 大事な人の名前を、いくら思い出そうとしても……。
 彼女の背に生えた、『視えない手』は、今もまた、目の前の人間を殺してしまう……。

 それが、このクラスで呼ばれた彼女の性質だった。
 しかし、そんな彼女の心には、不満がよぎる事は無かった。
 こうなった彼女がサーヴァントとして野に放たれたという事は、何れ、またかつてのように死体の山が築き上げられる……という事に違いない。

 暴走し、殺戮を始めた彼女は、『彼』の住む町にも近づいていた。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



【2日目】



 ――練馬区月見台すすきが原。


 この現代、『都心』というイメージを確立した東京都において、まだ何処か田舎の輪郭を残しているのが、この町であった。
 信じがたい事に、町の中央には、今時珍しい裏山があり、ここには、自然が未だ多く残っている。
 時折、近所の子供たちの遊び場にもなっているのだが、多くの子供は空き地や広場を使うし、普段は裏山には誰もいない。

 だから、彼――野比のび太は、辛い事があるとこの裏山に来て、ただ一人、ぼんやりと街を見下ろしたりしていた。
 ここには、大事な友との思い出もいくつかあった……だからだろう。
 ここがいくつかの冒険の入口になった事も、ある。
 しかし、その友はもういない。

(ドラえもん……)

 放課後、こうして夕暮れの街を見下ろしていると、嫌な事も忘れられる。
 その鈍くささや頭の悪さから、普段、学校で友達にいじめられているのび太には、忘れたい事も数えきれないほどあった。
 今日も、いじめっこの「ジャイアン」と「スネ夫」の二人に、いじめられた。
 それを全て、一度忘れて、時には涙を流しそうになりながら、ここでぼーっとする。

 しかし……それを忘れていたならば良い。
 彼が、今日まで、実際に忘れていたのは、こんな悲しい毎日の事ではなく、決して忘れてはならない事だった。
 そう、たとえどうあっても忘れてはならない、友との思い出と約束。

(どうして、君の事を忘れていたんだろう)

 のび太はここ暫らく、ある親友の事を、すっかり忘れて生きてきた。

 信じてくれる人がどれだけいるのかもわからないが、彼のもとには、22世紀からタイムマシンに乗ってやってきた、ドジなネコ型ロボットの友達がいたのだ。
 その名前が、「ドラえもん」だった。
 ネコ型ロボットというが、青い肌で丸っこく太っていてチビで、よくタヌキに間違えられる、そして、どこか愛嬌さえ感じさせるのび太の良き友人……それが、ドラえもんだ。

 未来の世界の道具を持ち、それを使って、ダメなのび太を助けてくれる……。
 のび太がだらしがないばかりに、子孫たちまで困っているので、のび太を矯正して未来を変える――それがドラえもんの使命だったのだ。
 これだけ言うと、まるで本当にロボットのようだが、ドラえもんもまた、人間のような感情を持ち、人間のようにダメな所をいっぱい持っていた。
 だから、のび太は彼と共に暮らしていく中で、自然とドラえもんに愛着が湧いていったのだ。
 何をするにも、いつも彼と一緒だった。
 喧嘩も何度もしたし、一緒に遊んで、冒険もした。

 いつの間にか、のび太とドラえもんの関係は、主とロボットでも、子供と保護者でもなく、大切な親友のようになっていたのである。
 親にさえ、「まるで兄弟のようだ」と言われる、二人はそんな親友だった――。


333 : のび太と狂戦士(バーサーカー) ◆CKro7V0jEc :2016/03/06(日) 23:07:43 eosNVVGo0



 なのに。



(君との日々は、あんなに楽しい思い出ばっかりだったのに……)



 ……今日まで、忘れていた。



 ふと、今日、いつものようにジャイアンとスネ夫にいじめられて帰ってきて、思わず口に出してしまった言葉――それが、「ドラえもん」という助けを呼びかける声だった。
 それは、心の奥底に刻まれていた、かつての日常を思い起こさせる言葉であった。
 その一言とともに、全ての記憶が糸を紡いでいくように思い出し、少年は今、ここにいる。
 ……つまり、その瞬間まで全てを忘れていたのである。

(ドラえもんの事も、大人になったら、忘れちゃうのかな……)

 たとえ、九九を忘れても、漢字を忘れても、絶対に忘れる事のないような共に暮らした親友の事を、忘れるなんて……。
 いじめられた事よりも、自分がドラえもんの事を、全く忘れていた事がショックだった。
 それが大人になっていくという事のように感じられて、のび太は少し憂鬱気味にここにいた。
 それに、いくら忘れていたからと言って、ドラえもんに助けを求めようとした自分もまた、情けなかった。

(――……)

 かつての、ドラえもんとの約束。
 それを、ゆっくりと息を吸い込んで、目を瞑りながら、のび太は思い出す。
 彼との笑顔の約束を、もう忘れる事のないように。





『ドラえもん……心配いらないよ。
 宿題も、おつかいも、一人でやる。
 部屋の片づけだって、ちゃんとできる』





『ジャイアンやスネ夫にいじわるされても……?』





『平気だよ、やり返しちゃうもん。
 なんでもかんでも、全部、全部、全部……!
 一人でちゃんとやる、やれるからさ!
 ……だからさ、ドラえもん。安心して、未来に帰って……!』





 ドラえもんはとうに未来に帰ってしまったが、のび太は、ドラえもんなしでも強く生きていく事をかつて、約束した。
 もう一人で、立ち上がれる。
 ドラえもんに心配をかける事なんてない。彼に心配をかけさせたりしない。

 遠い未来の世界で……この現代から繋がっているはずの未来のどこかで、のび太をきっと信じてくれているドラえもんの信頼に応える。
 その為に、もう二度と、困った事があっても、ドラえもんの事を呼んではいけない。
 そう思っていたのに、気づけば、こうしてドラえもんの事を頼ってしまっていたのだ。
 もう、こんな風ではいけない。

(……)

 塞ぎこむという程ではないが、落ち込んで体育座りしていたのび太。
 そんな彼の背中に、――少女が忍び寄っていた。

 血まみれの衣服で、二本の角を頭に生やした、少女。
 彼女は、この練馬区内で十五人もの人の人間を殺してから、この裏山に逃げ込んでいたのだ。
 この近辺には、血の海と、ばらばらに刻まれて原型をとどめない遺体が転がっている事だろう。
 何者かの『サーヴァント』となり、『狂戦士』として人間を殺していた彼女は、既に自らのマスターを探していた。

 ……だが、そのマスターでさえ、時に、殺すかもしれない。
 それが、人間全てを憎んでいる『ルーシー』の本質だった。
 人間への憎しみが……、彼女の、「内」に――。

「――にゅう!!」



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


334 : のび太と狂戦士(バーサーカー) ◆CKro7V0jEc :2016/03/06(日) 23:08:12 eosNVVGo0



「――……にゅう?」

 のび太は、不意に背後からかかった声に振り向いた。
 心臓が飛び出るような感覚であったが、振り向いた先には一人の少女がいる。
 少女といっても、小学五年生ののび太からすれば、何歳も年上で、「お姉さん」という感じだ。
 肌は恐ろしいほど白く透き通っていて、美人であったが、頭には何故か二本の角が生えていた。
 しかし、のび太はあまり角の事は気にしなかった。

「えっ、……うわあっ!」

 その少女の衣服が、膨大な鮮血によって汚されていた事の方が、ずっと目についたのだ。
 少女はニコニコと笑っているが、気の弱いのび太からすれば、失神しても全くおかしくない光景である。

 その血というのも、交通事故にでも遭ったかのような、殆ど服の全てが血塗りといった有様だ。
 一人で裏山にいる時に、こんな少女に出会い、驚き、恐怖を抱かない筈がない。
 そういえば、この東京のどこかで殺人事件が発生していたらしいが、のび太は思わずそれを連想した。
 もしかすると、この近くの出来事だったのかもしれない。
 一瞬、のび太の背筋に鳥肌が走る。

「にゅう!」

 だが、不思議がるのび太に対し、少女は、鳴き声のように、満面の笑みでそう繰り返した。
 少女は、無邪気であった。歪んだ笑みではなかった。無垢、と言い換えても良い。
 のび太より年上であるものの、まるで赤子のようである。
 どこか不安そうに彷徨っていたところで、人間を見つけた――故に、安心しているようだった。

「……」

 のび太は、しばらく愕然として動けなかったが、彼女が血まみれでありながら、何もしてこないのをすぐに理解する。
 それに、武器や凶器のような物を持っている様子は無い。
 おそらく、殺人鬼の側ではなく――危害を被った側、の感じがした。
 つまり、危険な状況からどうにか生きて逃げてきた女の人……という事だ。
 のび太は、気を失いそうなのを必死に堪えて、彼女におそるおそる訊いた。

「も、もしかして、お姉さん……怪我してるの?」

「にゅう?」

「だ、大丈夫? まさか、ニュースでやってた殺人鬼に――」

 しかし、「にゅう」とだけ鳴く彼女は、全く、質問の意図を理解していなかったらしい。
 どのくらい怪我をしているのかわからないが、彼女がそれから何か身体を痛めているような素振りを見せる事はなかった。
 とはいえ、のび太の頭は、そんなに冷静に働かない。

「……そうだ! とりあえず、僕の家に来ようよ!
 お姉さんを襲った人が、この近くにまだいるかもしれないよ……!」

 本来なら警察や病院へ行くべきかもしれないが、彼はそうしようとしなかった。
 それというのも、これまで彼の家には、警察や病院よりも便利な相談相手がいたから、その頃からの癖なのだろう。
 現在はドラえもんは家にいないとはいえ、それでも冷静に対処してくれる身近な大人がいるのは家だ。

「ほら、急ごう!」

「にゅぅ……?」

 すぐに、彼は「にゅう」の手を引いた。
 そして、困惑している彼女の手を引きながら、のび太は慌てて裏山を降りていく。



 ――近くに殺人鬼がいるかもしれない。
 このお姉さんも襲われたのだ。それなら、すぐに、一緒に大人の人たちがいる街に逃げないと。
 たとえ近くに殺人鬼がいるとしても、この人を見捨てるわけにはいかない。
 この手を放して走れば、もっと早く山を下りる事ができるかもしれないが……。

「……にゅう!」

 ……そうして走っていると、ふと、彼女は突然立ち止まった。
 のび太の足が突然止まり、身体が後ろに引っ張られた。

「うわあ!」

 彼女の力は強く、また、体重もそれなりに重く、子供ののび太が易々と手を引ける訳ではなかった。
 彼女は、のび太に手を引かれて行こうとはしなかったのである。
 頑とした意思でそこにとどまろう、という程ではないようだが、嫌がって大きな声を出し始めた。

「にゅう! にゅう!」

 相変わらず、言葉は「にゅう」だけだったが、何かを訴えているようだった。
 それを感じて、のび太がふと見てみると、彼女は、小さな繁みを指さしていた。

 今度は繁みの方に目をやった。
 すると、そこで、小さく、何かが動いたのだ。

「あそこに何かいるの……?」


335 : のび太と狂戦士(バーサーカー) ◆CKro7V0jEc :2016/03/06(日) 23:08:54 eosNVVGo0

 ――彼女を襲った悪いひと、だろうか?
 いや、そんな訳が無かった。
 殺人鬼は刺青の大人の男性、だった筈だが、そこにいるのは明らかに、小さな動物のようだ。
 それで少しほっとする。

「……わんっ」

 直後に繁みから姿を現し、走り出してきたのは、殺人鬼などとは縁遠い小さな柴犬である。

「な、なんだ犬かぁ……」

 肝が冷えたとはまさにこの事である。
 柴犬は、のび太たちの方に走り寄って来る。
 あまりに小さな柴犬で、のび太は向かってくるそれをそのまま抱き寄せた。
 犬の首には、赤い首輪がついている。

「うわあ、可愛い犬だなあ。きっと、飼い主とはぐれちゃったんだ」

 人懐っこく、すぐにのび太の頬をぺろぺろと舐めてくる。
 のび太も動物は好きだった。
 そんな姿を見て、少女はニコニコと笑っている。

「にゅう!」

 と、そんな時に、のび太は彼女の頭に目をやった。
 犬の耳と見比べるように、のび太は女性の頭を見つめた。
 犬の耳、女性の頭、犬の耳、女性の頭……交互に目をやり見比べた。

「……うん? そういえば、お姉さんも頭に耳が生えてるね。
 うーん、ちょっと変わってるよ、それ」

 今更、少女の頭のツノに気づいたのび太である。
 彼女も、のび太が何を見ているのか理解して、困惑気味に頭のツノに触れた。

「にゅう?」

「あっ、ごめんね。耳が四つある人なんて、珍しいから。
 ……でも、僕の友達なんか、ネコなのに耳が無かったんだよ。
 変だけど、すっごく良い奴だったんだぁ……」

 しかし、のび太は少女の特異な身体的特徴を、あまり気にしていない様子だった。
 少し不思議な事を、あっさり需要できるというか、「凄く変」だと認識できない程おおらかすぎる性格だったという事だろう。
 そうしていると、ふと、少女がじっとのび太の顔を眺めている事に気づいた。
 そういえば、ここに逃げてくるまで、彼女に自己紹介もしていない。
 だから、困惑しているのだ。

「あ、そうだ。僕は、野比のび太だよ」

「ノビ……ノ、ビ、タ……?」

「うん! お姉さんは?」

「にゅう!」

「にゅうじゃわかんないなぁ」

「……にゅう」

「……あ、そうか! もしかして、『にゅう』っていう名前なんだ!」

「にゅう!」

 彼女は、相変わらず満面の笑みで返した。
 つまり、彼女の名前は「にゅう」で合っているらしい。
 言葉は伝わっていないようだが、ジェスチャーで何となく会話が伝わっている。
 動物になつかれやすいのび太は、そのまま、動物のようなこの少女になつかれやすいというようだ。

「――って、こんな話をしてる場合じゃないよ!
 さあ、急ごう、にゅう!」

「にゅう!」

「わんっ」

 犬を抱いたのび太とにゅうは、そうしてまた、山を下りる為に駆け出した。





 ――――――のび太は、その手を握っている相手が、この練馬区で十五名を殺害した殺人鬼である事など、まだ知る由もない。





----


336 : のび太と狂戦士(バーサーカー) ◆CKro7V0jEc :2016/03/06(日) 23:09:36 eosNVVGo0

【CLASS】

バーサーカー

【真名】

ルーシー/にゅう@エルフェンリート

【パラメーター】

筋力B 耐久C 敏捷D 魔力D 幸運E 宝具EX

【属性】

混沌・中庸

【クラススキル】

狂化:C-
 耐久と幸運と魔力を除いたパラメーターをランクアップさせるが、「DNAの声」に乗っ取られやすくなる。
 また、常時も「ルーシー」、「にゅう」、「DNA」の三種の人格が変動し、情緒は安定しないと言える。
 更に、ルーシーの状態での人間への憎悪も、克服した分や抑えた分も含め、『狂戦士』のクラスで呼ばれた為に高まっており、抑えづらくなっている。
 ただし、それは彼女が新たに触れる人間によっては左右されるかもしれない。

【保有スキル】

二觭人:A
 新人類「ディクロニウス」。
 卵ほどの大きさに発達した松果体、二本対の角の特徴を持ち、ベクターと呼ばれる見えない複数の腕を持つ。
 彼女のベクターは、射程が2mと短いが、異常な筋力を持ち、人間の四肢を容易く引きちぎり、手刀で切り刻む事が出来る。
 また、ディクロニウスは人類への憎悪と情愛を同時に持ち合わせており、『狂戦士』のクラスで呼ばれた場合、憎悪が情愛に勝りやすくなる。

遺伝子の声:A
 人類を絶滅させる為の人格。
 ルーシー、にゅうの二つの人格に加えて発現し、人類滅亡の為に動き出す。
 狂化が進むとこの人格に乗っ取られ、他者への無差別な殺害を始める。

治癒細胞:B
 宝具を用いた治癒機能。
 細胞と細胞を繋ぐ事で相手の身体を治癒する。

気配遮断:(C)
 自身の気配を消す能力。
 完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
 本来はアサシンのクラス特性だが、バーサーカーの場合、「にゅう」の人格に移った場合に自動的にこのスキルが付与される。
 ただし、「にゅう」の人格の際に戦闘をするのは困難であり、暗殺や偵察等の為に使用する事はまず出来ない。

【宝具】

『視えない手(ベクター)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:2~ 最大捕捉:1~

 ディクロニウスである「ルーシー」が持つ背中の「透明な手」。
 通常の状態では人間に見ることはできないが、波動が強いときに限り視認できるようになる。
 高周波による微振動を発生することで物を切断することが可能となり、人間の殺傷などに用いることができ、多少熟練すると外傷なく内部の血管のみを引きちぎって殺害することも可能。
 応用として銃弾、爆風などの物理攻撃をそらせることもできるが、鉄球など質量が大きく運動量の高い攻撃はそらしきることができず、減速してダメージを抑えている。
 また、同じ宝具を戦わせる場合は防ぐこともそらすこともできないが、互いに掴むことはできる。
 力が強ければ物理的に人類を滅ぼす事が可能だが、細胞同士を繋ぐ力を使っているためあまりに使いすぎると自身の体組織が崩壊してしまう。
 ルーシーの射程距離は、通常は2m~5m程度であるが、狂化によって宝具が暴走した場合、射程距離は無限に伸び、最高で宇宙までも伸びる(ただし、前述の体組織崩壊や多大な魔力消費はある)。

『妖精の奏でた哀歌(エルフェンリート)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

 ルーシーの持ち合わせる、微かな理性。
 人間を憎悪する彼女がこれ以上憎悪する事のできない相手に齎される、心の揺らぎ。
 その不幸な生い立ち故に人間を憎悪するようになった彼女は、この宝具がある限り、他人を愛する心を思い出す事が出来る可能性を常に持ちうる。
 この宝具は、形を持たず、ルーシーの理性が芽生えつつある時、「歌」として口ずさまれる。
 そして、もしかしたら、この宝具によって、彼女の『バーサーカー』としてのクラスから別のクラスへのクラスチェンジできるかもしれない。


337 : のび太と狂戦士(バーサーカー) ◆CKro7V0jEc :2016/03/06(日) 23:10:06 eosNVVGo0

【weapon】

『視えない触手(ベクター)』

【人物背景】

 現人類を絶滅に追い込むことのできる新人類「ディクロニウス」のオリジナル。唯一生殖機能を持った個体。
 研究所を脱走した際に頭部に受けた衝撃が元で人格が分裂、「にゅう」の人格が生まれる。
 それ以来、頭部に衝撃を受けると「ルーシー」の人格と「にゅう」の人格が入れ替わるようになる。
 ルーシーは、冷徹非情に人を殺す殺人鬼の人格であるが、にゅうは、赤子のように無邪気で「にゅう」以外は単純な言葉しか話せない。

 ルーシーは、幼くして父親に捨てられた後、養護施設で幼少期を過ごした。
 角のせいで他の子供達に虐められ、やがて内緒で飼っていた犬をいじめっ子に目の前で殺されたのをきっかけにベクターが発動し、施設の子供達を惨殺し逃走。
 その後は人を殺して一夜の宿を得たりしながら彷徨っていた。
 本編開始の8年前に鎌倉へ家族で遊びにきていたコウタと出会い、初めは彼を拒絶していたが、自分の角に偏見を持たないどころか「かっこいい」と評価し一緒に遊んでくれたコウタに心を開き、彼に好意を抱くまでになった。
 だが、夏祭でユカに抱きつかれているコウタの姿を見た際コウタに裏切られたと勘違いし、ここで初めてDNAの声に従ってその場にいた無関係な人々を殺害。
 更にその後、帰りの電車に乗っていたコウタの前に現れ、コウタの目の前で彼の妹と父親を惨殺してしまう。
 しかしコウタへの想いは長年持ち続けており、それが最終的にはDNAの声に逆い自らを滅することに繋がった。
 その後は研究所に捕らえられ数年間厳重に拘束されていたが、角沢教授の画策により移送中に逃亡し、「にゅう」の状態でコウタと再会する。。

 ルーシーは無差別に殺害を行う存在であるものの、犬などの小動物は襲わない。
 人間に対しても、時折殺害を躊躇する事がある。

【サーヴァントとしての願い】

 ?????

【備考】

 現在の人格は「にゅう」の状態です。
 ルーシーの状態で、練馬区内で15人を殺害した後、「にゅう」になって、裏山にやって来ました。




【マスター】

野比のび太@帰ってきたドラえもん

【マスターとしての願い】

なし。
(現状、聖杯戦争について理解していません)

【weapon】

『ダルマ』
 亡き「おばあちゃん」にもらったダルマ。
 何度倒れても起き上がる事ができるように……という約束が込められている。
 野比家の押入れの中にあり、時としてのび太を勇気づける。

×『ドラえもんが現代にひとつだけ残した道具』
 ドラえもんが、唯一、現代に残したひみつ道具。
 ただし、これは、この世界に持ち込まれていない。
 故に、ドラえもんが帰って来る事はこの世界にいる限りは、絶対にありえない。

【能力・技能】

射撃、あやとり、昼寝において史上最強クラスの腕を持つ少年。
もうドラえもん抜きでも、ジャイアンに勝つ事ができる(と、良いのだけど……)。

【人物背景】

勉強も運動もまるでダメな小学5年生。
そんな何をやってもダメで意思が弱い性格の一方で、心優しく、いざという時には勇敢な一面も見せる。
彼を教育する為に未来からネコ型ロボット・ドラえもんが派遣され、ドラえもんの持つふしぎな道具を使って、彼の人生は少しずつ変化を伴う。
そうしてドラえもんとの楽しい日常は続いていたが、ある日、突然、ドラえもんは未来に帰る事になってしまう。
最初は大事な親友がいなくなる事を拒絶し、泣いていたのび太であったが、「のび太が心配で未来に帰れない」という心配を抱いていたドラえもんの本心を知ったのび太はある決意をする。
そう、いつものび太をいじめていたジャイアンを、自分の力だけで倒し、もうドラえもんがいなくても一人前だと証明する事である。

「喧嘩ならドラえもん抜きでやろう」

「僕だけの力で、君に勝たないと……」
「ドラえもんが安心して……」
「未来へ帰れないんだ!」

何度倒れても諦める事なく、ジャイアンに挑み、そして、勝利するのび太――。
ドラえもんは、そんなのび太の姿を見ていてくれた。
その翌朝、目が覚めたら、そこにはもう、ドラえもんの姿はなく、未来と今とをつなぐ机の引き出しは、ただの引き出しになっていた……。

参戦時期は、劇場版『帰ってきたドラえもん』にて、ドラえもんが未来に帰ってから、エイプリルフールまでの間。

【方針】

この女の人と一緒に家に帰ろう。
近くに殺人犯がいるかもしれない。


338 : ◆CKro7V0jEc :2016/03/06(日) 23:10:57 eosNVVGo0
投下終了です。


339 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/07(月) 21:56:07 q68MCsT20
皆さま投下お疲れ様です。
締め切りまで残り一週間を過ぎましたがまだまだ投下の方をお待ちしております。
それでは感想を投下します。


城戸誠&キャスター
悪の組織の王道と呼ぶべきショッカーたちを従うキャスターとは、ある意味キャスターらしい能力であり
何よりこの広い東京においては情報網が鍵となるので、彼らを上手く利用していくべきでしょう。
一方の城戸は漠然としたまま聖杯戦争に参加するので、他の主従との出会いで何か変化があるかもしれませんね。
投下ありがとうございました。

鷹野三四&ランサー
恐怖を糧とする恐ろしいサーヴァントを召喚した鷹野ですが、彼女はすでに歪んだ神となった存在。
そんな彼女に救いの手が差し伸べられるとは到底思えません。混沌としてく東京で、彼女はどのような
最悪をバラまく事になるのでしょう。今後の展開に興味が湧いてしまいます。
投下ありがとうございました。

織田信長&アーチャー
信長は沢山いるけども、こちら側の信長がマスターとして選ばれましたか。何よりサーヴァントがおっぱい……
ではなくあの女吸血鬼と来るものですから、夢のコラボが実現したようなものです。凸凹コンビらしさが
見えますが、信長は卑劣ながらも策士ではあるのでアーチャーをうまく従えることを期待します。
投下ありがとうございました。

メアリー&アサシン
記憶がないという事は、もしかしてこのメアリーは……?という予想をさせる展開ですね。
ただ、彼女のサーヴァント……ちゃんとメアリーと向き合ってくれるかも分かりませんが、彼はあまり頭も
よくないですし。字もあまり読めないというサーヴァント以前の問題があって不安です。
投下ありがとうございました。

ヴァッシュ・ザ・スタンピード&アーチャー
最盛期のリップルがサーヴァントとして召喚されるとは中々良い感じですが、問題はマスター・ヴァッシュ
のトラブル体質でしょうか。すでに厄介なことになっているのでは、彼らしいと言えば彼らしいのですが
東京であまり目立つようなことになると、例の殺人鬼のようになってしまいます……
投下ありがとうございました。


340 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/07(月) 21:56:35 q68MCsT20
クラウリー&キャスター
サーヴァントと仲を深めようとするクラウリーの姿勢は良いものです。尤も、聖杯の知識がサーヴァント
に委ねられるこの聖杯戦争だからこそ、主従関係の重要性が栄えます。ある程度の方針を立てていますが
聖杯戦争において事はうまく運ぶとはいきません。その辺りを注意し、生き残って欲しいものです。
投下ありがとうございました。

ジャック・ブライト&キャスター
なんなんだ、この糞鯖は……とんでもないミーム汚染です。一刻も早く収容しなくては(使命感)
聖杯戦争の傍ら、ブライト博士は相変わらずというか。日本を思いっきり満喫しまくってる彼の姿を
見ていると、どこか悲しみを感じてしまいます。彼の願いの裏を想像するとやるせない気持ちで一杯です。
投下ありがとうございました。

アルフォンス・エルリック&セイバー
マスターのアルフォンスの参戦時期を考えると、これからというタイミングで聖杯戦争に巻き込まれてしまった
そんな皮肉な運命を感じてしまいます。とはいえ、彼ならば覚悟が強いですし、如何なる出来事にも耐えるでしょう。
ただ、セイバーも大雑把な説明だけで、ちゃんとマスターと対話をして欲しいものですが……
投下ありがとうございました。

野比のび太&バーサーカー
のび太はどうしてこんなものを召喚してしまったのでしょう。今はまだバーサーカーとの関係は良好ですが
彼女の別人格が登場した時、のび太はどうするのか。また、聖杯戦争も把握していない点。彼の不遇が
続きそうなのが目に見えてしまいます。ドラえもんはいない。そんなのび太が自分だけでどこまでやれるのでしょう。
投下ありがとうございました。


341 : ◆CKro7V0jEc :2016/03/08(火) 00:52:53 UwQ7HSDc0
感想乙です。
では、投下します。


342 : ルーラー/セフィリア=アークス ◆CKro7V0jEc :2016/03/08(火) 00:53:21 UwQ7HSDc0



【1日目】



 凛とした麗しい外国人女性が、一人、畳の上に座って、茶を嗜んでいた。
 世に言う「日本好きの外国人」のようであるが、彼女の茶道は単純な興味の次元ではなく、割に本格的な物でもあった。
 正座にも慣れているらしく、しばらくこのまま目を瞑っていても、足を痺れさせている様子はまるでない。
 ウェーブのかかった色素の薄い髪と、青い瞳に反して、その姿は日本人以上に様になっている。

 彼女の右手には、瑞々しい緑にあふれた広い庭があった。
 高級料亭で見かけるような景色だ。灯篭が置いてあり、砂利が敷かれていて、小さな池があった。勿論、池の中にいるのは錦鯉である。
 丁度、かたんと、鹿威しが鳴って、ルーラーは、それを一つの合図のように茶碗から唇を離した。
 一息ついたところで、茶碗を置く。


(……ふう)


 彼女は、ただ、こんな場所にいるのが最も落ち着くのだった。
 彼女が生前に属していた組織においても、わざわざ彼女の為に日本風(彼女たちの住まう土地では日本を『ジパング』と呼んでいたが)に仕立て上げられた剣道場があるくらいである。
 時に、組織で会議や取引が行われる際は、彼女に配慮して料亭が選ばれる事もあった。
 それだけ「和」の心を愛している英霊が、この東京の聖杯戦争に現界したのだった。



 ルーラー――真名“セフィリア=アークス”。



 彼女は、この聖杯によって選ばれた、『裁定者』であった。
 特定の魔術師に使役するわけでもなく、ただ、この東京というフィールドの秩序を守り、聖杯戦争の破綻を防ぐのが彼女の役目だ。
 故に、聖杯に託す願いもなく、マスターという物もいない。
 強いて、彼女のマスターとして挙げるならば、ルーラーである彼女に始めに定時通達を失う、『監督役』や『監視者』と呼ばれる連中だろう。
 彼らの方針も、ルーラーのもとにいち早く届き、彼女はその『仰せのままに』対処を行うのである。

 本来、聖杯戦争は、表立って世界に影響を及ぼすような闘争ではならないのだが、このシステムに無理が生じているが故、そんな監視役が必要だった。
 人に隠れて行うのが聖杯戦争の原則だが、呼ばれるサーヴァントたちは人智を越えた戦闘能力を持ち、その上、個々の性格によっては非常に扱いづらくもある。
 その気になれば、いかにこの東京都内にあるいかなる建物でさえも一人の英霊で滅ぼし、この都市を支配出来てしまう事さえも容易な者たちが、隠密な戦争をしようなどと言うのが無理な話なのだ。

 事実、この聖杯戦争でも早速、大量虐殺が行われ、本部では、サーヴァントの「解析不備」なども発生している。
 多くの聖杯戦争では、こうしてある程度、人目についてしまうハプニングが起こるのが普通なのであった。
 当然、隠密に聖杯戦争を行うなど無理な話である。

 しかして、その無理を、最低限、押し通す為に『秩序を維持する権限』を見せつけるのが、彼女の引き受けるべき役割『ルーラー』だった。

 秩序を打ち壊し、人の目につくような大量虐殺を行う者や、破壊を行う者に、罰を与える権限を持つ、いわば『基準』の存在が、やはり必要なのである。
 誰より公正で、中立的に、審判を下す事が出来、同時にサーヴァントと渡り合えるような存在が、その役職に就き、聖杯戦争を見守らなければならない。
 そして、それがセフィリア=アークスには、それが適当なクラスだったという話である。


(こうしてのんびりしていられるのも、今の内、でしょう……)


343 : ルーラー/セフィリア=アークス ◆CKro7V0jEc :2016/03/08(火) 00:53:41 UwQ7HSDc0


 ……この模造された空間、模造された人形たちの聖杯戦争の場合、「記憶を取り戻す」という事が参加条件となるのが、他の聖杯戦争に比べて特殊であった。
 この東京の聖杯戦争では、マスターに選定されながら、「サーヴァントのいないマスター」――サーヴァントが既に脱落した者、サーヴァントを制御できない者――も少なくない。
 彼らの保護も又、監督役や裁定者の仕事の一つとして回って来るのだ。

 既に、何名か、そんなマスターを確認し、彼らに通達を行っているので、あとは返答待ちだ。
 こちらから能動的に助けに行く事は出来ないので、彼らに来てもらうしかないが、白昼堂々こちらに来れば都内など大した距離でもない。
 マスターに変なプライドがないならば、この通達を受けてルーラーの保護下に置かれ、「無事脱落」する事になるだろう。
 場合によっては、別のサーヴァントと契約を結ぼうと足掻くかもしれないが、最初から聖杯に託す望みのない者や早期敗退者は、ルーラーの保護下に置かれた方が堅実だといえる。

 また、記憶封印プログラムの解除中に記憶を取り戻す事が出来なかった者に関しても、極力、見つけ出して保護する方針だ。
 これも少なくないが、与えられた仕事の内の中ではバランスが弱いので、三日目以降は、殆ど、ルーラーが自主的に時間外労働のような形で対応を行わねばならない。
 実際に「記憶封印プログラム」が施されてしまえば、今後、NPC同然の思考になりながら、戦闘に巻き込まれて死亡してしまう可能性も否めず、それは極力、未然に防がなければならなかった。
 強制的に参加させられ、偽りの記憶を植え付けられ、何も思い出せないまま死ぬなど、この上なく理不尽な死に方をさせてしまうのは、こちらとしても不本意である。

 ……こうして考えてみると、随分多忙なスケジュールだ。
 しかし、実験に選ばれなかった者たちを不幸な目に遭わせてはならない。
 確かに、聖杯戦争の本部からすれば彼らは不要かもしれないが、聖杯戦争において、ただの無暗な犠牲は出したくないのだ。
 それこそ、何のメリットにもならない。

 それ故に、聖杯戦争中に何名かを拉致するような形で本部で保護できる状況を作っておきたい。
 それさえ早期にこなせれば、後は、社会的影響を及ぼすサーヴァントにペナルティを課すという仕事と、脱落者の保護だけで手が空く。
 必ずしもスケジュール通りにいかないというのが恐ろしいところだが。


(尤も、聖杯戦争のマスターたちの方が、かかっている負担は大きい。私が泣き言を言っている場合ではありませんね)


 世界を裏で牛耳る秘密結社である『クロノス』に属し、世界の秩序を裏から守る『クロノ・ナンバーズ』の暗殺者として、そのトップに君臨した彼女には、こうした『ルーラー』の仕事は適役であった。
 隠密に活動するのは普段の仕事上、得意であったし、かつて同様、「世界の秩序を裏から守り抜く」という事に大して、既に十二分な責任感と使命感を胸に宿している。
 その為に裁くべき悪を裁く冷徹さも持っているし、それでいて、時に臨機応変なやさしさも持てるのが、セフィリア=アークスという女性の性格だ。
 戦闘力もまあ充分と言えるだろう。
 聖杯戦争に脱落した者の対処というのも手際よく行ってくれる。



(願わくは、戦いを強いられた全てのマスターに、平穏を――)





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344 : ルーラー/セフィリア=アークス ◆CKro7V0jEc :2016/03/08(火) 00:53:59 UwQ7HSDc0

【CLASS】

ルーラー

【真名】

セフィリア=アークス@BLACK CAT

【パラメーター】

筋力C 耐久D 敏捷A++ 魔力C 幸運C 宝具A

【属性】

秩序・善

【クラススキル】

真名看破:-
 ルーラーとして召喚されることで、直接遭遇した全てのサーヴァントの真名及びステータス情報が自動的に明かされる。
 この聖杯戦争では、サーヴァントの解析が開始時点で完了していない為、彼女も同様に解析終了までこのスキルを開示できない。

神明裁決:A
 ルーラーとしての最高特権。
 聖杯戦争に参加した全サーヴァントに対し、二回令呪を行使できる。
 ただし、現時点ではサーヴァントが確定していない為、これは三日目以降に使用可能となる。

【保有スキル】

対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術・儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

カリスマ:B
 軍を率いる才能。
 クロノナンバーズのトップとしての人望は底知れず、その気になれば一国を納める事も出来る。

自己治癒:B
 大怪我を負っても短時間で再生する能力。
 肉体の強化改造によって身に着けている。

アークス流剣術:A
 セイバーが生前に極めた剣術。
 Aクラスともなると、ガドリング砲ばりの剣速で敵を粉々にする最終奥義『滅界』までも使用可能。

桜舞:A
 緩急をつけた動きで敵を翻弄する無音移動術。
 まるで桜の花びらのように掴みどころのない動きで、気配を一時的に遮断して分身のような真似も出来る。

【宝具】

『刻を護りし番人の剣(クライスト)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人

 超金属オリハルコンによって作られたサーベル型の長剣。
 いかなる攻撃でも壊されることはなく、またどれほどの高温でも原形を失わない。
 セイバーの剣速を以ては、どんな強固な武器も容易く崩れてしまう為、この宝具でなければセイバーの本領はそもそも発揮できないとされる。
 この剣から放たれるアークス流剣術の最終奥義『滅界』などは、剣技でありながら敵を粉々に吹き飛ばすだけの威力を持ち、その跡には、ただ鬼神の彫刻だけが残る。
 仮に『滅界』を使った場合、再生能力や不死性を持つ敵、体の規格が大きすぎる敵でない限り、確実に滅する事ができる程だが、これは魔力負担も非常に大きい。

【weapon】

『刻を護りし番人の剣(クライスト)』

【人物背景】

 秘密結社クロノスが擁する最強の抹殺者(イレイザー)集団、『時の番人(クロノ・ナンバーズ)』のトップ。
 各メンバーがNo.I~No.XIIIのナンバーを持っている中で、彼女はNo.Iにあたる。つまり、最初のメンバー。
 生まれた時からクロノスのために戦うことを宿命付けられており、クロノスに絶対的な忠誠を誓っている。
 その為、任務には冷徹に、強かに挑むが、仲間の殉職の報に涙するなど、本来は心優しく温厚な人柄である。
 裏切り者であるトレイン=ハートネットとも比較的関係は良好であり、彼の生き方や主義を容認している面も見られる。
 他人の力量や性格を試す事もたびたび行う為、リンスレット・ウォーカーには嫌われている。
 1月1日生まれ。27歳。A型。身長170cm。体重不明(かなり前後している)。
 視力は左右共に3.5。足の大きさは22.5cm。好きなものはジパング料理。嫌い(苦手)なものはうるさい音楽。趣味は生け花。

【サーヴァントとしての願い】

 聖杯戦争の裁定者である為、なし。

【方針】

 参加資格を失ったマスターの保護を中心に行いつつ、ペナルティなどのルールも課していく。
 また、「記憶封印プログラム」の発動後は、そのプログラムで記憶封印状態にあるマスター候補の保護も担う。
 これは、この実験において、今後、マスター以外が無暗に命が奪われない状況に置いておきたいというルーラーの方針での自主的な行動である。
 少なくとも、三日目に関してはこうした脱落者を安全地帯に集める事を最優先。


345 : ◆CKro7V0jEc :2016/03/08(火) 00:54:53 UwQ7HSDc0
投下終了です。


346 : ◆DpgFZhamPE :2016/03/08(火) 04:34:22 sZF5nLNE0
投下します


347 : アンジェラ・ラングレー&アサシン  ◆DpgFZhamPE :2016/03/08(火) 04:37:33 sZF5nLNE0
○月××日。
患者が一人、緊急搬送されてきました。
左腕及び左肩から首にかけてが欠損しており、猛獣に喰われたかのような傷痕でした。
即座に叩き起こされたドクターが処置をするが、処置も虚しく死亡。
何らかの事件性あり。

同月○×日。
失神し泡を吹いていた男性が緊急搬送。
顎を砕かれていたようで、命に別状はなかったが処置を施し入院。
経過観察に訪れ、その後の体調にて数回質問したところ「俺ももうすぐ殺される」「アイツが負けるからこんな目に」と譫言のように繰り返しており、自傷行為及び暴力行為に走るようになりました。
重度のショック状態にある可能性が考えられます。
メンタルケア専門のスタッフは慎重に対処にあたり、他スタッフが彼に接する場合はドクターの許可を得るか、メンタルケアスタッフ最低一人の同伴を原則とします。

同月×○日
完全に自我を喪失した女性が搬送されました。
何を話しかけても壁や天井を見るだけで、こちらの言葉には一切の反応を示しません。
手の甲に奇妙な痣を発見しましたが、それ以外傷は存在しませんでした。
「この痣は何か」と問うと、酷く錯乱し窓から飛び降りようとするなどの自殺行為に走ります。
よって、今後彼女に「痣に関する質問」をすることは許可されていません。
現在、彼女は強化ガラスと強固な鍵で窓を閉じた病室に収容されています。
彼女は現在、この病室から出ることを禁じられています。
収容から二日後、彼女の処置のため近づいたスタッフが痣が消えていることを確認しました。
原因は不明。




カタリ、とキーボードを叩く音がする。
凝った肩をぐるりと回し筋肉を解す。
肩凝りは現代に生きる者として切っても切れない面倒事の一つだ。
しかし毎度のように深夜まで患者の資料を纏めているここ最近は、面倒事というよりもはや難病と称した方が正しいぐらいには悪化している。
難病を一瞬で解決する万能薬でもあればいいのに、と思うが残念ながら医学はそれほど便利ではない。
ドクターの仕事がここまで身体を酷使するものだとは思っていなかった。
最近は患者も激増し、奇妙な症状も多い。
変な事件でも起こっているのかと勘繰ることもあるが、所詮妄想。
起こっていたとしても自分にどうこうする力はないし、するつもりもない。
願うことならば、巻き込まれないことを祈るのみだが―――。

「もうこんな時間」

肩凝りの軽減に背筋を伸ばすと、ふと時計が視界に入った。
時刻は23時を過ぎている。
東京ともなればまだまだ深夜と呼ぶには早い時間だが、暗くなって帰宅するのも中々辛いものがある。

「…帰ろうか」

途中まで纏めた資料を保存し、己の仕事机を後にする。
そそくさと出口に向かう。
己の仕事場とはいえ夜の病院はまだ馴れない。振り向けば何か"出る"のではないかと怯えてしまう。
出口には、警備員が立っていた。
無言のまま通り抜けるのも失礼だろうか、と思い一礼。

「ああ、今帰りかい?」
「ええ。ちょっと遅くなってしまいました」

たわいもない会話を済ませ、警備員に背を向ける。
ああ、この時間だと何時の電車になるだろうか。

「そうかい。最近物騒だからね―――帰り道には気をつけなよ、アンジェラ先生」

背後の警備員の言葉に笑顔で対応しながら、その場を去った。



○ ○ ○


348 : アンジェラ・ラングレー&アサシン  ◆DpgFZhamPE :2016/03/08(火) 04:41:02 sZF5nLNE0
予兆も兆候もなしに。
唐突に、ソレは訪れた。

ぴちゃり―――聞き慣れた、滴る血液の音。
ぐちゃり―――嫌というほど聞いた、肉が引き裂かれる音。
ゾブリ―――初めて聞いた、肉に牙が刺し込まれる音。

「え」

いつもの帰り道。何の変哲のない帰路。
日常の一風景に、非日常は現れた。
獅子の頭。山羊の胴体。蛇の尾。それぞれを合わせた三つの頭。
本来ならば同居することのない三つの身体が融合し、存在することのないモノを造り上げている。
―――『キマイラ』。通称キメラとも呼ばれる、ギリシア神話の怪物である。
獅子の頭はヒトらしき腕を食い千切り食道に押し込んでいる。
山羊の頭はこびり付いた血液を落とすためか左右に頭を振っている。
蛇の頭はヒトらしき頭部を食い破、その中身を啜っている。
一体、どれだけの人間が犠牲になったのだろう。
雨が降り注いだあとのような規模の血溜まりは、流れ出し排水溝に吸い込まれていく。
細かく散った肉片はもはや『ヒトだったもの』なのかどうかさえわからないほど、醜い。
余りにも多く散ったソレは、元のヒトがどれだけの人数だったのかさえわからない。
何せ、原型を保っている頭部さえ見当たらないのだ。
ソレを目の当たりのした女性―――アンジェラは即座に引き返そうとするが、脚が脳の指令を受け付けない。
恐怖もある。人間として、生理的な嫌悪感もある。
それらが吐き気として食道を迫り上がる。
だが、原因は違う。
彼女が脚を止めている理由は、この惨劇による恐怖ではない。

知っている。
この惨劇を、彼女の脳は知っている。

『■はお■たちに寛■■接して■た』

?がれた四肢。潰された頭部。
向けられた銃口ごと人体を潰す、暴力の権化。

『■を■れ以上怒■■るつもりなら』

ああ、恐ろしい。
思い出したくもない記憶が、彼女の脳裏に蘇る。
憎悪。暴威。暴怒。その、根源。
あの化け物は、四肢を捥ぐといった。
あの化け物は、あらゆる方法を探し出し殺すと。
ああ、蘇る。
一番忘れていたかった、死に対する絶対的な恐怖を。

『私の話が分かったか、アンジェラ―――?』


349 : アンジェラ・ラングレー&アサシン  ◆DpgFZhamPE :2016/03/08(火) 04:42:09 sZF5nLNE0
記憶が戻ってくる。
SCP財団。アンジェラ・ラングレー博士。アベル。
失われていた記憶が脳髄に帰還する。
なぜ失われていたのかは分からない。財団に記憶処理でも施されたか。
右手の甲に痛みと共に痣が浮き上がっていたが、眼中にない。
記憶の混乱。己が何故医師として生きているのか。財団はどうなったのか。
そして、目の前のキメラは、SCPなのか。
だとしたら、財団は何故収容に訪れないのか。
疑問と不安が頭の中で渦を巻く。

(でも、まずは、気付かれていない内ににげないと)

元来、彼女は度胸のある人間ではない。
声は小さく、ネズミに似たと形容されるほど弱弱しい。
だからこそ。
目の前に迫った脅威に、冷静に逃走することができなかった。

カツン、と音がした。
思わず己の足下を見る。
喰われたヒトの所有物だろうか―――血液と肉片に塗れた、タブレットが落ちていた。
蹴った。足が当たった。あまりの緊張で、足元を見ていなかった。

恐る恐る顔を上げる。
大丈夫だ。先程までキメラは食事に夢中になっていた。
大丈夫だ。先程までキメラは此方を見てすらいなかった。
大丈夫だ。だって、こんなに小さな物音だもの、気付かれるはずが―――

















「―――あ」

鎌首を擡げた、蛇と。
目が、合ってしまった。


350 : アンジェラ・ラングレー&アサシン  ◆DpgFZhamPE :2016/03/08(火) 04:43:14 sZF5nLNE0
思考が停止した。あらゆる思考が彼女から消失する。
または。
現実を受けいれられなかった彼女の精神が、目の前の事象を拒絶していた。
蛇の頭が、疾駆する。
獅子の尾として、蛇の頭としてその長い身体をくねらせ牙を出す。
首を獲らんと迫るソレに、アンジェラは抵抗することすらできない。
アンジェラは、博士だ。技術職であり、戦士ではない。
むしろ、戦闘能力なら財団の兵士より格段に落ちる。
だからこそ―――アンジェラは目を閉じることしか出来なかった。
弱者なりの、抵抗。
少しでも残酷な世界を見ないように、目を瞑ることしかできなかった。
そして、目を閉じた彼女の首に蛇の牙が食い込み―――

「GIYAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!!!」

蛇の、頭が落ちた。
頭を失った蛇、及び尾を失った獅子は激痛でのた打ち回る。
当たり前だ。キメラからすれば、三つある頭の一つが落とされたのだ。
尾とはいえ、その激痛と損害は計り知れない。
そして。

「おや。頭が三つあるというのに、よく周りが見えていないようだ」

男の、声が聞こえた。
恐る恐る、目を開く。
ひらりと風に舞う、赤のカンフー服。
しなやかに伸びたおさげが優雅にたなびく。
拳法家。脳裏に浮かんだのは、そんなイメージだった。

「宝の持ち腐れならぬ…頭の持ち腐れ、といったところですかね」
「あ、あなた、は」
「…?ああ、貴方がマスターですか?名乗り遅れました。
 サーヴァント、アサシン、真名を『風』。気軽にアサシン、と呼んでください」

男…アサシンは、血溜まりの中で不釣合いなどの柔和な笑みを浮かべる。
アンジェラは何も返すことはできなかった。
ただただ、現状の把握のみに努め―――それすらできない現状に、再び頭を抱えた。

「まずはこの獣を仕留めてから、ですね。
 …複数の獣の合成とは趣味の悪い。ヴェルデですらこのような悪趣味なものは作らないでしょうに」

そしてアサシンは哀れむように目を細め、ポツリ、と零す。

「…貴方達も被害者なのでしょう。残念ですが―――此処は、遠慮なしに、圧倒します」




○  ○  ○


351 : アンジェラ・ラングレー&アサシン  ◆DpgFZhamPE :2016/03/08(火) 04:45:02 sZF5nLNE0
それからの決着は一瞬だった。
秒すらかからないスピードで山羊の頭を足刀で落とし、獅子の頭を締め上げる。
三秒にも満たぬ戦闘。
その後、
『恐らく、キャスタークラスの置き土産でしょう。敗退したがこのキメラだけ運良く逃げ切れたのか、それとも元より放し飼いだったのか。
 主を失い枯渇した魔力を補給するため人を喰っていたようですが――どちらにしろ、私が手を下さずとも消えていたでしょう』
と何やら語り聞かせてくれたが、何一つ理解できなかったのでこの話は置いておくことにした。
そして、現在。
血溜まりの中ではまた面倒事に巻き込まれる、と移動を促したアサシンと共に逃げた私は―――現在、喫茶店にいる。

「…貴方は何者なの?あ、私はコーヒーお願い」
「ですから、サーヴァントアサシンと。貴方も聖杯を望むマスターでしょう?あ、私はおかまいなく」
「…聖杯?」
「…知らないのですか?」

注文を済ませながら会話を進めるが、どうも要領を得ない。
致命的な認識の差が生まれているような、モヤモヤした感覚が残る。

「財団の人間ではないの…?SCP収容の特別部隊の人間とか…私の護衛を任された部隊の者とか」

SCP財団の博士は、貴重である。
Dクラス職員程度なら掃いて捨てるほど存在するが、博士という職につく人間は有限だ。
それをこのような危険な場所に、死地に一人で送るような自殺行為はしまい…だからこそ、このアサシンは護衛の人間なのではないかと推測した。
だとしたら、今の今まで記憶を失いドクターとして働いていたのも、先程のキメラも何らかのSCPの影響かもしれない。
淡い期待を胸に、小さい声で問いかけた。
すると、アサシンは少し考える素振りをみせると―――

「そうですね。貴女の言う通り、財団の人間です。部隊名『アルコバレーノ』。貴方の護衛、及び外敵の駆除にやって参りました」

と。
考えうる限り、最良の答えが返って来た。

「…ほ、本当なの?」
「ええ。貴女の味方ですよ。私が命じられているのは貴女の護衛。
 やむを得ず戦闘になる場合まありますが、その時は任せてください」

ニコリと笑うその顔に、肩の力が抜ける。
それと同時に、ドッと疲れが溢れ出た。
相当精神に堪えたのだろうか。我ながらなさけないと思うが、こればかりは仕方ないと思う。
ああ、本当。
世の中は恐ろしいことばかりだ、と。
抜けた腰は、しばらく戻らなかった。


352 : アンジェラ・ラングレー&アサシン  ◆DpgFZhamPE :2016/03/08(火) 04:45:46 sZF5nLNE0
○  ○  ○

「はて。どうしたものか、ですね」

己がマスター、アンジェラ・ラングレーを自宅に送り届けた後。
アサシン『風』は、一人その屋上にて佇んでいた。

(どうやら、此度のマスターは聖杯戦争について何の知識も持っていないらしい。
 これが全てのマスターに当て嵌まるものなのか、それとも私のマスターにだけ当て嵌まるものかはわかりませんが)

冷たい夜風が頬を撫でる。
こうしていると、昔の仲間を思い出して少し頬が緩むが、生憎そんなことをしている場合ではない。
赤ん坊の頃が懐かしい―――この大きな大人の身体が一番だが、あの頃の身体も懐かしい。
聖杯戦争。サーヴァント。魔術に心得のない人間に教えたとしても返って混乱を増すだけだ。
故に、その場で話を合わせてしまった。
部隊名も財団から派遣されたというのも、すべて嘘っぱちである。

(騎士などではないことが救いですかね。上手く話をつければ戦闘になってもこのまま押し通せる…は希望的観測過ぎますね。
 そも、何故私がアサシンに…確かにヴァリアーのアジトに忍び込んだというか、鉢合わせたことはありましたけど)

潜入したことは数あれどアサシンにおいてはリボーンの方が上でしょうに、と続ける。
かといって戦闘では負ける気はないが。
アサシンに、聖杯にかける願いはない。
彼が願うのは、聖杯戦争という異境の地で拳で語り合い、猛者達と覇を競い合うこと。
謂わば聖杯などその副産物であり、彼が望むのは聖杯という『結果』ではなくその戦争という『過程』である。
だからこそ、結果としては聖杯が手に入らずとも構わないのだが、マスターがああでは先は不安だらけだ。

「さて、どうしましょうかね―――」

夜風を浴びて、無敵の武闘家と呼ばれた彼は、一人呟く。
その顔に影はない。
困難とは、あればあるだけ面白いものだ。
さて、この局面どう攻略したものか。



【マスター】
アンジェラ・ラングレー@SCP

【マスターとしての願い】
聖杯の説明を受けていないため、まだなし。
とりあえず記憶を失っていた原因がSCPによるものなのかどうか調べる。

【weapon】
特に無し。

【能力・技能】
特に無し。

【人物背景】
SCP財団所属の博士。
20代半の女性。
ふちの薄い四角いメガネでほとんど隠れた目に肩までのライトブラウンの豊かな巻き毛が特徴。
SCP財団は「SCP」と呼ばれる奇妙な物、現象、生物、場所そのもの等のSecure(確保)、Contain(収容)、Protect(保護)を目的として活動している。
割と他の博士よりかは常識人である。
今回の場では医者としての役割を与えられていた。
記憶を取り戻した後は、「財団による記憶処理をしなければいけない状況に陥ったのか」「それとも何らかのSCPの影響か」とも考えている。
聖杯戦争のルールどころか聖杯戦争自体をを理解しておらず、アサシンを今のところ自分の警護にやってきた特殊舞台程度にしか考えていない。

【方針】
記憶の一時的な喪失の理由を調べる。
SCPが原因なら…どうすべきだろうか。
聖杯戦争については一切理解していない。


353 : アンジェラ・ラングレー&アサシン  ◆DpgFZhamPE :2016/03/08(火) 04:47:58 sZF5nLNE0
【CLASS】
アサシン
【真名】
風(フォウ)@家庭教師ヒットマンREBORN!
【パラメーター】
筋力C 耐久B 敏捷A 魔力E 幸運D 宝具C
【属性】
 中立・中庸
【クラススキル】
気配遮断:C
「暗殺者」のクラス特性。
自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

【保有スキル】
天性の肉体(偽):B
生まれながらに完璧な肉体を持っていた訳ではない。
度重なる修行と武練により手に入れた完璧なる肉体。

武闘の一:A+
己の身体の全て制御下に置く、卓越した身のこなし。
ミクロン単位での精密動作を可能とする。
精神さえも己の制御下に置いているため、精神干渉の類いを無効化する。

心眼(偽):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

呪われた赤ん坊:EX
選ばれし七人とも呼ばれる。
各分野にて卓越した技術を持った七人へとかけられた呪い。
今回はアサシンとしてのクラスで召喚されたため機能していない。
ティーチャー(教師)のクラスで呼ばれた場合、赤ん坊の姿で呼ばれ、指導に特化したサーヴァントとなる。

【宝具】
『爆炼疾风拳』(ばくれんしっぷうけん)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ: - 最大補足:-

無敵の武闘家と呼ばれたその技術、その真髄。
研ぎ澄まされミクロン単位にまで正確に駆動する彼の肉体は、正確に狙った部位を破壊する。
また嵐属性の炎―――『分解』を司る炎を纏わせることにより、打撃は正確に撃ち込んだ場所に分解の追加効果を与える。

『龍焔舞蹈』(ばくりゅうえんぶ)
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:30~40 最大補足:40

極限にまで研ぎ澄まされた拳法技術と嵐属性の炎が龍の形を為す。
あらゆるものを分解する龍の一撃。
その上、肉体と同じく精密な動作を可能とし肉体を傷つけず腕時計のみを破壊するといったことも可能。
対軍宝具であり分解能力を持つ嵐属性の炎のため攻撃力に特化した宝具であるが、風はスキル『武闘の一』により発動前及び後の隙を一切なくし次の行動に移ることができる。

【wepon】
なし。
強いて言えば肉体であり、作り上げた107の拳法である。

【人物背景】
武道の達人であり、無敵の武闘家と謳われた男。
107の拳法を生み出し、その時代の武闘家の中で随一の実力を持つ。
性格は武闘家らしく心身共に清らかで物腰は柔らかく、礼儀、言葉遣い共に良い。
弟子を導くことを楽しむ師匠としての一面も持つ。
呪われた赤ん坊(アルコバレーノ)として赤ん坊にされた経験を持つが、今回はアサシンとして召喚されたため全盛期、つまり青年期で呼ばれている。
また、暗殺者の格としては「CHAOS」が口癖のヒットマンより劣るが、こと戦闘では同等かそれ以上の拳法家である。
ティーチャー(教師)のクラスで呼ばれた場合、赤ん坊状態での召喚となる。

【サーヴァントとしての願い】
一人の武闘家として、拳と拳・武器で語り合うことが望み。
よって過程こそが目的であり聖杯には何の興味もなかったが―――?


354 : アンジェラ・ラングレー&アサシン  ◆DpgFZhamPE :2016/03/08(火) 04:50:34 sZF5nLNE0
投下終了です

誤字を発見いたしました、訂正させていただきます
【真名】
風(フォウ)@家庭教師ヒットマンREBORN!
ではなく
【真名】
風(フォン)@家庭教師ヒットマンREBORN!
でした。
失礼します


355 : ◆DpgFZhamPE :2016/03/08(火) 04:55:18 sZF5nLNE0
何度もすみません
出展に漏れがございましたので、訂正します

【マスター】
アンジェラ・ラングレー@SCP Foundation

が正しい表記でした。
二度目の訂正、誠に申し訳ありませんでした


356 : ◆CKro7V0jEc :2016/03/09(水) 01:15:56 dJJAOXpM0
投下します。


357 : 上田次郎&セイヴァー ◆CKro7V0jEc :2016/03/09(水) 01:16:48 dJJAOXpM0



【2日目】



「聖杯戦争……」


 日本科学技術大学――都内に位置する、この大学の研究室で、上田次郎教授はある男と対面していた。
 散らかったデスクとセットになった椅子にもたれながら、上田は男を見上げる。その態度はどことなく尊大だ。
 大学教授という肩書を持ち、「先生」と呼ばれる以上、それなりの威厳がなければならないというのもあるのだろう。

 上田の前にいる男は、彼に全ての要件を伝えていた。
 筋肉質で長身――この特徴は上田にも当てはまる――、かつ、特徴的なのは口ひげやアフロヘアーだ。
 それはさながら、具志堅用高のような格闘家を彷彿とさせる。

 上田ほどの体格の男と、具志堅用高のような男とがこうしてデスクを挟んで会話をしている状況は極めて特異であると云えよう。
 本来なら、二人が出会うのは、リングやジムであるのが自然だ。


「なるほど、あなたの言う事はわかりました。
 ……ただ、私の口から、一つだけ言っておきましょう」


 上田は、椅子に座ったまま、目の前の男に笑顔で言った。

 この男も、こうして見ると顔立ちの悪いタイプではないのだが、良い年こいて今の所[編集済]である。
 それというのも、彼の持つ[編集済]は男性の平均的なサイズを遥かに凌駕し、それを見ただけで世の男性が泣いて逃げてしまう程の■■なのだ。
 仮にもし、その■■を女性が見たとすればどう思うだろう。
 大きい程に良いというのも事実であるが、大きすぎるという事は、[編集済]の際に誰しもに恐怖を抱かれるという事である。
 仮面ライダー然り、異形というのは時として、他人に嫌悪される存在として描かれる。
 彼の■■は、最早、そんな代物だった。
 下手をすれば、某財団に研究対象とされかねないレベルであり、彼が英霊となった時には、宝具として成立しかねない程の■■――。
 それが、今だに彼を[編集済]のままにする、悪しき呪いをかけているのだ。

 ……が、そんな事はどうでも良い。
 とにかく、上田は目の前の男に続きを言った。


「あなたの言う事は、バカげている」


 上田の口から出てきたのは、遠慮のない竹を割ったような一言だった。
 この頭の固い物理学教授が、容易く『聖杯戦争』などという物の話を信じてくれるわけがないという事だ。
 仮に、上田に話をしに来たサーヴァントが上田次郎の著書のファンだったならば結果は違ったかもしれないが、現世に現れたばかりの英霊がそんな事を知る筈もない。
 確かに、英霊には現代の知識が自動的に組み込まれるものの、上田の著書はだいたい2000部くらいしか売れておらず、社会的影響が極めて薄かった。
 売っているとすれば、AmazonとかBOOK OFFとかその辺だ。
 目安としては、だいたいAmazonだと1円(ただし送料はかかる)、BOOK OFFだと108円くらいで売っている(あくまで108円は2016年現在の消費税で換算)。
 内容は文字が大きい為にかなり薄く、どうでもいい事ばかり書いてある。
 こんな有様では、もし、全知全能の英霊がいたとしても、スルーされかねない。
 この本にあらかじめ目を通しておけというのは酷な話だった。


「いや、だから本当なんだって……!」 


 サーヴァントは食い下がろうとしたが、上田は冷静に掌を上に向けて、ドアを差した。
 退場せよ、という合図だった。


「――今日の所は、お引き取りを」


 彼の一言と共に、サーヴァントはしぶしぶこの部屋を出て、上田はわらびもちを食べ始めた。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


358 : 上田次郎&セイヴァー ◆CKro7V0jEc :2016/03/09(水) 01:17:07 dJJAOXpM0



 日本科学技術大学のキャンパスを見上げながら、サーヴァントは肩を落とした。
 自然と口からため息が漏れる。
 大学のキャンパスの外では、変な踊りを踊っている変な連中がいたが、彼はそれを無視してそこを突っ切って歩いていた。


「はあ……」


 サーヴァント――セイヴァー。
 救世主のクラスを持つ男の真名は、「マーク」。

 マークの名はあまり馴染みがないかもしれないので、彼のリングネームも重ねて伝えておこう。


 ――その誉れ高きリングネームは「ミスター・サタン」であった。


「まあ、物理学の教授じゃあ、こんな話、信用してくれないのも当然だよなぁ……」


 並みいるサーヴァントの中で、彼が戦い抜く自信はそこまでの物ではなかった。
 確かに、サタンは生前、地球のヒーローとしてあがめられる程の英雄だったし、地球では知らない者はいないほどの強い信仰がある。
 何より、「救世主」と呼ばれるにふさわしい力で、セルや『何か』から地球を救った……事になっている。

 そんな彼が英霊の座に就くのも当たり前の事であったが、実を言えば、その伝説は出鱈目だらけで、サタンは大した事をしていないのだった。
 これから出会うサーヴァントが、仮にもし、本当にセルたちを倒した孫悟空やベジータや孫悟飯ならばサタンよりはるかに実力は上になる。
 まあ、彼らの場合は話せば何とかなるとしても、セルのような相手だったとすれば、サタンは確実に戦死だ。
 死んでしまえば、サーヴァントとしての威厳を保てなくなってしまう。
 だから、生前の行いが偽りだとバレてしまうくらいあっさり負ける訳にはいかないというのが現実だった。



 ………………で、うまい事敗北から逃れたいと思っていたのに、マスターがアレというオチだ。

 根本的にマスターに信用される事すらままならない状態では、今後も見通しは薄い。
 せめて、マスターが戦闘能力を持っていれば別だったのだろうが、あの調子ではそれもなさそうだ。
 まさか、物理学の教授が、実はサーヴァントや達人と渡り合えるほどの戦闘能力の持ち主という訳もあるまい。
 そうであったら嬉しいのだが……。


「だが、どうにかして、マスターに信用してもらわなければ……!」


 サタンは、そう思いながら、どこかへふらふらと歩いていく。
 彼にとっては、普通に歩いていても人々の歓声を浴びないというのは珍しい感覚だ。
 生前にスターで英雄だった彼にしてみれば、新鮮だが、その分、寂しくもある。

 ただ、お陰で、自由に歩き回り、いろんなものに触れられるという利点がある。
 何か、話術が上手くなる本を探せばいいのだ。
 本屋にいけば、様々な本が読める。
 営業トークのやり方が書いてある新書など、腐るほど陳列されているのがこの国の書店だった。


「おっ、丁度良い。あそこに本屋があるじゃないか……」


 そうして、町をフラフラ歩いていると、彼の目の前に、オレンジと紺の看板が視えた。
 とりあえず、この店で何か本でも探すか……と、サタンは、その自動ドアをくぐった。



「いらっしゃいませ、こんにちはー」


「「「いらっしゃいませー、こんにちはー」」」



 そう、その店の名前は――――『BOOK・OFF(ブック・オフ)』だった。





----


359 : 上田次郎&セイヴァー ◆CKro7V0jEc :2016/03/09(水) 01:17:25 dJJAOXpM0

【CLASS】

セイヴァー

【真名】

マーク(ミスター・サタン)@ドラゴンボール

【パラメーター】

筋力E+ 耐久D+ 敏捷E+ 魔力E 幸運A+++ 宝具EX

【属性】

秩序・善

【保有スキル】

騎乗:D
 騎乗の才能。
 大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。

仕切り直し:B
 戦闘から離脱する能力。
 また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。

黄金律:B
 人生においてどれほどお金が付いて回るかという宿命。
 永遠に尽きぬと思われる財産を所有している。

覇者の余裕:B
 時に敵対した存在を味方につけてしまう純粋な精神。
 敵対したサーヴァントやマスターを、稀に改心させる事が出来る。

【宝物/宝具】

『世界の救世主(ミスター・サタン)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:地球全土 最大捕捉:全人類

 怪物たちから地球を救い出した英雄の誇り高きリングネーム。
 その称号は、地球の神にさえも認めさせたといわれ、全人類の畏敬の対象となっている。
 セイヴァーがこの名で残した偉業は数多あるが、何より「どんな強敵と対峙しても必ず生還とする」という逸話が強く影響している。
 その為、この宝具がある限り、セイヴァーとそのマスターは、「混沌」の属性を持つ全てのサーヴァントからの攻撃や精神干渉を受けても、絶対に死亡せず、致命傷さえも負わない。
 これは、敵がいかに強力な能力を使ったとしても、因果を捻じ曲げて発動し、「秩序」や「中庸」の属性のサーヴァントやマスターを相手にした場合でも、少なからずこの宝具の影響を与えてしまう。
 何より、共に行動しているマスターにも影響が伝播する(ただし、共に行動していなければ影響は受けない)。

『王者の一番弟子(ミスター・ブウ)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:1~10人

 ミスター・サタンの一番弟子と言われたピンク色の太った格闘家。
 セイヴァーと非常に親しく、常に彼と一緒に行動している為、使い魔として召喚する事が出来る。
 時に、セイヴァーが闘うまでもないレベルの相手と戦う為に引っ張り出され、セイヴァーの代わりに格闘を行う。
 その強さは未知数で、軽く触れただけで相手を吹き飛ばしてしまう事もある。
 ただし、食いしん坊であり、魔力の燃費が絶望的に悪い為、万全の魔力を持っている時も十秒程度しか現界できない。
 現界した時点で宿主の意識を共有する為、指示を行う必要はないが、場合によっては使い魔のくせに指示を聞いてくれない事も。
 また、当然だが、ミスター・サタンの一番弟子である彼はトリックじみた攻撃は行わず、純粋な格闘攻撃のみを仕掛けてくる。

【weapon】

 なし。

【人物背景】

 もはや地球人を相手には説明不要だろうが、一応説明しておく。
 ミスター・サタンは、格闘技の世界チャンピオンにして世界の英雄である。
 第24回天下一武道会で優勝しており、その後は、セルという恐ろしい怪物を容易くやっつけた。
 その後も第25回天下一武道会などで優勝し、記録を残した事は言うまでもない。
 他にも何かをやっつけた気がするが、その記憶を持つ者は少なく、記録上にもない。
 ちなみに、何故か絶対的に「死なない」のが彼である。

【サーヴァントとしての願い】

 自分の実力を露呈させない為にも、この馬鹿げた戦いを一刻も早く終わらせ、英霊の座に還る。
 ただ、マスターである上田次郎が一向に信じてくれないのはどうにかせねば……。


360 : 上田次郎&セイヴァー ◆CKro7V0jEc :2016/03/09(水) 01:17:42 dJJAOXpM0





【マスター】

上田次郎@TRICK

【マスターとしての願い】

 なし。

【weapon】

 己の肉体。

【能力・技能】

 多ジャンルバトルロワイアルのwikiのページに詳しく書いてあります。

【人物背景】

 多ジャンルバトルロワイアルのwikiのページに詳しく書いてあります。

【方針】

 どんと来い超常現象。

【備考】

 聖杯戦争の事はセイヴァーに訊きましたが、まったく信じてない上に追い返しました。
 参戦時期は不明。


361 : ◆CKro7V0jEc :2016/03/09(水) 01:18:02 dJJAOXpM0
投下終了です。


362 : ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 01:39:21 0CZyNZ7o0
お疲れ様です。
これより投下させていただきます。


363 : 海馬瀬人&デュエリスト  ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 01:40:06 0CZyNZ7o0
【一日目】



『ええ、前年比50%超えです!
 社長のアイディアが大当たりしましたよ、受注数も鰻上りです!』


東京は港区赤坂にそびえ立つ、巨大なオフィスビル。
その社長室において今、彼は受話器越しに部下からの歓声混じりの報告を受けていた。
先日発売した商品が大ヒットし、予想を大幅に上回る黒字額を叩きだしているのだ。
おかげで担当部署は現在、朝から大忙しの様子らしい。


「ふっ……それは何よりだ。
 こちらとしても、発案した甲斐があったというものだ」


この報告に、社長―――海馬瀬人は、大いに満足していた。
彼はまだ17歳という若さでありながらも、この大手玩具・ゲームメーカー『海馬コーポレーション』を率いる敏腕経営者である。
その実力は本物であり、今やこの東京において海馬コーポレーションはその名を知る者は居ない大企業にまで発展している。
それを僅か一代で成し遂げたというのだから、彼が如何に優れた社長であるかは言うまでもないだろう。


「だが、油断はするな。
 そのままの状態を維持できるよう、努力を怠るなよ」
『はい、かしこまりました。
 それと社長、先月打診がありました遊園地とのコラボレーション企画についてですが……』


多忙なれどそれを苦には一切思わず。
今日も今日とて、海馬コーポレーションは充実した営業を続けられている。
つい先月には大型遊園地とのコラボレーション企画も持ち上がり、観覧車のゴンドラに社長お気に入りのモンスターをペイントした特別仕様を用意したり、
また同じくモンスターへのなりきり撮影アトラクションを社長自ら提案するなど、実に精力的だ。


『ですが社長、無理はなさらないでくださいね?
 社長が倒れてしまっては元も子もありませんから』
「言われずとも分かっている。
 適度には休息を挟んでいる、何も問題はない」


そんな社長を心配する声も部下から上がったが、海馬自身もそれは重々分かっている。
だからこそ適度に休息を挟み、仕事から離れ気持ちを落ち着かせる時間を作っている。
つい一週間ほど前にも、休息がてらカードゲーム―――デュエルモンスターズの大会に出て優勝を掻っ攫ってきたところだ。
海馬は若手の敏腕社長としてだけでなく、このデュエルモンスターズにおいても凄腕のトップ決闘者(デュエリスト)として名を馳せている。
今現在、彼に叶うだけの実力を持つものは果たしてどれだけいるだろうか。


364 : 海馬瀬人&デュエリスト  ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 01:40:28 0CZyNZ7o0


(……トップ決闘者、か……)



しかし。
そういった名声を欲しい侭にしているにも関わらず、どこか海馬の心には満たされないものがあった。
会社も上手くいっている、自らの出したアイディアは賞賛を浴びている、デュエルにおいても右に並ぶものはいない。
この見事なまでの結果には、勿論海馬も満足は得られている。

ならば……何故だ。



(……一体、何だと言うんだ?
 この渇望……心の中にあいた穴が空いたような感覚は?)



そんな勝ち続けの人生が……どこか物足りなく感じてしまうのは。

己の心を滾らせてきた、大切な何かを無くしている……そんな感覚にとらわれてしまっているのは。




◆◇◆



「では海馬社長、私どもはお先に失礼させていただきます。
 どうか、お気をつけてお帰り下さいませ」


一日の勤めが終わり、人々が帰路へと当についた頃。
海馬は提供会社との商談を済ませ、分厚い合金製のケースを片手に自社のエントランス前へと丁度戻ってきていた。
勤務時間を少々過ぎてしまった運転手に礼をしてそのまま帰宅させると、彼も今日の仕事を終える事にした。
思ったよりも商談相手とのやり取りに時間をかけてしまった。
と言うのも、相手社長がデュエリストとしての海馬のファンであり、商談ついでに是非一戦デュエルをしてみたいと持ちかけてきたからだ。
海馬としては特に断る理由もないので受けて立ったのだが、これが予想以上に時間のかかる一戦になってしまった。
もっとも、おかげで相手は大いに満足し、商談も円満に終わることが出来たのだが。


(……思ったよりも骨のある相手ではあった。
 久しぶりに楽しめた……が……)


しかし……海馬自身は、どこか物足りなさを感じていた。
確かに先程のデュエルは、ここ最近では一番の手応えがあるものだった。
だが、それでも……完全に満足できたかと言われれば、はっきり肯定することができない。
心の中で、何か燻っているものがあるがために……彼は求めているのだ。



あの■■との様な、死力を尽くした宿命のデュエルを……


365 : 海馬瀬人&デュエリスト  ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 01:40:52 0CZyNZ7o0


(…………!?
 なんだ……今の風景は……?)


―――広大な決闘場の中央に立つ、二人の決闘者。


―――その片方は己であり、対面に立つは赤と金が混じり特徴的な形をした髪の少年。



不意に頭をよぎった謎のビジョンに、海馬は奇妙なデジャブを覚えた。
こんなデュエルの記憶など、己の中にはない。
だが、どういうことか……この風景を、自分は確かに見たことがある。
目の前に立っていたデュエリストを、確かに知っている。
このデュエルが、己にとって何よりも重要な意味を持つものだと分かっているのだ。


(……それに……あのカード……俺の知るものとは、どこか違う……?)


それだけではない。
両者が互いに持ち、場に出し合っていたカードにも違和感があった。
今現在自分達が使っているデュエルモンスターズのそれとは、デザイン等細部がどことなく異なっているのだ。

いや、それどころか……ビジョンの中で、彼等はデュエルモンスターズという単語を一切口にしていなかった。
代わりに出たものが、『マジック&ウィザーズ』という見知らぬ単語……
ビジョンの中の自分達は、どういうことかデュエルモンスターズをそう呼称していたのである。


(何故……どういう事だ?
 俺は……何か、決して忘れてはならない事を忘れてしまっているのか……?)


このビジョンは一体何なのか。
記憶と現実との間にある、この差異はなんなのか。
何か、絶対に無くしてはならないものを無くしているのではないか。
海馬は痛む額を右手で抑え、必死に記憶の中を探ろうとする……



「よう……海馬社長」



その時であった。


366 : 海馬瀬人&デュエリスト  ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 01:41:12 0CZyNZ7o0

「む……?」


背後から声をかけられ、海馬は強制的に思考を中断させられた。
やむを得ず、頭を切り替える……どうやら自分を訪ねての客のようだ。
しかし、こんな時間に訪ねてくる人物などそうはいないだろうに、一体何者が来たというのか。
ましてビジネス関係者というのであれば、こんな砕けた口調で声をかけたりはしないだろう。
確かめるべく、振り向きその者へと視線を向け……


「何っ!?」


大いに驚愕した。
彼の目の前に立っているのは、二人組の男性だ。
片方は黒いロングコートを着て、サングラスとマスクで顔を隠した如何にもという不審な人物。
そして、もう一人が……まるでファンタジー映画の中からそのまま出てきたかのような、重厚な甲冑を身に纏う大男だ。
黒コートの男の方はまだ分かるが、甲冑の男は明らかに異質だ。
海馬が驚き声を上げてしまったのも、無理はないだろう。


(何だ、この男……あの『槍』は、本物なのか……!?)


まして……その手に握られている槍に赤い血がべっとりとついていれば、尚更だ。



「主……どうやらこの男、まだ目覚めてはおらぬようです」
「だろうなぁ……令呪が見えねぇし。
 だが、お前の予知が機能している以上間違いはねぇだろう」


驚愕する海馬を他所に、目の前の二人組は冷静に会話を交わしていた。
彼の様子や仕草をじっくりと見て、まるで品定めをするかの如く互いの意見を述べている。
当然ながら海馬にはその意図が分からず、困惑するしかない。
『令呪』だの『予知』だの、その意味が全く分からない単語が彼等の口からは出ているが……



「……予知……?」




――――――手札にある■■■■■を召喚するために必要な生贄は2体!



――――――そう……神を生贄に捧げる!



「ッ!?」


予知。
その単語を口にした途端に、海馬の頭へと痛みが走った。
同時に脳裏に浮かび上がるのは、またしても謎のビジョンだ。

天高く舞う飛行船上に備わった決闘場。
そこに立つ二人の決闘者…‥片方は、今まさに上級モンスター召喚の為に生贄を捧げようとしている己。
そして相対するは、遠き異国の地より現れた女―――未来を見る力を、『予知』の力を持つと言う女だ。


(まただ……このデュエルの記憶は一体……!!)

「ま、悪く思うなよ?
 令呪が出てからじゃ厄介だからな……ああ、警備員なら全員眠らせてるから期待しても無駄だ。
 目覚めちまう前に、ライバルは蹴落とさせてもらうぜ……ランサー!」


頭を押さえ悩む海馬を他所にして、二人の男達は目的を遂げるべく淡々と動いていた。
男の言葉と共に、甲冑の男は海馬へと血塗られた槍の切っ先を向けた。
そして、その次の瞬間……


367 : 海馬瀬人&デュエリスト  ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 01:41:33 0CZyNZ7o0


――――――ゴウッ!!


「なっ!?」


海馬は男の姿に、眼を見開き驚いた。
頭を走る痛みも謎のビジョンも、瞬時に吹き飛ぶ程の衝撃。
男は例え一流のアスリートであろうとも絶対に出せないであろう爆発的なスピードで、瞬間的に間合いをつめてきたのだ。
明確な殺意を持って、槍を突きたてようと、まっすぐに……!!


「くっ……!」


海馬は咄嗟に、その手のケースを体の前に出した。
考えなど何もない、本当に反射的な行動だった。
そうしなければ命がないと、本能的に直感出来たが故に取れた行動であり……それは正しかった。

猛烈な勢いの刺突を受けたケースは、さながら弾丸の如きスピードで海馬の手から弾き飛ばされた。
五指を走る、指が千切れるのではないかといわんばかりの振動と衝撃だった。
その痛みに海馬も堪らず顔をしかめるが……しかし、同時にそれが正解であるとも理解できた。
分厚い合金製のケースが、ビルの外壁に叩きつけられると共にいとも容易く粉砕されたのだから。


――――――ガッシャァァァンッ!!



破壊されたケースの内部より、厳重に締まってあった海馬の魂の道具―――デッキカードと、
商談に用いた新製品『決闘盤(デュエルディスク)』が飛び出し、地にばら蒔かれた。
その光景を前に、海馬は息を飲んだ。
一度はこうして防げたが、二度目はない……次で確実に殺されると、実感せざるを得なかったからだ。



(……死ぬ……だと?
 こんなところで……終わる……?)



余りにも唐突すぎるこの事態を、海馬は受け入れる事ができなかった。
全てが理不尽すぎる。
自身の『運命』が……『未来』が、このような形で終わるなど容認する事が出来なかった。


368 : 海馬瀬人&デュエリスト  ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 01:41:58 0CZyNZ7o0

(そんな事を……受け入れてたまるか!
 運命も未来も、誰かに定められたものであるはずがない……俺はッ!!)



―――――――俺のプライド! そして、俺の魂! 俺の未来は俺が決めるっ!!! 




「奴との……『遊戯』との決着をつけ、全ての頂点に立つ!
 それこそが、俺の目指すべき未来だ!!
 こんなところで倒れてたまるものかぁっ!!」



栄光ある未来を手にする為、朽ちる訳には断じていかない。



その強く誇り高き魂の雄叫びは、彼に全ての記憶を取り戻させた。



そして……奇跡―――令呪の発現―――は起きる……!!



◆◇◆



「何ッ!?
 まさか……このタイミングで覚醒したのか!!」
「予知を覆したというのか……?
 それ程の強運値を持つサーヴァントとは……!!」


海馬の雄叫びと共に、その現象は起きた。
彼の手の甲へと、聖杯戦争のマスターである資格を得た証拠―――三画の令呪が出現したのだ。
それと同時に、眩い金色の光が彼の胸元へと収束してゆく。
槍兵とそのマスターは、その光の正体をすぐに察知した。
危機的状況において、令呪を発現させると同時に起きる事柄など一つしかない……即ち、サーヴァントの召喚!


「……これは……!!」


そして、金色の光が消え去った時。
海馬の前に現れたのは、光と同じ金の光沢を放つ一つの道具であった。
中央部に瞳の文様を刻まれた、逆三角形のアクセサリー。
古代エジプトの王が代々眠る墓―――ピラミッドを連想させる意匠。
海馬は、それに見覚えがあった……忘れるはずがなかった。


己が宿敵と定めた男が、肌身離さず身につけていた象徴―――千年パズルを……!!


369 : 海馬瀬人&デュエリスト  ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 01:42:29 0CZyNZ7o0

『海馬、デュエルディスクとデッキを取るんだ!!』
「……!!
 その、声は……!!」


次の瞬間。
彼の脳裏へと、声が響いた―――千年パズルより、声が告げられたのだ。
それはこの千年パズルと同じく、絶対に忘れてはならなかった男の声。
そう、パズルの中に眠る偉大なる王の魂。


「遊戯……貴様なのか……!?」


海馬瀬人は、もっとも己と繋がりの深き英霊として彼を召喚したのだ。

イレギュラークラス『デュエリスト』として。

武藤遊戯が持つもう一つの人格にして、神をも従えし伝説のファラオ―――アテムを!




◆◇◆



「仕方ねぇ、こうなった以上やるぞ……ランサーッ!!」


予想外の事態ではあるものの、ここまで来たらやらない訳にはいかない。
男はそう割り切り、ランサーが再び攻撃態勢に入った。
サーヴァントを召喚されてしまったとはいえ、召喚直後の今ならばまだ倒せる。
相手が状況を理解し切る前ならば、勝算はあるのだから。
そして逆に言えば、ここで仕留めなければまずいのだ。
海馬が呼び出したサーヴァントは、明らかに人ではない『道具』だ。
通常ではありえない、得体が知れない謎の存在を彼は呼び出したのだ。
それだけに不気味……何が起こるかわかったものではない。


『海馬ッ!!』


しかし、その槍が突き出されるよりも早く。
デュエリストの声に突き動かされ、海馬が行動を起こしていた。
地面に散らばっていた決闘盤とカードを素早く拾い上げたのだ。


『呼ぶんだ、海馬!!
 お前のデッキに眠るモンスターを!!』


370 : 海馬瀬人&デュエリスト  ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 01:42:46 0CZyNZ7o0
「ふん……言われずとも分かっている!!」


そして次の行動は、デュエリストに指摘されるまでもなく分かっていた。
まだソリッドビジョンというシステムが完成を迎える以前、初めて武藤遊戯とのデュエルに臨んだあの時。
彼は千年パズルが持つ闇の力を使い、カードに描かれたモンスターを『実体化』させるという凄まじい現象を引き起こした。
否、それだけではない。
巷で流行していた携帯ゲームから単純なサイコロ、果てには鉄板焼きの道具といったモノまで。
『ゲーム』と呼ぶ事のできるあらゆるモノに、彼は尋常ならざる力を与え引き起こしてきたのだ。

そう、これこそがデュエリストの最大の力……遊戯と呼べるモノに神秘性を付与し、宝具の領域にまで高める能力だ。


そしてその力が、海馬が持つカードに適用された時……!!



「いでよ……ミノタウルス!!」



カードに秘められたモンスターは、姿を得て現界を果たす!!




◆◇◆



「使い魔を出した……!?」


巨大な戦斧を持つ、屈強な牛人戦士ミノタウルス。
海馬がその絵柄の描かれたカードを決闘盤に設置すると同時に、それが確かな実体を成して出現したのだ。
この思いも寄らぬ敵の出現に、相対する彼等は息を飲んだ。
カードのモンスターを実体化させて使い魔にする能力……それが、海馬のサーヴァントが持つ力なのだ。
こんなとんでもない英霊がいるなど、どうして予想できようか。


「ゆけ、ミノタウルス!
 敵を粉砕せよ!!」
「ちっ……ランサー!!」


襲い来るミノタウルスを迎え撃つべく、男はランサーを動かした。
力任せに振り下ろされる、強烈な戦斧の豪撃。
ランサーはそれを槍の柄で受け止め、力比べの体制に入る。
流石は屈強な牛人、並の使い魔や魔術師と比較してもそのパワーは高い。
腕に伝わる圧力がそれを如実に物語っている。


371 : 海馬瀬人&デュエリスト  ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 01:44:12 0CZyNZ7o0

「だが……サーヴァントを相手に出来るほどではッ!!」


しかし、英霊たるサーヴァントには及ばない。
ランサーは一喝するとともにミノタウルスの戦斧を大きくかち上げ、その無防備な胴体を晒させた。
そして槍を回転させ穂先を向けると共に、一閃。
ミノタウルスの胴体へと槍は容易く吸い込まれ、その身に致命的なダメージを与える。


「ぬぅっ!?」


致命傷を負わせられたミノタウルスの肉体は、現界を保てなくなり砕け霧散する。
それと同時に、使役を行っていた海馬の身へと急な痛みと疲労とが襲い掛かったのだ。
闇のゲームにおいて、モンスターが受けたダメージはそのままプレイヤーへとダイレクトにフィードバックされる。
それはこの聖杯戦争においても同じ事……ミノタウルスを破壊されたダメージが、海馬へとそのまま跳ね返ってきたのである。
そしてミノタウルスのカードは墓地へと送られる……これでこの戦闘中は、蘇生を行わぬ限り二度と使用できなくなった。


(この痛み……そうか、遊戯やマリクどもが挑んでいた闇のゲームと同じ……!)
『海馬、気をつけろ!
 あのランサーは手ごわい、並のモンスターでは駄目だ!!』
「黙れ遊戯!!
 貴様に指図をされるまでもない……ブラッド・ヴォルスとY-ドラゴンヘッドを召還!!
 そしてリバースカードをセット!!」


デュエリストからの指示を聞くまでもなく、即座に海馬は次なるモンスターを召還した。
ミノタウルスと同じ獣戦士族ブラッド・ヴォルスと、全身を機械で構成された機龍Y-ドラゴンヘッドの二体が場に呼び出される。
同時に、それに伴う魔力の消耗が彼の身に起こるも、海馬は平静にそれを受け止めている。
もし、魔術師でもなく素養も持たぬ者が今の彼と同じ事をしたならば、如何にデュエリストのバックアップがあるとしても魔力的に見れば厳しい事になっていたかもしれない。

しかし海馬には、幸運にも魔術師としての素養があった。
モンスターを使役するには問題ないだけの魔力量があったのだ。
前世―――ファラオに仕える神官セトより受け継がれてきた系譜こそが、その源なのだから。


「成る程、複数の使い魔を使役して戦う……キャスターか、或いは類するイレギュラークラスか。
 一体ずつならサーヴァントを相手にできるレベルではないにせよ、複数出されると厄介だが……!」


ならばと、ランサーが地を蹴り疾走する。
海馬のサーヴァントが持つ宝具或いはスキルは、マスターが持つカードを媒介に使い魔を召喚する力と見て間違いない。
呼び出された使い魔のレベルも決して悪くはなく、複数体で襲いかかられては流石に苦戦もしよう。
使い方によってはなかなかに厄介な相手だが……しかし、欠点もある。


372 : 海馬瀬人&デュエリスト  ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 01:45:04 0CZyNZ7o0
彼等の呼び出す使い魔は確かに強いが、しかし使役する彼等自身はどうだ。
あくまで召喚を行い指示を出すだけの司令塔……つまり、直接的な戦闘能力は皆無と言ってもいい。
呼び出されたモンスターを突破し肉薄すれば、戦う手段はない。
それこそが、海馬瀬人の欠点……!!


「ふん、プレイヤーへのダイレクトアタックに切り替えてきたか……!!」


防御に入ろうとするブラッド・ヴォルスとY-ヘッドドラゴンを弾き飛ばし自らへと迫るランサーを前に、海馬もその狙いを察した。
確かにこうしてモンスターの防御を抜けられれば、超常の力を持つ相手に自身が叶う術はない。
戦法としては決して間違ってはいないだろう。


「甘い!
 その程度の事を予測できない俺だとでも思ったか!!」


しかし。
プレイヤーへのダイレクトアタックは、海馬とて今までのデュエルで幾度となく経験してきた。
防御を無視してプレイヤーのライフを削る攻撃は、寧ろ常套手段だ。
故に、対策は出来ている……!!


「リバースカードオープン、破壊輪!!」
「何っ!?」


穂先が海馬を捉えようとした、まさにその瞬間。
ランサーの目前に、一枚のカードがビジョンを持って出現する。
先程、ブラッド・ヴォルスとY-ヘッドドラゴンを召喚した際に伏せておいた罠カード『破壊輪』だ。
ランサーの攻撃を引き金として発動したそのカードは、ランサーの手首へと大きな腕輪―――爆弾付きの破壊輪を強制装着させる。
破壊輪の効果は、自身に攻撃を仕掛けてきたモンスター一体を対象に発動し、そのモンスターを破壊する……!!


「グアアァッ!?」


閃光が走り、ランサーの左手首が爆炎に包まれた。
強烈な痛みと熱が彼を襲い、その動きを強制的に停止させる。


「くっ……!!」


同時に、海馬の肉体にもまた痛みが走った。
破壊輪は攻撃対象を文字通り破壊する強力な罠カードだが、同時に使用者にもダメージを与える効果を持っている。
海馬はランサーの攻撃を防ぎ手傷を負わせる代償として、この痛みを敢えて受け入れたのだ。
しかし、流石に聖杯戦争はデュエルとは勝手が違うという事か。
本来ならば攻撃してきた相手を問答無用に破壊する破壊輪の効力でも、ランサーにはダメージを与えたところで止まっている様だ。


373 : 海馬瀬人&デュエリスト  ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 01:45:31 0CZyNZ7o0

「……成る程。
 この戦いがどういったものかは、まだはっきりとは分からんが……感覚は掴めてきたぞ」


だが、収穫はあった。
撃破までは至らずともダメージを与えられた事に違いはなく、同時にカードの効力がこの戦いの場においてどれ程のものかを確かめられた。
それが分かれば、もう十分だ……後はただ一つ。
全力を持って、勝利を果たすのみ。


「ゆくぞ、槍兵よ……我が栄光の礎となるがいい!!
 俺はブラッド・ヴォルスとY-ヘッドドラゴンを生け贄に捧げ、召喚する!!」


宣言とともに、ブラッド・ヴォルスとY-ヘッドドラゴンの肉体が光の粒子に変わりゆく。
そしてその粒子は収束し、新たな一つの形となる。
上級モンスターを呼び出すための生贄として、彼等下級モンスターは捧げられたのだ。
これより呼び出されるは、海馬瀬人の誇りとも言える存在。
彼が最も信頼を置く、最強のモンスター……!!


「出でよ!!
 我が忠実なる最強の下僕……『青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)』!!」


決闘盤にカードが置かれ、光の粒子が消える。
そしてそこには、一体の巨大な龍が出現を果たした。
青き瞳に白く輝く肉体を持つ、伝説のドラゴン―――青眼の白龍である!


「な……なんだと……こいつは!?」


ランサーは青眼の白龍を前にし、圧倒された。
古代に存在した幻想種の中でも、特に最強とされる竜種。
それも……相対するだけで強大な力を持つとはっきり分かる存在が今、目の前に現れたのだ。
先程まで呼び出されていたモンスター達とは、格が違う。
サーヴァントを相手取るには役者不足であった下級モンスターたちと違い、この巨龍は……サーヴァントを相手取るに十分すぎる力を秘めている!!


「我が敵を打ち砕け、ブルーアイズよ!!」


海馬の命令とともに、青眼の白龍は咆哮を上げてランサーへと迫った。
巨大な翼を羽ばたかせての、猛烈な加速による突進。
その勢いに乗せたまま、青眼の白龍はその両の爪を力強く突き出す……!!


374 : 海馬瀬人&デュエリスト  ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 01:46:29 0CZyNZ7o0
「ウオォォォォォォォッ!!??」


ランサーはその一撃を受け止めようとするも、青眼の白龍のパワーは彼を上回っていた。
踏ん張るも耐え切れず、両の踵が線を描きながらアスファルトを砕き散らしてゆく。
そして十数メートルほどランサーを押し続けたところで、青眼の白龍は力強く羽ばたき上昇。
彼を捕らえたまま、夜空へと天高く舞い上がったのだ。


「決着の時だ!
 放て、青眼の白龍!!」


そして。
空中へと爪を振り上げランサーを投げ上げると、青眼の白龍はその顎を大きく開きランサーへと向けた。
そこへ集うは、全てを屠る圧倒的な力の奔流。
あらゆるものを吹き飛ばす、龍の息吹……!!




「『滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)』!!」




闇夜を切り裂き、白き閃光が走った。
青眼の白龍の口から放たれた莫大な熱量を持つその光は、容易くランサーを飲み込んだ。
ランサーとてただでやられる訳にはゆかぬと、全力を込め槍を盾にし懸命に耐え抜こうとしている……しかし。


「く……グアアアアァァァッ!!」


勝敗は決した。
その力の奔流を耐えることは叶わず……ランサーの身は、空中で完全な消滅を遂げたのであった。




◆◇◆




「……聖杯戦争か……ふん。
 非科学的にも程がある話だが、事実として受け入れねばならん様だな」


ランサーとの激闘を終えてから、しばし後。
海馬は魔力消費による疲労――下級モンスターに上級モンスターの合計三体召喚ともなれば、流石に相応の消耗になる―――にため息をつきながらも、
このイマイチ飲み込めぬ状況がどういうものなのかを知るべく、デュエリストから知る限りの情報を聞き出していた。
曰く、この東京は万能の願望器たる聖杯を降臨させる為に作り出された虚偽のゲーム盤。
自身はそのプレイヤーとして招かれたマスターであり、デュエリストはその為のサーヴァントであるとの事だ。
サーヴァントは通常、マスターと何かしらの共通点や縁を持つ者が選ばれるといい、
海馬がデュエリストを召喚したのは半ば必然とも言えることであった。


375 : 海馬瀬人&デュエリスト  ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 01:46:59 0CZyNZ7o0
「……気に入らんな。
 この俺を、デス・ゲームの盤上の駒として扱おうなどと……!」
『海馬、お前はこれからどうするつもりなんだ?』
「決まっている……この聖杯戦争の主催者に近づき、何の目的があってこの様な真似をしたかを問いただすまでだ!
 その為には、勝ち上がり聖杯に近づく必要がある……!!」


海馬は、自身にこの様な仕打ちをしでかしてきた主催者達がとにかく気に入らなかった。
一体何を目的としているのか、何故自分を駒として選び出したのか。
全てを問い詰め問い質した上で、然るべき報いを与えなければならない。
その為には主催者に近づく必要があるが、現時点では主催者に関する手がかりは一切ない。
しかし……聖杯に近づけば確実に主催者との距離が近くなるということだけは、少なくとも間違いないだろう。
また、先程の男達の様に勝ち上がりを狙い襲い来る者達も現れるはずだ。
自身と同じく巻き込まれ、そして戦う意志を見せようとせぬ者ならば兎も角、好んで戦いに乗った者相手ならば躊躇は不要。
今、やるべきことは一つ……他の参加者を蹴散らし、聖杯へと近づく過程で首謀者を掴むのみ。


『海馬……』
「遊戯よ、貴様の生温い言葉を聞くつもりは毛頭ない。
 俺はただ、俺の信じる道をゆくのみだ……その為にも貴様の持つその力、存分に利用させてもらうぞ!」
『……ああ、わかったぜ。
 だが、お前がどうしても許せない行動をとったならばその時は……!』
「ふん、やってみるがいい。
 その様な甘い考え方で生き延びられると言えるのならばな……!!」



如何に主従として選ばれたとはいえ、彼等は決して友とは成り得ない。
絆を信じ絆の力で勝利を得てきた遊戯と、絆を否定し孤高の力で高みへと上り詰めた海馬。
二人の道は、限りなく近かれども交わることは決してなかった。


それは果たして、マスターにサーヴァントという限りなく近き関係に置かれたこの場においても、変わることはないのであろうか……





【サーヴァント】

【クラス】
 デュエリスト

【真名】
 アテム@遊☆戯☆王

【属性】
 秩序・善

【パラメーター】
 筋力:- 耐久:- 敏捷:- 魔力:A 幸運:A+ 宝具:EX

【クラススキル】
エンチャント:EX
 他者や他者の持つ大切な物品に、強力な機能を付与する。
 基本的にはマスターを戦わせるための強化能力。
 デュエリストは『ゲーム』と称することの出来る道具ならば全て、宝具相当の神秘性を付与する事ができる。
 例えばデュエルモンスターズのカードにスキル効果を付与すれば、
 カードに描かれたモンスターや効果を現実のものとして出現させる事すらも可能になる。

戦闘続行:-
 名称通り戦闘を続行する為の能力。
 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
 デュエリストは如何に絶望的な状況であろうとも、最後まで諦めず戦い抜く事で奇跡を起こし、幾度となく勝利を掴んできた。
 ただし、マスターの肉体を寄り代として現界している現状ではこのスキルは失われており、不屈の闘志のみが残されている。

【保有スキル】
カリスマ:A
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。
 団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
 ファラオとして一国を治めてきたデュエリストのカリスマは、人が得られる最大のレベル。

神性:B
 神霊適性を持つかどうか。
 デュエリストは伝説のファラオの血を引く王として、かつて邪神の魂と共に封じられていた者として、
 また三幻神と呼ばれる偉大な神の化身すらも操った決闘者として、このスキルを得ている。

直感:B
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
 デュエリストは窮地においても尚自身に出来る手段を模索し、逆転の一手を引き起こしてきた。


376 : 海馬瀬人&デュエリスト  ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 01:48:20 0CZyNZ7o0
【宝具】
『千年錐(ミレニアム・パズル)』
 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:100人
デュエリストの象徴にして、その魂が封じられている彼そのものともいえる宝具。
 よってこの宝具が破壊されることがあれば、それはデュエリストの消滅をそのまま意味する。
 現在より三千年前の古代エジプトにおいて生み出された七つの『千年アイテム』の一つであり、その中心を成す黄金で出来た逆三角形型のパズル。
 通称は『千年パズル』であり、大抵の者にはこちらの名で呼ばれることが多い。 
 この宝具を所有するものはデュエリストと魂を共有することになり、サーヴァントとしてのスキルが付与される他、
 『闇のゲーム』と呼ばれる罪人を裁く力を手にする事が出来る。
 基本的にはマスターが肉体の所有権を持つが、デュエリストがマスターの意識を奪い肉体を強制的に操ることも可能。
 そして相互の理解と合意があれば、お互いに肉体の所有権を明け渡し合う事もできる。
 千年アイテムは自らの意思で所持者を選ぶとされており、
選ばれなかった者は体の内側から焼かれ、炎を吐き出しながら絶命してしまうとされている。
 その成り立ちは、デュエリストの父である先王アクナムカノンが隣国の軍隊に攻め込まれ絶望の危機に瀕した国を救うため、弟の大神官アクナディンに命じ作らせたアイテム。
 しかしこの時、アクナディンは千年アイテムの力を高めるべく秘密裏にクル・エルナ村の住民を冥府への生贄として捧げ、黄金と一緒に溶かして製作したとされている。
 その為に強い闇の力を持ち、人間の心に宿る魔物や精霊を呼び出し操るための力として使われた。
 そして同時に、千年アイテムは冥界の扉を開くための鍵ともされており、全ての千年アイテムをクル・エルナ村に眠る石版に嵌めた時には封印された闇の力を手にする事が出来る。
 専らこの聖杯戦争においては、海馬の持つデュエルモンスターズのカードを実体化させる形で宝具の力は発揮されている。
 ただし、闇のゲームの力で実体化されたモンスターは所有者の魂と繋がりを持つため、モンスターが破壊されればそのダメージが所有者にもそのままフィードバックされる。
 通常モンスターを召還する事には何ら制約はないが、サーヴァントを相手にするには実力不足。
 サーヴァントを相手にも戦える上級モンスターを召還するには、通常モンスターの魂を生贄に捧げなければならない制約があり、当然ながら相応の魔力消費を要求される。
 また、通常のデュエルと聖杯戦争とでは勝手が異なり、魔法カードや罠カードの効力がデュエルの時よりも低く出ることも多い。
 特に魔法カードはその名称どおり、対魔力スキルをもつサーヴァントに対してはレジスト・無力化される場合すらありえる。
 そして、一度使用されたり破壊されたカードは墓地へと送られる事になり、蘇生カード等を使わぬ限り戦闘終了後まで使用することはできない。
 ちなみに、かつてこの宝具にはデュエリストと共に冥界の神ゾーク・ネクロファデスの魂も封じられていたのだが、
 デュエリストが生前にその魂を完全に消し去った為、この宝具にはゾークの魂は宿っていない。

【weapon】
 海馬が所有するデュエルモンスターズのカードを実体化させる。
 原則として、海馬が原作及びアニメで使用したカードのみを使用する。
 ただし、神のカード『オベリスクの巨神兵』のみは海馬がかつてのデュエルで失った為に使用することができない。


377 : 海馬瀬人&デュエリスト  ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 01:48:56 0CZyNZ7o0
【人物背景】
 三千年前の古代エジプトを統治していたファラオにして、千年パズルに眠る偉大なる魂。
 そして、現代においてゲーム好きの高校生『武藤遊戯』が千年パズルを完成させた事により、
 内部に封じられていた魂が彼の肉体を器として蘇った、言わばもう一人の遊戯『闇遊戯』とも言える存在。
 当初はファラオとしての記憶は失われており、彼自身も己が武藤遊戯に宿った別人格だと思っていた。
 あらゆるゲームのプロフェッショナルであり、圧倒的なプレイングと強運を誇る。
 現代において彼は、己が周囲にはこびる悪人達に『闇のゲーム』を仕掛け、
 敗北した者達へと恐るべき罰ゲームを下して制裁をする『闇の番人』として行動していた。
 当初は遊戯自身も彼の存在に気づかず、彼が目覚めている間は断片的な記憶喪失状態に陥っている事もあった。
 しかし、そうした日々を過ごしていく内に彼はいつしか大切な友たちとの友情を結んでいく様になり、
 それに連れて闇の番人として見せていた冷酷な面も、徐々に薄れていった。
 以降は、悪を許せないという気持ちこそ変わらないものの、仲間を強く思いやり正々堂々とした誇りある性格になる。
 また遊戯自身も、己の中に別の人格が宿っているという事実に気づいていく。
 そして、同じ千年アイテムの持ち主であるバクラとの闇のゲームを通じ、互いの存在を完全に自覚する。
 以降はお互いをかけがえのない『相棒』として認め合い、協力し合いながら数多くの危機を乗り越えてきた。
 そんな彼が特に現世でその名を馳せるようになった切っ掛けは、世界的なカードゲーム『マジック&ウィザーズ』の大会において
 ゲーム創設者のペガサス・J・クロードや宿命のライバルである海馬瀬人といった強豪達を次々に打ち破っていった事。
 そして、同じ千年アイテムの所有者であるマリク・イシュタールを打ち倒し
 三幻神と呼ばれる神のカードを全て揃えた事でデュエルキングの称号を得た事にある。
 この偉業は後年或いは並行世界においても語り継がれており、伝説の決闘者として認知されている。
 その後、彼は己が戦い抜いてきたデュエルを通じ、千年アイテムや三幻神のカードと自身の過去が深く繋がっている事実を知り、
 己の正体を知るべく全ての千年アイテムを揃え、過去の記憶を再現した世界へと乗り込む。
 そして記憶の世界で彼は、自身がファラオの血を引く王である事実と、どうして己の魂が千年パズルに封じられていたかを知った。
 かつて彼は、世界を破滅に導こうと目論む『闇の神官』と化したアクナディンを封じるべく、己の魂と記憶を引き換えに
 アクナディン及びアクナディンに宿る大邪神ゾーク・ネクロファデスの魂を千年パズルに自身諸共封印していたのだった。
 しかし、ゾーク・ネクロファデスはその魂の一部を封印の寸前に千年アイテムの一つである千年リングに移しており、
 現代における所有者バクラの肉体を則り覚醒していた。
 闇遊戯は彼との決着をつけるべく記憶の世界を用いた『闇のRPG』を行い、壮絶な死闘を繰り広げる。
 戦いは苛烈を極めるも、彼を救うべく記憶の世界へと降り立った遊戯や仲間達の助成を受けて覚醒。
 自らの記憶と真名『アテム』を思い出すと共に、三幻神の力を束ね『光の創造神ホルアクティ』を降臨させ、ゾークを無事打ち倒した。
 そうして現代へと戻った時、彼は己の役目を完全に果たした事で冥界へと逝かねばならなくなった。
 その為には『闘いの儀』というデュエルを行い、アテムに勝利することでその魂を安らかにする必要があった。
 デュエルの役目を引き受けたのは他ならぬ遊戯自身であり、そして二人の遊戯は運命のデュエルを開始。
 全力を出しあった末に遊戯はアテムを打ち破り、アテムは大切な絆を築いてきた仲間達に別れを告げて
 安らかに冥界へと旅立っていった。

【サーヴァントとしての願い】
 海馬と共に聖杯戦争の首謀者を討つ。
 ただし、もしも海馬が自身にとって許せぬ行動を取ろうとした場合には、肉体の所有権を奪うことも辞さないつもりでいる。

【運用方法】
 デュエリスト自身に戦う術はなく、マスターである海馬へと戦う力を付与する。
 基本的には下級モンスターを召喚して相手を牽制しつつ、サーヴァントを打倒すべく上級モンスターを召喚する準備を整える。
 必要に応じて魔法カードや罠カードを用い、状況を有利に運ぶ。
 また、呼び出すモンスターや用いる効果カードこそ強力なものが多いものの、それを操る海馬自身は単なる人間でしかない。
 その為、プレイヤーである海馬へのダイレクトアタックこそが最大の弱点であり、その点に注意して戦う必要がある。


378 : 海馬瀬人&デュエリスト  ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 01:50:36 0CZyNZ7o0
【マスター】
海馬瀬人@遊☆戯☆王

【マスターとしての願い】
 聖杯などといった如何わしい代物にかける願いなど何一つない。
 気に入らぬ主催者にこの手で制裁を下す。

【能力・技能】
 天才的なゲームプレイヤーであり、特にマジック&ウィザーズ及びデュエルモンスターズの腕は世界最高峰と言われている。
 状況判断力・決断力に優れており、デュエルキングの称号を持つ遊戯をして「最大の強敵」と認めるほど。
 若くして大企業の社長を務めるエリートだけのことはあり、文武両道。
 ヘリコプターやジェット機の操縦技術も持ち合わせている。

【人物背景】
 高校二年生という若さであるにも関わらず、世界的な玩具・ゲームメーカーである大企業『海馬コーポレーション』を率いる社長。
 そして、世界でも五指に入るとまで言われているトップ決闘者でもある。
 彼がそこまでの大人物へとのし上がったのは、過酷な過去の影響が大きい。
 海馬瀬人は幼少期、両親を早くに亡くした挙句親戚に財産の全てを奪われ弟のモクバと共に施設に預けられていた。
 この時の経験から『良い暮らしをする』『親のいない子供達を楽しませるための遊園地を作る』という夢を抱くようになり、
 十歳の時、養子探しで施設を訪れていた先代海馬コーポレーション社長である海馬剛三郎へと
 「自分がチェスで勝ったら、モクバと共に容姿へ迎え入れろ」という条件を突きつけてチェスの勝負を挑んだ。
 剛三郎は世界チャンピオンに君臨する程の腕の持ち主だったのだが、瀬人は巧みなイカサマを用いて勝利を収めている。
 ただしこの勝利については、剛三郎が子供相手にと手加減をしていた・イカサマを仕掛けてきた瀬戸を逆に気に入ったという諸説もある。
 そうして海馬家への養子入りを果たした彼は、弟と一緒に裕福な暮らしをする事ができると考えていたのだが、
 そこで待ち受けていたのは剛三郎の手による英才教育という名の虐待であった。
 この事で瀬人は剛三郎への憎しみを募らせていき、皮肉にも剛三郎は自身の手で後継者ではなく最大の敵を育ててしまう結果になった。
 そして五年後、瀬戸は多くの社員を味方に付けて会社を掌握する事に成功する。
 この時彼は、剛三郎へと長い時間をかけてそれまでの復讐を実行するつもりでいたのだが、
 逆に剛三郎は自らの敗北を認め、負けた者の末路として彼の目の前で投身自殺をしてしまった。
 憎しみをぶつける相手を失ってしまった事で海馬の精神は大きく歪んでしまい、またこの件で『敗北=死』という暗い意識を持つ様になった。
 以降は軍事産業だった海馬コーポレーションをゲーム・玩具企業へと転換させ、夢であった遊園地『海馬ランド』の建設も始める。
 しかし、いつしか目的の為ならば手段を選ばぬ性格となり、モクバへの愛情も次第に失われていった。
 そんな最中に彼は、一人の決闘者―――武藤遊戯と出会う。


379 : 海馬瀬人&デュエリスト  ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 01:50:48 0CZyNZ7o0
当初は彼をただのクラスメイトとしてしか見ていなかったが、
 彼の祖父である双六がマジック&ウィザーズにおける最強のレアカード『青眼の白龍』の持ち主である事を知り、深く関わるようになる。
 どうしても青眼の白龍を手に入れたかった彼は強引にカードを奪うも、その所業を許せなかった闇遊戯に闇のゲームを挑まれ、敗北。
 青眼の白龍を奪い返されると共に、自身に敗北を味あわせた遊戯へと執着するようになった。
 それから後、海馬は双六以外の青眼の白龍の持ち主を見つけ出し、彼等から三枚の青眼の白龍を入手に成功する。
 そして遊戯への復讐のために作り上げたデスゲーム『DEATH-T』で彼へと挑むも、仲間達の友情に支えられた遊戯に敗北。
 罰ゲームとして彼が執行するマインドクラッシュを受け、悪に満ちた心を砕かれた。
 DEATH-T終了後はマインドクラッシュの影響で療養生活に入るも、半年後に復活。
 悪心を砕かれた影響から、傲慢でプライドの高い面こそ変わらないものの非常に誇り高き人物へと変化し、モクバへの愛情も取り戻した。
 遊戯のことも憎むべき敵ではなく、生涯をかけて倒すべきライバルとして見ている。
 その後、千年アイテムの所有者であるイシズ・イシュタールとの出会いを経て三幻神と呼ばれる神のカードの存在を知り、
 全ての神を揃えたデュエルキングの称号を得るべく、自らの手で世界最強を決める大会『バトル・シティ』を開催する。
 神の一柱『オベリスクの巨神兵』の力を存分に振るい勝ち上がるが、その最中で自身の中に謎の記憶を見るようになる。
 それは彼の前世である神官セトの記憶であり、自身と『青眼の白龍』との間には前世からの深い縁があった事を知る。
 そしてバトル・シティの準決勝において遊戯と決着をつけるべくデュエルを行うも、死闘の末に敗北。
 彼に神のカードを渡すも、彼が唱える『絆』『友情』の力をあくまでも否定し、孤高のままに強くあるという意志を曲げることはなかった。

【方針】
 聖杯に近づき主催者の正体を知るべく、戦いに勝ち上がる。
 ただし、あくまでもその相手は積極的にこの聖杯戦争に乗る者のみ。
 何も知らずに巻き込まれた者や自ら戦う意志を持たぬ者を手にかけるという
 誇り無き行いは、己がプライドに賭けて絶対にするつもりはない。


380 : ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 01:51:05 0CZyNZ7o0
以上で投下終了となります。


381 : ◆TA71t/cXVo :2016/03/09(水) 02:28:41 0CZyNZ7o0
すみません、修正箇所がありますので以下のようにお願いします
>>375の【真名】を
【真名】
 アテム@遊☆戯☆王(原作漫画版)
>>378の【マスター】を
【マスター】
 海馬瀬人@遊☆戯☆王(原作漫画版)
です。


382 : ◆k7RtnnRnf2 :2016/03/09(水) 18:24:16 1Fu8XrVQ0
皆様、投下乙です。
救世主であるミスター・サタンがセイヴァーのクラスとして召喚されたのは大いに納得させられて
因縁深い海馬社長とアテム様が主従となるシチュエーションにドキドキさせられたりと
原作への強い愛を感じました!

では私も候補作を投下させて頂きます。


383 : ◆k7RtnnRnf2 :2016/03/09(水) 18:24:55 1Fu8XrVQ0


     01/5つの誓い・11の誓い


「ウルトラ5つの誓い! ひとつ! 腹ペコのまま学校に行かぬこと!」

 満天の星空の下、青年の声が響く。
 星に負けないほど、その声は輝いていた。

「プリキュア5つの誓い! ひとつ! プリキュアたる者、いつも前を向いて歩き続けること!」

 そして青年に続くように、少女は大声を響かせた。
 その声もまた、夜の闇を振り払うほどに眩さで溢れていた。

「ウルトラ5つの誓い! ひとつ! 土の上を裸足で走り回って遊ぶこと!」
「プリキュア5つの誓い! ひとつ! 愛は与えるもの!」

 二人の叫びは重なる。
 共に誰かを思いやる気持ちと、誰かを守りたいという強い愛が込められた宣言だった。

「ウルトラ5つの誓い! ひとつ! 天気のいい日には布団を干すこと!」
「プリキュア5つの誓い! ひとつ! 愛することは守り合うこと!」

 青年と少女が口にするのは、共に大切な人から教わった誓い。
 どんな困難が待ち受けていようとも、その言葉を胸に刻んだからこそ乗り越えられた。二人にとって、心の支えとなっていた。

「ウルトラ5つの誓い! ひとつ! 道を歩くときには車に気をつけること!」
「プリキュア5つの誓い! ひとつ! プリキュアたる者、自分を信じ、決して後悔しない!」

 時に失敗して、挫けそうになった時が何度もあった。
 だけど、周りに目を向けて、そして自分自身を信じたからこそ、自らの信念を貫き通すことができた。

「ウルトラ5つの誓い! ひとつ! 他人の力を頼りにしないこと!」
「プリキュア5つの誓い! ひとつ! プリキュアたるもの、一流のレディたるべし!」

 誰かを守る為に、二人は自分自身を磨き続けた。
 だからこそ、たった一人の戦いになっても、強大な敵を打ち倒すことができた。如何なる脅威が待ち構えていようとも、決して負けることはない。
 心の中では強い炎が燃え上がっていた。

「プリキュア5つの誓い! ひとつ! みんなで力を合わせれば、不可能はない!」

 そして少女は、青年が持たない6つ目の誓いを宣言する。
 大切な友と、守るべき人々との触れ合いの末に導き出した答え。それもまた、彼女の心を支える大きな柱でもあった。


 日々の未来を、愛で溢れるものにしたい。胸で鳴り響く鼓動には、そんな真心が込められていた。
 どんな人だろうと、幸せで満ちた夢を見られるようにしてあげたい……その為に二人は強くなって、そして大空に舞う為の翼も手に入れた。


 青年と少女は顔を合わせ、力強い笑顔を互いに向けていた。
 青年の名はヒビノ・ミライ。宇宙警備隊の若き勇士であり、人々との触れ合いで強く成長したウルトラマンの一人……ウルトラマンメビウス。
 少女の名は相田マナ。この胸に強い愛を宿らせて、すべての命と愛を守る為にジコチュー達と戦ったドキドキプリキュアの一人……キュアハート。
 ウルトラマンとプリキュアが、この世界で巡り会ったのだ。


384 : 相田マナ&セイバー(ヒビノ・ミライ) ◆k7RtnnRnf2 :2016/03/09(水) 18:26:17 1Fu8XrVQ0


     02/俺達・私達の翼



「君が僕のマスターなんだね。僕はヒビノ・ミライ。セイバーのクラスで召還されたウルトラマン……ウルトラマンメビウスだ!」
「あなたがサーヴァントさんなんですね? あたしは相田マナ……大貝第一中学校の生徒会長です!」

 相田マナは、目の前に立つ青年に自己紹介をする。
 黒のスーツと灰色のジーンズを身に纏い、スーツの上には皮製のベストを羽織っている。顔付きはジョー岡田のように穏やかさと凛々しさや、四葉家のセバスチャンみたいな実直さだって醸し出していた。
 セイバー……否、ヒビノ・ミライは礼儀正しく、見ていて親近感が沸いてしまう。一目見ただけで、頼りになる人という印象が残った。

「生徒会長って……凄いじゃないか、マスター!」
「ストップ! マスターじゃなくて、マナって呼んでください!」
「どうしてだい?」
「う~ん。なんていうか、マスターって呼ばれるの……ちょっと恥ずかしいんです。何だか、くすぐったくなっちゃいそうで……だから、マナって呼んで欲しいんです!」

 生徒会長と呼ばれることはあったけど、それはマナがみんなの為に力を尽くした結果だ。彼の為に何かをした訳でもないのに、そんな肩書で認められるなんておかしい。

「それに、あたし達はまだ出会ったばかりです。だから、これからお互いのことを知る為には名前で呼び合うことが大事だと思いますから!」
「そうだね……じゃあ、よろしくね! マナちゃん!」
「こちらこそ、よろしくお願いします! ミライさん!」

 ミライの素朴な笑みに、マナは太陽のような眩い笑顔で答える。
 やっぱり、名前で呼んで貰えた方が心が晴れるし、それ以上にもっと仲良しになれる気がした。


 そしてここにいるのはマナとミライだけではない。
 マナの隣には、共に戦ってきた大切な相棒/親友だっているのだから。背丈はマナよりもほんの少しだけ小さく、桃色の髪はマナよりも癖がない。
 活発さと愛らしさが凝縮された表情からは、まるでマナの双子の妹と呼ばれても納得してしまいそうなオーラが放たれていた。

「シャルルちゃんもよろしくね!」
「よろしくシャル! ミライ!」

 ミライと自己紹介を交わした少女はシャルル。
 いつもは蝶ネクタイがトレードマークのウサギとよく似たピンク色の妖精だけど、今は想いの力で人間に変身している。
 彼女もまた、マナと共にこの謎の世界に連れて来られていた。

「キエテ・コシ・キレキレテ!」
「えっ?」
「僕と君は友達……宇宙語で、そんな意味がある言葉なんだ!」
「そっか! あたし達はマスターとサーヴァントとか、主従とか、そんな関係じゃなく……友達ですもんね!」

 初めて聞く言葉だが、素晴らしい意味が込められていた。
 宇宙は広い。無限大の文化が存在する世界には、無限大の言葉が存在し、そして無限大の未来が待っていた。
 そこに生きる人達のことを知って、笑顔にできたらどれだけ嬉しいか。想像するだけでも、胸がキュンキュンと鼓動を鳴らす。


385 : 相田マナ&セイバー(ヒビノ・ミライ) ◆k7RtnnRnf2 :2016/03/09(水) 18:27:10 1Fu8XrVQ0


 だからこそマナは許せない。
 誰かの未来を壊して、自分一人だけの為に聖杯を得るというジコチューな戦いが。
 叶えたい夢や、果たしたい目標を目指して頑張るという気持ちは誰もが持っている。マナだって、昔から何かの為に努力を重ねてきたのだから。
 それは誰かの為だけではなく、マナ自身のワガママが行動原理になったこともある。マナ自身の行動で迷惑を被る人だってたくさんいた。
 それで落ち込んで、愛を見失いそうになる。だけどその度に周りの人から支えて貰い、失敗を反省して、何度でも立ち向かうことができた。だからこそ、ドキドキプリキュアはジコチュー達からみんなを守って、そして強くなれた。
 みんなと一緒に何かをすることの素晴らしさだって、分け合うことができた。


 聖杯を狙って誰かを傷付けようとする人はいるかもしれない。
 トランプ国王だって、プロトジコチューの悪意で病に倒れたアン王女を救う為に、エターナルゴールデンクラウンに手を伸ばした。同じように、大切な人を想って戦いに身を投じる人もいるはず。それは決して自己中などではなく、立派な愛だ。
 だけど、それで救われた側が愛を胸に抱けるのか。自分の為に、他の誰かが愛を失ったと知って悲しまないのか。
 何よりも聖杯を手に入れるというのは、誰かを傷付ける為の正当な理由になるのか。いいや、なる訳がない。

「ミライさん。あたし達に力を貸してほしいんです……この聖杯戦争って戦いを止める為に。そして、誰もが愛を失わない為にも」

 だからマナはミライを真っ直ぐに見つめて、そう頼む。
 シャルルがいるのは心強いけど、他のみんなはここにいない。もしかしたら、どこかに連れて来られているかもしれないけど……そんな微かな可能性に縋ることなどできない。
 キュアハートだけで止められる保証はないし、互いに信頼できる仲間となってくれる誰かの助けが必要だった。
 ここにいるヒビノ・ミライのような、優しい青年のように。

「GIG!」

 そんなミライは真っ直ぐに親指を立てながら、力強く宣言した。
 しかしマナは、その言葉の意味がわからず、一瞬だけ声を詰まらせてしまう。

「じ、じーあいじー……?」
「これはね、ずっと昔に僕が大切な人達から教わった、勇気が出る合図なんだ!
 どんな困難が待ち構えていようとも、その度にみんなでこの言葉を口にした。」
「そうなんですか……とっても愛に溢れた言葉ですね! GIG!」

 真意を知ったマナは、思わずミライの真似をする。彼に負けないくらいの愛情を指先に込めながら。

「ああ、勿論さ! 君が望むのなら、僕はいくらでも力を貸すとも!
 それに僕も……いいや、僕達ウルトラマンはこんな戦いを決して認めたりしないからね!」
「ありがとうございます!」

 その答えにマナの胸は熱くなった。
 感情は高ぶっていくけど、彼女はほんの少しだけそれを抑える。ミライについて、知りたいことが山ほどあるからだ。

「……あの、一つだけお聞きしたいことがあるんですけど、いいでしょうか?」
「いいよ。僕に答えられることだったら、何でも答えるからね」
「はい! えっと、その……ウルトラマンって、一体どんな人達なんですか?」

 その一つが、彼が何度も口にした『ウルトラマン』という名前。
 ミライは自分のことを『ウルトラマン』と呼んでいる。『ウルトラ』という名詞が付いているからには、凄いことが出来る人だというイメージを何となく感じた。
 そして、それを問われたミライの表情は、とても真剣なものへと変わっていく。


386 : 相田マナ&セイバー(ヒビノ・ミライ) ◆k7RtnnRnf2 :2016/03/09(水) 18:29:26 1Fu8XrVQ0

「じゃあ、もしかしたらいつかあたし達の所にも、ミライさんみたいなウルトラマンが来るかもしれないのですか?」
「そうかもしれないね。その時が来たら、君のような優しい人と心を通わせるはずだ……僕と君が出会えたように」
「モチのロンですよ! あたしが出会った人達はみんな、心に強い愛が溢れていますから!」

 マナはこれまでの人生で色んな人と出会い、その度に色々なことを教えて貰った。
 マナを生んで、今日まで育ててくれたパパとママ。愛(マナ)という名前を付けてくれたおばあちゃんに、厳しくも時に優しく見守ってくれたおじいちゃん。マシュマロみたいに可愛かった犬のマロという友達。
 幼い頃から一緒にいた菱川六花と四葉ありす。ドキドキプリキュアになってから出会った剣崎真琴やジョー岡田を始めとしたトランプ王国の人達。アン王女から生まれた円亜久里やレジーナ。
 そして様々な場所で出会ってきた人達の笑顔を、マナは何度も見た。みんな、愛で溢れていた。

「その人達を裏切らない為にも、あたしは……聖杯戦争に乗るつもりはありません!」
「そうだね! 僕が付いてるから大丈夫……一緒に頑張ろうね!」
「あたしも頑張るシャルよ!」

 そして、これまで見守ってくれていたシャルルも、一緒に誓ってくれる。
 これまで、彼女と共にどれだけの愛を守ってきたのか。その度に、シャルルとどれだけの愛を育んできたのか……それを数えることなどできない。

「よろしくお願いします、GIG!」
「GIG!」

 凛然と、そして強い愛を瞳に込めながらお互いの姿を見つめあっている。
 どんな困難が待ち構えていようとも、共に戦う彼/彼女と一緒に乗り越えてみせると。
 そして…………愛を守り抜いてみせる。
 広い空の下で、ウルトラマンとプリキュアは誓い合った。


【クラス】
セイバー

【真名】
ヒビノ・ミライ@ウルトラマンメビウス

【ステータス】
筋力A+ 耐久A 敏捷A+ 魔力EX 幸運A+ 宝具A+

【属性】
秩序・善

【クラス別スキル】
対魔力:A
 A以下の魔術は全てキャンセル。
 事実上、現代の魔術師では○○に傷をつけられない。


単独行動:A+
 マスター不在でも行動できる能力。


騎乗:D
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。
 ガンウィンガ―を操縦する場合、より多大な効果を発揮する。


【宝具】
『無限大の未来(メビウスプレス)』
 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 彼が地球に向かう際に、ウルトラの父より与えられた神秘のアイテム。
 メビウスプレスの力によって彼は神秘の巨人・ウルトラマンメビウスに変身し、数多の悪と戦い続けた。

『無限大の未来に羽ばたく俺達の翼(バーニングブレイブ)』
 ランク:A+ 種別:対界宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人(自分自身)
 無双鉄神インペライザーとの戦いで危機に陥ったウルトラマンメビウスが、仲間達との絆を胸にして誕生した『燃える勇者』。
 灼熱の如く真紅に身体が染まり、全身には黄金色のファイアーシンボルが刻まれている。
 身体能力も大幅に向上し、炎を元にした技を数多く使い、如何なる灼熱だろうと彼を燃やし尽くすことはできない。その力強さは怪獣墓場の炎の谷にも耐えられるほど。
 反面、その分だけ魔力消耗が激しくなるので注意が必要。


387 : 相田マナ&セイバー(ヒビノ・ミライ) ◆k7RtnnRnf2 :2016/03/09(水) 18:30:27 1Fu8XrVQ0

【Weapon】
メビウスプレス
トライガーショット

【人物背景】
 宇宙警備隊の若きルーキーで、ウルトラの父の命を受けて地球へと向かったウルトラマンの一人。
 彼は地球に向かう途中、遭難した宇宙船アランダスを発見する。そこに登場していたバン・ヒロトという名の青年を救おうとするも、後一歩というところで船はワームホールに飲み込まれてしまう。
 自らを犠牲にしてまで船のクルーを救ったヒロトの勇敢な姿に感動した彼は、ヒロトの姿を借りて地球に降り立つ。
 その後、彼はCREW GUYS JAPAN隊長兼総監のサコミズ・シンゴによって、ヒロトの父であるバン・テツロウと出会う。
 当初は拒絶されたも、後に彼はテツロウから認められ、地球で過ごすこととなった。
 テツロウの『日々の未来』という言葉から付けられた、ヒビノ・ミライという名前を借りて。


 正義感が強く、どこまでも純粋。しかし地球の常識をほとんど知らない為、周囲からは「不思議ちゃん」と呼ばれることもしばしば。
 持ち前の明るさで、ディノゾールの襲撃によって一度は壊滅したCREW GUYSのメンバーを集め、共に数多の困難を乗り越えた。
 時にメビウスの力だけでは倒せない強敵や、人間が持つ『悪』の部分を突きつけられて、幾度も倒れそうになる。だがその度に、GUYSのメンバーや伝説のウルトラ兄弟達からの支えがあり、人類を守り抜いた。
 そうして彼は暗黒宇宙大皇帝 エンペラ星人すらも打ち破り、ウルトラ兄弟の仲間入りを果たして、地球を去っていった。


 地球を去った後も、メビウスはエンペラ星人の鎧であるアーマードダークネスとの戦いに勝利し、復活したジャッカル軍団を打ち破り、怪獣墓場・炎の谷で起こったゴーストリバース事件を解決するなど数多くの実績を残す。
 しかし宇宙牢獄から解き放たれたウルトラマンベリアルの暴走を止めることができず、宇宙空間に放り込まれてしまった。その際、彼は初代ウルトラマンとウルトラセブンの命を受けて、レイオニクス・レイと共にベリアルとの戦いに挑む。
 怪獣軍団を率いるベリアルに追い込まれそうになるも、レオ兄弟やウルトラマンダイナ……そしてセブンの息子・ウルトラマンゼロと力を合わせ、ついにベリアルを撃破した。
 その後はウルトラ10勇士の一人として、ウルトラマンギンガがいる地球で時空城に突入し、超時空魔人エタルガーの能力によって生まれたエンペラ星人のエタルダミーと戦う。
 彼はバーニングブレイブでエンペラ星人を撃破し、10勇士と共に時空城を破壊した。


 なお、ジャッカル軍団との戦いについては、内山まもる先生作の『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス ジャッカル軍団大逆襲!!』にて描かれている。


【サーヴァントとしての願い】
 マナちゃんやシャルルと力を合わせて愛を守る。


【基本戦術、方針、運用法】
 ヒビノ・ミライがウルトラマンメビウスとしての力を解放すれば、膨大なる光の力を発揮できる。しかしその度合いが強ければ強いほど魔力消耗は激しく、マナ自身に負担がかかってしまう。
 本来のサイズで戦えるのはたった三分間。ミクロ化すれば消耗はある程度抑えられるも、その分だけメビウス自身のパワーが弱くなる。
 それをカバーする為には、相田マナがラブリーコミューンでキュアハートに変身して、彼女自身の愛で光を助けなければならない。
 キュアハートの愛があれば、ウルトラマンメビウスにとって大いなる力となるだろう。


 メビウスブレイブ、メビウスインフィニティー、フェニックスブレイブの力を得るにはウルトラマンヒカリ及びウルトラ兄弟の存在が必須。


【マスター】
 相田マナ@ドキドキ! プリキュア

【マスターとしての願い】
 ミライさんと一緒に頑張りたい。

【weapon】
 ラブリーコミューン


【能力・技能】
 文武両道。人助けの為に、幼い頃から勉強とスポーツを頑張ってきた。
 成績優秀で、部活の助っ人をいくつも掛け持ちできる程の運動神経を誇っていて、料理もできる。
 ただし、乗り物酔いに弱く、歌も下手。歌の酷さは某ガキ大将レベル。

【人物背景】
 大貝第二中学生徒会長。胸に強い愛を抱き、何度も人助けをしてきた。順応力も非常に高く、どんな環境に入ろうとも周りの人間とすぐに打ち解けられるコミュニケーション力を誇る。
 みなぎる愛・キュアハートとして覚醒し、強い絆で結ばれたドキドキ! プリキュア達と力を合わせてたくさんの愛を守り抜いた。
 敵であるレジーナやキングジコチューすらも救い、全ての巨悪であるプロトジコチューを打ち破った。


【方針】
 みんなを助ける為に戦いを止める。


388 : ◆k7RtnnRnf2 :2016/03/09(水) 18:30:49 1Fu8XrVQ0
以上で投下終了です


389 : ◆7DVSWG.5BE :2016/03/09(水) 18:40:48 iU54EIaw0
皆さま投下お疲れ様です
私も投下させていただきます


390 : ◆7DVSWG.5BE :2016/03/09(水) 18:43:19 iU54EIaw0

カーテンの隙間から漏れる日差しが、少女の顔をうっすらと照らす。
眩しさに耐えきれず、彼女は目を覚ました。
起き抜け特有の気怠さを感じながら、その新雪のような白い髪を掻きつつ、ベッドから身を起こす。

時刻は午後1時

二度寝しようとも考えたが、二度寝するには中途半端な時間だ。
また夜眠れなくなってしまう。
ベッドから降り、伸びの運動をしながら体を解す。

(今頃は授業中ね)

学校で机に座りながら授業を受ける自分の姿を想像する。
彼女が学校に行かないのは、午後1時まで寝ていたのは体調を崩し、療養していたからではない。
自分の意志で学校を休んだのだ。

少女の休みは一週間になる。
学校に行く気が全く起きない、それどころか何もする気がおきない。
いつから、こうなってしまったのだろう?
何か強いショックな出来事があったのは覚えているが、奇妙なことにどのような出来事かまるで覚えていない。

そして少女の休みを咎める者も、その身を案ずる者もいない。
少女の両親はすでにこの世から去っている。


―――とりあえず喉が渇いた

寝起きのせいで喉が渇いたのか、水分を求め部屋から出ようとするが、足が止まる。
視線の先には机の上にある何かある。
何故かそれが無性に気になった。
その物が何か確かめるべく、机に向い手に取った。
木で作られた細長い笛。確か、犬笛と言っただろうか。
犬を呼ぶために使われる笛。

自分の記憶の限りでは、買った覚えも貰った覚えもない。
そもそも犬を飼っていないのだから、持つ必要もない。
少女は犬笛を隅々まで観察した後、何気なく犬笛を拭いてみた。

ピューと耳鳴りがするような、低周波の音が部屋に響き渡る。
その音を聞いた瞬間、雷に打たれたような衝撃が彼女に走った。
情報の洪水が脳内に押し寄せる。

―――テグネウ、魔神、凶魔、六花の勇者、アドレット―――

「はぁ、はぁ、はぁ」

頭が痛い、まるで脳内を鈍器で直接殴られたようだ。
痛みのあまり、少女はその場で膝をつき、呼吸が乱れる。

すぅー、はぁー

大きく息を吸って、吐く。
深呼吸をしたことにより、眩暈や痛みが治まってくる。
痛みが治まってきたことで、脳内に入ってきた莫大な情報を整理する余裕ができた。

私の名前はフレミー・スピッドロウ。
火薬の聖者。
世界を救うために選ばれた六花の勇者。
そして、この世界は自分が住んでいた世界とは別の世界。

状況確認をするために、思い出した記憶を一つ一つ紐解いていく。

「で、後ろにいるアナタは誰?」

フレミーは後ろを振り向かないまま、独り言のように呟いた。
記憶の整理をしていると、後ろから人の気配、いや何かの気配を感じた。
それなりに修羅場を潜ってきたし、何かが息を潜めていれば、ある程度は察知できる自負はある。
だが、その気配は突然出現した。
いつの間に現れた?疑問は尽きないが、後ろにいる何かは、発する気配だけでも只者ではないのは分かる。

「私はランサーのクラスのサーヴァントです」

ランサー?サーヴァント?

聞き覚えがない単語を聞いた瞬間、思わず振り向く。
そこに立っていたのは、自分と同年代と思われる少女だった。
新雪のような白い髪、側頭部に光沢のある青い羽根。
黒革のスカートには青と紫と黒で彩られた、鳥の羽のような美しい大きな翼がついている。

発する気配から、もっと恐ろしい何かが居ると思っていたが、普通の少女だったことにフレミーは虚を突かれた。

「あなたが私のマスターですね」


391 : ◆7DVSWG.5BE :2016/03/09(水) 18:44:33 iU54EIaw0

◆ ◇ ◆

「つまり、私はトーキョーという、自分が住んでいる別の世界に連れてこられて、
貴女みたいなサーヴァントという存在を率いて戦い。勝ち残ったマスターとサーヴァントの願いを聖杯が叶えてくれる」
「そうです」
「とんだ与太話ね」
「荒唐無稽とは思いますが、これは事実です」

フレミーはベッドに腰を掛けながらランサーの話を聞く。
口では否定的な発言をしたが、内心では信じつつあった。
今いるこの東京と呼ばれる世界。
自分が知っているものとは何もかもが違いすぎる。
例えば、今着ている衣服、
肌触りや着心地など元の世界で着ていたものに比べて遥かに質が良い。
そして、TVや電話と呼ばれる未知の道具。
遥か遠くの相手と会話でき、遥か遠くの景色を映すことができる。
これは聖者と呼ばれる特殊能力を持つ者たちでも作ることは不可能だ。
そんな道具があるこの世界は、自分が住んでいる世界とは別の世界ということも信憑性が出てくる。
そうなると、聖杯戦争もサーヴァントの存在も現実味が増してくるものだ。

「ところでマスター、あなたの願いは何なのですか?」

ランサーには聖杯に懸ける願いがなかった。
サーヴァントは何かしら願いを持っているはず。
では何故呼ばれたのか?
ランサーには皆目見当がつかなかった。
可能性があるとすれば、マスターと何かしら縁があって呼ばれたのか。
これからマスターについて色々と尋ねれば、分かるかもしれない。

「願いね……」

フレミーは呟くと、目を閉じ、腕を組みながら考え始めた。
数十秒経っただろうか、フレミーは目を開け、俯きながらランサーに問う。

「願いというのは、何でも叶えられるの?」
「大概のものは叶えられると言われています」
「そう……」

ランサーの答えを聞いたフレミーは、声を振り絞るように語り始めた。

「私は誰からも愛されなかった……でもそんな時に現れたの、アドレットが……
私が攻撃しても、どんなひどい目にあっても助けようとした。
最初は信じられなかった、どうせ裏がある。最後には裏切られると思っていたわ。
けど違った。アドレットは私のことを想ってくれていた。愛してくれていた。
でもそれは幻想だった。テグネウに植え付けられた偽りの愛。
アドレットは私のことを愛していなかった。それどころか憎んでいるわ!
アドレットはこう言ったの『フレミーを死なせていれば、よかったんだ』
それはそうよね!アドレットのすべてを奪った種族の血が私の身体には流れているんだから!愛される理由は何一つ無い!」

フレミーの目から涙が流れていた。
最初の方は静かに語っていたが、途中から声を荒げ、涙声で擦れている。

「でも、アドレットに愛されたい……
あの人が私の名前を優しく呼ぶ声が聴きたい……
あの人が私を守るために、抱きかかえてくれる手の温もりを感じたい……」

フレミーは凶魔と呼ばれる人間に仇なす異形の化け物と、人間の間に生まれた子供だった。
凶魔に引き取られ、育てられた。
凶魔が住む土地で、フレミーは人の血が入っている故に迫害を受ける。
その迫害はフレミーを育ててくれた凶魔にも及んだ。

自分のせいで家族が血を流すことに心を痛める。
家族を守る方法は只一つ。凶魔と認められること。
フレミーは死にもの狂いで強くなり、凶魔に害となる強者を葬った。
強者を葬るたびに、凶魔は喜んでくれた。
家族や自分を迫害しなくなった。

あるとき、フレミーはある強者に敗れてしまった。
失敗したが、家族は自分を優しく出迎えてくれるはずだ、そう思っていた。
それは甘い幻想だった。
家族から浴びせられる容赦ない罵声。
失敗した者は用済みと言わんばかりに、フレミーは家族から命を狙われた。

人間の生活圏に落ち延びた先でも待っていたのは迫害だった。
自分に優しくしてくれる人間もいたが、少し心を開けば、待っていたのは裏切り。
フレミーは理解した。
自分は凶魔からも人間からも愛されることは無いと。
そんな時に現れたのがアドレットだった。


392 : ◆7DVSWG.5BE :2016/03/09(水) 18:45:54 iU54EIaw0

ランサーはフレミーの独白を黙って聞くことしかできなかった。

――――愛されたい――――

その感情には覚えがある。
かつて、父オーダインに愛されたいと願っていた。
だが、父の愛は自分には向かなかった。
その苦悩、その胸の苦しみは今でも覚えている。
そしてフレミーの苦しみは、自分の苦しみより辛いものであることはわかる。
あの絶望の感情に染まった瞳。
よほどアドレットという人を愛していたのだろう。

「喋り過ぎたわね……どうかしてるわ私……」

フレミーは自分の涙で濡れた顔と、その感情を隠すようにベッドに顔を埋める。
そして場は静寂に包まれること数分。
ランサーの凛とした声が、静寂を打ち破る。

「マスター、あなたは愛されるという願いを叶えるために、人を殺す覚悟はありますか?」

願いを叶える。
聖杯戦争において、それは他者の願いを摘み取ること。
時には、サーヴァントではなくマスターを殺めなければならない時がくる。
他者の願いと命を天秤にかけてでも、自分の願いを叶える覚悟があるのか。
それを尋ねたかった。

フレミーは布団から顔を上げ、ランサーの目を見据えながらはっきりと告げる。

「ええ、できるわ」

愛されるために人を殺す。
それは間違っているのかもしれない。
だが、ランサーには口が裂けても間違っているとは言えなかった。

父の愛を求め、苦悩する日々も確かにあった。
だが、ランサーはついに出会えたのだ。
愛する人、自分を愛してくれる人。
生涯の伴侶オズワルド。
彼と出会えたことがランサーにとって、どれだけ救われたか。

もし、フレミーと同じように、生前の夫の愛が偽物だったら。
オズワルドが自分に敵意と殺意の目を向けてきたら。
想像しただけで、心臓が止まりそうだ。
それはこの世のどんな責め苦より苦痛だろう。

そんな責め苦をフレミーは味わった。
そして、死の国より深く暗い絶望の果てに、聖杯と言う唯一の希望を見つけたのだ。
もし、フレミーと同じ立場であれば、同じく愛されることを願うだろう。

ああ、わかった。
何故、フレミーのサーヴァントとして召喚されたのか。
自分以上に愛に飢えている、この少女を救いたいのだ。
夫オズワルドに出会えたように、アドレットという人物と愛に満ちた人生を歩んで欲しいのだ。
それが聖杯に懸ける願い。

「わかりました。ランサーのサーヴァント。真名グウェンドリン。
マスターの願いの為にこの槍を振るいましょう」


393 : ◆7DVSWG.5BE :2016/03/09(水) 18:47:47 iU54EIaw0
【クラス】
ランサー

【真名】
グウェンドリン@オーディンスフィア

【属性】
秩序・善

【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:B 幸運:C 宝具:B

【クラススキル】

対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。



【保有スキル】

食事摂取:A
食事摂取による魔力回復が極めて高い。
またダメージが回復し、僅かばかり耐久が上がる

竜殺し:A
予言に記されし、終焉を呼び起こす竜レヴァンタンを打倒した逸話から。
竜の因子が含まれているサーヴァントに極めて高い効果を発揮する

アイテム作成:C
アイテムを作成できるスキル
自分の世界にあった材料と似たようなものがあれば
同様のアイテムを作ることができる

【宝具】
『戦乙女の槍はすべてを貫く(ガングリオン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大補足:1~2
アーチャ―が生前使用していた、サイファーと呼ばれる、魔石を原料として作った宝石を組み込んだ槍。
命ある者をその武器で倒すことにより、力が増幅する特性を持っている。
氷を操り、氷による攻撃は対魔力では軽減できない

【weapon】
ガングリオン

【人物背景】
北の国ラグナネイブルの姫君。魔王と恐れられる国王オーダインの次女で、槍のサイファーを手に勇敢に戦うワルキューレ。
普段は物静かで控えめだが、いざとなるとどんな者を前にしても勇ましく立ち向かう強さを持っている

【サーヴァントとしての願い】
フレミーの願いを叶えたい

【マスター】
フレミー・スピッドロウ@六花の勇者

【マスターとしての願い】
アドレットに愛されたい。

【武器】
銃と銃弾

【能力・技能】
「火薬の聖者」
火薬を作る特殊能力
弾丸となる金属球を手に持つことで、それに薬莢と火薬を組み合わせた「銃弾」へと変えることができる。
また自分の任意で爆発できる爆弾なども作ることができる


【人物背景】
「火薬」の神の力を持つ聖者。本作のヒロインであり白髪に右目が桃色で左目が青のオッドアイのはかなげな少女。武装は銃と爆弾。凶魔の母と人間の父とのハーフで、元々はテグネウの命令で六花の勇者の候補者を殺害していた。
しかしチャモに負けたことで用済みになり、母親を含めた凶魔たちに殺されそうになったため、復讐のため魔神を倒すことを決意する。他者を寄せ付けない刺々しい気性の持ち主だが、アドレットに同行するうちに彼に対して強い信頼と想いを抱く。

【ロール】
高校生(不登校)


394 : フレミー・スピッドロウ&ランサー ◆7DVSWG.5BE :2016/03/09(水) 18:52:49 iU54EIaw0
以上で投下終了です
操作ミスでマスターとサーヴァントのクラスをタイトルに入れてませんでした

『フレミー・スピッドロウ&ランサー』です

大変申し訳ございませんでした


395 : ◆CKro7V0jEc :2016/03/09(水) 21:40:33 dJJAOXpM0
投下します。


396 : 古畑任三郎&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/03/09(水) 21:41:02 dJJAOXpM0





 ――えー……みなさん。ご無沙汰しております、古畑任三郎です。


 早速ですが、みなさんにとって、『英雄』、もしくは、『ヒーロー』とは、どんな人たちの事でしょうか?


 子供たちにとっては、スポーツ選手やテレビのヒーロー。


 ファンにとっては、SMAP。


 特にええ、木村くんなんかは、いかにも『ヒーロー』って感じです。んふふふふふふ。


 ……私ですか? そうですねぇ、んー、……私にとってみれば、そう、シャーロック・ホームズが心のヒーローです。


 ところで、世の中がこれだけのヒーローで溢れているとして、もし、ヒーローだけが行き着く場所があるとすれば、どんなに豪華な面々が揃っているんでしょうねぇ?


 気になりませんか? 私は、すごく気になります。





♪~



      □■
       □□□



   ♪~



      古畑
       任三郎










◆ ◆ ◆ ◆ ◆


397 : 古畑任三郎&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/03/09(水) 21:41:29 dJJAOXpM0





 真っ黒なスーツに身を包んだ、ひょろ長い中年男が金色の自転車に乗って事件現場に現れた。
 この異常事態の際にも、相変わらずのマイペースで、あまり緊張感がない。
 この男が刑事だという男を、誰が信じるだろう。
 特に襟足の長さは、誰が見ても刑事と思えない程だった。

 こう見えて、階級は警部補である。
 一応、それなりに出世した部類だと思うが、当人のやる気というのは良い意味でも悪い意味でも図れない。
 出世競争に興味があるかといえば、そんなにあるわけでもなく、正義感がないように見えるかと思えば、犯罪者を険しい目でどこまでも追いつめようとする事もある。
 それでいて、どんな犯人に出会ったとしても、相手が認めてしまえば紳士的でもあり、犯人に対しても、被害者を蔑ろにしない程度に共感をしようとする。
 古畑に逮捕されて古畑を恨んだ犯人というのは、むしろ少ないくらいだ。
 こんな功績もあって、おおよそ、この管轄の「名刑事」と評価して差し支えないだろう。


「あー、はい、はい、おつかれさん。いや~まったく、いきなり大変な事件だ~」


 そんな刑事――古畑任三郎は、現場に、ようやく現れたのだった。
 現場に必ず自転車でやって来るポリシー(?)故に、その行動が多少遅れるのもまあ仕方がない。
 現場の彼の部下たちも、それをよく理解しているらしく、古畑の行動をいちいち咎める事はなかった。

 とりあえず、古畑は、黒い手袋をはめながら、野次馬をかきわけて、現場の黄色いテープをくぐる。
 その中に入ると、早速古畑は苦い顔をした。


「うわっ、話には聞いてたけど、酷いなぁ、これは……」


 古畑がやって来たのは、百名以上が殺されたという江戸川区の殺人現場だ。
 とてつもない血の匂いが充満していて、古畑は鼻を塞いで、手をパタパタさせている。
 元々、古畑は血を見ると眩暈を起こしてしまう性質なので、捜査を任された事については不服でもあった。
 尤も、都内の警察は手が空いていれば、この事件を任されるし、捜査一課では殺人事件は当たり前の話なので、元を辿れば、就いた職が悪かったと言えるかもしれないが。
 とにかく、一刻も早く、捜査状況を知っておきたい古畑は、手近な警察官に声をかけようと思った。


「ねえ、ちょっと、誰か説明してくれる」

「あ、は、はい。じゃあ、古畑さん。僕が説明しますよ」

「お前じゃ駄目だよ、誰かもっとマシな刑事呼んできてよ」


 事件について喜々として説明を始めようとしていた禿げた中年刑事に対して、古畑は目も合わせずに言った。
 その刑事の事を全く見ようともせずに、きょろきょろと優秀な刑事を探す。
 ……まあ、この刑事以外ならば誰でも良いのだろう。
 当の中年刑事は、いつもこの扱いに慣れているので、めげずにニコニコ笑っていた(どこか寂しそうでもあるが)。
 そこで、殺人現場の捜査をしている、制服姿の警官を呼び止める。


「あっ、ちょっと、君、君、現場の状況、教えてくれる?」

「はい!」


 それから、その刑事は説明を開始した。
 被害者の数すら判然としていないなど、捜査は殆ど進んでいないが、犯人の手がかりは多い。
 犯人は監視カメラにはっきりと映っており、また、多くの生存した目撃者もいる。
 そのすべてが告げているのは――犯人が単独犯であり、「殺害」を行ったという事実。
 爆弾事件でもなく、マシンガンを乱射したという訳でもない。
 普通に考えれば、「ありえない」事件。


「え、これ全部一人でやったの?」

「はい。そのようです」

「ふうーん……」


 実際のところ、江戸川区内の警官が応援に来たものの、その全てが殺害されるという信じがたい事態を引き起こっている。
 犯人は、「超人」と見ていいだろう。
 警察の手に負える相手ではないが、それでも警察は職務上、相手にしなければならないわけだ。

 ちなみに、各管轄の名刑事は一度、この事件に向き合うべく現場に呼ばれているようで、古畑もその一人になったという事である。
 現在、犯人も現れていないので、この近辺も安全であるらしいが、警官を大量に殺害した狂人となれば、どこも安心できる場所にはならない。
 古畑自身も、ここにいて、怖くないわけではない。
 何か、恐ろしい予感がしてならなかった。

 とにかく、全て訊いたところで、古畑は、刑事にある質問をした。


「――ところで君名前なんだっけ?」

「向島です!」

「向島くんね、覚えとく」

「はい!」


 この向島という男と同じ会話を交わすのは何度目だろう。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆


398 : 古畑任三郎&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/03/09(水) 21:42:29 dJJAOXpM0



 ……というわけで、古畑も捜査の協力を行わなければならないわけだが、これが実に厄介だった。
 警察組織は本来、市民の平和を守らなければならない組織であるものの、実情は管轄争いも激しい世界だ。
 こうして、多数の刑事が一同に集められると、どこかが「お手柄」の為に必死になったり、どこかが「面倒だから」と押し付けたりという事が始まるのである。
 その上、犯人のその刺青が原因で、外国人犯罪説なり、暴力団説なり、様々な憶測のもと、捜査一課と公安部との対立が発生するのも目に見えている。

 古畑としては、それは避けたいところであるし、加えて言うならば、古畑は何となく真相を理解していたので、早めに現場を撤退して自転車を推しながら、独自の「聞き込み」に回る事にした。
 聞き込みといっても、今更、住民相手にする仕事は殆どない。
 遅れてきたゆえに仕事も他の連中にかなり取られたので、今は自らの「相棒」にでも相談させてもらう事にした。
 適当な公園のベンチに座り、半分サボっているような形であるが、古畑は、この事件について自分より詳しい男を召喚する。


「出てきていいよ、セイバー」

『……わかった』


 一人で喋っているようだが、ここには、肉体の無い「もう一人」がいる。
 彼が声を返してくるので、とりあえず古畑はそれと小声で会話を交わしているのだった。
 それは、人間には視えない、「霊体」の状態で、古畑の傍でずっと行動していたのだ。
 しかし、今、肉体を実体化する。

 現れたのは、濃い顔の若い男性だった。
 彼の名は、ギャバン。――フランスの有名な映画俳優を彷彿とさせる名前である。
 日本人名も持っていて、そちらの名前は「一条寺烈」と云うらしい。
 聖杯戦争では、「セイバー」のクラスで呼ばれている古畑のサーヴァントであった。
 本職は、古畑と同じく、刑事だ。


「聞いた?」

「ああ、酷い事件だな。早速、他のサーヴァントが暴走を始めたと見て間違いない」


 刑事という立場上でもあるが、セイバーは極めて冷静に言った。
 頭脳労働タイプの古畑に対して、彼はもっと肉体派な印象を受けるのだが、それでも、やはり冷静に捜査を行う仕事意識も忘れてはいない。


「正直言って、私も半信半疑だったんですが、う~ん……困りましたぁ。
 給料や危険手当が出るわけでもないし、私がこれからどれほど活躍しても誰も見てくれないし評価もされない。
 しかし、確かに命にだけは関わるし、何より疲れる。……これほど割に合わない仕事はない」

「……捜査は難航するだろう。しばらく元の世界にも帰れずタダ働きの上に、いつも以上に忙しい」

「ええ、だから私もかなり頭を悩ませてるんですよ。私これでも、なかなか……んふふふふ、忙しいもので」

「すまない。察する」

「いやいや」


 どこか笑みを浮かべつつも、内心苛立っている古畑の気持ちは、セイバーも理解できた。
 願いがあるならばまだしも、特に理由もなくこの殺し合いに招かれた男が、普通、これほど平静でいられるはずがない。
 多くは、元の世界での職務や生活もあるし、それぞれ危険とは無縁でいたい人生があるだろう。
 それを壊して聖杯に呼ばれて、挙句に警察としての職務は相変わらず休めないのだから、怒りを覚えるのは無理のない話である。
 しかし、あまり顔に出さず、飄々としていられるのが古畑任三郎であるわけだ。


「で、セイバー。誰の仕業だと思います、これ」

「まだわからないな……少なくとも、俺の知っている英霊ではなさそうだ。
 クラスも、キャスターだとすればやり方が派手すぎる。魔力を得る為の大量虐殺というわけでもない」

「という事は?」

「殺人そのものが、目的だというように思える……やり方は通り魔的だ」


 そう訊いて、古畑は少しだけ頭を捻ってから、答えを推察した。


399 : 古畑任三郎&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/03/09(水) 21:42:50 dJJAOXpM0


「となると、バーサーカー?」

「ああ、そうだと思う」

「――あーん……つまり」

「つまり?」

「一番厄介な相手がもう動き出している。私は、職務上、早速それと戦うかもしれない危機に直面している。
 どうして私がそんな厄介な犯罪者と戦わなきゃならないのか、そして、私はどう戦えばいいのか!
 ……私がこれから考えなきゃならないのは、つまり、そういう事です。しかも、早速これがかなり深刻になってきた」

「……」

「うん~、残念ですが、私にはそれ以上、考える事ができません。
 おそらく、説得にも応じないし、法もこれでは無力だ。何の対策も練れない。
 そして、私は銃もろくに撃てないし、はっきり言って、運動能力もそこらの警官よりは下です。
 だとすれば、私の命運はセイバーに託すしかない……。
 でも、はっきり言って私、あなたがどれくらいの実力持ってるのか知らないわけですから、簡単に託せるわけがない。
 犯人に遭遇した時、あなたが私を守れるかどうか、それは、イチか、バチかです」


 古畑の口ぶりは実に正直だった。
 しかし、セイバーとしても、配慮などいらないと思っている。
 せめて、意気込みくらいを伝えておこうと口を開いたところで、古畑が先に口を開いた。


「……ただ」

「た、ただ?」

「――期待くらいは、しておきます。
 何せ、この私が呼んだサーヴァントですから」


 古畑は、悪戯に微笑みながら、セイバーを斜めに眺めた。
 それで、セイバーは彼に向けて、真摯な瞳で答える事にした。


「……それには応える。安心してくれ、マスター」

「ええ、じゃあ私はまたしばらく適当に捜査します。
 聖杯戦争の手がかりを得られるよう――」


 そう言って、また古畑はどこかで捜査を続行し始めた。





----


400 : 古畑任三郎&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/03/09(水) 21:43:06 dJJAOXpM0

【CLASS】

セイバー

【真名】

ギャバン(一条寺烈)@宇宙刑事ギャバン

【パラメーター】

基本
 筋力D 耐久D 敏捷D 魔力D 幸運C 宝具EX

コンバットスーツ装着
 筋力B 耐久B 敏捷B+ 魔力D 幸運C

【属性】

秩序・善 

【クラススキル】

対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:A
 騎乗の才能。
 大抵の乗り物や魔獣・聖獣ランクの獣を乗りこなす事が出来る。

【保有スキル】

戦闘続行:B
 名称通り戦闘を続行する為の能力。
 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。

単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

【宝物/宝具】

『超次元高速機ドルギラン』
ランク:A++ 種別:宝庫 レンジ:∞ 最大捕捉:-

 セイバーの任務の為にあらゆる必要宝具・道具を転送してくれる宝庫。
 聖杯が再現している都市の延長線上にある宇宙空間に存在しており、「ギラン円盤」と「電子星獣ドル」の二つのパーツから構成されている。
 セイバーの現界中は常にこの宝具も現界しており、内部に保管された宝具を要時には一瞬で宝具を彼の下へと送ってくれる。
 また、これらの宝具は宇宙空間では魔力供給なしに存在する事が出来、常に現界していても負担はかからない。
 甚大な魔力消費が起こりうるのは、この宝具を分離させ、聖杯戦争が行われている都市に呼んだ場合や、その他の巨大な宝具を使用した場合など、直接セイバーの身に宝具を転送した時である。

『コンバットスーツ』
ランク:B 種別:対人用の宝物 レンジ:∞ 最大捕捉:1(自分)

 一条寺烈(ギャバンの地球人名)がスーツ装着コード「蒸着」を発することによって、ドルギランから転送されてくる特殊軽合金グラニウム製のスーツ。
 「宇宙刑事ギャバンは戦闘の際、コンバットスーツを蒸着するタイムは僅か0.05秒にすぎない。」
 つまり、蒸着コードを発した場合、瞬時に変身が完了し、宝具発動の隙は殆どなくなるという、迅速な戦闘に向いた宝具である。
 主に格闘戦や、レーザーブレードという剣を用いた剣術で敵と戦う。ちなみに、このレーザーブレードこそが彼のセイバーたる所以。
 必殺技は「ギャバンダイナミック」。

『電子星獣ドル』
ランク:A+ 種別:対城宝具 レンジ:- 最大捕捉:1(自分)

 ギャバンの活動拠点、移動基地となる超光速宇宙船「超次元高速機ドルギラン」から分離する巨大な青龍ロボット。
 普段は聖杯が再現している都市の延長線上にある宇宙空間に存在しているが、彼が呼ぶと現れる。
 炎を吐き、レーザーを放って攻撃するとんでもない強さのロボットであり、使用するとマスターが魔術師であっても甚大な魔力消費に悩まされる事になる。
 また、街に被害が及ぶ可能性を考慮し、余程巨大で対処しかねる敵でない限りは殆ど使用する事がない。

【weapon】

 なし

【人物背景】

 かつて銀河連邦警察によって地球に派遣された宇宙刑事。
 父は同じく宇宙刑事で地球に赴任していたバード星人・ボイサーで、母親は地球人の一条寺民子。
 この為、地球上では、母親の姓を借りて「一条寺烈」を名乗り、アバロン乗馬クラブで働いていた。
 地球には失踪したボイサーの後任として派遣され、地球を狙う宇宙犯罪結社マクーを相手に任務を全う。
 その果てに父を見つけたが、既に父はマクーによる拷問で肉体が限界に達しており、再会から間もなくして、父は息を引き取る事となった。
 マクーを滅ぼした後も、両親の想いを継いで、愛した地球や宇宙を守るべく、銀河連邦警察で後進の育成に関わり、時に地球で新たな犯罪組織と戦う。

【サーヴァントとしての願い】

 なし


401 : 古畑任三郎&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/03/09(水) 21:44:10 dJJAOXpM0





【マスター】

古畑任三郎@古畑任三郎

【マスターとしての願い】

元の世界への帰還

【weapon】

『自転車』
 移動に使用している黄金色の自転車。ブランドはセリーヌ。

【能力・技能】

 高い推理力を持ち、何人もの殺人犯を追いつめた他、殺人を起こす前に阻止した事もある。
 ボウリングも得意だがフォームは独特。
 英語も喋る事が出来るが、海外ではミスを連発してしまう。
 ミーハーで芸能人にも詳しく、SMAPの出演番組もよく知っていた(ただし、捜査前はそこまで興味を示していなかったのを見ると、捜査にあたって知った可能性が高い)。
 ゴールデンハーフのファンクラブ会員でルナのファン。
 シャーロック・ホームズにも詳しい。

【人物背景】

 警視庁刑事部捜査一課の警部補。
 鋭い観察眼と直観力でわずかな手がかりや発現の矛盾を即座に見抜き、疑わしい容疑者にしつこく付きまとって巧みな話術で執拗に質問をしかけて追及する。
 血を見るとめまいを起こし、拳銃を持たず、警察手帳は「なくした」などと語っている、ほぼ警察官に向いてなさそうな性格。
 紳士的で頭が切れる一方、神経質で気難しい性格でもあり、子供のような負けず嫌い。

【方針】

 とにかくどういう形であれ元の世界に帰還しておきたい。
 また、他のマスターの撃退は行わない。


402 : ◆CKro7V0jEc :2016/03/09(水) 21:44:26 dJJAOXpM0
投下終了です。


403 : ◆yaJDyrluOY :2016/03/09(水) 22:51:03 VlH5nIdQ0
投下します


404 : 三千院ナギ&キャスター ◆yaJDyrluOY :2016/03/09(水) 22:52:37 VlH5nIdQ0
――私の大好きな人たちの夢。

――大切な私の執事、いつでも一緒だった優しいメイド。

――随分と豪華な夢だ。幼馴染達やクラスメイト達まで勢揃いである。

――だけどどうしてだろう、その夢を見ているととても悲しくなってくるのだ。

――まるでみんなが居なくなってしまうような、二度と会えなくなるような。

――そんな、悲しい夢だった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――


「……ッ! はぁはぁはぁ……」

 夢で飛び起きるなんて何年ぶりだろうか。
 特別怖い夢だったとか、そういう理由じゃない。
 ハヤテもマリアも他の人達も、みんな笑顔でこっちを見ていた。
 今思い出しても全く怖くない夢なのに、なんだか凄く悲しくて自然と涙が出てしまう。

「くぅっ、夢なんかでこんな嫌な気分になるなんて冗談じゃないぞ」

 なぜこんな最悪な目覚めを体験せねばならんのか、理不尽だ。
 そう思い再びベッドに潜ろうとした私は、違和感を覚えて隣を見た。
 案の定、いつも一緒に寝ているはずのマリアがいない。
 驚いて、薄く暗い中で時計を見ると、まだ午前4時過ぎを指していた。

「マリアの奴、こんな時間に何をしておるのだ。お陰で変な夢を見てしまったぞ」

 マリアは私が真っ暗な部屋では1人で寝られないことを誰よりも知っているのだ。
 いつも朝日が登るまで一緒に寝ているし、早朝にマリアが仕事をすることはないはず。
 それなのに、なぜか今日は私一人を暗い部屋に放置するという異常事態が起きてしまっている。
 私が眠っている間に何か問題でも起きたのだろうか?
 悲しい夢のせいでもう一度眠ることなどできないし、起きてマリアが帰ってくるのを待つことにする。
 もしかしたらトイレに行っているだけで、数分もしたらひょっこり帰ってくるかもしれない。
 そんな淡い期待を胸に、私はマリアを待ち続けたのだった。


 ――遅い! マリアは一体何をやっているのだ!
 待ち続けて約5分、初めこそ恐怖と不安で健気にもマリアを待っていたがもう限界だ。
 こんな深夜に長時間私を放置するなんて、心細くて死んでしまったらどう責任を取るつもりなのだ、マリアの奴は!
 仕方がないので、少し怖いがベッドから降りて電気を付ける。
 この時間ならもうハヤテは起きているだろうか?
 ハヤテに慰めてもらわねば釣り合いが取れない、と私は呼び鈴を鳴らした。
 そして、待つこと数十秒後。

「どうかなさいましたか、お嬢様」

 やってきたのは執事長のクラウスだった。


405 : 三千院ナギ&キャスター ◆yaJDyrluOY :2016/03/09(水) 22:53:48 VlH5nIdQ0
 ハヤテが来るのを期待したのだが、この際マリアの居場所を知っていればクラウスでもかまわない。

「マリアは一体どこにいるのだ? 暗い部屋に私を放置したままどこかへ行ってしまったのだ。 お陰で変な夢を見て大変だったのだぞ」
「マリア……ですか? 私は存じ上げない名前ですが、今までご一緒だったのですか?」

 私の問に対して、クラウスが随分とおかしなことを言う。

「はぁ? お前は何をふざけているのだ?
 とうとう老いが脳にまで回ったか……うちにボケた執事はいらんぞ」
「そう申されましても……私は存じ上げませんが……」
「お前がハヤテはともかく、マリアに関してそんな冗談を言うなんてな。
 そんなに私に言えない用でもあるのか?」
「いえ、本当に私には何のことだか……わかりました。お嬢様、少々お待ち下さい」

 そう言ってクラウスは私の寝室から出て行った。
 まったく、あいつら何をふざけているのだ。
 こっちは嫌な夢を見て気分が悪いというのに、配慮がまったくなっていない。
 マリアに口止めされているにしても、知らないふりをして騙しきれるとでも思ったのか?

 私は少し湧いてきた怒りを抑えながら、クラウスが戻ってこない内に私服に着替えた。
 あそこまで問い詰めて吐かないなら、クラウスはきっともう何をしても喋らないだろう。
 ならば自分から探しに行くまでだ。
 適当なカバンに適当にクレジットカードといくつか札束を放り込み、私は部屋を出た。

「ハヤテー!ハヤテーー!!」

 私は大声でハヤテを呼んだ。
 マリアがどこへ行ってようと、ハヤテが付いていてくれれば多少の遠出は大丈夫だ。
 しかし、一つ懸念があるとすれば、クラウスがあそこまで知らん顔ならハヤテも口止めされている可能性は高いという事だ。
 マリア探しに難色を示すかも知れない。
 私がそうして屋敷を徘徊していたら、またもクラウスが立ちはだかった。

「お嬢様、お部屋でお待ち下さいと申しましたのに……」
「うるさい! お前が頼りにならんから、こうしてハヤテを呼んでいるのではないか!」
「また変な事を仰って……ハヤテとは一体誰のことなのです?
 それに先ほど調べた処、『マリア』という名の者もお嬢様と会っていた記録はございませんでしたぞ」
「――っ! もうよい!」

 こいつ、ここまで白々しいと逆に笑えない事を知らんのか!
 しかもハヤテのことまで恍けるとは、一体何だというのだ。
 もはやクラウスは無視して玄関へ向かおう。

「お待ち下さいお嬢様、一体どこへ行かれるのです?」
「マリアとハヤテを探しに行くに決まっている!」
「ですからそんな者はいないと……」
「くどいぞクラウス。お前はクビになるか本当の事を話すかどちらがいいのだ?」

 私を止めるクラウスに最終手段の解雇通告を放った。
 クラウスがどんなに調子に乗っても、こう言えば逆らえないのは経験済みなのだ。


406 : 三千院ナギ&キャスター ◆yaJDyrluOY :2016/03/09(水) 22:55:04 VlH5nIdQ0
「そう言われましても……他の者に確認を取っても、みな知らないと言っています」
「他の者だと? 貴様以外にはSP達しかここにはおらんだろう」
「何を申されるのです。他の使用人達がいるではないですか。
 ――ほら、お嬢様が騒いだので、みんな心配して集まって来てしまいましたぞ」

 クラウスが顔を向けて仰いだ先にいたのは、数十人のメイドや執事達。
 私が人見知りするからと、ここにはマリアとハヤテとクラウス以外使用人はいないはずだ。
 なのになぜだろう、この人達を――私は知っている。

 私のなかに、あそこのメイドとゲームをした記憶がある。
 あっちの執事には漫画を取って貰ったし、そこのメイドは絵がうまかった。
 そんな記憶が、私の中に確かに存在しているのだ。
 急に頭が痛くなってきて、足元がふらつく。

「お嬢様、大丈夫ですか? きっと悪い夢でも見られて混乱なさっているのでしょう、こんな時間に起きてしまったのが何よりの証拠です。
 さあ中学校が始まるまでまだ時間があります。登校なさる前に、もう一度お休みになられた方がよろしいでしょう」

 クラウスが、ふらつく私を支えながらそう言った。
 こいつは私の気分がこんなに悪い時に、まだふざけた事を言うのか?

「おい、中学校とはなんだ? お前は私の学年すら忘れたのか?」
「お嬢様は13歳、今は中学2年生でございましょう?
 ささ、お嬢様は大変疲れておいでなのでしょう。もう今日は学校を休んで構いませんから、よくお休みください。
 ……誰かお嬢様を寝室へ」

 クラウスはそう言うと、本当に心配そうな顔で何処かへ電話をかけ始めた。
 メイドの1人が私に声を掛けてくる。
 その顔にも見覚えがある、昨日私の中学に弁当を届けに来た奴だ。
 
 ……昨日? あれだけクラウスに否定したのに、それは確かに中学での記憶。
 この屋敷に他の使用人がいて、マリアもハヤテも居ない記憶とマリア達がいる記憶。
 どっちが本当の記憶なのだろう。私の中から、だんだんマリア達の記憶が薄れていく。
 ――あれはただの夢だったのか? どこからが夢なのだ?
 私は急に怖くなって、メイドの手を振り切って玄関へ走った。

「お嬢様!?」「お嬢様!」「お嬢様!」「お待ち下さいお嬢様!」
 
 後ろから使用人達の声が聞こえてくる。それでも私は止まらなかった。
 運動はからっきし出来ない私だが、家出はもう手慣れたもので、使用人達が私に追いつくことは無かった。
 練馬区の65%を占める広大な三千院家の敷地をようやく抜けると、もう空は白み始めていた。
 


(……ハヤテ)

 私はたまたま見かけた公園のベンチで、記憶の整理をした。
 もうどっちが嘘でどっちが本当なのか、全然わからない。
 今、現実として存在するこっちが本物なのか?


407 : 三千院ナギ&キャスター ◆yaJDyrluOY :2016/03/09(水) 22:56:31 VlH5nIdQ0
 また気分が悪くなって感覚がして、うずくまってしまう。
 喉が渇いたが、万札しかないので自動販売機とやらは使えなかった。
 ハヤテが居ないと、私はジュースもろくに買えないようである。
 そんな事を考えて、少し勇気が出た。
 
 ――そうだ、間違っているのはこの世界の方なのだ。
 きっと、漫画みたいにパラレルワールドに迷い込んでしまって、ハヤテが私を助けに来るはずだ。
 普段している妄想が現実になっただけ、と考えれば良いのだ。
 漫画のネタになりそうだと思ったが、とても漫画を描く気分ではない。
 しかし、そうしている内に、ハヤテが探しにくるのではないかという期待が高まってくる。

 私のいる公園の横に、黒塗りの車が停まった。
 迎えの者達が来たのだろうか? 車から数人の男が降りて、こちらに向かって来る。

「三千院ナギだな? 大人しく車に乗って貰おう」

 どうやら迎えじゃなかったらしい。
 
「な、お、お前ら誘拐犯か!」
「そうだ三千院ナギ、抵抗すると痛い目見るぞ?」
「くっ、離せ! 離せ!―――っが!?」
 
 抵抗はしたもののスタンガンか何かで気絶させられ、私は意識を失った。



 目を覚ますと、そこは車のトランクの中のようだった。
 安くて車体が低い車なのか、振動が酷くて身体が痛い。
 両腕と両足がロープで縛られていて、乱暴に縛ったのか左手の甲が熱く痛む。
 おまけに口もガムテープで塞がれている。
 奴らは乙女の柔肌に傷をつけたらどうなるかわからないらしい。
 

 ――おのれ、この私を誘拐するとは…… 
 実際誘拐されることなど日常茶飯事だが、いつもとの大きな違いは今回はハヤテが来る確証はないことだ。
 そう考えた途端、急にとても怖くなってくる。
 ハヤテが家で執事をする前はこんなこと平気だったのに、私はいつからこんなに弱くなってしまったのだろうか。

 でも、こんな状況だからか、今ははっきりと確信できる。
 この世界が嘘で、ハヤテがいる世界が本当なのだと。
 一度は薄れかけたハヤテ達との記憶も鮮明になり、ここでの記憶よりも確かなものになっていた。
 
(強い意思を持ち続けていれば、きっとハヤテは来てくれるのだ!――ハヤテ!ハヤテ!)

 私は何度もハヤテの名前を呼んだ。
 どんなに声を出そうとしても小さく唸る事しか出来ないが、心の中で信じて叫び続けることが大事なのだ、と思う。


408 : 三千院ナギ&キャスター ◆yaJDyrluOY :2016/03/09(水) 22:57:59 VlH5nIdQ0

『まったく、私のマスターは随分と五月蝿い小娘みたいだねぇ』

 すると突然、私の脳内に女の声が響いてきた。幻聴か?
 トランクの中が真っ暗なこともあり、私の恐怖は最高潮に達している。
 だからといって幻聴を聞くなんて、いよいよもってヤバイ気がする。
 
『そんなに怖がるもんじゃないよ。私はあんたの味方さ。
 これは幻聴じゃなくて”念話”ってもんさ、こっちに伝わるように念じてみな』
 
 こいつ、直接脳内に……! ――じゃない!
 念話だと? まさか、本当にそんな漫画みたいなことがあるのか?
 ……まぁ、お化け神父とかハヤテに掛かった呪いとかを散々見てきた私のいうことじゃないが。
 その声の通りに、感覚で念話という物を試みる。

『……こ、こうか?』 
『そうそう、あんたなかなか飲み込みが早いじゃないか。さっきもハヤテハヤテって五月蝿かったしねぇ』
『ええっ!? き、聞こえていたのか!』

 聞かれてたとなると、なんだか急に恥ずかしくなってくるな……
 だが、そのお陰で私に気付いたなら、呼びつづけた甲斐もあったというものだ。
 しかし、味方だとか言っていたが、こんな事が出来るこいつは何者なのだ?

『お前は一体何者なのだ? 私を助けてくれるのか?』
『せっかちなマスターだね。質問は1つずつしておくれよ。
 ……まぁそうだねぇ。私が何者かはあとで話すとして、あんたを其処から出すのは朝飯前さ』
『ホ、ホントか!?』
『あぁ、本当さ。条件はあるがね』

 この際、助けてくれるならもう何でも良かった。 
 
『それで、条件とは何なのだ?』
『こっちの通貨で換算するなら……現金で2万円って処でどうだい?
 サーヴァントでもないこんな奴ら程度、本当は無償でも良いんだが……これもけじめさね。』
『……な、なんだ? そんなものでいいのか?』

 低すぎる対価に、私は少し焦ってしまった。
 数百万でも安いくらいのことなのに、随分と欲のない奴だ。
 ……いや、無償でもいいと言っていた位だし、きっとはした金でも人を助ける良い奴なのだろう。
 
『冗談のつもりだったんだが……あんたの年頃では大金ではないのかい?
 あんたには恩もあるし、お試しで最初はワンコインでも良かったんだがねぇ』
『ワンコインとはなんだ? そんな金額くらい大したものではないじゃないか』

 こいつは何を驚いているのだ? こんなことができる奴に恩を売った覚えはないぞ?
 ともかく金を渡そうと、バッグを探す。しかし、身体を拘束されていたのを忘れていた。
 こんな状態では探しものも出来ない。
 最も、周辺に身体に当たる物もないし、トランク内には無さそうだが……

『スマンが、早いとこ拘束を解いてくれんか?』
『おっと、忘れていたよ――ホラ』

 声がそう言ったかと思うと、トランク内に外から手がニュッと伸びてきた。
 トランクの壁を貫通して、4本の腕が私に向かってくる。
 そのまま、その腕は私を押さえつけてきた。
 ――なんだこれは、怖すぎるぞ! ホラーではないか!


409 : 三千院ナギ&キャスター ◆yaJDyrluOY :2016/03/09(水) 22:59:12 VlH5nIdQ0
「ムーッ! ムーッ!」
『暴れるんじゃないよ、外しづらいだろう!』
「――痛っ!」
 
 やっぱりこいつは幽霊だったのだ、しかも物質に干渉してくるとは恐ろしい奴。
 私は口のガムテープをベリッと乱暴に剥がされ、痛みに呻きながらそんなことを考えていた。
 続いて4本の腕が、私の手足のロープを引きちぎる。
 そこでようやく私は五体満足の身となった、相変わらずトランク内は狭くて暗いので窮屈だが。

「おいお前! もう少し優しくできんのか!」
『あんたねぇ……助けてやったのにその態度はないだろう?』

 恐怖と得体のしれない幽霊が相手ということで文句を言ってしまったが、確かにそうだ。
 こういう時は素直に感謝しなければいけないと、マリアも言っていた気がする。
 正体が何であれ、こいつが私を助けたことに変わりはないのだ。
 
『う、うむ……少し取り乱してしまったのだ。あ、ありがとう』
『ふん、まぁいいさね、まだ何にも説明してないんだから疑問は当然さ。
 だが、説明はこいつらをやっちまってからにするよ……報酬は前払いだが、どうする?』
『あぁ、それなら多分、そいつらの誰かが私のバッグを持っているはずだ。
 ブランド物の、むさいおっさんには似合わないバッグがそれだ。
 その中にいくらか現金も入っているから、適当に持って行ってくれ』

 幽霊ならあいつらにバレずにバッグを漁るくらい簡単なものだろう。
 というか、幽霊に金がいるのだろうか? 一体何に使うのだろう?
 私がそんな事を考えていると、また幽霊の声が聞こえた。

『見つけたは見つけたんだが……これ本当にあんたの鞄かい?
 この時代の人間じゃない私でも凄い金額が入っているように見えるんだが……』
『そうか? クレジットカードだけだと払えない場所とかあるから適当に突っ込んできただけなのだが』
『はぁ……まぁあんたが何者なのかは、後でゆっくり話し合うとしようか……』

 そして奴は十数秒黙り、車内からはかすかにビリビリと紙の破ける音が聞こえてくる。

『よし、これであんたを救う準備は整った。
 予想外に多く報酬を貰っちまったからねぇ、ちょいと派手にいくよ!』

 幽霊がそう言って、数秒後。
 外から大砲が打ち込まれているかの様な轟音とともに、車体が大きく揺れた。
 な、何が起こっているのだ!? あいつは何をした?
 捕まっていろとは言われたが、私の腕力では激しく揺れる車に抵抗できる筈もない。
 今日は一日中身体が痛くなってばっかりだ。
 ――少し経って、揺れが止む。しかし安心したのも束の間、幽霊の次の一言が私に今日一番の絶望を呼んだ。


410 : 三千院ナギ&キャスター ◆yaJDyrluOY :2016/03/09(水) 23:00:34 VlH5nIdQ0

『全員始末したのは良いんだが、この鉄の箱は一体どうやって止めるんだい?』
『うぉい! それはないだろう! というかお前は何時の時代の人なのだ! このままでは死んでしまうぞ!』

 誘拐犯ではあるが、死んでしまっては寝覚めが悪いどころの話ではない。
 気絶しているにしても、このスピードで何処かへ衝突してしまっては死は免れないだろう。
 音と振動での体感ではあるが、車の速度ははさっきまでと変わっていないように感じる。
 誘拐犯から助けて貰っても、その方法のせいで死ぬなんて笑えないぞ!

『おい、ど、どうするのだ!?』
『開け方なんぞ知らないし、あんたのいるそこをぶっ壊すしかないかねぇ』
『そんなの危ないでないか!』
『あっはっはっは、覚悟を決めなマスター! いくよ、耳塞いでな!』

 私は言われたとおり耳を塞いで、頭を守って縮こまる。
 そして、さっきとは比べ物にならないくらいの轟音が鳴り響いた。
 目を瞑っていても、視界が一気に明るくなったのが分かる。
 ――瞬間、私の身体が宙に浮いた。

「う、うおお! 何が起きたのだ!?」

 私は思わず目を開いた。
 そこにあったのは、視界いっぱいの”黄色”、そして変な帽子を被った女の顔だった。
 4本も腕があるそいつは、随分と派手な幽霊だ。ぶっちゃけケバかった。
 どうやら私はその4本の腕で、俗に言う”お姫様抱っこ”をされているらしく、安定感が凄い。

「ようやくお目にれたねぇ、マスター。私があんたのサーヴァント、蜂峰烽さ、よろしく頼むよ」
「あ、ああ、うむ、よろしくなのだ」

 サーヴァントだのと、こいつが言っていることはよくわからなかったが、取り敢えず挨拶は済んだ。
 烽と名乗るそいつの顔が視界にアップに映って、私は恥ずかしくなって思わず視線を逸らす。
 その先にあったのは、上空からの綺麗な景色であった。――って!

「うおおおい! なぜお前は空を飛んでいるのだ!」
「そうだった、私が飛べるのもあんたのお陰さね。感謝するよ」
「お前の様な変な奴私は知らんし、そんな事を言っている場合ではない! 早く下ろすのだ!」
「はいはい、っとまあそこら辺りも後でゆっくり話すとしようじゃないか」

―――ドォォォォォオオオン!!

 彼女がそう言った瞬間のこと、遥か遠くで大爆発が起きた。
 大きな炎と煙が遠くに見える。
 あんなに遠いのに耳が壊れるかと思うくらいの音だった。
 確かめるまでもなく、それはさっきまで私が乗っていた車だろう。
 そういえばあの誘拐犯達はどうなったのだろうか?


411 : 三千院ナギ&キャスター ◆yaJDyrluOY :2016/03/09(水) 23:03:34 VlH5nIdQ0

「なぁ、あの誘拐犯達はどうなったのだ?」
「あいつらなら今、あの炎の真っ只中さね」
「お、おい、嘘だろう!? それでは死んでしまうではないか!」
「何言ってんだい、もう始末したって言ったじゃないか。とっくに死んでるよ」

 その言葉は私にとって衝撃だった。
 悪の女幹部みたいな格好で空を飛ぶ変な奴だとはいえ、そんなに簡単に人を殺してしまうなんて。
 
「何を驚いているんだか……あんたには、これからもっと激しい戦争が待ち受けてるんだ。人死にくらい屁でもなくなるさ」
「そ、そうか……」

 忘れていたが、ここはもう私のいた世界ではないのだな。
 漫画の中みたいに、簡単に人が死んでしまう世界なのだ。
 私は早く、こんな場所からハヤテやマリアの待っている世界に帰らなければならないのだ。
 これからは多少のことにビビってはいられないのだ。
 私はそうしてしっかりと覚悟を決め、烽に抱えられて家まで飛んで帰った。
 使用人達に心配されながらも、適当にあしらってベッドに飛び込む。

(今日はつかれたから、奴との話し合いは明日でいいだろう)

 覚悟は決めても、面倒くさいことはやりたくないのだから仕方ない。
 人がそう簡単に変われるなら苦労はしないのだ。
 真昼のまだ明るい部屋で、私は眠りに落ちる。
 ――今度はなんだか、いい夢が見られる気がした。



【クラス】キャスター

【真名】蜂峰烽@九十九の満月

【パラメーター】
筋力C+ 耐久C 敏捷B 魔力EX 幸運D 宝具A

【属性】中立・中庸

【クラススキル】
陣地作成:C
魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
キャスターは金貸しとして客を求めて旅をしており、確かなよりどころのない生活をしていたためランクは低い。
作るとしてもそれは数ある妖怪道具を駆使した簡易的な物になるだろう。

道具作成:B+
魔力を帯びた器具を作成可能。
キャスターは特に式術に使う式札や、蜂の特性による毒薬の作成に長けている。

【保有スキル】
眷属生成:A
自分に忠実な眷属を作り出す。キャスターは蜂の巣の様になっている後頭部から、様々な色の蜂を作り出す事ができる。
眷属達に魂はなく、身体が命令通りに動いているだけで生きてはいないので、少ない魔力消費で量産できる。
思考レベルはお掃除ロボット位の物らしいが、ある程度複雑な命令も判断して動く程度の知能は持っている。


412 : 三千院ナギ&キャスター ◆yaJDyrluOY :2016/03/09(水) 23:07:38 VlH5nIdQ0
黄金律(商):C+
人生においてどれほどお金が付いて回るかを示し、特に商売における才能の高さを表している。
巷での流行や、金の流れを見極める才を持ち、抜け目の無いシミュレーションで巨大な利益を得る。

単独行動:B
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
旅を続け、いたる所で商売をしていたキャスターの性格を表している。

【宝具】
『鬼技 貧者の鋒(おにわざ ひんじゃのほこ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
キャスターに発現した固有の鬼技。通貨として使用されている所謂”お金”を食うことで魂魄(魔力)に変える能力。
金額として価値が高ければ高いほど多くの魂魄を得る事ができる。

『黄金禄(こがねろく)』
キャスターとは生まれた時から一緒のカブトムシの妖怪。
身体は丸く、キャスター同様6本の手足があり普段は腕4本足2本にしている。
直径3m程度の体格を持っているが、心は純粋そのもの。
大変優しい性格だが頭が弱く、自分の事を黄金虫の妖怪だと思い込んでいる。
 『天下無敵の黄金禄』
  ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~10 最大補足:20人
  キャスターによって大量の魂魄を込められ、強力な姿に変身した黄金禄。
  体長は十倍の30m程の大きさにもなり、角や顔つきが厳しくなる。
  背中には鎧武者の顔の様な大きな外装が出現し、4本ある腕の内の一本はソギギンチャクという妖怪を放つガトリング砲に変化する。
  外見や装備以外にも大きく変化しており、内側には虫であるにもかかわらず自重を支える為の骨ができ、呼吸器系にも強化が入っている。

【weapon】
式札:
 魂魄(魔力orエネルギー)を込めて式神を呼び出す道具。魂魄を多く込めれば込めるほど強大な式神を召喚できる。

槍:
  蜂の尻の形をした槍のような物。魂魄を注入するときなどに使用する。

妖怪契約書(&ハンコ):
 不履行が起こると契約書が式神に変化し、債権回収を強制的に行う(物品を金銭に変える能力を持つ)。
 紙面以外にも隠された舌に文字がかけるため、詐欺に使われるケースが多い。

【人物背景】
 ニホンミツバチの九十九神で、昆虫神では珍しい商人。
 6本の手足は用途に合わせて変動できるが、普段は腕を4本にしている。
 昔は飲食店を経営していたため、キャスターと宝具である”黄金禄”は料理が非常にうまい。
 商売に対する熱意とその腕は確かなものだが、ようやく持った店を同業者の放火で失ったことで歪んだ金儲けを始めるようになる。
 その他にも虐げられてきた辛い過去を憎み、詐欺まがいの金貸しまで行っていた。
 高額で売れる”鬼の角”を奪おうと戦国万妖・違一行を襲った際、返り討ちにあって痛い目をみた。


413 : 三千院ナギ&キャスター ◆yaJDyrluOY :2016/03/09(水) 23:10:29 VlH5nIdQ0
 幼い頃に羽をもがれ、二度と自由に空を飛べないと思っていたため、サーヴァントとして顕現した際に羽が再生した事に喜びを感じている。

【サーヴァントとしての願い】
 貧民街なんかじゃない真っ当な場所に産まれたかった。


【マスター】三千院ナギ@ハヤテのごとく!

【マスターとしての願い】
 ハヤテ達のもとへ帰る。

【weapon】なし

【能力・技能】
 13歳でありながら高校に飛び級入学し、その中でもトップの成績を取るほどの頭脳を持つ。
 8か国語を話すことができ、100人以上いるSPの顔も全て覚えている。
 株や経済学にも精通しており、三千院家の遺産がなくても富豪をやっていけるという。
 そして石油王の孫であるため、大変な金持ち。屋敷は練馬区の65%を占める。
 漫画・ゲーム・アニメに非常に詳しいが、家事をしようとすると平均で数億の損失を出す壊滅的な才能も持ち合わせる。

【人物背景】
 三千院財閥の一人。幼少時から様々な分野で英才教育を受けており、白皇学院の飛び級制度により13歳で高校1年生になり、そこでもトップクラスの成績を修めている。
 性格は非常にわがままで気が強く、負けず嫌いで、「天の邪鬼」や「ヒネくれている」という評価もされている。
 幼い頃から誘拐の危険に度々遭ったことから、こもりがちな傾向が強く、学校も不登校気味で登校しても授業をサボることも少なくない。
 金銭感覚が常人離れして億単位の金銭も平気で動かす一方、一般の経済観念や世間智には疎く、1円玉を知らなかった。
 更に、重度の方向音痴で、一度迷子になれば普通の人の3倍のスピードで危険に巻き込まれる。
 幼少期の時のトラウマにより暗い所が苦手なので、夜は独りでは眠れず、マリアが毎晩添い寝している(マリアが居ない場合は他の人で代用、戦争中は恐らくキャスター)。

【方針】
 中学なんぞに行きたくないので、家に引き篭もって適当に頑張る。

【備考】
 クラウスは聖杯に”モブ”と判断され、レプリカを生成された所謂ニセモノ。
 原作のように卓越した戦闘能力等は持ち合わせていない、一般的な執事。


414 : ◆yaJDyrluOY :2016/03/09(水) 23:11:01 VlH5nIdQ0
投下終了です


415 : ◆yaJDyrluOY :2016/03/10(木) 02:21:12 9hJotdRk0
続けて投下します。


416 : ブライト博士&キャスター ◆yaJDyrluOY :2016/03/10(木) 02:22:34 9hJotdRk0
 東京のあるビル街で、1人の男性が首飾りを拾った。
 それはかなり大きなルビーや多くのダイヤモンドで装飾されている様に見え、売却すれば高い金額が付くであろう事は素人でも推測できる。
 おそらくこの男性も、そんな見た目に釣られて拾ったことだろう。――無論、善意で拾った可能性もあるが。
 兎にも角にも、この男性は不幸だったと言わざるをえない。
 なぜなら、その首飾りは――普通では無かったからだ。

「……ふぅ、また拾われてしまったよユユコ。案外ジャパニーズも卑しいね」
「あらそうかしら? 日本では、落し物があったら届けるのが普通なのよ」
「おっと、その発想はなかったな。流石ジャパニーズだ、真面目だね」

 拾った男性は突然陽気になったように見え、その隣にはいつの間にか可愛らしい和服をきた少女が立っていた。
 男性の態度の変化には、当然その首飾りが関係している。
 それはある組織でSCP-963-1と呼ばれている物で、今回聖杯が呼んだマスターの一つであった。
 SCP-963-1には接触した生物に“ブライト博士”と呼ばれる人物の人格を植え付ける力がある。
 実際、この東京の地でブライト博士がなり変わったのは、これで2度目だった。
 
「君の能力で死んでも私はこうして問題なく復活したわけだが……次は何を試してみようかね?」
「はぁ……私はなんでも良いのだけど、聖杯戦争そっちのけでいいの?」
「何を言う、サーヴァントの能力を調べ無くては不安で参戦などできんよ!」

 ブライト博士は笑みを浮かべながらいけしゃあしゃあと言ってのけた。
 勘違いしないでいただきたいが、ブライト博士はマゾヒストというわけではない。
 常人なら思いつかない様々な視点から面白可笑しく聖杯戦争を見極めようとしているだけだ。
 ブライト博士は聖杯戦争に“人間の体を伴わずに”参加させられた。
 SCP-963-1がいつの間にか安物の首飾りとして露天で売られていたのだ。
 一人目に身につけられたブライト博士は、その特性から仮の身分など無く、最初から全ての記憶を持っていた。
 ブライト博士はサーヴァントの出現に全く動じず、説明を聞き、キャスターの能力を聞いて最初に「じゃあ私に使ってみてくれ」と言ったのだ。


417 : ブライト博士&キャスター ◆yaJDyrluOY :2016/03/10(木) 02:23:32 9hJotdRk0
 当然キャスターは渋った、マスターがいなくては単独行動スキルのないキャスターが生き残るのは難しいからである。
 しかし、ブライト博士は「大丈夫、大丈夫!」などと笑顔を見せ、それでも渋るキャスターに対してなんと令呪を使った。
 
「なぁ、ユユコ。あとの令呪も全部使っちゃおうか」

 ブライト博士がまたおかしなことを言い出した。

「それって私に断る理由ないのだけど、どうして?」
「女性を命令で縛るなんてナンセンスだと思わないかい? それにSCP-963-1がダサくて仕方がないんだ」

 ブライト博士の言うとおり、現在のSCP-963-1は本来の物とは異なる見た目をしている。
 博士の特性から、令呪が人体ではなくSCP-963-1のルビー内に彫り込まれた模様となって現れているのだ。
 ちなみに令呪はSCP-963-2の形、つまりSCP財団のマークとなって現れている。
 その上、側面から見ると3画に分かれ、正面から見るとつながって見える立体的で珍しい形の令呪だった。
 すでに1画失った令呪は、美しいと絶賛できるものではない。

「しかも君はサーヴァントである以前に幽霊じゃないか! ファック、触れられないのに命令権なんていると思うか?」
「……一応、命の危機とかに助けたり出来るのだけど……あなたには必要ないわねぇ」

 ブライト博士に命の危機が訪れる事は、おそらく無いだろう。
 その上、キャスターは亡霊だが、人間を触ることもできるし触れられる。
 しかしキャスターは本能的に、言わないほうが良い気がしたので黙っていた。

「まあ、いつか君にやってもらいたい面白い事を思いつくかもれんし、とっておくか」
「ええ、それが良いと思うわ……」
「いや! やっぱり君の能力の全力を受けてみたくなった! 令呪で命じよう!」

 この男、全く行動が読めない。
 他人から考えを読み取られづらく、逆に相手の真意を図ることに長けているキャスターでさえ、ブライト博士が何を考えているのかわからない。


418 : ブライト博士&キャスター ◆yaJDyrluOY :2016/03/10(木) 02:24:14 9hJotdRk0
 ブライト博士の馬鹿げた提案が本気なのか冗談なのかわからないが、キャスターは一応止めることにした。
 
「そんなことしたら、魔力不足で私が消えちゃうわよ」
「なに? じゃあ受けるのは他のマスターを見つけてからにするか。とりあえずそこら辺の奴で試そう!」
「ちょっと、なんであなたそんなに人を殺めるのに躊躇がないのよ」

 人をゴミか何かのようにポンポン消費しようとするブライト博士に、キャスターは当然の疑問を持った。
 さっきの実験だって元は他人の体だったのに、躊躇なくキャスターに殺すよう命令した。

「そんな能力を持っていて君はわからないのか? こいつらは人間じゃない、レプリカだよ。私にはDクラスより使いやすいとさえ言えるね」
「とにかく、あなたは人の身体を持ってない限りただの物、つまり魔力は無いと見なされるのよ?
 さっきも次の誰かが早く拾わないかハラハラしちゃったわ」
「では、やはり魔力の高いマスターを乗っ取ることにしよう」
「それがいいわ」
 
 なんとも異色のコンビのようだが、ブライト博士だけは彼女が呼ばれた理由がわかっているのだろう。
「死を操る程度の能力」、それはもしかするとブライト博士が最も望んでいたものかもしれない。
 しかし、それを知るものはブライト博士以外いないだろう。
 今日もブライト博士は陽気に、それでいて狂気的に回りを振り回す。
 ――それは不思議な亡霊少女でも例外ではない。

「ああ、早く君をSCP-682と会わせたいよ! きっと最高に面白いと保証するね!」
「あら、そんなに言うなら、私も会ってみたいわ」
「そうだろう! どっちが勝つのか、今から心が踊るよ」

 こうしてお騒がせ博士の聖杯戦争は幕を開けたのだった。


419 : ブライト博士&キャスター ◆yaJDyrluOY :2016/03/10(木) 02:25:47 9hJotdRk0
【クラス】
 キャスター

【真名】
 西行寺幽々子@東方Project

【ステータス】
 筋力D 耐久C 敏捷C 魔力A 幸運B 宝具A

【属性】
 混沌・善

【クラススキル】
陣地作成:EX
 魔術師に有利な陣地を作り上げる。
 幽々子の陣地作成スキルは宝具と不可分である。

道具作成:E
 魔力を帯びた道具を作成できる。
 ランクは低く、ほとんど機能していない。

【保有スキル】
幽体:B
 肉体を持たない亡霊としての姿。
 物理的な攻撃によるダメージを大幅に軽減する(神秘が篭っている限り無効化は出来ない)。

死霊統率:B
 生前の彼女が持っていた『死霊を操る程度の能力』の名残。死した者の魂を操り、管理する事ができる。
 死霊に対しては同ランクのカリスマと同等の効果を持つ。

ボーダーオブライフ:E~A+
 生死の境界を司る幽々子の能力に対する、対魔力の効果を僅かに軽減する。
 西行妖が満開に近付くにつれて、このスキルのランクは上昇していく。

弾幕ごっこ:B+
 彼女たちの世界で流行っている決闘法の上手さ。スペルカードもこのスキルに含まれる。
 キャスターは本来の目的である美しさに加え、避けづらさ・攻略しづらさも高い水準を持っている。

【宝具】
『反魂蝶』
ランク:C 種別:対命宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:1人
 幽々子の「死を操る程度の能力」の象徴といえる、桜色の光を放つ魔力の蝶。
 触れた者の命を吸い取って問答無用で死に誘う、反則的とも言うべき力を持つ。
 ただし生身の人間ならば触っただけで即死するが、一度死んだ存在であるサーヴァントから奪える生命力には限りがある。
 また蝶の姿を取るがゆえに飛行速度が遅く、また遠方から精密な動きで飛ばすことも出来ないため暗殺には不向き。
 もっとも、十分な陣地と魔力源さえ確保できれば、幽々子は数十数百の反魂蝶を弾幕として飛ばすことが可能である。

『幽雅に咲かせ墨染の桜』
ランク:A 種別:結界宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:自身
 幽々子の父を始めとする多くの人間の命を吸い、幽々子自身の死をもって封印された妖怪桜『西行妖』。
 周囲の魔力を集めて花開くこの巨木こそが幽々子の陣地であり、宝具であり、それ自体が樹の内側に展開された固有結界でもある。
 西行妖は根から霊脈を吸い上げるだけでなく、付近に漂う魔力や魂を吸収して力を蓄え、満開へと近付いていく。
 満開に近づけば近づくほど、陣地としての強固さと魔力量は増し、超一級の霊地をも凌ぐ力を発揮する。
 それ自体が攻撃力を持つのではなく、幽々子のバックアップに特化した宝具である。


420 : ブライト博士&キャスター ◆yaJDyrluOY :2016/03/10(木) 02:26:46 9hJotdRk0

 なお、西行妖を封印しているのは生前の幽々子の遺体であり、満開に近付くことはその停止が解かれつつあることを意味する。
 そして完全に開花した時封印されていた少女は真の死を迎え、亡霊としての幽々子は消滅する。
 幽々子自身はこの事実を知らず、自身が桜の下で息絶えたことも覚えていない。


【weapon】
 常に扇を持ち歩くが、特に武器とか魔術の媒介というわけではない。

【人物背景】
 冥界にある「白玉楼」に1000年以上前から住んでいる亡霊の少女。西行寺家のお嬢様。
 幽霊を統率できる能力を持っており、幻想郷の閻魔大王である四季映姫・ヤマザナドゥより冥界に住む幽霊たちの管理を任されている。
 元々は約千年前に命を落とした歌仙の娘。生まれつき命を死へと誘う能力を持っており、それを疎んで命を経った。
 その遺体は妖怪桜の封印の要となっているが、幽々子はこのことを知らず、自分自身であることを忘れて蘇らせようとしていた。
 性格は飄々として掴みどころがない。時おり何もかも悟っているような振る舞いを見せる。

【サーヴァントとしての願い】
 不明。無いのかもしれないし、何かを考えているのかもしれない。
 少なくともその飄々とした様子からは何も伺えない。


【マスター】
ジャック・ブライト(SCP-963-1/不死の首飾り)@SCP Foundation

【マスターとしての願い】
 死に████。――ユユコの能力をいろんなSCPに試してみたい。

【weapon】
 SCP-963-1:
 円周およそ15センチ程の、白色金で作られた首飾りです。
 生命ある人型の存在がSCP-963-1に直接触れると、対象者の人格は消去され、代わりのブライト博士の人格が対象者に乗り移ることが確認されました。
 もし対象者が30日間SCP-963-1との接触を保ち続けると、脳機能が故ブライト博士と同一のものに変化します。

【能力・技能】
 ブライト博士は物理的・精神的な処置に対し高い抵抗力を持ちます。
 この抵抗力が生来のものか、それともSCP-963の影響によるものかは不明であり確かめる術もありません。

【人物背景】
 生命工学と異常遺伝子学の権威であるブライト博士は、彼の弟であるSCP-590が財団に捕獲された際に採用されました。
 SCP-963の研究に携わっていた際に一度死亡し、偶然SCP-963の力を発現させて復活。以来いくつかのSCPとの仕事に尽力され、多くの成果を残しています。
 その特性から傍若無人に振る舞うブライト博士にしびれをきらした財団は『ブライト博士が財団で2度としてはいけないことの公式リスト』を作成しました。
 ブライト博士はカジノSCP財団のギャンブラーであり、彼はときたま財団のメンバーに非公式の賭けを持ちかけますが、大体において賭けの内容はブライト博士に有利なように仕組まれています。
 ブライト博士はどういうわけか全ての人事ファイルにアクセスする権限を持っているようです。
 すでにブライト博士は令呪を1画使用しました。

【方針】
 楽しくてきとーにやってりゃよくね?


421 : ブライト博士&キャスター ◆yaJDyrluOY :2016/03/10(木) 02:27:54 9hJotdRk0
【捕捉】
 クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
 SCP FoundationにおいてThe Duckman 氏が創作されたSCP-963のキャラクターを二次使用させて頂きました。
 
 今回サーヴァントのステータスを作成するにあたり、邪神聖杯黙示録~Call of Fate~において◆q4eJ67HsvU氏が作成された西行寺幽々子のステータスを一部(ほぼ)使用させて頂きました。


422 : ◆yaJDyrluOY :2016/03/10(木) 02:28:20 9hJotdRk0
投下終了です


423 : ◆yaJDyrluOY :2016/03/10(木) 12:14:36 H/CPuLQw0
>>419-421のステータスを変更させていただきます。
それにともない、再びステータス全てを投下致します。


424 : ◆yaJDyrluOY :2016/03/10(木) 12:15:25 H/CPuLQw0
【クラス】
 キャスター

【真名】
 西行寺幽々子@東方Project

【ステータス】
 筋力D 耐久C+ 敏捷D+ 魔力B~A++ 幸運B 宝具A

【属性】
 混沌・善

【クラススキル】
陣地作成:EX
 魔術師に有利な陣地を作り上げる。
 幽々子の陣地作成スキルは宝具と不可分である。

道具作成:E
 魔力を帯びた道具を作成できる。
 ランクは低く、ほとんど機能していない。

【保有スキル】
幽体:C
 肉体を持たない亡霊としての姿。
 物理的な攻撃によるダメージを大幅に軽減する(神秘が篭っている限り無効化は出来ない)。

ゴーストリード:B
 生前の彼女が持っていた『死霊を操る程度の能力』の名残。死した者の魂を操り、管理する事ができる。
 死霊に対しては同ランクのカリスマと同等の効果を持つ。

ボーダーオブライフ:E~A+
 生死の境界を司る幽々子の能力に対する、対魔力の効果を僅かに軽減する。
 西行妖が満開に近付くにつれて、このスキルのランクは上昇していく。

弾幕ごっこ:B+
 彼女たちの世界で流行っている決闘法の上手さ。スペルカードもこのスキルに含まれる。
 キャスターは本来の目的である美しさに加え、避けづらさ・攻略しづらさも高い水準を持っている。

【宝具】
『死を操る程度の能力』
ランク:C~A+ 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:1人
 キャスターの固有の能力。読んで字のごとく死を操る。
 その能力は視覚的には蝶の姿をして見えるが、一般人には見えないためいきなり死亡したように見えるだろう。
 地雷や罠のように周囲にばらまいたり、相手をホーミングするようにしたりと多様な使い方ができる。
 もう一つの宝具の段階によってこの力は強くなっていき、満開に近くなると周囲の存在を本人が意図していなくても死に誘って殺すようになってしまう。
 また、西行妖が七部咲きを越えると、蝶は相手の攻撃と相殺せず素通りして行く様になる。
 ただし、この能力が通用するのは「死ぬ事が出来る」存在のみで、不死者を無理やり死に追いやることは出来ない。

『幽雅に咲かせ、墨染の桜』
ランク:A 種別:結界宝具 レンジ:1~100 最大捕捉:1人
 冥界でキャスターが住む白玉楼に存在する、巨大な妖怪桜『西行妖』。
 キャスターの父を始めとした多くの人間の精気を吸っており、その力は神々が住む幻想郷でも誰も手出しできないほど。
 現在はその根本に封印された人物がいる事で、花をつけることはない。
 そのことを知ったキャスターが以前起こした異変から、この木を中心に周囲は気温が下がり花が枯れ、一般的に『冬』とされる季節に変わる。
 それはこの桜が熱量としての『春』を奪っているためであり、これによって桜は少しづつ花をつけて満開へと変わっていく。
 桜は『春』だけでなく、人間の魂などを捧げても満開へ近づける事ができる。
 満開に近づけば近づくほど、陣地としての強固さと魔力量は増し、超一級の霊地をも凌ぐ力を発揮する。
 西行妖の咲き具合によってキャスターの魔力・能力は強くなっていき、マスターからの魔力供給は必要無くなっていく。
 
 「根本に封印された人物」はキャスター自身である。
 もし西行妖を満開にするようなことがあれば、封印が解けてキャスターの死体が解き放たれ、キャスターを亡霊のままでいさせている力も失われる。
 それはつまり、キャスター自身が消滅してしまう事を意味する。


425 : ◆yaJDyrluOY :2016/03/10(木) 12:16:00 H/CPuLQw0
 
【weapon】
 扇:
  センスの良い扇子。

【人物背景】
 冥界にある「白玉楼」に1000年以上前から住んでいる亡霊の少女。西行寺家のお嬢様。
 幽霊を統率できる能力を持っており、幻想郷の閻魔大王である四季映姫・ヤマザナドゥより冥界に住む幽霊たちの管理を任されている。
 元々は約千年前に命を落とした歌仙の娘。生まれつき命を死へと誘う能力を持っており、それを疎んで命を経った。
 その遺体は妖怪桜の封印の要となっているが、幽々子はこのことを知らず、自分自身であることを忘れて蘇らせようとしていた。
 性格は飄々として掴みどころがない。時おり何もかも悟っているような振る舞いを見せる。
 見た目にそぐわずかなりの大食いであり、何でも料理に例えたり、宗教戦争の時は観戦席にてすごい速さでおにぎりを食べ続けて周囲を驚かせた。

【サーヴァントとしての願い】
 不明。


【マスター】
 ジャック・ブライト(SCP-963-1/不死の首飾り)@SCP Foundation

【マスターとしての願い】
 死に████。――ユユコの能力をいろんなSCPに試してみたい。

【weapon】
 SCP-963-1:
 円周およそ15センチ程の、白色金で作られた首飾りです。
 生命ある人型の存在がSCP-963-1に直接触れると、対象者の人格は消去され、代わりのブライト博士の人格が対象者に乗り移ることが確認されました。
 もし対象者が30日間SCP-963-1との接触を保ち続けると、脳機能が故ブライト博士と同一のものに変化します。

【能力・技能】
 ブライト博士は物理的・精神的な処置に対し高い抵抗力を持ちます。
 この抵抗力が生来のものか、それともSCP-963の影響によるものかは不明であり確かめる術もありません。

【人物背景】
 生命工学と異常遺伝子学の権威であるブライト博士は、彼の弟であるSCP-590が財団に捕獲された際に採用されました。
 SCP-963の研究に携わっていた際に一度死亡し、偶然SCP-963の力を発現させて復活。以来いくつかのSCPとの仕事に尽力され、多くの成果を残しています。
 その特性から傍若無人に振る舞うブライト博士にしびれをきらした財団は『ブライト博士が財団で2度としてはいけないことの公式リスト』を作成しました。
 ブライト博士はカジノSCP財団のギャンブラーであり、彼はときたま財団のメンバーに非公式の賭けを持ちかけますが、大体において賭けの内容はブライト博士に有利なように仕組まれています。
 ブライト博士はどういうわけか全ての人事ファイルにアクセスする権限を持っているようです。
 すでにブライト博士は令呪を1画使用しました。

『ブライト博士が聖杯戦争で2度としてはいけないことの公式リスト(随時追加)』
 ・ブライト博士がキャスターに寿司を握らせる事は許可されていません。
  a:例えトラフグの肝・カシワの根・三酸化二ヒ素を用いない場合でもです。
  b:キャスターの操る霊魂なら使用して良いという意味ではありません。

【方針】
 楽しくてきとーにやってりゃよくね?

【捕捉】
 クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
 SCP FoundationにおいてThe Duckman 氏が創作されたSCP-963のキャラクターを二次使用させて頂きました。
 
 今回サーヴァントのステータスを作成するにあたり、邪神聖杯黙示録~Call of Fate~において◆q4eJ67HsvU氏が作成された西行寺幽々子のステータスを一部使用させて頂きました。


426 : ◆Kv4mGiv8HE :2016/03/10(木) 12:49:34 HOL1qWeg0
20??/02/02
 朝起きても状況は変わらない。わかっていた事だが。
 だがサイト19で調査を進めた結果、どうしたって[編集済]に接触しなきゃならないって事もわかった。
 あの[編集済]が全ての元凶なんだから、まあ、当然だな。
 それに[編集済]さえ破壊すれば、俺が他の人類を殺すことはなくなる。
 たぶんそれは良いことだろ? 俺が帰れるかどうかはともかく。

20??/02/13
 ピザの日。……なんだこの肉ばっかのピザは。

20??/02/29
 やったぞ、ついにやった! 俺の仮説は正しかった!
 [編集済]な[編集済]の[編集済]め! ざまあみろだ! シャワブティに感謝!

20??/03/05
 鍵となったのはSCP-945だ。
 奴は接触した奴が死ぬと、その死人のコピーを作る。そしてやり残した仕事を実行させる。
 そう、やり残した仕事だ。
 俺が次元を移動しているとするなら、「その次元の俺」だって死んでるに決まってる。
 実際、俺に割り当てられてた個室は封鎖されてる。殉職者への対応プロトコルだったはずだ。
 じゃあ俺がSCP-945を活性化させてSCP-945-1を発生させたらどうなるんだ?

 結論から言えば大成功だ。
 今、複製体はサイト19にある資材を使って何かを作ってる。
「死者――つまり俺だ――が来世で安らかに憩えるように」。
 俺のやり残した仕事は。[編集済]をぶっ壊すことだ。
 この粘土野郎が俺の望みを叶えてくれることを願う。
 財団がまだあった頃なら収容規則違反で懲戒処分でも喰らうところだったかもしれん。
 いや、実際にSCPを活性化させてるんだから「かも」とはいえないか。

 しかし俺がもう一人いるってのは気持ち悪い。話しかけても返事しないし。

20??/03/07
 新たなオブジェクトをSCP-945-2「[編集済]な[編集済]をぶっ壊す装置」と名付ける。
 SCP-945-2は、石と塗料とガラクタで作ったストーンヘンジみたいなもんに見えた。
 直径は1mほど。ロンメルの部屋がずいぶん散らかったが、悪く思わないでくれ。
 複製体の動作を見る限り、血を垂らすことでこのオブジェクトは活性化するらしい。
 準備を整え次第実行するとして、俺は感謝をこめて複製体の頭を撃ち抜いた。
 もう他に誰もいないからってSCP-945-7bみたいなケースをこの次元で起こしたくはない。
 どうやら俺は最後のSCPエージェントらしいからな。

20??/03/09
 準備は万端だ。この二冊目の日誌は、俺がこの次元にいた証として置いておく。
 1冊目の日誌の横だ。俺の知りうる限りの情報を全て書いてある。
 誰か他に生き残りがいれば――望みは薄いが――参考になるかもしれない。
 もし俺が成功すれば不要になるし、失敗すれば……やめよう。成功すればいらなくなる。
 あばよ、俺の日誌。そして俺がやり遂げられるよう祈っててくれ。

20??/02/02
 どこだここは

・SCP-451は、彼がSCP-945-2と名付けたオブジェクトに腕部切創から微量の血液を付着させた際、消滅しました。
・この消滅現象はSCP-945-2による効果と推測されています。
・SCP-451の現在位置は不明です。
・SCP-945-2は完全な非活性状態になり、D-[編集済]らによる血液付着実験にも反応しませんでした。
・現在SCP-945-2を新たなるSCPオブジェクトに認定すべきか調査が行われています。
・文書451-Bは彼の残した二冊目の日誌ですが、最後の日付はSCP-451消滅の日付より前になっています。原因は不明です。
・日誌の閲覧はセキュリティクリアランスCクラス以上に限定されます。上位クリアランスの許可を得て閲覧してください。
・SCP-451担当となった警備部隊員は以後6ヶ月にわたってSCP-451収容プロトコルを継続してください。
・この期間中に問題が生じなかった場合、SCP-451をClass:Safeへと分類してください
・さらに6ヶ月継続して変化が無い場合、Class:Neutralisedへと分類、[終了]してください。


427 : ◆Kv4mGiv8HE :2016/03/10(木) 12:50:33 HOL1qWeg0
20??/02/02
 閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。
 繰り返すつどに五度。
 ただ、満たされる刻を破却する。

 告げる。
 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

 誓いを此処に。
 我は奈落の悪鬼、黒き翼の堕天使アイスヴァイン。
 第十二地獄ヘルからやってきた天界より追放を受けた堕天使の力を宿す者。

 汝三大の言霊を纏う七天、
 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ。

20??/03/03
 どうやらここは日本らしいという事がわかった。
 よほど変な次元に迷い込んだのかと思ったが……。
 日本支部といってもサイトの構造は変わらないらしいな。
 今はもう使われていないらしい部屋を見つけたので拠点に借りる事にする。
 このノートはそこで見つけたものだ。子供っぽく飾り付けられていた。

 明日はこのサイトを出て街へ降りてみるつもりだが、ノートは置いていく。
 状況がまだわからないからな。
 もし俺が戻ってきてもノートがここにあるかどうか、実験する。
 それに相変わらず人はいないが……元の持ち主に何か悪い気もしたんだ。
 今日はカップヌードル。いつでもどこでも味が変わらない。安心する。

20??/03/04
 やっと日記が帰って来ました。もう、酷いですよね。
 ちょっと騒いだくらいで[プロトコル"プレゼントとケーキ抜き"]だなんて。
 おまけに人の[編集済]をアーカイブに資料としてアップロードするとか……。
 何度も抗議したのに聞いてくれませんでしたし。はぁ……。
 それにしても、わたし、こんな事を書いてましたっけ?

20??/03/06
 どうなってるんだ?

 今これをコンビニから拝借したサンドイッチを食べながら書いている。
 日本の飯はボリュームがないけど美味いな。野菜バーガーの百倍マシだ。
 状況を整理しよう。街に降りてみたが、やはり人はいなかった。
 これで俺はアメリカだけじゃなく全世界人類を消滅させたって事がわかった。[編集済]が。
 だが問題はそこじゃない。
 街頭ビジョンに写っていたニュース(録画だろうな)で騒がれてた連続殺人事件。
 ありゃSCP-076じゃないか!?
 どういうことだ? これはKクラスのシナリオなのか?
 俺は[編集済]のせいだと思っていたが、大規模な収容違反でも起こったのか?
 状況がさっぱりわからない。

 わからないことと言えばもう一つ。誰かがいた!
 その誰かは、まるでDrストレンジ[※1]の悪役みたいな格好で、サーヴァントとかなんとか……。
 とにかくわけのわからない事を言って襲いかかってきたから、俺も反撃せざるを得なかった。
 彼は死んでしまった。
 いや、以前に俺が殺してしまった誰かと同じように、消えてしまったんだ。
 状況は進展した。サイト19にいた時とはガラッと変わっている。しかし……。

 どうなってるんだ?


428 : ◆Kv4mGiv8HE :2016/03/10(木) 12:51:07 HOL1qWeg0
20??/03/07
 誰ですか、あなた?

20??/03/07
 [判読不能]なんだ誰[判読不能]どういう事だ?

20??/03/08
 すいません、これ、わたしの日記なんですけど……。
 カナヘビさんですか? やめてください、悪戯するの!

20??/03/09
 俺はエージェント(M・J[編集済])だ。驚かせてすまない。
 日誌は使っていないと思ったから借りたんだ。
 ……君は俺の書いている事がわかるのか?

20??/03/10
 わたしはサイト-8141所属のエージェント(M・K[編集済])です。
 これはわたしの日誌で(消しゴムで消したような痕により[判読不能])
 資料として提出していたものが返却されたのでしまっていました。
 あなたはSCP財団の人ですか?

20??/03/11
 ああ、神よ! 神と君に感謝を!
 ああ、ひと目で良いから君を見て(ボールペンで塗り潰されて[判読不能])
 俺は[編集済]というアーティファクトを[編集済]する任務の遂行中に……。
(ボールペンで塗り潰され[判読不能])ちょっとしたトラブルがあって、状況がややこしい。
 今こうして君と交信できているのは奇跡みたいなものだ。残り時間はきっと少ない。
 たぶん俺の推測だがこのままだと君の次元の人類も殺されてしまう。SCP-076が原因だろう。
 やつを止めたい。なんとしてでもだ。俺が今協力を頼めるのは君だけなんだ。

20??/03/12
 あれ? [編集済]※2のパクリじゃないんですかそれ?

20??/03/12
 [編集済]?

20??/03/13
 わかりました!
 このエージェント(M・K[編集済])、(M・J[編集済])先輩の手伝いをさせていただきます!
 こう見えてわたしSCP財団の敏腕フィールドエージェントなんですから。
 SCP-076なんて何とかなりますって。

20??/03/14
 ありがたい!
 ところでなぜ豚の塩漬けなんだ?

20??/03/14
 [判読不能]

・SCP-014-JP-Jは彼女が「魔道書」と称する日記を肌身離さず持ち歩いています。
・SCP-014-JP-Jは日記を交換日記のように用いていることがエージェント[編集済]と研究員[編集済]から報告されました。
 両者はSCP-014-JP-Jが異性間交友を持った可能性を検討しています。
・SCP-014-JP-Jは義務教育9年目相当の英語能力しか有していないにも係わらず、
 エージェント[編集済]と称する人物となぜ意思疎通ができているのかは不明です。
・サイト-8141近隣で発生している窃盗事件、幽霊騒動とエージェント[編集済]の関連性が調査されています。
・SCP-014-JP-Jより[プロトコル"プレゼントとケーキ抜き"]の解除要請がありました。要請は却下されました。
・SCP-014-JP-Jより文書014JP-J-Aの削除要請がありました。要請は却下されました。
・SCP-014-JP-Jの人格がSCP-014-JP-J-2へ変化する兆候はありません。

[※1]マーベルコミックスに登場する魔法使いのヒーロー

[※2]2004年1月30日に発売されたPC用アダルトゲーム
   SCP-014-JP-Jが言及しているのは家庭用ゲーム機に移植された全年齢版かアニメーションと思われる
   PC版であることが判明した場合エージェント[編集済]と研究員[編集済]に報告すること


429 : SCP-014-JP-J&アサシン ◆5c8ESOE.uE :2016/03/10(木) 12:52:36 HOL1qWeg0
【クラス】アサシン
【真名】エージェントM・J(SCP-451)@SCP Foundation
【性別】男性
【属性】混沌・善

【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:C 魔力:E 幸運:A 宝具:B

【クラススキル】
気配遮断:B
 機動隊員に相当するSCP財団エージェントとしての隠密能力。

【保有スキル】
精神汚染:C
 SCPおよびサーヴァントを除く、他の人間の存在や行動を知覚することができない。
 また認識を改変して自分に都合の良い「物語」を作り上げるため、意思疎通が困難である。
 現在マスターとのみ辛うじて意思疎通が可能である。

単独行動:C
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
 Cランクならばマスターを失っても、1日は現界可能。

【宝具】
『孤独な男(ミスター・ロンリー)』
 ランク:B 種別;対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
[編集済]アーティファクトによって変容した彼の肉体そのもの。
 Aランク以上の宝具、スキル以外で彼を傷つける事はできない。
 仮に令呪などで自害を強要させた場合も同様である。

【weapon】
 現地調達したもの全般

【人物背景】
 エージェントM・JはSCP財団に所属する優秀なエージェントでした。
 彼はある危険なアーティファクトを運搬中、消息不明になり、殉職と認定されました。
 彼は1月後にサイト19に帰還を果たしましたが、その知覚は大きく変化してしまっていました。
 彼は「自分がアーティファクトに接触したせいで人類が全滅した」と考えています。
 同時に「自分は次元を移動していて、一瞬ごとに人類が滅んだ次元へ移動している」と推測しています。
 自殺傾向がありましたが現在は精力的に活動しています。
 エージェントM・Kへの依存傾向が見られます。

【サーヴァントとしての願い】SCP-076および[編集済]の破壊/エージェントM・Kの姿を見たい・触れたい

【基本戦術、方針、運用法】
 (ある意味)無敵のサーヴァントとして、積極的に調査を続けます。
 ただし情報収集や他者との交流が困難なために、マスターとの二人三脚になります。




【マスター】エージェントM・K(SCP-014-JP-J)@SCP Foundation

【マスターとしての願い】現状を楽しむ/SCP-076および[編集済]の破壊

【weapon】フィールドエージェントとして使用可能な個人携行装備全般

【能力・技能】
・SCP-014-JP-J-2「アイスバイン」と称する人格への変化。以下の技能を有すると主張する。
 ・「邪悪な霊」を見る超常的視力
 ・「天才的」剣術
 ・冷気を操る力(これによって『神々の戦』では氷の剣を生み出して戦ったとSCP-014-JP-Jは主張します)
 ・飛行能力
 ・あらゆる人間を魅了する超美貌

・恐怖への強い耐性

・ここ数年以内に新作(リメイク等を含む)が発表されたメジャー作品に関する知識。

【人物背景】
SCP-014-JP-Jはサイト-8141に所属するフィールドエージェントです。
SCP-014-JP-Jはフィールドエージェント[編集済]と研究員[編集済]の間に生まれた現在15歳の女児です。
15歳の誕生日を迎える直前に「悪霊が現れた」と収容違反を示唆する誤報によってサイトを混乱させたため、
[プロトコル"プレゼントとケーキ抜き"]が実施されたばかりです。
現在エージェント[編集済]と日記を通して交流し、東京都内で精力的に活動しているようです。
SCP-014-JP-Jに教育プログラムの成績低下傾向が見られた場合、即座に[プロトコル"予算削減"]を実施してください。

【方針】現状を楽しむ/エージェント(M・J[編集済])の願いを叶える

【SCP-014-JP-J】
ttp://games.gaym.jp/iPhone/fate-go/wiki/?plugin=ref&page=%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E7%94%BB%E5%83%8F%E4%BB%AE&src=1_4.jpg
 大規模同人誌即売会にてSCP収容作業従事中と主張するSCP-014-JP-Jの画像です。


430 : ◆5c8ESOE.uE :2016/03/10(木) 12:53:33 HOL1qWeg0
失礼しました

タイトルは『文書451-B:SCP-451の日誌2および文書014JP-J-A:SCP-014-JP-Jの日記』になります


431 : ◆7lgnmfa4W. :2016/03/10(木) 12:54:56 HOL1qWeg0
おや、トリップが……これで大丈夫でしょうか


432 : ◆sRnD4f8YDA :2016/03/10(木) 23:28:23 RXp4sTzg0
投下します。


433 : 比企谷八幡 & ルーザー ◆sRnD4f8YDA :2016/03/10(木) 23:30:20 RXp4sTzg0
“ゲームとは、クソであり、悪である”。





アナログなもの。トランプ、ウノ、花札、オセロ、将棋、チェス、囲碁。
前提として、これらは競う相手がいなければ成立しない。
これは世の中の殆どのゲームというものが、勝敗を決めるためのルールや環境、
または他人との相互作用を元にした楽しみのために行なわれる活動、という目的で作られているからである。

当然、その時点でゲームなど俺達ぼっちにとっては苦行に成り下がる。
そもそも、ぼっちには勝敗などさして興味がない。
何故なら負ける事はぼっちの必要最低限条件だからだ。
何かに負けていなければ、ぼっちにはなれない。
負け=ぼっち。故にぼっちは他人と勝負する前に勝負が終わっていると言っても過言ではない。
どうせ負ける。だから、勝ち負けを競う意味自体がないのだ。
そんな事をドヤ顔で言うなって? おいおい、お前は何もわかっちゃいねえな。
「無駄だな……もう勝負はついている」おっ、ほらこう言うとなんか強キャラっぽくて格好良いだろ?

兎にも角にも、ぼっちは始まる前から結果が分かっている。だから無駄な争いはしないのだ。
言わば超絶平和主義である。ノーベル平和賞はぼっちに与えられるべき。
ぼっち、最強。
少し話が脱線したが何が言いたいかというと、アナログゲームはカスである、という事だ。


434 : 比企谷八幡 & ルーザー ◆sRnD4f8YDA :2016/03/10(木) 23:31:57 RXp4sTzg0
さて、ではデジタルはどうだろう。
広義でのテレビゲームは幅が広いので、日本で一番売れているジャンル、RPGについてにしようか。
……先ず最初に言っておく。RPGはクソである、と。

RPGの大半は、主人公に感情移入する事でより楽しめるものだが、まず主人公がイケメン高スペックリア充の時点で、俺的にアウトだ。
何故なら感情移入が出来ないからである。感情移入できないゲームは楽しめない。
むしろどちらかというと、俺達は孤独な敵側を好きになってしまう。
しかし主人公側はいつだって鬼畜だ。そんな敵側をフルパーティでアイテム使いまくりでフルボッコ。
相手が一人なのにだぜ? どんだけ勝ちたくて必死だよ。スポーツマンシップも騎士道も何もねぇよ。
敵側は戦闘中はすげぇ紳士なんだぞ。アイテムも使わないし、手下も連れてこないし、文句一ついわない。
これは最早イジメとイジメられっ子の構図だろ。
敵側はやろうと思えば、主人公の誰かを適当に人質に取り、誰かを無理矢理自殺させる事だって出来る筈だ。なのにそれをしない。

主人公側はいつだって夜は宿屋でいびきをかきながら平和に寝ているし、敵側はいつだってわかりやすい時間に登場して、正面から勝負を挑む。
ラスダンに至ってもそうだ。ボスは最深部に一人でいつ来るのかも分からない主人公側を一日中待ち構えている。
軍隊を持っている癖に部下一人置かず、その代わりに扉を開ける鍵を御丁寧に置いて。
どんだけ健気で優しいんだよ。何だ? 聖母か? ラスボスよ、お前は聖母なのか?

これは最早、逆説的にラスボス側が正義と言っても良いのではないだろうか。
ラスボス側から見れば、主人公側の戦い方は悪の諸行である。
折角部下にアイテムや金を持たせてドロップしてあげているのに、その恩を仇で返してどうするのか。
ダンジョンにだってわざわざ宝箱を用意して、最寄りの町では手に入らない強い武器や、丁度良いレベルの敵を配置してるんだぜ?
でも結果的に孤独なラスボスはいつだって負けるし、ヘラヘラして緊張感のないパーティは笑顔でエンディングを迎える。

人を、殺しておいて。
裁かれる事すらなく。
罪を感じることなく。

これぞ、現代社会のリア充とぼっちの縮図みたいなものではないか。
対戦ゲーだって友達がいなければ出来ないし、オンもコミュ障であれば満足に出来ない。
そもそもゲーム機にコントローラー差込口が2つ以上ある事がまずぼっちを馬鹿にしている。
俺の家のGCなんか、コントローラーの代わりにたまりにたまった埃がプラグに差し込まれてるぞ。いや、マジマジ。
2P機能付けるなら鈍器機能でも付けてくれよ……いやGCはそれがデフォだけど。
まぁでもマシなゲームは沢山あるんだけどな。
ラブプラスとか、ラブプラスとかラブプラスとか……あと、そうだな……ラブプラスとかな。

とどのつまり、やはり最初に言った通り、ゲームはクソなのだ。
しかしどうやらこの聖杯戦争とやらも、言わば一種の“ゲーム”になるらしい。だがゲームである以上は、必ず勝者と敗者がある。
俺達の様に生まれながらにして既に敗者の人間からすれば、そりゃあ最悪だ。
自分が勝つイメージがそもそもできないからだ。負けは、必然。
ならばどうするか。至極簡単だ。“戦わなければいい”。
ゲームに参加していても、盤から降りれば負けも勝ちもないのだから。
クラスで始まる文化祭。クラスで戦う体育祭。クラスで挑む合唱コンクール。クラスで挑むレクリエーション。
保健室で休み、学校自体を早退すれば、ゲームの参加者であろうがなかろうが、負けることも勝つことも叶わないのは道理である。


435 : 比企谷八幡 & ルーザー ◆sRnD4f8YDA :2016/03/10(木) 23:33:28 RXp4sTzg0
「即ちこのゲームで生き残る条件は、必ずしも全ての敵を倒し、全てに勝つ事がイコールではない」


ぎしり、とベッドが軋む音。誰も居ない小さな部屋の中、くぐもった声で少年は呟いた。

「要は、死ななければいいわけだ」

少年は口元で手を組むと、肩で息を吐くように大きな溜息をつく。

「単純な話だが、見落としがちだ。最後まで生き残ればいい、それだけの事を」

部屋の電気はついていない。水色のカーテン越しに漏れる宵の光を見ながら、少年は背を埃っぽいベッドに預けた。
冷めた空気と一緒に塵が舞い上がり、光を浴びて騒がしく踊り出す。
少年は腕を頭の後ろで組むと、口をへの字に曲げて天井を見た。
……よく知っている天井だった。
飴色の杉板も、小さい頃エアガンで開けた穴も、人の顔に見えて怯えていた節も、天井どころか、部屋の匂いさえも。
とても此処が“偽物の自宅の部屋”だとは思えない再現度だった。
けれども、此処はあくまでも偽物。虚構の世界だ。

「そう、生き残ればいい。それだけなら俺はゲームが終わるのを、もといリア充どもが焦って自滅していくのを盤外から眺めて待てばいいだけだ。
 そこで問。そうする為にはどうすればよいか?」

限りなく本物に近い紛い物の腹の中で、少年は目を閉じながら天に問うた。
疑問は埃が踊る中空を漂い、瞼の裏側にちかちかと漂う砂嵐に混ざり合い、けれどもやがて重力に従うように、
或いは最初からそうなる事が解っていたかのように、少年へと還る。
彼は一人ではなかったが、しかし独りだった。問うべき相手に天を選ぶなど、烏滸がましい。最初から、相手は自分自身以外に何処にも居なかったのだ。
少年はくつくつと自嘲すると、瞳を開いた。

「解。逃げて逃げて、NPCとやらを利用して……平たく言やあ、引きこもればいい。
 なにせ俺には戦う力と気力と勇気とリア充パワーがない。
 友情、努力、勝利……少年ジャンプとか夕方アニメじゃあそれが定石でも、俺には死ぬまで縁がない言葉だからな」

……悪い夢なら覚めてくれ。
甘くも心の何処かで少年はそう思っていたが、やはり瞳を開いても現実は何一つ変わらない。
この世界に“本物”など、何処にもありはしなかった。
遠く広がるあの空も、窓から見えるあの街も、黄昏に染まるあの教室も、日々の思い出も。
昨日のバラエティだとかドラマだとか、下らない話題で盛り上がるクラスの人間も、その深いようで薄く浅い関係も、喜怒哀楽も、大切な家族も、長年過ごしたこの家さえも。
全てが。
全てが虚構だった。
あるものは虫に喰われた林檎の様に、スタイロフォームで作られた舞台のように、ただひたすら中身の無い、空虚な紛い物。

........
自分はホンモノか?

少年は声に出さず、思考の泥の中で問う。果たして自分だけが本物なのだと声高く言えるのだろうか。
紛い物だらけの世界の中でぽつんと生きている自分こそが、“偽物”なのではないか?
世界が偽物を正とするならば、その世界に居る自分は何だ?

「……」

そこまで考えて、少年は思わず眉を顰めた。これ以上は自己言及のパラドクスだ。

「……下手な考え休むに似たり、って言うもんな。
 ま、あれもそれも難しいことはなんとなく、ルールを聞いてるとわかったけど、な。
 ふわっとだが理解したぜー。“聖杯戦争”とやらの仕組みは」

少年はそう言うと、後ろで組んだ手を伸ばし、ぱきぱきを指を鳴らしながら大きな欠伸をする。
疲れている。少年は本能的にそう感じた。
身体が異様に重い。水底を服を着たまま歩いているような、そんなずっしりとした灰色の感覚だった。
少年はやれやれと溜息を吐く。この世界が虚構だなんて与太話をそう簡単に受け入れられるほど、自分は人間が出来ていない。
にも関わらずこうして漫画のような現実を少年が享受しかかっているのは、彼に心当たりがあったからだ。
彼自身、おかしいとは思っていた。
解決したクラスの問題が解決してない事になっていた事。少しは良好になったかと思っていた人間関係が悪化していた事。
故に成程、少年の目の前に突然現れた“サーヴァント”の囁く世迷言を受け入れざるを得なかったのだ。

「夢じゃあ、ねェんだよな? “ルーザー”さん」

少年は肺の底から息を吐きながら、掠れた声で問うた。
上半身を持ち上げ、ベッドに座り直し、少年は口角をにたりと上げる。
掠れた声はしかし馬日雑言を吐き捨てるような響きで、世界か、或いは“ルーザー”への行き場の無い不快感に満ちていた。
しかし少年が睨む先には話し掛ける人など影も形もなく、ただのよくあるチープな勉強机と椅子だけ。
だが、次の瞬間、


『モチのロン』


机から、声がした。


436 : 比企谷八幡 & ルーザー ◆sRnD4f8YDA :2016/03/10(木) 23:36:30 RXp4sTzg0
いいや、違う。万に一つも机が喋るはずはなく、故に声の主などそこには居なかった。
机の上にあるものは、飲みかけのまま冷めた缶コーヒーと、腹に手垢のついた国語辞典と、
ドッグイヤーがたらふくついた長編小説に、埃のかぶったプラスチックのデスクライトだけだ。

『虚構“フィクション”じゃあない』

ならば声の主は何処だと考えるより早く、二の句と共に机の上の空間が“螺子れた”。
朧月夜の湖畔、黒い水面に石を落とした時のように。缶コーヒーが、辞典が、小説が。右回転、左回転。歪んで廻って、淀んでゆく。
少年が、瞬きを一回。
瞳を開いた時には机の上に歪みなど毛ほども無く、寧ろ最初からそこに居たかのように、彼の“サーヴァント”が、天板に座していた。

『これは間違いなく、正真正銘確かに紛う事無く狂わず相違なくしっかりばっちり寸分違わず明々白々―――――――――現実“ノンフィクション”だぜ』

真冬の闇夜が溶けた様な黒髪、夕暮れの影を縫い付けた様な黒い学生服、光の届かぬ深海の様に底見えぬ黒い瞳。
およそ想像し得る凡ゆる“負”を体現するかの如く、ルーザーは……“球磨川禊”は、漆黒という漆黒にその身を染め、そこに存在した。

『で』ルーザーは呟く。べったりと張り付いた能面のような笑顔に、少年は思わず眉間に皺を寄せた。『どうするの? ヒキタニくんは』
「別に」少年は肩をすくめて間髪入れず答える。「なにもしない」

少年は足を解くとあぐらをかき、背を丸めて頬杖をつく。目線の先には不服そうに唇を尖らせるルーザー。
ステレオタイプ、という単語が思わず浮かぶ。
……漫画かよ。わざとらしさもここまでくれば拍手でも送りたくなるってぇの。

『叶えたい夢とかないわけ?』ルーザーが小首を傾げながら少年へ質す。『リア充になりたい、とかさあ』

少年は少しだけ腕を組み考えるような素振りを見せたが、やがて苦笑しながら肩を竦めた。

「……俺にそんな大それたモンはねえよ。勘違いしてやがるだけだろ。俺はあいつらみたいになりたいわけじゃねぇよ。
 あいつらになれないんだって証拠が欲しいだけだ。夢も希望も、見なくて済むように。
 だいいち夢なんてもんを語る奴は俺の経験上、決まって夢を叶えられる才能と力がある奴か、
 莫迦みてえに口開けて、何も考えずに見れるアニメの主人公だけなんだよ」

ルーザーは足を組み直すと、にたりと嗤った。今までのそれとは少し違う、嘲笑が僅かに混じった嫌らしい笑みだった。

『ひゅーひゅー』『格好良いね。格好良すぎて僕の台詞から『』が取られそうだ』

ぺちぺちとやる気の無い拍手をすると、ルーザーは机から降りてどかりと椅子に座る。めきり、と背もたれが悲鳴を上げた。

『でも僕には羨ましがってひねくれてる、厨二病の餓鬼の台詞に聞こえるぜ』

ルーザーは低い声で脅すように呟いた。少年は僅かに狼狽えたが、すぐに反駁せんと口を開く。

『夢を見るたび、諦めるのが辛いから、そう思い込んでるだけじゃないの?』『ヒキタニくん』

しかしそれよりも早く、或いは敢えて科白を被せるように、ルーザーは言う。少年の顔に黒い影が落ちた。
……怖いなあ。むっとするその面を見て、ルーザーが茶化すように呟く。

「言ってろよ。俺からすればお前の方がよっぽど厨二臭い餓鬼だ。なーにが“ルーザー”だよ。ハナっから勝つ気ゼロじゃねぇか」
『へぇ』『じゃあ君は、クラスのみんなを守りたいとか、そんな小さな正義感すら湧かない冷酷な奴なのかな?』
「どうせニセモンなんだろ? 興味ねぇよ。俺が欲しいのは偽物の平穏でも偽物の友達でも何でもねえ」
『あ、そ』

会話の応酬が終わると、ルーザーは静かに立ち上がる。やれやれ、と両手を上げるその様子に少年は内心で苛立ち、舌を打った。
ルーザーはそんな少年を尻目に背を向けると、閉まったカーテンをさっと開く。


光が、部屋に満ちた。


437 : 比企谷八幡 & ルーザー ◆sRnD4f8YDA :2016/03/10(木) 23:38:09 RXp4sTzg0
黄昏時。地平線に沈む斜陽。
高層ビルの窓ガラスが、遠く見える学校の壁が、電柱が、アスファルトが、部屋が。
真っ赤に、そう、いつもよりも世界がずっと真っ赤に。
少年ははっと息を呑んだ。それはまるで、血の海のようだったから。

じわり、と背筋に油汗が浮かぶ。得体の知れない悪寒がぞわりと首筋を蠢動した。
虫の知らせ、予感。
いや、違う。もっと絶望的で、明確で。それは形容するなら、言葉で表現するなら。
運命、或いは、確信。

少年は乾いた唇を舐める。御世辞にも自分は勘は鋭い方ではない。
あくまで屁理屈を捏ねたがるだけの中身の無い理論屋で、直感はそう強くないのだ。
ならば何故嫌な予感がしたのか、と少年はルーザーの背から目を離し、部屋を見た。
壁に掛けた何の変哲もない時計が、目に入る。見覚えのある時間だった。

瞬間、脳天からばちりと一閃、電光が走る。網膜の裏側で星が散った。
可能性と一つの予感を理解するよりも早く、息を呑むよりも早く、鼓動が鳴るよりも早く、少年はベッドの上から飛び降りた。
夕方、下校時間。
夕御飯、買い物、家には一人。
導き出されるものは一つしかない。
……窓の外が、目に入る。




『じゃあ、ルーザーってクラスを馬鹿にされた腹いせに、僕が誰を殺そうが――――――――――――――――――――――――――文句は無いよね』




窓の外には、女の子が一人。中学生。制服。少し跳ねた黒髪、よく知った端正な顔。家に入ろうとしているそいつは、紛れもなく。

「おま、待っ……『待たねぇよ。』……!!」

裏返った声に割り込み、ルーザーが斬首刑を宣告するように冷酷に言う。
少年が窓を開け身を乗り出すと同時に、その少女は、少年の妹、比企谷小町は―――この世界から完全に“消えた”。
その三文字で、全てが完結していた。
確認のしようも何もありはしない。消失。銷失。喪失。シャボン玉が弾けるように跡形も無く、少女はこの世から綺麗さっぱり“なかったこと”になったのだから。


『大嘘憑き(オールフィクション)』
『比企谷小町を』
『“なかったことにした”。』


438 : 比企谷八幡 & ルーザー ◆sRnD4f8YDA :2016/03/10(木) 23:39:25 RXp4sTzg0
ルーザーは淡々と、訃報を読むニュースキャスターのように呟く。
けれども、あまりに―――その表情は、あまりに現実から乖離していた。
口元は確かに笑っているにも関わらず、ルーザーの双眸は少しも笑ってはいない。
べったりと張り付いた悪魔の微笑みは、プラスチックのように硬く無機質で、鉛のように冷たく、人形のように何処までも感情が欠落していた。
数拍置いて、乾いた風が窓から部屋を駆け抜ける。少年は青褪めた面のまま立ち上がると、無我夢中でルーザーの胸ぐらをがばりと掴んだ。
へらへらと笑うルーザーごと、そのまま壁の本棚へと雪崩れ込む。体当たりの衝撃で、ばさばさと小説が本棚から落ちた。
間髪入れず少年は煮えたくる腹の底から息を吸い、そして、


「―――――――――――てめぇ、小町に何をしたッ!!!!!!!」


言いたい事は数あれど、まず始めに言うべきそれを叫んだ。

『別に、何も。』
ルーザーは首を傾げながら、悪びれもなく応える。胸ぐらを掴む少年の手に力が入った。
「答えろ……」
少年は険しい面のまま、ルーザーの身体をがくがくと揺らす。非力な腕力での、精一杯の火事場の馬鹿力だった。
『嫌だ。』
しかしルーザーは答えない。少年は歯を剥き出しにして体の底から呪詛を吐くように唸った。
「答えろ…………!」
『断る。』
されどルーザーは答えない。黒く澱んだ泥色の双眸が、ぶれる事無く少年を真っ直ぐに見つめていた。
「答えろよッ…………!!」
『僕は悪くない。』

ルーザーのその白々しい態度に、怒りを通り越して少年は思わず嘲った。
これ以上は時間の無駄だ。そう悟り、少年はルーザーの胸倉から手を離す。傾いた本棚がごとりと戻る拍子に、ばさばさとまた小説が床に落ちた。
少年はそんな事には意を返さずふらふらと後退ると、溜息を吐きながら左腕の袖を捲る。
ルーザーの眼の色が僅かに変わった。その行為が意味する未来を理解しているからだ。
令呪。
聖杯からマスターに与えられる、三画の絶対命令権。
右上腕に染み付いたその魔術刻印を少年は掲げ、そして叫んだ。


「令呪で命令する!!!!!!! 答えろッ!!!!!!!!!!!!!! ルゥザァアアァァァァァ


              『おっと残念。そいつは通らないぜ。』


 …………………………………………………………………………………………………………………ぁ?」


しかしルーザーはそんな絶対の命令を“通らない”と宣言し、肩を竦め、涼しい顔をしてみせたのだ。
半秒の沈黙。一瞬の静寂。少年は絶対の呪いが効かなかった理由を理解する前に、震える目線を自らの右腕に落とした。
瞬間、絶句する。そこに在るはずのその令呪は、マスターの証であり、サーヴァントに対する絶対の魔法であるはずのそれは。
しかし綺麗さっぱり“なかったこと”になっていたのだから。

『ヒキタニ君の令呪を“なかったことにしました”。』


439 : 比企谷八幡 & ルーザー ◆sRnD4f8YDA :2016/03/10(木) 23:40:35 RXp4sTzg0
ルーザーは吐き捨てる様に彼の耳元で呟き、続ける。

『君はもう僕に命令することも、助けてもらうことも出来ません。』
『まったく危ないなぁ』『やれやれ、僕のマスターがこんなに馬鹿だとはね。』
『……こんな下らない事に大切な令呪を使うなよ、社会負適応者(引き篭もり)。』
『そんなだから大切な妹も、こうやって亡くすんだぜ。』

がくりと膝を折り床にへたり込む少年の頭を、ルーザーはくしゃくしゃと乱暴に撫でる。
そうしてくるりと身を翻し少年に背を向け……指を鳴らした。


『……なんてね』


ぱちん、と音がすると同時に、階下の玄関から帰宅を知らせるドアの音。
はっとして少年が俯いていた顔を上げると、肩を竦めたルーザーは窓に腰掛けていた。

『ちょっとしたジョークだよ、ジョーク』『嫌だなあ。鳩が豆鉄砲喰らったような顔しちゃって。』
『本気にしないでくれよ』『君の妹は“なかったこと”にはなってないぜ。』
「…………………へ?」

思わず少年が間の抜けた表情で呟く。
目前のルーザーはくすりと小馬鹿にするように笑うと、懐から――明らかに彼の着る学生服の懐の許容量を超えている大きさの――先端の潰れた螺子を取り出した。

『僕の宝具、“安心大嘘憑き(エイプリルフィクション)”!!』
『三分間だけ、現実“すべて”を虚構“なかったこと”にする』『三分経てば元通り。』『安心だろ?』

……腕を見てみなよ。ルーザーはそう締めると、顎で少年を促す。
言われるがまま少年が腕を見ると、さっきまでは無かった令呪が復活していた。階下でも物音がする。妹は無事帰ってきたのだ。

『どう? ちょっとした退屈凌ぎにはなっただろ?』『ダメージも与えられない、回復さえしない、まったくもって弱過ぎて嫌になる宝具だけど』

少年は思わず眉間を揉んだ。
“なんだこれは”。それが素直な彼の感想で、同時に“ふざけている”とも思った。

「あー……なんつうか、なぁ……はぁ、お前……あのなぁ……。あ、これアレだわ……うんうん、アレだ……。
 ……やっていい冗談とよくない冗談が…………あー……おま……はぁ~~……ったく、マジか……笑えねぇし、キレる気力もねぇわ……」

どかりと尻餅をつくと、少年は大きな溜息を吐きながら頭を掻いた。“安心”とはよく言ったものだ。皮肉にしても酷過ぎる。
そもそもだ、と少年はかぶりを振りながら思う。
宝具だの戦争だの、令呪だのサーヴァントだのマスターだの何だのって言葉が先ず未だに胡散臭過ぎて実感が湧かない。
何が“安心大嘘憑き”にルビを振って“エイプリルフィクション”だよ。あれか? 厨二か? お前は厨二病なのか?
材木座の下手な小説の方がまだ幾分かマシだろコレ。
これじゃあまるで、最近よくあるラノベの“魔王がいきなり普通の世界に~”とか“或る日突然異世界に~”みたいな常套的アレじゃないか。

ファンタジー、という言葉が少年の脳裏に浮かんだ。否定しようがないくらいに、今目の前で起きた事や、この状況はファンタジーだ。
これではまるで漫画やラノベ、アニメの世界の話ではないか、と少年は思った。
欺瞞に満ちたルーザーの言動一つ取ってもそうだった。挙句この世界はゲームの舞台であり、正真正銘偽物であるときている。

“本物”は、この世界に果たしてあるのだろうか?

少年は咀嚼するように、或いは見失ってしまわぬように腹の中で再び呟く。“本物は、何処へ行ってしまったのだ?”

NPCは何処から見てもかつての知り合い。妹は何処から見ても妹で、性格も、言動も、何もかもが瓜二つだ。何一つとして今までと変わらない。
いいや、違うか。唯一変わってしまったものがある。
“俺がマスターとなった事“だ。
あの時、部室でくだらない夢を無様に泣きながら吐露したからか。それとも、俺を哀れに思った女神の悪戯か。
何れにせよ、こんな思いをしなければならないのも全てこの下らないゲームのせいだ。
だが、ならばこのゲームが最初から無かったとして、比企谷八幡が街の雑踏に飲まれるごく普通のNPCの一人だったとして。
俺にとって一体何が変わるのだろうか。

……解っている。何も変わらないのだと。

登校し、一人で飯を食い、上っ面の会話をし、薄っぺらい人付き合いをし、部活で馴れ合い、烏滸がましくも癒しを感じて、問題解決という決められた役割を履行する。
ならば逆説的に、偽物でも本物でも、そこにさしたる違いはないとは言えないだろうか。
世界は欺瞞で満ちている。その中で本物を探そうだなんて戯言は、やはり最初から海に映る月を求める様な、莫迦が見る叶わぬ夢だったのではないだろうか。
ならば俺は……俺の願いとは、この聖杯戦争に望む夢とは……。


440 : 比企谷八幡 & ルーザー ◆sRnD4f8YDA :2016/03/10(木) 23:41:14 RXp4sTzg0

『くだらねー考えに更けてるとこ悪いけど』



そこまで考えて、少年はルーザーの一言にはっとする。ルーザーは窓に凭れながら、ゆっくりと人差し指を立てた。

『一つ、忠告させてもらうぜヒキタニ君。君には……致命的に“自覚”が足りない。』

ルーザーは続ける。少年は黙って彼の底なしの双眸を見つめた。

『僕も君も、今までは絶対に主人公にはなれなかった。』
『だけどこの物語は君と僕が主人公だ。』
『この戦争は君と僕の戦争だ。』
『そしてここは戦場だ。命を賭ける場所なんだよ。』

ひゅん、と風を切る音。
少年が瞬きをすると、次の瞬間目の前5センチ前にはルーザーが、否、何処からともなく取り出された螺子が向けられていた。



『―――――――――――言葉だけじゃなくて、格好だけじゃなくて、腹も括れよ、負幸せ。』



少年の喉奥が、ごくりと鳴る。ルーザーは少年の額に浮かぶ冷や汗を見ると、満足気に表情だけでにたりと笑い、螺子を“消した”。
ルーザーはくるりと身を翻すと、少年に背を向け、ひらひらと手を振った。窓を、血の色をした夕焼け空を背景に、ルーザーはなおも口を開く。

『だけど安心しなよ』『君も僕も、主人公』『主人公補正って魔法は』『主人公になった瞬間から掛かるんだぜ。』

「……主人公……」

少年が俯きながら呟く。“そんなものに俺がなれるわけがない”。あちこちに泳ぐ目はそのままその科白を物語っていた。

『君も僕も、被害者じゃない。加害者だ。内輪揉めの内輪に入りたくないのは分かるけどさ。』
『君はもう、戦争の“内輪”に片足入ってるんだ』『内輪じゃないとは言わせない』『知らないなんて言わせない』『関係ないとは言わせない。』
『……戦うまで、負けましたとは言わせない。』
『初めから勝敗の解りきった、下らない戦争ではあるけれど、』

さあ、剣を取れ、命を捧げろ。
右に砕けた鋼の刃を。左に錆び付く鉄の盾を。心に濁った泥の血潮を。胸には淀んで歪みし魂を。身体に朽ち行く土の鎧を。
汚れた騎士は、嘗てはただの名も無き民。拍手も脚光も浴びる事なく、螺子伏せられ草臥れ果てる影の住民。
けれどもこれは、そんな君だけの、君の為の物語。
















『けれども矢張り悲しいかな、僕はまこと残念ながら――――――――――――――――――――――――――――――負け戦なら、百戦錬磨。』















既にして賽は投げられた。幕間はこれにて終劇。歪な盃をその手に求め、血で血を洗う戦争を始めよう。


441 : 比企谷八幡 & ルーザー ◆sRnD4f8YDA :2016/03/10(木) 23:44:13 RXp4sTzg0
【クラス】
ルーザー

【真名】
球磨川禊@めだかボックス

【パラメーター】
筋力E- 耐久E- 敏捷E- 魔力E- 幸運E- 宝具EX-

【属性】
『中立・善(僕は悪くない。)』

【サーヴァントとしての願い】
『特に無いよ』『負け犬は負け犬らしく、無様に負けるとするぜ。』
『ああ、でも』『これはゲームなんだっけ』『だったら勝者も出るんだろう?』『それはそれで気にいらないし』『すっげー暇だから』
『勝者も敗者も全部ごちゃまぜにして』『台無しにするとしよう!』

【クラススキル】
過負荷(マイナス):A-
全てのパラメーターとスキルにマイナス補正をかけ、更に保有スキルに“虚構”を付加するスキル。
虚構を付加されたスキルは、その性質を“負”方向に反転・変質させる。
また戦闘の際、宝具以外の全てのパラメーターは、相対するサーヴァントのランクより全て下になる。
ルーザーは常に他人より劣っていなければならない。それは生物が息を求めるような、至極当たり前の摂理である。
ルーザーとは、つまり全くそれでよいのだ。

初既敗北(ブレイクファースト):A-
遊戯、戦闘、賭博、試験。古今東西ありとあらゆる勝負事に“勝つことが出来ない”スキル。
このスキルはルーザーが“これは勝負である”と主観で認識して初めて効果があるスキルであり、対する人間の主観や、周囲の客観には左右されない。
しかしながら、“初既敗北”は“負けなければならない”スキルでもなければ、“勝負から逃げられない”スキルでもない。
されども戦いに勝てず初撃で撃破され、無様に敗退する事は、負け戦に慣れたルーザーにとっては朝飯前、当然の結果なのだ。

【保有スキル】
カリスマ(虚構):A-
本来は大軍団を指揮・統率する才能であり、団体戦闘において自軍の能力を向上させる稀有な才能だが、彼の場合はクラススキル“過負荷”により効果が変質する。
彼は仲間が出来れば出来るほど、自軍及び己の能力を著しく低下させる呪いに蝕まれている。
裏を返せば、孤独になる程、仲間が居ない程、彼のステータスにランク補正がかかり、強くなるスキルでもある。
また、この呪いは周囲のみならずマスターに対しても有効であり、彼がマスターの元を離れるほど、ステータスに補正がかかる。
曰く、人は一人では生きられない。しかし、一人であれば死に絶えるとは誰も彼も言わなかった。
なればこそ、人は一人では死にきれないのだ。

戦闘続行(虚構):A-
本来は耐久力の高さを示す才だが、彼の場合はクラススキル“過負荷”により効果が変質する。
彼はその命が散る瞬間まで、手足がもがれようが致命傷を浴びようが何度でも立ち上がり、走り、喋り、笑顔のまま敵に対峙することが出来る。
但し彼は体力があるわけでも、防御力が高いわけでも、痛覚を遮断する能力があるわけでもない。
彼はこの世界の全てのサーヴァントの中で最も体力が低いのだ。即ち、これは“嘘”で固められたスキルである。
だが、それが彼のあるべき姿だ。
幾ら転ぼうが、貶されようが、汚れようが、それでもへらへら笑うのが、過負荷が過負荷たる所以なのだから。


442 : 比企谷八幡 & ルーザー ◆sRnD4f8YDA :2016/03/10(木) 23:44:48 RXp4sTzg0
【宝具】

『安心大嘘憑き(エイプリルフィクション)』
ランク:A- 種別:対界宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:∞
“現実(すべて)”を“虚構(なかったこと)”にする概念宝具。対象を目視さえすれば宝具はいつでも発動できる。
世界のルールから根本的に書き換えてしまいかねないその宝具の本質は、因果を逆流させることであらゆる現象・事象・概念の結果を消したように見せる異能である。
但し効果は三分間であり、時間が過ぎれば虚構は消え、現実は元に戻る。
逆を言えば、三分間はルーザーが消えようが魔力が尽きようがマスターが死のうが、絶対に虚構は解除されない。
しかし、ルーザーが“虚構に出来ない”、“虚構にしても面白くない”と思ったこと、そして“強い想いが込められた事象”は虚構には出来ない。
また、この世界では生きているマスターやサーヴァント、加えて戦争自体を虚構にすることは出来ない。

『却本作り(ブックメーカー)』
ランク:EX- 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:3
鋭く長いマイナス螺子を模した宝具。
その宝具で貫かれた者は、クラス・宝具以外のパラメーター・属性・クラススキルを全て失い、
宝具を発動した時点のルーザーのステータスや防御力・体力・精神力等で全てを上書きされる。
保有スキル・宝具のみが元のまま残るが、保有スキルは“過負荷”により“虚構”が付加され、真逆のスキルへと変質する。
また、宝具も威力と共にランクが著しく下がる。
この宝具は、彼から性質や力がかけ離れた性格の者であればあるほどより強力な呪いとなり、対象の心を折り尽くし、力を封印する。
但し、この宝具により肉体を貫かれたとしても、対象はダメージを受けない。
当然だ。敗北者に他人を傷付ける宝具など、分不相応なのだから。

『虚数大嘘憑き(ノンフィクション)』
ランク:A- 種別:対界宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:∞
“虚数(なくなったこと)”を“虚構(なかったこと)”にする概念宝具。言い換えれば、“無くなったものを復活させる宝具”。
即ち、過去に無くしたものを復活させる、または『安心大嘘憑き』により虚構にした現実を、三分経つ前にあるべき姿に戻す異能である。
従って夢や妄想の類を具現化することは出来ない。
対象を認識さえすれば宝具はいつでも発動できるが、効果は三分間であり、時間が過ぎれば虚構は消え、虚数は元に戻る。
逆を言えば、三分間はルーザーが消えようが魔力が尽きようがマスターが死のうが、絶対に虚構は解除されない。
『安心大嘘憑き』と異なり、この宝具は対象を視認する必要がない。
無くなったものを見ることなど、決して叶わないのは道理である。

【Weapon】
具現化した大小種類様々な螺子。

【人物背景】
『本編の文字数も多いことだし』『割愛するよ。』
『ま』『知りたい奴はWikipediaでもピクシブ百科事典でも西尾キャラwikiでも見ればいいさ。』
『君が今使っているのは便利な便利なインターネットなんだろう?』
『……おいおい、なんだよその目は』『こっちはwiki収録文字数を減らしてあげてるんだぜ?』
『だから』『僕は悪くない。』

【方針】
『色々思うことはあるけれど』『基本的にはマスターを守るし、従うよ』『僕はこれでも優等生なんだ。』


443 : 比企谷八幡 & ルーザー ◆sRnD4f8YDA :2016/03/10(木) 23:45:25 RXp4sTzg0
【マスター】
比企谷八幡@やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。

【マスターとしての願い】
本物が、欲しい。

【能力・技能】
他人の言葉や、問題の裏を読む事ができる特技がある。
それ故、他人の思考や物事の本質を見抜く力に長けているが、反して自分に対しての感情・意見の考察が致命的に下手。
根本的に人付き合いが苦手で斜に構えた、所謂“ぼっち”である。
大抵の事はそれなりにこなす事が出来る器用さはあるが、全て歳相応の人並みのレベルの話であり、これといった突出した才能は殆どない。

【Weapon】
屁理屈が達者な口、そして貧弱な拳、希薄な存在感。

【人物背景】
高校二年生の少年。これまでに作った幾多のトラウマにより、常に斜に構えた偏見的な見方をする高二病的な考えを持っている。
彼の行動概念は基本的に自分がどう思われているのか、どう思われたいのかを軸にしている。
それ故に他人の言葉の裏を読む癖があり、特に好意やフラグ的なものを疑い、内心で予防線を張ってしまう。
しかしながらクラスメイトの戸塚や妹の小町に対しては非常に甘く、2人の事には最優先で取り組む。
将来の夢は「専業主夫」。趣味は読書で好物はハニーローストピーナッツ、ドライみそピー、ラーメン、MAXコーヒー。
特技はクイズ、なぞなぞ、独り言、問題の解決。得意教科は国語と日本史。嫌いなものは数学、労働、優しい人、他人の成功、欺瞞。
座右の銘は「押して駄目なら諦めろ」。

【方針】
ひとまず様子を見る。極力戦闘はしないし、派手な行動はせず仲間も作りたくない。
バレない限りはNPCに溶け込み、慎重に行動する。


444 : 比企谷八幡 & ルーザー ◆sRnD4f8YDA :2016/03/10(木) 23:49:28 RXp4sTzg0
以上で投下を終了します。
設定にて、一部夢現聖杯の前川みく&ルーザー組を参考にさせてもらいました。感謝します。


445 : ◆7jtSuWlZ0c :2016/03/11(金) 01:23:33 N0pu.Ffk0
投下します


446 : ◆7jtSuWlZ0c :2016/03/11(金) 01:23:46 N0pu.Ffk0



 私はあなたを見つけ、あなたは私になる。
 私は人々の間を駆け抜け、現実としてこの世に現れる。
 私は、既に勝利している。虚構から現実へと転じているのだから。
 例え貴方が、信じようと信じまいと。




 私……いや、"私達"の名は――――。


 ――



「なぁ。こんな話、知ってっか?」
「これ、人から聞いた話なんだけどさ……」

 最近、人々の間で実しやかに囁かれている物語がある。
 都市伝説のようで、それでいて何故かリアリティを感じる物語。

「ウッソだろお前。んなのあり得るわけねーじゃん」
「何それ? どーせ作り話でしょ」

 一般的な人間が聞けば、他愛も無い創作であると一蹴するようなもの。
 だが、そんなものでも、幾多もの人間の間を駆け抜ければ。
 それは、創作と言う殻を破り、現実へと姿を変えていく。
 如何に、荒唐無稽であろうと。

「俺はマジだと思うぜ。だってこの間さ……」

 それの流布は言葉だけに留まらない。
 時には紙を通じて。
 時には電脳空間を利用して。
 時には人を介して。
 ……伝達方法など、誤差の範囲でしかない。
 伝える人間がいる限り、それは際限なく広がっていくのだから。

「私も最初はウソだと思ったよ。でも、アレを見たら……」

 偽りが真実を塗りつぶす。嘘が本当を踏み越える。
 創作が……現実へ変わっていく。
 その瞬間は、誰にも分からない。知覚など、出来るはずがない。


 ――――何しろ、それを伝播させている本人にすら、分からないのだから。


 ――


447 : ◆7jtSuWlZ0c :2016/03/11(金) 01:24:12 N0pu.Ffk0




 空は澄み渡って、雲一つない良い天気。
 ぼく以外は誰もいない、病院の屋上。
 一陣の風が吹き、そこらに干してある洗濯物を揺らす。
 さわやかな気分になるはずなのに、ぼくの心はそれとはかけ離れた状態だ。

 何度繰り返したかわからない思考を、また繰り返す。
 ……ぼくは、いつからここにいるんだろうか。
 気が付いたときにはもう、ぼくは名前も知らない病院の一室にいた。
 どうやら、ぼくはここに急病を患って運び込まれ、そのまま入院。
 そして、その後遺症で自分の名前以外すべてを忘れている……と言う事になっているらしい。
 どう言う経緯でそうなったのか。なにがあってこうなったのか。ぼくには分からない。

(うぐっ……)

 このことを考えてはいけない。
 考えると、またぼくの頭はひどく痛むのだから。
 痛いのはいやだ。だから、考えるのはやめよう。

「……」

 それでも、ぼくは考えてしまう。
 ぼくは何のためにここにいるんだろう?
 何かをするために、ここにいるような気はするのだけれど。
 だが、その"何か"が一体何であるのか、分からない。

「……どうして、思い出せないんだろう?」

 いくら考えても答えは出ない。
 ぼくの頭の中には、ずっと霧がかかっている。
 晴れることのない霧が。
 いつになったら、ぼくの頭はすっきりしてくれるのだろうか。
 ぼく自身にもその見通しが立たないのだから、きっとまだまだかかるのだろう。


448 : ◆7jtSuWlZ0c :2016/03/11(金) 01:24:31 N0pu.Ffk0

「ああ、こんなところにいたんですか」

 不意に、誰かがぼくに話しかけてくる。
 声のした方に向き直ると、見慣れた顔の看護婦が立っていた。
 どうせ、いつものようにぼくを病室へ連れ戻しに来たのだろう。
 看護婦の表情も仕草も、全てが妙に無機質に感じる。

「勝手に出歩いてはダメだと言われているでしょう?」
「……」

 あんな、何の面白みもない部屋に一日中いられるものか。
 どうして、ぼくを縛りつけようとするんだ。
 とは言え、ここで反抗した所で何にもならないことは分かっている。
 結局、ぼくはこの人に素直に従う他ない。
 ……ここを出た所で、ぼくが向かう場所なんか存在しないのだから。

「さあ、病室に戻りましょうか――――矢島透さん」


 ――


 街に、東京に、私達が浸透していく。
 虚無で成り立つ人々の間を、私達が駆け抜けていく。

「おい、こんな話知ってるか? 24枚撮りの使い捨てカメラに時々……」

 私達が駆け抜けた後には、現実が残る。決して否定できない、現実が。
 何があろうと、現実はそこに残り続ける。
 誰であろうと、現実を斃せはしない。

「"殺人鬼"っつー職業に就く条件を知ってるか……?」

 人々が騒いでいる。自らが生み出した存在の所為で。
 彼、もしくは彼女達は何も知らないし、知ることもない。
 知らず知らずの内に、それらは確実に現実へ浸食してくる。
 私達の生んだ"現実"は、何食わぬ顔でそこにいる。

「聞いた話なんだけど、とある漁師が雪山で……」

 そもそも、これらの"噂話"はもともと私達の知識。
 これは、彼(もしくは彼女)達が強制的に知らされたもの。それをやったのは私達だ。
 何の為に? 無論、"噂話"の存在を広め、現実を塗りつぶす為に。
 この虚無の街に蠢く人間全て、私達の為に利用する。
 最も、自分達が利用されていると見抜ける人間はいないだろう。

「……おいちょっと待てよ。それ、見たことあるぞ」

 だが、それらが現実になっている事に気付いた者がいる可能性は捨てられない。
 有象無象の中の一人か、それとも"名前のある"存在なのか。
 それは私達には知りえないし、知る必要もない。
 気が付いているのが有象無象であればそれはそれで構わない。
 もしも"名前のある"存在であったとしても、私達の処に辿り着けはしない。

「本日未明、港区にて男性が何者かに殺害されている状態で……。遺体の損傷が激しく、警察では身元の確認を……」

 興味本位でそれを追いかけてはならない。
 深淵を覗く時は、深淵もまたこちらを覗いているとはよく言ったものだ。
 何も考えず、好奇心のみで追いかければ、死に至る事もあるのだから。


449 : ◆7jtSuWlZ0c :2016/03/11(金) 01:24:47 N0pu.Ffk0



『さて。次は何を広めようか』

 私達は虚無を"現実"で塗り替える者。
 私達は神の掌に止まらず、その指の間から抜け出す者。
 光でもなければ闇でもない。
 善でもなければ悪でもない。
 ただただ、自身を吹聴させ続けることに固執する者。
 例え、この世界が虚無でしかないとしても。



『私達の名はフォークロア』
『信じようと、信じまいと――』



【クラス】キャスター
【真名】"フォークロア"@2ちゃんねる(信じようと、信じまいと――)
【属性】中立・中庸

【パラメーター】
筋力E 耐久EX 敏捷E 魔力A 幸運C 宝具EX

【クラススキル】

 陣地作成:-
 道具作成:-
 2つとも失われているが、宝具が上記の2つの代わりを務めている。

【保有スキル】

 精神汚染:EX
 数百の"人格"が1つに圧縮されている。
 そのため、精神の中身は誰にも理解できないほどに濁り、汚染されている。

 自己保存:A+
 自身はまるで戦闘力がない代わりに、マスターが無事な限りは殆どの危機から逃れることができる。

 情報秘匿:A
 サーヴァント自身に繋がる情報を隠蔽・秘匿し、サーヴァントが発見される確率を下げる。
 "噂話"の出所を正確に掴むのは困難なもの。


450 : ◆7jtSuWlZ0c :2016/03/11(金) 01:25:25 N0pu.Ffk0


【宝具】
『四行伝承(ビリーブ・イット・オア・ノット)』
ランク:EX 種別:対衆宝具 レンジ:東京全域 最大補足:1人~
人々の間にフォークロアを流布し、それに纏わる人物・物体・事象を現実化させる。
一度現実化したものは、物語の大本を絶つ(=キャスターの抹殺)以外の方法では完全に消すことはできない。
現実化した対象への干渉は可能。殺害できる存在であれば殺せるし、破壊できるモノであれば破壊可能。
現実化したモノ達がどこに現れるかはキャスター次第だが、タイミングまでは制御できない。
なお、物語が現実へ変わる為の魔力はサーヴァントからではなく人々から捻出しているので、
サーヴァントやマスターにかかる負担はかなり低い。

キャスター自身の敏捷性は最低ランクであるが、フォークロアの広まるスピードはそれとは無関係。
また、フォークロアの流布度合をキャスターは"感じ取る"事ができる。


【weapon】
 なし

【人物背景】
 2ちゃんねる・オカルト板に立った1つのスレ。そこに書き込まれた、奇妙な文章達。
 それを契機に、電脳の海に次々と現れた"物語"達……。
 そんな、数百ものフォークロアが聖杯戦争の場にて1つになり、形而下した存在。

【サーヴァントとしての願い】
 サーヴァントとして呼ばれた時点で、"現実に成る"という願いは叶っている。
 ならば、後は自身の存在を人々の間に広めていくのみ。
 そのためであれば、何がどうなろうと構わない。

【基本戦術、方針、運用法】
 そもそも、本人(この表現は正しいのか?)に戦う気がない上、"自己保存"もあるので……。
 せっせとフォークロアを吹聴して東京中に奇妙な現象を広めよう。





【マスター】
 矢島透@かまいたちの夜2 監獄島のわらべ歌/妄想編

【マスターとしての願い】
 ???

【weapon】
 なし

【能力・技能】
・推理力
 本来なら持っているはずだが……。

【人物背景】
 愛ゆえに狂い、罪を犯した青年。

【方針】
 ???

【備考】
 都内のどこかの病院に収容されているようです。


451 : ◆7jtSuWlZ0c :2016/03/11(金) 01:25:38 N0pu.Ffk0
投下を終了いたします


452 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/11(金) 18:32:28 B7LcBAXo0
皆さま投下お疲れ様です。もう間もなく締め切り日となりますね。
まだ時間は残されているので、後悔のないよう投下して下さい。
それでは感想を投下します。

ルーラー/セフィリア=アークス
確かに、記憶を取り戻さなかったマスター候補はおりますし、それらを助ける為に行動するルーラーは
必要なのかもしれませんね。セフィリアは確かに心優しい裁定者として相応しい人物なのですが、既に
虐殺をやらかしているあのバーサーカーなどの対処を強いられるのは彼女だけは心もとない感じがしますね……
投下ありがとうございました。

アンジェラ・ラングレー&アサシン
ある意味『彼』にとっても因縁の相手が来てしまった訳ですか……アンジェラは常識人なのですが
いかんせん聖杯戦争を飲み込めていなかったり、アサシンの風が話を合わせているものの。微妙に嘘ついた
ことになってしまいますし、きちんと聖杯戦争と向き合って挑んでほしいところです。
投下ありがとうございました。

上田次郎&セイヴァー
どんとこい超常現象と言わんばかりに、超常現象が起こりまくる聖杯戦争で上田が気絶しまくったりしないか
いささか不安ですね……セイヴァーの話を何とか受け止めて、聖杯戦争を把握しなければ酷い展開になりかねない
のでどうにか良好な関係へ持って行って欲しいのですが……果たして大丈夫なのでしょうか?
投下ありがとうございました。

海馬瀬人&デュエリスト
まさかこのような形で二人によるデュエルが実現するとは……これも聖杯戦争ならではの展開ですね。
聖杯戦争を許しがたいと言いながらも、他の主従を倒し、主催者に近づこうとする姿勢が海馬らしいです。
彼も東京で『海馬コーポレーション』としての地位を使ったやり方が可能でしょうし、それを見て見たいです。
投下ありがとうございました。

相田マナ&セイバー
ジコチューな聖杯とはまさにプリキュアらしい解釈ですね。そうでなくとも、聖杯戦争を何たるかを知らぬ
人々にとっては愛もない、わがままで身勝手なジコチューなものでしかないのですから。とはいえ、マナの
掲げる愛が通じない相手もいる訳です。彼らが愛を知らぬ相手にどのような戦いをするか楽しみです。
投下ありがとうございました。

フレミー・スピッドロウ&ランサー
愛の為に命を奪う覚悟がある。前者のマナとセイバーの主従と比較するとは、愛の解釈が全く違います。
愛して欲しい、愛されたいという願いが愛を求める者たちには重要な事です。どんなに自分が愛していても
相手に愛がなければ全く無意味なのですから。彼女たちの愛が聖杯戦争で試されるのが楽しみです。
投下ありがとうございました。


453 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/11(金) 18:32:53 B7LcBAXo0
古畑任三郎&セイバー
杉下右京の次はまさかこの人が……しかも開幕の雰囲気が実に良く古畑の捜査状況が脳裏で再現されてしまいます。
とはいえ、聖杯戦争という戦いにおいては全く推理も通用しない訳で、彼が果たして聖杯戦争をどうしていくのか
セイバーは是非古畑をサポートし、この事件を解決に導いて欲しいところです。
投下ありがとうございました。

三千院ナギ&キャスター
人の死が呆気なく感じてしまうとナギは茫然としていますが、果たしてそれはどうでしょうか。もし、他の主従
と関わり、彼らが死に絶えた時。彼女の心境は今回のようにはいかないかもしれません。あるいは、自らの死
に直面した時。かつてない感情に見舞われるでしょう。キャスターはそんなナギを支えてくれるでしょうか。
投下ありがとうございました。

ブライト博士&キャスター
死の感覚が少し人並みはずれてしまった感じのブライト博士には、悲しみを感じてしまいます。不死なんてのは
やはりロクでもないのだと改めて思ってしまいます。そんな彼が死に纏わるサーヴァントを召喚したのはある意味
恵まれたのでしょうね。ブライト博士はここで死を求めるのか、それとも……?
投下ありがとうございました。

SCP-014-JP-J&アサシン
こういう類のものに耐性が強いマスターがいると、やはり聖杯戦争では安心ですね……といきたいのですが
このサーヴァント……アサシンの存在があまりにも不穏そのものです。恐らくまともに聖杯戦争を行えるか
定かではないでしょう。早くアサシンの正体を把握して欲しいものですね。豚の塩漬けちゃんに
投下ありがとうございました。

比企谷八幡&ルーザー
相変わらず『』つけてえげつのないことをするなぁ裸エプロン先輩は(褒め言葉)
とはいえマスターの比企谷に改めて聖杯戦争を認識させるという心つかいはしてくれたことですし、これから
慎重に行動して聖杯戦争に挑んでほしいものですね。たとえ負けても、彼は悪くないのですから。
投下ありがとうございました。

矢島透&キャスター
SCPでもないのに、まるでSCPじみたミーム汚染的なサーヴァントが召喚されてしまいましたね。
インターネット社会である現代だからこそ通用する能力故、対処しようとも全て厄介すぎるイレギュラー的な
ものですね。一方のマスター矢島は……聖杯戦争の渦中に巻き込まれている事にどう自覚するのでしょう。
投下ありがとうございました。


454 : ◆ZjW0Ah9nuU :2016/03/11(金) 19:32:08 KBzI52l20
皆様、投下お疲れ様です
投下します


455 : ◆ZjW0Ah9nuU :2016/03/11(金) 19:32:59 KBzI52l20
【2日目】

東京都葛飾区に存在する銀行の前に、数台のパトカーとそれなりの数の警察官が陣取っていた。
その外周には野次馬がたむろしており、その銀行で事件が起こったことが通りすがりの者にも見ただけで伝わる。
内部がどうなっているのかはうかがい知れないが、場に漂う緊張感から相当に危ないことになっているのは確かだ。
その証拠に最前線では機動隊がライオットシールドを前に張り出して眼前を見据えながら構えている。

そこに、一台のパトカーが野次馬の中へ割り込んで警官の集団に合流する。
パトカーの扉が開くと、日本人にしては一際身長の高い男が姿を現した。
その男を見た警官の面々のこわばっていた顔には、安堵の表情が浮かんだのが見て取れる。
男は警察署でも非常に信頼を置かれているエリートらしい。

「状況はどうなっているかね?」

包囲網を張る警官の中、男がここまで現場を指揮していたらしき警官に尋ねる。
男は艶やかに輝くオールバックの髪型に、キリッとした目つきと太眉が特徴的な男前な顔つきをしていた。
服装は皺一つないスーツにピカピカに黒光りしているブーツ、1度の角度も曲がっておらぬネクタイとその男のマメな性格を表したように整っていた。

「ハッキリ言って、あまりよろしくない。犯人は銀行の中に立てこもっているが、何をしでかすかわからなくてな。迂闊に突入できない状態だ」
「何をしでかすかわからない、とは?」
「強盗しに銀行に入った犯人を取り押さえようとした警備員が、もう一人の犯人に文字通り吹っ飛ばされたんだ。銀行内からガラスを突き破り、向かいのビルの壁にぶつかるまで。
おかげでその警備員は今も意識不明の重体。命も助かるかどうかといった惨状だ」

男が銀行の方を見ると、確かに窓ガラスがことごとく割られており、入り口にはガラスの破片が散乱していた。
内部の方はあまりよく見えないが、少なくとも犯人の姿は見えない。
さらに男が警官にこの銀行強盗の事件について聞いたところ、その場にいた銀行員などは全員救出しており、人質はいないとのことだ。
犯人は二人。一人は覆面をした典型的な銀行強盗犯のような風貌だが、もう一人は上半身裸で呻き声しか上げない、異様な雰囲気の男だったという。

「成程…人質がいないにも関わらずに突入できないのはそういった事情もあるからか。ましてやこの人数ではな」
「ああ。お前もわかっているとは思うが、昨日の連続殺人のせいで葛飾警察署からもほとんどの人員が引き抜かれてしまった。
正直なところ、人手不足で強引に突入しようにもできない」

本来、銀行強盗犯が立てこもり、しかも重傷を負った負傷者が出たとなっては犯人を必ず逮捕するべくパトカー数十台分の人員と辺り一帯を覆いつくすほどの機動隊員を寄越すはずだ。
しかし、現在現場にいるのは数台のパトカーから出てきた警官十数人と機動隊がいつもの1/3程度。
昨日起きた連続殺人の捜査に、上はかなりの人数を動員したようで逆にこちらが手薄になってしまっているのだ。
さらに応援を呼んで物量戦術で犯人を押さえつけるのも手の一つだろうが、この人数では逆に負傷者、ひいては死者までもが出かねない。
相手には得体のしれない力を持つ男がいるなら尚のことだ。

「ふむ…わかった。ここは私に任せてほしい」
「どういうことだ、汚野?まさか――」
「そのまさかだ。私が単身で突入する」
「よせ!いくらお前が日本警察随一の格闘能力の持ち主でも無茶だ!犯人は二人で、しかも覆面の方は銃を持っているんだぞ!」
「どうか、私を信じてくれ。私は今までこの方法で犯人と向き合い、検挙率100%を保ってきたのだ」

男の名は、汚野たけし。検挙率100%を誇るエリート刑事である。
何よりも特徴的なのが卓越した身体能力であり、犯人の元へ単身で突入すれば銃をほとんど使わずに生身で犯人を取り押さえてしまう。
これは汚野の『誠意を持って犯人と向き合う』という信念の表れであり、それに違わぬ一貫した姿勢とマメな性格から署内での人気も高い。

「…確かにお前はあの方法で事件を解決できることを今まで証明してきた。それも一度の失敗もなく、だ。悔しいことにお前に反論することはできないみたいだな。
いいだろう、この事件の命運をお前に任せよう。ただし!防弾チョッキは着てもらうぞ。お前のような逸材を失っては件の連続殺人も迷宮入り必至だからな」

それに汚野は「構わん」と返し、防弾チョッキを譲り受けて機動隊の構える前線へと歩いていく。
警察の了承を受け、汚野たけしの単身での銀行攻略作戦が開始された。







456 : 名無しさん :2016/03/11(金) 19:34:01 KBzI52l20
汚野は、銀行のエントランスを軽く見まわす。
やはり客のような民間人は一人もいない。
銀行に突入したが、ここには人がいる気配は微塵も感じなかった。
だが、銀行内には必ず犯人がいる。人数が少ないとはいえ、銀行の四方八方を警察が包囲している。
犯人が逃げたことが確認されれば、すぐに無線で連絡が入るはずだ。

「……」

銀行の奥へ進む中で、汚野の何にも動じぬような顔には影が差していた。
つい昨日、いつものように職務を終えて帰宅した時のことだ。今の自分に対する違和感を覚えたのは。

――今の私は本当の私なのだろうか?

自問自答。汚野は本当の自分を包み隠しているような気がしてならなかった。
服と接している肌がむず痒い。まるで自分が自分でないようで、心が落ち着かない。
それから昨日の晩は偽りの自分を演じているような感覚に苛まれるまま時間が過ぎていった。

「海パンよ。お前は私の何を知っている?」

汚野は立ち止まり、懐から黒光りする海パンを取り出す。
違和感を覚えてから悩めるうちに、なぜか自宅に置いてあった海パンが汚野の目に入った。
この海パンを見た時、頭の中に電流が走ったような感覚が汚野を襲った。
こいつは自分を覚えているような気がする。本当の自分を呼び起こしてくれそうな気がする。
そして汚野は、違和感から逃れたい一心で海パンをスーツに忍ばせたまま、この現場に赴いたのである。

――ピピピピピ……
「む……」

静まり返った銀行に、腕時計のタイマーの音が木霊する。

「いかんいかん、これでは犯人に勘付かれてしまう。音を消さねば――!?」

海パンを片手に腕時計の設定を変更しようとしたその時、汚野は目を見開いた。

「待て…タイマーが鳴った時にはまず何をしなければならなかった…?」

犯人の前でも欠かさず行っていた習慣があったはずだ。

「エネルギー補給…そうだ、エネルギー補給をしていたのだった」

汚野の頭の中で、封じられていた“本当の汚野”が殻を破っていく。
その殻の中から溢れだすように記憶が元に戻っていく。

――エネルギー源のバナナはどこから出していた?

――海パンだ。

――海パン?今の私は何を着ている?

――スーツ…いや、違う。人間の肉体の可能性を奪う枷だ。

――今の私は本当の私なのだろうか?

――違う。お前は刑事は刑事でもお前なりの信念を持っている誇り高き――。

「……」






「そうだ!!!今の私は本当の私じゃない!!」

声高に汚野は叫んだ。完全に失われていた記憶が元に戻ったのだ。
そして自分がどうあるべきかを思い出した汚野は、本来の姿へ立ち返る。
防弾チョッキを外す。こんなものは汚野にとっては拘束具でしかない。
続いてスーツを上着から脱ぎ捨てていく。こんなものを着ていると息苦しくて仕方がない。
今度は下着を脱ぐ。己に身に着けてよいのはネクタイ、靴下に靴、そして海パンだけだ。


457 : 海パン刑事&ランサー ◆ZjW0Ah9nuU :2016/03/11(金) 19:35:25 KBzI52l20

「       股間のモッコリ伊達じゃない!
          陸に事件が起きた時
         海パン一つで全て解決!
         特殊刑事課三羽烏の一人
          
           『海パン刑事』
                    大復活!!」

説明しよう!汚野たけしの言う本当の自分とは、常に海パンのみを身に着けた変態、もとい特殊刑事課三羽烏の一人『海パン刑事』なのである!!

「む……こっちか!!」

突如銀行内を強い振動が襲う。ズン、ズンと何かを殴りつけているような音も一緒に聞こえてくる。
ついに記憶を取り戻した海パン刑事は身体中の神経を研ぎ澄まして、その震源を特定する。
必ずそこに犯人がいるという確信のもと、脱ぎ捨てたものを放置して海パン刑事は走り出した。









銀行の広い地下通路にて、浅黒い肌のバーサーカーが必死に壁だったものを殴り続ける。
壁に空いた穴からは斜め下に向かって短い空洞が伸びており、それを掘り進めている最中だ。

「おい、早くしろ!ったく、金庫破るのに時間かけやがって。この時間ロスで警察に突入されたらお前のせいだぞ!」
「■■■■■――」

バーサーカーの背中から覆面を被った強盗犯が声を荒げる。
肩には大きなバッグがぶら下がっており、中には札束はもちろん、高価な金銀宝石がぎっしりと詰まっている。
この男は聖杯戦争のマスターとなった男であり、バーサーカーを召喚した。
しかし、自身がマスターであることにも気付かずにバーサーカーを犯罪の道具として使い、今に至る。
この男は元いた世界でも犯罪を繰り返しており、かつて世を騒がせた怪盗のように大きな銀行から金を根こそぎ奪い、一獲千金を夢見ていた。

「ここを掘り進めれば下水道に出るはずだ。急げ!!」

記憶を取り戻しここが元いた場所とは違うと知っても、犯罪をやめようとは思わなかった。
男は住んでいる場所などどうでもよく、大金を手に入れさえして海外へ逃亡すれば一生遊んで暮らせることは変わらないからだ。
突然目の前に現れたバーサーカーが何者かはわからないが、何故か強盗犯の言うことは素直に聞いてくれる。
こいつを使えば綿密な計画を練らずとも楽に銀行から金を奪える。警察も得体の知れない者がいれば迂闊に手を出してこないだろう。
下水道に通じるはずの穴がもうすぐ開こうとした時には、強盗犯は使えるやつを持つことができた自分はラッキーだとほくそ笑んでいた。
聖杯戦争の実態を知らず、強盗犯と同じくサーヴァントを召喚した者も多数いるとは知らずに。

「やはり、地下にいたか」
「ちっ、追いつかれたか――っな!?」

猛スピードで駆けてくる足音とともに、強盗犯の背後からかけられる声。
時間をかけていたからか、警察が突入するまで持たなかったか。
舌打ちと共に振り返った強盗犯の顔が驚愕に塗りつぶされる。
彼の目の前に現れた警官と思しき人物は、赤と黒の縞模様のネクタイ、腕時計、そして局部を隠している海パン以外何も身に付けていなかったのだ。
オイルに濡れているからか、艶やかな肉体を恥じらいもなく晒している。そんな男を見た者は誰もがこう思うであろう。
『変態だ』と。

「何モンだテメーッ!」

強盗犯は海パン刑事に銃を向けて威嚇する。

「安心してくれ。見ての通り、私は丸腰だ。ただ、話をしにきただけだ」
「うるせえ!!金は絶対返さねえぞ!!…おい、ちょっとこっちに来い!」

強盗犯は海パン刑事の説得に応じようとせず、下水道へ続く穴を掘っていたバーサーカーを呼び寄せる。
上半身には何も身に着けていない狂戦士が目の前に現れても、海パン刑事はその鋭い視線を崩すことなく、ただ強盗犯を見据えていた。


458 : 海パン刑事&ランサー ◆ZjW0Ah9nuU :2016/03/11(金) 19:36:10 KBzI52l20

「私は争い事が嫌いだ。ここは裸になって話し合おう」

バーサーカーも自身を睨みつけており、二人ともかなり興奮しているのを見た海パン刑事は次の行動に出た。
両手を腰に持っていったかと思うと、指を海パンと肌の間にかける。
そして、摩擦がかかっていないようにスムーズに、あたかもそれが自然なことであるかのように…

躊躇うことなく海パンを脱ぎ去った。

「な、なあああああああああああ!?!?」
「■■■■■――」

海パン刑事はネクタイと靴以外は一糸まとわぬ姿――人間が産まれた時に取っている姿――全裸になった。
もちろん局部は隠さず強盗犯とバーサーカーに見せつけている。

「これで私は正真正銘丸腰だ。さあ、君たちも裸になって話し合おうじゃないか」
「ふ、ふ、ふっざけんじゃねえ!!」

強盗犯は完全に当惑し、銃を使うことを完全に忘れて海パン刑事をただ見ることしかできなくなった。

「ハハハ、恥ずかしがることはない。人間皆産まれた時は素っ裸だったんだ。赤ん坊のようなピュアな心で話し合おうじゃないか」
「よ、寄るな!こっち来んな!!」

強盗犯は銃を片手にへっぴり腰で後ずさりする。
…だが、バーサーカーの方は違った。

「■■■■■■■■■■――――!!!」
「何っ!?」

バーサーカーは狂化しており、理性が失われている。
そう、失われた理性では海パン刑事の裸を見て何も思わないし、そう思うだけの常識や羞恥心というものがなくなっているのだ。
すなわち、バーサーカーの取った行動は全裸の海パン刑事から逃げるのではなく、攻撃。
バーサーカーは海パン刑事の股についている一物にも動じることはなく、痺れを切らして海パン刑事に襲い掛かった。
強盗犯はバーサーカーが海パン刑事を、銀行の警備員のようにコテンパンに痛めつけるだろうことを半ば無意識に確信した。
海パン刑事の顔に初めて焦りの表情が浮かぶ。強盗犯は勝利を確信して笑みを浮かべた。




勝った。
強盗犯も狂化しているはずのバーサーカーも、そう思っていた。

「■■■■■――!?」
「抵抗しない人殴るなんてダメだよ!悪い奴はボクがやっつけちゃうぞ!」

海パン刑事を殴り飛ばすはずだったその手は、片手で止められていた。
その手はバーサーカーのそれよりも二回り以上も大きい。
手首からは茶色い毛むくじゃらの二の腕が続いている。


459 : 海パン刑事&ランサー ◆ZjW0Ah9nuU :2016/03/11(金) 19:36:58 KBzI52l20

「ゴ…リラ?」

バーサーカーの前に立っていたのは、正真正銘ゴリラだった。
頭の毛が天井に向かって伸びており、胸には『DK』の文字がプリントされたネクタイをしている。それ以外は海パン刑事と同じで何も着ていない
裸ネクタイの警官にアソコを見せられた矢先に、実際にゴリラが話すところを見た強盗犯はもはや頭がパンクしそうだった。

「ゴリラが喋った!?」

記憶を取り戻し、マスターとなった海パン刑事を救ったのは、ランサーのサーヴァント『ドンキーコング』であった。

「ねえ大丈夫?ケガない?」

ドンキーはバーサーカーの腕を涼しい顔で受け止めながら後ろを振り返り、のほほんとした口調で海パン刑事に問いかける。

「いかんいかん、あの攻撃に反応できないとは、私としたことが…。きっとあの時エネルギー補給をし忘れていたからだろうな」
「あーっ!それバナナ!いいないいな、ねえボクにもちょうだい?お願い」

海パン刑事はというと、脱いだ海パンからバナナを取り出し(なぜ海パンにバナナが収まっていたかは敢えて描写しない)、エネルギー補給をしていた。
それを見たドンキーはバーサーカーを通路の先へ軽々と投げ飛ばし、海パン刑事へバナナをねだる。
ドンキーコングはバナナに目がないのだ。

「ああ、君は。先ほどのお礼を言っていなかったな。助けてくれてありがとう」
「いいよいいよ、どういたしまして。それよりも、バナナ」
「何だ、君も欲しいのか?いいだろう、私のバナナを一つ分けてあげよう」
「わーい!ありがとう!」

海パン刑事からバナナを受け取ったドンキーはペロリとバナナを平らげてしまう。
海パン刑事はドンキーが普通に言葉を話していることに対しては特に疑問を抱いてはいなかった。
何せ特殊刑事課に所属していた彼には鳩ポッポ刑事という鳩の上司がいるし、同僚には知能の高いイルカを従えるドルフィン刑事もいる。
動物が人並みの知能を持っているなど、海パン刑事にとってはむしろ自然なことであった。
時を同じくしてエネルギーを補給し終わった海パン刑事は改めて呆然とこちらを見ていた強盗犯へ向き直る。

「ねえ、ところでおじさん何してるの?」
「悪い奴を捕まえているところだ」
「そうなの?じゃあボク手伝ったげるよ!さっきバナナくれたし!」

状況を把握したドンキーも強盗犯の方へ向く。
その視線の先にはもう泣きそうな目をした強盗犯とこちらに向かってくるバーサーカーがいた。

「君はあっちの裸の男を頼む」

どの口が言っているんだ、と海パン刑事にツッコむ者はこの場にはいない。
ドンキーは「オッケー!」と返事するとバーサーカーの方へ向かっていった。


460 : 海パン刑事&ランサー ◆ZjW0Ah9nuU :2016/03/11(金) 19:37:33 KBzI52l20


「バッナ~ナパワー!!」
「■■■■■■■■――!!!」


すれ違いざまにドンキーとバーサーカーの拳がかち合う。
それを確認したドンキーはすぐさま逆の手の張り手でバーサーカーの頬を引っ叩いた。

「■■■■■――!?」

バーサーカーがよろけ、大きく怯んだところをドンキーは見逃さない。
突如、何故かドンキー以外の時の流れが極端に遅くなり、ドンキーだけが速く攻撃できる状況が作られる。
それに乗じて、ドンキーは両手によるパンチを基本に、張り手と蹴りも合わせて20発以上もの連撃をバーサーカーに叩き込んだ。

「■■■――」

巨大なワニの胴体どころか超強化された合金をも貫くドンキーの一撃一撃が、バーサーカーの身体に突き刺されていく。
その刺突はまさに拳という名の槍で敵を穿つランサーのそれであった。

「これでトドメだ!」

ドンキーは最後の締めに腕を大きく振りかぶり、バーサーカーを斜め下から掬い上げるようにパンチで吹っ飛ばした。

「■■■■■■■■■――!!」

その威力たるや凄まじく、バーサーカーの身体は天井を突き破って空の彼方へ飛んでいき、ついには星になった。
重ねて言うが、ここは銀行の地下である。硬いアスファルトや天井の奥にあるコンクリートを貫通した上でバーサーカーは超遠距離に飛ばされたのだ。
それだけでドンキーのパンチがいかに重いかを物語っているといえよう。
『王者怒りの百裂拳』――ドンキーのバナナを奪っていった楽器のような生物や、
ドンキーの住む島を占領した北海のバイキングの幹部をボコボコにして吹っ飛ばした逸話からくる宝具たる奥義が炸裂した瞬間であった。

「ウッホホホ~!」
「あ……あ……あ……」

ドンキーはドラミングをして喜んでいる。
一部始終を見て、恐れをなした強盗犯はその場にへたり込む。
戦意喪失を絵に描いたような様子であった。

「…どうやら私が手を下すまでもないようだな。立てるか?」
「はい。…申し訳ありませんでした」

犯人は盗んだ金の入ったバッグを離し、そのまま手錠をかけられ御用となった。

「今日はあいつに助けられてばかりだったな」

海パン刑事は会心の笑みを浮かべながらドンキーを見た。







461 : 海パン刑事&ランサー ◆ZjW0Ah9nuU :2016/03/11(金) 19:37:59 KBzI52l20

【聖杯戦争…そんなものに私は巻き込まれていたのか】
【うん。おじさんは『ますたー』でボクは『さーばんと』。せいはいっていう願いを叶えるコップを取り合うんだって。変だよね、どうしてコップなんかのために戦うんだろ】
【まったくだな。その聖杯とやらがただのコップかどうかはさておき、そんなもののために戦わせるなんて断じて認めるわけにはいかん】

意気消沈している強盗犯を連行しながら、海パン刑事は霊体化したドンキーから聖杯戦争について話を聞いていた。
なお、海パンは既に履きなおしている。
ドンキーには間の抜けた面があったため、ところどころ分かりにくかったりドンキーの独自解釈があったりしたが、おおよそのルールは海パン刑事にも把握することができた。

【きっとこんな狂ったことをさせる黒幕がいるはずだ。私はそいつを探しだし、この催しに巻き込まれた者全員を解放するつもりでいる】
【そうなの?でも…それってすっごく難しくない?】

たとえおバカな一面のあるドンキーでもそこを気にするのは必然であろう。
ドンキーは聖杯戦争のルールこそ知っていたが、この聖杯戦争が誰によって開かれたのかはわかっていない。
いるかもわからない相手を探す。まさに雲をつかむような話だ。
聖杯戦争の中で生き残りつつそれをするというのなら尚更だ。

【その心配は無用だ。私は今までどんな苦難にも海パンと裸の心で立ち向かってきたからな。
だが今回の件は協力者…もとい相棒が必要でな。生憎両津はいない。だからその役をランサー、君に頼みたい。無論、エネルギー補給用のバナナは君にも支給するつもりだ】
【ホント!?じゃあボクがんばるね!】

エネルギー補給用のバナナで、海パン刑事はランサーの協力――サーヴァントだから協力するのは当然だが――をあっさりと得ることができた。
この聖杯戦争が一筋縄ではいかないことは海パン刑事にもわかっている。
恐らく海パン刑事も見たことのない者達が跋扈していることだろう。
だが、海パン刑事は信じている。心を裸にすればみんな分かり合える、と。
先ほどのように裸になって誠意を持って相手と接すれば、必ず手を取り合い、黒幕へ立ち向かえるはずだ。
海パン刑事の瞳は、一糸まとわぬ汚れなき希望に満ち溢れていた。

【ところで、バナナはいつくれるの?】
【エネルギー補給は三十分に一度だ】
【えー、そんなー】

なお、銀行の前で待っている者全員が海パン刑事の姿を見て真顔になったことは想像に難くない。


462 : 海パン刑事&ランサー ◆ZjW0Ah9nuU :2016/03/11(金) 19:39:11 KBzI52l20
【クラス】
ランサー

【真名】
ドンキーコング@ドンキーコングシリーズ

【パラメータ】
筋力A+ 耐久B 敏捷C 魔力E 幸運B 宝具C

【属性】
中立・善

【クラス別スキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ないが、ダメージ数値を多少削減する。

【保有スキル】
怪力:B
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。

騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが野獣ランクの獣は乗りこなせない。
ランサーの場合、乗るだけでなく他者を自分の背中に乗せることもできる。
ランサーに搭乗した者はある程度不自由なく行動でき、ランサーの戦闘をサポートすることができる。
また、乗せた相手が騎乗スキルを有していた場合、行動がシンクロしやすくなりより強力な連携を行える。
なお、本来は野獣ランクを乗りこなすこともできたが、ランサークラスになった代償としてランクが下がっている。

勇猛:B
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力だが、それは単にバカだからなのかもしれない。
一応、格闘ダメージを向上させる効果もある。

バナナパワー:A
ランサーはバナナが大好物で、バナナを食べるとパラメータが向上する。
マスターからは食事の時間ごとにバナナをもらっており、それが従う理由にもなっている。

対巨人:B
ランサーのジャングルを襲った数々の事件にて、自分より遥かに大きな敵にも屈せずに倒してきた逸話からくるスキル。
ランサーより大きな体躯を持つ敵に対して有利な判定を得る。


463 : 海パン刑事&ランサー ◆ZjW0Ah9nuU :2016/03/11(金) 19:39:56 KBzI52l20

【宝具】
『英雄渾身の一撃(ジャイアント・パンチ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
腕を振り回してパワーを溜め、極限まで威力を高めたパンチで対象を穿つランサーの必殺技。
ただのパンチと侮るなかれ、その一撃は月を公転軌道からずらして地球に引きずり下ろすほどで、鎧などの装備品による耐久値の上昇値を無視してダメージを計算する。
ただし一撃必殺の威力を誇る分、力を溜めてからそのパンチを当てるまでが遠い。

『王者怒りの百裂拳(ドンキーコング・ラッシュ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
敵に近づき、一瞬の内に連続でパンチとキックを浴びせた後に吹っ飛ばしてノックアウトするランサーの奥義。
ランサーが強敵に勝利した際、敵を瞬く間にタコ殴りにしてから空の彼方へ自慢のパワーで吹っ飛ばしたという逸話からくる宝具。
この宝具を発動した際、数秒の間のみランサー以外の時の流れが止まったように遅くなり、対象に対して一方的に連続で攻撃を叩きこむことができる。
その間は防御行動を行うことができず、ランサーの威力の高いパンチやキックを連続で受け続けることになる。最後には空高くに吹っ飛ばされ、戦闘から強制的に離脱させられる。
このような特性から、敵を捕獲したり殺害するには不向き。

『大猩々余裕の挑発(アピーリング・ゴリラ)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大捕捉:??
「バウゥ」と鳴いて少々オーバーなジェスチャーと共に敵を挑発する。
挑発を受けた相手は抵抗判定を行い、失敗するとターゲット指定をランサーから変更できなくなる。
抵抗判定は本人の性格と煽り耐性の高さによって成功率が変動する。

……実際は単に苛ついているだけであり、本来なら宝具と呼ぶのもおこがましいただの挑発である。
にもかかわらずこれが宝具に昇華されているのは、この挑発がかの世界において見ていて非常にムカつくことであまりにも有名だからである。
かの世界におけるドンキーコングは強いイメージの吹き込まれたフィギュアに過ぎずランサー本人とは別人だが、
かの世界のドンキーコングの挑発に関する逸話が独り歩きしてランサー本人の宝具に昇華されて逆輸入されてしまった。

【weapon】
己の肉体。

【人物背景】
任天堂が製作した『ドンキーコング』シリーズに登場するゴリラのキャラクター。
ドンキーコングとしては2代目で、初代ドンキーコングの孫。
キングクルール率いるバナナ泥棒団クレムリンなどの強敵を相手に、ジャングルのヒーローとして冒険を繰り広げた。
地面に両手を打ち付ける「ハンドスラップ」という技で小規模な地震を起こせる程の力を持ち、
その一方でジャンプ力、素早さもまずまずで、ヒーローとして申し分ない能力を持つキャラクター。

ちなみに、ランサーの他にアーチャー、ライダー、キャスタークラスの適正も持っており、パンチ系宝具の代わりに以下のような特徴を持つ。
アーチャーの場合は武器にココナッツ・キャノンが、宝具に『クリスタル・ココナッツ』が追加される。
ライダーの場合はアニマルフレンドを召喚する宝具にロケットバレルやたるジェットが追加され、飛行が可能になる。
キャスターの場合は宝具に『タルコンガ』が追加され、芸能面での逸話を持つ宝具を目にした場合、低確率で真名を看破するスキルを得る。

【サーヴァントとしての願い】
バナナを食べれるから海パン刑事に従う

【捕捉】
ドンキーの台詞や口調は、アニメ『ドンキーコング』のキャラに準拠しています。


464 : 海パン刑事&ランサー ◆ZjW0Ah9nuU :2016/03/11(金) 19:40:30 KBzI52l20
【マスター】
海パン刑事@こちら葛飾区亀有公園前発出所(アニメ)

【マスターとしての願い】
この聖杯戦争とやらを仕組んだ黒幕を探し出し、全参加者を解放する

【weapon】
・拳銃
本人は徒手空拳での戦闘を得意としており、あまり銃は使わない。

・何でも入る海パン
四次元ポケットのごとく中には名刺、携帯電話、ラーメン、エネルギー補給用のバナナなど様々なものが入っている。

【能力・技能】
・卓越した格闘能力
自分の局部を相手の顔部分に当てて相手を押し倒す「ゴールデン・クラッシュ」や、無防備状態で飛び蹴りを食らわす「海パンキック」という必殺技を持つ。
また、身体には汚野家に伝わる秘伝のオイルが塗られており、身体を掴むことができず、その香りには苛立つ者の心を鎮める鎮静効果がある。

・全裸になること
海パンを脱いで全裸になる。それは女性の前であっても変わらない。
これで無防備であることを証明し、相手が怯んで隙を見せたところを強襲するという戦法を取っている。

【人物背景】
特殊刑事課会員番号1番。階級は警部補。本名は汚野たけし 。
通称が示すとおり、常に赤のネクタイと黒無地の海パン一丁で行動する。この格好でないと落ち着かないらしい。
検挙率100%を誇るエリート刑事であり、海パンを脱いで無防備な姿になり、犯人の隙をついて逮捕する。
本人曰く「わたしは隠し事が大嫌いな性分だ」とのことで全裸になることは恥ずかしくない。
几帳面なところがあり、食事の時間は厳守している。保護した女性の前では曲がったネクタイを直していた。
そんな彼だが、「ネクタイを取られると途端に恥ずかしがる」、「自分よりも相手の局部の方が大きいと泣いて逃げ出してしまう」という2つの弱点がある。

【方針】
聖杯戦争を打破する。
他の参加者がいたら協力したい。
たとえこの殺し合いに乗っていても裸の心で話し合えば分かり合えるはず。


465 : ◆ZjW0Ah9nuU :2016/03/11(金) 19:40:50 KBzI52l20
以上で投下終了します


466 : ◆74DEJH7lX6 :2016/03/11(金) 23:26:21 TTAsGMro0
投下します


467 : missing ◆74DEJH7lX6 :2016/03/11(金) 23:28:46 TTAsGMro0

――いこう、
―――いこう、
―――むこうへ、いこう――――



誰そ彼時。
二人の少女は寄り添うように並んで帰路についていた。
東京をしてかなり寂しい路地を歩いていたが、少女たちの顔に不安の色は無い。
通り慣れた道であったし、少女の家は向い同士だ。
一人で寂しい道を帰る心配はない。

「ねーねー■■ちゃん、これ知ってる?」
「……何これ?」
「今、三日前、見つけたんだけどさ、ネットで有名な神様の都市伝説らしいよ?」

髪のながい少女が、スマートフォンの画面を髪の短い少女に見せる。
そこには、とあるSNSとそこに添付された一枚の画像が映っていた。

「都市伝説って、この一億人総マスコミの時代に」

呆れた声を挙げる少女。
そう、SNSの普及により、より“神”或いは“怪異”の存在はテレビの普及した頃よりもさらに零落したと言っていい。
リアルタイムで提供される情報。情報の共有化。
それらの技術の進歩は“異なる者”の存在をこの東京から放逐した。

「まぁまぁ、で、どう?■■ちゃんには何か見える?」

そんな少女の冷ややかな声にも気にする様子はなく、髪の長い少女は少し興奮した様子でスマートフォンの画面を押し付ける。

「……どうって…綺麗な女の子が見える、かな」


468 : missing ◆74DEJH7lX6 :2016/03/11(金) 23:30:19 TTAsGMro0

「嘘!■■ちゃんにも見えるんだー。見えない人もかなりいるらしいけど…
この画像に女の子が映ってるのが見えたらね、それを拡散しないといけないらしいんだ。さもないと…」
「さもないと?」
「“神隠し”に遭うらしいよ」
「……あほくさ」

再び放たれた、呆れるような声にもー!と髪の長い少女は憤りの声をあげるが、短い髪の少女は取り合わない。
だが、険悪な雰囲気は一切なく、むしろ何処か愉快で、

「そんな事言ってると、ホラ、後ろに……」

髪の長い少女はにこやかに髪の短い少女の背後を指さした。

髪の短い少女はふん、と鼻を鳴らし、相変わらずの態度だったがそろそろ乗らないのもノリが悪いかと思い、素直に振り向くことにした。
ヘソを曲げられては敵わないし……ついでに、何か見えたといって逆に驚かすのも悪くない。

そんな事を考えながら髪の長い少女から視線を外す。
何もない寂しい街道だった。
見ても特に可笑しな所は何処にも無いし、何の感慨も沸かない。
まして何かがいるなんてことは一切なかった。
だが、そこに悪戯心を反映させる。


「あっ…!そこの道の角に何かいたよ■■■……………え?」


469 : missing ◆74DEJH7lX6 :2016/03/11(金) 23:30:46 TTAsGMro0



……
…………
髪の長い少女の姿が何処にも無かった。
先ほどまで、並んで歩いていたのに、細い電灯以外何もない街道で、ふざけて身を隠す場所など何処にも無いはずなのに。
キョロキョロと辺りを見回すが、影も形もなく、冷や汗がじっとりと出てきた。

「ちょ、ちょっと……■■!」

気味が悪かった。喉が粘つき、貼りつく。
孤独感。
不安感。

自分の他に、人っ子一人、そこにはいない。
ただ、街灯の光がぽつん、ぽつんと無限回廊のような闇の道で自分を照らしていた。
何も聞こえない。近くにいるはずの少女の足音も、空気の音も。
しかし、香りは感じた。
枯草に、少し鉄錆びが混ざったような香りが。

沈黙。
静寂。
……。
………。
…………くすくすくす。

「!?」

闇が、少女に微笑んだ。
居なくなった少女ではない。

「だ、誰なの!いや、何なの、何なのよぉ……!」


答えはない。
闇はただそこにいる。ただ、そこで詠う。

――――いこう、
“向こう”へいこう、
 虚無の都へ、
 母なる闇へ、
 そこは永久、
 そこは常闇、
むこうへ、いこう――――


470 : missing ◆74DEJH7lX6 :2016/03/11(金) 23:31:22 TTAsGMro0


短い髪の少女は理屈ではなく直感で理解した。
あの長い髪の少女、■■■はきっと、この“物語”の一部となったのだ。

そう、これは、居なくなった少女が語っていた物だ。
これは、先ほど自分が一笑に附していた物だ。
これは、
これは、
――――――“神隠し“だ―――!


完全に巻き添えを喰い、身じろぎ一つできずに固まる少女の腕を何かが掴む。
“何か”は闇から生まれ、自分の形すら覚えられなくなった忌むべき畸形であり、哀れな肉塊だった。
そこから、一本の白い腕が生え、それが自分の腕をつかんでいた。
それに気づいた瞬間少女は耐え切れず悲鳴を上げる。 


……目の前に、目隠しが降りてくる。
視界が、闇に堕ちる。

その時――時ここに至った今、奇妙ではあるが少女は悟った。
自分はこの“奇譚”の傍観者であるのか、それとも―――、


……“奇譚“に、新たな文章が刻まれた。
二人の少女が忽然と姿を消した。
ただ、それだけの事だった。




471 : missing ◆74DEJH7lX6 :2016/03/11(金) 23:32:08 TTAsGMro0

深夜、桜の観光名所として広く認知されている目黒川の、桜並木の端の方に一組の男女がいた。
男は白。見た物を凍りつかせるような笑みを浮かべて、杖を持っている。
女は臙脂。瞳を閉じ、朗々と詩を綴る。
その詩が終わりに差し掛かったところで、男が、死神が少女に語りかける。

「マスター…」

びくり、と少女が震える。
そして、いやいやと、子供が駄々を捏ねるように首を横に振った。

「いや…駄目……」

彼女にとって、初めてかもしれない自分を認識して、自分に“飲み込まれない”存在。
しかして彼女は明確な拒絶を表す。
少女の精神の善良さを鑑みれば無理も無い事だろう。
だがしかし、死神は、そんな事、知ったことではないと少女の細い手首を掴む。

「…嘘を付いても…駄目だ。ここに来たと言う事は…お前は聖杯を…欲してるんだ」
「いや…だめ……それだけは…」


キャスターのサーヴァント、ヨマの中で、神隠しの少女への殺意が、昂ぶる。
―――殺すか、いや、まだ駄目だ。
今、殺してしまっては、これからの殺し合いを楽しめず、自分は消える。
宝具さえ発動できれば、魔力を気にしないで済むが、その肝心の宝具の発動には忌々しい事にマスターの魔力バックアップが必要だ。
なので聖杯戦争の事をもう少し教えて、令呪の事は伝えず、隠れさせておけばいい。
都合がいい事にこのマスターはそれだけは得意だ。

その間に自分は死神の名のもとに殺して殺して殺して回る。
そして、聖杯に辿りついた暁にはこのマスターも殺す。これは確定事項だ。
天地がひっくり返ったとしてもこれだけは覆らない。
―――生きていさえいれば光だと、自分と同じ女神の三十指の男は言った。
男の事は殺したいと思っていたが、これだけは真理だとヨマも認識していた。
そして、男の言っていた死こそ闇――これは死を経験し、サーヴァントとして世界に召し上げられた今、存外大した物ではないと知った。

だが、自分のマスターの“世界”は何だ?
月の光すら届かぬ。無限の黄昏。
あんな物、あってはならないのだ―――死神の世界は明るくなければならないのだから。
故に、この少女だけは必ず殺す。
その時を想像しながら壊れた笑みを浮かべて、男は神隠しの少女の白磁の肌から手を放した。





472 : missing ◆74DEJH7lX6 :2016/03/11(金) 23:32:25 TTAsGMro0

……神隠しの少女はこの魔都、東京に来るべきではなかった。
本来ならば、来れるはずも無かった。
何故この東京に彼女が至れたのか。


彼女が生まれついた“異存在“ではなく、元は人間だったためか。
技術の進歩の象徴が彼女の奇譚を呼び寄せたためか。
それとも彼女の永遠の孤独と言う虚無が聖杯への呼び水となったのか。
どれも今は推測の域を出ない。

しかしやはり彼女はここに来るべきではなかったのだ。
彼女の永遠の孤独と言う虚無を埋められるのは、聖杯でも、ましてや光の死神でもなく、魔王陛下その人だったのだから。

だが、奇譚の序章は既に綴られてしまった。
もう、抹消することはできない。



今ここに、確かに―――灯も、猫の目も、“魔王陛下“も存在しない東京で神隠しの物語は幕を上げたのだ。


473 : missing ◆74DEJH7lX6 :2016/03/11(金) 23:33:07 TTAsGMro0


【クラス】
キャスター

【真名】
夜馬@マテリアル・パズル
【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:C 魔力:B 幸運D 宝具A+

アデルパ使用時
筋力:B 耐久:B 敏捷B 魔力A+ 幸運E

ムーンアデルパ使用所ひ
筋力A+ 耐久A+ 敏捷A+ 魔力EX 幸運E-

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】

陣地作成:E
自身に有利な陣地を構築するするためのスキル
ほとんど機能していないが、彼は生前世界の明るさを知るまで城を求め続けたという逸話から、城に当たる建築物に対してのみ補正が掛る。

道具作成:E
魔術的な道具を作成する技能。
彼は死神であり、作れるものは光と、死だけである。

【固有スキル】

精神汚染:A
精神が錯乱しているため、他の精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。
本来ならば同程度の精神汚染がない人物とは意思疎通が成立しないが、彼のマスターは人ではない怪異のため、意思の疎通は何とか可能である。

戦闘続行:A+
霊核を破壊された後でも最大五ターンは戦闘を可能にする。
彼は半身を?がれた後も魂の矢となり自らの敵を追い詰め続けた。

視覚操作:D
彼の光の魔法を応用した技術の象徴。
光の屈折率を弄ることで相手の視覚を操作する。

【宝具】

『死神に光あれ(アデルパ光刺態)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:自身
持っている杖に光の魔力を一点に集め、吸収する事によって実体を持った光を操り、自身のパラメーターすら引き上げるマテリアル・パズル。
かの宝具が発動している間は例え宝具であっても拳などの物理攻撃は通じず、ダメージも直ぐに回復する。
光を魔力に変換して発動するため燃費も良いが、逆に光の弱まる日陰では前述の不死性は消え、物理攻撃も通るようになり、マスターが魔力供給をしなければ変身も解けてしまう。
当然夜には発動不可能。

『明るき世界(ムーンアデルパ 月下光刺態)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:自身
前述の宝具の穴を埋める宝具。
太陽の光と比べてなお強力な月の光の魔力を吸収し、自在に操る。
不完全なアデルパ光刺態とは違い、この宝具の効果は糸一晩中続く。
パラメーターもより強化され、月の光を浴びている間は無制限の魔力供給が成されるため不死性も完全なものとなる。
加えてこの姿の時は月の引力すら操れるため、まさに一国を破壊できる戦闘能力を誇る。
しかし、回復魔術をかけられると、自身の再生能力がそちらに上書きされてしまい、逆に不死性は喪われてしまう。
そして当然発動時には月が出ていて、マスターからの魔力バックアップを受けていなければこの宝具は発動不可能である。

【weapon】
大ぶりの杖。

【人物紹介】
女神の三十指最強の五人、五本指のうちの一人。
ある意味とても純粋で自分に正直で、真っすぐな男。
そんな透き通った心の持ち主だが―――それ故に、男は誰よりも悪となった。

【サーヴァントとしての願い】
マスター含め全員殺す。


474 : missing ◆74DEJH7lX6 :2016/03/11(金) 23:33:25 TTAsGMro0

【マスター】
あやめ@missing

【マスターとしての願い】
ひとになりたい。

【能力・技能】
隠し神としての能力。
彼女はこの東京に至る過程で大きく神格を歪められ、弱体化しているもののその力は強力である。
気配遮断のスキルと同じ効果の能力を持ち、同じく異界の存在であるサーヴァントですら注意しなければ捕捉するのは手間。
当然マスターやNPCでは彼女を見つけるのは不可能に近いが一度認識してしまえば、この効果は抹消される。
加えて気配察知などの索敵系のスキルを有するサーヴァントなら捕捉は容易。
そして、もう一つの能力、彼女は自信を認識した存在を望む望まないに関わらず異界へと引きずりこむ。
同じ異界の存在であるサーヴァントにこの能力は通用しないが、飲み込まれたNPCやマスターはすべからく精神と肉体に変調をきたし、消滅するかできそこないに変わる。
この能力にマスターが対抗するには、あやめの存在をとにかく他の人間に伝え、楔を作ることで能力の効果を遅らせる事である。
ただし、彼女をもし殺してしまえば周囲が異界へと変わり、無差別に対象を異界へと一定時間引きずりこみ続けることになるだろう。

【人物紹介】
かつて山の神の慰撫のために捧げられた少女。
人として死した後、その身は異界へと流れつき、異界へ現世の者を引きずり込む隠し神としての力を望まぬ形で手に入れた。
それ故精神などは生前の非常に気弱で善良な少女でありながら、絶対且つ永遠の孤独を定められている。

【方針】
聖杯は欲しいが、現世の人を殺めたくはない。


475 : ◆74DEJH7lX6 :2016/03/11(金) 23:33:55 TTAsGMro0
投下終了です


476 : ◆TA71t/cXVo :2016/03/11(金) 23:59:41 WOaxSjBE0
お疲れ様です
自分もこれより投下させていただきます


477 : 間桐臓硯&キャスター ◆TA71t/cXVo :2016/03/12(土) 00:00:39 VquAaY3U0
【二日目】


「ふぅむ……あのサーヴァントめ、予想以上に暴れ回りよったのう」


東京都は江東区、国博物館。
時は、朝日が昇り始めるよりも少し前。
その館長室において、館長―――その役割を与えられた人物―――は深くため息をついていた。
事態が、彼の想像していた以上の状況を迎えているが故に。
成功といえば成功であり、失敗といえば失敗……メリットもデメリットも双方抱えてしまった、そういう状況であった。


「ククク……まあ物は考えようだぜ、マスター?
 この状況も、最悪ってほどじゃない……なら、開き直っちまった方が楽だ」


その傍らに立つは、邪悪な笑みを浮かべた白髪の少年。
十代半ばから後半程度の外見だが、その身から発せられているオーラはあまりにも年不相応に邪悪だ。
いや……そもそも年齢云々以前の問題として、彼が放つ邪気は人間の出せるそれではないレベルに合った。
禍々しくて凶悪且つ苛烈……相対すれば、如何に邪悪なものかがはっきりと感じ取れるだろう。
そんな少年こそが、この館長に宛てがわれたサーヴァント―――キャスターである。


「実際、あんたの策は間違っちゃいねぇんだ。
 リスクの高さは確かに馬鹿にならねぇが、見返りも大きいんだからよ」


キャスターのクラスにおいて定石とされるは、陣地作成スキルを用いての籠城戦にある。
陣地は時が経てば経つほど強固になり、完璧なものになれば例え対魔術スキルを持つサーヴァントとて突破は容易ではなくなる。
故にこの主従も、召喚直後にはそのセオリー通りに動こうとすぐさま方針を定めた。

しかし……それに当たり、彼等はすぐに大きな問題にぶち当たった。
それは陣地を作る場所だ。
マスターに与えられた役割が博物館の館長である以上、日中の殆どはそこで過ごす事になる。
また夜間にも、絶えず窃盗防止に警備員が回っている。
よって、博物館を陣地とするのは自然な流れだったのだが……
下調べとして施設内を見て回っている最中に、彼等はある恐るべき存在に気がついてしまった。
なんてことない展示品の中に一つ、異様なものが混ざっていたのだ。


―――――3m立方の黒い変成岩。


その一面にだけ小さな扉が付けられており、その周囲には多量の錠前が円を描くように取り付けられていた。
一見すればただの前衛芸術でしかないそれは、彼等から見て余りにもおぞましい代物であった。
二人はその岩からとてつもない神秘性を、凄まじき邪悪な力を感じ取れたのだ。
そして、更にキャスターはその扉の内に潜むモノ―――サーヴァントの存在も察していた。
内部には、恐るべき力を秘めた怪物と呼べるモノが封じられていると感じ取ったのである。

そう……よりにもよって彼等は、バーサーカーの宝具にして根源―――『SCP-076-1』が展示されている博物館に、その身を置かれたのだ。


478 : 間桐臓硯&キャスター ◆TA71t/cXVo :2016/03/12(土) 00:01:34 VquAaY3U0

当然ながら、二人はこれを如何にすべきかと頭を悩ませた。
すぐに思い立ったのは、博物館の外に運び出し放逐するという手であった。
安全を考えればそれが一番いい方法なのは言うまでもない。
しかし、もしも内部に潜むサーヴァントがそれに気づいたとしたら、確実にその牙は自分達に向けられる。
それ以前に、これを動かすこと事態がそもそも危険なのではないかという可能性もあった。
これだけの魔力を秘めている、厳重な封印処置を施された道具だ。
迂闊に動かして封印が解かれることになろうものならば、どんな事になるかわかったもんじゃない。

よって、彼等はその逆―――この岩を敢えてこのまま置き、活用しようと考えたのだ。
内部に潜むサーヴァントを野放しにし、挙句側に置くというのはかなり危険だが、その分見返りもある。
そのまま、陣地の防衛力としてこのサーヴァントを利用できるのだ。
同時に、その存在感が強い程に陣地を隠すカモフラージュとしても使える。
そして何より……この岩に対しての防御という意味でも、この博物館を陣地とする事は間違っていない。
館長としての役割を演じなければならない以上、常にこの危険物が側にあるのだ。
もしもの時に防御策がなければ、あっという間に終わる……博物館の陣地化は、そういう意味でも必須だった。
獅子身中の虫を敢えてゆく、ハイリスクハイリターンの戦法だ。
かくして、二人は予定通りに籠城を選んだわけだが……


「うむ、分かっておる。
 ただ……思った以上の化け物が出てきたものと、そう思っただけじゃよ」


その夜、彼等は出てきたサーヴァントが予想以上に危険な相手であった事を知った。
切っ掛けは閉館間際、キャスターが博物館内に強力な魔力の反応を察知したことにあった。
何の前触れもなく、いきなり『岩』から発せられていた魔力が膨れ上がったのだ。
すぐさま彼等は使い魔を飛ばし、現場の状況を確認したところ……そこでは、惨劇が起きていた。
警備に当たっていたスタッフ二名が、見るも無残な姿で骸を晒していた。
そしてその中央に、一人……全身に刺青を施した長身の男が、憤怒の表情で佇んでいたのだ。
彼等は即座に理解した……この刺青の男こそが、岩の中から現れた怪物であると。
幸運にも―――或いは、わかっていながらも敢えて見逃されたのか―――怪物は、使い魔に気づくことなく博物館の外へと出て行った。
博物館の内部に隠されたキャスター達が潜む本陣にも、彼は足を踏み入れなかったのだ。
いざとなればキャスターは自身の宝具でこの怪物を迎撃する気でいたが、しかし怪物の強さを考えれば自身も確実に傷を負っていただろう。
そういう意味では、この展開はありがたいのだが……


「あのサーヴァントのマスターは特定できたか、キャスター?」
「断言はできねぇが、怪しい奴はいたぜ。
 閉館間際に、あの岩の前で騒いでいた外国人観光客がいた……監視カメラに憑依させといたパラサイト・マインドで確認済みだ。
 タイミングからしてこいつがマスターの可能性が高いんだが、すぐに外へ出ちまったからな……身元の確認は出来てない」
「ふむ……そいつがマスターであるならば、アレの制御すら出来ぬ未熟者と言うことか。
 ならば今は、敢えて泳がすのも手かもしれぬのう」


479 : 間桐臓硯&キャスター ◆TA71t/cXVo :2016/03/12(土) 00:02:07 VquAaY3U0

翌日になり、新たな問題が浮上した。
脱走を果たしたサーヴァント―――恐らくはバーサーカー―――が、街中で大量虐殺を行ったのだ。
警察やマスコミはこぞってその話を取り扱っており、注目の的になっている。
この博物館にも、後ほど警察関係者が事情聴取にやってくる予定になっている……つまり。


「あのバーサーカーらしきサーヴァントのおかげで、他の主従もここに集まるじゃろう。
 情報を得られる大きなチャンスには違いあるまいが、果たして気付かれるかどうか……そこが問題じゃな」


この博物館は、バーサーカーの凶行を知った主従が大勢集まる事になった。
『岩』の存在を怪しみやって来る者が現れることは想定してはいたが、思っていた以上に展開が早い。
バーサーカーが予想を超えて暴れまわってくれたせいで、早くにも彼等は他の参加者と接触させられる可能性が出てきたのだ。
そうなると、自分達主従の存在に気づく者が現れる事もありうる。
出来る限り手筈が整うまでは、仮初の人間達と同じように振舞いたいものだが……


「博物館自体は、事件を名目に今日一杯は閉館にしておいた。
 警察からもそういう旨の連絡があったのでのう……明日以降からは、現場区域への立ち入りを禁止して再開する。
 全く人が来ないというのも、お前の宝具の性質上問題じゃ」


表向きの人払いとして、博物館は今日一日閉館にしてある。
警察関係者や勤務している者達を除けば、来客はこれでないだろう。
とは言えいつまでもそうしている訳にもいかず、明日以降からは現場保存に問題がない区域のみを開放する形で開館はする予定だ。
経営上の問題……などということでは全くなく、キャスターの能力を活かすためだ。
彼の力を最大限に発揮・強化させるには、生贄が必要なのだ……その為の人を集める必要がどうしてもある。
その為にも、人が自然と集まる人気の博物館というスポットを閉館させ続けるわけにはいかなかった。
表向きには経営上の問題と言うことで……そして裏では、徐々に徐々に人の命を奪い亡霊へと変換するために。
現に、あのバーサーカーの凶行のおかげで見事に隠れているが……既に数名ほどキャスターの手にかかり、この図書館への来客者が還らぬ者と化している。


「マスター、場合によっちゃ宝具を使わせてもらうぜ……幸いな事に、あのサーヴァントのおかげで十分すぎるぐらいにパワーが増しているからな。
 多数のサーヴァントが相手になったとしても、まあ問題ないぐらいだ……」
「必要とあれば構わん。
 じゃが、出来る限り姿は隠せ……精霊超獣を使うならば、本体であるお前は隠れておくことじゃ」


無論、その過程で戦闘が起こることも考慮に入れている。
これは本当に偶然だったが……彼の宝具『精霊超獣』は、あのバーサーカーのおかげで強化をされているのだ。
彼が警備員の殺害を皮切りに行ったこの江東区を中心とした虐殺行為は、多くの怨霊・亡霊を生み出した。
無念のままに命を奪われた嘆きの魂が、この地区に満たされたのだ。
そして……キャスターは宝具『千年輪』の効力で、亡霊を精霊超獣の新たな力として吸収させることができる。
バーサーカーの殺戮で生み出された魂を全て、キャスターは己が宝具の強化の為に取り込んでいるのだ。
おかげで、精霊超獣の力は当初より大幅に強化されている。
複数のサーヴァントを相手でも互角に戦えるだけの自信が、今やキャスターにはあったのだ。
更に、もしここで一体でもサーヴァントを倒すことに成功したならば、なお精霊超獣は力を増す。
倒した相手の能力を奪い強化するという性質があるが故に。


480 : 間桐臓硯&キャスター ◆TA71t/cXVo :2016/03/12(土) 00:02:22 VquAaY3U0

「マスター、あんたも『本体』をどっかに移しときな。
 来客の相手をするんなら、安全策を打つべきだぜ」
「カカ……言われるまでもないわい」


そして。
マスター―――間桐臓硯も、既に一つの策を打っていた。
彼は魔術により、己が肉体を無数の蟲へと置き換えることで数百年を生き延びてきた存在である。
例えその身体は欠損したとしても、彼本体の魂を収めた核となる蟲を破壊されない限りは何度でも再生可能だ。
よって、その本体を肉体から切り離しておけば、安全に事を運ぶことができる。
一応再生には他者の血肉を吸収する必要があるが、そこはキャスターの宝具の強化と同じだ。
来客の多いこの博物館を利用すればいくらでも手に入れることは容易だろう。


「さあ……楽しいゲームの幕開けだぜ……!」



他に魂を移し替える事で現代まで生きながらえてきた邪悪な怪物二人。

彼等は今、この聖杯戦争においてその目的を果たすべく動き出した。

決して制御できぬ狂戦士を陣地に置くという大博打を抱えたまま……敢えて、その凶暴さを利用するという形で。


それが果たして、如何なる地獄をこの地に生み出すか……


481 : 間桐臓硯&キャスター ◆TA71t/cXVo :2016/03/12(土) 00:02:36 VquAaY3U0
【クラス】
 キャスター

【真名】
 バクラ@遊☆戯☆王

【属性】
 混沌・悪

【ステータス】
筋力:E 耐久:D 敏捷:E 魔力:A 幸運:B 宝具:EX

【クラススキル】
陣地作成:B
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 キャスターは『闇のゲーム』を執り行う舞台として、自らの記憶を模した異空間『闇のRPG』を作成することが出来る。

道具作成:B+
 魔力を帯びた器具を作成可能。
 キャスターは人の『魂』を人形やカードへと移し替える事で、擬似的な生命体を生み出す力を持つ。
 
気配遮断:D
 サーヴァントとしての気配を絶つ。
 完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
 バクラは生前盗賊王として君臨していた逸話からアサシンとしての適性があり、
 二重召喚スキルを持つ為に、このスキルを低ランクながらも所有している。

【保有スキル】
二重召喚:B
 ダブルサモン。
 二つのクラス別スキルを保有することができる、極めて希少なスキル。
 バクラはこのスキルにより、キャスターとアサシンの特性を併せ持つ。

心眼(偽) :B
 直感・第六感による危険回避。
 虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。
 視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。
 キャスターは生前、何度も窮地に陥っているにも関わらずその危機を予見し策で乗り切っている。

エンチャント:A
 他者や他者の持つ大切な物品に、強力な機能を付与する。
 基本的にはマスターを戦わせるための強化能力。
 キャスターは『ゲーム』と称することの出来る道具ならば全て、宝具相当の神秘性を付与する事ができる。
 例えばデュエルモンスターズのカードにスキル効果を付与すれば、
 カードに描かれたモンスターや効果を現実のものとして出現させる事すらも可能になる。

神性:A
 神霊適性を持つかどうか。
 キャスターは邪神ゾーク・ネクロファデスの分身であるため、極めて高い適性を持っている。


482 : 間桐臓硯&キャスター ◆TA71t/cXVo :2016/03/12(土) 00:03:23 VquAaY3U0
【宝具】
『千年輪(ミレニアム・リング)』
 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:100
 キャスターの象徴にして、その魂が封じ込められた彼そのものとも言える宝具。
 その中には強力な邪神の力が秘められており、Aランク相当の宝具でなければ破壊は不可能である。
 現在より三千年前の古代エジプトにおいて生み出された七つの『千年アイテム』の一つであり、五本の円錐飾りがついた金色のリングの中央に三角形のオブジェクトが組み込まれている。
 通称は『千年リング』であり、大抵の者にはこちらの名で呼ばれることが多い。 
 キャスターはこのリングの所有者として『闇のゲーム』と呼ばれる罪人を裁く力を手にしているが、本来とは違う邪悪に歪んだ目的で使用されている。
 千年アイテムは自らの意思で所持者を選ぶとされており、選ばれなかった者は体の内側から焼かれ、炎を吐き出しながら絶命してしまうとされている。
 その成り立ちは、古代エジプトの王アクナムカノンが隣国の軍隊に攻め込まれ絶望の危機に瀕した国を救うため、弟の大神官アクナディンに命じ作らせたアイテム。
 しかしこの時、アクナディンは千年アイテムの力を高めるべく秘密裏にクル・エルナ村の住民を冥府への生贄として捧げ、黄金と一緒に溶かして製作したとされている。
 その為に強い闇の力を持ち、人間の心に宿る魔物や精霊を呼び出し操るための力として使われた。
 そして同時に、千年アイテムは冥界の扉を開くための鍵ともされており、全ての千年アイテムをクル・エルナ村に眠る石版に嵌めた時には封印された闇の力を手にする事が出来る。
 特に千年輪はその中でも強力な力を秘めており、死して尚現世を彷徨う『怨念』を吸収して己が力に変える力がある他、
 最大の特徴として『闇のゲーム』により他者の肉体から魂を奪い、人形やカードといった無機物へと魂を移し変える『パラサイト・マインド』がある。
 このパラサイト・マインドはキャスター自身を対象とすることも出来、自らの魂の一部分を分割して他者の持ち物へと憑依させる事が可能。
 そうする事で他者の情報を探りあてたり、サイコロに憑依させれば思うがままの出目を出せるなど扱い方の幅は広い。
 もしも死したサーヴァントの魂が千年輪によって吸収された場合、その魂は聖杯へと還らず千年輪の中に留まる形になる。

『精霊超獣(ディアバウンド)』
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~100 最大捕捉:100
 キャスターの魂に宿る精霊獣であり、言わば心象風景を魔獣の形として具現化させた宝具。
 存在そのものが固有結界にして宝具であり、彼の心とも言える。
 翼の生えた人型の上半身に、大蛇の形を成した下半身が合わさった異形の魔獣。
 その力はキャスターの持つ憎悪に比例してより強大となる為、千年輪によって吸収した亡霊の憎悪を与える事で更なる進化を望める。
 精霊超獣には様々な特殊能力が備わっており、戦闘においてはそれを用いて優位に戦況を運ぶ。
 まず一つ目の能力が自由に壁や石版の中を透過できる『壁抜け』であり、霊体化とは異なり実態を持ったままに物質を通過することが出来る。
 また同様に姿を隠蔽させる二つ目の能力として、暗闇の中において己が身を周囲の闇と同化させ姿を隠す『闇迷彩』の能力がある。
 これは気配遮断スキルとは異なり気配までは完全に消し去ることが出来ず、また光のある場所では当然ながら使用することが出来ない。
 そしてこの宝具の最大の特徴が『倒した相手の能力を奪い己がものにする』というもの。
 精霊超獣がサーヴァントの撃破に成功して現界不可能なまでに致命的な傷を負わせた時、そのサーヴァントが保有するスキル或いは宝具を精霊超獣のものにする事が出来る。
 ただし奪った力の中には、精霊長獣及びキャスターとの相性の問題で使用できないケースも想定しえる。
 その為、精霊長獣は敵の主従を倒す事でサーヴァントの力を得られ、また千年輪で死した相手の怨念を吸収し力を増せるという図式が成り立っており、
 戦い勝利を重ねれば重ねるほどにその力は強大に膨れ上がってゆく。
 精霊超獣はキャスターの魂と繋がっている為、受けたダメージは全てキャスターへとフィードバックされる。
 ただし破壊されたとしても、キャスターの魔力があれば再召喚が可能である。

『螺旋波動(デス・スパイラル)』
 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~200 最大捕捉:1000
 精霊超獣が持つ膨大な魔力を、螺旋に渦巻く波動に変換して精霊超獣の周囲に巻き起こす。
 これにより敵の放つ攻撃や能力を弾き飛ばす防御を行うことが可能。
 そして、収束して敵へと放つ事で極めて高い威力を秘めた飛び道具とする事が出来る。


483 : 間桐臓硯&キャスター ◆TA71t/cXVo :2016/03/12(土) 00:04:09 VquAaY3U0
【weapon】
『記憶戦争・闇のRPG』
 キャスターが自らの封じられた古代エジプトの世界を再現して作り上げる陣地。
 博物館に人知れず増設された隠し部屋の中に広がる、一種の異空間である。
 この世界は『闇のゲーム』の舞台である為にキャスターが持つ闇の力は強く活性化され、常人には精神的負荷がかかる。
 そして最大の特徴として、この世界ではサーヴァントが負ったダメージがマスターへとフィードバックされる仕組みになっている。
 キャスターが最大限に自身の力を発揮できる様整えるには、大凡で三日程の作成日時を要する。
 並大抵ではない敵が踏み込んできた場合には、マスター共々この世界で敵を待ち受けることになる。

【人物背景】
 千年アイテムを巡る戦いの中で暗躍していたとされる、『バクラ』の名を持つ男。
 そのモデルとされる人物は複数名存在しており、諸説ある。
 古代エジプトの時代においては、王家によって滅ぼされた盗賊村クル・エルナの唯一の生き残りであり『盗賊王』を自称する存在として語られている。
 クル・エルナを滅ぼした王家に対して強い憎悪を持ち、王家を滅ぼし世界を盗む為に邪悪な精霊獣ディアバウンドを使役して暴虐の限りを尽くしていた。
 その最中で、千年輪の前所有者である神官マハードの命を奪い千年輪を己のものとし、よりその力を高めていったのだが、
 クル・エルナの奥深くにある遺跡内で、結束した若き王と神官団に打ち倒される末路を迎えている。
 しかし、この際に彼は千年輪へと己の魂を移して魂のみの存在となり生き延びていたという説もある。
 その裏付けとして、三千年後の現代においてて千年リングの所有者となった少年『獏良了』の存在がある。
 彼が千年リングを所有する事になったのは全くの偶然だったのだが、それに伴い本来の彼とはかけ離れた邪悪な闇の人格『バクラ』が出現したのである。
 その残酷且つ苛烈な性格は盗賊王バクラの伝承に酷似しており、『バクラ』とは彼の魂が宿った存在ではないかとされていた。
 しかしその後年、彼は現世に蘇ったファラオ『アテム』との闇のゲームの最中、
 『三千年前に、大邪神ゾーク・ネクロファデスは千年輪の中に魂の一部を封印した』と告げた為、
 その正体は盗賊王バクラではなく、ゾーク・ネクロファデスの分身体ではないかという新たな説が出ている。 
 事実、アテムと初対面した際に行った闇のゲームではこのゾーク・ネクロファデスを模したとされるキャラクター『闇の支配者ゾーク』を作成しており、
 千年輪に宿る『バクラ』とゾークとには深い繋がりが見受けられる。
 クル・エルナの遺跡にゾーク・ネクロファデスが封印されていた事から、今際にゾークと盗賊王バクラとの魂が混じり合い、
 結果として今の『バクラ』が生まれたのではないかという伝承も存在しているが、今現在において『バクラ』の明確な正体は明かされていない。
 この東京の聖杯戦争では、これらの逸話を統合して成り立った英霊像としてのバクラが召還されており、厳密にはキャスターはバクラ本人ではない。

【サーヴァントとしての願い】
 聖杯の莫大な魔力を使い、現世へと完全な大邪神ゾーク・ネクロファデスとして蘇る。
 

【マスター】
 間桐臓硯@Fate/stay night

【マスターとしての願い】
 聖杯の力を持って第三魔法を成し、不老不死となる。
 しかし、何のために不老不死を得ろうとしていたかは既に忘却している。

【能力・技能】
 全ての魔力を導入した蟲の使役。
 相手を喰らう凶暴な攻撃用の肉食蟲『翅刃虫』や、術者との視覚共有を行い偵察等に用いる『視蟲』、
 他者に植え付けその肉を食らう事で魔術回路の補強を促す『刻印蟲』など、その種類は多岐に渡る。
 そして自らの肉体をも多数の蟲に置き換える事で、数百年に渡り延命を図っている。
 その体は欠損したとしても、他者の血肉を吸収することで何度でも再生が可能である。
 完全に臓硯を滅するには、本体の魂を収めた核となる蟲を破壊されるか、霊体へ直接ダメージを与えるしかない。
 その為にサーヴァントですら彼を完全に殺しきるのは容易ではないが、再構築の際にはそれなりの負荷はかかる。
 また、蟲の性質上から日光が苦手であり、直射を受けることを出来る限り避けている。


484 : 間桐臓硯&キャスター ◆TA71t/cXVo :2016/03/12(土) 00:05:02 VquAaY3U0
【人物背景】
 本名は『マキリ・ゾォルケン』というロシア系出身の魔術師。
 日本に根を下ろして以降、現在の名へと改名を行っている。
 魔道の名門であるマキリ家の当主の座に、500年前より君臨し続けている。
 冬木における聖杯戦争の『始まりの御三家』の一人であり、サーヴァントシステム及び令呪の開発を行った優れた魔術師。
 そして、魔術の力で肉体を人のものから蟲に置き換える事で数百年も延命を重ね、既に人外と成り果て生き続けてきた文字通りの「怪物」である。
 性格は狡猾さと残忍さを兼ね揃えた外道そのものであり、他者の悲哀や辛苦に愉悦を見出す破綻者。
 長い年月を生きてきただけあり、極めて高い洞察力を持ち合わせている。
 しかし、元々からこのような性格であったわけではなく、かつては自らの代でマキリが魔術師としての限界を迎えたことに抗い続け、
 その果てに第三魔法『魂の物質化』により人類という種の進化による、この世全ての悪の廃絶という『理想』を願い続けていた。
 やがてはその理想が自分の手では叶えられないと察するも、それでも蟲による延命を行い生き続けた。
 理想がいかに困難であろうとも、諦めない姿勢が後を継ぐものを育て、後世に残すものだと信じたが為に。
 だが、長い年月を経るに連れて肉体は苦痛に歪みその魂は摩耗し、遂には理想さえも忘却してしまった。
 今では、何故そこまでして不老不死を求めていたかも覚えておらず、手段と目的は完全に入れ替わり、ただの外道へと堕ちてしまった。
 第五次聖杯戦争を自らの願いを叶える本命と定めていたが、第四次聖杯戦争においては出奔した息子の雁夜の取引に応じ、
 彼を即席のマスターに仕立て上げて聖杯戦争に参加させた上で自身は一歩引いた位置から様子見をしていた。
 雁夜は結果として聖杯戦争に敗退したものの、この時に砕かれた聖杯の欠片を入手しており、
 次の第五次聖杯戦争の為にあらゆる手を尽くし暗躍をしている。
 
【方針】
 江東区の国際博物館を陣地に定めて籠城。
 キャスターが陣地を完全なものにするまでは極力アクションを起こすのは避ける。
 その隠れ蓑として、博物館内に置かれている『岩(SCP-076-1)』を最大限に活用する。
 内部から出現したバーサーカーと思わしきサーヴァントに関しては、牙を剥いてこようものなら相手をするが、
 そうでない限りは手を出すつもりはなく、寧ろその虐殺を利用して江東区中心の怨霊を数多く千年輪で吸収するつもりでいる。
 また、キャスターの力を強化すべく博物館の来館者を秘密裏に蟲を使役して殺害し、その亡霊を千年輪へ吸収させている。
 死骸に関しては蟲で骨の一片も残さず食い尽くし、自身の血肉とする。
 そしてキャスターが陣地を完成させ且つ十分すぎる魔力を蓄えられた時、
 最終宝具『冥界を統べる大邪神』を発動させて勝利を盤石なものとする。
 普段は安全策として核を成す本体の蟲は肉体から切り離し、『記憶の世界・闇のRPG』内に潜ませている。


485 : 間桐臓硯&キャスター ◆TA71t/cXVo :2016/03/12(土) 00:05:46 VquAaY3U0
すみません、>>483>>484の間に抜けがありましたので追加いたします

『冥界を統べる大邪神(ゾーク・ネクロファデス)』
 ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1~1000 最大捕捉:1000
 キャスターの持つ力の根源にして、その正体。
 冥界の深くに封じられている大邪神ゾーク・ネクロファデスを現世へと降臨させる。
 この宝具が発動すると同時にキャスターはゾーク・ネクロファデスと一体化を果たし、以降は心眼(偽)と神性を除く全スキルが効果しなくなり、また他の宝具はすべて使用不可能となる。
 そして二度と元の肉体へと戻ることは出来ない。
 その巨大な肉体から繰り出される攻撃は壮絶極まりなく、単純な攻撃でさえ他のサーヴァントにとっては致命的なものにもなりかねない威力を秘めている。
 本来ならば聖杯戦争に邪神であるゾーク・ネクロファデスを呼び出すことはシステム上不可能なのだが、
 この宝具で呼び出される邪神は本来のそれよりも能力値がダウンされた擬似的な神であり、本物の神ではない。
 キャスターは生前の最終目的として、ゾーク・ネクロファデスを完全な形で復活させ現世へと降り立つ事を目標としていた。
 その最終段階として闇のゲーム内でのみゾークを部分的に復活させた逸話があり、これはそれに基づいた宝具となっている為である。
 ただし余りに強大すぎる上に発動には相当量の魔力を消費せねばならず、間桐臓硯の全魔力を使用した上で令呪の補助を用いたとしても不可能である。
 もしも無事使用するならば千年輪へと莫大な数の亡霊を蓄え魔力に変換する必要があるが、サーヴァント数騎分を吸収してもまだ足りない程である。
 しかし、その逸話から『記憶戦争・闇のRPG』内においてのみ発動に必要な魔力消費が軽減される。
 もっとも、軽減された上でも尚異常な魔力を消費する事実に変わりはない。
 キャスターはこの聖杯戦争においても完全な力を持つ邪神としての己を取り戻すべく、可能ならばこの宝具の発動を考えている。


486 : ◆TA71t/cXVo :2016/03/12(土) 00:06:32 VquAaY3U0
以上で投下終了です


487 : ◆H/ZCUjbtAU :2016/03/12(土) 05:16:37 0j/ovOmQ0
投下します


488 : 道明寺歌鈴&セイバー ◆H/ZCUjbtAU :2016/03/12(土) 05:18:08 0j/ovOmQ0

眠らない街、東京。
かつてそう揶揄されたこの賑やかな大都市も江東区での連続殺人をはじめとした数々の不可解な事件が発生したことで、
行きかう人々は口々に不安を吐き出し、街中の空気は重々しくなりつつあった。

しかし、渋谷区の一角に存在するとあるホール。
そこで行われているアイドルのライブはいつも通りの賑わいを見せている。
普段より警備員が増員されている事を除けば以前と何一つ変わらないその光景はある種異様であった。


——————夢を乗せて 時空超えて とどけ!アイドル——————


その理由は至極単純、ステージのメインで歌う一人の少女が人気だからである。
その少女は数いる新人アイドルの中でも特に勢いに乗って抜きんでた存在感を持ち、
その純朴かつ快活な人柄に違わぬ優しい歌声は東京に漂いつつある陰鬱な空気を吹き飛ばすと専らの評判であった。
少々……いや、かなりドジをしがちな性分ではあったものの、その欠点ですらファンからは愛嬌のうちとして好意的に受け止められている。

壇上で観客の歓声を一身に受ける少女————その名を道明寺歌鈴という。


489 : 道明寺歌鈴&セイバー ◆H/ZCUjbtAU :2016/03/12(土) 05:20:50 0j/ovOmQ0
◇ ◆ ◇ ◆

「はぁ~……」

一日のイベントを全て終えて、プロダクション内の女子寮へ戻った歌鈴は自分でも驚くぐらい深いため息をついていた。
先日の事件のせいで今回のライブは中止になると思っていたのに、まさかそのまま決行されるとは……。
100人以上を手に掛けた大量殺人なんて現代の日本では到底起こり得ない犯罪があったのにもかかわらず、だ。
確かに人々は不安を口にするようになったが、変化はそれぐらいでみな東京から避難しようともしない。
まるで遠い国で起こった事件をテレビで知ったような反応なのだ。

異常な規模の大量殺人もそうだが、この東京が歌鈴の知るそれと全く別物になっていることはもはや明白だった。
やっぱり“彼女”が教えてくれたことは本当だったんだ――そんなことを考えていた瞬間。

『見事な舞台だったというのに顔色が優れないな、歌鈴』
「ふえぇっ!?セ、セイバーひゃん!?」

唐突に頭の中で少女の声が響いたために歌鈴は思わず情けない声を上げてしまう――上げた声を噛むというオマケつきで。
二重の失敗に顔を赤らめながらも彼女は慌てて口を押さえ辺りを忙しなく見回した。

―――そう、歌鈴もまた聖杯戦争のためにこの東京に招かれたマスターの一人なのだ。
誰かに今の声を聞かれたかもと焦っている歌鈴の様子を見て取ったか、再び彼女のサーヴァントであるセイバーが念話で語りかけてきた。

『そんなに慌てなくても大丈夫だ。今この辺りに人がいないことは確認済みだからな。
 まぁ、聖杯戦争に確実は存在しないがね』
『こ、怖いこと言わないでくださいっ!……見てたんですか?私の舞台』
『ああ、君が歌っている最中に実体化してな。“聞き耳”を立てて客を一人ずつ調べていたんだ。あの人数を調べるのは少々骨が折れたがね。
―――心配しなくていい。あの中に“参加者”はいなかったよ』
『よ、よかったぁ……』

歌鈴はその言葉を聞いて今度は安堵のため息をもらした。
正直な話、ライブの最中に襲われたらどうしようと気が気でなかったのだ。
いざという時はセイバーが全力で守ると誓ってくれたものの、怖いものは怖い。
彼女のことを信じていないわけではないが歌鈴としては出来る限り他の主従に会いたくなかった。


490 : 道明寺歌鈴&セイバー ◆H/ZCUjbtAU :2016/03/12(土) 05:23:19 0j/ovOmQ0

『それで……やっぱり今後もアイドルの仕事を続けたほうがいいんですか?
 何だか私たちのことバレちゃいそうで怖いんですけど……』
『……すまない、こればかりは君に協力してもらわねば私は持続した実体化すら困難だ。
 人々から信仰を集めるのは他人任せにするべきじゃないんだが、サーヴァントとなった身で迂闊に人前に出るわけにはいかないしな。
 幸いパスを通して君に向けられる信仰を私自身のものとして魔力に変換することは可能らしい』
『あ、あはは……何ていうかセイバーさんって本当に神様みたいですね』

最初に会った時にセイバーは人気を信仰という形で自らの魔力に変えられると教えてくれた。
未だに歌鈴には信じがたいことだが、彼女を召喚してから歌鈴の体を襲っていた奇妙な疲れが今は嘘のように無くなっている。
きっとこれが先のライブで人気を集めた結果なのだろう……。

神が現世に降りてこられるように巫女が神事で神楽を奉納するということは、実家が神社なだけあって歌鈴も知っているが、
まさかこういった形で自分が実践することになるとは夢にも思っていなかった。
セイバー自身は、自分は神そのものというわけではないと語っていたがなんとなく歌鈴には神と神に仕えている巫女のような関係に思えた。
―――もっとも正確には歌鈴が主でセイバーの方が従者なのだが。

『それに君は私を召喚する前から既にこの地で有名になっているらしいからな。
 今から仕事を急に止めればこちらを嗅ぎまわる者をかえって増やしかねないし、
やはり今の活動を続けつつ協力者を私の宝具で探すことを勧めよう。
ただあくまで私は君の従者。君の判断に従うつもりだ』
『そうですか……うん、決めました!私ここでアイドルを続けてみます。
本当はこんな形で人気になんてなりたくなかったけど私の歌を楽しみにしてる人たちの期待にも応えてあげたいですし。
…何だかファンの皆さんを利用しているみたいで申し訳なくもあるんですけどね……』
『相分かった。案ずるな、歌鈴。私のスキルは彼らに何一つ悪影響を与えないさ。
それに君が言う通り確かに私は現界のために彼らを利用してるといえる。
だが君自身は皆を笑顔にしたい一心でその仕事に誇りをもって臨んでいるんだろう?
 なら歌鈴、君が後ろめたく思う必要はないんじゃないか』
『はぅぅ、セイバーさんにそう言ってもらえると気が楽になります』

とりあえず今後の方針は一通り決まった。
未だに“あの日”以来夢の中にいるんじゃないかと思うこともある歌鈴だったがこれは紛れもない現実。
全くどこぞの巫女にもその優しさを見習わせてあげたいよ、と苦笑するセイバーをよそに
歌鈴は全ての始まりとなった日を思い出していた―――



◇ ◆ ◇ ◆


「お疲れ、歌鈴。今日のイベントも大盛況だったな」
「えへへ、プロデューサーさんが見守ってくれたら何時だって大吉級の大成功ですっ!」

今日のライブも大成功だった。
新人アイドルとして事務所に所属したばかりの歌鈴だったが、すぐにその才が周囲に認知され今や期待のアイドル扱いである。
歌鈴自身にもよく分からないが、まるでもっと前からアイドルとして活動していたように体が仕事の内容を覚えているのだ。
そう遠くないうちにもっと大きな舞台を任されるかもしれないと思うと今後の活動がなおさら楽しみであった。
そこで上機嫌になった歌鈴は思い切ってプロデューサーにある誘いをかけてみた。

「あ、あのっ、プロデューサーさん!もしよかったら今度また一緒に奈良に行きませんか?
 まだまだ紹介していない名所がたくさんありますし、楽しいですよきっと!」

歌鈴はファンの喜ぶ姿は大好きだったが、それ以上に自分のプロデューサーの笑顔を見るのが好きだった。
それで恩返しも兼ねて自分の出身でもある奈良へ誘うことにしたのだ。
以前一緒に行った時も実家の神社を紹介したり様々な名所を観光したりして共に楽しんだものである。
これじゃまるでデートの誘いみたいだなぁ、と思いつつもプロデューサーの返事を待つ歌鈴であったが……。

「……?おいおい歌鈴、突然何言ってるんだ。お前と一緒に奈良に行ったことなんてないぞ?」

―――プロデューサーの返答はあまりにも予想外で素っ気のないものであった。

「えっ……」
「ははぁ、大方昔行った誰かと勘違いしたんだろう?
まぁ、ここならそういうドジもいいけど舞台の上ではしっかりしてくれよな」

さらに思いがけぬ言葉をかけられた途端、目の前の男性が歌鈴の記憶にない人物に変化したように思えたのだ。
立ち去っていくプロデューサー“だった”男の後ろ姿を彼女は呆けた顔で見送るしかなかった―――


491 : 道明寺歌鈴&セイバー ◆H/ZCUjbtAU :2016/03/12(土) 05:25:36 0j/ovOmQ0
◇ ◆ ◇ ◆

(ち、違う……。あの人じゃない!)

あれから急いで自室に戻った歌鈴は一人恐怖で震えていた。
自分にとって大切な恩師であるプロデューサーが全くの別人にすり替わっていたことに気づいてしまったのだ。
いや、それだけじゃない。この事務所の外観や内装だって自分が知るそれとは別だ。
ドッキリのような企画も疑ったが人の記憶まで忘れさせるなんてそれこそ人間に出来ることではない。

あの会話以来、頭にかかっていたもやが取り払われるように次々と歌鈴の“本当”の記憶が浮かんできたのだ。
なぜ、記憶を失っていたはずの歌鈴が元の世界でのプロデューサーとの思い出だけは失わなかったのかは定かではない。
曲がりなりにも巫女という形で神秘に携わった経験があるためか、
あるいはその思い出が外部からの操作程度で忘れることができないくらい脳裏に焼き付いていたためか―――

ともかく、記憶を取り戻したが全く状況が分からない。
夢の中にいるんじゃないかと思い切り頬をつねってみたが痛いだけだ。
一体これからどうすれば……そんな時だった。

「痛ッ!……な、何コレ?」

混乱する歌鈴の目を覚ますように右手の甲に痛みが走ったのだ。
そちらに目を向けてみれば手に奇妙な形の痣が――否、彼女にとって見覚えのある形だ。
そう、確かこの形は陰陽紋―――

「初めまして我が主(マスター)。セイバーのサーヴァント、只今馳せ参じました」
「ひゃあぁぁぁっ!?」

唐突に声をかけられて驚きのあまり尻餅をついてしまった。
痛みを堪えつつ声がした方向へ顔を向けてみれば、奇抜な容姿の少女が一人歌鈴に向かって跪いていた。
時代がかった服装、龍が描かれた豪奢なマント、そして何より目を引く獣の耳のごとく逆立った髪。
アイドルという職業柄、派手な衣装を着る機会が多い歌鈴だがさすがにここまで変わった格好になった経験はない。…多分。
一瞬同じ寮に通う子かと思ったが全く見覚えがないし、そもそも鍵をかけたドアがあるのに物音一つ立てずに部屋に入れるわけがない。
一体何者なのか――歌鈴には一つだけ思い当たるフシがあった。

(ひょ、ひょっとして……幽霊!?)

もし目の前の少女が幽霊だとしたら数々の怪現象も幽霊による祟りということで説明がつく!
混乱した頭でとんでもない結論を勝手に出した歌鈴は自分でも効果があるのかよく分からない祈りを捧げ始めた。

「はわわっ、幽霊さんどうかお怒りをお静めください~!」

突然の奇行にしばらく目を丸くしていた少女だったが、歌鈴が聖杯戦争について何の知識も持たないことを悟り再び彼女へ声をかけた。

「…確かに霊というのは間違っていませんが……。主よ、とりあえず落ち着いてください。
 一から『聖杯戦争』について説明しましょう」


492 : 道明寺歌鈴&セイバー ◆H/ZCUjbtAU :2016/03/12(土) 05:27:36 0j/ovOmQ0
◇ ◆ ◇ ◆

「―――以上が『聖杯戦争』についての概要です。ご理解いただけたでしょうか」
「……………」

正直な話、セイバーと名乗る少女から語られた内容は理解の範疇を超えていた。
彼女の説明が悪かったわけではない。むしろ説明そのものは非常に分かりやすかった。
歌鈴が疑問に思ったことを予め知っていたかのように先んじて解説してくれたのだから。
だが、『聖杯戦争』とはまるでアニメやゲームに出てくるような代物で易々と信じられるようなものではない。

「信じられないのも無理はないでしょう。ですがこれは決して夢ではありません。
 その証拠に貴方にいくつか私の持つ力をお見せしました。
 おそらく、貴方以外のマスターもサーヴァントの召喚に成功し聖杯取得のために各々動き出しているはずです」
「そ、そんな事いわれても……」

しかし、半信半疑だった歌鈴に今の状況を理解させるためにセイバーは自らの能力の一端を披露したのだ。
ワイヤーも無しにふわりと宙に浮かび上がり部屋の中を右へ左へと自在に飛び回る姿には
否が応にもサーヴァントという超常存在の実在を信じざるを得なかった。

しかし、本当に聖杯が存在するとしても歌鈴に人を殺してまで叶えたい願いなど存在しない。
そもそも、彼女の大切なプロデューサーと一緒にアイドルとして一歩ずつ成長していくことが何よりの望みだったのだ。
現在進行形で願いが叶っていたのに、これでは願いを叶えるどころかその逆だ。
だからこそこの場ではっきりと自分の意見をセイバーに伝えなくてはならない。
昔の歌鈴ならこの状況で何も言えなかったかも知れないが、今なら言わなければならないことをちゃんと伝えられる。

「い、いくら願いを叶えられる物だって人を殺してまで手に入れたいとは思いませんっ!
 今すぐにでもここから帰りたいくらいです。……そんな聖杯なんて私いらないですよっ!!」

勢いのままに聖杯の入手を否定した歌鈴は恐る恐るセイバーの反応を窺う。
願いを叶える過程で人を殺すことは絶対に許容できないが、それはあくまで歌鈴にとっての話。
中にはいかなる犠牲を払ってでも聖杯を手にして願いを叶えたい人がいるかもしれない。
そして、目の前の少女がそうでない保証はどこにもないのだ。
息苦しい静寂が部屋を包む中、ややあってセイバーが口を開いた。

「分かりました。貴方が聖杯を望まないのならば私もその決断に従いましょう」
「……えっ、あのっ、いいんですか?」

……あまりにも呆気なく自分の考えに同意してもらえたため、逆に拍子抜けしてしまった。
いや、確かに歌鈴にとっては願ったり叶ったりの展開なのだが、そもそもサーヴァントも願いを持っていると語ったのはセイバーの方ではないか。
そんな歌鈴の疑問に先んじてセイバーは答えた。

「確かに私にも望みはありますが、貴方が言った通り聖杯で叶えたいとは思いません。
……実の所詳しい事は後で話しますが、私には貴方が聖杯を望まないことが先に分かっていました。
 ただ、貴方の口から直接そのことを聞きたかっただけなのです」
「そ、それじゃあ私がここから帰ることに協力してくれるんですか!?」
「勿論です。まして貴方はかつて私が愛し治めたこの国の子孫。
その上で私にとって縁深いかの地の出身となれば、尚更協力を拒む理由はありません」


493 : 道明寺歌鈴&セイバー ◆H/ZCUjbtAU :2016/03/12(土) 05:30:37 0j/ovOmQ0

その言葉にパッと歌鈴の表情が明るくなった。
どこか懐かしむように歌鈴に微笑むセイバーからは嘘偽りは感じられない。
歌鈴一人なら途方に暮れていた所だが、目の前の少女と二人でなら安心できる。
根拠があるわけではないがセイバーからは不思議な頼もしさが感じられるのだ
―――そう、歌鈴をアイドルまで導いてくれたプロデューサーのように。

「あのっ、それじゃ私のことマスターじゃなくて歌鈴って呼んでくれませんか?
私ちょっと堅苦しいのが苦手でして……もっと気軽に話しましょうっ!」
「ははっ、分かったよ。ではこれからよろしく頼むぞ歌鈴」

歌鈴の頼みに快く応え、セイバーは今までより大分砕けた口調で歌鈴に話しかけてきた。
ハキハキとしたその様子から、ひょっとしたらこの喋り方が彼女の素の口調なのかもしれない。
どちらにせよ今まで導かれる側にいた歌鈴にとっては従者のような態度をとられるよりも
フランクに話しかけてもらえた方が親しみやすい。
そんなセイバーに報いるために歌鈴も挨拶を返そうと大きく息を吸い込んだ。
元気な挨拶はアイドルにとっての基本であり最も大切なことでもある。

「こ、こちらこそよろしくお願いしまふっ!……あぁっ」

……緊張していたためか思い切り噛んでしまった。
どうしてこう自分は肝心な所で締まらないのだろう。見ればセイバーも笑いを堪えているではないか。
羞恥に顔を赤らめつつも慌てて歌鈴は話題を変えた。
色々とありすぎて今の今まで一つ大事なことを聞き忘れていたのだ。

「そ、そういえば私まだセイバーさんの本名を聞いてなかったです。
奈良に縁がある方なんですよね?」

最初の説明によればサーヴァントは基本的に神話や歴史に名を遺した人たちが呼び出されるらしい。
セイバーの口振りからすると彼女は日本の、それも奈良に縁がある人物なのは間違いない。
だが、地元の歴史は人並み以上には知っているはずの歌鈴にもセイバーと名乗る少女の本名は皆目見当がつかなかった。
首を傾げながら考え込んでいる歌鈴を前に、目の前の少女は悪戯っぽい笑みを浮かべて口を開いた。

「ふむ、それでは改めて自己紹介をしよう。私の名は――――」
「…………えぇぇぇぇぇぇっ!?」

自らが召喚したサーヴァント。
その真名と来歴を聞いた歌鈴は、本日二度目の尻餅をつく羽目になるのであった―――



◇ ◆ ◇ ◆



歌鈴が召喚したセイバー、その真名は豊聡耳神子(とよさとみみのみこ)。

——————かつてこの日出づる国で『聖徳太子』と呼ばれた存在である。


494 : 道明寺歌鈴&セイバー ◆H/ZCUjbtAU :2016/03/12(土) 05:32:49 0j/ovOmQ0
【クラス】
セイバー

【真名】
豊聡耳神子@東方Project

【パラメータ】
筋力B 耐久A 敏捷C 魔力B+ 幸運A 宝具A

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
仙人:D+
仙術を操る不老長寿の存在であり、神子は一度死を経て再び現世に蘇る術を使い仙人になった尸解仙にあたる。
錬丹により頑強な肉体を有し魔力を消費することで仙術による飛行や短距離の縮地(転移)の他、
「魔力放出」のように自身の仙力を武器ないし自らの肉体に帯びさせての強化や仙力そのものを様々な形で放出することが可能になる。
尸解仙は仙人の中で最も格が低い存在だが、術の触媒として宝剣を用いたためか神子は他の尸解仙とは一線を画した仙力を誇る。

天職の為政者:B
為政者として国を治める才能を示すスキルで、人々を導く能力が必要であるため同ランクの「カリスマ」も兼ね備える特殊スキル。
神子は神霊という信仰が高まると力を強める種族特性を有するため、このスキルで
自身あるいは自らとパスを繋げているマスターへ向けられる正の祈りや欲(有り体に言えば人気や信仰)を魔力として吸収することが可能であり
さらに東京都全域という規模で欲を集められるようになればBランクの「狂化」相当のステータスアップを獲得できる。
ただし、同様の規模で嫌悪などの負の感情を人々から向けられると魔力を集められないばかりか逆に全ステータスが1ランク下降してしまう。

気配感知:C(B)
宝具の影響で超人的な聴覚を備えており、それで効果範囲内の状況・環境を認識し、近距離ならば同ランクまでの気配遮断を無効化する。
また、宝具の制御に用いている耳あてを外すことで数値が1ランク上昇する。
あくまで聴覚に基づくスキルなので、何らかの理由で失聴してしまった場合にはこのスキルは消失する。

神性:C
神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。
生前は人間であった神子だが数々の偉業により信仰を集め、存在の神格化が行われたため
死後に神霊となった逸話をもつ。

【宝具】
『十人の話を同時に聞くことが出来る程度の能力』
ランク:C 種別:対欲宝具 レンジ:1~20(~40) 最大捕捉:10
数ある聖徳太子の伝説の中でも代表格となる逸話の具現。
読んで字のごとく十人の話を同時に聞いて理解するだけではなく、
人が生まれつき持つといわれる十の欲全てを同時に聴き取り理解することでその者の本質を見抜くことができる。
それによって宝具の対象となった人間の欲する事を読み取って間接的に読心が可能となりその間はAランクの「直感」に等しい効果を得る。
ただし聴覚への妨害は防ぐことができずより強く影響を受けてしまい、失聴した場合この宝具の効果は失われてしまう。
性質上常時発動型の宝具であり、能力の制御に用いている耳あてを外すことで射程と精度が上昇するが魔力消費もまた増加する。

人間同様に十の欲を全て持っているならば人間以外の存在や霊体化したサーヴァントの欲すら聴き取れるが、逆に欲が無いもしくは欠けている者
――より具体的にいえば自我が希薄な者、心を閉ざす術を持った者、そしてCランク以上の「狂化」スキルを持った者などに対しては
正確に心を読み取ることができず、この宝具は意味をなさなくなる(欲が欠けている事自体は把握できる)。

『承詔必謹(みことのりをうけてはかならずつつしめ)』
ランク:A+ 種別:対城宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:500
聖徳王の切り札(ラストワード)たる最終奥義。
神子の全仙力と今までに集めた欲を笏(しゃく)に乗せ、巨大な光剣と化して戦場を両断する。
範囲内におけるBランク以下のスキルまたは宝具による防御と回避を無効化し、
光剣の威力はスキルで集めた欲の量に比例してより上昇していく。
間合い内の全てを捻じ伏せると謳われる強力無比な一撃ではあるが、
全力を用いるがゆえに消費する魔力が非常に多く発動までの隙も大きいため使いどころを見極める必要がある。


495 : 道明寺歌鈴&セイバー ◆H/ZCUjbtAU :2016/03/12(土) 05:35:22 0j/ovOmQ0

【Weapon】
「宝剣」・「笏」
共に仙力を纏わせ強化して振るう武器。また宝具による一撃を放つ際の媒体になる。

「黄金の剣」
仙力そのものを黄金色に輝く剣に変化させたもの。同時に複数生み出せ、飛び道具として射出も可能である。

「耳あて」
和という文字が書かれた耳あて。
聴覚の制御に用いている品であり一部のスキルや宝具の性能を落とす代わりにそれらによる魔力の消費を抑えることができる。

【人物背景】
かの世界における聖徳太子その人。
幼い頃より役人たちの訴えを全て理解し、それぞれに的確な指示を出すことが出来た。
そのため多くの尊敬を集め為政者としても活躍するようになるが、その一方でいずれは死にゆく人間の運命に不満を持つようになる。
そんな中彼女の評判を聞きつけてやってきた霍青娥と名乗る仙人が道教を勧めにやってくる。青娥は仙人になれば不老不死を実現できるというのだ。
心躍らせる神子であったが、道教の理念は国の平定には向かないと判断したため表向きには、
殺生を禁じ厳格な戒律のある仏教を普及させて国を安定させ、その裏で不老不死のために道教の研究を進めた。
しかし、錬丹術に用いる薬剤によって体を蝕まれ死を悟った彼女は尸解仙となって復活する事を決意する。
尸解仙の法は成功し復活するまで眼りにつくが、想定よりも復活が遅れたことと時代が流れたことで
彼女に纏わる伝説が架空のものだと思われるようになったために存在が幻想となった者たちが行きつく場所――幻想郷にて復活を遂げることになる。

公事の際には物腰穏やかかつ礼儀正しい口調で他者と接するが、異変解決など私事で行動する際には威風堂々とした口調と態度をとる。
基本的に地位相応に責任感の強い性格をしているが、時には気さくな一面や為政者らしい強かさを見せることも。

【サーヴァントとしての願い】
マスターである歌鈴の生還。
神子自身にも仙人としてより高位の存在になりたいという願いはあるが、それを聖杯で叶えたいとは思っていない。

【基本戦術、方針、運用法】
セイバーらしく高いステータスを有するが切り札の宝具も含めてあまり燃費の良いサーヴァントではない。
マスターからの魔力供給が見込めないため、スキルを用いて直接魔力を集める必要がある。
そのためにはリスク承知でライブなどのイベントで歌鈴が人気を集める必要があるが、
目立つということは当然マスターであることが露見しやすくなるため、スキルと宝具を活用して常に敵の襲撃に備えなければならない。
ステータス強化を狙う場合は東京全体で名が知られるレベルの人気者にならなければならないのでなおさらである。
また、万が一マスターや自身が多くの人望を失うことになれば酷く弱体化してしまうので他の主従よりも一際人目を気にかける必要がある。
幸い宝具で交渉事には滅法強いので脱出のための協力者を探しやすく他者との同盟も結びやすい。

【補足】
今回はセイバーとして現界したため、仙術による陣地作成や道具作成は不可能であり、
仙力によって放出された弾幕や光線は「対魔力」でダメージが軽減される。



【マスター】
道明寺歌鈴@アイドルマスターシンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
生きて元の世界に帰りたい。

【能力・技能】
アイドルとして歌と踊りが得意。
また、実家が神社であり自身も巫女の経験があるので神道に関する知識がある。

【人物背景】
アイドルマスターシンデレラガールズに登場するアイドルの一人。
実家が神社の巫女アイドルであり、地元で有名になるくらいのドジっ娘。
最初の頃はアイドルである自信がなく、緊張するとよく台詞を噛んでしまっていたが
経験を積んだことでアイドルとしての自覚が芽生え、明朗快活な言動を多くする前向きな性格になった。
しかし、台詞を噛むことは少なくなったがドジっぷりは健在である。

【方針】
アイドルの仕事をこなしつつ神子さんと一緒にこの東京から脱出できる方法を探す。
出来る限り争いは避けたいし、他の人を傷つけたくもない。

【補足】
令呪の位置は右手の甲にあり陰陽太極図を模した形をしている。
そのため、アイドル衣装と私服は令呪が完全に隠れるものを着用中。

聖杯戦争における役割(ロール)は渋谷区内にある大手芸能プロダクション所属の新人アイドルであり、その女子寮に住んでいる。


496 : ◆H/ZCUjbtAU :2016/03/12(土) 05:36:49 0j/ovOmQ0
以上で投下終了です


497 : 零崎人識&アサシン ◆QQqPi/qOuA :2016/03/12(土) 09:14:21 rRA.kEaE0
投下します


498 : 零崎人識&アサシン ◆QQqPi/qOuA :2016/03/12(土) 09:14:37 rRA.kEaE0
零崎人識は殺人鬼だ。
人を殺す鬼と書いて殺人鬼。
忌み嫌われる殺人鬼の集団、零崎一賊の鬼子、純潔にして生粋の殺人鬼。
息をするように人を殺し、息をする為に人を殺す殺人鬼。

彼に何故、人を殺すのかと聞けば「殺人鬼が人を殺さないのはおかしいだろう」と答えるだろう。あるいは、理由など存在しないと囁くかもしれない。
では、どうして殺人鬼をやっているのかと疑問を投げかければ「じゃあ、お前はどうしてこんな質問をするんだ」と答えるだろう。あるいは、人を殺すからだと笑いながら言うかもしれない。
殺人とは何かと問われれば、事も無げに彼は「なんでもない」と口にするだろう。あるいは、あるのかもしれないと呟くかもしれない。

一般的な基準による善悪について彼はよく理解している。現代社会において殺人は悪とされることも知っている。その結果、世間からどんな目で見られることも知っている。
殺人を犯す行うことは多大な不利益であること、無意味で無価値なことも知っている。
彼は人が悲しむということを、喜ぶということを、怒るということ、苦しむということ、怖れるということを知っている。
でも、彼は殺人を止めない。

零崎人識は何の動機もなく容赦もなく打算もなく価値もなく脈絡もなく目的もなく遠慮もなく利益もなく理由もなく、人を殺す。


▽△


【一日目】


「ーー俺たちには理由が与えられてないわけか。戦争に参加する理由、命を懸けてでも戦わなければならない理由が。そりゃ、人間だし願い事の一つや二つあるだろうが、生命活動っていう高すぎるリスク背負ってまで叶えたい願いなんてそうそうない。数億円程度の宝くじの一等当選とか、老いてくる体が嫌で永遠の若さとか、子供の頃に戻って人生をやり直したいとか、どれも所詮はあり得るわけないと夢見てるだけの妄想の類だ。その妄想を現実にするのがこの戦争なわけだがーーサーヴァントであるアンタに理由がないのは可笑しな話だよな」
「その回答はこっちが聞きたいくらいだ」
「例えば、空を飛びたいとか、意中の相手に振り向いてもらいたいとか。大なり小なり無意識に心の中で思ってることでも、それが願いとされているのかも知れねーな。其れとも基準は何だっていいのかーーま、知ったところで優位に立てるわけでも勝てるというわけでもないしどうでもいいことか」
「オレよりオマエのほうがよっぽどだろう」
「余程、理由がないってか。確かに、俺は人生を後悔をしたことは一度もない。俺の過去を本に出すとしたら4冊以上は確実でそれはそれは内容が濃く汗と青春と血みどろに溢れているが、ああしとけばこうはならなかったこうしとけばああはならなかったーーそんな後悔はしたことはない。後ろを振り返らずに前だけを向けと言うが、俺は後ろを向いてるのか前を向いてるのかさえあやふやだ。あやふやで、救いようがなく、どうしようもない」
「救いようがない、ね。こうして顔を合わすのも話すのも初めてだけどーーオマエがどうしようもなく終わっていることだけは分かる」

そう言って、対面に座る人識を残して両儀式は立ち上がり部屋を後にした。
建物から一歩外に出ると少し肌寒い外気が体を突き抜けていき、吐く息は白い。
面倒だと放っておいたせいか肩口にまで伸びてきた髪と、浅黄色の着物、その上に羽織った赤い革製のジャンパーが風に揺れた。


499 : 零崎人識&アサシン ◆QQqPi/qOuA :2016/03/12(土) 09:15:42 rRA.kEaE0
奈落に堕ちてしまいそうなほど深い夜の街は、怪物の口に踏み入るような不気味さがある。
石畳を歩いているとすれ違う誰かに視線を交わすことなく、コンビニの前たむろしている誰かは騒がしい声を撒き散らし、ライトも付けず車を飛ばしている誰かは事故に遭うこともなく、隠すこともない足音で後ろについて来る誰かと会話に華を咲かすこともない。
ーー平常、不変、日常。
街灯の下、光を求めて何匹もの蛾が集まっている。精一杯、小さな羽根を羽ばたかせて自分では真っ直ぐ進んでいるつもりだろうが、くるくると下手なダンスを踊っているように光の中を泳ぎ続けている。
頭上を見れば満点の星、そして月。一見、綻びなど見えない丸い月は少しだけ欠けていた。
視界を埋め尽くす星々に、特別なにか感慨を抱くことはない。
思うことはこんな異界に嵌めた奴を殺すことだけ。

「こんな夜遅く、女一人外に飛び出すなんてちょっと危機感足りてないんじゃねーか。近頃は物騒だっていうのに、殺人鬼にでも出会ったらどうするつもりなんだよ」
「そういうことは鏡を見てから言え」

気だるそうに式は立ち止まり振り返ると、夜の闇の中から現れた人識が退屈そうに両手を頭の後ろに置いて呆れたように此方を見ていた。
線は折れそうなほど細い。顔立ちは可愛らしいといえる容姿だがその他の要素が最悪のーー攻撃的で壊滅的なファッションをしている女のような男。
上半身は黒いタクティカルベスト、両手にハーフィンガーグローブ。タイガーパンツのストライプに、足には物騒な安全靴。右耳に三連ピアス、左耳には携帯電話のストラップが二つ、止めに顔半分が刺青で、少し羽目を外した若者どころではない。
霊だなんだと地に足が付かない連中より、地に足が根付いた目の前の顔面刺青の方がよっぽど不気味で怖いと言える。
尤も、生の実感がない式に、そんな在り来たりな感情は非常に希薄であるのだが。

「どうしてこうなった」

心の底から面倒だと吐き捨てるように式は言った。

「それ、まるで私は被害者で巻き込まれたかのような言葉だな」
「言葉通りだよ『殺人鬼』オレは被害者ではあるが、オマエも被害者かは自分の胸にでも聞け」
「被害者も加害者もそれなりの規模で成って来ているつもりだが、目が覚めたら其処は東京で、放浪者をしていましたってのは初めての経験だ。最悪と言っちゃ最悪の気分だな」
「ああ、全く同意する。ほんとうに最悪だ、気分が悪い」

こういう事態こそトウコの出番だろうに、と式は姿形もない魔術師の名前を口にする。
聖杯、戦争、マスター、サーヴァント、そして願い。夢ならさっさと覚めて欲しいものだと外に出てみたが、変化は訪れず状況は変わらず自分がサーヴァントなどという胡散臭い存在に成り下がっている現実。
だいたい、願いもなく聖杯に縋る戦争に参加するなど滑稽が過ぎるというものだろう。
此処にいることも、この街も、灰色の空も、聖杯戦争とやらも、それを企てた奴も、記憶の混入も、身体の変化も、人識の存在も、何もかもが不快で仕方がない。
此方を覗き込むような、観察するような視線ーー黒色の、底なしに黒い瞳の色。
それが両儀式の衝動を強烈に刺激する。

赤から青に変わった信号機の明かりが、酷く目に痛む。

不満だらけーーというか不満しかないが、動くにせよ動かないにせよ、選択肢は大分限られているようで。


500 : 零崎人識&アサシン ◆QQqPi/qOuA :2016/03/12(土) 09:16:40 rRA.kEaE0
そもそもとして自分に出来ることと言えば殺人だけである。
切って、殺すだけ。
殺人鬼に出来るのはそれ以外にはない。
ーーだから、式がこんなことを聞いたのは興味本位なんてものではなく、殺人という単語と自分を組み合わせて頭に浮かんできた、次の瞬間には消えて忘れてしまう気泡のような言葉の羅列。

「なぁ、人を殺すってどんな気分だ」
「ーーあ?」

と、人識は言って。

「かはは」

と笑った。

「どんな気分か、だと。あー、あーあーあーあーそう、そんなことを聞いてくるのか、ふーんなるほど、なるほどね。人を殺す。一人殺せば殺人で十人殺してもそれは殺人だ。俺は誰に言われても語られても恥ずかしくない生粋で純粋な殺人鬼だが、人を殺してるつもりはない。人を殺してると思っていないのに殺人鬼とは笑っちまうが、実際そうなんだから仕方がない。殺人という行為は一般論で語るととても罪深いとされる。と、 俺はそれを分かってる。身にしみて理解している。しみすぎて刑事から瞬時に逃げ出すほどに理解している。牢屋にぶち込まれるどころか、死罪にもなる重い罪だと理解している。理解はしたが納得は出来ないという言葉があるだろう。俺の場合、理解も納得もしたが、それだけだ。其処から先はなにもないーーだって俺は殺人をしている自覚がないんだから。首元にナイフをブッ刺して肉を突き破る感触を聴きたいわけでも、横に引いて頸動脈を裂きたい感触を味わいたいわけでも、シャワーみたく溢れ出る血をあびたいわけでも唖然とするまでも、死んでいく人間の顔が見たいわけでも、二重人格者でも快楽殺人者でも人の性に絶望したわけでもない。愛してるから殺す。憎悪しているから殺す。涙が出るほど辛いから殺す。あるいは愛してないから殺す。あるいは憎悪していないから殺す。あるいは涙が出るほど辛くないから殺す。だから人殺しはどんな気分かと聞かれたら、快楽でも憤怒でも嫉妬でも悲泣でもない、何でもなく、何でもなく、何でもないことと俺は答えるしかない」

「ーーーーーーーー」

人識のその言葉に。
両儀式は全てを理解した。
零崎人識にとって殺人とは零(ゼロ)なのだと納得がいった。
渦巻いていたモノが氷解していくのを感じた。
あれが好きだこれは嫌いだあいつは嫌な奴だこいつはいい奴だそれはどうでもいい。
善とか悪とか喜びとか悲しみとか辛いとか苦しいとか愛しいとか憧憬とか絶望とか勇気とか後悔とか軽蔑とか快楽とか恨みとか不満とか嫉妬とか絶望とか責任とか空虚とか。
意味がない、意味を持たない。理由がない、理由を持てない、虚しさがない、虚しさも湧かない、殺すは普通、殺さないは異常、お前が異常で、俺は平常。
黒桐幹也でも黒桐鮮花でも蒼崎橙子でも臙条巴でも硯木秋隆でも巫条霧絵でも浅上藤乃でも荒耶宗蓮でも玄霧皐月でも祖父でも両儀要でも両義識でも、今まで出会ってきた者とはタイプが違う、器が違う、中身が違う、人間ではない鬼ーー人間失格。

「……物騒な話」

誰にも聞こえないような声で、式はぼやく。


501 : 零崎人識&アサシン ◆QQqPi/qOuA :2016/03/12(土) 09:17:51 rRA.kEaE0
誰にも聞こえないような声で、式はぼやく。
なるほど、これは予想以上だ。予想外だと思っていたが予想以上に予想以上だ。
こんな頭逝かれてる顔面入れ墨が野放しとはいつ何処で殺人が起こってもおかしくはない。いや、殺人鬼だからもう手遅れなのだが。

「で、一体アンタはなんだ。その眼はなんだ。見られてるだけでなんつーかよこう腹ん中のもん全部晒してる気分が味わえちゃうんだわ。それはまるで死を視られているようなーーっつー素敵な詩を言っちゃうほどでさ。こんな不安定にビリビリときている人識くんは滅多にお眼にかかれないレア物だぜ」
「最初に言っただろ。サーヴァント、アサシン、だそうだ」
「アサシン……暗殺者ってくノ一ぐらいしか思いつかねぇんだけどよ、メラとかファイヤとか撃てんのか」
「知らない。だいたいオレの過去に暗殺者って言葉すら出てこなかったぞ」
「暗殺者でもないのにアサシンねぇ。それじゃ、弓を使わないアーチャーもいるかもしれないのか」
「いたとしたら、そんな異物を呼んだガラクタは鎔鉱炉行きだな」
「欠陥製品」
「うん?」
「wikipediaでよ、欠陥製品ってのは不備のある品、不良品と書かれてるんだけどさ、それを人に当てた場合、欠落している人、欠点のある人と言われるらしいんだが……じゃあガラクタとの違いは何か。使い道のない個として完全に終わったものーー欠落しかないものをガラクタ、欠点のあるものが欠陥製品なんだ。両者の違いは似ているようで根本から異なる。多少壊れていようが確かに其処に有るものと無いものを比べられない、同じ立ち位置にいないーーつまり聖杯ってやつはガラクタではなくて欠陥製品と言ったほうが正しい。もちろん、その機能が正しくあればの話だが」
「どうでもいいよそんなことは。願いの真偽なんてどうでもいい。オレは殺せればいい」
「姿どころか存在も確認出来ない相手をか? まぁ、あんたならーーその眼ならやれそうだとは思うが、真実殺す対象が物理的に離れていちゃどうしようもなく手詰まりだな」
「…………」
「そんな威嚇する猫みたいな顔をするなよ。幸いというべきか不幸というべきか、今は戦中で存在が確認出来る『敵』がいる。ルール通り、其奴らを倒していけば最後に出会えるかもしれねーぜ、ラスボスは最後の最後に現れるって言うだろ。俺はとある最強との約束があって人間は殺せないがーー禁止されたのは『殺人』であって人間じゃないなら殺せる。でも、俺じゃあんたらは殺せない。サーヴァントは奇跡のような存在なんだろう。幽霊みたいなものだ、であるならそれは人間ではなく殺しても『殺人』にはならないーーかはは。さて、あんたはどうする」
「決まっている」

ーー例え、境界の外に有ろうとも逃しはしない。引き摺り下ろして殺すだけだ。

話は終わりだと、式は止めていた足を前に進めた。
後ろに続くのは、殺人鬼が一人。

「それじゃあ、いっちょう気合を入れて、殺して解して並べて揃えて晒しに行くか」


502 : 零崎人識&アサシン ◆QQqPi/qOuA :2016/03/12(土) 09:20:19 rRA.kEaE0
【クラス】アサシン
【真名】両儀式
【属性】中立・中庸
【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:A 魔力:E 幸運:A 宝具:EX

【クラススキル】
気配遮断:D
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい。
ランクが低いのは、本来彼女にアサシンの適正はないためである。
そもそもアサシンの適正にこのスキルが必要であるのだが……。

単独行動:A
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。

【保有スキル】
直死の魔眼:A魔眼と呼称される異能の中でも最上級のもの。異能の中の異能、希少品の中の希少品。無機・有機問わず、"活きている"ものの死の要因を読み取り、干渉可能な現象として視認する。直死の魔眼から視た世界は"死の線"で満ちた終末の風景であり、まっとうな精神構造ではこれと向き合っての日常生活は難しい。式は普段、焦点をズラして物事を俯瞰する事でこの異様な視界と折り合いをつけている。

自己暗示:B
日本刀で戦う場合、通常の肉体を文字通り「造り変えて」、限定的ながらも未来予知などの潜在能力が扱えるようになるため、平常時とは段違いの戦闘力を発揮する。

心眼 (偽):A
直感・第六感による危険回避。虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。

【宝具】
唯識・直死の魔眼(ゆいしきちょくしのまがん)
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1
直死の魔眼を最大限に見開き、対象の"死の線"を切断する攻撃。
何億という寿命、停止状態から蘇生する回復力、何百という命のストックを持っていようが、"その個体における死の概念"を露わにする為、それらの不死身性を無視して致命傷を与える。

死に難い命はあれ、死から逃れられる命はなく。
ーーー終わりは、万物に共通する。

基本的に直死の魔眼と能力は同一で、対象の死の線を切断するだけである。
故に、消費する魔力は存在しない。
以上のことから、ランクはEX (規格外)となっている。

【人物背景】
二年間の昏睡から目覚めた少女。直死の魔眼という力を持つ。
多重人格者で、女性人格の「式」と男性人格の「識」が存在していたが、事故により「識」の人格は消えた。
極度の人間嫌い。対人感情は動物的で、好き嫌いに関係なく、まず一緒にいていい人間と一緒にいたくない人間とに分ける。
そして、一緒にいていい人間なら嫌いだろうと付き合っていくらしい。

空の境界・五章。忘却録音終了後より参戦。

【方針】
主催者がいるなら殺す。
敵が襲って来るなら応戦する。


【マスター】
零崎人識@戯言シリーズ

【マスターとしての願い】
特にはない。

【人物背景】
殺し名序列第三位の殺人鬼集団・零崎一賊の一人。
放浪癖のある殺人鬼。哀川潤との約束で人は殺さない。
『東京都』で与えられた役割は、14~15歳から家を出たっきり当てもなく各地を旅している放浪者 (ニート)。
住居は親切な人に止めてもらい、お金は親切な人に譲ってもらったとか何とか。

クビシメロマンチスト終了後より参戦。

【weapon】
ナイフ。

【方針】
特にはない


503 : 零崎人識&アサシン ◆QQqPi/qOuA :2016/03/12(土) 09:20:39 rRA.kEaE0
投下終了します


504 : ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 13:29:33 Gfyn3j4s0
投下いたします


505 : どうやら私達は地獄のまっただ中らしいです ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 13:30:05 Gfyn3j4s0






   彼奴は愛情だよ、そして未来だよ、力だよ、愛だよ。

   僕らが怒りと屈託の間に立って、空しくそれが、嵐と放心の空を過ぎ去るのを眺めるだけなのだ

                                             ――アルチュール・ランボー、精霊





.


506 : どうやら私達は地獄のまっただ中らしいです ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 13:30:36 Gfyn3j4s0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 子供一人が過ごすには、ちょっと広めの部屋。
私の知らない織り方と、独特な模様が特徴的な四角い絨毯。
フローリングの上に、開きっぱなしで散らばった、私のだらしなさを証明するかのような本の数々。
液晶テレビが当たり前となった世間の流れに逆らうような、四角いブラウン管のテレビ。
百科事典や小説、漫画が収まった、見てくれだけは立派な本棚。電気スタンドだけしか乗っていない勉強机。そのすぐそばに配置されたベッド。
そして、ベランダへと通じる窓。それが、私の世界の全てだった。

 今日も私はやる事がない。
暇な時間は、私と言う人間に何かしらの行動を起こさせる。日がな一日を、眠って過ごす。
十分睡眠を取り、眠くなくなった時には適当に起きて、本を読む。今では、開く事すら面倒くさかった百科事典も、半分近くは読めてしまったほどだ。
本を読んだり、古いゲーム機を動かして時間を潰したら、後はまた寝る。そんな生活を、私は繰り返す。
何度も、何度も、何度も、何度も。ずっと、ずっと、ずっと、ずっと。私が大人になるまで。『こんき』を逃すまで。おばあちゃんになるまで。

 私に親はいたのかな。よく解らない。
優しい父さんと母さんがいたのかも知れない。どっちかが乱暴者だったかもしれないし、どっちも駄目な人間だったのかも。
いや、もしかしたら、犬や猫から、ゼリーとプリンから私は生まれたのかもしれなかった。私の親は、一体誰なのかな

 机に向き合って、白いノートにマーカーペンで落書きをしていた私は、開いたノートとキャップをしめないペンをそのままに、
自分の体臭や何やらが染みついた陰気くさい部屋の中をぐるぐるとまわり始めた。
今日も私は一人だった。一緒に話す子供も、一緒に話す年上の人もいない。私には、誰がいたのかな。よくわからない。

 コンコンと、窓を叩く音。
此処はちょっと値の張るマンションの最上階に近い階層。どんな泥棒だって、リビングからこの部屋に何か入って来れるわけがない。
こんな高い部屋のリビングに何の道具もなしに入って来れる何て、鳥人間でもない限りは出来るはずがない。
だけど、私は驚かない。窓のガラスをノックするそれの存在を、私はしっているから。念のため窓の方に顔を向けると、あぁ。やっぱりそうだった。
最近出来た、私の部屋の居候。勝手に私のところを訪れるなり、『セーハイセンソウ』だの『願いが何でも叶うかも知れない』と大嘘をついていた、無口なネコ人間。

 何処かの童話にでも出てきそうな、おしゃれな羽根つきの黄色いベレー帽と上下の服、そして、薄い紫色のマントを羽織った、白い体毛が特徴的なネコの人間。
これで、細い、フェンシングの選手が持っているような剣を片手に構えていれば、本当に何処かの童話の世界から飛び出して来たような騎士様のようだったろう。

 でも、このネコは騎士失格だ。どんな絵本に、出演したいと自分を売りに行っても、門前払いが関の山だろう。
一目見てわかる、所々が汚れた毛並み。身体から匂う、血と、据えた……なんだろう。栗の花みたいな匂い。
そして何よりも、その目だった。暗い。濁っている。そして――表現するのもうっとするほどの、『憎しみ』がその黒い瞳で暴れていた。
それはまるで、私のようだった。姿形は私と似ても似つかない。なのに、その目だけが、私にそっくりだった。
普通の人だったら追い出しても当たり前のネコだったが、私は何故か、このネコ人間を受け入れる事にした。親近感、って奴なのかな。

 私は、ネコ人間が佇んでいる窓に近付いて行って、施錠を外し、引き戸タイプの窓を開けてやる。
何の礼も言わずに、ネコ人間は部屋の中に入って行き、絨毯を敷いていないフローリングの上で寝転がった。

 何をしてたの。私は訊ねた。


507 : どうやら私達は地獄のまっただ中らしいです ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 13:30:51 Gfyn3j4s0
「しつこくサーヴァントを追い回してた」

 面倒くさそうにネコ人間は言った。サーヴァントとは、彼と私の敵のような物であり、そして、このネコ人間自身の事でもあるらしい。
私は次の質問を投げ掛けて見た。追い回してどうなるの、と。

「実質死んだも同じになる。それで、聖杯に近付く」

 何でも願いが叶うって言う物を求めて、どうするの。

「こんなクソな世界を消してしまいたい」

 特に、何の驚きも私には無かった。
私にはわかる。このネコ人間が、途方もない理由から世界の全てを憎んでいると言う事が。
過去に何があったのか、私にも解らない。説明されても、嘘だ、と思わず口にしてしまいそうな程壮絶な理由であるから、安易に口にしたくないのかも。
別に、それならそれでもいい。私は、このネコ人間に昔何があったのか、特に気にしないのだから。

 そして、このネコ人間の野望も、私は特に何も思わない。その夢を否定しようともしないし、間違ってる何て事も言わない。
だって、私も同じ理由だから。こんな世界、何の価値もないから。滅んでしまえ、消えてしまえ、なくなってしまえ。

 ネコ人間の姿が消えてなくなる。何でも、「れいたいか」と言う奴で、私に負担の掛からない状態らしい。
負担が何を意味するのかはわからないけれど、私が苦しくならないよう配慮はしてくれるらしい。変なの。

 窓を閉め、施錠をちゃんとして、私は机の所に向かって行く。
罫線が設定されたノートには、私にもちょっと意味のわからない落書きで埋め尽くされていた。
口と目から血を流している、輪郭のない顔。泥かうんちをこねて作ったような不気味な頭と両腕。汚い海。空。

 ノートを閉じ、窓から外の風景を眺めてみる。
空の色は、不気味な紫色だった。鳥が一羽、窓を横切った。
視神経の繋がった状態で眼球をぶら下げ、胴体から腸をぞろりと覗かせながら、何ともない様に羽ばたく鳥だった。
大百科の中の鳥は、あんな風だったっけ。私は、よく覚えていなかった。こんなに、物忘れ、激しかったっけ。



.


508 : どうやら私達は地獄のまっただ中らしいです ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 13:31:05 Gfyn3j4s0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 在るサーヴァントのランサーは、非常に困惑していた。
彼はつい二日前、長靴をはいた猫の童話から飛び出して来たような服装をした、猫と人の相の子のようなバーサーカーと一戦を交えていた。
全身から、血の匂いと、腐乱した精液の臭いを漂わせていたあのバーサーカーは、狂戦士のクラスの常として、スペック自体は中々のもので、苦戦した。
狂化していながらも高い練度の魔術を操るその様は、ランサーと彼のマスターを大いに驚かせたが、それでも、何とか退ける事は出来た。
彼らはあのバーサーカーと戦った帰りである。こちらはまだ宝具を開帳していないが、向こうは自身の手を凡そ明かしたと、ランサーは考えている。
次に戦った時は、こうは行かない。そんな決意を胸に、ランサーは、自身のマスターが拠点としている、東京は北区のある住宅街の一軒家に戻り、失った魔力等の回復に努めていたのだが……。

「ゆげげ、ゆぴぴ、ゆぴょょょょよ!!」

 知性も何も感じられないような奇声を上げ、およそ彼の手に持てる程度の重さの家具や小物類を、天井目掛けて放り投げながら、
リビング中を走り回っているのである。ランサーには、信じられなかった。この壮年が、ランサーを召喚した時に堂々たる態度で己に接し、
あのバーサーカーとの戦闘の際には、当意即妙な指示を飛ばし続けていた男であると言う事が。

 予兆が始まったのは、昨日の事だった。
昨日からランサーのマスターはずっと、耳から熱した鉛でも流されるような頭痛を訴えていた。
当初は、あのバーサーカーの影響かとランサーも考えたが、頭痛自体は、ものの一時間程度で回復した。
その後だった。この壮年が、ランサーには見えない何かが自分に見える、と訴え続けていたのは。

 例えば、蛇口を捻ったら人間の血液が出て来たとマスターは主張していたが、ランサーの瞳にはどう見ても血液所か色水ですらない、単なる真水であった。
例えば、部屋に飾っている観葉植物の葉っぱに、血走った瞳といやらしく歪む唇が浮かんでいると主張していたが、ランサーの目には単なる緑葉しか映っていなかった。
例えば、近所を皮膚のない人間が歩いていたりだとか、半分近くまで抉られた人間の頭を生やした植物が歩いていたりだとか、
せむしの男や女、分厚く膨れ上がった皮膚に覆われた直径二mにもなろうかという女がいたりだとか主張していたが、やはりランサーの瞳が映す光景に、異常はなかった。

 恐らくは、酷い幻覚症状に自身のマスターが陥っているのだろうとは、ランサーは思っていた。
精神的な疾患も、薬物を用いたと言う事実も、目の前の壮年にはなかった。となれば、思い当たるフシは、一つ。
あのバーサーカーとの戦いであろう。しかし、あのバーサーカーは、ランサーの奮闘によって、マスターに触れる事すら出来なかった筈。
それなのに、此処まで酷い影響を与える事など、あるのだろうか。……もしや、自身が認知出来なかっただけで、宝具を既に発動していたか?
そんな事を考えながら、発狂、錯乱をし続ける自身のマスターを眺めるランサー。

 無事を確認する言葉を幾度となく投げ掛けた事もあるランサーだが、マスターには彼の言葉が全く届かない。
所か、「顔の半分が赤いゼリーみたいになっている人間」と、このマスターには映っているらしく、そう言う人物であると言う前提で、マスターが話すものだからまるで話にならない。


509 : どうやら私達は地獄のまっただ中らしいです ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 13:31:19 Gfyn3j4s0
 薄情な性格どころか、真っ当な感性を持ったサーヴァントであろうとも。
このような状態になったマスターには見切りをつける事だろうが、このランサーはそんな事は考えなかった。
自分のマスターは確実に、あのバーサーカーの影響で発狂してしまった、と知っている事と、このランサー自身が、義侠心に篤い男だと言う事もある。
元凶を葬れば、絶対にマスターは元の威厳ある姿を取り戻す。――そんな事を考えていた、その時であった。
部屋中を獣の如くに暴れ回っていたマスターが、突如動きを止め始めた。四散した食器の破片が密集した地点に彼は立ち尽くしており、
足裏からジクジクと血液がフローリングの上に滴っていた。

「ど、どうしたんだ。マスター……?」

 それまで躁病を爆発させていたように暴れ狂っていたマスターが、人が変わったように静かに佇み始めたのを見て、
安堵よりも先にランサーは困惑を憶えた。こう言う時が怖いのである。騒いでいた人間が逆に沈黙をし始めた時は、えてして不気味な物なのだ。
ランサーの問いに、マスターは答えない。操る為の糸を断ち切られたマリオネットの様に、だらりと腕を下げ、頭を垂れて。
二本の脚が、今の彼を支えているのが不思議な程だった。指で突いただけで、今の彼は倒れ込みそうな程、不安定である。

 ピシュンッ、と言う、圧縮された空気が勢いよく噴き出るような音が、部屋の中で響いた。
その音だけであったのならば、何も問題はない。問題は、その音と同時に、割れた窓ガラスから入る太陽の光よりも、
眩くて白い光が、『陶器を割ったような亀裂を顔面に生じさせたマスターから』放たれていると言う事であった。
ランサーがその変化に驚くよりも速く、風よりも早く動き、鋼すらも細断する妙錬の槍技を持つこのサーヴァントが、両膝をフローリングに付いてしまった。
力がまるで入らない、筋肉が弛緩しているようだった。この感覚は、サーヴァント特有の、魔力を使い果たした事による機能低下に他ならない。
魔力の経絡(パス)がマスターと通じているから解る。サーヴァントがマスターから魔力を供給しているのでなく、『マスターがサーヴァントを構成する魔力を吸収している』のだ。

「な、……に……が」 

 急速、としか言いようのない勢いで魔力が吸われて行く。
指一本動かすどころか、この世界で、このランサーとしての形を保つ事すら出来ない程だった。
自分の身体が薄れて行き、大気と同化して行っているのが良く解る。

 霞む視界に、自身のマスターの姿が映っていた。
亀裂から壮年の男の皮膚が、筋肉が付着した状態で剥離して行くその様子は、まるで垢が身体から落ちて行くかのようだった。
顔の筋肉が全て剥げ落ち、眼窩に眼球が嵌められた状態のままの頭蓋骨が、フローリングに落ちた。乾いた音を立てて、それは割れ、大脳が零れ落ちる。
それと同時に、壮年の男性が纏っていた黒いスーツが、その内側の骨格や筋肉がついた皮膚ごと弾け飛び――男の身体に巣食っていた怪物が姿を現した。


510 : どうやら私達は地獄のまっただ中らしいです ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 13:31:32 Gfyn3j4s0
 壮年の身体に生じさせていた亀裂が放った、天使の放つ後光を思わせる白光とはまるで趣を異にする、汚穢で淫猥な黒い体色がよく目立つ。
だが真に冒涜的なのはその姿であった。それは一言で言うならば、人間の女性器と子宮を連想させる様な卑猥なシルエットをした、大柄な化物だった。
醜く膨れ上がった胴体には、牙を生え揃わせた大陰唇状の口がポッカリと空いており、その口穴の先には、ゾッとする程赤い空間が広がっている。
基督、仏教、イスラム教を問わず、凡そありとあらゆる聖職者は、この怪物の淫らで、神と女とを侮辱する姿をしたこの存在を見れば、嫌悪の念を隠すまい。
そんな見るのも悍ましい姿をした存在は、身体の下部から黒く細い触手状の物をうねらせ、赤く血走った瞳で、消滅しかけているランサーを見つめていた。

「マス……ター……!!」

 壮年のマスターの表面積を超える程の大きさをしたこの怪物が、どのように彼の身体の中に納まっていたのだとか。
そもそもこの怪物は何者なのだとかいう疑問は全て、ランサーの心から吹っ飛んでいた。
直感が、告げている。この怪物は危険だと。主君殺しが許され難い不義であると解っていても、自分が討たねばならないと。
この存在を生かしておくのは、危険極まりない。よろよろと立ち上がろうとするランサー。それを見て、大陰唇を思わせる口から、音の塊が噴出させ始めたのだ。

「GYAPYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!!!!!!!!!」

 部屋中のフローリングや窓ガラスを破砕させ、タンスやテーブルを吹き飛ばす程の音響の叫び声を上げながら。
黒い金属に似た質感の身体を持ったその怪物が、凄まじい速度でランサーの方に突進。
余りの速度にランサーが面食らったと同時に、彼の身体は、化物の体当たりで粉々に砕け散り、遂に消滅した。
常ならば対応出来た事であろうが、魔力を吸われ過ぎて弱体化したランサーに、この攻撃を避けられる筈もなかった。

 かん高い叫び声を上げさせながら、鉄の怪物は、天井と屋根を突き破りながら、上空へと飛翔していった。
化物の行方は、誰も知らない。



.


511 : どうやら私達は地獄のまっただ中らしいです ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 13:31:54 Gfyn3j4s0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 世間からすればきっと、私という人間は、いわゆる『引きこもり』、と言う奴になるのだろう。
実際その通りだと思うし、否定できない。外に出る事も、今世間では何が話題になっているのか、それを理解するのも私は億劫だった。
だけど、最近私の部屋に、あのネコ人間と言う居候が出来てから、少しだけ、今外で何が起こっているのか私は気になって来た。
何でも願いが叶うと言う聖杯戦争。あのネコ人間はそんな突拍子もない事を口にしていたが、本当にそんな事が今外で起っているのだろうか。
嘘を吐いているのかも知れないが、それを確認しに外に出かける事も、私には面倒くさかった。
だから、私は妥協案として、テレビのニュースで情報を探る事とした。パソコンは、この部屋にない。何でだろう。

 テレビの電源を付け、チャンネルをニュース番組のそれに変える。
テレビに映っていた女性アナウンサーの顔は酷く膨れ上がっており、目玉が半ばまで飛び出している。
何でこんな人を公共の電波に出演させているんだろう? 私はちょっと、理解が出来なかった。
顔はこれなのに、声は綺麗な女性のそれと言うのが、凄いギャップを人に与える。

「では次のニュースです。一体何が起ったのでしょうか。東京都北区の上十条で起った、計二十人もの人間が殺され、八軒もの家屋が破壊された事件で――」

 そう言ってテレビは、映像を映し出す。
木端微塵に、爆弾でも使われた後としか思えない程破壊された家と、その周辺を捜査する警察の人たちの映像。
そして、周辺にいた人々からテレビ局の人が事情を尋ねるシーン等々が、私の瞳に映っている。
このニュースは五分ほど続いたが、結局あの酷い顔のアナウンサーは、事件の全貌は未だ掴めず、と言う言葉でこのニュースを締めくくった。

 ……やっぱ怖いから外に出るのはやめよう。
そんな事を考えながら、私は、絨毯の上で胡坐をかきながらテレビを見つめるネコ人間に目線をやった。
心なしか、彼の口の端が、吊り上っているように私には見えたのだった。趣味悪い。

「そんなに面白い?」

 私は訊ねた。

「面白い」

 ネコ人間――いや、バーサーカー、――いや。
真名――本名に近いらしい――を『マルクト』と言うネコ人間は、愉快そうにそう返答したのだった。


512 : どうやら私達は地獄のまっただ中らしいです ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 13:32:10 Gfyn3j4s0
【クラス】

バーサーカー

【真名】

マルクト@すでに私たちは地獄のまっただ中でした

【ステータス】

筋力B 耐久C 敏捷A 魔力A 幸運E--- 宝具B

【属性】

中立・狂

【クラススキル】

狂化:EX
バーサーカーは普通に意思疎通が出来る上に、会話する事も可能だが、それと引きかえに通常の狂化とは異なりステータスアップは発動しない。
バーサーカーの狂化は、極めて高ランクの精神汚染と無我スキルを内包しており、彼とコミュニケーションを取り続けた場合、低ランクの精神汚染を獲得する。
また、読心等と言った精神干渉を無理に行った場合、致命的に精神を破壊される可能性が極めて高い。

【保有スキル】

魔術:B
攻撃の魔術よりも、回復や補助の魔術にバーサーカーは長けている。

魅了:D
中性的な容姿の持ち主。綺麗な容姿をしているが、その綺麗さはあくまでも若さに由来するそれの為に、ランク自体は低い。

娼妓:C
長年男娼として働き培ってきた性の技術。ランクCと言う値は、女性のみならず男性までも、悦ばせる事が出来る。

幻覚症状:EX
バーサーカーには、彼だけしか見る事の出来ない幻覚が映っている。その幻覚の内容は表象不可能で、そして無秩序なものの集まり。
ランクEXは、最早日常生活が送る事の出来ない程深刻な幻覚を恒常的に見せられているレベルだが、バーサーカーはこれに対して平然としている。
このスキルの影響で、他サーヴァントが彼の精神に介入したり、その視界をジャックした場合、当該干渉サーヴァントは精神を破壊される。

精神耐性:EX
高ランクの精神汚染と、極めて高ランクの世界全体に対する憎悪が綯交ぜになった、評価不能の精神耐性と言うべきもの。
バーサーカー自身が最初から発狂しているも同然の状態の為に、精神干渉を無効化する、と言うよりは、初めから意味を成さない物と言った方が正しい。

【宝具】

『勝利すべき剣(ティルフィング)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:2 最大補足:1
バーサーカーが振っている片手で持てる程度の重さの長剣。
北欧神話の古エッダに登場する、呪いの魔剣と同じ名前であるが、正確には全く別の剣と言うべきもので、この宝具には呪いの効果はない。
所有するだけでバーサーカーの筋力ステータスをワンランクアップ、魔力ステータスの方はワンランクアップさせた上で+の補正を一つ付与させる。
更にこの宝具による攻撃が成功した時、確実に、この宝具による攻撃判定は2回行われ、回数相応のダメージを相手に与える事が可能となる。
平時のバーサーカーのステータスは、この宝具を持っている状態で固定化されているが、何らかの手段でこの宝具を失った場合には、上記の補正効果は消滅する。

『ニンゲンの王』
ランク:- 種別:- レンジ:- 最大補足:-
生前バーサーカーが有していた筈だと、彼の父親である男がバーサーカーに見出し、そしてサーヴァントとして召喚されたバーサーカーに備わっていると考えられている性質。
その本質は、後述の宝具の感染者が最終的に変異する[削除済み]を率いる為の資質であり、バーサーカーは彼らに対して凄まじいまでのカリスマを発揮する。


513 : どうやら私達は地獄のまっただ中らしいです ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 13:32:39 Gfyn3j4s0
『いざや行け、新たなる地に子供らよ(カティクル)』
ランク:EX 種別:■■■■■■■■■ レンジ:■■■ 最大補足:■■■
バーサーカーが感染している正体不明の精神病。感染元は不明で、どのような経路で感染するのかも不明。
発症すると極めて重度かつ深刻な情緒不安定や精神の錯乱、幻覚症状を引き起こし、感染者の精神を著しく破壊する。
病状が進行すると、最終的に感染者の身体は、黒ガネの怪物とも形容されるおぞましい容姿の化物に変貌、周囲に破壊を振り撒く。
バーサーカーと接していると確率でこの宝具は感染するが、構成要素が魔力そのものであるサーヴァントには、この宝具は感染しない。
しかし、この感染病の本質は単なる精神病ではなく、その正体は滅び■■人類■地■■ら■■■に逃す為に、■■宙に■■■来る■■■に■■させる、
と言ういわば■■救済の為の■■。この宝具もとい感染病を生み出した存在は■■キニ■の星を生み出した女神の片割れであるヴァ■■■であり、■
彼女は■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

【weapon】

宝具参考

【人物背景】

人間の屑である父親による一方通行的な虐待を受け、父が作った莫大な借金の返済の為に男娼として働かざるを得なくなり、
莫大な借金に付随する利子と虐待の最中に発症したカティクル病に苦しみ、日々の生活を地獄と認識して過ごし、世界の全てに憎悪を抱いていた少年。
後に彼は、ホモセクシャルの仲間である男とボロ雑巾のような女と共に、自身が患ったカティクル病を治療する為に世界各地を旅して回り、自身の病気の真実と、
自分が何をすべきなのかを悟る。世界の根源とも言うべき地に足を運び、彼は其処で[削除済み]の選択を選ぶのだった。
 
【サーヴァントとしての願い】

この世の全てを、己の患った病気で破壊し憎悪する。

※バーサーカーの単独行動により、彼らが拠点としている足立区或いはその近隣の区に、カティクル病を発症した住民がいるかも知れません。


514 : どうやら私達は地獄のまっただ中らしいです ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 13:32:52 Gfyn3j4s0
【マスター】

本名不明(仮に、『窓付き』と呼ぶ)@ゆめにっき

【マスターとしての願い】

???

【weapon】

【能力・技能】

すぐに眠れ、夢を見れる。それだけ

【人物背景】

ひょっとしたら単なる引きこもりなのかも知れないし、児童虐待を受けた哀れな子供なのかも知れない。恐らくは自身の境遇を、彼女自身も解っていない。

【方針】

考えてない。


515 : どうやら私達は地獄のまっただ中らしいです ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 13:33:04 Gfyn3j4s0
投下を終了いたします


516 : ◆yaJDyrluOY :2016/03/12(土) 17:42:31 Wf39beiQ0
投下します


517 : 邪悪の化身ディオ!!&ランサー ◆yaJDyrluOY :2016/03/12(土) 17:43:28 Wf39beiQ0

 この東京において、ディオ・ブランドーという名前は誠実な青年の事を指す。
 大企業の社長の養子であり、その社長の息子と共に仲良く屋敷で暮らすエリート。
 紫外線アレルギーで日中は外に出られないが、容姿端麗、スポーツ万能、成績優秀のスーパーマン。
 誰もが彼を噂通りの好青年だと信じて疑わなかった。

 今日も早朝から、彼は屋敷の部屋で優雅に読書をして過ごしている。
 そんな彼のもとに、突然1人の少女が現れた。

「ねぇ! あなた私のマスターでしょ」
 
 その少女はとても可愛らしい容姿をしていた。
 金髪の髪にブルーの瞳、黒いゴシックロリータ調のドレスと頭には大きな赤いリボンが付いている。
 DIOと2人で並べば金髪同士とても相性が良く、まるで兄妹の様にも見えてくる。
 DIOは、そんな少女の唐突な出現にも驚かず落ち着きを払っていた。
 それはDIOが周囲を取り巻く異変にいち早く気づき、以前から様々な考察を巡らせていたからに他ならない。
日本の東京という地でいつの間にか生活しており、明らかな黄色人種にも言語はしっかりと伝わる。
 新手のスタンド攻撃ではない事をすぐに見破ったDIOは、本やDIOの生まれた時代には無かったインターネット等で情報を集めた。
 その間、DIOはこの世界での自分に対する印象をそのまま演じ続けていたのだ

「さぁお嬢さん、そこに座って。続きを聞こうか」
「私はランサーのクラスで、あなたに召喚されたサーヴァントよ。名前はレジーナっていうの」
「ではレジーナ、私の名はDIO。そのままディオと呼んでくれて構わないよ」

 DIOは”良い人”の仮面を崩さないままレジーナに接した。
 初めて掴んだ情報の糸口を、むざむざ手放すわけにはいかないからだ。

「そう、じゃあディオって呼ぶわ! あなた、聖杯戦争について何か知ってる?」
「いや、知らないな。レジーナ、よかったら私に詳しく聞かせてくれないか?」
「もちろんよ! マスターに色々教えてあげなくちゃ、何も始まらないもの」

 そうして、レジーナは聖杯戦争について自分に与えられた知識を全て教えた。
 聖杯の役割、マスター、サーヴァント、令呪、そして東京と自身の能力についてなども。
 静かに聞きながらも、DIOは内心驚いていた。
 スタンド以外に超常的なパワーが存在した事もそうだが、全ての願いを叶える聖杯や数多の時間軸から呼ばれる英霊という存在。
 100年前でもエジプトでも多くの書物を読んだDIOだが、レジーナの話すことは全てが新鮮な情報であった。
 魔術の関しての本などは存在していたが、まさか実践しようという発想には至らなかった。DIOの思考はファンタジーやメルヘンじゃあないのだ。


518 : 邪悪の化身ディオ!!&ランサー ◆yaJDyrluOY :2016/03/12(土) 17:44:18 Wf39beiQ0
 レジーナの説明は、度々”マナ”という人物の話などに脱線したが、DIOはその度に優しく語りかけて欲しい情報へ誘導した。
 しかしその苦労も全くの無駄では無く、DIOはこの数十分でかなりレジーナの人柄を知ることが出来た。
 レジーナは赤子のように純粋でありながら、好奇心旺盛で思い込みが激しい。
 正義に憧れ、正義であろうと務め、正義を愛している。だがしかし、DIOは少女の中に――闇を見た。
 それは、邪悪な素質というよりは、負から正に変わったという様にDIOは感じた。
 DIOは当初、”マスターとサーヴァントは似たもの同士で相性が良い者が選ばれる”という言葉に疑問を覚えていたが、ようやく納得がいった。
 この少女は紛れも無く、このDIOのサーヴァントだと。
 DIOは欲しい知識は受け取り、これから活動していく上でレジーナの正義感は邪魔でしか無いと考えた。
 ならば――とDIOは行動に移る。

「説明ありがとう、レジーナ。とても愉快で有意義な時間だったよ」
「そう? 私もディオが相手だとなんだか喋りやすかったわ、マスターが良い人でよかった」
「フフ、そうか……なぁ、レジーナ。君は聖杯を手に入れたらどうするんだい?」

 DIOはせめてもの情けか、レジーナの願いを聞くことにした。
 この後レジーナは、もう自分の意思で行動することなどできなくなるのだから。
 これからの言葉はもはや、この聖杯戦争におけるレジーナの遺言の様なものになるだろう。

「私? 私は世界のみんなが笑顔になれる様に、ってお願いするわ」
「ほう、世界を笑顔に……か」
「ええ! だってきっとマナならそう願うもの」
「……マナなら、か……フフフ、最初から自分の意思など無かったか」
「え? なにか言った?」

 レジーナの答えに、DIOは小さく呟いた。
 レジーナには聞こえなかったようだが、もし聞こえていてもそれが何を意味するかなどわからなかっただろう。
 DIOにとって、レジーナは”マナ”という人物の都合の良い操り人形にしか見えなかった。
 ならば、その糸を自分が操ったところで何も問題はない。
 DIOがそんな事を考えているとも知らず、レジーナは無邪気にDIOへ質問を返す。

「ねぇ、ディオは聖杯に何を願うの?」
「……私は、”天国”に行きたいのだ」
「天国? ディオみたいな人なら、普通に天国にいけるんじゃないの?
  ――――私は……多分、ダメだけど」


519 : 邪悪の化身ディオ!!&ランサー ◆yaJDyrluOY :2016/03/12(土) 17:45:05 Wf39beiQ0
 DIOの願い、それは天国へ行くこと。だがそれは普遍的意味での天国ではない。
 神の如き世界を支配する力を得て、絶対的な勝利者として君臨する世界こそがDIOの天国なのである。
 そんな事は露とも知らないレジーナは、頭に疑問符を浮かべる。
 一般的な意味だったとしても、天国などDIOが行けるはずも無いが。
 そして、レジーナは自分の過去を思い出して、悲しい気持ちでいっぱいになった。
 相田マナや他のプリキュア達のお陰で愛の心に目覚める事が出来たが、かつてはキングジコチューの娘として人間たちに酷い迷惑を掛けたのだ。
 自分なんかが天国なんて行けるはずがない、と。

「なぁレジーナ、私の願いの為に一緒に戦ってくれるかい?」
「――っ! もちろんよ! 私はあなたのサーヴァントなんだもの!」

 思慮の海に沈んでいたレジーナは、ハッとDIOの言葉で気がついた。
 レジーナは少し溢れそうになった涙を拭い、DIOの言葉に力強く応えた。
 昔に悪いことをしてしまった分、今はこの人の為に頑張ろう。と意気込む。
 DIOが天国に行く為に善行を積むのだと、レジーナは信じて疑わなかった。しかし――
 
「ありがとう、レジーナ」 

 DIOがそう感謝の言葉を述べた瞬間のことだった。
 レジーナは近い場所に、膨大な邪悪な気配を感じとった。
 なぜここまで大きなジャネジーを今の今まで見逃していたことに、レジーナは反省で胸がいっぱいになる。
 しかし、レジーナの驚愕と混乱は、その発生源を突き止めて更に大きなものとなった。
 なぜなら、そのジャネジーの発生源は――自分のマスターであるDIOだったのだから。

「う、嘘……そんな、なんでディオからジャネジーを感じるのよ」
「ジャネジー? それはどういう物なのか、ひとつ私に教えてくれないか?」
「……じゃ、ジャネジーは人間の自分勝手な邪念のエネルギー、つまり悪い心の力のことよ。
 ディオ、あなた……どうして? 今まで何にも感じなかったのに」

 DIOの精神力、それ即ちスタンドの力。
 少年時代に他人を欺いて過ごし、強大な『ザ・ワールド』を使いこなすDIOにとっては邪悪な意思を抑えるなど朝飯前だった。

「レジーナ、つまり君と私は似たもの同士だったというわけだ。心の底に邪悪な意思が眠っているところもね」
「う、嘘……嫌よ、私はもうジコチューなんかじゃない!」
「君もさっき言っていたじゃあないか、”マスターとサーヴァントは似たもの同士が選ばれる”と」
「こんなの嘘よ! あなた、人を騙したりして、悪い人だわ……悪いマスターなんか、死んじゃえ!!」


520 : 邪悪の化身ディオ!!&ランサー ◆yaJDyrluOY :2016/03/12(土) 17:45:58 Wf39beiQ0
 DIOは人の心の隙間を突く事に長けている。そんなDIOの言葉に、レジーナは激しく同様した。
 そうなった人間は脆い、思いがけない突発的な行動を取ってしまうのだ。
 人を殺してしまったら、もう後戻りなんて出来ないことにレジーナは気づかない。

 レジーナは右手に先端が眩しく光る槍を出現させて、DIOに向かって振り下ろす。
 しかし、DIOがそんな感情の篭った斬撃を食らうはずもなく、少し脇にずれただけで軽々と避けた。
 突く、かわす。薙ぐ、下がる。また振り下ろす、また避ける。
 レジーナの攻撃は、DIOに当てることが出来なかった。
 ついにレジーナはDIOから距離をとり、槍に力を込め始める。
 浄化の光が槍の先端に溜まっていく。
 もはや正常な判断ができていないレジーナは、最大限まで溜めた力をDIOに向かって撃ち放った。
 DIOの視界が金色の光で覆われる。
 それにも関わらず、DIOは平然とした様子でふんぞり返っていた。そして――

「『ザ・ワールド』! 止まれぃ、時よ!」

 DIOは時を止めた。
 これはDIOのスタンド『ザ・ワールド』の特殊能力である、”時間停止”を使ったことによるものである。

「こいつ、考えなしに力を込めおって……このDIOの魔力が無くなるかと思ったぞ。
 だがまぁ、確かに凄い力だ、これがサーヴァントの力という奴か」

 DIOは止まった時の中で、レジーナ及びサーヴァントの力を再確認する。
 これほどの威力は『ザ・ワールド』でも難しいかもしれない。

「無駄無駄ァ! ……やはり『ザ・ワールド』ではサーヴァントを傷つける事は出来んか。
 さて、時が止まっていても令呪は効くのかな?」 

 DIOは『ザ・ワールド』でレジーナを殴って見たが、全く効いている様子はない。
 やはり神秘が無いと攻撃が効かないというのは事実であるようだ。
 だが、効いても効かなくても初めから令呪を使うつもりだったので、さして問題は無い。

「我がサーヴァント、レジーナよ。このDIOの名の許に令呪を以て命ず、我が体の一部”肉の芽”を受け入れよ」

 DIOがそう唱えると、止まった時の中で確かに令呪が1画失われた。
 その様子を見て、DIOは満足げに微笑み、レジーナに近づいていく。
 一歩、二歩、三歩。
 そうしている間に、DIOの時間に終わりが訪れ――時が動き出す。
 止まっていた光の塊が、DIOの部屋の壁を破壊する。


521 : 邪悪の化身ディオ!!&ランサー ◆yaJDyrluOY :2016/03/12(土) 17:48:43 Wf39beiQ0
「おっと、まだ昼間だというのに、危ない危ない」

 幸いというべきか、レジーナが光を放ってすぐに時を止めたので廊下側の壁が一枚砕けただけに終わった。
 令呪によって、DIOが肉の芽を植えるまではレジーナは身動きがとれなくなっており、光はその場で止まってしまったのだ。
 太陽の光をDIOのもとへ届かせるには、出力が足りなかった。
 動けないレジーナに、とうとうDIOが肉の芽を植える。
 令呪の命令で植えられた肉の芽は、攻撃と認識されずにレジーナの眉間で元気に活動を始めた。



 DIOと共にこの屋敷に住んでいるジョナサン・ジョースターは、2階のDIOの部屋から聞こえた大きな音に気づいて階段を上った。
 丁度上りきった頃、廊下の先からDIOが階段へ向かって来た。

「あっ、ディオ。さっき大きな音がしたけど、どうしたんだい?」
「やあジョナサン、別に大した事じゃあないんだ。少し転んでしまってね」
「ははっ、ディオが転ぶなんて珍しいなぁ。今日は何か変なことが起こるかもね」

 二人の会話は仲の良い青年達そのもので、なんでもない日常の極一部のようである。
 だが、奇しくもこのジョナサンという青年の言葉は的中してしまう。
 いや、DIOが的中させるのだが。

「そうだジョナサン、君に紹介したい子がいるんだが」
「その後ろの子? 実は僕もさっきから気になってたんだよね。
 こんにちは、お嬢さん。僕の名前はジョナサン・ジョースター、君は?」
 
 DIOの言葉にジョナサンは素早く反応した。
 大柄なDIOの背後に隠れるようにしてチラチラと見えていた金髪と大きな”紫のリボン”は、ジョナサンの好奇心を刺激していたのだ。
 ジョナサンは少女の前まで歩き、しゃがんで目線を合わせる。
 そして紳士的に自分の自己紹介をしてから、少女の自己紹介を促した。

「私はレジーナ、あなたがジョナサンね」
「おや、ディオから聞いていたのかな?」
「私があなたを素敵なジコチューにしてあげる!」
「え?」

 レジーナはジョナサンのプシュケー(心)を黒く塗りつぶし、ジコチューへと変化させる。

「ぐわぁぁああ!…………ジ コ チ ュ ー !!!」

 ジョナサンのプシュケーから生まれたジコチューは、屋敷を出て東京の町へ消えていく。
 脇に倒れたジョナサンを見下ろすDIOと、去って行ったジコチューを見て楽しそうに笑うレジーナ。
 金髪”紅眼”の容姿が整った2人の姿は、初めに出会った時よりも一層本当の兄妹の様だった。


522 : 邪悪の化身ディオ!!&ランサー ◆yaJDyrluOY :2016/03/12(土) 17:49:44 Wf39beiQ0
【クラス】 ランサー

【真名】 レジーナ@ドキドキ!プリキュア

【パラメーター】
筋力C 耐久C+ 敏捷B 魔力A+ 幸運C 宝具A

【属性】 中立・善

【クラススキル】
対魔力:A
 Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。

【保有スキル】
魔法:A
 魔法を使用する事が可能、発動時の動作として指を弾くことが多い。森羅万象を自分の意志のままに操ることができる。
 結界の中や異世界への転移など、プリキュアに出来ないことを平然とやってのける。

ジコチュー:A
 生命体としてのジコチューのこと。空中浮遊や長距離を一瞬でテレポートする、人の心を読むなど人間を超えた力を持つ。
 同ランク相当の『魔力放出(邪)』のスキルも含まれる。

単独行動:B
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。自由気ままに何者にも縛られない性格。

狂化:-(EX)
 理性と引き換えに驚異的な暴力や邪悪な力を所持者に宿すスキル。父キングジコチューによって強制的に悪の限りを尽くした逸話に由来。
 ランサーは自己中化していても会話ができるが、自己中心的な考えになるため扱いづらい。
 普段は失われている。

【宝具】
『逃れられぬ人のサガ(クリエイト・ジコチュー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:1人
 対象の心(プシュケー)をジャネジーによって染め上げ、ジコチューという怪物を生み出す。
 他のジコチュー達は行動に表れる程の自己中心的人間しか変えられないが、ランサー曰くどんな人間でも自己中な部分はあるとのことで、ランサーはどんな人間でもジコチューに変えてしまうほどの力を持っている。
 また、覚者やロボット等の全く自己中心的な心が無いものは、ランサーでもジコチューに変えることはできない。

『三種の神器 ”神槍”(ミラクルドラゴングレイブ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~100 最大捕捉:1人
 一万年前より受け継がれている、あらゆるものを貫く光の槍。神槍とはいうが実際はナギナタに近い。
 物質・エネルギー問わず全てを消し去る他、石化させて封印するに留める事もできる。また、魔法やジャネジーなどの力の放出の際に増幅器としても使用される。
 また、ランサー以外は触れず、さらに邪悪な者にはエネルギーによる妨害(電撃)がある。
 聖の力も悪の力も増幅するため、使う者の心次第で大きく用途が変化する。


523 : 邪悪の化身ディオ!!&ランサー ◆yaJDyrluOY :2016/03/12(土) 17:50:18 Wf39beiQ0
【weapon】
 宝具欄に記述。

【人物背景】
 トランプ王国を壊滅に追いやったキングジコチューの娘。他のジコチュー達とは一線を画す力を持つ。
 プリキュアの1人”相田マナ”を通して他人を思う気持ちを学んだが、父親であるキングジコチューによって再びプシュケーも再び黒く染まり、完全なジコチューとなってしまった。
 その後、レジーナはエターナルゴールデンクラウンの導きで、プリキュア達と共に自身の出生の秘密と父親の真実を知る。
 レジーナはトランプ王国の王女マリー・アンジュのプシュケーが半分に分かれ、その片方が生まれ変わった存在だったのだ。 つまり、円亜久里及びキュアエースとは元は同一人物である。
 そしてこれまでのプリキュア達の働きかけと、父の本当の愛を知ったことで、元の姿に浄化された。
 浄化されたレジーナは、紛れもない本心からキングジコチューの下に戻ってしまうが、それは自分の為に全てを捨てた父のため、何があっても一緒に居続けるという、真実を知ったゆえの決心だった。
 しかし、やはりマナも父親と同じくらい大切な存在である。父親を元に戻せると知ったレジーナは、キングジコチューを元の姿に戻すためにプリキュア達に協力した。
 その後、レジーナも浄化の力を得て、世界中の人にプリキュアとして頼られるマナ達と共に世界を守っている。

 聖杯戦争では、DIOに肉の芽を植えられてジコチュー状態になっている。

【サーヴァントとしての願い】
 世界中の人を笑顔にしたい。


【マスター】
 DIO@ジョジョの奇妙な冒険

【マスターとしての願い】
天国への到達。

【weapon】
 なし

【能力・技能】
『ザ・ワールド』: 
 [破壊力:A][スピード:A][射程距離:C][持続力:A][精密動作性:B][成長性:B]
 DIOのスタンド能力。近距離パワー型の中でもほぼ最強の性能に加え、10秒程度時間を止められる。

吸血鬼:
 DIOの吸血鬼としての能力。
 植えこんだ相手を忠実な下僕にする『肉の芽』や触れたものを凍らせる『気化冷凍法』、体液を圧縮してウォーターカッターのように飛ばす『空裂眼刺驚』。
 その他にも吸血鬼なので当然吸血鬼を増やしたり、ゾンビを作り出したりすることが出来る。

【人物背景】
 本名はディオ・ブランドー。100年後の世界では「DIO」と呼ばれている。
 非常に容姿端麗かつ相手を心酔させるほどのオーラや話術、驚異的な能力、さらに執念を併せ持ち主人公ジョースター一族に長年の因縁を残した宿敵。
 性格は上昇志向が強い野心家で常に上を目指している。冷酷で支配することが生きがい。読書好き。能力の研究に熱心になる性質である。
 イギリスの貧民街に生まれ、父の死(殺害)後ジョースター家に養子として迎ら入れられた。しかし、財産乗っ取り計画がバレて追い詰められると、石仮面を被り人間をやめ吸血鬼となった。
 その後、ジョナサン・ジョースターとの青春の決着と死闘の末首だけになり、ジョナサンと共に海底に沈んだ。――かと思われていたが、吸血鬼の異常な生命力で、船の中にあった棺桶に100年間潜んで復活。
 首から下はジョナサンの肉体を乗っ取り、海底から復活したDIOはエンヤ婆のもたらした「矢」によってスタンド能力を身につけた。

 聖杯戦争では、ジョースター家に身を寄せていた頃のように礼儀正しい青年としての仮面を被っている。
 ここにいるジョナサン・ジョースターは偽物であると認識しており、決して”ジョジョ”とは呼ばない。

【方針】
 ランサーの力でジコチューを増やし、自分は隠れ潜んで機を待つ。


524 : ◆yaJDyrluOY :2016/03/12(土) 17:50:50 Wf39beiQ0
投下終了です


525 : ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 19:29:28 Gfyn3j4s0
投下します


526 : ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 19:29:48 Gfyn3j4s0






   黄昏をいふ。百魅の生ずる時なり

   世俗小児を外にいだす事を禁む

   一説に王奔時とかけり。これは王奔前漢の代をうばひしかど、程なく後漢の代となりし故、昼夜のさきひを両漢の間に比してかくいふならん

                                                  ――今昔画図続百鬼、逢魔時の項より





.


527 : ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 19:30:07 Gfyn3j4s0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「君とはどうも話が合わないな」

 辟易した様子で男が言った。良く通る声で、狭いスタジオなどで彼が話せば、きっと見事な音響効果を齎すだろう。
演説に用いれば凄まじい効果を発揮する声で、しかし、今男の喋った声音はまるで、出来の悪い妹でも相手にする兄のようなそれであった。

「私の言葉を代弁してくれてるの? ありがとうね」

 売り言葉に買い言葉、と言った様子で、年の若い少女が返事をする。
目の前の男に対して、否定的な感情を宿していると言った様子の表情と挙措であった。

「貴方、腐っても陰陽師の端くれなんでしょ? 魔力も妖力もない落第生だからって、貴方自身の存在理由の妖怪を否定するのはよしなさいよ」

「冗談はよしてくれよ。妖怪が僕の存在理由だなんて、そんな悲しい話があるか。これでも所帯も持ってたし、金も自分で稼いでたんだぜ?」

 冗談めかして、少女の言葉を返す男の顔は、それはそれは禍々しい凶相をしていた。
それは最早不機嫌であると言うよりは、傍目から見れば怒っているとしか思えない程の仏頂面だ。
係累の全てが死に絶え、世界の終りでも目の当たりにした様な険しい表情。
墨で染めたような真っ黒な着流しに、晴明桔梗が染め抜かれた薄手の黒い羽織を纏い、手には手甲、黒足袋に鼻緒だけが赤い黒下駄、と言う出で立ちが恐ろしく目立つ。
その方面の知識に明るくない人物にですら、この男が陰陽道の系譜を組む何らかの宗教関係者である、解る程にらしい服装だった。

 対する少女の方は、渋面の男の、陰陽道の正装とは正反対の服装であった。異様、とすら言えるだろう。
原理主義者が見れば、烈火の如く激怒するに相違あるまい。脇の部分を露出させた、紅白の『巫女服』を着用しているのだ。
頭に付けられた大きな赤リボンが良く似合う、可愛らしいこの少女。こんな服装よりももっと相応しい、年相応の恰好があるであろうと、男はつくづく思う。
しかし、彼は知っている。この少女が自分と同じ程の陰陽道の知識を有し、『この世に不思議な事など存在しない』と言う男の理念を完全にぶち壊す、
真実の陰陽道の奇跡を扱える少女だと言う事も。少女は名を、『博麗霊夢』と言う。服装からは信じられないが、正真正銘本物の巫女、と言う奴であった。

「貴方、頭だけは良いけど、陰陽師としては失格ね。一体この世の何処に、その宗教が名目上敵として扱う存在を否定する宗教家がいると言うの?」

「君の言う通りだな。仏教と言い基督教と言いイスラム教と言い、世に隆盛を誇る宗教と言うものは、何時だって敵対者の存在が不可欠だった」

「当然よ。信奉者にとっての味方がいて、信奉者にとっての敵がいる。こう言う対立の構図があった方が、解りやすいし、信者も集めやすいもの」

「その通り。およそ隆盛している宗教と言う物には全て、敵がいると思っても良い」

 カンッ、と、黒下駄を鳴らし、男は言葉を続ける。

「基督教には悪魔が。イスラム教にはシャイターンが。仏教には修行僧を惑わす魔羅や邪鬼と言った仏敵が、それぞれ設定されている。
こう言った敵対者の存在は、その宗教が神体としている存在の全能性や威力を高める為に存在していると言っても良い。
ただ全能なだけでは、人はその存在を崇め奉らない。その全能性を、人の為に発揮していると言う事実と側面が必要になる。
だからこそ全能たる神に類する存在は、本来ならば地上に存在するべきでない悪魔や仏敵の存在を創造し、或いは求めた。自らの力を誇示する為だ」

「良く解ってるじゃない。そう言った敵対者の存在は、その宗教に於いて、『排除されるべき存在ではない』。立派な、その世界観を構成する要素の一部よ。
敵対者の存在を否定すると言う事は、その宗教が神と崇める存在の否定にも繋がるわ。何故ならば、悪魔や仏敵と呼ばれる存在を創造したのがその宗教自身であり、これらの敵は、その宗教の根幹に繋がっているから」

「服装の割には聡明だね君は。その通り、宗教家と言う人種はね、悪魔や仇敵の存在を許さない事は兎も角として、彼らを否定する事は許されるべきじゃないのだよ。それは即ち、自らの存在をも否定していると言っても良いのだから」

「それが解っていて何で貴方は、陰陽師でありながら、本来貴方達の仕事の根幹を成す、狐狸妖怪の類を否定するのかしら」

「何度も言っているだろう、『マスター』」

 再び、下駄を響かせる音が鳴った。


528 : ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 19:30:25 Gfyn3j4s0
「『この世に不思議な事なんて存在しないから』さ」

「妖怪は不思議な存在じゃないと?」

「座敷童、と言う妖怪を知っているかな。彼らが何故信じられ、求められていたのか君は知っているかい?」

 博麗の巫女は無言で返した。

「座敷童とはね、言わば人間が何故凋落するのかと言う事を当時の人間なりに考えた科学何だよ」

「科学?」

「人は何故没落するのか。貨幣経済が研究され、資本主義と言うものが確立された現在ではその原因を探る事は容易だ。
事業に失敗した、運営している会社や工場が赤字になったと言う事もそうだが、経済と言うものは他と他とが繋がって成している物であり、
あちらが不景気ならば此方もつられて景気が悪くなる、と言う事が相応にして起こる物だ。今日では個人が何故没落したのか、と言う理由を推理するのは容易い。
だが、昔はそうじゃなかった。経済と言うものは貨幣制度は愚か、農業が確立された当時から既にあったと見ても良いが、肝心の経済の研究自体がまだ未熟だったのだ。
だから、当時の人間も解らなかったのさ。ひょっとしたら、没落した本人ですらも解らなかった事が多いだろう。何故あそこの家は落ちぶれた? 何故自分達は没落したのだ? ――それを説明する科学こそが、座敷童或いはそれに類する妖精達(ブラウニー)だったのだ」

「それが如何して、科学に繋がるのかしら?」

「科学とはとどのつまりは帰納法だ。多くのAがあるからBと言う結論が導き出される、と言った風なね。
先程の通り、昔の人間の多くは、経済を考えると言う事自体が希薄だった為に、何故没落するのかと言う理由が解らなかった。
だから当時の人間は必死になってその理由を考えた。そうして産み出された偉大なる発明が、座敷童やブラウニー、レプラコーンと言った妖精の類なのさ。
簡単な話だろう? 座敷童がいたからこそ、その家は繁栄出来ていた。ならば、その座敷童が離れれば、没落するに決まってる。
そう、座敷童やブラウニーとは、没落を当時の人間なりに考え、説明した科学であり、そして、没落してしまった人間の名誉を守る為の方便でもあったのさ。事業に失敗して没落したよりも、座敷童が気まぐれを起こして離れてしまったの方が、世間の当たりも柔らかくなるだろうしね」

 「ところが、だ」

「時代が下るにつれて人は知恵をつけて行き、それまで信じていた妖怪を迷信と見るようになっていった。
これは何もこの国特有の現象じゃない、普遍的な事柄さ。雷は決して雷神の怒りの発露じゃない事も、風や嵐が神の吐息でない事も既に現代人が証明している。
家の隆盛の守護者とも言うべき座敷童も、神仏や妖怪の解体と言う運動(ムーブメント)から逃れられなかった。
人が落ちぶれるのは何て事はない、経済的な事情が悪かったから。何時しか個人の栄枯盛衰を象徴する座敷童と言う妖怪は姿を消し、人の栄枯は経済と言う学問で証明されるようになってしまったのさ」

 まるでその舌に潤滑油でも塗られているのか、と思わずにはいられない程饒舌に、男は語る事をやめない。

「妖怪や悪魔、神とはある種の科学であり理論だ。何時だって人は、何かにつけて理由をつけたがる生き物だよ。
川が氾濫する事や、雷が轟く事、津波や地震、大風、果ては個人の精神病や病気、夢精と言った心理現象すら、彼らは如何して起こるのかと言う事をしきりに考えて来た。
人は本質的に、解らない現象と言う事に恐怖する。だからこそ、自然神を生み、人を誘惑する悪魔を生み、人に恐怖を与える妖怪を生んでそれらを説明した。
しかし、人が知恵をつけ、高い技術を持つようになると、嘗て畏怖していた神々や悪魔、妖怪を己の技術で解析をし始め、その正体と言うものを彼らは観測した。
自分達が不思議だ何だと思い、畏敬と恐怖を抱いていた存在達は、実は何て事はない、単なる自然現象だったり、人と人との営みの間に生まれた結果に過ぎなかった。
そう、妖怪何てものはこの世に存在しないし、神仏も然りだよ。彼らは元々の在るべき形、単なる風や稲妻、単なる心理現象や経済活動の結果と言う物に戻っただけなのさ」

「だから貴方は、妖怪何てものはいない、と」

「無論僕も、科学が全能の考えであるだなどとは思わないし、神秘主義が時代遅れの化石だと言うつもりはない。だが、妖怪やお化けだなどと言う不思議の生き物は、存在しない。それが僕の考えだよ」

「貴方が妖怪がいないと理詰めしようと、貴方の知らない所に、彼らは巣食っているものよ」


529 : ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 19:30:47 Gfyn3j4s0
 博麗霊夢は、結界により隔絶された空間とも言うべき、幻想郷を管理する博麗の巫女であった。
その結界内では、外の世界で誰もが忘れたと言うものが流れ着き、外の世界では信仰や、人々に忘却された妖怪達が、生きたいと言う願いから流れ着く、
最後のアジールでもあった。あの世界では今でも妖怪の類は健在で、今でも人は妖怪を恐れるものであると言う成り立ちが息づいている。
そんな世界に生きる霊夢だからこそ、妖怪と言う存在には理解を示しているし、肯定もしている。
このような霊夢の考えに、目の前の男は真っ向から反抗するのだ。だからこそ、彼らは度々口論を行う。冒頭の口喧嘩とは、正しくこう言った口論から発展した事柄であるのだ。

「君も強情だな。マスターは聡明だし、勘も鋭いのだが、この辺りの性格は、関口君を思い出すよ」

 ふぅ、と呆れたような溜息を吐いて、仏頂面の男は言った。

「私はアンタみたいに口達者じゃないし、大して頭も良いとは思わないわ。だけど、貴方が絶対に反論出来ない事柄が、一つだけあるわよ」

「言って見てくれないかな」

「この世に不思議な事柄なんてないって言うのなら、貴方がサーヴァントとして呼ばれてるのはどう言う理屈? 聖杯戦争について、納得の行く説明が出来るの?」

「やれやれ、それを突くのは反則だぞマスター。今まで理解してて無視して来たと言うのに」

 諸手を上げて、渋面の男は、心底憂鬱そうに一息吐いてから、口を開いた。

「そう、僕はその事を証明出来ない。神秘も不思議もこの世に存在しないと言っておきながら、その実、今の僕は普通の人から見たら正しく神秘と不思議の結晶だ。
他人の目には知覚出来ない霊体化? そして僕が、どんな願いでも叶える聖杯を求めて他の参加者と殺し合う、キャスターのサーヴァント? 全く泣きたくなるよ、僕は運動が全然出来ないんだ」

「見れば解るわよ、私がちょっと小突いただけで倒れそうだもの」

「頼むから試さないでくれよ、冗談でも何でもなく倒れそうだからね」

「情けないわね、腐ってもサーヴァントって奴なんでしょ?」

「何で僕がサーヴァントに選ばれたのか、自分でも理解が出来ないよ。見えるだろう? 僕のステータスが。キャスターであると言う事実を差し引いても、これは酷いぞ。まだそこらの大学の応援団の方がまともに喰らい付ける」

 確かに、霊夢の瞳に映る、目の前のキャスターのステータスは、惨憺たる代物だった。
彼に曰く、キャスターとは聖杯戦争の七クラスの中では最弱に近しいクラスであると言うらしいが、その中でも彼は特に酷いだろう。
何せ、攻撃に用いる為の魔術は愚か、此方を補助する魔術だって使えない。話術だ。話術だけが、この男の全てなのだ。これの何処がキャスターか。寧ろペテン師の方が余程相応しいであろう。

「そんなよわっちいアンタでも……許せない事柄があるんでしょ?」

「……まぁ、そうだな」

 少し言葉を選んでから、キャスターは口を開いた。

「何が許せないかと言えば、僕に罪を背負えと言う聖杯戦争のシステムが許せないんだな」

「人を殺すのが嫌なの? そんな顔なのに」

「凄い失礼だね君は。誰だって人を殺す事はいやに決まってるじゃないか」

 霊夢は本当に驚いたような表情を隠せなかった。
目の前の男の強面を見るが良い。親兄弟親類全てが死に絶えたような不機嫌そうなその面は、過去に人を喰った事があるとしか思えない程に凶悪そうだ。
これで平和主義者と言うのだから、全く笑える話である。いや、決して馬鹿にされるべきでない、寧ろ素晴らしい事であるのだが。

「全く随分捻くれたセンスだよ。イエスが最後の晩餐に使った杯であり、かの神の子の血を受け止めた、二重の意味で聖なる杯を、人を殺して手に入れろって言うんだ。これ程のまでの冒涜があると思うかい?」

「ま、趣味は悪いわね」

「人々の信仰の対象でもある聖杯を、こんな形で悪用すると言うのは気に食わないね。宗教とは、人間が発見した大いなる発明の一つだ。
科学ですら解明出来ない人間の心と言うものを、人の脳味噌に納得をさせるよう、先人が血の滲むような思いで培ってきた大いなる詭弁だ。
全ての宗教は悪用されてはならないと思うし、人の心にゆとりと安息を齎す程度と言う範疇から逸脱するのは好ましくないとすら僕は思ってる」

「だからアンタは、聖杯戦争を私に説明する際に、とても不機嫌だったのね」


530 : ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 19:31:01 Gfyn3j4s0
 霊夢は、初めて自分と出会った目の前のキャスターとの出来事を思い出していた。
東京都の郊外に建てられたうらびれた神社に、突如ふらりとして現れたこの男から、霊夢は、ただならぬ魔力の香りを感じ取った。
戦闘態勢に入ろうとした彼女を見て、男は慌てた様子で己の素性と、自分と霊夢の関係を告げた。
少なくとも男に敵意の類がない事を知った彼女は、その男を食客としてその神社に住まわせる事にした。
そうして、男は霊夢に、聖杯戦争なる催しの全貌を語った。人を殺して、聖杯と言う奇跡の杯へと近付くイベント。
霊夢は何とも呆れた。他宗教の神聖なシンボリック・アイテムを、人を殺して手に入れるなど、本末転倒も甚だしい。罰当たりにも程がある。
そんな事を思っていた時に、疑わしそうな瞳で、キャスターは問うたのだ。君は、聖杯を求める気なのか、と。

「私も聖杯はいらないわね」

 奇しくも彼女は、あの時キャスターに問われた事柄に対して行った返答と、同じ言葉を発していた。

「胡散臭すぎて信じられないってのもそうだけど、人を殺すのは流石にいやね。後味悪いもの」

「その点だけでも、僕はまだマシだったかもな。これが聖杯戦争に意欲的なマスターだったらと思うと、ゾッとするよ」

「とっととこんな下らない茶番を終わらせて、元の世界に帰りたいの。でもアンタは弱すぎるから、逃げ惑うしかない。まぁそれでも良いわよ、別に私は」

「恩に着るよ」

 安堵したような口ぶりでキャスターは言った。本当に、戦闘は嫌な性分であるらしかった。
だが同時に霊夢は、このキャスターが本当に行いたい事を、完璧に理解し、睨みをつけていた。
その事を彼に指摘すると、本当に勘が鋭いんだな、と彼は直にその心の内を認めた。

「僕は聖杯を解体したい」

「へぇ、そりゃ大それた望みねぇ」

 他の参加者や、聖杯を求めるマスター達からしたら、絶対に許されないようなキャスターの願いであったが、それに対して否定から掛からないのは、彼女が博麗霊夢であるからこそだった。

「俄かに信じ難いが、僕には宝具何て言う大それた代物が用意されているらしい。人を打ち倒すと言う点ではてんで役に立たない宝具だと思うが、
こう言う状況でやっぱり利用されるべきだと思うね。こんな怪しげで邪悪な催しの末に現れるのが、聖杯の訳がないだろう。だから僕は、それを否定して、解体する。一応これでも、聖杯伝承には詳しいからね、理論武装はバッチリさ」

「ま。おやり、キャスター」

「あぁ、機会が来たら、やらせて貰うよ」

 一呼吸置いてから、彼は口を開く。

「自他共に認める出不精の僕に、こんな決意をさせた事を後悔させてやる」

 言って、境内の石畳の上に立ち尽くしていた、黒い着流しの男が、頭上を見上げた。
戦火の名残が消え失せた東京の空は、突き抜けるように美しい青をしていた。夏とも春とも取れぬ中途半端な季節の空を、『中禅寺秋彦』は静かに見上げているのだった。


.


531 : ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 19:31:14 Gfyn3j4s0
【クラス】

キャスター

【真名】

中禅寺秋彦@百鬼夜行シリーズ

【ステータス】

筋力E 耐久E 敏捷E 魔力C 幸運A 宝具EX

【属性】

秩序・中庸

【クラススキル】

陣地作成:-
キャスターはこれを保有しない。

道具作成:-
これもキャスターは保有しない

【保有スキル】

陰陽道:EX
キャスターは陰陽道の極意を知り尽くしており、魔力回路さえ十分であればか秘術だって行使する事が出来た。
しかし、キャスターは魔術を魔術足らしめる神秘や不可思議性と言う物を全て否定しており、実際上は一切の魔術を発動出来ない。
膨大な知識を保有しているにも拘らず、一切の魔術を使えないと言う特異性から、キャスターの陰陽道ランクは規格外のEXを誇る。

宗教看破:A+++
宗教、または、古い伝承や伝説に関係する知識。キャスターは相手の挙措や纏っている衣服、振う武器に、陣地の様式などから、
当該人物が如何なる宗教を信じており、またどの伝承に由来するサーヴァントであるのかをほぼ百パーセントに近い確率で推測出来る。
サーヴァント化した事により、本来キャスターが住んでいた世界とは違う、異世界の宗教様式や魔術様式ですらも、看破出来る可能性が高い。
世界中の伝承にキャスターは詳しいが、特に日本に由来する伝承や神話に関係するサーヴァントであれば、その性能や凡その宝具、スキルまで全て看破出来る。

話術:A+
言論にて人を動かせる才。国政から詐略・口論まで幅広く有利な補正が与えられる。巧みな話術により危機感や親近感を与え、心を掴むことに長ける。
キャスターが保有する深遠な宗教知識から繰り出される話術は、その様な事柄に全く興味のない人物にすら、聞いて見ようと言う気を起こさせる、魔性の技術である。

情報収集:C+++
後述の宝具を発動する為に培われた、各方面から情報を集める為の手際の良さ。
ランクCは、政財界や警察界の人間からすらも、情報を集める事が可能となっている。話術スキルも相まって、まるで魔法のような腕前で情報を引き出す事が出来る。

【宝具】

『宴(憑物落とし)』
ランク:EX 種別:対心・神秘宝具 レンジ:1~10 最大補足:キャスターの声が届き、彼の姿が見える範囲
キャスターが生前得意とし、商売道具とすらしていた、神道或いは多様な宗教知識を拠所とした話術が宝具にまで昇華されたもの。
その本質は、相手の心の闇と、当該サーヴァント或いは魔術に近しい技術を持った存在の保有する『神秘の解体』。
この宝具が成功した時、心に何らかの悩みや闇を抱えている存在は、その悩みの数々が全て解消され、キャスターに対する敵意を失う。
後者、サーヴァントや魔術師と言った神秘に携わっている人物は、彼らの有している、或いは利用している神秘の全てが解体、否定され、今後一切、
神秘に関わる技術を使用が不可能となる。海を割り天を砕く魔術を用いる者でも、この宝具が成功すればその魔術は一切使えなくなり、
神代の時代から伝わる聖剣や魔剣の類であろうとも、この宝具が成功すればその瞬間に単なる古臭い骨董品以外の何物でもなくなる。
特に肉体の構成要素が魔力(=神秘)であるサーヴァントにはこの宝具の効果は絶大で、成功させた瞬間、
そのサーヴァントは今いる世界から完全に否定された事になり、その世界から消滅する。
成功しさえすれば、恐ろしく強力な宝具ではあるが、話術と言う性質上、この宝具が成功するにはキャスターが全てを語り終える必要があり、また、
確実に成功させるには当然の事、相手の情報を詳しく知る必要がある為、事前調査が必要不可欠になる。当然、何かを喋っている時に攻撃されれば、この宝具は中断される。
魔術師に近しい存在でありながら、『世界には不思議な事などない』と主張し続け、神秘の全てを科学と心理学、怜悧な物事の帰趨で解体し続けた男の異常性の発露。宗教は、人間に安息の場所を提供する為の場所であり大いなる詭弁だと主張した男の理念の結晶。

【weapon】


532 : ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 19:31:26 Gfyn3j4s0
【人物背景】
 
古書店を営む傍ら、武蔵晴明社の神主や憑物落としなどの副業を持つ。各国各地の宗教・習俗、口碑伝承の類の知識が豊富な能弁家。
様々な奇怪なる難事件を解決して来たとされる人物で、推理能力にも長けるが、本質的にはかなり出不精で、外に出る事も億劫な人物。

【サーヴァントとしての願い】

聖杯の解体。



【マスター】

博麗霊夢@東方Projectシリーズ

【マスターとしての願い】

特にはない。強いて言えば元の世界への帰還

【weapon】

封魔針や追尾機能を持ったアミュレット、高い霊力を内包した護符を高速で飛来させる妖怪バスターと言った攻撃手段を持つ。
またこの他にも、博麗の血筋にしか扱えない、霊力の塊とも言える器物、陰陽玉を使用可能。

【能力・技能】

空を飛ぶ程度の能力:
字義通りの能力。霊夢がもと居た場所である幻想郷の住民の多くは空を飛ぶ事が出来る為、それ自体は珍しくない。
ふわふわと漂い、人間の身体の限界が許すレベルの高度まで飛べる能力。しかし、霊夢のこの能力が珍しい所以は其処ではない。
彼女の場合は、あらゆる精神的な外圧や重圧、脅しからも解き放たれており、そう言った行為が意味を成さないのである。
いつでもどこでもマイペースを保てる能力と言っても良く、カリスマや威圧の一切を無効化する事が可能。

博麗の巫女としての能力:
幻想郷を維持するのに不可欠な博麗大結界の管理の他に、異変解決と妖怪退治を生業とする博麗の巫女は、一般人を遥かに凌駕する戦闘力を持つ。
マスターとしては破格の霊力(魔力)を利用した、陰陽道の系譜に連なる魔術の使用及び、霊力を放出して身体能力を一時的にブーストさせての格闘術。
小型の結界を展開させ相手の攻撃を防御してみたり、壁状の結界を相手に飛来させるなど、結界の扱い方にも通暁。
そして、『弾幕』と呼ばれる、霊力を用いて弾丸を作り、それを撒き散らすと言う、幻想郷独特の戦闘法も行う事が出来る。
また異様に勘が鋭く、異様な幸運を持ち、こと戦闘に関して言えば、未来予知染みた動きで相手の攻撃を回避可能する上、まぐれの被弾も皆無に近い。
勘の方は、サーヴァントのスキルに換算すればAランク相当の『直感』に該当する。
そして博麗の巫女としての本当の切り札は、上記の『空を飛ぶ程度の能力』と博麗の巫女としての力を併用して行う、肉体を本当に『空(くう)』とする力。
これは有体に言えば、実体を持ちながら透明になる事であり、ありとあらゆる攻撃から宙に浮き(素通りしてしまい)『無敵となる』事を意味する。
生まれ持った霊夢の能力でしか成しえない技能で、幻想郷の住民はこれを『夢想天生』と名付けている。
幻想郷内においては制限時間も一切無視して常時発動出来る能力であったが、聖杯戦争に際しては、霊夢の莫大な霊力を以ってしても、
10秒維持するだけで精一杯と言う制約が課されている。

【人物背景】

幻想郷を維持する博麗大結界の管理人の一人、つまり、幻想郷全体の管理者と換言しても差し支えのない博麗の巫女。それが博麗霊夢である。
が、本人にはそう言った自覚が更々なく、日々をのんべんだらりと過ごしている。妖怪退治や異変解決を生業としているにもかかわらず、修行もしない。
尤も本人は修行を行わずともデタラメに強く、持って生まれた天稟のみで弾幕ごっこを楽しみ、退治業を適当に行っている。
裏表のないサバサバとした性格。妖怪だろうが人間だろうが平等に扱う。
しかしそれでいてシビアな価値観を持った少女であり、誰でも平等に扱う反面、誰も仲間と見ておらず、異変解決や妖怪退治に関しても無慈悲。
それであるのに、彼女は人妖問わず様々な幻想郷の住民を引き付ける、謎の魅力を有している。

今回の霊夢は輝針城以降からの参戦である。

【方針】
聖杯戦争を大掛かりな『異変』だと考えており、心底面倒であるが、自発的に解決に乗り出そうとしている。
キャスターが本当に頼りない為、万一戦闘に陥ったら、自分が戦おうと思っている。


533 : ◆zzpohGTsas :2016/03/12(土) 19:32:06 Gfyn3j4s0
投下を終了いたします。タイトルは『逢魔時の空』です


534 : ◆CKro7V0jEc :2016/03/12(土) 20:29:12 VNADYk5A0
投下します。


535 : 美柳ちなみ&アサシン ◆CKro7V0jEc :2016/03/12(土) 20:30:02 VNADYk5A0



「あぇっ……――」


 鮮血の匂いと、それが飛散する音とが、路地裏で噴射された。
 一人の男の首筋の血管が、鋭い刃に引きちぎられるように切断される。
 不意を突くように背後から襲われたその男に、一片たりとも恐怖はなく、残ったのは即死を免れた数十秒の後悔だった。

 彼が殺された理由はただ一つ。
 聖杯戦争のマスターだったからだ。
 その男が、この聖杯戦争にいかなるスタンスで参戦したのかはわからない。
 しかし、聖杯戦争に招かれた時点で、過半数は幸せな未来を勝ち取る事は出来ない運命に巻き込まれるのである。
 この男の未来はここで途絶えた。
 命が燃え尽きる時にまで何かを望むような男ではなかったのだろう――痛みの中でもどこか安らかに眠りに堕ちようとしていた。
 その男は、その生涯を終え、死人となる。


「まず一人」


 気配を殺して、男の背後に現れ、その男の首筋を切り裂いたのは、『暗殺者』のサーヴァントであった。
 そのクラス特性を最大限利用した戦法であると言えよう。

 青いメッシュの入った長い茶髪と、のっぺりした中年間近の顔立ちが、そのアサシンの特徴だった。
 その年齢不相応な外見と黒いレザージャケットは、確かに街中を歩けばそれなりに目立つだろうが、サーヴァントとしては取り立てて個性に満ちた外見でもない。
 元々、日本人だったので、平然と東京の街を歩いても、大人しくしていれば、多少個性的に見られても、そこまで注目を浴びる方でもないのだろう。
 確かに、目立つといっても、都内で一日中電車に乗っていれば、二、三人は見かける変人ほどではない。


「フンッ」


 彼の本当の名は、大道克己。
 知る人ぞ知る、テロリスト集団のリーダーであった。
 日本の地方都市を狙い、タワーを占拠した逸話が最も有名な活躍であり、それ以外では傭兵としての活躍が世界的であった。
 一般人にこそ知られておらずとも、その世界の重鎮・要人ならば確実に知っている類の人間だ。雇う側としても、狙われる側としても……。
 かつて占拠したのは、東京スカイツリーほどの規模の物ではなかったが、それでもその都市のシンボルとしては有名なタワーであった事や、国内でも注目を浴びる都市であった事もあり、その知名度は上がった方だろう。
 その目的も又、ある種、特殊な思想に基づいた物であり、常人には理解し難く、故に人々の理想の中でカタチを歪められる事もなかった。
 これは後述しておこう。


「――これでいいな? マスター」


 アサシンは、無抵抗な人間を後ろから襲う事にも、躊躇は一切しなかった。
 先ほどの男が、いかに無力で無意識であろうとも、命を刈り取る事に何の躊躇も持たない。
 人間と同程度の気配にまで押し込めた、『気配遮断』のスキルは、こうして有効活用しなければ意味がないわけだ。
 そこに微かな感情でも閉じこもっていれば、どれほど気配を消す事が出来ても人を殺すのには向いていない。

 本当に暗殺に必要なのは、ナイフを捻る事が出来る腕と、躊躇と罪悪感のない精神だけだ。
 しかし、前者は鍛えられても、後者は普通の人間に生まれれば備えるのは難しい部分でもある。
 その点において、アサシンの境遇は、まさにその素養を培うに十分だった。

 ――そう。

 このサーヴァントには、感情が無かった。
 肉体が強化され、感情が消えた“死人の兵士”――“NECRO OVER”、という在り方をした彼には、罪悪感など生まれる余地も無いのである。
 一度死んだ時、彼からは全ての感情が希薄化し、やがて、完全に消失した。

 そして、彼にとって、英霊であった以前の“生前”など何の意味もない。
 便宜上の“生前”には、彼は既に“死人”だったのだから。
 今も、生前も、何ひとつ、考える事は違わなかった。
 同じように他者を殺し、己の目的を達成しようとする姿であり続ける――それが大道克己だった。


536 : 美柳ちなみ&アサシン ◆CKro7V0jEc :2016/03/12(土) 20:30:27 VNADYk5A0


「ええ。上出来よ」


 ふと、アサシンのマスターが、口を開いた。
 彼女は、この真夜中に、日傘を差したまま、男の死体を見下ろしていた。
 その瞳には、この哀れな死者への侮蔑が織り交ぜられていた。
 それは、先ほどまで、この男と交わしていた瞳だった。
 だから、この“死体”が生きていた時、最後に見たのは、まさしく、彼女の豹変した、歪んだ笑みだった筈である。


「……マヌケなオトコ。この程度の色仕掛けに屈するなんて」


 そもそも、何故この男がこんな路地裏にやって来たのかといえば、それは、このマスター――≪美柳ちなみ≫の、名のとおりの美貌に魅かれての事であった。
 少し声をかけてみれば、あっさりと人を寄せてしまう……それが彼女だった。

 こうして真夜中に道を歩いていても、彼女の周りは外灯が照らすように輝いてしまうほど――彼女は美しかった。
 自ずと彼女の周囲には蝶が飛び交い、独特の和やかな雰囲気は他者を安心させる。
 その内面に孕んだどす黒い感情など、微塵も表に醸し出されなかった。
 男性ならば、彼女に注目せざるを得ない容姿であろう。

 下手をすれば、アサシン以上に、気配が全く遮断できていない――というのに、他者を油断させ、他人を容易に暗殺できるのが『美女』という生物だ。
 綺麗な花には棘がある、という言葉があるが、ちなみの持つ棘の数は半端な物ではない。
 ここにいるアサシンもまた、彼女にとってはそのいくつもの棘の一つに過ぎないのだろう。


「……でも、お礼だけは言っておくわ。ありがとう……ステキだったわ、あなたの“最期”」


 日傘を傾けたまま、男の死体に微笑みかける。
 下手をすれば――この男が根っからの馬鹿男だったのなら、この一つの笑みで彼女を赦してしまうかもしれなかった。
 あまりにも柔和で、美しい微笑みを前に、自分が死んだという事実さえどうでもよくなる――。

 しかし、その言葉には、「死んでくれてありがとう」という意味合いを含んでいた。
 彼女は、自分の為に一人の人間を殺してもその程度にしか思っていないか――もしくは、何とも思っていない。
 この世に必要なのは、自分だけ。

 ……それが、美柳ちなみという女だった。
 只の人間でありながら、ここまで人間らしい感情を消せるのもまた、人の業という物であろう。
 まともな育ち方をすればこうはならなかったのだが、彼女は母に捨てられ、父にも愛されず、結果として、愛する事を知らないまま犯罪者となった。
 その心を癒す者は、自分の為に他者を道具として扱う事のみだ。


「いつも、こうね。みんな、ちょっとした演技に、簡単に騙される。それとも、アタシの顔ってそんなに綺麗なのかしら」

「生きている人間には、余計な欲が付きまとう。本当に生を楽しむには、ジャマな欲がな」

「……だから、アナタは、この街の全てを“死人に変える”おつもりなのかしら?」


 ちなみの口調が、淑やかな令嬢のようになっているのは、皮肉のつもりのようだったが、アサシンは意に介さない。
 それは、別段、アサシンがちなみに酔っているという訳ではない。――彼には、感情など無いのだから。
 だから、そう問われて、アサシンは全く表情を変える事なく、答えた。


「……いや。他人の欲なんざどうでも良い」

「では、何故?」

「――それが、俺の死んでからの唯一の楽しみだからだ。
 “死んでいながらこの世を彷徨う”……そんな寂しい人間たちで街が溢れていくのが見たいんだ。
 ……そう思わないか? なあ、“姉貴”」


 アサシンは、マスターの事を、どこか皮肉っぽく「姉貴」と呼んだ。
 ちなみは、その呼び方に眉を顰めた。
 それというのも、ちなみ自身が、既に、アサシンたち英霊と同じく、“死人”であり、その状況を好ましく思っていなかったが故だろう。

 魔術師として呼ばれたちなみであったが、本来、彼女は何年か前に殺人などの罪で死刑を執行された怨霊である。
 それ故、本来ならば、その立場は英霊の側でもおかしくない訳だが、サーヴァントに匹敵する卓越した能力や逸話は持たなかった。
 結果、聖杯に肉体を与えられた彼女の役割は、サーヴァントではなくマスターだったのである。
 そんな“死人”仲間であるちなみを、アサシンは姉と呼んだのだ。


「……アタシを下品に呼ぶのは、やめてもらえるかしら?」

「ハッ。流石は、お嬢様って奴だな。それなら、“姉さま”とでも呼べばいいのか」

「冗談でしょ?」

「ああ。冗談だ」


537 : 美柳ちなみ&アサシン ◆CKro7V0jEc :2016/03/12(土) 20:30:47 VNADYk5A0


 そして、ちなみとアサシンは、同じ“死人”でありながら、目的は正反対だ。
 サーヴァントとマスターの関係は時に、恐ろしい程に噛み合わず、主従というにはあまりにもばらけた目的のまま協力する羽目になる事がある。
 ちなみは、現世に還る事を望み、アサシンは、“ある街の人間をすべての人間を死人に変える”事を望んだのだ。――それは、“生前”もアサシンの目的として在った思想だった。
 いわば、生の側に執着するか、死の側に執着するかの点において、二人は相いれなかったのである。

 だが、一度こうして結ばれたからには、我儘は言えない。
 与えられたカードでゲームをするしかない事は、お互い理解している。
 たとえ噛み合わなくても、それぞれの聖杯に託す望みの為に戦わねばならない。

 いずれにせよ、アサシンが死人だらけにする街など、ちなみには何の関係もないので、聖杯を得てからお互いの願いが叶っても、困る事はない。
 行うべきは、協力し合う(あるいは、利用し合う)事で、他の主従を撃退する事――のみ。
 あとは、互いの思想を、極力忘れながら、機械的に、他と殺し合うだけだ。
 これがなかなか難しいわけだが。


「……まっ、俺にはこの身体を維持する為のマスターが必要だ。
 親愛を込めた名前で呼びたくなっても、仕方があるまい」

「親愛など、無い癖に」

「違いねえな。……ああ、死人に『愛』なんて無い」


 冗談を言うアサシンは、常に表情を変えなかった。
 どこまでも乾いた男だった。
 口が利けることを試すように、ただそれだけの為に冗談や皮肉を言うのである。
 ちなみ以外の人間が見たら不気味に思うだろうが、ちなみは彼を不気味には思わなかった。


「――アサシン。アンタは、生きている人間にも、必ず愛があると思ってるの?」

「……少なくとも、あんたは違ったらしいな」

「命ある者は、自分の為だけに戦えば良い……。それが、当然の事でしょう?
 愛なんていうモノを信じるのは、お人好しのガキと、老い先短いオジサマやオバサマだけ……」

「ハッ! 珍しく気が合うな、マスター」


 ちなみは、アサシンの方に少し目をやった。
 そこにあるのは、相変わらず乾いたアサシンの瞳だけだ。
 一点、気が合ったが、しかし、それでも尚、ちなみにはアサシンと分かり合える予感は無かった。
 少なくとも、ちなみは“感情”が欠如している訳ではないのだ。
 ただ、“愛”が無いというだけ。

 ちなみの胸中には、ある人物たちへの強い憎しみが生々しく残り続けている。
 両者には、根本的な差異があった。


538 : 美柳ちなみ&アサシン ◆CKro7V0jEc :2016/03/12(土) 20:31:25 VNADYk5A0


「さあ、くだらない話をするより、そろそろ行きましょう。
 このオトコの相棒の死に損ないが、消えるより前に……ここを立ち去らないと」

「フンッ。わかってる」


 アサシンは、どこか不服そうだった。
 無理もない。戦争屋だった彼は、闘争や殺戮そのものを楽しんでいる。
 どうせならば、死に損ないであっても、この男のサーヴァントと最後に一戦交えたいと思っていただろう。
 しかし、マスターの方針としては、「極力正面から戦わない」を提唱していた。
 これは、アサシンの特性から考えても至極当然の事であるが、彼の性格が過度に好戦的だった。
 もしかすれば、『狂戦士』としての特性も充分に存在したのかもしれない。
 何にせよ、共に聖杯を目指す以上はそこに合理化も必要となる。


(アサシン……アンタに好き勝手させるつもりはないわ。
 アタシには、まだやる事があるの……。それまで、絶対に消えるワケにはいかない……)


 ちなみは、現世での再臨を、聖杯に託す事にしていた。
 かつてちなみをこの世から完全に消し去った成歩堂龍一や綾里真宵を殺し、綾里千尋のプライドを打ち負かす――その為に。
 そして、その先は、また、己の欲望だけを果たす為に生きていく……ただ、それだけの為に。


(よく首を洗って待っている事ね、“リュウちゃん”……それに、“オバサマ”……)




----

【CLASS】

アサシン

【真名】

大道克己@仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ

【パラメーター】

通常時
 筋力D 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具A

変身時
 筋力B 耐久A+ 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具A
 ※気配上昇

最強形態
 筋力A 耐久A 敏捷A 魔力A 幸運A 宝具A
 ※使用可能時間は数分間のみで、一度でも使用すると確実に東京全土に気配が伝わる

【属性】

中立・悪

【クラススキル】

気配遮断:C
 自身の気配を消す能力。
 完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

【保有スキル】

屍人の兵士:A
 ネクロオーバーとして、『生前』に『屍人』であった者が持つスキル。
 このスキルによって身体能力が常人の数倍に達し、彼の能力をサーヴァントの域まで引き上げている。

心眼(偽):B
 直感・第六感による危険回避。
 虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。
 視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。


539 : 美柳ちなみ&アサシン ◆CKro7V0jEc :2016/03/12(土) 20:31:42 VNADYk5A0

【宝具】

『失われし“永遠”の記憶(エターナル)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~100 最大捕捉:1~100

 ロストドライバー、T2エターナルメモリの二つの人工遺物を用いて変身する『死神』の仮面ライダーの姿。
 この白貌の死神へと変身する事で、アサシンは、三騎士(セイバー、アーチャー、ランサー)に匹敵、もしくは、それ以上の戦闘能力を一時的に獲得できる。
 変身時は、両腕に青い炎を、背には黒い『エターナルローブ』を纏い、武器として短刀『エターナルエッジ』を構え、『26本のT2ガイアメモリ』で自在な攻撃を可能とする。
 エターナルローブは、あらゆる熱・冷気・電気・打撃を無効化する能力や、Aランクレベルの「対魔力」のスキルを一時的にアサシンに付随させ、彼の守りを鉄壁に変える。
 エターナルエッジは、敵を斬り裂くだけでなく、任意のT2ガイアメモリの力を幾つもの異能力へと変えて自らの身体を強化する役割を持つ。
 T2エターナルメモリを含めた26本のT2ガイアメモリは、適時召喚して使用する事が出来、25種類の能力を死神に与え、特殊攻撃を放つ事を可能とする。
 また、26本全てを同時召喚して使用する事で数分間だけ、パラメーターがオールAランクの『最強形態』へと変身する事もできる(使用中はエターナルローブを失う)。
 上記のように、『失われし永遠の記憶(エターナル)』は強力な宝具であるが、発動中は、「攻撃態勢」とみなされ、「気配遮断」のスキルが一時的に無効となる。
 変身時の武具も使用頻度が高まるほど感知されやすくなる為、無暗に使いすぎれば確実に他のサーヴァントに気配を感知されるだろう。
 特に、最強形態へと変身した際には、東京全土に確実にアサシンの気配が伝わってしまい、他のサーヴァントに狙われやすくなる事は間違いない。

【weapon】

『ロストドライバー』
『T2エターナルメモリ』
『無銘・ナイフ』

【人物背景】

 テロリスト集団『NEVER』の隊長。
 かつては心優しい少年であったが、交通事故で死亡した後、NEVERとしての蘇生技術で、蘇生。
 感情を失い、代わりに兵士としての異常な戦闘能力を獲得している。
 風都の人間を全て死者へと変える事を目論み、仮面ライダーエターナルとして街を泣かせた。

【サーヴァントとしての願い】

 東京全土の人間を全て、『死人』へと変える。
 聖杯に託す願いは、『風都の解放』――即ち、『風都の人間を全て、屍人の兵士へと変える』事。





【マスター】

美柳ちなみ@逆転裁判3

【マスターとしての願い】

 自らの命の蘇生。
 綾里千尋、成歩堂龍一、綾里真宵への復讐の遂行。

【Wepon】

『日傘』

【能力・技能】

 代々霊力を持つ霊媒師の家系『綾里家』の分家筋で、彼女自身は霊力の才をほとんど持たないものの、それらに対する理解が一定数存在する。
 殺人鬼としては、男を魅了する美貌や雰囲気、他人を同情させる交渉術などを用い、他者を利用して殺した。

【人物背景】

 死刑執行済の美女。
 誰にも真から愛される事も、愛する事もないまま歪んだ殺人鬼。
 他者を自分の利益やプライドの為に蹴落とし、自らの罪を明るみにしようとした者は容赦なく殺害する。
 既に死人であるものの、聖杯によって肉体が与えられ、成歩堂龍一や綾里姉妹への復讐の好機を得る。

【方針】

 聖杯の入手。


540 : ◆CKro7V0jEc :2016/03/12(土) 20:32:02 VNADYk5A0
投下終了です。


541 : ◆ACfa2i33Dc :2016/03/12(土) 20:38:49 dFIRanx60
投下および感想お疲れ様です。
投下します。


542 : 名無しさん :2016/03/12(土) 20:39:15 dFIRanx60

【2日目】


 日本首都、東京。
 五十人規模の死者を出す殺人鬼が現れ、お茶の間を賑わす事となっても、その賑わいは途絶えない。
 それに不審を抱き、マスターとして覚醒する者も、都市にはいる。
 だが、それでもその大勢は、空虚な営みを止めることはない。

 そしてその都市の中心、交差点を、一台の乗用車が右折していた。
 運転手は黒髪黒目の、これまた黒のコートを羽織った男。
 下に着ているスーツまで黒色で、その姿を一目見れば、想像力豊かな人間ならば、秘密組織のエージェントや殺し屋を想像するだろう。
 その想像も、ある意味では間違ってはいないのだが。

 The Global Occult Coalition――GOC。
 世界オカルト連合。
 "異常存在の破壊"を目的とする機構。
 とある"財団"が存在する並行世界において、財団内部で要注意団体に指定されている組織。
 男はそのエージェント――という役割を、この偽りの東京で負わされている。

 さておき。
 運転席に座る男は、ハンドルこそ握ってはいるが、その視線は都市の中を彷徨っていた。
 初めて東京へと上京した田舎者のようにきょろきょろと動き回り、本来取るべき進行方向への注意は少々散漫だ。
 だというのに、男の車は正確に運転され、前方の車両との間隔も、速度の加減速もほぼ完璧に保っている。
 まるで車自体が意思を持っており、男が運転しているわけではないかのようだった。

 いや、実際、車を運転しているのは彼ではない。
 不審を抱かれぬようにポーズこそ取っているが、実際に乗用車を操作しているのは男ではなく――"サーヴァント"。
 後部に設置された、黒色の金属体――アイテム《器物》のサーヴァントが、周囲の状況を把握し、車を五体のように操り、運転しているのだ。
 アイテム――"SCP-210-JP"と名乗ったソレは、とある"財団"にて保管されていた、意思持つアーティファクトのひとつである。
 彼――彼と呼んでいいのかはともかく――は、自らに接触した金属の物体に"騎乗"し、操ることができる。
 その特異性により、男の乗る車を操作しているのだ。

 サーヴァントを従えているということは当然、運転席に座る男も聖杯戦争に選ばれたマスターの一人。
 その名は、衛宮切嗣。かつては、"魔術師殺し"と呼ばれた男。


543 : 衛宮切嗣&アイテム ◆ACfa2i33Dc :2016/03/12(土) 20:40:16 dFIRanx60


 ――僕は、何故ここにいる? いや、そもそも僕は何故まだ生きている?


 そう、かつて、だ。
 今ここにいる衛宮切嗣は、魔術師としては死んだ――いや。
 そもそも、生命活動という意味でも、死んでいる筈の人間だった。

 少なくとも、衛宮切嗣の主観では、衛宮邸の縁側で、士郎と話をしながら――自分は息を引き取った、はずなのだから。

 だというのに、今東京で衛宮切嗣は生きている。
 《この世全ての悪》に侵され、もはや戦う事は不可能だった体は全盛期とまではいかずとも、魔術戦に耐える程度には復調している。

 そして、聖杯戦争が始まるのだ、と彼のサーヴァントは告げた。

 ――なんだこれは? 僕は幻覚の中にいるのか?

 理解できない、と言わざるを得ない出来事だった。
 だが、もはや死んでいた切嗣を、このような回りくどい幻覚に投げ込む異議が見出せないし、そもそもそのようなことができるモノにも心当たりはない。
 この身を侵した《この世全ての悪》による走馬灯だったとしても、東京での聖杯戦争など突飛すぎる。

 ――リアリティが欠如しすぎて、逆に信じざるを得ない、か。

 何らかの要因によって、衛宮切嗣は東京へと召喚された。
 同じく何らかの要因によって、衛宮切嗣のダメージはある程度回復した。
 そして聖杯戦争のマスターとして選ばれた。

 順序はある程度逆かもしれないが、現状把握だけを行えばこうなる。

 そして問題は、これからどうするか、だった。

 聖杯戦争。

 これが冬木の聖杯とは別の聖杯によるものならば、聖杯が"この世全ての悪"により汚染されているということはないだろう。
 だが、この聖杯戦争を、正直切嗣は信用しきれない。

 その理由のひとつが、今も街頭テレビに映し出されている、褐色の肌に紋様が刻まれた男。
 東京の街で52人もの殺戮を成し遂げ、今も逃亡している殺人鬼。
 言うまでもない。聖杯戦争の関係者だ。
 アイテムの言によれば、アレもまた"財団"に管理されていた異常存在のひとつであった筈だ、という。

 アイテムの言う"財団"。
 その団体は、異常な存在及び事象を、"確保(Secure)"、"収容(Contain)"、"保護(Protect)"する事を行動理念とするらしい。
 そのような組織が存在するならば、魔術協会や聖堂教会と衝突しないはずがない。
 そういった事件を聞かないことから考えると、"財団"とは衛宮切嗣が生きていた世界とは別の並行世界に存在する組織だと推測できる。
 無論、切嗣がこの世界で所属していることになっているらしいGOCも同じくだ。


544 : 衛宮切嗣&アイテム ◆ACfa2i33Dc :2016/03/12(土) 20:40:43 dFIRanx60

 並行世界の運営。
 それは切嗣の世界では、"魔法"に類することの筈だ。
 同じく魔法に近いモノである聖杯ならば、可能である可能性はある。
 だがそれは同時に、既に聖杯が"英霊の召喚"以外の機能を発揮しているということでもある。
 それに切嗣も、由来不明の方法で招き寄せられている。
 この時点で、この聖杯はイレギュラーだ。
 聖杯戦争の裏で、何らかの計画が巡らされている可能性も否定できない。

 ――そうだとすれば、看過はできない……そもそも、あの男を放置することもできないか。

 江東区にて52人を殺害した、刺青の男。
 アレは放置しておけば、また多くの人間を殺すだろう。
 そうなる前に、あの男を始末しなければならない。
 聖杯戦争から降りる、という選択肢はない。

 ――だが、この聖杯戦争……僕はどうすればいい?

 衛宮切嗣に残った最後の未練。
 イリヤスフィールの救出。
 聖杯を使えば、それは叶うだろう。
 だが聖杯は安全なのか?
 そして、聖杯を使うことは、例え汚染がなかったとしても正しいのか?
 ここで破壊し、それ以上の利用を断つことも、ある意味では正しいのかもしれないのではないか?
 冬木の聖杯戦争の災禍を見てしまった切嗣には、そんな考えさえも浮かんでしまう。

 ――『魔術師殺し』……か。

 皮肉なことに、この世界でも切嗣は『魔術師殺し』と呼ばれていた。
 GOCの定める人型の脅威存在。
 『妖術師』や『魔術師』とも呼称されるそれらを、殺して回った故の称号。

 だから、『魔術師殺し』の切嗣は聖杯を破壊しろと囁く。

 だというのに、衛宮切嗣個人は、それを諦め切れない。

 アイテムは器物だ。
 問えばラジオ越しに答えてくれるだろう。だが、その答えは、結局器物としてのモノでしかない。
 決定するのは、切嗣の意思だ。

 だから――


545 : 衛宮切嗣&アイテム ◆ACfa2i33Dc :2016/03/12(土) 20:41:04 dFIRanx60

  ◆


『子供の頃、僕は正義の味方になりたかった』

『なんだよ、それ。“なりたかった”て。諦めたのかよ?』

『うん。残念ながらね。ヒーローは期間限定で、大人になると名乗るのが難しくなるんだ』

『なんだ。それならしょうがないな』

『うん。本当に、しょうがない…』

『じゃあ――』



【ケリィはさ、どんな大人になりたいの?】

【――僕はね……】


 せいぎのみかた。
 その言葉は、今更になって、衛宮切嗣の胸に重くのしかかっている。


546 : 衛宮切嗣&アイテム ◆ACfa2i33Dc :2016/03/12(土) 20:41:39 dFIRanx60

---

【クラス】アイテム
【真名】SCP-210-JP@SCP Foundation 日本支部
【パラメーター】
筋力- 耐久- 敏捷- 魔力- 幸運- 宝具C
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
器物英霊:B
 器物そのものである英霊。自己管理と対話のための自我を持つが、精神的なものではない。
 あらゆる精神干渉を無効化(というより意味がない)する。
 器物として純粋であるほどランクは高まる。
対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
 また、『騎乗』状態にある器物に対しても同等の対魔力スキルを付与する。
【保有スキル】
騎乗:EX
 宝具に由来する特殊な騎乗スキルを保持する。
【宝具】
『SCP-210-JP』
ランク:C 種別:対物宝具 レンジ:- 最大補足:-
【SCP-210-JPのもう1つの特別な点は、接触した他の金属の物体を自身の一部とすることができるという点です。
 ここで言う"金属の物体"は非常に広範で厳密には定義できませんが、金属的な性質を持つ物質から成る物体、もしくはそのような物体を構成部品に有する物体のことです。ただし後者の場合、非金属の構成部品はその一部というよりはむしろ付属品という振る舞いをします。
 取り込まれた金属の物体はSCP-210-JPの意思に従ってその硬度を無視して歪曲させることが可能です。鉄くずなどといった意味のない物体は、自身の手足などといった運動器官とすることをSCP-210-JPは好みます。
 機械や電化製品に接触した場合はそれらを任意に操作することが可能で、その機能を損なわないような形で自身に組み込みます。使い方のわからない機械も教えることにより正しく扱えるように学習するのが確認されています。
 また、自分の一部となった金属の物体は自らの意思で元通りに分離することができるようです】

 SCP-210-JP自身と、その特異性が宝具となっている。
 自らに接触した金属体に"騎乗"し、自らの一部として取り込み操作する。
 "騎乗"した物体には対魔力が付与され、Cランク相当の宝具として扱われる。
 他サーヴァントの宝具や武装に"騎乗"することも可能だが、Bランク以上の宝具に対しては"騎乗"できない。

『████』
ランク:- 種別:対████宝具 レンジ:████ 最大補足:████
 SCP-210-JPに筆記具を持たせた際に書き上げた設計図に記載されていた、戦闘機に似た物体。
 これが本来のSCP-210-JPの武装であるとSCP-210-JPは主張している。
 ただしその技術は現代の科学では再現不可能なモノが多く扱われており、作成は不可能だった。
 英霊となった現在ならば、座に記録されているという可能性もあるが――[編集済]。
 また、人間が乗るためのコクピットであろう部位が確認されている。

【weapon】
『SCP-210-JP』によって操作する金属を武器として扱える。
【人物背景】
【SCP-210-JPは黒色の金属から成る物体です。クロムモリブデン鋼に似た合金で作られており、同じ素材を用いて同じ形状の物体を作成することは現代の科学でも可能です。
 その内部に制御部のような部位はなく、全てが同じ素材で構成されていることをいくつかの非破壊の試験結果が示しています。
 SCP-210-JPの特別な点の1つは、有意と考えられる電波を放射することです。電波は主に144MHz帯の音声通信で、受信すると日本語で女性もしくは子供のような声が再生され、これはSCP-210-JPの発声器官であると考えられます。
 こちらからは電話でも普通に話しかけてもその声を聞くことができるようです。また、電波かもしくは他の何らかの手段で周囲の状況を把握する能力があるようです。
 財団によるインタビューから、SCP-210-JPは人間に近い自我と知能を有していると思われます】

 同じくインタビューにおいて『守護者として生まれた』と解答しており、何らかの使命の存在を仄めかしている。

【サーヴァントとしての願い】
 守護者としての使命を果たす=マスターを守護する。


547 : 衛宮切嗣&アイテム ◆ACfa2i33Dc :2016/03/12(土) 20:41:56 dFIRanx60

《アイテム》
『器物』のクラス。
人類史にその名を残した遺物(アーティファクト)が、サーヴァントとして召喚されたもの。
当然ではあるが、聖杯戦争で戦うならばマスター本人が振るわなければならない。(一部の例外を除いて)
その性質上、エクスカリバーのような『持ち主が定められた名剣聖剣』の類よりも、『幾人もの持ち主の間を流転した呪われた魔剣』の類の方がこのクラスとなりやすい。(そもそも前者の場合、その担い手の方が召喚される)
このクラスに分類されるサーヴァントには2パターンあり、『先天的に意思を持つ器物(いわゆるインテリジェンス・アイテム)である』タイプと『後天的に民衆からの想念・信仰を受けて英霊化した』タイプがある。
前者がストームブリンガー、後者は村正など。


【マスター】衛宮切嗣@Fate/Zero
【マスターとしての願い】
 現状まだ決まっていない。(イリヤの救出? あるいは願いを最初から諦めて聖杯戦争の終結に動く? そのどちらも?)
【weapon】
 銃器類、爆発物。
 本来の現役時代は『起源弾』と呼ぶ魔術師殺しの銃弾を所持していたが、この聖杯戦争では不所持。
【能力・技能】
 魔術使い。
 本来であれば『この世全ての悪』の泥に苛まれ魔術の行使など不可能な状態であったが、何故かこの聖杯戦争ではある程度復調している。
 自身の時間流を操作する固有の魔術、『固有時制御』での高速戦闘及びバイオリズムの抑制による隠密活動が可能。
 ただし復調しているとはいえ本来の状態には程遠いため、連続使用を行った場合の負荷は大きい。

【人物背景】
 かつて魔術師殺しと呼ばれた魔術使い。

 この世界においては、『世界オカルト連合(GOC)』のエージェントとして活動している、という設定。
 GOCにおいても、『魔術師殺し』と呼ばれる優秀なエージェントであった。

【方針】
 この聖杯戦争を調査し、裏でなにかを計画している存在がいるならば打倒する。
 また、褐色に刺青の殺人鬼(SCP-076)は最優先で排除する。


548 : 名無しさん :2016/03/12(土) 20:42:15 dFIRanx60
以上で投下終了します。


549 : ◆As6lpa2ikE :2016/03/12(土) 21:46:00 4ElWJLP20
投下します


550 : 奈落の悪鬼&傷ついた悪姫  ◆As6lpa2ikE :2016/03/12(土) 21:48:39 4ElWJLP20
わたしのおとうさんとおかあさんは『SCPざいだん』ではたらいてます。
ふたりはそこで、あさはやくからよるおそくまで『SCP』というとってもふしぎで、とってもこわいものをちょうさしたり、けんきゅうしたりしてます。

おとうさんとおかあさんがはたらいてるあいだ、わたしは『ざいだん』の『たくじしょ』にあずけられます。
ふたりとあまりあえないけど、『たくじしょ』にはほいくしさんやともだちがいるからぜんぜんさびしくありません。ぜんぜんです。

よるおそくにわたしをむかえにくるとき、おとうさんとおかあさんはいつもつかれたかおをしています。
だから、しょうらいおおきくなったら、わたしはおとうさんやおかあさんのように『SCP』をちょうさしたり、けんきゅうしたりするしごとをして、
ふたりをやすませてあげたいです。




551 : 奈落の悪鬼&傷ついた悪姫  ◆As6lpa2ikE :2016/03/12(土) 21:49:58 4ElWJLP20
「お……お、俺のバーサーカーが……嘘だろ?」


やっと男の喉から捻り出された声は、そのような情けないものだった。
自分の目の前に広がる光景が理解できない、意味不明だとでも言いたげである。

先ほどまで男の目の前には彼のサーヴァント――バーサーカーが居たはずなのに、今はその姿がない。
そこに残されたのは大きな破壊跡と、先ほどまでバーサーカーと対峙していた2人の少女だけである。
1人は10代前半くらいで、右手の甲に赤い紋様――『令呪』を宿した少女。
もう1人は同じく10代前半くらいで、悪魔のような角を生やし、背中に黒い翼を持った銀髪の少女だ。
前者がマスターで、後者が彼女のサーヴァント――おそらくはキャスターであろう。
マスターの少女は男と同じく、今自分の目の前に広がる光景が信じられないと言い出しそうな、驚いた表情をしており、
対してキャスターの少女は、勝ち誇ったような表情――所謂、ドヤ顔をしていた。



この戦闘を先に仕掛けたのは男の方からである。
近所に突如現れたという『古城』の噂を不審に思った彼は、己のバーサーカーと共にそこへ忍び込み、
廊下の曲がり角で2人の少女と出会ったのだ。
男のバーサーカーは咆哮をあげながら、雷獣の如きスピードで地を駆け、彼女たちへと向かっていった。
しかし、バーサーカーの攻撃が2人に届くことはなく、それよりも先に、キャスターの少女の右手から燃え盛る炎が、左手から氷の吹雪が出て、
2つが練り合わさり、螺旋状の光線と化して放たれた。
光線はバーサーカーに直撃し、それの霊核は破壊された。
このように、瞬きする間もないほどの一瞬で戦闘は終わったのである。



この結果は男のプライドをひどく傷つけた。
何せ、最強だと思っていた己のバーサーカーがいともあっさり、見た目が少女のキャスター相手に敗北したからである。
一応、彼の手にはまだ『令呪』が残っており、『聖杯戦争』参加者の資格を失ってはいないが、それも己を守るサーヴァントが消えてしまってはそれは殆ど意味がないだろう。


「く……て……てめぇら!」


先ほどまでバーサーカーが立っていた地点から、そこより奥側の少女たちに目線を向けるべく顔を上げ、男は叫ぶ。


「い、いったい……ナニモンだ!」


相手の名を問うセリフは本来、戦闘が始まる以前に言うべきものなのだろうが、
『どうせもうじき死ぬ相手に名前を聞くのは無意味だ』と高をくくっていた男はその手順を踏んでいなかった。
しかし、今の彼にとっては忍び込んだ敵地で敗北した上、相手が『名も知らない』少女2人だったと言うのは我慢ならない事である。


「我の名前?」


2人の少女が声を揃えてそう言う。
その後、キャスターが『なーはっはっ!』と笑い声をあげた。
彼女は右目を右手で覆い隠すようなポーズを取り、


「我が名は傷ついた悪姫、ブリュンヒルデ!」


と、声高らかに名乗った。
それを見て、マスターの少女も慌ててキャスターと似たようなポーズを作ってから、声を低くしてこう名乗った。


「わ、我が名は奈落の悪鬼、アイスヴァ……じゃなかった、アザナエルなり!」


己の問いに返ってきたそのようなファンタジー感溢れる名乗りに、男は再び唖然とした。




552 : 奈落の悪鬼&傷ついた悪姫  ◆As6lpa2ikE :2016/03/12(土) 21:51:20 4ElWJLP20





突如東京の地に舞い降りた2人の堕天使。
元々、彼女たちは異能に憧れた普通の少女であった。
片方は夢の世界で力をもった存在と”なり”、片方は閉じられた世界で力を持った存在と”された”。
似ているように見えるが、その実決して同じではない2人。
彼女らが上る階段の先に在るものは光か、それとも虚無か――








553 : 奈落の悪鬼&傷ついた悪姫  ◆As6lpa2ikE :2016/03/12(土) 21:51:57 4ElWJLP20
【クラス】
キャスター


【真名】
ブリュンヒルデ(神崎蘭子)@グランブルーファンタジー@アイドルマスターシンデレラガールズ


【パラメーター】
筋力E 耐久D 敏捷B 魔力B 幸運A 宝具B+


【属性】
中立・善


【クラススキル】

陣地作成:B
魔術師として自らに有利な陣地『工房』を作成可能。
キャスターの場合『工房』ではなく、空の世界で根城としていた『古城』を作成する事ができる。

道具作成:D+
魔力を帯びた器具を作成可能。
特に彼女は魔導書(グリモワール)の作成に長けている。


【保有スキル】

シンデレラガール:A
ただの女の子からアイドルの頂点へと昇りつめた少女の称号。
苦難を乗り越えて成長した逸話により、困難へと立ち向かう時にステータス以上の力を発揮できる。
また彼女の歌やアイドルとしての魅力は、相手の性別を問わず惹きつける一種の魅了として発揮される。

覚醒魔王:A
Bランク相当の対魔力と魔術を内包したスキル。
キャスターは異世界の祝福を授かり、魔王に覚醒した存在である。
また、彼女は魔王になる以前から、ファンタジー分野についての知識が豊富であった。
故に、覚醒魔王と化したキャスターは魔力と魔術の扱いに非常に長けている。


悪魔の翼:B
キャスターの背中に生えた漆黒の翼。
彼女はこれを用いて空を自由自在に飛ぶ事が出来る。

魔力放出(炎氷):C
武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。
キャスターは右手と左手それぞれに異なる属性の魔力を有しており、『呪われし右手』には炎の魔力、『聖なる左手』には氷の魔力が宿っている。それぞれの手から火炎、吹雪を放つことが可能。


【宝具】
『魔王城』
ランク:E 種別:- レンジ:- 最大補足:-

キャスターが空の世界で根城としていたもの。
元々は空の世界でその辺にあった古城にキャスターが勝手に引きこもったものであり、正確には彼女自身の物ではないため、その神秘性はかなり低い。
よって、この宝具は『住む事が出来る』という以外では特にこれといった効果を有しない。


『真・地獄の業火』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:50 最大補足:30

キャスターが空の世界で『星晶獣』として召喚された際に発動した技が宝具になったもの。
『呪われし右手』に宿る炎と『聖なる左手』に宿る氷の属性の魔力を練り合わせ、それを螺旋状に発射する。
威力は高く、Bランク以下の防御スキルはこの宝具による攻撃の前では無効化される。
しかし、消費する魔力が多く、安易に連発する事は出来ない。

【weapon】

自身の両手に宿った魔力とそれから生み出される魔術

【人物背景】

熊本県出身、14歳のアイドル。
いわゆる中二病。比喩的で難解な言葉を用いて話す。
実は結構な読書家らしい。

ソーシャルゲーム『グランブルーファンタジー』の『アイドルマスターシンデレラガールズコラボ』において、異世界に飛ばされるも、元々ファンタジー好きな彼女はその状況を楽しみ、異世界の祝福を受けて翼による飛行能力と魔法を使う力を授かった。
その世界で『魔王ブリュンヒルデ』となった彼女は古城を手に入れる。
後に騎空士一行と、彼らと同行していた渋谷凛、島村卯月と再会し、2人の説得を受けて渋々元の世界に帰るための旅に出るのであった。

【サーヴァントとしての願い】
なし。

【方針】
我が主を護る(マスターを守ります!)


554 : 奈落の悪鬼&傷ついた悪姫  ◆As6lpa2ikE :2016/03/12(土) 21:52:45 4ElWJLP20
【マスター】
SCP-014-JP-J/奈落の悪鬼、黒き翼の堕天使アイスヴァイン@SCP Foundation

【人物背景】
SCP-014-JP-Jは199█年に財団のフィールドエージェントである████ ███と研究員███ ████の間に誕生した、現在14歳の女児です。SCP-014-JP-Jは脳に対する精密検査や精神鑑定からは異常が見られないのにもかかわらず、多重人格を主張しています。
彼女の第2の人格である『奈落の悪鬼、黒き翼の堕天使アイスヴァイン』(SCP-014-JP-J)について、SCP-014-JP-Jは「彼は第十二地獄ヘルからやってきた天界より追放を受けた堕天使であり、自身の前世であったが、14歳になった我の中で目覚めたのだ」と発言しています。
しかし、いつの間にかSCP-014-JP-J-2が自身を堕天使ではなく悪魔だと名乗っていたり、堕天使であるSCP-014-JP-J-2の名前が何故かドイツ語で『豚の塩漬け』を意味する『アイスヴァイン』であったりとその全貌は謎に包まれています(なお、後者の疑問については財団のエージェント・カナヘビがSCP-014-JP-Jに尋ねた所、SCP-014-JP-J-2の名前が正しくは『アザナエル』であった事が判明しました)。



まあ、要するに、ただの厨二病少女。

【能力・技能】

SCP-014-JP-J-2の持つ強大なパワー
(例を挙げると、「邪悪な霊」を見る超常的視力や「天才的」剣術、冷気を操る力、飛行能力、あらゆる人間を魅了する超美貌など。なお、これらはあくまでSCP-014-JP-Jが主張しているだけのものである)

いくつかのSCPオブジェクトについての知識
(かつてO5-█のミスにより、財団の端末からいくつかのSCP報告書にアクセスする事に成功した際に知ったもの)


【マスターとしての願い】

ふふふ、全知全能の堕天使様を第2の人格に持つ我に願いたい物などないのですよ! 故に……故に……生きて、帰りたい、です……


555 : ◆As6lpa2ikE :2016/03/12(土) 21:53:26 4ElWJLP20
投下終了です。なお、キャスターのスキル『シンデレラガール』は『聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚』のネバーセイバー渋谷凛の同スキルを参考にしました。


556 : ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/12(土) 23:56:12 nwEDxxfI0
少し不安なので、先だって投下予告をしておきます。勘違いでしたら申し訳ありません


557 : ◆.QrNUkmVxI :2016/03/12(土) 23:57:03 cvL.NHBc0
滑り込みですが、自分も投下します
先に投下してもよろしいでしょうか?


558 : ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/13(日) 00:00:27 gTsEy6Xo0
>>557
お先にどうぞ


559 : ◆.QrNUkmVxI :2016/03/13(日) 00:02:36 6kkPcT8Q0
ありがとうございます
では、お先に投下させていただきます


560 : ◆.QrNUkmVxI :2016/03/13(日) 00:03:34 6kkPcT8Q0
 やくざ者という言葉は、元は博徒や的屋を指して、使われていたものだという。
 もちろん全ての博徒や的屋が、不健全な人間だったわけではないが、社会の鼻つまみ者達が、多く流れてきたのは事実ではあった。

 その後彼らが姿を変えて、現代の暴力団へと至るまでには、長い時間の流れを要した。
 遊びと暴力に明け暮れた、かつてのはみ出し者達は、社会の闇に潜むフィクサーとなった。
 今や彼らは無秩序に、人々を傷つけることはない。法律が厳格化した現代において、派手な無法行為は悪手でしかない。
 故に彼らは社会の裏へ、静かに巧妙に忍び込み、甘い汁を啜っている。
 人を脅すも金を稼ぐも、全てがビジネスへと変化した。非合法な取引であっても、商売という形を取るようになった。

 なればこそ、ヤクザは縄張りにこだわる。
 取引をする相手を奪われれば、あるいは取引の場を壊されれば、生きていけなくなってしまうからだ。
 生き延びるための縄張りを、荒らそうとする人間を、ヤクザは決して許さなかった。

 この異形の東京へと呼ばれ、聖杯戦争に巻き込まれた彼も、そうしたヤクザの一人だった。
 そして偽りの街においても、彼は相変わらずヤクザであった。

◆ ◇ ◆

 人は無一文では生きられない。
 金さえあればどんなものでも、合法的に手に入れられるが、だからこそ金を持たない者には、生きることすら許されない。
 その男が生きていくに当たって、金を稼ぐ手段としたのは、違法な薬物の売買だった。
 中毒性のある薬物は、他の商売に比べても、圧倒的にリピート率が高い。
 それ無しでは生きていけないから、たとえどれほど値を釣り上げても、金を出して買おうとする。

「へへ……」

 だからこそ、男はその道を選んだ。非合法な商売をしても、警察に捕まらないという自信があった。
 数日で見る間に貯まった金を、一枚二枚と数えながら、男はにんまりと笑みを浮かべた。
 薬物の入手ルートに恵まれていたとはいえ、これほど素早く成果を出せたのは、彼の才能の賜物だったのだろう。
 人目を避けるように裏道を選んで、夜の街を歩く男は、明日の予定を考えながら、札束を鞄へと突っ込む。

「――随分と景気が良さそうじゃないか」

 だが、だからこそその成果は、周りの目にもつきやすくなる。
 だからこそ彼は今日この日、その男に声をかけられたのだろう。

「あぁ?」

 ガラの悪い声を上げながら、売人の男はぐるりと振り向く。
 さながら月の白明か。
 漏れたネオンの明かりを受けて、輝いたのは白い装束だ。
 上等なスーツを身につけた、一人の男の姿があった。
 闇の中にあってもその瞳は、爛々と光を放ちながら、こちらを真っ直ぐに見据えている。
 肩幅の広い体格は、服の下に隠された、隆々とした筋肉を想起させる。
 只者ではない男だ。そして恐らく、まともでもない。


561 : ◆.QrNUkmVxI :2016/03/13(日) 00:04:48 6kkPcT8Q0
「何だテメェは。何か用か」
「お前のことは調べさせてもらった。ここらでヤクはご法度のはずだ……と言えば、名前も通じるとは思うんだがな」

 恐らくはヤクザの類だろう。
 自らもこの偽りの東京で、社会のはみ出し者のロールを強いられていた彼には、そのことがよく理解できる。
 そしてだからこそ、目の前の男の、その正体にも勘付いてしまった。
 確かに彼のいる渋谷区では、本来薬物の売買は許されていない。
 表の法律だけでなく。
 闇の掟においてもだ。
 そしてその裏社会のルールを、この街に敷いた者といえば、ただ一人。

「テメェまさか……は……“白竜”かぁ――――――っ!」

 オーバーなリアクションも無理からぬことだ。
 その服装にその証言から、類推できる正体は一つしかない。
 白いスーツを身に纏い、竜の眼光で敵を射抜く、渋谷の夜を支配する帝王。
 暴力団・黒須組を取り仕切る、やり手の若頭・白川竜也――白竜と通称される男だ。
 組の規模こそ小さいものの、その冷酷なやり口と、異常なまでの才覚は、大組織にすらも警戒されているという。
 大物中の大物だ。調子に乗ってしまったばかりに、とんでもなく危険な人物に、目をつけられてしまったのだ。

「やはり知っていたようだな。その上で縄張りを荒らすとは、度胸がいいのか間抜けなのか」

 白竜の口調は至ってクールだ。
 怒気の一つも孕ませることなく、自然な振る舞いを崩すことなく、男に語りかけてくる。
 だが、だからこそ恐ろしい。
 冷徹非情と知られている男だ。腹の底で何を考えているか、全く分かったものではない。
 あのポーカーフェイスの裏側で、自分をいかにして殺すか、考えを巡らせているに違いない。
 そしてその引き金が、一体いつ引かれるか。

「へっ……悪いな。生憎と俺は勝算もなしに、ヤバい橋を渡ろうってほど、間抜けに生まれたつもりはねぇんだ」
「ほう。そいつはまた大層な自信だ。面の皮で目を塞ぐほどとは」
「俺にはあるんだよ。テメェが一流のヤクザだろうと……ぶちのめせるだけの力がな!」

 だからこそ、迷っている暇はない。怖気づいている時間が惜しい。
 自分にはとっておきの切り札がある。
 たとえ凶悪な極道であろうと、巨大な組織が相手であろうと、叩き潰せる力がこの手にはある。
 それがしがないチンピラが、短期間でこのビジネスを、成功させた理由であり。
 偽りの舞台を生きるためとはいえ、金に目を眩ませて、欲望に身を走らせた理由でもあった。

「出てこい、アサシン!」

 叫びを上げる。
 呼び声が上がる。
 闇の帳が開かれる。
 売人の男の目の前に、突如姿を現したのは、漆黒のローブを身に纏った男だ。
 その身からにじみ出る気配は、明らかに只人のそれではない。
 触れれば断ち切られそうなオーラは、人間に発することのできるそれではない。
 英霊の写し身、サーヴァント。
 伝承にのみ語られる存在を、死の淵より蘇らせた最強の戦士。
 それが売人の男が手に入れ、その身を狂わせるに至った力だった。


562 : 白川竜也&バーサーカー組 ◆.QrNUkmVxI :2016/03/13(日) 00:05:26 6kkPcT8Q0
「………」
「これはまた」

 僅かに、白竜の眉根が動く。
 さすがのヤクザの若頭も、これは予想外だったようだ。
 当然だ。所詮暴力団といえど、常識の中で生きているに過ぎない。
 条理を超えた神秘の力を、目の当たりにした彼が、平静でいられるはずもない。

「せっかくだから白竜、テメェも、こいつの虜にしてやるよ。アサシンの秘薬の虜にな」

 下衆な笑いを浮かべて、男は言った。
 彼のアサシンは毒薬使いだ。それも乱世を生きるために、必要になる薬物を、全て一通りマスターしてきた。
 アサシンに作れない薬はない。
 人を殺す劇薬も、人を籠絡する媚薬も、人を狂わせる麻薬でさえも。
 その卓越した技術があればこそ、渋谷の人間達を虜にする、強力な薬物を売りさばくことができたのだ。

「そして白竜を、黒須組を! 俺がこの手で操ってやるのさ!
 手駒を増やしてアミを張って、他のマスター達を追い詰めてやる! 優勝するのはこの俺だァァ!」

 アサシンのマスターはげらげらと笑った。
 ただの人間である白竜に、サーヴァントを殺す力はない。
 しかし彼が率いる黒須組は、大きな力になるはずだ。
 街に潜んでいるマスターを見つけ、背後関係を洗い出し、接触する足がかりとする。
 そしてアサシンの薬によって、次々とライバルを味方につけて、最後にはこの手で切り捨てる。
 ついでに黒須組の稼いだ金を、自らのものとすることができれば、打てる手は更に増えるはずだ。
 この出会いはピンチではない。チャンスと考えるべきなのだ。
 これで自分は勝利に近づく。
 いいや着実に勝利できる。
 聖杯戦争に優勝し、万能の力を手に入れられる。神の力は誰でもなく、己の手へと収められるのだ。

「――だとさ。どうするよ、マスター?」

 その、はずだった。
 白竜の背後から聞こえてくる、低い男の声を聞くまでは。

「へ……?」

 思わず、間抜けな声を上げる。
 男の視線のその先には、先程まで影も形もなかった、もう一人の人間の姿がある。
 それは浅黒い肌の下に、鋼のような筋肉を蓄えた、上半身裸の大男だった。
 惨たらしい傷が刻まれた顔に、猛禽のような鋭さを宿した、赤い瞳を光らせる男だった。
 そしてアサシンのマスターが得るものは、視覚的情報だけに留まらない。
 聖杯戦争の参加者だけが得られる、もう一つの情報が、網膜を通して伝わってくる。
 あれもまた、ただの人間ではない。
 あれはバーサーカーのサーヴァントだ。
 彼を背後につけた白竜もまた――聖杯戦争の参加者だ!


563 : 白川竜也&バーサーカー組 ◆.QrNUkmVxI :2016/03/13(日) 00:06:35 6kkPcT8Q0
「どうするもこうするもないだろう。味方につける価値もない。
 気配を消せるはずのアサシンを、我が身可愛さのために盾にして、わざわざ人前に晒すような間抜けにはな」

 今にして、男は理解する。
 彼はサーヴァントを持っていたことに、驚いていたわけではない。
 相手が無力だと完全に油断し、そのくせ殺される可能性は捨てきれず、不意打ちもさせずに盾代わりにした。
 その間抜けさと臆病さが、予想を超えたものだったからこそ、彼は目を丸くしたのだ。
 つまりは男は完全に、白竜に見下されていたのだ。
 勝ち誇ったあの瞬間も、完全に冷めた目で見られていたのだ。

「くそ……マスターだから何だってんだ! 武器も持ってねぇバーサーカーなんぞに、この俺が殺されるもんか!」

 取り繕うようにして、声を荒げる。
 威厳を正すようにして、男は強い言葉を使う。
 そうだ。理屈の上ではこちらが有利だ。
 アサシンには自らの作った毒を、ガスとして散布する力がある。
 相手はろくに搦め手も使えず、おまけに素手のバーサーカーだ。間合いを詰めるよりも早く、毒殺することが可能だ。

「左様だマスター。あの程度の下品な男が、我らに触れることなど敵わない」

 アサシンもそう言っている。
 未だ優位は揺るがない。
 油断しきっている今だからこそ、先手を打つことさえできれば、問題なく撃退することができる。
 あの大悪党・白竜が、無様にのたうち回る姿を、高みから見下ろすことができるのだ。

「そうだ! 殺っちまえアサシン! 生意気なクソ野郎をブチ殺――」
「――うるせぇよ」

 見下ろすことができる、はずだった。

「あ……え?」

 その願望は、瞬きの間に、脆くも崩れ去ることになった。
 鈍い音と、風を切る音。
 それらがほぼ同時に聞こえた。黒い風がすぐ脇を掠め、背後で大きな音を立てた。
 それが自らのアサシンが、吹き飛ばされた音だと理解するのに、五秒ほどの間隔を要した。
 更にそれを敢行したのが、ろくに武装もしていない、素手のバーサーカーだということを理解するのには、もう三秒ほど必要とした。

「悪いな。確かに武器も持ってるんだが、俺はこの方が性に合っててよ」

 ごきごきと肩を鳴らすバーサーカーは、既に目前にまで迫っている。
 距離がどうこうという問題ではない。刺青が刻まれた腕を伸ばせば、すぐに胸ぐらを掴める位置だ。
 そして彼を阻むべき壁は、既に男の目の前にはない。
 アサシンを殴り飛ばしたバーサーカーを、食い止める術は、男にはない。

「なぁ、お前らチンピラってのは、喧嘩が大好きな生き物なんだろ?」

 ひた、ひた、と音がする。
 裸足の足音が近づく。
 一歩近寄るごとに、狂戦士の気配が、男の体を飲み込んでいく。
 人間のそれとは比較にならない、暴力的なエネルギーが、男の体を縮こまらせる。


564 : 白川竜也&バーサーカー組 ◆.QrNUkmVxI :2016/03/13(日) 00:07:50 6kkPcT8Q0
「たっ、助……!」
「乗ってやるよ、その流儀。今日は特別大サービスで、素手(ステゴロ)で喧嘩してやろうじゃねえか」

 後ずさりも間に合わない。
 何もかも実行に移すのが遅い。
 丸太のような戦士の腕は、男の後ろへと回りこみ、服の首根っこを掴み上げる。
 特別体格に恵まれてもいない、チンピラ崩れの男の目線と、180センチはあろうかという、大男の目線とが重なった。

「走って逃げられたら届かねぇ、鉄の剣にも敵わねぇ――か弱くノロマな拳でな」

 にんまりと、狂戦士が牙を剥いた。
 獣の剣士を覗かせる、赤い眼光の男の微笑は、男が味わったどの体験よりも、おぞましく、恐ろしいものだった。
 それから先に起こったことは、男の記憶には存在しない。
 そもそも男の意識どころか、命そのものがなくなったのだから、それも無理からぬ話ではあった。

◆ ◇ ◆

「これで一人目……ってわけでもねぇか。何しろ聖杯戦争の本戦は、まだまだ始まってもいないんだからな」

 全てを片付けたバーサーカーは、静かに気楽に語りかける。
 凄惨な殺戮劇を見せた張本人は、血まみれで倒れ伏す男にも、さして気にした様子はないようだった。
 そしてそれら一部始終を、後ろから見ていた白竜にすらも、動揺の色は見られなかった。

「すぐに帰るぞ、バーサーカー。誰に見られているとも分からない」
「だろうな。それこそアサシンなんかが、近くにいたらたまったもんじゃねえ」

 白竜の声に応じながら、バーサーカーは姿を消す。
 霊体化を確認すると、白竜はすぐさま踵を返し、暗い裏道を後にした。
 もちろん、今しがた生まれた死体を、そのまま放置するつもりもない。
 携帯電話を取り出し、舎弟にかけて、処分するように指示する。足がつかぬよう、直接動かず、人を使うようにと付け加えた上でだ。

《そういや、聞いてなかったな》
《何をだ?》

 念話が白竜の頭に響く。
 携帯の通話を切りながら、白竜はバーサーカーの声に答える。

《マスターの戦う動機だ。死にたくないから殺すってのは分かるが、それで手に入れた聖杯の使い道を、俺はまだ一度も聞かされてねぇ》

 聖杯。
 あらゆる願いを叶えるという、奇跡の詰まった願望機。
 白竜はそれを奪い合う、聖杯戦争という争いに巻き込まれ、この異様な街へと呼び寄せられた。
 精巧に似せてはいるものの、それが自分の知る東京とは、別物であることも理解していた。
 黒須組もあるにはあったが、実態は自分のいたそれとはまるで違う。
 あの顔も見たこともない組長は、白竜を地獄から拾い上げてくれた、黒須勘助とは似ても似つかない。


565 : 白川竜也&バーサーカー組 ◆.QrNUkmVxI :2016/03/13(日) 00:08:42 6kkPcT8Q0
《……本物では、あるんだろうがな》

 だからこそ、疑う余地はなかった。
 それほどの奇跡を起こせるからには、それが本物の神秘であることを、否応なしに理解させられた。
 かつて自分が関わった、聖徳太子の未来記とかいうものとは、明らかに別種の存在であると、白竜は本能的に理解していた。

《だがだからこそ、俺は軽率に、答えを出すべきではないと思っている》

 それでも、すぐには答えを出せない。
 それだけの力だからこそ、吟味して考えなければならないと、白川竜也はそう宣言した。

《ほう?》
《何でも叶えられる力だというなら、最適な運用法を考えるべきだ。
 下手な願いで無駄遣いすれば、せっかく掴んだはずのチャンスを、ドブに捨てることにもなりかねない》

 たとえば、使い切れない額の金を、聖杯に願って手に入れたとする。
 しかしそれだけでは駄目だ。そんなものは盗まれでもすれば、一瞬で消えてしまうだろう。
 そんな単純なものでなく、決して壊れることのない力。
 それも黒須組に、途絶えることなく、永続的な利益をもたらす力。
 それこそが本当に必要な力だ。本当に叶えるべき願いだ。
 お伽話の世界において、願いを叶えられる力は、回数制限付きというのがセオリーだ。
 聖杯もそうだとは言われていないが、仮にそうだった時のためにも、慎重に考えなければならない。
 一言だけの願い事で、最大の利益をもたらすには、一体どうすればいいのかを。

《……ッハハハ! 面白ぇ返事をするな、マスターは! 世界征服でも願えば、そんなもの簡単に手に入るのによ!》

 げらげらという笑い声が響く。
 姿を消したバーサーカーが、白竜の問いに大笑で応える。
 どうやら狂戦士にとって、この返事は随分と意外だったようだ。
 組織を引っ張る若頭にとっては、これくらいの考えを巡らせるのは、当然のことだと思うのだが。

《気に入った。改めて、お前に従ってやるよ。お前を聖杯のところまで、責任持って連れてってやる。
 お前がロクでもない願いを、最後まで考えなければの話だがな》

 獰猛な囁きが聞こえた。
 納得できない回答を、お前がこの先示すのであれば、たとえ主人であったとしても、容赦なく噛みつき食い殺してやる。
 白竜にとって、その囁きは、そうした宣言にも聞こえた。

《お前を敵に回すほど、俺は愚かな男ではないつもりだ》

 バーサーカーのサーヴァント。
 その真の名を、ベオウルフ。
 深い水底の闇から現れた、残虐な大巨人に立ち向かい、竜との戦いの中で果てた男。
 身の丈を遥かに凌ぐ魔獣と、武器すら持たずに渡り合い、その腕をもぎ取ったと伝えられる、源流闘争の体現者。
 戦の狂気にどっぷりと浸かった、殺戮の権化のようなこの男も、その根底に持っているのは正義の心だ。
 後に名君として国を治め、人々のために生きたという彼は、白竜が選択肢を誤れば、間違いなく己を殺しにかかるだろう。
 そんな男の機嫌を損ね、殺し合うような道に進むのは、白竜にとっては得策ではなかった。
 たとえその先に待っているのが、東京どころか、世界全てを、手中に収めることのできる、栄光と勝利だったとしても。


566 : 白川竜也&バーサーカー組 ◆.QrNUkmVxI :2016/03/13(日) 00:09:44 6kkPcT8Q0
【クラス】バーサーカー
【真名】ベオウルフ
【出典】Fate/Grand Order
【性別】なし
【属性】混沌・善

【パラメーター】
筋力:A 耐久:A 敏捷:C 魔力:D 幸運:A 宝具:A+

【クラススキル】
狂化:E-
 この英雄の真名そのものがバーサーカーという言葉に影響を受けている。
 理性はあり、高等な会話も可能。多少の凶暴性が残っている程度であり、ステータスにも何ら影響はない。

【保有スキル】
ベルセルク:A
 バーサーカーの語源は北欧神話のベルセルクであるが、
 ベオウルフの名もまたベルセルクが由来であると伝えられている。
 原初の狂戦士の一人であることを示すクラススキル。

直感:B
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
 視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。

戦闘続行:B
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
 素手にてドラゴンスレイヤーを成し遂げた彼を、殺し切ることは困難を極める。

【宝具】
『源流闘争(グレンデル・バスター)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
 生前の逸話が昇華された宝具。
 伝承においてベオウルフは、剣を持たずとも盾を焼かれども、素手で怪物と渡り合い、撃退したと言われている。
 ベオウルフは両手の魔剣を手放し、徒手空拳による格闘戦に転じた時、持てる最大の力を発揮する。
 猛烈な拳打のラッシュからは、逃れることは困難を極める。


567 : 白川竜也&バーサーカー組 ◆.QrNUkmVxI :2016/03/13(日) 00:10:12 6kkPcT8Q0
【weapon】
赤原猟犬(フルンディング)
 フロースガール王の廷臣ウンフェルスから、巨人退治のために与えられた魔剣。
 血を啜ることで硬度を増し、一度認識した敵を、死ぬまで追尾すると言われている。
 後者の特性は、自在に姿を変える巨人を追いかけ、正体を特定するために用いられた。
 ……これほどの力を持つ名剣だが、しかしベオウルフの真価はそこにはない。

魔剣
 もう一振りの剣。詳細と能力は未だ不明。
 平時のベオウルフは、この剣と赤原猟犬(フルンディング)を両手に構え、二刀流で戦闘を行う。
 ちなみに、伝承においてベオウルフは、霜の巨人ヨートゥンの剣をもって、グレンデルの母を打ち倒したと言われている。

【人物背景】
英文学最古の叙事詩と言われる『ベオウルフ』の主人公。
邪悪な巨人グレンデルや、火を噴くドラゴンと戦い、撃退してきた勇士である。
巨人を打倒したベオウルフは、やがて一国の王となり、ドラゴンが攻め入ってくる日まで、平和を維持し続けたという。

サーヴァントクラスの一つであるバーサーカーの語源は北欧神話のベルセルクであるが、
ベオウルフの名もまた ベルセルクが由来であると伝えられている。
だが、老いてなおも理性を保ったままドラゴンスレイヤーを成し遂げた彼に、狂気はその片鱗すら浮かんでこない。
とはいえ、今回のベオウルフは全盛期で召喚されたこともあり、根っからの戦闘狂。
アキレウスやヘラクレスと出会うと「拳で語り合うしかねえ!」というモードに入ってしまうとか。

理性を保っていることもあり、基本的にマスターの言うことも聞いてくれる。
「悪いことする時は目を背けてやるさ。勿論、限度ってモンがあるがな」とは、本人の言。

【サーヴァントとしての願い】
特に無い

【基本戦術、方針、運用法】
とにかく一対一のステゴロ戦闘に特化したサーヴァント。
タイマンでの接近戦においては、無類の強さを発揮するが、反面レンジ外からの大火力攻撃には抗する術を持たない。
基本ステータスは高い上、宝具による底上げも望めるが、それでも複数の敵に囲まれれば、不利は否めなくなるだろう。
効率の良い戦術から退路の確保まで、マスターの知略が求められるサーヴァントである。


568 : 白川竜也&バーサーカー組 ◆.QrNUkmVxI :2016/03/13(日) 00:10:43 6kkPcT8Q0
【マスター】白川竜也
【出典】白竜シリーズ
【性別】男性

【マスターとしての願い】
未定。使うべきか使わないべきか、使うなら何が黒須組のためになるか、慎重に考えたい。

【weapon】

 ヤクザのコネクションで手に入れた銃器。
 スーツの下に隠せるような、拳銃を用いることが多い。

【能力・技能】
シノギの美学
 ヤクザとしての戦略眼。
 直接的な闘争ではなく、儲け話を成立させることや、トラブルを解決することなどに秀でる。
 過去には国立大学で法律を学んでおり、合法・非合法の両面において、勢力を拡大する術を有している。
 もちろんそれは、暴力を持たない頭でっかちであることを意味してはいない。

戦闘能力
 優れた肉体を有しているが、白竜は格闘技の達人でもなければ、プロの殺し屋というわけでもない。
 しかし彼はヤクザである。技術の枠組みを超越した、狡猾さと冷酷さこそが、白竜の最大の武器である。

芸術審美
 芸術作品、美術品への深い造詣。
 芸能面における逸話を持つ宝具を目にした場合、高い確率で真名を看破することができる。
 ヤクザには珍しく、クラシック音楽の鑑賞を趣味とし、美術館通いを日課としている。

【人物背景】
主に渋谷区を縄張りとする暴力団・黒須組の若頭。
組の規模だけを見れば、構成員40名程度の小さな組織だが、彼はその圧倒的な才覚をもって、勢力を拡大し続けている。
その名前から「白竜」の異名で恐れられており、関東一帯を取り仕切る大組織であっても、彼の存在は無視できない。

敵に対しては冷酷非情だが、黒須組のことは家族のように大切に思っており、彼らのためなら命を張ることも厭わない。
実力では、凡庸な組長・黒須勘助を明らかに上回っているが、黒須の人徳に惚れ込んだ白竜は、決して彼を軽んじることはない。
国立大出身ではあるものの、それ以前の経歴には謎が多く、一説には、外国から日本に渡ってきたのではないかとも噂されている。

【方針】
聖杯を使うにせよ使わないにせよ、殺されてやるつもりはない。優勝を狙う


569 : ◆.QrNUkmVxI :2016/03/13(日) 00:11:50 6kkPcT8Q0
東京にはグレンデルがいないので、ベオウルフの宝具はランクが上がった状態とさせていただきました
というわけで投下は以上です


570 : ◆yaJDyrluOY :2016/03/13(日) 00:12:23 PzkJOFQ20
自分も投下します


571 : ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/13(日) 00:13:31 gTsEy6Xo0
お先にどうぞ


572 : キング博士&アーチャー ◆yaJDyrluOY :2016/03/13(日) 00:13:43 PzkJOFQ20
 私の名前はキング博士。

 君はいかなる人類の発明品よりも私が憎んでやまないものが何か知っているかね?

 そう――リンゴの種だ。

*

 その時のキング博士の表情は、絶望もしくは茫然自失したものだっただろう。
 なぜなら、彼は思い出したくもない記憶を思い出してしまったからである。
 
 キング博士が、この東京の地で聖杯から与えられた役割。
 それは、研究者でも、大学教授でも無かった。
 『リンゴ専門店』――それが聖杯によって、キング博士に最も相応しい役割だと選択されたのだ。

「Fuck!リンゴ専門店ってなんだ! ふざけるな!」

 キング博士は叫んだ。
 キング博士は見るのも嫌なリンゴについての詳細な知識を、聖杯から与えられてしまったのだ。
 恐らく記憶を取り戻さなければ、キング博士はいい笑顔でリンゴを売り続けていただろう。
 しかし、幸いと言って良いのかはたまた残酷なのか、キング博士は記憶を取り戻した。
 ともかく今のキング博士は、最悪の気分だった。
 
 ではなぜ、キング博士はマスターとして覚醒するに至ったのだろうか。
 キング博士が東京で生活し始めた記憶は、一週間ほど前が一番古い。
 キング博士は自宅が入ったビルの1階に、リンゴ専門店をオープンさせた。
 初日こそ問題は何も無く、オープン記念で店もそこそこ繁盛した。
 2日目、店の床にチラホラとりんごの種が散らばっているのを発見する。キング博士は疑問に思いながらも掃除した。
 3日目、店で焼いたアップルパイに種が入っていると苦情が入る。キング博士は謝罪して作り直した。
 4日目、アルバイトの子が掃除中に棚の裏から大量のりんごの種を発見。数えたところ382粒、キング博士は嫌がらせを疑う。
 5日目、店内で客が転ぶ、足元にはりんごの種。6日目、トイレが詰まる、原因はりんごの種。
 棚からりんごの種か降る。自動ドアがりんごの種で詰まる。引き出しを開けるとりんごの種。流しの排水口にりんごの種。
 りんごの種。りんごの種。りんごの種。りんごの種。
 ――りんごの種。

 キング博士は気が狂いそうになり、アルバイトはバイトを辞めていった。原因はりんごの種。
 キング博士はノイローゼになりそうになったが、ふと自分の記憶の中に知らないりんごの種があることに気づいた。
 遂に狂って記憶に障害が出たかと思ったが、それはSCP財団でのりんごの種の記憶だった。
 
 一度思い出すと、後はズルズルと記憶が戻ってくる。
 相変わらず記憶はりんごの種ばかりだったが、キング博士は思い出したのだ。
 キング博士の右手が熱くなる。
 視線を向けると、そこあったのは――デフォルメされたりんごの輪郭と、中心部に2つの点。
 その2つの点は、紛れも無くりんごの種だった。


573 : キング博士&アーチャー ◆yaJDyrluOY :2016/03/13(日) 00:15:33 PzkJOFQ20

 キング博士の目の前が煌々と輝き出す。
 よく見るとそこにはりんごの種だできた魔法陣、または曼荼羅のような模様が光っていた。
 光はだんだん光量を増していき、ついにはキング博士の視界を白く塗りつぶす程になる。
 キング博士は眩しさに目を閉じてしまった。
 ――コトッと何かが地面に触れる音がした。

「私は此度の聖杯戦争において、アーチャーのクラスで召喚された。汝が私のマスターか?」

 キング博士が眼を開けると、そこには異形の少女が立っていた。
 翠緑の衣装を纏い、動物の耳と尻尾の様な物を付けている。
 キング博士はストレスがピークに達していたこともあってか、全く事態が読み込めていない。

「誰なんだお前は!? 一体全体何を言っている!」
「だから言っただろう。私はアーチャー、真名ならアタランテという」
「いや、待て……全然わからんぞ」
「詳しい説明はいまからしてやる。まずは落ち着くことだ、マスター」

 混乱からキング博士はアタランテに怒鳴ってしまうが、アタランテは極めて冷静な様子である。
 アタランテは少々高圧的な態度だが、これはキング博士の第一印象が情けないせいであろう。
 アタランテは近くの椅子に腰掛け、キング博士が落ち着くのを待った。
 ともかく数分を要し、キング博士はようやく落ち着いた。

「さて、先程まで一般人だったせいで見苦しいところを見せたな。私はキングだ。よろしく、あー……アタランテ?」
「私を呼ぶ時は基本的にアーチャーと呼んでくれ。真名は無闇に晒すべきではないからな」
「そうか、なら改めてよろしく、アーチャー」
「ああ、よろしく頼む」

*

 互いに自己紹介を終えた後、アタランテから聖杯戦争についての説明を聞いた。
 キング博士はSCP財団で奇妙な物を沢山見てきた経験からか、大変飲み込みが早かった。
 聖杯がなんでも願いを叶えると聞いた瞬間から、キング博士の表情は非常に明るいものであった。
 全ての説明を終えた頃、アタランテがようやくキング博士に疑問を問う。

「聖杯の話を聞いた辺りからやけに嬉しそうな顔をしていたが、それほど叶えたい願いでもあるのか?」
「よくぞ聞いてくれた、と言いたいところだが――アーチャー、リンゴは好きか?」
「リンゴだと!?」

 アタランテにとってリンゴは非常に因縁深い果物である。
 生前アタランテは、リンゴのせいで望まぬ結婚をするはめになったからだ。
 あらゆる男に徒競走で負けなかったアタランテは、父と「徒競走で勝った男と結婚する」という約束を交わした。
 そして女神の力を借りた男が、アタランテの気を「黄金のリンゴ」で逸らして見事娶ることに成功したのだ。
 あれから、アタランテが「リンゴがなければ、リンゴが憎い」と思わなかった日はない。
 そしてアタランテは、キング博士にその思いの丈をぶつけてしまった。


574 : キング博士&アーチャー ◆yaJDyrluOY :2016/03/13(日) 00:16:38 PzkJOFQ20
「私はリンゴが大嫌いだ、何度憎いと思ったかわからない」
「そうか! それなら話が早い! 私の願いは、この世からクソ忌々しいリンゴを全て消し去ることなのだ!」
「え!?」

 アタランテはあまりの驚きに、珍しく声を上げてしまった。
 アタランテはリンゴが嫌いだが、それは策略に使われたからであって、食べる事は大好きなのだ。
 むしろ好物と言って良い。
 そもそも、嫌いな食べ物を見せびらかされたからといって競走中に気が逸れるわけがない。
 アタランテは誰よりも愛深きゆえに悲しみ、憎さも100倍になっているだけである。
 要するに、アタランテの言葉は、リンゴに対するツンデレ的な意味なのだ。

「ま、待て。聖杯をそんな程度の願いに使うつもりか? 失望したぞ、マスター」

 アタランテは極めて冷静に、キング博士に反論した。
 真意がバレないよう努め、同時に嫌いな物程度で使う事に対する本音も混ざっていた。

「そんな程度だと! これを見てもか、アーチャー!」

 キング博士はゴミ箱を指差す。
 中には当然、りんごの種。その他にも床や棚の隙間など、細かく見ればあちこちにりんごの種が散らばっている。
 キング博士の体質を知らないアタランテは、その中の一粒を摘み上げる。

「なんだこれは? りんごの種?」
「そうだ、りんごの種だ。そしてアーチャー、君の今立ったばかりの椅子を見てみたまえ」

 アタランテが振り返ると、座る前には何もなかったはずの椅子にりんごの種が落ちている。

「どういうことなんだ?」
「要約すると、私がりんご――いや、りんごの種に愛され過ぎているということだ」

 まさか――とアタランテの頭に予測が浮かぶ。
 いや、それは予測というよりむしろ確信に近い。
 今回、アタランテのスキルの中にいつもなら現れないスキルが付加されていた。
 『黄金のリンゴ』である。それはアタランテの持ち物に全てを魅了する黄金のリンゴを見せて、食欲に駆られた人を招きよせるといったものだ。
 今回に限ってこのスキルが現れ、その上異常なほどに高いランクになっている。
 アタランテは目の前のマスターとの関連性を疑わずにはいられなかった。
 アタランテはスキルを使用し、黄金のリンゴを出そうと試みる。

「――なっ!?」
「お前、今手からりんごの種を出さなかったか?」
「いや、違う! これは私のスキルの一つをだな……」


575 : キング博士&アーチャー ◆yaJDyrluOY :2016/03/13(日) 00:19:28 PzkJOFQ20
 アタランテがスキルを使うと、そこに現れたのは大量のりんごの種。
 アタランテは思わずキング博士の視線からそれを逸らしたが、キング博士は一部始終を見てしまっていた。
 思わず声が震えるキング博士。
 急いでアタランテが種をかき分けると、そこにはきちんと黄金のリンゴが存在していた。
 アタランテはホッと胸を撫で下ろし、それをキング博士に見せた。

「ほら、これは私の『黄金のリンゴ』というスキルで、敵を引き寄せる効果があるのだ」
「おおっ! 美味しそうなリンゴじゃないか――!?」

 黄金のリンゴを見たキング博士は、思わず齧り付きたくなる衝動に駆られた。
 あれだけリンゴ嫌いであるのに、黄金のリンゴを脳で認識した瞬間「うまそう」「食べたい」「リンゴ=美味しい物」という情報がキング博士の脳内に入ってきたのだ。
 アタランテの説明によれば、相手に見えなくてもリンゴを出しているだけで引き寄せられるのだという。
 異常なまでにランクが上がったこのスキルは、キング博士の認識までも変えてしまった。
 
(なんてこった、これは深刻なミーム汚染じゃないか)

 キング博士は黄金のリンゴを危険視し始めた。
 そんなキング博士をよそに、アタランテはキング博士がリンゴに好感情を抱いたと思い込んでいた。

「マスター、私の願いは“この世全ての子供らが、愛される世界”だ。リンゴの排除はこの願いの妨げになるかもしれん、――否、なるだろう。
 ここはお前の体質を治すことを願いとしてはどうだ?」
「ん?……まあそうだな、それがいい」

 もはや暴論の域だったが、考えこんでよく聞いていなかったキング博士はそれを了承した。
 そこでアタランテは方針が決まったと判断し、話し合いの席を立った。
 アタランテが店の中を見て回ると、そこはやはりリンゴ専門店、りんご尽くしである。
 
「なあマスター。このメニューの料理はお前が作るのか?」
「あぁ、聖杯に作れるようにされてしまったのだ。今日でもう店は閉めるがな」
「この、なんだ、アップルパイを焼いてはくれないか」
「……なんだって? お前はリンゴが嫌いなんじゃないのか?」
「敵を知らねばなんとやらだ。それに……味は嫌いじゃない」

 壁に貼ってある店のメニューを見ながら、アタランテは言った。
 リンゴ嫌いという癖にアップルパイを食べたがるアタランテに、キング博士は訝しむ視線を向ける。
 アタランテの様子がどこかワクワクして見えたからだ。
 最後にボソッと何かを呟いたが、キング博士には聞こえていない。


576 : キング博士&アーチャー ◆yaJDyrluOY :2016/03/13(日) 00:21:03 PzkJOFQ20
(さっきもうまく丸め込まれただけで、本当はアーチャー自身がリンゴ好きなのではないか?
 いや、しかし最初にリンゴを嫌いだと言ったあの時の目は、確かに本物だった。
 ………まぁ、どうせ今日で店を閉めるつもりなのだ。リンゴをこのまま腐らせるよりはいいだろう)

 悩みは晴れなかったが、キング博士はしぶしぶキッチンへ向かった。
 キング博士は妙に手慣れてしまっている自分の体に、嘆きながら器具を揃える。
 生地などは既に仕込み済みで、リンゴを選ぶだけである。
 店頭に並ぶリンゴから適当に取ろうとした時、アタランテから声が掛かった。

「マスター、なにをしている。これを使え」

 そういってアタランテがキング博士に持たせたのは、『紅玉』と書いてある棚から取ったリンゴ。
 アタランテの顔は、もはやアップルパイへの期待を隠してなどいなかった。
 キング博士は、ここで確信を得る。
 こいつは、絶対にリンゴが嫌いじゃない――と。


577 : キング博士&アーチャー ◆yaJDyrluOY :2016/03/13(日) 00:23:30 PzkJOFQ20

【クラス】 アーチャー

【真名】アタランテ

【パラメーター】
筋力D 耐久E 敏捷A 魔力B 幸運C 宝具C

【属性】中立・悪

【クラススキル】
対魔力:D
 魔術に対する抵抗力。、一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:A
 マスター不在でも行動できる。
 ただし宝具の使用など膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。

【保有スキル】
黄金のリンゴ:A+++
 宝物である「黄金のリンゴ」を見せつけて、敵を近くへと引き寄せる。
 普段の聖杯戦争ではこのスキルは出ないが、なぜか今回だけ発現している。

アルカディア越え:B
 敵を含む、フィールド上のあらゆる障害を飛び越えて移動できる。

追い込みの美学:C
 敵に先手を取らせ、その行動を確認してから自分が先回りして行動できる。

【宝具】
『訴状の矢文(ポイボス・カタストロフェ)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:2~50 最大捕捉:100人
 弓や矢が宝具なのではなく、それらを触媒とした『弓に矢を番え、放つという術理』そのものが具現化した宝具。
“天穹の弓”で雲より高い天へと二本の矢を撃ち放ち、太陽神アポロンと月女神アルテミスへの加護を訴える。
 荒ぶる神々はその訴えに対し、敵方への災厄という形で彼女に加護を与え、次ターンに豪雨のような光の矢による広範囲の全体攻撃を行う。
 だが射撃を行っているのが彼女ではないため、照準は余り正確ではない。攻撃領域を彼女の意志で極度に限定して収束することも可能だが、元々の攻撃範囲が広いため、集団戦においては周囲の敵味方の配置を確認してから使用しなければならない。

『神罰の野猪(アグリオス・メタモローゼ)』
ランク:B+ 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
 アタランテが仕留めたというカリュドンの魔獣、その皮を身に纏うことで魔獣の力を我が物とする呪いの宝具。
 アタランテは召喚時点ではこの宝具の使用方法を理解しておらず、我が身を顧みない憎悪を抱くことによって初めて使用可能となる。
 タウロポロスの封印と引き替えに幸運以外の全ステータスが上昇した状態となるが、Aランクの狂化を獲得したバーサーカーとほぼ同等の状態となってしまう。
 敵を仕留めるための論理的思考は保てるが敵味方の識別は困難となり、場合によっては己のマスターでさえ識別できなくなる。
 またAランクの変化スキルが追加され戦闘状況と纏った者の性質により形態が変化する。

【weapon】
天穹の弓(タウロポロス):
 狩猟の女神、守護神アルテミスから授かった弓。引き絞れば引き絞るほどにその威力を増す。
 アーチャー自身の筋力はDランクだが、渾身の力を込め、限界を超えて引き絞ればAランクを凌駕するほどの物理攻撃力を発揮することも可能。

【人物背景】
 ギリシャ神話に登場する狩猟の女神アルテミスの加護を授かって生まれた「純潔の狩人」。超一流の狩人であり、神域の弓術の使い手。
 アルカディアの王女として生まれるが、男児が望まれていたため生後すぐ山中に捨てられ、女神アルテミスの聖獣である雌熊に育てられる。
 成長したアタランテはやがて並ぶ者なき狩人となり、ギリシャ中の勇者が揃ったというアルゴナイタイのメンバーにも加わり、カリュドンの猪の討伐を果たしていた。
 技量も桁外れに高く、弓兵でなければ知覚すらできないような遠方から、闇に包まれた密林という視界が零に近い状況下で、高速で戦闘している標的にすら矢を必中させる。
 眼差しは獣のように鋭く、髪は無造作に伸ばされ、貴人の如き滑らかさは欠片も無いため一見すると粗野な女性に見える。しかし他人を「汝」と呼び、自分達を「吾々」と呼ぶなど非常に古風な話し方をするため、不思議な気品がある。
 考え方や死生観が獣と同じであるため、彼女にとって生きる糧は奪って手に入れるのが当たり前であり、過度な誇りは犬にでも喰わせるべき代物。
 ただ、全く誇りを持っていない訳ではなく、退廃的な雰囲気や陰謀の気配を持った人間を嫌っている。

【サーヴァントとしての願い】
 この世全ての子供たちが愛される世界。


578 : キング博士&アーチャー ◆yaJDyrluOY :2016/03/13(日) 00:24:04 PzkJOFQ20


【マスター】キング博士@SCP Foundation

【マスターとしての願い】
 忌々しいリンゴを世界から消[修正済み]――因果もとい体質を治す。

【weapon】
 なし。

【能力・技能】
 気づいたらリンゴの種に囲まれている。

【人物背景】
 SCP財団の職員。キングの行動全てにリンゴの種、及びリンゴがつきまとう。
 リンゴの種に埋もれて気を失った際の精神世界の空飛ぶリンゴに、「お前はリンゴを生み出すために生まれたのだ。」とさえ言われる。

【方針】
 なんとしてでも聖杯を手に入れる。その為にアーチャーとしっかり戦略を練る。

【捕捉】
 クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
 SCP FoundationにおいてDr. Roget氏が創作されたDr. Kingのキャラクターを二次使用させて頂きました。


579 : ◆yaJDyrluOY :2016/03/13(日) 00:26:03 PzkJOFQ20
投下終了です。
前の人の前にも投下予告会ったんですね。気づかなくてすいませんでした。
途中名前とメール欄が突然消えて、遅くなった事もお詫びしておきます。


580 : ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/13(日) 00:27:27 gTsEy6Xo0
お二方お疲れ様です
それでは私も投下させて頂きます


581 : ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/13(日) 00:28:53 gTsEy6Xo0



暖かい色の明かりが部屋全体を照らしている。太陽が沈み暗闇に落ちた外から人を守るように、光は家族を包んでいる。
街を騒がせる大規模な連続殺人。恐怖を煽るニュースにも無縁だと、家の中は笑顔で賑わっていた。
光とは安寧の元だ。神が与えた原初の火に始まり、照らされる場所に人は集まり寄り添う。
人は闇と戦う手段を手に入れ、現代に至るまで光は人と共にある。

「わあすごい!これお姉ちゃんが作ったの!?」
「こらモモ、お行儀が悪いわよ」

四人が囲ってもまだ少し余裕があるテーブルに並ぶのは、色鮮やかな料理の数々。
やわらかいパンに新鮮なサラダ、湯気が立つスープと香ばしく焼けた肉が食欲を誘う。
幼い次女が待ち切れず、フォークを手に取ろうとするのを母がたしなめている。

「お母様の言う通りです。食事の前は神様が降りてくる時間、きちんとお祈りをして感謝の言葉を伝えなければいけませんよ」
「はぁーい」

まだ神の教えを十分に理解しておらず、作法の大事さもわからない幼子は、しかしもう一人の声には素直に従った。
言葉の内容云ではなく話した人そのものへの信愛に応えたがためだ。

「ははは、おまえよりマルタさんの言葉の方がよっぽど効果があるようだ。すっかり懐いてしまったな」

椅子に座るのは家族四人と、昨日から家に招かれた長女の友人だ。旅行に海を渡って来たものの今の東京は折悪く起きた連続殺人で治安が悪い。
不安に思っていたところで偶然知り合い、信仰を志す縁で家族のみで暮らすには広い教会に一時の滞在に預かる身であった。

「さあ、それじゃあ祈りましょう」

全員が椅子に座ったところで食前の祈りを捧げる。
父と母は教えに則り感謝の言葉を述べ、まだ意味がよく分からない次女も倣うように手を合わせる。
客分であるその女性は、神父である父から見ても完璧に過ぎた姿勢で祈りに臨んでいた。
清く美しく、無償の愛(アガペー)に満ちた聖なる画の如き佇まい。
自分以上に信仰を積んでいると確信させる女性は、一日寝食を共にしただけで夫婦双方から大きな信頼を得ていた。
ともすれば目の前のこの人にこそ自分達は祈るべきでないのかと、不遜なる考えを抱いてしまうほどの。
全ての信徒が模範とすべき理想形がここには顕在していた。


「―――いただきます」

そして、祈りの動作はちゃんとしながらその光景を眺めていた長女は。
目の前の団欒に目と耳を傾けることなく食事のみに集中していた。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


582 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/13(日) 00:29:48 gTsEy6Xo0





教会屋上。
信仰の象徴たる十字が建てられた下で、冷えた大気に身を晒す二人。
その一人は長い赤の髪を上に纏めた十代前半の少女だ。
星空瞬く空を鏡合わせに、無数の電灯が煌めく地上。
夜の街を一瞥する瞳は生まれてから重ねた年月に釣り合わないほど冷めており―――佐倉杏子の送った人生の苛烈さの証となっている。

住む場所はなく、適当なホテルに無断で宿泊する毎日。
食料の確保には窃盗は当たり前、コンビニのレジをこじ開け金銭を奪うのも日常茶飯事。
荒んだ生活を見た目は中学生の少女が不自由なく送れるのは、奇跡の残滓たる魔法の力あってこそ。
自分の力を自分の欲望に用いる。躊躇などない。そうする事でしか生きられない以上迷いなどない。
杏子の送ってきた生活とはそういものだ。完全に順応して習慣になってしまうほど馴染んでいた。

「でさ……何やってんだよあんた?」

杏子は隣にいる英霊に問いを投げた。
先ほども家族と一緒に食事を共にしていた旅人であった。

清廉。そのような一言が凝縮された女がいた。
それだけで言い表せるような器量で収まらない乙女であるが、見た者は始めにその一言を連想するに違いない。
激する性質を思わせる杏子の赤髪に反した、紫水晶色の長髪。宝石や金銀財宝の豪奢とは異なる、渓谷に注ぐ透き通った水流の自然なる美。
地上の電灯と天空の星々に照らされてるだけの筈のそれは髪自体が光り輝いているよう。
身に纏う衣装は現代の街並みには溶け込まない意向だが、鋼の鎧といった戦士の、戦いの道具という印象からは程遠い。
手足に最低限の装具をはめる以外には実りの均整が取れた体を包む法衣のみ。彼女が武に行き覇を唱えた勇士ではない事を示している。

清らかで優しい、輝くばかりのひと。
その名だけで人々の心の寄る辺となり、希望を在り示してくれる、力ある言葉。
それ即ちは聖女。奇跡を成した聖者の列に身を置く者。

それが佐倉杏子の片翼。聖杯戦争を共に行くサーヴァントだ。
ライダー、その真名をマルタ。
救世主の言葉を直に受け、御子の処刑の後も信仰を捨てる事なく、時の帝国によって追放されるも死せず神の恩寵を受けた者。
布教の道程、ローヌ川沿いのネルルクの町にて、人々を苦しめる暴虐の竜タラスクを鎮めた竜使い。
その宗教に属さずとも知らぬ者はいない、世界中で崇敬されるその人であった。


「何、と言われても。マスターとその家族に料理を振る舞っただけよ?嫌いなものでも入ってた?」
「……好き嫌いとかはないよ。ウミガメのスープは美味かったし。肉の叩きも汁がすごかった」
「お粗末様」

杏子を見つめるアクアマリンの瞳は慈しみに満ちていた。
その言葉遣いは、彼女と関わった者の多くが見る顔とは違っていた。
礼節を欠いてるわけではなく。さりとてサーヴァントがマスターに、従者が主に、聖人が他者に向けるものとしては間違いがあるような。
どちらかといえば、穏やかな気質の姉が春を迎える年頃の妹にかけるような、親しい間柄でのみ見せるやり取りだった。

「出されたものは残さず頂く。立派な心がけだわ」
「そんな大層なものでもないだろ。腹が空いたら食えるだけ食っとくってだけの話だ」


583 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/13(日) 00:30:18 gTsEy6Xo0


選ぶ余裕のない生活を送っていた杏子にとって、食事は取れる時に取っておくという考えだ。
味の善し悪しや心情で手を付けない粗末な真似は自分は勿論、他者にも許さない。だから出された料理は食べるし残しもしない。
幼少から触れてきた教えも少なからず関係しているのだろう。どう受け止めようと過去の習慣は消えずに沁みっている。

「おかわりもしてたものね。うんうん、食べ盛りの子はそうでなくちゃ」
「っガキ扱いすんな!」

杏子の舌に残るのは素朴で、郷愁を誘う母の味だ。今も住居も兼ねている教会で眠っている実の母を尻目にして。
悪くない料理だった。美味しかったという感想に偽りはなく、また口にしたい欲求がある。

懐かしい、と憶えた感情。
家庭の料理などもう長らく食べていないと、口にした瞬間に思い知らされた。
あの日に焼け落ちて止まった記録。これから一生思い出す事のない筈だった味そのものだった。


「だから違えよ。そういう話じゃない」


こんな偽りの円満に加えられる事がなければ、決して。


「あいつらは、あの人たちは、あたしの家族じゃない」


その欺瞞に気付いた時、己の魂が濁るのをはっきりと感じ取れた。
熱く煮え滾ったあらゆるものを無限の槍にして目の前で笑う顔に発射するのを必死に止めて、人気の消えた裏路地で解放した。
爆発する魔力に乗って、怒声、罵声、嗚咽を洗いざらい吐き出した。


「みんな、みんな、偽物だ。死人だ。あっちゃいけないものなんだ。
 これを認めたら、あたしは本当に魔女になっちまう。だからいらないんだよ、こんなおままごとに付き合う真似はさ」


許せなかった。憎らしかった。
こんな偽物を用意して罠に嵌めた相手への怒りだった。
自らの手で失ったありし日で幸福を感じていた自分への怒りだった。

はじめは”魔女の結界”の仕業かと判断した。
奇跡を詐称する御遣いによって得た力、闇を齎す絶望の化身、魔女を討つ希望、魔法少女。
結界は魔女のテリトリーであり餌の狩場でもある。社会に疲れた人間の心の隙に潜り込み囁いて、自分の膝元へ招くのだ。
狩人の側である魔法少女が無様に誘惑に引っかかったのだと、鬱憤を放出する矛先を定めた。
だが魔女の気配は一切探知しなかった。代わりにあるのは慣れ親しみのない圧迫感。
次いで痛みと同時に手の甲に顕れた聖痕(スティグマ)の紋様。そして光が集合して形成して出来た聖人の姿。

杏子は事態の全てを知った。聖杯戦争。サーヴァント。殺し合い。願望器。
願いを叶えられるという、儀式。


584 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/13(日) 00:30:44 gTsEy6Xo0



「家族が死んだのは全部あたしの自業自得だ。誰も恨みやしないさ。けどこんな都合のいい幻想に浸かってるなんて、それだけは許せない。
 あんただって、そうじゃないのかよ?死人と戯れるなんてのを聖女さまはお許しになるのかい?」


―――みんなが、父さんの話をちゃんと聞いてくれますように―――

幻惑。佐倉杏子にとっての禁忌。
困窮する家族の幸せを願い、多くの人を幸せにするものだと信じた祈り。
得られた奇跡の報酬は、願った全ての喪失だった。
人心を誑かす魔女。絶望に染まった顔で罵る父の声は、どんな鋭利な槍よりも杏子の胸を穿った。
自分だけを残し、家族を連れて荒縄で首をつり下げた姿は、杏子の心を残酷に引き裂いた。

教会で教えを説き裕福に家族と幸せに暮らす。
東京の舞台で演じている人形劇は滑稽だった。求めてやまなかった幸せを嘲った形で見せつけられるのがこれほど腹が立つとは思わなかった。
早々に家を出て今までのように流浪の生活に戻ると何度も思った。そして実行する度に、このサーヴァントに首根っこを掴まれ連れ戻されるのだ。
こうして、今も。


「優しい人なのですね、マスターは」


自分を戸惑わせる声を、真っすぐに向けてくる。


「彼らは仮初の住人。聖杯戦争の舞台を回す為の部品として生み出された偽の命。その通りです。
 命を模造し争いの消耗品として道具に使う、それはあまりにもは許されざる行為です」

些細な、決定的な変化があった。
顔も声も何もかもが変わりないのに、そこにいるのがライダーだと認識は変わらないのに。明確に印象がひっくり返る。

「けど、だからといって彼らの存在すら罪とするのはどうなのでしょう。
 複製といえど彼らには命があり知性がある。死霊などではない生きた人なのですから」

隠す演技、人格の変更、そんな浅ましいいものではない。
分かってしまう。ライダーは変わっていない。変わらないままに身に纏う雰囲気だけを一変させる。
信仰を受ける聖女としての顔も、どこにでもいる町娘としての顔も、どちらも真なるマルタの素顔なのだ。

「あなたは優しくて、強い人。家族の複製を見て穢されたと感じ、家族を失った事を自らの罪と受け止めている。
 なら彼らと向き合ってもよいのではないですか。壊れた夢を見る事には確かに辛いもの。けどそこには、あなたが見失ったものも落ちているかもしれません」
「……随分言ってくれるじゃないか。ほんと何なんだよ、あんた」
「あなたのサーヴァントですよ。あなたを守り、導き、あなたに祝福を送るもの。
 これでも聖人ですもの。迷える子を救う事こそ私の使命なのだから」
「だから、ガキ扱いすんなっての」

忌々しいものだった。自分が何かすれば止めに入り、正論を出しあれこれ説教してくるライダーを杏子は鬱陶しがっていた。
その多くが家を失ってからの荒れた生活で身につけたものなのだから、何も思わない事もないのだが。
発言の意図よりも、なにより、自分に世話を焼く姿勢にこそ原因が多いのではないか。
苛立ちともむず痒いとも言えぬ感情。でもはじめて知ったわけでもない。いつ以来のものであったか。


585 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/13(日) 00:31:12 gTsEy6Xo0



「ていうかあんた、優勝する気はないんだな」
「当然です。聖杯とは救世主の血を受けたもの。そうでないものは偽なる聖杯。求める道理がありません。
 まあこんな儀式を仕組んだ奴らは後でシメ……ンンッ説伏しますが、まずは街で起こる戦いを止めなければなりません」

確かに、聖女なる者が偽の杯を求め殺し合うのは想像すら及ばない選択だ。真の聖杯が殺戮の血を注ぐのを許すとも思えない。
欲得にまみれた黄金の杯。偽物であるからこそこの聖杯は正邪問わず万人の願いを汲み取るのだろう。
だからライダーが聖杯戦争を否定するのはまったく自然な成り行きだ。想像通りというべきか。
名前を知った時点でそう来るだろうとは薄々思っていた。

「冗談」

よって杏子は考えるまでもなく、ライダーの掲げる方針の拒否を即答したのだ。

「素直に乗らないってとこだけは同意だ。奇跡と抜かしておきながらやることが殺し合いだ。どうせ碌なもんじゃない。
 けど戦いを止めるだとか、そういう慈善事業はお断りだ。聖女の行進に付き合う気はないよ」

希望が落ちたあの日から決めている。佐倉杏子という魔法少女は、全て自分だけに帰結する戦いをすると。
生きる為。楽しむ為。自分に益があり満たされるのなら何でもいい。好き勝手に生きれば、死ぬのも自分の勝手だ。誰を恨むこともしなくていい。

誰が何を願い動くのは自由だ、好きにすればいい。干渉はしない。
けれど、誰もが聖人になれるわけじゃない。
誰かの為に生きる。万人にとって口当たりのいい言葉を実践できる者は本当に一握りだ。だからこそそれを成した者は聖人と呼ばれる。
杏子はなれなかった。他の見知った魔法少女にもそんな資質の持ち主はいなかった。ただ一人を除いて。
未熟な自分を師として育て、最後まで見捨てようとしなかった黄色の魔法少女。
正義を生きがいに出来る、正しい希望の持ち主と同じ道を行く事を、杏子は出来なかった。今になって再び道を変えるなど甘い事が通用するわけがない。


ライダーに手を伸ばす。届きはしないし、届かせる気もない。
嵌めていた指輪から現出する赤い宝石。魔法少女の証、ソウルジェムを見せる。

「聖女はどうだか知らないけどさ、魔法少女をやるのはタダじゃないんだ。
 祈りには対価がある。魔力を使えばソウルジェムが濁る。犠牲がなくちゃそれを補えない。
 分かる?誰かが死ななくちゃ魔法少女(あたしら)は食えないのさ。ここに魔女がいるかはともかくな。
 どうせ消費するんなら自分のために使うべきだろ?命を賭けてまで、得もないのに誰かの為に戦うなんざ馬鹿げてるよ」

見ず知らずの人間が使い魔に食われても意に介さない。そうして育った魔女を倒してようやくグリーフシードを手に入れられる。
魔法少女として活動を続けるには、使い魔を放置するのが大事だ。聖杯戦争も似たようなものと杏子は考える。
悪目立ちして暴れる敵は放置して消耗を待つ。手堅く、確実な戦法。

「……あんたとはコンビだ。バラバラに動いて片方がヘマしたら残った方も揃ってヤバくなる。ここじゃ全員そうなら尚更さ。
 マスターっていうんならあたしの方が上だろ?いいか、あたしは乗らないからな」

マスターという立場を傘に着るわけでもないが、自分のサーヴァントにははっきりと断っておく。
伸ばした手とは逆にある令呪を意識する。ご丁寧に令呪の使用法まで教えてくれた。どう反抗されようともいざとなれば押さえつける手はある。
果たして、ライダーは動いた。向き直ってこちらを見る表情は憮然なれど、その美しさは損ないはしないまま、軽く微笑んで見せた。
意地の悪い笑みだった。杏子の魔法少女としての直感が背筋に寒いものが走るのを鋭敏に捉えてしまっていた。

「……ふぅん」
「な、なんだよ」
「ちょっと借りるわね」


586 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/13(日) 00:31:38 gTsEy6Xo0


なにか、嫌な予感がする。警戒を強めたその時には、風は過ぎ去った後だった。
掌の上をそよぐ風。何かが、ライダーのたおやかな指が通過した音。

「おい!返せ!」

一秒あったか定かではない交差。それでも変化はある。
杏子の側にあった赤い輝きは、いま目の前の聖女の手で依然と瞬いていた。

「ああもう暴れないの、ちょっと見るだけだから」
「あだだだだだだあー!?」

野苺でも摘むような気軽さで杏子のソウルジェムを分捕ったライダーは、手にある宝石をしげしげと観察している。
空の片手では、飛びかかって奪還しようとした杏子の頭部を掴み自分の行動を阻害させないようにして。
眉間にがっちりとはまった指の握撃による痛みは杏子の想像を絶していた。
杏子と変わりない見た目、麗しい聖女のアイアンクローは頭蓋を割らんとする威力で逆らう意識を剥奪させる。
あれほど念頭に入れていた令呪の行使ももはや頭から抜け落ちた。このまま反逆により意識が落ちるか最悪死ぬかと朧に察しはじめたところで縛りから解放された。

「……よし、と。はい返すわね」
「ぁ……とおぉっ!?」

朦朧として霞がかってぼやけた視界で、放り投げられた赤石。
自分のソウルジェムと認識して咄嗟に、必死になって手を出す。どうにか光は無事に手の中に収まった。

「オ、マ、エ、なああああ……!」

赤い旋律が魔力として現実に走って、杏子の体を包み上げる。
武装の展開を構築。怒りと痛みで熱くなった頭はとっくに統制を離れている。槍の一つでもブチ込まねば気が済まないという一念でいっぱいだ。
正常に戻る視界で女を捉え、手に握ったソウルジェムを見据え―――そこで沸騰するほどの熱は冷や水をかけられた。


―――なんで、濁りが消えてるんだ?


「……あ?」

ソウルジェムは魔法少女にとっての要だ。戦う姿に変わるための媒体で、中身の濁りで魔力の残量を示す。故に逐一の確認は欠かせない。
今日の状態は濁りが一割。底に僅かに沈殿するのみのもの。
だが今見た宝石の中身はどうか。色鮮やかな赤には一変の濁りもない純度ある美しさを保っている。
初心者の魔法少女でも知る知識。穢れの浄化はグリーフシードを用いでしか出来ない。その常識を壊されて、杏子は首を回す。
そこにいるのは一人の女。過去に起きた偉業を成した夢の具現。聖女のサーヴァント。


奇跡―――。


今目撃したものの意味を、言葉に出来ぬまま。呆然とそれを起こした人をずっと眺める。

一分、いやそれ以上、もしかしたら以下かもしれない間隔の後。

「これで、タダ働きでも問題ないわね?」
「あるに決まってんだろ!」

反射的に叫んでいた。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


587 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/13(日) 00:32:20 gTsEy6Xo0





結局、杏子は最後までライダーの方針を認めないまま寝ると言って下に降りていった。
残ったままのライダー、マルタは一人のまま地を見続けているが、思考は去ったマスターについてに割かれていた。

良い子ではあるのだろう。善性を持って生まれ、愛ある家族に育てられて成長した。
だが家族を襲った悲劇が自分の原因であると背負い、罪人らしく粗暴に振る舞うしか出来なくなってしまった。
家族を殺したのは自分だ。そんな自分は醜い悪ある者でなければいけない。
元来の信心深さが悪い方向に絡み、今の佐倉杏子の人格を歪めて形成している。

この所感はマルタがマスターから直接聞きだした経緯ではない。尋ねても絶対に口を開く真似もしないだろう。
サーヴァントとマスターは契約時に霊的にもパスを共有し、互いに夢という形でそれぞれの過去を覗くというが、それによるものでもない。
彼女を直に観察し、語り合い、そうして得たそのままの印象と分析でしかない。
心を読むといえば特殊な技能なりし異能を必要とするものと思われるが、それは人に予め備わった機能だ。
経験と徳を積み、真に人と向き合う努力を怠らなければ誰であろうとその心を読み解ける。少なくともマルタはそう思っていた。

「女の子捕まえて契約持ちかけた挙句魂を弄るなんて……どの世界でも胡散臭い詐欺師はいるものね」

キュゥべえなるものとの契約により生まれたソウルジェム。
目にした時、聖女としての感覚が訴える声によりつぶさに調べその正体を看破していた。
あれは……人間の魂を収めている。

杏子は理解しているのか。あの様子では満足に知っている様子ではない。彼女だけでなく他の魔法少女もそうなのか。
その事実を今すぐ詳らかにするのをマルタは禁じた。自分の魂を肉体と切り離されたお知り少なからぬ衝撃を受けるのを避けた。
いずれ伝えなければならない。しかし遠慮なく暴露して徒に彼女の心に更なる傷を与えるのをマルタは嫌がったのだ。
だからせめて淀んでいた穢れを浄化した。濁り切ってただ魔法、魔術が使えなくなるだけのものと楽観はしない。
もっと恐ろしいことのためにあれを造られたのだと、聖女の部分が警鐘を鳴らしている。

「街は街でまともに管理ぐらいしなさいよ。刺青の男の殺人者なんて、どこかの原初の兄弟じゃあるまいし。
 裁定者(ルーラー)も来ないとか、どうなってるのよまったく……!」

加えて舞台はこの有様だ。
聖女でも愚痴をこぼしたい時もある。それぐらいこの儀式はおざなりだ。
憶測になるが、この儀式を起こした黒幕はろくに管理をする気がない。だから破綻させる要因を容易に引き込み、そのまま放置している。
他ならぬマルタこそそれだ。その破綻の一に、この身もまた含まれている。


588 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/13(日) 00:33:31 gTsEy6Xo0

聖杯を求めないサーヴァント。御子と出会い、真なる杯の意味を知る聖人。
絶対に召喚に応える筈のない自分を呼び寄せてしまった不具合は、綿密な儀式の完遂を望む者の手であるとは思えない。
マスターは幸運にも、善を良しとはせずとも根は善良なる少女だった。
彼女に巣くう数多の問題を知り、その解決を思えばこそマルタは今もここに居る。

だがこれが、不具合ですらなかったとしたら?
己が招かれた事態が偶然性が引き起こした事故などではなく、必然の、必要と求められての結果であるとしたら。
人の世界の焼却にも並ぶ、未曽有の危機の萌芽の可能性を何よりも危惧する。


……だが、それでもマルタの在り方は変わることはない。

如何なる時代でも、如何なる形であったとしても。
マルタは聖女であり続ける。人々を守り、導くこと。それが、聖者と呼ばれた者の使命。
思われ、願われた……なら、そう在ろうとするまで。


「……そうねタラスク、今度はちゃんと救いましょう。世界も、あの子も」



『あなたは多くのことに思い悩み、心を乱している。しかし、必要なことはただ一つだけである』



「大丈夫です。私は私の必要なこと、やるべきことを心得ております」


ですから、どうか見守り下さい。


星々の行き交う夜空を見上げ、マルタは手を合わせ天に祈る。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


589 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/13(日) 00:34:03 gTsEy6Xo0





妹もいる自室。既に寝入っている妹を起こさないように、隣のベッドに潜り込んで布団を頭までかぶる。
早く寝付いてこの嫌な思いを忘れてしまいたかった。なのにこういう時に限って目が冴えたままでいる。
頭にまだ残る鈍痛が原因のひとつでも、まああるのだが。

もぞり、と動く音。横目に見れば寝返りをうった妹の顔。
幼い頃の自分に似た、何もかもあの頃のままの家族の寝顔。
これも偽りなのか。寝息を立てる仕草も、幸せな夢を見ているだろう、蕾のような微笑みも、全て。
ああ、少なくとも自分はそう捉えている。もう戻らないものと認めている。

「優しい子、だとさ。あたしをよ」

何人も欲望のために見捨ててきたあたしを。
正義の味方になれなかった自分を。
見込み違いにも程がある。聖人とは名ばかりかと笑いたくもなる。

「まったく見せてやりたいよ。あたしの本当の家族の最期をさ……」

追いつめられた人間の取る行動。行き着くところまで詰まってしまった末路。
醜さ、憎悪、怒り、悲哀、無情、絶望。世界の負を煮詰めたような光景。

「でも―――あのひとなら……本当に救えていたんだろうな」

なにせ本物の聖女マルタだ。
救世主の言葉に導かれ世界中から信仰を得た崇高なる偉人。
いち宗教家とは、その言葉の質も存在感の重みも”もの”が違う。

今のこの世界と同じく、家を訪れ、言葉を交わし、食事を共にするだけで、
仮に本物であると知れたら滂沱と涙し、自ら膝を折り跪いてしまうだら
父の、娘が人を惑わず魔女だった絶望など軽く拭い去ってしまうのだろう。

奇跡になど、頼らずとも。
魔法なんか、使うまでもなく。
培い、積み上げた徳だけで、人の心に希望を宿す。


……そうだ。反抗しなかったのは怖かったからだ。
幾ら言葉を投げつけても全てを返されてしまい、聖女の威光に自分の虚飾を剥がされるのを拒んだのだ。
彼女の方が望まずとも、彼女の克(つよ)さを見せられる側が自傷に陥ってしまう。
白日の元に投げ出される、無様な自分が残るだけ。

「…………くそ」

ライダーともうひとつ考えが一致した。
この儀式の主催とやらは、悪趣味だ。魔女に聖女を送りつけるんだから間違いないだろう。


590 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/13(日) 00:34:55 gTsEy6Xo0



【クラス】
ライダー

【真名】
マルタ@Fate grand order

【属性】
秩序・善

【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運A+ 宝具A+

【クラススキル】
騎乗:A++
 騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣のものまで乗りこなせる。
 例外的に竜種への騎乗可能なライダーである。

対魔力:A
 A以下の魔術は全てキャンセル。
 事実上、現代の魔術師では○○に傷をつけられない。

【保有スキル】
信仰の加護:A
 一つの宗教観に殉じた者のみが持つスキル。
 加護とはいうが、最高存在からの恩恵はない。
 あるのは信心から生まれる、自己の精神・肉体の絶対性のみである。

奇跡:D
 時に不可能を可能とする奇跡。固有スキル。
 星の開拓者スキルに似た部分があるものの、本質的に異なるものである。
 適用される物事についても異なっている。

神性:C
 神霊適性を持つかどうか。
 高いほどより物質的な神霊との混血とされる。
 聖人として世界中で崇敬されており、神性は小宗教や古代の神を凌駕する。

【宝具】
『愛知らぬ哀しき竜よ(タラスク)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:2~50 最大捕捉:100人
 リヴァイアサンの仔。半獣半魚の大鉄甲竜。
 数多の勇者を屠ってみせた凶猛の怪物をマルタが説伏され付き従うようになった本物の竜種である。
 マルタの拳も届かない硬度の甲羅を背負い、太陽に等しい灼熱を放ち、高速回転ながら飛行・突進する。

【weapon】
『杖』
救世主たる『彼』から渡された十字架のついた杖。
主に光弾を発射して攻撃するが……鈍器として使用した方がおそらく強い。たぶん素手の方がもっと強い。

【人物背景】
悪竜タラスクを鎮めた、一世紀の聖女。
妹弟と共に歓待した救世主の言葉に導かれ、信仰の人となったとされる。
美しさを備え、魅力に溢れた、完璧なひと。
恐るべき怪獣をメロメロにした聖なる乙女。最後は拳で解決する武闘派聖女。

基本的に優しく清らかで、穏やかなお姉さん風の言動が多いが、親しい者の前では時折聖女でないマルタの面を見せる。
聖女以前の、町娘としてのマルタは表情と言葉が鋭くなり、活動的で勝気。……というよりヤンキー的。
どちらが素というわけではなく彼女の芯は変わらず聖女のまま。要はフィルターのオンオフの違い。

【サーヴァントとしての願い】
聖女マルタは、救世主のものならざる聖杯に何も望むことはない。
かつての時と同じく、サーヴァントとして現界しても聖女として在る。
故に、この戦争も認める事なく真っ向から反抗する。
一度道を外れたマスターが、正しき道に向かう為に。

【基本戦術、方針、運用法】
スキル構成は防御に寄っているが宝具による火力と機動力も備えているため攻めの面でも不足ない。
生粋の戦士ではないので切り込み過ぎるのは禁物と思われるが、素手(ステゴロ)でも案外なんとかなるかもしれない。
聖杯戦争を止めるために、今後は杏子を引っ張り出すための説得から始めなければならない。


591 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2016/03/13(日) 00:35:17 gTsEy6Xo0

【マスター】
佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ

【マスターとしての願い】

【weapon】
分割する多節槍が主装。巨大化しての具現も出来る。

【能力・技能】
魔法少女として優れた身体能力に合わせ、魔女との戦闘経験も豊富。
防御の術も習得してるがスタイルが攻めに比重が偏ってるため防戦は不向き。
魂はソウルジェムという宝石に収められてるため、魔力さえあればどんな損傷でも回復可能。
ジェム内の濁りが溜まり心が絶望に至った時、その魂は魔女と化す。
かつては願いを反映した幻惑の魔法を持っていたが、過去のトラウマから願いを否定した事で使用不可になっている。

【人物背景】
キュゥべえと契約した赤い魔法少女。
好戦的。男勝りな口調。常になんらかの軽食を口にしている。
魔法少女の力ひいては願いや欲望は、自分のためにこそ使うべきとする信条。

他人を救おうとした父を助けたくて願った魔法は、癒えも父も家族も皆燃やした。
魔女と罵りを受けた少女は自暴自棄気味に利己を優先するようになる。
だが根がどうしようもなく善人なため堕ち切る事も出来ず、謳歌してるようで鬱屈した日々を送っていた。


【方針】
願いを叶えるという聖杯そのものについて懐疑的で素直に受け取る気はない。
かといって、積極的に戦う気もなく様子見するつもり。マルタの方針に同意する気は今のところ、ない。


592 : 名無しさん :2016/03/13(日) 00:35:39 gTsEy6Xo0
以上で投下を終了します


593 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/13(日) 00:38:36 9QQ6fdYQ0
皆さま投下お疲れ様です。

改めて報告します。
締め切りは本日24時(つまり14日0時)です。残り約24時間の猶予があります。
滑り込みは事前に報告していただければ深夜1時まではセーフとします。


594 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/13(日) 00:40:24 9QQ6fdYQ0
続いて感想を投下します。先ほど投下された分はまだ終わっていないので
最後にまとめて感想を投下させていただくことになると思います。

海パン刑事&ランサー
バナナによる繋がり……?の主従でしょうか。海パン刑事の存在が報道されまくってる刺青男よりも目立っている
気がするのですが大丈夫なのか不安ですね。(本人は全く気にはしないのでしょうけど)それでも、彼には
確かな正義感があり、そこに関しては紛れもない正義の味方であるので、ランサーと聖杯戦争を止めて欲しいものです。
投下ありがとうございました。

あやめ&キャスター
闇に呑まれた神隠しの少女が呼び寄せたのが光そのものであろうとするサーヴァントを引き寄せるとは皮肉なもの
ですね。……というか、このキャスターもマスターを殺そうとしているのですか。一体どうしてこの聖杯戦争
に召喚されるサーヴァントたちは少女のマスターを殺したがるのでしょう? 私も不思議です。
投下ありがとうございました。

間桐臓硯&キャスター
すでにサーヴァントの宝具を把握している主従であり、それを利用しようと企む。いかにもキャスターらしい
キャスターが登場しましたね。とはいえ、彼らの存在があの刺青のバーサーカーの不死性をどうにかできるか
鍵にもなりそうなのですが。彼らが素直に行動を移すようには見えないので、一筋縄ではいきそうもないですね。
投下ありがとうございました。

道明寺歌鈴&セイバー
東京での役割は様々ありますが、歌鈴の場合はアイドルという身分で、あんな事件があったのにも関わらずライブ
が行われるということは、いつか大事に巻き込まれそうなのが目に見えます。セイバーはマスターの気持ちを受け止め
関係も良好ですが、やはり戦うことになるとアイドルとしての身分が仇となってしまいそうですね。
投下ありがとうございました。

零崎人識&アサシン
文字通り、殺人鬼通りの主従。一応、マスターの人識は『赤い請負人』のこともあって殺人をしないようですが
この聖杯戦争においては厳しい制約かもしれません。人を殺すのに理由を持たない零崎であるというマスター
に対し、アサシンはどう殺人鬼らしく接していくのでしょうか。今後の展開が楽しみです。
投下ありがとうございました


595 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/13(日) 00:40:50 9QQ6fdYQ0
窓付き&バーサーカー
もうすでに地獄にいるからこそ、東京のような地獄なんてどうってこともないような主従ですね。とんだイカれた
二人ですが、バーサーカーも厄介過ぎますね。このままではバーサーカーの宝具で東京都民が全て……なんてことも
最早どうすることもできないのかもしれません。ただ、マスターの窓付きが何か起こせば……ありうるのでしょうか。
投下ありがとうございました。

DIO&ランサー
折角ジコチューでなくなったランサーがいきなり悲惨な目に! やはりDIOの行動力と言いますか、ランサーが
ジコチューな存在でしたらこうではなかったのかもしれませんが、彼女は浄化された存在だったのが運のつきでしたね。
とはいえ、この主従がこのままで済む訳にはいかないでしょう。ジコチュー達が東京でどのような行動を起こすのでしょう
投下ありがとうございました。

博麗霊夢&キャスター
元より聖杯の解体を目的とした存在はありえなくはないのですが、この主従はお互いに己の信念を持って行動しよう
としておりますし。マスターの霊夢もいつものように異変解決として行動する為、願望機である聖杯に対する執着も
彼女らしくそれほどでもないのでしょう。そして、聖杯だけではなく他の主従に対しての方針も気になるところです。
投下ありがとうございました。

美柳ちなみ&アサシン
好戦的なアサシンとはこれまた面倒なサーヴァントを召喚してしまったマスターのちなみですが、ちゃんとアサシン
をコントロールしようとする強い姿勢はあるので行く先まだ不安を感じませんね。ただ、この東京都には生粋の
戦闘狂であり殺人鬼である戦士が出現しているのです。彼と邂逅を果たした時、彼らはどうするのでしょう
投下ありがとうございました。

衛宮切嗣&アイテム
ついにこの正義の味方が来ましたか。既に正義の味方であるマスターやサーヴァントの候補作は多くありますが
この切嗣に関しての正義とは? の問答は虚無聖杯において改めてしておかなければならないかもしれません。
アイテムという特殊なサーヴァントを持つ為、普通の聖杯戦争らしい戦い方が困難なので立ち回りを気をつけて欲しいです。
投下ありがとうございました。

SCP-014-JP-J&キャスター
これは彼の魔王ブリュンヒルデ様と黒き翼の堕天使・豚の塩漬け様ではございませんか!!
まさかこの御二方が主従となるならば、この国も手中に収めたも当然。向かうところ敵なしでしょう!
キャスターの勢いで豚の塩漬けは何とかやっていけているようですが。果たして聖杯戦争を生き残れるのでしょうか?
投下ありがとうございました。


596 : ◆NHpqfH./HY :2016/03/13(日) 01:07:15 DqeIZEZU0
皆様ご投下、◆3SNKkWKBjc氏は感想もお疲れ様です!
私も投下させて頂きます!


597 : 聖剣伝説 ―勝利と栄光の旅路―  ◆NHpqfH./HY :2016/03/13(日) 01:08:11 DqeIZEZU0


 黒の帳が降りた東京のどこかで、時代錯誤なそれは鳴り響いた。

「ち……うぜぇッ!」

 吐き捨てるような男の怒鳴り声。
 どこか焦燥感を感じさせるそれは、東京という世界でも上位の治安を誇る都市であろうとどこかで耳にすることができるものだ。
 しかし、それに追従して響き続ける連続した剣戟の音は、およそ現代日本でなかろうと現実に聞く機会などまずないものであろう。
 このご時勢にチャンバラなどと、時代劇の中で見るか、もしくは子どもの戯れでしか見ることは叶わない。
 だが、そこで行われているそれは。ドラマの撮影や即興の舞台でもなければ決して児戯の類でもなく。
 よほど酩酊した者でもなければそれを見紛う者はいないと断言できるほど明確に。
 そこで「戦争」は行われていた。

 相対する形で二人。
 手に持つ武器は互いに刀剣。
 規模も装備も現代における戦争とはかけ離れており、形容するとしたならば精々が殺し合い止まり。
 到底戦争になど及ぶべくもない。警察が出動すれば片付く程度の物でしかない。
 それが一般市民が抱く、特徴だけを論ったこの闘争への評価だろう。
 だが、それは誤った認識だ。
 そもそもが前提からして絶対的に間違っている。

 人間離れした速度で刃が風を刻み、剣と剣は間断なくぶつかり合って無機質な音を東京の夜空に奏で続ける。

 人間は微塵の疲れも見せることなく刀剣を振り回し続けることもできなければ、踏み込みで舗装された道路に亀裂を入れることもできはしない。
 そう――姿形は人なれど、そこに在るは人間ではない。
 古今東西を問わず、伝説を打ち立て偉業を為し得た英雄偉人は信仰を得て英霊となる。
 互いの首級のみを見定め、自らの敗北を露も考えていない彼らこそはその現身。
 信仰を以って得た力を揮い、神秘を以って奇跡を常とする超常の存在――すなわち、サーヴァント。

 二人ではなく二騎の、戦闘機にも例えられる存在が、東京という都市の中で縦横無尽にその力を揮っていた。

「てめえ一体なんなんだ。ふざけてんのか」
「ふざけているかですって? そちらこそ何を馬鹿なことを言っている。わたしは365日いつでも大真面目ですとも!
 ええ、閏年には流石に有給を取らせていただきますが」

 着物を流し着している大柄の男が、敵対している小柄な少女へと文句を零した。
 少女の振るう二振りの剣を刀一本で同時に捌き、返す刀で的確に急所を突いていくその技量はおよそ現代の達人では到達不可能な領域にある。
 しかし少女も英霊。巧みに双剣を操りのらりくらりと必殺の反撃をやり過ごす。
 その掴み所の無い立ち居振る舞いや顔に貼り付けた不敵な笑みから、どちらが優勢であるかは窺い知れる。
 
「そうかい。ふざけたナリとふざけた言動と、そして振るうたびにブンブン鳴るふざけた得物。
 そういう風に見えてるんだが、どうやら俺はサーヴァントになったってのにまた耄碌しちまったらしいな」

 しかし――いくら圧倒的優位に振舞っていようと、実際に優位かどうかを推し量ることはできはしない。
 事実男が指摘したように、少女はおよそ英雄とは思えない珍妙な出で立ちと奇妙な武器を手にしていた。
 英雄というものの大半が己が勝利を信じて止まない生き物である以上、その自信に根拠などありはしない。
 少女が元々そういう性質であるのだとしたら、まだ勝負の趨勢はわからない。いや、仮に現在優位であろうと、たった一枚のカードで戦局は激変する。

 彼らの手に在る物はただの武具ではなく、英雄たる彼らの象徴。物質化した奇跡。
 天を裂き、地を割り、因果律にすら干渉し得る貴い幻想――宝具。

 あらゆる逆境を打破しうるワイルドカードは、未だ切られていないのだ。

「当然ですがサーヴァントは弱点も引き継ぎますから、耄碌した逸話があるならばそれも引き継がれたのでは?
 アイルランドの神殺しもそうですが、英雄が晩節を汚すなんてよくある話。
 その点老いることなく最期の時まで英雄然としていたわたしこそまさに最優の中の最優、セイバーの中のセイバーと言えるでしょう」
「いやサーヴァントは最盛期の姿で召喚されるし、それにマスターが言うにはお前アs――」
「ゴチャゴチャと五月蝿いよカリバ――――――!!」
「なぁあああああああああああ――――!?」

 逆を言えば、切ってしまえば即座に戦闘が終了することもありえるわけだが。


598 : 聖剣伝説 ―勝利と栄光の旅路―  ◆NHpqfH./HY :2016/03/13(日) 01:10:16 DqeIZEZU0

「フッ、真名解放はしないとでも高を括っていたようですが、残念でしたね。
 セイバーを抹殺する為ならば多少周囲に被害が出ようと知ったことではありません! どうせ迷惑を被るのはガス会社くらいだし!」

 少女が宝具の真名解放(?)を行ったことにより、その一帯は一瞬だけ夜の闇を忘れ、星明りを束ねたような光条が周囲のすべてを飲み込んでいた。
 光が消滅した後も地面は赤熱し煙をあげており、光に飲み込まれた室外機は消滅し、衝撃で路地の側壁には大きなひび割れが走っている。
 さらに光の奔流の先に存在した河川の川底は大きく抉り取られ、水蒸気爆発によって巻き上げられた川の水は雨のように周囲一帯に降り注いだ。

 自らの行いによって発生した被害について少女はなんら悪びれる様子も特には見せず、「いやあ最初からこうしてれば早かったですね!」とむしろその行いを称賛すらしている。
 ある意味で英雄らしいといえばらしい少女であった。

「XとZがいてどうしてYがいないと思うでしょうか、いやない!」

 川底でガス管が破裂したとしても、なぜ路地まで表面が融解するような被害が出ているのかなんて言い訳はすべて投げ捨てて、少女は装いを正すと誰に向けてでもなく反語でそう宣言した。

「XもZも詰めが甘い。どれだけセイバーを葬った所で聖杯戦争が執り行われる限り奴らは必ず現れる……
 ならば聖杯の力を利用して、座から私以外の剣の英霊を消し去ることが最も効果的で直接的な方法ですよね!
 いやあ、マスターが聖杯戦争の知識すら与えられない聖杯なんて胡散臭すぎて正直そんな物利用して大丈夫なの? とか甚だ疑問は尽きませんがそれはそれ。正直マスターがまともな性格してたら絶対に止められる自信ありますし逆に好都合というものです」

 などと言いながら少女が歩を進める先には、先ほどまで彼女と打ち合っていた刀の男が倒れていた。
 刀は根元から折れていたが全身に傷は見えず、おそらくはそういった類の宝具であったと推測できる。
 しかしダメージ自体は残っているようで身動きは一切無く、いずれにせよここで少女によって討たれる運命であろうことは容易に想像できた。

「ぐぅ……っ!」
「全てのセイバーの抹殺こそが我が使命。
 恨むならセイバーで現界した己が不幸か、わたしみたいなのが誕生するくらいにセイバーを増やした神を恨むがいい」

 そう嘯き、掲げた剣を少女が力の限り振り下ろさんとした、まさにその瞬間。

「そこまでです!」

 その行いを阻止すべく、凛然とした制止の声が割って入った。

「すでに力尽き倒れている者に止めを刺そうだなんて、一人の騎士として見過ごすなんてできません!」
「センサーが反応したと思ったら、まさかキミだったとはな――――リリィ」

 Yと名乗った少女の凶行を諫めたのは、彼女よりもさらに幼さを残した百合のように愛らしい少女騎士であった。
 リリィと呼ばれた少女が、その身を包む装束の騎士然とした意匠からサーヴァントであるということは推測できたが、しかしその身に纏う雰囲気には歴戦の猛者といった覇気は一切感じ取れはしない。
 そんな、ただでさえYと戦闘を行うことができるか怪しいというのに、Yはリリィの正体について既に情報を有している素振りを見せたのだ。

 宝具はサーヴァントの切り札であると同時に、象徴としての側面から正体を喧伝する弱点にもなり得る。
 もちろん正体が判明したところで容易く弱点を突かれる英雄などそうそういないが、相手も英雄である以上、守り抜くことが至難であることは明白だ。
 だからこそ宝具は軽率には使われない。弱点がなかろうと特徴や性質が割れれば罠を仕掛けやすくなるし誘導もし易くなる。
 サーヴァントにとって真名とは、可能な限り隠し通さねばならない物なのである。
 それが既に露見している可能性がある。
 その事実は、格上と見られるYと戦う上で重大な問題であるということを――――リリィは特に気にしなかった。

 リリィはむしろ、目の前にいる自身と同じ背丈の少女にこそ関心を持っていた。
 それは英霊としての自分について、知っている者などほぼ存在しない筈であると思っていたからだ。
 しかし彼女は自分を知っている。その事実は、リリィにとって真名を知られていることのデメリット以上に衝撃的なことであった。


599 : 聖剣伝説 ―勝利と栄光の旅路―  ◆NHpqfH./HY :2016/03/13(日) 01:10:51 DqeIZEZU0

「わたしを知っているんですか……?」
「フッ、どうしてわたしがキミを知っているかなんて些細な話。だってキミもここでわたしに倒されるのだから!
 行くぞリリィ、覚悟しろ。なんて言わないむしろ油断して楽に倒されて……って、なんですかその後ろのナニカは……?」

 呆けてつい疑問を投げかけるリリィを前に、即座に戦闘を終わらせようと構えたYもまた、あるものに関心を抱いた。
 ……抱いて、しまった。

「おい。歩く時は私の三歩後ろを歩く約束だろう」
「あ、すみませんマスター。あのセイバーさんがやられそうになったので、つい」
「マスター? その変なのマスターなんですかリリィ?」

 リリィの後ろからやってきた白いナニカは、既に臨戦態勢に入っているYに背を向けてリリィと会話を始める。
 人間ではないだろう。骨格的にまず違う。だが服は着ている。上だけだが。
 鼻? の長いこれはいったいなんなのか、そんな疑問をYが抱いている間にさらにそれとリリィは会話を重ねていく。

「次からはきちんと項目を守って貰いたい。いいね?」
「はい、すみませんマスター」
「え? 本当にそれマスターなんですか? 使い魔か何かじゃなくて」
「む? なんだ君は。私は今リリィと話しているのだ。横から話しかけるなどマナーも知らんのか」
「いや、貴方に話しかけたのではなくてわたしはリリィに――」
「私の伝説は12世紀から始まった」
「――――は?」
「私の伝説は12世紀から始まったのだ」
「はあ、そうですか。いえ、そんなことよりもですねリリィ。これは一体」
「おい」
「なんですか! 横から話しかけてくるのはマナー違反じゃなかったんですか!?」
「バカめ。誰もマナー違反の話などしていない。私はマナーを知らないのかと聞いたのだ」
「な、なんですかそれ! そんなの屁理「そうだ。私の鼻唄を披露してやろう」ちょっと台詞に台詞を被せないでください!」

 強い語気での抗議も意に介さず、白いナニカは本当に鼻唄を奏で始めた。

「リリィ! なんなんですかこいつは!」
「えーと……」

 意思疎通が成立しないと判断したYはしかし吹き飛ばすより先に、釈然としない気持ちを晴らすべく疑問をぶつける。
 対してリリィは、暫しの逡巡の後に口を開いた。


600 : 聖剣伝説 ―勝利と栄光の旅路―  ◆NHpqfH./HY :2016/03/13(日) 01:11:17 DqeIZEZU0

「……この方は、わたしのマスターの『エクスカリバー』です」
「…………………………………………………………………は?」





























































「――ちょっと待った!」

 衝撃的過ぎた言語を理解するのに、Yはたっぷり五秒もの時間を要した。


601 : 聖剣伝説 ―勝利と栄光の旅路―  ◆NHpqfH./HY :2016/03/13(日) 01:12:15 DqeIZEZU0

「なんだ? トイレ休憩はまだだぞ」
「違います!
 え? リリィ? 冗談でしょうそんな……あ……ああ、そうか! エクスカリバーという名前なだけのSCPかナニカですよね!?
 擬人化が流行るこのご時勢だから、本気でエクスカリバーがこんなことになってしまったのかと心配してしまいました!
 聖剣の代名詞とも呼べるエクスカリバーが擬人化しようものなら、それはもう絶世の美人か美形になるに決まってますよねえ。ははは……」
「その……信じ難いでしょうが、この方がアーサー王が振るった聖剣であるという点には相違ありません」
「ははは、ははははははは…………マジデ?」
「挨拶が遅れたな。私がエクスカリバーである」
「それはさっき聞きました! それよりも貴方本当にエクスカリバーなんですか。これがこうなるとか信じたくないんですけど!」
「その剣はまさか……」

 気が動転してリリィの言葉の意味を理解することができず、Yは慌てて自分の得物をリリィに見せ付ける。
 発光こそしているが、エクスカリバーという言葉とともに突きつけられたことでリリィもその剣がなんであるかということに察しはついた様だった。

「これです。こうでなくてはいけません! あまりに有名すぎて一目で持ち主の真名が露見するようなザ・聖剣って感じでなくては!


                 「私とアーサーの出会いについて聞きたいか?」


 こんな訳のわからないショボイのがエクスカリバーとか認められる筈もなし! どうせエクスカリパーとかそこら辺のパチモンです!


                   「あれは蒸し暑い夏の日のことだった」
             「あれ? 世界が静止したような真冬の日ではなかったですか?」


 ええ、わたしのも光ったり二振りあったりと偽物感半端ないですが! おまけにブンブンブンブン鳴ったりもしますし。


                 「私が話をしているのに水を差すでない」
         「うう、すみませんマスター。でも項目578では勇者は常に真実を伝えるべし、と」


 しかし貴方のように奔放に話すこともなければ、五月蝿くてもウザいなどということはありません。そこ、会話文中に会話文を入れないでください。


             「バカめ。君にとっての真実が、いつも客観的な真実であるという保証などどこにもない」
        「ましてや私とアーサーの付き合いについて、聞いたことのみしか知らない君が、私に意見できるはずもなかろう」
 「しかし君の行いは項目どおりのものであり、言われてみればあれは湖の乙女も湖ごと凍る恐ろしく寒い朝だったかもしれない。いや、そうだった」
「いやいや確かに恐ろしく寒い朝であったが、だからと言って冬だと決めつけることは早計であると言え、もしかするとすでに春の芽吹きを迎えた後だった可能性も捨てられないだろう。いや、ひょっとすると一足早く訪れた冬に苛まされた秋の一日だったかもしれない。とにかく私とアーサーは出会ったのだ。そう、あの場所で」


 段々会話文増やすのやめてください文章が見にくい! しかも最初はわたしの台詞よりも少なくするために区切ってたのに最後に長文持ってきて台無しだ!」

 思わず叫んだ後、己以上のイロモノを前に完全にペースを乱されている自身を悟り、Yは頭を掻き毟る。

「ああああああああああああっ! もう、いい! 話し終えるまで黙ってるから早く全部話してください!」
「…………」
「……?」
「………………」
「あの?」
「……………………」
「あのー、話してくれないんですか? 貴方を振るったなんていう頭おかしい、もとい寛大なアーサー王について興味あるんですが」
「…………………………」
「無視ですか! せっかく人が話を聞いてやろうというのに無視するとはどういった了見だ! でもよく考えなくても最初から無視されっぱなしだったなわたし!」
「………………………………」
「リリィ! なんなんですかこいつ!」
「バカめ! 自己紹介は済ませただろう。名前も覚えられないのか君は」
「うぜぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!」
「そもそも君はなんだ? 名も名乗らんとは無礼な奴め」
「今までに名乗る暇ありましたか!?
 ゲフンゲフン……、まあこちらに注意を向けてくれるだけマシなので今の内に名乗っておきましょう!


602 : 聖剣伝説 ―勝利と栄光の旅路―  ◆NHpqfH./HY :2016/03/13(日) 01:14:37 DqeIZEZU0

 わたしこそはすべてのセイバーを滅ぼす為にユニヴァースより差し向けられたX、Zに次ぐ第三の刺客!
 赤ジャージ(ネロカラー)でトリコロールと思ったか! 残念わたしは黒ジャージ(オルタカラー)!
 わたしの名前はヒロインY! XもZも出し抜いて、唯一のセイバーとなる為に、聖杯を手にする者です!」

「私の帽子は英国製最高級品なのだ」
「そうなんですか」
「聞けよっ!」

 素で放ったツッコミに、びっくりしたように目をぱちくりさせたリリィが、一拍の後にぺこりと頭を下げて来た。

「あ、すみません」
「ああ、もうリリィは倒さなくてもいい気がしてきました……ですが使命を果たし、リリィを倒さなければこのマスターからは逃れられないのもまた事実。
 これもすべては定めというものでしょう。というわけで覚悟してもらうぞリリィ」
「そういえば君は唯一のセイバーになると言ったな」
「まさか話を聞いていたなんて……そんな当たり前のことに感動している自分が不憫で泣けてきます」
「バカめ! 君のクラスはセイバーではない。自分のクラスもわからんのか愚か者め」
「おっとそれ以上は虫唾がやばいよカリバァアアアアアアアアアアア――――――!!!!」
「マスター!」

 目の前のエクスカリバーを名乗る謎の生き物に向けて、Yは全力の聖剣を放った。
 リリィが庇おうがなにをしようがすべてが無意味となるその一撃は、再び路面を削り溶かし、直撃した川の周囲にはしばらく生物が寄り付かないであろう被害を発生させる。

「乙女のシークレットを荒らすような輩には、聖剣をブッパせねばなりません。SG荒らし、ダメ、ゼッタイ!」

「まあ特に荒らされなくてもブッパしますけどね」と聖剣脳全開なことを呟きつつ、Yは晴れやかな顔で自分が行った破壊の痕跡を見つめていた。
 リリィ諸共に、そこにはあのウザイ物体は存在していない。

「まったくわたしとしたことが、どうしてああも話し込んでしまったのかわからない。
 普段は話し合いなんて面倒なので剣・即・斬だというのに、無駄に怒りを溜め込んだしまいました」

 冷静になって振り返ってみると、それは本当に謎であった。
 本来の彼女であれば、とりあえずウザければ聖剣一発で片をつけていた筈なのだ。

「今の一撃で仕留め損ねたセイバーも同時に葬ったようですし、ここに長居するのも得策ではないですね。次のセイバーを仕留めるためにも再び潜伏するとしましょう」

 しかし些細な疑問であると断じたYは、二度の聖剣の使用による大爆発を聞きつけて、直に他のサーヴァントがこの場所に来ることを見越して身を潜めることにした。
 コスモリアクターを発動し、闇に紛れようとしたちょうどその瞬間。

「逃がしません!」
「その声はまさか……生きていたのかリリィ!」

 先ほどのやり直しのように、可憐な騎士姫がYの行動を阻害した。
 センサーに感知されずいきなり出現したリリィに驚いたYがそちらの方に視線をやると、確かにリリィがそこにいる。
 だが、そこにいるリリィは先ほどまでのリリィとはある点で違っていた。

「その翼はいったい……。例えキミがifの存在だということを鑑みても、固有の宝具やスキルなんてそれこそキミの在り方に関与する物だけの筈!
 わたし(アルトリア)にそんな伝説はなかったし、キミにもそんな能力を手にする未来はない筈だ!」
「いいえ――いいえ。確かにわたしは本来存在しない嘘偽りの、虚無のサーヴァントと言えるでしょう。
 途中で分岐した「もしも」の存在であろうと、すでに定まっている結末を覆すことは叶わないかもしれない。
 ですが、結末が変わらなくても。今生においてわたしが得た絆や関係は、確かに存在する、わたしだけの物語を紡ぎ出してくれます!」
「その手に持つ剣はカリバーンではない……? まさか!」
「剣を構えろ、ヒロインY……ッ! 同じセイバー(アルトリア)から生まれ出た者として、セイバー・リリィが貴様に引導を渡してやる!」
「ちょ、ダメだリリィ! ただでさえわたしたちみたいなイロモノが増えているのに、そんなものを手にしたとあってはいよいよわたし(アルトリア)の評判が!」
「邪悪を断て、エクスカリバー!」
「邪悪扱いですかぁああ――!?」

 それは光の翼を生やしていたことにか、選定の剣とは異なる聖剣を手にしていたことにか、あるいはその精神面かそれらすべてにか。
 当惑の分迎撃の送れたYは、リリィの一振りと同時にいきなり発生した爆発に巻き込まれ、遥か彼方へと吹き飛ばされていた。

「は!? なぜか爆発に巻き込まれたけど特にどこも斬られていない!
 やはりコスモ時空の法則(コメディなので死なない)は最強ですね!」


603 : 聖剣伝説 ―勝利と栄光の旅路―  ◆NHpqfH./HY :2016/03/13(日) 01:15:56 DqeIZEZU0

 それが彼女が、この世界で最後に残した言葉となった。
 何故なら次の瞬間、エクスカリバーによって進路上に創り出された空間の切れ目の中へとYは吸い込まれ、別の時空(サーヴァントユニヴァース)へと放逐されてしまったのだから。

「……さようなら、ヒロインY。いつかまた会うときがあるのなら、互いに違う関係で会いたいですね」

 違う道を辿った己の別側面、その最期を見送ったリリィが地に降り立つと、手にしていた貴き聖剣も元の白いナニカに戻って両足を着く。
 そのまますぅっと背筋を伸ばした彼に、リリィは恥らうような微笑を湛えて感謝を口にした。

「ありがとうございましたマスター。マスターの力がなければ今頃……」
「何を言っているリリィ。君が修行の過程にありまだ未熟者で半人前な騎士であるということは周知の事実だ。君は幼子がひとりでなんでもできると思うかね? いいや、できまい。とは言っても私は小さな頃からなんでもできた。今でもそうだ。小さな頃から段々とできることも増えていったが、やっぱりそんなこともなくはじめからなんでもできていた気がする。しかしそれは私に限った話であり、それを自身に当てはめようとする行いが如何に愚かなことであるかは火を見るより明らかであるということは語るまでもないだろう。いや、私以外の者にはそれを理解するのは難しいかも知れないがそれは所詮視点の問題に過ぎず視点を変えてしまえばやはり簡単な問題でであると言えよう。いやいや、その視点を変えるという行い自体が難しいということを失念してはならず、それこそが何故今なお世界で争いが繰り返されているかという重大なファクターなのであるということを胸に刻んでもらいたい。君がニンジンを食べられるからと言って私も同じようにそれを食べられると思うかね? 違うだろう。誰にでも苦手な物はあり、だからこそ人という字は人と人が支えあっているのである!
 以上が私の職人になるにあたり守ってもらいたい1000の項目その349! 職人は好き嫌いをせずなんでも食べるに繋がるのだ!」
「あの……マスター、要望は極力応えていけるように努力しますが、わたしはあなたの職人(マイスター)ではなく、あなたのサーヴァントです」
「黙れ。誰が口答えをしていいと言った。私を扱う者は職人と相場が決まっているのだよ、相場が」
「す、すみません……」
「七時の報道番組までまだ時間があるな。よし、私の歌を披露してやろう。正座したまえ」
「はい! マスター!」
「ヒア ウィ ゴー!」

 そうしてエクスカリバーの、独唱の幕がここに開いたのであった。




【ヒロインY@サーヴァントユニヴァース 生還】


604 : 聖剣伝説 ―勝利と栄光の旅路―  ◆NHpqfH./HY :2016/03/13(日) 01:16:55 DqeIZEZU0

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【クラス】セイバー
【真名】セイバー・リリィ(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/Grand Order


        エクスキャリバ~~~♪


【属性】秩序・善
【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:A 幸運:A+ 宝具:B


        エクスキャリバ~~~♪


【クラススキル】


        フロム ユナイテッド キング♪


対魔力:B
 魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。



        アイム ルッキング フォ ヒム♪


騎乗:C
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
 野獣ランクの獣は乗りこなせない。


        アイム ゴイング トゥ♪ キャルフォルニァ~~~♪


【保有スキル】


        エクスキャリバ~~~♪


直感:B


        エクスキャリバ~~~♪


 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。研ぎ澄まされた第六感はもはや未来予知に近


        フロム ユナイテッド キング♪


い。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
 しかし、勘がいいのも考え物。とにかく目に付く人の悩みを敏感に感じ取ってしまうため、会う人会う人、つ


        アイム ルッキング フォ ヒム♪


い手助けをしてしまうことに。


魔力放出:A


        アイム ゴイング トゥ♪


 武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。いわば魔力によ


        キャルフォルニァ~~~♪


るジェット噴射。
 絶大な能力向上を得られる反面、魔力消費は通常の比ではないため、非常に燃費が悪くなる。


花の旅路(聖剣伝説):EX
 ふむ、ゲームだけではスキルの詳細がわからない?
 ヴァカめ! 私との出会いで彼女が旅路の勝利と栄光は既に約束されている!


605 : 聖剣伝説 ―勝利と栄光の旅路―  ◆NHpqfH./HY :2016/03/13(日) 01:17:48 DqeIZEZU0

【宝具】
『勝利すべき黄金の剣(カリバーン)』
ランク:B(条件付きでA+) 種別:対人宝具 レンジ:不明 最大捕捉:不明


        エクスキャリバ~~~♪


 カリバーン。


        エクスキャリバ~~~♪


 彼女が引き抜き、王となった選定の剣。これを引き抜いた時点で彼女は老化と成長が止まっている。
 対人宝具の「対人」とは敵ではなく剣の所有者、つまり選定対象に向けられたもの。所持者が王として正しく、


        フロム ユナイテッド キング♪


そして完成された時、その威力は聖剣に相応しいものとなるという。
 権力の象徴であり、華美な装飾が施された式典用の剣で、武器としての精度は「約束された勝利の剣」と比べ劣


        アイム ルッキング フォ ヒム♪


る。真名を解放すれば「約束された勝利の剣」と同規模の火力を発揮できるが、刀身はアルトリアが持つ膨大な魔


        アイム ゴイング トゥ♪


力に耐えられず崩壊してしまう。


        キャルフォルニァ~~~♪


【人物背景】
選定の剣カリバーンを抜き、王としての道を歩み始めたばかりのアルトリアの姿。


        エクスキャリバ~~~♪


まだまだ半人前の少女騎士。


        エクスキャリバ~~~♪


その姿は愛らしい百合のようであり、また、その瞳も輝かしい希望に満ちている。


        フロム ユナイテッド キング♪


多くのことを経験するために国中を渡り歩き、多くの冒険譚を残した。彼女に助けられた者はその華やかさから騎


        アイム ルッキング フォ ヒム♪


士姫と称えたらしい。


        アイム ゴイング トゥ♪ キャルフォルニァ~~~♪




 ――――以上が、あり得たかも知れない、アルトリア・ペンドラゴンが選定の剣を抜いて、王になるまでの間にあった「もしも」の側面として召喚された彼女の物語である。
 実際のアーサー王にも修行時代は存在したが、それはこのように華やかなものではなかった。



 ……何? 行間の歌が五月蝿い?
 ヴァカめ! 歌というものが人類の文化史の中で、どれほど重要な役目を果たしたかも知らない君たちが歌を否定して良いわけがなかろう。
 ましてや私が歌うという極めて個人的な行いを君たちがとやかく言う資格などない!
 さらにステータスシートに余分なものを書き込むなと言いたそうだな? ヴァカめ! すでに私と同じく英国出身の若者(アストルフォ)が実践済みだ!
 リスペクトは大事なのだよリスペクトは! いいね?


 ……余談であるが、彼女のマスターであるエクスカリバーは強力な汚染源である。結末までの道中が定まっていない彼女は如何様にでも変質する可能性を有しており、エクスカリバーとパスを繋いでいることによって汚染されてしまえば、彼の騎士王のようにその性質を反転(リバース)する恐れも十分ありえる。



【マスター】
自己紹介が遅れたな。
私がエクスカリバ――――――(@ソウルイーター)である!

【マスターとしての願い】
願いだと? ヴァカめ! そんなものはない。しかし私の5時間に及ぶ朗読会には是非参加願いたい!

【能力・技能】
技能だと? ヴァカめ! 魔武器が武器にならずになんになるというのだ。
そうだ。私の歌が聞きたいか? 何? 十分堪能した? ヴァカめ! 君たちに拒否権など存在しない!


606 : 聖剣伝説 ―勝利と栄光の旅路―  ◆NHpqfH./HY :2016/03/13(日) 01:18:09 DqeIZEZU0
【人物背景】
























                  ヴァカめ!!!!



















何事も自ら行動せずに与えられるのを待つだけなど愚の骨頂! そのような怠慢や心構えが、今後の人生を如何に左右するかということはこのエピソードからもわかってもらえるだろう!
そう、あれは根無し草と呼ばれ各地を放浪している時期のことだった………………


………………かくして、私は七時の報道番組は欠かさず見るようになったのだ。そして諸君には鼻唄と報道番組の間には密接な関連性があるということをしっかりと記憶していてもらいたい。


私の伝説について詳しくは諸君の目で確かめてもらいたい。とはいえいきなり調べようと思っても大変だろう。
そこでさわりとして私の職人になるにあたり守ってもらいたい1000の項目の一部を抜粋したので、諸君にも是非実践してもらいたい!


守ってもらいたい1000の項目その1、私の朝は一杯のコーヒーから始まる
守ってもらいたい1000の項目その22、さわやかな朝はさわやかなあいあさつからはじまる
守ってもらいたい1000の項目その58、わたしが鼻歌を口ずさんでいる時は話しかけない
守ってもらいたい1000の項目その75、エクスカリバーの誕生日は盛大に祝うこと
守ってもらいたい1000の項目その172、和の精神を持て
守ってもらいたい1000の項目その202、トイレは最高級のものを用意すること
守ってもらいたい1000の項目その278、私の食事にはニンジンを使用しない
守ってもらいたい1000の項目その349、職人は好き嫌いをせずなんでも食べる
守ってもらいたい1000の項目その452、毎日行われる私の5時間に及ぶ朗読会には必ず参加すること
守ってもらいたい1000の項目その573、歩く時は必ずエクスカリバーの三歩後ろからついて行く
守ってもらいたい1000の項目その578、勇者は常に真実を伝えるべし
守ってもらいたい1000の項目その602、食べ物は必ず新鮮なものを用意すること
守ってもらいたい1000の項目その667、いつもエクスカリバーを賛美すること
守ってもらいたい1000の項目その679、部屋には必ず除湿機を置く
守ってもらいたい1000の項目その778、宅配便は着払いでは絶対に送らないこと

もしも私の職人になりたいという有望な者がいるならば、宛先はこちら。

〒167-030303030300330030303030高尚かつ偉大・この私エクスカリバーが住む、楽しい最高偉大ポップ&クールな土地・略してユーホップブリテイン島北ギスナミ区348番地12-3 妖精の楽園悠久の洞窟内最深部中央偉大なる伝説の聖剣エクスカリバー様宛

今なら限定一名に限り、リリィの補欠職人としての椅子が空いている。厳正なる抽選の上、選ばれし君を旅路の一員として迎えよう! 奮って応募してくれたまえ!


607 : ◆NHpqfH./HY :2016/03/13(日) 01:18:45 DqeIZEZU0
以上で投下を終わります。
エクスカリバー&セイバー・リリィの主従でした。
倒され役として登場して貰ったヒロインYは、Fate/Grand Orderの謎のヒロインX、Zをモチーフとしたオリジナルキャラクターですが、問題がありましたら破棄致しますのでよろしくお願いいたします。


608 : ◆ACfa2i33Dc :2016/03/13(日) 01:27:54 oUyBG5B20
>>542-547のSS内において、クリエイティブコモンズの宣言を忘れていました

クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてKwana氏が創作されたSCP-210-JPのキャラクターを二次使用させて頂きました。


609 : ◆yaJDyrluOY :2016/03/13(日) 05:11:00 iMc3RkE.0
>>577のサーヴァントのステータスに、作品元を表記し忘れていました。
正しくは


610 : ◆yaJDyrluOY :2016/03/13(日) 05:14:28 iMc3RkE.0
↑途中送信してしまいました。
正しくは

【真名】アタランテ@Fate/Apocrypha及びGrand Order

です


611 : ◆Piz1BL3gpw :2016/03/13(日) 11:13:30 WwKIeg6g0
投下します


612 : 正しきを為す弓兵 ◆Piz1BL3gpw :2016/03/13(日) 11:14:46 WwKIeg6g0
――これは一体、どういう状況なのだ?



聖杯戦争の参加者たるマスター候補の中にあって、その男は例外中の例外と呼ぶべき存在だった。
原則、全てのマスター候補は一度NPCとして埋没し、日常の中で違和感に気づいた者がマスターとして目覚めることができる。
ならば男がこの世界に呼ばれたその瞬間から覚醒していたことは必然の事象であったに違いない。

「守護者としてでも、サーヴァントとしてでもなく、一個の生命として呼ばれたというのか……?
それにこの令呪、まさかオレがマスターの側だと?どうなっている?」

在りし日は聖杯戦争に巻き込まれたマスターとして、死後はサーヴァントの一柱となって駆け抜けた「元」アーチャー。
英霊エミヤは守護者として抑止の輪に組み込まれた存在であり、一人の人間として市井に埋没するなど有り得るはずもない。
故にエミヤは極めて速やかに違和感に気づき記憶を取り戻すことに成功した。元より人間とは存在の階梯が違う、というのも理由の一つではあっただろう。

この世界の身分までご丁寧に用意されていた。
どうやら東京で休暇を取っているフリーランスの傭兵、という設定のようだ。まあ間違ってはいまい。
しかし聖杯戦争が行われることは間違いないだろうに何故何らの知識も付与されないのか?
本来呼ばれるはずのない存在をマスターとして呼んだが故の弊害だとでもいうのだろうか?

「全く、前回の召喚の時の事故でもあるまいし――――――何だと?」

自分で口に出した、否、記憶から出した事柄に驚愕を覚えた。
覚えている。覚えている。覚えている。第五次聖杯戦争にサーヴァントとして召喚された時の記憶全てを。
英傑たちとの戦い、己が望みを果たすために凛を裏切っても盤面を整え、過去の自分を消し去ろうとした。
だが、叶わなかった。いや、元よりそうする必要などなかったのだ。
そう、地獄に落ちようとも、誰かを救うために走り続けたこの道は決して間違いなどではないと気づいたから―――



「馬鹿な、何故記憶を持ち越している?座に戻るよりも前にこの世界に引っ張られたのか?」

サーヴァントというものは聖杯戦争での記憶を座に持ち込むことはできず、ただ「そういう事実があった」という記録が残るのみである。
にも関わらずエミヤには第五次聖杯戦争の記憶が鮮明に残っている。
考えられるとすれば、サーヴァントとしての己の魂が座に帰るよりも先にこの世界に引き寄せられた、という可能性ぐらいか。
これが聖杯の意思だとすれば、何の意図があって英霊をマスターの側として確固たる肉体を与えて配したのかまるで理解が及ばない。
確かにエミヤは英霊の中でも下から数えた方が早いほど格に劣る存在ではある。
しかし人間の魔術師と比較してしまえばその差は天と地ほどもある。
これではバランスを著しく欠くのではないか?それともこの世界にはエミヤに並ぶような力を持つマスターが何人も存在するのか?


613 : 正しきを為す弓兵 ◆Piz1BL3gpw :2016/03/13(日) 11:15:32 WwKIeg6g0

「抑止力も、魔術師もオレを縛ることはない…ならばオレはどう動くべきなんだろうな」

これから起こるのが聖杯戦争ならば、無数の惨劇が起こり血が流れることは間違いない。
聖杯に懸ける願いなどは元よりなく、自らの手で叶えようとした悲願も最早必要ないとわかった。
ならば許されるのだろうか。もう一度、正義の味方として在ることを。

「なあ、名も知らぬサーヴァントよ」
「やっぱり気づいてたか。悪いな、そろそろ顔を出そうかと思ってたんだが」

エミヤの背後から実体化し、姿を現したのはまさしく勇者と呼ぶべき風貌の黒髪の青年だった。
マスターに与えられたステータス透視能力から見える数値はアベレージ以上、容姿からして東洋の英雄といったところだろうか。

「どうもそっちは色々事情が混み入ってるみたいだな」
「ああ、正直に言って混乱しているよ。君は事情を知っているのかな?」
「いくらかはな。どこから話したもんか……」



エミヤとレイラインで繋がったサーヴァントが話すところによると、この世界は聖杯によって再現された東京であるとのことだ。
住民もまた再現された存在…ゲームで言うところのNPCとでも呼ぶべき者たちであるらしい。
そして何と、マスターとサーヴァントの数は把握できないほどの多数に上るという。

「…この聖杯は凄まじいまでのリソースを備えているようだな。
だがこれは街中で聖杯戦争を開催するのとはわけが違うぞ。何故現代の日本の首都を再現する必要がある?
そもそも、我々にこれほど高度に文明的な殺し合いを強いること自体聖杯に何某かの意思が介在している証左ではないのか?」
「答えてやりたいのは山々なんだが、俺も見てもいないことまではわからねえからな。
それともう一つ、さっきざっと東京を見回してみたんだが魔術回路もないマスターが結構いるみたいだ。
俺は生まれつき眼が良くてな、そういうのはわかるんだ」
「なるほど、私以上の千里眼の持ち主というわけか。さしずめクラスはアーチャーといったところか」
「おう、東方の大英雄アーラシュとは俺のことよ。
ま、実際はそう大したもんでもないけどな」

今はマスターとして立つエミヤとて本来は英霊である。
故に、遥か東方の英雄であるアーラシュについても知識を有している。
その身を犠牲にして大地を割り国境を作ることで、自身以外の血を一滴も流さず、敵も味方も一人も取りこぼすことなく救い、長年に渡る戦争に終止符を打った男。
ペルシャ神話全体で見ても間違いなく上位に位置するであろうほどの大英雄。
ある意味において、エミヤシロウの理想を実現してみせたとも言える英霊が目の前にいる。


614 : 正しきを為す弓兵 ◆Piz1BL3gpw :2016/03/13(日) 11:16:18 WwKIeg6g0


「ふ、彼のアーラシュ・カマンガーが大したことのない英雄なら私などは塵芥以下だろうよ」
「そんなことはない」

弓兵は真っ直ぐにエミヤの瞳を見据え、静かに、しかし明確に断言した。
見透かされている。我知らず、エミヤはそんな感想を抱いた。

「お前はやるべき時に、やるべきことをやって、多くの民を救ったんだろう。
なら、お前は誰に劣りもしない立派な英雄だ。そうだろ、錬鉄の英雄?」

言い切るその瞳には一切の虚飾はなく、さりとて責めるでもなく柔和な笑みを浮かべる。
苦手なタイプだ。セイバーともランサーとも異なる、率直でいて大らか、穏やかなこの男相手ではエミヤの皮肉も通じそうにない。

「それで、方針はどうする?」
「そうだな、私は経験上聖杯というものをどうも信用できなくてね。
君は先程魔力を持たぬマスターがいると言ったな。それはつまり、私を含め自らの意思に依らず聖杯戦争に放り込まれた者がいるということか?」
「ああ、間違いないと思うぜ」

アーラシュの持つ千里眼は世界や人の有り様の全てを見通す。
ホテルの屋上から街を見下ろし何人かのマスターを視認しただけで聖杯が無差別にマスターを選別しているであろうことは見て取れた。
事実、視認したマスターたちの中には困惑の念を抱いている者が少なからず見受けられた。聖杯戦争自体を理解していない者も、だ。

「ならば、私はこの聖杯を破壊することを第一に行動するつもりだ。
死者たる英霊だけを扱き使うだけならまだしも生者をも無差別に招き入れ殺し合いを強いるなど、最早聖杯戦争それ自体が災厄だ」

本来の聖杯戦争は魔術師たちが死の危険を承知で自ら参加する儀式であり、そこで命を落とすのは端的に言って自業自得に過ぎない。
中には聖杯戦争の存在自体を知らぬ、魔術回路を持つだけの人間が聖杯に見初められ令呪を授かることもあるがあくまでそれは例外であった。
だがこの聖杯は違う。最初から素養の有無に関わらず無差別にマスターを選別し聖杯戦争に参加させている。
聖杯の汚染の有無は定かならずとも、その一点だけでエミヤにとって聖杯は度し難い悪徳としか映らない。

「なるほど。つまり望みもないのに巻き込まれた民を守るってことだな」
「いや待て、何故そうなる。話を聞いていなかったのか君は」
「聞いてたさ。だがな、もう少しぐらい素直になっても罰は当たらないだろう?
今のお前は抑止の守護者じゃなく、今を生きる人間の守護者になることだって出来るんだからな」

やはり苦手だ。何もかもを見通すこのアーチャー相手では普段の調子を維持できない。
というより、これほどの眼を持っていれば少なからず人格が歪みそうなものだがどういう精神構造をしているのか。

「ふ、ならば一つ乗せられてみようか。口にするのも恥ずかしい限りだが生前の私は正義の味方というやつに憧れていたのでね」
「その意気だ。いっちょ東京を救ってやろうや、マスター」

夜空には無数の星が輝いていた。思えば、生前の日々は届かぬ星に手を伸ばすようなものだったか。
答えを得た。その記憶を奪われずに今一度仮初めの生を得たのなら、もう一度無様な足掻きをしてみるのも悪くはない。


―――少し寄り道になったが。オレもここで頑張ることにするよ、遠坂。


あの少女に恥じぬように在ろう。
無様な結果に終わるとしても、きっと意味はあるはずだ。


615 : 正しきを為す弓兵 ◆Piz1BL3gpw :2016/03/13(日) 11:16:57 WwKIeg6g0

【クラス】アーチャー
【真名】アーラシュ
【出典】Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ
【性別】男
【属性】混沌・中庸

【パラメーター】
筋力:B 耐久:A 敏捷:B+ 魔力:E 幸運:D 宝具:B++

【クラススキル】
対魔力:C…魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Cランクならば魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

単独行動:C…マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。マスターを失っても、一日は現界可能。

【保有スキル】
頑健:EX…如何なる病にも毒にも侵されず、数多の戦いにおいて傷を受ける事すらなかったと謳われる肉体の頑強さ。
西アジアの神代最後の王、マヌーチェフル大王をして、替え難き至宝と賞賛した旧き神代の恩恵である。対毒スキルを付与し、耐久力を向上させる。

千里眼:A…視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
このランクでは透視や読心、未来視をも可能とする。

弓矢作成:A…複数の矢を瞬時に作成する能力。
最大で空を埋め尽くす万単位の矢を作り出し、山をも削り取る威力を持つ飽和射撃を行う。
中距離戦闘でも五十程度の矢なら瞬時に作り出せる。


【宝具】
『流星一条(ステラ)』
ランク:B++ 種別:対軍宝具 レンジ:4~999 最大補足:1000人
ペルシャとトゥランの両国に「国境」を作り、争いを終結させた究極の一矢。2500kmにも及ぶ射程距離と文字通り「大地を割る」威力を持つ人ならざる絶技。
その性質から、一点集中ではなく広域に効果を発揮するため対軍に分類されるが、純粋なエネルギー総量は対城宝具に、魔力総量は対国宝具にも及ぶ。
だが究極の一矢と引き換えに五体四散して落命したように、この宝具はアーラシュの霊核をもって行われる「壊れた幻想」の特性が付与されているため、一度放てばアーラシュ自身が消滅する「特攻宝具」としての側面を持っている。

【weapon】
深紅の大弓と矢。
矢は近接戦闘で直接手に持って使うこともある。

【人物背景】
古代ペルシャにおける伝説の大英雄。
西アジアでの神代最後の王とも呼ばれるマヌーチェフル王の戦士として、六十年に渡るペルシャ・トゥルク間の戦争を終結させた。両国の民に平穏と安寧を与えた救世の勇者。
異名はアーラシュ・カマンガー。英語表記すればアーラシュ・ザ・アーチャー。
アジア世界に於いて弓兵とはすなわち平穏をもたらせしアーラシュをこそ指し示す。現代でも彼は西アジアの人々に愛されている。
伝説において、アーラシュは究極の一矢によってペルシャとトゥランの両国に「国境」を作り、大地を割った。その射程距離、実に2500km。
人ならざる絶技と引き換えに、彼は五体四散して命を失ったという――

【サーヴァントとしての願い】
聖杯に懸ける願いはない。
人を超えた力を持つ者が民の生命や平穏を脅かすのを阻止することが自分の役割と信じるのみである。

【基本戦術、方針、運用法】
宝具の使用は脱落とイコールのためスキルのみで戦うことになる。
近接戦闘にも耐え得るがやはり本領は中距離以遠での射撃戦にこそあるので、弓兵のセオリーに従って運用するべき。
接近を許した場合はエミヤに前衛を任せ後方から援護射撃を行うという手もある。


616 : 正しきを為す弓兵 ◆Piz1BL3gpw :2016/03/13(日) 11:17:26 WwKIeg6g0

【マスター】エミヤ
【出典】Fate/stay night
【性別】男性

【マスターとしての願い】
聖杯は信用ならないため、破壊する。
同時に、もう一度正義の味方として人々を守りたい。

【weapon】
各種投影宝具

【能力・技能】
『無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)』
錬鉄の固有結界。
自らの心象風景の中に相手を誘い込む大魔術であり、彼の場合、そこには彼の記憶に蓄えられた無数の剣(複製品)が存在する。
また彼は複製品を投影する際、その武器に篭められた記憶をも同時に再現するため、その武器に応じた持ち主の戦闘経験を発揮できる。

英霊としての魔力、身体能力
本来人間ではなく英霊であるため現代の魔術師のそれとは比較にもならない魔力を有する。
また、今回のエミヤの身体能力は第五次聖杯戦争におけるステータスに準じるものとする。

【人物背景】
本作の主人公、衛宮士郎が世界と契約し死後英霊となった存在。
抑止の守護者として使われるうちに精神が摩耗し、いつしか自分殺しを願うようになった。
しかし第五次聖杯戦争において過去の自分である衛宮士郎に敗北し、答えを得る。
今回のエミヤは第五次聖杯戦争(凛ルート)の記憶が継続している。

【方針】
聖杯の破壊を第一とするが、最悪の場合は信用できるマスターを生き残らせ聖杯を託す。
自身の生存に関しては最初から度外視。


617 : ◆Piz1BL3gpw :2016/03/13(日) 11:17:59 WwKIeg6g0
投下終了です


618 : ◆7PJBZrstcc :2016/03/13(日) 13:00:23 ZxPXbUtU0
投下します


619 : このロクでもない戦争から生還を! ◆7PJBZrstcc :2016/03/13(日) 13:01:16 ZxPXbUtU0


       1


 ――この世界に、冒険者と呼ばれる存在はいない。
 人を襲うモンスターも居ないし、俺みたいな未成年が大っぴらに酒を飲んだら警察に注意される。
 勿論、魔王なんて存在もゲームやアニメにしか存在しない。
 それが日本だ。
 それが俺が生まれ、16歳まで育った世界なのだ。
 さて、そんな世界に居る今の俺、佐藤和真は。

「ハァ……」

 自分の部屋で落ち込んでいた。
 それはもう猛烈に落ち込んでいた。
 今の俺は多分冬将軍に殺されたときより落ち込んでる。
 その原因は

「…………」

 目の前にいるこいつだ。
 歳は俺より下だろうか、多分めぐみんと同じくらいだろう。
 特に特徴のある見た目じゃない、口で説明するなら赤い帽子を被った少年と言った感じだ。
 だがこいつはただの少年じゃない。
 何でもサーヴァントとか言う死後の英霊で、クラスはトレーナーらしい。
 そして俺はコイツと聖杯戦争とか言う、どんな願いでもかなう聖杯を掛けた殺し合いに巻き込まれたらしい。
 ……とりあえず色々言いたいことはあるが

「俺は元の世界に帰れるのか?」

 これが一番重要な話だ。
 俺はあのろくでもない世界が気に入っている。
 借金や厄介な仲間が居るが、それでもあの世界は嫌いじゃない。
 エリスは可愛いし、ウィズは美人だし、あのシュワシュワが飲みたい。
 そして何よりサキュバスのお姉さんのお店に行きたい。
 前はアクアのせいで散々だったし。
 そんな思いを自分のサーヴァントにぶつけると。

「…………」

 俺のサーヴァントは何も言ってくれなかった。
 いや何か言えよ。
 何なのこいつ、RPGの主人公かっていうくらい喋らないんだけど。
 一応、聖杯戦争とこの東京が偽りだという点はきちんと説明してくれたが、後はほとんど喋ってない。
 コミュ障なんだろうか。

「まあ、分からないっていうならしょうがない。それよりお前戦えるのか? 正直俺より弱そうなんだけど」

 はっきり言って目の前の少年はとても英雄に見えない。ステータスもほとんど最低ランクだし。
 英雄と聞いてまず思いつくのは、癪だがあの魔剣の人ミツルギだ。
 神から与えられた剣で、強力な魔物とか倒すみたいなイメージだ。
 対して目の前のこいつはどうだ、武器の一つも持ってない。
 何だったら魔王軍の幹部やデストロイヤー倒すのに尽力した俺の方がサーヴァントに近いような気さえする。

『最弱職でヒキニートのカズマさんが英雄とかありえないでしょ、プークスクス』

 何となく居ないはずのアクマに馬鹿にされた気がしたので帰ったら報復してやろう。

「…………」

 すると俺の言葉をどう取ったのか、トレーナーは立ち上がり外へ向かっていく。

「お、おい?」
「…………」

 頼むから何か言ってくれ。


620 : このロクでもない戦争から生還を! ◆7PJBZrstcc :2016/03/13(日) 13:01:52 ZxPXbUtU0


        2


 トレーナーが外に出ていき、俺がそれに慌ててついていく。
 そして着いたのは人気のない路地裏だった。

「なあ、こんな所で何を……」
「…………」

 俺の問いかけには当然答えず、トレーナーはどこにしまっていたのか赤と白のボールを1つ出し放り投げる。
 するとそこから40センチくらいの黄色いネズミが現れた。
 ……ネズミだよな?

「これがお前の宝具とかいう奴か?」
「…………」

 トレーナーは首を縦に振った。
 使い魔とかそういう存在なのだろうか?
 なるほど、これなら武器の一つも持ってなくても戦えるのは分かった。

「こいつ一匹だけか?」
「…………」

 俺が聞くと、トレーナーは腰から5つのさっきと同じボールを取り出す。
 全部で6匹と言いたいらしい。

「じゃあ残りの奴も――」
「お前もマスターだな!?」

 いきなり叫び声が聞こえたので振り返ると、そこには何かチンピラ臭い奴と、いかにも暗殺者と言った外見をした奴いた。

「……アサシンのマスターか」
「ああ、そうだ!」

 俺のカマ掛けに律儀に答える相手マスター。
 いや隠せよ。暗殺者の正面戦闘なんて多分アクアでもしないぞ。

「いけっ、アサシン!」 

 アサシンのマスターがそう言うと、アサシンは目にもとまらぬ速さでトレーナーに向かっていく。
 俺がどうにかしなければとトレーナーに向かっていこうとするがその前に

「ピカチュウ、でんこうせっか」

 さっき出していたネズミに指示をだし、自身への攻撃を防ぐ。
 ……あのネズミ、ピカチュウって言うのか。

「何だよそいつ!? アサシン、まずはその黄色いのからやっちまえ!!」

 どうでもいいけどあいつ、何で俺を狙わないんだ?

「ピカチュウ、10まんボルト」

 俺があまり考えない方がいい事を考えていると、トレーナーがピカチュウにまた指示を出していた。
 ピカチュウが指示を聞くと、ピカチュウの体から電気が発せられ、それがアサシンに向かっていく。

「ぐわあああああ――――っ!!」
「ア、アサシ――――――ン!!」

 電撃を受けたアサシンに駆け寄る相手マスター。
 その姿にはさっきまであったこっちを見下すようなものは無く、ただ純粋にアサシンを心配しているようだ。
 一方俺は、これから激戦になるのではとか考えてたせいか俺は若干拍子抜けしていた。

「グフッ、やはり水をつかさどる私は電気に勝てなかったか……」
「消えるなアサシン! お前には叶えたい夢があるんだろ!!」

 おいやめろ、絆の力見せるイベントとかマジでやめろ。
 倒しにくくなるだろ! おい本当にやめろって!

「…………」

 その様子をトレーナーはただじっと見ている。

「なあマスターのあんた! 虫のいい頼みだと思うがここは負けを認めるから見逃してくれ!!」
「…………」

 アサシンのマスターとトレーナーが同時にこっちを見る。
 懇願するようなマスターの視線に耐えかねて俺は思わず首を縦に振る。

「ありがとう! この恩は絶対忘れないぜ!!」

 そう言ってマスターはアサシンを背負って去って行った。

「……これで良かったのか?」
「…………」

 俺の問いに、やっぱりトレーナーは答えてくれなかった。


621 : このロクでもない戦争から生還を! ◆7PJBZrstcc :2016/03/13(日) 13:02:27 ZxPXbUtU0
【クラス】
トレーナー

【真名】
レッド@ポケットモンスター 金・銀・クリスタル

【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運A 宝具A

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
トレーナー:A
怪物を育成し、戦わせるものに与えられるスキル。
Aランクであれば最高峰の腕前。

【保有スキル】
攻撃無効:-(A)
普段は機能していない。
だが、トレーナーの宝具『ポケモンバトル』が展開されると、このスキルは自身とマスター、そして相手マスターに対して直接攻撃が無効となる。

仕切り直し:E~A
戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。
場に出ている『共に歩んだ仲間たち(ポケットモンスター)』の力量が、相手より上回っているだけこのスキルのランクは高くなる。

【宝具】
『共に歩んだ仲間たち(ポケットモンスター)』
ランク:A 種別:対?宝具 レンジ:??? 最大補足:6
トレーナーの手持ちポケモンにして、共に歩んだ仲間たち。
内容はピカチュウ・エーフィ・カビゴン・フシギバナ・リザードン・カメックスの6匹。
この宝具はいかなる攻撃でも死亡することは無い。
ただし、一定以上のダメージを受けると「ひんし」となる。
そして、6匹全てが「ひんし」になるとトレーナーは聖杯戦争に敗北となり消滅する。
「ひんし」を回復させるためにはトレーナーが一休み(ベッドなどで一定時間休息を取る)しなければならない。この間、マスターは無防備となる。
また、この宝具が繰り出せる技にはわざポイント(以下PP)があり、繰り出せる回数が決まっている。
PPがなくなるとこの宝具は「わるあがき」しか出来なくなってしまう。
PPを回復させる場合もトレーナーは一休みしなければならない。

『ポケモンバトル』
ランク:C 種別:特殊 レンジ:- 最大補足:-
トレーナーの居た世界のルールが、聖杯戦争に際して宝具と化したもの。
戦意を持ったマスター、サーヴァントもしくはその使い魔がトレーナーの前に現れる、またはトレーナーがマスター、サーヴァントもしくはその使い魔に勝負を挑むと発動する宝具。
この宝具が発動すると、トレーナーは一体ずつしか『共に歩んだ仲間たち(ポケットモンスター)』を繰り出せず、また相手も一体ずつしか戦闘できなくなる。
ただし、群体型に関しては群体で一体としてカウントされる。
また、この宝具が発動している間は自身マスター及び相手マスターは自軍に対して支援しか行う事が出来ず、相手に対する直接攻撃は禁止となる。

『ダメだ!  しょうぶの さいちゅうに あいてに せなかは みせられない!』
ランク:C 種別:特殊 レンジ:- 最大補足:-
トレーナーの居た世界のルールが、聖杯戦争に際して宝具と化したもの。
マスターとサーヴァントが共に行動している相手に『ポケモンバトル』が発動すると発動する宝具。
この宝具が発動すると、お互いに勝敗が決するまで逃走できなくなる。これは逃走用のスキルや宝具も無効化する。
そして決着がついた際、勝利したマスターに敗北したマスターの所持金半分が強制的に移動する。
最後にサーヴァントを失ったマスターは、マスター自身が最後に休息した場所の前に強制的に転移される。
ただし、サーヴァントを失う前にマスターの意志で降参することは可能。
この場合、所持金の移動は起こるものの強制的な転移は起こらない。

【weapon】
『共に歩んだ仲間たち(ポケットモンスター)』

【人物背景】
カントー地方ポケモンリーグチャンピオン。
だが、彼はその頂に立ったことで満足な戦いが出来る相手が殆ど居なくなってしまった。

【サーヴァントとしての願い】
より強い相手と戦いたい。


622 : このロクでもない戦争から生還を! ◆7PJBZrstcc :2016/03/13(日) 13:02:58 ZxPXbUtU0
【マスター】
佐藤和真@この素晴らしい世界に祝福を!

【マスターとしての願い】
借金を返済したい

【weapon】
片手剣

【能力・技能】
・冒険者
カズマが就いている職業。
基本職で最弱ではあるものの、全ての職業のスキルが覚えられる。

・スキル
カズマが他の冒険者から学んだスキル。
敵の気配を察知する「敵感知」
自身の気配を消す「潜伏」
暗闇でも目が効く「千里眼」
相手の持ち物をランダムで奪う「スティール」
相手に触れ発動すると魔力を奪う「ドレインタッチ」
後は、攻撃には使えない初級魔法がカズマの使えるスキルである。

・幸運
冒険者には必要ないが、非常に高い。

・悪知恵
カズマの強さ。
彼はこれと幸運の高さを駆使して弱いスキルで戦っている。

【人物背景】
アクセルの街で活動する冒険者。
元々は現代日本で暮らしていた引きこもりだったが、トラクターに轢かれそうになったことでショック死しファンタジー世界に転生した。
頑張る時は頑張るが、頑張る必要がなくなるととことんだらけるタイプの男。

【方針】
聖杯は欲しいけど人殺しは……。
とりあえず前は田舎暮らしだったし東京を楽しんでみたい。

【備考】
参戦時期は機動要塞デスロイヤー撃破後です。
与えられた役割は高校生ですが、NPC時代から引きこもっていました。


623 : ◆7PJBZrstcc :2016/03/13(日) 13:03:27 ZxPXbUtU0
投下終了です


624 : ◆7PJBZrstcc :2016/03/13(日) 16:39:32 ZxPXbUtU0
すみません
>>622のマスターの能力のスキルの部分に罠発見と罠解除を追加します


625 : ◆CKro7V0jEc :2016/03/13(日) 17:50:35 jp98kDfM0
投下します。


626 : 牙琉霧人&アサシン ◆CKro7V0jEc :2016/03/13(日) 17:51:04 jp98kDfM0





【2日目 某時刻】

【≪牙琉法律事務所≫】





 褐色肌と銀髪の女が、法律事務所の窓から街を見下ろしていた。
 見ようによっては、齢は十代くらいに見えるが、本来、肉体年齢としては成人に達している筈だった。
 生前、『カナン』の名で呼ばれていたサーヴァント――『アサシン』。
 それが、彼女だった。

 好物のスティックシュガーを煙草のように咥えて、瞳に力を入れる。
 そうすると、あらゆる感情が、彼女の瞳には視えるのだった。

 窓の外を行きかう、サラリーマンも、女子高生も、客引きも……全てが何で出来ているのか。
 彼女の眼が特殊というよりかは、彼女の『五感』全てが告げるのである。
 両目に埋め込まれているのは、魔眼でも何でもない只の眼球でありながら、視界の外の情報や、数秒先の未来さえ視えてしまう。
 それが彼女のサーヴァントとしての強みの一つだった。


「――」





 “共感覚”





 それは、本来切り離されている筈の五感が全て繋がり、干渉し合う、特殊な能力だった。
 現実には、数字の色が視えたり、音楽を聞けば情景がはっきりと浮かんだり……といった例が度々報告される。
 芸術家や音楽家として名の知れた人間の中にも、この共感覚を持つ者は少なくない。
 ただ、あくまで多くの共感覚者は、二つか三つの感覚を繋げているだけなのだが――アサシンは、五感全てを連結させる事を可能としていた。
 それは、恐ろしいまでの情報処理能力であると言えた。
 背後にいる人間が如何なる動きをしているのかさえ、彼女は、視覚以外の感覚で識り、補うようにして視覚に呼び起こす事が出来る。
 常人が把握できないような情報も、彼女には容易く読み取る事が出来てしまうのだ。

 この聖杯戦争においては、ここにいる誰が『紛い物』で、誰が『本物』なのかも、彼女は把握する事が出来た。
 多少の集中が必要であったが、雑踏を行きかう人間の内に、『マスター』、あるいは、『サーヴァント』がいるとすれば、彼女はそれを看破出来るだろう。
 あそこにいるのは似非の人間もどきだとか、ここにいるのが本当の人間だとか……。
 アサシンのサーヴァントとしては、『マスター殺し』も行いやすい状況だ。
 気配をかなり落とした別のアサシンでさえも、カナンは感知する事が出来るかもしれない。
 それほど強力なのが、彼女の瞳だった。


「……駄目だ、マスター。ここにはいない」
 

 ただ、問題がある。
 ビルの一室を借りる形で経営されているこの場所だが、日本の街並みはそこまで見通しが良くないのだ。ビルの隣にはすぐビルがあるのが東京だった。
 その上、人口が密集しすぎているばかりに、あまりに情報量が多すぎる。建物の内にも、多くの人間が通っている。
 すぐに他のマスターを探し出す事は、彼女とて不可能であった。
 以前、渋谷にも来た事があったが、それは友人の故郷だったという事情もある。友人を守らねばならないから、仕方なく日本で活動したのだ。
 それもごく短期間の話で、遊びに行くくらいの目的しか持たないのが普通だった。

 その時から思っていたが――本来、この日本という街は戦争向けに作られていない。

 かつて、『鉄の闘争代理人』と呼ばれた傭兵でもあったカナンとしては、この東京で聖杯戦争などやらされるのは、全く不本意だ。
 通常の英霊ならば、人的被害を及ぼさない方が難しい――そんな場所だった。
 これはアサシン以外のサーヴァントも同条件だが、その全員がおそらく、大なり小なり息苦しさを感じるのではないかと思う。

 事実、既に、『刺青のある男』という気になる人物に大量虐殺が行われている。
 本来、おおっぴらに殺し合うべきではないサーヴァントたちが、これほど目立ってしまっているわけだ。
 推察するに、それは戦争と何の関わりもないただの愉快犯的な殺戮にしか思えないが、早速、『聖杯戦争』としては綻びが見え始めている。
 監督役や裁定者がいるならば、迅速に対応せねばならない事態だろう。


627 : 牙琉霧人&アサシン ◆CKro7V0jEc :2016/03/13(日) 17:51:40 jp98kDfM0


「そうでしたか。――いえ、言う通りに働いてくれてありがとうございます」


 アサシンに返事をしたのは、彼女のマスターにあたる男だった。
 この事務所の経営者でもあり、名の知れた弁護士でもある彼の名は――『牙琉霧人』。
 気品のある金髪の縦ロールの髪型と、銀縁の眼鏡が、彼の能力に奇妙な説得力を持たせていた。
 事実、今日の法曹界においては、「最高の弁護士」などとさえ謳われている。

 今日は事務仕事が多い中で、アサシンは監視、霧人は本業という形で、時間を潰していた。
 それ故に、霧人はアサシンの方を見向きもしない。
 彼が話しながら見ているのは、いくつかの書類だった。

 アサシンは、この男の事が別段好きでも無かったが、元々傭兵だった彼女は、好き嫌いで役目を買わない事は無かった。
 この男が『聖杯を得ておきたい』と言ったのだから、アサシンは理由も聞かずにそれを受諾するしかできない。
 それが、雇われて人を殺してきたアサシンのルールだった。
 それ故、相手方のマスターがどんな人物なのか知るまでもなく、見つけ次第、弾丸をぶち込むしかない。
 もし、アサシンを引き当てたのが別のマスターだったならば、その時は霧人に弾丸をぶち込んでいただろう。


「マスター、今日のニュースだが――」

「刺青のある男の話、ですか?」

「ああ。……何か少しでも情報があったら教えてほしい」


 アサシンは、また何となく外を見ながら言った。
 今は、視覚を切り替えて、普通の人間と何ら変わる事ない景色が見えるようにしている。

 だから、今、アサシンの視界にあるのはただの雑踏だ。
 それを見つめながら、少し面白がってもいた。
 戦争の場所としては最悪だが、ただ人が集まっている場所としては、なかなか見ていて不思議な光景でもある。


「私には大した情報は入ってきませんよ。その手の情報が入りやすいのは検察官の方です」

「……そうか」

「まあ、一応、弟が検事ですが、もう疎遠ですからね。ここで会うつもりもありません。
 ……いや、会ったとしても、彼が容易く情報を明け渡してくれる事もないでしょう」


 アサシンは、霧人の方をちらりと見る。
 彼の姿を見る時は、時としてアサシンも集中力を研ぎ澄まさねばならなかった。
 それというのも、霧人には、時として、どす黒い『憎悪』の色が見えるのである。
 今も、薄く黒い色が霧人に重なった。



 それは、おそらく『弟』という言葉への憎しみ……。



 彼の発する言葉や、微妙なしぐさから、アサシンは感情を読み通せた。
 ただ、それを封じる術も霧人は知っているらしく、それがアサシンに不安を過らせる。
 何としても隠し通しておきたい事が霧人にはあるらしい。
 勿論、それを無視する術をアサシンは備えているのだが、この弁護士という職にある男に如何なる過去があるのかは少々気になった。


628 : 牙琉霧人&アサシン ◆CKro7V0jEc :2016/03/13(日) 17:52:05 jp98kDfM0


「――ただ、『刺青の男』は、やはり、サーヴァントと考えた方が良いという事ですかね」

「ああ。この街でそんな能動的な殺しを始めるのは、多分、魔術師やサーヴァントだけだ」

「なるほど。大がかりな事件がある割に、事件の件数も妙に少ないのは、そういう訳ですか」

「おそらくそうだ。感情のない人形は、傭兵や殺し屋でもない限り、『殺し』をしない」

「……」

「……ただ、気になるのはそんな事じゃないんだ。『刺青』という特徴が、少し気になる。――『男』ではないけど」


 アサシンにとってそのニュースが目を引いたのは、ただ相手がサーヴァントだからという訳ではない。
 刺青――それは、アサシンの左腕にも刻まれているのだが、同じく刺青が特徴の知り合いが一人いる。
 その知り合いが、自分と同じく、この聖杯戦争に現界している可能性も否めないと思ったのである。
 ただ、その人物が『女性』であるのが決定的な違いだ。

 尤も、日本では少ないとしても、世界では刺青のある人間など珍しくも何ともない。
 気にするだけ無駄だと思ったが、それでも、もしかすると、その人物がいる可能性も考えうるので、刺青のサーヴァントはアサシンの興味を引いている。


「わかりました。その事件の資料を、後で警察から受け取っておきましょう」

「出来るのか?」

「簡単な事ですよ。
 事件の情報が勝手に入って来るのが検察、自ら得ようとしなければ情報を得られないのが弁護士……それだけの違いなんです」

「……なるほど」

「それに、私はこれでも警察関係者にも顔が利きますから」


 霧人は、眼鏡の奥で不気味に笑って、そう云った。
 何か妙な含みのある言い方で、それは、霧人の裏の顔をアサシンに確信させるに充分であった。

 それは、サーヴァントにとっては、何の関係もない話かもしれないが――。





----


629 : 牙琉霧人&アサシン ◆CKro7V0jEc :2016/03/13(日) 17:52:37 jp98kDfM0

【クラス】

アサシン

【真名】

カナン@CANAAN

【属性】

混沌・中庸

【ステータス】

筋力D 耐久E 敏捷C 魔力D 幸運D 宝具B

【クラス別スキル】

気配遮断:B
 自身の気配を消す能力。
 完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

【固有スキル】

共感覚:A+
 本来独立している筈の『五感』が全て同時に機能している、アサシンの特異体質。
 文字に色がついていたり、音が形として見えたり、人間の感情を察知したりといった事が可能。
 その為、『気配感知』や『千里眼』のスキルも、このスキルに内包する。
 更に、アサシンは予知に近い数秒未来の出来事までこのスキルで読む事が出来る。

仕切り直し:A
 戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。

心眼(偽):C
 直感・第六感による危険回避。
 虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。

【宝具】

『鉄の闘争代行人(テツノトウソウダイコウニン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~100 最大捕捉:1~100人

 ウーアウイルスによって人為的に齎されたアサシンの驚異的な身体能力や共感覚と、これによる闘争活動から得たアサシンの戦場での逸話。
 自身の『共感覚』をフル稼働させる事により、一帯の戦闘区域や敵の位置を完全把握する事が出来、それにより、全く土地勘のない場所でも地形を余す事なく生かした戦闘が可能となる。
 その為、アサシンがこの宝具を用いて戦闘を開始した瞬間、初見の区域であっても、アサシンはその場で多角的な『先読み』が出来るようになり、殆ど直感で周囲を最適かつ自在に移動する。
 一見すると彼女の視界に入っていない物体や事象も、彼女は嗅覚や聴覚からそれを把握し、その場全ての配置や動きをほぼ完璧に読み取り、脳内で瞬時に処理し、判断する。
 また、アサシンの身体能力や戦場における知性そのものが異常に高く、その場にある武器の最適な使い方を共感覚を用いずとも理解し、駆使できる。
 まさしく、五感全てが連結した共感覚と、身体能力や情報処理能力などが全て詰め込まれた、完全なる戦闘倫理。逃走の際にも用いる事が出来る。
 ただし、「殺意を消す」、「気配を消す」、「感情を心の奥底に閉じ込められる」といった相手や、過度の感覚妨害は苦手とし、そうした相手には宝具を用いる事が苦手となる。

【Weapon】

『ベレッタPx4ストーム』
『ナイフ』

【人物背景】

 鉄の闘争代行人と呼ばれるフリーランスの傭兵。
 かつてウーア・ウィルスで全滅した中東の村の生き残りであり、抗ウィルス剤なしで症状を耐えきった初めての人物。
 その結果、元々持っていた『共感覚』が大幅に強化され、五感を全て同時に使用する事ができる。
 NGOの夏目に依頼され宿敵、アルファルド・アル・シュヤが率いる組織「蛇」との戦いに臨む。
 以前、中東で出会った大沢マリアという女性に深い友情を感じている。

【サーヴァントとしての願い】

 なし。
 単なる雇われの戦争屋のようなもの。

【方針】

 マスターの為に聖杯を得る方針。
 まずは、他のマスターを探索する事と、『刺青の男』の調査を行いたい。
 霧人に対しては不信感も大きいが、自分は雇われたものとして、感情が許す限り任務を全うする。


630 : 牙琉霧人&アサシン ◆CKro7V0jEc :2016/03/13(日) 17:52:49 jp98kDfM0





【マスター】

牙琉霧人@逆転裁判4

【マスターとしての願い】

 聖杯の獲得。

【weapon】

 なし

【能力・技能】

 「法曹界でもっともクールな弁護士」、「現在の法曹界で最高の弁護士」などと言われる天才的な弁護士になれる実力があるらしい。
 念動力で証人が捨てた物を浮かせたり、髪の毛を逆立てたりといった事が可能。
 ポエムを詠む事ができる。
 あんまり出てこない「黒いサイコロック」を発動する事も可能。

【人物背景】

 32歳。職業は弁護士。
 「法曹界でもっともクールな弁護士」、「現在の法曹界で最高の弁護士」などと言われる天才的な弁護士であり、主人公・王泥喜法介の師匠でもある。
 また、歴代シリーズの主人公である成歩堂龍一の親友でもあり、牙琉響也の兄でもある。
 優雅な立ち振る舞いで一見すると冷静だが、実はプライドが高く、自身のプライドが傷つけられると根に持つ模様。
 その為、「逆転裁判4」においては、「プライドが傷つけられた」と短絡的な動機で他人を殺した後、「法の抜け穴」を利用して他者を欺いてきた。
 しかし、最後には、弟子や親友や弟の突き付けた真実と、大衆の民意に敗北する。
 作中最終回での逮捕後は、おそらく死刑判決を受ける可能性が高く、実質的には死刑待ち状態からの参戦。

【方針】

 聖杯狙い。
 聖杯によって、自らに課された罪を消し去り、自身の刑を回避する。
 ただし、自身の内面は厳重に秘匿しておき、サーヴァントにも目的を隠したまま聖杯戦争に臨む。
 仕事をこなしつつ、『刺青の男』の調査も行っておきたい。

【備考】

 この世界では、牙琉弁護士事務所で一人で働いています。
 また、霧人の感情はカナンにも見えづらいようです(「黒いサイコ・ロック」などを発動できる影響)。


631 : ◆CKro7V0jEc :2016/03/13(日) 17:53:14 jp98kDfM0
投下終了です。


632 : ◆zzpohGTsas :2016/03/13(日) 17:56:02 J/LQ4zPI0
投下いたします


633 : 魂の彷徨 ◆zzpohGTsas :2016/03/13(日) 17:56:25 J/LQ4zPI0
 少女には力があった。勉強も出来た。色んな事をそつなくこなせる才能にも恵まれた。
だが少女には、何時だって、自分の居場所だけが存在しなかった。何故なら彼女は、何でも出来るから。普通の人は、それを薄気味悪く思うから。
だから何時だって、彼女は一人きりであった。人から拒絶され続けた彼女は何時しか、人との接し方を忘れ、自分の世界に閉じこもる事になった。

 少女は、自分は常に一人で生きざるを得ない宿命を背負っている、と考えるようになっていた。
『トーキョー』と彼女が認識している異世界に来る前は、彼女には三匹の友達がいた。
一人ぼっちで転がっていたばくだんいわ。何処かの誰かに捨てられたのろいのランプ。とある街を護る為に何年も何年もずっと同じ方向を向き続けて来たメタルドラゴン。
彼らは今、この世界にいない。この世界にやって来る時に、向こうの世界に置いて来てしまった。
本当を言えば連れて行きたかった。何故なら彼らは、少女にとって。『マルモ』と呼ばれる、賢者の女にとっては、唯一心を開ける友達だから。

 この世界ではマルモは一人だった。
頼る者も縋る者もおらず、彼女の瞳に広がるのは、今まで彼女が見た事もないような様式の建物が密集した街。
これに比べればアリアハンの都など、うらびれた地方辺境の一都市としか見えないだろう。それ程までに発展した都市だった。
但し、この世界はこれまでマルモが旅して来たどんな世界よりも空気が薄汚れ、人々の退廃が著しかった。
そしてこの世界には、魔物がいなかった。都市の裏路地にもいないし、壺や本、柱に化けた魔物なども存在しない。
トーキョーにいるのは、人と、他愛ない動物だけであった。世界を脅かす魔王もおらねば、古の昔世界を混沌に陥れた邪神の香りも嗅ぎ分ける事も出来ず。
本当にこの世界は、人間の人間による人間の為だけの世界だった。そんな世界だから、彼女は油断していた。
敵のいない世界で、無暗やたらに賢者としての魔法を使うのは、目立つだけだ。だから今まで彼女は、静かに、この世界から脱出する方策を考えていた。

 ――マルモに誤算があったとすれば。
この世界に、魔物よりもなお恐ろしく、そして、魔王の類ですらはたと手を打つ悪辣な催しが開かれている事を、知らなかったと言う事であろう。

「あぐっ……!!」

 風のような加速度を得て、彼女は平積みにされた木材のパレットに背中からぶち当たる。頭を打たなかったのが、せめてもの幸いと言った所か。
場所は、中央区の臨海部、晴海の、貨物船から降ろされた大量の荷物を一時的に貯蔵する為の倉庫であった。尤も彼女は、トーキョー、もとい東京の地理など知らないのだが。
肺の中の空気を一気に吐き出し、ぜえぜえと苦しそうに、足りなくなった酸素を取り込もうとするマルモ。
よろよろと、杖を地面に突かせながら立ち上がる。何とかしなくては、本当に殺されてしまう。

 金属と金属がチャラチャラとぶつかる小音を立たせながら、夜の帳が降りた東京の闇の向こう側から、この時代には似つかわしくない。
青錆色の古風な鎧に身を纏った、如何にもと言った風な戦士の様相をした男が姿を現した。戦士の背後には、筋骨隆々とした、これまた見事の魁偉の男が、鋭い目線をマルモに投げかけていた。


634 : 魂の彷徨 ◆zzpohGTsas :2016/03/13(日) 17:56:50 J/LQ4zPI0
「くっ!!」

 と言って、マルモは杖を鎧を纏った男に向け、杖先から火球を高速で飛来させる。
古代から伝わる、凄まじい炸裂性のエネルギーを内包した炎の塊をぶつけさせ、大爆発と同時に相手を焼きつくす、メラゾーマと呼ばれる魔法である。
これを戦士風の男は、懐に差した刀を目にも留まらぬ速度で抜刀し、炎の球体その物を真っ二つにさせたのだ。
断たれたと同時に炎球は大爆発を引き起こし、それは容易く戦士の身体を呑み込むのだが、爆風が晴れた後の光景を見て、マルモは戦慄する。
傷どころか、皮膚や鎧に、焦げ目の一つすら、付けられていないのだ。嘘、とマルモが絶望と共に言葉を漏らした。賢者としての修行の全てを、否定されたような気持ちになった。

「驚いたな、よもやこれ程までの魔力の持ち主が世に存在していたとは」

 心底驚いたような声音で、マルモからは表情を窺わせない、顔全体を覆う兜を被った戦士が言った。
当たり前だ、賢者として莫大な魔力をその身に溜めこんでいるマルモの魔力の総量は、並の値ではないのだから。

「マスター、本当にこの少女を殺すのか」

「無論だ、セイバー。この少女が、聖杯戦争に招かれた参加者の一人である事は最早疑いようもない。芽は早めに摘み取っておくべきだ。但し、只殺すな。お前の騎士道に反する行為かも知れないが、今は魔力が何よりも惜しい。魂喰いをして魔力を少しでも稼いでおけ」

「心得た」

 不本意そうに、セイバーと呼ばれた、青錆の鎧を身に纏った戦士が、マスターと呼ばれた男に返した。
この二人は、何を話しているのだ? マルモは、何を二人が話しているのか、てんで見当もつかない状態であった。
セイバーとは、何を意味している? マスターとは、MM(モンスターマスター)の略なのか? 聖杯戦争とは、何なのか?
そしてそもそも――自分の瞳に映っている、青錆の鎧を纏う戦士について記された、AやB、Cと言った記号は、何を意味するのか?

 混乱が混乱を呼ぶ。何が何だか、マルモには解らない。
ただ一つ解る事があるとすれば、目の前の敵達は間違いなく、自分を殺すつもりである、と言う事であった。
一人でいる事も慣れた、人付き合いだって、別にいらない。だが、自分が死ぬとなると、そんなの、マルモは真っ平御免であった。

 セイバーと呼ばれた戦士には、悔しいが敵わない事を知ったマルモは、標的を、彼がマスターと呼んでいた大男に変更させる。
規模の大きい呪文は動作を読まれる可能性が高いと予測した幼い賢者は、敢えて程度の低い魔法、相手に高熱を纏った閃光を照射する、ギラで攻撃しようと試みた。
威力こそ程度相応だが、術者の腕前次第で魔法の威力が上下する等最早常識。マルモ程の賢者が放つギラは、それだけで凄まじい威力を内包している。
伸ばした左手の掌から、白光が迸る。しかし、マルモのこの考えすらも、セイバーは読んでいた。ギラが放たれる前に、軌道上に移動していたこの剽悍な男は、
自らの主を守るように立ちはだかる。ギラの熱閃が男に直撃する。光が、万華鏡の如くに砕け散り、空間に散り散りになる。
事此処に至ってマルモは漸く、このセイバーと呼ばれる男が、尋常ならざる程の魔力に対する抗体能力を持っている事を悟った。

「せめて苦しまないように葬ってやるのが慈悲か」

 懐に差した刀を中段に構え、二m半ば程の高さまで積まれたパレットを背にしたマルモに、鋭い目線を投げ掛けるセイバー。
声からは不服そうな心境が隠されもしていなかったが、最早容赦はしないようであるらしかった。確かこの男のマスターは、芽は早めに摘んでおくべきだと、言っていたか。
冗談ではない。自分はまだ、死にたくない。元の世界には、あの子達がいる。自分に心を許し、自分も心を許している、自分と同じ寂しい仲間達が。
だから――。

「死ねない……」

 杖を構えて、マルモが呟く。

「死にたくない……!!」

 その言葉を発したと同時だった。
マルモと、セイバー、その主であるマスターと呼ばれる男が現在地としている、晴海の貨物倉庫全体が、小刻みに揺れ始めたのは。
地震ではない、風でもない。――それは、


635 : 魂の彷徨 ◆zzpohGTsas :2016/03/13(日) 17:57:11 J/LQ4zPI0
「ガアアアアアアアアァァァァァァァァッ!!!」

 それは、世にも恐ろしい、冥府(タルタロス)の奥底から聞こえてきそうな、幾万幾億もの亡霊の叫び声を思わせる、咆哮であった。
咆哮と共にそれは、巨大な晴海の倉庫の真ん中を、抉るように破壊させながら現れた。大量の鉄片が宙を舞い、砕かれた大量の物資が地に堕ちた。
邪龍とも魔獣とも取れる雄叫びを上げて現れたそれは、内部確認出来ない程の勢いで旋回し続ける竜巻を纏っており、その正体を窺わせない。

「あれはッ!!」

 セイバーが目線を、竜巻を纏った怪物の方に向け始める。
「気をつけろ、其処の少女のバーサーカーだぞ!!」、後ろでマスターと思しき男が下知を飛ばした。
竜巻を纏わせながら、空を飛ぶバーサーカーが勢いよく地面に急降下、着地。それと同時に、竜巻が止み、その威容を目の前に表した。

「……貴方、は?」

 マルモは、その存在を呆然と見上げた。見上げる程、大きかった。仲間にしていたメタルドラゴンよりも、ずっと大きい。
黒曜石を思わせるような、艶やかな黒い金属上の身体で出来たその巨躯は宛ら、黒金の城とでも言うべきであった。
全長は凡そ、十五或いは十六m。全体的に人のシルエットを模されており、頭部に生えた角状の何かを含めれば、その全長は二十mは下るまい。
モチーフはクワガタか、或いは、地獄の鬼か、死神か。一目見て、マルモは理解した。物質系のモンスターを従える彼女だからこそだった。
この存在には、有機物で構成された箇所が一つとして存在しない。身体の全てが純然たる、機械そのものであった。

 凶相を、怒りに歪めさせ、黒い魔城が動いた。
腕を大きく振り上げ、勢いよくセイバーの方に振り下ろす。そのあまりの巨躯故に、たかが七~八m程度距離を離した所で、まるで意味を成さないのだ。
慌ててセイバーは、マスターを抱えて飛び退く。拳を構成する金属の大質量は、振り下ろした勢いと言う凄い加速度を得て、地面のアスファルトに衝突。
良く乾いたクッキーの様にそれを破壊、粉砕する。まともに喰らっていれば、身体が鎧ごと潰されていた事は、想像に難くない。

「速度だ、速度で攪乱しろ!!」

「応ッ!!」

 言ってセイバーと呼ばれた存在は、マルモの目では捉える事も難しい速度で、黒い巨城の周りを旋回し始める。
最早軽業だとか、身のこなしが凄まじいだとかいう次元を超えていた。ある時は電柱の頂点に一回の跳躍で着地し、またある時、電柱よりも更に高い、
晴海の倉庫の屋根部分に今で着地し、またそこを蹴って、今度は植えられた樹木の梢に着地したりと、猿の運動神経に鳥の軽やかさを合せたような動きであった。
物質系のモンスターとは得てして動きが鈍い事が多い。ゴーレムなどその代表例だろう。
況してや目の前の黒い何かは、誰が見ても巨体その物。運動神経など、期待するべくもない。

 ポツ、と、マルモの頬に、水滴が当たった。空を見上げる。黒い雲が空を覆い、月と星とを覆い隠す一枚の板として機能していた。
しかもそれは雨雲であったようで、それを認識し始めたその時、凄まじい勢いで豪雨が場に降り注ぎ始める。
それを受けて、セイバーと言う男の動きが、鈍った。破壊されていない方の倉庫の屋上であった。
魔城が吼える。そして、足裏に装着された、何らかのエネルギーの噴出器官を利用して、一直線にセイバーの方へと向かって行った。

 ――速いッ、と思ったのはマルモだけでない、セイバーも同じだ。
見た目が見た目であったから、完全に油断していた。その巨体からは想像も出来ない程の移動速度に面食らったのは、寧ろセイバーの方であった。
行動が、間に合わない。ガッ、と、黒いロボットはセイバーを右手で掴み、勢いよく垂直に飛翔。
ものの十秒程で、黒雲の立ちこめる高度千m超の高さまで飛び上がる。雲を突き破ってそれが移動してから、二秒程経過した時であった。
雨雲の一部が渦を巻き始めたのだ。渦の中心には、凄まじい勢いで回転を続ける竜巻の存在があり、すぐにそれは、竜巻を纏った状態で、
マスターと呼ばれていた大男の方に向かって行く。「馬鹿な、セイバーが……!!」、それが男の最後の言葉となった。
竜巻を纏った黒金の城の衝突を受け、大男の如何にも頑丈でタフそうな身体は、木端微塵に砕け散り、吹き飛んだ。


636 : 魂の彷徨 ◆zzpohGTsas :2016/03/13(日) 17:57:25 J/LQ4zPI0
 纏わせた竜巻を解除させ、巨城を思わせるロボットは、ジッと、マルモの方に目線を投げ掛けた。
幼い賢者と、黒金の悪魔の目があった。其処で初めて彼女は、そのロボットの顔を見た。
頭部に生えた厳めしい角。見る者を震え上がらせる凶悪そうな瞳。肉食獣を思わせる、生え揃った牙。誰が見ても恐ろしい風貌をしたその姿。
だが、マルモは恐れなかった。確かに、目の前の存在は恐ろしい姿をしている。マルモが見て来たどんなモンスターよりも、ずっとだ。
しかしそれ以上に……。

「寂しそうな瞳……」

 目の前の、黒金の死神(プルートウ)は、見てて痛々しくなる程の、悲しさと寂しさで溢れている事に、マルモは気付いてしまった。

「何でそんなに、悲しい顔をしてるの?」

 生ぬるい雨が、黒いボディに着いた肉片と血液を洗い流している様子を、マルモは無言で見つめていた。
その時、彼女は、気付いた。死神の無機的な瞳に、水が溜まり始めているのを。雨じゃない、それは――

「泣いてる、の?」

 それが、涙である事に気付くのに、時間はいらなかった。

「ぼ、く……は、戦いたく、なかった……」

 たどたどしい、幼児が喃語でも話すかのような口ぶりで、目の前の城は語り始めた。

「ただ、故郷を……花畑に、したかったんだ……」

 雨が降りしきる。黒い城と、幼い賢者の間に雨は降り続け、身体に着いたあらゆる汚れと澱とを浄化するように、ただただ、自然の律動に従い落ちて行く。
数秒程の時間が経って、マルモは死神に近付いて行く。地面には既に水たまりが溜まっている所があり、踏んでしまうと水が踝まで上がり、足がずぶ濡れになる。
それを気にせず、マルモは、黒く冷たい死神の身体に手が届く程の距離まで歩んで行き、彼の方に、そっと手を伸ばして、こう言った。

「いこう」

 雨の音に掻き消される程の声だと、マルモは思ったのか。もう一度、言葉を口にした。

「一緒に、行きましょう」

 その言葉は、目の前の死神には不要だった。何故なら彼は、マルモの言葉をしっかりと聞いていたのだから。
魔城が、慟哭を上げた。自分を求めてくれる事への、喜びなのか。またしても、忌まわしい運命に身を投げねば行けない事への悲哀なのか。
ただ、そのどちらでも構わない。自分は、目の前の哀れな黒い悪魔を、見捨ててはならないのだと、マルモは思っていた。だって、彼もまた、自分と同じで、孤独な者であるのだから。


.


637 : 魂の彷徨 ◆zzpohGTsas :2016/03/13(日) 17:57:38 J/LQ4zPI0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 青年に力はなかった。優しさはあった。勉強はそれ程だった。だから一生懸命勉強を頑張った。
だが青年には、恵まれた運命と言う物に無縁だった。故郷は荒野。勉強の目的は、祖国の緑化。これからという時に、祖国からの徴兵。家族の全ても空爆で失った。
そして遂に、青年は、自分の身体すらも失った。生き残った父の頼みで、優しさが取り得の青年は、地上最大・最強のロボットに、その魂を移した。

 青年は、この世界でも、悪魔として、死神として戦う運命にある事を、呪い、慟哭した。
紆余曲折の果てに得た、真の安息をも奪われ、この世界でも破壊を振り撒かねばならない事に、青年は悲しんだ。
だがそんな彼を、マルモと呼ばれた少女は見捨ててくれなかった。一緒に行こうと、彼女は言ってくれた。
少しだけ、頑張ってみようと思った。彼女も僕と同じで、寂しそうで、ずっと一人の少女だと、彼は悟ってしまったから。

 砂漠で満たされた祖国を花畑にする、と言う夢は最早叶わないのかも知れない。
だけどそれでも今は、この、マルモと呼ばれる小さく幼いチューリップの為に、忌まわしい力を振ってやろうと、彼は思った。

 機械の名は、『プルートウ(死神)』。
嘗て『サハド』と呼ばれた一人のロボットの青年の成れの果て。他の花を枯らしてまで生きる、一厘の黒いチューリップであった。


638 : 魂の彷徨 ◆zzpohGTsas :2016/03/13(日) 17:57:58 J/LQ4zPI0
【クラス】

バーサーカー

【真名】

プルートウ(サハド)@PLUTO

【ステータス】

筋力A 耐久A 敏捷B 魔力D 幸運D 宝具A

【属性】

混沌・狂(サハド自体の性質は、秩序・中庸)

【クラススキル】

狂化:B-
全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。
完全に狂化しているとは言えず、時折理性を取戻し、言葉を話す事も可能とする。だが基本的に、サハドの意思が顕在化する事は少ない。

【保有スキル】

天候操作:A
元々は環境開発用のロボットだったバーサーカーに設定されていた、高度な天候操作システム。雨や雪を降らし、雷雨を発生させる事は当然の事。
自らに備わったエネルギーを用い、枯れた花を咲かせるなどと言う芸当も、自由自在。
狂化しているが、バーサーカーはこのシステムを正しい形で戦闘に用いる事が出来、特に竜巻の発生を好む所とする。

戦闘続行:A
往生際が悪い。瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

機械操作:B
造り主から『魂の彷徨』と呼ばれていた、電磁波によって遠隔のロボットを操作可能なシステムを組み込まれている。
傍目から見たら全く違和感も感じさせない程の精度でそのロボットを傀儡にする事が出来、人工知能や電子知能の組み込まれていないロボットすらも操作可能。
ある種の憑依と言っても良く、傀儡にしたロボットを通じて、自らの意思を周りの人間に伝える事が可能。

【宝具】

『黒鉄魔城(プルートウ)』
ランク:C 種別:対人~対城宝具 レンジ:1~50 最大補足:100~
中央アジア最大の頭脳と呼ばれる程の天才科学者であるアブラー博士によって制作された、鉄の城のような巨躯を持ったロボットボディ及び其処に組み込まれたシステム。
現在のバーサーカーのボディ、プルートウと呼ばれていたこれは、元々は砂漠の方が面積の多い祖国の緑化及び環境開発を助ける為に開発されたものであった。
戦争の勃発で家族を失ってしまったアブラー博士が、復讐の為に環境開発用ロボットであるプルートウを軍事用に改造。
このプルートウのボディに組み込まれた電子頭脳こそが、アブラー博士の息子であるサハドと呼ばれるロボットのものである。
アブラー博士によって、戦争によって妻子を失ってしまった博士自身の怒りと悲しみが予めプルートウには組み込まれており、そのせいでサハド自体の意思は希薄。
戦争自体の怒りを原動力に、彼が生前活動していた、ロボット工学の遥かに進んだ世界においてですら、最高峰を誇っていたスペックを武器に、
バーサーカーは暴れ回る。但し、サハド自体の意思は完全に消滅しておらず、時折彼の思考が表面化、敵対する相手に対し自らの破壊を頼み込んだり、
スキルの機械操作を駆使し、遠方のロボットを操り、自らの意思を誰かに伝えるなどと言う手段を、独自に取る事がある
これは元々のバーサーカーの人格であるサハドが、祖国の砂漠地帯を花畑にする、と言う夢を持っていた心優しい青年型のロボットであった事に起因する。

【weapon】

拳を用いた攻撃もそうだが、頭に生えた角は伸縮が可能で、相手に巻き付けて行動を阻害させたりする事も可能。

【人物背景】

プルートウとしての彼は、ペルシア王国で開発された、祖国の環境開発用のロボットを軍事用に開発し直したそれである。
サハドとしての彼は、ペルシア王国出身のロボットの青年であり、優しい性格の持ち主であった。
祖国を花畑にすると言う夢を抱いていた彼は、戦局の悪化を理由に留学先から祖国へと強制送還させられ、其処で、父であるアブラー博士に、
プルートウを起動させる為のキーとして生贄に捧げられる。プルートウとはつまりサハドであり、サハドとはつまり、プルートウである。
 
【サーヴァントとしての願い】

マスターを、元の世界に帰す。


639 : 魂の彷徨 ◆zzpohGTsas :2016/03/13(日) 17:58:09 J/LQ4zPI0
【マスター】

マルモ@ドラゴンクエストモンスターズ+

【マスターとしての願い】

元の世界に帰還する

【weapon】

杖:
魔法(魔術)の威力を高めるのに必要な物。

【能力・技能】

モンスターマスターとして、魔物と心を通わせる手段の他に、元々は勇者と共に旅をする賢者として修行もこなしていた為か、高い練度の魔術の数々を操る事が出来る。

【人物背景】

幼い頃に魔法の才能が高かったことから義理の両親に捨てられ、一人ぼっちだったところをさとりのしょの扉に迷い込んでしまい、賢者に拾われた少女。
後に妹弟子と共に修行を励み、ルイーダの酒場に登録される際に賢者として選ばれたが、妹弟子の想いを聞いてしまった事もあり、
彼女に賢者としての席を譲り、一人で旅に出る事になった。過去の境遇の事もあり、性格は寡言で、冷静。うるさい所を好まない。

ロンダルキアの世界の主として君臨する前の時間軸から参戦。率いていたばくだんいわ、のろいのランプ、メタルドラゴンは元の世界に置いて来てしまった。

【方針】

元の世界に戻る為に色々として見る。今の所、聖杯戦争についての情報は全く知らない。


640 : 魂の彷徨 ◆zzpohGTsas :2016/03/13(日) 17:58:21 J/LQ4zPI0
投下を終了いたします


641 : 春日野椿&アーチャー ◆7u0X2tPX0. :2016/03/13(日) 19:18:06 PANsUzX.0
投下します


642 : 春日野椿&アーチャー ◆7u0X2tPX0. :2016/03/13(日) 19:18:57 PANsUzX.0

都内のとある公園にて
暖かな日射しを浴びているそこに、一人の少女がいた。
艶やかな長い髪と大きな赤いリボンが特徴的なその少女────春日野 椿(カスガノ ツバキ)は、備え付けのガゼボで休息を取り、日中をのんびりと過ごしていた。

「こんな平和な日々がずっと続けばいいのに…………なんて、ね」

ピーチュチュチュ…………と二匹の小鳥が近くの木の枝で羽を休め囀ずっている。彼女はそれが聴こえる方向へぼんやりと視線を向ける。だが彼女がその小さな姿を捉えることはできない。
なぜなら彼女は生まれつきの「弱視」で、ある程度の距離で目のピントが合わなくなってしまうのだ。そして小鳥の鳴き声はそんな彼女の「見えない世界」から聴こえてくる。

「じゃあ、また『忘れて』みるかい?」

その声がしたのは彼女の真後ろからだった。椿に背を向ける形でベンチの背もたれに寄り掛かるように少年が立っている。
顔立ちは一見十代半ばほどに見えるが顔つきはどこか大人びており美少年といって差し支えない。
それでいて黒いジーンズに半袖のカッターシャツとシンプルな飾り気のない格好が相まって逆にミステリアスな雰囲気を醸し出していた。

椿は驚くことなくほんの少しだけ視線を背後に向ける。

「いいえ、冗談じゃないわ。せっかくモノにしたチャンスをみすみす手放すようなことはいたしません」
「……と、いうと?」
「ええ、貴方の話が本当なら、私はこの戦いを勝ち抜き『聖杯』を手に入れます。そして願いを叶える。それだけです」
「おや、可憐な見た目に反して随分とやる気のようだね」
「そういう貴方は随分といい加減ね、『アーチャー』」
「まあね、僕は君と違って叶えたい願いは特にないから」

フフフ、と少年────アーチャーの笑う声がした。何か意図を含んだような笑い方であったが、飄々としたこの少年の腹の内は読むのは会って間もない椿には難しい。

「でも僕は君のパートナー………いや、『サーヴァント』だしね、一応聞いておこうかな

君はどんな願いを叶えるために聖杯を手に入れるんだい?」
「…………」

空を見上げる。どこまでも広く青い、青い空。薄く千切れた雲は陽気に流れていく。

春日野 椿の抱える闇を何一つ知らぬまま



「こんな世界、無くていい」



チュチュチューーーー

二匹の小鳥が飛び立った。一匹に続いてもう一匹、仲睦まじそうな小鳥たち。羽ばたく二匹は空を駆けていく。
檻のない、自由な空へ



「そう考えていたの


      ────つい最近までは、ね」





少しだけ、お話させてもらうわね

アーチャーの是非を聞かずに声を落として椿は静かに語り始める。アーチャーはそれを遮らない。
彼女の闇を一層引き立たせるように、木々が揺れ影が少女に覆い被さった。



※※※※


643 : 春日野椿&アーチャー ◆7u0X2tPX0. :2016/03/13(日) 19:20:00 PANsUzX.0


とあるところに、一人の女の子がいたの

女の子は牢屋に閉じ込められていたわ
冷たく、暗く、自由のない……そんな座敷牢に

その檻の中にはたくさんの人がいた。その人たちはよってたかって女の子をいじめていた。
誰一人、女の子を助ける人はいなかった。

女の子は辛かったけど、寂しくはなかった。何故なら彼女は宝物を持っていたから。
それは『手毬』…………母からもらった大事な思い出がつまっている、この世でたった1つになってしまった、大切なもの。

でもそれはある日突然なくなってしまった。牢屋のどこを探しても探しても、手毬は見つからない。
女の子は思ったわ、手毬はなくなったんじゃない。牢屋の外に……女の子の『見えない世界』へ行ってしまったんだって。

いつだってそうだった。
座敷牢に閉じ込められてから、『見えない世界』が私を苦しめる。

痛い、苦しい、辛い
手毬のない世界なんていらない。私を苦しめる世界なんていらない。

こんな世界────なくていい。


※※※※


「…………でも、例え偽りでも平凡な日常の記憶を観て思ったの

私は世界を壊したかったんじゃない、壊したかったのは…………『私』の世界。私を捕らえていた座敷牢≪御目方教≫だったんだって。

今でも私の心はあそこに囚われたまま。私を目茶苦茶にしたのに、完全に見捨てることができないで、どこかで「戻らなきゃ」って思ってる。

もう嫌なの、私を目茶苦茶にした奴等を切り捨てられない私が
偽りの記憶の中の平凡に幸せそうな『私』と、穢れた本物の『私』…………
苦しいの、気持ち悪いのよ。ふたつの『私』を比べて………自分がどれだけ醜いか思い知らされて吐きそうになる」

己のどす黒い感情を押さえ込むことができず、取り繕うことも忘れて椿は顔を歪ませ吐き捨てる。
手で視界を塞ぎ巻き込んだ髪を潰すように握り、熱くなる目頭を無視し、尚も椿は心が溢れるまま思いを口に出す。

「私の願いはただひとつ

『なかったことにする』こと
御目方教も、信者も、両親が死んだことも、汚されたことも、全部、ぜんぶなかったことにするの
たとえハンディキャップがあってもいい、両親と一緒にいられるならそれでいいの。

だって、だって、今までずっと散々な目に合ってきたんだもの。それぐらい望んだっていいでしょ?
報われたいのよ、私は────」

椿の言葉が途切れ、二人の間に沈黙が流れる。それをさらうかのように緩やかな風が流れ草木が踊り、互いに触れあいながら乾いた音を立てる。
それらを上書きするかのように、春日野 椿はハッキリと己の願いを宣言する。



「幸せになるの
────普通の、女の子として」



風が強くなり、草木のざわめきが大きくなった。彼女の思いに戸惑うかのように、彼女の願いを非難するかのように。


644 : 春日野椿&アーチャー ◆7u0X2tPX0. :2016/03/13(日) 19:20:55 PANsUzX.0

「過去を捨てて違う自分を願うのかい?」
「捨てるんじゃないわ。『消す』の、虚構≪なかったこと≫にするのよ。もう嫌でも思い出さなくですむように」
「やれやれ…………でも分かってるんでしょ?君一人の願いのためにとてもたくさんの人の血を流さなきゃならないってこと」
「今更血ごときが何よ、もうこの体は穢れてる……なんだったらためて沸かして浸かってやってもいいわ」
「女の子が、そんな血生臭いこと言うもんじゃないよ」

どこかの伯爵夫人じゃないんだからさ
アーチャーは椿が纏う重苦しい空気をどこ吹く風と飄々とした調子で返事をする。

「さあ、私の願いは言ったわ。だから貴方の番よ」
「僕?さっきも言った通り願いなんて────」
「嘘ね、貴方には願いがある。だからサーヴァントとして召喚された。違う?」

キッと目線を尖らせて背後のアーチャーを睨み付ける。アーチャーは肩を竦めたが、怯えたわけではないようだった。

「恐いねえ、どうしてそう思うんだい?」
「さあ、何でかしらね、強いて言うなら女のカンよ」
「……………………フフ、女の子って時々根拠もないのに鋭くなるよね」

アーチャーはベンチの背もたれから腰を浮かせ離れた。彼は空を仰ぐ。二人の間に流れる緊張感とは裏腹の爽やかな青空。
アーチャーはゆっくりと椿の方へ振り返る。


「─────僕の願いは」



ペタッ



「ひゃあ!?」

頬への突然の冷たい感触に驚き、椿はベンチから飛び上がった。

「びっくりした?」
「びっくりした?じゃないわよ!なにっ」
「はいこれ」

振り返った椿の言葉を遮り、アーチャーは何かを椿の目の前に差し出す。

「…………なにこれ」
「なにって、ジュース。特別に君にあげるよ」

何か、とは小さい缶だった。未開封の、リンゴジュース

「…………」
「うん?嬉しくって声もでないのかな?」
「貴方、ふざけ」
「僕の願いは」

アーチャーは顔を椿に近づける。端正な顔が椿の視界いっぱいに埋まる。
ほんの少しだけ、ドキリと心臓が跳ねた。

アーチャーは口を開き…………人差し指を自身の口に当てる。


「ヒ・ミ・ツ」


そう言い、顔を離してから「はい」と、再び缶ジュースを椿に差し出す。

椿は缶ジュースをしばらく見つめ、奪い取るように受け取った。そのまま荒々しくベンチに座り直す。

「フフ……でも代わりにアドバイスしてあげるよ」
「………………アドバイス?」

完全に不機嫌そうな声で返事をする。椿はプルトップに指をかけ、缶を開けた。

「椿ちゃん

────『自分を諦めたら、世界を諦めるのと同じだよ』」


645 : 春日野椿&アーチャー ◆7u0X2tPX0. :2016/03/13(日) 19:21:43 PANsUzX.0

そう言い残し、アーチャーの気配が消えた。視線だけで振り返ってみるとアーチャーの姿は影も形も見当たらない。
霊体化、というものだろう。姿が見えなくなっただけでアーチャーは椿のすぐ側にいる。
椿は缶ジュースに視線を落した。

「アーチャー……いいえ、桐生義弥(キリュウ ヨシヤ)」

アーチャーの真名を呼び、手の中の冷たい缶ジュースをじっと見つめ彼の言葉を頭の中で反復させる。

「…………諦めないわよ、私は」

ぐい、とリンゴジュースを一気に煽る。冷たい液体が喉を潤す感覚が気持ち良かった。




●●●●



つい、昨日の出来事


私は散歩でよく来る公園に足を伸ばしていた。
家を出る前、母は弱視の私を心配してくれたけれど、近所で慣れ親しんだ地元だし、すぐ帰ってくるから大げさだと笑って一人で出掛けていった。

学校帰りの子供も多くなる時間帯だったこともあって公園はそこそこの賑わいを見せている。
私は特に目的もなく、公園を漂う爽やかな空気を味わいながらゆっくりと歩を進めていた。

その時、足に何かが当たった。
軽い衝撃と共に小さく鈴の音が聞こえた。少し驚きながら足元を見ると、何か丸くて小さいものがあるのが分かった。
屈んでそれを拾い上げる。まじまじと見てみると、それの正体が分かった。

それは毬だった。
ピンクを基調とした和柄の、可愛らしい毬。現代では少し珍しい古き良き日本を感じさせる遊び道具

しばらくそれをじっと見ていると、遠くから「あっ!」と女性の声が聞こえた。
続いて二人分の慌てたような足音。私は立ち上がってそちらの方へ視線を向けると、大人と子供らしい人影がこちらへ向かってくるのが分かった。

「すみません、それここに落ちていたものですか?」

二人が私の近くまで駆け寄り、ようやく私は二人の様子を見ることができた。
恐らく親子であろう大人の女性に女の子、女の子は何故かぐずっており顔を伏せている。

「ええ、そうですけど、もしかしてこの子の?」
「ええそうなんです。遊んでた拍子にどこかへいってしまったみたいで………ずっと探してたんです。」

毬見つかったよ。だから泣き止みなさい。と女性は少し屈み女の子をあやす。
私は女の子に目線を合わせるように膝を折り、毬を差し出す。

「ほら、これ、貴女のでしょう?」

なるべく優しい声で話しかける。女の子はそこでようやく顔を上げて私に目を合わせてくれた。
目は腫れ、顔中に涙のあとがあるが、可愛らしい女の子だった。顔は子供らしくふっくらしており、目はくりくりして大きい。

何も知らない、綺麗で可愛くて、無垢な女の子。


646 : 春日野椿&アーチャー ◆7u0X2tPX0. :2016/03/13(日) 19:22:48 PANsUzX.0

「もうなくさないようにね」

笑顔で私はそう言った。女の子は私をじっと見て、そうしておずおずと毬を受け取る。

「ありがとう、お姉ちゃん」
「どういたしまして」

女の子の頭を軽く撫でる。女性が「本当にありがとうございます」とお礼を言った。




頭を何度も下げながら、女性は女の子の連れて去っていった。女の子はずっと手を振っていた。私は女の子に小さく手を振り返しながら二人が遠くなっていくのを待っていた。
やがて二人の気配が消えたのを確信してから、私は二人とは反対方向へと歩き出す。

「…………あ」

歩き出そうとして、膝から崩れ落ちる。
とっさに近くの木に寄りかかり、ずるずると座り込んだ。体が震える。冷や汗で体が震える。耳鳴りがして視界は暗く染まっていく。



【目の前にたくさんの人がいる。みんな頭を下げている。私はその人たちより一段高い場所で見下ろしている。
両脇にはお父さんとお母さんがいる。二人とも厳しい顔でその人たちに何かを説いている。神に遣える巫女、御目方様、未来を見通す千里眼。
それは私のこと、でも私に特別な力はない。
すべてお父さんとお母さんのウソ、たくさんの人を騙すためのウソ、私を守るためのウソ。だから私は二人と同じように厳しい顔をしてみんなを見下ろしている。お父さんとお母さんを守るために】


【中庭で私は一人、手毬をついて遊んでいた。手毬は跳ねながらリン、リン、と鈴の音を鳴らす。その音がとても好きでずっと遊んでいたくなる。

椿ちゃん、と私を呼ぶ声がした。お母さんの声だ
お母さん、と私は声のした方へ駆けていく、お母さんは縁側の側に立っていた。
やがてお母さんの姿がハッキリするぐらい近づいて、私はお母さんに飛び付いた。
椿、とまた私を呼ぶ声がした。今度はお父さんの声。お父さんは大きな手で私の頭を撫でる。気持ち良かった。
毬を縁側に置いて、二人の手を握って、急かすように引っ張る。お母さんは「そんなに引っ張ったら腕が取れちゃうわ」、お父さんは「こらこら、お母さんとお父さんはどこにも行かないから大丈夫だよ」と困ったように笑った。


広くてあったかい中庭を歩いている。側にはお父さんとお母さん。私は二人と手を繋いでいる。

私は優しいお父さんとお母さんが大好きだった】


【お父さんとお母さんが死んだ。
とても悲しかった、とても泣いた。お父さん、お母さん。どこにも行かないって、
私は泣いた。泣き叫んだ。胸が張り裂けそうだった。頭が割れそうだった。冷たい座敷牢の中で私の声が響いた】


647 : 春日野椿&アーチャー ◆7u0X2tPX0. :2016/03/13(日) 19:23:32 PANsUzX.0


【座敷牢にたくさんの男の人が入ってきた

男の人たちは私を取り囲んで、押さえつけて、私の服を無理矢理脱がし始めた。

私は抵抗した、暴れた、叫んだ。でも誰も助けない。助けてくれない。お父さん、お母さん。助けて

私は裸になった。男の人は身体中を触って、揉んで、■■て…………
金具のカチャカチャという音が聞こえた。目の前にいる私を押さえつけている男の人はズボンのチャックをおろしていた。そこから■■■■■■た。信じられないくらい■■かった。
男の人はそれを私の■■■■■■■■■


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い


熱い、体が真っ二つになる、痛い。男の人たちは私の体をさわってくる。やだ、やだやだやだ、もう嫌だ。やめて、それ以外やめて、痛いのは嫌。さわらないで、気持ち悪い。■■てこないで。

狂ったように叫んだ。喉が裂けそうなくらい。胸が破裂しそうなくらい、あの時以上に。

でも、痛■のは、気持ち■いのは■っと続■■。
ずっと
ずっと、ず■と、■■と、■■■■■■■■■…………


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■

■■


               、
                                        。

                                                     】

【リン、リンと毬が転がる音がした。私は慌てて毬を拾おうとする。でも毬はどこにもない。どうして?
探しても探しても毬はない、どこ?手毬、私の大事な手毬、手毬はどこ?
手毬、手毬、お母さんがくれた手毬、手毬、手毬…………

ああ、もう手毬はない、どこにもない。手毬は『見えない世界』にいってしまったんだ。だからもうない。お母さんの手毬



こんな世界いらない
手毬の無い世界なんかいらない
苦しいだけの世界
こんな世界なくていい】





「う、…………おぇっ……ぇ」

片手で口を塞ぎ、もう片手で地面に手をつき、草ごと土を指先が白くなるくらい強く握りしめた。吐くのはギリギリ耐えた。

「うう…………う、うわっあ、…………ああああ…………あっ……!」

ポタリ、ポタリと音がする。流れ落ちた涙は地面を湿らせた。目が、顔が熱い。体が熱い。

「ああああ……うわあああああああ…………!」

胸にぽっかりと穴が空いたようだった。そこに苦しみが充満している。お腹は棘を含んだ土をたっぷりと詰め込まれたように気持ち悪くて痛い。手足は痙攣してうまく動かせない。


私は泣いた。ただただ泣いた。周りには誰もいない。だから私はずっと泣いていた。


────私の守護者になるサーヴァントが現れるまで


648 : 春日野椿&アーチャー ◆7u0X2tPX0. :2016/03/13(日) 19:24:24 PANsUzX.0
【クラス】
アーチャー
【真名】
桐生義弥/ヨシュア@すばらしきこのせかい
【属性】
混沌・善
【パラメーター】
筋力:E 耐久:D 敏捷:C 魔力:B 幸運:A 宝具:B


【クラススキル】

対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。


【保有スキル】

ケータイカメラ:C
携帯のカメラで撮った対象(複数可)を低確率で一時的に行動不能にする。

スウェー:B
回避に成功した場合、次の行動に有利な補正がかかる。

人間観察:B
人々を観察し、理解する技術。
渋谷で多種多様な人間を見続けてきたことにより培われた。
対象の感情や性格を把握し、確率で認識したサーヴァントのパラメーター及びスキルを看破することができる。

【宝具】

『ハイ&ロー』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1~20 最大補足:10人

アーチャーが使う超能力(テレキネシス)、以下に大別される

物質転送(アポーツ)
物質を相手の頭上に転送する。携帯で対象をロックオンする必要があり、その間は無防備になる。
ロックオンの回数が多いほど多くの物を転送できる。

空中浮遊(レビテーション)
空中に浮遊してロックオンした対象を光の柱で攻撃する。物質転送(アポーツ)とは違い操作中も細かい光の柱が発生する。
携帯への入力時間が長ければ長いほどとどめの光の柱が強力になる。


『別世界への誘い(ザ・ワールド・エンズ・ウィズ・ユー)』 
ランク:B++ 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大補足:50人

氷塊や火球、隕石を出現させ周囲に降らせる。『ハイ&ロー』の実質的な上位互換


上記2つの宝具は本来であればUG(アンダーグラウンド)でしか使えないが、聖杯戦争では宝具として機能しているためRG(リアルグラウンド)でも使用可能となっている。


【Weapon】

携帯電話
折り畳み式の携帯電話、ガラケーと思われる。
主に戦闘中に使用しているが、通話やメールなど標準的な機能も備わっている。
またカメラにはスキルの他にも「1日に3回だけ過去の写真を撮ることができる」という機能もある。


【人物背景】
UGの渋谷を統治しているコンポーザー、生き返りをかけた「死神のゲーム」を執り行っている帳本人
渋谷の人々に失望し「現在の渋谷に価値はない」と判断し消滅させようとしたが、腹心である北虹寵(キタニジ メグミ)に止められ彼と渋谷の存続をかけたゲームを始める。
自らの代理人である桜庭音操(サクラバ ネク、「すばらしきこのせかい」主人公)が北虹に勝利し、ネクに「勝った方がコンポーザーになり渋谷を好きにできる」とゲームを持ちかけ銃での
撃ち合いでネクに勝利するも、心境の変化があったのか消滅を思いとどまり渋谷を存続させ、ネク達を生き返らせた。

かなりのマイペースで皮肉屋、常に余裕をもった態度で何を考えているか読み辛い。それでいて頭の回転が早くずる賢い。


【サーヴァントとしての願い】
ヒ・ミ・ツ


649 : 春日野椿&アーチャー ◆7u0X2tPX0. :2016/03/13(日) 19:25:52 PANsUzX.0



【マスター】
春日野椿@未来日記

【マスターとしての願い】
自分の不幸な過去をなかったことにする

【weapon】
なし?

【能力・技能】
弱視
生まれつき目がうまく見えない

【人物背景】
新興宗教『御目方教』の教祖にしてデウスに選ばれた12人の未来日記所有者の一人、所有者の中では六番目であることから「6th」と呼ばれる。
普段は座敷牢に住んでいる。生まれつきの弱視であり、代わりに神から未来を見通す千里眼の力を与えられたとされ教団の信者からは「御目方様」と崇められている。
が、それは両親がついたウソであり実際は彼女に千里眼の力はない。
前教祖だった両親が事故死し、傾いた教団を立て直すために教団のNo.2である船津という男に利用され、信者から凌辱されたという悲惨な過去を持つ。(後にその事故死すらも船津の奸計であったことが判明した。)
そのような境遇のなかで母の形見である手毬を心の拠りどころとしていたが、その手毬を無くしてからは「自分を苦しめるこんな世界はいらない」と思うようになり、未来日記を手に入れてからは世界を滅ぼすために神の座を目指す。

作中では「神になる気はない」と言いつつ日記所有者を一気に始末しようとしたり、逃走する1st「天野雪輝」を誘き寄せるため2nd「我妻由乃」を(腕を切り落とされた報復も含めて)信者に凌辱させようとしたり目的のために手段を選ばないという非道さを見せていたが、
回想や外伝での描写をみるに元々は真面目で明るい性格だったのではないかというのが伺える。
あと秋瀬或の口説きテク(※ただしイケメンに限る)で惚れた辺り意外と惚れっぽいのかもしれない


未来日記は「千里眼日記」、千人を越える信者の報告を予知するという特性を持つ
そのため日記の中でもトップクラスの情報量を有するが、予知される内容はすべて他人のものであるが故に情報操作に弱い。

この聖杯戦争内では持っているかもしれないし、持っていないかもしれない。だが持っていたとしてもこの世界での彼女はごく普通の家庭で育ったということになっているため本領を発揮するのは難しいだろう。


650 : 春日野椿&アーチャー ◆7u0X2tPX0. :2016/03/13(日) 19:26:28 PANsUzX.0
投下終了します


651 : ◆ZjW0Ah9nuU :2016/03/13(日) 20:16:58 ZnPDa3860
皆様、投下お疲れ様です
短いですが投下します


652 : 《宇宙の支配者 パイロン》 ◆ZjW0Ah9nuU :2016/03/13(日) 20:18:06 ZnPDa3860
漆黒に塗りつぶされる膨大な宇宙空間の中を、宛てもなく彷徨う一つの生命があった。
それは進化に進化を重ねて不老不死の存在へと昇華された生命体。
進化の果てに肉体すら持つ必要のなくなった不定形精神体。

彼は、不老不死の存在として生を受けてから2億年もの間、宇宙を旅してきた。
しかしその旅のほとんどは何もすることのない、「退屈」で埋め尽くされていた。
死とは無縁の命を持ち、気が遠くなるほどの時間。
その中で少しでも退屈を紛らわすために、彼はある趣味を持つに至った。

それは、惑星のコレクション。
宇宙空間を進みながら、彼は自ら勝ち取ってきた惑星を見る。
自分の身体の一部を公転軸にして回り続ける美しい星々の数々。
これらをいつでも見れるというだけでも彼の退屈は薄れ、彩られた一時を過ごせるというものだ。

この中には、その惑星に住んでいた生命体から勝ち取ったものもある。
彼の選別した、その惑星の代表となる者との勝負。
自身をその惑星のルールに合った大きさと能力に抑えた上での、惑星の所有権を賭けた闘争。
闘争は、惑星収集に並んで彼に退屈を忘れさせる重要な存在意義の一つだった。
わざわざ惑星を得るために勝負をするという回りくどい方法を取るのも、数千年に一度しか出会えない知的生命体と戦う機会を作るために他ならない。
過去には、次元を歪めることで多数の世界から強者を呼び出して戦わせたこともある。
この退屈を少しでもしのげるのであれば、彼はどんなこともやってのけるであろう。

悠久の時の中、宇宙を渡り歩く惑星のコレクター。
惑星を破壊するなら数分も要さない圧倒的な力の持ち主。
その名は、パイロン。



『…む?』

宇宙空間を漂い、この2億年の中でも9割以上を占めるであろう退屈な時間を過ごしていた時、パイロンはある連続した次元の歪みを感知する。
歪みに次ぐ歪み。パイロンには、あらゆる世界から何者かが呼び出されていることが容易に想像できた。
パイロンがまず感じたのは、懐かしいという感覚だった。先に述べたように、パイロンは次元を歪めて強者を召喚したことがある。

『私の他にこのような芸当を扱おうとは…面白い』

自身と同様のことをやってのける者ならばさぞ強い力を持っているに違いない。
闘争に興じるために。あわよくばその者の星をコレクションに加えるために。
パイロンは期待に胸を膨らませながら、次元の歪みの生じる方向へと向かった。







653 : 《宇宙の支配者 パイロン》 ◆ZjW0Ah9nuU :2016/03/13(日) 20:18:54 ZnPDa3860


『これは…随分と面白そうな催し物をしているではないか』

次元の歪みが生じた座標へたどり着いたパイロンは、いたく感動していた。
そこは、惑星クレイを侵略したリンクジョーカーによって再現された東京。
パイロンはそこへたどり着くとまず、不可視かつ感知不可能な精神体で東京全体を包み込み、調査を行った。
一体ここで何が起こっているのか、何が起こっているのか、何のために用意された場所なのか。
それを東京にいる者の話から一人一人余さず盗み聞き、この東京について理解を深めていく。
その気になれば40万光年の大きさにもなれるのだ。東京全域に体躯を広げることは造作もないし、視覚と聴覚も身体の隅々から受容できる。
誰がどんな話しているのかは個人レベルで特定できた。

『聖杯戦争――サーヴァントを使役し、万能の願望機を巡った闘争、か…面白い、面白いぞ!!どれ、私も混ぜてもらおう』

東京中にいる参加者から聞いた話により、聖杯戦争やサーヴァントについては把握した。
かつてパイロンの侵略したことのある青い星――地球――の都市に数多の世界にいる人間を集めてのサーヴァント同士の闘争。
それは闘争を求めているパイロンにとっては願ってもない催事だった。
パイロンはすぐさま聖杯戦争へ参加することを決めた。この東京にいる強きサーヴァントとの闘争を満喫するために。

『とは言っても、部外者の立ち入りは《別次元からの観測者》にとっても不愉快であろう。ここは聖杯戦争と地球のルールに従うとしよう』

そう言ってパイロンは容姿を人間のものに変化、己の肉体を炎の塊によって可視化し、能力をサーヴァントのものにスケールダウンする。
聖杯戦争ではサーヴァントが戦うものと認識していたため、肉体は人間のものに、強さはサーヴァント並に自身を弱体化したのだ。
闘争を楽しむのだから、一方的な戦いはつまらない。

『そうだ、聖杯戦争のルールには《真名を隠す》というものがあったな。ならば私も独自のクラスで現界したサーヴァントという体で東京に入ろうか』

そしてパイロンは《別次元からの観測者》――リンクジョーカーに向けて、自称するクラスを声に出してから聖杯戦争の舞台へと入っていった。

『我が名はパイロン……《イレギュラー》のサーヴァントとして、君たちの聖杯戦争とやらに参加させていただくことにしたよ』

マスターでもなければサーヴァントでもない…そんな外部からの侵入者のパイロンに《イレギュラー》の名はこれ以上なく相応しい名前であった。


654 : 《宇宙の支配者 パイロン》 ◆ZjW0Ah9nuU :2016/03/13(日) 20:20:16 ZnPDa3860
【クラス】
イレギュラー

【真名】
パイロン@ヴァンパイアシリーズ

【パラメータ】
筋力? 耐久? 敏捷? 魔力? 幸運? 宝具?

【属性】
混沌・中庸

【クラス別スキル】
単独行動:EX
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
そもそもサーヴァントではなく、あくまで外部から介入した異星人に過ぎないパイロンはマスターなど不要である。
パイロンはあくまで本人のポリシーにより自身をサーヴァントと同格まで弱体化させており、便宜上サーヴァントとして扱われているだけである。

【保有スキル】
不死:A
四肢を切断される、頭蓋を穿たれる、心臓を破壊される。と言ったダメージから復帰出来るスキル。
事実上、戦闘続行や再生と言った、肉体の頑強さを底上げするスキルを多く複合したスキルである。
パイロンはそもそも肉体を持たぬ生命体で物理ダメージなどは全て無効化されるが、相手と対等に戦うために敢えて実体を持って攻撃を受けている。
また、不老でもある為、時の劣化を受け付けない。

スケールダウン:EX
自身の大きさと能力に制限をかけるスキル。つまるところ手加減。
本来パイロンは不可視のエネルギー生命体だが、侵略した星のルールに則って相手に合わせた形状・大きさ・パラメータに変化する。
パイロンの降り立った場所は地球の東京を再現した空間で、聖杯戦争の舞台となっているため、
パイロンはそれらのルールに則り自身をサーヴァントのレベルにまで力を抑えている。
肉体は人間の形へと変化させて可視化しているが、闘争をより楽しむために相手によってパラメータを自由に変化させることができる。
パイロンがその気になれば全パラメータをA+++ランクまで引き上げることも可能。なお、パイロンが全力を出すと銀河が消し飛ぶので全力は基本出さない。
また、パラメータはパイロンの気分次第で大幅に変動することがある。


655 : 《宇宙の支配者 パイロン》 ◆ZjW0Ah9nuU :2016/03/13(日) 20:21:02 ZnPDa3860

【宝具】
『我こそは宇宙の真理(コズミック・ルーラー)』
ランク:? 種別:宇宙的存在 レンジ:4000000000000000000000(40万光年) 最大捕捉:980000000000(銀河に人口70億の惑星が140個あると仮定した場合)
物質としての定形を持たない、不定形精神体とでも称すべき存在であるパイロンそのものが宝具。
パイロンの体は物質としての形態が元々存在しない不定形の精神体である。
よってこの形態のパイロンにはいかなる攻撃も通用せず、またエネルギーとしての形態が存在しないのでその体は不可視である。

前述のように、スケールダウンによって自身力を大きく抑えることで可視化、サーヴァントにも対抗可能となっている。
その見た目は不定形の炎そのものが人の形に擬態している外見。形状はパイロンの意思で自由に変えることができ、
巨大化して怪獣や巨大ロボットとも戦うこともできる。

【weapon】
己の身体
不定形なため、形を自由自在に変えることができる。
自身の一部を切り離して分身を作ったり、爆発する火球を作ることもできる。

【人物背景】
ヘルストーム星出身の地球外生命体。また、あり余る長い寿命の中の楽しみとして格闘技も嗜んでいる。
元々はどこかの恒星系に住む知的生命体であったが、進化を続けるうちに不老不死の絶対的能力を得た。
美しい星をコレクションすることに存在意義を見出しており、2億年もの間宇宙を旅しながらそれを行ってきた。
生物がいない、つまり「誰のものでもない」状態の惑星の場合は彼がそう望んだ瞬間から「彼のもの」なのだが、
生物がいる惑星の場合は「現時点では彼らのもの」と判断し、すぐには手を出さない。
ではどうするかと言うと、その惑星の住人の代表を彼なりの基準で選考し、その相手に合わせた形状・大きさに自身をスケールダウンした上で所有権をかけて勝負をする。
この戦いは、長きに渡る宇宙の旅の退屈の中でも数少ないパイロンの楽しみとなっている。
勝利した暁には、その惑星を念力で動かして自分の持ち物にしていた。

本体は地球を軽く凌駕するスケールであり、最大で40万光年の大きさになれる。
戦いの際は地球のルールに則って、人間大の姿で力を制御して戦っている。「本気を出したら銀河が消し飛ぶ」らしい。
相手の攻撃が通用しないのでわざわざ自分でダメージを受けるなどフェア精神を持っているようにも見えるが、
実際の所は自らがより楽しむためのお膳立てに過ぎず、結局の所自己満足の為でしかない。

なお、パイロン自身はマスターでもサーヴァントでもなく、
宇宙のどこかでリンクジョーカーの行う聖杯戦争に興味を持ち、それに介入したイレギュラーでしかない。
このステータスもパイロンがサーヴァントと同レベルに能力を抑えたことで設定された便宜上のものであり、
『イレギュラー』のクラスは『真名を隠す』という聖杯戦争のルールに則ったパイロンの自称に過ぎない。

【サーヴァントとしての願い】
この聖杯戦争とやらでの闘争を満喫する。


656 : ◆ZjW0Ah9nuU :2016/03/13(日) 20:21:24 ZnPDa3860
以上で投下終了します


657 : ◆CKro7V0jEc :2016/03/13(日) 23:04:41 jp98kDfM0
今日までの募集期間に候補作品を投下したみなさん、お疲れ様です。
そろそろ私も今回の募集期間で一番最後に書いた作品を投下して、あとは結果を待つ事にします。
それでは、投下します。


658 : 雪城ほのか&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/03/13(日) 23:05:10 jp98kDfM0





 ――“正義”――



 これは、常に人々の羨望と不信とが、同時に向けられてきた言葉であった。

 たとえば、我が身を顧みず他者を守る事に命を尽くした存在に、一つでも心当たりがあれば、その言葉に「羨望」を抱くかもしれない。
 たとえば、国そのものが一丸となって国民に正義を押し付けた戦争に、一つでも心当たりがあれば、その言葉に「不信」を抱くかもしれない。

 どちらの側面も知りながら、「正義」という在り方に「羨望」を抱き続け、そうなろうとする純粋な者もいるだろう。
 どちらの側面も知りながら、「正義」という在り方に「疑問」だけを覚えて、言葉への不信だけに傾いていく者もいるだろう。

 いずれの考え方も誤りであり、また、正しくもある。
 二つの側面を抱えている……という事は、どちらの側面も認められるべき物であるという事であり、どちらかの側面だけを切り取られてはならない。
 しかし、その曖昧すぎる定義が故に、片方の側面に傾いた瞬間、もう片方の側面が大声をあげて自らの存在を主張する。
 この二つの側面が同居しながらに、対立を続けるのが、やがてこの言葉を巡る言論や表現の戦いにも変わっていく。
 それが、この言葉の意味があらゆる形で曲解される由縁だった。

 大昔から、「正義」の在り方への羨望が描かれた「勧善懲悪」の逸話も多くあれば、不信が描かれた書物もまたいくつもある。
 芥川龍之介の『羅生門』を中学校の現代文のテキストとして扱った人も少なくはないだろう。
 おそらく世界一有名な古典小説である、ドストエフスキーの『罪と罰』も正義の在り方を問うた。
 こんな、暴走する正義感の姿が描かれる事も、決して珍しい話ではなかった。

 娯楽としての勧善懲悪の物語の中に、時として、「正義」の在り方に一石を投じられる事もあった。
 人間を守って来た正義のヒーローは、人間の変身した怪物とも戦わなければならないのか。
 戦場に立つ少年は、殺し合う事で正義を果たさなければならないのか。
 正義という言葉に拘る事で他者を犠牲にする者は、本当に正義なのか。
 悪を断罪し続ける男は、狂人なのか正義なのか。
 そんな疑問は、子供にさえも常に向けられ続け、人々の思想の中に「正義」への不信を植え付けた。



 だが、本来、これらは注意喚起以上であってはならないのだろう。

 あくまで、それはただの問いかけであり、人がほんの少しだけ考えるきっかけである。
 これが受け手の思想を縛る答えであってはならず、問いかけられた側もまた、「答え」を出してはならない。
 この疑問を真に受けて、只、不信だけを強めて、「正義」そのものに憎悪を向けるのは、ナンセンスだ。
 正義そのものの捉え方を、酷く歪んだ、極端な瞳で見るだけでは、人はそれこそ、大切な何かを失ってしまう。

 本来ならば、「羨望」されるべき、人が目指すべき場所が「正義」であり――人はそれに辿り着くべくの努力を模索する必要があるのだ。

 この言葉の本義とは、常に「正しさ」にこそある。
 正しい道を究めようとする者の事でもなければ、それを自称して勝手に暴走した者の事でもない。
 正しい道を究めようとして、そこに至らなかった者の事でもない。
 しかし、やがて、人は「正義」という言葉の輪郭を、どこか間違って捉えるようになったのである。


 世の中には、人々には最低限守り抜かねばならない「正義」が確実に存在している。
 その在り方への憧れを失い、ただ、「正義」という在り方を批判の対象とだけ見つめるのは、人から大切な意志をそぎ取っていく行為に過ぎない。 


 他者を傷つけない。困っている者を助ける。傷ついた人を救い出す。
 誰かの涙を拭う。人の命を守る。人々の帰るべき場所を護る。
 人々にとって、大事なものを傷つける存在に立ち向かう――。


 そうした在り方は、決して否定されるべきではなく――、そして、本来ならば、より多くの人間がそれを自ずと果たそうとすべき姿なのである。
 人が目指すべき理想と、簡単な道徳の果てに、あるべき姿。
 それが、「正義」。


 ここに、「正義」そのものと呼べる男の一人がいた。
 人々と街を守り、やがて、人にも街にも信頼を返された男。



 ――名を、大神一郎と言った。





◆ ◆ ◆ ◆ ◆


659 : 雪城ほのか&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/03/13(日) 23:06:01 jp98kDfM0





【2日目】



 セイバー――『大神一郎』は、かつてこの帝都東京の住民だった。
 尤も、それはこの世界でも、マスターが住まう世界でもなく、また別の『蒸気革命』のあった『太正時代』の帝都だ。
 つまるところ、彼のいた帝都の未来がこの聖杯戦争の行われている東京という訳ではない。

 しかし、彼は何とも言えない胸の興奮の中にあった。
 町並みは、時代の際のせいもあって、少しばかり変わり、セイバーの時代には無かったような超高層ビルが林立している。
 セイバーには、それに困惑する様子はもうあまりない。

 相変わらずの発展を遂げている帝都――それを、興味深そうに見上げるだけだった。
 そう、どこか嬉しそうな横顔も残しつつ……。

 ――セイバーは、この帝都を愛していた。
 この街に襲い来る悪や災厄から、全ての人々を守り抜く使命を、胸の内に強く感じているのが、この男だった。
 事実、『帝国華撃団・花組』の隊長であった彼は、これまで、数多の脅威からこの帝都を救っている。
 たとえば、江戸幕府の復活を目論み六破星降魔陣を完成させた『黒之巣会』、陸軍による武力統治で太正維新を引き起こそうとした『黒鬼会』、自らが作り上げた都市が変わっていくのを認めなかった大久保長安。
 そんな魔の手から帝都を守りぬき、明日の帝都を作り上げてきたのが――彼だった。
 故に、再び仮初の身体を与えられて東京に降りた時、彼にあるのは素直な喜びだけだった。


「大帝国劇場――久し振りだな」


 セイバーは、千代田区丸の内に位置する観劇場――「帝国劇場」に来ていた。
 マスターの意向で、東京駅から連れてきて貰ったのである。
 まるで黒く巨大な長方形のハコのようなその建物。縦に伸びている他のビル群と違って真横に長いが、それでも一人の人間からすれば見上げるほど大きかった。

 まさしく壮観ではあったのだが、セイバーの言う「大帝国劇場」とは大きく様相が異なっている。
 これは、百年の歳月とともにその形を変えたという訳ではないようだった。

 元はと言えば、「帝国劇場」と「大帝国劇場」は、よく似た名前の全く別の建物なのである。
 それ故、この世界の歴史においては、「大帝国劇場」などという劇場は存在しない。
 つまるところ、それが、一般的な「東京」の姿と、蒸気革命によって歴史が分岐した太正時代のある「帝都」との違いの一つだった。
 彼のマスターが、その点を補足した。


「ここは、『大帝国劇場』ではなく、『帝国劇場』よ。大神さん」


 彼のマスターは、中学生ほどの女の子――『雪城ほのか』だった。
 黒髪ロングで、太い眉。いかにもセイバーがいた時代の「大和撫子」の理想に近い容姿である。
 西洋化が進み、髪の色を茶色や金色に染める女性が多く目につく現代では、こうした天然の黒髪はどこか見る人に安心感を与える。
 この雰囲気は、現代では文学少女を思わせるが、彼女自身は根っからの理系で、科学の領域においては中学生離れした知識を誇っていた。
 セイバーのいた世界の「蒸気革命」などの話を聞かせてみれば、かなり興味津々にそれを聞き、原理や発達方法などについてメモを取ったくらいである。
 セイバーも答えられないような設問を幾つもぶつけてきた。
 聞いてみれば、将来の夢は、なんでも、「科学者」だとか。……おそらく、その夢は順調にいけば、かなり高い確率で叶いそうだ。

 セイバーは、こんな彼女の姿に、一度、同じ帝国華撃団の隊員だった科学少女の事を少し重ねた。
 しかし、あれほど狂的なマッドサイエンティスト風という訳でもないので、失礼だと思って撤回している。

 とにかく、セイバーは、そんなほのかの注釈に、やや肩を落として答えた。


「ああ。昨日言われた通りだった。やっぱり、『大帝国劇場』と『帝国劇場』は何もかも、全然違うよ。
 ……正直、少し参ったな。多少は帝劇の面影が残っているんじゃないかと思っていたんだけど」


「折角、大好きだった街に来られたんですものね。
 本当の意味で肌に合う場所がないのは、やっぱり寂しいでしょう……」


「……そうだね。確かに、少しはそういう気持ちもあるよ。
 俺にとっては、帝劇は、第二の故郷のような場所だった……。
 だが、ここはその帝劇じゃないし、俺のいた帝都じゃない」


660 : 雪城ほのか&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/03/13(日) 23:06:24 jp98kDfM0


 大帝国劇場は、セイバーにとって、只の職場であるだけではなく、帰るべき家でもあった。
 おそらく、彼の二十代から先の青春は、殆どあの劇場の中に残されていると言っても良いだろう。
 大帝国劇場でモギリとしてお客と触れ合い、やがて、あの劇場の総支配人として、彼は支配人室の椅子に座って女優たちを見守った――そんな懐かしき思い出の日々。

 その一方で、劇場の従業員や女優と共に、『帝国華撃団』として帝都の平和を保つ為の戦いも行った。
 大帝国劇場は、ただの劇場ではなく、対魔部隊の戦闘配備の地でもあったのである。そこにいた従業員や女優の殆どは、劇場関係者だけではなく、「戦士」でもあったのだ。
 やがて、大神一郎は、ここで過ごし、ここで戦い、ここで老いて、一個の英霊として、その座に就いたのである。
 尤も、偉そうに言うが、今この場にいても、老齢の記憶など殆どなく、大久保長安との戦いから少し後の事くらいまでしか、まともに覚えていないのだが。


「でも、大神さん、結構嬉しそうよ」


「……バレたかい?」


「ええ」


「……」


「何ていうか、凄く活き活きとしているもの」


「……俺は、やっぱり、たとえ別の帝都でも、こうしてそこに生きる人々の姿が見られるだけで満足なんだろう」


 セイバーは、そう言って、脇目を向いてから、少し声を落とした。
 ほのかは、そんなセイバーの視線を目で追う。


「ただ、ここで戦争が始まる……いや、もう始まっている。それがただ、不安で仕方ない。
 おそらく、俺たち英霊は、本当は再びここに来るべきではなかったんだろうな……」


 帝国劇場の付近を歩んでいる人々は、決して少なくなかった。
 都内でも東京駅にほど近いこの場所は、やはり人が多く行き交う。

 単純に劇を見に来ようとする人間だけではなく、それぞれ全く別の行き先を目指して歩み進んでいる人々がいる。
 職場に帰ろうとするサラリーマン。有名スポットを巡っている外国人の観光客。
 あてどもなく歩んでいく大学生。道に迷っている親子連れ。
 それぞれがどこを目指して進んでいるのかは、あくまで様子から見た想像でしかない。


「……」


 しかし、きっと別の場所を目指し、それぞれの人生を歩んでいるのだろう。
 そのNPCたちもまた、この東京という土地に惹かれた都民である事には違いはない。
 まるで生きた人間であるかのように歩み進んでいくそれらが、どうしようもなく守りたくなる。
 帝国華撃団だった男は、この街に住む、全ての人々を守る事こそが使命だった。


「――やっぱり、この帝都にもまた、この帝都を故郷とする人たちがいる。
 たとえ、それが本当の人間ではないとしても、それは変わらない」


 都市には、人を惹きつける力と、魔を惹きつける力とがある――そう、この帝都にも。
 そして、そんな街に住むすべての人々を守る事こそが、帝国華撃団の使命にして、英霊の座に辿りついても変わる事のない大神一郎の使命だ。
 ここが創られた帝都であり、そこにいる人間が意思のないNPCだとしても、その街があり続ける権利と、そのNPCたちが平穏に在り続ける権利とは失われない。
 あらゆる正義と、あらゆる愛を信じ、全ての人間が安心して生きられる都市の為に、彼は闘う。
 そう――帝国華撃団の隊長として。


「俺は、マスターを守り、同じ志を持つ全ての戦士と共にここで戦い抜き、そしてまた英霊として消えるだろう……。
 だが、その時まで、この帝都を守る為に――悪を切り裂き、正義を示す……!
 それが、俺たち帝国華撃団の使命だ!」


 ほのかは、少し目を丸くした。
 物腰やわらかで、どちらかといえば優柔不断そうな外見と反して、大神一郎という男は正義を秘めたる熱い男の一人だ。
 爽やかなのか、暑苦しいのか、冷静なのか、熱血漢なのか、どうも判然とし難いが、やはりこの側面が真なのだろう。
 美しい言葉を並び立てるわけでもなく、他者を信頼させようという魂胆があるわけでもなく、ただ彼は真っすぐだった。


661 : 雪城ほのか&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/03/13(日) 23:06:53 jp98kDfM0


「……大神さん」


 しかし、熱気の入ったサーヴァントを冷ますように、少しトーンの低い声でほのかは彼の名を呼んだ。
 誰にも見られてはいないが、一応、往来という事もあって、一緒にいるほのかとしては少し気恥ずかしい。

 だが、そんな恥ずかしさと同時に、ほのかの好感度は、セイバーの言葉を前に、心地良い音を立てて上がった。
 この帝都という街を守り抜く為の、誰よりも熱い覚悟は、彼女の胸を打つ。
 彼女もまた、一人の戦士であったが故だろう。

 ともかく、セイバーは、熱くなった声を少し小さくした。


「戦争は既に始まっている……。
 誰かが刃を握り、人々を恐怖に陥れようとしている。たとえ、相手に戦う意思がないとしても、関係なく……」


 それは、今朝のニュースでも明らかだった。
 誰かが、五十人もの人間を殺しつくした、あの背筋も凍るようなニュース。
 学校では、誰もがそれをあっさりと受け入れてしまっていたが、あれが本当なら世界の殺人事件史でも類を見ない大事件の筈だ。
 おそらく、それを可能とするのは、セイバーと同じ、サーヴァントと呼ばれる戦士たちだけである。


「……でも、俺は、そんな奴らから、人々と街の平和を守りたい。
 この場所に来て、俺にも、この街で再び悪と戦う覚悟が出来たよ」


「――」


「そこに都市があるなら、俺はそれがどんな都市であっても守り抜く。
 たとえ、この街が俺がいた街と地続きの未来にないとしても、帝国華撃団がないとしても。
 確かにこの街に住んでいるのが、本当の人間じゃないかもしれない。
 でも、住まう人がいれば、都市は、生き物のように光り輝くんだ――そう、この東京もそうだ」


「……そして、そこには、みんなの、守りたい日常がある」


「ああ」


 ほのかの言葉に、セイバーは頷いた。
 彼女もそう――セイバーと同じく、何かを守る為に戦ったからだ。 
 相棒たちと共に、自分の生きる世界の災厄から、自分たちの日常を守る為に――。
 只の普通の日常が壊されるのを忌避し、それを壊す物には真っ向から立ち向かった。

 その過程で、ほのかは大事な友人を作り、そして、大事な友人を失った。
 いつかまた、その失った友人と会う事を一つの目標として、ほのかは日々を歩んでいる。
 それと同じように、たとえデータ上であっても、この東京で何かを目指して歩んでいるNPCがあるのかもしれない。
 それに、ほのかのようなマスターたちもまたこの街にはいる。





「マスター――俺は、この街に、“正義”を伝えたい」





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662 : 雪城ほのか&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/03/13(日) 23:07:30 jp98kDfM0

【クラス】

セイバー


【真名】

大神一郎@サクラ大戦

【パラメーター】

筋力B 耐久B 敏捷C 魔力B 幸運B 宝具EX

【属性】

秩序・善

【クラススキル】

対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:B
 大抵の動物、乗り物を乗りこなしてしまう技能。
 幻想種(魔獣・聖獣)を乗りこなすことはできない。

【保有スキル】

霊力:B
 魔力に代わる彼の類似の能力。
 男性ながらにして高い霊力素養があり、霊子甲冑も自在に操る事ができる。

カリスマ:A+
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
 個性豊かな隊員をまとめ上げるカリスマ性を持ち、都市の信頼を勝ち取る。これは、特に女性に対して強い効力を発揮する。
 セイバーは、生前、このスキルによって、短期間で軍のほぼトップにまで上り詰め、華撃団を私物化した。

呪縛:D
 シャワーの音が聞こえると体が勝手に風呂場の方に動いてしまう保有スキル。
 魔力(霊力)、又は、本人の強い意志で辛うじて抑え込む事ができる。

【下のスキルは、戦闘中、そのターンに実行している作戦によっていずれか一つが使用可能になる】

戦闘続行:(A)
 名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
 「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。

仕切り直し:(B)
 戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。

【宝具】

『霊子甲冑』
ランク:A~D 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1~100人

 高い霊力を持つ者だけが操る事が出来る鎧のようなメカ。
 一見すると搭乗型巨大ロボットのようでもあるが、その性質上、騎乗スキルの有無に関わらず使用可能であり、セイバーもこれを手足のように自在に操る際は持っているスキル以上の実力を発揮する。
 生前のセイバーには、光武、光武改、光武二式、光武F、光武F2、神武、天武など、あらゆる機体を繰った伝説が残っている為、いずれかを選択して現界させて戦う。
 これは強力であればあるほど魔力消費が絶大になってしまうが、セイバーの実力ならば最弱の光武でも並のサーヴァントを相手に出来るだろう。
 この『霊子甲冑』を纏えば、筋力・耐久のステータスがAランクやA+ランクまで上昇し、魔族・魔物・魔獣などの怪物や巨大な機械などとも互角の戦闘を可能にする。
 しかし、一方で、どの機体を使用しても敏捷のステータスがDランクまで下降する。まさに甲冑の如き宝具である。
 セイバーの機体は、彼の特性に合わせて、いずれもシルスウス鋼製の二刀流を装備している。


663 : 雪城ほのか&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/03/13(日) 23:07:48 jp98kDfM0

『神刀滅却』
『光刀無形』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1~100人

 二剣二刀と呼ばれる二つの剣、二つの刀の内、大神一郎が譲り受けた二刀。
 これらは、本来一つ一つが宝具として機能するが、二刀流の使い手である大神一郎にとっては、対になって初めて宝具となる。
 いずれも高い霊力が込められており、それぞれ所有者の運命を狂わす加護がある。
 光刀無形は、所持者に希望と野望・野心を達成する強い力を与える伝説があり、かつてこの所有者である山崎真之介が葵叉丹として悪に堕ちた事もある。
 神刀滅却は、所持者に人を統率し正しい方向へと導く力を授ける伝説があり、元々は帝国華撃団の前司令である米田一基の所持品だったが彼が譲り受けた。
 すなわち、善と悪との二つの表裏を武器として戦う事が出来るのである。
 セイバーは前述のとおり、二刀流の使い手である為、この二刀を使って生身でも自在に戦闘する事が可能。

『狼虎滅却・震天動地』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:∞ 最大補足:∞

 帝都と巴里、二つの街を守った時に多くの人と信頼と絆を受けた大神一郎のみが使える最大級の技――それが、この宝具である。
 ここでも彼が受けた信頼の数だけ彼の技は強くなっていくが、『狼虎滅却・震天動地』は、行動・会話の選択肢を一つも間違える事なく、最良の判断を下し続けなければ発動できない。
 故に、使用はほぼ不可能だが、 仮にもし成功すれば、周囲に存在する全ての悪は成す術もなく一瞬で消滅する。
 とはいえ、特定人物との信頼と強く絆を深めた場合、それはこの宝具の縮小版である『合体技』として発現される事もある。
 合体技は、敵の肉体と精神に多大なダメージを与え、並のサーヴァントならば大きなダメージを肉体に負う事になる。

【weapon】

『神刀滅却』
『光刀無形』

【人物背景】

 太正十二年から太正十六年にかけて帝都、巴里で活躍されたとされる軍人。階級は少尉→中尉→大尉。
 海軍士官学校を主席で卒業。その後、銀座・大帝国劇場にモギリとして配属された。太正十六年に大帝国劇場の支配人となる。
 (公的な記録で残っているのはここまで)

 これらはあまりにも不自然な記録であるが、実は大帝国劇場が普通の劇場であったのは表向きの話。
 大帝国劇場は、秘密防衛組織『帝国華撃団』の拠点であり、舞台で踊る帝国歌劇団のスタアは全員、霊力を有している「花組」の戦士なのである。
 大神一郎は帝国華撃団花組の隊長として、彼女たちの信頼を勝ち取り、黒之巣会や黒鬼会と戦い、これを迎撃。
 二度の帝都防衛に成功した後は、その功績を買われて巴里に派遣され、巴里華撃団の隊長として現地でまたも首都防衛に成功している。
 これらの功績により、二十四歳にして帝国華撃団総司令にまで出世する。
 また、帝国華撃団及び巴里華撃団の十三名の女性隊員は殆ど、彼に対して恋愛感情を抱いていたとされ、他にも彼に好意を持つ女性、男性は数知れなかったと言われている。

【サーヴァントとしての願い】

 マスターと、帝都と、そこに住む人たちを守り、悪を切り裂いて正義を示す。
 そして、同じようにこの聖杯戦争を打破したい仲間を探しだし、全員で生きて戦い抜く。


664 : 雪城ほのか&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/03/13(日) 23:08:03 jp98kDfM0





【マスター】

雪城ほのか@ふたりはプリキュアMax Heart

【マスターとしての願い】

 キリヤくんとまた会いたい。

【weapon】

 不明。

【能力・技能】

 中学生レベルとしては非常に高い知識を持っており、特に科学に造詣が深い。
 また、スキーやスケートといったウインタースポーツも得意。

『光の使者・キュアホワイト』
 雪城ほのかが伝説の戦士として認められ、ミップルとの連携で変身できるプリキュア。
 人間離れした戦闘能力を有するが、キュアブラックと比べると打撃力や防御力に若干脆さがあり、トリッキーな回転やいなし技で応戦する。
 ただし、美墨なぎさと二人揃っていなければ変身できないという難点があり、セイバーの宝具を利用して再現する以外の変身方法はない。

【人物背景】

 ベローネ学院女子中等部2年(又は3年)桜組クラス委員。科学部。1990年4月4日生。血液型はB型。
 成績は学年トップであり、「薀蓄女王」と呼ばれている。
 両親は共にアートディーラーで、普段は家におらず、ほのかは祖母、飼い犬と一緒に暮らしている。幼馴染に藤P先輩こと藤村省吾がいる。
 光の園から現れたミップルとの出会いがきっかけで、美墨なぎさとともに「伝説の戦士・プリキュア」に選ばれ、闇の世界から現れたドツクゾーンと戦う事になる。
 そんな戦いの中で、全く正反対だったふたりは時に対立しながらも戦いの中で友情を築いていく。
 ほのかは戦いの中で出会ったドツクゾーンの少年・キリヤとの奇妙な交流の中でも着実に成長していった。
 やや天然ボケで、科学部では珍妙な実験をしては爆発を起こしており、ミミズを可愛がるような一面も見せる。
 参戦時期は、少なくとも「Max Heart」の最中、もしくは無印最終回からMH開始前。

【方針】

 聖杯戦争からの脱出。


665 : ◆CKro7V0jEc :2016/03/13(日) 23:08:21 jp98kDfM0
投下終了です。


666 : ◆As6lpa2ikE :2016/03/13(日) 23:16:28 mCFfZof20
投下します


667 : 滝澤政道&ライダー  ◆As6lpa2ikE :2016/03/13(日) 23:18:07 mCFfZof20
「あれ? なんだコレ?」

この俺、滝澤政道は警視庁に勤める警察官だ。
本日の職務を終え、俺は帰宅の準備を始めていた。
その際に自分のロッカーの中から見知らぬアタッシュケースを見つけたのだ。
色は光沢を放つ銀色。中身を見てみようとしたが、不思議な事に俺にはこれの開け方が分からない。
かと言って、このままロッカーの中に放って置くのも何なので、俺はこのアタッシュケースを1度自分の家に持ち帰る事にした。
落ち着ける自分の部屋でもう少し詳しく調べたら他に分かる事があるだろう。
スーツに着替えて、制服と拳銃を所定の位置にしまい、俺は部署の部屋を後にした。
帰り際に廊下で同僚とすれ違い、その際別れの挨拶を受けた。
俺もそれに言葉を返す。

「今から帰りか? 例の殺人鬼には気をつけろよ。犠牲者の中にはたしか警察官も居たからな」
「おう、気をつけるよ。ありがとな」

普段持ち歩いてる鞄を右手、見知らぬアタッシュケースを左手に俺は職場を後にする。
持つのは初めてなのに、何故かそのアタッシュケースは俺の手にしっくりきた。



「殺人鬼、か……」

日がすっかり落ち、光を放つものが電柱に付けられた薄暗い街灯だけになった路地を歩きながら、俺は先ほどの同僚との会話で上がった単語を口にする。
今現在、都内を騒がせている連続殺人鬼。その被害者は100人近くも居るそうだ。遺体が発見されていない者も居るだろう。
警視庁内にはその事件についての捜査本部が設けられたが、生憎俺はそこに属していない。こうして帰宅している今も警視庁内の会議室では捜査本部の調査員たちが会議を開いているのだろう。
いち警察官として、捜査に加わる事が出来ないのは歯痒い気分だが、しかしそんな危険な事件に関わる事がなくホッとしてしまっている自分が居るのも確かだ。

「情けねえなあ、俺……」

そう呟きながら道の角を曲がる。
途端、生々しい鉄の匂いが俺の鼻腔を刺激した。
自然と、視線が道の向こう側へと移る。
そこには全長2メートルほどの人型の化物が立っていた。全身が黒ずんでて、その上に返り血のドレスを纏っている。
化物の周りには血の水溜りが出来ていた。
化物の周りには人の死体が散乱していた。
化物の周りには――『死』が充満していた。
それはあまりにも非日常的な光景だった――が、同時に何処か見覚えのある光景でもあった。
目の前に広がる血と肉、そして『死』。
俺はこれに似た光景を見た事がある……。
それは……。
それは…………。

「『喰種』……」

人殺しにして人喰いの亜人を意味する言葉を、俺は小さな声で呟いた。
同時に、さっきまで朧げだった記憶が一気に鮮明になり、脳の中を駆け巡る。
忘れていた記憶を思い出すほど、この光景は人が死に、喰種が死ぬあの戦場に似ていた。
化物は俺の呟きに反応してこっちを振り向き、静かに、それでいて逃亡を許さない力強さを放ちながら歩き向かって来た。
目撃者の俺も殺すつもりだ。
俺は咄嗟に右手に持つ鞄を離し、左手のアタッシュケース――いや、記憶を思い出した今となっては『クインケ』と呼ぶべきだろう――のスイッチを入れる。
正しい操作が行われた銀色の箱は、一瞬のうちに赤いボウガンの様な形状へと変化した。
俺は『クインケ』を目の前の化物に向ける。当然、撃つためだ。


668 : 滝澤政道&ライダー  ◆As6lpa2ikE :2016/03/13(日) 23:18:44 mCFfZof20
しかし、そうは出来なかった。
何故なら、俺がそうする前に突如化物の背後に現れた真っ赤なスーパーカーがそれを跳ね飛ばしたからだ。
化物は空中をくるくると回り、俺の頭上を越えていく。
クルマはそこからスピードを緩めて、俺の身体の1センチ手前でようやく止まった。同時に、背後から『どしゃっ!』という落下音が聞こえた。

「は……はぁ?」

いったい何が起こったのかさっぱり分からず、俺は呆然とする。
すると、目の前のスーパーカーのドアが開き、中から赤い女が出てきた。
――『赤い』という言葉は己を形容するために生まれたのだ、と言わんばかりに赤い、全身をワインレッドのスーツに包んだ、赤髪の女である。

「はっはっはっ。危ないところだったな、お兄ちゃん。怪我はねえか?」
「……」

気安く笑いながら、彼女はそう言った。
対して、俺はあまりに激しく変わりゆく状況に混乱し、声が出ない。
それを不満に思ったのか、彼女は

「おいこらてめえ。返事しろ」

とドスの効いた声でそう言って、俺の腹筋に拳を叩きつけた。
さっきまで『お兄ちゃん』と呼んだ相手を『てめえ』と呼ぶとは、かなり気分を害されたのだろう。
俺は呻きながら、膝を崩して倒れた。
すると次は

「おいこらてめえ。勝手に倒れてんじゃねえ」

と先ほどのとほぼ同じ組み立ての台詞を言いながら、彼女はピンヒールを履いた足裏を俺の背中に押し付けた。
ぐりぐり、と。

「ぐっ! ……ってぇな! なんだよお前!?」

彼女の余りの理不尽さに混乱よりも怒りの方が勝った俺は勢いよく起き上がってそう言った。
しかし、その瞬間、俺の背後から何かが動く物音がした。
振り向くとそこでは先ほど真っ赤なスーパーカーから轢かれ、宙を舞った後地面に落下した化物が起き上がろうとしていた。

「あちゃー……霊核は破壊できなかったか。やっぱ、ブレーキを踏まずにフルアクセルで轢いときゃ良かったかなー」

そんな化物の姿を見て、そう呟く彼女(そんな事をされていたら、俺まで轢かれてたのだが)。
っていうか、霊核ってなんだ?
そんな風に未だ多少の困惑が残りながらも、俺は改めて『クインケ』を化物に向ける。
クルマで轢いてもすぐに起き上がるほどの化物だ。対『喰種』用のクインケでもない限り、それを倒す事は出来まい。
しかし、今回もまたこの試みは出来なかった。
何故なら、横から伸びた赤い女の手が俺の『クインケ』をひょいと奪い、地面に投げ捨てたからである。

「はあ!? 何するんだお前!」
「あの化物を倒すために戦おう、というお兄ちゃんの心意気は気に入った。だが、それを撃つのはやめておきな。無駄撃ちになるぜ。
どうやらその武器は普通のボウガンや拳銃とは違うらしいが、それでもあの『サーヴァント』――『バーサーカー』には傷1つつけられねえよ」
「? 『サーヴァント』? 『バーサーカー』? 」
「あー……お兄ちゃんはそういうの知らないのか。
ま、その辺の説明は面倒くせえから後でな。今あたしはとりあえず――コイツを倒す」

彼女は口元にニヒルな笑いを浮かべ、狩りをする鷹のような目で化物を見つめた。
化物は依然、こちら側に向かって来ていた。
距離が近くなり(正確には近くなって、離れて、また近くなり)、その分化物の醜悪で凶悪な風貌が詳細に目に映る。
確かに今改めて考えると、あんな『喰種』以上に人間離れした存在に『クインケ』による攻撃が効くのかは少し疑問だ……

「……ん? いやでもお前、武器持ってねえじゃねえか!?」
「あん? 武器? そんなもん持ってねえよ。あたしは武器を持つと、むしろ弱くなるんでね」
「じゃあ、いったいどうやって……『クインケ』すら効かないって言う相手を倒すってんだよ!」

俺の質問に対し、赤い女は『決まってんだろ』とでも言うように口元のニヒルな笑みをより一層深め、両手の拳を握りしめた後、次のように言った。


「ブン殴って倒すのさ」




669 : 滝澤政道&ライダー  ◆As6lpa2ikE :2016/03/13(日) 23:19:13 mCFfZof20
「あたしは『ライダー』。人類最強の請負人で、お兄ちゃんの『サーヴァント』――まあ、つまり味方さ」

宣言通り、化物を殴って倒した彼女、改めライダーはそう名乗った。
ちなみに、今俺とライダーが居るのは彼女のスーパーカーの中である。
彼女が運転席で俺が助手席という位置だ。
何故スーパーカーの中に居るのかと言うと、化物――ライダーが言うところの『バーサーカー』を倒した後、『このまま血塗れの現場に居るのはマズいだろ』と言うわけで、クルマで移動する事になったからだ。
ていうか、彼女はそのセリフを言うと同時に俺と、ついでに先ほど地面に投げ捨てた『クインケ』を助手席に無理矢理押し込んだのである。
おかげで身体のあちこちが痛い。
クルマが発進した後、すぐさま俺は彼女に今俺の居る世界はおかしいという事や、『サーヴァント』や『バーサーカー』の意味について彼女に尋ねたが、『説明は後ってさっき言っただろうが』と一蹴された。

「いや、その『後』が今じゃないのかよ!?」
「んなわけねえだろ。ジョジョの奇妙な冒険のポコみてえなこと言ってんじゃねえ。
それに、クルマの中みたいな閉塞的な空間よりも、もうちょい広い場所で話した方がお兄ちゃんも落ち着いて聞けて、理解しやすいだろ?」
「ん……たしかにそう……なのか?」

突然記憶を消されて違う世界に連れてこられ、その上『バーサーカー』や『サーヴァント』という言葉が飛び交うバトルに巻き込まれたことについてなんて、どれだけ達者な説明をどれだけ落ち着ける環境で聞いても、理解できるとは思えない気もするが……。

「なあに、そん時はぶん殴ってでも理解させてやるさ」

そんな物騒なことを言いながら彼女はクルマを走らせる。

「ん? ところで、ライダー。今何処に向かってんだ?」
「決まってんだろ。お兄ちゃんのマンションさ」

それを聞いて、俺は思わずシートに座る体勢を崩した。

「俺のマンション!?
たしかにこの世界にもそう呼べる場所はあるけど……でも、俺はまだお前にその場所を教えてないぞ!? それになんでそこに行く必要があるんだ!?」
「はっはっはっ。あたしは読心術が得意でね、今までの兄ちゃんとの会話の端々でマンションの大体の位置は特定できたさ。それに、偽物とはいえ自分の部屋が1番落ち着くだろ?
……おっ、そろそろ着くぞ」

彼女がさらっとトンデモないスキルの説明をした後にそう言うと、クルマのスピードは下がり、やがて完全に止まった。
彼女のスーパーカーが止まったのはこの世界で俺が住むマンションであった。
見覚えがあると同時に、見覚えの全くないマンション。
彼女はクルマから降りてマンション入り口へと向かって歩いて行った。俺もそれに続く。
エントランスのドアを開けるパスワード入力の際、一応命の恩人で、(おそらく)味方であるものの、かなりの危険人物な彼女を自宅に入れていいものか迷ったが、最終的には入れる事にした。決して、彼女の鋭い目つきに気圧されたわけではない。決して。

かくして、この俺滝澤政道と『1度入った建物全てを例外なく崩壊させている』という伝説を持つライダーは出会ったのであった。


670 : 滝澤政道&ライダー  ◆As6lpa2ikE :2016/03/13(日) 23:20:00 mCFfZof20
【クラス】
ライダー

【真名】
哀川潤@戯言シリーズ

【ステータス】
筋力A+ 耐久A+ 敏捷A+ 魔力E 幸運B 宝具 EX

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】

対魔力:E
無効化はせず、ダメージ数値を多少軽減する。

騎乗:D
乗り物を乗りこなすスキル。
哀川潤の場合、自身の宝具やバイクなどの乗り物をプロ顔負けの腕前で運転できる。

【保有スキル】

専科百般:EX
多方面に発揮される天性の才能。
哀川潤は万能者(ジェネラリスト)である。一般的な技術は勿論、声帯模写や読心術、鍵開けといった専門技術などでAランクの習熟度を発揮できる。

戦闘続行:B
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

直感:A
戦闘時に常に自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。
研ぎ澄まされた第六感はもはや未来予知に近い。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。


【宝具】

『緋色の疾走(スーパー・ヒーロー・カー)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-

哀川潤がライダーたる由縁の宝具。
見た目はただの真っ赤なスーパーカー『コブラ』であり神秘性は殆どないが、『人類最強の請負人に愛用されていた』という理由から宝具化した。
彼女は何処からともなくこの車を召喚することが出来る。たとえ壊れたとしても新たに召喚する事が可能。
主に移動手段として用いられるが、この宝具で人を轢き飛ばす事も当然出来る。

『我最強、最強故に理由なし』
ランク:EX 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大補足:-

『人類最強』と呼ばれるライダーの存在自体を現した宝具。
一時的に自身の全ステータスを上昇させ、『戦闘続行』にプラス補正をかける。
元々のステータスが高いライダーの場合、この宝具を発動すればステータスの一部は最早規格外――EXランクまで到達する。この状態の彼女に勝てる存在はまず居ないであろう。
しかし、その分発動中に消費する魔力は多く、発動しなくてもライダーは元からかなり強いため、この宝具を使う事は殆どない。
もし発動する機会があるとすれば、彼女の目の前に『人類最強』以上――『人類最終』レベルの存在が現れた時くらいしかないだろう。

【weapon】

素手(本人曰く、むしろ武器を持つと弱くなるらしい)

【人物背景】

職業、請負人。
数々の武勇伝を持つ、向かうところ敵なしの人類最強。
かつて3人の男たちによって『因果を崩壊させる存在』として作り上げられた人間であり、そのため人外じみた力と耐久を持つ。
赤色の髪、ワインレッドのスーツ、真っ赤なコブラ、ととにかく赤色が好き。
極上のプロモーションを持つが、目つきが異様に悪い。
ワイルドで攻撃的な性格をしているが、身内には非常に甘く、裏切られると予想できても信じる方を選んでしまうほど。

【サーヴァントとしての願い】
なし。
強いて言うなら、戦いに勝つ事を目的としている。


671 : 滝澤政道&ライダー  ◆As6lpa2ikE :2016/03/13(日) 23:20:48 mCFfZof20
【マスター】
滝澤政道@東京喰種

【能力・技能】
クインケ操術:
上司から譲り受けた『ドゥヒ』という羽赫のクインケを用いる。
神秘性を持たないため普通のサーヴァントにはダメージを与えられないが、相手が『喰種』に属す者ならば多少のダメージを与える事が出来る。

喰種捜査官:
喰種を殺す、もしくは捕らえる者――喰種捜査官に必要な様々な専門技能。

【人物背景】
アカデミーを次席で卒業した優秀な新人捜査官。
しかし、自身以上に優秀な人物から1番の座を取られ、いつも自分は2番である事をコンプレックスに思っている。
喫茶『あんていく』襲撃戦の際、喰種集団『アオギリの樹』に捕らえられて行方不明となり、2年後に半喰種となった姿で現れるのだが、それは彼にとってまだ先の話。

【マスターとしての願い】
(まだマスターとしての自覚がないため)なし

【備考】
参戦時期は『あんていく』襲撃戦の途中からです。


672 : ◆As6lpa2ikE :2016/03/13(日) 23:21:36 mCFfZof20
投下終了です


673 : ◆HQRzDweJVY :2016/03/13(日) 23:47:23 vJf8a/ws0
投下します。


674 : クラリス&バーサーカー  ◆HQRzDweJVY :2016/03/13(日) 23:48:05 vJf8a/ws0

突然、知人の様子が変わったとしたら人はどのような行動をとるだろうか。

まず殆どの人間は困惑し、戸惑うだろう。
だが、次に取る行動は人によって千差万別であるように思える。
ある人は自身に被害が及ばぬようその人を忌避し、距離を取るだろう。
一方である人は理由を聞くなりして、その人に対し行動を起こすだろう。
教会に務める初老の牧師がとった行動は後者だった。

「……シスター・クラリス、なにか悩みごとがあるのではないですか?」

深く心配の色をにじませた神父の言葉に金髪の女性は困ったように眉を寄せる。

彼女の名はクラリス。この教会に務めるシスターの一人だ。
言葉にするならば清廉潔白、清楚可憐……そんな言葉がよく似合う女性だ。
だがそんな彼女に今朝から見過ごせない変化が起こっている。
とはいえ、彼女自身の立ち振舞いに変化はない。
では何が変わったのかというと……

「飲酒が悪いこととは言わない。
 だが……その……あまりにも飲み過ぎではないのかね……?」

……そう、とにかく酒臭かったのだ。

一昨日、今まで一日も休むことのなかった執務を休んだ彼女。
そして今朝、教会にやってきた彼女から発せられた強烈なアルコール臭。
コレで心配するなという方が無理がある。

「知っての通り主も酒に溺れることを禁じておられる。
 何か悩みごとがあるなら私が相談に乗ろう。
 どこまで力になれるかは分からないが、酒に溺れるよりは力になれるはずだ」

どこまでも真摯な神父の言葉。
その言葉にクラリスは意を決したように、でも少し恥ずかしそうに口を開く。

「……ありがとうござます、神父様。
 ですが……私自身はここ数日アルコールを口にしていないのです」

神父は困惑する。
ではその全身から漂うアルコール臭は一体何なのかと。
だがクラリスは嘘偽りを口にする女性ではない。
それに……これも気になってきたことではあるのだが、
強烈なアルコール臭にも関わらず彼女自身に酔っ払ったような言動は少しも見られないのだ。
ではどういうことだろうか、と神父が口を開く前にクラリスが言葉を重ねる。

「ですが……その……数日前に突然友人がやってきまして……
 彼女がとてもお酒を嗜まれる方でしたので……」

言いにくそうに続けられる途切れ途切れの説明。
だが長い付き合いの神父はその説明で全てを理解した。
突然訪ねてきた友人がとにかく飲む人間であったと。
そしてそのアルコール臭が移ってしまったのだと。
なるほど、理屈は通っている。
だが一日二日でこれだけのアルコール臭を発するほど飲んだとなると、流石にその"彼女"とやらの体調が心配になってしまう。

「……そのご友人は今も家に?」
「ええ、今は落ち着いて寝ていると思いますけれど……」

本来なら病院などを進めるべきかもしれない。
だがそれは目の前の女性に更なる負担をかけてしまうかもしれない。
そう思い、神父は目の前の女性に判断を委ねた。
彼女は聡明だ。本当に助けが必要ならばそう行動するだろう――そう考えて。

「ではご友人にもお伝えなさい。
 『あなた方の体を神に受け入れられる、生きた、聖なる犠牲として差し出しなさい。
  これがあなた方の理性による神聖な奉仕です』と。
 それに暫くでしたらお休みをとってもらっても構いませんよ。
 その……どうしても手に負えない場合は私も力を貸しますから」
「………はい、ありがとうございます神父様」
「ええ、貴女と彼女に神の導きがあらんことを……」



  ■  ■  ■


675 : クラリス&バーサーカー  ◆HQRzDweJVY :2016/03/13(日) 23:48:26 vJf8a/ws0

「はぁ……困ってしまいました……」

自室に帰ったクラリスは深くため息を付いた。
香水などで気をつけてはみたものの、この臭いはごまかしきれるものではないらしい。
そしてその臭いを発する大元はクラリスの眼前にいた。

「ンゴォォォォォォォォ……!」

ベッドの上でいびきをかきながら眠るのは修道服の少女。
クラリスの胸辺りまでしかない小さな体躯に、不釣り合いなほど豊満な身体。
だが何よりも目を引くのはそのベールからつきだした二本の立派な角だ。

『サーヴァ……ウェッップ……ント……狂戦士(バーサーカー)…ヴォェッ……
 召喚(じょうがん)に応じ…ヴィッ……参上ぅうう……み、水ぅ……』

自身を狂戦士(バーサーカー)と名乗る修道服の女は突如として彼女の前に現れた。
自室にいきなり現れた不審者。
その時クラリスは警察か何かに連絡すべきだったのかもしれない。
だがその人ならざる耳と2つの角に彼女は戸惑ってしまった。
そして何と言っても前後不覚に陥った泥酔者そのものの言動に、
面倒見のいいクラリスはついつい親身になって世話を焼いてしまったのだ。
そして夜が明け、少しだけ酔いの覚めた彼女から事情を聞いたクラリスはさらに混乱した。

曰く、聖杯戦争というものがこの東京で起こっているらしい。
曰く、聖杯戦争とはマスターとサーヴァント、二人一組で挑む戦いらしい。
曰く、そのマスターというものに自分は選ばれてしまったらしい。
曰く、聖杯が手に入れば何でも願いが叶うらしい。

そのことを告げられたクラリスは当然の事ながら混乱した。
聖杯とは彼女にとって書物の中に出てくるモノで、何でも願いが叶う都合のいい万能機などではない。
更にはそのために互いに戦い合わせるなど……彼女の信じる神が許す行為ではない。

だが酔っぱらいの戯言……と片付けてしまうには目の前の少女は異常すぎた。
自在に姿を消せるようだし、何よりその角は地肌から生えており作り物などでは決してなかった。
それに彼女自身、どうしても理解できないことがあったのだ。

「私は……いつアイドルを辞めてしまったのでしょうか……?」

……そう、クラリスはシスター兼アイドルだったはずだ。
所属する教会の財政を助ける手段を模索している時に、プロデューサーにスカウトされ、アイドルとなったのだ。

だがこの教会は財政難になど陥っていない。
そして自分もアイドルではなく、一介のシスターとして生きてきたと記憶している。
まるでアイドルだったのが夢であるかのような不思議な感覚。
だがプロデューサーや事務所の仲間たちとの日々は夢だとするにはあまりにも鮮烈で、
夢などではないと彼女は自信を持って断言できるものだった。
だからこそ今の状況が不思議でならないのだ。

だがいつからこんなことになったのか。
思い出そうとするがどうにもはっきりしない。

「この手の痣も何か関係しているのでしょうか……」

自身の手にある奇妙な赤色の痣をじっと見つめる。
痛みもなく、いつの間にか出来たかもわからない奇妙な傷跡。
まるで噂に伝え聞く聖痕のようだが、傷というよりも幾何学的な模様のように見える。
そして不思議な事なのだが――なんだか目の前の修道服の女と"繋がっている"感じがする。

「とりあえず、起きたらもう一度話をお伺いするしかないようですね……」

そしてどうするか、決めましょう。
そう、クラリスは細い目の奥で決意を固めるのであった。

「……んん~もう飲めないにゃぁ……」

……耳に届く呑気な寝言に少しだけその決意が揺らがせながら。


676 : クラリス&バーサーカー  ◆HQRzDweJVY :2016/03/13(日) 23:49:18 vJf8a/ws0
【クラス】
 バーサーカー

【真名】
 ラムレッダ@グランブルーファンタジー

【パラメーター】
 筋力C~C+ 耐久C 敏捷D 魔力D 幸運E 宝具C

【属性】
 混沌・善

【クラススキル】
・狂化 D
 理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
 身体能力を強化するが、理性や技術・思考能力・言語機能を失う。
 Dランクのバーサーカーは酩酊状態により言語機能が単純化し、複雑な思考を長時間続けることが困難になる。

【保有スキル】
・精神混濁(酒): D
 酒によって精神が混濁している為、他の精神干渉系魔術を低確率でシャットアウトする。
 同ランクの精神汚染がない人物とは意思疎通が成立しない……わけではなくある程度の意思疎通は可能。
 だが酔っぱらいの言うことを信用してはいけない。
 本人曰く『大丈夫~酔ってないにゃ~』とのことだが、酔っぱらいは皆そう言う。

・千鳥足 C
 あっちへフラフラ、こっちへふらふら。
 てんで法則性のないその動きは達人であればあるほど惑わされる。
 相手が何らかの対人戦闘術を使用した場合、回避にプラス補正が働く。
 なお判定でファンブルが出た場合、その場で転倒する。

・魔力排出(酒):B
 後述の宝具によって増加した魔力が臨界点に達した時、強制的に放出するスキル。
 体内の魔力を流体化し、排出する――口から。
 一定時間、筋力および耐久力のランクが1つダウンするが、
 毒などのバッドステータスを受けていた場合、一定時間経過後、同時に回復することが出来る。
 つまりとても"すっきり"する。
 ただし魔力を排出すればするほど英霊としての格と女としての尊厳は下がっていく。

・頭痛持ち(酒):- ~ D
 アルコールの摂取に起因する、一時的な頭痛持ち。
 精神系スキルの成功率を著しく低下させる。
 ――つまり二日酔いである。
 なおアルコールを再び摂取すると本スキルは非発動状態に戻る。
 ――つまり迎え酒である。

【Weapon】
・酒瓶

【宝具】
・酔っぱらいは徒手にて死せず(スロッピードランク)
 ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
 そこらのチンピラを、凶暴なモンスターを、果ては星晶獣を酒瓶で殴り倒したという逸話の顕現。
 自身の手にした酒瓶をDランク相当の宝具として扱うことが出来る。
 酒瓶と判定されるのは『アルコールが入っている/入っていた容器』であり、酒樽や缶ビール等でも問題ない。
 なお手から離れた瞬間その効能は消失する。

・酒仙の修道女(ドランクシスター)
 ランク:C++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
 飲んで飲まれて飲まれて飲んで――そしてやらかす。そんな逸話が宝具となったもの。
 アルコールを摂取することで魔力に変換することが出来る。
 更に増加した魔力に応じ、筋力、耐久力にボーナスがつく。
 酔えば酔うほど強くなる酒の申し子としての宝具。
 これによって魔力を持たないマスターでも長期的な現界が可能となる。
 ……が飲み過ぎると"魔力排出(酒)"スキルが強制的に発動する。
 かといって酒を断つと"頭痛持ち"スキルが発動する。
 また酒臭くなるというデメリットが存在しており、その匂いは霊体化したとしても周囲に漏れ出すほど
 更には、魔力パスを通じてマスターに伝染するなど、最早一種の呪いとして完成されている。


677 : クラリス&バーサーカー  ◆HQRzDweJVY :2016/03/13(日) 23:49:29 vJf8a/ws0
【人物背景】
 訳あり酔いどれロリ巨乳角付き修道女。
 訳あって飲み屋でバイトをしていたが、客を酒瓶でぶん殴り、主人公たちについてくることになる。
 決して悪人ではないのだが兎にも角にも酒癖が悪いダメドラフでもある。
 なおエクストラクラス・呑兵衛(ドランカー)としての適性を持つ他、
 マスターが社会人や学生であった場合、社会的に抹殺されることからアサシンとしての適性も持つ。

【サーヴァントとしての願い】
 酒持って来いにゃぁ~
 
【運用方法】
 飲め、殴れ、吐け。



【マスター】
 クラリス@アイドルマスターシンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
 未定

【weapon】
 なし。
 強いて言うならアイドルとしての魅力か。

【人物背景】
 シスターから訳あってシスター兼アイドルになった女性。
 性格は落ち着いた常識人であり争いは好まないが、教会のため努力を続ける。
 歌うことが好きで、聖歌が得意だが、アイドルソングに関してはなかなか慣れない。
 今まで一度も目を見開いた画像がない、いわゆる糸目キャラだが四コマで目を見開いた時には
 あの諸星きらりを眼光だけでおとなしくさせるほどの眼力の持ち主だということが判明している

【方針】
 未定。とりあえずバーサーカーから詳しい話を聞く。


678 : クラリス&バーサーカー  ◆HQRzDweJVY :2016/03/13(日) 23:49:51 vJf8a/ws0
以上で投下を終了します。


679 : 逆らい難き運命の中で ◆diyGoJHtcc :2016/03/13(日) 23:56:12 Ix0no7cs0
今から投下をします


680 : 逆らい難き運命の中で ◆diyGoJHtcc :2016/03/13(日) 23:59:07 Ix0no7cs0


当たり前の日常が、異質だと感じる。
ふと、そんなことを思った。


お気に入りの番組が終わってしまったから――――違う
料理を失敗してしまったから――――これも違う
最近、物騒な事件が多いのをニュースで知ったり、学校で聞いたから――――絶対に違う

「・・・・・う~~ん・・・・・」

思いつく限りの理由を考えてみても、やっぱり疑問は消えなかった。
考えて考えて考えてみても、違和感を感じているのにその原因が正体不明で、
頭の中のもやもやが晴れずに気持ち悪い。
考え過ぎたせいかズキリッと頭に一瞬痛みが走り、思わずその部分を手で押さえた。

・・・・・駄目だ、何だか頭痛がしてきた。あともう少しで分かりそうな気がするのに。

何か気を紛らわせようとして、何となくいつも付けているペンダントと指輪が目に入る。

「あれ?そういえば・・・・・」

そういえば、私はこのペンダントをいつから手に入れていたんだっけ。
指輪だってそうだ、自分で買った覚えはない。
それなら、誰かにプレゼントとして貰ったのだろうか。
友達、それとも両親から誕生日のプレゼントとして――――――――?

「あっ」

そうだ、ああそうだ思い出した。どうして忘れていたのだろうか。
そして、違和感の正体が分かった。



――――――――私の『家』はここじゃない。


681 : ◆YmTNkZYqTk :2016/03/14(月) 00:01:18 Br/29lgw0
(投下宣言だけしておきます)


682 : 逆らい難き運命の中で ◆diyGoJHtcc :2016/03/14(月) 00:02:04 dQuZ/ZcM0





「・・・・・で、パジャマのままで家を飛び出そうとした理由がそれだというのか」

「いや、あの、その本当にすみませんでした」

「焦る気持ちは分からんでもないが、だからこそ冷静になれ」

「帰るためにと無理や無茶をして死んでしまっては本末転倒どころではないぞ」

「・・・・・」

記憶を全て思い出して混乱していたのだろう。
気付けば、杖を片手に家から飛び出そうとして白いスーツを着た男性に止められていた。
(家の中に引き摺られた後、おもいっきり「馬鹿ぁっ!!」と怒鳴られて正気に戻ったとも言うが
)

「マスターが巻き込まれている状況について説明したいが、もう遅い。聖杯戦争については明日に詳しく話すから寝るといい」

聖杯戦争とは何か、なぜ私をマスターと呼ぶのか。
アーチャーと名乗った青年の言うことが気になって仕方がなかったが、明日には学校がある。
学業を疎かにするわけにはいかず、私はその言葉を素直に受け入れた。


「はい、ではお休みなさいアーチャーさん」

「あぁ、お休み」

「あ、あの」

「?、どうした」

「私を止めてくれて、本当にありがとうございました」

「・・・・・礼などいらん、気にするな。オレはサーヴァントとしての務めを果たしただけだ」

そう言うと、まるで幻であったかのように目の前で消えてしまった。

(今、一瞬だけど驚いていたような・・・・・)

気のせいだったのだろうか


683 : ◆TA71t/cXVo :2016/03/14(月) 00:02:35 lpnwseD60
投下宣言のあった後で申し訳ございません。
時間が過ぎてしまうかもしれないので、投下予約のみさせていただきます。


684 : 逆らい難き運命の中で ◆diyGoJHtcc :2016/03/14(月) 00:03:10 dQuZ/ZcM0

【クラス】
アーチャー

【真名】
アポロガイスト@ヒーロー戦記

【ステータス】

アポロガイスト人間体
筋力:C 耐久:D 敏捷:C 魔力:C 幸運:D 宝具:A

アポロチェンジ後
筋力:B 耐久:B+ 敏捷:B 魔力:C 幸運:D 宝具:A

【属性】
秩序・悪

【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

【保有スキル】

怪人:A
アポロチェンジ!の掛け声と共に変身。姿とステータスが変化し、属性が善のサーヴァントに与えるダメージが増加する。
このスキルはランクが高ければ高いほど、英霊としての霊格が低下する。
変身前の姿で尚且つアーチャーの正体を知らない相手であれば、見つかってもサーヴァントとは気付かれない。

魔力放出:A
自身の魔力を炎として放出、攻撃以外に飛行やバリアーにも使用出来る。
絶大な能力向上効果があるが、魔力の消費が激しく燃費が悪い。
また、生命の炎として使用する場合は死んだ者を蘇らせることが可能だが、かなりの魔力を消費するため実質使用不可能である。

心眼(真):B
修行・鍛錬において養われた戦闘を有利に進めるための洞察力。
僅かな勝率が存在すればそれを生かすための機会を手繰り寄せることができる。

気配遮断:A
サーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てば、探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

勇猛:A
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。


685 : 逆らい難き運命の中で ◆diyGoJHtcc :2016/03/14(月) 00:04:07 dQuZ/ZcM0


【宝具】
『アポロマグナム』
ランク:A 種別:射撃宝具 レンジ:1 最大補足:1人
アポロショットを強化した3連装銃。
戦車や怪人を一撃で破壊出来るほどの威力で連射可能。
刃が付いている為に近接戦闘でも戦うことが出来る。

『ガイストダブルカッター』
ランク:A 種別:投擲宝具 レンジ:1 最大補足:1人
盾としても使用可能な武器。この宝具のランク以下の攻撃を無効化する。

『アーム爆弾(最後の握手を)』
ランク:A 種別:自爆宝具 レンジ:1 最大補足:1人

右腕で掴んだ相手を拘束して共に自爆する。
必ず成功するわけではなく、場合によっては失敗する。
この宝具を使用した場合、『亡霊、再び』が自動発動し、以後『アーム爆弾』を使うことは出来ない。

『亡霊、再び(ゲシュペンスト・リボーン)』
ランク:A 種別:復活宝具 レンジ:1 最大補足:1人

アーチャーが倒されるか、宝具『アーム爆弾』を使用した場合に自動発動する。
変身後の幸運を除く全ステータスを1ランク上げて復活する。
復活した場合、この宝具をもう一度使うことは出来ない。


【weapon】
上記の宝具に怪人としての体、幹部として今まで培ってきた経験。

【人物背景】
GOD(Government Of Darknessの略)機関の秘密警察第一室長。
GODの殺人マシーンと呼ばれており、役に立たないと判断したら即処刑するほど冷酷で、組織のためならば卑劣な手段も使う。
そのため、怪人達から嫌われたり恐れられている。
しかし、強敵と認めた相手には敬意を払う一面を持ち、立花藤兵衛に対しても礼儀を見せるなど紳士的な部分がある。
元々は警察官で、その経歴を買われGODに入った、青年の姿が本来の姿であるなど裏設定が存在する。
小説によると、呪博士の息子であるらしい。

ヒーロー戦記では、惑星エルピスに存在するロズウェル市を拠点とするテロリスト組織GODの幹部として登場。
光太郎達との戦いで撤退した後、はBADANとの敵対組織であるネオ・ショッカー所属の幹部として再登場する。
部下達を守るために光太郎と戦い、重要な情報と引き換えに戦闘員の命だけは助けてほしいと頼むなど
原作と違い正々堂々とした部下思いで戦闘員に慕われている。
Xライダーと決着がつけられなかったことを無念に思いながら爆死した。

【サーヴァントとしての願い】
仮面ライダーBLACK RXとの戦いは悪いものではなかったが、
良き好敵手であるXライダーと決着をつけたい。
が、それは聖杯戦争で叶える願いではない。


686 : 逆らい難き運命の中で ◆diyGoJHtcc :2016/03/14(月) 00:05:32 dQuZ/ZcM0

【マスター】
羽鳥智世@魔法使いの嫁
(作中では主にチセとカタカナ表記)

【マスターとしての願い】
優勝するのではなく、別の方法を探して帰宅する。

【weapon】
魔力の生産を抑える指輪
川底で自然に穴の空いたまじないの石のペンダント
ネヴィンの樹の杖

【能力・技能】
【夜の愛し仔(スレイ・ベガ)】
周囲の力を吸収し、それを魔力として体に蓄積するのにとても長けている存在。
妖精や精霊を惹きつけてしまうが本人がそれに気付くことはなく、見えているのは珍らしいとのこと。
魔力のコントロールが苦手で寿命が短く、チセの場合は後3年ぐらいしか生きられないと言われている。

【人物背景】
緑の目と赤毛が特徴的な15歳の日本人の少女。普通の人には見えない異質な存在を幼少の頃から視認していたために周りからは気味悪がられていた。
ある日、父と弟は何処かに行ってしまい、母はチセを殺しかけ目の前で自殺する。天涯孤独となった後は親族をたらい回しにされ虐待をうけていた。
「貴方を必要とする誰かに貴方を預けてみないか」と何者かに提案されたことで、オークションでエリアスに買われ弟子(嫁)として歓迎される。
作中において明言されてないが、洞察力と観察力が非常に鋭い。


【方針】
チセは実戦経験がほとんどないために戦闘に関してはアーチャー頼りになる。
願いに関しては、アーチャーは聖杯戦争そのものを胡散臭く思っていて、チセはそもそも誰かを殺してまで叶えたい願いは無い。
そのため2人とも聖杯を求めてはいない。


687 : 逆らい難き運命の中で ◆diyGoJHtcc :2016/03/14(月) 00:07:02 dQuZ/ZcM0
 
投下を終了します。


688 : ◆RmIe4rjRnw :2016/03/14(月) 00:07:11 kkg/WHcA0
投下予約させて頂きます


689 : ◆YmTNkZYqTk :2016/03/14(月) 00:08:00 Br/29lgw0
投下お疲れさまです。宣言順に沿って私から、短いですが投下させていただきます。


690 : ジャック・ブライト&エクストラクラス  ◆YmTNkZYqTk :2016/03/14(月) 00:09:31 Br/29lgw0



科学の光が遍く世界を照らす日は、果たして来るのだろうか?

全ての人間が迷信や恐怖や不条理から科学によって遠ざけられ、当たり前の生活を送れる日は?

あらゆる異常なる存在を解き明かし、かつて月面に立てた旗のように、この星の至るところに科学の旗が突き立つ日は?



科学者としては、いつか来る、と前向きなことを言うべきなのだろう。
しかし現実はそんな無責任な言葉を許しはしない。サンタを信じる子供に対するように、自分自身をも騙せはしない。
世の中には確かに存在するのだ――科学では理解し得ないもの。この世の理では認識し得ないものが。

『SCP』……この世界の法則から外れた異常存在のことを、財団ではそう呼ぶ。

それらは科学の光を嘲笑うように、時に残酷に、時に悪趣味に、時には面白おかしく、この世界を裏切る。
そうしたSCPを研究し、検証を繰り返してその性質を明らかにすることもまた科学だという。それもひとつの真実だろう。

科学を構成する重要なファクターのひとつに、再現性がある。
同じ条件ならば、何度繰り返しても同じ結果が出るというものだ。

そのSCPが同一条件下でまったく同じ結果をもたらすのであれば、それは科学的に検証されたと言える。間違いではない。
だが、困ったことに……他の重要なファクター、特に論理的思考というやつが、その過程にはすっぱりと欠落しているのだ。

結局のところ、不条理は未だに不条理であり、科学は未だに万能ではない。

エアチューブの中を空飛ぶ車が走るような未来予想図を描いていた人々は、きっとこんな現実を想像もしなかっただろう。

科学技術に明るい夢だけを見ていられるような、そんな純粋な子供のような目は、今や失われてしまった。

今の空の青さが、かつて人々が見上げていた青とは違うものであるように――科学への希望もまた、一度色褪せてしまったのだ。

しかし、それでも科学者たちが、科学への希望を捨て去りはしなければ。

あらゆる不条理に踏みつけにされながらも、それにいつか真理の旗を突き刺してやることを諦めなければ。

その科学の結晶は――遥かな未来において、あるいは『英霊』と呼べるものになっているのかもしれない。



                    ▼  ▼  ▼


691 : ジャック・ブライト&エクストラクラス  ◆YmTNkZYqTk :2016/03/14(月) 00:10:56 Br/29lgw0




「……みたいなモノローグから始めれば結構真面目っぽい雰囲気でスタート出来ると思うんだけど」とブライト博士は言った。




正確にはブライト博士が言ったという表現には少々語弊があり。
正しく表すならブライト博士の人格を有した人間が言った、だが、とにかく。

そのブライト博士――現在の肉体は不幸にも道端の『不死の首飾り』を拾ってしまった二十代半ばのOLだ――は、ギャラリーの反応を仰ぐ。

とはいえ自室、もっとも自室といっても今の「残機」の部屋を有難く頂戴しただけのものだが、その部屋には博士の他にもう一人しかおらず。
その一人は、小柄な体に乗った小さな頭をひねって、むつかしい顔でこう言った。

「うーん、博士の言うことはよく分かんないや」

子供である。
子供であり、しかしサーヴァントでもある。
そこまではこの『東京の聖杯戦争』においては珍しいことではないが――聖杯戦争自体が珍しいというのはさておき――もうひとつ。
この少年は、子供であり、サーヴァントであり、そしてロボットであった。

しかし彼はこの国において、もっとも有名な英霊のひとりである。
大人から子供まで、彼の名を聞いたことのない者は、この東京には一人もいないだろう。

心優しい科学の子。ジェットの噴射で空を飛び、十万馬力で悪い奴らをやっつける。

この国におけるロボットの始祖。誰もが知る科学のヒーロー。
未来への夢と希望を象徴する、科学の英雄。


英霊『鉄腕アトム』は、こと東京の聖杯戦争において、科学者が召喚するサーヴァントとしては最高のものだといえた。


もっとも、それはマスターが当たり前の科学者だったらの話で。
彼は――ブライト博士は、当たり前の科学者と呼ぶには随分と常識と社会性と羞恥心と人間性と情と慎みが欠落しているのだが。


「聖杯戦争って、もっと真面目なものだってぼく思うんだけどなあ」

「いやいや勝つためには何をやってもいいんだから、この上なく私向きだと思うね。ところでこの首飾り掛けない?」

「ウワーイ、博士ったらぼくよりも子供っぽいんだから!」



科学の光を、遍く世界へ。

そんな理想とは程遠く、不死の科学者と科学の子の聖杯戦争は、否応なしに幕を開ける。

こんなのでいいのかなぁとアトムは首を捻るが、こんなのでは済まないことを知るのはそう遠くない未来の話である。


692 : ジャック・ブライト&エクストラクラス  ◆YmTNkZYqTk :2016/03/14(月) 00:11:31 Br/29lgw0


【クラス】

ピノキオ(エクストラクラス)

【真名】

アトム@鉄腕アトム

【ステータス】

筋力A 耐久C 敏捷A 魔力D 幸運C 宝具EX

【属性】

秩序・善


【クラススキル】

人間:C
人間証明。あらゆる判定においてアトムは機械であると同時に人間としても扱われる。
人によって作られ、人を理解し、人の隣人として存在する英霊の証。


【保有スキル】

百万馬力:A+
本来の十倍の出力を発揮するスキル。対プルートウ戦に備えた強化改造の再現。
スキル発動中は筋力および攻撃力を一段階アップさせるが、魔力消費も相応に増加する。

飛行:A
両足が変形するジェットエンジンにより飛行する。更に加速する場合は両手首からの噴射も可能。
なお、飛行中でも敏捷のランクは低下しない。

千里眼(偽):B+
科学技術によって再現された視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
ランクB+では夜間視、および遮蔽物の透視も可能。

ロボット法:A
アトムは生身の人間を傷つけることが出来ない。
この「人間」には非人型を除く全マスター及びNPCが該当し、死者の映し身たるサーヴァントや使い魔・召喚獣は対象外である。



【宝具】

『科学の子(アトム)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:自身
人智の結晶、科学の極致。人々が夢と希望を託した未来像、機械の隣人たる英霊『鉄腕アトム』そのものに宿る概念宝具。
人間が生み出した科学技術の集積体であるアトムは、その出自故に文字通り科学の可能性を体現する。
いわば宝具が英霊であり、英霊が宝具。そしてこの宝具は、人間の科学の及ばない領域に対して『可能性』を生み出す。
人の世に未来への夢が、科学への希望がある限り、アトムのあらゆる攻撃は科学の埒外の存在に対して特効となる。
たとえ現在の人類が太刀打ち出来ない『異常存在』が相手だろうとも、未来は必ず希望の光を照らすだろう。


693 : ジャック・ブライト&エクストラクラス  ◆YmTNkZYqTk :2016/03/14(月) 00:12:37 Br/29lgw0

【weapon】

鉄腕アトムは「七つの威力」と総称される超機能を持つ。
七つの機能の構成は作品によって異なる(原作漫画に至っては欠番がある)が、この聖杯戦争においては以下の通り。
「1:高性能電子頭脳」「2:一千倍の聴力」「3:サーチライトの目」「4:十万馬力の原子力モーター」「超音速まで加速可能なジェットエンジン」
「6:人差し指のビーム砲(1980年版アニメではレーザーブラスト、ASTRO BOYではフィンガービームが正式名称)」「7:左腕が変形するアームキャノン」

飛び道具も有するものの、最大の武器は十万馬力のパワーと音速飛行による格闘戦。
またその加速力によって生じるソニックブームで打撃では破壊できない相手を粉砕するなどの応用も見せる。


【人物背景】
国内ロボット作品の金字塔、手塚治虫原作『鉄腕アトム』の主人公である少年ロボット。
この聖杯戦争のアトムは特定の作品が出典ではなく、漫画やアニメなどのイメージを総合したもの。

事故で死亡した息子トビオの再現を目的として、天馬博士によって開発されたロボット。
世界最高水準の性能を持ち、まるで人間のように振る舞うことが出来たが、天馬博士は本物の息子との違い、そして成長しない現実に気付き絶望。
彼はサーカス団に売り渡され、見世物としての生活を送ることとなる(余談だがこの設定はピノキオがモチーフ)。
その後、お茶の水博士によって見出され、「アトム」の名と共に新たな生活を送るようになるのである。

十万馬力の怪力とジェット噴射による飛行能力、そして心優しく純粋な性格。
日本のヒーローロボットの元祖ともいうべき存在。
しかしそのある意味ではロボットらしからぬ感受性ゆえに思い悩むことも多く、青騎士編では人間に愛想を尽かしかけるまでに追いつめられた。
また地上最大のロボット編ではプルートゥと戦うために過剰なパワーアップを行うなど、彼の存在は科学の夢であると同時に警鐘でもある。

その最期は幾通りかの伝承が語られているが、いずれにおいても少年の姿のまま、心優しい科学の子はその生涯を閉じることとなる。


【サーヴァントとしての願い】
博士を助けて、悪いことをするサーヴァントを懲らしめる。




【マスター】
ジャック・ブライト@SCP Foundation

【マスターとしての願い】
――"ジャック・ブライト、漸く憩う"

【weapon】
武装と呼べるものは無し。

【能力・技能】
・SCP-963『不死の首飾り』
 ブライト博士が首から下げている、大きなルビーと多数のダイヤモンドが散りばめられた円形の首飾り。
 これを身につけた人間の人格は消去され、代わりにブライト博士の人格が上書きされる。いわばこのSCPがブライト博士の本体。
 このSCPが健在である限り、幾度肉体が生命機能を停止しようともブライト博士は本質的な意味では死に至らない。
 なおブライト博士が他の職員を残機呼ばわりしたり遊び半分で肉体を乗っ取ったりすることは、財団から正式に禁止されている。

【人物背景】
SCP財団の研究者。父親が財団の最高評議員の一人、妹と弟はそれぞれSCP認定を受けているという特殊な家庭環境の出身。
実験中に「不死の首飾り」によって(肉体的に)死亡するも人格がSCP内に残り、以降も他の肉体を乗っ取る形で研究に没頭している。
極めて優秀な頭脳を持つ偉大な研究者なのだが、性格は極めて傍若無人で常識に囚われず、人命に関わるいたずらを喜々として行うタイプ。
なまじ自分の命に替えが利くためそのやりたい放題っぷりには歯止めが効かず、同僚や財団上層部の悩みの種となっている。

ただし、この自由奔放を絵に描いたような不死身の男の本当の望みは、『欲望カメラ』のエピソードから垣間見える。
その人間の望みを映し出すという欲望カメラで撮られたブライト博士の写真には、ただ彼の名前が彫られた質素な墓石だけが写っていた。


【方針】
やりたいこと、やったもん勝ち。


クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、SCP FoundationにおいてThe Duckman 氏が創作されたSCP-963のキャラクターを二次使用させて頂きました。


694 : ◆YmTNkZYqTk :2016/03/14(月) 00:13:28 Br/29lgw0
投下終了です。エクストラクラス「ピノキオ」は、帝都聖杯候補作「ベム&キカイダー」を参考にさせていただきました。


695 : ◆TA71t/cXVo :2016/03/14(月) 00:14:56 lpnwseD60
お疲れ様です。
順番的に言えば私なのでしょうが、よろしければ◆RmIe4rjRnwさんに順番を譲り最後に投下をしたいと思います
お先によかったらお願いいたします


696 : ◆EwmRvV7fnM :2016/03/14(月) 00:18:18 kkg/WHcA0
>>695
ありがとうございます。では投下させて頂こうかと思います。
あと、トリップはこちらに変更します。


697 : γ&セイバー ◆EwmRvV7fnM :2016/03/14(月) 00:19:22 kkg/WHcA0
 吹き抜ける夜風が気持ちいい。
 そんなことを思いながら、黒いスーツを着た男は、夜の歓楽街を悠然と歩いていた。
 道行く誰もが振り返るような妖艶な魅力こそないが、ひとたび流し目を向けられたら、世の女性の何割かは頬を紅潮させるに違いなかった。
 男はつい先程まで、行きつけのバーで同じ会社の後輩たちと飲んでいた。
 自分より若い相手と飲むのは案外と疲れるものだと、男は二人の後輩が酔い潰れたあとで実感した。
 女性を侍らせるのが好きな男と、まだまだ社会の酸いも甘いも知らず少年っぽさが抜けきらない男。
 彼らをタクシーで自宅に帰らせてから、酔いが程よく回りつつある頭で、スーツの男は別の店を探し始めたのだ。

「――めてくださいっ!」

 歓楽街の外れまで歩いてきたところで、ふと少女の声を耳にした。
 周囲を見回せば、あからさまに暗い路地裏がある。
 なにやら近頃、大規模な事件が発生したとかで、防犯がこれまで以上に大々的に叫ばれ、監視カメラの数は倍増していた。
 そんなご時世に好んで通りたがる奇特な人物など、滅多にいない道だ。 

「――っ!――!!」

 それでも、ごく稀にではあるが、こういった事例はある。
 歓楽街はおろか都会にも慣れていない少年少女が、つい気まぐれで深淵を覗いた末路を、男は良く知っていた。
 死にはしない。ただし、二度と自分からこの街を歩くことはない。
 濁して言えば焼きを入れる。有り体に言えば拷問だ。
 誰あろう男自身が、その役割を果たしていた。

「やめ――!やっ――!!」

 それにしても、今日の少女は抵抗が激しい。男は気になって暗がりを凝視した。
 目が慣れてくると、そこには年端も行かない少女の姿があった。二人のアロハシャツに囲まれて、かなり怯えている。
 男は溜息をついた。チャラついた服装で夜の街を歩くガキなら良心の呵責など微塵も起きないが、見る限り少女はそういう類ではない。
 いわゆる不慮の事故だ。
 オールバックの金髪を撫でつけながら、男は路地裏に近づいた。

「おい、そこまでにしとけ」
「っ!……どうしたんすか?」

 アロハシャツたちは、男の突然の登場に当惑した様子だった。
 それはそうだろうな、と男は内心で納得していた。
 路地裏に迷い込んだ猫は、捕まえた者が男へと引き渡す手筈になっているが、引き渡す前に好き勝手遊ぶ者も多い。
 血も涙もない無法地帯。腐った環境だが、男は昼間の通常業務で溜めたストレスをぶちまける場として不満はなかった。
 しかし、眼前で行われる行為を黙って見過ごせるほど、男自身は腐敗しきっているわけでもないらしい。

「偶然通りがかっただけだ。お勤めご苦労。後は任せな」
「そんなっ、折角の処女なのに――」

 男は聞く耳持たず、ひとりを足払いで地面に倒すと、近くにあった古びたモップの柄を拾い、喉元につき付けた。

「ここからはこっちの領分だ。四の五の言わずに帰るんだな」
「ひっ……」
「お、おい行こうぜ」

 アロハシャツたちは乱れた服装を直しながら、ほうほうの体で逃げ出した。
 後に残されたのは、少女とスーツの男。
 少女は未だに身体を震わせていた。
 どうやら恐怖の対象には、アロハシャツだけではなくスーツの男自身も当てはまるらしいことに、男は十秒近く経ってから気づいた。

「あー……その、なんだ」

 普通なら警告の言葉を発して、ただ家へと帰るよう促すべきだろうが、男は言い淀んだ。
 なにせヤクザの恫喝めいたことを目の前でしてしまったのだ。何を言おうと受け入れてくれるはずもない。
 男はなけなしの知識から、子供と話すときには相手の目線になることを思い出した。
 膝を地面につけて少女を見据えると、男と頭の高さが近づいた。
 なるほどこれなら、委縮させることはないだろう。男はそう思いながら、少女の瞳を見た。

「――っ!?」

 その瞳を、男は知っていた。見たことがあった。
 瞳の奥にある輝きを、男は――γ(ガンマ)は――誰より慕っていた。
 少女の瞳を見たことが契機となり、γはそれまでの世界が崩れていく感覚に襲われた。

「……?」

 呆然自失といった様子の男に対して、少女はなんの反応も返さない。
 当然だ。少女はγのことをこれっぽっちも知らない、本当の赤の他人なのだから。
 γも少女も、今この状況を正しく認識できていなかった。

(…………ようやくか)

 ただ一人、認識している者がいるとすれば、それはたった今マスターとして目覚めた、男のサーヴァントに他ならない。


698 : γ&セイバー ◆EwmRvV7fnM :2016/03/14(月) 00:20:26 kkg/WHcA0
【クラス】セイバー
【真名】幻騎士@家庭教師ヒットマンREBORN!
【属性】秩序・中庸

【ステータス】

筋力:B 耐久:B 敏捷:B 魔力:B 幸運:E 宝具:B

【クラススキル】

対魔力:B
 魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:E
 乗り物を乗りこなす能力。幻騎士には騎乗の逸話が存在しないため、申し訳程度のクラス別補正である。

【保有スキル】

幻術:A
 相手の脳に作用して幻覚を見せ、現実には起きていないことを起きていると思い込ませる術。
 同ランクの直感スキル等で看破される可能性がある。

霧の炎:A
 個々が持つ死ぬ気の炎の一種。藍色の炎。構築の性質を持つ。
 限定的な魔力放出とも捉えることができ、汎用性は高い。
 とりわけ幻術と併用して発動することで、その効果は増幅する。

【宝具】
『奥義・四剣(おうぎ・しけん)』
 両手と両足に装備した剣を自在に操る技。幻覚や霧の炎も合わせて、相手の集中を奪いながら戦闘するスタイル。

『大戦装備(アルマメント・ダ・グエーラ)』
 幻剣(スペットロ・スパダ)と霧の2番(ネッビア・ヌーメロ・ドゥエ)を装備した状態のこと。
 この状態時に限り「幻剣舞(ダンツァ・スペットロ・スパダ)」、
 及びその上位技「究極幻剣舞(エクストラ・ダンツァ・スペットロ・スパダ)」が使える。
 これは幻剣と幻ウミウシによる、霧の炎で出来た斬撃とミサイルを固めて相手に飛ばす技。

【weapon】
・霧のマーレリング(偽)
・残像骨(オッサ・インプレッショーネ)のヘルリング
 どちらも匣兵器を発動させるために必要なリングだが、ヘルリングは強大な力の対価に精神を喰われる。

・幻海牛(スペットロ・ヌディブランキ)
 無数のウミウシ型匣兵器。所有者の想像を映像化した幻覚を構築する。
 また、追尾機能、誘爆機能を有している。

・幻剣(スペットロ・スパダ)
 伸縮自在の大剣型匣兵器。
・霧の2番(ネッビア・ヌーメロ・ドゥエ)
 伸縮自在の鎧型匣兵器。
 この二つは、強大な力を発揮できるものの、能力のないものが扱うと危険。

【人物背景】
 ミルフィオーレファミリー6弔花の一人で、霧の守護者。
 白蘭という男に命を救われたことで、それまで所属していたファミリーを裏切る。
 四刀流の使い手であり、10年後の世界において、当代一の剣士と謳われていた。


【マスター】
 γ(ガンマ)@家庭教師ヒットマンREBORN!

【マスターとしての願い】
 ???(まだ現状を呑み込めていない)

【weapon】
 不明

【能力・技能】
 不明

【人物背景】
 幻騎士の裏切りにより壊滅に追い込まれたファミリーの、雷の守護者。
 面倒見のいい兄貴分という面と、他人を嬲り殺すことも厭わない冷徹な面を持つ。


699 : ◆EwmRvV7fnM :2016/03/14(月) 00:20:46 kkg/WHcA0
短いですが投下は以上です。


700 : ◆TA71t/cXVo :2016/03/14(月) 00:21:46 lpnwseD60
お疲れ様です。
それではこちらも、最後の投下に入らせていただきます。
ギリギリになりまして申し訳ございませんでした


701 : スティーブン・スティール&セイバー ◆TA71t/cXVo :2016/03/14(月) 00:22:13 lpnwseD60
【二日目】


競馬。
それは古来より、名うての騎手と名馬が集い、数多くの名勝負が繰り広げられてきた歴史あるスポーツである。
また、勝負に挑む騎手達は言うに及ばず……
勝負に直接関わらない観客達ですら、日々自らの欲望を、夢を叶えるべく、自らの運に全てを賭けて熱を上げている。
この偽りの東京においても、その有様は一切変わらない。
テレビやラジオをつければ、東京競馬場での白熱したレースが日々繰り広げられている。
そして多くのギャンブラー達が、全神経を集中させて視聴を行っている。

そんな日本競馬における中枢が、JRA―――日本中央競馬会だ。
東京都港区六本木に本部を置き、日夜競馬の為に様々な業務を行っている。



「聖杯戦争……そんな者に、私は巻き込まれたというのか……?」


今、その理事長を務める男―――スティーブン・スティールは、理事長室内で困惑の最中にあった。
事の発端は、一時間前に遡る。
いつもどおりに必要な業務をこなし、昼食を取ろうとして一息を着いた時だ。
たまたま着けたテレビに、そのニュースが映った。

江東区を中心にして起きた、謎の大量殺人事件。
それを目にした瞬間、どういう事かスティーブンは言葉にできない嫌な感覚を覚えた。
理由を他者には説明出来ない、直感から来るものとしか言い様がない強い悪寒。
同時に彼の心を襲ったのは、強い喪失感―――虚無感であった。
JRA理事長として過ごしてきた日々は、何不自由なく充実したものだった。
しかし……それを得た代わりに、自分は何かとても大事なことを忘れてしまったのではないだろうか。


そう、とても大切な……愛すべき者を。


702 : スティーブン・スティール&セイバー ◆TA71t/cXVo :2016/03/14(月) 00:22:38 lpnwseD60


「……そうか。
 だから、私は……今まで、彼女のことを……!」


失意のどん底にあった自らを救い上げてくれた、大切な妻―――ルーシー・スティール。
スティーブンは彼女の存在を、そして封じられていた全ての記憶を、途端に思い出したのだ。
何故今まで、こんなに大切な事を忘れていたのだろうか。
大量殺人鬼のニュースが、どうして彼女の事を思い出す切っ掛けになったのかまでは分からない。
しかし、そんな事は最早どうでもよかった。
大切なのは、何故自分がそんな目に遭っていたのかだから。


「ああ……そうだ。
 恐らくマスター以外にも、偶然に巻き込まれた参加者が大勢いる筈だ。
 何故そんな事になったのかは、俺にも分からない……」


そんな彼へと、事の次第を説明してくれたのがこの銀髪の男―――セイバーのサーヴァントであった。
セイバーはスティーブンが記憶を取り戻して間も無く、彼の側へとその姿を現した。
そして困惑する己がマスターの為に、この東京で何が起きているかをすべて説明したのだ。
即ち、この虚無に満ちた世界で行われる聖杯を巡る争い……聖杯戦争についてを。


「すまないな、マスター。
 困っているのは十分分かっているのに、助けになれなくて」
「いや……大丈夫だ、セイバー。
 事態を把握できただけでも、ありがたい」


そして、全てを把握した今……スティーブンは、これから一体どうすればいいのかと考えていた。
彼にとっての願いはただ一つ、スティール・ボール・ランの最中にある元の世界へと帰る事。
愛する妻が待つあの世界へと、帰る事だけだ。
『遺体』を求める大統領とは違う。
聖杯を欲しているわけではない……争いごとを好んでするつもりなど、何一つないのだ。


「……セイバー。
 もし君が聖杯を求めているというのならばすまないが、私は聖杯を手に入れるつもりはない。
 元の世界へと帰る事だけが……」


703 : スティーブン・スティール&セイバー ◆TA71t/cXVo :2016/03/14(月) 00:23:07 lpnwseD60
「大丈夫だ、マスター」


その意志を伝えようと、申し訳なさの混じった言葉を紡ごうとするスティーブンを、セイバーが静止させた。
大丈夫だという、たったの一言で。
その表情はとても穏やかで、そして力強いものであった。
何も心配をしなくていいと……言葉にしなくてもそれだけでスティーブンへと伝わる、はっきりした意志が感じられる程に。


「俺は満足して生を終えた。
 ま、昔は『何でも願いを叶えてやる』っていう敵の甘い言葉に乗ってしまった事もあったが……
 だが今は、もう何も望みはない。
 俺の思いの全てを託せる、『黄金の意志』を持った彼等と会うことが出来たからな……」


セイバーには、聖杯にかける願いはなかった。
充実した生を送り、未練を残すことなくこの世を去ることができたのだから。
もしも若い頃であったならば、ついつい『死んだ妹や仲間を生き返らせろ』などと、かつて痛い目を見た時の様に叫んでいたかもしれないが……
そんな彼だからこそ、スティーブンの願いを受け入れる事ができた。
人は故郷を目指すものだ……かつての自分がそうであった様に。
まして愛する者の為に帰りたいというならば、尚の事である。
その純粋な願いを保護にすることは、己が『騎士道』に反する……ならば振るおう。
この剣を、このマスターの為に。


「マスター、俺はあんたの願いを叶える為に戦おう。
 この騎士道にかけて……あんたの妻が待っている世界へ、必ず送り届ける!」
「セイバー……すまない。
 ありがとう……!」


手を差し伸べてくれたセイバーへと、スティーブンはただただ礼を言った。
異国どころではない遠く離れた見知らぬ地において、全てを賭して自らの力になると宣言してくれた誇り高き騎士に、
彼はただただ感謝の念を抱くのみであった。
だからこそ、自らも出来る限りのことを彼の為にしたい。
戦う力などは一切持たないが、幸運にも自らにはこの偽りの世界で高い財力と地位を与えられている。
それらを駆使すれば、きっとセイバーの行動を広く支援出来るはずだ。


704 : スティーブン・スティール&セイバー ◆TA71t/cXVo :2016/03/14(月) 00:23:40 lpnwseD60
「……そうだ、セイバー。
 まだ、君の本当の名前を聞いていなかったな……よければ、聞いても構わないか?」


そこまで考えて、スティーブンはまだこの相棒の名前を聞いていないことに気づいた。
聖杯戦争において、サーヴァントが持つ真名は重要なファクターだ。
そして、何より……己の『恩人』の名前だ。
彼自身が拒めば仕方がないが、そうでないのならば是非とも聞いておきたかった。



「もちろん、構わないぜ……俺の名はジャン・ピエール・ポルナレフだ。
 改めてよろしく頼むぞ、マスター」
 


セイバー―――ポルナレフは、笑顔でそれに答えたのであった。


奇しくも、似ていながらも違う世界線を歩んでいた二人の男達。

その魂が今、何の因果を巡ってかこの偽りの地で交錯したのであった。




そして……この時、彼らは知る由もなかっただろう。

スティーブンの愛すべき妻が、この東京の地に降り立っているなどと。


705 : スティーブン・スティール&セイバー ◆TA71t/cXVo :2016/03/14(月) 00:24:47 lpnwseD60




最高とも言えるサーヴァントを引き当て、円満な関係を結べたスティーブン・スティールとは真逆に



最悪とも言えるサーヴァントを引き当て、ルーシー・スティールは極めて過酷とも言える運命を歩もうとしているなどと……


706 : スティーブン・スティール&セイバー ◆TA71t/cXVo :2016/03/14(月) 00:25:06 lpnwseD60
【サーヴァント】

【クラス】
 セイバー

【真名】
 ジャン・ピエール・ポルナレフ@ジョジョの奇妙な冒険

【属性】
 中立・善

【パラメーター】
 筋力:C 耐久:C 敏捷:A 魔力:D 幸運:B 宝具:A+

【クラススキル】
対魔力:B
 魔術に対する抵抗力。
 魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:C
 乗り物を乗りこなす能力。
 セイバーは野獣ランク以外の全ての乗り物を乗りこなす事が可能である。
 ただしその生前、彼や仲間達が乗った乗り物はその過半数が何かしらの原因で大破しているという不吉な伝承があり、
 この聖杯戦争においても騎乗物を利用した場合にはそうなるのではないかという残念な可能性がある。

【保有スキル】
戦闘続行:B
 名称通り戦闘を続行する為の能力。
 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
 生前は凄まじい激闘の末に傷つく事も多々あったが、それでも諦めず前に進むことで勝利を手にしてきた。

仕切り直し:B
 戦闘から離脱する能力。
 また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。
 生前の仲間曰く『逃げる事も戦法』であり、彼自身も一度敢えて逃げる事で敵の能力等を把握し適切な攻撃方法を見出す時もあった。

心眼(真):A
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
 相手の能力を知りその欠点を見抜く事こそが勝敗を左右するスタンド使い同士の戦いを、生前には幾度となくくぐり抜けてきた。


707 : スティーブン・スティール&セイバー ◆TA71t/cXVo :2016/03/14(月) 00:25:42 lpnwseD60
【宝具】
『銀の戦車(シルバー・チャリオッツ)』
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:100人
 セイバーを象徴する宝具にして剣であり、彼の精神力を具現化させたスタンドと呼ばれる能力。
 刺突剣を携えた銀甲冑の騎士のヴィジョンを発現させ、セイバーの思うがままに操る。
 細身の外見通りに筋力値と耐久値はそれ程でもないが、突出した敏捷性の高さを誇っている。
 射程距離は10m前後であり、それ以上の距離はセイバーから離れることはできない。
 この宝具が受けたダメージはそのまま、セイバーへとフィードバックされる。
 また、本来ならばスタンドは同じスタンド使いでしか目視する事ができないのだが、宝具に昇華された事でその特性は失われている。

『銀の戦車・全甲冑開放形態(シルバー・チャリオッツ・アーマーテイクオフ)』
 ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:100人
 銀の戦車の持つ切り札にして、その敏捷性を最大限に活かす戦闘形態。
 身に纏っている甲冑を全て着脱する事で、持ち味であるスピードを爆発的に高める。
 そのレベルは目にも止まらぬどころか、『感覚に訴える残像』を相手へと生み出し、銀の戦車が数騎に分裂して見える程である。
 この宝具の開放時、セイバーの耐久値はEランクまで下がる代わりに、敏捷性はA++まで高められる。
 また、一度宝具の使用を中断し再発動させれば銀の戦車へと形態を戻すことができるが、
 いきなりこの宝具からの使用はできない為、使用には必ず銀の戦車を発現する事が条件になる。

『運命を賭した最後の一撃(ラストショット)』
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~100 最大捕捉:100人
 銀の戦車が持つ最後の奥の手。
 その剣針を射出し、飛び道具として敵へと放つ。
 驚異的な勢いで発射されたそれは必殺の威力を誇るものの、その性質上使用すれば銀の戦車は剣を失う事になる。
 失われた剣針を再生させるには、銀の戦車の発動を中断させた上で魔力補充を行えば可能である。
 敵の意表を突くという意味でも効果的な一撃ではあるが、デメリットも大きい為に使いどころが限定される。

【weapon】
 宝具『銀の戦車』がそのまま武器となる。


708 : スティーブン・スティール&セイバー ◆TA71t/cXVo :2016/03/14(月) 00:25:59 lpnwseD60
【人物背景】
 騎士道に生きるフランス生まれのスタンド使い。
 幼い頃より才能としてのスタンド能力を持っており、それを使いこなすべく長き鍛錬を培ってきた。
 大切な妹のシェリーがいたが、ある日に彼女は両手が右手というスタンド使いの手に掛かり命を落としてしまう。
 ポルナレフはその無念を晴らすべく仇を探す旅に出たのだが、その最中に吸血鬼DIOと出会う。
 そこで彼に心の隙間を突かれ、肉の芽によって忠実な下僕へと洗脳されてしまった。
 それからはDIOの命令に従い動いていたのだが、その最中にDIOを打ち倒すべく旅を続けていたスタンド使い達―――ジョースター一行と出会う。
 彼はDIOからの指令でジョースター一行を倒すべく戦いを挑んだが、激闘の末に敗北。
 自らの騎士道に則り命を絶とうとするも、肉の芽の存在を見抜いた一行に芽の除去を行われ、正気を取り戻す。
 それからは一行の旅へと同行するようになり、その旅路の中で遂に妹の仇であるJ・ガイルを見つける。
 一度はそのスタンド能力に翻弄され、自らの至らなさ故に大切な仲間の一人を倒されてしまうも、その魂を受け継ぎ無事に仇を討った。
 そして遂にDIOの元へと辿り着き、決して小さくはない犠牲を払いながらもその討伐を仲間達と共に果たす。
 その後は故郷であるフランスへと戻るが、故郷に流通をし始めていた麻薬ルートの存在を知り、調査を開始する。
 しかし、その麻薬を扱っていたギャングはポルナレフの想像を超えて大きな組織力を持ち、
 彼はボスであるディアボロとの戦いに敗れ、どうにか生き延びることができるも再起不能の身となってしまった。
 だがそれからも諦めず、自らの意志を託せる・ディアボロを打ち倒せる者を探し続け、
 その最中に同じ目的を持つ組織の離反者―――ジョルノ・ジョバーナ達を見つける。
 ポルナレフは隠居生活の中で、ディアボロを打ち倒せる希望を秘めた『スタンド使いを生み出す矢』の本当の力に気づき、
 それを彼等に託すことを決意する。
 その後、自身の存在に気づいてしまったディアボロに追い詰められ命を落とすも、ギリギリのところで矢の力『レクイエム』を発生させる。
 結果として彼は、身近にいたスタンド使いの亀へとその魂を宿すことになり、生き延びる事ができた。
 そしてジョルノの手によってディアボロが倒された後も、亀に宿る幽霊としてこの世に留まり、彼と共に組織の再生へと貢献した。
 若き頃は、明るく責任感は強いもののどこか軽い面の見られる男であったが、
 年月を経て成長した今の彼にはその時の面影は余りなく、誇りある騎士道然とした性格をしている……
 ただし、もしかすると何かしらの拍子で昔の面影を垣間見せるかもしれないが。

【サーヴァントとしての願い】
 騎士道にかけて、マスターを故郷へと帰す。


709 : スティーブン・スティール&セイバー ◆TA71t/cXVo :2016/03/14(月) 00:26:13 lpnwseD60
【マスター】
スティーブン・スティール@ジョジョの奇妙な冒険

【マスターとしての願い】
 愛する妻が待つ世界へと帰りたい。
 聖杯は欲していない。

【能力・技能】
 秀でた力を持たない常人。
 ただし、プロモーターとして優れた手腕を持っている他、様々な知識が豊富である。
 競馬に関しての知識は特に優れている。

【人物背景】
 アメリカ大陸を横断する巨大レース『スティール・ボール・ラン』の主催者。
 ニューヨーク生まれのアメリカ人であり、身長190cm以上の長身。
 若い頃は騎兵隊に入っていたが、除隊後は多数のプロデュース業を営んでいた。
 自身のプロデュース業に失敗し途方に暮れていたところ、後の妻となるルーシーの言葉をヒントに
 大陸横断レース『スティール・ボール・ラン』を思いつき、支援者の力を得てレースを開催する。
 その後彼は、彼女が少年時代に恋をし馬車の事故で亡くなった少女に似ていた事から求婚を申し入れ結婚した。
 そして遂に念願のレース開催を迎えたのだが、その最中に彼はレース場の事故では説明がつかない異様な事件が相次いでいることに気づく。
 やがてそれが、アメリカ大統領ヴァレンタインの陰謀であることを知り、レース自体が知らぬ間に
 彼の目的である『聖人の遺体』を探す事に利用されている事実を知ってしまう。
 その後は、この事態に対してどう動くべきかと考えていたのだが、同じく行動を起こしていた妻ルーシーの抑止のために、
 大統領の手のものにより拉致されてしまう。
 この聖杯戦争においては、まさにその最中に東京へと招かれた。

【方針】
 セイバーと共に、元の世界へと戻る手段を探す。
 自分には戦う術がないが、財力はあるのでそれで出来る限りのバックアップをする。


710 : ◆TA71t/cXVo :2016/03/14(月) 00:27:39 lpnwseD60
以上で投下終了となります。
ルーシーからはじまった登場話をスティーブンで締めたいと思い、最後の投下をさせていただきました。
了承をいただきまして、ありがとうございました。
では、東京虚無聖杯戦争の開始まで楽しみに待たせていただきます。


711 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/14(月) 00:29:23 5Zbcw2AE0
皆さま投下お疲れさまでした。これにて候補作を締め切らせていただきます。


712 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/14(月) 00:37:02 5Zbcw2AE0
改めて、こんばんは。企画者の>>1です。

『Fate/Reverse―東京虚無聖杯戦争―』に候補作を投下して下さった。皆さま方。
本当にありがとうございました。
当初はこれほど投下されるとは思っておらず。嬉しい予想外な結果となっております。
皆さまの候補作からこれより本選参加する主従を選ばせていただきます。
当初の採用数を多く上回ったり、下回ったりするかもしれないと事前に報告させていただきます。
OP完成の目処が立ち次第、報告させていただきます。


713 : ◆7u0X2tPX0. :2016/03/15(火) 19:48:12 5OGgkRu20
すみません。投下しました拙作「アルフォンス・エルリック&セイバー」にて一ヶ所ミスがありましたのでwikiにて修正させていただきました。
修正しました箇所以外は手をつけておりませんのでご了承願います。


714 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/15(火) 23:30:47 K.eZy9ns0
皆さま、こんばんはです。まずは感想を投下させていただきます。

白川竜也&バーサーカー
すぐに聖杯の魅力に取りつかれず、聖杯の使い道はまだ考慮しているというのは、聖杯そのものに疑念を抱いている
訳ではなく。聖杯戦争を通して、それが終えてから考えている辺り白竜らしさがにじみ出ているのかもしれません。
バーサーカーは戦闘狂というだけあって、既にこの聖杯戦争にいる戦闘狂と出くわせば戦闘になるでしょうね……
投下ありがとうございました。

キング博士&アーチャー
リンゴという共通点を持った主従とは面白いですね。そういえばアタランテもリンゴのスキルがあったらしいですが
今回の聖杯戦争おいて、どのような使い方をするのか楽しみだったりします。ですがキング博士の体質のせいもあって
他の主従に存在がバレやすいのが少々問題かもしれません。上手く立ちまわって欲しいところです。
投下ありがとうございました。

佐倉杏子&ライダー
杏子にヤンキー聖女とは何とも妙な因縁がありますね。お互い協力しあって欲しいものですが、杏子の抱える問題
が一筋縄にいくものではないので、聖杯戦争の中でそれを解決していけばいいですね。何より、ライダーはこの
東京の問題を指摘している良識人の為、それらをまとめて欲しいくらいです。
投下ありがとうございました。

エクスカリバー&セイバー・リリィ
なんなんだこのウザいマスターは(褒め言葉)セイバー(リリィ)は果たしてマスターのエクスカリバーから何か
を得る事ができ……ないですよね。本当にどうすればいいのか分かりません。ただ、エクスカリバーという武器と
してセイバーに何かアドバイスをすることが……あるのでしょうか。不安しか感じません……
投下ありがとうございました。

エミヤ&アーチャー
アーチャーがアーチャーを召喚した……!? というのはややこしいですね。何であれ、サーヴァントとしての
エミヤがマスターとして存在するという異常は何故起こったのでしょうか。それも今回の聖杯戦争の謎になるのでは
と考えると面白いですね。アーチャーのアーラシュは、宝具がいつ発動するのか冷や冷やしてしまいますが……
投下ありがとうございました。

佐藤和真&トレーナー
ポケモンバトルを聖杯戦争で再現するとは面白いですが、放浪するあの殺人鬼などの勝負はどのようになるのでしょう。
地味に所持金の移動などがあるのですが、そういえば今回の聖杯戦争では交通手段でお金を使用することもあることですし
何気お金は重要なのかもしれません。彼ら独自の聖杯戦争を繰り広げて欲しいものです。
投下ありがとうございました。

牙琉霧人&アサシン
弁護士という立場を利用し情報を集めるのは、彼のような職業につくマスターの特権のようなものですが、霧人に関して
はそれらを巧みに扱うのに長けているでしょうし、厄介です。そんな霧人に対して不穏を感じているアサシンが
彼に対して、何らかの影響を与えれればいいのですが。果たして聖杯戦争という状況で叶うものでしょうか。
投下ありがとうございました。

マルモ&バーサーカー
バーサーカーの想いに対してマルモの優しさがよりいっそう引き立つものです。マルモは異世界に迷い込んでしまった
だけではなく、孤立もしていので、バーサーカーがマルモの支えになって欲しいですね。聖杯戦争という非常な現実
に対して優しき彼らがどう生き残っていくのか、どのような地獄を見るハメになってしまうのでしょうか。
投下ありがとうございました。


715 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/15(火) 23:31:09 K.eZy9ns0
春日野椿&アーチャー
悲惨な過去はむしろ思い出さない方がいいのにと、マスターの記憶を取り戻す過程で感じる事は多いです。とくに椿に
関して、あまりにもつらい過去である為、平凡な生活を送っていた方がよっぽどマシに思えます。そんな彼女をサポー
トして欲しいアーチャーですが、考えが読めない。果たして、アーチャーは椿に救いを差し伸べてくれるのでしょうか?
投下ありがとうございました。

《宇宙の支配者 パイロン》
成程。共に宇宙からやってきたイレギュラー同士、リンクジョーカーとの共通点のあるサーヴァント……いえ、この場合は
まさにイレギュラーと呼ぶべきでしょうか。あの戦闘狂と同じように闘争を楽しむだけのパイロンをリンクジョーカー
たちはどう受け止めるのでしょうか? 尤も、彼らには闘争心というものをまだ理解できないはずですが……
投下ありがとうございました。

雪城ほのか&セイバー
正義が失われつつある東京に対し、正義を与える――まさしく正義の味方というのに相応しい存在です。
対するほのかなんですが、私的にもうプリキュアが懐かしく感じてしまって……彼女は王道の中の光。
セイバーと共にプリキュアとして聖杯戦争に挑むのには熱い感情を覚えてなりません。
投下ありがとうございました。

滝澤政道&ライダー
この赤い人は相変わらずだなぁと思う一方で、そんな赤いライダーに圧倒的な差を感じてしまいそうなマスター。
彼らの雰囲気はウェイバーとライダーを彷彿させるのですが、マスターの彼の末路を知ってしまうと……果たして
聖杯戦争でどうなっていくのか期待と不安の混ざり合った複雑な思いを抱いてしまいます。
投下ありがとうございました。

クラリス&バーサーカー
狂っているというよりかは泥酔しちゃってるというか、もうこの時点で不安しか感じません。この後、ちゃんと
聖杯戦争についてクラリスは聞きだすことが出来るのでしょうか? 何よりシスターでアイドルだったクラリス
が戦争に放りだされた時点で、もう絶望的な状況です。彼らに救いの手はあるのでしょうか。
投下ありがとうございました。

羽鳥智世&アーチャー
やはり能力があっても戦いのなんたるかを理解していないとやっていけないところがあります。アーチャーに関しては
その点、マスターを支えてくれるうえ。聖杯戦争に疑念を抱いているなど、方針としては間違っていないでしょう。
問題は、それをいかに実現させるか。マスターの羽鳥がいかに戦争を切り抜けられるかが鍵ですね。
投下ありがとうございました。

ジャック・ブライト&エクストラクラス
博士という存在、職業を何よりも理解しているピノキオ――アトムですが、きっとブライトの抱く願望について彼が
理解するのは少しばかり難しいのかもしれません。しかし、アトムだけにしか分からないこともあるでしょうし。
子供だからこそ、お騒がせなブライト博士を共感してくれるかも分かりません。
投下ありがとうございました。

γ&セイバー
思わぬ因縁の主従ですね。γにとっても、セイバーにとっても、お互い複雑な心情がぶつかり合いそうですが、今回
の聖杯戦争においてそれを解消して欲しいところもあります。ただ、このままではγは聖杯戦争を深く把握すること
ができません。セイバーはどうするのか? γは他の主従と巡り会えるのか? 色々期待ができますね。
投下ありがとうございました。

スティーブン・スティール&セイバー
思えば、私がルーシーをマスターとして選んだのは『運命』だったのかもしれません。もしかしたらルーシーは
マスターにすることはなかった世界もあったでしょう。だからこそ、最後の主従のマスターとして、彼が投下された
のには。嗚呼、これでもう候補作が来ないし、この中から地獄に放りこむ主従を選出するのだと胸の中で思いました。
投下ありがとうございました。


716 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/15(火) 23:36:30 K.eZy9ns0
改めまして、企画者の>>1です。大変長らくお待たせしました。
02/01から発足された本亜種聖杯戦争企画『Fate/Reverse ―東京虚無聖杯戦争―』の開幕が近付いてまいりました。

オープニングは明日(3/16)の23時~24時(0時)の間に投下します。

皆様から投下していただいた多くの公募から15騎を選出し、
オープニングに出演した8組を含め、計23組の主従による聖杯戦争本選開始を
どうぞ見守って下さい。


717 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:00:27 8j3sZs.60
オープニング投下します。


718 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:00:55 8j3sZs.60
アイテム番号:SCP-■■■

オブジェクトクラス:Euclid


特別収容プロトコル: [編集済み]


概要:SCP-■■■は[削除済み]のように見える器です。器(SCP-■■■-1)は『聖杯戦争』という現象によって
   作成された聖遺物とされています。
   SCP-■■■-1を構成するのは一般的な[削除済み]であり、特筆すべき点はありません。
   記事中にある『聖杯戦争』についての概要は付録SCP-■■■:東京虚無聖杯戦争を参照して下さい。






719 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:01:55 8j3sZs.60


安藤は明かりも点けず、リビングでテレビを眺めていた。
相変わらず例の殺人鬼のニュース・特集、あることないこと人々が語りあう。
近隣住人や地元の人間のインタビュー。
どれもこれも参考にはならない。

殺人鬼は禍々しい刺青のある男。
彼を捉えた防犯カメラの映像が流れながら、アナウンサーがベラベラと語っていた。
それを視聴したところで何か変わる訳でもない。
対策も救済も、逃れる術も得られないのに。……それでも見ずにはいられなかった。

聖杯戦争?
サーヴァント?

今でも夢ではないかと安藤は思う。
だが、確かに自分の傍にいるのだ。
安藤のサーヴァント・アサシンが、ハッキリと。
そして、彼から聞かされた通りならば、アサシンは――テレビで報道されている殺人鬼は―――

「もし……」

安藤は漸く重い口を開いた。
実際、自分の声なのに久方ぶりに聞いたような気がするほど沈黙を守っていた。
何とか安藤は口を動かす。
強引に喋るなんて産まれて初めてかもしれない。

「……アサシンが俺の知っている……俺が想像している事をしたのなら、本当に赦されないと思う」

その結果がこれだ。

あの刺青の男は、全ての人間を恨むように殺戮を繰り返している。
こうしている間にも一人、二人。また殺されているのだろう。
切っ掛けは―――安藤が知る通りだ。安藤のサーヴァントは大罪を背負っている。

アサシンは機械的な声色で言う。

『マスターは巻き込みません。それでも私は彼に謝罪をしたいのです』

「……謝って、それでどうにかなるのか?」

我ながら厳しい指摘をしたと安藤は感じた。しかし、もう遅い。
だが、事実だ。
アサシンの謝罪で完結する物語ならば、こうも酷い惨劇などありはしないはず。
一体どれほどの所業を与えられれば、あのような有様になるのだろう。想像もしたくない。

『解決はしないでしょう。マスターの仰る通りです』

アサシンはあっさりと認めた。だが、彼は続ける。

『私には幾らでも機会がありました。私が望めばもしかしたら……いえ、望んでも叶うかは分かりません。
 ですが、そうすることは出来た。私は彼と向き合うことを恐れていたのです』

何度も、何遍も、巡りあうことを恐れ、避けてきた。
それでも聖杯戦争で邂逅を果たさざる負えなくなったのは、むしろ『運命』なのだろう。
再び訪れるかも分からない、唯一の機会。
アサシンは、まさにソレだと確信していたのだ。

とんだ『運命』だ。
一体、何百、何千前から続いた馬鹿げた喧嘩なのだろう。
そんなものに巻き込まれようとする安藤は、まさしく悲劇の役と表するべきだ。

けれど―――


「もう巻き込まれたようなもんだ」


『東京』にいる以上、聖杯戦争の舞台に上がってしまった以上、全てからは逃れられない。
部屋の隅で縮こまって、ガタガタ震えて命乞いする程度なら。
対決するべきだ。

サーヴァントとマスターを殺さなければ生き残れない?

だからって何も考えず、殺せと?

駄目だ。
考えろ。

考えろ、マクガイバー。


『何故、マスターは恐れを抱かないのですか』

「怖いに決まってる」

『何故、私に協力してくれるのですか』

「何故ってそんなの―――」


俺も『兄』だから、『弟』に謝りたいって気持ちは分からなくもないんだ。


液晶に写る最悪の『弟』がいる。
あの悪魔のような狂戦士。
サーヴァントに腹話術は通用するのだろうか?
分からない。けど――もし、通用するならば、あの殺人鬼に何て言わせてやろうか?

それを想像した安藤は僅かにほくそ笑む。


720 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:02:49 8j3sZs.60



「あーーーーーーーーーーー!!!!」



突然の絶叫。
それは安藤の声ではなく、帰宅した彼の弟――潤也のものであった。
リビングの明かりをつけながら、潤也はガミガミと兄に怒る。

「こんな真っ暗闇の中テレビ見てるとか、絶対目悪くなるだろ!
 しかも俺より先に帰ったのに、夕飯の用意とか全然してないよ! この人!!」

ぐうの音も出ない安藤に対し、弟はニカッと笑う。

「そう思ったからコンビニで買ってきた! 腹は減ってるだろ? 兄貴」

「……ああ」

いつも通り。
本当の意味でいつものように安藤は潤也と食事を取る。
たまにはコンビニ弁当も良いものだ。
無論、毎日食べていたら怠けていると感じるが『たまに』ならば格別問題は感じない。
今日みたいな料理に手がつけられない場合には、非常にありがたいものだった。

安藤は考える。
明日から――どうする?
あの最悪の『弟』からは、もはや逃げられないのだ。対決するしかない。
けど……今、目の前にいる『弟』は? 潤也は――
もし、自分は何か言えば変わるのだろうか……

「潤也。明日……学校のことだけど」

「もしかして、サボる気か?」

「い、いや。そうじゃなくって」

そうではあるのだが……何と言えばいいのだろうか。幾らなんでも不自然なことなのに。
――と、安藤が思い詰めている。
潤也は顔をしかめていたが、察したらしく話を続けた。

「確かに最近、治安悪いもんな。学校も休校にするのが普通だって」

「え」

安藤は思わず顔を上げる。
そこにはいつもの弟がいた。安藤の知る『潤也』がいたのである。
潤也は呑気に唸ってから、パッと表情を変えた。

「じゃあ、俺も一緒に学校サボる!」

「はぁ!?」

「どっか遊びに行こうぜ! たまには兄弟水入らずでさ!!」

「だから――サボるつもりは……」

アレ……? 何か変だ。

安藤は違和感を覚える。否、これが潤也だ。潤也なのに間違いは無いのである。
なのに――……
さっきの『潤也』はなんだったのだろうか? 流されているだけの住人たちと同じだった『潤也』は。
違う。
自分の思いこみだったんだ。潤也は――変わってない。

「そう……だな。たまには悪くない」

「だろ?」

二人の兄弟は普段通りに笑い合う。
少なくとも安藤は気付かなかった。目の前にいる弟は、紛れもない『潤也』本人であると。





721 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:03:36 8j3sZs.60


『明日はあの刺青のバーサーカーを探すのか? しかも――あんたがマスターと疑ってる相手と一緒に』

霊体化しているライダー・ジャイロが皿洗いしている潤也に問う。
潤也の兄は、サボるにしても学校の宿題だけは終わらせておくと言って自室に戻ったところだ。
ジャイロが見る限り、どこか不穏を感じるその『兄』は、やはり疑わしい存在である。
今晩は、最悪サーヴァントの襲撃を警戒した方がいい。
少なくともそのような判断をジャイロは下していた。

何しろ『兄』の行動方針も明確ではないのだ。
敵になる可能性も否めない。
潤也は念話で返事をした。

『きっと兄貴は――バーサーカーと対決するつもりだ』

『あーテレビ見てたもんな。だが、相手が相手だ。
 自分のサーヴァントによっぽどの自信がなきゃ、やろうって気すらないだろ』

『兄貴はそうなんだよ』

もはや兄弟の勘に近い感覚で潤也は確認していた。
犬養と対決しようとしたように、刺青のバーサーカーとも対決しようとする。
ちっぽけな能力、どうしようもないサーヴァントを召喚したとしても。
流されたくはない。ただ生きているだけ、そんなのは嫌だ。
だから―――対決する。
自分の兄はそういう人だった。潤也だからこそ知っている。

ジャイロからある話を聞いた潤也。
彼はかつて、平行世界を行き来する能力を持つ相手に敗北した英霊だった。
平行世界。パラレルワールド。
基本世界の隣にある別世界。

つまり――……あの『兄』も潤也の世界とは違う世界から連れて来られた存在なのだろう、と。
そういう仮説だ。
十分、非現実的な世界なのだ。平行世界なんて単語にすら馴染んてしまう。
ある意味、『兄』であるのは変わりない。
しかし――潤也の世界の『兄』ではなかった。
結局、潤也の世界の『兄』は聖杯によって取り戻す他ない。

『だったら、俺たちもあのバーサーカーを倒す。兄貴が奴を追い詰める事ができたら、その隙くらい狙えるはずだ』

利用する。――『兄』を。
きっと、向こうは弟がそのような非業に手をかけることすら考慮していない。
だからこそ、やる。

『……わかった、ジュンヤ。だが、ひとつだけ確認しておくことがある。
 「利用する」つもりか? それとも「殺す」つもりか?』

『……………』

『ハッキリさせようぜ。「利用する」だけと「殺す」前提は大きく違う』

ジャイロは、過酷なレースを共に乗り越えた親友の持つ『漆黒の意思』を垣間見た。
人殺しの目。
人間性を捨てられる者。
皮肉なことに、マスターである潤也にもその意思を感じた。

潤也は酷い間を作ってから答える。

『「利用する」だけ』

『………』

『偽物だとか、本物だとか、そんなの関係ない。俺が兄貴を殺せる訳がないよ』

少なくとも、今の潤也はそう結論した。
果たして、現実はどうなるか誰も知らない。





722 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:04:24 8j3sZs.60

安藤は文学エッセイ集を眺めながら、シャーペンを動かし続ける。
果たして偽りの世界の宿題なんて意味があるのか分からないが、一応やっていくだけやるのだ。
無意味であっても、何となく生きている感じがするから………

「ただ、漠然と生きてるみたいじゃないか……」

そう考えついた瞬間。
安藤は文字を書く作業を完全に止めてしまった。
今、自分が考えるべきは――刺青のバーサーカーと、どう対決するかだった。
安藤はふとアサシンがいることを思い出した。

「潤也はいつもああいう感じなんだ。騒がしいかもしれないけど、俺はそれが良いと思う」

『あのように普通で過ごせる事は一種の幸福です』

「……アサシンはそういう生活がしたいと、願っている?」

『マスターが一番存じているでしょう。私は願える立場の者ではないと』

確かにそうだった。
安藤が納得した矢先、疑問が湧きあがる。

「……だったら。どうしてアサシンを召喚できたんだ……?」

聖杯戦争。
安藤が思い浮かぶ聖杯とは――まさしく聖書に登場する、所謂『聖遺物』と呼ばれるもの。
もし、その『聖杯』を巡る戦争ならば安藤が召喚したというアサシンの存在は、あってはならない。
居る事すら大罪に相応しいだろう。
対して――刺青のバーサーカーの方が召喚されるに相応しい皮肉だ。

『縁でしょうか』

「縁?」

『あるいは――彼がここに呼ばれたから……私にもはっきりとした答えはありません』

時期的には、そうだ。
先に刺青のバーサーカーが召喚され、アサシンがそれに続いた形になる。
しかし――本当にそうなのか……?

縁。
運命。
必然だとか偶然なんて。


けど……納得がいかない。あの『弟』を呼んだのは、一体どんな奴なんだ……!?


考えるが、一方的にまとまる気配はなかった。
先ほど開いていたエッセイ集を閉じようと手にした安藤は、あるページに目が奪われる。
その一文に心が魅かれ、それから目で追っていくと、全身に鳥肌がたった。
何故だろう。
安藤が不思議に感じる。

理由は分かった。
その――ある村について書かれたエッセイ。
事柄全てが、まるで今、安藤のいる『東京』を示しているかのようだった。
始まりはこうである。





「『村は死によって包囲されている』―――」









      Fate/Reverse ―東京虚無聖杯戦争―   【2日目 夜】





723 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:05:56 8j3sZs.60


來野巽は、この状況に戸惑いと実感のなさと――焦りを抱いていた。
一晩にして100人の人間が殺害された。それが今朝のニュース。

速報と共に死者の数は増えていく一方で、もはや東京都民全てを皆殺ししなければ止まらないのか。
刺青の男は確実に骸を生み出していった。
紛れもなくサーヴァントであろう。暴れまわるだけの行動方針から、バーサーカーのはず。
バーサーカー。狂戦士。話が通じる相手ではない。

しかし、一つ手段がある。
それはバーサーカーのマスターとの交渉。
あの――刺青のバーサーカーはマスターの命令を無視しているのではなく
マスターがバーサーカーを認知していない可能性が高い。
さらに加えれば、聖杯戦争すら把握していない場合も十分予想できた。

つまり、刺青のバーサーカーのマスターを捜索する。
それが巽の決定した方針の一つ。

とはいえ、やはり東京都内で一人の人間を捜索するのも不可能に近い。
最終的に彼は外出することを選んだ。
動かなければ何も始まらない、その言葉通りである。
取り合えず巽は世田谷区から移動をし、墨田区付近の調査を始めた。
理由はとくにない。
しいて挙げるなら、現代を象徴する電波塔……それに魅かれたのかもしれない。

一刻も早く止めないと。
無意識に巽の中では焦りが生じていた。
きっと、巻き込まれてしまった刺青のバーサーカーのマスターは混乱しているだろう。
そのマスターの手助けをしたい。巽は幾度もそれを想像し続けている。

カシャリ。

と、効果音が耳に入ってきた。
東京の新たなシンボル・東京スカイツリーを横目に、一人の少女がカメラのシャッターを切っていた。
滑らかなブロンドの髪、そしてサファイヤのような美しい蒼の瞳。
顔立ちからして外国人だと分かる。
観光で訪れたのだろうか? にしては、こんな時間に。
しかも殺人鬼が徘徊する町に一人いるのは浮き上がっていた。

もしかして……マスター?

確証がまるでなかったので、巽はどう切り出すべきか悩む。
マスターだったらこれはチャンスだ。うまく話を持ちかけて、聖杯戦争を阻止する意思を見せて……
イメージだけは一人前で、実行できるかは無謀だった。
全て都合が良すぎる話なのだ。

そうこうしている内に、少女は巽に気づいてしまう。
巽は慌てて何とか話をしようと、少女のカメラに注目した。

「えっと……そのカメラ、珍しいなって」

確かに、少女のカメラはポラロイドカメラと呼ばれるもので、随分と年代物のように見受けられる。
マニアによっては貴重だ、なんて評価するんじゃないかと思えるほどに。
少女も少し間を開けてから「そうね」と笑みを浮かべる。


724 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:07:03 8j3sZs.60

「私の相棒みたいなものなの。使い慣れているし、味のある写真が撮れるのよ」

成程。
白黒写真が味のあると感じるように、特定のカメラによる写真は魅力があるのだ。
カメラに長けている少女の発言に、巽は納得を貰う。

「君は観光で日本に?」

「いいえ、留学生よ。日本のことを学びに来たのだけど――ここは素敵な場所ね。とっても綺麗」

「そっか。そこまで誉められると、俺も照れるな」

少女は色のある世界に目を輝かせており、異国特有の大人びた雰囲気とは違い、もっと幼い子供のように錯覚してしまう。
まるで、当たり前の光景すら望めない。平凡に餓えた少女だった。
彼女はきっと些細な美しさにすら感動してしまいかねない。
巽は一歩話題を踏み出してみる。

「でも、最近は物騒だから気をつけた方が良い。殺人鬼が出るって噂だ」

「ええ、知ってるわ。よく知ってる」

少女は話題に触れたからだろう。巽に問いかけた。

「ねぇ……貴方は『彼』のこと、どう思ってる?」

「えっ?」

「『彼』よ。今、貴方が言った殺人鬼。どういうヒトだと思う?」

予想外の質問に巽は困惑する。

バーサーカーをどう思っているか?

巽にとってはサーヴァントであり、意思疎通は難しいとか、理性がないから性格も分からない。
ただ殺戮するだけの英霊、あるいは兵器のようだと思っていた。
こうして質問されると返答がしにくいものである。

「なんだろう……殺しを楽しんでる、とか。不謹慎だけど、そんな感じがしたかな……」

曖昧な解答。
巽も、本心からバーサーカーをそう感じていたかも覚えていない。
少女は複雑な表情を浮かべていた。
ほほ笑むような、悲しむような。

「多分、そうよ」

自分は正解を導き出したのだろうか?
巽も心に靄がかかったような、もどかしい感情を抱いた。

「彼は退屈が嫌いなのよ。残酷な暇潰しをしているだけ」

少女は昔を懐かしむように話す。

「貴方は―――『彼』に会わない方がいいわ」

少女に何と話を切りだそう、巽は口を開こうとした。

『マスター、止したほうがいい』

それを制したのはセイバー・ジークフリート。
少女はなるべく笑顔を浮かべて「貴方も気をつけて」と立ち去ってしまう。
戸惑う巽に対し、ジークフリートは念話を続けた。

『すまない。だが、彼女のサーヴァントが警戒するかも分からなかった』

「えっ、サーヴァントがいたのか?」

『俺と同じように霊体化し、彼女の周囲にいる事は十分ありえる』

「……あ」

基本的なこと。
しかし、巽には未だに受け入れきっていなかったせいで、セイバーの指摘した点を見落としていた。
それに巽の方針である、聖杯戦争を阻止することは彼女のサーヴァント次第では、許しがたいものだろう。
焦りは禁物だ。

「やっぱり、あの子はマスターなのか?」

『魔力量は明らかにある。魔術師かどうかは分からないが、何らかの能力は持っているかもしれない』

「俺は、あの子が聖杯戦争をしようとは思えない。俺と同じで、巻き込まれただけで……」

だけど。
あの子は……刺青のバーサーカーを知っているんじゃないか?

彼女がバーサーカーのマスターであるかは証拠も確証もない。
だた、巽には今の彼女は幸せそうに見えたのである……





725 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:07:40 8j3sZs.60


――追跡の類は仕掛けて来ないようだ。

少女のサーヴァント・セイバー。
真名をミリオンズ・ナイブズという彼もまた、巽の存在を警戒していたが何事もないらしい。
彼の雰囲気からしてマスターの可能性を考慮していた。
一方、少女――アイリスの方は、全く疑っていない。
先ほどの日本人・巽がアイリスと同じ、聖杯戦争のマスターである事を。

ナイブズはそれを告げる事はしない。
代わりに、アイリスに問い詰める。

『お前はあのバーサーカーを知っていたのか』

アイリスは未だに複雑な表情を浮かべたまま答えた。

「最初は信じられなかったけど……ニュースに出た彼の姿でハッキリと分かったの」

まさか、巡りあうとは考えつかなかった。
二度と対面することも、彼の殺戮を見ることも、言葉を交わす事すらないと思えた。

あれから彼とは出会っていない。噂も何も聞かなかった。
だからといって、まさか聖杯戦争の渦中で再会しようとは夢でも見ているかのよう。
夢は夢でも、悪夢の方。

「私……少し、彼と話がしたいわ」

『正気か』

「私もそう思うわよ。でもアレを見て、彼とは話せると分かったの」

あれは、良くも悪くもいつもの彼だ。

ナイブズがバーサーカーと判断する彼とは、聖杯戦争の関係上、戦い合わなければならない宿命。
彼の思考回路は何も分からない。アイリスは彼の殺戮を阻止するのは、無謀だと承知している。
酷い話、そんなことはしようと思っていない。
彼を止める手段こそ殺害の他ないのだから。

分かっている。
簡単なことは全部分かっている。
嫌と言うほどアイリス自身が体験している。
過去とはもはや決別したかったし、自身も普通の存在でありたいと聖杯に願うつもりだ。
なのに――否、だからこそ会わなければならないのかもしれない。


そして――アイリスはもう一つの宿命を、知らぬ間に背負わされていた。
即ち『運命の試験紙』。
ミリオンズ・ナイブズは人類の見極めを彼女を通して判断する。
アイリスの選択一つによって、ナイブズの運命も、全ての歯車がどちらの向きに回転するかも決定される。
あの殺戮者とアイリスが対峙することも運命ならば、ナイブスは妨害することはないだろう。

ただし『彼』と出会った瞬間に、全てが決定されるのだ。
この聖杯戦争でするべきこと、人類は滅びるべきか。
それら全てが。

アイリスも、ナイブズも、それを心のどこかで確信していた――


726 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:08:20 8j3sZs.60





 黄金の回転
  自然界の美は「黄金長方形」によって構成されており、その軌跡で正確に物質を回転させることにより
  発生する無限の回転エネルギーです。この回転エネルギーは常識を超越した現象を発生することができます。
  また、騎乗しながらこの技術を使うことにより「騎兵の回転」を発生させ、その効果は[削除済み]です。






あるマスターは自らの過去を隠していた。
誰だって隠し事の一つや二つはあるし、秘密をベラベラと包み隠さず話す方は返って歪である。
だからといって隠す限度というものがある。
今回の聖杯戦争において、無知であるマスターなんてのはサーヴァントからすればカモも同然。
サーヴァントにとっては厄介な令呪を伝えないのは、ありえる話。

一方、マスターであるこの男。
アダムという、アーチャーのマスターである彼。
彼は肝心な、重要な事実をあえて自らのサーヴァントに伏せていたのだ。

それは――刺青の男。
サーヴァントのクラスを考察ならば紛れもなくバーサーカーだろう存在。
それを『知っている』という、とてつもない隠し事。

何故?
『知っている』というのは非常に厄介だ。
危険性を承知しており、特性も把握しており、警察のNPCらの行動が無意味だとあざ笑っている。
全てを見逃す。
それほど悪意のある卑劣な行為をアーチャーは赦すだろうか?
否、絶対にありえない。彼は善良なサーヴァントだ。
分かっている。だからこそアダムは伏せているのだ。

刺青のバーサーカー……SCP-076-2がこのまま暴走を続ければ、魔力の枯渇により消滅を余儀なくされるはず。
バーサーカーとは現界するだけでも魔力を必要とするクラス。
ならばこそ、魔力を尽きさせ、その隙を狙う。

一日、刺青のバーサーカーの動向を追っていたアダム。
しかし、そうはうまくいかない。どうやらバーサーカーは、一日中考えなしに暴走している訳ではないのだ。
財団職員であった彼だからこそ、すぐに分かった。

おかしい。
こんなものじゃない。生半可すぎる。まだ死ぬはずだ、もっと死ぬはずだ。
あの男がこんなもので済ませるものか。
財団で……一体どれほどの死体を産み出したと思っている?

「知能……か」

皮肉な事に、SCP-076-2は高い知能がある。
アーチャーは狂化というスキルにより理性など失われるかもしれない、と言っていたが。
忘れていた。
恐らく、刺青のバーサーカー・SCP-076-2は人類から理解不能の狂気に満ちているだけで、知能がハッキリとある。
魔力のことも考慮して殺戮をしている。

そんな馬鹿な、と思うが。
かつて、それ以上に馬鹿な真似を財団はした。
彼を利用しようとした。窮屈な制限すら、彼は我慢しようとすれば我慢できる。
なんてことだ。

『どうした? 顔色が悪いぞ』

念話によるアーチャーの声が聞こえ、アダムはいつものように話す。

「平気だ。しかし……情報を集めようにも、どこもバーサーカーの話題ばかりか……」

『こんだけやってりゃ、そうだろうな。
 この様子じゃ、マスターの方はバーサーカーのことも、聖杯戦争のことも知らねえだろ』

「マスターと接触し、令呪でバーサーカーを押さえつけるのも可能かもしれない」

バーサーカーの情報が湯水の如く貰えても、他の主従の情報が全くないのは問題だった。
あるいは、バーサーカーを探ろうとする者を狙うべきか。

アダムはコーヒーを置き、カフェから出た。
様子見がてらに外を歩いてみるものの、巡回するパトカー。あちこちに警官の姿。
日本の東京とは思えないほど物々しい雰囲気に包まれている。


727 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:09:29 8j3sZs.60
もはや財団の人間ではないのだ、アダムは自分に言い聞かせる。
やはり――最初からアダムも分かっていたはずだ。可能性は考慮していたが、もはや捨てた。
この世界に、財団はいない。
あるいは、財団が介入できない異常……とでも言おうか。
恐らく、この世界の誰よりも刺青のバーサーカーを把握しているのは自分だ。
彼を止める術を持つのも自分だ。
しかし……彼は、聖杯を得ようと覚悟をしている。後戻りは――しない。

これでいい。これが私の娘――彼女の為。こんなことしか、してやれない。
私は失敗した。
彼女を救おうと手をつくして……もはや聖杯に頼る他ないのだ。

―――なのに

「………なのよー」

「え? それ、本当??」

買い物帰りの主婦らしい二人が、キャイキャイと騒ぐ子供を引き連れながら、アダムの横を通り過ぎようとしていた。

「本当! さっきチラッ見たんだけど、葉っぱも全部落ちちゃってて!! ビックリしたわー」

「いやねぇ。誰かが変な薬でも公園にバラまいたのかしら」

「でも、全部は枯れてなかったわよ」

枯れる。
木が。
植物が。

「一部のところだけで……ベンチの辺り……」

一部だけ。木が、枯れて。
SCP-076-2。
アベル。
彼は
あの男と―――会わせてはならない―――男――植物を枯らせる――

気付いた時にはアダムは、その主婦たちに声をかけていた。


「す……すみません。ご婦人方。その公園は一体どちらに?」





なんだ? 私は馬鹿なのか?
財団の理念など、財団としての責任も、どうでもいいではないか。
しかし、もしそうならば、あるいは悪い夢であって欲しい。冗談で――あって欲しい。

アダムは大急ぎで公園に向かう。
こんな時間に公園など、いかにも不審者だ。しかし、どうでもいい。
確かめたかった。

アダムは到着するなり、ハッと驚愕の表情を浮かべる。
そこには既に客人がいたのだ。
妖艶な空気を醸しだす外人……アダムの経験からしてドイツ人ではないかと推測できる、少年。
いや、少年だろうか?
どこか中性的で、身なりが男であったからアダムは少年と判断したのだ。

少年は花壇を眺めていた。そこで咲いていただろう花は皆、腐ったような有様だった。
ああ……これは。
周囲の様子を確認したアダムは即座に理解した。


最悪だとアダムは絶望する。

よりにもよって、出会ってはならない。もし出くわせば――どうなってしまうのか。
きっと恐ろしいことになるだろう。
だが、私は――私はもう……

財団としての信念は――捨てる。
聖杯戦争においてアダムは決心しようとしていた。しきれていなかった。

……サーヴァントとして召喚されたのか? 何にせよ。こんな『偶然』……
落ち着け、それよりも―――

目の前の少年。
その存在も異様だった。何故ここにいるのだろう?
まさか……マスター?
少年もアダムに気づいており「何か?」と流暢な言葉で問いかけてきた。

「い、いや。財布を落としてしまって……見かけなかったかい?」

少年は意味深にアダムを睨みつけてから、首を横に振る。
アダムは「ありがとう」と告げて、速足で立ち去った。
少年が追ってくる可能性も十分あったが、どうやらそれはないらしい。


728 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:10:25 8j3sZs.60
生きた心地がしない。未だに不安が渦巻いている。
SCP-073とSCP-076-2。
邂逅してはならない。
財団はだからこそ二人を引き合わせなかったし、そのような最悪があるようでは、最早この東京は。
いや、知らない。
私にはもう無縁だ、関係は――……

『アダム! さっきからどうしたんだよ』

アーチャーの声により正気に戻ったアダムは何とか平静を保つ。

「あの少年……私を追ってくるだろうか」

アーチャーも少年を警戒していた。明らかに彼は逸脱していると、薄々感じていたのだろう。
もしかすれば、それ以上の何かを感じ取っているのかも分からない。
アーチャーは霊体化したまま、アダムに告げる。

『今のところは来ないみたいだな。それにあの公園の……アダムもサーヴァントの仕業って思うんだろ?』

「………ああ」

だが――アダムはアーチャーにSCP-073の情報を与える事は、なかった。





……あの人間。

公園に取り残されたドイツ人――カナエ=フォン・ロゼヴァルト。
聖杯戦争のマスターである一人。
他のマスターたちに探りを入れるべく、自身の住まう港区から移動をし、ここに立ち寄ったのは偶然。
そう、偶然。植物が枯れたという噂を聞いた。アダムと同じ理由で訪れていた。

カナエは無論、明らか様に逸脱したアダムの存在を見逃すはずがなかった。

しかし、止める。

アダムの方もカナエが追跡する恐れを考慮しているだろう。
令呪を教えていないサーヴァントならば良いが、令呪を把握しているならばサーヴァントを呼び寄せられる。
深追いしてもトドメをさせるかどうか。
警戒されては失敗する可能性もなくはない。

追跡をするか。もしくは―――
植物を枯らせたサーヴァント。
ただ単純に植物を枯らせるだけならば良いが、どうやら地脈に影響を与えるらしい。
キャスター辺りには厄介極まりないものだ。
そして、カナエのサーヴァントの宝具にとっても面倒な能力であった。


風に乗り漂ってくるは、血。
下等動物たちの、小動物たちの、それも多くの血が流れたもの。
複数の調味料を混ぜ合わせ完成した、酷い悪臭を放つ失敗作のようだった。
恐らくあの殺人鬼などと騒がれているサーヴァントの仕業だと、カナエは関心を抱かない。

『これは血祭りか! 何とも惨たらしい、数多の生贄と、人間の奔走が遠く彼方よりやって来る――』

まるでオペラ男優かのようにカナエのサーヴァント・ランサーは饒舌であった。

『葬儀において神父は語る。故人は神様に■されすぎて天国に召し上げられた、と。
 然り。■とは死だ。死こそが■だ。■するが故の殺意。
 件の殺戮者は■を以てして死を招くか? 否――■などはない。マスターよ。
 美しきの忠誠者よ。貴方は分かるであろう! あの者は■を知らぬ殺戮者に過ぎない』

最後の最後に説得力が込められた言葉を加えられても、カナエは無関心であった。
ランサーの語る■に興味はない。
それを何かを理解しようともしない。

考えない。
考えようとした事もない。

ただ、カナエの中にあるのは月山習への忠誠……そう称する『感情』だけ――


729 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:11:12 8j3sZs.60




 死ぬ気の炎
  密度の濃い炎のようなエネルギーです。指紋のように一人一人炎が異なり、また炎の色、性質も異なります。
  キャスター/ブルーベルは青色の『雨』の炎を持ち、その性質は鎮静です。
  現在判明されている炎の種類とその性質は[編集済み]となっております。
  基本属性の炎は通称:大空の七属性と呼ばれています。






女性のみをターゲットにしたショップ。
悪くはない。
だが、なんだろう。まるでここだけ世界を隔離したような物々しい雰囲気が印象に残る。
慣れてしまえば何てことはないのだろう。けれど、こういう場所を知らぬ者にとっては不気味だ。

かわいい衣服。
かわいい商品。
かわいいもの。

女の子にとっては素敵な世界。
かわいいものが好きな女の子にとっては夢の世界。

だが、それ以外の人間は? もしかして不愉快に映し出されるのかもしれない………

二宮飛鳥は一人、そこで買い物をしていた、
あるいは、最初で最後のここでの買い物になるかもしれなかった。

表面上でしか聖杯戦争を把握していないが、十分過ぎるほど東京は戦場になりつつあることを認識している。
こうして自由に外出するのも控えなければならない。
飛鳥のサーヴァント・アサシンは、そのように忠告をした。
全くその通りだ。反論の余地は一切ない。

そうなれば日常の生活はどのように過ごすべきだろう?
平穏から逃げるのも手だが、少女でしかない飛鳥にとって一人孤独に東京を彷徨う選択に希望は見えない。
焦るべきだが、不思議と焦りも恐怖も湧きあがってはこない。
緊張は持った方がいいのに、だけど恐怖は慣れてしまったのかもしれない。

死ぬのは怖い。生き残りたい。
だけど……なんでだろうか、あの殺人狂。
あそこまで馬鹿馬鹿しいほど死体の山を作って、自分が殺される恐怖を抱くどころか何も感じなかった。
他人事ではないはずなのに。どうしてだろうか。


「彼は一体どんな戦を繰り広げてきたのだろう」


ふと、そんな言葉を口にする飛鳥。
念話で彼女は続きをアサシンに告げた。

『彼がただの勇敢な蛮人だけで英霊と称され、サーヴァントとして召喚されるなんて思えないんだ。
 ボクは……分からないよ。あの戦士が如何に素晴らしい功績を残してきたかも、どれほどの戦士なのかも。
 興味がない訳じゃないんだ。不思議だろう? 明らかに危険因子であるのに、非常に魅力的だ』

悪が魅力的に感じるのは物語の基本だ。
物語における主役を輝かせる為には、悪が悪でなければならない。悪であり続けなければならない。
成程。あの刺青のバーサーカーが魅力的に感じるのは、皆平等なのだ。
だが――アサシンは、理由なき殺人をする殺人鬼であった零崎曲識は、どうだろうと感じていた。


730 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:12:10 8j3sZs.60
確かに、あのバーサーカーは理由なく殺人を行っているのだろう。
殺戮をするのに理由などないのだろう。
動機もないし、力を示したい訳でもなく、暴力を魅せたい訳でもないと分かる。
楽しんでいる。闘争を。
しかし、根源が見えない。
分からない。
殺人鬼である曲識にも、バーサーカーを理解するのは不可能だった。

『しかし、危険だ。僕も彼とは真っ向勝負するのは御免だ。勝負しようとも思っていない』

『ボクも興味が尽きないけれども、彼と直接会おうとは願っていないさ』

『フム。関心があるだけか』

『今のところはね』

あのような戦闘狂と巡り会う瞬間など、飛鳥には想像つかない領域である。
彼女の住む世界には血も死体も、闘争も殺意も、暴力なんてものは一切ないのだから。
この――ショッピングを楽しむ少女というのが普通だ。

店の一角にお菓子売り場があった。
そこにあるのは色取り取りガムやキャンディー、グミといったもの。
これもかわいいものに含まれるからか、たまに置いてある店は見かける。
飛鳥は置かれてある大き目の棒付きキャンディーを眺めた。

『ああいった大きいお菓子を買う人間をボクは見た事がないのだけど、実際どんな人が買うのだろう?』

『面白半分に買うのは一理ありそうだが、普通ならば手に取ろうとすらしないだろう』

『大きさからして子供向けでもないんだ。そもそも食べる前提で作られていないとすらボクは感じるよ』

『つまり、観賞用か』

『飴細工で芸術品を生み出せるくらいだ。そういう目的もあるかもしれないね』

そこに一人の女性が現れる。
彼女は他の商品には目もくれず、真っ先にお菓子売り場へ足を運んだ。
飛鳥が見守る中、彼女は何故か飴だけを全て商品カゴに放りこむ。
食べきれないであろう大き目の棒付きキャンディーまで全て。

そんなに飴が好きなのか?
もしかして結構大食いの女性なのだろうか?
一体全体、飴をどうするつもりなのだろうか……?

さすがの量に、店員も少々度肝を抜かしていたが彼女は酷く冷静そのものだった。
最初からこれほどの飴を買い集める予定だったらしく、小さなスーツケースに大量の飴を詰め込む女性。
そのまま彼女は店内から立ち去ってしまう。

飛鳥は彼女を追った。
店の外に飛び出したものの、例の女性は人ごみの紛れ、姿を完全に消してしまっている。
唯一分かったのは、あの巨大キャンディーに需要があったという事実だった。






731 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:12:50 8j3sZs.60


「もっと質の良いのなかったのかい」

「あちこちかき集めて、それだけだ。
 ここは何の特別もない場所に過ぎない……物に質を求めるのは止した方が良い」


不満を漏らしているのは、飴を購入した女性――ホット・パンツのサーヴァント。
ランサーのクラスでありながら、彼女は武器は所持していない。
武器となりうるのは、ランサーの好物でもある飴。
その飴が『槍』を作り上げるからこそ、彼女はランサーなのだ。

そして、それこそがランサーの欠点。
武器となる飴が存在しなければ戦うことが困難となる。
ホット・パンツは、東京のありとあらゆる有名店に赴き、飴だけを購入しまくった。
ある意味、有名人になってしまいかねない行動だったが、飴さえ手に入れてしまえば問題は無い。
彼女の手元にある金もそれなりに消費してしまったものの。
ここでの金を失ったところで、彼女自身に影響などないのだ。

少女のなりをしたランサーが飴を睨み、その内一つを口にくわえた。
味を確かめながら彼女は言う。

「まずはアイツ―――馬鹿みたいに殺しまくって殺人鬼なんて持て囃されるバーサーカーだね。
 あんだけ暴れて目立ってるんだ。探せばすぐに見つかるだろ」

「……それはあたしたちに限った話じゃあない。他の連中も動いているはず……それに妙だ。
 このバーサーカー。今朝の犯行から音沙汰なし。これをどう思う?」

飴を買うのに夢中で、すっかり忘れていた訳ではない。
ホット・パンツも東京でシスターの役者を演じている際、入手したスマートフォンで情報を仕入れていた。
続報で男(バーサーカー)の防犯カメラ映像など流れているが、それ以降の話は聞かない。
今朝――昼間に入る頃の犯行を最後に、その存在は幻想のようにかき消えている。
ランサーは眉間にしわを寄せ、唸る。

「他の奴らが殺した……かも。あとは、魔力切れ? バーサーカーは魔力消費がハンパないからね」

「魔力がなくなって……それで消滅するほど知能は失うのか?」

「いや、どうだろうね。ある程度、自重はするかもしれないけど……
 むー。こういうのはあたしよりも、ティトォの方が向いているからねぇ」

考察は苦手らしいランサーは珍しく頭をかかえている。
つまり、策の方はホット・パンツに委ねられるのだ。
彼女は改めて情報を整理し、ランサーに問う。

「なら、逆に聞く。知能のあるバーサーカーはありうるか?」

「あーいるいる。普通に喋ったりする奴も全然いるよ。けど、所詮はバーサーカーだし期待できるほどじゃない」

「だが、いるんだな。そういうバーサーカーは」

「………刺青のアイツが『そういう』バーサーカーだって言うのかい」

「確証は無い。だが、魔力を温存させるのを考慮し行動するバーサーカーの可能性は考慮するべきだ」

姿を隠しているのなら、霊体化。
サーヴァントたちにとっては普通の話であったが、実に厄介な能力だとホット・パンツは感じた。
その気になれば、どんなサーヴァントも気配を消してしまえる。
魔力とは無縁のマスターからすれば、文字通りの脅威となるものだった。

もし、例のバーサーカーは霊体化し、獲物を狙っているのならば……

「ランサー。これからは、なるべく霊体化しておいた方が良い」

「む。……霊体化してじっとしてるのは、癪だね」

「分かっている。少なくとも――あのバーサーカーが死んだと確証を得るまでだ。
 ランサーも奴と真正面からぶつかり合うのは避けたいだろう」

「まあね。あたしの技を直接叩きつけるタイミングってのがあるだろうし」

ランサーも反論しなかった。
今は三人ではなく、一人。
かつて不老不死であった頃は、一つの肉体に三つの魂があり、死ぬたびに魂が入れ替わった。
彼女はだた一人。
飴の魔法使い、アクア。それ以下でも、それ以上でもない。
ただ、それだけだった。


732 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:13:30 8j3sZs.60




 『魔法』(マテリアル・パズル)
  『魔法』(マテリアル・パズル)は、あらゆるものに存在する魔力(マテリアル・パワー)を分解、
  再構築することによる別のエネルギーに変換し、新たな法則を産み出します。
  この能力は基本一人一つのみしか会得できません。
  『魔法』は修行により編み出す、生まれつき所持している、あるいは[編集済み]によって習得することが可能です。






東京都世田谷区。

そこは静寂に包まれていた。
例の殺人鬼の出現により、人々も外出を控えているのだろうか?
華やかな東京の街を歩くのは、一人の男と一人の少女だけ。

同時に、彼らはサーヴァントとマスター。
主従の一組。
少女の方は、金髪の青い目。どこかに実在していそうで、しかし二次元のような魅力を持つ存在。
一方の男は、包帯まみれ。フードを被って、いかにも猟奇的で残虐性を連想させる狂気の存在。

彼女はメアリーで、彼はアサシンのサーヴァント・ザック。

彼らはどこかイカれていた。
どこか破綻して、どこか狂っている。
メアリーの目は酷く淀んでおり、ザックの方はそんな彼女に苛立ちを覚えていた。

かつて自分を殺すよう求めた少女も似たような瞳をしていたが、メアリーはそれとは違ったものを感じる。
メアリーはいかにも普通だった。
別に表情が死んでいる訳でもないし、泣いたり、笑ったり、感情が生きている。
なのに、どこかおかしい。
普通であるのに異常性を放っていた。


気持ち悪い。


会って間もない相手に抱く感情ではない。
なのに、どうしようもなくザックは嫌悪感に満たされていた。
しかも、メアリーがマスターである為、殺そうにも殺せないのだから厄介である。

「あ……」

メアリーはある物を目にした。
一つの店。綺麗なドレス、高級なバッグ、華やかな靴。
あるブランド店のショーウインドウ。

嗚呼、なんて美しいのだろう。
とても美しくて、色鮮やかで、煌びやかな世界。こういう世界をずっと、ずっと見たかった。
メアリーはそう思った。思ったからこそ、何か違和感を覚える。

自分はどうして外の世界に感動しているのだろう。
日本自体に憧れでもあったのだろうか?
致命的に記憶が欠如しているせいで、メアリーは自らの心に戸惑っていたりする。
だけど、こんな光景をずっと見たいと思っていた。
外の世界は人が生きていて、明るくて、美しい場所。

「おい、何してんだよ」

メアリーが足を止めたので、ザックが苛立って彼女に言う。
だが、不思議な事に。メアリーは店内を眺めている内に疑問を産む。

「ねえ、ザック」

「あ?」

「お店の人……いないの?」

店内には誰もいなかった。
客どころか、店員まで。誰もいない。
こんな高級店なのに、警備員の一人もいないことすら可笑しいかもしれない。

ここで彼らは異常を感じ取ったのだろう。
自分らの異常ではなく、自分たちのいる『ここ』の異常に。
この大都会・東京で、店を開けたまま放置するなど絶対にありえないのだ。
最初は好都合として済ませていたが、いよいよ何かがおかしいと思うべきである。


733 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:14:50 8j3sZs.60

ザックは確信する。

既に攻撃が始まっている。聖杯戦争が始まっている。
外を見ても、人っ子一人歩いていないではないか。もう敵が近くで何かを仕掛けているに違いない。
歓喜の笑みを浮かべ、ザックはメアリーに呼びかけた。

「おい! 早く来い!! サーヴァントが近くにいやがる」

「あっ、待って!」

メアリーは慌てて、ザックを追いかける。
しばらく道を走れば、臭いが漂う。
血の臭い。
ちょっとどころなら、接近しなければならないだろうが、もはや少量どころではない。
量とか質の問題でもなかった。
やはり異常であった。

死体が大量に、乱雑に、ある公園を中心にして転がっている。
学生、会社員、主婦、子供、警察官、店員、他にも様々。
どれもこれも死んでおり、どれもこれも『皆殺し合った』結果だった。
これら全てが聖杯戦争の関係者だなんて、ザックも想定しない。
だが、聖杯戦争とは無縁ではないはず。

メアリーは茫然としていたが、ザックはありふれた光景のように済ませている。

「うざってぇな、こいつら」

死体を足か鎌でどかし、傍若無人に道を作るザック。
もはや死者への敬意など一切なかった。
メアリーは流されるまま、ザックの背後についていくだけ。

公園に――生きた存在がいた。

「あいつの仕業か? どうすりゃこんな事できんだァ? あー考えても分かんねぇ」

全員殺せばいいだけ。
だから、細かいことなんてどうだっていい。
ザックがそんな自論を掲げて刃を向けたのは――ただの幼女だった。
俄かに信じられないが、メアリーには分かる。
ポカンとこちらを見つめる幼女。彼女が『ライダー』のサーヴァントであるとメアリーには理解できた。

「ザック。あの子にライダーって文字が見える」

「おう、そうか」

だったら尚更。

ザックが本気で駆けると、メアリーにとっては文字通りのあっという間だった。
一瞬。
寸劇にも等しい。
高笑いを上げながら、躊躇もなく、小さな幼女の肉体に鎌を突き刺す。
そのまま、彼女の体をバットで跳ね返したボールの如く、建物の方へぶっ飛ばしてしまった。
鮮やかなショーウインドウが破壊され、彼女の姿はその店の奥へ消えてしまう。

それきりだった。

「よし、まず一人殺した」

「………!」

「マスターは? 探すの面倒だな。どうせサーヴァントが消えりゃ意味ねぇし、別にいいか」

殺した?

メアリーは訳も分からないままザックと行動し、あの『ライダー』という幼女が何者かも分からないまま。
ただ、こうして立ちつくしていただけだった。
罪悪感に襲われているメアリーだが、ザックから見れば相変わらず汚いを瞳をした気も血の悪い少女でしかない。

折角、サーヴァントを殺したのに全然気分が良くない。
本当気持ち悪いな、こいつ。
そんな感想をしつつ、ザックは立ち去ろうとした。

「次だ! 次いくぞ」

メアリーに振り返る勇気はなかった。

あの幼女の死体なんて見たくない。この死体たちも知らない。
こんなものは知らない。
外の世界はもっと人が生きていて、明るくて、美しい場所なんだと。
記憶がないながらも、彼女はそうだと信じ切っていた。


734 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:15:14 8j3sZs.60



彼らは、幼女が眺めていたことを知らない。
彼らの姿がなくなるまで、店内からじっと見つめていた事。ザックが負わせた傷が完治している幼女。
何も知らないまま、彼らはここを後にした事を。



「ああ、ここにいましたか」

幼女の表情が明るくなる。
現れたのは、彼女のマスターであり、唯一彼女に狂わされない人間――平坂黄泉。
相変わらず紙袋を頭にかぶった奇抜な容姿だが、もはや誰も彼を咎める人間がいない。
人間は――少なくとも、ここらにいる人間は全て幼女自身の能力によって死を遂げたのだ。
平坂は、それすら想像してしない。

平坂は突如、家から姿を消した幼女を探していた。
それだけであった。

ただ、ここで酷い暴動があったのは聞こえている。
例の殺人鬼の仕業なのだろうか。平坂は幼女に問う。

「犯人を見かけませんでしたか?」

幼女は無言であったが、頷いた。
だが、彼女が後に絵で描いたのはフードを被った男であった。
平坂が、それを知る事は出来ない――……






 アサシン/アイザック・フォスター
  所謂、典型的な快楽殺人鬼に分類されます。彼いわく、幸福である人間を殺傷し
  絶望に追いやられる姿や恐怖に怯える表情に興奮し、その為、感情が欠如した人間を
  殺害するのに酷く抵抗するなど、彼の中ではある程度の観念が定まっております。






先導エミは溜息をつく。
こうして待っているのに、一向に彼は現れないのだ。多少の苛立ちを感じてしまう。
遅刻するなんて……と文句を抱きつつも、相変わらずなんだから、なんて納得していた。
エミの目の前には道路が広がっている。
車が行き交う道路だ。エミのいる向かい側に彼の姿はあった。

「アイチ!」

とっさにエミは叫んだ。
遅いったらありゃしない。アイチの方はきっと「ごめん」なんて困った顔をしながら告げるだろう。
しかし、エミはアイチが現れた事を心から喜ぶ。
散々、足が折れそうになるほど探した兄がいる。エミは彼に向って走り出していた。
アイチも気付いて、エミに向かい走る。
だが、様子がおかしい。
アイチは焦ったような表情で、必死にエミへ手を伸ばしていた。

次の瞬間。


ブレーキ音。




「おにいちゃん! おにいちゃぁぁぁーーーーーーーーんっ!!!!」



……■■■■■が信号を見ていなかったから……
ちゃんと見ていたら……だから、いなくなっちゃった……
おにいちゃん……いなくなっちゃった……いなくなっちゃったんだよ……

少女の悪夢は終わった。


735 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:16:18 8j3sZs.60


「!」


先導エミは悪夢にうなされていただけで、兄の姿も、自分が轢かれた道路もそこにはない。
人気のない、薄暗い公園。
そこにある遊具のトンネルの中でエミは眠りについていた。
そのまま眠るのは厳しいので、家から持ち出した毛布と枕を敷いている。

さっきの夢……でも、あれは私じゃなかった気が……

青ざめている彼女に対し、キャスターが声をかけた。

『エミ、全然寝てないけど平気?』

「うん……」

『家に帰ったら? ブルーベルも、こーんなジメジメしたところでじっとなんかしたくないもん』

「ブルーベルちゃん……でも、あそこに居たら駄目な気がして。アイチのことを忘れるのが怖いの」

別にそのような事はないのだが、キャスターことブルーベルは何も言わなかった。
エミが家を抜けだした時点で、もう警察の方に通報やらされてしまっているだろう。
今更戻ろうが、エミの行動は日常から逸脱しており、既に把握されているかも分からない。
何より、エミの目的は聖杯戦争からの脱出と兄・先導アイチの捜索。

アイチに関しては、本来いるべき世界にいる可能性が高い。
だが、エミは話すにアイチ以外の人間たち、アイチの友人やエミの友人、家族。学校。
全ては再現されているとのこと。
アイチのみが居ない。
ポッカリと、空洞を開けられたかのように。

奇妙だった。異常だった。
些細な欠陥だが、ある意味。それは先導エミの記憶を呼び覚ます切っ掛けでもある。

『アイチもマスターだったりしてね』

「えっ!?」

『だって、そうじゃない? サーヴァントの能力を使って、わざと自分の存在を消したんだよ』

「……っ」

エミはそれを切り捨てたかった。
何より、エミにはアイチが聖杯を手に入れようとする心当たりがない。
第一、アイチは戦争なんて……そんなことが出来る人間ではないのだから。
しかし、改めてエミは確信する。

「やっぱり……アイチはどこかにいる」

兄妹の勘。もしくは、第六感。エミにはオカルトじみた能力なんて一切ない。
エミはそれでもアイチを探すのを決心した。

東京からの脱出。
何らかの力が働いているとしか思えないほど、彼女はそれが叶わなかった。
次は県境を目指そうと、エミは考えている。

とはいえ、中学生のエミが持ち込んだ所持金。
どこまで往けるか定かではない。それでも――エミはどうにかして、脱出しようと思案する。
食費やバス代、電車代。あとは体力。
情けないほど足りないが、自分の力で何とかしなくては。
第一。


あの殺人鬼から逃れたい一心があった。


736 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:17:16 8j3sZs.60
「行こう……」

時間も惜しかった。
エミは遊具のトンネルから外へ出る。冷たい風が彼女に吹きつけた。
公園から不気味なほど静寂に満ちた住宅街へ、遠くではパトカーのサイレンが鳴り響いている。
あの殺人鬼はまだ捕らわれていないのだろうか。

住宅街を歩くだけで、エミは警戒してばかりだった。
他の人間に見つかっただけでも怪しまれそうだから……
このような時間にエミのような少女が放浪しているのは不信過ぎるし、目立つ。
最悪、聖杯戦争に参加しているマスターかサーヴァントに捕捉されてしまったなら……

ブルーベルが倒した騎士――恐らくセイバーのサーヴァント。
彼のマスターは、一体……もしかしたら、あの殺人鬼によってもう……分からない。
だが、エミも戦いたくなかった。
自分が戦えないのもそうだが、戦意もないのに仕方なく戦闘する――なんて言い訳もしたくないのだ。

『ちょっと、エミ!』

ブルーベルが念話で呼びかける。
彼女たちの行く先に、一人の少年がいた。
恐らくエミと同い年くらいの少年であろうが、いかにも不良といった雰囲気を醸し出しており。
このような時間帯に出歩いても、反抗期かと済まされそうな存在。
だが、異常だった。
少なくとも、不良少年とはいえ殺人鬼が徘徊する『東京』に出歩こうとするなど、相当肝が据わっている。

「……?」

最初はどうしようかと戸惑ったエミ。
同い年だから、まだ何とかなるかもしれない。
向こうもこんな時間帯に出歩いているから、エミにちょっかいをする余裕などないかも。

だが、やはり狂っていた。

他者を逸脱したエミと同じ少年。
ならば、きっと彼もまた。
少年もそれに気付いたのだろう、大きく声を上げる。

「お前―――――まさか――」

行動が早かったのはブルーベルだった。
霊体化を解除するなり、青い炎を足に点火させると、エミを抱えて空へと浮上する。
エミもブルーベルの能力を把握しているとはいえ、実際空中に漂うのには驚いた。

少年は驚きはしたものの、大した驚きではなく。
彼女たちを追いかけようと走り出している。
「バーカ」とブルーベルは、あっかんべーをして挑発した後。
炎の出力を上昇し、車よりも早くその場から立ち去って行った。
少なくとも、並の敏捷でも追いつけることはないだろう。
だが、この状態は夜では尚更目立つのでブルーベルも、少年から逃げ切った先でエミを降ろすつもりだった。


737 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:18:10 8j3sZs.60
一方の不良少年――馳尾勇路といった彼は、彼女達を追跡するのを止めた。
だが、青い炎を点火させるサーヴァントが『キャスター』であることは把握していた。
戦闘するどころか、彼女たちは逃亡を図った。
何故?

恐らく……勇路と同じく巻き込まれた少女。
マスターと思わしき少女も、サーヴァントであるキャスターの少女。
どちらも勇路にとっては、ある少女を連想させた。

『少々変わったサーヴァントだ。何のクラスかは見えたかね』

念話で勇路に問いかけるバーサーカー。
ヴラド三世。
かの吸血鬼、串刺し公、恐らく勇路にとってはトラウマの根源たる『針』による因果が纏わりついたことで
召喚されたサーヴァントではないか。そんな英霊。

勇路は素っ気なく答えた。

「キャスターって見えた。魔術師かどうかは分からねぇけど」

『ほう? キャスターか。成程……しかし、それにしても』

「?」

『……いや、何でもない。今日はいつになく血の臭いが漂う』

吸血鬼だから分かるのか。
何て些細な事は尋ねない。
勇路は、少し思い詰めてから決心した。

あの少女たちと話をしよう。
うまく話が出来るかは分からないが、少なくとも殺し合おうとはしていないのだ。
あの少女たちは……助けたい。

勇路もまた『罪人』だった。
だからこそ『兄を探す妹』や『兄を失った妹』に惹かれたのかもしれない。
もはや運命なのだろう。

それを知らぬ勇路は、再び狂気と混沌が渦巻く夜の東京を放浪した。

そして、バーサーカー・ヴラド三世の抱く違和感というのがあった。
この『東京』には何かある。
否。
何かがいる。

彼はまだここに導かれた『異なる自身』の存在を知らぬまま。
巡りあうかも定かではなかった。







 泡禍(バブル・ペリル)
  ■■と呼ばれる集合無意識に眠っている絶対存在が産み出す現象です。この現象は人類に
  対し、恐怖と悪夢を与えるべく発生します。この現象で見られる多くの共通点は、[削除済み]
  や[編集済み]などの例から、寓話をモチーフにされており、事前に予測、対策することが可能です。
  この現象から生存した人間には精神的なトラウマの断片、通称:<断章>と呼ばれる能力を保有します。






738 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:19:15 8j3sZs.60

聖杯戦争とは何たるか。
実感するのはマスターがサーヴァントの召喚に成功した瞬間から、なんて夢描くかもしれない。
現実は違う。
サーヴァント同士の死闘、それに巻き込まれ、生死を彷徨う時間。
あるいは、サーヴァントの凶行。
それらを目撃した瞬間から――なのかもしれない。

自称:ナイスガイ――松野カラ松は、聖杯戦争を体験してしまった。
彼が目撃したのは、地獄である。
単語だけで表現するのは容易だが、これは地獄以外の何だと云うのだろう。
もし、地獄以外の例えがあるのならば教えて欲しいくらいのものだった。

ざわざわと近所の騒がしさに反応したカラ松は、それに関心を抱いた。
向こうがやばいらしい。
と、人々が口にし、面白半分に足を運ぶ者が絶えない。カラ松も流されて、興味半分に足を動かす。
そして……後悔した。

例の光景を眺めたのはほんの数秒。
現場に遅れて到着した警官たちが、野次馬を押しのけ、慌ただしくブルーシートで現場を隠す。
しかし、鮮明に記憶の中で留まった。

血の水たまりなんて初めて見た。
散乱する人間の肉片など、むき出しになった骨や、この悪臭。
一体どれほどの人間が犠牲になったのだろうか?
警官たちの誘導はさらに酷くなる。
ここら一帯を完全閉鎖すると宣言し始めたのである。奥まで足を進めたら、もっともっと死体を目にする意味だ。

問題は――あの死体たちをどうやれば産みだせたのだろうか、なんて馬鹿らしいもの。
サーヴァントの仕業。
近頃、出没した殺人鬼。
カラ松のサーヴァント・アサシンも、あれはサーヴァントで恐らくバーサーカーだと予想していた。

まさか。あのような所業をしたサーヴァントと戦え、なんてことは。
カラ松の中に恐怖が誕生する。

最悪、■が待ち受ける。
あの■体たちのようになる。
■にたくない。
生き残る。

漠然とだが、生への執着は確固たるものだった。
武者震いとは思えない揺れを体に感じながら、カラ松は一刻も早くそこから立ち去ろうと思った。

『待ってくれ』

突如、アサシンが念話で話しかけたので、馬鹿みたいにカラ松は反応してしまう。
何とか平穏を保つカラ松。

「あ、アレはサーヴァントの仕業なんだろ?」

『あぁ……間違いない。少し調べないか』

大声でふざけるなよと叫びたくなるのをカラ松は必死に抑えた。
正気じゃあない。真っ平御免である。
むしろ、あんなことをしたサーヴァントには二度と関わりたくないとすら願っているのに。

「全世界のカラ松ガールズが待ちくたびれている。俺は止めておこう」

声は震えていたかもしれない。
実に情けない姿だったが、カラ松にとっては精一杯の抵抗であった。

一方のアサシンは、例の惨劇と酷似した地獄を見た過去を持つ。
まるであの時の繰り返しだと憤りを感じさせるほど。
吸血鬼か、邪鬼か、もっと邪悪な化物か。
それが手を下したかのような光景に、アサシンは刺青のバーサーカーの仕業だけとは到底受け入れ切れない。

ついに他のサーヴァントも動き始めた。
もはや、東京都の聖杯戦争から逃れられるものは――いない。

アサシンは、既に覚悟を決めていた。
一方のカラ松は、相変わらず痛々しい存在だった。


739 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:20:21 8j3sZs.60



「あれ?」

人ごみのせいでカラ松も気がつかなかったのだろう、そこにいたトド松の方は兄の姿を捉えていた。
追いかけようとも考えたが、野次馬をかき分けるのも苦労がかかる。
松野トド松は、改めて事件が起きたという方向を眺めていた。

すでにブルーシートに覆われて、何が何だか。
酷い悪臭が遠くから漂うのは素人のトド松にも分かる事だった。
しかも、かなり広範囲の閉鎖をしているらしく、トド松は「うーん」と残念そうに唸った。

「セイバーちゃん、やっぱり無理そうだよ」

『うん、そうみたい』

念話でセイバーが返事をした。
この先からおいしそうな匂いがするとセイバーが言ったので、トド松は従うように足を向けただけで。
事件のことはサッパリなのだ。むしろ、知らない方が幸福なのかもしれない。
「それに」とセイバーは付け加える。

『誰かの食べかけなんてトッティも口にしたくないでしょ?』

「確かにねー……えっと、何の話?」

『うふふ。トッティー、今日は別のケーキ屋いきましょ!!』

「だったら新しくオープンした駅前のケーキ屋はどうかな」

『オススメのケーキ?』

「セイバーちゃんが好きなものを選んであげるよ」

セイバーは嬉しそうに笑うので、トド松も自然と笑顔になれた。
兄弟たちがそれを見れば「一体何があった」と問い詰めるであろうくらいに。

聖杯戦争なんて夢物語のようだった。
ひょっこり現れたセイバーは非現実じみていたが、彼女と過ごしているうちに戦争なんて終わって。
何時の間にか、聖杯は手に入れてハッピーエンド! ……になれば、どれほど良いことか。

戦争とはいかに残虐であるかも無知で、兄弟が戦争に巻き込まれる事も知らず。
そして、セイバーがいかなるサーヴァントであるかも認知していない。

彼女は知っている。
ここが『殺戮者』と『人食者』がやらかした残骸だと。
ここから先、もっと酷くなって、人居なくなって、人喰いになって……

ああ、とてもとっても楽しそうだ。
もしかしたらケーキなんか食べているよりも楽しいのだろう。
吸血鬼たるセイバー・フランドールにとっては、ワクワクが胸にうずいているのだ。
耳を澄ませば、ほら聞こえてくる。

ただの悲鳴と歓喜の声が。


740 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:21:41 8j3sZs.60




 零崎一賊
  理由なき殺人をする殺人鬼集団です。彼らは血の繋がりではなく、流血により繋がる一族です。
  彼らの結束力は固く、名を持つを家族であると称し、敵対するものには容赦なく壊滅させます。
  零崎となる原因は現在、解明されていません。
  前兆なく零崎の血に目覚め、殺人をしてしまうケースが多く見られます。






馬鹿騒ぎが夜の街で行われていた。
サイレンの音、騒音、悲鳴。寝静まろうとしていた町が目覚める。
恐らく、あの孤児院にいる子供たちも目が覚めて、院長がそれを宥めようと現れるはずだ。

そして――今剣がいないことに、気付くだろう。

「良かったのですか?」

今剣のサーヴァント・那須与一が問う。
確かに孤児院にいる子供という役割に捕らわれ続けると、行動が制限されてしまう。
聖杯戦争で日常に溶け込み、相手の様子を伺うのはもっぱら。

だが、今剣が望むのは聖杯戦争からの脱出。
誰も殺めたくは無い。
あるいは、聖杯戦争を止められるのならば……そちらを望むかもしれない。

だとしても、孤児院に居続ける理由はある。
住居の確保。
安心して熟睡も可能で、食事も用意される。あそこに残り、アーチャーに『東京』の捜索を頼む手もあった。

「ぼくがあそこにいると、みんなをまきこんでしまうかもしれません」

今剣にとっては偽りであれ、孤児院の子供たちは友であって、院長は優しい先生だった。
聖杯戦争の為だけに用意された存在だとしても、今剣の厄介事には巻き込みたくない。
彼らと共に居続ければきっと、帰りたい気持ちですら揺らいでしまいそうだ。

「それに――いまのじだいの『にほん』をみてみたいんです」

今剣は、遠い未来からやってきた。
だが、未来の日本というのを目にしたことはなかったのだ。
審神者と本丸にいて、現在や過去に関わらないよう、目にすることも、それらの情報を与える事も許されていない。
しかし、こうなっては良い機会と考える事にした。

変わり果てた日本。
今剣にとっては未知なる日本。

「ずいぶんとかわったんですね。みらいの『にほん』は」

「うん、そうだね」

アーチャーも同意する。
彼の居た時代とは想像できないほど変わってしまっているのだから。

昔が残されていないのは悲しいことだ。だからといって、悲観することではない。
歴史は語り継がれている。歴史は引き継がれている。
全てが無になった訳ではなかった。

だから、この時代の日本を受け入れよう――

「あーちゃー」

「?」

夜道を歩いていた二人。
今剣は傍らに貼られていたポスターに目がついたのだ。

そこに写された一人の男。
かの有名な武将と同姓同名。
いいや、アーチャーはそれが正真正銘の本人であるとすぐに分かった。

『織田信長』

どうやら、この東京では国会議員の役割を持っているらしい。
うーんとアーチャーは心で「目立つなぁ、このお方は」と溜息をついてしまう。
紛れもなく、異世界で出会った織田信長本人ではあるが、果たしてマスターなのか?
アーチャーと出会ったことのある織田信長なのか?
ハッキリしない。


741 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:22:23 8j3sZs.60
今剣は不思議そうにソレを眺めていた。

「もしかして、ほんものの織田信長さまですか?」

「どうでしょう。ただ名前が同じ……という場合もございますし」

というより。
アーチャーは逆に今剣へ問いかける。

「彼についてはご存じなのですか?」

「はい! ぼくのなかまに『へし切長谷部』がいるんです。よく信長さまのお話をしてくれますよ」

なんだか根に持ってる感じがするのですが、と今剣が一つ付け加えて。
でしょうなぁ。と、アーチャーもどこか納得してしまった。


――どうしようかな。まぁ、会ってみないと分からないか………






「あーもー何だか面倒なことになってきたにゃー。なぁ、パイズリ・パイトリア」

「もはや改変が酷過ぎて突っ込む気にもならない……一体、何がです? マスター」

聖杯戦争が間もなく始まろうとするこの状況。
いかにも政治家らしい豪邸にて、華麗に己のサーヴァントにセクハラ発言するのが、織田信長。
天下の第六天魔王と恐れられた戦国武将。
かつて天下統一の前まで到達した男。
彼がサーヴァントとして召喚されても全く疑いもしないが、どういう訳かこの聖杯戦争ではマスターだ。

記憶を取り戻し、彼が手につけたのはパソコン。
インターネット社会に戦国武将が溶け込もうなんて無謀かもしれないが、この男はやってのけた。
異世界の言語も実はペラペラ喋れるようになれるほど、理解力は高かったのだ。
本選開始前に、ようやく色々と自力で検索など自在に使いこなせるまで至る。

信長が己のサーヴァント・アーチャーに対し、鼻で笑う。

「何がって。お前、分かってんだろ? 分かってないで聞いてる? コイツだ」

信長が操作すると、パソコンの液晶画面で動画が再生された。
インターネットはサイバー監視など、御託を並べようが半ば無法地帯である。
こうして――殺人鬼の凶行を撮影したものが出回っているのだから……

虐殺されていく人々。
逃げ惑う人々。

それを見て、何ともないアーチャーではない。

「……恐らくですが、バーサーカーのサーヴァントでしょう。
 理性もなく。多分……主の命にも従わず暴走していると思われます」

「ふーん? お前はそう思うの」

「マスターは違うと?」

信長は殺人鬼であり、バーサーカーであり、そこに確かにいる刺青のサーヴァントを見つめた。


742 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:22:48 8j3sZs.60

「俺はコイツと同じ奴を見たことある。馬鹿じゃあない。
 馬鹿は馬鹿でも、戦バカではある。戦の為に生まれてきたようなもんじゃ。
 全知全能が戦に特化してる奴。理性がない訳ないわな。思考がなきゃこんな戦い方できやしない」

アーチャーは感心した。


この人、やっぱり戦争で生きた人だ。そういう人間なんだ。
ちゃんと分かってる。だって―――私だってこの『バーサーカー』をそうだと思ったから。


「それに――こんなもんじゃないだろ。本気を出せば、もっと殺せるぞ。コイツ。
 信じられないが、こりゃ『暇つぶし』だ。『退屈凌ぎ』だ。
 こんなのずっとほっとけって、悠長にもほどがある」

「……はい」

かつてアーチャーが仕えた吸血鬼も、そうだった。
人であることを止め、死を追い求めるように闘争を続けた。
人でなくなったからこそ、人に滅ぼされたがった。どうしようもない化物。

死ぬまで止まらない。
死ぬ事でしか止まらない。

いや、きっと。
アーチャーが彼を打ち滅ぼしたとしても

嗚呼、良い闘争だった。

そう感動を残し、笑って死んでいきそうな―――そんな戦闘狂だと、彼女は感じた。


「………となりゃ、問題はどの程度バカかだな。面倒なバカなら、さすがにパイトリアも相手が厳しいじゃろ」

「あの、真名を改変した呼び名は止めて貰えマスカ」

「じゃあ、パイチャー」

「じゃあ、ってなんですか!」







 漂流者
  史実において生死不明のまま消息を絶った者が異世界で呼ばれる総称です。それらと対立関係にある
  [編集済み]というものがあります。[編集済み]のような特殊能力は保持しておらず、生前の人格などは
  歪められてはおりません。しかしながら、人格によっては[編集済み]よりも危険視されます。






743 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:23:43 8j3sZs.60


駄目……どうして……

ルーシー・スティールは絶望していた。
彼女の考えうるだけの手段で、東京都内から脱出を図ろうとしても見えない何かによって阻まれ続けている。
県境には何故か警察の検問や工事などによって封鎖されていて――


今朝は体調が酷かったものの。
今は大分落ち着いている為、この状況による過労なのだと思いこんだルーシー。
一体、あたしの身に何が起きているの……?
『東京』から脱出する方法……もう無理。今日は寝るしかないわ。
頭が全然動かない。明日……あの男も、あたしがここにいるとはまだ気付いていないはず。
大丈夫……大丈夫だから……

自分に言い聞かせるルーシーの瞳には涙が溜まる。
夫のスティールのところへ一刻も早く戻りたい。彼の声をもう一度聞きたい。
なのに、脳裏には刺青の男の存在が過り、彼がルーシーに刃を振り下ろす悪夢を想像してばかりだった。
刺青の男はルーシーに殺意を抱いているのか?

否、ルーシーはあの男は殺意があると断言していた。
勘でしかないものの、その勘は正しかった。
紛れもなく――刺青の男・バーサーカーはルーシーを殺害しようとしているのだから。

ああ、スティーブン……もう一度会えるの……?
アタシ……どうすればいいの……?

ルーシーはまだ聖杯戦争を知らない。
何も分からず。ただホテルに戻り、体を休めるだけだった。

狂気の戦士の主は、眠りにつくだけ………


だが、彼女が聖杯戦争を何たるかを理解した時。
恐らくきっと、それが彼女にとっての始まりの瞬間なのだろう。


744 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:24:19 8j3sZs.60




羽田空港。
東京都大田区にあるここは、確かに存在していたのだ。
一応、人もいるし、飛行機も存在するが、そこへ到達するのはどういう訳か困難を極める。

何より不気味だった。
空港内に出店しているだろう場所は全てシャッターが降りて、空港内もほぼ無人。
カウンターに従業員の姿はある。だが、どういう訳か動いている飛行機の姿すらなかった。

当然だった。
飛行機は全て『欠航』のアナウンスが流されている。


「おかしいだろ。なぁ、一体どういう理由で全部欠航になっているんだ?」


人気もない空港ロビーで、一人の男性がカウンターで呆けている従業員に尋ねていた。
その男は、間違いなく(顔立ちからしても)日本人で首には男性には似合わない、
赤い宝石が飾られた首かざりを身に着けていた。

従業員は至って冷静に返答する。

「本日の便は全て欠航です。申し訳ございませんが、今日のところはお引き取り願います」

「それじゃ明日は?」

「明日も全て欠航です」

「ああ、そうかい。だったら一つ聞こうか。君はどうやってあの殺人鬼から逃げるつもりかね?」

男が指差したのは、モニターに写るニュース映像。
あの刺青男の防犯カメラの姿。
従業員は首を傾げる。

「さあ。何を尋ねられているか、私にはサッパリですが」

「一つ良い事を教えてあげよう。彼に出くわしたら○×ゲームで勝負しようと持ちかけてみてくれ。
 ほんのちょっぴりだけ寿命が延びると思うよ」

従業員は「はあ」と溜息混じりの言葉を漏らして、それきりだった。
一方の男は、やれやれといった風に踵をかえす。
そんな男に対し、念話で彼のサーヴァントが言う。

『どうしてあの「バーサーカー」に関わろうとするの? 本当に命知らずね』

「ユユコ、君だって『自分を殺した相手』を放っておく訳いかないだろう?」

次の瞬間。
和服を着た少女が、音も気配もなく出現した。
その少女・キャスターは、意外そうに話始める。

「あら? それ、私は初耳よ」

「おっと、ユユコにはまだ話していなかったかい? SCP-076-2……『アベル』の話は散々したつもりだったのけれど」

「○×ゲームで三時間くらい引き分けを認めなかったのでしょ?」

「違う違う、三週間だよ。まぁ、この際はどっちでもいいかな」

そんなことなんてどうだっていい。
何故ならば――……

人であった頃。
有限の命を持っていた頃。
あの戦士に殺された男――ジャック・ブライトは、いよいよ聖杯戦争が始まろうとするのを感じていた。
アベルの殺戮パーティはきっと、前夜祭か何かなんだと思っている。


745 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:25:08 8j3sZs.60

「どうにかしてアベルのマスターと接触して、令呪で命令させたいんだ。
 奴にやらせたいことが沢山ありすぎて私は困っているよ!」

「例えば?」

「ユユコ、アベルとダンスでも踊らないかい?」

「冗談はその首飾りだけにして欲しいわ……さすがに私もお断りよ。令呪なんて使わないでくれる?」

「令呪というのは、そういう為に存在すると私は思うのだがね」

「絶対違うわ。世間話はここまでにして――彼のマスターと本当に接触するつもり?」

うーん、とブライトは唸る。
公衆電話をチラリと眺めてから、やれやれといった風に溜息ついた。

「参った。日本には一生来れないと思っていたんだ。日本支部の連絡先を記憶するべきだったよ」

楽観視していた訳ではない。
だが、いよいよもって聖杯戦争という現象は異常極まりないものと化していた。
外部との連絡手段も、海外にある『財団』と接触する手段も。
しかも、あのアベルがサーヴァントとして召喚されているのだ。
もはや、東京が終わるのは目に見えるほどの状況である。
ブライトは改めて話をした。

「本当のところ、奴に生ぬるい内容で令呪を使ったら何をしでかすか分からないよ。
 『人を殺すな』なんて命令したら、奴は平気で自害しそうだ」

「それはそれで良くないかしら?」

「いやいや、そんな事をしてしまってはつまら……アベルのマスターが可哀想じゃないか!」

「……そうね」

「きっと状況も分かっていないだろうから、私はそのマスターと是非とも接触したいんだ。
 そうだ。ユユコ。普通のダンスが嫌ならジャパニーズダンス……盆踊りはどうかね?」







『ブライト博士が聖杯戦争で2度としてはいけないことの公式リスト(随時追加)』
  令呪を私的欲求の為に使用してはなりません。
  令呪は願いを叶える魔法のランプのように扱うことは禁止されています。
  聖杯戦争の知識のないマスターを唆して、令呪を使用させるのは以ての外です。






746 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:25:48 8j3sZs.60


ああ、哀しい人。


地獄のような『東京』。
ここにいるサーヴァントの一人・ランサーは思う。
マスターであるホムンクルス……ジークという少年と共に、一歩出歩けば人々が噂する。
挨拶の次に、あの殺人鬼の話をしているのが日常と化しているのだ。

ジークは――やはり、あの殺人鬼……恐らくバーサーカーのサーヴァントである彼を、どうにかしようとしている。
マスターの命令であのような所業に走っているのか。
マスターを無視しあのような殺戮を行っているのか。
バーサーカーの場合、後者の方が十分ありえそうだろう。
何であれ、刺青のバーサーカーか。
そのマスターと接触しなければとジークは固く思う。

ただ、それ以上に胸に疼きを覚えた。
彼の中にある英霊の心臓。規格外なことではあるが、ジークの心臓はそうなのだ。
その心臓が何かを訴えている気がする。
一体……何を?

『彼』と所縁のある存在が『東京』にいるのか。或いは、『彼』そのものが?

ジークは気付く。
一人の男子高校生が気分を悪くしたのか、道端でうずくまっているのを。
通行人は全く見向きもしない。まるでその男子高校生がそこにいないかのように扱っていた。
だが、ジークには迷いなどなかった。

「大丈夫か」

「あ……ああ。ちょっと目眩がして、大した事はないんだ」

ジークを追い払うように、その男子高校生は立ち去ろうとする。

「しかし、また倒れたりしたら――」

「昔から貧血気味なんだ。心配してくれてありがとう」

もっと何かしてやるべきではないのか。
ジークは思うが、相手はいつもの事だと言い張るものだから、それ以上の追求はしなかった。
ただ、複雑な思いを抱いたまま、ジークは男子高校生を見送る。

ランサーはそれに困ってしまう。
純粋無垢な、わずかに生きたホムンクルスの想い。決心。
そんな彼が愛おしく、そんな彼を――殺したくなってしまうのだ。
今はまだ、その殺意を、その愛を、どうにか堪えているが……抑えきれるか定かではない。


そして、彼女を困らせているのはジークだけではない。
例の――刺青のバーサーカー。
残虐で、反秩序的で、暴力を擬人化させたような、殺戮兵器のような、恐ろしい英霊。

だけど――哀しい人。

戦う為に、戦いに必要ないものは全て捨てた。
戦う以外の行為は全て捨てた。
きっと誰かを優しくすることも、愛することもできない。
誰かに優しくされても、愛されても何も感じない。

人々からは恐れられる。持てはやされる。嘲笑される。
だけど……きっと彼らにはただ死を与えるだけしか出来ない。


ああ……哀しい人。


だから――私は…………困ってしまいます。


747 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:26:41 8j3sZs.60



気分を悪くした男子高校生――遠野英治は、何とか帰路についていた。
もはや罪の意識など感じていない。
ここに来て殺害した、同じ不動高校にかよう少女。
彼女の死など微塵に思っていない。彼女の死など――彼の最愛の女性の死と比べれば、なんて事は無い。

英治は罪悪感による体調不良かと思っていたが、そうではない。
魔力。
というものを一般人が感じ取るのは難しい。
まして、非現実的な世界に足を踏み入れたばかりの英治にとっては尚更。
魔力の消費を体調不良や疲労などと思ってしまうことも多いだろう。
英治は、まさにそれだった。

いくら聖杯戦争を把握しているからとはいえ、魔術を理解した訳ではないのだ。
そして、自身のサーヴァント・バーサーカーを理解したことにはならない。


――バーサーカー……あの男だ。あの刺青の男を殺せ! 奴はきっとサーヴァントだ……!!


だが、英治はそれを直接命令はしていない。
ましてや念話で命令なども。令呪もまだ使用していない。
その程度のこと、あのバーサーカーは分かっているだろうと油断しきっていたからだ。

実際にバーサーカーは殺している。人間を。
だが、それは果たしてマスターか、サーヴァントか、それとも無関係な人間か。
少なくとも英治の望んだ通りに刺青の男を殺しに向かうかは、誰も分からなかった。


「螢子……」


英治が最愛の女性を想う中、バーサーカー……ジェイソンは着実に死体を増やしていくのだった。


748 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:27:12 8j3sZs.60



殺戮者と『人喰い』が虐殺する中。
死神のキャスターとそのマスターである少女は、ただ東京に存在していた。

死神のキャスターはかつて城を集めていた。集めに集め、合計99の城を揃える事ができた。
いよいよ100番目の城を手に入れようとした矢先に、彼は死んだ。
尤も、その時。
死神のキャスターには城を入手する必要などなくなってしまったのだが。

あの城は……嗚呼、確かに素晴らしかった。
もう必要なくなってしまったが――それでも素晴らしい城だった。
別に、キャスターが評価せずとも世界一の城という異名に偽り無し。
城に拘っていたキャスターは、不気味なほどあの城を調べ尽くし、あの城を欲しがった。
思い返せば返すほど、不思議なほど情熱的で、馬鹿馬鹿しいほど自棄になっていた。

だが、全てを手に入れてしまったら――……
何もない。
情熱も、執着も、目標も、何も――まさに虚無だけが広がっている。

所詮、こんなものか。
そうキャスターは感じていた。

想像できないが、あの城を手にした瞬間。
達成感に浸った自分は、きっと今の自分と同じになっていただろう。
結局、自分の行く先は収束されているのだ。
その過程が違っただけだ。

けれども。
否、だからこそだろうか。
殺戮だけを目的にしている死神のキャスターは皮肉にも巡り会った。
光であるからこそ、闇に出会った。
光があるから、闇もあるのだ。

自らのマスター。一人の少女。
あやめと言う名の彼女に対し、キャスターは不敵に笑う。

「俺はな……お前と出会えて良かった。そう思ってるんだよ……これは嘘じゃない」

決して感動的なセリフではないことくらい、少女のあやめにも理解できた。

「お前のような……俺の世界を闇に染めるような……不純物が蔓延っているなんてな。知らなかった。
 知らないで放っておいたら………どうなるかくらい、お前にも分かるよな……?」


お前は殺す。
お前は必ず抹消する。
光の魔法使いの名のもとに、死神ヨマの名のもとに。


少女は震え続けた。
少女は怯え続けた。

あらゆる殺意に恐怖をした。

そんな彼女に救いの手は差し伸べられない。


749 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:28:56 8j3sZs.60




 屍鬼
  死後に超人的な力を得て蘇生した[削除済み]と酷似した性質を持つ人間です。
  驚異的な治癒能力、不老、夜目が利き、人間に暗示をし命令させることが可能です。
  しかしながら、日中は強制的な眠魔に襲われ、霊的な場所を非常に恐れ、
  他人の管理する建造物へは無断に侵入できないなど、弱点が多く存在します。






東京都を恐怖の渦に巻き込んだ件の殺人鬼。
バーサーカー・SCP-076-2。
否。もはや記号の羅列は、ここでは無意味だろう。
その男――アベルは、サーヴァントたちを待ちかまえていた。

しかし、未だ舞台に登場を果たせていないのか。
様子見を続けているのか。
サーヴァントたちはアベルの前に現れる事は無い。
仕方なく、アベルは霊体化をし、異変を待ち構えていた。

が――それからどれほど経った頃か、アベルの勘が燃え盛る様に反応する。
途端に憤りを抱く。
最初はその感覚を理解できなかったが、答えに行きついた瞬間。アベルは殺戮を始めていた。
その殺戮は、相手すら選ばぬ虐殺であった。


紛れもなく『居る』。奴がここへ『来た』。


つい先ほどまで、そのような気配はなかった。
故に、サーヴァントとして召喚されたのは間違いようがない。
英霊が集う聖杯戦争に似つかわしくない、アベルの憎悪する、もしかしたらアベルを狂わせただろう元凶がいる。

不愉快だった。
不愉快で堪らない。
そして、ノイズのような不愉快な感覚は未だに続いている。

それなりに賑やかであった場所は、一瞬にして血色に染め上げられていた。
アベルには些細な光景だった。
最早、興味すら湧かない。既に過ぎた事象でしかない。


「バーサーカー?」


少女がそこにいた。
彼女は可憐な存在だった。小学生を過ぎ、中学生でもおかしくない年頃。
なのに、血の大地に立ち、平然と地獄に存在している。
少女――桐敷沙子が言葉を続けた。

「貴方『も』バーサーカーなの?」

アベルは虚空からブレードを出現させ、戦闘態勢を形作っていた。
沙子は言う。

「わたし――貴方の事、知ってるわ。『ここ』じゃ有名人よね?」

アベルは沙子の言葉など、耳にしていない。
彼が捉えていたのは、沙子を飛び越えこちらへ攻撃を仕掛ける『化物』ただ一つ。
それもまた、アベルと同様『狂戦士』であり、英霊とは思えない、人間の成れの果て。
漆黒の衣を纏った『梟』が、肉体から剥き出しになった凶器を構えていた。

次に行われた戦闘は、普通の目では追えないほど刹那。
固い、金属同士がぶつかり合ったような高音に遅れて、血が舞う。

双方無傷ではない。
わずかに手傷が多いのはアベルの方だろう。
『梟』の方は傷ついていながらも痛みも感じず、平然としていた。

だが、速さはアベルの方が上回った。
『梟』が攻撃を終え、ほんの少しばかりの隙が生じたのを逃さず、アベルは蹴り飛ばす。
多少、飛ばされたが『梟』は地面を擦りながら着地を遂げていた。


アベルも『梟』も、再び牙をむき出してもおかしくはない空気だった。
相手が相手。
普段のアベルならば歓喜し、全力で殺しにかかろうと殺意の重圧をかけるはずだ。


750 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:29:44 8j3sZs.60


――不愉快だった。


このような闘争の中でも、不愉快なノイズがアベルに纏わりついている。
あの忌々しい■■■がいる故に、素晴らしい闘争も全て代無しに変貌した。
不愉快を堪えながら、アベルは言葉を発した。
恐らく、アベルが召喚されてから初めてであろう言葉を。

「残念だが――君とはまだ戦わない。今の私と闘争しない方がいい」

言葉の意味を、沙子と『梟』は理解できなかった。
アベルはとにかく、機嫌の悪い状況で闘争をする気力が一片も無いだけだった。

信じがたいことに、アベルは踵を返してしまう。
人間には彼に共感することすら困難を極める。何故、そのように戦意を抑えるのかも分からない。
『梟』は首を傾げながら、肉体から生えた『赫子』に付着付いた血を舐める。
――――衝撃が走った。

「どうしたの?」

沙子は異変に気づく。
『梟』がいつものように「おいしい」と呟かないのだ。呪文のような感想を吐きだす事は無い。
所謂、喰ったことのない味。
味わった事もないもの。
ヒトの肉体をしていながら、全てが異なる。
『梟』は瞬時にソレだけを判断した。

大股で歩み去ろうとするアベルに『梟』は先回りし、立ちふさぐ。
アベルは眉をひそめた。

「君に告げた言葉を違えるつもりはないが」

「通行料。片腕一本」

『梟』は喋る。
アベルが立ち去ろうものなら、殺すか。それを許して欲しければ、肉を喰わせろと。
相手が無言なので『梟』はさらに続けた。

「それとも片足? 『ジャム』の方がお安いよ」

睨み合う狂戦士たち。
沙子が遠くから鳴り響くサイレンに寒気が走った。
どうやら何者かが警察に通報したらしい。間もなくここには警官たちが犇めくのだ。
不安を抱いた沙子は「バーサーカー」と『梟』を呼び、彼の傍に駆け寄る。
『梟』はそれを一瞥した。

終始沈黙を保っていたアベルがブレードを構える。
それは『梟』と少女を斬る為でも、自らの腕を斬り落とす為でもなかった。
アベルは問いかけた。

「君はどうする?」

意表をつかれた表情を浮かべてから『梟』は答える。

「腹減ったな」

軍隊でも登場したかのような喧しい足音、鳴り響く装備の音、人々の声は全て筒抜け。
沙子は恐ろしく感じたが、狂戦士たちには歓喜の音色であった。
警官、ニュースで報道されていた特殊部隊と思しき者たち。刑事らしい男が大声を出す。

大人しく投降しろ。お前は包囲されている。武器を捨てろ。

それのどれかだったか、全てだったか、あるいは違う内容だっただろうか?
もはや誰の記憶にも刻まれていない。
ただ―――狂戦士たちにとって、彼の声が合図だった。


751 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:30:32 8j3sZs.60
ここで起きた出来事は、百項では到底収まりきれない。

『梟』が草花を摘むように人間の部位をもぎ取るならば、アベルは舞い踊るついでに人間の命を奪い取っていた。
『梟』は気まぐれに頭の『ジャム』を啜る一方、アベルは気まぐれに泣きひれ伏す人間は殺さずに無視した。
『梟』が前進するたび道路を血色に染め上げると、アベルは建造物を破壊し殺戮に通じる結果を残していく。

アベルが全ての人間を殺すとは限らなかった。
彼から生き延びた人間は、まるで救われたかのような安堵の表情を浮かべる。
感謝のような感情を抱いて涙を流し続ける。
『梟』はそれらを全てを殺しつくした。
手から爪まで、足から胴まで、舌から脳髄にかけて。しかしそれでいて、贅沢貴族のように全部は食べない。
喰って、飽きたら別の人間に手をかけて、飽きたら食欲を失せ、別の人間に手をかける。

邪魔する者は皆殺された。
アベルが意図せずとも空振ったつもりの刃が、反逆しようとした暴徒の胴体を切り裂く。
彼に衝突しようとした車両は、アベルが背を向けたまま一振りすると真っ二つに割れ、ビルに飛び込み、炎上した。
「人殺し!」と罵倒した者は、アベルが駆けるついでに蹴り飛ばされ、首の骨が折れ、沈黙する。
一方、早く逃げるべきだと声かけた善良な人間の首をはねる『梟』。
助けてと救いを求める人間を知らぬフリし、泣き喚く人間など五月蠅いから首をもいだ。
動けずに恐怖で震える人間は邪魔なのでアスファルトに顔面を叩きつけ、殺す。


全てを圧倒していた。
誰も二人に成す術などなく、彼らによって全てが支配されていた。
それはとても簡単な話で、暴力と残虐な悪徳と恐怖によって賄っているだけである。
悪そのもの。
反秩序的で反社会的な闇の世界。

嗚呼、素晴らしいと沙子は感動する。同時に安堵する。同時に恐怖も覚えた。
複雑な感情を抱く沙子。
何故なら、彼女は命を奪う存在、人喰いでありながら酷く、ちっぽけなほど恐ろしく弱かったからだ。
そして哀れな程、寂しがり屋だった。
そんな沙子が暴食そのものの怪物と出会い、殺戮の王と巡りあった。
もはや奇跡である。
最弱の化物が、よくぞここまで辿りついたと褒め称えるべきだ。


きっと『ここ』は、彼らに降伏する為だけに用意された場所なのだ―――


752 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:31:29 8j3sZs.60



[編集済み]に関する会話ログ

付記:聖杯戦争本選開始■時間前、東京都■■区[削除済み]にてSCP-076-2とオウルが交戦。
   その際、SCP-076-2が戦線離脱を図ろうとし、行われたもの。


<記録開始>


少女:待って。どこに行くつもり? 誰かを探しているの?

[無音]

梟:無意味な話でもしようぜ。

SCP-076-2:何の。

梟:存在価値。

SCP-076-2:問答するには、まだ早い。

梟:お前さんは必要か? いらない奴。みんな怖がってる。いなくなればいいのに。消えばいいのに。
  賞味期限切れの食品を好きで喰う奴はいない。みんな仕方がないから喰ってる。

SCP-076-2:必要ないものなら教えても構わない。

梟:お前か。

SCP-076-2:私は君と果たし合わなければならない。

梟:俺か。

SCP-076-2:だから、君はここに居るべきだ。



SCP-076-2:葬るべきは、戦士らの闘争に相応しくない――あの忌々しい■■とそれを呼び寄せた奴だ。


<記録終了>

報告終了書:その後、SCP-076-2はオウルとの戦闘を中止し、SCP-073を捜索開始した。
      オウルは少女(本名:[編集済み])と共に[削除済み]
      少なくとも聖杯戦争本選開始まで交戦しなかったものと推測される。


753 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:32:38 8j3sZs.60



―――通達を開始します。

聖杯戦争に参加されているサーヴァントの皆さま方、こんばんは。
まずは僕に自己紹介をさせて下さい。

僕はこの聖杯戦争を主催する国家に所属する者。
名を先導アイチと申します。
どうぞ、よろしくお願いします。

ところで……
もうお気づきになられているでしょうが……この通達は、サーヴァントの皆さま方にしか行われません。
何故?
些細な疑問ですね。
皆さま方も、気付いていらっしゃるでしょう。

この聖杯戦争ではマスターに聖杯戦争の知識は与えられません。
よって、全ての情報はサーヴァントに委ねられるのです。
……令呪の存在をあえて伏せている、そのような方もいるでしょう。

ええ。勿論。
一向にそれは構いません。
何故なら、この聖杯戦争には秩序となる『裁定者』など存在しないのですから。
全てはサーヴァントの皆さま方の思うがまま。
ここにいるただの人間も、殺すなり、喰うなり、お好きにどうぞ。
むしろ、その為に用意したのですから存分にお楽しみください。

マスターの枷など気にせず、サーヴァントの皆さま方に快適な聖杯戦争を提供するため。
我々からのささやかな心使いとして受け止めて下さい。

嗚呼。話が逸れてしまいました。
では改めて―――……



本日、深夜零時をもって予選期間が終了しました。よって、これより聖杯戦争本選が開始されます。
現時点で召喚されたサーヴァントは22騎となっております。



そして、明日より毎日正午12時に定時通達を行います。
通達は念話で行いますが、多数同時に行う為、途切れやすいものです。集中してお聞きいただくようお願いします。

もう一度お伝えしますが、この聖杯戦争において『裁定者』は存在しません。
ですので、原則。禁則事項となる行為はないと思っていただいて構いません。
しいて言うならば、この『東京』から抜け出そうとした場合、こちら側で『処理』させていただく程度でしょうか。
……ありえない行為ですが、念のため報告します。


通達は以上です。
明日の正午。生きていたのならば、また―――


754 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:33:54 8j3sZs.60



「ところで――聖杯とは何なのだ?」


基本的な、至極常識的な質問が投げかけられた。

聖杯戦争。

文字通りならば、聖杯による戦争。聖杯に関する戦争。聖杯を中心とした戦争。
解釈は様々ではあるが、この疑問を口にした少女・神原駿河は言う。

「聖書などに登場する聖杯という意味で合っているのだろうか……とはいえ、私も聖書はあまり目を通さないものだ。
 それに関する戦争とならば、私も理解が追いつかないのだ。尚更、私が巻き込まれる理由がないのだが……」

対して、彼女のサーヴァント・アヴェンジャーは素っ気なく答えた。

「『聖杯』などという単語に意味は無い」

「そうなのか? ならば何故、聖杯戦争と呼ばれているのだろう……」

「これが聖戦の類だというなら、向こうで暴れているサーヴァントは召喚されない。そしてこの俺もだ」

「確かに。あの殺人鬼は暴力の擬人化というか、そのような存在だった。
 私も深く語れるほどではないが、この戦争が聖戦などと大それた儀式とは思えない」


儀式。
という単語を口にした駿河。アヴェンジャーは心では、その通りだろうと思っている。
魔術師にとっては儀式のようなものに近い。
願望機の為、生贄を捧げる。他のマスターとサーヴァントに死を与える。

そして、神原駿河は続けた。

「ただ、アヴェンジャー。少なくとも、私はアヴェンジャーとあの殺人鬼が同類ではないことは分かる」

「………」

「アヴェンジャーは初対面の私に高度なデレテクニックを披露したのだ。それに、あの殺人鬼のように
 私を殺さず、ちゃんと戦争のことも教えてくれただけで十分過ぎるではないか」

「疑う余地は無いと?」

「むしろ、現段階で疑う要素がどこにあるのだ」

嘘はついていない。
確かにアヴェンジャーは嘘を口にはしていないが、聖杯という願望機や令呪の存在を駿河には伝えていない。
彼女が疑わないと豪語するのをあざ笑うかのような事実が、そこにはあった。
それでも神原駿河は、表情一つ変えずそう言ってのけた。

「私はアヴェンジャーの味方だ。だから、私の味方になって欲しい」

「―――お前は……」

こんな小娘を追い詰める言葉など幾らでもあった。
しかし、アヴェンジャーは――今はただ、彼女に呆れていた。


「勝手にやっていろ」


755 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:34:17 8j3sZs.60



―――緊急通達。緊急通達。

サーヴァントの皆さま方、先導アイチです。
非常に申し訳ありませんが、早急にお伝えしなくてはならない事態が発生しました。
どうか、耳を傾けて下さい。

本選開始に伴い、マスター候補の記憶封印プログラムを発動しました。
しかしながらイレギュラー案件が発生し『アヴェンジャー』のサーヴァントが召喚されました。
このイレギュラーの原因は現在究明中です。

『我々』も解析不足の存在です。十分お気をつけて下さい。

それでは良き聖杯戦争を………





756 : Welcome to Tokyo crazy world! ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:35:01 8j3sZs.60
    【キャスト】


 <セイバー>
   來野巽@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ&ジークフリート@Fate/Apocrypha

   松野トド松@おそ松さん&フランドール・スカーレット@東方Project

   アイリス=トンプソン@SCP Foundation&ミリオンズ・ナイブズ@TRIGUN MAXIMUM-トライガン マキシマム-


 <アーチャー>
   今剣@刀剣乱舞&那須与一@ドリフターズ

   アダム@SCP Foundation&ロボひろし@クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん

   織田信長@ドリフターズ&セラス・ヴィクトリア@HELLSING


 <ランサー>
   ホット・パンツ@ジョジョの奇妙な冒険&アクア@マテリアル・パズル

   ジーク@Fate/Apocrypha&ブリュンヒルデ@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ

   カナエ=フォン・ロゼヴァルト@東京喰種:re&ヴラド三世@Fate/EXTRA


 <ライダー>
   平坂黄泉@未来日記&SCP-053@SCP Foundation

   安藤潤也@魔王 JUVENILE REMIX&ジャイロ・ツェペリ@ジョジョの奇妙な冒険


 <キャスター>
   先導エミ@カードファイト!!ヴァンガード&ブルーベル@家庭教師ヒットマンREBORN!

   ジャック・ブライト@SCP Foundation&西行寺幽々子@東方Project

   あやめ@Missing&夜馬(ヨマ)@マテリアル・パズル


 <アサシン>
   安藤(兄)@魔王 JUVENILE REMIX&SCP-073(カイン)@SCP Foundation

   松野カラ松@おそ松さん&宮本明@彼岸島

   二宮飛鳥@アイドルマスター シンデレラガールズ&零崎曲識@人間シリーズ

   メアリー@ib&アイザック・フォスター@殺戮の天使


 <バーサーカー>
   ルーシー・スティール@ジョジョの奇妙な冒険&SCP-076-2(アベル)@SCP Foundation

   馳尾勇路@断章のグリム&ヴラド三世@Fate/Grand Order

   桐敷沙子@屍鬼(漫画版)&オウル(■■■■)@東京喰種:re

   遠野英治@金田一少年の事件簿&ジェイソン・ボーヒーズ@13日の金曜日



                 先導アイチ@カードファイト!!ヴァンガード



 <アヴェンジャー>
   神原駿河@化物語&うちはマダラ@NARUTO


757 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:36:35 8j3sZs.60
オープニング投下終了します。次はルールの追加となります。


758 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:37:20 8j3sZs.60
【ルール】
・定時通達は正午(12時)のみ、サーヴァントのみを対象に行われます。(次回の通達は4日目の正午)
・ただし、イレギュラーであるマダラには通達はされません。(今回の通達も把握しておりません)
・裁定者は存在しない為、事実上ペナルティはありません。
・舞台の東京都から脱出をしようとした場合、主催側(リンクジョーカー)による『処理』がされます。
・割とどうでもいいかもしれませんが、舞台の季節は『春』とします。




<マスター>
【名前@出典】
[状態]
[令呪] 残り◯画
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:
1:
[備考]

<サーヴァント>
【クラス(真名)@出典先】
[状態]
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:
1:
[備考]



【時間表記】
未明(0~4)※本編開始時刻
早朝(4~8)
午前(8~12)
午後(12~16)
夕方(16~20)
夜間(20~24)


【予約期間】
二週間+延長一週間です。
原則として主催側の先導アイチは>>1のみが予約可とします。
それ以外の全ての主従に関しては予約自由です。


759 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/16(水) 23:39:44 8j3sZs.60
以上をもって全投下を終了します。
予約解禁日は3/19(0時)からとさせていただきます。
改めて『Fate/Reverse ―東京虚無聖杯戦争―』本編開始となります。今後ともよろしくお願いします。


760 : 名無しさん :2016/03/16(水) 23:40:55 lX/1NeXU0
投下乙です
いやぁ大分予想と違ってビビりました


761 : 名無しさん :2016/03/16(水) 23:41:50 LxZgbzWo0
投下乙でした


762 : ◆XksB4AwhxU :2016/03/17(木) 13:50:29 dmw/VXOc0
op投下お疲れ様です。
血飛沫や肉片が飛び散る中、ルーラーが不在の完全無法地帯。
そんな東京で、因縁や血縁が複雑に交差する主従達はどの様な結末を迎えるのか、とても楽しみです。

それと、誠に勝手ながら企画主様が選出してくださった「安藤潤也&ライダー」の候補作を一部修正させていただきます。
本編には全く支障はない範囲ですが、突然の修正をお許しください。


763 : 名無しさん :2016/03/17(木) 17:13:24 0Osa3xCMO
オープニング投下乙です

アイチがサーヴァントにしか通達しないのは、エミに聞かれたくないからだったり?


764 : 名無しさん :2016/03/17(木) 19:07:21 rhu269kE0
OP投下乙です。
選ばれた主従達がどんな運命を迎えて、そしてどのような戦いを乗り越えるのか……


765 : ◆aptFsfXzZw :2016/03/18(金) 23:59:57 8ZWpZVAY0
來野巽、セイバー(ジークフリート)、ジーク、ランサー(ブリュンヒルデ)で予約します。


766 : ◆aptFsfXzZw :2016/03/19(土) 00:00:36 IJVxFLAs0
フライング失礼致しました
改めて來野巽、セイバー(ジークフリート)、ジーク、ランサー(ブリュンヒルデ)で予約します。


767 : ◆.wDX6sjxsc :2016/03/19(土) 00:05:53 rRbNo7WI0
ヨマ、あやめ、松野カラ松、宮本明予約します


768 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/19(土) 00:13:12 tUxnOuIY0
こんばんは、ついに予約解禁となりました。
ついでに記載はしていなかったのですが、大雑把でもいいので場所と時間についても状態表明記の方をお願いします。

例【3日目/早朝/東京スカイツリー前】


改めまして
今剣&与一、沙子&オウル、アベル、メアリー&アイザックで予約します。


769 : 名無しさん :2016/03/19(土) 07:27:12 rRCP773k0
地図くらいはあったほうがいいのでは……
都民ではないのでスカイツリーがどことか東京タワーがどことか直感的にわかりませぬゆえ


770 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/19(土) 08:16:55 tUxnOuIY0
>>769
ご意見ありがとうございます。
地図は現在捜索中です。もう少しお待ち下さい…


771 : ◆As6lpa2ikE :2016/03/19(土) 16:56:40 WNU.FnnU0
二宮飛鳥、零崎曲識予約します


772 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/21(月) 21:38:53 VIySyEGc0
遅くなってしまいましたが、地図の方が用意できたので報告しました。
また、地図を制作して下さったのは◆John.ZZqWo様です。
本当に感謝がつきません…ありがとうございました。

ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/270.html


773 : ◆lkOcs49yLc :2016/03/23(水) 15:03:54 A6jPtPZo0
カナエ=フォン=ロゼファルト&ランサーで予約します。


774 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/25(金) 17:53:49 xShCMWNg0
予約分投下します。


775 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/25(金) 17:54:50 xShCMWNg0
東京都新宿区。

地獄があった。
『東京』という世界は、もはや地獄になっていたが、平凡な生活の側面は垣間見ることができた。
しかし、その地獄は夢を打ち滅ぼすかのようだった。

死体。
死体と死体、それから死体。さらには死体。
彼らは、『東京』にいて正気で在り続ける方が苦痛だと、死を以って救われた人間たち。
見ず知らずの人間が見れば、異常たる光景である。
だが、この『東京』には王が存在していた。

絶対的な君臨者。
つい2日前――否、0時を回ったから3日前だろうか、彼が現れたのは。
彼が現れる前までは『東京』ですらこうはならなかったはず。けれども、彼が姿を見せてから変貌したのだ。

この残虐な現場に到着した警察が口にした。


「あの刺青男の仕業だ」


誰も彼もが疑わなかった。
現場検証なんて陰険な儀式をするまでもなく、証拠もなく、根拠もなく決めつけた。

この付近に『あの男』がいるぞと皆が言葉を交わし、生贄であると分かりながらも
彼を追いかける。彼を確保しようと躍起になる。彼の為に、彼だけの為に。
それが彼らの役割だった。
未来が神様のレシピで決められているのならば、このまま地獄の釜に堕ちるのが彼らの『運命』。

一方で。
それ以外の人間はどうだろうか?
平凡な学生、サラリーマン、主婦、子供たち。
彼らは決して警察達のような定められた『運命』なんてありもしないはずだ。
だが、決して平凡な人間たちだけとは限らない。

貧相な人間もいる、ホームレスとか借金取りに追われたどうしようもない人間。
生粋の犯罪者もいる、万引き犯とか通勤ラッシュのどさくさに紛れ痴漢をする人間。
彼らも平凡ではないが、聖杯戦争においてはただの人間だった。
ただの人間なんてひとまとめに表現し過ぎる。

だが、彼らも東京も、屍のようなものだ。

もはや、夜の東京に出ることすら一種の肝試し状態。
外にいるだけで、昼間もそうだが、夜は尚更、命知らずが徘徊するような街。


776 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/25(金) 17:55:46 xShCMWNg0
「うるせぇな。素敵だねぇ、お前さん。人気絶頂のアイドルか?」

不気味な声色で『梟』が喋る。
人の頭部を両手に携えて、自分と同じ人喰いである少女の主と共に地獄である『東京』を歩む。
反秩序であり反社会的な存在の少女――沙子だからこそ、あの殺人鬼に惹かれた。

命を奪う抵抗が人並よりもなくても、命を奪っている自覚はある。
命を奪わなければ生きられないとしても、命を失うことは誰よりも恐れていた。
化物だから救いもないし、正義もないし、祈る神様すらない。
哀れな沙子だが、こうして奇妙な『運命』に巡り合った。

どうして『彼』は命を奪う抵抗も、命に関心もないのだろう。
殺戮を楽しんでいるのに、それ以外の感情がないのは不思議であった。
沙子はあの刺青のバーサーカーに興味がある。
自分とは違う。梟とも違う。
あれこそ、自分たちとは違う世界で生きた者なのだ。

今なお、沙子と梟の前で地獄を進む殺戮者は伝えた。あの忌々しい■■をここから消すのだと。
沙子はふとある存在を思い出す。
彼女が唯一の私物として持ち出した小説。そこで語られる■■の話。
彼らではないとしても、彼らのような因縁があるのかもしれない。

何故ならば、虐殺していた刺青のバーサーカーはいかにも愉しそうであったのに。
奴を探すその姿は、酷く――単純に恐ろしいものでしかなかった。
ただの私怨の塊と化している。


沙子には悪気は無かった。
例え話を挙げたつもりだった。

「貴方、まるでカインに殺されたアベルね」

沙子がどれほど語りかけても無反応であった刺青の殺人鬼は、漸く振り返る。
その姿は地獄の鬼のようでしかない。

「殺人の罪を生涯許さず、カインの子孫が滅びるまで叫び続ける。貴方もそうするつもり?」

対して刺青のバーサーカーは即座に返答する。

「二度とその名を口にするな」

沙子が息を飲んだ。
もう何年ぶりかと思うほど、彼の声を聞いたかと思えば。
明らか様な苛立ちが込められたバーサーカーの言葉は、つらつらと続く。

「何故、君が生きているか考えたことはあるか? 君の死は『奴』の始末よりも大分楽だ。
 それでも私が手を下さないのは、慈悲でも同情でもなく『彼』のお陰だ。分かったか?」

『彼』――頭部を貪っていた梟が嗤う。
殺人鬼は二度と顔を合わせぬ勢いで踵を返したのに、沙子は茫然としていた。


まさか……『本物』?
いえ、まさか……。


777 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/25(金) 17:56:33 xShCMWNg0
沙子には確信などなかった。
彼女は聖杯戦争が何たるかを全く理解していない。気付いたらこの『地獄』に放りこまれていたのだ。
願望機の存在、サーヴァントのこと、マスターとしての使命。
何も知らない。
英霊たちによる戦争という物語を。

梟が何故それを教えないのか? なんて疑問は根本から間違っている。
気の狂った、もはや戻りようもない梟が、全うに物事を語れる保証などどこにもない。
それだけなのである。

だから、彼は『本物のアベル』だという答えに往きつけない。

困惑する沙子に対し梟が頭部から口を離し、血化粧をしたその口で言った。

「スナコちゃぁん」

「ちゃん付けは嫌」

沙子の表情は険しくなる。
梟はしばし間を開けてから、手元に残っていた頭部を沙子に差し出した。
沙子は――驚く。何より戸惑った。

「………わたし『こういう』のは食べた事ないわ」

「少し振り回すと、血が集まっておいしい」

明後日の方向を眺めながら梟は言う。
まるで虚空にいる誰かに話しかけているようでもあったし、あえて沙子と顔を合わせないようしている風でもあった。
格別、沙子を気使った行為でもないだろう。
単純に彼女の機嫌取りをしたいだけかもしれない。

荒廃した精神を持つ梟に常識など求めるべきではない。
仲良し小好しは、その化物にとっては可笑しいし、お菓子いものだと嘲笑するだけ。

その頭部はありきたりな女性の頭部だった。
酷く美しい顔立ちをしている訳ではなく、彼女が有名人という訳でもない。
特別変わった部分なんて、どこにもない。
平凡な、普通で、悪い意味で社会的な女性の頭部。

しかし――沙子にとっては『特別』だった。
少女はソレを受け取る。
授かり物のように、慎重に触れた。
どんな形であれソレは、暴力の象徴である彼から与えられたものなのだから。


778 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/25(金) 17:57:22 xShCMWNg0


「――――」


その瞬間。
まず迅速に行動を移したのは、刺青のバーサーカーだった。
バーサーカーは手にしていたブレードを、ある一点に対して投げつける。
一見そこは物影になっており、余程のことがなければ注目すらしないだろう位置。

奇妙なことに数人の人間が、そんなところで存在していたのである。
ブレードを脳点に命中した男は白目をむいて、激しく転倒したのを他の人間たちが騒ぎ合う。
彼らは悲鳴を漏らすが、不思議にも何故か逃げようとはしない。
一人が撮影機材を手にしており、それで死体を映すに集中しているらしい。
かといって、彼らは決して正式なマスコミではなかった。
野次馬のようだが――面白半分で惨状を撮影しSNSで画像を流したり、
撮影機材を持つ人間は生放送として今なお、映像を動画サイトで流出させている――悪気のないと高をくくる悪意なき悪。

「えっ、誰? 何をしているの……?」

沙子はその行為が理解できなかった。
それもそのはず。
彼女は、ほんの少し昔の時代からやってきた化物なのである。
SNSとか動画サイトなんて類を全く知らない。そもそも、東京に来た彼女はスマホの知識もなかった。

無論。
野次馬は、世間で噂される殺人鬼を追ってここまで来たのだ。
幸運か不幸にも、最悪の邂逅を果たした。
さらには人喰いの梟と少女とも出くわしたのである。
しかし、されど彼らは生贄に過ぎないのだろう。それでも彼らは、あくまで自分の役割を演じる。
梟に恐怖する者もいるが、不浄な頭部を持つ少女に興味を持つ者もいた。

「なんだあれ!? マジで人の頭なんじゃねーの……!」

「うわ! やべぇ、やばいってあれ!!」

明らか様の嫌悪。
異物を発見したからこそ、それを排除しようとする人間の反応。
生き方を否定し、嫌われる。それは――普通に辛かった。
沙子は悲しみを感じた。
嗚呼、やはり自分はこんなにも化物で、どうしようもない。こんな世界では生きる事を許されないと罵倒される。
だけど、それでも存在できるような世界が欲しい。
社会的な存在が妬ましい。

喧しい野次馬たちに対し、指を咥えながら接近する梟。
危険因子であると理解しているのか、それでも彼らは怯えながらも逃亡しない。
足が動けないのか、あるいは自分は死なないなどの確固たる自信があるのか。
血まみれた梟の口元にぞっとする彼らは、やっと言葉を取り戻す。

「お、お前。何……」

「萎びたトマトみてぇだな」

挑発的な梟の態度に、スマホを片手に持つ男が震え声で叫んだ。

「いっ……今な、ネットでテメェら見られてんだぞ! 分かってんのか!?」

「……………、…………………………ねっと」

単語を思い出したかのように呟く梟。
野次馬は、さも自分らが有利であるかのように振舞う。

「そうだ! SNSでもお前らの画像とか出回るぜ!! ひひ、一生ネットの晒し者だよ!」

「みんなと繋がりましょうって、あれか!」

梟が突如理解した矢先に、スマホを持っていた男の首を刎ねた。
ハートの女王に命じられたような残忍な処刑に、野次馬たちは再び沈黙する。
既に自覚するべきだった。
だが、彼らはようやっと眼の前にいる彼らが『死』そのものだと分かったのだろう。
梟は叫んだ。


「勝手に撮ってんじゃねぇよ!!」


死んだ。
また、死んだ。


779 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/25(金) 17:58:29 xShCMWNg0
沙子はその後も続いた死の連鎖を眺めている。
死は平等で、だからこそ恐ろしい。どんな死も酷いもので、特別なものではない。

嗚呼――だけど

こんなにも簡単に。

あっさりと。


なんて……なんて、ありきたりな光景。


彼女は多くを殺した来たが、梟や殺人鬼には劣る程度なのだろう。
彼女が人一人殺すことはあっても、こんなに沢山の死を目にしたことはない。
故に、夢でも見ているようだった。

沙子の抱える首の断面から滴る血。それを指ですくい、口に含んだ沙子は溜息のように感動を漏らした。


「美味しい」





騒がしい。本当に騒がしいものだ。

夜の街を駆けるサーヴァントとマスターがいる。
マスターの名は今剣。
彼のサーヴァントはアーチャー。

彼らの当初いた孤児院から大分移動したはず。
周囲を確認して現在の住所を把握する。

――新宿区。

成程、目的地の千代田区はあともう少しだった。ならば、今剣も少し休む暇があるだろう。
アーチャーは考えた。
何故、千代田区へ向かおうとしているのか?
あの『織田信長』と接触する為に向かおうとしているのだ。――『国会議事堂』に。

嫌がおうにも、NPCたちは自らの役割をしようと行動する。
それに合わせようと彼も、なんだかんだ『そこ』へ足を運ぶ可能性があった。
来なければ、それはそれでマスターである可能性が高まる意味。

もう深夜を回った時刻だ。
最近までは規則正しい生活をしていた今剣は、眠たそうな表情を浮かべている。
アーチャーは主を見かねて、告げた。

「主(マスター)お疲れならば、休まれよ」

「でも……もしものとき、ぼくが」

「安心なさって下され。あなたの目的は聖杯ではありません。
 戦をしないのならば、何もしないにこしたことはありません。お守りしますので」

「……ありがとうございます」

目的地まで直ぐだ。
せめて、最悪の場合も考慮し、今剣は休ませるべきである。
アーチャーはそう判断する。
それから今剣を抱え、見通しの良い建物の屋上に陣取り。固いコンクリートの上であるが、そこに今剣を寝かすアーチャー。
確か――この、アーチャーたちのいる建物は新宿でも名の知れた大型デパート……だったはず。
大きな十字路がデパートの前に広がっている。
建物自体が目立つし、誰かが周囲を通りかかればアーチャーの目に捉えられる。
それほど視界の開けた場所だった。


780 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/25(金) 17:59:21 xShCMWNg0
寝息を立てる主を隣に、アーチャー……那須与一は思う。

彼が疑念を抱いているのは、通達。
先導アイチと名乗った謎の少年(声色からそうではないかと与一は想像している)。
通達にて、彼が語った内容にはおかしな点。

聖杯戦争を主催する国家。
国家とは? 国が聖杯戦争を行うのは何故なのだろうか。
普通は、日本のことを指し示すはずだが、日本の心臓部である『東京』で聖杯戦争を行うのは愚かでしかない。
もっと、あまり注目されない。本州でもない離島で行う方が、幾分納得できる。
となれば――日本ではない、別の、あるいは国家を騙った異端の組織によるもの。

だが、『裁定者』(ルーラー)が存在しないと明言されているのも異常だった。
『裁定者』の召喚は聖杯によって為される。
最悪、聖杯がそうしてしまう可能性もあったというのに、まるで『ありえない』のが前提の話だ。

サーヴァントたちのみに通達がされるなど、本当に――真の意味で悪意がある。
善良なサーヴァントでなければ、通達の存在すらマスターに教えないだろう。
これは基本的な聖杯戦争の知識も含まれるのだが

「解析……とは何だ?」

彼らはあの――イレギュラーたる『アヴェンジャー』を解析不足だと称していた。
サーヴァント、英霊の解析?

情報が断片的で一向に謎が深まるばかりだった。
とはいえ、このまま単純に脱出を図ろうとすれば彼らによって処理されるのは分かった。
別の手段を講じなければならない。

一つは『織田信長』との接触。
もう一つ――頼れるならば、例のイレギュラーの存在。
『アヴェンジャー』……基本クラスに含まれないエクストラクラスに属するサーヴァント。
確信がある訳ではないが、現段階では心当たりがその程度だった。


「!」


与一は、本能的に弓矢を構えていた。
この開けた視界。
ある一点。
遠く彼方から血の軌跡が牽かれて往く。

この『東京』で暴力の象徴とされている異端なる存在が、存在感を全面に出現する。

クラスは不明だが、もう一騎のサーヴァントとそのマスターの姿があった。
刺青のバーサーカー。
噂には聞いた程度だったが、危険であった。
こうして直接視認し、距離を開け、対峙しただけでも与一は――打ち滅ぼすべきだと体が反応する。

矢尻を刺し向ければいい。そんな悪魔の囁きが聞こえた。
躊躇はした。
何故ならば、それは安易な宣戦布告であり、眠りについている主を構う事なく、あのサーヴァントは――殺しにかかってくる。
与一もその程度の予測はできる。
それ故、敵意を示そうとはしなかった。


781 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/25(金) 17:59:43 xShCMWNg0

―――が。

『あちら』は気付いている。
真っ直ぐに与一を捉えていた。
だが、何もしない。
何もせず、彼――刺青のバーサーカーは言う。


「来ないのか」


両者に幾らほどの距離があるだろう?
幾千距離があっても与一の目は、間違いないようなく刺青のバーサーカーの言葉を読みとった。


「君も戦士だろう。好きなようにやればいい」


与一はそれを見て、それを聞いて、自然と不敵な笑みを浮かべる。
本能のまま矢をバーサーカーに向けた。
弓兵が姿を捕捉されたら意味がない? 接近されればお終いだ?

否。

否!

理屈など関係ないのだ。
必要なのは闘争心だけ。
戦が楽しければ良い。

このような地獄で、悪魔のような闘争が望めるのならば―――だとしても――――


「……違う」


違う!

那須与一は『そのようなこと』をにし聖杯戦争に至ったのではない。
聖杯で何かを望むことも。
東京で闘争をする為でも。
そのどちらでもない。主の為だった。今剣の為に『ここ』へ来た。
たとえ、あの忌々しい化物の守り刀であろうとも、彼と今剣は違うのだ。
そして――今は、独りよがりの戦を望める状況でもない。自分だけの『自分』ではない。

「――全ては無常ですな。もしかすれば、貴方と戦うこともあったでしょうに」

与一は今剣を抱え、その場から退いた。
刺青のバーサーカーに牙を立てることも、もう一騎のバーサーカーを狙うことも、そのマスターを狙う事もせず。
対して。
刺青のバーサーカーは不愉快そうな表情を浮かべた。


君がそうするのなら、仕方がない。
だが、その枷がなくなった時。君はどうする?


ただ単純に、人間の感情で表すならば。
刺青のバーサーカーは残念でならなかったのである。





782 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/25(金) 18:00:20 xShCMWNg0

「…………っ………」

沙子は足を止めた。ぎゅっと梟から貰った頭部を抱きかかえ、何とか意識を保つ。
いよいよ体が疲労を覚え始めたのだろうか?
――違う、と沙子は本能的に感じる。

ふと空を見上げると、わずかに明るい色合いになりつつあるのが分かる。
忘れていた訳ではない。
だが、どうすればいいのか分からなかった。
あの梟が食い散らかした病院に居続けることは出来なかったし、けれども往く宛がなかったのだ。

夜明け。

このままでは朝が来る。
そして、抗えぬ眠りが襲いかかるのだ。
沙子の種族である『屍鬼』と称される存在は、人間のように夜更かししようと眠りに抗うことが不可能であった。
眠りについてしまえば、どうすることもできない。
無力になる。
途方もない不安が、眠りの最中にはあった。

「バーサーカー……わたし」

アーチャーの那須与一は確かに立ち去った。
だが、新たなサーヴァントが登場を果たしたのである。

漆黒の鎌を携えた殺人鬼。
アサシンのクラスであるにも関わらず、歓喜の笑い声を漏らしながら、与一とは異なり躊躇なく刃を振りかざす。


「やっと見つけたあぁ!!!」


彼は暗殺者ではなく純粋な殺人鬼だった。
世間は刺青のバーサーカーを『殺人鬼』と称しているが、真の殺人鬼たる存在はこのアサシンのことだ。
戦士と擦り切れた化物相手では圧倒的に不利だとか、そんなものはお構いなしである。
殺人鬼とは、闘争だとか、願いだとか。
ちっぽけなものはどうだっていい。

人間を殺す。

そんな些細な動機だけで十分なのだ。


漆黒の刃を二騎のバーサーカーはかわす。
厳密に言えば、梟の方は沙子を掴み、彼女と共に避けたというべきか。

遅れて舞台に登場したのは殺人鬼のマスターである少女・メアリー。
しかし、沙子と違ってメアリーはこの狂気に満ちた世界が恐ろしくて堪らなかった。
刺青のバーサーカーは暴力の擬人化。
梟は恐怖の擬人化。
そんな風に見える。共にいる殺人鬼なんかよりも、ずっとずっと恐ろしいものだ。


783 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/25(金) 18:01:05 xShCMWNg0

「あ? マスターが一人足りなくねぇか」

アサシン――アイザックことザックが、ちらりと刺青のバーサーカーを見たが、相手の方は知らぬ顔をしている。
まぁ、どうでもいいか。
――と、ザックは興味も警戒もしない。
取り合えず、こいつらを殺せばいいんだ。それだけを考えている。

一方の沙子は、このような状況にも関わらず船を漕いでいた。
梟は彼女に一瞥してから、虚空を見上げ呟く。

「ハコの中に女の子」

「え」

自分の事かとメアリーはギョッとしてしまうが、むしろ反応したことで梟はメアリーと視線が合った。

「おとこが箱に女のこをいれている。羨ましい。はこが欲しい、匣が」

「何言ってんだ、お前」

不気味な梟にザックが言う。
廃退しきった梟を何とも思わないが、なんだか頭のイカれた野郎だとザックですら感じる。
そこで、漸く気付いた。

「お前、バーサーカーか。通りで頭イカれてる訳だ。あー話にならねぇ」

そもそも話なんかする必要もない。
ザックは決め打ったが、梟は沙子を抱き抱え、突如デパートのシャッターを破壊する。
瞬間。
耳につくような警報ベルが鳴り響いた。
梟は、そのままデパート一階にある高級ブティックの品々を破壊するように進んだ。

バーサーカーの行動など理解できないが、ザックは真っ先に逃げたのだと判断し、梟の方を追う。
戸惑うメアリーだったが、そこに残った刺青のバーサーカーが彼女を睨みつけているのが分かり、
逃亡するためにもザックの後に続く他なかった。

狂った彼らに金品などはガラクタでしかない。
だが……梟は何故か『匣』を探している。もしくは『箱』の方かも定かではない。
宝石を破壊し、高級な衣服を絨毯のように踏みつけ、梟と殺人鬼は追いかけ合う。
苛立ったザックは商品ケースをわざと破壊しながら叫んだ。

「テメー! バーサーカーの癖してちょこまか逃げるんじゃねぇよ!!」

いよいよ本気でザックが梟に接近する。
一瞬だが、アサシンとバーサーカーは同速となり、肩を並べた。
チャンスを逃さない。
抱えられている沙子ごと梟を斬ってしまうつもりで、ザックは鎌を再度振り下ろす。

しかし、梟も何もしないことはない。チャンスを伺っていたのは双方同じであったのだ。
タイミングが良くも悪くも、梟が瞬間的に出現させた『赫子』が鎌を弾く。
鈍い音と衝撃がぶつかった。
アサシンとバーサーカーが距離を離すと、その揺れで虚ろだった沙子の手元から頭部が落ちる。

「あっ」

沙子が声を漏らす。
彼女の反応は、まるで大事にしていたぬいぐるみを地面に落してしまった。そんな反応。
転がって来た頭部に、ザックは顔をしかめる。
彼から見ればグロデスクな頭部でしかない。
どうして少女がこのようなものを抱えていたのか、奇妙ではあったが、
ザックの記憶には、どうしようもないほどイカれた少女がいるので、別に大したことはない。

だとしても、ザックにはその頭部は『どうでもいい』ものだった。


784 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/25(金) 18:01:41 xShCMWNg0

「なんだコレ」

邪魔なので、鎌で払い飛ばそうとしたザックに、沙子が叫ぶ。

「やめて!」

あまりに咄嗟だったので沙子自身も驚くほどの大声だった。
ザックは少女にどう反論された程度で動じる殺人鬼ではないが、状況が明らか様に異常であったので茫然とする。

「……んだよ。バーサーカーのマスターも狂ってるってんのか?」

変な話。
いたって全うな反応をした殺人鬼は、結局その頭部を払い飛ばした。
ボールのように頭部は軌道を描き、必死になってザックを追いかけてきたメアリーの身をかすめる。

沙子は不思議にも憤りを覚えた。
殺人鬼の言葉通り、頭がイカれていたとしても。
彼女が生きた中でも、生き返った後でも、これほどの憤慨が湧きあがったことはないだろう。

「バーサーカー……アレはあなたがくれたのに――」

沙子は申し訳なさそうに梟へ呼びかける。
梟は一回だけ沙子に一瞥してから、ザックの方へ向き直った。

その傍ら。

件の頭部に視線を奪われたメアリーは、何か、何かを思い出しそうになっていた。
彼女自身、思い出してはならないことだけは自覚していた。

こんな風になった頭。
どこかで見たような気がする。
血はあった? 血はなかった気がした。

だけど思い出したくは無い。なら……どうすればいいのか。
自分が――どこへ向かえばいいのかも知らないのに。

外に出る?
そっちは駄目だよ。あの刺青の男がいる。
どこへいくの? 戻っておいで。

どこに? 戻る場所が、帰る場所が、あるのだろうか? 自分に??


「え………………………………………?」


暗黒。
何故か、突然。
メアリーの視界は真っ暗闇になる。動けないし、誰もいない。
どこにいるかも、分からない。
暗くて、怖くて、冷たくて、だんだん体が、自由、じゃ、なくなって。なって………

「た、助けて」

誰でもいいから。

「誰か……イヴ………ギャリー」

イヴ? ギャリー?
誰だろう、彼らは。
どうだっていい、けど名前を呼んでも返事はなかった。

こんなところで――ひとりぼっちは嫌だ。

闇の中で文字が浮かぶ。血のような赤によって書かれた文字が。


     バ イバ イ   メ ア リ ー



「う………あ………ざ、ザック――」

「あぁ!? 何だよ!!!」


―――あ………。

半ばやけくそに呼んでしまったかもしれない。けど――彼はちゃんと答えてくれた。
たとえイカれた殺人鬼だろうが。
世間体からすれば凶悪犯であろうが。
メアリーにとっては、ちゃんとそこに居続ける存在だった。


だから、メアリーは安心してしまったのである。


785 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/25(金) 18:02:08 xShCMWNg0



ザックにも状況が掴めなかった。
もはや運が良かったとしか言いようがない。
マスターであるメアリーがザックの名前を呼んだと思えば、いつの間にか倒れ伏していたのだ
反射的にザックは振り向いた為、運良くそれに気付き。
直後、梟の『赫子』が振り下ろされた。

本能に近い判断でメアリーを掴み、転がるような形で梟の攻撃をかわしたザック。
自分が無事だったとしても、ただの少女でしかないメアリーは一溜まりもない。
こんな状況で寝たのかと思ったが、どうやら気絶をしているらしいメアリー。
いや。
気絶も熟睡もどっちだっていい。

命のやり取りの最中、意識を失うなんてどれほど呑気なんだとザックは舌打つ。
梟は口に指を咥えながら、ギョロギョロと周囲を見回して、ザックたちを視界に入れていない。
無論、殺人鬼はそれに苛立ったが、気絶したメアリーを庇い立ちまわれる自信はなかった。
正気ではない梟が発見したのは『匣』だった。
どこか有名ブランドがデザインしたらしい大きめのスーツケース。

梟がそれに近づく中、沙子が小さな声で話す。

「ねぇ……バーサーカー。わたし」

やはり睡魔には抗えない。
だからこそ、何とか伝えようとする沙子。

「さっき貴方に話した通り……とっても弱いの。沢山、人を殺してきたのに」

眠りには逆らえず、心臓が突き刺されてしまえば簡単に死ぬ。
人喰いだから、人間が全滅してしまえば――沙子がどんなに生き延びても死からは逃れられない。
なんて弱々しいのだろう。
正直、梟が羨ましく感じるほど沙子は無力だった。

このまま眠りに居ている間、何が起きるか分からない。
目覚めた時、心臓に杭を突き立てられているかもしれない。
だから怖い。
そう伝えようとしたが、沙子は体を少し震わせ……言った。

「わたし―――まだここにいたい」

嘘じゃなかった。
彼女は人並よりも長く生きたからこそ、この状況が普通じゃないと理解していた。
反秩序で支配されて往く、この『東京』を眺め続けたい。
――死にたくない。

何時眠るのか定かではない少女に、梟は告げた。


「おやすみ 沙子」


表情の見えぬ梟の言葉に、少女は無言になり。

それから返事をした。


「ええ」


少女は死の恐怖も抱かず、穏やかに眠りについた。
彼女が再び目覚められるかは、まだ誰も知らない。


786 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/25(金) 18:02:37 xShCMWNg0



「………は?」

自分だって、マスターのメアリーが何故か気絶してしまったのに納得していないザックだったが。
あの狂った少女の方は、いかにも疲れました雰囲気で寝たのだ。
梟は穏やかに眠る少女を、人形を観察しているかのように眺めている。
ザックが呆然となっているので、梟の方が言う。

「スナコちゃん、おやすみの時間です」

「はあぁぁ!? この状況で寝るとか本気で頭おかしいのかよ!!!」

「スナコちゃん、お昼寝の時間です」

「テメェも呑気に喋ってないで、起こせ!!」

ザックの叫びをかき消すように、乱雑な効果音がデパート内に響いた。
気の触れた刺青のバーサーカーが、商品ケースを強引に外へ蹴り飛ばした……が、彼は気が狂った訳でもなかった。
デパート内で耳につくほど鳴っていたベルは、いつの間にか消えていたものの。
代わりとして、遠くからパトカーのサイレンが聞こえた。
一応、商品ケースはバリケードの代用品にはなっているのだろう。
彼らが破壊したシャッターは、幸いにも一か所だけだった。

ああクソ!
ザックが苛立つ。
そもそも、殺人鬼は刺青のバーサーカーが『東京』で途方もない虐殺を起こしていた事を知らない。
普通よりかは警察の到着が早い、のではなく。
刺青のバーサーカーが原因で、警察の動きもNPCだが多少機敏なのだ。

サイレン音から数台程度の規模ではない。
地獄に向かうかの如く、数十台の車の気配を感じた。
サーヴァントの彼らにとっては、別に大したものではない。だが、確実にマスターの少女たちが足を引っ張っている。
警察との衝突なしで、逃亡など出来るのだろうか。

全ての元凶である刺青のバーサーカーは、悠長にザックへ声をかけた。

「君は逃げるつもりか?」

「あ? 知るかよ! 大体、全員殺すつもりだったから何も考えてねぇ」

ビックリするほど嘘はついていない。
殺せる自信がどこにあった? という疑問ではなく、ザックは殺すことしか考えてなかった。
ある意味、純粋な殺意。
刺青のバーサーカーは確認するように尋ねる。

「最初から? そもそも君は何をしにここへ?」

「だから全員殺せばいいんだろ。聖杯戦争っていうのはよ」

戦争なんて大規模なイメージなど、殺人鬼にはない。
ただ、全員殺せばいい。
間違ってはいないが、どこかズレた解答だった。
しかし、刺青のバーサーカーは不敵な笑みを浮かべながら告げた。

「君は実に正しい。君は今、この世界で最も正しい事を言った。少なくとも私が出会った者の中で一番だ」

内心、ザックはこいつ頭おかしいなとハッキリ断言した。
全員殺す事はザックだけの主張であり、世界の真理でも、この世の正義でもない。
どう頭のネジを抜きとれば、ソレを正しいと明言できるのか。
取り合えず、梟も刺青男も頭がイカれている。
それがマトモな成人男性(殺人鬼)の感想であった。


787 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/25(金) 18:03:30 xShCMWNg0
ザックを余所に、刺青のバーサーカーは外部の様子を伺い、唐突に語り出す。

「敵は出入り口を固める。盾と銃を構えて、包囲する。
 だが、そういう場合――尤も手薄になるのが頭上だ。上からの襲撃には備えられない。
 上から標的が現れた瞬間、銃口を定めるのに数秒時間を浪費する」

「……おい、まさか。俺に命令してんのか」

「私がいつ、そんなことを?」

「あぁ!?」

じゃあ、さっき話したのは何だよ!
ザックは吠えようとしたが。刺青のバーサーカーは、ガツガツと荒れ果てたデパートを駆けていく。
彼らがそんな会話をする最中、梟は沙子をスーツケースにしまう。
担いだ方が楽だろうとザックが少し疑問を覚えた。

外から警察と思われる人間の声が聞こえてくる。
ガラガラと喧しい音を立てながらスーツケースを引っ張る梟は、そのまま刺青男を追跡した。
ザックも警察がいる方から逃亡するつもりは毛頭ない。
メアリーを担いで彼らを追った。

「大体、上から逃げるってビルに飛び移るつもりかよ!」

ザックが乱暴に問いかけたが、刺青男は眉をひそめる。

「君は何か勘違いしているようだ」

「もう少し分かりやすく説明しろよ! 回りくどい話は苦手なんだよ!!」

「私が全力で戦えうるのはあと十数分程度だが……この先、増援を想定しても大体は持っていける。
 だが、残念なことに――それでは、君たちとは当分戦えない」

「―――――」

漸くザックは理解した。
このバーサーカーは逃げるだなんて一言も口にしていない。
常軌を逸脱した頭脳で計算しているのは、いかに人間を殺しきれるかだけだった。
上からの襲撃は、少しでも有利に立ちまわり、命を奪う奇襲に過ぎない。
階段を駆けあがりながらも刺青のバーサーカーは言う。

「うん、やはり魔力が足りないな。私も非常に残念だと思う。しかし、彼らを殺さない理由もない」

大体、ザックや梟とは違い。
このバーサーカーのマスターは、少なくともこの場にはいない。
かと言って、ザックや梟を気使うなんて絶対ありえない。

殺戮する理由がなかった。

彼らと違い霊体化してやり過ごす方がずっとマシだ。むしろ、ソレが普通だ。
だが、それでも殺す。
間違いなく――NPCであっても――『彼ら』は刺青のバーサーカー・アベルにとっての敵なのだから。


788 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/25(金) 18:03:51 xShCMWNg0
沙子が入っているスーツケースを乱雑に引きずりながら梟は血まみれの口で喋った。

「朝食バイキング。並べてあるの全部喰う奴」

刺青のバーサーカーは不愉快そうに答えた。

「臆病な王族より彼らは良い。けれど、君もいつか腹を壊す」

「――退屈をくれてやるよ」

梟が嗤い吐き捨てると、彼らの中で先行する。
ザックとの戦闘では本気の速度ではなかったと分かるほどのものだった。
2階に到着するなり、梟は勢いに任せ、件の出入り口の上に貼られていた大き目の窓ガラスをぶち破る。

外で準備を整えていた警察隊はハッと音に反応し見上げた。
上だ!?
と、誰かが叫ぶが刺青のバーサーカーの述べた通り、襲撃に気づいても――成程――やはり銃口を向ける反応は即座に取れない。
反射的に構えても、銃口を向け、安全装置を外す一連の基礎行動に時間を消費した。

化物相手に戦う人間たちではない、平凡な彼らを。
化物がその数秒で何人殺し切れるか――想像できるだろうか?
無論、この後。銃声が鳴り響くことはなかった。





遠くから血の匂いと地獄の香りを、那須与一は嗅ぎとる。
それがあの刺青のバーサーカーの仕業か。
フードを被った、もう一騎のサーヴァントの仕業なのかも分からない。
もしかしたら、あそこに自分もいた世界などあったのだろう。


想像してみると安堵する自分と、残念に思う自分が確かにいた。




【3日目/早朝/千代田区】


【今剣@刀剣乱舞】
[状態]睡眠
[令呪]残り3画
[装備]短刀「今剣」
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:元の世界に戻る
1:アーチャー(与一)と共に行動する。
[備考]
・聖杯戦争については概ね把握しております。
・アーチャー(与一)の真名は把握しておりません。
・通達については把握しております。
・役割は「孤児院の子供」でした。行方不明となった為、警察に捜索届けが出されているかもしれません。

【アーチャー(那須与一)@ドリフターズ】
[状態]健康
[装備]弓矢
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:今剣を元の世界に帰す。
1:織田信長かアヴェンジャーと接触する。
2:最低限、戦闘は回避したいが……
3:先導アイチの言葉が気になる。
[備考]
・バーサーカー(アベル)の存在は把握、危険視しております。
・バーサーカー(オウル)と桐敷沙子の主従を確認しました。


789 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/25(金) 18:04:56 xShCMWNg0



「あ~~~~~! この――ふざけやがって!!」

すでに太陽が昇り始めていた。
早朝と称する時間帯になったが、それでも都心から離れた場所では住人の姿もなく、静寂に包まれている。
冷えた新宿区の一角。
場に似合わぬ少女を背負う包帯男と、刺青男、ブランド物のスーツケースを引きずるフード男。
そんな三人が移動していた。
明らか様に異端な彼らに、今のところ物言う人間は現れていない。

奇襲作戦は言葉だけで述べるのは容易だが、現実的ではないのだ。
全てがうまくいく訳ではない。
パトカーを破壊したことによる炎上による殺害だとか、全員殺し切った定かではないなど。
予想外の要因の一つや二つあるだろう。

ザックはあまり見たくもない炎を見るハメになったのが不満で、今なお苛立ちを隠せずにいる。
刺青のバーサーカーが、チラリとスーツケースに視線を向け、梟に問うた。

「コレはどうなんだ?」

「スナコちゃん、おやすみなさい」

「そうか」

刺青のバーサーカーは納得したが、ザックの方は余計に苛立った。

「だから起こせよ! お前もまともに運ぶつもりねぇだろうが!!」

新品だったはずが傷まみれになったスーツケースを、ザックが蹴り上げる。
梟は嘲笑した。

「そっちもおやすみしてる」

「あー! うるせぇ!!」

こんな頭のおかしい奴らなんかとっとと殺したい。
それにしたってメアリーが起きる気配はまるでなかった。
ザックもこんなことになるなら、メアリーをどこかに隠しておけばよかったと後悔している。

「大体なぁ、そこのお前――」

刺青男を睨みながらザックが喋りかけた時、気の狂った梟が首を傾げた。

「あ、あぁああああぁ――アベルくぅんがなんだってえぇぇえぇぇ?」

「……あ?」

アベル?

なんだっけとザックも固まった。
全うな生き方をしていないし、殺人鬼で人間を殺す事しか考えていないのに、その名前は聞き覚えがあった。
有名人? 良く分からない。
もしかしたらメアリーの方が知っているかもしれない。

刺青男――アベルも少し目を見開いて、梟を伺う。

「クソ兄貴殺したくって頃したくって比した喰って。違うか? しょうがない。殺されちまった――」

「少し黙れ」

初めてアベルが梟に憎悪を向けた。
並の人間ならば、そんなアベルに恐怖を抱くが。
相も変わらず梟は嗤っており、ザックの方は――ああコイツ、変なところが普通だなと感じていた。


新宿の街に人々が現れ出した頃には、イカれた彼らの姿はどこにもなかった。


790 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/25(金) 18:05:34 xShCMWNg0
【3日目/早朝/新宿区】

【桐敷沙子@屍鬼(藤崎竜版)】
[状態]睡眠、精神的疲労(小)
[令呪]残り3画
[装備]
[道具]室井静信作『屍鬼』
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:もっとここにいたい。
1:ここでは死がありきたりなんだわ……
[備考]
・参戦時期は不明。
・聖杯戦争については把握しておりません。
・一応、アサシン(アイザック)とバーサーカー(アベル)のステータスは把握しております。
・役割は「入院生活を送る身寄りの無い子供」でした。彼女のいた病院はバーサーカー(オウル)により
 大量虐殺が発生しておりますが、沙子が生存が絶望的な死者として扱われるか、行方不明者として
 扱われるかは現時点では不明です。後の書き手様にお任せします。
・バーサーカー(アベル)の真名については、まだ確証がありません。
・屍鬼としての特性で日中は強制的な睡眠に襲われますが、強い外的要因があれば目覚めるかもしれません。


【バーサーカー(オウル)@東京喰種:re】
[状態]魔力消費(中) (捕食による魔力回復含め)
[装備]
[道具]沙子の入ったスーツケース
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:全部殺して、自分が一番だと証明する。
1:バーサーカー(アベル)はおいしいから喰う。
2:アサシン(アイザック)はカビの生えたみかんの味がしそう。
[備考]
・沙子の屍鬼としての特性は理解しており、彼女の身はある程度考慮しております。
・聖杯戦争の説明をしないのはどうでもいいと思っているだけで、話そうとすれば話せます。
・バーサーカー(アベル)の真名については確証があるのかは不明です。
 ただ、オウルが名前代わりに呼んでいるだけかもしれません。



【メアリー@ib】
[状態]気絶、精神的疲労(大)とそれによる情緒不安定、肉体的疲労(大)、記憶喪失
[令呪]残り3画
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:どうすればいいのか分からない。
1:ひとりぼっちは嫌。
[備考]
・役割は不明です。
・聖杯戦争参戦前の記憶がありません。
 自分の名前と「イヴ」「ギャリー」という人物の名前は思い出しました。
・上記の理由から具体的な参戦時期は不明です。
・アサシン(アイザック)の説明が適当な為、聖杯戦争のことをよく分かっておりません。
・一応、バーサーカー(オウル)とバーサーカー(アベル)のステータスは把握しております。


【アサシン(アイザック・フォスター)@殺戮の天使】
[状態]魔力消費(小)、メアリーを背負っている
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:全員殺す
1:早くメアリーは起きて欲しい。
2:バーサーカーたち(アベルとオウル)が頭おかしいし、殺したい。
[備考]
・聖杯戦争についての説明が適当なので令呪のこともメアリーに伝えておりませんが
 伝えるのを忘れているだけなので、教えようと思えば教えます。
・アベルについては名前を聞いた事ある気がするだけでその詳細は知りません。



【バーサーカー(SCP-076-2/アベル)@SCP Foundation】
[状態]魔力消費(大)、SCP-073に対する憎悪
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:闘争を楽しみ尽くしたら、ルーシーを殺害する。
1:SCP-073をここから抹消する。
[備考]
・アーチャー(与一)を把握しましたが、戦意がないと判断しました。
・SCP-073の存在を感じ取っておりますが、正確な位置までは把握できません。


<その他>
・現在『東京』ではバーサーカー(アベル)の情報が多く出回っております。
 また、バーサーカー(オウル)や沙子に関する情報もネット上に出回っているかもしれません。
・新宿区で警察隊や一般市民を巻き込んだ殺傷事件が発生しました。
 ニュースではバーサーカー(アベル)による犯行として取り上げられるかもしれませんが
 目撃情報があればバーサーカー(オウル)やアサシン(アイザック)についての情報も出回るかもしれません。


791 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/25(金) 18:06:50 xShCMWNg0
投下終了です。タイトルは「ヒトクイロマンチスト~イカれ者たちの子唄~」です。


792 : 名無しさん :2016/03/25(金) 18:40:07 FKH50Kt20
投下乙です。
オープニングから引き続きイカレた連中が大暴れする東京…
野次馬も警察も等しく無慈悲に蹂躙されるバーサーカー達の圧倒的な暴力は恐ろしいな
オウルと奇妙な関係を結ぶか弱い怪物のスナコの今後が気になる
そしてイカレた奴らに対するツッコミ役と化してるアイザックに吹くw


793 : ◆3SNKkWKBjc :2016/03/26(土) 07:55:11 YX3EUjzk0
感想ありがとうございます!

続いて
安藤(兄)&カイン、潤也&ジャイロ、駿河&マダラ、遠野&ジェイソン
ホット・パンツ&アクア、平坂黄泉&幼女で予約します。


794 : ◆lkOcs49yLc :2016/03/27(日) 16:54:31 fZS0XBRQ0
投下します。


795 : Vorspeise-前菜 ◆lkOcs49yLc :2016/03/27(日) 16:55:21 fZS0XBRQ0
偽られたこの東京においても、東京拘置所は存在していた。
囚人は看守の命令通りに起床、食事や運動を済ませて後は豚箱でグッスリだ。
だが、檻にぶち込まれた囚人にも十人十色。
精神にヒビが入って、何やら不気味な雰囲気を漂わせている者もいる。
向かいの檻の囚人と談笑している者もいる。
夜中にこっそり脱獄計画を立てている者もいる。
モップで床をピカピカにしている模範囚も存在する・・・・
それが仮釈放目当ての芝居なのか、本当の誠意なのかは、別として。
そんなバラバラな色を持った玉が閉じ込められている箱は、
こうして、玉を規則的に弄んでいた。




だが、魑魅魍魎が跋扈するこの偽りの東京で、そんな毎日が続いて奏でられる保証はない。
ほら、遠くからこの時世に似つかわしくない格好をした槍兵が、血に飢えた様な表情でこの風景を眺めている。
そして、手にとった槍を大空に掲げ、叫ぶ。


『串刺城塞(カズィクル・ベイ)!』


瞬間、広大な面積を誇る拘置所の外側に、幾つもの巨大な真紅の串が、まるで柵のごとく建物を囲んだ。
綿密に仕込まれたセキュリティに阻まれている外側からは、そんなものなど死角にあった。
なので、外部からの目撃者は、まずいない、当事者を除けばの話だが。
そして・・・
「うわっ!」

「何か、身体が重く・・・」

「おい!しっかりしろ!おい!」


串が伸びた瞬間、重力が突然大きくなったように
駅にいる人々の身体は重くなり、更には大きな疲れも現れ、
遂には地面にバッタリと倒れてしまった。
そして、一部の看守もまた巻き添えになった。
まるで魂を吸われたように。グッタリと、血の気を失って。
看守達はこれを見て顔面蒼白になっていた。
殆どの囚人が、グッタリと死んでしまったのだから。
何者かが突然、ギロチンの縄を切ったかの様に。



後に分かったことなのだが、
生き残った囚人は全員再審の際に無罪が証明され、
囚人諸共倒れた一部の看守らは全員、何かしらの不正を
働いていた。


796 : Vorspeise-前菜 ◆lkOcs49yLc :2016/03/27(日) 16:56:20 fZS0XBRQ0


◆  ◆  ◆  ◆


「そうか、箱に眠っていた豚共を根こそぎ喰らってきたか。」

「ああ、今宵の謝肉祭はまた素晴らしい物だったぞ、我が主よ、愚かな罪人共は全て粛清された。」

夜中のロゼヴァルト家の大きな別荘にある食堂で、口直しのワインを飲みながらランサーは満足したかの様な笑顔で、
向かいのイスに座るカナエに語った。カナエはロゼファルト家の本家当主の影響か、喰らう人間に何かと拘る
性質があった。悪質な環境の中喚く罪人の肉など、高貴なる
ランサーの宝具「串刺城塞(カズィクル・ベイ)」。
ランサーが串刺公ドラキュラ等という不名誉な名を付けられた由来である有名な「串刺しの刑」を再現した宝具。
串を出現させ、周囲の「罪人」の魂を喰らう力。
しかし、何故彼らがこの様な大規模な「魂喰い」を行ったのか。


797 : Vorspeise-前菜 ◆lkOcs49yLc :2016/03/27(日) 16:57:37 fZS0XBRQ0
この東京には、「喰種」の存在は確認されていない。

実際、カナエは記憶を取り戻した時には、普通に人間の食事をしていたのだから。
実際、現実世界では死んだはずの両親と兄も人間だ、今この別荘にはいないが。
そして、記憶が戻った瞬間に、赫包が復活したという形で喰種の力を取り戻した、
ということだ。現在、使用人には「食事は作らないでいい」と告げている。
病院に行って、「暫く食べなくてよろしい」という診断を貰ったという嘘を付けて。
だが、喰種にとって、体力というものは大変貴重なものだ。
ランサーの話によると、今カナエの身体に張り巡らされている「魔術回路」なる
擬似神経は、持ち主の体力を痛みという形で奪うことと引き換えに、魔力を
生成するという。喰種は、Rc細胞による驚異的な治癒能力を保持している。
だが、今も尚、ランサーに魔力を与えることによって魔術回路が催す僅かな痛みが、
カナエの中に流れるRc細胞を奪っている事であろう。
カナエの赫子は「鱗赫」。
再生能力においては引けを取らない、余裕で魔力供給を維持し続けることが可能であろう。
だが、聖杯戦争に参加しているマスターには、どの様な人間がいるかは知れたことではない。
人外であるカナエがいるくらいだ、喰種と渡り合えるマスターがいてもおかしくないだろう。
そうなると赫子を出すのは必然。しかも、これにランサーの魔力供給を含めると、
消耗するRc細胞は数知れない。故に、食料を調達する必要があった。
本来なら日本一の人肉市場の喰種レストランで、大量の肉を買い占める予定にあるのだが、それは無理な話だった。
金の問題ではない。
寧ろカナエが実家から持ってきたと設定される金は、少なくとも一般のサラリーマンの年収の数十倍以上
はあるだろう、聖杯戦争がどれほどで終着するのかは知らないが、金に困ることはまず無いだろう。
問題は、喰種レストランが存在しない事だった。喰種がいなければ、喰種レストランが
存在しないのは当然の話。元の世界なら、仮にレストランに入れないとしても
東京23区に縄張りを張っている喰種から買い占める事だって不可能ではないが、
勿論それは論外。
故に基本的にはランサーに通常通りの「魂喰い」をさせ、魂が無に帰した瞬間に
食することにしている。楽に殺し、ランサーに魔力を供給出来る上に赫子の燃料も確保できる、
非常にメリットの多いやり方だ。
使用人のいる厨房に人肉など持ってこれないので、、基本的に獣のごとく食い千切る様な食べ方で捕食する。
きちんと生のステーキの様に加工した肉を、フォークとナイフを手に堪能する
という、喰種にしては異様すぎる習慣を持った月山家の血を引くカナエにとっては、
この様な食べ方は屈辱極まりないことでもあった。
しかし、習様・・・いや、彼女が敬う月山習もまた、時にはこの様な野蛮な食を行った事がある。
故に、言うほど汚れている気は・・・しなかった。

今回東京拘置所で行ったのは、食料の調達ではなかった。
いくらロゼヴァルト家の財力でも、東京拘置所の扉を開くことすら不可能であったし、
そもそもカナエは罪を犯した汚れた豚を食べる気など全くしなかった。

なら何故これをしたのか、と言うとそれは、宝具の試運転だった。
ランサーの宝具は、「祖国を攻めこむという大罪を犯した者への断罪」
という行為が由来であったことから、受けたものへのダメージを増加させる
効果があった。とあれば、実験場は刑務所で決まりだ。
これで罪人にどれほどのダメージを与えられるかを試せる。
そして拘置所で実体化したランサーは早速宝具を開帳した。
ランサーが手に入った魔力は、元の魔力の数倍以上のものだった。
そう、これが、彼が吸血鬼という歪んだ信仰を以って手にした、吸魂の力であった。
また、ランサーの宝具は本来、罪人を串刺しにするものだったが、監視カメラに
睨まれると面倒な事になるので、結局は出来なかった。ランサーは、
そのことについて大変不満があったようだったが。


798 : Vorspeise-前菜 ◆lkOcs49yLc :2016/03/27(日) 16:58:00 fZS0XBRQ0
「なるほど、貴様がそれ程の力を有していたことは良く分かった。」
カナエは、相変わらず冷たい表情で、ワインをゆっくりと飲むランサーに向かってそう言った。
「・・そうか・・・お前にそう言われることは嬉しい・・・」
途端に、ランサーの表情が、最初に契約した頃の様な、淀んだ表情に変わった。
「だが・・・この力は、俺にとっては忌まわしき力だ!!俺の偉業を何も理解せぬ
愚かな者達が、勝手に思い込んで与えた憎き力だ!それが腹立たしくてしょうがない!!」
ランサーは、憎悪のこもった表情と口調で、ワイングラスの取っ手を握った拳をドンとテーブルに叩きつけ、
テーブルに向かってそう吐き捨てた。零れたワインの雫が、テーブルかけに染みとなってついた。
喰種の中でもかなり高い教養の持ち主であるカナエは、ヴラド・ツェペシュの存在をルーマニアの歴史書で既に知っていた。
勿論、ドラキュラ公爵の元ネタにもなっていたことを、習様と、その話を何度か語り合ったこともあった。
だが、それ程にまで、彼は自らの偉業が汚されていた事を恨んでいたのか、それはその狂人っぷり以上に驚ける事だった。
最も、彼・・・いや、彼女にとっては、それ程重要な事でもないが。
そんな事を考えながら、相変わらず冷たい目でランサーを見つめていたが、串刺公のある言葉を聞いた瞬間、
その目がほんの少し動揺を見せた。
「だが・・・それと引き換えにお前の■は美しい・・・嗚呼、その目に、心に、想いに・・・俺はかつて失った■を見た・・・」
顔を上げたランサーが、狂気と恍惚が混ぜ込まれた様な表情で、カナエを見つめる。
それを見て、カナエは若干眉間にシワをよせたが、それでも、彼女には、引っ掛かるものがあった。


799 : Vorspeise-前菜 ◆lkOcs49yLc :2016/03/27(日) 16:58:18 fZS0XBRQ0




■?
ああ、私は確かに習様を■しているであろう。
だが、それは忠誠心故の■だ。決してこの『Vampir(吸血鬼)』がほざくようなものでは無いはず・・・
願いなら・・・勿論ある・・・枯れ果てた習様を・・・・元の、あの美しき尊き姿への戻す事。
それで十分なはず・・・・Doch warum(なのに何故)....それを忌まわしく思えてしまうのだろう。

Was die(では何だ)・・・・この感情は・・・・


Was ist das(では何だ).....




今図星をつかれた、とても■しいこの感情は。




今のカナエ=フォン・ロゼヴァルトは、気付きはしないだろう。


彼女の■が、この槍兵が呟く言葉が、紛れも無い真実であること。
そして信仰によって歪められた彼の姿こそ・・・・ある種ではあるが・・・・






未来の彼女の、写し鏡であった事を。








【ランサー(ヴラドⅢ世@Fate/EXTRA】
[状態]魂喰いによりかなりの魔力を蓄えている。
[装備] 槍(というか串?)
[道具] ワイングラス(ちょっぴり中身溢れている。
[所持金] 無し
[思考・状況]
基本行動方針:マスターの愛を見る。
1:マスターを守る、その真実の愛を、見届けるまで。
2:罪人は粛清出来た、魔力も蓄えられた、俺は満足だ!!
[備考]
宝具「串刺城塞」を開放しました。




【カナエ=フォン・ロゼヴァルト@東京喰種:re】
[状態]魔力消費(小)
[装備]赫子(鱗赫)
[道具]
[所持金] かなり裕福
[思考・状況]
基本行動方針:習様の元に馳せ参じる。
1:魔力と食料は可能な限り集めておく。
2:大学に通いながら、他のマスターの情報を集めておく。


800 : ◆lkOcs49yLc :2016/03/27(日) 16:58:40 fZS0XBRQ0
以上で投下を終了します。


801 : ◆lkOcs49yLc :2016/03/27(日) 17:05:54 fZS0XBRQ0
申し訳ございません、カナエの現状を書き間違えました。

【カナエ=フォン・ロゼヴァルト@東京喰種:re】
[状態]魔力消費(小)、多少の動揺
[装備]赫子(鱗赫)
[道具]
[所持金] かなり裕福
[思考・状況]
基本行動方針:習様の元に馳せ参じる。
1:魔力と食料は可能な限り集めておく。
2:大学に通いながら、他のマスターの情報を集めておく。
3:私は習様を・・・■している・・・!?
[備考]
ランサーが魂喰いにより魔力を大量に手にしたので、
当分は魔力に困らなさそうです。


802 : ◆lkOcs49yLc :2016/03/27(日) 19:17:30 fZS0XBRQ0
文章ミスを再発見。

夜中のロゼヴァルト家の大きな別荘にある食堂で、口直しのワインを飲みながらランサーは満足したかの様な笑顔で、
向かいのイスに座るカナエに語った。カナエはロゼファルト家の本家当主の影響か、喰らう人間に何かと拘る
性質があった。悪質な環境の中喚く罪人の肉など、高貴なる
→☓


夜中のロゼヴァルト家の大きな別荘にある食堂で、口直しのワインを飲みながらランサーは満足したかの様な笑顔で、
向かいのイスに座るカナエに語った。
ランサーの宝具「串刺城塞(カズィクル・ベイ)」。→○

他にも文章に不自然な所が見当たりましたら教えて下さい。


803 : ◆lkOcs49yLc :2016/03/27(日) 19:22:33 fZS0XBRQ0
あ、早速記述ミス再発見。
由来であったことから、受けたものへのダメージを増加させる→☓
由来であったことから、受けたものの持つ罪に比例してダメージを
増加させる→○


804 : ◆.wDX6sjxsc :2016/03/27(日) 19:34:58 ETGxP5ig0
投下乙です

どいつもこいつもはっちゃけてるなぁと言う感想が真っ先に出てきますね
魂喰いと罪人の処刑に勤しむヴラド公ほんと楽しそうで微笑ましいです。
こういった派手な魂喰いができるのもルーラー不在ゆえですね。

自分も投下します


805 : Find Me / Don`t Find Me ◆.wDX6sjxsc :2016/03/27(日) 19:37:32 ETGxP5ig0

物語は『感染』する。
その少女と関わった者は、誰もが全て異界へと消え失せると言う怪奇なる都市伝説。
それが、現代の神隠しの物語。

そう、今も東京は徐々に異界に喰われている―――、


806 : Find Me / Don`t Find Me ◆.wDX6sjxsc :2016/03/27(日) 19:37:56 ETGxP5ig0



月明かりに照らされた公園に、凛、と澄んだ歌声が響く。
そこは少女の聖域だった。
現世を憚る事無く、年季の入った木の長椅子に腰かけ、少女はただ詠う。


―――月よ、夜よ、闇よ、娘は彼方で惑うています。
―――夢よ、現よ、狭間よ、娘は彼方へ隠されました。

その里は全てが偽り。
その里は全てがまやかし。

あるべきものは、あるべき場所へ。
虚の空は現の地平へ。
現世の子らは、居るべき場所へ。

血よ、妖よ、黄昏よ、娘は此方にただ在ります。
郷よ、境よ、心よ、人の子らはただ、此処に在ります―――――


古風ながら、麗美な詩だった。
世界へ浸透し、融け込み、混ざり合う。
それは世界を塗り替える呪文であり、詩であり、祈りの様な魂の詩だった。

即興故か、洗練さに関しては、あと一歩、そう感じられるかもしれないが
醸し出される奇妙な儚さ、美しさは只人が出せるものではない。

当然だ。
彼女――あやめは、永き孤独の時を、詩を以て埋めていたのだから。
今、公園を取り巻く世界はまぎれも無く彼女の為だけにあった。

彼女は神隠しだ。
故に、『還る』場所さえあれば、『帰る』場所は必要ない。
彼女は、じっと何処か穏やかな場所に居たかった。
自分の様に“堕ちる“人間を見たくはなかったのだ。


807 : Find Me / Don`t Find Me ◆.wDX6sjxsc :2016/03/27(日) 19:38:23 ETGxP5ig0

しかし、そんな願いとは裏腹に、彼女の聖杯戦争は、常に彷徨と共にあった。
何故なら、

「今日は…良い夜だなマスター…満月が近い」

びくり、とあやめの小さな肩が震える。
詩はそこで途切れ、恐る恐ると言った様相で振り返ると、ぞっとするような笑みを浮かべたキャスターのサーヴァント、ヨマがそこにいた。

「きゃすたー………」
「どうした……詩はまだ終わってないんだろう……続けろ」

ヨマはそう言って臙脂のケープの襟に持っている杖の先端を引っ掛け、あやめをぶら下げる。
対するあやめは一切視線を合わすことができずただ、震えていた。
この男は、光だ。光に満ちている。
だが、その魂魄は、まぎれも無い『禍つ者』。
その男に引きずられる様にして、自分は東京各所を転々としていた。
彼女としては、兎に角キャスターと一緒に居たくなかったのだが、
キャスターは道中自分が意に沿わない事をする度に、見せしめのように鼻歌交じりで無辜の人々を殺めていった。
逃げれば、きっともっと多くの人がきゃすたーの手にかかるだろう。

「………あの…ごめんなさい……少し……歩いてきても良いですか…?」


だから、彼女にできることは、少しでも一緒に居ないように提案するだけだ。
視線を合わせずに、キャスターの機嫌を必死に伺いながら言葉を紡ぐ。
これでは主従がまるであべこべだが、仕方ない。
あやめは気絶しそうだった。自分が人ならば間違いなく気絶していただろう。
このサーヴァントは紛れも無く自分を抹消しようとしているのだから。


808 : Find Me / Don`t Find Me ◆.wDX6sjxsc :2016/03/27(日) 19:39:15 ETGxP5ig0

そんなあやめの心境はどこ吹く風で、ヨマは無表情で答えず、静謐が二人を包む。
その静謐さすら、あやめを嬲る様だった。
あやめにとっては数分にも感じる数秒の後、ヨマは答える。


「……好きにしろ」

杖が滑り、音も立てずに少女の体が地に投げ出されるが、それだけだった。
てっきり不機嫌になるか――そう危惧していたが、ヨマの顔から嘲るような笑みは消えてはいたが、怒っている様子も無い。
あやめは僅かな安堵と共に、そそくさと公園の出口に向かった。

だがその背にはしっかりと『釘』が、刺される。

「………サーヴァントかマスターを見つけたら……分かってるな?」


―――少女は、振り返らずにただ頷くことしかできなかった。




809 : Find Me / Don`t Find Me ◆.wDX6sjxsc :2016/03/27(日) 19:39:37 ETGxP5ig0

本当に都合の良いマスターだな。
死神ヨマは夜風に吹かれながら独りごちた。
魔力は元が潤沢な上に、あの“神隠し”のお蔭で魂喰いをする必要すらない。
自分に対する態度も基本は『萎縮』、死神としての自分に拒否反応と、
先ほどの様に僅かばかりの意見はするが、後は従順を絵に描いたようだ。

そして――あの詩。
生前唄などに興味を持ったことはほとんど無かったヨマだったが、
あのマスターが奏でる常世の詩とでも言うべき旋律は、
聞いていると自分ですら存在が希釈されるような…奇妙な、しかして不快ではない感覚があった。
それが何なのかは分からないが、価値を付ければ99の城に匹敵するかもしれない。

「ハハハ…そう…こなくちゃな」

他のカス共を皆殺しにして、聖杯が顕現した時にフィナーレを飾る相手としては上出来だろう。

「そうと決まれば……あいつも、俺も、楽しめるように……仕事だ……」

ゆらり、と月を仰ぎながら木製のベンチから立ち上がった。
サーヴァントを発見した際には念話で伝えるようマスターに言ってある。
アサシン顔負けの気配遮断を誇り、兎の様に臆病な彼奴の事だ、無茶はしないだろう。
自分はマスターが散歩に行っている間、何人かのNPCをサクっと殺して、奴らの扱うスマートフォンとやらを借りて来よう。
あのマスターの数少ないデメリットである情報源の情報源の少なさをサーヴァントたる自分が補わければならない。

マスターが先に帰って来ても、この公園で隠れておくように厳命してある。


「……良い夜だ…本当に……満月が、近い」

――情報が欲しいだけならば、無辜の市民を殺す必要はない。
しかし、殺しはヨマにとって食事等の欲求と同義であり、彼が彼でいるための儀式であり、死神としての仕事なのだ。
そう言う意味ではキャスターはとても仕事熱心で、純粋だった。
故に、彼は殺戮に理由を求めず。
見る者に畏怖を抱かせる笑みを浮かべ、死神は公園を後にした。


810 : Find Me / Don`t Find Me ◆.wDX6sjxsc :2016/03/27(日) 19:40:05 ETGxP5ig0



「なぁカラ松~、お願いあんだけど」

居間から離れ、トイレに出ていた次男、松野カラ松を長男松野おそ松は頭の空っぽさを隠そうともせず、そう言って出迎えた。

「フ、何だブラザー。藪からスティックに」

対する次男は痛い。穴を掘って隠したくなる痛々しさだ。

「いやーこれで、パパッとどっかでビールとツマミ買ってきて欲しいんだ」
「な……!」

そんな痛々しさも、おそ松が取り出した五千円札により消し飛ぶ。
有り得ないことでは決してない、だが戦慄を禁じ得なかった。

「馬鹿な…クソニート且つパチンカスのお前が新台出たばかりの夜に、何故そんな大金を持ってる…!?」
「いやさー、あのパチ屋の近くで事件あったみたいで、近づけ無かったのよ。
 いい迷惑だよなー」

腕を組み、大きなため息を一つ吐いた後、カラ松を見やるおそ松。
その瞳は灯油の時の様に“行くよな”と無言の圧力をかけてきていた。
しかし、そこでカラ松の脳裏に、あの無残な屍体が脳裏を過ぎる。
全力で首を横に振らざるを得なかった。

「フッ、ブラザー。俺は最近気づいてしまったんだ。
どんな花でも愛でるだけでは、甘やかすだけではダメになってしまうと。
だから今日はもうさっさと寝よう」
「えーでもさ」
「くどい、俺は絶対いかんぞブラザー。大体今夜はチビ太の所でもう呑んだだろう」
「あれ見てもそう言える?」

不意に、おそ松が指さした方を見やる。
そこには、一松とチョロ松と十四松があまりにも恐ろしい<●><●>こんな目をして自分たちの様子を伺っていた。
目が完全に据わっている。
姿の見えないトド松は……明日用事があるからとさっさと寝てしまっていた。
きっとバイトだろう。


811 : Find Me / Don`t Find Me ◆.wDX6sjxsc :2016/03/27(日) 19:40:33 ETGxP5ig0

「あいつらお前が中途半端な所で帰ろうって言い出したから、完全に悪酔いしてて
このままじゃ収まりそうにないんだよな」
「グ…!しかし」

尚も渋るカラ松を見ておそ松は胡乱げに目を細めた。
数秒の間の後、仕方がないと肩を竦め、首を右に左に振るう。

「じゃーしゃーない。俺が行ってくるよ」
「!?」

逡巡するカラ松を尻目に、微妙に千鳥足で玄関へと向かうおそ松。
これにカラ松は慌てた。
ここでおそ松を行かせては最近物騒だからと、悪酔いした一松と十四松に
ボコボコにされながら、チョロ松にゲロを吐かれながらも無理やり家まで引きずってきた意味が無い。
アサシンを従えている自分はまだ良い。人間の暴漢程度なら問題ない上に
たとえサーヴァントが襲ってきても何とかなる可能性は十分にある。
だが、この取り柄と言えば抜けるような楽天家さだけの赤塚の恥部たる兄が襲われれば……、


はし、とおそ松の袖を掴む。
選択肢は一つしかなかった。


「いいだろう、引き受けた」


812 : Find Me / Don`t Find Me ◆.wDX6sjxsc :2016/03/27(日) 19:40:58 ETGxP5ig0




六人分のビールとツマミを買おうと思えば、存外金がかかる物だ。
加えてそれにエr……グリモワールを買えばそれだけで五千円もつり銭だけになってしまった。
ウィンドウ越しに出てきたコンビニの時計を見やる。零時半。


「フ、ブラザー達起きているだろうな……?」


悪酔いと言っても、大分酔っていたし眠っている可能性はある。
自分のパシらせておいて何だが、それならそれでもいい。
もしそうなら、チビ太には悪いが、明日は今日買った物で宅呑みと行こう。
殺人鬼がうろついてる夜に出歩けるか!俺は家に戻るぞ!だ。


「………そうだよな、アサシン?」


ハァー…ハァーと言う吐息を背に感じながら、振り返る。
そこにはこの自分のパーフェクトファッションとは比べものにならない、
着古したコートを纏った男、アサシンが立っていた。
アサシンは鷲の様な目で此方を見ながら、あァと肯定し、同時に用心しろと言う。

「始まったぞ、マスター。聖杯戦争がな」
「フッ、アサシン。俺は覚悟何てとっくにできぺるぜ」

嘘だ。
本当ならば、全国数百万のカラ松ガールズを魅了するボイスが噛むはずがない。
だが、アサシンは、ほぅと息を吐き、ならばとカラ松に問いかける。


「お前は、明日からどうするつもりだ?」
「フ、決まっている。ノープ……ウソデスゴメンナサイ」

首筋に再び出会った時と同じ様に刃物が当てられ、慌てて弁明する。

「明日は、都心の方に行ってみようと思う」
「へェ、何でまた」
「ガイアが俺にそうしろと言っているからに……サーセン」

あまりに痛い男故についついまた義手の刃が出てしまった。
だが、悪くない考えではある。
あの刺青のバーサーカーが引き起こした一連の事件も都心の方での事だ。

「……フ、都心の方なら一人くらいカラ松ガールズがマスターとしているハズ。
 その子とならば協力できるはずだ」
「つまり同盟…か」

これまた悪くない案だ。
カラ松ガールズと言う存在は妄言だから置いておくとして、
自分一人では、あの刺青のバーサーカーを単独で相手にするのはいささか手に余る。
遅かれ早かれ協力者が必要になるだろう。
強力且つ、自分が勝てるサーヴァントが。
そして、其れすなわち―――吸血鬼。


813 : Find Me / Don`t Find Me ◆.wDX6sjxsc :2016/03/27(日) 19:41:35 ETGxP5ig0

アサシン、宮本明は気づいていた。
この聖杯戦争には複数の吸血鬼が暗躍していると。
刺青のバーサーカーに思わず目が行きがちだが、そのバーサーカーが引き起こしたとは考えにくい、
吸血鬼が引き起こしたとしか思えない事件も調べればそれぞれ別所で複数確認されているのだ。
具体的には、体のどこかに歯を突き立てられ、血を著しく抜かれた形跡のある人間が。

加えて、吸血鬼はこの上なく厄介だが、味方につければ頼もしい一面もある。
斧神の様に。隊長の様に。
そして、自分の宝具さえ決まれば、吸血鬼相手ならば負ける気はしない。
丸太が吸血鬼にとって有効であると、だれが予想できるだろう。

だから―――同盟を結ぶ相手にとしては悪くないのだ。本当に。

問題は、そう簡単に組める主従がいるかと言う事と、もう一つ。


「足はあるのか?働いていないお前が」
「フッ、問題ない。デカパン博士にマシンを頼んである」
「マシン?」
「フッ、明日見せてやろう…このカラ松の愛機、『カラ松 A GO GO!』をな」

話してるうちに電灯の消えた家に辿り着き、カラ松は勝手口の前で鷹揚に見栄を切った。
よく分からないが兎に角凄い自信である。
だが自らの主の様子に明に素朴な疑問が湧き出た。
心中に沸いた疑問をそのままに問う。

「ハ、言うじゃないかマスター。そこまで凄ェやる気になるとは思わなかった」

「え…」

ぴく、とカラ松の表情が変わる。
きょとんとした、まるで自覚がなかった様な。
次いで、その顔に確かな翳りが、刻まれた。
その後に、漆黒の影を落とした家に入りながら、ポツリと、何かが零れ落ちるような呟きを漏らす。
アサシンはそれを無言で聞き、自らのマスターの背を見おくった。


「……ただの、ハリネズミのジレンマだ。とにかく、明日は夕方まで家を離れる」



…現実逃避しようとしても、あの太平楽な顔をした同じ顔の兄弟が、
昼間見た死体と同じになる様が眼窩の裏に悪夢のように張り付いてくるのだ。
その悪夢が、自分を無意識の内に変えつつあるのか?
じわり、じわりと。
自分がこの家を…六人の輪から少しでも離れれば、残された五人に災禍が降りかからないのだろうかと考えるぐらいに。

この家を離れれば、あの刺青のバーサーカーと遭遇するかもしれないのにも関わらず。
それとも、これも一種の逃避なのだろうか。



―――横引の戸が開かれ、外と電気の消えた暗い家の中の空気が交わる刹那、枯れ草に鉄錆を含ませた様な匂いが、カラ松の鼻腔をかすかに擽った。


814 : Find Me / Don`t Find Me ◆.wDX6sjxsc :2016/03/27(日) 19:42:01 ETGxP5ig0



『なぁ、ブラザー。行く前に聞いておきたいことがあるんだが…最近何かが変わったって事無いか?』
『えー、んなもんあるわけないでしょ』

……そんなはずは、無い。
なのに、

『いや何も変わってないって事は無いだろう。ホラ、トッティとか妙に浮かれてたし…』
『うーん、気のせいじゃない?』

気のせい?
今日チビ太の所へ行って、普段より呑んでなかったの、俺とアイツだけだったじゃないか。
それにトッティから滲み出るクソ松臭…気づかないのか、お前は。
何より、

『じゃあ…俺、とかは…?』
『クソタンクトップにクソジャケット。いつも通り痛々しい発言。どっからどう見てもいつものカラ松だろ~。それとも違うの?』

そう…なのか。
聖杯戦争が始まる前の俺と、今の俺はお前には一緒に見えるのか。
そう見えても、不思議はないのかもしれない。
クソニートをやっている俺達六つ子に、そんなオカルトテイストな発想できようはずも無いのだから。
それなのに、俺は何故相談したのだろう。

『……いや、済まない。変な事を聞いた。忘れてくれ』




―――俺は、アイツにどんな答えを期待していたんだ?






815 : Find Me / Don`t Find Me ◆.wDX6sjxsc :2016/03/27(日) 19:42:21 ETGxP5ig0

土地勘の無い道を、万が一にも、自分を“視る“人が居ない様に、
心細い想いをしながら歩いていた、そんな時だった。
あやめは、こんびにと言う雑貨屋の前で、初めて自分以外の聖杯戦争の“ますたー”に出くわした。
出くわした、と言うには一方的な出会いだったが。
『神隠し』である彼女は、彼女の物語に感染していない限り、たとえサーヴァントであっても初見で発見するのは難しい。

『感染』さえ、していればマスターでも容易に発見できるが、カラ松、そしてアサシンは共に幸運にも感染してはいなかった。
あやめの方はと言うと、二人組の片方、顔に走った斜めの傷が印象的な男を見た途端あれは、自分やキャスターと同じものだと直感的に悟った。

そのため、この明かりが落ちた家の前まで遠巻きについてきたのだ。


(きゃすたーを………)

念話でパスの繋がっているキャスターを呼ぼうとした所で、ふと考える。
ここにキャスターを呼べばどうなるだろうか?
答えは決まっている。待っているのは不可避の殺戮だ。

(……いや……)

そう、嫌だった。
けれど、どうしていいのかわからない。
キャスターを呼ぶか、それとも公園でキャスターを待つのか。
神隠しにとっての灯となるはずだった魔王陛下は、この東京には居ないのだから。

―――もう、とっくに『カルネアデスの板』は握らされていると言うのに。


816 : Find Me / Don`t Find Me ◆.wDX6sjxsc :2016/03/27(日) 19:42:44 ETGxP5ig0

【3日目/深夜/板橋区】

【あやめ@Missing-神隠しの物語-】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]神隠し
[道具]無
[所持金]無
[思考・状況]
基本行動方針: 聖杯戦争が恐ろしい。
1:キャスターを呼ぶ?公園に帰る?
[備考]
聖杯戦争についておぼろげにしか把握していません。
SNSで画像がばら撒かれています。そこから物語に感染する人が出るかもしれません。

【ヨマ@マテリアル・パズル】
[状態]健康
[装備]杖
[道具]無
[所持金]無
[思考・状況]
基本行動方針: 全員殺す。
1: サーヴァントを探す。
[備考]
・バーサーカー(アベル)の存在を把握していません。

【松野カラ松@おそ松さん】
[状態]精神疲労?睡眠
[令呪]残り3画
[装備]クソタンクトップ
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:元の世界に戻る
1:とりあえず、明日の夕方までは都心の方に行っていみる。
[備考]
・聖杯戦争の事を正確に把握しています。
・バーサーカー(アベル)の存在を確認していますが、絶対に関わりたくないと思っています。
・神隠しの物語に感染していません。

【アーチャー(宮本明)@彼岸島】
[状態]健康
[装備]無銘の刀
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を獲る。
1:カラ松と共に行動する。
2: 吸血鬼のサーヴァントと同盟を組みたい。
[備考]
・バーサーカー(アベル)の存在は把握、危険視しております。
・神隠しの物語に感染していません。


817 : ◆.wDX6sjxsc :2016/03/27(日) 19:42:58 ETGxP5ig0
投下終了です


818 : ◆.wDX6sjxsc :2016/03/27(日) 21:43:25 ETGxP5ig0
アイリス、ナイブズ、ひろし、アダム
予約します。
後一応4月は忙しくなるかもしれませんので延長お願いします


819 : ◆lkOcs49yLc :2016/03/28(月) 06:49:36 8hZhHJiM0
申し訳ございません、カナエ=フォン・ロゼヴァルト&ランサーの時刻明記を
忘れていました。

【3日目/深夜】


820 : ◆yaJDyrluOY :2016/03/29(火) 22:06:30 lcveYg8.0
ブライト博士、西行寺幽々子、織田信長、セラス・ヴィクトリアで予約します


821 : ◆lkOcs49yLc :2016/03/30(水) 11:00:48 fo2MWwCY0
場所の書き込みも忘れていました。
場所はオープニングと同じ、港区白金台です。


822 : ◆yaJDyrluOY :2016/03/31(木) 09:20:44 1YQRKOhc0
>>820の織田信長、セラス・ヴィクトリアの予約は取り消しでお願い致します。


823 : ◆aptFsfXzZw :2016/03/31(木) 23:31:55 vCfqSPjs0
予約を延長します


824 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/01(金) 10:58:25 wOSuZqLs0
皆さま投下乙です。感想を投下します。


>Vorspeise-前菜
なんだろう、この愉悦部じみた雰囲気は(ざわ…)
確かに相性はいいのかもしれないのですが、カナエを抑えるどころか解放させる方向になりつつあるのがまた。
そんなカナエに接する存在は今のところヴラド(槍)しかいないので。
今後、他の主従と関わりを持つのか。それとも……

>Find Me / Don`t Find Me
あやめちゃんがそこにいますよ(もはや全て不穏)
物語に感染してないから幸運なのか、目をつけられてしまったのが不幸なのか。
何より明さんもこのキャスターとは真っ向勝負するには難しい相手ですので
これはあやめちゃん次第なのでしょうか、あるいはカラ松がトッティの存在に気づけば?


825 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/01(金) 10:59:22 wOSuZqLs0
続いて予約分の投下をします。


826 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/01(金) 11:00:17 wOSuZqLs0
東京都江戸川区。

安藤は身を毛布で包みながら、自室でノートパソコンを起動させていた。
インターネットでニュース映像を再生する。

昨晩、大規模な虐殺が発生した。
あの刺青男は、最初の出現場所・江東区から中央区、千代田区と移動しているようだ。
しかし、その中で謎の男性の姿があったという。
少女を連れたフードを被った男。
文面ではこれだけの情報しかなかった。
フードを被った男が、殺人鬼の共犯者だとか。少女は彼らの人質ではないか。などと憶測が飛び交う。

ネット上では、昨晩にかけて発生した虐殺の映像が出回っている。
野次馬たちが撮った映像……中には異常なものが撮影されていたと云うが、安藤は見なかった。
見なくても分かる。
文面だけの情報だけで十分過ぎる。
頭部を抱えていた少女、人を喰っていた男。――その二人を連れた殺人鬼。

そして、今朝のニュース。
新宿区で大規模な警官隊と殺人鬼たちとの衝突した。
死傷者多数。少なくとも、警官隊は――全滅。
現在、目撃情報を求めている。といった簡易な内容だけである。

また、掲示板や動画サイトでしか話になかったフードの男と少女の映像も、遅く感じるタイミングで公開した。
少女に関しては行方不明になっていた『桐敷沙子』ではないかと報道されている。
彼女の情報は、あまり表に上がらないものの。
しばらくすれば、一つや二つくらい浮き上がって来るかも知れない。
ただ……『桐敷沙子』が人間の頭部を抱えていた。そればかりは、安藤ですら受け入れにくかった。

フードの男……そちらがサーヴァントで間違いない。
『人喰い』のサーヴァント……ただ、一つ疑念がある。
何故、彼らは『最悪の弟』と共に行動しているのだろう?
否、疑念を抱くべきはそこではない。

どうして彼らは『最悪の弟』に殺されないのだろうか?

マスターであろうとも、サーヴァントであっても。
あの殺戮者は容赦などしない。良心なんてのも胸に秘めない。
ならばこそ―――彼らは何ゆえ命を残されているのだ。

安藤の疑問に、彼のサーヴァント・アサシンが模範解答のような返事をする。


『それは恐らく――彼らが人ではないから』


人ではない。
曖昧であるのに的確な表現。あの殺戮者が人間を恨んでいるのならば、酷く納得してしまう。
普通の思考回路ではない、常軌を逸脱しきっている。
だから、奴の心などいくら考えても見つからないと、安藤は決め打った。

人ではないのなら。
あの少女は? あのフードの男は?
人喰いの男……『桐敷沙子』……まだ、まだ彼らの方が考えられるのだが――


827 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/01(金) 11:00:55 wOSuZqLs0

「兄貴ー! って、まだ準備してないのかよ!!」

弟の潤也がノックもなしに扉を開いたのに、安藤は慌ててノートパソコンを畳む。

「も、もう少し待ってくれ」

「早くしろって! あそこのアトラクション、全部平均一時間待ちなんだぜ!?」

「今日は平日だから人なんか来ないだろ」

やれやれといった風に安藤が答えた。
まるで小学生のように弟が興奮する、今日向かう場所のアミューズメント系テーマパーク。
『ランドセルランド』と名付けられたそこは、外国の絶叫系を真似たようなえげつないアトラクションまみれ。
子供から大人まで叫びっぱなしになる……という可愛げあるネーミングからは想像つかない夢の世界。

今、東京が現実味のある地獄ならば。
安藤兄弟が向かう場所は、夢の地獄と称するべきだろう。

本日は無論、平日。
だから安藤の言うとおり、学生はほとんどいないはずだ。……多分。
もしかしたら、安藤たちのように学校をサボっている学生がいるかも、しれない。
正直、学生はほとんど平常に平凡に通常に、ありのまま、普通に通学していることだろう。
それが……普通。

東京にいる人間たちは、皆そうなっていた。
流されるまま。
殺されるまま。
何も、誰も考えないで。
まるで……生贄だ。

実際に――生贄だった。

聖杯戦争の主催者からそう告げられたと、アサシンが安藤に教えていた。
ここにいる人間は生贄でしかない。殺戮者の的になって、人喰いの餌になって、それだけの為にいる存在。
想像しただけで吐き気がする。

彼らがどうなろうとも、彼らがどのような心情で東京に居続けるかも。
聖杯戦争の主催者らは『考える』ことはしないのだ。

しかし、気になる事はある。
アサシンが言うには、聖杯戦争を主催しているのは個人や組織ではなく国家なのだという。
国?
一体、どんな国が……そうではない。
『先導アイチ』といった少年も何者か分からなかった。
ただの国家ではない、その程度しか皮肉にも想像できない。

あとは、『アヴェンジャー』。
基本的な七つのクラスに含まれないエクストラクラス・復讐者のサーヴァント。
これが規格外に、例外的に召喚されてしまった。
アヴェンジャーの召喚が一体何を意味するのか?

安藤には考える事があり過ぎて、手掛かりが不足していた。
他にまだ、何か材料が欲しい。
ヒントとなるもの。
先導アイチ、アヴェンジャー、聖杯戦争を主催する国家。
あの殺戮者――『最悪の弟』。人喰いのサーヴァント。

自然と手に汗が握られていた。
『ランドセルランド』。あそこは、そう、今朝――殺戮が起きたばかりの新宿区の隣。
文京区にあるのだ。
もはや東京にいる時点で邂逅は逃れられず、出くわせば運命か偶然か。少なくとも……必然ではない。
だが、ある意味。度胸試しとしか言いようもない、愚かな行為をしようとしてる。

「兄貴、なに怖い顔してるんだよ」

潤也が聞いたのに、安藤は数秒遅れて反応した。

「あ……ああ………なあ、潤也。今朝のニュース……見たか?」

「今朝? ん~~~~~~あーもう! ニュースなんて別にいいだろ! 今日はそういうのナシ!!
 眉間にしわよせて考えってばっかりなんだよ、兄貴は。考えてばっかりだと寿命縮まるぜ?」

「……そうだな」

準備を整えた安藤は、ふと気付く。
潤也が入場料とか食事代、交通費として用意した数万円。
たかが数万円。されど数万円。
玄関先で「これ兄貴の分な」と取り合えず一万円札を差し出す潤也。
その弟に安藤は尋ねた。

「潤也、このお金どうしたんだ?」

「えっ………ああ! へそくりだよ、へそくり!!」

「へそっ……?? お前そういう奴だったか……?」

「実は結構溜まってるんだぜ? へそくり!」





828 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/01(金) 11:02:29 wOSuZqLs0

――何がどう気に食わないって? そりゃ全部だろ……『普通』じゃあねぇ。
  聖杯を手にする為に手段を選ばない野郎がいたとしても、それとコレは話が別だ。


兄弟たちが家を出てしばらくした後、潤也のサーヴァント・ライダーが念話で言う。
勿論、潤也も今朝のニュースくらいは把握していた。
少なくとも刺青のサーヴァント、そしてフードを被った謎の男と少女の情報は耳にする。
彼らは間違いなく聖杯戦争の渦中にいる存在。
何故、彼らが共に行動しているのかは潤也も考えてはいない。

だが、ライダーと潤也が思うのはこの聖杯戦争の在り方だった。


『そもそも――裁定者ってのが分からないんだけどさ』

――簡単に説明するとゲームの審判役だな。ただし、それを召喚するのは『聖杯』だ。

『聖杯がサーヴァントを?』

――ただ、通常の聖杯戦争で召喚されるものでもないな……
  行われている聖杯戦争が特殊なものか、あるいは聖杯戦争によって世界に歪みが生じる場合。
  そういう事態になるなら『裁定者』は召喚されうる。……これも絶対じゃあない。


揚げ足取りをするなら、今回の聖杯戦争は特殊かもしれないし、世界に影響を及ぼしかねない。
だが、この世界。
もしくはこの世界そのもの、人間を含めた生命まで、聖杯戦争を主催する国家が賄っているならば。
運営に支障なく、問題ないのは分からなくもない。
しかし、ライダーは続けた。

――『限度』は必要だ。そう思わないか、ジュンヤ。
  現に……見てみろ。あの刺青の……恐らくバーサーカーの奴は意気揚々に暴れまくって
  生贄扱いの人間たちもこぞって奴に注目している。こんなことやられたら、逆に
  俺達もぶっ倒そうにも倒しにくいじゃあねぇか。

『確かに。あんな風に注目されたら、それを狙う俺達も巻き込まれるのはな……
 バーサーカーも、まさか意図的に暴れている訳じゃないだろ?』

ニュースで報道されてしまった少女と男の主従。
最悪だと、彼らのように『共犯者』だと濡れ衣を被せられ、作られた場所にしろ世間から非難されるのは御免だ。
確かに『限度』は必要だろう。ライダーの主張も間違いない。
このような状況が続けば、聖杯戦争の存在を隠蔽するのは難しいものとなる。

一方で、あのバーサーカーのような……殺戮を楽しむだけの存在にとっては楽園だ。
皆にとっては地獄であっても、彼らにとっては天国のような。
もし秩序が設けられたならば、こうはならなかったはずなのだから……


――いいや、どうだろうな。………思っていたんだが、ジュンヤ。
  あのバーサーカー……ひょっとしたら理性があるかもしれないぞ。


バーサーカーと一括に称しても種類は様々だ。
基本的にバーサーカーには理性がない。故に言葉もかわす事が叶わず、マスターの手腕に委ねられるクラス。
いかに優秀な魔術師であっても、心優しき人間であっても。
バーサーカーを完璧に操り切れる保証はどこにもない。
令呪ですら無意味に終わる事もなくはない。

ただ稀に、喋れるバーサーカーもいるのだ。
彼らは知らないがフードの男……もう一騎のバーサーカー・梟がそれである。
尤も、彼は喋れるが根本が狂っている。精神が摩耗し、手の施しようもない狂った化物。
それでも言葉が多少通じるのは、他のバーサーカーとの大きな区別となるだろう。

だから。かなり稀に、さほど狂っておらず理性を持つバーサーカーだっている。

ライダーは潤也に話す。

――『手際が良すぎる』。馬鹿丁寧に人間だけ殺しまくっているってのは、どうもよォ……
  暴れまわるってなら思いっきり建物ぐらい破壊するよな? あまり『そういう事』はしてないんだぜ、奴は

『凄いな……俺、そんなところは気付きもしなかった。なら、最悪これも作戦だったりするのか?』

――さあな。可能性は『ある』。だが、もっと単純に……『人間を殺し尽くしたい』って私怨かもな。


829 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/01(金) 11:03:06 wOSuZqLs0
何であれ狂った英霊だ。
気が狂っただけか、根本的にイカれているか、もしくは人間が『狂っている』と判断した狂気か。
潤也は今日使う金を確認する。
これも昨日稼いだ金の一部ではあるが……やはり、東京という場所を巡るにも金は必要だ。
暇があれば、確実に稼いでいくべきだろう。

でも、今日は羽を伸ばすつもり――そう見せかけて、新宿区のあのバーサーカーたちの動向を伺う。
行動しなければ何も始まらない。
それともう一つ。
やはり、事件を警戒する兄の様子で潤也は確信する。

考察癖は相変わらずなんだろうが、今日はそれとは違う。
兄の行動は見張っていく前提だ。
兄がマスターだとして……一体どのような英霊を召喚したんだろうか?
潤也はふと興味を覚えたが。
潤也ですら、人類にとって『最悪な兄』と称される存在を実の兄が召喚したとは――夢でも見ない事だった。





「予想外ではなかったが驚きではあるし、最悪の展開だろう」

ラフな私服を着て、帽子を被った少女が語る。
彼女の眼前に広がるのは、人、人、人。
行列、行列、行列。
ここはまさしく『待機の地獄』だ。

戦場は『ランドセルランド前』。開園およそ1時間と15分前。
入場口も、チケット売り場も、どこもかしこもグロデスクな行列がひしめき合っていた。
改めてこの現状を眺め、少女――神原駿河は唸る。

「やはり、人間の深層心理は恐ろしいものだな。周辺では猟奇事件が多発し、さらにはその実行犯も逮捕されていない。
 まさに世紀末と呼ぶ相応しい状況であっても、不謹慎だから誰も遊園地など行かないだろう。
 こんな危険な状況だからこそ、皆は家で大人しくしているはずだ……
 だからこそ、今このタイミングで遊園地は空いているのではないか? 皆、そう思ったからここにいるのだ。
 根拠もない憶測はアテにはならないな。私もその一人ではあるし、反論の余地はない。
 逆に私一人ではないからこそ安堵をしているんだ」

空いていたら、確かに気楽だし、長蛇の列を目にすることもない。
だからといって一人虚しくジェットコースターに乗るのは、逆に寂しい。
人間とは複雑な生物だ。
人間である少女は、我ながら納得している。

「ああ、勘違いしないで欲しい。私はこれでも『実は空いているのではないか』と連想しただけではない。
 明確な根拠がある。このランドセルランドのある文京区の隣――即ち、新宿区で事件があったと今朝のニュースにあったのだ。
 ここは文京区で、隣の地域だからこそ警戒態勢を怠らないはずではないか。
 それに今日は平日だ。ランドセルランドはそもそも家族向けのテーマパークなのだ。
 趣旨もそうだが、何と言うか、まぁここのアトラクションは中々刺激的で、待ち時間も酷い時には5時間待ち
 なんてのもあるらしい。うむ。カップルで来るにはかなり高レベルの精神力が試されるということだ」

『…………』

「平日に家族揃って訪れるられるのも限られているはずだ。要するに、事件に影響されなくとも多少は空いている。
 私はそう思ったのだが――予想外だった。予想外にしても………
 大した東京都民過ぎる! 聖杯戦争の舞台にいる人間となれば、これほどの覚悟を常に胸潜めているものなのだな」

『………神原駿河』

「いかにも私は神原駿河だが、急にフルネームで呼ばれると歯痒い思いをしてしまうぞ」

『お前は何をしにここへ来た?』


830 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/01(金) 11:04:04 wOSuZqLs0
全うな質問を念話でするのは、神原駿河のサーヴァント・アヴェンジャー。
本来の聖杯戦争には存在しえない英霊。
召喚されるべきものではなかった。なのに、ここへ至ったイレギュラーたるもの。
されど、聖杯戦争では一応存在は知れ渡っている。イレギュラーであるが、登場人物としては受け入れられた。

だからこその疑問だ。
何故、彼らはここに来たのだろうか。
このランドセルランドに。
駿河は先ほど何とか購入したチケットを片手に、返事をした。

「デートだ!」

誰とだ?

などと馬鹿げた問いかけをアヴェンジャーはしない。
彼女が誰かと待ち合わせた様子はないのだから、心当たりは一人だけなのだから。
一方の駿河は語る。

「―――と、大雑把に一まとめにしてしまったのだが。
 厳密にはこの近辺に聖杯戦争のマスターが現れるのではないだろうか? そんな期待を抱いているんだ。
 いささか楽観視しているなどと反論されても致し方ない。しかしながら、それ以外の心当たりがないのも事実だ」

確かに情報は限られていた。
ニュースで得られた刺青のバーサーカーの虐殺。
駿河はそればかりに気を取られており、犯行現場で目撃されているフードの男の方は聞き耳に入らなかった。
否。
差し引いても、それ以上の情報は得られないのだ。
ならばこそ行動を起こす他ないだろう。

「何より――『戦争』と聞いてしまった私は、興奮して授業など集中できる訳ないのだ」

『お前がそれほど好戦的な奴とは予想外だな』

「無論、性的な意味だ!」

何故、聞いてもいないことをあえて言う。

『意味を理解すると怖い話も理解しなければ怖くない』ように『意味を理解しなければ聞こえば良い』事もある。
まさに、その状況だったというのに、神原駿河は迷うことなくぶち壊した。
その幻想をぶち壊さないで欲しい。

「肩の力を抜こう! マスター探しは優先するべきだが、まずは……ん?」

何故かある二人に視線を持って行かれた駿河。
二人の少年。
年は駿河に近いだろう、恐らく高校生くらいだ。友達同士か? いいや。
駿河はどこか記憶の片隅に安藤、と名前が思い浮かんだ。

「安藤先輩?」

名前は――聞いた事がある。
やはり知っている。
本来の記憶を取り戻した駿河にとっては、『東京』での記憶を思い返す方が困難だった。

安藤。

不思議と苗字の方しか思い出せないが、記憶が鮮明になる。

「やはり安藤先輩ではないか」

安藤は駿河よりも一つ上、高校二年生。
格別、特化した存在でもないが、彼女のクラスにいる『安藤潤也』。そう、安藤と共に行動する弟の方。
駿河は彼と同じクラスにいたことを思い出した。
兄弟で仲良く帰宅する姿を見かけたことがある。そんな彼らを飛び越える大ジャンプをかましたことも、何となく記憶にあった。

『知っているのか』

「ん? あぁ。とても仲の良い兄弟だからな、私もついつい目で追ってしまいがちになるのだ。
 しかし――安藤先輩もサボりなのだろうか? 第一印象で決めつけるのは良くないとは思うが……
 少なくとも安藤先輩は仮病を使う風には感じなかったぞ」

弟の潤也は、まだサボっても違和感はないと感じる人格だった。
もしくは――安藤は、潤也に同行しているだけの可能性がある。
しばしの沈黙。
溜めがあってからアヴェンジャーは告げた。


831 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/01(金) 11:04:45 wOSuZqLs0

『お前はついている方かもしれんな』

ついている、と聞いて駿河はあの『猿の手』を思い出すが、アヴェンジャーが話すはソレではない。

『魔術師風情でなけれは模造品の中で紛れこめると踏んだ算段だろうが、俺の「眼」を誤魔化せるとでも?』

わずかに魔力が浮いている。
アヴェンジャーの瞳は確かに――その二人の兄弟を、他とは違うと見抜いた。
そもそも、アヴェンジャーが『東京』にいる人間たちを『模造品』と判断したのは
彼らは平等に、不気味なほど同一な魔力(アヴェンジャーの世界ではチャクラ)を保有していた為。
魔力にも個性はある。それが全て同一であれば異常だ。

そして、安藤兄弟たちはその――『同一』に含まれない。
性質の違い。

「ふむ? アヴェンジャー。私にはよく分からないのだが……安藤先輩たちをどうやって見ているのだ?」

駿河も未だ霊体化の原理を把握していない。
姿は見えなくとも、そこにいるのか? 一体どういう形で? 普通に光景は眺められるものなのか?
実体化することでしか普通は認識できない、のは何となく駿河も受け入れているのだが……
当のアヴェンジャーは答えた。

『一体いつから、俺がお前の隣にいると錯覚していた?』

「な……なん、だと……?」

今はいないのか!?

駿河は驚きを隠せない。思わず周囲を見回してしまった。
念話というのは、ある程度の距離を保たなければ出来ないものではない。
むしろ、マスターから距離をつけても対話が可能という、実に便利な機能でもある。

故に。
サーヴァントがマスターの隣にいる保証は、どこにもなかった。
本当の話、アヴェンジャーは駿河の隣にはいない。少なくとも入場口から離れた位置で実体化しており。
気配遮断の影響で、勘のないサーヴァントはアヴェンジャーの存在を気付く事は無いだろう。

『隣にはいないが、常に動ける位置にいるとだけ言おう。俺の位置を敵に知られる訳にもいくまい』

「成程。物理的ツンデレとはこういう……こちらも了解したぞ、アヴェンジャー。
 ………む? 敵――敵とは一体誰だ? まさかこの聖杯戦争の主催者なる存在か?」

彼らが敵と称したのは聖杯戦争を開催した、所謂――主催者。
敵対するのは、聖杯戦争に参加するマスターでもサーヴァントでもない。
その主催者ただ一つのみ。
アヴェンジャーは言う。

『いいか、神原駿河。自覚がないだろうから伝えておく。あくまで俺達は聖杯戦争に参加している』

「事実上はそうなるのだろうな」

『つまり、聖杯を狙う者にとっては俺達は「敵」だ。そして、俺達を「敵」とする連中は俺達にとっての「敵」だ』

「………」

敵対する理由は無い。
だが、敵となるならば敵になる。
まるで無限回廊を彷徨うような――そんな言葉遊び。

「――確かにそういう『敵』はいるだろう。私もそれは否定しない。だが、今日は『味方』を探そうではないか」

神原駿河はポジティブだった。
聖杯戦争だろうが、大量虐殺が行われていようが、何が起ころうがポジティブだった。
あらゆる負の感情をポジティブに置き換える精神力は、ある意味優れている。

このような状況でも自分を保つ。
平常心でいられるマスターは、サーヴァントにとっては安心できる方かもしれない。


ただし。
アヴェンジャー・うちはマダラにとっては、平凡なマスターより厄介なマスターだった。





832 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/01(金) 11:05:48 wOSuZqLs0


遠野英治の体調はあまり優れなかった。
一応、通りかかった少年に介抱されるのを拒絶してから、すぐに休んだのだが。
一日開けたところで、良くなったとは言えないものである。
こんな時に……英治は溜息をつく。
未だに、バーサーカーの運用による魔力消費だと気付いていない。
環境の変化が激しい為、精神的疲労でも感じているのだと思いこんでしまっていた。

だが、英治は登校する事を選択する。
もしもの話だが――自分の高校・不動高校にマスターがいれば、聖杯戦争の最中で欠席する自分が怪しまれる。
何が何でも、自分がマスターであることを悟られてはならない。
体調の悪さから、朝食を手につけられなかったが……昼食で補うとしよう。

「遠野先輩! おはようございます!!」

「ああ、おはよう」

英治はすぐに思い出せなかったが……どこかで顔見知った不動高校の女後輩に挨拶された。
聖杯戦争。
その概要を聞いても、英治はどう実感すればいいのか分からない。
あのマスターであった……英治が殺した少女のように、こいつもマスターだったりするのだろうか?
不思議と疑心暗鬼を抱いてしまう英治に、後輩は尋ねる。

「先輩、なんだか顔色悪いですよ?」

「いや。ちょっとね……あんな事件があったから」

「ほんと! ヤバいですよね、あの事件! 今度は新宿の方に現れたって」

あの事件。
適当に英治は話題を挙げただけだったが、恐らく――刺青の男。
ニュースの報道があったということは……バーサーカーはまだあの刺青の男を仕留めていないのか……!?
一体何をして……落ち着け。あれほどのサーヴァントだ。
もしかしたらバーサーカーも手こずっているのかも。

冷静にならないと……英治は折角なので後輩と話を続けた。

「そうだ。最近、話題になっている噂とかあるかな。もちろん、あの男の事件とは別の」

「え~~~~今じゃ、私達の間もそっちの話で持ち切りですよ?」

不謹慎という言葉を知らないのか、女後輩はウキウキした雰囲気を隠さずに言う。


「先輩、SNS見てます? 今、あの人探そうってみんな夢中になってますから」

「……ははは。なんだい、それ」

「だーかーらー! SNS!! 先輩まさか今の時代でやってないとかないですよね!?
 あ! てか、先輩ってどこ住んでるんですか? 新宿の方!?」

「え? いや、僕は違うけど――」


奇妙な流れに英治は眉をひそめる。
復讐をしようとした、もうすでに少女一人を殺害した、これからもマスター達を殺害する。
そんな英治であっても、眼の前にいる後輩が異常に感じた。

「そうですか……あーあ~、私も新宿の方に住んでたらなぁ」

「えっと……そんなに興味があるの? 相手は殺人鬼だよ」

「え? だってカッコいいじゃないですか!!」


カッコいい? 何を言っているんだ……??

流石に変だろうと思った英治だが、後輩は自棄に熱く語る。

「だって顔よく見たらイケメンですよ! マジ凄いですよね、SNSって!!
 画像はともかく、さっき映像撮ったのもネットに上がってるし……あ、でもコラ画像は大っ嫌い!!
 ああいうのやる人たちが一番不謹慎だと思いません? 先輩」

そういう君もだけど。
英治は本音を隠し、苦笑いしながら「そうだね」と後輩に相槌するだけだった。


英治はまだ知らない。
彼のかよう『不動高校』にはマスターが他にもいることを。
少なくとも……安藤兄弟、そして神原駿河。
彼らは今日――高校を休んだことを。


833 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/01(金) 11:06:43 wOSuZqLs0


英治のバーサーカー・ジェイソンは、ただ殺人を繰り返す。
通達を聞こうが、英治が強く刺青の男を狙うよう願っていたとしても。
ジェイソンは、ただ彼が思うがままに凶器を振りまわすだけ。

誰に命じられようとも、バーサーカーの狂気に身を委ね、殺害を繰り返す。
ある意味、全うで、普通で、ありきたりで、何らおかしくないバーサーカー。

そんなジェイソンが足を向けるのは、不幸か幸運か。
文京区。
そして――開場しようとする『ランドセルランド』であった。




【3日目/早朝/文京区 ランドセルランド】
 
【安藤(兄)@魔王 JUVENILE REMIX】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]私服
[道具]携帯電話
[所持金]高校生としては普通+潤也から貰った一万円(貯金の方は別としてあるかもしれない)
[思考・状況]
基本行動方針:バーサーカー(アベル)と対決する
1:考える為に情報を集める。
[備考]
・原作第三巻、犬養と邂逅した後からの参戦。
・役割は「不動高校二年生」です。
・通達について把握しております。
・現時点では潤也がマスターとは気付いておりません。
・今朝のニュースで新宿区の事件とフードを被ったのサーヴァント(オウル)と桐敷沙子の存在を把握しました。
 またフードを被ったのサーヴァント(オウル)と桐敷沙子が『人ではない』と考察しています。


【アサシン(SCP-073)@SCP Foundation】
[状態]霊体化
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:バーサーカー(アベル)に謝罪をする
1:自分は聖杯を手にする資格はない、マスター(安藤)の意思を尊重する。
[備考]
・今朝のニュースで新宿区の事件とフードを被ったのサーヴァント(オウル)と桐敷沙子の存在を把握しました。
 またフードを被ったのサーヴァント(オウル)と桐敷沙子が『人ではない』と考察しています。


【安藤潤也@魔王 JUVENILE REMIX】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]私服
[道具]携帯電話
[所持金]高校生としては普通+競馬で稼いだ分(貯金の方は別としてあるかもしれない)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を得る。その為にはなんでもやる。
1:兄を利用する。
2:できれば兄のサーヴァントを把握したいが……
3:暇があれば金を稼ぐ。
[備考]
・参戦時期は不明。少なくとも自身の能力を把握した後の参戦。
・役割は「不動高校一年生」です。
・通達について把握しております。
・安藤(兄)がマスターであると確信しております。
・新宿区で発生した事件とフードを被ったのサーヴァント(オウル)と桐敷沙子の存在を把握しております。
・バーサーカー(アベル)に理性があるのではと推測しております。


【ライダー(ジャイロ・ツェペリ)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]霊体化
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:マスター(潤也)には従うが……
1:潤也の意思に不穏を抱いている。
2:どうにも主催者が気に食わない。
[備考]
・新宿区で発生した事件とフードを被ったのサーヴァント(オウル)と桐敷沙子の存在を把握しております。
・バーサーカー(アベル)に理性があるのではと推測しております。


834 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/01(金) 11:07:45 wOSuZqLs0

【神原駿河@化物語】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]私服
[道具]携帯電話
[所持金]高校生としては普通
[思考・状況]
基本行動方針:生きて元の世界に帰らなくては。
1:まずは『味方』を探す。
2:アヴェンジャー(マダラ)にはもっとデレて欲しい。
[備考]
・参戦時期は怪異に苦しむ戦場ヶ原ひたぎの助けになろうとした矢先。
・聖杯戦争について令呪と『聖杯』の存在については把握しておりません。
・役割は「不動高校一年生」です。安藤潤也と同じクラスに所属しております。
・新宿区で発生した事件を把握しております。バーサーカー(オウル)と桐敷沙子の存在を把握しているかは不明です。
・アヴェンジャー(マダラ)の発言により安藤兄弟がマスターであると把握しております。
・『レイニーデビル』が効果を発揮するかは、現時点では不明です。


【アヴェンジャー(うちはマダラ)@NARUTO】
[状態]気配遮断
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:この聖杯戦争を潰す。
1:神原駿河とはあまり関わりを持ちたくない。
2:他の主従の動向を探る。『敵』は倒す。『味方』には興味ない。
[備考]
・安藤兄弟がマスターであると把握しました。
・新宿区で発生した事件を把握しております。バーサーカー(オウル)と桐敷沙子の存在を把握しているかは不明です。


【バーサーカー(ジェイソン・ボーヒーズ)@13日の金曜日】
[状態]魔力消費(中)
[装備]無銘・斧
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:殺戮
1:???
[備考]
・恐らくマスターかサーヴァントを発見すれば、それらの殺害を優先すると思われます。




【3日目/早朝/葛飾区 不動高校へ登校途中】

【遠野英治@金田一少年の事件簿】
[状態]魔力消費(大)それによる体調不良
[令呪]残り3画
[装備]不動高校の制服、学生鞄
[道具]勉強道具、携帯電話
[所持金]並の高校生よりかは裕福
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れ、螢子を蘇生する。
1:学校内にいるかもしれないマスターに警戒。
2:SNSで情報を集めて見る手も……
[備考]
・役割は「不動高校の三年生」です。
・通達は把握しておりません。
・体調不良については過労のようなものと思い込んでおります。
・聖杯戦争については大方把握しております。
・刺青の男・バーサーカー(アベル)が生存していることと、新宿区で事件があったのを把握しました。
 しかし詳細な情報ではありません。


<捕捉>
私立不動高校は葛飾区にあります。
少なくとも安藤(兄)、安藤潤也、神原駿河、遠野英治が在籍しております。


835 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/01(金) 11:08:30 wOSuZqLs0



聖杯戦争は本選へと移行する。
通達が行われたが、それはサーヴァントのみにしかされないらしい。
通達者の名前は『先導アイチ』。声色から少年ではないかと思われる。

アイチ……

この名前に聞き覚えがあった女性のマスター。彼女の名は――ホット・パンツ。
一人の少女がこの名前の少年を探していた。
少女のことは、変なことにハッキリ記憶にあった。
第一……彼女こそがホットパンツの記憶を取り戻す、切っ掛けを作った人物だった。

あの少女は――マスターか?
どうだか。少なくとも、聖杯戦争に無縁とは考えにくい。ホット・パンツは、そう判断する。
彼女はアイチという少年を探す少女の他にも、目をつけているものがあった。

「やはり……まだ生きているか。バーサーカー」

ニュースを把握したのは安藤兄弟たちだけではない。全てのマスターたちが平等に知る権利がある。
ホット・パンツも、教会から離れた場所――東京都中野区まで移動をしていた。
別に彼女はプロファイルを得意としている訳ではない。
ただ、刺青のバーサーカーの行動を考えるに……場所を上へと移動している。そう推察していた。


江東区→中央区→千代田区→新宿区→?


ならば中野区や豊島区……文京区は少し微妙だが、その近辺に出没するのではないか。
ホット・パンツは確証があった訳ではないが、他に行く宛もない。
刺青のバーサーカーも一晩暴れまわった。恐らく魔力は消耗しきっている。

「どうだろうねぇ。脳ある奴だとしたら、あたしが表に出たところで仕掛けて来るか分からないよ」

ホット・パンツのサーヴァント・ランサーが、飴玉をガリガリと噛み砕きながら言った。
一理あるが仕方ない。
飴玉を舐めるランサーに、ホット・パンツは返事をする。

「それを確かめる為だ。魔力の温存を優先するか、先走るか……」

「あたしは囮ってことかい。しゃくだね」

「あくまで『今回』は刺青のバーサーカーをおびき寄せる為だ。魔力がない内に仕留められれば楽だからな」

駅前の人通りの多い場所を二人はしばらくウロついていたが、これいって事は起きず。
東京でよくある通勤通学の光景を眺めているだけだった。
虐殺する為に、人の密集地帯を狙うかと思えば……違うのか?
そもそも――ここにはあのバーサーカーがいないだけ……?
ホット・パンツは考察するがサッパリである。

何にせよ、これ以上留まっても意味はない。
地面に置いていた飴玉を詰めたバッグを持ち上げ、ホット・パンツはランサーに呼びかける。

「ランサー。場所を移動する」

「はいよ」

よいしょ、と年寄りみたいなかけ声を漏らしながらランサーは霊体化した。
さて、次はどこへ向かおうか。
ホット・パンツが人々の流れに沿って、駅構内に足を向けた時。
巡回していたらしい警察官数名が妙な男を捉えていた。


836 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/01(金) 11:09:18 wOSuZqLs0
……いや、明らかに不審者だった。ホット・パンツでさえも思う。
何故か紙袋を頭に被って、覆面のようにしている謎めいた男性。
警察官も捕まえたいのは奇妙な不審者ではなく、刺青男の方なのにいい迷惑だと言わんばかりの表情を浮かべていた。
数名いる警察官の一人が尋ねた。

「えー、ではもう一度聞きますが。あなたは?」

「ですから、私は正義の味方です。怪しい者ではありません!」

「だーから! 名前を名乗って下さいとおっしゃっているでしょう!! それに何故顔を隠してるんです」

「正義のヒーローとはそういうものではありませんか!」

「はぁ、そうですか。じゃあ、正義の味方さん。この女の子は?」

「私は悪の組織から彼女を守っているのです」

「いい加減にしろ!!」

いよいよ痺れの切らせた警官が吠える。
少女を誘拐した? にしたって随分間抜けな……とホット・パンツがチラリと視線を向けた。
女性警察官が優しく声をかけている少女。
少女? もっと幼い。
いわば幼女と称されるべき年齢の彼女。

ホット・パンツは驚愕を隠せなかった。
それは――

「ら……ランサー。サーヴァントだわ……あの子供! ライダーのサーヴァント……!!」

『え』

ランサーも素っ頓狂な声を上げた。
飴のランサーも見かけは子供であったが、そのライダーはランサーよりも大分幼い。
彼女に果たして確固たる性格が芽生えているのか怪しい。
そんな幼女がサーヴァントだなんて、誰も想像できないだろう。

「間違いない、ステータスも見える。状況は厄介だが……ランサー! あなたの力なら仕留められるかも」

『……………っ』

幼女。
まさかこんなに幼い……
こればっかりはランサーも予想外だったかもしれない。
サーヴァントというのは英霊なのだ。子供とはいえ、最悪はランサー程度の……しかし、あれほど幼い女の子も?


837 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/01(金) 11:10:05 wOSuZqLs0
『あたしのスパイシードロップは……あたしは巻き込まないけど、それ以外の人間は容赦なくぶっ飛ばす。
 こんなに人が多いと大事になるよ。ホット・パンツ。あんたがそれでも構わないなら、あたしも従う』

遠まわしに攻撃したくない、そうランサーは告げたようなものだった。
子供、とくに女の子は。
アロア――彼女の妹を連想する。

殺さなければならない相手。だから聖杯戦争でも、あのような子供も躊躇なく破壊せねば!
使命感に近いものを抱きながら、それでも決定はホット・パンツに委ねた。
逃げである。

ホット・パンツも、直ぐ仕留めようとはしない。
状況を考える。最低でも周囲にいる警察官は巻き込むが……構わない。
こうなれば容赦はしない。
聖杯を手に入れる為の生贄なんだ。
そう、ここにいる人間たちは――生贄。

「ホット・パンツ!」

「!?」

ランサーが霊体化を解除していた。
しかし、それは――ライダーを攻撃する為ではなく、ホット・パンツに襲いかかった人間を攻撃するため。
飴玉一つ分だけの『スパイシードロップ』。
十分過ぎる威力で、その人間を飛ばした。ホット・パンツは身構えながら、襲いかかった人間を睨む。
周囲にいるNPCたちも何事かと注目してしまう。

「な、なんだ!? こいつは一体……マスターなのか……!?」

襲いかかったのは女子中学生だった。
これから電車に乗車するだろう通学中の女子中学生、にしか見えない。
彼女がマスターだとして、そのサーヴァントの気配がまるでないのだ。
女子中学生は倒れたまま。

その場が異様な空気に包まれる中、幼女に話しかけていた女性警察官が携帯していた警棒を取り出し。
突如として、近くにいた中年のサラリーマンを殴りつけた。
ホット・パンツが振り返った時、警棒で嬲り殺しする女性警察官という異常な光景を目の当たりにした直後。
野球部に所属するらしい男子学生がバッドで、OLらしい女性の頭部を叩きつけた。
さらには、殺人鬼が徘徊する故に携帯していたらしい拳銃を手にする警察官。
ホット・パンツは、とっさに身を捩ったが。
その警察官が銃口を向けたのは、謎の覆面男性を尋問していた警察官だった。

銃声。

魂が消えた警察官が倒れる。
いよいよ、周囲がパニックになるかと思われた。だが、それもなかった。
むしろ、周囲に居る人間たちはどこか正気ではなく、武器になりそうな物を手に取ったり、攻撃する相手を選んでいるようだった。

「ま、まずい……!? この状況、まさか……!」

攻撃されている!?

ホット・パンツは、幼女のライダーを見る。
不気味なほど、ライダーはホット・パンツたちの方を見つめていた。
このようなイカれた状況で!

「ランサー! わたしたちは攻撃されている!! 躊躇うなッ! 宝具を使え!!!」

「くっ………この―――!!!」

人間たちは皆殺しを始めた。
全ての脅威がホット・パンツたちに向けられるものではなかった。
近くに居た人間を何が何でも殺そうとしている。中にはホット・パンツのように、正気な人間もおり。
彼らは無抵抗に殺害された。

ランサーにも善意があるが、ホット・パンツの言うとおり。躊躇など出来ない。


838 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/01(金) 11:10:49 wOSuZqLs0


―――マテリアル・パズル『スパイシードロップ』―――


地面を転がった飴玉が人々を吹き飛ばす。
ランサーはホット・パンツのバッグから、もう一掴み飴玉をバラまく。
この攻撃がライダーまで届いているかは定かではなかった。
少なくとも、自分たちは捕捉されてしまった。何より、悪意のない人間たちを操って攻撃をしかけるなど。
ライダーではなくキャスターのような攻撃手段。

ランサーの攻撃により舞い上がった砂煙が助けになる。
ホット・パンツはそのまま駅構内へ突入した。
そこにいた人間たちは、一体何が起きたと茫然としたり、悲鳴を上げて走る者の姿もある。

「ランサー、逃げるぞ! 人が多いこの状況……あのライダーの有効範囲だ!
 どういう攻撃か分からないが――まだここにいる人間はライダーに支配されていない!!」

ホット・パンツと続くように、暴徒と化した人間たちが現れる。
決して、ホット・パンツだけを狙っているのではないことは分かっていた。
このまま、NPCたちに紛れ……一旦退く!

『まもなく電車が到着します――』

アナウンスが聞こえたのに、ホット・パンツは即座に動いた。
暴徒たちがすでに周囲を弄り始めているおかげで、改札口を乗り越えても誰もホット・パンツと彼女に同行するランサーを
咎める者などいない。むしろ、正気の人間たちは逃げ惑う。

「ハッ!?」

ランサーは振り返ると、あの覆面男の存在に気づく。
彼はしっかりとライダーを抱きかかえ、こちらを伺っているようにみえる。
やはりあの男がマスターなのだ。
違う! どうでもいい!!

「あのライダーは本気じゃないよ! これも能力か何かの一つ……!! 騎乗する宝具があるだろうからね!」

あの主従がそこまでやり切るか? やりかねない!
ここにいる人間たちなどおかまいなしだ。
ホット・パンツとランサーは、電車が到着したホームへ走る。
彼女たちと同じように、全うな人間たちは狂った現場から一刻も早く逃げ出そうと駆けた。

故に、電車は異常なまでに押し込みあった。
ホット・パンツたちが到着した頃には、ホームに足を踏み入れることすら叶わない。
彼女たちの背後には、暴徒の叫び声、被害者の悲鳴が聞こえる。

無理だ。電車には乗れない……!

ランサーはいよいよもって、全員を破壊しなければならないのかと飴玉を握る。
――が、ホット・パンツは冷静に告げた。

「ランサー……霊体化しろ。ここまで『逃げ切った』のはライダーたちの視線から『逃れる為』だ」

取り出すはスプレー。
彼女の能力――『クリーム・スターター』。
自分自身の肉体を溶かす。そう、自在に溶かしきり、排水溝から逃れる為に!
その為にこの道を選んだ。
地獄のような渦中で、彼女が消えたことなんて誰も気づかない。
まだライダーたちも、ホット・パンツの能力を把握していないからだ!

「だが――必ず始末する! あの子供のライダー……次出会った時、最初に攻撃を仕掛けるのはわたしたちの方になる」





839 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/01(金) 11:11:15 wOSuZqLs0

「大丈夫ですか?」

紙袋の覆面を被った男――平坂黄泉が幼女に問う。
ライダーのサーヴァントである幼女は、何の濁りもなく頷いた。
平坂が現状の整理が追いついていなかった。

ここは地獄。
地獄であった場所。
中野駅。

少なくとも平坂たち以外で無事な人間はいない。駅内には人のざわめきが幾つか聞こえる。
ただ、彼らは酷く怯えていた。彼らも、起きた現象を理解していない。
それは平坂もだった。

催眠術。
常人では簡単に成しえない技だが、平坂はそれを会得している。
だからこそ、暴徒達を催眠術で落ち着かせようと試みたのだが、全く効果がなかった。
催眠術が効かなかった。
というよりも、もっと強力な――そう。平坂ではない、第三者によって強力な催眠をかけられていたように感じた。
確証はない。常識的に、平坂が催眠術を扱えることすら怪しまれる。
故に、平坂も一人で為さねばならないと使命感を抱いていた。
否。
頼れる仲間がいても、彼は正義の味方として一人で為そうとするだろうが。

平坂は、聖杯戦争を把握していない。
彼のサーヴァントが少女……どころではない、幼女なのだ。当然のことであり、彼は不幸かも定かではない。
平坂黄泉がすべき事は一つ。

正義を為す。

正義とは勝つ事。悪とは負ける事。
無茶苦茶だが、勝った方が正義なんだよという強引なやり口には違いない。
故に。
目標となり、自然と敵になるのは『東京』で殺戮を行う反秩序たち。

ただ、平坂も闇雲の猪突猛進ではない。
マスターなどと何か変わった内容を話す人物――ホット・パンツには気づいていた。
彼女を探そうと駅を捜索しても、どこにもいなかった。


あの者を探さなければ。
少女のことを知っているかもしれない。


幼女を守ると決心している平坂だが、彼も幼女の正体は知らないままなのだ。
謎が多くひしめく『東京』。
平坂もまた――悪を知らない。

悪にも様々な種類が居る。

世界の平和を脅かす存在だけではない。
人々の平和を脅かさなければ『生きてはいけない』――そんな悪が居る事を。
まだ、知らない。


840 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/01(金) 11:11:54 wOSuZqLs0
【3日目/早朝/中野区】

【ホット・パンツ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]
[道具]『クリーム・スターター』
[所持金]それなりにある
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を獲得し、弟に許されたい。
1:一旦退き、少女のライダー(幼女)の対策をする。
2:刺青のバーサーカー(アベル)を今の内に仕留めたいが……
3:少女(先導エミ)と先導アイチの関係は……?
[備考]
・役割は「教会のシスター」です。
・拠点である教会に買い溜めした飴があります。当分、補充が利く程度の量です。
・通達を把握しました。
 また通達者の先導アイチは少女(先導エミ)が探す人物ではないかと推測しております。
・少女(先導エミ)はマスターではないかと疑っております。
・平坂と少女のライダー(幼女)の主従を把握しました。


【ランサー(アクア)@マテリアル・パズル】
[状態]霊体化、魔力消費(微)
[装備]アメ
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を獲る。ホット・パンツにはなるべく従う。
1:個人的には少女とは戦いたくない。
[備考]
・平坂と少女のライダー(幼女)の主従を把握しました。
・幼い少女は妹を連想させる為、戦うのに多少抵抗を覚えてしまうかもしれません。



【平坂黄泉@未来日記】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]紙袋の覆面
[道具]
[所持金]貧困
[思考・状況]
基本行動方針:正義を為す
1:ライダー(幼女)を守り抜く。
2:『東京』で暴れまわる殺人鬼(アベル)を倒す。
3:先ほどの人物(ホット・パンツ)から事情を聞きたいが……
[備考]
・聖杯戦争を把握しておりません。
・ライダー(幼女)が何者から狙われた存在だと思い込んでいます。
・強力な催眠術を使う者がいると把握しました。それがライダー(幼女)とは思っておりません。


【ライダー(SCP-053)@SCP Foundation】
[状態]健康
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:遊ぶ
1:マスター(平坂)と共に行動する。
[備考]
・アサシン(アイザック)とメアリーの主従を把握しております。
・ランサー(アクア)とホット・パンツの主従を把握しております。
・現時点では『SCP-682』を召喚する様子はありません。
 彼女が『SCP-682』と遊びたくなった場合、召喚してしまうかもしれません。


841 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/01(金) 11:14:43 wOSuZqLs0
投下を終了します。タイトルは「あの日死んだ生贄の名前を僕達はまだ知らない」です。
ちなみにしょぼいエイプリルフールっぽいをwikiの方でしています。明日には元に戻ります。


842 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/02(土) 08:01:35 eurvkGOA0
ルーシー、信長&セラス、エミ&ブルーベル、馳尾&ヴラド(狂)、トド松&フラン
予約します。


843 : ◆As6lpa2ikE :2016/04/02(土) 19:58:16 DfuDetsE0
すみません、予約を延長します


844 : ◆As6lpa2ikE :2016/04/07(木) 22:37:27 tXoJ6Cm20
投下します


845 : ◆As6lpa2ikE :2016/04/07(木) 22:37:56 tXoJ6Cm20





本当に死ぬ準備や覚悟が出来てる人間なんていない。
もしそんなやつがいるとしたら、そいつは既に死んでいるも同然だ。


846 : ◆As6lpa2ikE :2016/04/07(木) 22:39:14 tXoJ6Cm20


零崎曲識を説明する際に用いられる言葉。
殺人鬼。音楽家。音使い。零崎三天王。『逃げの曲識』。『菜食主義者(ベジタリアン)』。『少女趣味(ボルトキープ)』。少女しか殺さない殺人鬼。世界の脇役。ロリコン。燕尾服。ウェーブのかかった長髪。天然。マイペース。悪くない、が口癖。
そして、アサシンのクラスのサーヴァント――。

一賊を巻き込んだ、かの小さな戦争にすらマトモに関わらなかった彼が、死後こうして一騎のサーヴァントとして聖杯戦争に召喚されているのは皮肉めいたものを感じるが、それは彼に言わせれば、

「暗殺者(アサシン)なら僕――零崎以外に相応しいやつ(殺し名)がいるだろうに…… やれやれ、『逃げの曲識』と呼ばれた僕も、流石に聖杯のシステムからは逃れられなかったというわけか」

ということなのだろう。勿論、最後には付け加えて『悪くない』と言うに違いない――。
さて。
現在――深夜零時を過ぎた頃。
彼が何処に居たのかというと、マスターの自宅(偽)の彼女の部屋の中で、椅子に座っていた。
つい先ほど、彼の頭の中には聖杯戦争を主催する国家に所属する者――先導アイチからの通達が流れていたのである。
それによると、どうやら戦争は本番へと突入したらしい。
その他にも聞こえてきた、様々な情報を曲識は思い出す。

「悪くない」

彼は椅子の背もたれに身体を倒した。

「これからようやく本番というわけか…… 明日――朝になったらマスターにこの事を伝えなくてはな」

そう呟き、ふと曲識は部屋のベッドの上へ目をやる。
そこには彼のマスターこと、二宮飛鳥が眠っていた。
普通なら彼女はこんな時間でもまだ起きているはずなのだが……昼間の買い物で疲れたのだろう。
もしくは、この聖杯戦争という特異な環境に対する心労による疲れか……いや、両方かもしれない。
いくら子供離れした喋り方をしていても、彼女はまだ十四歳の少女である。
いつ何処で殺されるか分からない戦争の真っ只中でも、眠い時は眠ってしまうものなのだ。
窓から漏れる月明かりに照らされている彼女の寝顔は、普段の落ち着いたクールな表情とは違い、どこか幼さを感じさせるものだった。
それが曲識の目の毒になる。
少女しか殺さない殺人鬼の彼にとって、少女の幼さを感じさせる寝顔ほど、殺人衝動を刺激される物は中々あるまい。
眠りに落ちてる彼女を永遠の眠りにつかせたい、という感情が曲識の中に湧いてくるのは必至だ。
曲識は椅子から立ち上がり、飛鳥の眠るベッドの方へと向かった。
彼が窓と枕元の間に立つと、丁度月明かりが彼の身体に遮られ、彼女の顔に黒い影が掛かる。
飛鳥は薄い唇の間から、すうすうと寝息を漏らしていた。


847 : ◆As6lpa2ikE :2016/04/07(木) 22:39:41 tXoJ6Cm20

(疲れが溜まっているからかもしれないが――サーヴァントの前に一人の殺人鬼である僕が同じ部屋にいる状況で、よく寝られるものだ)

曲識は感心に違い感情を彼女に抱く。
まあ、これは飛鳥が彼を多少信頼していることの表れなのだが、彼自身はそんなことを知らない。もっとも、彼の『少女しか殺さない』という性質まで知っても、なお彼女が睡眠を続けられるかは疑問だが。
曲識は己の懐に忍ばせてある一組のマラカスに意識を向けた。
影のように黒く、呪いの言葉のような禍々しい紋様が彫られたそれ――『少女趣味(ボルトキープ)』は曲識の友人にして、武器職人である罪口積雪が製作した楽器である。
見た目はマラカスだが、武器職人が作った物であるということは、当然武器――鈍器としても使える。
例えば、今ここで曲識がそれを取り出し、飛鳥の頭目掛けて力強く振り下ろせば、それだけで彼女の頭蓋骨はあっさりと、容易く、簡単に砕け、彼女は絶命するだろう。
いや、それよりも飛鳥の細い首を両手で締めた方が、より長く彼女の死に行く様を楽しめ、曲識にとっては得かもしれない。
しかし、彼はそのようなことを絶対にしない。
否。
出来ないと言った方が正しいか。
零崎一賊という、『理由なく殺す』殺人鬼の集団に属する曲識は、己のルールに当てはまっている相手なら躊躇いなく殺す男だ。
しかし、相手がルールに当てはまっていても、『殺してはならない理由がある』場合は話が別である。
そして、今がその場合なのだ。
飛鳥、すなわち自身の主を殺人衝動に任せて殺すと、彼は消滅する。
故に、彼は彼女を殺すことは出来ない。
出来ることがあるとすれば、飛鳥とは別の少女を殺すことくらいだ。
しかし、その行為も彼女の目の前でするべきではない。
曲識は、自分の殺人においてルールを設けていることを飛鳥に話してはいるものの、そのルールの内容までは伝えていないのだ。
――今後付き合っていくことになる彼女相手に、『自分は少女しか殺さない』と教えるのは危険だ。
マイペースで天然な曲識も、流石にそう考えたのである。
一回か、二回ならまだしも、何回も彼女の目の前で殺人を行えば、そのルールがバレるのは避けられまい。
かと言って、彼女から離れて何処か別の場所で殺人をするというのも、本戦が始まった今となってはし難いことだろう。
彼が殺人衝動を発散している間に、彼女が何者かから殺されていた、となっては笑い話にもならない。
だが、彼女と一緒に居れば、曲識の殺人衝動は積もっていくばかりであろう。
これが、今の彼の悩みであった。

(――ああ、それにしても)

少女の寝顔を見て、曲識は思う。

(こんな表情で眠るとは――いったいマスターはどんな夢を見ているのだろう)

それは――頭の中の悩みごとから意識を離す為に、半ば無理矢理行った思考とはいえ――滅多に人のことを考えない彼にしては、珍しい疑問であった。




848 : ◆As6lpa2ikE :2016/04/07(木) 22:40:03 tXoJ6Cm20
同時刻。
二宮飛鳥は夢を見ていた。
それは彼女の一人称視点からの夢ではなく、第三者――所謂『神の視点』、もしくは『セカイの観測者の視点』からの夢である。
夢の登場人物は、髪を短めのポニーテールにした、飛鳥と同い年か一つ年上くらいで、燕尾服の少年であった。
薄暗く、地面のコンクリートに四角い白線が並んで引かれてあるから、夢の舞台はおそらく地下駐車場であろう。
一つ、その推測に異を唱える根拠があるとすれば、そこには一台もクルマが停まっておらず、その代わりのように、人間の死体がごろごろと転がっていることだ。
夢の中の少年は、死体置き場のような地下駐車場を歩んでいた――口笛を吹きながら。
このような描写の仕方では、少年が随分呑気であるように思われるが、
しかし風に吹かれてるかのような頼りない彼の足取りや、あちこちがほつれた燕尾服は、彼が呑気とは真逆の状況に置かれてることを端的に表している。
少年はおそらく、何らかの修羅場を潜り抜け、何らかの暴力から逃れて、そこに居るのだろう。
彼はふらふらとした歩みを続ける。
暫くしてからようやく脚を停めると、彼は己の手の中にある何かを見つめた。
それは小型の手榴弾であった。自害――自爆の際によく用いられる、あの手榴弾である。

彼はまた暫くして、歩みを再開する。
しかし、この歩みは先ほどのようなふらふらとしたものではなく、何処か明確な目的地を持った歩みであった。
どうやら、すぐにそこを見つけたらしい彼は、その場で腰を降ろす。
そして何やら二、三言呟いた後、彼はごくごく自然な動作で、手榴弾のピンを引き抜こうとした。
自殺するつもりなのだろう。
しかし、その時――

……
……
……
……




849 : ◆As6lpa2ikE :2016/04/07(木) 22:40:36 tXoJ6Cm20
朝。
二宮飛鳥はマラカスの音で目を覚ました。
そのように説明すると、朝っぱらから彼女の耳元で陽気なルンバ音楽が演奏されてたのかと思われるが、それは違う。
彼女の耳元で流れていたのはマラカスによる演奏でありながらも、複雑なメロディが入り混じった、優雅なクラシック音楽のような曲であった。
彼女が瞼を開けて上半身を起こし、それが聞こえる方へ顔を向けると、そこにはマラカスを振る曲識の姿があった。
彼のそんな様子に少し面食らうも、飛鳥はそのまま彼の演奏を最後まで黙って聞く。
話しかけるどころか、挨拶すらしない。
音楽家の演奏を途中で遮るほど、無粋な行為はない――。
そう思ったからだ。
演奏を聴きながら、飛鳥は『そう言えば昨晩は妙な夢を見た気がするな』と考えたが、どうにもその内容をはっきりと思い出せない。
結局もやもやと思い出せないまま、一際大きくじゃらんっ! とマラカスが振り下ろされる音で、彼女の思考は昨晩の夢のことから、目の前の曲識へと戻った。

「おはよう。良い曲だったよ、アサシン」

飛鳥は曲識に向けて拍手をした。

「ボクはクラシックに詳しいわけではないけど、あんな複雑な曲をマラカスで演奏できるキミには驚かされたよ。流石音使いだ。聞きなれない曲だったけど、キミのオリジナルかい?」
「そうだとも」

曲識は身体を飛鳥の方へ向けて言う。

「作曲No.███――『███』だ」
「さっきょ……え?」

寝起きでまだ頭がぼうとしていた所為か、曲識の言葉を飛鳥は上手く聞き取れなかった。
聞き返そうとするも、その質問は彼による、『この曲はリラックス効果に優れている。寝起きにはピッタリだろう』という曲の説明を前に遮られてしまう。
何というか、先程気を使って演奏を邪魔しなかった彼女の厚意が仇で返されたような構図である。
しかし、飛鳥はこれまでの数日間で彼の性格がマイペース極まりないことを理解しつつあったので、それで気を悪くするということはない。

「おっとそう言えば――マスターが朝目が覚めたら話さなくては、と思っていたことがあったのだ」

演奏した曲についての説明を終えた後、曲識は思い出したかのように、そう言った。
飛鳥は聞き返す。

「話さなくては、と思っていたこと? 何だいそれは?」
「今日の午前零時をもって、ようやく聖杯戦争の本戦が始まったらしい」

曲識は区切れの良い発音でそう言った。




850 : ◆As6lpa2ikE :2016/04/07(木) 22:40:55 tXoJ6Cm20
「――というわけだ」
「なるほど……そんな連絡があったんだね」

飛鳥は曲識から通達の又聞きをしながら、通学の準備をしていた。
鞄に荷物を詰め、制服へと着替える。
本当は座りながらゆっくりと聞きたいところだったのだが、生憎彼女が起きた時間はいつもよりもやや遅めであり、このままでは学校に遅刻しかねない。
しかし、そもそも、飛鳥が偽物の世界の学校に行く必要はなく、聖杯戦争の最中に外に出るのは避けるべきである。けれども、彼女は通学することに決めた。
曲識はそんな飛鳥に自分の弟の姿を重ね、溜め息をつく。

「人識といい、マスターといい、どうして学校に行きたがるんだ……僕には全く分からないな」
「通学は、『非日常』のセカイに放り込まれたボクが行える、数少ない貴重な『日常』だからね……なるべくしたい行為なのさ」

ところで、人識って誰だい?――と飛鳥が聞こうとした時、下の階から彼女の母親の声がした。
朝御飯が冷めるから早く食べに来なさい、という内容である。

「……それじゃあ、ボクは朝御飯を食べて、このまま学校に行くけど……アサシンはどうする?」
「そうだな……今日は霊体化して、マスターについて行くことにしよう。本戦が始まったことだし、なるべくそばに居た方が何かと都合が良いだろう?」

ああ、それと――と、曲識は言葉を続ける。

「マスターにひとつ頼みがあるのだが、良いだろうか」
「頼み?」
「聖杯戦争の本戦が始まったということで、改めて今後の展開を予想した結果、持っておいた方が良いものが出てきたのだ。それをマスターに買って欲しい……いや、もしかしたらこの家に既に一つはあるかもしれないな……まあ、所謂買物のお願いだ」

おねだりだ――と、何故か曲識は可愛く言い直す。
それを聞き、飛鳥は曲識に対して『やれやれ』とでも言いたげな表情をした。

「買物の頼みなら、昨日の内に言って欲しかったものだけど――そんなことはわざわざ頼みなんて仰々しい言い方をしなくて良いよ、アサシン。無力なボクがキミに対して協力できることといえば、それくらいしかないからね。
昨日の買物の後でも、まだボクの財布にはいくらか余裕がある――それに今後必要となる物なら、ボクが生き残る為に当然買わなくてはならないだろう? ……で、何が欲しいんだい?」
「僕が欲しいもの。それは――」

曲識は言う。

「コントラファゴットだ」

コントラファゴット。
それは、定価三百万円の木管楽器である。




851 : ◆As6lpa2ikE :2016/04/07(木) 22:41:18 tXoJ6Cm20
「…………」

二宮飛鳥は浮かない顔で、自分の通う学校近くの駅の構内から、外に出た。
隣には誰も居ないように見えるが、おそらく霊体化した曲識が付いて来ているのだろう。

「コントラファゴット、か……」

彼女は呟く。
朝食前の会話の後、曲識の無茶な願いに無理だと言った彼女であったが、家から駅までの間に彼によって行われた『どうして今後それがあった方が良いのか』という説明を聞くと、そうも言ってられないような気がして来たのである。
その説明の内容は以下の通りだ。

「ある殺し屋の言葉を借りることになるが、僕のような音使いにはふたつ……いや、みっつのタイプがある。
ひとつめは音により他人の精神状態を操るタイプ。
そして、ふたつめは音の衝撃波を武器にして、直接戦うタイプ。
最後のみっつめは、往年のロックスターよろしく、楽器自体を武器にするタイプだ。
今の僕の手持ちの楽器はマラカス――『少女趣味(ボルトキープ)』だけ。
これは特殊な構造をしていて、ちょっとしたグランドピアノ並の音階を表現出来る。だから、僕は他人の精神を調律することが出来るのだ。勿論、鈍器として使うのも可能だぞ。
しかし、これだけでは、音の衝撃波を武器にする戦い方が出来ない。
つまり、今僕が使える手札はふたつだけなのだ。
ふたつだけ。
いや、勿論数日前宣言した通り、僕が負けることはない。精神と肉体の操作だけで、大抵の相手には勝ってみせる。例え、今から突然戦闘が始まったとしてもマスターを死なせることはない――が、それでも手札は多い方が良いだろう?
よって、僕はふたつめのタイプの戦い方を可能とする吹奏楽器……それも、出来ればコントラファゴットを所望する」

いや、その理屈なら別にコントラファゴットじゃなくても良くないか、というツッコミを入れたい所だったが、彼女にとって、どの楽器も『とても自分が買える値段ではない』という意味においては同じだった。
ちなみに、曲識が吹奏楽器の中でも特にコントラファゴットを所望したのにはちゃんとした理由がある。それは彼が生前一賊を狙う殺し屋集団との戦闘においてそれを用い、無事勝利したからだ。
所謂ゲン担ぎみたいな理由だが、戦いにおいて生前の勝利や敗北のエピソードが重要となる存在――サーヴァントである以上、彼が生前参加した数少ない戦闘の勝利場面で用いた楽器を所望するのは当然のことだろう。
かと言って、十四歳のポケットマネーで楽器を購入できるわけがないし、この偽りの世界の二宮家にそう都合良くコントラファゴットが置いてあるわけがない。

「今ならベンの気持ちが分かるよ……いや、彼はトランペットだったか」

彼女はそう言い、口元に力無い笑いを浮かべる。
と。
その時、飛鳥の耳元に吹奏楽器のメロディが流れ込んできた。
朝聞いたものとはジャンルの違う、ジャズ風の曲である。
あまりにも吹奏楽器のことを考えすぎてついにそれの幻聴が聞こえ出したのか、と一瞬焦った彼女であったが、数秒もしないうちに、それが自分が近付きつつある校舎の中から聞こえてきたものだと理解した。
吹奏楽部が朝練をしているのだろう。

「吹奏楽部……」

――吹奏楽部ならコントラファゴットくらい置いてあるんじゃ……?
そこまで考えて、飛鳥は頭をブンブンと横に振る。

(生き残る為にやるべきこととはいえ、そんな……泥棒みたいなこと、して良いはずがない)

彼女は引き締まった、クールな表情を取り戻すと、そのまま自分の通う学校――不動中学校の校門をくぐって行った。




852 : ◆As6lpa2ikE :2016/04/07(木) 22:41:37 tXoJ6Cm20
(楽器を買うのは無理か……だが、悪くない)

霊体化した状態でそう考える零崎曲識であったが、実はかなり困っていた。
何故なら、実際のところ彼にとって吹奏楽器――音の衝撃波を武器に出来る楽器ははほぼ必須だからだ。
例えば、着ぐるみで体全体を包むことによって音を遮断し、彼の精神操作を無効化した者がいた。
また別の戦いでは、糸の振動を用いて彼の精神調律を妨害した者がいた。
前者は手持ちにコントラファゴットがあったので音の衝撃波で吹き飛ばしたが、後者の場合は手持ちにそれを可能とする楽器が無かったため(手持ちはカスタネットだけだった)、結局決着は付かなかった。
と、このことから、彼の生前の戦いにおいて音の衝撃波による攻撃を使う戦闘スタイルはかなり重要度が高かったと言えよう。
勿論、曲識が飛鳥に対して言った『精神操作だけで勝ってみせる』という言葉も、彼女を不安がらせないために言った部分もあるが、決して嘘ではない。
彼はそれだけ自分のスキルに自信を持っている。
しかし、いつどこで彼の第一の戦闘スタイルを無効化する相手が現れるのか分からないのも事実だ。
昨晩、そう考えた曲識は今朝飛鳥に対してコントラファゴットを求めたのである。
しかし、それは無理と来た。
これは生前当たり前のように多くの楽器に囲まれていた曲識にとっては実はかなり予想外のことである。

(ふむ、どうしたものか……)

こうして、殺人鬼の悩みごとは新たに一つ増えたのであった。


853 : ◆As6lpa2ikE :2016/04/07(木) 22:42:01 tXoJ6Cm20
【三日目/午前/葛飾区】

<マスター>
【二宮飛鳥@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態] 戦いに対する不安
[令呪] 残り3画
[装備]
[道具]
[所持金] 十四歳の少女のポケットマネーとして常識範囲内の金額
[思考・状況]
基本行動方針: 生きて帰りたい
1:都内で暴れているバーサーカーの存在が気になる。
2:コントラファゴット、か……。
[備考]
・アサシンが自分の殺人においてルールを課してることは知っていますが、それの内容までは知りません。
・葛飾区にある不動中学校に通っています。
・彼女がこの世界でもアイドルをやっているのかどうかの設定は後にリレーする書き手さんに任せます。

<サーヴァント>
【アサシン(零崎曲識)@人間シリーズ】
[状態] 霊体化 殺人衝動(小)
[装備] 少女趣味(ボルトキープ)
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針: 聖杯を獲る。
1:マスターである『少女』を殺さないようにする。
2:コントラファゴットが欲しいが、手に入らないのなら仕方がない。
3:精神干渉への対策への対策を考える。
[備考]


854 : ◆As6lpa2ikE :2016/04/07(木) 22:42:51 tXoJ6Cm20
投下終了です。
なお、タイトルは『少女趣味不十分』とします。


855 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/08(金) 12:00:45 4TqlLfMg0
投下ありがとうございます。
確かに武器となる楽器は盗んでしまえばいいと誰もが思うのですが
それを踏みとどまる飛鳥は、やはり普通の少女なのだと実感させられてしまいます。
そんな彼女もいつか非日常である聖杯戦争の渦中へ巻き込まれる運命からは逃れられません。
果たして、彼女と彼女を殺さぬよう心がけているアサシンはどうなるのでしょうか?
投下乙でした。

私も予約分を投下します。


856 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/08(金) 12:01:33 4TqlLfMg0
悪魔達が嗤っていた。





ちょっぴり出かけて来ると告げたセイバーに対して、彼女のマスター・松野トド松は馬鹿のように心配した。

『本当に大丈夫? 聖杯戦争……始まったんだよね』

『でも、トッティは皆に潰し合って欲しいんでしょ?』

セイバーの言葉にトド松は反論しない。
ドライと言われようが、それがトド松である。
聖杯戦争とは簡単に説明すると殺し合い。戦争、なんて称されているがそんな規模ではないだろう。
本物の戦争だったら建物の一つや二つ、東京タワーだって破壊されない方がおかしい。
取り合えず、勝ち逃げを狙ってみる。
きっと酷い死闘ではないのだから、普通に過ごして、マスターと気付かなければ良い。

それがベストだ。
それが理想だ。
現実は……違うかもしれないけど。

少なくとも、現に自分たちは誰にも――他の主従と邂逅していないのが事実。
トド松は何一つ間違いではないと実感していた。
一方のセイバーは言う。

『それに、まだお腹すいちゃっているもの』

さっきケーキを食べたのに?

冗談半分にトド松が聞き返そうとしたが、それは止めた。
彼女は夜に生きる者。
トド松はそれを知らない。
セイバー・フランドールが、正真正銘の『悪魔の妹』であることを。

『じゃあ、気をつけてね。セイバーちゃん』

『うん、そうするわ』

念話で短い会話を終えてから、トド松は明日の事を考えていた。
バイトのこと、それからフランドールの為に、別のケーキ屋か他の食べ物……たとえばドーナツとかを買ってあげようか。
平凡で些細な事。聖杯戦争なんて知った事ではない。
否、まるでそんなもの無いもののように『東京』の生活を謳歌しようじゃないか。


愚かではないはず。
自分だけではないのだから。
この狂った『東京』で、地獄のような世界で『平凡』で在り続けようとしているのは―――


当然だった。噂だって耳にする。
バイトをしているトド松なら尚、当然のことだった。
この『東京』で起きている事件。同僚の女の子も世間話として聞かせてくれた。


857 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/08(金) 12:02:03 4TqlLfMg0
最初は嘘だと笑った。
同僚の女の子も笑っていたが、彼女は――まるで悪魔のように嗤う。
辛気臭い暗い話題を鼻で笑うようではなく、彼女は地獄が作られ、それに歓喜する悪魔のようだった。
同僚の女の子だけではなく、他の人々も。
挨拶の次に、ある噂をする。

『東京』を地獄に変えた殺戮の王。

皆は、もはや彼を神のように崇め称えていると表現しても過言ではないほど―――狂っている。
死の恐怖はないのだろうか? あったとしても、そうせざる負えない使命感を抱いているかのように。

いや、嫌でも『そういう現象』は必ずある。

トド松は思う。
凶悪事件が発生すれば、関心がなくても嫌だと思っても、その事件から眼を逸らさないのが人間だ。
犯人を嘲笑したり、犯人の人物像や取り巻く環境の問題を指摘する専門家、あらぬ噂、もしくは崇拝。
警察が逮捕できないまま逃亡を続ける連続殺人鬼なんて――『悪趣味』な人間は泣いて喜びそうな存在である。

今もそんな状況の一つ。
時間が少し経てば、殺人鬼のことなんて記憶の片隅に追いやられる。
……はずだ。

けど何故だろう。
異様なほどに、吐き気のするおぞましい悪意が、全ての人間に見られるのは……
トド松は錯覚であって欲しいと願った。
フランドールの嗤いも、彼らと同じく悪魔のものではないことを。
あるいは。
自分の周りにいる兄弟たちも、彼らと同じに成り果てるのだろうか……?

トド松は不安を胸に、眠りについたのだった。





『にしても』

夜の『東京』。
フランドールが実体化して優雅に散歩が出来るのが、この時間だけであった。
とはいえ、彼女の容姿自体が目立つ為、建物の屋上を飛び渡って行く形なのだが。

フランドールは格別、悩んではいないものの例の通達のことを思い出す。
吸血鬼である彼女にとっては食用になる人間たちが無償に配られる――のは、逆に願っても無いことだ。
ルーラーが召喚され、魂食いにストップをかけられることもない。
いくら人間を殺しても、食べても、建物を破壊しても、大地を破壊しても。
何もお咎めなしと来た。

人間の破壊加減が出来ないフランドールにとってはありがたいし、彼女以外のサーヴァントも歓喜していた。
ただ、喰い散らかした・殺し散らかしたサーヴァントたちは通達以前からあのような所業に走っている。
本来はあのような事は禁忌とされているのか。
いや、本来はあのような事は常識的なのかもしれないが……


フランドール・スカーレット。
彼女の破壊能力は誰もが恐れるものだ。
それ故、彼女は人間を襲う際は血の一滴も残らず吹き飛ばしてしまう。
フランドールは加減が出来るように調整をするしかない。
そうしなければ、ちゃんと人間の血を吸うことすら出来ないのだから。


だから、何人も殺した。


最近、ようやく『彼女なりの加減』を会得したのである。
取り合えず、足。
人間は足を破壊すれば、逃亡することはないので足を優先的に狙えば大丈夫。
食べ終わったら、全部破壊する。肉の一片も残さず。
破壊しつくしてしまうフランドールだから可能な証拠隠蔽。

彼女と違って処理をしない、散らかしたままのサーヴァントたちは、あのように目立ってしまっている。
彼らと比べたら、奇妙なことにフランドールの方が律儀に感じられた。

『どういうものかしら』

あの喰い散らかした彼らは、一体どこへ消えたのだろう。
探しに向かってもいいのだが、闇雲に探しても時間だけが過ぎる。
フランドールも暴虐的な殺戮者たちに興味があった。
普通の人間を目にしたことないように。
彼女もまた、普通の殺戮者を目にしたことがなかったから。


858 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/08(金) 12:02:48 4TqlLfMg0

「あ」

その時。
向こう側からサーヴァントの姿を捉えた。
恐らく、フランドールのいた板橋区ではなく、隣の北区辺りからやって来たようだ。

何より相手も『吸血鬼』だった。
その程度は、どことなく。雰囲気から感じられた。

フランドールがトド松の方針に従う確固たる理由などない。とはいえ、彼女は少なくとも『そういう気分』ではなかったのだ。
フランドールは吸血鬼のサーヴァントに近付く。
トド松の方針とは、即ち勝ち逃げ。
ならばサーヴァントと接触しなければ良いのだが、接触するだけと戦闘を回避するのとは大きく異なる。

吸血鬼のサーヴァントは、フランドールが目にしたこともない格好をしている。
女性であるが、歴戦の残虐非道な吸血鬼。圧倒的なカリスマ性。
といった奇抜な印象は一切なかった。

「こんばんはー」

故にか、フランドールは呑気に挨拶をした。まるで隣人に気づいて軽い挨拶をするかのように。
女吸血鬼も目を見開いたが、むむと唸り「コンバンハ」と返事をしてくれる。

「もしかして、あなたもアッチに向かうつもり? 止めた方がいいわ」

「……どうして?」

女吸血鬼は戸惑いながら尋ねる。

「だってもう食べられちゃってるから。あなたも誰かが口をつけたケーキを食べたくないでしょ?」

「吸血鬼――つまり、向こうには吸血鬼のサーヴァントがいるんですか」

何故、フランドールが教えてくれるかはともかく。
幼いながらも吸血鬼としての年輪を感じてからか、女吸血鬼は敬語で話し合う。
ただ、フランドールは挨拶ついでの他愛ない会話を演じているだけなのだ。

「脳みそ食べる吸血鬼って知ってる?」

「……いいえ。私が知る中ではいないです」

吸血鬼ではなく、それは食屍鬼(グール)の方だ。
しかし、吸血鬼である少女は無知のよう。本当の意味での子供。
ふうんとフランドールはちょっぴりの納得をし「それじゃあ」と呆気なく立ち去ろうとする。
女吸血鬼の方は、咄嗟に呼び止めた。

「あなたはその」

「人に名前を聞くときは……」

「えっ、エット……私はアーチャーです」

「わたしはセイバーよ」

アーチャーとセイバー。同じ吸血鬼であっても、異なるクラス。作為的な役決め。
けれども疑う点ではなかった。
酷く馴染んだ。
あちらはアーチャーで、こちらはセイバー。他の吸血鬼たちは、どうだか分からないが。
少なくとも彼女たちの間に、疑心はこれっぽっちも無い。

吸血鬼のアーチャーは問う。

「セイバー、私と戦わないんですか」

真剣な眼差しを向けるアーチャーに対し、吸血鬼のセイバーはうふふと無邪気に笑い。
背に生やした枝に七色の結晶が実ったような翼をはためかせ、夜の『東京』へ飛び込んだ。
並の街並みよりも明るい世界には、生臭い血の匂いが風と共に漂っていた。





859 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/08(金) 12:03:16 4TqlLfMg0

吸血鬼のアーチャー。セラス・ヴィクトリア。
そもそも彼女が、何故ここにいるのか?
マスターの織田信長。彼からの命令だった。





足立区にある『東京』において信長の自宅とされる豪邸にて。
戦国武将である信長がインターネットの情報網を扱えるようになった、なんて突拍子もない所業をやってのけたが。
通達により聖杯戦争の開始を把握したところで、セラスに言う。

「よし、おっぱい弓兵」

「私、もう突っ込みいれるの大変なんでスルーしますよ?」

「ちょっくら偵察頼むわ。ネットで把握できるだろって文句はナシだ」

「マスターも活用する為に勉強してたんじゃないんですか」

そうなんじゃがにゃーと、信長も苦しい表情をする。
実際のところインターネットのSNSを除けば、サーヴァントの目撃情報ではなくコラ画像祭りが開催されていた。
何を言っているのか分からないと思うが、時代の流れとかいうチャチなんて生半可な類ではない。
NPCの人間たちに正確な情報を頼るのは無謀、ではないが。
彼らが自分たちのイメージ通りに動いてくれる訳でもない。

現にSNSでは、目撃情報を拡散させて殺人鬼を捕まえよう! なんて正義感溢れる美しい光景ではなく。
報道されたニュース映像を編集したり、画像を加工したり……暇を持て遊んだ行動をしている。
実際に、あの殺人鬼が見れば憤慨どころでは済まなくなりそうだ。

「まずは情報だ。あの刺青の戦闘バカはともかくだ、他の連中も動かない訳だろ」

「……そうですね」

「後一つ。アヴェンジャーってなんだ」

「え。イヤ、アヴェンジャーはアヴェンジャーですけど……」

「だーかーらー! おっぱいトリア!! お前が説明した基本クラスにアヴェンジャーつーのはいなかったじゃろうが!!」

「あ、ああ、はいッ、そうでした! ごめんなさいッ、すいませんすいません!!」

信長にがっちり胸を揉まれたのに、セラスは慌てて答えた。

「通常はマスターに説明した7クラスが基本なんですが、それに該当しないエクストラクラスがあります。
 決して呼ばれない……訳ではありません。先ほど通達で存在が確認されていないと明言された『ルーラー』も
 それに分類されるものでして……つまり、アヴェンジャーというクラスが召喚されるのは異常ではありません」

へー? と信長は一応納得する。
先ほどの通達の内容をセラスから聞いた信長は、至極異常を覚えた。
どことなく原因も信長は分かってはいるが。

「まぁ、とにかく行って来い。セラス」

「はい、夜明けまでには帰還します」

黒い影となって明るい街へ一直線。文字通り、一瞬で向かってしまったので信長は眺めるだけだった。
しかし。
だが、しかし。

「でーあーるーかー。大分キナ臭くなってきたな、聖杯戦争」

信長が不敵に笑う。
通達の内容。それ以上にマスターとサーヴァントの情報の差。
マスターには聖杯戦争の情報などは一切与えられない、通達もされない。
一方のサーヴァントが、全ての情報を掌握している。

「これってつまりアレだろ。サーヴァント様様って奴であろう? 贔屓だ、贔屓。
 マスターの不平不満はあって当然だ、こんなもん。有意義な聖杯戦争? うむ、その通りだ。
 恐らくこいつはサーヴァント同士、本気で好き勝手やらかせって命じてるようなものだ」

マスターには絶対的な命令権・令呪がある。
くそったれなサーヴァントなら絶対、この令呪の存在をマスターに教えたりはしない。
最低、聖杯戦争そのものを教えないだろう。
最悪、令呪の存在を教えないはず。
令呪なんてのはサーヴァントの意思を捻じ曲げる下劣な手段だ。

「自由にサーヴァントを戦わせる……成程。だが、それで? 先導とやらの目的は見えんな」


860 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/08(金) 12:03:41 4TqlLfMg0




吸血鬼のセイバーを見送ったセラスは、思わず溜息を漏らしていた。
すでにあそこからは移動をし、他の主従の姿を確認している最中である。
が、やはり吸血鬼のセイバーの行動は不可解だった。

幼い少女の姿をした吸血鬼。
吸血鬼のセイバーは、現在進行形で殺戮を繰り返す刺青のバーサーカーの存在ではなく。
食屍鬼(グール)の存在を仄めかしていた。
むしろ、吸血鬼のセイバーは産み出した食屍鬼では? と疑心を持つべきだろうが、彼女はどうにもそういう風に感じない。
無知だった。

何が目的か。
彼女の思考考察は雲を掴む様な話になっている。
そもそも、自分が思うほど深い理由はないのかも。セラスは思う。
単純に、闘争の気分ではなかっただけ、とか。
元より好戦的な性格ではない、かも。
どうであろうか?
見た目があまりに幼い少女なのも、セラスは少々驚いた部分ではあった。
以前、彼女が戦争し合った敵にも少年の姿があったものの。それよりも幼い……否、外見で判断してはならない。
あのセイバーも、吸血鬼としての年輪は感じられたのだ。

それにマスター・信長も無理して戦えとまでは命じていない。
聖杯戦争の期限は現時点では設けられていない。
だからと言って、悠長に長引かせる訳にもいかないのだが……焦る必要もなかった。

「!」

セラスは再び感じた。
気配は真っ直ぐコチラへ向かっている。明らかにセラスの存在を目指しているのは、吸血鬼故感じ取れる。
理由も察する。
なんと奇妙なことか、相手が吸血鬼だからだ。

また吸血鬼?
もしかすれば、自分たち以外にも――他のサーヴァントの中にも吸血鬼たる者が集められているのでは?
そんな錯覚を抱くほど、不思議な縁を捉えたセラス。

黒衣を纏った男の吸血鬼が、彼女の視界に現れた。
いかにも吸血鬼を連想させる存在感。
男の方は、しばしセラスを睨むように眺めた後。

「ふむ、違うか」

と、呟く。
違う? セラスが疑問を覚えた矢先、黒の吸血鬼が尋ねた。

「余とは異なる吸血鬼を知っているかね?」

吸血鬼のセイバーとは違う雰囲気だが、明らかに彼女よりも彼は明白だった。
セラスと争う気がない。
通りすがりついでに声をかけた。本当にそんな風にしか感じられない。
どう返答しようかと悩んだセラスだが、ありのまま告げた。

「はい、女の子の吸血鬼と出会いました。吸血鬼のセイバーです」

「……」

「あの。なにか?」

「正直に答える奴がいるか」

ええ……と、セラスは困惑する一方で、黒の吸血鬼はやれやれと話を続ける。

「お前からの言葉は余の中で留めておこう。吸血鬼のセイバーとやらの機嫌を損ねぬ為にな」

確かに、黒の吸血鬼にセイバーの情報を無償で与えた結果だ。
セラスの方も、理解していた。だが、この男の目的はきっとあのセイバーではないと思えた。
そして、セラスは教えただけ。


861 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/08(金) 12:04:04 4TqlLfMg0

「その、セイバーもそうでしたが。あなたも私とは戦うつもりがないですよね?」

「成程。察しがついていたか。いかにも、その通り」

今のところは、そうしているだけだが。
彼は本来続けるべき言葉を抑えた。
セラスはそこまでは見抜けなかったものの、彼に聞く。

「誰を探しているのですか」

「さあな」

「じゃあ、何を?」

「ああ、何かを探しているのは確かである。余に関わりのある存在であるのは間違いないだろう」

ただ、それが『何か』は分からない。

聖杯戦争に召喚されてから、ある一時から。彼は『何か』を感じ取っていた。
同類である吸血鬼? 否、それはセラス・ヴィクトリアとの邂逅で違うと断言できる。
それでも――吸血鬼のバーサーカー・ヴラド三世は確固たるものを得ている。
ここには自分と通じる『何か』がいると。

「お前は虐殺をしたサーヴァントでも捜索しているのか。差し詰め、マスターの命で」

「少し違います」

「余は殺戮者をどうするつもりは無い。だが、そちらは放置する身ではあるまい?」

セラスはあの殺戮者と不死王の異名を持つ吸血鬼を重ねたが、何かが違っている。
酷似しているようで、どこかがズレていた。
当然、経歴は大きく異なる。価値観もどこか違う。性格もきっと違う。
だけど、一つか二つ似ており。それがセラス・ヴィクトリアの吸血鬼の主(マスター)の雰囲気だった。

闘争。

死ぬまで、殺されるまで、滅ぼされるまで、終わろうとしない殺意の擬人化。
退屈だからこそ、闘争に走る化物。
どうしようもない狂った存在。

哀れな者。

「まだ分かりません」

セラスは曖昧であるが、ハッキリと答えた。

「『彼』は単純ではなく……何か複雑なんです。私のマスターも『彼』をただ滅ぼそうとは思っていません」

「ほう」

ヴラドは意外そうな反応を示す。
血の匂いで虐殺に酔いしれっているサーヴァントがいるのは気付いてたが、どのような者かまでは分からない。
興味は湧く――が、ヴラドは違う。
あくまでマスターの意思は聖杯の破壊が目標。サーヴァントと対峙する必要はない。

「残念ではあるが、余は殺戮者ともお前とも戦うつもりはない。
 余の目的は闘争でもなく聖杯でもなく、聖杯の破壊である」

「!?」

「即ち――お前からすれば敵である。そういうことだ。聖杯こそがお前の悲願ならば、余を滅ぼすかね」

聖杯の破壊……?
これまた、とんでもない方針を掲げるマスターがいたものだ。
セラスは驚きを隠せずにいたが、しばし間を置いて返答をする。

「いいえ。戦闘は命じられてはいないので」

あくまで情報収集だけのつもりだ。今回ばかりはそう主張した。
セラスの返事に、ヴラドは呆れる。

「夕方をおっかなびっくり歩く吸血鬼のようだな。――まぁ、よかろう。今回は許す」

そう踵を返し、闇に溶け消えた吸血鬼のバーサーカー。
彼の感じる存在との遭遇が叶うかも予知は不可能だ。
セラスでさえも、吸血鬼のバーサーカーと『似たような何か』と巡り会う可能性は無きにしも非ず。

が……セラスはそんな吸血鬼のバーサーカーの雰囲気が、あの不死王と同じだと気付くのだった。





862 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/08(金) 12:04:28 4TqlLfMg0


「くそ……」

馳尾勇路は『東京』の街を彷徨っていた。
あの少女たちを探そうと必死だった。いつの間にか、一人の少女が消えてしまったように彼女たちも消える。
聖杯戦争は残酷なものだ。戦争である。当然だ。
実際に、夜には殺戮の王が人々の生死を蹂躙し、人喰いたちが肉片を貪る。

完璧な程に地獄そのものである場所に、生贄のように放りこまれた少女たち。
彼女たちがどうなるか、結果は眼にしなくとも分かる。
このままだと……

しかし、勇路は無力だった。
<断章>と称される奇怪な能力を所持していたとしても、無力なのだ。
あの少女たちの行方を探る能力も、情報網も、移動するにしても資金が限られている。
このまま放浪を続ければ、あの少女たちのところへ往きつけるのだろうか?

明らかに彼女たちは聖杯戦争から逃亡を図った。彼女たちは無力なのだ。
だから、だからこそ――諦めたくない。何度も失敗は繰り返したくない。何としてでも……

勇路はどこか夢見る少年だった。
根本は成長していない。中学生だから仕方ないとまだ許される、わがままな側面がある。
自分の力が十分あるのだから、公認の<騎士>として認められないのに納得出来ない。
何故、自分よりも遅く<断章>を手にした少女の方が<騎士>として認められたのか分からない。
自分を過信しすぎている、そんな少年。

「まだ残ってるな」

財布の中身を確認する勇路。
『東京』の舞台において役割が彼にもある。
年に似合った『不良中学生』としての役割。偽りではあるが、家族がいる……そう『家族』が。

「……っ」

それ故、勇路は『あそこ』に帰りたくない。
■■や■が……いるのだ。
何でだ。一体どうして。不安と疑念が、トラウマが渦を巻く。あそこに居続ければ、自分は。

躊躇など必要ない、最初からあの家に戻るつもりはない。
それもあり、勇路は――設定上■■とされている――女性の財布からある程度の金をくすねてきた。
学校は?
そんなものも必要ない。聖杯戦争とは関係ないのだから。


――思い出すな! 今は聖杯をぶっ壊すことだけ考えろ!!


余計な事を思い出してしまった。
勇路にとっては後悔となるトラウマ。幼い頃のトラウマだけあって異常なまでに精神的な疲弊を余議なくされる。
■族のことは忘れるべきだ。あそこには■親も■もいない。
いないのだ、と思いこませる。

勇路も夜の『東京』を駆ける。
ちっぽけな少女たちを探し巡るのだ。

聖杯をどうやって破壊するのか?
あの少女たちと出会ったところで、彼女たちに何と話を持ちかけるのか?
他の主従と邂逅した場合はどうするのか?

何も考えていない。
考えているようで、猪突猛進だった。
藁を掴むような――無我夢中な勇路は、吸血鬼たちの邂逅に気づく事は無かった。


863 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/08(金) 12:05:00 4TqlLfMg0
【3日目/深夜/板橋区】

【松野トド松@おそ松さん】
[状態]不安? 睡眠
[令呪]残り3画
[装備]
[道具]
[所持金]バイトをしているので割とある
[思考・状況]
基本行動方針:目指せ勝ち逃げ☆
1:普段通りの生活をする。
2:周囲が異常に感じるが……
[備考]
・聖杯戦争を把握しておりますが、令呪やNPCについての詳細は知りません。
・通達も大雑把ですが把握しております。(先導アイチやアヴェンジャーのことは知りません)
・どことなくNPCには違和感を持っています。
・噂話程度に刺青男(アベル)のことは把握しておりますが、サーヴァントとは疑っておりません。

【セイバー(フランドール・スカーレット)@東方Project】
[状態]健康
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:今のところはトド松の方針に合わせる。
1:どうせなら人喰いたちを探したいところだが?
2:なるべく戦闘はしない。けれども彼女の気分次第では……
[備考]
・都内で殺戮を続けるバーサーカーたち(アベルとオウル)の存在には気づいております。
・アーチャー(セラス)を把握しました。
・破壊の手加減が出来るようになりましたが、本人の気分次第では木端微塵にしてしまうかもしれません。


【馳尾勇路@断章のグリム】
[状態]精神疲労(中)
[令呪]残り3画
[装備]安全ピン
[道具]
[所持金]中学生としては普通+■親からくすねた分
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を破壊する。
1:少女たち(エミとブルーベル)を探しだす。
2:家には帰らない。……戻りたくない。
[備考]
・役割は「不良中学生」です。どこの中学校に所属しているかは後の書き手様にお任せします。
・エミとキャスター(ブルーベル)の主従を把握しました。
・トラウマのこともあり、自宅には戻らないつもりです。


【バーサーカー(ヴラド三世)@Fate/Grand Order】
[状態]霊体化
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:マスター(勇路)には従う。現時点では。
1:感じる違和感が気がかり。
[備考]
・エミとキャスター(ブルーベル)の主従を把握しました。
・アーチャー(セラス)の存在を把握しました。
・何となくですが、ランサー(ヴラド三世)の存在を感じ取っています。



【アーチャー(セラス・ヴィクトリア)@HELLSING】
[状態]健康
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:マスター(信長)に従う。セクハラは勘弁して欲しいケド。
1:情報収集し、夜明けまでに帰還をする。
2:バーサーカー(ヴラド三世)に通じる存在……?
[備考]
・セイバー(フランドール)とバーサーカー(ヴラド三世)の存在を把握しました。
・刺青のバーサーカー(アベル)を危険視していますが……



【3日目/深夜/足立区】

【織田信長@ドリフターズ】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]
[道具]
[所持金]議員の給料。結構ある。
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を頂くつもりだが……?
1:まずは情報収集から始める。
2:刺青男(アベル)を野放しにするのは危険なので、どうにかしたいが……
3:出来れば武器を入手したい。
[備考]
・役割は「国会議員」です。
・パソコンスキルを身につけました。しかし、複雑な操作(ハッキング等)は出来ません。
・通達を把握しております。また、聖杯戦争の主催者の行動に不信感を抱いております。


864 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/08(金) 12:05:29 4TqlLfMg0




少女が彷徨っている。
彼女は兄を求めて、必死になっている。だけども、けれども。
そんな少女――先導エミを絶望させるかのような事実が突き付けられた。

エミの兄。先導アイチ。
彼の存在を掴むことができた。しかし、この聖杯戦争の主催者の一人として、だったのだ。
何故?
一体どうして?

聖杯戦争なんて、魔術なんて、生と死の狭間にある血で血を流す殺戮とは無縁であったはずの兄が。
どうして聖杯戦争を主催する側の存在として、現れたと云うのだろうか……?
否。
エミは彼の姿も声も、何かを知った訳ではない。
彼女のサーヴァント・ブルーベルが教えてくれたのだ。

サーヴァント達にのみ行われた通達。
その通達を行った張本人こそが先導アイチ。


嘘だ。


エミだからこそ分かる。妹だから分かる。アイチはそんなことはしない。
戦争をしよう、させようなんて提案する人間ではない。
彼にはそのような力はない。あるのは――カードファイト『ヴァンガード』の実力。

「アイチはそんなことしない……」

狂ったこの『東京』に居続けただけでも中学生のエミにとっては苦痛だというのに、兄が戦争の実行者という事実。
彼女の精神的ダメージは大き過ぎる。
ブルーベルも、好きで喋った訳ではない。
話せばエミが傷つくことも容易に想像できた。

だが、嘘をつくつもりも、隠すつもりもなかった。
むしろ、隠した方が疑心暗鬼になられると思ったから、それだけである。

『声だけしか聞いてないし、ブルーベルもよく分からない。本物のアイチか、アイチが操られているかもしれないもん』

憶測ばかりを口にしただけだが、ブルーベルの言葉は少し励みになったらしい。
エミはとぼとぼと歩みを止めなかった。
頷いて、前を向く。

「きっと、そう……アイチはそんなこと出来ないから。絶対に、しない……」

でも。これからどうするべきだろう。
エミは悩んだ。
ブルーベルから聞いた通達の内容によれば、この『東京』から脱出をしようとすれば主催側から何らかの『処理』をされる。
抹消する――という意味での『処理』か。
あるいは、異なる意味での『処理』なのかも……

『エミ。このまま出ようとしても意味ないよ』

「ううん……決めた。私はブルーベルちゃんを信じる」

主催者たちのところにアイチがいる。
十分すぎる情報だった。
ならば――エミは行動に出る。彼女の目的は聖杯を手にする事でも、闘争から逃れる術を得るのでもない。
先導エミは兄を探しにここへ来たのだ。
彼女の想いに答えた運命は、ここに先導アイチを用意したのである。


865 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/08(金) 12:06:06 4TqlLfMg0

「ここから出よう。ブルーベルちゃん」

『それは分かってるよ。でも、どうするつもり?』

「だから『東京』から脱出するの! ……それで主催たちに会えるかもしれない」

『なッ……!?』

驚愕の一手にブルーベルも言葉を失う。
確かに、主催者が処理を行う――とは説明したが、直接姿を現すかも定かではない。
ましてや例の先導アイチが現れるかも………

エミは賭けようとしていた。
他に手段がなければ、やってみなければならない。
最悪死ぬことになったとしても。

『ばっかじゃないの!? それで死んだら意味ないでしょ!!』

さすがのブルーベルもエミを罵倒するが、エミは弱々しくも覚悟はしていた。

「でも……それ以外、私は思いつかないの。アイチに会う方法が……」

『疲れてるだけだから! エミは、アイチの話聞いて気がおかしくなってるだけだもん』

「……私、おかしいかな?」

『ホラ! 全然気づいてない!! やっぱりちゃんと寝た方がいいって!』

別にブルーベルは優しさを示しているのではない。
こんな馬鹿らしい行動でマスターが死んでしまっては、自分が情けなくなるからだ。
少なくとも、ブルーベルはエミを簡単には死なせないようにしている。
エミは、しばし呆然としていたが、納得する。

あまり眠りについていない。先ほど、聖杯戦争のマスターらしき少年と出くわして、焦っていた。
不安に押しつぶされそうな……エミの精神状態は追い詰められている。
不可思議と無縁な中学生にとっては、到底耐えきれない状況だった。

「だよね。どこかでもう一度寝ておかないと……」

エミが突拍子もない行動を移すのを阻止したことに、ブルーベルは安堵する。
とはいえ。
彼女の目的は聖杯ではなく、脱出すること。アイチと接触する事。
愚かであったかもしれないが、アイチと再会するには主催側との接触が一番だ。一かバチかで脱出を図るのも、アリではあった。
ただ、それは最悪の事態が想定できる以上、止した方がいい。

『にゅ~~~~~………どうしよっかなぁ』

人魚のキャスターが悩む。
それよりも、彼女は主である少女の為に何か一つ多くのことをしてあげようと密かに思うのだった。
同じ、兄を求めていた妹の身として―――


【3日目/深夜/練馬区】

【先導エミ@カードファイト!!ヴァンガード】
[状態]精神疲労(大)、肉体的疲労(中)
[令呪]残り3画
[装備]
[道具]着替え等が入ったバッグ
[所持金]中学生として普通
[思考・状況]
基本行動方針:アイチを探す。
1:どこかで休みたい。
2:あのマスター(勇路)からは逃げる。
3:これからどう行動しよう……?
[備考]
・役割は「中学一年生」です。どこの中学校に所属しているかは後の書き手様にお任せします。
・通達を把握しました。
・少年(馳尾勇路)がマスターであると確信しました。


【キャスター(ブルーベル)@家庭教師ヒットマンREBORN!】
[状態]霊体化
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:エミと共にアイチを探す。
1:アイチと接触する術か、脱出する術を探したいが……
2:エミが心配なので休ませる。
[備考]
・少年(馳尾勇路)がマスターであると確信しました。


866 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/08(金) 12:07:01 4TqlLfMg0



誰かが死んでいる。いえ、殺されている。
ああ……こんなにも簡単に……酷い、酷過ぎるわ……なんでこんなに?
どうして、どうしてこんなに殺さなければならないの。あなたの身勝手? そんなこと絶対に認められないわ。
神様は絶対に許しはしないわ。許さない。
許されるはずがない……分かっていてやっているの……?


……………そうね。あたしが愚かだった。
あなたにこんなこと言ったところで、あなたにどんなことを言ったところで………
あなたは、あたしの話なんて聞かない。

だから、あなたは――――あたしを殺す。

そうでしょう?
違う?


…………ごめんなさい。それも違う。
あたしを殺す理由なんて……そもそもない。人を殺す理由も、ない。動機なんて最初からなかった……
偶然、あたしがそこにいたから……そう……そうなのね………やっぱり。

気付かなかったんじゃあない、納得できなかったの。
だって『普通』じゃあないから。そんな考え。
でも、納得したわ。

あなたは、何もかも『普通』じゃあなかった。たったそれだけ、シンプルな答えね……
ひょっとしたら……あなたと通じ合えるかもしれない。そんな理想を描いてた……説得が出来るんじゃあないかって。
駄目だった。無駄だった。


一つだけ分かるわ。
これはあたしの夢じゃあない。これは『あなた』の夢。
いえ……もしかして『あなた』が経験した事? ここは一体?
病院? それとも刑務所?
見た事ない施設……研究所って言うのかしら。あたしにはそういう知識が全くないけど……

本当……あなた、一体何をしてきたの?
それに『ここ』にいる人たちも、一体何をしているの?
分からない……やっぱり、分かりたくない……関わりたくもない………

だってイカれているもの。
あなたに関わっている人たちは、人じゃないものだってそう。皆、狂ってるわ。
幾度も死んで、幾度も殺されて、幾度も……酷い。殺戮をして……
あたしは酷いと思うけど、あなたにとっては些細な事。どうでもいい。人間の命なんて、どうでも――


「なぜ、あなたはエージェント―――の死に興味を持ったんですか?」


誰? どういうこと? 誰かが『彼』にそう質問している。
『彼』は……酷く怒っている。それ以外にも……何か、分からないけど……言葉に表せないけど、複雑すぎて。
だけど、それに対する返事は、あたしの中で自棄に残った。


「彼は挑んできた、本当の敵手だったからだ」


867 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/08(金) 12:08:18 4TqlLfMg0



ルーシーは起床して早々、相変わらずの目眩と吐き気に襲われた。
だが、一つ違う事は……あの夢。

「………」

ルーシーは身仕度を終え、客室からホテルのフロントまで移動するのに迷いがなかった。
従業員に声をかけ、昨日貰ったのと同じ薬を貰えないだろうかと尋ねたが、相手は疑いもせず薬をくれた。
それからルーシーは新聞に目をつけた。
内容に衝撃を受けた。
今朝、新宿区近辺に例の男――刺青男が出没したという記事。
大きな見出し、新宿区以外にも被害を及ぼしたなんてオマケ程度の内容にしか聞こえない。

いる……! あの男が、刺青男があたしを……殺しに……

新聞を握りしめるルーシーの手が震えていた。
死にたくは無い。夫のスティーブンと再会したいし、せめてアメリカに帰りたいのだ。
だが……もはや叶わない気がする。
諦めたくは無いが、ルーシーは一体どうすればいいのか途方に暮れている。
そもそも……これは本当に大統領の仕業なのかも、それすら信憑性がなかったのである。

唯一の手掛かりは、結局あの男だけである。
覚悟を決めた瞬間には、もう震えは収まっていた。涙は流れそうだが。


もう受け入れるしかない……昨日散々巡ってあたしも納得したはずよ……
この『東京』から逃げる手段は一切ない。
だから、覚悟を決めなくては!
殺されるのならば、殺される覚悟を心に決めなくては―――


自暴自棄だろうか? だが、ルーシーはそう思ってはいない。
ルーシーは不思議でもあった。
あの夢のせいかもしれない。
いいや、あれは単なる夢に過ぎない。本当の事実かも、定かではないのだ。だが……

「あれは間違いないわ」

間違いなく、あの刺青の男の物語だと確信していた。


殺戮を愉しみ、人を虐殺することでしか喜びを得られず、退屈を酷く嫌った。
だけど――敬意のある、狂った戦士だった。



【3日目/早朝/新宿区 ホテル】

【ルーシー・スティール@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]魔力消費(中)それによる体調不良(薬で緩和中)
[令呪]残り3画
[装備]
[道具]携帯電話
[所持金]そこそこある
[思考・状況]
基本行動方針:生きてスティーブンと再会する。
1:刺青の男を探す。
2:なんであれ状況を把握する
[備考]
・役割は「東京観光をしに来た外国人」です。
・聖杯戦争を把握しておりません。
・現時点で『東京』から脱出する手段はないと判断しました。


868 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/08(金) 12:09:53 4TqlLfMg0
投下終了します。タイトルは「虚構反秩序都市 東京」です。


869 : ◆aptFsfXzZw :2016/04/08(金) 23:48:16 CaIZmQJg0
皆様投下お疲れ様です。遅くなりましたが、私も予約分投下させて頂きます


870 : ◆aptFsfXzZw :2016/04/08(金) 23:49:08 CaIZmQJg0



 ■■■■聖杯戦争、三日目。

 本戦開始直後、東京都墨田区の街角を歩く、一人の少年の姿があった。
 終電を目前に帰路に就いた、どこにでもいるような、至って平凡、平均的な少年はしかし、只人ではあり得ない声を聞いていた。

『マスター。少し話があるのだが、今は大丈夫か?』

 低くも明瞭に、直接脳内へ響く声。
 自らのサーヴァントからの呼びかけを認識して、來野巽は遂に始まった聖杯戦争を前に錯綜していた思考を一つの方向に収束させた。

「ん。ああ、構わない」
『そうか……さて、何から話せばいいか』

 巽の返答を受け、セイバーはそんな言葉を口にしながらも、聞き手が身構えるのに必要な時間だけを挟んで説明を開始する。

『まずは先程、例の先導アイチという男から追加の通達があった』

 想定していたより遥かに重要だろう情報が吐かれたことに、巽は一瞬息を止める。
 そんな巽に配慮してか、衝撃に撹拌された脳が落ち着くのに必要な微かな間を取ってから、セイバーは話を続ける。

『本選開始に伴い、奴らが残されていたマスター候補の記憶整理を行っていた際に、イレギュラーが発生したらしい。
 エクストラクラス、アヴェンジャー……復讐者の英霊が、サーヴァントとして召喚されたそうだ』
「アヴェンジャー?」

 耳にしたのは、セイバーから受け取った説明に含まれていない名前だった。

『エクストラクラスとは、通常の聖杯戦争で召喚される七つのクラスとは別の特殊クラスのことだ。基本的な聖杯戦争のルールには含まれていないために、これまでは特に話して来なかった……不信を招くような真似をしてしまったな』
「いいよ、それは。これまでの話だって、理解するのにいっぱいいっぱいだったんだし」

 セイバーの謝罪を、巽は事実を述べて不問に付した。

「その分これから教えて貰えるんだろ?」

 そうして代償行為を求めてみたが、そこでセイバーの声に滲む謝意が濃くなった。

『……すまない。実のところ、そういった例外が存在するという認識しか俺にも与えられてはいない。故に、アヴェンジャーについてもこれ以上の知識は持ち合わせがない』
「そっか……ま、じゃあしょうがないな」
『役に立てなくて本当に申し訳ない』
「いいよ別に。セイバーは字引のためにここに居るわけじゃないんだし。ちゃんと俺達にも説明しない先導アイチの奴が悪いさ」

 こんな悪逆な争いの主催者を名乗る男への憤りを漏らしながら、巽は頼るべき相棒へと呼びかける。

「そもそもセイバーの役目は、俺と違って戦えることだろ? そっちを頼むよ」
『……そうだな。そちらについては、安心して任せて貰って構わない』


871 : ◆aptFsfXzZw :2016/04/08(金) 23:50:15 CaIZmQJg0

 その返答は、それまで交わされた言葉に比べて、幾分自信に満ちていた。
 遥か過去のそれといえど、巽など及びもしない教養もあるのだろうが――やはりセイバーの本質は相談役の真似事ではなく、戦士である点にあるのだと、自然と認識できるほどに。

『最初に言った通り、アヴェンジャーの召喚は先導アイチ達にとっても想定外の案件であったらしい。彼らが聖杯戦争を管理運営しているのなら、その打倒においてあるいは重要な手掛かりになるかもしれない』
「そっか……そうだな」

 それでも、一方的に与えられた知識を抱え込む側として処理した情報を伝えてくれるセイバーには、戦力以外の面でも大いに助けられている。
 おかげでアヴェンジャー、及びそのマスターとの接触。東京を救うという最終目標に向けて、達成すべき課題を一つ見出すことができた。

「うん、それがわかっただけでも助かった。ありがとうセイバー」
『大したことはしていない。言われたことをただ伝えただけだが……役に立てたなら幸いだ』

 伝説の大英雄でありながら意外なほど腰の低い剣士は、微かながらも確かな喜悦を露にして頷いた。
 そんな姿に、失礼かもしれないがどこか微笑ましい気持ちになった巽は、彼が自分を信じてくれたことを誇らしく思えた。

 ――きっと自分は、成り行きに身を任せただけなのだろう。巽の中には、そんな確信があった。

 だってそうだろう。本気の争いとも、命のやり取りとも縁のなかった自分が、突然本物の戦争に放り込まれたからと言って、いきなり覚悟を決められるはずがない。
 自分の置かれた状況の理解すら危ういというのに、戦場として用意されただけの偽物の東京を守りたい、などと言い出すのも、正常な判断ではないのかもしれない。
 だからこれは、覚悟だなんて立派なものではないのだろう。

 それでも巽は、自分の中にいる小さな正義の味方に背く真似をしたくはなかった。
 自分のように巻き込まれた者、マスターとして集められた本物の人間達――偽りだろうとそこにある平穏を壊されることで、彼らに傷ついて欲しくなかったのだ。

 それは傲慢なのかもしれない。先日見た不審者のように、ただ正義に酔っているだけなのかもしれない。
 そんな当たり前に感じた不安を、消してくれたのがセイバーだった。
 巽の幼くちっぽけな願いは、それでも確かな正義であると――伝説の勇者が認めてくれたのだ。

 ならば自分は、彼と共に在るに相応しい、正義の味方でありたい。

 ……実際は、理想ばかり一人前で、未だ何一つ立派なことなどできていないのは、先程の外国人少女との接触からも明らかなのだが。

『それと……すまないが、もう一つ話がある』

 それでも、と決意に燃えていた巽の背に待ったを掛けるように、セイバーが再び口を開いた。

『マスターは、俺が“竜殺し(ドラゴンスレイヤー)”であることは知っているな?』

 セイバーの真名はジークフリート。世界三大叙事詩の一つとまで称されるニーベルンゲンの歌に登場する不死身の大英雄。
 彼こそは歴史や文学に縁なき者であってもその名に覚えがあるだろう、世界で最も有名な竜殺しの勇者だ。

「もちろん……ファヴニール、って竜を倒したんだっけ?」

 あまりに広域に渡って語り継がれた詩であるために、伝説によっては、彼が屠ったのは無名の竜ともされているが……これまた、世界でも指折りの知名度を誇る邪竜の名を、巽は記憶から引き出し口にする。

『ああ。そして奴の血を浴びたことで……いかんな、このまま続けても話下手を晒すだけか』

 巽の相槌に更に答えようとしたセイバーは、そこで言葉を区切り、改めた。

『要点を言おう。俺は邪悪なる竜(ファヴニール)の血を浴びたせいか――“あの竜”と、共感している』


872 : ◆aptFsfXzZw :2016/04/08(金) 23:51:17 CaIZmQJg0

 セイバーの告白の意味することは、巽に即理解の叶うものではなかった。
 当然セイバーの話はそれで終わることなく、すぐに解説が行われる。

『言うなれば、マスターとサーヴァントを結ぶ因果線(ライン)のようなものだ。とはいえ、それは極々弱いものに過ぎない。精々、互いの生存を確認できる程度だが……』

 彼が血を浴びた頃には、ファヴニールは既に息絶えていただろうに。何故、そんな知識がセイバーにあるのか、という些細な疑問が脳裏を掠めたものの。
 巽にも、話の流れが見えてきた。

「つまり……」
『ああ、俺の心臓が告げている――奴がいるらしい。この東京に』

 微かな緊迫感を孕んだセイバーの声に、巽の危機感も否応無しに煽られる。

『竜とは最強の幻想種だ。奴らを打ち倒すことが戦士にとって不変の名誉となるのは、成体の竜の力が多くの英雄を凌駕する証左に他ならない……ましてやファヴニールほどの竜ともなると、単独で仔を為すことができる。
 ……今はアヴェンジャーの捜索だけでなく、刺青のバーサーカーを抑えることも急務だとは俺も思う。だがあの邪悪な竜を野放しにしておけば、おそらく更に人が死ぬことになるだろう』

 セイバーの口にすることは、巽にも直感的に理解できた。
 例えばホラームービーの殺人鬼と、特撮映画の怪獣なら……等身大の恐怖を覚えるのは前者でも、実際に齎される被害は後者が遥かに上となる。
 勿論刺青のバーサーカーの全容が未知数である以上、この喩えが当てはまると断定はできないことでもあるが。セイバーが言いたいのは、つまり脅威は目に見えているものだけではないということだ。

 ――そして自分達は、おそらく今の東京で唯一、邪竜による災厄を知見できている立場にいる、と。

「そう、だな……刺青の殺人鬼の足取りだって、全く掴めていないんだし。セイバーが追いかけられるんなら、まずはそっちから探してみる方が良いか」
『……すまない。こんな話をしておいて何だが、今の俺には、奴の正確な居場所までは掴めないらしい』

 この東京の聖杯による召喚では、サーヴァントが本来持つ、サーヴァント特有の気配への感知力が弱められた状態であるらしいことは昨日聞き及んでいる。
 邪竜に対しても、同じ時間軸の、同じ世界に存在することまでは確信できても、その動向を詳細に把握する、とまでは行かなかったらしい。

「わかった。まぁ、それもセイバーのせいじゃないさ」
『……すまない。マスターには気を遣わせてしまってばかりだな』
「いいって。今までは何の手掛かりもない状態だったんだ。それに比べたら物凄い前進だよ」

 巽の言葉は本心だった。

「その時が来たら頼んだ、セイバー。必ず東京を守ってくれ」
『――ああ。任せてくれ、マスター』

 セイバーの返事に頷き返して、それで今度こそ二人の会話は一度終わった。
 ふと、腕時計を見る。話し込んでしまってつい足が遅くなってしまっていたから、今から走る必要があるが――

「こっちで泊まる方が良いのかなぁ」

 日が昇った時間帯のことを考えると、足取りが幾らか重くなるのを巽は感じた。

 巽の住まいは元の通り世田谷区のままながら、通学先が大きく変わっていた。今から帰宅して寝床に就くより、通学先に近い世田谷で宿を取りたいというのは怠惰かもしれないが、それ故に学生として当然の欲求であった。何より今は戦争中。サーヴァントの運用にも関わる、体力の温存は優先されるべき事項のはずだ。
 ……とはいえ、四半世紀も古い時代の人間である巽には、今の東京での生活事情など知識にはあっても実感が薄く、それが思い切った行動への躊躇を生んでいた。


873 : ◆aptFsfXzZw :2016/04/08(金) 23:53:49 CaIZmQJg0

 結果、体力以上に限られた軍資金を節約すべきだという結論が導かれ、巽は足早に終電の待つ押上駅へと向かうことになった。



 ――――余談だが。住居のある世田谷区ではなく、葛飾区に所在するこの世界における彼の登校先は、不動高校という私立の高等学校であった。







「――大丈夫か?」

 深夜。
 東京都千代田区御茶ノ水駅に程近い街角で、信号を渡るのに苦労していた一人の老婦人の横に、ジークは歩を進めていた。

「えぇと、あなたは……?」
「見たところ、道を渡るのに難儀している様子だったから声をかけた。不要だったか?」

 ジークの申し出に、しかし老婦人は異郷の少年への警戒心を表に出していた。

「心配、なさらないでください」

 その様を見て、どうしたものかと悩むジークの背後から、柔らかな声が掛けられた。

「目上の方への言葉遣いがなっていませんよ、ジーク」
「……すまない」

 ジークを上回る長身の、北欧系の美女――昨日、見繕った当世の私服に身を包んだランサーから窘められて、ジークは微かに視線を落とす。
 今まで出会って来た人間は、一個の自我としてジークを尊重してくれていた。あるいは、一般人と関わったのも言葉遣い等に構っていられない緊急時にばかりだった。
 言われてみれば水槽の中の消耗品だった己は、人間と円滑なコミュニケーションを交わすための言語能力が他のホムンクルスにも劣っているのかもしれない、とジークは自省する。

「申し訳ありません。この子も悪気はなかったのですが、まだこの国に不慣れでして」
「……あ、え、ええ。どうやら、素直な弟さんみたいですねぇ」

 返答が遅れたのは、あるいは同性でありながら、老婦人も神造の美に見惚れてしまっていたのかもしれない。
 その助けもあってか、はたまた関係ないのか。ともかくランサーの取り成しで、老婦人からジークへの警戒心を解すことは成功した。

「その……それでお困りなら、力になれるだろうか?」
「ええ、それじゃあ、お言葉に甘えさせて貰おうかしらねぇ」

 同じ欧州系、という人種だけで勘違いされたようだが、ジークとランサーの間に姉弟関係はない――という指摘は、またも余計な不和を招くだろうと口にしないまま、ジークは彼女の荷物を譲り受けてその手を引く。

「助かったわぁ。偉いわねぇ」
「……それほどではない」

 素っ気ない返答に、老婦人も最早眉を顰めることはなく、ニコニコとした笑顔を返してくれた。

「ここには一人で?」
「ええ、用事を済ませに来ていたの。住んでいるのは葛飾の方なんだけれど……」

 そんな返答に、「奇遇だな」とジークは相槌を打つ。

「俺達も今はそちらの方に家がある。もしよければ送らせて貰えないだろうか?」
「あらそうなの? そうよねぇ、近頃は例の殺人鬼騒動で物騒だし、お願いしようかしら」

 老婦人の言葉に頷きながらも、ジークの関心の一部は、否が応でも一つの単語に注がれていた。
 それは巷を賑わす殺人鬼――即ち、刺青のバーサーカー。
 NPCと称される存在だとしても、聖杯戦争と本来無関係な人々を巻き込み、その生命を消費し、社会を脅かしている危険因子。
 目の前の争い事とは縁遠いだろう老婦人の目にも不安を浮かばせ、もしも彼女(ルーラー)が召喚されていたなら深い悲しみを与えただろう邪悪を再認識し、ジークは静かに彼への敵意を強めていた。


874 : ◆aptFsfXzZw :2016/04/08(金) 23:55:35 CaIZmQJg0

 そんな決意を秘めたまま、三人で駅内へと足を運んだ後。時計を確認した老婦人は、やや気恥ずかしそうに口を開いた。

「少しお手洗いに行ってくるわね」
「大丈夫だろうか? ……いや、俺が付いていくのは無理だが」
「いいのいいの。それにあんた達と居ると注目されちゃうの、別に嫌じゃないけど流石にトイレまでは、ねぇ?」

 彼女が視線で示したように、周囲の人々の目は、個人差こそあれど、揃ってランサーへと惹き付けられていた。
 世界有数の大都市である東京において、混在した異国の人種など最早非日常に分類されるものではないだろう。にも関わらず、微かな憂いを帯びた女に誰も無反応を通せていない。
 しかし、それも無理からぬ事なのだろう。神性として生まれ落ちながらも、人へと堕ちたる彼女の外美は、既にそれこそが神秘として成立している。
 玲瓏たる戦乙女がそこに在るということは、否が応にも目立つものなのだ――敢えて彼女を実体化させている、目的の一つに沿う通りに。

「……すまない。助かった」
「構いません。マスターの助けとなるのが、サーヴァントの努めですから」

 老婦人の姿が遠ざかったのを見届けてから、ジークとランサーは言葉を交わした。

「それにしても」

 そこでランサーは、微かな感慨で間を持たせてから、呟いた。

「人と、関わるのですね。マスター」
「――あなたの知っている俺とは違うか?」
「……ええ、そうですね」

 微かに憂いを帯びた目で、ランサーは更に述懐する。

「少し前の少年も、あのご婦人も。世界の殆どの人間は、あなたにとっては書き割りのようなものでしょうに。ましてや、この偽られた東京の民ともなれば尚更のこと」
「あの日、口にした通りだな」

 駅の構内でランサーに集まる視線も落ち着き始めた、周囲に蔓延る人間達に視線を巡らせて、ジークは自己を振り返る。
 好意も悪意もない、ありきたりな人間たち。その殆どはジークに何の変化も与えず、またジークから何の影響も受けず、何も変わらずに生きていく。それが自然な世の中だ。

「だが、その記憶を視たのなら貴女も識っているだろう。あの日、俺の友が言っていたことを。
 本来何の関係もない人々でも、そこに俺が関われば、何かが変わるかもしれない」

 だから人間が好きなのだと、ジークの最高の友達(サーヴァント)は言っていた。
 何かに関わるのはそれだけのエネルギーを消費することで、しかも徒労に終わることかもしれない。予期せぬトラブルが起きてしまって、もっと大変なことになるかもしれない。
 だが、もしかすると、巡り巡って何か、素敵なことが起こるかもしれない。

 あの日、あの時。“黒”のライダー(アストルフォ)が、助けを求める己と関わってくれたように。

「それが、ライダーが俺に望んでいた生きるということなのだろう。だから俺は、できる限りヒトと関わって生きてみたい……ここにいる人々は、本当の書き割りだけではないのだから」

 この東京都の住人は、多くが先導アイチらによって創り出された模造品であることは既に聞いている。
 しかし、記憶を封印された元マスター候補――本物の人間が変じてしまった者達が残されていることも、ジークはランサーから教えられていた。
 彼らのことも、可能な限り助けたい。ジークの信じるルーラーやライダーなら、きっとそうすると思えたから。
 ましてやNPC――人間の模造品というのも、ホムンクルスであるジークにとっては、たったそれだけで見捨てることを容認できる相手ではなかったから。


875 : ◆aptFsfXzZw :2016/04/08(金) 23:57:52 CaIZmQJg0

 そんなジークの返答を受けて、少しだけ考え込むような素振りを見せた後。ランサーは、ジークに問いかけた。

「……私に外行きの服を用意してくれたのには、そういう理由もありますか?」
「ああ。あのままでは、現界するのも場所を憚られるだろう。貴女はそれも覚悟の上だったかもしれないが、忍びなくも思えてな」

 かつてジークと契約した“黒”のライダー――アストルフォは、第二の生を満喫していた。
 そして、人間と関わることがが楽しいのだと口にした。
 物事が悪しき方向に転んで背負うことになる苦悩も、何かを成し遂げた達成感と同じく、それこそが生を実感させるものとなるのだろう。
 如何なる奇跡か、二度目の生が掴めたのなら。与えられた使命こそあれど、ただそのためだけに自我を押し殺して欲しいとはジークは思えなかった。
 もっと、色んな物事に関わってみて欲しい。それで何かが変わるかもしれないのだから。
 救いなき悲劇の中で生涯を終えたという彼女には、なおのことそう感じたのだ。

「とはいえ、それはあくまで彼の感性と、俺の勝手な願望だ。それが貴女にとって迷惑であったのなら、気にせず自由にして欲しい」
「……いいえ。お心遣い感謝します、ジーク」

 ジークの申し出を、ランサーはくすりという微笑みを以って辞退する。

「それに、あなたの考えは充分理解できるものですから――今のところは、特に敵意などが向けられた様子はありませんね」

 そっと胸元に手を添わせるランサーの様子に、ジークは答えを予想しながらも確認をかける。

「サーヴァントの気配も変わらず、か?」
「ええ」

 与えられた器に備えられた感覚も、ルーン魔術による索敵も、未だいずれの網も掛からず。
 つい先程、正式な開戦が告げられたばかりとはいえ、己の案が丸二日、何の成果もないことに、ジークは微かに気落ちする。

 ジークの策とはつまるところ――歯に衣着せぬ言い方をすれば、ランサーを餌とした釣りだった。

 実のところ、サーヴァントを囮にするのは聖杯戦争における定石でもある。事前の諜報戦は重要だが、そもそも会敵しないことには事態は動かないのだから。
 ましてランサーの真名はブリュンヒルデ。世界的な知名度を誇る元神霊である、非常に強力なサーヴァントだ。敵を招き寄せたところで遅れを取る相手などそうはいないだろう。
 ――そのような信頼がある上でも、いざ囮役を命じるのには躊躇いを覚えた。
 無論、ランサーは危険と信頼を理解した上で快諾してくれてはいる。しかし自らに友好的な相手を積極的に窮地に追い込もうというのはなるほど良い気分ではない。
 ジーク自身も、聖杯大戦においてその役目を務めた上でそう思うのだ。あの時アストルフォがああも憤ったのも、今なら幾らか理解できる。
 ……少しだけだが、己はルーラー達の願ったように成長できているらしい。

「そうか……やはり、広いのだろうな」

 不意に沸き上がった感慨を抑えながら、ジークは努めて淡々と現状認識を零した。
 サーヴァントが本来持つ気配感知能力が損なわれている以上、通常の聖杯戦争の期間とされる二週間でも接敵が叶うかすら怪しいところだ。
 ジークの目指すのは必ずしも闘争とは限らないが、その分一層他参加者との接触が重要になって来るとも言える。都合が悪いことに変わりはない。
 この都の土地が足りない、狭いとされるのは、明らかに過多な人口に対してのみの話であって。二十二騎のサーヴァントが暗闘する舞台としては、東京都全域というのは余りにも過ぎた空間なのだ。

 ――そう、暗闘の舞台としては。

 現状事態を動かす唯一の光明とも言えるのは、皮肉にも暗闘などとは程遠い、あの刺青のバーサーカーの巻き起こす暴虐にあった。
 奴の足取りを追って千代田区まで駆けつけてみても空振りに終わったが、そろそろ傾向も見えてくるだろう――次なる惨撃を期待するかのような己の思考に、悍ましさも覚えながらも、ジークは冷静に検分する。
 明日こそは刺青の狂戦士を捉えてみせる――あるいは自分達と同じように、奴を追う他の参加者を。


876 : ◆aptFsfXzZw :2016/04/08(金) 23:59:35 CaIZmQJg0

 ジークが決意を固めていると、不意に、ランサーが視線を逸らした。

「待たせちゃったわねぇ」

 一瞬、身構えようとしたジークだったが、彼女の気を引いたものの正体が老婦人の帰還であったことを悟り、微かに緊張していた表情を解した。
 そうして、三人揃って終電となる車輌に乗り込む。人はそれほど多くはなく、三人共がゆったりと席に腰掛けることができた。
 優先席の近くであったため、でかでかと描かれた注意書きが否が応でも目に入った。そこに書かれていたことを律儀に実践して、ジークはポケットから取り出した端末の電源を落とす。

「はぁー、あんた、偉いわねぇ! 孫に爪の垢煎じて飲ませてあげたいわ」
「別に、立派なことをしたつもりではない」

 すっかり口調の砕けた老婦人が漏らした感心に、端末を元の場所に戻しながらジークは淡々と答える。
 突き詰めれば、この程度の電波で引き起こされる障害は統計上無視して良いレベルに過ぎないだろう。端的に言えば無駄な行いだ。
 ただ、非合理的でもそれで誰かが不幸になるわけでもない人間の世の法であるなら、無思慮に叛逆するよりは郷に従う方が損がない判断したに過ぎない。

「いんやぁ、立派よ。こっちに配慮して貰っているって感じられると嬉しいもの。そういう心遣いは大切よ」
「……あまり、そういう意図はなかったが。そういうものなのか?」
「そういうものだよ」

 そうこうしていると、時計の針が所定の時間を指し示した。アナウンスの後、何十人もの人々を体内に抱え込んだ車輌が、その日最後となる走行を緩慢に開始する。

 ……それから、さほど時間も経たないうちの出来事であった。

『……マスター』

 改まった声音で、ランサーが念話で呼びかけて来たのは。

『たった今、先導アイチから追加の通達がありました』
『――詳しく頼む』

 催促してみたところ、イレギュラーとして追加のサーヴァントが召喚されたのだという。

「あんた達、日本は長いの?」
「いいえ。私もジークも今年の――」

 エクストラクラス、アヴェンジャー――『裁定』より最も縁遠い復讐者のクラスのサーヴァントが。

「はええ、なのに日本語、上手だねぇ」
「お褒めの言葉、ありがとうございます」

 表面上は老婦人と談笑を続けながらランサーが伝えてくる情報によると、先導アイチ達にとってもそのサーヴァントは未知数であるらしい。
 ならば、そのサーヴァントの存在が、この――消費されるために命を用意したなどという聖杯戦争の在り方を変えるための、鍵となるかもしれない。

「――あんた、今は何をしてるんだい?」

 そんな思考に沈んでいたジークに、老婦人が声をかけた。

「俺は……、っ!?」

 電車が動き出すのに合わせて、聖杯に与えられた役割(ロール)を答えようとした、その瞬間。ジークの言葉を詰まらせたのは、前触れのない心拍の変化だった。
 送り出される量が急激に増えた血液に、瞬く間に視力を奪われた。平衡感覚を失って椅子から滑り落ち、掌が勢い良く鉄製の床を叩く。


877 : ◆aptFsfXzZw :2016/04/09(土) 00:01:16 U6Kl5jrI0

「――ちょっとあんた! 大丈夫――」

 心配した老婦人の呼びかけが遠い。何か返事をしようとしても、激し過ぎる拍動は肺さえ圧迫したかのように、ジークの息を詰まらせる。

「ジーク? しっかり……あ――っ」

 ジークの尋常ではない様子に、看病しようと伸ばされたランサーの手が止まる。

「…………シグルド?」

 ランサーはその時、あらぬ方向へと視線を向けていた。

「……いいえ。いいえ、これは違う」

 その様子が、直接見えたわけではない。ただその瞬間、自らの魔術回路の励起――即ちランサーからの魔力要求量が増大した事実だけは、その機能に特化したホムンクルスであるジークには、確かに認知できていた。

「ああ、だけど、そんな、私……困ってしまう……っ!」
「あんたも、どうしたんだい!?」
「……待てっ、ランサー……ッ!」

 二重の呼びかけが功をなしたのか。近くを過ぎ去る電車の音が響く中でも、車内の衆目を集めている最中だということを理解したランサーは、寸でのところで自制に成功した。

「あぁ、そんな……いいえ」

 その美貌に翳りを差しながらも、何かに憑かれた様子だったランサーはそれを抑え込むと、ジークを介抱せんとその膝を折る。

「……ごめんなさい。この子、昔から体が弱くて」

 心配したようにこちらを伺ってくる老婦人に対し、憂いを帯びた声と表情で、ジークの肩を抱き起こしたランサーが言い繕う。

 ――だが、違う。生まれた頃のジークがどれほど脆弱な存在であったとしても、これだけは違う。
 肉体が未だ、急な変化に耐え切れないのだとしても。大英雄より授けられた竜の心臓それ自体に、生命としての欠陥があるはずがない。
 故に今のは悪性の発作などではなく――ほんの一瞬だけながら英雄の心臓が見せた、純粋な“猛り”だ。

 だが……“赤”のランサー(カルナ)に感じたものすら及ばぬそれは、何に対して?

「……困ってしまいます」

 ふと、耳元でランサーの囁きが聞こえた。

「…………すまない」
「いいえ……いいえ。違うのです、ジーク」

 違うのです、と続けながらも。ランサーはそれ以上を語ろうとはしなかった。
 沈黙を続けるランサーによって空いた席に導かれ、腰を下ろされたジークの思考は、しかし彼女の様子へ関心に切り替えられないほど、混乱の只中にあった。

「いったい、何がどうなっているんだ……?」

 零れた疑問は誰にも拾われることはなく。窓の外の夜闇に紛れて、消えた。







『……マスター』


878 : ◆aptFsfXzZw :2016/04/09(土) 00:02:11 U6Kl5jrI0

 何とか座ることのできた自由席の上で、ようやく呼吸を落ち着かせることができていた巽に対し、セイバーから微かに逼迫した様子の念話が届いた。

『……どうやらついさっき、すれ違ったらしい』

 具体名はないが、直前の説明を覚えていた巽は、何と、とは聞き返さなかった。
 セイバーが感応する相手――邪悪なる竜、ファヴニールと、だ。

「……いつ?」
『本当につい先程の話だ。この乗り物が走り出した直後だったが――ちょうど向こうも、何かを使って移動していたところだったらしい。そのまま位置がわかる距離からはすぐに離れてしまった』
「……ファヴニールってドラゴンなんだろ? 何かに乗ったりとかあるのか?」
『アレは、元は人間――とも言い切れないが、ともかく、人型だった存在が変生した竜だ。サーヴァント化するにあたって、それが可変となったのかもしれない。後は俺と同じように、マスターと行動を共にしているのかもしれないな』

 声を潜めての巽の疑問にも、セイバーは的確に返答する。

『互いに感知し合ったのは一瞬だが、大凡の向かう先はわかった。この状況では俺一人、という形にはなるだろうが、今ならまだ追跡は可能だろう――仕掛けようか、マスター?』

 東側の夜景を見据えて放たれた、セイバーの提案。それに対する一瞬だけ巽を躊躇わせたのは、彼に教えられた聖杯戦争の鉄則だ。
 マスターではサーヴァントに敵わない。故に、単身で居るマスターが敵サーヴァントに襲撃されることは即、脱落を意味することになる。
 よって、マスターは常にサーヴァントを伴って行動すべきなのだ――が、しかし、必ずしもそうとばかりは言い切れない。
 例えば偵察行為や、サーヴァント同士の超高速機動戦など、マスターを伴うことによる機動力の低下が不利を招く事態は、その定石が通用しない最たる例と挙げられるだろう。
 また、広範囲に渡る攻撃力や影響力を持つ敵サーヴァントとの交戦も、傍らにマスターという弱所を用意することは避けるべきだと聞いている。

 ――巨体を誇り、空を自在に駆けるという邪竜相手の追撃戦は、まさにそれらの条件を満たす事案だ。

 そも、セイバーには問題なくとも、自身を伴っていては走行中の電車からの脱出にすら手間取ってしまう。
 故に巽も、一瞬の後に理解を及ばせていた。

「えっ、嘘まじ……?」

 しかしその一瞬の間に、更に事態は動いていた。

「どうしたの?」
「新宿で今、例の殺人鬼が暴れてるんだって」
「――っ!?」

 車内で生じたそんな会話が、巽の首を縦に振るというだけの単純な行為を阻止した。

「マジ?」
「まじまじ。どーしよ、ちゃんと電車動くのかな」

 思わず振り返ったその先で、携帯電話を片手に、「やだこわーい」などと気楽に、しかし微かな恐怖心を滲ませ交わされる学生達の言葉を信じれば。

 邪竜の気配を嗅ぎとった今このタイミングで、交渉すべきマスターを見つけることができないまま。

 手の届く距離に、あの狂乱の殺戮者(バーサーカー)が現れた。

 たったそれだけの事実が、異様に大きな情報量となって巽の脳を打ちのめし、惑わせる。
 ――果たして自分達は、どんな選択をするべきなのかと。


879 : ◆aptFsfXzZw :2016/04/09(土) 00:03:16 U6Kl5jrI0

 東に向かったという、ファヴニールらしき気配を追うか。此処より西、新宿区にて今まさに殺戮を行っているという、刺青のバーサーカーの下に急行すべきか。
 高度情報化社会とはいえ、一般人に報告が届いた今から新宿を目指していては、バーサーカーは既に新宿を後にしているかもしれない。一方、今ならまだ、すれ違って間もない邪竜の気配は辿ることができるかもしれない。何よりファヴニールを追えるのは、その脅威を知り対処できるのは、自分達だけだ。

 ――だが、空振りになる可能性が大きいかもしれない、もう一方が将来更なる災禍を呼ぶかもしれない、などという理由で優先順位を設けて、今まさに暴虐の限りを尽くすバーサーカーを放置することが、果たして正義の味方の正しい選択なのだろうか?

 どちらが正解なのか。長々と考える時間は許されていないし、そのつもりもない。來野巽は五秒と経たず、自らの進むべき道を選択するだろう。

 しかし、即時とはならぬ決断までの猶予の間――いずれの脅威も等しく放置される微かな、そして被害者達にとっては致命的な空白が、その時確かに存在していた。



 そんな巽の数瞬の葛藤を、しかし責めることなど誰にもできるはずがなく。セイバーもまた、自らの正義を託した主の決断に全てを委ね、待っていた。

 ――その胸裏に、悪逆に対する義憤の他に、わずかな疑問を燻らせながら。

(あの感覚は……)

 他に心当たりがない。
 だが、しかし。あの残忍な竜が常に纏っていた、ドス黒い嗜虐への欲望をまるで伴っていなかった今の気配の、その主は――

(本当に……ファヴニール、なのか?)

 マスターの決断を待つ間、セイバーの胸中を掠めた疑問に、その時心臓が答えを返すことはなく。

 そしてそれより遥かに早く、巽の指示がセイバーの耳に届いていた。




【3日目/未明/千代田区 都営新宿線上】



【來野巽@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ】
[状態]健康、
[令呪]残り3画
[装備]
[道具]
[所持金]学生相応
[思考・状況]
基本行動方針:東京を救う
0:向かうべきなのは――
1:刺青のバーサーカーを止める
2:ファヴニールをどうにかしたい
3:アヴェンジャーとそのマスターを探し、接触したい
[備考]
・与えられた役割(ロール)は不動高校の二年生です。
・巽の決断については後続の書き手氏にお任せします。


880 : ◆aptFsfXzZw :2016/04/09(土) 00:04:45 U6Kl5jrI0

【セイバー(ジークフリート)@Fate/Apocrypha】
[状態]霊体化中
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
 基本行動方針:正義の味方として東京を救う
1:マスターの指示に従う
[備考]
※自らとファヴニールが共鳴することを識っています。
※この東京で自らと共鳴したのが本当にファヴニールであるのか、疑問を感じています。



【3日目/未明/千代田区 JR総武線上】


【ジーク@Fate/Apocrypha】
[状態]健康、
[令呪]残り3画
[装備]
[道具]
[所持金]不明
[思考・状況]
基本行動方針:元の世界への帰還、そのために聖杯戦争を見極める
1:さっきの気配は……
2:老婦人を家まで送り届ける……?
3:アヴェンジャー、及びそのマスターと接触したい
4:ランサー(ブリュンヒルデ)の様子が心配
[備考]
・心臓がセイバー(ジークフリート)と共鳴しています。極近距離にお互いを捉えた場合には位置も感知することができますが、詳細は後続の書き手氏にお任せします。
・まだランサー(ブリュンヒルデ)の様子に、我が身に迫る危険は感じていません。


【ランサー(ブリュンヒルデ)@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ】
[状態]実体化中
[装備]現代用の私服
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
 基本行動方針:ジークを助け、最期は英雄(ヒト)として死なせてあげたい
1:今はジークに従う
2:今の気配は……もしかして……?
[備考]
・ルーン魔術により、敵意や戦意に対する感度を高めています。
・“あの人”によく似た気配(ジークフリート)を感じ取りました。


881 : ◆aptFsfXzZw :2016/04/09(土) 00:06:32 U6Kl5jrI0
以上で投下を完了します。
タイトルは「交錯」でお願いします。


882 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/09(土) 23:23:36 cMU47CuA0
ジークとジークフリート……二人の共鳴により存在は認知しているものの、いざ出くわしたところで
彼らはどのようなことになるのでしょうか。そしてランサーのブリュンヒルデの意思に気付けないジーク。
日常で垣間見ることのできるジークの純粋無垢なところには、私達が本来持つべき正しさがあるのでしょう。
巽は、そんな彼らの間におり、彼の決断によって事態は大きく動くかもしれませんね。
投下乙でした。


そして、沙子&オウル、メアリー&アイザック、アベル。
自己リレーですが予約します。


883 : ◆yaJDyrluOY :2016/04/10(日) 23:19:20 SeoBvjFc0
予約を延長させていただきたいと思います。


884 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/15(金) 09:09:45 R3OX/Er60
予約分を投下します。


885 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/15(金) 09:10:30 R3OX/Er60
東京都文京区。

この『東京』において、ここには人気テーマパークとしてランドセルランドがある。
他の解説を加えておくと。
名所を挙げるならば『東京ドーム』『東京大学』が有る事は挙げられるだろう。
他にも最先端医療や、出版業が盛んで、有名な出版社の本社がここに構えられている。

一方で全体としては住宅街が広い。
その影響か教育機関が多くあるのも事実。
だが、大きな繁華街はなかったり、電車の駅が少ないという歪に矛盾を帯びた環境にあった。



通勤ラッシュが収まった頃。
パトカーが一台、文京区内を巡回していた。
やはり、住宅街の多いこの辺りは現在警戒するべき位置にある。
例の殺人鬼が未だ捕らわれていない。
彼が出没してからは、東京の治安は悪化している。
殺人鬼の模倣犯だとか、脅迫状だとか、殺人鬼の犯行中に警察の目がそちらへ向かうのを利用した異なる犯罪など。
だからこそ、今の日本の警察に変な期待や在り方を疑問視されるようになった。

確かに、ここは聖杯戦争の為だけに作られた場所だが、歴とした社会がある。
NPCたちは定められた日常と社会の中で生活している。それを強要されていた。
一種の職。
ある意味では奴隷。

パトカーに乗車している警官二人。
一人が、面倒そうにぼやいた。

「全く。こっちにはあの殺人鬼は現れてないんだろ? 出没したのは新宿区って話だ」

「何言ってんだ、近いじゃねぇか。それより、ちゃんと周りを見ろ」

そう告げると、運転する警官は集中し始める。
助手席に座る方の警官は、改めて報告をまとめたメモを手にした。
新宿区で暴れた殺人鬼。
実は、他にも共犯者がいたとの事だ。
フードを被った男……そして、少女。
少女の方は明らかに場違いであり、最悪人質ではないかと噂されているが……まあ、人質以外ありえないだろう。
まさか、こんな少女まで犯罪に手を染めるなどありえない。

「しかし、フードねぇ。フードなんて被っちまえば皆、同じようなもんだ」

特徴的ではない情報に呆れていると、信号で停車していたパトカーの脇をフードを被った者が通り過ぎようとしている。
ガラガラと乱雑にスーツケースを引きずる後ろ姿。
警官はもしやと疑ったが、彼は刺青の男と同行しているどころか少女も連れていない。
フードを被った男を、自棄になって職務質問かける訳にもいかないのだ。
少なくとも、警官は「あいつじゃないな」と判断した。

一方で、スーツケースを引きずる男を追いかけているらしい――これまたフードを被った男が現れた。
「おい! テメェ!!」と罵倒しながら駆け抜ける姿は、いかにもガラが悪い印象だ。
何よりも、その男は少女を背負っていた。
少女は疲労のせいか不明だが、眠りについている様子である。


886 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/15(金) 09:10:56 R3OX/Er60

「あの男。どう思う?」

「ん? ……この時間帯にね……ま、確かに変だから声くらいかけておくか」

運転席の警官も違和感を覚えたらしく、パトカーを動かす。
道路脇に寄せながら、声をかけようと車窓を開けた矢先。
何かが飛んでくる。
あまりに一瞬だったので、彼らはすぐに対応ができなかった。

ただ、助手席にいた警官はスーツケースを手にしたフード男――彼の肉体の一部が異形に変化しているのを目撃した。
そして、運転席の警官の顔面に、妙な弾丸状の凶器が突き刺さっているのに気付く。
生き残った警官は、独りでに動き続けるパトカーを止めるべくギアなどを操作した。
冷静な対処だったかもしれないが、少女を背負ったフードの男の方が叫ぶ。

「テメー! 俺ごとブッ刺すつもりだっただろ!」

怒りを現わにする少女を背負う男。
対する、不気味な異形の男は嗤うばかりであった。
激怒する男が言う通り、奇妙な弾丸らしい物体は運転席の警官以外にも車体に突き刺さっており。
助手席側まで飛んで来なかったのが、不思議に感じられる。

これは刺青の男と関連のある異常事態なのか。警官には判断できない。
非現実とは無縁で、ただの警察官である彼にとっては理解の範囲に入っていない。
警官の呼吸は全力疾走したかのように荒くなっている。
震える手を無線に差し伸ばしたところで、彼は終わりを告げた。





座席を貫通し、ブレードが警官の脳髄を捉えた。
そのまま虚しく警官の肉体はだらしなくなり、完全に生気を失う。
どうやって、その殺人鬼がパトカーの後部座席にいたかの疑問は、かけるべきではない。

サーヴァントには霊体化という機能が供えられている。
霊体化をすれば普通の人間には姿を認識できない。NPCの目を誤魔化すには好都合すぎるものだった。
しかし、単純に姿を隠蔽することだけではなかった。
壁だってすり抜けられる。
たとえ現実世界の手錠をかけられたとして、それをすり抜け、姿を消せる。
だから、警官たちに認識されずパトカーに侵入できただけ。

スーツケースを持つ男――梟が彼らに危害を与えようと行動に移したのは、気まぐれだろう。
一方の少女を背負う男――アイザックことザックは、手をかけようとも思っていない。
刺青の男――アベルにいたっては、何故このような行動を取ったのか人間には理解不能だ。

警官たちは不幸でしかない。
だが、訳の分からない行動を起こす梟とアベルに、ザックは言葉に出来ない苛立ちを抱いていた。
周囲を見回すが、これといって目撃者はいない。
警官たちが叫んだり、梟が弾丸を発射させるのにも騒がしくなかった。
あとは、時間帯。
何より大通りではない路地に近い場所であった為、目立たなかっただけである。

梟も異形に変化させていた部位をすでに解いおり。
パトカーに接近し、車窓から警官の頭部をボギボギと音色を奏でて、もぎ取る。
それを見かねたザックが「あ~~!」と喚きながら、パトカーにいる狂戦士たちに言った。

「馬鹿かよ! 何でまたそうやって頭なんか目立つモン狙うんだよ!! さっきみてぇに肉だけしか食わないだろうが!!」

「期間限定。1枚買うともう1枚タダ」

意味不明な言葉を呟きながら、獲得した頭部の脳髄を啜る梟。
頭部を手にしたまま、大通りに戻ろうとした梟の頭を車窓から車内に押し込みながら、ザックはアベルを睨む。


887 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/15(金) 09:11:25 R3OX/Er60

「調子乗ってんじゃねぇぞ、おい。メアリーが起きたら、真っ先に殺してやるからな!」

マスターである少女が眠っていなければ、こんなことにはなっていない。
ザックがそう言い訳している間。アベルは、パトカーに備え付けられていた警察無線から音声が流れるのに反応する。
どうやら、死ぬ直前に警官が無線をつなげたらしい。

アベルは、迷わず無線機を手にした。
手際よく常軌を逸脱した殺戮者が語る。

「至急応援要請。こちら、刺青の男を発見。場所は東京都文京区■■■――」

唐突なアベルの語りにザックは茫然とし、梟は無言で頭部に噛みついているだけであった。
さらに、何気なく、違和感を与えないように。
しかし、私怨の込められた言葉が続く。

「また、新たな共犯者と思しき人物も確認。対象は30代前半の男性。黒髪、青眼。
 両腕両足は金属性の義肢、額に模様のある中東系の外国人」

無線からは「了解」と返答がされるが、アベルはそれきりだけだった。
それ以降の人間からの戯言は無関心。
いくら無線先の人間が返答を求めても、返事はしない。
耳について不快に感じたのか、ついには無線機を素手で破壊した。

ザックも、一連の行為が意味することくらいは容易に想像できる。
だからこそ、それ故に、ザックは顔をしかめながらアベルに問うた。

「お前……自分で何やってんのか、分かるか?」

アベルは死体と座席を貫通していたブレードを引き抜きながら、平然と、至って冷静に聞き返す。

「他に合理的な手段があったと?」

悪趣味な惨状と化したパトカーの車内で、平然とするアベル。
死骸を喰らう梟。
そんなものを目の当たりにすれば、普通の人間は気が狂う。彼等とも話そうなんて願わない。

ザックはまともな男性(自称)だけあり、こいつらはイカれているのだと察しているが。
単純に思考回路が全うであるとか、悪趣味だとか。
そういう類の狂気ではないと理解する。

アベルが行った手段も、彼がこの場から抹消したい存在を炙り出すのには繋がりえるのだ、
殺戮しかやらないアベル自身に、捜索手段など所持していない。
まめに情報収集なんてのも、やろうとはしない。
真面目な作戦なんてのも立てようともしない。
だからといって、知能が低いという意味ではなかった。

アベルが取ったのは――目に見えて分かる、単純で、彼の基準で合理的な手段。
しばし沈黙してから、ザックは溜息をつく。

「あぁ、そうだな。今のは全部忘れろ。テメーにそんな話聞くんじゃなかった」

ザックの態度に、アベルは表情一つ動かさなかったが少しだけ満足気に言う。

「君は察しが良くて、大変よろしい」

「俺はどっちか言えばバカだぜ」


888 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/15(金) 09:12:00 R3OX/Er60

アベルは平然とするザックを不思議そうに眺める。
殺戮者の横暴を見届けた梟は、喰える脳髄がなくなった頭部を適当に放り捨てる。
梟の血まみれの口元を見かねたザックは、面倒だが「それどうにかしろ」と指摘した。
梟は首を傾げながら、首がもぎ取られた警官の死体を漁る。

真っ先に視線が注がれたのは――拳銃。
恐らく、殺人鬼と称しているがテロリストに匹敵する脅威の出現により、拳銃の携帯を許可されていたのだろう。
だが、サーヴァント相手に拳銃など意味はない。効果もない。
ガラクタ。玩具のような物だった。


本当に?


「…………………………………………」

梟は指を咥えながら、拳銃を睨む。
確かに拳銃を所持したところで意味はない。
仮に、拳銃を手にしたところで使用するかも定かではなかった。
それ以上に、暴力的な能力の方が手足を動かすように簡単なのだから。

梟には必要ない。
そう――少なくとも『サーヴァントには』必要ないものだった。

「何してんだよ」

ザックが固まっている梟に気づき、声をかける。
しばしの間を置いて、梟は拳銃ではなく別の物に手をかけた。
携帯電話。
現代の日本人が所持していない方が、どうかしているくらいメジャーな所持品となったもの。
この警官ですら携帯は持ち歩いており、ソレを発見した梟は不思議そうに持ち上げ。
何か思い詰めてから、ザックに差し出す。

ザックは唐突な行為に困惑しつつ「いらねぇよ」と顔をしかめた。
一方で、梟はさり気なく拳銃を掴み取る。
拳銃の存在を知ったのは、動作を注視していたアベルだけであった。

「だから、いらねぇよ! テメーが持ってろ!!」

必要にザックが拒んだので、梟はしぶしぶ携帯を引き取った。
梟が別のものを漁ると、出てきたのは手帳。
警察手帳とは異なる―――メモを取るためのものだろう。
梟は、ゴミをポイ捨てするようにアベルへ投げ渡した。

人喰いの一連の行動を理解できないザックは、苛立ちを表している。
メモ帳を開いたアベルが見たものは白紙。
警察官のメモで連想するのは、今まで取り扱った事案など事細かく記述しているマメさ。
どの程度の記述をするか個人に偏るだろうが、少なくとも白紙のページまみれというのは異常だ。


889 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/15(金) 09:12:38 R3OX/Er60
唯一、メモが残されていたのは1ページのみ。
それも今朝のアベルたちが起こした騒動――新宿区の事件についてである。

「……………フードを被った男。少女をひきつれている」

自身に関するものを除いた記述を読みあげたアベル。
ザックは声を上げた。

「なんで俺の事がもう知れてるんだよ! ったく……慣れてるけどな」

アベルは助手席で死んだ警官のメモ帳がないかと探り、発見した手帳を開けば、先ほどとまるで同じであった。
多少、内容は異なるが……結局、記述があるのはメモ1ページだけ。
そこには少女の名前が記されている。

「キリシマスナコ」

「?」

ザックがポカンとするのに、アベルが助手席の警官の頭部をもぎ取り、啜り喰う梟のことを指差す。
漸くザックが理解した。

「あー、コイツのことか」

少なくともザックについての情報が表沙汰になっていない、ということだろうか。
どちらにしろ、偶然か皮肉か。ザックと梟は特徴だけ述べれば、非常に酷似していたのだった。
アベルは白紙だらけの不気味なメモ帳を適当に放り、乱暴に後部座席の扉を開ける。
ザックのフードを勝手に外しながら、アベルは言う。

「私は少し思い違いをしていた。君は素直が過ぎる」

初めから存在していなかったかのように刺青の男は霊体化し、姿だけは消えた。
理解が追いつかないザックだったが、フードを被っているか否かで大分違う事実を把握していない。
喰いつくした頭部を先ほどと同じく車内へ放り捨てた梟は、
自身の手元にある、すでに何十年使い古したかのようなスーツケースの前にしゃがみ込む。

「スナコちゃん。プレゼントあげるよ。誕生日プレゼント――クリスマスプレゼント」

梟を見かねたザックは言う。

「今は冬じゃねえだろ」

その返答を聞いて、ギョロリと梟はザックを見上げた。
不気味な風貌をした人喰いを、人々は嫌悪するだろうが。
少なくともザックには何ともなかった。
相変わらず口に指をくわえたまま、梟は独り言のようでいて、彼にとっては平坦に問いかけて来る。

「サンタクロース。いつまで信じた?」

「……あぁ?」

「良い子にはサンタさんが来てくれる。だけど、別に良い子じゃなくたって来る。
 ちょっとだけでも良い子のフリしてたら、誰にだってプレゼントをくれる。そんなもの」

梟の言葉に、ザックは臆することはなかった。

「―――知るかよ。
 あのな、俺はお前の話相手じゃねえんだ。あの刺青野郎に話した方がよっぽどマシだぜ。
 俺はお前が喋ってる内容、全然分からないし、分かりたくもねえんだよ」

その返答に躊躇は一切見られない。
ザックは思ったままを述べたのだろう。後先すら考えなかった。
彼の答えを知った梟は、ケラケラと嗤う。

「ザックきゅん。かわいそう、かわいそうな子だ」

梟が「かわいそう」と鳴き声のように繰り返しながら、スーツケースを手に駆けていく。
遠く彼方からパトカーのサイレンが鳴り響く。
ザックは舌打ちをしてから、梟の後に続いて行ったのだった。

残されたのは無残な死骸だけである。


890 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/15(金) 09:13:01 R3OX/Er60




歪で奇妙だが、この三騎が共に行動する理由は決して仲良しこよししたいからではない。
同盟なんて壊れやすい関係ではなく、複雑な感情があるのでもない。


互いが互いに『殺害』を約束し合っているからだ。


ある意味、呪いを帯びた契約のようなもの。
きっといつか彼らが殺し合うのは定められており、それが今日この瞬間ではないだけ。

アベルは退屈を何より嫌う。
人間は基本的に嫌悪しており、真っ先に殺す。
それをしない場合は、対象にわずかな『信頼』がある時。

ザックは酷くアッサリ「殺す」と宣言する辺りは、正直だった。
馬鹿正直なのかもしれない。
アベルは、その正直さを信じているのである。

梟もまたアベルを喰おうと目論でいるが、そんなアベルの■の抹消を優先させているのは不可思議だ。
あるいは、ザックと同じくマスターが行動不能であるが為なのかもしれない。
少なくとも、気まぐれのように感じられるし。どこか律儀な部分が彼に残されている、可能性もあった。

そして、ザックは異常な二人を殺してやると宣告する一方。
短絡的に彼らを殺害しないのは、彼にとって明白な理由があったからだ。
ザックは幸福である者たちを殺したがってしまうが―――


少なくとも彼の周囲にいる者は全て幸福ではなかった。






金髪の少女が部屋に入った。
どこだか分からない。一体どこにいるのかも。
薄暗い、不穏な空気の流れている部屋。チカチカと点灯するテレビが混濁した音色を鳴らしていた。


名前……えっと、私の名前……?


少女は操られたかのように室内を進む。
決定的な何かを忘却したまま、少女はただテレビの前まで移動し終えた。
テレビの前に座り、映像を眺めた。

男女の――カップルらしい二人組が映し出される。
どういう二人なのかは分からない。ただ、彼らは幸せそうだった。とても、嬉しそうだった。
そこで登場する凶器を持った狂人。
狂人は、二人を惨殺し始めた。

何度も何度も、幾度も幾度も、凶器を振り下ろし、肉片も血液もカメラに飛び散って。
ああ、酷い。
見たくもない光景だ。

普通は、普通だったら。

だけど、嬉しそうな狂人の表情を目にした瞬間。「ああ、なんだ」と溜息のような言葉が漏れる。


「こうすりゃあいいんだ」


少女の口から発された声色は、少女のものでは決してなかった。
ようやく、少女――メアリーは
これは自分自身の事ではないのだと、理解した。






―――ザック……





891 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/15(金) 09:13:30 R3OX/Er60
【3日目/午前/文京区】

【桐敷沙子@屍鬼(藤崎竜版)】
[状態]睡眠、精神的疲労(小)
[令呪]残り3画
[装備]
[道具]室井静信作『屍鬼』
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:もっとここにいたい。
0:―――。
[備考]
・参戦時期は不明。
・聖杯戦争については把握しておりません。
・一応、アサシン(アイザック)とバーサーカー(アベル)のステータスは把握しております。
・役割は「入院生活を送る身寄りの無い子供」でした。彼女のいた病院はバーサーカー(オウル)により
 大量虐殺が発生しておりますが、沙子が生存が絶望的な死者として扱われるか、行方不明者として
 扱われるかは現時点では不明です。後の書き手様にお任せします。
・バーサーカー(アベル)の真名については、まだ確証がありません。
・屍鬼としての特性で日中は強制的な睡眠に襲われますが、強い外的要因があれば目覚めるかもしれません。


【バーサーカー(オウル)@東京喰種:re】
[状態]魔力消費(小) (捕食による魔力回復含め)
[装備]
[道具]沙子の入ったスーツケース、拳銃、携帯電話
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:全部殺して、自分が一番だと証明する。
1:アベルくんはおいしいから喰う。
2:ザックきゅんは可哀想な子。
3:スナコちゃんにプレゼントあげるよ。
[備考]
・沙子の屍鬼としての特性は理解しており、彼女の身はある程度考慮しております。
・聖杯戦争の説明をしないのはどうでもいいと思っているだけで、話そうとすれば話せます。
・バーサーカー(アベル)の真名については確証があるのかは不明です。
 ただ、オウルが名前代わりに呼んでいるだけかもしれません。



【メアリー@ib】
[状態]気絶、精神的疲労(大)とそれによる情緒不安定、肉体的疲労(中)、記憶喪失、???
[令呪]残り3画
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:???
1:???
[備考]
・役割は不明です。
・聖杯戦争参戦前の記憶がありません。
 自分の名前と「イヴ」「ギャリー」という人物の名前は思い出しました。
・上記の理由から具体的な参戦時期は不明です。
・アサシン(アイザック)の説明が適当な為、聖杯戦争のことをよく分かっておりません。
・一応、バーサーカー(オウル)とバーサーカー(アベル)のステータスは把握しております。


【アサシン(アイザック・フォスター)@殺戮の天使】
[状態]健康、メアリーを背負っている
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:全員殺す
1:早くメアリーは起きて欲しい。
2:バーサーカーたち(アベルとオウル)が頭おかしいし、殺したい。
[備考]
・聖杯戦争についての説明が適当なので令呪のこともメアリーに伝えておりませんが
 伝えるのを忘れているだけなので、教えようと思えば教えます。
・アベルについては名前を聞いた事ある気がするだけでその詳細は知りません。



【バーサーカー(SCP-076-2/アベル)@SCP Foundation】
[状態]霊体化、魔力消費(中)、SCP-073に対する憎悪
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:闘争を楽しみ尽くしたら、ルーシーを殺害する。
1:SCP-073をここから抹消する。
[備考]
・アーチャー(与一)を把握しましたが、戦意がないと判断しました。
・SCP-073の存在を感じ取っておりますが、正確な位置までは把握できません。
・NPCに関して異常な一面を認知しましたが、本人は関心がありません。
・バーサーカー(オウル)の持つ拳銃について言及するつもりはありません。


<その他>
・バーサーカー(アベル)がアサシン(カイン)に関する情報を警察無線により広めました。
 どれほどの影響があるかは後の書き手様にお任せします。


892 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/15(金) 09:14:21 R3OX/Er60
投下終了です。タイトルは「すてきなホリデイ」となります。


893 : 名無しさん :2016/04/15(金) 13:56:59 12Ni0TKQ0
投下乙です
日が昇ってからも自重しないイカレた殺人鬼たち
なあなあで三馬鹿トリオやってる彼らの明日はどっちだ


894 : 名無しさん :2016/04/16(土) 05:06:13 .IKhwe560

相変わらず基地外ばっかの組で安心した
梟ちゃんがだんだん可愛く見えてきたぞ


895 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/16(土) 21:50:19 MnJdH3Fk0
感想ありがとうございます!

ヨマ&あやめ、カナエ&ヴラド(槍)、飛鳥&曲識で予約します。


896 : ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:29:28 bWTpmctI0
予約分を投下します


897 : この異常が日常の街で ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:30:12 bWTpmctI0

仕事で知り合ったT君という人から聞いた話だ。
学生の頃、T君は三人の友達と一緒に四人組の女の子をナンパした。
カラオケに行って、少し酒を飲んで、それでは、と言う事で当初の目論見通り二人ずつカップルに分かれて解散した。
後はそれぞれ、よろしくやるわけである。
ところが次の日から、そのとき一緒にいたM君の姿が見えなくなった。
どうやら、あの夜から家に帰っていないらしい。
携帯電話も圏外で繋がらず、とうとう数日後に捜索願が出された。
M君は最後に見たとき髪の長い女の子と一緒だったが、その時ナンパした女の子達に聞いてみると、「そんな子は知らない」と言う答えが返ってきた。
彼女達は、その子の事をT君達の連れだと思っていたらしい。
髪の長い女の子が誰なのか、結局わからなかった。
M君は今も行方不明のままだという。

―――大迫英一郎『現代都市伝説考』


898 : この異常が日常の街で ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:31:01 bWTpmctI0



「ぬぬぬ……」

午前八時前。
難しい顔をして、アイリス=トンプソンは留学先のハイスクール…不動高校に登校していた。
その手の中のスマートフォンを凝視しながら。

「何をそんなに熱心に見ている。マスター」

と、背後に霊体となってセイバーのサーヴァント、ナイブズが現れ、しかめつらのマスターに問いかける。
アイリスは周囲の人間に気取られぬ様、そのまま振り向かずに答えた。

「いや、ちょっと『彼』の他に気になることがあってね」
「あのバーサーカー以外にか?」

ナイブズは若干意外な顔をしてマスターを見た。
アイリスが携帯で見ていたのはどう見てもバーサーカーに連なる情報が載っているとは思えない、
英訳解説付き、現代都市伝説考と書かれた電子書籍だった。
昨日のアイリスの発言を踏まえると、集めている情報もバーサーカーに準ずるものだとナイブズは疑わなかったのだが。
怪訝な顔を浮かべるナイブズの様子を察したのか、直ぐにアイリスは答える。

「今。ちょっとこの辺りで起きている失踪事件の事を調べてたのよ。
 ……彼の情報ならテレビでも何でも、直ぐに入ってくるし」
「その失踪事件は、あのバーサーカーに繋がる物ではないんだな?」

ええ、と肯定するアイリス。
『彼』の仕業ならこんな回りくどい事はしないだろうと、彼ならばもっと残虐に、もっと鮮烈に事を成す筈だと言う。

「今通ってるハイスクールのミステリークラブ?に入ってる二年生が居なくなったらしいの、
何でもその消えた二年生は、カミカクシっていう噂を調べてたらしいわ」
「……サーヴァント、か?」
「そこまでは分からないけど…目黒の辺りからこの辺まで噂は広まってるの、その二年生だけじゃなくて、大勢の人が消えてるみたい。殺された、じゃなくてあくまで死体も残らないMissing――消えちゃった訳ね」


899 : この異常が日常の街で ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:31:50 bWTpmctI0

アイリスはそう言うと滑らかな手つきで掌の携帯を操作し、画面を切り替える。
切り替わった画面には先程の小難しい本の文章ではなく、如何にも高校生が使いそうなSNSが写っていた。
そこに添付された一枚の画像。
桜の木の下で朗々と歌を綴っている少女の画像。

「これが手がかり。どう思う?」
「…これだけでは何とも言えんな。ただ、この娘に何かあることだけは間違い無いだろう」

画像の少女がこの現世に生きるものではない事だけは、ナイブズにとっても瞭然とした事実だった。
纏う雰囲気や、浮世離れした服装から見ても、サーヴァントか或いはマスターか…少女が実在するのなら、そのどちらかである可能性は高い。
ナイブズの肯定に自分の想定の信憑性が増したお陰か、アイリスの説明にも仄かに熱が入る。

「で、セイバーの言う通りこの画像一枚じゃ何も分からないから、失踪した二年生がカミカクシを調べるにあたって読んでいたって言う本をダウンロードしたわけだけど…」

ダメだった、と彼女は肩を落とした。

「内容が郷土信仰や日本の風習に食い込んでる部分が多くて私には理解し難いわ。
きっと、調べてた二年生は物凄く頭が良かったんでしょうね」
「お前が優先しているのはあの刺青のバーサーカーだろう」
「それは勿論だけど…この子を見つけたらそれとなく調べてくれる?
この子がマスターやサーヴァントじゃなくてSCPだったら色々危険だし」

アイリスは今も画面の中で目を閉じ、詠う少女を見る。
少女は歌いながら、笑みを浮かべているようにも思えた。
けれどそれはひどく悲しげで、切なげで、絶対破ることのできない檻に放逐され、全てを諦めてしまったかのような殉教的な微笑み。
その微笑を見た瞬間から、何か、病気にでも罹るように惹き付けられるものがあった。
画面を下にスクロールし、画像につけられたコメントを表示する。
多くのコメントは何も映っていない。何故こんな画像を拡散するのかという怒りと、茶化すような発言がほとんどだ。

アイリスには理解し難かった。
見えなくて怒るというのは分かる。でもこの少女の画像を見てなお茶化す輩は本当に度し難かった。
彼女はこんなにも…哀しい笑みを浮かべているというのに。
こう言う所で所詮自分は余所者に過ぎないと思わされるとは思っても見なかった。


900 : この異常が日常の街で ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:32:45 bWTpmctI0

「…………ま、それはそれ。これはこれ。折角のハイスクールライフだし、楽しまなきゃね。
さしあたっては彼を探さなきゃいけないし」
「それで、俺はどうするマスター」
「うん、私は授業を受けてる間はどうせ身動きが取れないから、貴方に彼を探して貰うことになるかな」
「その間、お前を守る者はいなくなるぞ」

もっともなナイブズの指摘にアイリスは不敵に微笑みカバンからナイブズも見慣れたカメラと、数枚の写真を取り出す。
その写真には屋上からとったらしき校庭全域を撮った写真や、廊下の写真が写されていた。

「隠し持てて、かつ学校の周辺を補足できるだけの写真よ。
これで何か異常を感じたら念話で貴方に伝えるわ」
「……分かった」
「それじゃあよろしく」

自信気な少女の表情を見てナイブズも納得し、校門を潜る少女を見送る。
ナイブズも見たマスターのあの力は個人故『ビースト』の諜報力には一歩退くが、確かに優れた能力だ。
それを持ってしても自分が来るまでに蹂躙されるというのなら、彼女はその程度の存在なのだろう。
そんな存在にかける情など一欠けらも持ち合わせてはいない。
それよりも倒すべき他のサーヴァントを探すべきだと結論をづけ、続々と登校してくる人間たちを見て顔を歪めながら、彼も動き出した。

◆  ◆  ◆


901 : この異常が日常の街で ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:33:26 bWTpmctI0

◆  ◆  ◆ 


背後の圧迫感が消えると同時に、アイリスはスマートフォンに表示されていた画面を切り替えた。
映り替わった画面に映るは先程の少女ではなく、彼女の元同僚にして大量殺人の下手人たる刺青の男だった。

「こっちだってちゃあんと調べてるんですからね」

若くして財団の特殊部隊に組み込まれていた才覚か、はたまた彼女の性分なのかは結論が出ないが、彼女はセイバーが人に向ける視線を見逃してはなかった。
セイバーが人を見るあの目は…彼とよく似ていた。
昏い色を宿した瞳。



「そんなセイバーに、これをおいそれと見せるわけには…いかないわよね」

画面をスクロールし、彼をコメントや加工された画像で晒し者にしている人々を見る。
神をも恐れぬ所業というか、ここまでくると恐れ入った。
しかし自分でも不快な気分になるのだからこんな物、セイバーに見せれば厄介なことになるのは請け合いだ。
折角、セイバーが自分をどう思っているかは置いておいて、表面上はうまくやっているというのに。
けれど、リアルタイムかつ生の情報が入るのもここだけである。
新聞やテレビでは信憑性は増すが速度で劣るのだ。

「ま、精々見限られないように頑張りますか」

接していると次の瞬間物理的に首が飛んでいる可能性のある『彼』の相手よりは余程気楽なのは確かだ。
『彼』や画像の少女を足を使って探すのは平日は一先ずセイバーに任せるとして、
己は情報収集に専念しよう。
不自然な欠席の仕方をしている人を探すのも一考に値するかもしれない。
そんなことを考えながら、アイリスはまだあまり馴染まない日本の高校の玄関口を潜った。



―――彼女は、まだ気づいていない。

奇譚は、既に始まっている。


902 : この異常が日常の街で ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:34:06 bWTpmctI0

◆ ◆ ◆ ◆

「アダム、今日はどうする?」
「……そうだな、アーチャー」

喫茶店の勘定を済ませ、外に出ながらアダムは自身の従僕の問いに試案する。
フリーの研究者という立場のロールである彼は比較的自由に動くことができるのだ。
学会の際は出席する必要があるが、日本では学会なぞそう頻繁にあるものではないらしい。
また、そこそこ資産にも余裕があった。
これらは幸運といえるろう。右も左も分からぬ土地に無一文で放り込まれいたかもしれないと想像すると背筋が冷える。

聖杯の采配に感謝しつつ、幸運の女神が自分に微笑んでいる間に動かねばならない。

「優先して接触するべきは、やはりSCP-73か?」

排除、と言った方が的を射てるかも知れない。
こちらは向こうの情報を知り尽くしているというアドバンテージを考慮すれば手を組む、という選択肢がないわけではないが、危険すぎる。
もし財団の影響下に無い、言うなれば野に放たれた状態のSCP-73とSCP-76-2が
再会してしまえばこの東京全域に途轍もないカタストロフを刻むことになる。
そうなる前にどちらかをこの聖杯戦争から永久退場させなければならない。何としても!

だから、意を決してアダムは重要な事実をアーチャーに開示した。
自分が、SCP-76-2を知っているという事実を。
本来なら隠しておくつもりだったがSCP-73がいるとなると最早なりふり構ってはいられないという判断からだ。

「……だが、簡単に排除ができれば苦労はないな」

ため息を吐く。
知り尽くしているからこそわかる二人の脅威。
無論アーチャーを過小評価しているわけでも、侮っているわけでもない。
だがやはりリスクが大きすぎるのだ。
そして脅威を知っているがゆえに看過することもできない。
板挟みの思考に陥り、アダムの眉間の皺がより深く、深く刻まれ様としたその時だった。


903 : この異常が日常の街で ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:34:33 bWTpmctI0



「なーに難しい顔してんだよ」

ポン、と十年来の同僚の様な気安さを含んだ声と、軽い肩への衝撃が奔る。
アダムは少し驚いた顔で隣の無精ひげデザインが覗く弓兵を見つめた。


「お前は必ず俺が聖杯の所まで連れてってやるから何も心配する必要なんてねぇんだ。
少なくとも、あのバーサーカーには絶対に聖杯は渡さねぇ」

アフロのカツラがゆさ、と揺れ、スーツの隙間から機械のボディが覗く。
彼は、区別をつければロボットだ。機械だ。歯車だ。
しかし、同時に紛れもなく、『父』だった。
目の前の弓兵に比べれば、我ながら自分がつまらない人間に思えて仕方が無い。

そんな彼が長年の付き合いの同僚のように自分を気遣ってくれているのが分かり、
自らがそんな気遣いに足る人間ではないと思いつつも、アダムは嬉しかった。
彼も財団の末端だった頃は、そんな同僚がいた気もするが、既に遠い過去の日々だ。
アーチャーの為にも聖杯を獲ろう、と今一度思った。
そのために、

「アーチャー、一先ずは対SCP-76-2信用できそうな主従と、SCP-76-1を探そうと思う。昨夜会った、ドイツ人の少年も、気にはなるのだがな…」
「SCP-76-1ってのは?」
「石の棺で、それがある限り何度でも奴は復活する。SCP-76-2がサーヴァントになった過程でお前の言う宝具とやらを持っているとすれば、間違いなくソレだ」
「てことは、それをぶっ壊した上であの入れ墨野郎を倒せば…」
「SCP-76-1を破壊したうえでSCP-76-2を倒せば、この東京から完全に奴は消え去るだろう」

アダムの肯定の言葉にひろしは良しと、拳を握る。
考え込みすぎるアダムの様子を心配していたが、冷静な判断を下してくれれば頼りになるマスターだ。
万年係長だった自分とはやはり違うのかもしれない。

「よし、じゃあその石の棺桶がありそうな所をあたるか!」

そう言って、ひろしはアダムの前に掌を突き出す。
だが、肝心のアダムは呆けたような顔で目の前の手を見つめるだけだった。

「おいっ!こういう時は応えるもんだろ、マスター」
「えぇ、いや、しかしだな…」
「これが嫌なら、おっとこ同士のお約束~のほうが良いか?」

ノリの良い父親の顔を見せるアーチャーにアダムは少し困った顔をするが、
直ぐにフッと脱力し、微笑むと、彼もまた手を伸ばす。


その時だった。


904 : この異常が日常の街で ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:35:25 bWTpmctI0



ぞく、


大地震が来る前の前兆の様な、そんな予感が二人を駆け巡る。


「行くぞマスター!!」

こんな感覚、人が出すことは不可能だ。
SCPでも分類するのならばKETERクラスは確実。
そんな存在が近くにいるのだ。
加えて、向こうもおそらく……
だが、ここは朝の通勤時で人が多すぎる、戦うにしても交渉するにしても非常に不味い。

「-――よし、あそこだ!」

ひろしの足が変形し、プロペラへと変わる。
そのままアダムを抱えると、大通りから外れたオフィスビルへと向かった。



◆ ◆ ◆ ◆

オフィスビルの地下駐車場。
出勤時間とは微妙にズレが生じていたためか、人っ子一人そこにはいなかった。
好都合だ。
これで、周りに危害が及ぶ心配はない。
そうしている内に、ハッキングした駐車場出口の監視カメラから、人影を確認する。
どうやら、来たらしい。
次いで指を一つ鳴らし、防災用のシャッターを閉めた。
これで、誰かが来る心配もない。
閉まりきると同時に、車の陰からシルエットが浮かび上がる。

金髪の短い髪を逆立て、珍しい意匠がこらされたコートを纏った男。

威圧感からあの刺青のバーサーカーかと思ったが、どうやら違うらしい。
ひろしが男を視認した一秒後、男もひろしを視界に捉える。

「―――やはり、バーサーカーでは無かったか……だが、まあ、良い」


言葉とともに男の手に幾何学的なラインが刻まれた一本のブレードが現れる。

「へ、そっちはやる気マンマンみてぇだけど、俺は強ぇぞ?」

目の前の金髪の男は黙して答えず。
代わりに、鋭利なブレードの切っ先を此方に向けてくるだけだった。
男が、再び口を開く。


「……来てみろ科人(シナーズ)。刻み墜としてやる」


直後、二人の衝突音が地下駐車場の小さな世界を揺らした。
それが、戦闘開始を告げる号砲となった。


◆ ◆ ◆ ◆


905 : この異常が日常の街で ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:36:11 bWTpmctI0

ひろしの文字通りの鉄拳がナイブズに飛来する。
超高速の物体が頬のすぐ隣を通り抜けるのを感じながら返す刀でナイブズはブレードを振るった。
横薙ぎの一閃、しかし、ひろしは上体を後ろに反らすことで回避に成功。
そのまま勢いをつけてナイブズを蹴り上げた。
蹴りはナイブズの胸板の辺りに吸い込まれ、数メートル吹き飛ばされる。
が、それだけだ。明らかに感触が浅い。

そのままぐるりとナイブズの躰が回転し、ひろしの蹴りの勢いと遠心力を利用して、一気に肉薄。
対するひろしは大ぶりの蹴りを放ったがゆえに態勢が整っていない。
視線が交差し、ナイブズの興味無さげな冷えた視線がひろしの視野回路に映る。

(この野郎―――!)

一秒後、袈裟懸けにブレードが振り下ろされた。
ひろしのボディに寸分の狂いなくブレードが振り下ろされると同時に、まるで特撮のワンシーンの様に火花が迸った。

「ぐ…!」

痛みは感じない。彼は機械なのだから。
だが、感覚はあくまで人間がベースだ。衝撃には当然反応する。
そして、反応から復帰するまでの数秒に満たぬタイムラグをナイブズは見逃さない。

追撃の蹴りが、飛んできた。

それはひろしの胸板に吸い込まれる。
数秒前の焼き直しのような光景。
だが、蹴りが吸い込まれた時の音は明らかにひろしが受けたときのほうが大きい。
実際に彼はそのまま、もんどりうって吹っ飛んでいく。
駐車場をほぼ横断し、丁度直線状にあった車にぶつかって止まった。

「痛ってぇ…」

ひしゃげた車の機体から何とか立ち上がろうともがく。
一見すれば無様な姿だった。
―――本当に、ただ立ち上がろうしているだけならば、だが。


「ロケット、パアァアアアアンチッッ!!!」

ひろしの両腕が鳴動し、手首から上が分離した。



「!?」


分離した手首はそのままナイブズのどてっ腹にミリ秒で到達し着弾する。
ここで、初めてナイブズの瞳の色が変わった。
冷めきった氷点下の瞳から、敵意を込めた瞳へ。

「何だ、人間らしい顔もできるじゃねぇか」

帰ってきた手首の感触を確かめながら、ひろしは不敵に笑う。
そんなひろしに、ナイブズは不機嫌そうに口を開いた。

「機械が、人間を語るか」
「あぁ、俺は確かにロボットだけど、父親だからな」
「ならば――こう言った趣向ならどう出る。弓兵」


906 : この異常が日常の街で ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:36:52 bWTpmctI0


ナイブズがそう言った途端、周囲の空気が再び変わった。
切り刻まれるような存在感。
大気と連動するようにかのセイバーの右腕の指先が変貌していく。

≪孤独の王――片翼――(エンジェル・アーム)≫の限定展開。
余りにも不吉な予感にひろしは身構え確信する。
あれこそが、セイバーの宝具。

(やべぇ…)

回避か、それとも隙を伺って反撃するか。
彼の集積回路が、その判断結果を弾き出そうとしたその時。


セイバーの指先が、上に向いた。



(―――――!?)


上には、大勢の人が働くビルがある。
目の前のサーヴァントのあの宝具は容易にコンクリートを切り裂くだろう―――そして、宝具を受けたビルがどうなるか。
集積回路がどう行動するか結果を出すより先に、ひろしは動いていた。
自分に向かって突進してくる機人を、セイバーは見つめ、薄く笑う。

上に向いていた指先が、ひろしの方へ向いた。

彼の全身を凄まじい衝撃が襲ったのは、そのコンマ秒後の事だった。


◆ ◆ ◆ ◆


907 : この異常が日常の街で ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:37:44 bWTpmctI0

「……終わりだな」

地を這いつくばる目の前のサーヴァントをナイブズは感情の無い瞳で眺めた。
勝利を目前として尚、彼には達成感など欠片もない。
あったのは失望だった。
ただし、その失望は目の前の機人のサーヴァントではなく、彼自身に向けられていた。

理由は簡単。
まだ目の前のサーヴァントが完全に原型を保っているからだ。
生前の自分のエンジェル・アームなら完全に腕を変質させなくとも千人を超える人間を町ごと八つ裂きにしてみせた。
対する目の前のサーヴァントは人間より頑丈な機人という事を差し引いてもエンジェルアームを受けてなおあちこちに凹みはあるものの、健在。

否、健在というには語弊があるだろう。
ナイブズが放ったエンジェルアームは斬撃としては彼が失望を禁じえぬほど劣化していたが、衝撃波としてひろしを地に縫いとめていた。

地を這うひろしの頭を、ナイブズが踏みつけ、右手を突き出す。
先の一撃とは違う、本気の、間違いなくひろしのボディを二十八分割できるエンジェル・アームを放つために。
右腕の変貌が始まる。
死刑執行までの僅かな時間。
ひろしは動けない。まだ脳内のコンピュータが戦闘可能になるまで十数秒かかる。



「……アーチャー、楽しかったか?人として生きて」



死刑囚に最後の晩餐を振る舞うように、ふと、気まぐれに問いを投げた。
何故、こんな問いかけをしたのかナイブズは彼自身にも分からなかった。
理由があるとするならば、それは何となく、でしかないだろう。
でも、しなければならない。そんな不思議な確信があった。

ひろしの首が動く。


908 : この異常が日常の街で ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:38:20 bWTpmctI0

「答える前に…一つ、聞いておく事がある」
「何だ」
「お前は、聖杯を何に使うつもりだ。お前も、あのバーサーカーと同じ様な奴なのか?」

ぴく、とナイブズの眉が動く。
彼は質問に質問で返されてよく思う性質の存在ではない。
本来ならば、答えることはなかっただろう。
しかし、その問だけは彼にとって特別な意味を持っていた。
そのため、僅かばかりの悪戯心に似た感情が沸いたのも無理からぬ事。
嘲るような笑みを浮かべて、短く答える。


「そうだな。もし人間を滅ぼす、と言ったらどうする?」
「…………じゃあ、俺もお前の質問に答えてやるよ。人として生きて、楽しかっただって?」


ナイブズの見立てではこのサーヴァントが復帰するまであと八秒。
それは、余りにも絶望的な断絶された時間だった。
そのはず、だった。


―――どっちのとーちゃんも、頑張れー!!―――

「最高だったに、決まってんだろがー!!!」


ひろしの咆哮とともに、人工筋肉が爆発する様に膨張。
<<機械、されど我が父(ロボとーちゃん>>の本領が発揮される。

ナイブズの足を払いのけると、そのまま一息に立ち上がった。
刹那、態勢を僅かに崩したナイブズの頬に鉄塊の様に握りしめた拳が突き刺さる。

「うおおおおああああああ!!!!」

鉄槌を。ただただ鉄槌を!
もう一人の自分の、みさえの、しんのすけの、ひまわりの、シロの
そして、自分のマスターの子供に未来を奪わせないために。

雨の様な連打。
弓兵というクラスには邪道な圧倒的ショートレンジでの殴り合い。

しかし、ナイブズも黙って撃たれたままのはずがない。
かつて、砂漠の星を制覇しかけたその男が、その程度の存在なはずがない。

「舐めるな」

簡潔かつ小さな恫喝とともにナイブズの左肘と膝が、ひろしの拳を受け止め、死神のデスサイズにも似た右手が突き出される。



そして遂に、万象をあまねく切り刻む天使の刃が放たれる―――――


909 : この異常が日常の街で ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:38:41 bWTpmctI0


はずだった。


「アーチャー!!!」


計ったかのよなタイミングで、黒塗りの高級車が突っ込んできた。
ガラスを盛大にぶちまけながら、ナイブズを吹っ飛ばす。
本来ならば、神秘を持たない車の衝突程度ではナイブズはこゆるぎもしなかっただろう。
だが、アーチャーの宝具の影響を受けた車なら話は別だ。

「ナイスだ!アダム!!」

ひろしは素早く車に滑り込むと、駐車場のシャッターを開けるよう操作する。
体に受けたダメージと燃料の残量を鑑みれば、ここは退いたほうがいいと二人は判断した。
まだ聖杯戦争は始まったばかりなのだから、余力を気にせず戦うにはまだ早い。

アクセルを限界まで踏みつけ、アダムとひろしは盗んだ車でその場を後にした。



◆ ◆ ◆ ◆


910 : この異常が日常の街で ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:41:24 bWTpmctI0

「……逃がしたか」

まぁ、いい。
自身の宝具のテストもできた。
お世辞にも満足のいく結果とは言い難かったが。
加えて、もう一つの収穫。

「……アダム、か」

セイバーの手の中には、アーチャーのマスターの物らしき免許証がある。
あの窓ガラスをぶち破った一瞬の間にセイバーはアーチャーのマスターのポケットから免許証を抜き取っていた。
さて、どうするべきか。セイバーがそれを試案しようとしたその時。

―――セイバー!ちょっとセイバー!―――

頭の中で、自らの主の声が響いた。

「…何だ、マスター」
『何だかいきなり体が重くなったんだけど…貴方もしかして』
「ああ、アーチャーのサーヴァントと交戦した。」

念話先のマスターがやっぱりと声を上げる。
そして、怪訝そうな声色で尋ねてきた。

『で、どうなったの?負けたって感じじゃないけど』
「逃げられた。だが、アーチャーのマスターの身元の割り出しはできる」
『なるほどね、じゃあ放課後を待って動くから、一回戻ってきてくれる?
 今の私、襲われたらサーヴァントどころかアイポッドにも負けると思う』
「……分かった」

短い了承とともに、念話を打ち切ろうとしたその時だった。
アイリスは、ちょっとした興味、と言った様子で再び問う。



『セイバー、もしかして今ちょっと機嫌いい?』
「……何?」
『いや、朝よりも声が優しい気がしたから…』

想定の外の問だった。
一瞬思考が止まったが、セイバーは一呼吸おいて、

沸いているのか?

そう答え、教室で憤るマスターの姿を幻視しながら、念話を強制的に打ち切った。

―――人間として生きて楽しかったって?……最高だったに決まってんだろが!――

自分は何時も通りだ。
そう、思うところなど、何も無い。
ただ…弟なら。■■■■なら、あのバーサーカーやアーチャー、ひいてはこの聖杯戦争を何と思うのだろうか。
そんなことを、考えた。


◆ ◆ ◆ ◆


911 : この異常が日常の街で ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:42:00 bWTpmctI0

「取りあえず、車どっか置いて、燃料補給しようアダム」
「あぁ」

短いやり取りを交わし、もう少し車を走らせる。
アダムは、未だあのセイバーと思わしきサーヴァントに対する恐怖と興奮が抜けていないようだった。

「ありがとなアダム。冷静に判断してくれてよ」
「当たり前の事だ、アーチャー。……お前が私を助けてくれる様に、私がお前を助けるのは」
「それでも…ありがとな」

下手なタイミングで突っ込んでいたらアダムは死んでいたかもしれない。
ベストなタイミングで来てくれたからこそ、自分もアダムも損耗は軽微な状態でこうしている。
感謝の言葉を述べ、ひろしは誓う。

あのバーサーカーやセイバーには聖杯は渡さないと、必ず財団からアダムの子をとり戻すと。
アダムが、ひろしにひた隠している事実も、時折彼に後ろめたい視線を向けているのも知らずに、それでも誓う。
だが、それは決して間違ってはいないだろう。
紛れもなく子供を思う父の思いなのだから。

弓兵はどこまで行っても父親だ。
家族のためなら、例え神話の大英雄にだってうち勝って見せる。


912 : この異常が日常の街で ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:43:14 bWTpmctI0

【三日目/朝/葛飾区】

【アイリス=トンプソン@SCP-Foundation】
[状態]魔力消費(小)、神隠しの物語に感染
[令呪]残り三画
[装備]SCP105-B
[道具]
[所持金]そこそこ余裕がある
[思考、状況]
基本行動方針:聖杯を獲る。
1:セイバーを待つ。
2:放課後、アーチャーのマスターを…
3:神隠しについて調べる。
[備考]
・ロールは不動高校一年に留学してきた学生です。
・神隠しの物語に感染しました、あやめを視認することができます。
・あやめを視認すると同時に神隠しのカウントダウンが始まります。
・聖杯戦争について歪曲された情報しか持っていません。
・不動高校ミステリー研究会の二年生が神隠しに遭いました。

【三日目/朝/江戸川区】
 
【セイバー(ミリオンズ・ナイブズ)@TRIGUN MAXIMUM】
[状態]魔力消費(小)ダメージ(小)、少し上機嫌
[令呪]
[装備]
[道具]アダムの免許証
[所持金]
[思考、状況]
基本行動方針:人類を見極める。
1:マスターのもとへ一旦戻る。
2:あのアーチャーは…
[備考]
・アーチャーのマスターについての情報を得ました。
・アーチャーのステータスはアーチャーのスキルにより把握していません。
・神隠しの物語に感染しました。あやめを視認することができます。

【アーチャー(ロボひろし)@クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん】
[状態]魔力消費(小)ダメージ(中)、
[令呪]
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考、状況]
基本行動方針:アダムに聖杯を
1:燃料補給!
2: バーサーカーやセイバーに聖杯は渡さない。
[備考]
・セイバーのステータスを把握しました。
・ダメージは燃料補給した後魔力で回復できます。
・SCP-76-1についての知識を得ました。

【アダム@】
[状態]魔力消費(小)
[令呪]
[装備]
[道具]
[所持金]余裕あり。
[思考、状況]
基本行動方針:聖杯を取る。
1:アーチャーに燃料補給させる
2:SCP-76-1を探す。
3:同盟が組めそうな組を探す。あのセイバーくらい強いサーヴァントなら良いのだが。
[備考]
・ロールは生活に余裕がある学者です。
・出席しなければいけない学会は当分ありません。
・アーチャーに最低限SCP-76-1のことを話しました。
・免許証を抜かれたのにまだ気づいていません。


913 : ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:43:40 bWTpmctI0
投下終了です


914 : ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:45:18 bWTpmctI0
修正

【アダム@SCP-Foundation】
[状態]魔力消費(小)
[令呪]
[装備]
[道具]
[所持金]余裕あり。
[思考、状況]
基本行動方針:聖杯を取る。
1:アーチャーに燃料補給させる
2:SCP-76-1を探す。
3:同盟が組めそうな組を探す。あのセイバーくらい強いサーヴァントなら良いのだが。
[備考]
・ロールは生活に余裕がある学者です。
・出席しなければいけない学会は当分ありません。
・アーチャーに最低限SCP-76-1のことを話しました。
・免許証を抜かれたのにまだ気づいていません。


915 : ◆.wDX6sjxsc :2016/04/17(日) 14:53:09 UY0Pm/xQ0
すみませんもう一つ修正をば

【セイバー(ミリオンズ・ナイブズ)@TRIGUN MAXIMUM】
[状態]魔力消費(小)ダメージ(小)、少し上機嫌、黒髪化進行
[令呪]
[装備]
[道具]アダムの免許証
[所持金]
[思考、状況]
基本行動方針:人類を見極める。
1:マスターのもとへ一旦戻る。
2:あのアーチャーは…
[備考]
・アーチャーのマスターについての情報を得ました。
・アーチャーのステータスはアーチャーのスキルにより把握していません。
・神隠しの物語に感染しました。あやめを視認することができます。


916 : 名無しさん :2016/04/19(火) 23:25:57 /ld2pWho0
投下乙です

また不動高校か(絶望)
あやめちゃんの影響もあって闇が一層深まりましたね…
そしてナイブズvsロボとーちゃん。
とーちゃんに分が悪いと思われましたが、黒塗りの高級車(意味深)に乗ったアダムの助けにより難を逃れて、とりあえず一安心(ただし免許証は抜かれる)


917 : ◆yaJDyrluOY :2016/04/19(火) 23:55:36 1nXGjUIU0
期限かなりギリギリですが、予約分を投下します。


918 : ◆yaJDyrluOY :2016/04/19(火) 23:57:55 1nXGjUIU0
――+――

『――の殺人鬼は目撃情報が相次いでいるにもかかわらず、警察の捜査は非常に難航している模様で、進展があり次第随時情報を公開していく方針だということです。

 次のニュースです。昨日から今日にかけて、港区周辺の気温が急激に下がっている模様です。
 気象庁によりますと、昨晩午前1時頃から急激に気温が下がり始め、今朝には一部で氷点下を観測したとの情報が入っております。
 これまでの天気予報では、一週間は温かい陽気が続く見込みであり、この異常気象は全く予測できていなかったという事です。
 急激な気温の変化で気圧が変化し、天候の悪化が予想されています。お出かけの際は折り畳み傘などの雨具を携帯するなど、対策を心がけて下さい。
 また、このことに対して気象庁は、「衛生やレーダーによる観測では気温低下の前兆は一切確認できず、現在も原因は全くの不明。このような事は観測史上初のことであり、原因究明のために誠心誠意調査にあたっている」と発表しています。
 
 地域の住民からは「仕舞った冬服を出す羽目になった」「せっかくの花見がキャンセルだ」など多くの避難の声が寄せられ――』

――+――

 時は前日に遡る。
 東京から出られないことを空港で確認した後、二人は電車で東京駅に向かっていた。
 テレビでSCP-076-2の存在を確認したブライト博士は、彼の目撃情報を追うことに決めていた。
 彼はいつだって行動が読めない、それ故に臨機応変で迅速な対応が求められる。
 都の名を冠する東京駅からならスムーズにたどり着けるだろう、という安易な考えから決めた目的地である。
 実際、ブライト博士は日本についてあまり詳しいわけではないし、キャスターも聖杯からの知識はあるものの本質的には古い人間であるため地理には明るく無いのだ。
 空港へはタクシーを使ったが、体の持ち主である男性の財布はもう心許なく、電車で向かうことにした。
 当然駅についても詳しく無かったが、ブライト博士は空港で飛行機の確認ついでに従業員に東京駅への行き方を聞いておいたのだ。
 目当てのモノレールに乗り、乗り換えまでの間2人は会話を楽しんでいる。

「ほう、そんな素敵な場所なら一度は言ってみたいものだね」

「あら、ダメよ。貴方が幻想郷に来たら絶対に異変を起こすもの。霊夢と魔理沙に退治されちゃうわ」

「件の普通の魔法使いだという少女には会ってみたいとは思うがね。魔法少女は人類の夢だ」

 ブライト博士は興味津々にキャスターから幻想郷の話を聞いている。
 楽しげな二人は実に微笑ましい光景だが、周囲からは奇異の目で見られていた。
 それもそのはず、亡霊であるキャスターは魔力を持たない一般人には視認されづらく、傍から見るとブライト博士は1人で楽しげに会話をしている様に見えているのである。
 今のブライト博士は至って平凡な日本人サラリーマン風だが、精神は外国人な彼の声量は大きい。
 混みあった車内において、少々アメリカンチックなジェスチャー付きで話すブライト博士の左右はなぜか空席なのであった。


919 : ◆yaJDyrluOY :2016/04/19(火) 23:58:38 1nXGjUIU0
『まもなく、浜松町、浜松町、終点です。お忘れ物をなさいませんよう、ご注意下さい』

 車内アナウンスが流れ、徐々に乗客達がドアに集まり始める。
 当然、ブライト博士達もこの駅で乗り換えなければならない。

「おっと、もう乗り換えだユユコ。有意義な時間は過ぎるのが早いな」

「ふふっ、私達の素敵な楽園は随分と気に入ってもらえた様ね」

 モノレールからホームに降りると、ブライト博士は辺りを見渡し次の電車を確認する。
 空港の従業員は「ヤマノテセン」だと言っていた。

「ユユコ、ヤマノテセンを探すんだ。東京駅はもう目の前らしいぞ」

「…………」

「どうしたユユコ、乗り物酔いか?」

「ねぇ、ブライト。ちょっと良いかしら?」

 モノレールから降りた途端キャスターはボーッとし始め、ブライト博士の言葉は頭に入っていない様子だ。
 訝しく思いキャスターの視線の先を追ってみても、ブライト博士からはビルしか見ることができない。
 キャスターの表情は真面目に引き締めつつもほんのりと微笑んでおり、少し興奮している様にも見えた。
 いつもブライト博士と会話している時のキャスターも上品に微笑んでいるが、それとは違った幼気な少女らしい笑みである。
 困ったり、呆れたり、ブライト博士の前で様々な表情を見せるキャスターだが、いつもふわふわと掴みどころがなく隙を感じさせない。
 しかし、今のキャスターはそわそわと忙しなく、敵が来ればイチコロだろうなとブライト博士は呑気に考えていた。

「この場所から移動するのはもう少し待って。確かめたいことがあるわ」

 特に急いで東京駅に行く理由もなく、元々とりあえずの目安として設定していただけであったので、ブライト博士は二つ返事で了承した。
 どちらにせよブライト博士は駅員の元へ『ヤマノテセン』への行き方を聞くつもりなので、ひとまず2人は別行動を取ることになった。
 ブライト博士が改札口に向かっている間に、キャスターは上空を飛んだり、死霊を飛ばしたりと周辺の地理を調べ始める。
 数分が経ち、ブライト博士が駅員に質問攻めを終えた所でキャスターも戻って来た。

「ユユコ、どうだったかね。私はもう東京の駅という駅について完璧と言える程になってしまったぞ」

「ブライト、やっぱり思った通り。この近くに桜が沢山咲いている場所があるわ」

「桜? 好きなのか? 確かにコンクリートジャングルでは珍しいかも知れんが……」

「違うわよ、まあ好きなのは事実ね。私の宝具の事、説明したでしょう?」


920 : ◆yaJDyrluOY :2016/04/20(水) 00:02:03 E7ILcptU0
 ブライト博士はすっかり忘れていた事だが、キャスターの宝具には『春』を集める事で初めて効果を発揮する物がある。
 枯れた妖怪桜『西行妖』は自然の木々や花々、温かい陽気などの『春』を構成する要素を集める事で咲かせる事ができるのだ。
 桜は春に活動を始める自然の中でも特に多くの『春度』が込められている。
 それは人々の春というイメージにも大きく関係があり、たんぽぽやつくし等も『春度』が高い。
 その点で、桜はたった花びら一枚でも貴重な要素になりえるのだ。
 東京というコンクリートジャングルでは『春』の要素を見つける事が難しく、今までキャスターは宝具を設置できていなかった。

「あぁ、そういえば君の宝具はそんなのがあったな。だが、こんな場所で良いのか?自然なら他にも良い場所があると思うが……」

「確かにそうね、でも私はここが気に入っちゃったのよ。それに、ここなら東京駅にも近いから、何かあればすぐに来られるじゃない。貴方、どうせ一箇所に留まったりしないだろうし、辺鄙な場所だと困るわ」

「君も分かっているじゃないか、折角の東京旅行なのだから色々周らなくては損だ。あと、ヤツとそのマスターも追わなければならんしな」

「なら決まりね。それに設置してしまえば最終的には冬が東京中を覆うのだから、どこであろうと一緒だわ」

 キャスターの宝具は『春』を集め、力を増すほどにその効果範囲も増大する。
 したがって、少しずつでも範囲が広がって行けば必ず多くの『春』にたどり着くのだ。
 キャスターはまだ知り得ない情報ではあるが、ここには1km圏内にいくつか自然公園もあるし、皇居や東宮御所などの桜の名所も近く、決して悪くはない場所である。
 確かに八王子などの自然が多い場所ならば、即座に『満開』になり強大な力を得られるだろう。
 しかし、いかんせん距離が遠すぎるのだ。
 東京駅から電車で6分の浜松町に対して、八王子は1時間以上掛かってしまう。
 西行妖が何者かに脅かされた場合の対応速度の差は言うまでも無いだろう。
 浜松町なら最悪東京駅から徒歩でも来られるが、八王子だと交通機関に細工をされたり、不具合でもあった時にはもうお手上げである。

 キャスターは即座に強大な力を得るよりも、ゆっくりでも安全な道を選んだのだった。
 この選択には、キャスターが永遠の時を持つ死者でゆったりとした性格だった事だけでなく、マスターがブライト博士だったという事も大きいだろう。
 しかし、無意識化ではどうかはわからない、『満開』『桜の下の死体』『強力過ぎる死の力』『死にたがりのマスター』『聖杯』頭の中で巡るワードのどれかが、もしくは全てが彼女の中でブレーキになっているのかも知れない。
 果たして、キャスター自身がそのことを自覚する時が来るのかは、まだ分からない。


921 : ◆yaJDyrluOY :2016/04/20(水) 00:04:49 E7ILcptU0


 さっそく2人は浜松町駅を出ると、大通りを目指し道なりに歩く。
 周囲の地形を確認し終えたキャスターが先導し、ブライト博士がそれに続く形だ。
 大通りは人も車もごった返しており、自然があるとは思えないほど灰色だった。
 しかし、歩く内にビルや看板ばかりの景色に少しずつ桃色が加わり始める。
 そして大通りの突き当りに到達する頃には、視界いっぱいに大量の桜が咲き乱れていた。
 桜の存在する寺の真っ赤な正門が霞んでしまうほどの桃色である。

「ほう、美しい。これが全てSCP-143だったらと思うとゾッとする」

「感動するか巫山戯るか、どっちかにすればいいのに」

 辺り一面の桜に興奮しつつ、2人は寺の門をくぐり中へと入っていく。
 案内板には「増上寺」と書かれており、説明書きには地図が添えられていた。
 どうやら増上寺の隣には「芝公園」という自然公園があり、メインの桜はそちらのようである。
 大きな広場に桜が乱雑に植えられているのではなく、木々の中を迷路の様に道が作られているらしく、西行妖の秘匿にも適しているように見受けられた。

「私はこの辺りなんか良いと思うのだけど」

 キャスターは地図の一点を指差す。
 そこはキャスターが上空から見た際、公園内で最も高いと確認した場所だ。
 西行妖が春を吸収する事で辺りは冬になり、数日もすれば公園内の桜は全て春度を奪われてしまう。
 そんな状況下で全ての枯れ桜見下ろすように凛と咲く西行妖はさぞ綺麗に見えることだろう。
 だが、聖杯戦争に限って言えば美しく目立つことは悪手でもある。
 不動型宝具は狙われれば守りづらく弱点になりやすいため、本来であればひっそりと隠していた方が都合良い。
 西行妖にしても陣地として頑強になって来るまでの序盤、一分咲きから四分咲きまでは決して安心はできない。
 しかし、キャスターの考えは根本からして違うものだった。
 ――折角美しい桜なのだから目立たせないのは勿体無いわ。美しさは強さと同じ、どうして隠す必要があるの?――
 それは、力による単純な戦闘が廃され『魅せる』ことに重きを置く戦いをしてきた幻想郷の住人ならではの発想だった。

 そんなキャスターの考えを知ってか知らずか、周囲の様子を観察しながらブライト博士はキャスターが示した場所へと足を進める。
 丁度桜が見頃の時期であるのか、いたる所にレジャーシートが敷かれており、その上では老若男女様々な年齢の花見客達が騒いでいる。
 日本ではポピュラーな文化であるが、アメリカではワシントンDCなどの一部の地域を除いて『花見』という文化は定着していない。
 地べたに座り和気藹々と酒を交わす花見の様子は、ブライト博士には奇妙な光景として映っていた。


922 : ◆yaJDyrluOY :2016/04/20(水) 00:05:24 E7ILcptU0
「平日だというのに随分と人が多いな、せっかくの景色もこれでは楽しめん。682でもぶち込めばすっきりするものを……ここに財団が無いことが悔やまれるな」

「あなたの話を聞いているだけだと、その子が危険な生物なのか、お掃除ロボットなのか分からなくなってくるわね」

 そんな扱いをするのはブライト博士だけであるが、キャスターは知る由もない。
 そうして雑談を交わしながら目的地に足を進めていくと、広場を抜けて小丘へと続く階段が見えてきた。
 地面を削り太めの枝で仕切られただけの簡易な階段だが、むしろ景観を崩さずに自然を感じさせる。
 階段を登り切ると、そこまで高い丘ではないもののさすがに頂上ということで展望台として広いスペースが取られていた。
 石でできた簡素なものではあるが休憩所もあり、当然ながらそこには花見客も多く存在していた。

「やはりここにも大勢いるか……本当に隙間が無いな。ここがいいのかユユコ?」

「ええ、夜になれば少しは人も減るわ、それからでも遅くはないでしょう? それまでは私達もアレ、やらない?」

「ハナミをかね? それも魅力的な提案だが……そうだ! ここの奴らを君の死霊の足しにするというのはどうかね? 君も手駒が増えてジャマも無くなる、一石二鳥だ!」
 
 画期的なアイデアだとばかりにブライト博士はキャスターに詰め寄る。
 どこへ行っても隙間なく犇めく日本人たちに、ブライト博士は先ほどから少しウンザリした気分になっていたのだ。
 人混み――否、もはや人ゴミだ。キャスターが殺し、使役すればまだ有効活用できるだけマシかも知れないが、それにしたって多すぎる。
 狭い日本、まして東京のみとなった現在、総人口はどれだけなのだろうか。
 この場所だけ切り取って見ると、聖杯とやらは少々人間を増やし過ぎではないかと疑ってしまうのも仕方がないことだろう。
 ブライト博士は心のなかで密かに殺人をして回っているSCP-076-2に賛辞を送った。

「あら、こんなに沢山要らないわ。夜遅くまで残っている分だけで十分よ。それより、さっき出ていた屋台に知らない食べ物をいっぱい見つけたの、買って来ましょうよ」

 さすがにキャスターもこれだけの量の死霊を率いるつもりは無いらしい。
 それどころか、キャスターの思考はもはや宴会仕様になっている。
 キャスターが花より団子な性格なのか、はたまた闘争と宴会の切り替えが早いのも幻想郷の住人故なのか。


923 : ◆yaJDyrluOY :2016/04/20(水) 00:07:29 E7ILcptU0
「さては、駅の時から目当てはそれだったのか?」

「うふふ、さてどうかしら」

 屋台へと足を進めながら、ブライト博士は笑いつつも訝しみの声を上げる。
 先程のキャスターの駅での急な変わり様、自然を感じたなどというよりも屋台の臭いに釣られたという方が幾分真実味があった。
 図星なのかそうでないのか、飄々として微笑むキャスターからは窺い知ることはできない。
 ただ、どちらにせよ切っ掛けは案外そんな物で良いのかも知れない。
 過程がどうであれ結果は変わらないのだから――ここではもう二度と、一面に咲く桜が見れなくなるという事実も。

 



 翌日の昼頃、前夜に無事西行妖を設置し終えた2人はとある場所に向かっていた。
 前から目標としていた東京駅ではなく、全く別の目的を持っての行動である。
 ブライト博士の提案で、2人は東京駅には向かわず途中の駅で乗り換えたのだ。
 
「ねぇ、そろそろどこへ向かうのか教えてくれてもいいんじゃないかしら?」

 突然の思いつきで行動しているブライト博士は、まだ行き先をキャスターに教えてはいない。
 ブライト博士の手には今朝の新聞が握られている。
 おそらく今回の行動は新聞の情報を元にしたものなのだろう。

「なに、ちょっとしたサプライズさ。――おっとここだ」
 
 ブライト博士が降りた桜田門駅は、浜松町駅から合計してもたった5、6分程のかなり近い場所であった。
 駅を降りると、そこはこれまでのゴミゴミとした都会の様子とは打って変わって随分と視界の開けた場所である。
 目の前には自然が広がり、酷く冷たい風が緑を揺らしている。

「まだあの公園から四里くらいしか離れていないじゃない、ここになにかあるの?」

「確かに思ったよりも近かったようだな、この辺りはもう真冬同然だ」

 余談だが、魔力の繋がりがあるためキャスターには西行妖の場所がわかる。
 まだ芝公園の春度による成長は中盤といったところだが、冬の範囲は西行妖から約半径2km強というところまで延びている。
 つまり、今2人がいる場所も2km以内の場所だということだった。
 西行妖の開花具合はまだ一分半程だが、芝公園の春度を全部吸収し終えれば二分咲きまでは届くだろう。


924 : ◆yaJDyrluOY :2016/04/20(水) 00:08:23 E7ILcptU0
 また、現在2人が降りた桜田門駅の背後には、皇居に繋がる広大な自然が広がっており当然桜も多い。
 ここもじきに有効範囲に入るため、まだまだ西行妖の成長は止まる事はなさそうだ。
 それ故、キャスターは再び近い範囲の土地に降り立った意味を理解できずにいた。
 先を歩くブライト博士に遅れないように、キャスターは後を追う。

「ここも自然が多いようだけれど……設置し直すってわけではないのでしょう?」

「まさか、それならもっと離れた場所に行ってるさ。――もうそろそろ良い頃か……。――ユユコ、我々は今東京に閉じ込められている訳だが、最も効率良く情報を得るにはどうすれば良いと思うかね?」

 キャスターの懸念は杞憂に終わったようだが、そこでブライト博士がキャスターに問いを投げかけた。
 恐らく行動の理由はこの問いの答えにあるのだろう、とキャスターは楽しそうに考える始める。

「あら、なぞなぞ?――情報ねぇ……天狗、はいないし新聞記者に聞くのが一番かしら?」

 キャスターの脳裏に浮かんだのは1人の素早い鴉天狗の姿、情報の速さなら彼女が一番だろう。

「マスコミというのも間違ってはいないが、奴らは出す情報を選びたがるし、我々が要求したところで取り合わんさ」

「なら、あとは強い力を持った人かしら、一勢力の主とか」

 再び脳裏に浮かぶのはキャスターの一番の友人であり、賢者と呼ばれるスキマ妖怪。
 そして、紅魔館の主や迷いの竹林に住む月の薬師。
 従者を持つ力のある者達は総じて情報にも強かった覚えがある。
 かく言うキャスターも一勢力の主であり、いまいち頼りないが大切な従者もおり異変解決に乗り出したこともあるのだ。

「その通り、東京では君たちのような戦闘力ではなく権力だが、やはり力を持つものには情報が入りやすい。だが、企業の社長や組織の長になるのは情報を得るまでが面倒臭い」

「なるって、また『乗り換える』の?」

「もちろん! そこで、アレだ」

 またも身体を乗り換える宣言をしたブライト博士は、目の前に見えてきた建物を親指で指し示した。
 丁度多くの車が近くで止まり、中から小奇麗な格好の人が出てきている。

「アレは何かしら?」

「あれは政治家だ。権力があって、人を動かせて、その上仕事が楽だ」

「楽って……政を治めるのって、四六時中難しい事を考えなきゃいけないんじゃないの?」

「日本全体ならまだしも、閉鎖された東京であんなに人数が要ると思うか? 精々忙しいのは数人だろうさ。もし東京以外の都市の情報があるならむしろ儲け物だ」

 そう言うと、ブライト博士は適当な車に向かって鼻歌混じりに歩き始める。
 今まさに停まった黒塗りの車は、不幸にもブライト博士の目標として定められてしまったようだ。
 ブライト博士は車の後部座席のドアを軽く拳でノックする。


925 : ◆yaJDyrluOY :2016/04/20(水) 00:09:31 E7ILcptU0
「もしもし?」

「おや、ワシに何か用かね?」

 顔を覗かせたのは初老の男性。
 ブライト博士が目ざとく観察すると、高そうなスーツのラペルホールには参議院議員のバッジが付いている。
 それに満足すると、ブライト博士は首から外しておいたSCP-963-1を男性に差し出した。

「貴方にプレゼントがあるのです、ミスター」

 すると、ブライト博士の身体を押しのけるように間に黒服の男が割り込む。

「直接のプレゼントの受け渡しは許可されていません。後ほど係りの者にお渡し下さい。さぁ、離れて」

 この議員のお付の者かSPだろう、運転席からもう一人降りてきて同じようにブライト博士と車を遮る。
 精神が書き換えられる際に元の身体はブライト博士の思考とは切り離されてしまうため、記憶喪失患者のような不自然な行動を取る。
 そのためSCP-963-1は直接渡さなければ余計に警戒を強めてしまう。

「仕方がないな、ユユコ」

 ブライト博士が声を書けると、キャスターから美しい虹色の蝶が飛び立ち男達に止まる。
 すると、男達は糸が切れたマリオネットの様に崩れ落ちる。
 一切血も出ていないため、一般人から見たら何がなんだかわからないだろう。
 実際、車の中にいた参議院議員は、自分のSPが突然消えたようにしか見えなかった。
 足元の死体を軽く足で払いのけると、ブライト博士は車のドアを開く。

「さて議員、彼らの許しも出たことだし、このネックレスをあげましょう」

「貴様、ワシのSPに何をした!? ワ、ワシが誰だかわかって――よし、こっちの身体もついでに処理してしまおう」

 怯える議員の意識は途中で無くなり、ブライト博士に移り変わった。
 元の一般的な日本人の身体は、騒がれても面倒なので意識がない内に殺してしまうことにする。
 こうしてブライト博士はつつがなく政治家の身体を手に入れる事に成功した。
 死亡したSP達の遺体を車に詰め込むと、議員改めブライト博士は適当に歩き始める。

「どれ、何かコイツの手がかりは……っと名刺があったぞ。『ウィルソン・フィリップス参議院議員』か、アメリカ人だ」

 ブライト博士はなんの遠慮も無く持ち物を漁る。
 もはや自分の体なのだから、当然といえば当然なのだが。

「財布には結構入ってるぞ。……いや、そんなことはどうでも良い、情報を持ってそうなツテはあるかな?」

 他人から貰った名刺や手帳を見つけ、何か手がかりを探す。
 こういう時は何よりも自分の選別眼や情報に対する嗅覚を頼るしか無い。
 片っ端から目を通し、ダメだったらまた他の議員になるだけだ。

「ルポライター、警察庁長官、料亭、他の議員……ん!? 見ろユユコ、『オダノブナガ』なんているぞ! 君より後の人物だが、私でも知ってる日本の偉人と同姓同名だ」

「聖杯の知識で知ってはいるけど、そんな偉人と同姓同名なんて活動しづらく無いのかしら」

「だからこそ面白いだろう? 機会があれば会いたいね。まぁ今はとりあえず警察にでも聞きに行くか」

 ブライト博士は今の身体である『ウィルソン・フィリップス』の予定などお構いなしに行動を始めた。
 元々、今日は国会議事堂で会議があるためここに議員達が集まって来ていたのだ。
 ブライト博士もそれを新聞で見たからこそ思いつきで来てみたのだが、そんなことはすっかり忘却の彼方に追いやっている。
 そんな彼の背後には、18の人魂を引き連れたキャスターがふわふわと浮かんでいた。

 そして2人揃って警戒心の欠片も無く、また呑気に雑談を始めるのだった。


926 : ◆yaJDyrluOY :2016/04/20(水) 00:12:25 E7ILcptU0


【三日目/午後/千代田区】

【ジャック・ブライト@SCP-Foundation】
[状態]ウィルソン・フィリップスの体 、上機嫌
[令呪] 残り2画
[装備] SCP-963-1
[道具]ウィルソン・フィリップスの財布
[所持金] 現金15万とクレジットカード
[思考、状況]
基本行動方針:東京を楽しみつつ、SCP-76-2とそのマスターを追う。
1:とりあえず使えそうなツテを虱潰しに当たるとしよう。
2:「織田信長」か、面白そうだ。
[備考]
・一般的な男性から、参議院議員であるウィルソン・フィリップスの体に移りました。
・キャスターに雑談として財団や主なSCPの話をしました。


【キャスター(西行寺幽々子)@東方Project】
[状態] 能力上昇中(二分咲き)
[装備] 扇子
[道具] 死霊18体
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針: ブライト博士に付き合う。
1:また宴会やりたいわ。
2:どうしてレプリカから死霊が出るのかしら?
[備考]
・ブライト博士に雑談として幻想郷や主な友好関係の話をしました。
・元々いたブライト博士が捨てた体の死霊(2体)に加えて、新たに死霊16体(花見13:SP2:前の体1)を得ました。
 得た死霊は常にキャスターの周りに浮かんでいます。
・西行妖は現在二分咲きであり、冬の範囲を半径2.5km程までのばしています。
 西行妖の存在はまだ認知されていません。
・ブライト博士の影響か、死を操る程度の能力の行使に抵抗が無くなっています。


927 : ◆yaJDyrluOY :2016/04/20(水) 00:21:27 E7ILcptU0
投下終了です。タイトルは「妖怪桜が咲く頃に -春萌し編-」でお願いします。


928 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/20(水) 08:13:02 QIJ1nAoo0
皆さま投下乙です。感想です。

>この異常が日常の街で
不動高校がやはり一種の中心地になっていきそうな感じですね。
自身の経験を生かそうとするアイリス。
双方、激しい戦闘をしたロボひろしとナイブズ。
やはり、財団職員としてアベルとカインを放置はしないアダム。
聖杯戦争としては正常であっても、彼らの行動は異常であり、平凡な日常を脅かす行為なのでしょう。
それにしても、登場していないあやめちゃんの存在感が……
投下ありがとうございました!

>妖怪桜が咲く頃に -春萌し編-
二人で呑気に花見をしている場合かーーー!!なのですが、結構東京満喫していますねぇ。ブライト博士。
聖杯戦争や幽霊やそれこそアベルの存在があるのに、日常を謳歌する辺り
ブライト博士も幽々子も、まだ日常を逸脱はしないという意思を感じられます。
しかし、ここでまさかの信長の情報を手に入れるとは。
簡単に立場を乗り換えられるのは、やはりブライト博士ならではの特権ですね。
投下ありがとうございました!


929 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/20(水) 08:14:24 QIJ1nAoo0
予約分投下します。


930 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/20(水) 08:15:16 QIJ1nAoo0




   愛すること、愛されること、それだけだ。

   それが掟だ。

   そのためにわれわれは存する。

   愛に慰められた者は、物をも人をも怖れない。

                            ボンサール 「小さな魅力」






深夜のことであった。
ドグドグと騒音をかき立てる車が一台ある。
調子に乗った反社会的な若者が、目立ちたい一心か。あるいは、冗談半分に機嫌良くなりたいから。
寝静まった夜を騒がさそうとしていたのだった。
彼らは静寂を嫌悪しているのだろう。

光が闇を、闇が光を嫌悪するように。
蛇が鷹を、蛙が蛇を嫌悪するように。

体を休めたい者にとっては迷惑な話であったが、若者たちにとっては違う。
これが彼らの望むもの。
だが、彼らも理解しているはずだ。
このような事を行えば、どんな仕打ちが待ち受けているかも。
ある程度の覚悟をしている。それで後から「知りませんでした」「ごめんなさい」なんて言葉は許されない。

一つ。
その『覚悟』とは?
『覚悟』とは、どこまでの範囲を示すのだろうか。

少なくとも、彼らは警察と接触する可能性も、それによる後先の人生に影響するのも考慮するはず。
ただ。
まさか――死が待ち受けているとは想像していなかった。
死を受け入れる『覚悟』は、何一つない。


「う……あ、ああ……い、痛い。痛いよ。助けて」


血が流れているのを自覚した若者の何人かは、それだけで気絶をしたり、あるいはショック死を招いたかもしれない。
倒れている人間が死んでいようが、死んだフリしていようが、死神は平等に死をバラまく。
月光により産み出されたレーザーで殺害してゆく死神・キャスターは、命乞いする若者も表情一つ変えず死を与えた。
首を鳴らしながら、キャスターは言う。

「………なんだ……この曲……流行っているのか……?」

車から流れるロックバンドの曲。
ヴィジュアル系だか、なんだか言うものの知識はないキャスターだが、それ以上に興味が湧かない。
しいて言うならば――不快で下劣な耳触りな曲だった。
レーザーで車ごと破壊をすると、先ほどの名曲による騒音よりも酷い爆発音が鳴り響いた。

立ち去ろうとしたキャスターだが、忘れ物を思い出す。
現代の携帯電話・スマートフォン。
そうだった、これで情報を入手しようとしていたのだ――と。本来の目的であったのに、おまけ程度の関心しか抱いていなかった。

「……ただの雑音だな」

携帯を手にした死神は、軽やかな脚力を使い、現場から離れた。
あの若者たちを殺した理由は、目についたから。出会ったから以外に何か挙げるなら。
車から垂れ流した騒音に近い曲が耳触りだったからである。

比べるまでもない。
何を喋っているかも聞こえない歌声よりも、自分のマスターの旋律が断然美しい。
耳触りではなかった。
こんなことは馬鹿でも分かるか、とキャスターは不敵に笑う。


931 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/20(水) 08:17:05 QIJ1nAoo0
さて。

公園に帰還したキャスターが携帯を確認すると、先ほどの若者が使っていたであろうSNSのサイトが開かれていた。
噂されているのは刺青の男。
『東京』で甚大な被害を及ぼしている殺戮の王。
嗚呼、成程。キャスターは酷く納得する。

かつて自分も城集めで山のように、文字通り沢山の人間を殺害をしつくしていたのだ。
キャスターは国際的犯罪者として名が知れ渡った。
そして――この刺青男も、キャスターと同じようになっている。

ただ、こんな所業を成し遂げられるのはサーヴァントで間違いない。

「何だこいつ? ……間抜け……だな。………一人だけ……か。マスターはどうした……」

刺青男(無鉄砲な殺戮をしている理由から)――恐らくバーサーカーと思しきサーヴァント。
彼とマスターが同行している姿はない。
それらしい情報も、現時点では浮上していなかった。
考えられるのは――そもそもマスターが聖杯戦争を把握していない可能性。
否、最早解答ではないか。

バーサーカーと意思疎通が容易ではない以上、マスターは未だ状況を理解していない。
きっと『東京』という迷宮を彷徨っている。
キャスターは舌打ちした。

「それはそれで……面倒だな」

『どういうマスター』かにもよるだろうが。
逆にマスターらしい行動をしない存在というのも、厄介なものだ。
素直に、従順にサーヴァントと行動するご丁寧なマスターならば目につくのだが。
一体どれだけの人間がこの『東京』に居ることか。算出できなくとも、大雑把なイメージはつけるだろう。
膨大な数から、一人の人間を探しだすのは――面倒過ぎる。

……とは言え。
素直にバーサーカーの方を殺してしまえば関係ないか、とキャスターはバーサーカーのマスターに対する執着は持たない。
認知してないなら、勝手に野垂れ死ねばいいのだ。

刺青のバーサーカーはもういい。
キャスターが別の情報を入手しようと試みる。
だが、どこもかしこも、あのバーサーカーの話題ばかりでキャスターも苛立ちを隠せない。

ふと。キャスターは手を止めた。
検索するキーワードを打ち込む。


    [神隠し 少女]


確証があった訳ではない。
冗談半分なところもあった。が、予感というのは的中するものである。
キャスターのマスターたるあの少女は、都市伝説としてSNSで噂されていた。


932 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/20(水) 08:18:00 QIJ1nAoo0
そもそもの話。
『東京』に至ったマスターは皆、何らかの役割を持つ。
逆に役割を割り振られていないマスターは一種のイレギュラー。
キャスターは、あの少女は普通の人間ではないのだから役割など与えられいないものだと思っていた。

しかし……どうやら『これ』が少女の役割のようだ。
『東京で噂される都市伝説』
まさか、都市伝説そのものがマスターを指し示しているとは予想外だろう。
皮肉なことに、彼女の存在……物語は刺青のバーサーカーのお陰でさほど広まってはいない。

ここでキャスターが選ぶは――物語を拡散させるか、させないか。
少女の物語の感染は脅威の一つ、一種の武器。
少なくともマスターには通用する――が、キャスターのようなサーヴァントには通用しない。

「……ははは………バーカ、勝手に舞い上がってろ」

キャスターは嘲笑する。
彼が選択したのは放置だ。
刺青のバーサーカーに存在が集中しているのだから、無理しなくとも良い。
神隠しの少女の脅威は、後でも十分発揮させることは可能だ。いくらでも巻き返せる。
それ以上、手を加える必要がない。

ただ。


ただ、一つ。
キャスターは唯一気に食わないところがあった。
どうでも良いのだが、あの少女を知るキャスターだからこそ喉に小骨が引っ掛かったような違和感。


「ああ……そう、か。……詩……か」


噂されている少女は『詩』をさほど奏でていない。
常に彼女の『詩』を耳にしていたキャスターは、どうにも噂話の少女が自らのマスターであると自覚できなかった。
所詮、噂話はそんなものである。
真実とは異なる。
真実を知る者にとっては歯痒い思いをするだけ。
噂する方は、あることないこと思考停止に話せば良いのだ。さぞ、お気楽であろう。

「……………」

キャスターは何を思ったか、SNSに書き込みをしようと手を動かす。
彼は語彙が多い訳でも、知識や教養がある訳でもない。逆に無い部類の魔術師であった。
光の魔法と、殺人だけが彼の優れた点。

「……こいつらだってな………俺と大して……変わらねぇよ……暇つぶし、だ」

言い訳を呟きを口にしたキャスターは、意識を集中させる。
城を集め、城に住む蟻を潰すかのように文面を打ち込んでいく。


933 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/20(水) 08:18:27 QIJ1nAoo0
あの美しい旋律を奏でる少女を、神隠しであり闇そのものである―――滅ぼすべき少女を殺すのは。
死神の特権。
どれだけ聖杯を手にしたい畜生がいても、冷酷非道な悪人であろうとも。
如何なる人間、どれほどの英霊を含めても。

殺すのは俺だ。



「あ………あの……」


キャスターの手元が停止する。
冷水をかけられた風というのは、まさにこの事。
噂されていた、噂されている例の少女が、肉食動物を前にした草食動物のような瞳をしていた。

唐突に機嫌を害された為、キャスターはしばし呆けていた。
打ち込んだ内容を改めて読み返そうと、携帯に視線を落としたが。
どうでもよくなって、そのまま書き込みを送信する。

あえて聞こえるように舌打ちしたキャスターは言う。

「なんだ」

「そ……その……何も、なにも……………ありませんでした」

機嫌取りでもしようとしたのか、ご丁寧に少女は身を震わせながら告げてきた。
これがどこかの企業内で見られる上司と部下のやり取りならば良いが。
この二人は、そんな甘ったるい関係ではない。
闇を殺そうとする死神と、闇に飲み込まれた少女。
加害者と被害者。
綺麗に亀裂の入った主従だった。

「……なぁ。………お前……一々、蟻を踏み潰しました………って報告しないと気が済まない奴……か?」

「え………えっと」

「今日は飯を食った……何時に寝た……くだらねえ、些細な出来事を喋るのが好きか……そう聞いてるんだよ」

「ご、ごめんなさい。気を、つけます……」

全くだ。
あまりのくだらなさに、キャスターは内心で罵倒する。
どうでもいい話より『詩』でも詠っていれば良い。

少女は震えながらも、安堵していた。
嘘はバレていない。
彼女は――ある主従の存在を知った。けど、それを黙認した。キャスターにも伝えなかった。
キャスターに気付かれていない。

故に、少女は思う。
キャスターに声をかけようとする前、彼はどこか満たされた表情を浮かべていた。
一体どんな喜ばしい事が起きたのだろうか。
少女には想像できなかったが……
機嫌良く携帯電話をいじっていたから声をかけたのに、キャスターは一瞬にして不快の形相を浮かべる。

どうしてなのだろう。
どうすればいいのだろう。

困惑する少女を差し置いて、死神は夜明けを見た。
夜が終わってしまった。
朝だ。

キャスターは太陽も好きだが、今となっては満月の方が好みだ。
不思議と、太陽が忌々しく感じてしまう。
慣れない文章を書こうとするから無駄に時間を盗まれた。死神は文句を口にはしなかったが、溜息は漏らす。


「なら――殺しに行くか? あのクソ雑魚……目立つ真似なんかしやがって………アホ丸出し野郎が」


死神が笑う相手は、正真正銘の殺戮者であった。
雑魚か、アホか。間抜けかは――彼がどのような英霊であるか分かれば、解答はすぐ判明する。
けれども、それはまだ死神も、神隠しの少女も知らない狂った物語だった。


934 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/20(水) 08:18:47 QIJ1nAoo0
【3日目/早朝/板橋区】

【あやめ@Missing-神隠しの物語-】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]神隠し
[道具]無
[所持金]無
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争が恐ろしい。
1:キャスターをどうにか……
2:発見した主従(カラ松組)の事はキャスターに伝えない。
[備考]
・聖杯戦争についておぼろげにしか把握していません。
・SNSで画像がばら撒かれています。そこから物語に感染する人が出るかもしれません。
・カラ松とアサシン(明)の主従を把握しました。
・役割は『東京で噂される都市伝説』です。



【キャスター(ヨマ)@マテリアル・パズル】
[状態]健康
[装備]杖
[道具]携帯電話
[所持金]無
[思考・状況]
基本行動方針:全員殺す。
1: サーヴァントを探す。
[備考]
・バーサーカー(アベル)の存在を把握しました。





夜の帳が落ちた頃、どこからともなく『詩』が聞こえてきた。
旋律はこの世のものではなかった。耳にした人間を闇へ引きずり込ませるような、甘い魅力がある。
『詩』を詠うのは少女。
その少女が『神隠しの物語』に登場する、あの彼女だと気付けなかった。

ただ、その時。
純粋に感じた。
本当に美しい声色だと。

彼女だけの空間が広がって行くのを感じた。
自身が希釈される感覚を知り、初めて闇に飲み込まれるのだと理解する。
自分は振り返る事はしない。
彼女がそこにいる事だけはハッキリとしているのに、彼女の顔を望めばいいのに。

そのお陰だろう。
真っ直ぐ走り抜ければ、闇から逃れる事が叶った。

あの常世の詩は恐ろしいものだ。
しかし、それでいて。
美しく、奇妙なだが、不愉快ではない、だからこそ人を惹きつける恐怖の旋律。

誰もが恐れ慄く闇を、そうではないものへと変貌させる。
あの存在は光をもってして滅ぼさなければならない。





935 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/20(水) 08:19:08 QIJ1nAoo0

「やはり、そうか」

携帯電話でSNSのある噂を調べた暗殺者であり、音楽家であり――殺人鬼たる英霊が呟く。
そもそもの話。
この携帯電話(現代のスマートフォン)は、アサシンのマスターのものである。
手にしている段階でいささか奇妙なのだが。
生憎、マスターたる二宮飛鳥は授業中である。

そう、彼女は日常を謳歌していた。
友達との会話、もしかしたら役立つかもしれない知識を身につける為の授業。
授業中には携帯電話を操作する暇なんてない。
こっそりやる生徒も、いない訳ではないが……常識的にやるべきではないだろう。

だからこそ、マスターから携帯電話を貸して貰えた。
尤も。
マスターとサーヴァント。
彼らには携帯による連絡手段よりも容易で、単純な念話という便利な機能を誰もが持つ。
念話があれば危機をすぐ知らせる事も可能。
何しろ、現時点では学校内で事件は発生していないのだ。
警戒するべきではない。

「この噂話自体が奇妙だ。証拠はないが……この少女がサーヴァントで、噂話を広めている可能性がある」

アサシンは、中学校内に存在するだけではない。
生徒たちの話に耳を傾けるくらいはしていた。
だからこそ、噂話――『神隠しの物語』を認知したのである。
このご時世に都市伝説が流行するのは、少々不自然ではあった。しかも、これまた古典的な。
噂を聞いた者は、別の者に噂を伝えなければ神隠しされるという呪いの類まである……

英霊にも様々な種類がいる。
真名が決定的な弱点となる者もいれば、その名を広め・称えさせることにより力を向上させる者。
もしかしたら……噂となっている少女(英霊)は後者の能力を持つかもしれない。
ならば、マスターには教えない方が得策か……?

何より。

「『詩』か」

噂といっても色々ある。
広めたのは一人や二人ではない。
こっくりさんやテケテケのようなメジャーな怪談にも、様々なパターンがあるように。
『神隠しの物語』も、様々なシュチュエーション、様々な語り手がいた。


936 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/20(水) 08:19:26 QIJ1nAoo0
SNSの書き込みの中で、唯一『詩』について語った者がいる。
少女はこれほどの『詩』を唄うのだと、知らぬ者に教えるように、あるいは自慢のように書き込んだ。
アサシンはそう感じられた。

「これを書き込んだのはマスターだろうか。いや、サーヴァントの可能性もある。
 少女の方がマスターで、書き込んだのがサーヴァント。それも悪くない。
 ただ、どちらが正解かは――流石に見当がつかないな……」

が……アサシンは少々不思議そうに首を傾げる。

「これは少女の『詩』を称賛しているのだろう。
 闇に対する恐怖を垣間見せるような文面があるが、軽蔑や嫌悪はしていない。
 そうだ。まるで感想を書き込んでいるようだ。これを書き込まず、少女に伝えればいいと僕は思うのだが」

まあ、それはそれとして。
アサシンは『少女』ならば、殺さなければならないと即座に判断した。
少女がマスターにしろ、サーヴァントであれ。
少女に恋した殺人鬼は――少女を殺す為に生きると、そんな殺人鬼であり続けると決心したのだ。

「この書き込み主の特定は可能かもしれない。しかし、僕にはそのような知識がない。
 マスターもないとなれば、他の人間に頼るしか術はないということか」

残念そうに呟いたアサシンは、SNSに添付されている画像に目をつけた。

少女がいた。

悲しげに微笑を浮かべ唄う少女の姿が、そこにはある。
普通の人間には見えないらしく「何も映っていない」なんて罵声じみた書き込みが多数見られた。
アサシンは満足気に頷く。

「―――悪くない」

彼女が可愛らしく、幸せそうな笑顔でいてくれたら――なお良い。
人間らしく、笑って死なせてやりたい。
『神隠しの少女』に対して、アサシンは密かに想う。

「ふむ……」

どうにかしたい。もどかしい思いが、殺意が募って行くばかりだ。
マスターの少女に手をかけないでいるので一杯だというのに。
『少女趣味』の異名にかけて、『神隠しの少女』の殺害だけは譲れないものがあった。
アサシンは賭けた。

例え、反応がないにしろ。何もしないままでいるよりかはマシだ。
この書き込みをしたのが聖杯戦争の関係者ならば。
もしくは、この書き込みを目撃する関係者にも目につく行為をする。
暗殺者にとって目立つなどあってはならないものだが……このままでは少女の行方は知れずであろう。

殺すのは僕だ。

そう言わんばかりに、アサシン――零崎曲識は行動に出た。





937 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/20(水) 08:19:45 QIJ1nAoo0

「ねえ、飛鳥ちゃん。あの話、知ってるー?」

不動中学校の教室にいる二宮飛鳥に声かける女子生徒。
彼女は格別、飛鳥と深い仲ではないし。飛鳥にとっても、どこかで知り合った人間ではない。
NPCの役割を全うしているだけに過ぎず。
飛鳥に話しかけたのにも、意味などないだろう。

あの話。
飛鳥はいたって普通に――あくまで彼女らしく――女子生徒に返事をする。

「あの殺人鬼の話かい?」

「えっ、あー……ううん。違うんだけどー飛鳥ちゃんは、そっちの方が気になるんだ」

「勿論。今、ボクたちのいる『東京』に彼もいるからね」

「ほんと怖いよね……先輩が新宿辺りに住んでるんだけどサー」

沢山死んだ。
死体の処理は一体どうなっているのだろうか。飛鳥はそんな不思議な事を想像している。
それにしては、飛鳥のクラスでは死者が出ていないらしい。
他のクラスの方は……分からないけども。

内心、教室に入って、一体いくつの花瓶が飾られているのだろうと恐怖を抱いていた飛鳥だが。
何事もない。平凡な教室を目にして、酷く安心してしまった。

飛鳥自身も関わっているのだ。
この『東京』の異常に。
聖杯戦争の舞台でしかない『日常』。日常を過ごす、一種の気休めだ。
真の平凡だった。


何故ならば――この世界において、二宮飛鳥は『アイドル』ではないのだから。


だから変にチヤホヤされないし、目立ってもいない。
至って普通。
どこにでもいる普通の女子中学生。

けれど――違うのは分かる。
かつて舞踏会への階段を駆け上がったのならば、今はその階段を降りようとしている最中。
シンデレラのように階段を駆け下り、ガラスの靴を脱ぎ落し、深夜の鐘の音を耳にしながら向かうのは

『地獄』と呼ばれる現実。
聖杯戦争と呼ばれる宿命。

そこにはあの殺戮の王だって、他にも狂った連中ばかりが待ち受ける『非現実』の世界。
正真正銘の残虐な世界。


938 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/20(水) 08:20:02 QIJ1nAoo0

飛鳥は境界線にいる。


あっちの世界は自分の望んでいたものが待ち受けている、けど怖い。
死にたくない。とっても恐ろしい。
ようこそと歓迎してくれても、誰も自分を優しくしてくれない。

こっちの世界は自分の望んでいたものではない、けど温かい。
見たくないものなんてないし、とっても美しい。
ようこそと歓迎してくれるし、誰も自分を優しくしてくれる。


そうなのだ。
何もかも自分のサーヴァントに任せきりなんて、あってはならないはずだ。
心の奥底から死を望んでおらず、生を望んでいる。
何かしなくてはならない。

それでも楽器を盗むなどといった、犯罪を実行しようとしないのは
どこかで彼女は日常を握りしめていたい思いが強いから。


夢はいつか醒める。
もうすぐそこまで『非日常』は迫っていた。
その時――二宮飛鳥は、どの選択肢の掴むのか。

『日常』を望み続ける為、このままで居続ける。
それとも『非日常』の世界へ完全に沈み込むのか――……


休み時間終了のチャイムが鳴り響く。
現実世界で吐きだそうとした解答は、二宮飛鳥のみが知っている。



【3日目/午前/葛飾区 不動中学校】


【二宮飛鳥@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]健康、戦いに対する不安
[令呪]残り3画
[装備]不動中学の制服
[道具]勉強道具、学生鞄
[所持金]十四歳の少女のポケットマネーとして常識範囲内の金額
[思考・状況]
基本行動方針:生きて帰りたい。
0:ボクは―――。
1:都内で暴れているバーサーカーの存在が気になる。
2:コントラファゴット、か……。
[備考]
・アサシンが自分の殺人においてルールを課してることは知っていますが、それの内容までは知りません。
・葛飾区にある不動中学校に通っています。
・『東京』ではアイドルをやっておりません。
・神隠しの物語に感染していません。


【アサシン(零崎曲識)@人間シリーズ】
[状態]健康、気配遮断、殺人衝動(中)
[装備]少女趣味(ボルトキープ)
[道具]携帯電話
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を獲る。
1:マスターである『少女』を殺さないようにする。
2:『神隠しの少女』を笑って死なせてやりたい。
3:精神干渉への対策への対策を考える。
[備考]
・神隠しの物語に感染しました。
・『神隠し』にサーヴァント、あるいはマスターが関与していると考察しております。


939 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/20(水) 08:20:21 QIJ1nAoo0



東京都渋谷区。
ここに本部を置く有名な私立大学があった。
殺人鬼が出没している中、馬鹿げたことにこの学校ですら平常授業を行っている。
授業の休み時間を迎えた学生たちがザワザワと騒音のような会話をかわす。
それこそ日常的な、ありふれた話題ばかり。
どうでもいい、無意味な話題以外にもここにいる学生が話すのは――

「あの殺人鬼、やばくね。新宿に出たって……ほんと、警察なにやってんだろーね」

「人喰ってる男がいるらしいよ」

「女の子を誘拐してるとか……」

「違う違う! 『神隠し』の話!! 噂で聞いたんだけど実際消えた人がいるんだって」

「どこだっけ……23区にある高校で起きたのは知ってるんだけどね。神隠し」

――殺人鬼の話題。あるいは『神隠し』。
前者はまだ納得できるが、後者はいささか不自然だった。
現代の日本には、到底似合わない古風な都市伝説が流行しているのだ。
それを異常と解釈した人物が一人。
大学にかようカナエ=フォン・ロゼヴァルト――聖杯戦争のマスター。

SNSで例の都市伝説を調べてみたが、実にくだらない内容だった。
少女に出くわせば、神隠しに合う。
闇に飲み込まれる。
実にくだらない物語だ。

何の飾り気もない。美しさも、尊さも、艶やかの欠片も無い。
戯言だ。
―――が、聖杯戦争において無縁とは言い難い。
都市伝説。少女……噂になっているからには、恐らく人間を何人か引きずり込んでいる可能性はある。
あるいはサーヴァント……?

「これは――」

カナエの目に止まったのは、噂の書き込みそのものではなかった。
ある噂の書き込みに対する返信コメントだった。



<■■■さんへの返信>
 初めまして。あなたの体験談に興味を持ちました。
 実際に『神隠し』に合いかけた場所がどこか、教えていただけないでしょうか? 暗殺者


940 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/20(水) 08:20:40 QIJ1nAoo0
暗殺者。
…………アサシン?

馬鹿な。こんな間抜けに存在を公にするサーヴァントがいるものか。
最初はハンドルネームのようなものだと、カナエも鵜呑みにはしなかった。
が……止める。

仮にNPCのハンドルネームに過ぎずとも、本物のアサシンによるものであっても。
これを利用しない手ではない。
無関係ならば無関係で済まされる話だ。

『……ランサー』

念話でカナエが呼びかけると、気迫があり、それでいて歓喜のような声色でランサーが答えた。

『おお、謝肉祭の開幕の時か!』

『いいや、まだだ。だが……出撃の準備は整っているのだな』

『然り。して相手は、愛を知らぬ殺戮者。あるいは骸に集る畜生か』

分からない。
カナエの答えは簡単なものだが、液晶越しの読み合いを強いられている以上当然だった。
故に、行動に出る。
全てはカナエの奥底に疼く■の為に。
■した者の為に。



<■■■さんへの返信>
 初めまして、■■■さん。実は『詩』を聞いた私の友人がいたのですが、昨日から行方が分かりません。
 もしかしたら貴方と同じ場所で神隠しに合ったかもしれないので、場所を教えてくれませんか?    槍兵





こうして、新たな奇譚が産声をあげた。



【3日目/午前/渋谷区】

【カナエ=フォン・ロゼヴァルト@東京喰種:re】
[状態]健康、???
[令呪]残り3画
[装備]赫子(鱗赫)
[道具]携帯電話、勉強道具
[所持金]かなり裕福
[思考・状況]
基本行動方針:習様の元に馳せ参じる。
1:魔力と食料は可能な限り集めておく。
2:大学に通いながら、他のマスターの情報を集めておく。
3:私は習様を……■している……?
[備考]
・ランサーが魂喰いにより魔力を大量に手にしたので、当分は魔力に困らなさそうです。
・神隠しの物語に感染しました。


【ランサー(ヴラドⅢ世@Fate/EXTRA)】
[状態]霊体化、魔力貯蓄(大)
[装備]槍
[道具]
[所持金]無
[思考・状況]
基本行動方針:マスターの愛を見る。
1:カナエの指示があれば直ぐにでも出撃する。
[備考]
・神隠しの物語に感染していません。


941 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/20(水) 08:21:19 QIJ1nAoo0
投下終了です。タイトルは「キャスターと神隠しの物語」になります。


942 : 名無しさん :2016/04/20(水) 18:02:22 vHQxkjzQ0
とうかおつー
あやめちゃんがめっちゃ争点になっておられる……
境界線に立っちゃってる飛鳥はどちらを選ぶか、転ぶか


943 : 名無しさん :2016/04/20(水) 20:03:08 bkwa6Ws60
投下乙です

あやめちゃんマジプリティ!
都市伝説ゆえにロールに縛られない自由な動きが出来るのは便利っすね
彼女の奇譚は飛鳥や曲識さん、カナエ等を巻き込んで今後どうなっていくのか


944 : 名無しさん :2016/04/20(水) 20:12:24 jslt2wRU0
s


945 : 名無しさん :2016/04/20(水) 20:14:00 jslt2wRU0
素直に言えばいいのに夜馬はツンデレ(棒)
あやめは命狙われすぎで可哀そうだなぁ、彼女を救うものは居ないのか
曲識兄さんがどう動くのかで飛鳥ちゃんの行先も左右されそうですね


946 : ◆As6lpa2ikE :2016/04/20(水) 20:56:31 GH/iMVq.0
カラ松&アサシン、二宮飛鳥&アサシンで予約します


947 : ◆.wDX6sjxsc :2016/04/20(水) 21:07:38 bkwa6Ws60
織田信長&アーチャー予約します


948 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/20(水) 22:47:40 QIJ1nAoo0
感想と予約ありがとうございます。自己リレーになってしまいますが
安藤(兄)&カイン、潤也&ジャイロ、駿河&マダラ、ジェイソンで予約します。


949 : ◆As6lpa2ikE :2016/04/21(木) 21:08:35 rIg.HPok0
すみません。予約をカラ松&アサシン、二宮飛鳥&アサシンからカラ松&アサシン、二宮飛鳥&アサシン、トド松に変更します


950 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/28(木) 08:43:43 kZ38JXQg0
予約分投下します


951 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/28(木) 08:44:33 kZ38JXQg0
<交通費+ランドセルランド入場料+食事代=?>


「ん~~~~~~………」

絶叫マシーンが勢ぞろいする東京――否、(絶叫系において)日本一のテーマパーク・ランドセルランド。
一番乗りした来客たちが早速キャーキャーと絶叫し合う中。
神原駿河は、何故かアトラクションには向かわず、売店の方に足を運んでいた。
皆が皆、我先に乗ろうとする。その為、既に3時間待ちの文字がいくつか目に止まるほど、どのアトラクションも混雑していた。

だからこそ。

アトラクションに向かう人々の流れに逆らい、駿河は先にお土産を買ってしまおうと思いつく。
今回の読みは正解らしい。
ちらほら駿河以外にもグッズを買う者や、飲み物などを買う客の姿はあるが
長蛇の列と比較すれば天国と地獄だった。

『何をしている』

そこに、駿河のサーヴァントであるアヴェンジャーが念話で声をかける。
慣れてしまったのだろう。駿河はさほど驚く様子は見せず、いたって普通に念話で返事をした。

『土産はどうしようかと悩んでいたのだ。
 折角なのだから、マスコットキャラクターの「アイポッド」のグッズでも買おうしているのだが』

アイポッド。
とは、音楽プレイヤーのことではなく。
ランドセルランドのマスコットキャラクターの一つ……いや、二匹でセットの存在の為。
ここはマスコットキャラクターの一種と称するべきか。

オレンジとイエローの二つで一組のキャラクターは、園内のあちこちで見かける。
従業員スタッフが遠隔操作で動かす『アイポッド』の姿もあり。
子供たちはそれを追いかけ回したりして、幸福そうに遊んでいた。

とにかく。
涙目型の生き物――『アイポッド』なるもののグッズを眺めていた駿河。
自然と関心を抱くのはアヴェンジャーにも分からなくもない。
ない……のだが。

商品の前をうろついていた駿河に気付いた店員が一人、声をかけてくる。

「お客様! 実は最近発売された新商品がありまして……それがこちら! 『わんぱくアイポッド』!!」

「おお、本物に近い大きさだ!」

設定上の『アイポッド』の大きさである30cmほどの実物大。
どうやら機械式のようで、店員が試しに『アイポッド』につけられてあるスイッチの一つを押すと。
陽気な音楽が流れたり、『アイポッド』に唯一付属されている器官・青い瞳が動いたり。
つまり結構、精巧に作られてあると理解できた。


952 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/28(木) 08:45:14 kZ38JXQg0
「さらにさらに! ここのボタンを押すと――すっごいスピードで走るんです!!」

通販番組の如く説明した店員の言葉通り。
もう一つのボタンによる操作で玩具ならざるスピードで店内を走り、壁に衝突する『アイポッド』。
周囲にいる客も「よく出来てるなぁ」と感嘆の声を漏らしている。
一方のアヴェンジャーは、この茶番に対し真面目に突っ込んだ。


―――それがどうした。


「今ならαとβのセットで3680円!!」

まさか買う訳ないだろうな、とアヴェンジャーが駿河を睨むものの。
彼女の方は至って真剣に財布の中身を確認し始めた。
本日幾度目の呆れか定かではないアヴェンジャーだったが、ふと肝心な問題に直面する。

『一つ聞くが』

『アヴェンジャーも欲しいのか??』

『………お前の資金はいくらだ』

『帰りの交通費なら心配ないぞ。仮にここで昼食を取ったとしても十分足りる』

『具体的な金額を言え』

『ん? 少し待ってくれ』

駿河が改めて現在の手持ちを確認する。
ランドセルランドの入場料は高校生4500円。
春休みシーズンの場合は学生割があったかもしれないが、現在はやっていないらしい。
第一、平日に学校をズル休みした状況下、学生証を堂々と提示する度胸のある学生がいるだろうか……
そして、交通費は往復およそ500円。

それらを差し引いた残りの所持金――5000円。
現実を突き付けられ、駿河は唸った。

『うむ……結構シビアだった。これで「アイポッド」を購入してしまったら、昼食代が危険過ぎる』

『たかが5000円前後で何日過ごすつもりだ』

『手持ちは確かにこの程度だが、仕送りがある』

現在の神原駿河は、マンションで一人暮らしという設定の不動高校一年生。
設定上、彼女はアルバイトをしている訳ではないので両親が駿河にある程度の仕送りをしている(ことになっている)。
実際のところ、一体どこから金が流れて来るか。
あまり想像しない方が楽かもしれない。

『なら、仕送りの金額は』

『ええと……10万前後。いや、確か「本」を購入してしまったはずだ。10万は無いだろうが……それなりにあると思う!』

曖昧すぎる返答の割に自信満々、威勢良く返事をする神原駿河。
相も変わらずなポジティブ精神は褒められるべきものだったが、アヴェンジャーにとっては計画性がないと思うだけ。
サーヴァントが金を必要とするか否かと問われれば、確実に『無い』が解答となる。
しかし、マスターの方は違う。
移動手段・交通費、食費やら、その他諸々。


953 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/28(木) 08:46:09 kZ38JXQg0
駿河は、決して金の無い部類の立場ではない。
ただし学生という設定においては、限られたものとなる。
社会人が、多少金銭は良い方だろう。

『必要以上に金は使うな』

『……アヴェンジャー』

『聖杯戦争がどれほど長期化するか、あるいは短期間で終えるか。俺ですら想像つかん。
 それでも使いたければ好きにしろ。お前の首が絞まるだけで俺には無関係だからな』

『ツンデレはありがたいのだが……私たちはテーマパークにいるのだぞ』

『……だから何だ』

『金の話は後にしてくれないかっ!』

折角のテーマパーク・絶叫アトラクションの宝庫に来たと云うのに、一体どうして資金をやりくりについて話さなければならないのだ。
神原駿河の念話による叫びは、もどかしさが込められている。
彼女は真剣だった。
割と真剣に楽しもうとしている。
駿河は聖杯戦争関連の話題を言い訳にして、アヴェンジャーとアトラクション巡りしたい魂胆があった。

無論、アヴェンジャーの意見は一理ある。
一理あるのだが……しかし。

『アヴェンジャー!』

『今度はなんだ』

『「アイポッド」のオレンジとイエロー、どっちがいい!?』

『俺には必要ない』

アヴェンジャーの素っ気ない返答に、再び駿河は唸った。
どうやらこの英霊、シリアスな話題にしかデレを発揮しないらしい。
それでも神原駿河はポジティブだった。
お金だとか、聖杯戦争だとか、この瞬間には無関係なのだと言わんばかりに――

「店員さん! これください!!」

「えっ、あ……『アイポッド』の帽子ですね」


<交通費+ランドセルランド入場料+食事代+『アイポッド』の帽子×2=約7000円>


駿河が渾身の買い物を実行している中、アヴェンジャーの瞳は異なる方向を監視していた。
それは不幸中の幸いか、皮肉じみた運命か。
彼らと同じくランドセルランドに訪れていた兄弟。
この二人は、一寸の狂いなく聖杯戦争のマスターであると判明していたのである。

最悪、アヴェンジャーから仕掛けようかとタイミングを計っていたところ。
彼の瞳は、兄弟たち以外の存在を捉えている。
恐らく……アヴェンジャーでなくとも、兄弟たちのサーヴァントが反応しているはずだ。
アヴェンジャーは気配遮断をそのままに、駿河へ伝えた。

『丁度いい。そこを動くな』

『アヴェンジャー? どうかしたのか……?』

『どうもこうも――神原駿河、自覚しろ。聖杯戦争は始まっている』


954 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/28(木) 08:46:41 kZ38JXQg0



「うわっ。凄いぜ、兄貴!! ここもう3時間待ちになってる、ホラ!」

状況を焦っているのか、愉しんでいるのか。
弟の潤也が携帯の液晶画面でランドセルランド公式サイトを開き、そこでリアルタイムで記載される混雑状況を、兄に対して見せびらかす。
室内ライド型アトラクションとして人気らしい、安藤たちが並ぶ場所は
危険な未確認モンスターたちから逃れる為、脱出するというストーリーが背景にあり。
ホラーの意味合いとしても絶叫させる、まさに恐怖を味わいたい者の為に用意されていた。

苦笑する安藤に対し「チュロス食うか?」とジュースを飲みながら弟が尋ねる。
確かに、並んでからもう1時間弱。
安藤達はアトラクションのある建物内におり、コースター乗り場が視界に捉えられるほど進んだところだ。
最低でもあと1時間は並ぶことになるかもしれない……

それにしても。安藤はやれやれといった風に言う。

「潤也、こんなに買って大丈夫か?」

「金はケッコーあるから平気、平気!」

恐らく、潤也の彼女である詩織へのお土産も含まれているのだろうが……
潤也が購入したグッズは、安藤の手元にある。
安藤が確認して出てくるグッズは、ランドセルを背負ったライオンのぬいぐるみ。
あとは――涙目型の生物? らしいぬいぐるみ。

器官と思しきものが大きな瞳だけで、車輪のような突起で移動すると思われる。
キャラクターだから誰も考えもしないが、生物学的に食事などはどうするのだろう。
安藤はいつもの考察癖が現れそうになった。

安藤のサーヴァント・アサシンが不思議そうに「アイポッド?」と念話で呟く。
この涙目型の生物、確かそんな名前だったかな。安藤は思う。
改めて、安藤は携帯電話で最新のニュースを確認した。

(……やっぱり、駄目だ。『あいつ』に関しての事件ばかり)

いや――それ以外にも聖杯戦争に関係ある事件はあるはずなんだ。
みんな考えるのを止めている。
殺人事件も、些細な事件も、全部『あいつ』の仕業だって決めつけている………!

刺青の男が起こしたと称される事件も、幾つかは冤罪が含まれているだろう。
だからといって、ニュースがアテにならない訳ではない。
事実。
刺青の男以外の事件も報道はされていた。


955 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/28(木) 08:47:01 kZ38JXQg0
刺青男の事件を受け、再度国会議事堂で会議が行われるらしい。
議員たちの中にマスターがいる……?
もしそうだとすれば、安藤も調査するのは困難だろう。
逆に相手の方が一枚上手。
地位も権力も、格が違いすぎた。

(議員、警察……そういう人間にマスターがいるとは限らない。けど)

やはり自然と『そういう人間』が優位に立ちまわれる。
聖杯戦争において仮初の舞台である『東京』にも社会はある。
社会がある程度機能しているからこそ、刺青の男が凶悪犯として連日報道されているのだ。

(待てよ?)

安藤がある場所を携帯で検索する。
警視庁。
東京都の千代田区に構える警察の本城と呼ぶべきそこは、この『東京』においても実在する。
地形からして――安藤たちのいるランドセルランドのある文京区とは隣接していた。
安藤は一拍おき、アサシンに問う。

『アサシン。霊体化のまま、マスターから離れて行動しても大丈夫か?
 例えばだけど……警察署の中とか侵入する――…………壁とかすり抜けられるんだよな』

アサシンはいつも通りの機械的な声色で答える。

『警察内部の資料を持ち去っては、最悪盗難と判断されかねません。
 私ならば資料内容を一通り記憶する事が可能です。それでよろしいでしょうか』

『えっ……え? そんなこと出来るのか』

『はい。記憶力は良い方です』

あっさりと豪語されてしまうと、安藤も困惑してしまった。
普通に記憶力が良い――言葉だけで片付けられるものだが、アサシンの記憶力は並を凌駕している。
少なくとも、ある組織が彼の優れた記憶力と彼の能力に目をつけ、情報のバックアップとして任命されたほど。
ただ、アサシンは言葉を加えた。

『一時的とはいえ私がマスターから離れます。その間、敵対的なサーヴァントに突かれてしまっては……』

『……だよな。タイミングを図らないと』

いくら令呪でサーヴァントを呼び寄せられるとはいえ、敵は容赦しない。
文字通りの一瞬。
一瞬の判断によって、安藤の命はあっけなく終わりを告げるだろう。
令呪を使うことも、思考が追いつかない場合も……

「兄貴! ちょっとトイレ行って来てもいい!?」

前ぶれなく弟の潤也が聞いた為、安藤は少々驚きながらも呆れを浮かべていた。

「だからあんまり飲むなって言っただろ……」

「説教は後! 漏れそうだから!!」

良くも悪くも、いつも通りの潤也は騒がしく列の流れを逆らって、走り抜けていく。
そんな弟の様子を眺め、安藤はどこか平穏の安心感を覚える。
アサシンも、兄弟たちの光景を眺め――どこか羨ましく思ってしまった。


956 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/28(木) 08:48:49 kZ38JXQg0



潤也は再度背後を確認し、兄が追って来る様子はないか。他に目立った動きはないか。
周囲を睨み、異常が無い事に納得した後。
完全に建物から脱出してから、潤也はライダーに返事をした。

『ライダーの位置から兄貴は?』

『ちゃんと見えるぜ。今のところ……何も起きてはいないな』

『………兄貴は一人になった。もしかしたら、何かするかもしれない』

『何かねぇ』

霊体化し、安藤を監視するライダーは思う。
周囲に人々がいる以上、サーヴァントを出現させることはないだろう。
……ならば。
やはり『腹話術』だろうか。
ライダーも潤也から兄の持つ特殊な能力を把握していた。

――自分の考えたことを他人に話させる能力。

(一体なんだそりゃ。どういう時に使えるもんだ?)

ライダーですら疑念を抱いた、一風変わり過ぎた能力である。
生前、ライダーも様々な能力を持った敵を相手にしてきた経緯を持つが、それらを含めても――地味な力だ。
喋らせた相手を呪いとか、余計なオマケは一切ない。
喋らせるだけの能力なのだ。

(こいつは――)

ライダーが感じ取る。
明らか様だった。
潤也の兄・安藤もふと顔を上げて、周囲を見回す。
安藤の態度を見て、ライダーは判断する。間違いない――こいつは『安藤の』ではない。

潤也のでも、安藤のでもない。
第三者のサーヴァントの気配(魔力)を感じたのだ。
まさかとライダーは思う。この……人混みの中で攻撃をしかけるつもりなのか。
どうやらサーヴァントは近くに――少なくとも建物内部にいるようだ。


957 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/28(木) 08:49:19 kZ38JXQg0



                      !?



サーヴァントは居た。
が、不気味な事に周囲にいる人間たちは誰一人としてアイスホッケーマスクを被った大男に反応しない。
恐らく、アトラクションに登場するモンスターの等身大フィギュアと勘違いされている。

無銘を無言で振りかざしたバーサーカー。
唐突な、大胆過ぎる始まりに、周囲の人間は悲鳴を上げる事すら許されず。
無情にも怪物の犠牲者となったのだ。
禍々しい怪物のオーラを纏ったソレは、紛れも無くバーサーカーだとライダーは感じた。

(間違いない………バーサーカー! 周囲にマスターがいるのか? いかにも無差別に殺しをしているように見えるが――)

ライダーがバーサーカーに注目する最中、人々は洪水に流されるように逃げ道を探す。
少なくとも、建物内はパニック状態へと変貌する。
怪物は強靭な怪力により臓器をもぎ取り、頭部を刎ね飛ばし、斧で胴体を二つにする。
愉快なアトラクション施設が、一瞬にして惨劇の劇場へと生まれ変わった。

「いやああぁぁぁあぁ!」

「なんだアレ! 何かのイベントじゃねぇのかよ!?」

「俺が先に並んでたんだぞ! どきやがれッ!!」

バーサーカーは刺青の殺戮者のように、いかに多くの人間を殺害するかを計算はしない。
狂った人喰いのように、脳髄を啜り、餓えを満たす為に犠牲を産み出すのではない。
イカれた殺人鬼のように、幸福である人間を斬り伏せたい衝動に駆られてはいなかった。

単純な殺戮。
本能に近い狂気に全てを委ね、身近な人間を死に至らしめた。

皆が皆、入口に引き返そうとするものだから一向にバーサーカーから逃れる事は出来ない。
折角、バーサーカーの動きはノロマで、周囲にいる人間たちから虐殺しているというのに。
これではバーサーカーの近くに居る者から、順番に殺害されるのが目に見えた。

だが、ライダーは気付く。
安藤はどこへ行った?
人混みの中に埋もれてしまったのだろうか?
ライダーの記憶によれば、安藤の位置は出口付近ではなかったが。バーサーカーの近くでもないはず。
だったら………!?

(な……何ィィィィィーーーーーーーーーー!?)

安藤が向かっていたのは、人々の流れとは真逆!
アトラクションのライド乗り場だった。
一体何事かとライダーが驚愕を覚えるように、恐怖で茫然とするスタッフも安藤の行動により正気を取り戻す。

「き、君!? どこに行くつもりなんだ!!!」

「非常口……! アトラクション内に非常口ってありますよね!?」

「えっ? …………あっ!!」

スタッフがハッとした。
非常事態を想定してアトラクションのコースにも非常口が用意されてある。あちらの方が安全に違いない。
ライドを操作する別のスタッフに対し、冷静を取り戻したスタッフの方が言う。

「緊急停止! 緊急停止して、お客様のライドの安全レバーをあげるんだ!!」

「は、はいっ!!」

無論、まだアトラクション内に残されている客もいた。
彼らの安全まで疎かにしかねない事態だったが、これによりわずかな命が助かったと言える。
ライドが完全に停止したのを見て、安藤はアトラクション内部へ走って行った。


958 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/28(木) 08:50:07 kZ38JXQg0
(………そういうことか、成程な。頭がキレるじゃあないか)

ライダーは安藤がマスターであると確信するの同時に、霊体化を解く。騒然とする現場で、ライダーの出現に反応する人間などいない。
だが、ライダーは安藤を追跡しなかった。バーサーカーをこのまま放置する訳にはいかない。
チラリと雰囲気作りとして設置されている物を見まわす。
観葉植物。
どうやらレプリカだ。『黄金長方形』はない………

『ライダー! 何が起きてるんだ!? 兄貴は!?』

外にいた潤也も、建物内からただならぬ悲鳴と、入口から一刻も早く脱出しようと焦る人々を見た。
異常だ。
聖杯戦争に関係する出来事が起きたに違いない。
潤也の念話にも緊迫したものが感じられる。

ライダーは冷静に答えた。

『逃げ切って、脱出したはずだ。それよりジュンヤ、サーヴァントが現れたぜ。だが――』

『………兄貴のサーヴァントじゃない?』

『多分な。いや……間違いない』

アトラクションのライド乗り場付近に植えられている植物。
これもレプリカだった。花もそう。ファンタジー世界を表現する為の空間なのだ。窓もない。
やはり駄目か、ライダーは念話で告げる。

『恐らくバーサーカーだな。あの刺青野郎とは違う奴だ。
 それと……ジュンヤ! 覚えているか、俺の能力………「黄金長方形」のことだ』

『!』

何とかバーサーカーを誘導したとして、外で戦闘しようにも。
その時点で外にいる人間たちを巻き込む事態になりうる……だが、ここには『黄金長方形』がない。
調子乗っている野郎に、一発くらいはぶち当てたい思いがライダーにもあった。
だが、バーサーカーにも宝具がある。スキルもだ。
迂闊に攻撃はしない。

潤也が沈黙の末、言う。

『わかった……俺が兄貴と合流して、建物から離れたら。バーサーカーを外におびき寄せていい』

それまでは待ってくれ。
潤也の命令にライダーは従う。
逃げ遅れた子供連れの夫婦に歩み寄ろうとするバーサーカー。
ライダーが、鉄球を投擲しようと構えた。やはり『黄金長方形』となるものは視認できない。
それでもバーサーカーへ鉄球をぶつけるつもりだった。

瞬間。
バーサーカーが狙いを定めようとした獲物との間に、サーヴァントが実体化したのだ。
咄嗟にライダーは鉄球の投擲を中止する。
見かけは中東系の男性。見慣れぬ金属で作られた義手がハッキリとライダーの目に捉えた。

(まさかッ!?)

これが、安藤のサーヴァントなのだろうか。
バーサーカーが斧を握りしめ、地響きのような足音を立て、義手のサーヴァントに接近した。
奇妙な程、サーヴァントは冷静だった。
声色も機械的で―――しかしながら、子供を抱え込んだ夫婦に丁寧に話しかける。

「お逃げ下さい。警察には連絡をしないで……逃げるだけで構いません。さあ、早く―――」

何とか彼らが立ちあがり、走り出すが。
バーサーカーは最早、義手のサーヴァントの眼前だ。
ライダーは違和感を覚える。

「どういうことだ! かわすか、攻撃するか―――何もしないつもりか………!?」

あのサーヴァントは、あまりにも動じていない。
否!
まるで攻撃を受けるのを覚悟しているようにしか見られなかった。
ライダーの援護を期待している? まさか、そんな訳はないだろう。ならば――………

バーサーカーが強靭的な怪力をもって、義手のサーヴァントに斧を振りかざす。
このまま、真っ二つにする勢いである。
実際、バーサーカーはそのつもりで攻撃をした。した――つもりだった。
バーサーカーは、何故相手が攻撃をかわそうとも、逆に攻撃をしかけようとしなかったのを疑問する事は無かった。


959 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/28(木) 08:50:39 kZ38JXQg0



「やった! 外に出られたぞーーーー!!」

「早く警察呼んで!!」

一方こちらは、非常口から脱出を果たした者達。
その中に安藤の姿がしっかりあった。
バーサーカーからの脅威から逃れようと、建物から一目散に立ち去る人々。
大きな一息をついて安藤は座り込んでしまう。

怖い。

刺青のバーサーカーではなかった。それとは異なるバーサーカー。
だとしても、安藤は恐怖心が疼いている。

あいつは……あいつは、あのバーサーカーなんかよりも! 恐ろしいんだ。それなのに

マスクを被ったバーサーカーに恐れをなしているようでは、刺青のバーサーカーと対決すらできない。
安藤は実感した。
サーヴァントは、いつ、どこから狙ってくるか誰にも分からない。
気配を消してしまえば――あのバーサーカーのように。人々を虐殺する前提でいるなら、あのようになる。

「知恵だけであの場を脱したのは誉めてやろう。だが……ここまで想定していたか?」

「!?」

何時の間に―――!?
その場に新手のサーヴァントが存在していたのを、安藤は即座に反応できなかった。
霊体化? それともアサシンのような気配遮断?
が、安藤が男のサーヴァントを視認すれば、クラスが判明する。

「あ………アヴェンジャー」

戦国武将を彷彿とさせる英霊のクラスは――安藤が注目していたイレギュラーの存在。

「………あんたに、一つ聞きたい」

震える声で安藤が言う。
最悪、アヴェンジャーに殺されるかもしれない。
だけども、安藤は止めなかった。引き返す訳にはいかないのだ。

「主催者の通達で、あんたはイレギュラーだって言われた。本当にそうなのか?
 イレギュラーだとして、これからどうするつもりなんだ?」

俺を………殺すのか?

安藤は、アサシンを令呪で呼びよせる覚悟をした。
表情一つ微動だにしないアヴェンジャーは「通達?」と呟く。恐らく、通達があった事を知らない。
イレギュラーなる存在に、主催者たちも容易に参戦者として認知しないつもりなのだろう。
アヴェンジャーは、状況を楽しむかのように鼻先で笑った。

「連中は俺を敵だと決めつけた訳か。……安藤、と言ったか?
 質問に答えてやる。確かに俺はある種の『イレギュラー』だが、それは俺自身の問題ではなく、俺のマスターの問題だ。
 奴が俺を中途半端に召喚した――それだけだ」

「中途半端?」

そんなことあるのか? ひょっとして、今のアヴェンジャーは大したことがない……?
単純に考えるのは駄目だ。相手はサーヴァント……!


960 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/28(木) 08:51:44 kZ38JXQg0
安藤が思考を動かし続ける一方、アヴェンジャーは言葉を続ける。

「俺がどうするか? 簡単なこと、俺はこの聖杯戦争を潰す」

「どうして………」

「そこまでお前に話すつもりはない。そして、俺が聞くのはたった一つ――お前が『敵』かどうか」

聖杯戦争に乗るか――聖杯を手にしたい思いがあるか……もしくは、戦争に反対し。何もしないつもりか。
聖杯を獲得する魂胆ならば、アヴェンジャーと敵対することに。
冷や汗が伝うのを感じながら、安藤は答えた。

「刺青のバーサーカー……あのバーサーカーが人を殺し過ぎるから、周りの枷が剥がれ始めている。
 もしかしたらここの社会が崩壊するかもしれない。
 俺は、刺青のバーサーカーを止める。そのつもりだ。そうするって決めたんだ!」

「ならば『聖杯戦争を止める』とでも言ったらどうだ! 何故そう断言しない? 俺と同じように聖杯戦争を潰す――と」

「考える時間が欲しい」

「…………」

「あんたが正しいか、間違っているのか。どうやってバーサーカーを止めるか。
 何も『考えない』で決めたくはない。場に流されたくはないんだ……!
 ………例えあんたが『殺す』と脅しても、何も考えないで従うつもりはない……!!」

聖杯戦争を潰す。主催者たちとは敵対する立場にある存在。
だが、アヴェンジャーは真に正しい存在なのか? 何らかの歪みがあるかもしれない。
戦争が誤りであるから、戦争を潰そうとするアヴェンジャーが『正義』とは断言できない。
それこそ、集団の結束により皆を支配しようとした犬養と変わりは無いのだから。

もし……このアヴェンジャーが間違っているならば、安藤は絶対に彼を阻止するだろう。
戦争の阻止よりも、まずはこの男を止めなければならない。
アヴェンジャーはしばしの沈黙の末、口を開く。

「どうやら、その言葉………本気のようだな、安藤。―――まぁいい」

今は殺さない。
アヴェンジャーの独り言を確かに聞いた安藤。
そんな彼を呼ぶ声が遠くから響いていた。弟の声。
安藤がわずかに気を取られている内に、アヴェンジャーの姿は消えていた。

「兄貴! 大丈夫かよ、早く離れた方がいいって皆言ってるぜ!!」

「………あ、ああ」

弟と共に建物から離れながら、安藤は焦りを覚える。


アヴェンジャー……あいつ、俺の名前を知っていた!
俺の姓……『安藤』……どこで聞いたんだ? 俺と潤也の会話を盗み聞いてたとしても、姓を知る機会はなかったはず。
まさか、俺の周りにマスターが……潤也? 違う。
潤也がアヴェンジャーのマスターなら、俺のことは『名』で呼ぶ方が自然だ……ということは。
他に俺が深く関わっているものは………『学校』だ。
不動高校! あそこに、俺以外のマスターがいる―――


そして……バーサーカー。
安藤は彼のステータスを目にしたからこそ、不安を抱いているのだ。
あのバーサーカーは果たして本当に死んだのだろうか、と。


961 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/28(木) 08:52:10 kZ38JXQg0



ライダーは目の前で繰り広げられた光景に、半ば放心していた。

義手のサーヴァント・アサシンの能力。
恩寵であり、呪いでもあるそれは、アサシンが受けるはずの障害を相手に跳ね返すもの。
バーサーカーの攻撃によって、アサシンの肉体が二つに裂ける運命であったのならば。
バーサーカーの肉体が二つに裂ける結果を、問答無用に押しつけられるのである。

巨体の大男の胴体が、縦に割れ裂けた。
アサシンは無傷。
が、アサシンが必死に押し殺そうとするが悲鳴を上げ、悶え苦しみ――倒れる。
確かにアサシンの能力は規格外なほど優れるだろう。
全ての攻撃を跳ね返す――間接的なものであっても、だ。

しかし、痛みは別だった。
痛みは跳ね返す事はできない。耐えるしかないが、アサシンは激痛に耐えうる精神は持ち合わせていない。
だとしても、ライダーは評価する。

「バーサーカーが受けた攻撃………無傷でいるあのサーヴァント………
 シンプルな能力だが、かなり『無敵』じゃあねえのか……ヤバいな、こいつは」

一体どこまで攻撃を跳ね返せる?

ライダーの疑問は解決されないものだった。
『ネットにはじかれたボールは、どちら側に落ちるのか誰にもわからない』
きっと恐らく、アサシン自身も答えは分からないだろう。

恐怖は、終わらなかった。
文字通りの真っ二つになったはずのバーサーカー。その斧を持つ腕が僅かに持ちあがる。
まだ生きているのだ。
戦闘続行のスキルにより、最後の一撃を振り下ろそうとしている。

瞬間。鉄球が一つ投げつけられる。
ギャルギャルと音を立てる鉄球だが、投擲したライダーの本気の威力ではない。ここには『黄金長方形』がないのだから。
それでも死にかかったバーサーカーの手から、斧を弾くのには十分だった。

「恐れいったぜ、バーサーカー。まだ生きていたとはな…………お前さんの最期は理不尽かもしれないが、因果応報って奴だ」

いよいよバーサーカーの肉体が粒子となっていく一方。
体勢を整えたアサシンが、ライダーの存在と地面に落ちた鉄球を目にし、何とか言葉を紡ぐ。

「あなたは………アーチャー? ですか」

投擲する。ならば、アーチャーという連想は間違ってはいない。
ライダーは少し間を置いてから話す。

「安心しろ。攻撃はしない……さっきのを見たら尚更な。それより――
 ここは平等といこうぜ。俺はアーチャーじゃあない、ライダーだ。あんたは?」

「……私はアサシンです」

暗殺者らしかぬ風貌。
先ほどの能力を把握したライダーだからこそ、ピンとは来ないクラスであったが。
一応『アサシン』と判断しておこう。ライダーは話を進める。


962 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/28(木) 08:52:48 kZ38JXQg0
「あんたのマスターは『偶然』ここに居合わせただけ………違うか? 
 そして、あのバーサーカーも『偶然』ここに出現した。
 暴れる場所は他にもあったはずだ。けどここに現れた――全て『偶然』が引き起こしている」

ある人物は言う。
偶然の積み重ねは『奇跡』なのだと。
ライダー……ジャイロ・ツェペリの一族はその『奇跡』の存在を信じている。
もしも、ライダーがアサシンの能力を把握せず、対立し、鉄球を投げていたのならば。
だが、そうはならなかった。今、この瞬間を以て。

「この際ハッキリ聞かせて貰う。アサシン、あんたのマスターはどうするつもりだ。
 聖杯を獲る……その意思があるのか?」

「決めあぐねています。……悠長だと思わないで下さい。
 私のマスターは迷える者ではなく、考える者です。必ず答えは導き出します」

兄貴は考察癖持ちだけど、それも武器の一つだよ。
マスターである潤也の言葉を思い出すライダー。恐らくアサシンは嘘をついてはいない。
だからといって、ライダーは自身のマスターについて話はしなかった。
まだ、話さないだけ。

「全てが『奇跡』だというなら―――アサシン、あんたのマスターに伝えておいてくれ。
 同盟を組まないか………ってな。直ぐ決めなくていい、あんたのマスターなら『考えたい』はずだ。
 次出会う時までに答えを出してくれればいい」

「分かりました」

ライダーはアサシンの返事を聞き、霊体化をした。
これでいい。
潤也は『利用する』と言ったのだ。同盟を組むのも一つの手だろう。
尤も……ライダー自身の判断も含まれていた。
ひょっとしたら、アサシンとは物凄く相性が悪いのかもしれない。そんな悪寒を感じた。

その予感は的中していた。
ライダーが建物の外に移動したところで、ある異常を見せつけられたのだ。
建物周辺にある植物が軒並み枯れ果てているのを。
まるで何かに殺されたかの如く、ヘドロのように腐り果てていた。


963 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/28(木) 08:53:34 kZ38JXQg0



『どちらのサーヴァントが倒したかはさておき、バーサーカーらしきサーヴァントが倒されたのか』

念話でそう言う神原駿河が人々の流れに沿って、ランドセルランドから脱出する。
周囲には数多のサイレンが鳴り響いており、すでに機動隊らしき者たちが、殺人者が出没した建物を取り囲み始めていた。
もうすでに、そこには何も居ないというのに………

マスクのバーサーカーによって、ランドセルランド内にいる客は全て締め出されることを余儀なくされた。
アトラクションに並び続けていた人にとっては不満だろう。
しかし、殺人が発生したとなれば話は別である。
我先にと逃げ惑う人々で溢れ返っていた。

駿河は浮かない表情をしながら、園内で変えたアイポッド帽子を見つめる。

『それで、安藤先輩と話をしたとは?』

話相手であるアヴェンジャーは素っ気なく答えた。

『軽く脅したが、あの刺青のバーサーカーを止めるとしか答えなかった』

『う、うむ。軽くなのだな』

『俺とは手を組むつもりはないとも答えたが』

『んん? どういうことだ。刺青のバーサーカーを止めるということは、聖杯戦争に反対する立場だと思うのだが』

駿河も指摘する通り。
刺青のバーサーカーを止める――だが、アヴェンジャーとは同盟を組まないとは妙だ。
アヴェンジャーを警戒している。それは分からなくもないが、裏があるに違いない。

『少なくとも……あのバーサーカーを阻止する術を持っている事は確かだ』

あるいは。
刺青のバーサーカーの情報を所持しているか。

まだ近くには安藤兄弟たちがいる。
駿河は悩む。
このまま自分が彼らに接触するのも手だが……無理して向かうべきではないのかもしれない。
彼女だけは思っていたのだ。まだ平穏が欲しいと。

取り合えず、どうやってアヴェンジャーにアイポッド帽子を被らせるかを考えることにした。





まだ。


まだ、恐怖は始まりを告げたに過ぎない。


バーサーカー………ジェイソン・ボーヒーズは再び限界を果たす。
このようにして彼は幾度も恐怖を振りまいてきたのだから。


964 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/28(木) 08:53:55 kZ38JXQg0
【3日目/午前/文京区 ランドセルランド】

【安藤(兄)@魔王 JUVENILE REMIX】
[状態]健康、魔力消費(小)
[令呪]残り3画
[装備]私服
[道具]携帯電話
[所持金]高校生としては普通+潤也から貰った一万円(貯金の方は別としてあるかもしれない)
[思考・状況]
基本行動方針:バーサーカー(アベル)と対決する
1:考える為に情報を集める。
2:警視庁で情報収集してみる……?
[備考]
・原作第三巻、犬養と邂逅した後からの参戦。
・役割は「不動高校二年生」です。
・通達について把握しております。
・現時点では潤也がマスターとは気付いておりません。
・今朝のニュースで新宿区の事件とフードを被ったのサーヴァント(オウル)と桐敷沙子の存在を把握しました。
 またフードを被ったのサーヴァント(オウル)と桐敷沙子が『人ではない』と考察しています。
・バーサーカー(ジェイソン)のステータスを把握しました。
・アヴェンジャー(マダラ)のステータスを把握しました。
・アヴェンジャー(マダラ)のマスターが不動高校の関係者ではないかと考察しています。
・ライダー(ジャイロ)の存在を把握しました。



【アサシン(SCP-073)@SCP Foundation】
[状態]霊体化、魔力消費(中)
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:バーサーカー(アベル)に謝罪をする
1:自分は聖杯を手にする資格はない、マスター(安藤)の意思を尊重する。
2:ライダー(ジャイロ)が持ちかけた同盟を安藤に伝える。
[備考]
・今朝のニュースで新宿区の事件とフードを被ったのサーヴァント(オウル)と桐敷沙子の存在を把握しました。
 またフードを被ったのサーヴァント(オウル)と桐敷沙子が『人ではない』と考察しています。
・ライダー(ジャイロ)とバーサーカー(ジェイソン)を把握しました。


【安藤潤也@魔王 JUVENILE REMIX】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]私服
[道具]携帯電話
[所持金]高校生としては普通+競馬で稼いだ分(貯金の方は別としてあるかもしれない)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を得る。その為にはなんでもやる。
1:兄を利用する。
2:できれば兄のサーヴァントを把握したいが……
3:暇があれば金を稼ぐ。
[備考]
・参戦時期は不明。少なくとも自身の能力を把握した後の参戦。
・役割は「不動高校一年生」です。
・通達について把握しております。
・安藤(兄)がマスターであると確信しております。
・新宿区で発生した事件とフードを被ったのサーヴァント(オウル)と桐敷沙子の存在を把握しております。
・バーサーカー(アベル)に理性があるのではと推測しております。


【ライダー(ジャイロ・ツェペリ)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]霊体化
[装備]鉄球×2
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:マスター(潤也)には従うが……
1:潤也の意思に不穏を抱いている。
2:どうにも主催者が気に食わない。
[備考]
・新宿区で発生した事件とフードを被ったのサーヴァント(オウル)と桐敷沙子の存在を把握しております。
・バーサーカー(アベル)に理性があるのではと推測しております。
・アサシン(カイン)とバーサーカー(ジェイソン)を把握しました。


965 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/28(木) 08:54:14 kZ38JXQg0
【神原駿河@化物語】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]私服
[道具]携帯電話、アイポッド帽子×2
[所持金]高校生としては普通+親からの仕送り
[思考・状況]
基本行動方針:生きて元の世界に帰らなくては。
1:まずは『味方』を探す。
2:アヴェンジャー(マダラ)にはもっとデレて欲しい。
[備考]
・参戦時期は怪異に苦しむ戦場ヶ原ひたぎの助けになろうとした矢先。
・聖杯戦争について令呪と『聖杯』の存在については把握しておりません。
・役割は「不動高校一年生」です。安藤潤也と同じクラスに所属しております。
・新宿区で発生した事件を把握しております。バーサーカー(オウル)と桐敷沙子の存在を把握しているかは不明です。
・アヴェンジャー(マダラ)の発言により安藤兄弟がマスターであると把握しております。
・『レイニーデビル』が効果を発揮するかは、現時点では不明です。


【アヴェンジャー(うちはマダラ)@NARUTO】
[状態]気配遮断
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:この聖杯戦争を潰す。
1:神原駿河とはあまり関わりを持ちたくない。
2:他の主従の動向を探る。『敵』は倒す。『味方』には興味ない。
[備考]
・安藤兄弟がマスターであると把握しました。
・新宿区で発生した事件を把握しております。バーサーカー(オウル)と桐敷沙子の存在を把握しているかは不明です。



【3日目/午前】

【バーサーカー(ジェイソン・ボーヒーズ)@13日の金曜日】
[状態]宝具『13日の金曜日』発動
[装備]無銘・斧
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:殺戮
1:???
[備考]
・恐らくマスターかサーヴァントを発見すれば、それらの殺害を優先すると思われます。
・アサシン(カイン)を把握しました。ライダー(ジャイロ)を把握しているかは不明です。
・宝具の発動により再び現界を果たします。再臨までにどの程度の時間がかかるか、後の書き手様にお任せします。



<その他>
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてLt Masipag氏が創作されたSCP-131のキャラクターを二次使用させて頂きました。
また、ランドセルランドのマスコットキャラクターであり、他の特性は一切ないことも明記します。

ttp://www.scp-wiki.net/scp-131


966 : ◆3SNKkWKBjc :2016/04/28(木) 08:56:18 kZ38JXQg0
投下終了します。タイトルは「それさえも最低で最高な日々」です。

続きまして
巽&ジークフリート、ジーク&ブリュンヒルデ、アイリス&ナイブズ、遠野で予約します。


967 : 名無しさん :2016/04/28(木) 19:20:55 54rqOv3UO
投下乙です

作り物だらけの夢の国は、ジャイロには不利


968 : 名無しさん :2016/04/29(金) 00:45:33 8ttuTesk0
投下乙です

大惨事が予想されたジェイソンの登場だが、二体のサーヴァント相手では流石に満足に暴れられなかった模様。
そして各主従の同盟を匂わせる展開。
ジャイロは奇跡を信じるようだけど、各々が抱える爆弾がデカ過ぎて望みが薄過ぎる。相性も悪過ぎる。
がんばれジャイロ


969 : ◆.wDX6sjxsc :2016/05/01(日) 20:04:24 4GGJc5Bk0
投下乙です

ジェイソン氏さっそく一乙してますが、遠野先輩には強く生きてほしい物です。


自分も投下します


970 : はたらく魔王さま!(仮) ◆.wDX6sjxsc :2016/05/01(日) 20:05:30 4GGJc5Bk0

吸血鬼姫(ドラキュリーナ)。
その名は聞くものに嫌が応でも畏怖を抱かせる名前。
夜の魔人たち…夜魔(ミディアム)の中でも高位の存在だ。
特に彼女…セラス・ヴィクトリアは朝でも活動が可能な上の上の吸血鬼だった。
さて、そんな吸血鬼姫にして弓兵のサーヴァントとして召喚された彼女が。偵察からこの東京でのマスターの元へ戻った時、何をさせられていたかと言うと…

「もう一度確認するぞ、パイスラッシュ」
「セラスです」
「お前は二騎のサーヴァントに遭遇しときながら、特に何も探らずに適当に挨拶だけして帰ってきた、という訳だな」
「……まぁ、概ねそんな感じですかね。ハイ」

正座である。
趣味の悪い…否、かぶきな柄に染め上げられたモコモコの絨毯の上で正座させられていた。
うっすらと、一筋の汗が彼女の今の心境を物語っている。

「いやー私としても、結構冷や汗ものの邂逅だったんですよ。
 ………まさかこんなトコでマスターと似た人と会うなんて…」
「何、ワシの様な超絶イカすかぶき者が二人といたのか!?
 この時代では、てっきりワシは女として広まっておるのかと思ったが」

この主は一体インターネットを使って何を調べていたのか。
そんな事を考えながらセラスはもごもごと言い表しにくい否定を示した。

「いや、その、マスターの事ではなくて。私がサーヴァントになるまえの伯爵(マスター)と言いますか…」
「なんじゃ歯切れの悪い。とにかくソイツらは吸血鬼のセイバーとバーサーカーってことだな」
「はい、そうです」
「デアルカ。そしてそいつら、今は積極的に動いていない、と」

ふむ、とアーチャーから与えられた情報をかみ砕き反芻する信長。
何の因果か、この東京には吸血鬼のサーヴァントが集まっているらしい。
加えて暗躍するは、血を吸うのではなく、人間そのものを捕食する怪物。


971 : はたらく魔王さま!(仮) ◆.wDX6sjxsc :2016/05/01(日) 20:06:01 4GGJc5Bk0

「なァ、お前生前そーゆうバケモン殺しでブイブイ言わせてたなら、そういうのに心当たりあるか?」
「いえ、吸血鬼でないならグールかもしれませんが、私の知ってるグールともちょっと違うと思います」
「ふむ…やはり今の段階では先導どころか他のサーヴァントの正体も掴めん、か
位置なら大体分かるかもしれんが」
「?どうやってですか?」

と、そこでセラスに悪寒が走った。
目の前の自分の主はとても悪い顔をしていた。
その表情たるや陰謀を巡らせる魔王。
じりり、と足が一歩後ずさる。

「な、何ですか、マスター。そのひどく悪い顔は」
「いやー、餅は餅屋って言うだろ?ハイこれ」

渡されたものは一本の旗(フラッグ)だった。
持ち手の見た目はプラスチックだが、硬い。鉄か何かでできている。
ひどく、嫌な予感がした。

「あ、あのー……これは?」
「刺せ。頭に」
「は?」
「刺せ」

有無を言わさぬと言った空気で信長はセラスに詰め寄る。
対するセラスは当然だが、意味が分からず信長の肩を押しとめた。

「すみません。ちょっと何言ってるか分かりません。説明していただかないと」
「これからお前には俺の秘書としてその餅屋に会ってもらう」
「事後承諾ですか…でも何故私を、てか何で旗を?」

ここで言う餅屋、とは所謂情報屋の事だろう。
ぐぐぐと話をしながら旗を押し付け合う。
手加減しているとはいえこのマスター、五十の齢にして無駄にパワフルである。
だが、先ほどの様な魔王を思わせる雰囲気は無く、額には脂汗がにじんでいた。


972 : はたらく魔王さま!(仮) ◆.wDX6sjxsc :2016/05/01(日) 20:06:33 4GGJc5Bk0

「その餅屋に依頼するには、旗を刺してないとダメなんだにゃー。頭に」
「だからって、私よりマスターが刺せばいいじゃないですか…交渉とかそういうの得意ですし、元セーイタイショーグンでしょ。マスターは」
「俺は右大臣だ。つーかお前サーヴァントだろ。神秘とやらが篭ってなきゃこれしき平気なんだろ。だからさっさと刺せい!」

何故、他の秘書ではなく自分なのかは分かった。
ちら、と旗に視線を映す。
無駄に尖っている。
何か神秘っぽい物も篭ってるような気もした。

「やっぱこれはキツイっですって!遠慮させて下さい!」
「そんな事言わず、な?先っぽだけ!先っぽだけじゃから!」
「猥褻な表現はやめてください……!マスターそういう派手なの好きじゃないですか刺せば似合ってるかもしれませんよ」
「ざけんな!頭に旗なんか刺したら死んでしまうわ!もうすぐ来るからさっさとせい、パ!」
「最早一文字!」

そんな不毛なやり取りを数回繰り返した頃。
唐突に、設置していた客の来訪を告げる秘書から来る書斎用ベルが鳴り響く。


「あっ、マスター。来たみたいです……」


よ、と言うまでの一瞬の間だった。
そのほんの一瞬の間だけ、彼女は自らの主から目を離した。
信長の姿は、消えていた。

あの人、ホンノージでもこの調子で生き延びたんじゃないか―――!

そう考え固まっている内に、書斎室の扉が叩かれる。
どうしよう。どうしようと、セラスは焦った。
探してる時間はもうない。
視線を泳がせると、床に『これを渡してくれ のぶのぶ』と書かれた封筒と、予備の物らしき旗が二本。

(ええい、ままよ!)

セラスは肉食獣の様な俊敏さで旗二本を引っ掴むと素早くセットし、扉を開く。


973 : はたらく魔王さま!(仮) ◆.wDX6sjxsc :2016/05/01(日) 20:07:12 4GGJc5Bk0


「こんにちはー、ハタ坊だジョー。依頼通り来たジョー。ジョ?」


扉の前に立っていたのは、どう見ても坊やと言った風貌のNPC。
セラスは一瞬面食らうが、彼女の今の格好も同じくらい他の人間が見れば奇妙だろう。
そんなセラスの格好を、まじまじと見つめるハタ坊。

一瞬の静寂が二人に満ちる。

「ジョー。ほんとは頭かケツに刺さなきゃいけないんだけど…三本も刺してるから良しとするジョー」
「ハ、ハハ…ありがとうございます」

今のセラスは、両耳の穴に旗を突っ込み、胸のボタンを大胆に開いてそこに旗(フラッグ)を突っ込んでいた。

引きつった笑みで、目の前の坊やから資料と書かれた封筒を受け取り、代わりに自分の持っている封筒を手渡す。
手渡されたハタ坊は封筒をびりびりと破り、その場で検めた。
ふむふむふむふむふむ……と一通り目を通し、少し申し訳なさそうな顔をする。

「ごめんジョー。これ、次の依頼みたいだけど、今のぶのぶが受けた依頼でだいぶ社員が減っちゃったから、少し時間がかかるかもしれないジョー」
「へ、あっそうなんですか!大変ですね…」
「心配いらないジョー。社員は畑で獲れるジョー」

それよりも、とハタ坊は残念そうな声をだした。


974 : はたらく魔王さま!(仮) ◆.wDX6sjxsc :2016/05/01(日) 20:07:32 4GGJc5Bk0

「残念だジョー。折角ケツ用も持ってきたのに…」

ハタ坊の背後に、ごろり、と転がるバカデカい旗。
あれをうやってケツに刺すんだろう…とセラスは怖気にも似た戦慄を禁じ得ない。
ハタ坊はそれを抱え、

「じゃあ依頼は終わったから帰るジョー。何かあったら電話頼むジョー。後振込みは確認したジョー」

とだけ言って、セラスが頷くのを確認すると、三輪車をコキコキと漕いで書斎室を出て行った。
随分とあっさりしているが、これがプロの情報屋と言うものなのだろうか。
姿が曲がり、見えなくなった所で脱力する。


「でかしたぱいぱい弓兵。令呪を使わなくて正解だっな」
「もー、どこに隠れてたんですか」


タイミングを見計らったような登場にセラスは仄かに憤りを見せるが、信長は意に介さず彼女の手から封筒を引っ手繰った。
そして、満足げに恐ろしい微笑を浮かべる。

「おー、おー、流石ふらっぐこおぽれえしょん。バッチリだな」

封筒から取り出された資料は様々で、写真がついている物や分布図になっている物もあった。
それを楽しげに眺める主を見て、セラス訝しげに問う。

「マスター、資料って、何のですか?」
「んー、まぁ色々だ。不可解な事件やガス爆発事故から、何かよく分からん神隠しとかなんとか、不動高校とか言う寺子屋まで。これなんかもっとダイレクトだぞ、たまげろ」

映っていたのは今巷を騒がせている生きる災害。刺青のバーサーカー。
そしてそれと対峙する一匹の人ならざる『梟』。
その異常な風景を添付した紙切れを見て、セラスは目を剥いた。


975 : はたらく魔王さま!(仮) ◆.wDX6sjxsc :2016/05/01(日) 20:08:46 4GGJc5Bk0

「こ、これどうやって…」
「そんなもんあのみすたあふらっぐ、とやらが自分とこの兵を使ったに決まってんだろ」

先ほどのハタ坊の言葉がリフレインする。
そして再び軽い戦慄を覚えた。

「まぁ、その過程で死人は出たかもしれんが、これが戦である以上、出ない方がおかしいわな。……で、だ」

ぱしぱしと、幾重もの屍と共に築かれた資料をぱしぱしと叩きながら、第六天魔王は言葉を紡ぐ。

「俺達はこうやって犠牲を強いながらも戦にとって何より武器となる情報を大量に手に入れた訳だが、アーチャー、お前、この写真の奴らを相手取れるか?」

先ほどの様な緩んだ雰囲気とは明らかに違う、問い。
この男は、嘘偽りを許さないだろう。必ず、嘘偽りを必ず見抜くだろう。
だから、弓兵は、何も足さず。何も引かず。

「正直、このクラスが二騎相手だと、厳しいかもしれません。でも」

吸血鬼姫はその名に相応しい威容で、主を見据え、答えた。

「見敵必殺(オーダー)とあらば」

その誓いを受け、くつくつと魔王は嗤う。
酷く愉快そうに。

「写真の中のこいつらも怖いが。お前も怖いわい……準備をしろ。動くぞ
まず、適当に取り込めそうな輩を探す」
「公務はよろしいんですか?」
「俺らがやっとるのは、戦だ。政(まつりごと)ではない。体調不良でも何でもこじつけるさ、戦は、合戦に至るまで何をするかが肝よ」

まして、自軍よりも格上の相手を相手取るのであればな、と信長は付け加えた。
そんな信長を見て、セラスは仕方ないなぁとでも言わんばかりに苦笑する。

「本当に、悪い人ですね。マスターは」
「おおとも。我こそ絶対悪よ、だから俺よりも派手に暴れてる奴らは、邪魔だ」

その言葉にさらにセラスは信長の背後で苦笑を強めるが、彼は気にせず資料を封筒に戻すとスタスタと車の所まで歩く。
そして、ぽつりと、呟きを漏らした。

「トヨ、ここは面白いぞ。えるふやどわあふはおらんが、先の世の銃に吸血鬼に狂戦士、選り取りみどりだ。
だが、なるべく早く帰ってお前と一緒に国盗りの続きじゃ」

彼はやはり、どこまで行っても武士(もののふ)だ。
いつだって、国を盗る。その事だけに全霊を注ぐ。


【3日目/未明/足立区】

【織田信長@ドリフターズ】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]
[道具] 資料。
[所持金]議員の給料。結構ある。
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を頂くつもりだが……?
1:得た情報を活用する。
2:刺青男(アベル)を野放しにするのは危険なので、どうにかしたいが……
3:出来れば武器を入手したい。
[備考]
?役割は「国会議員」です。
?パソコンスキルを身につけました。しかし、複雑な操作(ハッキング等)は出来ません。
?通達を把握しております。また、聖杯戦争の主催者の行動に不信感を抱いております。
?ミスターフラッグから、東京でここ二、三日の内に起きている不審死、ガス爆発、不動高校、神隠し、失踪事件の分布、確認されているサーヴァントなどの写真を得ました。
?セラスからセイバー(フラン)とバーサーカー(ヴラド)の容姿の情報を得ました。
?得た情報を使ってどこへ向かうかは後続の書き手にお任せします。

【アーチャー(セラス・ヴィクトリア)@HELLSING】
[状態]健康
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:マスター(信長)に従う。セクハラは勘弁して欲しいケド。
1:情報収集し、夜明けまでに帰還をする。
2:バーサーカー(ヴラド三世)に通じる存在……?
[備考]
?セイバー(フランドール)とバーサーカー(ヴラド三世)の存在を把握しました。
?刺青のバーサーカー(アベル)を危険視していますが……


976 : ◆.wDX6sjxsc :2016/05/01(日) 20:09:09 4GGJc5Bk0
投下終了です


977 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/02(月) 22:53:38 hLdLyZGE0
>はたらく魔王さま!(仮)
ドリフの方のノッブとセラスのやり取りはほのぼのするものを感じますが
やっぱり戦、闘争なれしている彼らは、根は真面目なのだと思います。
政治家の立場、情報屋などとは交流が深そうですし、それをどう生かすか楽しみでもありますね。
投下ありがとうございました!

私も予約分を投下します。


978 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/02(月) 22:54:29 hLdLyZGE0
老婦人にとっての最寄り駅に降り、彼女と共に行動していたジークとランサーは寝静まり返っている住宅街を歩む。
ジークとランサー、老婦人はしばし、他愛のない会話を楽しんだ後。
目的地である老婦人の自宅に到着した。

周囲の一軒家と比較したら一際古びたもので、老婦人曰く。もう主人も先に立ってしまった為、一人暮らしなのだとか。
老婦人が「ちょっと待ってて」とジークを呼びとめ。
自宅からどこかの神社のお守りを持って来た。

「今は物騒だからね。これを持ってれば神様が守ってくれるわ」

「しかし、これは――」

「いいのいいの! 後先ないような年寄りよりも、若いあんたが持っていた方がいいわ」

申し訳なさによる抵抗があったものの、ジークは老婦人の心使いを受け取り。
彼女に対し「ありがとう」とちっぽけで、けれど純粋な礼を告げた。
老婦人は言う。

「あんたみたいな子に出会えてよかったわ」

「俺に? それは何故なんだ」

「『東京』も昔と比べたら偉く変わっちゃったもの。
 建物とか技術が進歩したり、交通が良くなったり……いいこともあるけど
 あんたのような素直な子は最近見かけなくなったのよねぇ」

外国人はそういう子が多い方かしら? なんて老婦人はくすりと笑うが。
彼女の表情はどこか悲しげだ。昔を懐かしんでいるようで、この時代に虚しさを抱いているような。
果たして彼女は模造品なのだろうか。
あるいは、マスター候補から零れ落ちた人間なのか?

「それに―――近頃、物騒な事が立て続いて。なんだか怖いのよ。
 この街の雰囲気っていうのかしらね……ちょっと変でしょ?」

変。
そう言われてもジークは実感できない。
彼は、本来あるべき『東京』を目にしたことも、ここにいる人々の事も、何も知らない。
まだジークには体験したことのない世界が『東京』には残されていた。

「俺は……まだ分からない。だからこそ、俺はここにいる人々と関わり続けたいんだ。
 そうすれば、貴方の言う違和感にも気付けるはずだ」

「それでいいと思うわ。人は分かり合える生き物よ。でもね、コロコロとよく変わっちゃう生き物でもあるの。
 だからあんたは忘れないで頂戴。今のあんた自身を」


――過去の在り方を見失ってしまう………か。


帰路についたジークとランサー。
老婦人が偉くジークを褒め称えてくれたのだが、それほど今の時代は――この『東京』は変わり果てている、という意味なのか。
かつて、老婦人にとって過去の『東京』を目にしたことないジークには、漠然とした想像しかできない。
お守りを握りしめ、ジークは漸くランサーに話しかけた。

「ランサー。電車で感じたあの感覚の事だが」

「ええ、ええ。間違いありません。ジグルド―――いいえ、マスターも感じたのなら
 恐らく『黒』のセイバー………ジークフリートでしょう」

やはりそうか、とジークも納得をする。
ランサーは『黒』のセイバーと似たジグルドを知る英霊・ブリュンヒルデ。
彼女と、そしてジークの心臓が反応した。

ジークフリート。
最初は確証などなかったが、いよいよ彼がここにいるのだと確信する。
恐らく、向こうも気付いたのではとジークも警戒していたものの。
それらしい気配もなく、心臓の疼きも弱まった。マスターの意思を優先させ、追跡をしに来ないようだ。

逆に、ジークたちが彼を追跡する事も可能だったが、あくまで老婦人を優先させた。
邂逅の機会を一つ失った。
けれど、心臓が動き続ける限り、再び巡り会うはずだろう。

もし話せる事が叶うのならば――話がしたい。
この心臓の事や、もし願うのならば……『黒』のセイバーのマスターが、聖杯戦争とどう向き合うかによっては
共に戦うことも可能なのかもしれない。
ジークの中に希望が灯る。

「マスター。明日――いえ、今日は『あそこ』に向かうおつもりですか?」

ランサーの問いに、ジークは返事をした。

「ああ。聖杯戦争は始まったが『東京』の街を感じる為にはそうしたい。
 すまない、ランサー。しばらく自由に行動出来なくなってしまうが、良いだろうか」

「構いません。時間になりましたら、私が起こします。朝食も用意しておきますね」

優しげなほほ笑みを浮かべるランサーに対し「ありがとう」そうジークは伝えたのだった。
彼女の抱く『愛』を、ジークが初めて手にした『愛』とは異なる感情を、内に秘めている事知らずに。


979 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/02(月) 22:55:00 hLdLyZGE0



夜明けが広がる空。
駅から飛び出した巽は、パトカーのサイレン音と騒音を耳にする。足先をそちらへ向けた。
まだ人の少ない新宿の街を駆けながら、自分の判断を回想する。

正直、ファヴニールも刺青のバーサーカーも、どちらも追跡したかったくらいだ。
セイバーと自分。
二手に別れる。
だがサーヴァントと対面した時、巽は無力過ぎる。何とかうまく撒く手段なんてない。流石に夢物語だった。
ならばどうする? 圧倒的な情報力の中、巽はファヴニール(らしき存在)の状況を考察した。


――相手も移動してるってことは、車かバスとか……俺みたいに、電車とかに乗っているんだな。


駅周辺の交通機関を使用したのは明らか。
タクシーの可能性もあるか?
巽は仮に、バスや電車を利用している場合を想定し、少し違和感を覚えた。
ファヴニールという邪竜が、人々のいる交通機関で何もアクションを起こさない。
つまり。
マスターの方がファヴニールを上手くコントロール出来ているか、あるいはファヴニールにその意思がない。

「保証はないけどさ。バーサーカーと比べたら、まだあっちの方が安全なんじゃないかって思ったんだ」

故に、巽が下した判断は『バーサーカーの追跡』だった。
セイバーが警戒する存在を野放しにしてしまったようなものだ。
巽としては、セイバーに不満がないか心配だったか、セイバーの方は沈黙の末。返事をする。

『いや……俺もマスターの判断は正しかったと思う』

『本当に?』

『実際、あそこまで接近したから感じた事だが。少々、俺の想像したファヴニールとは異なる存在だった』

『ファヴニールじゃないってことか?』

『断言は出来ないが、ファヴニールと所縁ある存在の可能性が高まった』

要するにセイバーのような。
何であれ、セイバーの肯定に巽は安堵した。
警戒を解く訳にはいかないが――マスターの支配下に置かれていない刺青のバーサーカーの方が、やはり危険である。
巽の足が急停止する。

既にバーサーカーたちが暴走したであろう跡地に到着した。
早朝に通勤するサラリーマンや、SNSなどの情報を頼りに現れた若者など。
ちらほらいるが、警察官が立ち入り禁止のテープを張り巡らせていた。
それでも、巽の体が震える。

ベタベタとする空気。これは――肉が、人体が焼かれた故なのだろうか。
噎せ返るような悪臭は、血のたち籠ったもの?
思わず巽は口元を押さえた。

理解はしていても、現実で体験するのと想像は別世界だった。
そんなマスターの様子を感じ取ったのか、セイバーが念話で呼びかける。


980 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/02(月) 22:55:18 hLdLyZGE0

『マスター、俺が状況を見て来よう。気分が悪ければ離れた方がいい』

『………ごめん』

『問題ない。マスターの反応は当然のものだ』

なんだかセイバーに申し訳なさを感じた巽。
それ以上に―――目にしてもいないというのに、恐怖を抱いた。
少し現場から離れた巽がしばらく待機していると、霊体化したままのセイバーが念話で伝える。
警察官たちの会話や現場で情報が手に入ったのだ。
巽はそれをメモに取って、唸る。


――弾幕みたいなもの……遠距離攻撃をするサーヴァントがいるってことか?
  刺青のバーサーカーは単独犯じゃなくて、1人……いや2人? 共犯者がいて、女の子が人質に……
  多分。女の子がマスターだよな? いや、それよりも。


『今のバーサーカーには仲間がいるのか……』

仲間? 同盟? 利害が一致して行動しているだけ。
理由は幾らでも思いつくが、真実は分からない。
どうあれ、仮に刺青のバーサーカーと戦闘になれば、最悪他のサーヴァントを同時に相手する。
そんな可能性の話。
セイバーが言う。

『情報を得られただけでも十分だ。ある意味、この状況で鉢合わせなかったのは幸運かもしれない』

『かもな』

決してセイバーの実力がないとは巽も思っていない。
しかしながら、セイバーには弱点がある。
簡単に説明するならば――背中。複数の相手をする以上、弱点である背を警戒しながら戦闘は中々難しい。
相手が英霊だったら尚更。
セイバーの真名が分からずとも、背を狙われる機会が絶対ないとは言い切れない。

『俺達だけじゃ難しい、か』

誰かと同盟を組む。
刺青のバーサーカーと、彼と行動するサーヴァントに対抗し切れる仲間と。
しかし、巽の目的は聖杯戦争を止める事。それを良しとする他の主従が、果たして居るのか。
ふと巽は、あの少女を思い出す。

カメラを持った少女。
確か彼女は留学生だと言っていた。もしかして、巽のいる不動高校の留学生かも?
いやいや、そんな好都合な展開はないだろう。巽は首を横に振る。
一方で――同盟を組むなら、彼女と組めるのでは? そんな希望を抱いていた。

学校………『東京』で巽が所属している設定となった不動高校。
自分の他にマスターがいるかは、分からない。
小中高、さらには大学を含めれば百を優に超えるほど学校というのは存在する。
不動高校に複数のマスターがいる保証は無いし、居れば幸運に近い方だ。

不思議な事に、巽はできれば学校へ向かいたいと思っていた。
理由はよく分からない。
聖杯戦争のマスターという自身の立場からすれば、演じる役割に過ぎないもの。
だとしても。
平穏を心のどこかで求めているのか、巽は不動高校へ通学することになるのだった……


981 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/02(月) 22:55:46 hLdLyZGE0



東京都葛飾区。
午前8時。

街の一角に、小ぢんまりとした本屋が一軒ある。
格別目立ってもいないし、正直古びた外見で、現代においてはいつ廃業になっても変ではない。
しかし、それは佇まいの問題であって。
近所の住人は利用しており、品ぞろえも新刊の漫画や本が入荷されており悪くない。
店主である初老の男性に後継ぎする者がいない為、心機一転、改装しないのだろう。

そんな――どこかにあっても違和感はない本屋の前に、ジークはいた。
一呼吸おいて、ランサーに指摘された言葉遣いの注意を振り返る。
店主がシャッターを開けに現れたので、ジークは挨拶した。

「おはよう――ございます」

「おはよう、今日は早いねぇ。ジーク君……ええと、ユグドミレニア君?」

「ジークの方で」

元々無銘に近いホムンクルスだったジーク。
姓も持たない為、どうやら彼に所縁のある姓が仮初として選ばれたらしい。
東京の戸籍上で彼は『ジーク・ユグドミレニア』とされてある。

ジーク・ユグドミレニアの役割は『日本国籍を持つ外国人』。
さらに加えるならば、この本屋のアルバイト店員。
NPCであった頃は言葉遣いに気をつける必要は無かったジークだが、記憶を取り戻してからは多少意識する。
そうとは知らぬ店主は、いつも通りに気さくに話す。

「昨日は大丈夫だったかい。ジーク君が休みだったから、どこかに出かけて巻き込まれてないかって心配してたよ」

「いや。刺青の――殺人鬼が現れた方には居なかった………から、大丈夫です」

「そうかい。それなら良かった」

ジークは店員の着るエプロンを身につける前に、一冊の本を店主に渡した。

「読み終えた……ので返します」

「どうだった? 宮沢賢治!」

「『眼にて云ふ』が印象に残った。死に至る過程を語りながらも、心地よさを感じられる」

ハッ、としてジークは「そこが良かったです」と慌てて加える。
店主はせせ笑いながら言う。

「まだ日本語に慣れていないんだろ? いいよいいよ」

「すまない……あ、いや。すみません?」

ジークから『宮沢賢治詩集』を受け取った店主は、店の奥にある居間に戻り。
次はどれを貸してあげようかと何やら選んでいた。
店内には今朝入荷したらしい雑誌がビニールをかけられたまま置かれている。

刺青のバーサーカーをテロリストと称したり、あること無い事を噂立てるような煽りなど。
内容の真偽はともかく――人々から注目される為にこのような見出しを書くのだろうか?
ジークはソレらを眺め、顔をしかめた。

「ジーク君! 次はこれなんかどうだい。もう読んでるかな?」

「『黒山羊の卵』?」

作られてまだ間もないジークは、文学作品に触れる機会すらなかった。
ほとんど知らないようなものだが、店主が言うに有名な作品らしい。
ジークが首を横に振って「いやまだ」と答えれば「読んだ方が良いよ」と店主がその本を渡してくれた。

心臓が僅かな疼きを起こした気がする。
それでも――今は店主から頼まれた商品の陳列をジークは優先させたのだった。


982 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/02(月) 22:56:46 hLdLyZGE0
【3日目/午前/葛飾区 住宅街】

【ジーク@Fate/Apocrypha】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]
[道具]携帯電話
[所持金]不明
[思考・状況]
基本行動方針:元の世界への帰還、そのために聖杯戦争を見極める
1:今は『東京』にいる人々と関わる。
2:アヴェンジャー、及びそのマスターと接触したい。
3:ランサー(ブリュンヒルデ)の様子が心配。
4:セイバー(ジークフリート)と話が出来るのならば……
[備考]
・心臓がセイバー(ジークフリート)と共鳴しています。
 極近距離にお互いを捉えた場合には位置も感知することができますが、詳細は後続の書き手氏にお任せします。
・まだランサー(ブリュンヒルデ)の様子に、我が身に迫る危険は感じていません。
・セイバー(ジークフリート)がいると確信しました。
・役割は「日本国籍を持つ外国人」です。


【ランサー(ブリュンヒルデ)@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ】
[状態]霊体化中
[装備]現代用の私服
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:ジークを助け、最期は英雄(ヒト)として死なせてあげたい
1:今はジークに従う。
2:セイバー(ジークフリート)には……
[備考]
・ルーン魔術により、敵意や戦意に対する感度を高めています。
・“あの人”によく似た気配(ジークフリート)を感じ取りました。





東京都葛飾区――不動高校。
二年生のある教室で巽は大きな欠伸をかいてしまった。
授業中もついつい寝てしまうほど疲れが溜まっているらしい。それもそうだろう。
夜は丸一日、東京の街を駆け巡っていたようなものだ。最早、聖杯戦争の渦中にいる以上、勉学など無意味か。

にしても。

巽はクラスで唯一の空席を眺めた。
あの席に座っている――安藤(下の名前を巽は知らない)という生徒。
今日は風邪で欠席と聞くが、果たして本当に風邪なのだろうか?
聖杯戦争の本選が開始された時期に欠席とは……やはり違和感を覚える巽。

「來野さんも、安藤さんが心配ですか?」

悠長な日本語で巽に尋ねて来るアメリカ人の生徒・アンダーソン。
彼は留学生ではなく、父親の仕事の都合でアメリカから来たと云う――そういう設定であった。
授業中の為、小声で巽が「安藤のこと知ってるのか?」と質問してみる。

「はい。僕と同じ『寅さん』が好きなんですよ。
 それにアンダーソンとアンドーサン。響きが似てません?『類はトムとボブ』です!」

「類は友を呼ぶ、って言いたいのか?」

「イエス! それです」

でも確かに似てるなぁと巽が笑う。
アンダーソンは話を続けた。

「どうやら弟の潤也さんも風邪をひいてしまったらしいので、今日お見舞いに行こうかと思っているんです」

「弟?」

「ええ。兄弟お二人で暮らしていますよ」

「えっと……両親は」

「事故でお亡くなりになってしまったとか」

悪い事を聞いてしまったと巽は気不味くなるが、アンダーソンは至って平静だった。
しかし、兄弟二人も欠席となれば引っ掛かる所があった。
心当たりは積極的に行ってみるべきか――巽はアンダーソンに言う。

「俺も一緒にいいか? 近頃、色々あるし……1人で行くよりマシだと思う」

「本当ですか? ありがとうございます。放課後、一緒に行きましょう!」

アンダーソンと約束した巽は一先ず安心した。


983 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/02(月) 22:57:10 hLdLyZGE0


今日は安藤の家に行ってみて……それで様子を見て………
もし令呪とか見かけて、マスターだって分かったら。
どう話を持ちかけるべきかな………なんとかアンダーソンを帰らせて、俺がマスターだって伝えて
ええと……他には、そうだ。まずは刺青のバーサーカーを止めたいって切り出せば――


「………くん。來野くん! 聞こえてますか」

「は、はい!?」

素っ頓狂な声を上げてしまいクラス中から笑われてしまう巽。
やれやれといった風に、教師が巽に言った。

「室井静信のエッセイ、最初の行から読んで下さい」

「あ、は、はい。えっと……『村は死によって包囲されている』………?」

『渓流に沿って拓けた村を、銛の穂先の三角形に封じ込めているのは樅の林だ。……』
淡々と村の情景を描写する生々しさは文学に精通していない巽でも、異常な何かを感じた。
祠のような村に対し、ここまで死を象徴させるのは。
村に絶望しているかのようだった。

遠くから聞こえるサイレン音。
パトカー……消防車、あるいは救急車? 何か異常が起きた。
この『東京』で再び死が招かれる。

「ねえ……あれ、救急車じゃない」

「え? 何々、なに起きたの??」

何とサイレン音の主である救急車が辿りついたのは、不動高校だったのだ。
教室内が一時騒然となったのは、目に見えた結果である。
巽も驚きながら、霊体化しているセイバーに問う。

『セイバー。何かあったか?』

『すまない……俺が感じる限り、サーヴァントが動いた様子は見られなかったのだが……
 どうやら生徒が1人、救急車で搬送されようとしている』

その生徒の身に何が……聖杯戦争に関係しているのか。
巽は、更なる判断を下す事となった――……




【3日目/午前/葛飾区 不動高校】

【來野巽@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ】
[状態]寝不足、肉体的疲労(小)
[令呪]残り3画
[装備]不動高校の制服
[道具]勉強道具
[所持金]学生相応
[思考・状況]
基本行動方針:東京を救う
0:倒れた生徒をセイバーに追跡させるか……?
1:刺青のバーサーカーを止める。
2:ファヴニールをどうにかしたい。
3:アヴェンジャーとそのマスターを探し、接触したい。
4:誰かと同盟を組みたい。
5:放課後、安藤兄弟の自宅を訪ねる。
[備考]
・与えられた役割(ロール)は不動高校の二年生です。
・ファヴニールに関して、現時点では刺青のバーサーカーよりも危険性はないと判断しております。
・刺青のバーサーカーが他のサーヴァントと行動しているのを把握しました。
 その内、遠距離攻撃するサーヴァントがいるのも把握しております。


【セイバー(ジークフリート)@Fate/Apocrypha】
[状態]霊体化中
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:正義の味方として東京を救う
0:倒れた生徒を追跡する……?
1:マスターの指示に従う
[備考]
・自らとファヴニールが共鳴することを識っています。
・この東京で自らと共鳴したのが本当にファヴニールであるのか、疑問を感じています。


984 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/02(月) 22:57:46 hLdLyZGE0



留学生は、常にその学校の授業を受け続ける訳ではない。
今日、オリエンテーションの一環として留学生たちは、不動高校の図書館にて利用方法を説明されていた。

その1人であるアイリスは難しい表情を浮かべていた。
彼女が所属するクラスにて欠席者が二人。
1人は安藤潤也、もう1人は神原駿河。
教師の話を聞き流しながら、アイリスは思う。

二人とも風邪との連絡があったらしいが……聖杯戦争という状況で、学校を欠席している可能性は十分ある。
だが、どうやって彼らの居場所を突き止めるべきか?
恐らく職員室に行けば彼らの住所は分かるかもしれない。
それでも、この時間帯でも職員室に誰かはいる。なので安易に忍びこめないだろう。
直接、先生に教えて貰うにしても……一体どういう理由なら納得してくれるか。

(私もそんなに二人と関わっていた訳じゃないし。接触しようとしたら怪しまれちゃうでしょうね)

まずは、調べられるものだけに手をつけることにした。
各自の自由時間となった今。
教師に説明された通りの方法で、アイリスは都市伝説関連の書物を探す。
電子書庫で入手した『現代都市伝説考』は除き、他の文献には『神隠し』について説明はあるのだろうか?

(これにもあるわね。それと、これとこれも……ふうむ)

取り合えず、手当たり次第にそれっぽい文献を集めた。
聖杯による作用なのか、アイリスが日本語に困る事は無かった。
読むにしても喋るにしても、彼女が英語を話すのと同じように自然と理解できる。

シュチュエーションが違ったり、それぞれの語り手が別人であったり。
『神隠し』には様々な物語が様々な本に記載されている。
アイリスはどこか違和感を感じた。
彼女が注目したのは―――本の発行年。

(これは第二版、発行年は平成元年ね……もっと古そうなのはこっちかしら? ……昭和?)

昭和とは1989年から1926年。
やはり、とアイリスは確信する。
『神隠し』の噂をSNSなどで広められる以前から、『神隠し』は存在していた。
別に、今に始まったものではない。

(『神隠し』をするのは、あの女の子………)

アイリスには郷土信仰といった文化的な視点ではなく、もっと単純な捉え方を試みた。
『神隠し』には妖怪の類が関係している、のが一般的。
けれども、どうもあの写真にあった少女は妖怪の部類には見えない。
やはり『神隠し』を除けば『ただの少女』ではとアイリスは思う。

(サーヴァントなら召喚されてから噂を広めるはず―――実際は分からないけどね)

サーヴァントではなく、マスターの可能性。
そんなまさかと思いたくなるが、万国ビックリショー人間以上の存在をアイリスは知っているのだ。

どういう形であれマスターは平等に東京に『居る』痕跡があった。
アイリスが不動高校の留学生として『居る』ように。
―――だからなんだという話だ。
仮に少女がマスターとして、一体どうやって見つけ出すと云うのだ。

アイリスが周囲に誰もいないのを確認し、携帯電話でSNSを見直す。
先ほどの『神隠し』の噂に関して調べる。
すると、妙な書き込みを発見した。
正確には、噂に対しての返信。いくつかある返信の中に『暗殺者』と『槍兵』の文字が………


985 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/02(月) 22:58:13 hLdLyZGE0
アサシンとランサー?

もしやとアイリスも思ったが、返信に対する返答はされていない。
この書き込みが注目された理由としては『詩』に関する記述があるところだろうか。
画像にいた少女。
『詩』を唄っている風だった彼女。
なるほど、あの画像を『視えた』者たちにとって暗黙の合い言葉に成っているのでは。

(この噂を書いたのは、あの女の子? うーん、そんな感じには見えないわね………)

ならサーヴァントの方?
こんな書き込みをして何がしたいのかしら……?
ちょっと待って。噂……わざと噂を広めようとしている??

アイリスは噂の概要を把握したからこそ、もしやと思い至った。
ならば、噂を他の人間に話さなければ『神隠し』にあうのは真実。
しかし……アイリスはまだ『神隠し』にあっていない。写真の女の子を見たのに。

そういう意味ではない?

(写真にいる女の子と……現実[ここ]で出会ったら、まずいってこと、ね)

アイリスが、簡単に鵜呑みできたのはSCP――あらゆる怪奇物と関わり過ぎた故のこと。
だが。

1、画像にいる女の子と出会ったら『神隠し』にあう。
2、『神隠し』から逃れるには他人に噂を伝えること。
3、現世に留まりたいならば、噂は伝え続けなければならない。

これらが事実ならば、とんだブービートラップだ。
聖杯戦争に関係するものも、無関係なものも、全て無差別に巻き込まれるのだから。

(でも。サーヴァントには無害、そうよね? 私の考え通り、女の子がマスターでそのサーヴァントがいる。
 そのサーヴァントは平気っぽいわ……この書き込みをしたのがサーヴァントだったら、だけど)

魔術師でもサーヴァントをどうこうするのは困難である。
セイバーが以前伝えた話を信用するならば『神隠し』の少女も同じはず。
アイリスは、そこまで頭を回転させ、わざと噂を拡散させるような所業に走ったサーヴァントに対し。
言葉に表せない不快感を覚えた。

(だったら、女の子は利用されているだけでしょ? 本当、嫌になるわ……)

アイリスも自分の能力を『正しい事』に生かせると聞き、それで財団に協力した。
実際、彼女は財団に貢献する結果を導いた。だが……
命を奪う行為が『正しい事』?
絶対にありえない。どんな理由であれ、殺害する相手が如何に極悪人だろうが、何者であろうが。

そもそも何故自分に暗殺を持ちかけられたのだろうか。
『彼』に長く関わっていたから、人の死に抵抗が薄くなっているとでも判断された?
とんだお門違いだとアイリスは思う。
例の書き込みをブックマークしておき、アイリスは『彼』の情報を確認する。

(共犯者? フードの男―――それと誘拐された女の子……)

『彼』が誰かと共に行動することは、まぁ出来なくもない。
アイリスも「出来なくは無い」と思うほどの人格者であって、余程の理由がなければならなかった。
誘拐されたと称される少女・桐敷沙子。
『神隠し』の少女同様、彼女がマスターだろう。
音声を消して携帯電話でテレビを視聴すると、桐敷沙子についての報道がされていた。

身寄りも無い。変わった病気もあり、まともに学校へ行くことすら出来なかった。
病気とはSLE(全身性エリテマトーデス)。
日の光に当たると症状が悪化してしまうらしく、この時間帯における彼女の安否が心配されている。
……ここまで詳細に報道されていると、プライバシーのへったくれもない。
まるで、あの財団のようだとアイリスは嫌気がさした。

映像は桐敷沙子の病室を映し出している。
他人の部屋を世間に公開して(しかも本人には無許可で)、何がしたいのだろう。
アイリスが眉をひそめたところで、本棚が映し出されていた。
彼女は読者家だったらしく、看護師が彼女の本をここで保管していたという。


986 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/02(月) 22:58:42 hLdLyZGE0

(本……)

数十秒程度だったが、映像に映し出されていた棚にあった本。
記憶にある限りのタイトルを、アイリスは調べる。

「室井静信………あった。あと『黒山羊の卵』ってタイトルの………」

『室井静信』の作品。長編六つと短編二つ。(最新作はまだ入荷はされていなかった)
それと『黒山羊の卵』というタイトルの本。
簡単に目を通しただけだが、少なくとも子供が好き好んで読む様な作風ではない。
確か、彼女は小学生?だったような。
こんな難しい内容を理解出来るのだろうか………

(あの病気といい。『彼』――アベルがあの子を殺さないのって、もしかして……)

アイリスが思考を巡らせていると、遠くからサイレンが聞こえた。
そして、それは不動高校内に入って行くような―――

「おいおい。なんだ、救急車が来てんぞ」

留学生たちは何事かと窓から様子を伺っていた。
アイリスも救急車と聞いて首を傾げたが、ある事を思いつく。

アイリスは図書館をこっそり抜け出し、急いで校舎へ向かっていった。
教室に居る生徒たちも、視線を救急車に向ける。
職員室まで移動すると廊下からでも教師たちの声が響いていた。

「どうやら生徒が一人、倒れたらしい」

「ええ!? なんだって急に……妙な噂とか立たなきゃいいんだけどなぁ」

何人かの教師は外で様子を伺いに、職員室に残る者もいたが外に注目している。
事前に情報を入手しようと狙っていたアイリスは、クラスの担任の席を把握はしていた。
担任教師も席にはおらず、周囲に誰かの姿もない。

良し、と彼女は職員室に踏み込んだ。
周囲が騒がしい事もあってか、名簿を携帯で撮影したシャッター音はかき消される。
安藤潤也と神原駿河。
二人の住所・電話番号は入手した。
こっそり職員室から抜け出したところで、アイリスに念話がかけられた。

『マスター、戻ってきたが……これは何だ』

アイリスのサーヴァント・セイバーの声。
恐らく、1人の生徒が救急車で搬送される騒がしさに呆れているのか。状況を飲み込めていないのか。
冷静に図書館へ駆け足で向かいながら、アイリスは答えた。

「生徒が倒れたらしいけど、よく分からないわ。『写真』を見た限り、異変は起きなかったけども」

聖杯戦争と無縁の事件とはアイリスも判断しない、が。
セイバーが得たアーチャーのマスターの情報も共有したいところ。
アイリスも手短に話す。

「今日、欠席したクラスメイトがいたの。その二人の住所と電話番号をさっき手に入れたところよ」

『これで「三人目」の情報か。搬送される奴を追跡すれば「四人目」の情報を得られる可能性はある』

追跡、というのも手だ。
しかし、アイリスの手元には情報が十分過ぎるほどあった。

安藤潤也。
神原駿河。
アーチャーのマスター。
神隠しの少女。
搬送される生徒。
桐敷沙子。
書き込みをした『暗殺者』と『槍兵』。

どれを取っても構わない。
だからこそ、次の選択肢は彼女自身の意思に委ねられるのだった――……


987 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/02(月) 23:00:42 hLdLyZGE0
【3日目/午前/葛飾区 不動高校】

【アイリス=トンプソン@SCP-Foundation】
[状態]魔力消費(微)、神隠しの物語に感染
[令呪]残り三画
[装備]SCP105-B
[道具]携帯電話、勉強道具
[所持金]そこそこ余裕がある
[思考、状況]
基本行動方針:聖杯を獲る。
0:どうする……?
1:神隠しの噂に関する書き込みに注目しておく。
[備考]
・ロールは不動高校一年に留学してきた学生です。
・神隠しの物語に感染しました、あやめを視認することができます。
・あやめを視認すると同時に神隠しのカウントダウンが始まります。
→神隠しの少女(あやめ)がマスターではないかと推測しております。
 また現実世界で神隠しの少女(あやめ)を視認する事が危険だと推測しています。
・聖杯戦争について歪曲された情報しか持っていません。
・不動高校ミステリー研究会の二年生が神隠しに遭いました。
・安藤潤也と神原駿河の住所・電話番号を入手しました。
・新宿区の事件とフードを被ったのサーヴァント(オウル)と桐敷沙子の存在を把握しました。
 また、桐敷沙子が『人ではない』と確信しております。


【セイバー(ミリオンズ・ナイブズ)@TRIGUN MAXIMUM】
[状態]霊体化、魔力消費(小)ダメージ(小)、少し上機嫌、黒髪化進行
[装備]
[道具]アダムの免許証
[所持金]
[思考、状況]
基本行動方針:人類を見極める。
0:搬送される生徒を追跡するか、あるいは――
1:次の行動に出る。
2:あのアーチャーは……
[備考]
・アーチャーのマスターについての情報を得ました。
・アーチャーのステータスはアーチャーのスキルにより把握していません。
・神隠しの物語に感染しました。あやめを視認することができます。





「あーあ! 次の授業だりぃよな。あのセンコー、未だ好きになれねぇー」

クラスメイトの溜息混じりの文句を聞き流しながら遠野英治は、情報をまとめた。

英治としては、己のバーサーカーが全く成果を見せない愚か。
まさか、一番に騒動を起こしているサーヴァントに同盟相手が出来るとは予想外だった。
否。
SNSではフードを被った男(恐らくサーヴァント)が人喰いだと騒がれている。

英治の前の席にいたクラスメイトが偶然、ネットで流出しているヤバい映像だと言い、音声を消して再生していた。
チラリと映像を目にした英治はフードの男の形相を目の当たりにし、言葉を失ってしまう。
映像を視聴していたクラスメイトも、ホラー映画の恐怖シーンで叫ぶような悲鳴を授業中にあげたものだから。
クラス中が色々と騒がしくなった。

確かに――紛れも無くあの男は人喰いで、バーサーカーと同じサーヴァントで間違いない。
英治の中では、不思議な事に人喰いの瞳が焼きついていた。
一体どうして、あの人喰いは羨ましそうに睨みつけるような瞳をしていたのだろう?
英治の胸中で恐怖が渦巻いていた。

何より―――『桐敷沙子』……
彼女のイニシャルが偶然にも『S・K』とは。英治は憤りを感じてしまう。
因縁とは、まさにコレを示すに違いない。


(バーサーカー………やはり妙だ)


今朝よりかは体調は良好になりつつあるが、英治は一つの違和感を抱く。
体調の悪化。そしてバーサーカーの行動。
未だ、刺青男の始末が達成されていないのは何故なのか。

宝具、スキル、ステータス、etc………
あの殺した少女から様々な情報を得たのだが、バーサーカーによって体調悪化は引き起こされているのでは。
英治は考え、念話とやらを試みているが。未だハッキリとはしない。
英治なりの念話がバーサーカーに伝わっているか定かではないからだ。

授業開始五分前であったが、次の教科を担当する教師が教室に現れた。
英治はそれを待ちかねており、タイミングを図って教師に話しかける。

「先生、おはようございます」

「遠野……なんだか顔色が悪くないか?」

「少し寝不足みたいで……それより、生徒がまた行方不明になったと聞いたのですが。本当ですか?」

英治も詳細な情報は知らないが、噂で耳にした話を小声で尋ねる。
生徒会に関わっていた事もある英治の人柄が功を呼んだか、教師も渋々ながら小声で返答してくれた。

「あまり大事にしたくないんだがな……
 恐らく、例の殺人鬼の仕業なんじゃないかって職員会議では話し合ったところだ」

「あの……他のクラスの出欠状態ってどうなってるんでしょうか?
 このクラスは幸運にも欠席者はいないんですが。やはり、殺人鬼の被害者も学校内に多数出ているんじゃないかって」


988 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/02(月) 23:01:05 hLdLyZGE0
すると、教師は笑顔で不思議な事を言う。

「いやぁ。欠席者は『三人しか』いないよ! 風邪をひいたっていう兄弟二人と一年生一人だけ!!」

「………えっと、つまり行方不明者や殺人鬼の被害者を除いて欠席者『三人』……ということですか?」

「え?」

「…………? あの昨日も行方不明になった女子生徒がいますよね」

「おお、よく覚えているなぁ。一昨日の放課後から行方が分からなくなった子が一人、確かにいるよ」

「彼女は戻って来たのですか? ええと、彼女のような行方不明者を含めたら欠席者は何人程度なんです??」

「んん? だから欠席者は『三人』だけだよ」

英治が噛み合わない会話に、ただならぬ異常を感じたのだった。
一体どういう事なのか。
とにかく欠席した三人――兄弟と一年生の三人は、もしかすればマスターの可能性がある……

次の瞬間。
英治にすら予測できない事態が発生した。



                        !?



英治の体が唐突に倒れる。
一体何事かと、クラスメイトたちは全員茫然としてしまった。

バーサーカー・ジェイソンの宝具――――『13日の金曜日』。
この宝具はマスターの魔力消費が必要となる。
必ず、マスターの魔力に委ねられるものだ。
皮肉な、理不尽な結果とはいえバーサーカーは死に絶え、宝具が問答無用に発動された。
急激な魔力消費により英治の肉体は、何とか堪えたが……意識は飛ばすハメになってしまう。


「きゃあぁぁっ!?」

「おい、遠野? どうしたんだ――」

「ちょっと様子変じゃねえか、これ………」


英治の異常を近くで感じた教師の方は、急いで救急車を呼んだのだった――





【3日目/午前/葛飾区 不動高校】

【遠野英治@金田一少年の事件簿】
[状態]魔力消費(極大)それによる体調不良、気絶
[令呪]残り3画
[装備]不動高校の制服
[道具]勉強道具、携帯電話(現在は学校に鞄の中にある)
[所持金]並の高校生よりかは裕福(現在は学校に鞄の中にある)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れ、螢子を蘇生する。
0:一体何が―――
1:学校内にいるかもしれないマスターに警戒。
2:SNSで情報を集めて見る手も……
[備考]
・役割は「不動高校の三年生」です。
・通達は把握しておりません。
・体調不良については過労のようなものと思い込んでおります。
・聖杯戦争については大方把握しております。
・刺青の男・バーサーカー(アベル)が生存していることと、新宿区で事件があったのを把握しました。
 フードを被ったサーヴァント(オウル)と桐敷沙子の存在を把握しました。
 イニシャルが『S・K』である桐敷沙子に関する情報を得れば、彼女の始末を優先するかもしれません。
・バーサーカー(ジェイソン)に対して不信感を抱き始めました。
・葛飾区内にある病院に搬送される予定です。


989 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/02(月) 23:02:55 hLdLyZGE0
投下終了します。タイトルは「ハイリスクハイスクールの交錯」です。

続いて、ルーシー、ひろし&アダム、今剣&与一で予約します。


990 : ◆As6lpa2ikE :2016/05/03(火) 01:08:27 JT7F/Bl20
すみません、トド松の予約を取り消します(カラ松&アサシン、二宮飛鳥&アサシンの予約は続行します)


991 : ◆iptsD/oRxI :2016/05/03(火) 20:42:20 H8eK2MP.0
ジャック・ブライト&キャスター(西行寺幽々子)
バーサーカー(ジェイソン・ボーヒーズ)
を予約します


992 : ◆CKro7V0jEc :2016/05/05(木) 02:56:48 YfXuNqzc0
俺は虚無聖杯を書きたかったが、
遠野先輩以外のキャラがどうしてもわからなかった
そこで俺は考えたのさ
だったら、遠野を予約すればいいってね!

というわけで、2スレ目を埋めるついでに、遠野英治を予約します。


993 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/05(木) 22:57:53 5.bIBJIk0
感想投下します。

>痛物語-イタイモノガタリ-
まさか本当にカラ松 A GO GO !が登場するとは……しかも、この過程でカラ松が痛々しくもネットで晒されて
マスターとして把握されてしまいかねませんね。少々今後が不安です。
しかも同盟先もいささか不穏です。ここは明さんがしっかりしなければならないかもしれないです。
一方の飛鳥もあるNPCの存在で、どうするべきか思案しているのでしょう。
相方の曲識はリードしてくれてはいるのですが、飛鳥の行動次第では主従間で何か起きそうです。
投下ありがとうございました!

そして、ホット・パンツ&アクア、エミ&ブルーベルで予約します。


994 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/08(日) 16:03:49 uYnDpeG60
アベル、沙子&オウル、メアリー&アイザック、駿河&マダラで予約します。


995 : ◆iptsD/oRxI :2016/05/10(火) 22:44:21 147yUY.60
申し訳ありません
完成の目処が立たないため、予約を破棄します


996 : ◆3SNKkWKBjc :2016/05/11(水) 22:28:37 gLuLofbQ0
予約破棄了解しました。

私の予約にバーサーカー(ジェイソン・ボーヒーズ)を追加します。


997 : 名無しさん :2016/05/14(土) 19:28:14 MvjGH9LY0
うめ


998 : 名無しさん :2016/05/15(日) 14:31:59 PgMz01kE0
埋め


999 : 名無しさん :2016/05/17(火) 02:08:28 5b.d9aiY0
う↑め↓


1000 : 名無しさん :2016/05/17(火) 02:17:39 KSAJy0kc0
うめ


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