三人目ちゃん悪堕ちその後+二人目ちゃん堕ち過程
Skebのご依頼で制作させていただきました。
タイトルの通りです。
今回新しく三人目ちゃんに「参月(みつき)」という名前を設定しました。制作上やりにくかったので…七人目ちゃんに続いてネームドになったのはこれで二人ですね。
二人目ちゃんの堕ち過程はワード数的に入れさせていただきました。
●この文章作品について
可能であれば挿絵……というほどではないんですけど簡単なイラストを足したいと思っています。FANBOXのコンテンツが無いのでそちらで公開する予定ですので、お待ちください。
●オルフェノク関連の作品について
FANBOXとXで実施中のアンケートで要望を募らせていただきました。たくさんのご回答ありがとうございます。
希望されるエピソード、好まれているキャラについてある程度指標は得られたので、それを受けて創作をさせていただければと思います。大変お待たせして申し訳ありませんが、いましばらくお待ちくださいませ。
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『侵入者を検知、侵入者を検知』
『危険度レベル:Bと断定、各員は規定に従い早急に対処せよ』
『繰り返す――』
廊下に鳴り響く警告音、赤く輝きながら回るランプの光が照らす中で男たちが走っている。五人のチームらしく先頭と殿が周囲を探りつつ安全確認、間の三人はしきりに耳元から伸びるマイクへと現状を報告していた。各々が銃器を携え顔面や全身を覆うアーマーを装備している姿を見るに、常人のそれどころか明らかに特殊な訓練を受けた者だということが解るだろう。
「見つかったか?!」
先頭の男が焦りの色を隠さずに吠える。
「まだだ、もう少し……」
「早くしろ!あれからもう四日だ、参月に何かあったら…!」
「っ、来た!この先、二ブロック超えた後の部屋に反応がある!」
言葉を遮った四番目の男が手元の端末を操作すると、五人の顔の前に見取り図が表示された。そのうちの一部屋が赤く強調されている。ここが目的地だ。
「よし、時間も無い、とにかく急ぐぞ!!」
「――見つけた、侵入者だ!殺せ!!」
号令をかけた途端に、アナウンスに従ったのだろう職員たちが通路の先から立ち塞がるように男たちの行く手を阻む。先頭に立っていた侵入者の男が他の四人の前に躍り出たのと、職員達がハンドガンを発砲したのは同時だった。
放たれた弾丸は何も穿たない。
紅く輝く光の壁が五人の前に展開され、それに全て阻まれている。
「邪魔をするなッ!!」
先頭の男が翳した右手を振るうと光の壁が消え、その後ろから連続して重い発砲音が連続して響いた。侵入者の扱う銃器は職員達のものよりも明らかに口径が大きく、本体そのものの大きさもまた倍以上ある。軽装な職員達では一溜まりも無かった。
それから三度発砲音が続いた後には、もう行く手を阻む者は居ない。五人の侵入者達は一気に目的地へと駆け出した。
『さて……どうなるかな』
その様を、監視カメラの映像で確認している男が一人。
男の前には館内の全てが定点で映し出されているモニター群、その内の一つが侵入者たちの姿を捉えていた。
にやりと笑う男は別のカメラに視線を流す。他のどれとも違う、一つだけ動きの無い映像を映したもの。
それこそが、侵入者たちの目指す部屋だ。
ロックがかけられたその扉が外側から強引に四角に切り抜かれたのを見て、男は更に笑みを深くする――
――侵入者たちは遂に目的地に到達した。
広々とした部屋の壁にはいくつもの機器やモニターが設置されている。赤い警告灯はここでも点いているが、それが無ければ白一色の清潔感すら感じられるような装いだ。だが侵入者達にとって一番重要だったのは、
「参月――!!」
両手首を虚空に固定されて吊られる幼い少女の無事についてであったろう。
少女の出で立ちは男たちの知っているものでは無かった。白い襦袢に薄い橙色の袴と同じ色のリボンをつけたものではなく、二の腕と股間部までを蒼いボディスーツに覆われ、太腿のあたりまでの長さのソックスを履かされている。それだけではない。両耳を覆う機器に、後頭部から伸びる何らかの部品、両手には指貫の手袋が嵌められ、柔らかな笑みを湛えていた表情は力無く目を閉じ苦しそうに歪んでいる。見るからに衰弱している幼気な少女の姿に、男たちの視界が警告灯の光よりも赤く染まった。
ただ、それでも五体満足であることは不幸中の幸いと言えるかもしれない。何かしらの処置をされていることは間違いないが、それでもまだ希望はあるはずだと思える分には。
「ぅ…う……?」
自分の名前を呼ばれ、意識を幾分か覚醒させた少女が目を開く。自分がもっと小さな頃から知っている声がする。少しずつはっきりとしてきた視界の中に認めた人影に、その人相により意識を向けて、やっと少女は事態を吞み込んだ。
「だめっ!にげ、にげて…っ!!」
「何を言ってる、今すぐお前を連れて帰るんだ!」
「そうだよ参月ちゃん、安心して。すぐに終わるからね」
いくつもの魔法陣のような複雑な紋様が空中に浮かび上がると、同時に浮かんだコンソールじみた操作盤を動かしていく技術屋めいた男が落ち着いた声で――いや、落ち着かせたい声で言った。
焦燥に駆られる手を努めて冷静に動かしていくと、展開していた紋様が白い輝きと共に参月の身体を取り囲んでいく。
だが。
バ ヂ ィ ッ !!
「~ッ!!」
少女の身体に電撃が奔った。
青白いスパークが空中に迸り、幼い子供の意識と脳を焼く。身体を大きく揺らした少女の顔は苦悶という表現では足りないほどに一瞬歪み、再び脱力する。先ほどよりも更にだらりと身体を吊り下げられたまま、蒼いボディスーツから放たれはじめた同じ色の輝きに包まれ始めた。
「ぁ……、は、…だめ………だ、」
焦点の定まらない瞳で虚空を見つめていた少女は、それでも自分ではない誰かの為に既に消えかけている力を振り絞る。ほんの僅かにボディスーツの輝きを押し留めるように薄い橙色の光が少女の素肌から溢れ、精一杯の抵抗をしてみせたのだ。完全に押し留めることはできていないが、それでもほんの少しの猶予を稼ぐくらいはできる。
バ ジ ッ ! !
そうはならない。
少女の心を全て台無しにする電光が再び空間に一際強く輝いた。弛緩していた身体が外部からの電気信号によって一気に強張り跳ね飛び、少女が発していた温かな光は容易に吹き飛んで戻る気配すら無い。再び少女の全身を覆ったボディスーツのそれよりも深い色の輝きが強まりはじめるのと同様に、少女の身体にも変化が起きた。
ちょうど十を数えるほどの齢に相応しい背丈が僅かに上下に伸びている。幼さが抜けきらなかった肉体が、第一次性徴を迎えるかどうかといった身体つきに成長”させられていく”。
少女の口からは言葉にならない濁音と弱々しい声が入り交じりなら漏れていたが、電撃が奔る度に悲痛な叫びに強制的に取って代えられる。その声色も、加齢されていく肉体年齢に応じて成長し、より『女』として相応しいものになっていくのだった。
ヂ ヂ … バ ツ ッ ! !
一瞬のタメを置いて放たれた三度目の電撃、それを受けて少女の肉体は更に大きな変化を迎える。外見的には十五ほどの年齢のそれは、既に胸も尻も大きく実り始めた立派な女の身体と言えるだろう。
「…ッ!おい、なんとかならないのか!」
侵入者の男たちはなんとか眼前の現実を受け入れて対処せんと動いた。だが、どうにもならない。コンソールを操作していた男は苦虫を嚙み潰した表情のまま手を動かしているが一向に好転しない。それが何よりの返答である、ということだった。
他の男たちもまた両の手で印を結び、神聖なる力を以てせんとしたが少女の方は全く寄せ付けない。それらも全て青白い輝きが遮っている。
小さな女の子の肉体にフィットしていたスーツが成長していくそれに合わせて引き延ばされ、大きく豊かに実っていく乳肉のハリをしっかりと誇示していた。根本まで食い込むように身体のシルエットを浮き彫りにし、スーツの生地越しにでもはっきりとその重量感が伝わってこようというもの。鼠径部もまた同様に角度が激しい食い込みによって際立ち、身体の側面に回り込む生地の位置を考えれば尻肉も半分ほどしか覆いきれていないのだろう。見ているだけしかできない男たちが、自分たちの奥底で無意識に鎌首をもたげている劣情に気付くのはいつのことになるだろうか。
ぎち、ぎぎ……と生地が擦れる音や肉体の成長に伴う骨や肉の音が小さく聞こえる。無論、その間にも少女の苦しむ声と電撃が奔る音は止まっていない。だが、いや「だからこそ」と言った方が良いだろう。だからこそ、よりその音が目立って聞こえた。そしてそれが既に少女と呼べないほどに成長した参月の声を引き立てる。まさに相乗効果という言葉が相応しい調和がそこに在った。
短かった脚も、今はすらりと伸びて光を艶めかしく反射する白磁の肌が眩しいものに変わっている。その瑞々しい肉に膝上までのソックスが食い込んでおり、その様は「むちむち」という表現に相応しい。
スパークが断続的に参月の肉体から弾け、次第に強まっていく。溜め込まれるように奥へ、深くへ。
そして、「カッ」という短い音と共に、部屋一面を白色の輝きが埋め尽くした。
光が和らいで、男たちが視界を取り戻した時。
参月は完全に大人の女の姿に変わっていた。
開かれた瞳は元の空色ではなく、赤茶色。その所々にくすんだ緑と黄が機械的なノイズのように入り交じっており、元の少女の面影はもはや髪色にしかない。
「み、つき……」
名前を呟くしかできない男たちをよそに、参月の背後の壁から黒い箱型のユニットがアームによって運ばれ、腰に取り付けられていた器具に重い音を立てて連結した。女という動力を得たユニット、その側面に彫られた溝が蒼く発光して起動すると、緩やかにユニットに接続された薄茶色の円盤型装置が稼働して参月の斜め後ろの左右に広がる。
さらに、円盤の中心からは鋭く尖った爪のような機器が飛び出していた。機器に使われている薄い橙色は、先ほど参月が放っていた燐光の色にとてもよく似ている。そして、それらはぎちぎちとぎこちなく独立して動いていた。
まるで、”そこに意味が持たされているように”。
”そこに何者かの意志があるかのように”。
「――――ぁ……」
蕩けた目のまま舌を出して吐息を漏らす参月の表情はとても八歳のものには見えない。もうそこには元の彼女の意志などというものは見られない。肩、腕、足にもそれぞれ器具がアームによって取り付けられ、その度に熟れた乳肉がスーツの緩やかな締めつけに逆らって、たゆんと揺れた。
「はは、…ぁ――♪」
ギラついた視線を男たちに注ぎつつ、女は右腕を前に振り抜いて自身を吊り下げる拘束を容易く引きちぎった。左腕も同様にして両脚を地につけ、呆気に取られる男たちの方へと近づいていく。
自分たちの知っている子ではない。明らかに違う。
だが、目の前で”そうなる”までの一部始終を見ていた。
男たちには即応できる筈も無かったのだ。
「参月ちゃ」
ん、と呼びかけ終える前に男の胸に薄い橙色が突き刺さっていた。
「……え」
口元から赤い血が零れる。いつの間にか警報器は動きを止めていたらしい。暗い室内で、胸と口から赤い液体が零れているのが色によって識別出来るようになっていた。女が笑みを浮かべながら視線を向ける様を最期の記憶にして、男はぐらりと後ろに倒れた。
赤黒い血に汚れた得物を元の位置に戻しつつ、女は指先をちろちろと舐める。下品で、目の前の相手を煽るような、誘うような、そんな仕草。次々に現れる『参月』がするはずのない行動が、表情が、男たちの絶望を一層深めていく。
彼らの知る少女はもう、どこにも居ないのだ。
「あはっ、あはは――♪」
声をあげて女は笑う。目の前の男たちを嬲ることができるのが楽しみで仕方がない。両の瞳に現れるノイズは更に強まって、何度も何度も瞳を横切る。そこから溢れるものが何なのか、何故溢れるのか、いやそもそも溢れている事実すら、女には解らない。
ただ、身体を動かして目の前の男たちを屠る。
それが自分の役割なのだから。それが自分の幸福なのだから。
笑いながら涙を流す女は、楽しげだった。
『くくく…、成功だな』
モニターでその様を確認していた男は、満足気に笑って部屋を後にした。
その手に、『AO計画』という八枚のファイルを携えながら。
*********
「ここがそうなのかい?」
「はい、そうです…」
山中に在る洞窟で、女子高生二人が会話を交わしていた。一人は高身長で短髪のいかにもな美形のイケメン、もう一人はその後輩らしいロングヘアのいかにもか弱いお嬢さん、といった感じだ。
後輩によると心霊スポットであるこの洞窟で知人が何人か姿を消している、という話らしい。それを気にして共に調査をしてほしいと誘われ、先輩としては後輩を助けてあげようという親切心でそれを快諾したのだった。
懐中電灯を手にして先頭を行く先輩の後ろから、後輩はおっかなびっくり付いてくる。時間は放課後、夕方に差し掛かる頃になるだろうか。
「でもここは行き止まりで、それにそこまで深くなかったと思ったけどなぁ」
「先輩は以前にここに来たことが…?」
「ああ、あるよ。これでもヤンチャしててね、あちこちで色々と探検してるのさ」
意外かな?と問いかける笑顔に、後輩は苦笑で応えた。別に違和感も無いし正直それくらいはしているだろうと思っていたからだ。
ごつごつとした岩でできた足場を頼りにして歩を進めるその姿も慣れたもの、といった様子なので余計にそう思うだろう。
「だから安心して、きっと君は守ってみせるさ。もちろん、お友達もね」
片目を閉じて唇に手を当てる姿は実に絵になっている。普段からこういう言い回しやポーズを取っているのを見かけるため、これが自然体らしい。
暗い不気味な洞窟の中で、しかも事前に何かが起きているという噂のある場所にあって、不安を取り除いてあげたいという気遣いに心が温かくなった。
後ろに回されたその手を改めてぎゅっと握りながら、二人は奥へ奥へと進んでいく。
「やっぱり、行き止まりだね…」
開けたところに出て、先輩は呟いた。懐中電灯を上向きにして地面に置いたり、高い位置に掲げてみたりして空間の広さを確認しながら、通ってきた道以外に行き先は無い。どこかに隠れられるような場所も無い。穴も無ければ登れるような取っ掛かりも無いし、天井自体もだいぶ低い。完全に手詰まり、どん詰まりだった。
「で、でも奥まで行った人たちを入口で待ってた人がそのまま帰ってこないって言っているんですよ?」
「うーん……イタズラをしているんでなければ、と信じたいけれどね。それに、そこまでの長時間をこんなところに隠れるって言うのは無理があるよ、ここまでも一本道だったからね」
「あ…うう、そう、ですが」
思わず正論を呈してしまった。さらに不安を強めてしまってどうする。先輩としては安心させなければならないというのに。
「…いや、でもまだやりようはあるさ。やるだけはやってみよう」
苦笑気味に後輩に声をかけた。舌で指先をぺろりと舐めて濡らすと、壁際に向けてゆっくりと翳していく。
「……何をしているんですか?」
「風さ。通り道があるのならこれで解るはずだからね」
「あ…なるほど」
後輩もまた同様に指を翳してみることにした。懐中電灯の光から出ない程度の距離に離れて、ゆっくりと動く。
「! せ、先輩」
反対の方を回っていた後輩から声がかかる。語調を考えれば事態の好転が見込めるかもしれない。
近寄って同様に壁に指を翳すと、ほんの微かに風を感じた。向こう側に何かしらの空間があるのだろう。
「うん、良いね。問題はここからどうするか、だけど……準備してきて良かったね。少し離れてて」
背中のリュックからツルハシを取り出すと、手慣れた手つきで目算を立て、勢いよく振り下ろした。硬い音が空間内と奥に向かって響く。手応えからしても、その音からしても、答えは明白。
「おっ、当たりだねこれは。よーし、どんどん行ってみよう」
それからは何度も何度もツルハシが石壁を穿つ音が響いた。
額に汗を滲ませながら、先輩は腕を振るう。後輩はそれの邪魔にならないように石壁を照らす。少しずつヒビが入り、僅かに穴が開くとそれをさらに拡張するべくヒビに沿って再び振り下ろす。
それを何度も何度も続けていった――
「ふう、もう大丈夫そうかな」
どうにか一人程度なら入れそうな大きさの穴が開いたところでようやくツルハシを手から離し、後輩の方へと向き直った。リュックにツルハシを戻してから懐中電灯を受け取ると、少しだけ疲れた様子でペットボトルに口をつけて喉を潤す。
「ここからは危ないから少しずつ間を空けて付いてきた方が良さそうかな、いい?」
「は、はい…」
「じゃあ先に通るから、合図をしたらおいで?」
足元を確認しながら穴の奥を照らして、先輩は歩を進めていく。懐中電灯を向けているのにも関わらず穴の奥はとてつもなく暗い。下に向かって穴があるようにも見えかねない。ゆっくりゆっくりと元居た空間と穴の境目をくぐり、その先へ。
足を踏み入れた。
「 」
空間から音の無い声がした。
「 ?」
自分の口から声が出なかった。
そもそも、懐中電灯の光ごと視界が全て黒に染めらている。
後ろを振り向く前に、自分の身体を闇が包み込んで奥へと凄まじい力で引きずり込んでいく。
深 く へ 。
深 くへ 。
深くへ。
『おぉおぉ……これが贄かえ』
気を失った女を見て闇は云う。目の前に浮かんだ女はその意識を完全に奪い去られ、目は開いているが光が無い。
服は全て剥かれ、背丈に見合わない小ぶりな肉付きの身体を闇が這い、品定めするかの如く肌に陰りを作っている。
『精悍な顔つきじゃが、身体が気に食わぬな……依り代にするならば好きにすればよいか』
不満の感情が残る声色で、然し笑みを含んだそれが見えない口を開いた。
『では、いただくとするかの』
女の肉体の四肢を闇が包み、耳穴と口から体内へと侵入する。
紫の色合いを交えてより濃くなっていく闇が次第に形を変えて四肢の肌を食む。
侵し、食い物にするかの如く女の柔肌を呑み込み、膝までを覆い尽くした両脚は女の半身以上に巨大。三本の強靭な指に供えられた爪は黒い肉体とは正反対に白い。女の身体の背面は全て闇が凝固した肉に覆われ、前面にすら化生の顎の如く肌へと食い込んでいる。
なだらかな丘に過ぎぬ乳房は熟れて膨張し、その肉厚な果実もまた形成された顎がその口内に挟み込む。一定の間隔で並ぶ白い牙が乳房に突き立てられ、痛々しくも肉が食い込む様には見る者の嗜虐心を煽るだろう。
両脚よりも女の肌の露出が少ない両腕は左右非対称。右腕は怪物の頭部の意匠が与えられた二の腕らしき部位が目を惹く。肘が存在しないほどに短く、供えられた昏い青色の手には指も無く爪がそのままその役割を果たしていた。黒い肉には不釣り合いな黄色の一本角が、一際”怪物の頭部”という意匠を誇示する。左腕はそれに引き換え意匠が希薄で、右腕に比べれば細く長く、指が備えられている程度の特徴しか無い。
短い黒髪と端正な顔面をも闇が半ばほど覆い、肉と鎧になり醜悪な怪物の輪郭を形成する。その表面には右肩の角と同色の三つの角、もしくは爪か。体内へと侵入した闇が頭部から漏れ出し女の毛先を舐めつければ、首ほどしか無い筈のそれが量を増し優に背中の中ほどまで伸び、薄暗い緑へと色を変じる。
不意に、左肩に女の頭部と同等の大きさの紫炎が燃え盛った。中から応現したのは牛の頭部を象った骨。その眼窩に燃え上がった紫炎が収束し、轟と勢いを増せば余剰が女の背中から大きく強く火の粉を散らした。
その芯に揺らめくのは火種であって火種でない。紫炎そのものに注視すれば、そこに見えるのは一つの瞳。
炎の中に、確固たる意志の表象が在る。
『くかか、これで構わぬ構わぬ。佳い姿じゃわ』
瞳が細まり、女の口も動かぬというのに声が響く。
哀れな女の肉体を手に入れ、魔なるものが嗤っている。
『此度の女の魂は美味じゃったなぁ……何奴かは知らぬが儂に贄を捧げるとは感心じゃ。どれ、このまま現世へと繰り出すか』
左腕と右腕を前に突きだし、壁を掴む。
愛おしくも忌まわしい闇の中から、遂に出る時が来たのだ。
『くく……愉しみじゃのう。 お お 、 愉 し み じ ゃ』
そして、この日新たに二人の生徒が行方を晦ますことになった。
一柱の『ナニカ』を世に現すための生贄として。