エコシステム

2024.06.21 19:00

創業160年、倉敷の街を支える「商店」6代目アトツギの事業転換の決断

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今回の「セトフラ」ゲストは、若林平三郎商店・心囃子(岡山県倉敷市)の若林 美樹さん

スタートアップとアトツギベンチャーが交差し、旗を立てる挑戦者を瀬戸内から応援する新たな経済番組「Setouchi Startup Flag」(通称・セトフラ)。

瀬戸内エリア内外の起業家やアトツギをゲストに招き、瀬戸内・中四国特化型ベンチャーキャピタル「Setouchi Startups」の共同代表、藤田圭一郎と山田邦明がVC目線でゲストのビジネスストーリーを深掘りします。

今回は、倉敷の美観地区で創業160年という歴史のなかで事業を多様に展開することで地域と共に歩んできた若林平三郎商店・心囃子(倉敷市)の6代目アトツギ、若林美樹さんをゲストに迎えた回をご紹介。

代々続く会社の中で事業転換をするという決意やその推進の裏側など、アトツギとしてのリアルな経験談をお届けします。

家業に入って最初の仕事 下火だった居酒屋事業の立て直し

若林:若林平三郎商店・心囃子の若林美樹です。若林平三郎商店は、江戸時代後期から約160年続いていて、私が6代目です。代ごとに事業を転換しながら続いており、時代に合わせて新しいビジネスを作ることに挑戦し続けてきた生粋のアトツギベンチャーであり、ベンチャーマインドを持った会社だと私は思っています。

今の社長である父が様々な事業を展開していて、お酒や調味料の卸問屋をしていたところから始めた居酒屋事業が好調になり、子会社に切り離した会社が心囃子です。

売上規模で言うと、運輸事業部・飲食店・不動産の賃貸業の3つが主軸になっています。

藤田:多角的に事業を展開する中で、若林さんが家業に戻った当初は何をされていたんでしょうか。

若林:その時、居酒屋部門に関してはすごく業績が苦しい時だったんです。心囃子に会社を切り離した中で、トラブルがたくさん起きて、業績も地の底に落ちている状況で私は帰ってきました。その居酒屋部門の立て直しを一緒に帰ってきた夫と2人で任命されました。

3年ぐらいかけて業績を回復させて、状況的にはだいぶ上向いていました。でも、組織としてもやっとまとまりができてみんなも前向いたタイミングでコロナ禍に。居酒屋はお店も開けられないし、みんなには休んでもらうしかない状況になったんです。その時考える時間ができて、元々代ごとに事業を変えてきていることから、このタイミングで方向転換をするべきだと思い始めました。

実は、元々帰ってきた時点で飲食事業に全然興味がなかったんです。父には思い入れがすごくあるそうで、祖父から受け継いでいた卸売業の利益率が低くて苦しい時代の中で父は売り上げを伸ばしたけれど、やっぱりこの業界でやっていくのは大変だからと作った最初の事業が居酒屋事業だったんです。卸売業で怒られながらお金をもらうことをずっとやっていた中で、やっと見えた活路だったので、思い入れも当然あるしずっと続けてほしいときっと思っていました。

次ページ > 従来のやり方から大きな方向転換へ

文=西澤七海 編集=督あかり 写真=8bitNews

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2024.05.24 19:15

ビジネスがタブー視、教育業界に挑む26歳の学園長・無花果CEO

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今回のゲストは、NPO法人無花果 理事長 中藤寛人さん

スタートアップとアトツギベンチャーが交差し、旗を立てる挑戦者を瀬戸内から応援する新たな経済番組「Setouchi Startup Flag」(通称・セトフラ)。

瀬戸内エリア内外の起業家やアトツギをゲストに招き、瀬戸内・中四国特化型ベンチャーキャピタル「Setouchi Startups」の共同代表、藤田圭一郎と山田邦明がVC目線でゲストのビジネスストーリーを深掘りします。

今回は、瀬戸内エリアでフリースクールを運営するNPO法人無花果(岡山市)の理事長であり、通信制高等学園の運営やフリースクールのコンサルティングなどを手がける無花果inc.の代表取締役でもある中藤寛人さんをゲストに迎えた回をご紹介。

なぜ儲けることが難しく、どんな壁を乗り越えてきたのか──教育というビジネス展開が難しい領域のリアルと、次なるステップをお届けします。



本当に自走できるのか 怖さの中で進むしかない日々

藤田:本日のゲストは、NPO法人無花果 理事長、無花果inc. CEOである中藤寛人さんです。

山田:Forbes JAPANの世界を救う100通りの希望「NEXT100」特集のうちの1人に選ばれていますね。

中藤:普段はフリースクール「無花果もえぎ」と通信制高等学園の「無花果高等学園」として、小学生から高校生までが一緒の空間で学び合う場所を運営しています。

他にも、教員になりたい学生がフリースクールで学校の先生をしながら教員資格を取れる「無花果COLEGGE」を進めていたり、フリースクール立ち上げやコンサルティングを行う「無花果こはく」、総合型選抜入試を利用して子どもたちそれぞれが生きたいように生きていけるようにサポートする「無花果AO」を運営したりしています。

生徒と先生の信頼関係も築かれ、来年再来年も本当に継続していけると今やっと感じられています。

藤田:これまでは、来年にはどうなるかわからないぐらいの危機感を持ちながらやっていたのでしょうか。

中藤:活動をする中で、大体1年間でこのぐらいの金額がかかると言うのは見えていました。そこから、ここさえ乗り切れば自走していけるという数字が見えていたので、その金額分を資金調達してきましたが、株主にそう伝えながらも口座残高がずっと下がっていく怖さはありましたね。

それに加えて、生徒が増えるのが4月。3月ぐらいまで売上が来年度どれだけ増えるかほとんどわからないことも恐怖でした。

山田:フリースクールや教育の観点では、みんなお金の話をあまりしないですよね。

中藤:本当に語るのが悪だとされている感じはあります。

学校に説明をしに行くと、株式会社がやってるというだけで敬遠されてしまうぐらいの温度感があったりします。やっぱり教育は公的な部分が担っていくという意味が強く、フリースクールが営利目的じゃないかを気にされる方が多いです。とはいえ、今後も潰れずにやっていけるという説明も大事なので、その塩梅が難しいと感じますね。
次ページ > ビジネスがタブー視される教育業界

文=西澤七海 編集=督あかり 写真=8bitNews

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