日本の株式市場の主役は海外投資家だ。東京証券取引所が発表している投資部門別株式売買状況によると、東京証券取引所と名古屋証券取引所の全市場売買金額のうち60%以上を海外投資家が占めている。海外投資家が買う銘柄は上がりやすく、売る銘柄の株価は下がりやすいといえるだろう。海外投資家がこの半年に買った会社と売った会社、大量に保有している会社を最新データを使って調べてみた。
海外投資家の動向を知るには、会社の有価証券報告書(以下、有報)に記載されている外国人持ち株比率をチェックするのが王道だ(注)。前回の有報と比べれば、海外投資家が買ったのか売ったのかがわかる。有報は3月決算会社なら6月に閲覧可能になる。
これとは別に東洋経済は、半期ごとに上場企業の全社にアンケートを送付し、外国人持ち株比率を独自に調査している。この調査結果を使って有報よりひと足早く集計してみた。はたして海外投資家は昨年10月以降、どんな銘柄を買っていたのか? 今後の投資の参考になるだろう。
注:当サイトでもチェック可能だが、有料コンテンツとなっている
海外投資家が買った30銘柄
外国人持ち株比率が増えた上位30社は下表のとおりだ。収益を稼ぐのに自己資本をいかに効率よく使ったかを示すROE(自己資本利益率)は、田淵電機の61%を筆頭に10%以上の銘柄がズラリと並ぶ。営業増益率も、前期2ケタ増益となった業績好調銘柄が大半を占める。3月に海外投資家が高収益・好業績の会社を中心に新規投資をしていると話題になったが、この表からもそれがうかがえる。
増加率1位は3月に東証1部に新規上場したジャパンディスプレイだった。スマホ、タブレット向け中小型ディスプレーで世界首位の会社で、今年の大型IPOとして注目を集めた。公開価格900円を14.5%下回る769円で初値をつけた後、株価は底堅く推移していたが、4月28日の業績下方修正を受けて急落した。海外投資家には痛手となったはずだ。
2位の動画サイト運営会社のドワンゴは、大手出版社KADOKAWAとの経営統合のニュースが記憶に新しい。2月に香港のヘッジファンド、タイボーンキャピタルマネジメントが株を買い増している。
3位の竹内製作所は、ミニショベル主体の中堅建設機械メーカーだ。竹内一族のオーナー会社だが、2月に米国の資産運用会社キャピタル・リサーチアンド・マネージメント・カンパニーが発行済株式数の5.5%強を保有したと報告。2位株主の竹内明雄社長(5.5%)と並んだ可能性がある。
なお、増加率に「*」マークがついている銘柄は上場前のものと比較しているため、比率と増加率が一致している。海外投資家が多く買った新規上場銘柄と言えるだろう。
海外投資家が売った30銘柄
外国人持ち株比率が減った会社は下表のとおりだ。増加率に比べると減少率は高くない。この時期は海外投資家が大きく持ち株を減らした銘柄は多くないようだ。
1位のワコムはペン入力のタブレットで世界首位の会社だ。昨年5月に1523円の高値をつけた以降は、株価は軟調に推移しており、米国投資顧問のコロンビアワンガーアセットマネジメントは持ち高を減らしている。今年4月初に26週移動平均線の突破に挑戦したが、前2014年3月期決算が見通しよりも下振れて着地、あわせて発表した中期経営計画の達成後ろ倒しを嫌気してか、株価下落が加速してしまった。
海外投資家が多く保有している銘柄
当サイトでも、最新データを基にした外国人持ち株比率をランキングページで見ることができる。ただし、このランキングは、外国人持ち株比率のみで単純にランキングしているため、日本オラクルなどの海外企業の日本子会社が上位にずらっと並んでしまう。
ここではそうした会社を除外し、最新データを使って海外投資家が多く保有している上位10社を抜き出してみた。
海外投資家の動向を知るもう1つの方法
このランキングは各銘柄の表中の時点ベースのもの。古いといえば古い。もっと最新の動向を知りたいと思う人も多いだろう。
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