昨年7月の参院選広島選挙区の大規模買収事件で公選法違反罪に問われた河井案里被告(47)=参院広島=の第12回公判が23日、東京地裁であった。広島県安芸太田町の小坂真治前町長(71)が検察側の証人として出廷し、案里被告の夫で元法相の克行被告(57)=衆院広島3区=から違法性を認識しながら20万円を受け取ったと証言した。廿日市市議会の元議長藤田俊雄市議(69)も10万円の受領と違法性を認めた。
16日から始まった「被買収者」の証人尋問で、当時の首長の証言は初めて。小坂前町長は「予算獲得を陳情する立場。関係を損ねたくなかった」と説明した。
小坂前町長によると、昨年4月21日に自宅に来た克行被告が「保守系の票をうまく案分すれば(新人の案里被告が)当選できる」として支援を要請。帰り際に封筒を差し出してきた。違法と思い「いやいや」と拒んだが、「まあまあ」と押し返され、2、3回の押し問答の末に受け取った。
同町は、克行被告の選挙区である衆院広島3区内にある。現金を受け取った理由について「町長として町の課題解決や予算確保を河井代議士に要望してきた。この関係を崩したくなかった」と強調した。要望活動で上京した際に返却しようと封筒を持参したが、返す機会がなかったとした。
封筒はのり付けされたまま開封せず保管。任意聴取を受けた今年3月27日に検察官の前で封を開け、現金20万円を確認したという。4月に町長を辞職した理由については「もらうべきではないお金を受け取ったことが原因」と述べた。
自民党員でもある藤田市議は、昨年6月29日に自宅に来た克行被告から案里被告の応援を求められ「(現職候補を推す)党県連がいるので表立っては応援できないが、裏で応援する」と返答。その直後、案里被告のポスターなどを取りに車へ戻った克行被告から、10万円入りの封筒を自宅前の路上で渡されたとした。
違法と思い拒んだが「まあまあ」と押し返され、今後の陳情活動が難しくなることや周囲の目が気になり、受け取ったと説明。2日後の7月1日に案里被告の事務所に行ったが、克行被告が不在で返却できず、10万円は飲食代に使ったとした。反省の意味を込め、今年3月に自身が経営する会社の代表取締役を退任し、来年3月の市議選に立候補しないことを決めたという。
弁護人を解任した克行被告の公判は16日から中断。案里被告の審理が先行して進んでいる。
<クリック>昨年7月の参院選広島選挙区 自民党本部が改選2議席の独占を狙い、党広島県連の主流派が推す現職の溝手顕正氏(78)に加え、県議だった河井案里被告を擁立。野党系の無所属現職の森本真治氏(47)を含めた激戦となった。自民党本部は、溝手氏陣営分の10倍に当たる1億5千万円を案里被告と夫の克行被告側に提供するなど全面的に支援。森本氏と案里被告が当選し、6選を目指した溝手氏が落選した。
【詳報・案里被告第12回公判】
小坂前安芸太田町長証言<1>(自民党県連は)案里さんを応援していなかった
小坂前安芸太田町長証言<2>克行被告は二階幹事長が話されたメモを見せた
小坂前安芸太田町長証言<3>私の選挙の支援者が重なる。引き続き支援をいただきたい
小坂前安芸太田町長証言<4>違法性があると思った。二人きりになれず返せなかった
藤田廿日市市議証言<1>表向きは溝手さん、裏では案里さんを応援した
藤田廿日市市議証言<3>全額飲食に使った。案里さんへの選挙はがき記入とビラの配布をした
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