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使用済み核燃料、青森の中間貯蔵施設に初搬入 10月稼働

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小山堅さんの投稿小山堅

青森県むつ市の中間貯蔵施設を運営するリサイクル燃料貯蔵(RFS)は26日、東京電力柏崎刈羽原子力発電所の使用済み核燃料を搬入した。柏崎刈羽原発で保管する使用済み燃料を減らし、再稼働に備えるねらいがある。原発敷地外で使用済み燃料を保管する国内初の施設は稼働への最終準備に入る。

柏崎刈羽原発から金属容器(キャスク)1基を24日に専用船でむつ市へ搬出した。容器は直径およそ2.5メートルの円筒型で69体の使用済み燃料を収納する。二重のふたで放射性物質を閉じ込める。むつ市の港に着いたキャスクは陸路を経て、中間貯蔵の建屋に26日到着した。

東京電力ホールディングスと日本原子力発電が出資するRFSが中間貯蔵施設の運営を担う。事業開始に向け青森県やむつ市との間で安全協定を8月に結んだ。使用済み燃料の搬入を終え、今後は1週間程度かけて検査を進める。原子力規制庁による確認を経て、10月中に稼働を始める。

青森県の宮下宗一郎知事は搬入後の記者会見で、稼働開始に向けて「安全になお一層留意して取り組んでほしい」と述べた。

中間貯蔵施設は幅62メートル、奥行き131メートル、高さ28メートルと巨大な倉庫のような建物だ。電力などは使わず、自然対流による空冷でキャスクを冷やす。放射線はキャスクと建屋で遮り、最長50年間保管する。

東電は柏崎刈羽原発で保管する使用済み燃料を今回のキャスク1基に続いて2025年度に2基、26年度には5基を搬出する計画だ。中間貯蔵施設は288基、ウラン重量ベースで3000トン収容できる。2000トン収容できる2棟目の建設も予定している。

柏崎刈羽原発内の保管能力は逼迫している。容量全体に占める保管量は8割に達し、再稼働を目指す6、7号機は9割を超える。新潟県柏崎市の桜井雅浩市長は6、7号機の使用済み燃料に関し、貯蔵率を「おおむね80%以下にすること」を再稼働に同意する条件に掲げている。

今回は使用済み核燃料を搬出したのは4号機で、貯蔵率は68%から65%に下がる。中間貯蔵施設への搬出は、原発敷地内での保管能力に余裕を持たせる一歩となる。

原発内での使用済み燃料の保管能力は全国的にも限界に近づきつつある。関西電力は美浜原発など福井県内の3町で計7基を稼働している。使用済み燃料の蓄積ペースは上がっており、高浜原発では今の稼働状況が続けばおよそ3年後に満杯になる見通しだ。

電気事業連合会によると、国内全体では6月末時点で保管可能な容量のおよそ8割が埋まっている。使用済み燃料の貯蔵対策は喫緊の課題だ。中国電力は関電と共同で山口県上関町での中間貯蔵施設の建設を検討している。

むつ市の中間貯蔵施設に加え、電力会社が使用済み燃料の搬出先として想定するのが日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)だ。使用済み燃料からウランとプルトニウムを取り出して再利用する国の「核燃料サイクル」の中核施設に位置付けられている。

再処理工場は1997年に完成予定だったが、稼働のめどは立っていない。日本原燃は8月、24年9月末までとした従来の完成目標を断念し「26年度中」に延期した。完成延期は27回にのぼる。現在は原子力規制委員会の審査を受けているが、順調に進むか見通せない。

宮下知事は9月、知事と関係閣僚による「核燃料サイクル協議会」の開催を国に要請した。再処理工場の度重なる完成延期を踏まえ「核燃料サイクル全体への県民の信頼が揺らぎかねない事態だ。政府一体の取り組みを確認する必要がある」と述べた。

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    小山堅日本エネルギー経済研究所 専務理事 首席研究員
    ひとこと解説

    エネルギー安全保障の強化と脱炭素化の両立を追求するエネルギー転換を進めて行くにあたって、原子力への関心が世界的に高まっている。AIやデータセンターの拡大で電力場が大きく増大していく可能性も原子力の利活用に関する内外の関心を大きく高めている。再稼働や既存炉の活用、そして新設・増設、SMRなどの新技術への取り組みも動いている。しかし、発電オプションとしての原子力への期待が高まるほど、バックエンドも含めた燃料サイクル全体での取り組み強化が重要になる。今回の動きはその一歩であるが、今後、ますます燃料サイクル全体を視野に入れた政策的取り組みの強化が求めらえてこよう。

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