安倍晋三元首相の「国葬」、9月27日実施 政府が閣議決定
政府は22日、銃撃されて今月8日に亡くなった安倍晋三元首相の「国葬」を9月27日に日本武道館(東京都千代田区)で行うことを閣議決定した。葬儀委員長は岸田文雄首相が務め、費用は政府が全額負担する。元首相の国葬は、1967年の吉田茂氏以来、55年ぶりとなる。
松野博一官房長官は22日の記者会見で、国葬とした理由について、憲政史上最長の8年8カ月にわたって首相を務めたことや、国内外から幅広い哀悼・追悼の意が寄せられていることなどを改めて説明。葬儀の名称は「故安倍晋三国葬儀」とし、22日付で内閣府に準備を行う事務局を立ち上げたと発表した。
また、費用の財源や、形式については「一般予備費の使用を想定しているが、詳細は今後検討していく。無宗教形式でかつ簡素、厳粛に行う」と述べた。
政府は今回の国葬を、内閣府設置法で内閣府の所掌事務とされている国の儀式として実施するとしている。戦前は、「国民は喪に服す」と記した国葬令があったが、47年に失効。対象や形式を定めた法令はなく、吉田氏の国葬も今回と同様、当時の佐藤栄作内閣が総理府設置法に基づいて、国の儀式として国葬を閣議決定している。
一方、安倍氏に次ぐ7年8カ月首相を務め、ノーベル平和賞を受賞した佐藤元首相は、政府、自民党、国民有志の主催で一部国費負担の「国民葬」だった。国葬でなかったのは、明確な法的根拠がないことや野党への配慮、吉田氏と比較し、歴史的な評価が定着していなかったことなどが理由とされる。80年に死去した大平正芳元首相以降は「内閣・自民党合同葬」が慣例になっていた。
全額国費で賄われる一方、時の政権の判断で決まり、国会審議を伴わない国葬の実施には批判的な声が根強くある。松野氏は「国民の心情やご遺族の気持ち等も総合的に勘案をし、その都度ふさわしい方式が決められてきた」と説明。「様々なご意見があることは承知しているが、国葬儀は儀式として実施されるものであり、国民一人ひとりに政治的評価や、喪に服することを求めるものではない」と語った。
吉田氏の国葬では、学校などを半日休校にしたが、政府は今回、国民の休日にはせず、休校についても末松信介文部科学相が22日の会見で「今のところ全く決まっていないが、想定もしていない」と述べた。
文科省は、2020年の中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬の際、国立大学や都道府県教育委員会などに、弔意表明について知らせる通知を出している。こうした対応や、学校現場への半旗、黙祷(もくとう)の要請について、末松氏は「政府全体で検討した方針に沿って対応したい。今のところは全く決まっていない」と述べるにとどめた。
外務省によると、海外に国葬開催の通知を出すのは、日本と国交がある195カ国、台湾、香港などの4地域、国連などの国際機関。この中にはウクライナへの侵略を続けるロシアも含まれるという。(宮田裕介、野平悠一)
- 宮田裕介
- 文化部|メディア担当
- 専門・関心分野
- メディア、放送行政、NHK