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NHKラジオ国際放送”不適切発言”の謎

NHKの公式発表を中心に、報道記事も入れて時系列でまとめました。

8月19日(月)事件当日

▼13時01分-13時15分 ラジオの中国語ニュースで”不適切発言” 

NHKの短波ラジオ、衛星ラジオの国際放送、ラジオ第2放送の中国語ニュース番組で、中国籍のスタッフが原稿にない内容を読み上げました。「靖国神社で落書き」のニュースの後で、「尖閣諸島は中国の領土である」という内容の発言をしたとのこと。

中国語のニュース原稿はNHK World Japanのサイトに掲載されていて、末尾にお詫びがのっています。
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/zh/news/20240819_08/

読売新聞の記事(8月23日 22時02分)によれば、「職員はそのことに気付いたが、突然のことで発言を止めるなどの対応ができず、結果、発言は約20秒続いた」だそうです。

生放送中にアクシデントに気づいたのに、傍観してたってことでしょうか?

放送を中断したり訂正やお詫びをしたりせずに、垂れ流ししたというのは、不自然すぎる気がします。「中国語がわかる日本人職員のデスクと外部のディレクターが放送に立ち会っていた」とありますから、発言の内容は聞き取れたはず。内容の意味が分かるなら、何かしら手を打とうとすると思うのですが。

他にも不可解な点はあって、産経新聞の記事(8月19日21時58分)によれば、問題発言のあった「靖国神社で落書き」のニュースは、9項目のうち8つ目だったらしいんですよ。てっきり一番最後のニュースで起こったことだと思ってましたけどね。ということは、”不適切発言”があった後にもう一つ別のニュースを読ませて、そこで番組が終わったという、ずいぶん悠長な話になります。

産経の記事が本当なら、「立ち会った職員がその場で気づいた」というNHK側の言い分がますます嘘っぽく感じられてしまう。ぼーっとしていて気づかなかったか、事前に知らされていて意図的に手出ししなかったか、いずれにしても事態は深刻です。番組終了後にクレームを受けてはじめて気づいたという可能性すらある。

こういう内容を白昼堂々と公共の電波で流しているのだから、大騒ぎになりそうなものですが、そういう様子は見受けられず。ラジオのニュースってあまり聴かれないんでしょうか。中国語のわかる人たちの間では、話題になってたのかもしれませんが。

ネットメディア「MAG2 NEWS」の記事に、リアルタイムで放送を聞いてた人の話が載っています。伝聞なので若干信憑性に欠けますが、英語の発言もあったと書かれています。

たまたま当時の放送を聞いていた、本メルマガスタッフの知り合いの話によれば、さらに英語で「南京大虐殺、強制された慰安婦・性奴隷、731部隊を忘れるな」などとも述べていたそうです(「Remember Nanjin massacre,Remember forced comfort women,sex slave,Remember Unit731」などと言っていたとのこと)。

MAG2 NEWS『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』8月22日付の記事より

▼21時51分 NHKのNEWS WEBに記事を掲載

マスコミ各社もこの事件に気づいていなかったのか、報道しはじめたのは、その日の夜遅くになってから。21時51分にNHKのNEWS WEBで記事が出て以降のことです。

▼22時00分 ラジオ第一「NHKジャーナル」で報じる

https://www.nhk.or.jp/radio/ondemand/detail.html?p=L6ZQ2NX1NL_01NHKラジオ第一でもこの事件を報じました。NEWS WEBと同じ内容です。

▼時刻不明 プレスリリース①をNHK広報局が公表

「NHKラジオ国際放送などでの不適切発言について」
https://www.nhk.or.jp/info/otherpress/pdf/2024/20240819.pdf

……原稿を読んでいた中国籍の外部スタッフが、沖縄県の尖閣諸島について、中国の領土であると述べるなど、ニュース原稿にはない不適切な発言を
行いました。

同日にNHK広報局から、プレスリリースの第1報が出ました。この時はまだ具体的な発言内容は明らかにされていません。

8月20日(火)

▼13時21分 公式Twitterで告知

不祥事があるとNHKは、Twitterアカウント「どーも、NHK」で告知します。今回の事件については、プレスリリースが出た翌日の午後になってようやく告知がされました。SNSは24時間投稿できるのに、なんでこんなに遅いのでしょうか……。


8月21日(水) 

NHKに表立った動きはなし。他メディアの報道も少ない。


8月22日(木) 

▼15:00~16:00 自民党の情報通信戦略調査会

NHK稲葉会長が出席し、報告と陳謝。
→自民党のサイト https://www.jimin.jp/activity/?day=2024.8.22&info=2024.8.22-15:00-1

国会の会期中であれば、総務委員会でNHK党に追及されたり、本会議に証人喚問されたりしたのにね。残念ながら閉会中でした。

情報通信戦略調査会は自民党内の部会なので、詳しい情報は不明なのですが、野田聖子衆院議員が会長をやっています。同日の調査会ではNHKの不祥事の他に、SNS上の偽情報への規制強化が提言された模様。おそらくこちらの議題は、(”不適切発言”事件と違って)事前に決まっていたのでしょうね。https://x.com/noda_seiko93/status/1826580612570120266

おりしも政府が偽・誤情報対策に本格的に乗り出そうという時に、「情報空間の参照点」を目指す公共放送がとんでもない不祥事をやらかしてしまった。稲葉会長は議員の皆さんにこってり絞られたことでしょう。また調査会に呼び出されそうな感じです。

「調査会の大岡敏孝事務局長は「NHKの事後対応が不十分なので、改めて調査会を開いて説明の場を作りたい」と述べた。

2024年8月22日 17時23分 産経新聞のウェブ記事より

▼時刻不明 自民党の調査会後、稲葉会長が報道陣の取材に応じた

不適切発言の後半部分(英語)が明らかになりました。

事件当日の8月19日に出されたプレスリリース第1報では、尖閣諸島に関する中国語の発言部分だけに触れていました。それ以外の発言部分は、初期段階では伏せられていたんです。この後半部分が初めて明らかになりました。

英語で「慰安婦を忘れるな」「南京大虐殺を忘れるな」という趣旨の発言をしていたそうです。

公表が遅れた理由について、朝日新聞の取材にNHKは「放送を通じて主張を拡散させたいという外部スタッフの目的を達成させてしまうことになりかねないと考え、対応した」と説明。

8月22日 18時00分の朝日新聞デジタルの記事より

NHKは意図的に後半部分を公表しなかった。政治的な判断というわけです。政権側からの指示があったのかと思ってましたが、そのあたりはどうなんだろう? 自民党の部会の議員がさらなる説明を求めているくらいですから、おそらくはNHKの独自判断だったのでしょうね。

後半部分の発言は前半部分にもまして衝撃的な内容でしたから、炎上やヘイトなど、社会的な影響に配慮して公表を控えていたのなら、納得がいきます。でも、NHKの説明はつじつまが合っていないんですよ。

「スタッフの主張を拡散しないよう、公表を控えていた」のはいいとして、「賠償請求をすることになったので、公表することにした」というのはよくわからない。法的な手段に訴えない場合、英語での発言内容は公表するつもりがなかったということ?

▼16時~18時 総務省の有識者会議

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/digital_hososeido/02ryutsu07_04000498.html

この日はたまたま「公共放送ワーキンググループ」が開催されていて、のっけからNHKの人のお詫びと釈明がありました。NHKの国際放送を強化していきましょう、という議論がされているところなのに、先が思いやられますね。有識者の先生方からも、この事件に関してご意見、ご批判が出ました。

NHKの人は、まだ調査中です、詳しいことが分かり次第お知らせしますなどと答えてました。でも同日の15時〜16時に自民党の情報通信戦略調査会で、NHK会長がヒアリングを受けていて、事件の詳細(発言内容の全容と経緯)を報告しているのです。総務省のWGの方では、それらの情報は伏せられていたというわけです。

▼時刻不明 プレスリリース②をNHK広報局が公表

NHKラジオ国際放送での中国籍外部スタッフによる発言への対応について
https://www.nhk.or.jp/info/otherpress/pdf/2024/20240822.pdf

この日、プレスリリース第2報が出ました。
当該スタッフへの対応として、厳重抗議と契約解除をしたこと、損害賠償請求することが書かれていました。刑事告訴も検討中とあります。再発防止策には、外国語ニュースの事前収録、AI音声の導入を検討などが挙げられています。

肝心の ”不適切発言” の内容は以下の通り。

「釣魚島と付属の島は古来から中国の領土です。NHKの歴史修正主義とプロフェッショナルではない業務に抗議します」(中国語)
「南京大虐殺を忘れるな。慰安婦を忘れるな。彼女らは戦時の性奴隷だった。731部隊を忘れるな」(英語)

8月22日付けのNHK広報局による報道資料より。強調筆者

太字にした部分が新たに公表されたものです。この時点では中国語と同様に英語も、原文は公表されていません。実際にラジオで放送された音声は中国語と英語なのだから、それを出さずに日本語原稿?だけを公表するのは片手落ちです。これも意図的な隠蔽なのかも。

▼18時21分 公式Twitterで告知

プレスリリース②を告知。稲葉会長のぶら下がり取材をもとに、各社の報道がとっくに出た後でした。遅い……SNSとは思えない遅さです。


▼時刻不明 プレスリリース③を日本放送協会が公表

8月22日にはNHK広報局によるプレスリリースの他に、初めて「日本放送協会」の名義でリリースが出ました。

NHKラジオ国際放送での中国籍外部スタッフによる発言の経緯と対応について」
https://www.nhk.or.jp/info/otherpress/pdf/2024/20240822_2.pdf

今までの経緯をまとめたもので、目新しい内容はこれといってありません。しいて挙げるなら、「チェック体制について」の箇所が少し気になりました。

ラジオ国際放送は17の言語で放送しています。中国語を含めて、職員やスタッフが必ず複数の目で事前に翻訳内容などをチェックするとともに、生放送中も複数で内容を確認しています。

8月22日付けの日本放送協会による報道資料より

これからそうします、ではなく、今までこの体制でやってきた、ということでしょうか? だとしたら、あんな事案が発生するのは不思議ですね。

▼20時52分 公式Twitterで告知

「どーも、NHK」でプレスリリース③が告知されました。

「NHKラジオ国際放送での中国籍外部スタッフによる発言について、経緯と対応をまとめました」
https://x.com/nhk_domo_nhk/status/1826588347609088484


8月25日(日)

▼時刻不明 プレスリリース④をNHK広報局が公表

「NHKラジオ国際放送での中国籍の外部スタッフによる発言について」
https://www.nhk.or.jp/info/otherpress/pdf/2024/20240825.pdf

この第4報は、8月22日付けの第2報を補足・訂正する内容ですが、また新事実が発覚しました。

中国語での発言内容に「翻訳の内容が一部欠落していました」とあります。「宣伝」の語が抜けていたようです。このプレスリリースで初めて中国語の原文が出てきます。

钓鱼岛及其附属岛屿自古是中国领土。抗议 NHK 的历史修正主义宣传和不专业作为。

8月25日付けのNHK広報局による報道資料より。強調筆者

太字部分の「宣传」が日本語の「宣伝」に相当する語です。日本語に翻訳する際に、この語を抜かしてしまったとのこと。ちなみに以下は22日に出ていたプレスリリース第2報の一部です。

「釣魚島と付属の島は古来から中国の領土です。NHKの歴史修正主義とプロフェッショナルではない業務に抗議します」(中国語)

8月22日付けのNHK広報局による報道資料より。

今回のプレスリリース第4報によれば、「NHKの歴史修正主義」ではなく、正しくは「NHKの歴史修正主義宣伝」なのだそうです。少し日本語が変ですが、要するに、NHKが歴史修正主義をプロパガンダしているという意味でしょう。

ちなみに、英語の発言の方は、依然として日本語の翻訳文のみが掲載されていて、英語原文は公表されていません。このような場合は原文と翻訳文をあわせて載せるのが通例ですが、NHKがそうしないのはなぜでしょうか。あれこれ突っ込まれるのが嫌だからかな。英語原文も公表してほしいものです。

そして、これよりもっと重大な事実が発覚しています。

また、外部スタッフはこの発言の前に「靖国神社で落書きが見つかった」というニュースを伝えた際、原稿にはない「『軍国主義』『死ね』などの抗議の言葉が書かれていた」という文言を一方的に加えて放送していました。

8月25日付けのNHK広報局による報道資料より

原稿にはない発言が、ニュースの後だけでなくその最中にもなされていたというのです。この時にストップをかけていれば、ニュース直後の中国語の発言も英語の発言も、流さずにすんだかもしれない。NHKのいうチェック体制が実際に機能しているのか、はなはだ疑問です。


【NHKの情報発信について】
不祥事を起こすたびに隠蔽体質だと批判されるNHKですが、今回ばかりはこのように情報を小出しにすることは、適切な措置だったように思います。もし当初からすべてを明らかにしてしまったら、騒ぎが大きくなっていたかも。SNS炎上に端を発していやがらせが発生したり、最悪の場合は英暴動のようなヘイト絡みの暴力事件が起こっても不思議ではありません。

今や公共放送ですらネット業務の必須化とかで、SNSのアテンションエコノミーにどっぷり浸かっているご時世なので、こういう事案でうかつにアテンションを集めて炎上してしまったら、何が起こるかわからない。

なにより一つひとつの事実が衝撃的なので、思わぬ社会的インパクトをもたらす可能性がある。できる限り少ない情報をあまり目立たないようにしぶしぶ?出していき、ほとぼりが冷めるのを待つという、NHKの不祥事における情報発信スタイルは、結果的に、”不適切発言”がもたらすネガティブな影響を抑制する効果を発揮しているのではないかと思ったりもします。

おそらくNHK側にはそこまでの深謀遠慮はなくて、もっぱら保身のための隠蔽に走っているだけなんでしょうけどね。

もちろん組織としての透明性に欠けているのは大いに問題だけれど、この件に関しては外交や安全保障も絡んでくることもあって、透明性を高めればいいというものでもなさそう。

今日はここまでにして、また続きを書くことにします。

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