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VOL. 01 禁断の愛と知らずに

運命は,ほんの小さな出会いで変わると,人はよく口にする.その言葉にしたがうなら,僕の運命は紛れもなく変わっていった.高校教師になった冬の朝,出会ったこの少女によって.

01月07日(木)

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■通学電車内

後ろで新聞を読むサラリーマンにイラっとする繭.

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■井の頭公園駅ホーム

生徒下車.

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改札を出ていく生徒たち.

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駅員Aに声を掛ける羽村先生.

羽村先生:「すみません」

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駅員A:「はい」
羽村先生:「鞄,落としちゃったんですけど」
駅員A:「ああ,あの手荷物預かり所でしたら」
駅員室の方を指さす駅員A.

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羽村先生:「いえ」
線路に落とした鞄を指さす羽村先生.
駅員A:「ああ,ちょっと待てください」

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道具を取りに行く駅員A.

羽村先生:「すみません」

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■井の頭公園駅の改札

改札を通る繭.

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駅員:「もしもし,定期券見せてください」

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繭,自分の定期を見て期限切れに気付き,『あ!』という表情.

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■井の頭公園駅ホーム

マジックハンドで鞄を掴もうとする駅員A.

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時間がなくて少し焦っている様子の羽村先生.
羽村先生:「すみません,急いでるんですけど」

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駅員A,鞄をホームに拾い上げる.
駅員A:「よっこいしょ」
羽村先生:「ああ,どうも,すみません」

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羽村先生,鞄を受け取ろうとするが,駅員Aが遮る.
駅員A:「ああ,いや,一応,ご本人のものか確認させて頂きますので」

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羽村先生:「え?」
駅員A:「どうぞ」
駅員室へ移動する駅員Aと羽村先生.

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■駅員室

繭が駅員Bと揉めている.

繭:「忘れたって言ってるでしょ」

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そこに,駅員Aと羽村先生が駅員室に入ってくる.

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駅員B:「この定期券,昨年末で切れてますよ.二週間も過ぎてますよ」
むっとした表情で駅員Bを見る繭.

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羽村先生の鞄の中身を確認する駅員A.

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駅員A:「『利己的な遺伝子』 随分難しそうな本ですねえ」
羽村先生:「なかなか面白いですよ」

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羽村先生の方をチラッと見る繭.

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駅員A:「これはなんですか」
鞄の中から瓶を二つとり出す駅員A.

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駅員A:「あっ」
駅員Aが手を滑らせて,ひとつを床に落としてしまう.

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慌てて拾い上げて,瓶を確認する羽村先生.

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羽村先生,駅員Aの持つもう一つの瓶も手にする.
羽村先生:「パロットフェザーとマクランドラ.観葉植物」
駅員A:「はあ.一体あなた,何の仕事してんですか?」

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一方,繭と駅員B.

駅員B:「生徒手帳を見せて下さい」

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繭:「どうして? 忘れたんです.生徒手帳」

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駅員B:「困ったね.それじゃ,この定期があなたのかどうか確認できませんね」

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駅員B:「その制服は,日向女子ですね」

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繭:「学校に連絡するんですか?」

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駅員B:「確認です」

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学校に電話をかける駅員B.

羽村先生が横から咄嗟に手を出して,電話のフックを押して電話を切る.

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駅員A:「ちょっとあなた何するんですか!?」
羽村先生:「いや,あの,つまり」
繭の方を指さしながら……

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内ポケットから封筒をとり出す羽村先生.

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不信な感じで様子を眺める繭.

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封書から書類を取り出し,駅員に見せる羽村先生.
羽村先生:「教師なんです」
はっとした感じで大きな目で羽村先生の顔を見る繭.

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駅員:「はあ?」
画面一杯に映し出される羽村先生の辞令.

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◻️辞令の日付が1月7日になってることに気付くなど.

■登校途中

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改札を出た羽村先生と繭.

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繭は羽村先生の斜め後ろを黙って着いて歩いている.

羽村先生:「最近の女子高生ってどうなのかなぁ」

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チラッと繭の方を見る羽村先生.

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羽村先生:「いや,この言い方はおじさんっぽいか.要するに務まるのかなあってちょっと心配でね」

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羽村先生:「ずっと大学の研究室にいて,教職,一応取っていたけど,まさか本当に教師になるって思わなかったからなあ」

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■学校正門

やっぱり斜め後ろをついて歩く繭.

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繭の方に振り向いて尋ねる羽村先生.
羽村先生:「あ,ところでキミ,何年生?」

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繭はチラッと羽村先生を見て,無視して行こうとする.

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『えっ?』という表情の羽村先生.

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追いかけて繭の前に出る羽村先生.
羽村先生:「今朝のこと,担任に言いつけようっていうんじゃないよ.経験あるから.暮れで切れてるの忘れて,新学期そのまま乗っちゃったって」

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それだけ言って,職員室に向かう羽村先生.
繭:「信じるの?」

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振り返る羽村先生.
羽村先生:「え?」

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笑顔になる繭.

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少し駆け寄る.

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繭:「先生はあっちからよ」
教職員の入り口を指さす繭.

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繭が指さした方を確認する羽村先生.

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羽村先生:「ああ,それじゃ」

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教職員ロッカーに向かう羽村先生.

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繭:「心配いらないよ」

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繭:「あたしがいるもん」

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振り向くまわりの生徒達.『ん?』という表情の羽村先生.

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繭:「あたしが全部守ってあげるよ」

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登校中のまわりの生徒たちが,『何よこの子』という感じで一瞬足を止める.繭は,そういうのお構いなし.

繭:「守ってあげる!」

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◻️この「守ってあげる」が最終話のラストシーンに効いてくるのか.

不思議そうな表情の羽村先生.

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運命は,ほんの小さな出会いで変わると,人はよく口にする.

■体育館

その言葉にしたがうなら,僕の運命は,紛れもなく変わっていった.高校教師になった冬の朝,出会ったこの少女によって.

3学期の始業式.

校長先生:「皆さん明けましておめでとうございます.ええ,新学期を迎え,三年生は進学就職にと,いよいよ本番を迎えます.くれぐれも健康に注意し,風邪などを引かないようにして下さい.そして二年生は,この三学期中に将来の目的を明確にとらえ,万全の体制で,三年の新学期を迎える事を希望しています」

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後ろの三年生三人組が繭を指さして何かひそひそ話している.

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それに気付いた直子が繭に確認する.

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直子:「繭,気をつけた方がいいよ」
◻️↑なんて言ってるのか聞き取れなかった.
繭:「何を?」

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緊張の面持ちの羽村先生.

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校長先生:「ええ,またこの春からは,新入生も入学してきます.現,一,二年生はその模範となるように学業やクラブ活動を努めて頂きたいと思います」

校長先生の挨拶おわり.
生徒の拍手.

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教頭先生:「それでは,新任の先生を一人紹介します」

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さっと立ち上がる羽村先生.教壇へ.
ざわついたままの生徒たち.

新庄先生が立ち上がり,羽村先生の横へ立ち,マイクを手に取って生徒たちを一喝.
新庄先生:「コラ!静かにせい!」

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一瞬で静まる生徒たち.

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繭が,期待の目で羽村先生を見ている.

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羽村先生新任の挨拶.
羽村先生:「生物を担当します.羽村,羽村隆夫といいます.よろしく,お願いしまあす」

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生徒の失笑.

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教頭先生:「よろしいですか」
羽村先生:「え?」
教頭先生の方を振り向く羽村先生.
羽村先生:「あ,はい」

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繭が拍手.

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つられるように,生徒みんなの拍手.

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席に着く羽村先生.

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教頭先生:「他に諸先生方,連絡事項はありませんか」

羽村先生の方を見ている繭.

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ふっと息を吐く羽村先生.

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■職員室

学年主任から二年生担当の教員の紹介.

学年主任:「それでは,こちら英語の藤村知樹先生」

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藤村先生:「よろしく」
一礼する羽村先生.

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藤村先生:「『お願いしまあす』は余計でしたね」

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学年主任:「羽村先生,羽村先生」
学年主任が羽村先生を宮原先生の方へ手招きする.

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学年主任:「こちらね,地理の宮原志乃先生.まだ独身です」

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宮原先生:「『まだ』は余計です」
学年主任:「失敬」
宮原先生:「宮原です.よろしく」
羽村先生:「あ,こちらこそ」
軽く会釈する羽村先生.

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学年主任:「それからと.あ,体育の新庄先生.新庄先生」

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新庄先生,自席で爪切り中.

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新庄先生の元へ歩み寄る羽村先生.
羽村先生:「よろしくお願いします」

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羽村先生を見上げて……

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無言で職員室をあとにする新庄先生.

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羽村先生に近づく藤村先生.
藤村先生:「彼とはあまり付き合わない方がいいですよ」
羽村先生:「は?」
藤村先生:「いや,色々と問題ありますから」

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学年主任:「あ,宮原先生,申し訳ないんだけどね,羽村先生をね,新校舎の生物室に案内してあげてくれますか」

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宮原先生:「私がですか」

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学年主任:「私,これから,ちょっと,校長室に用があるもんですから.それじゃあ,あの,羽村先生,あとは独身の宮原先生にね」
羽村先生:「はい」
職員室をあとにする学年主任.

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自席でタバコに火をつける藤村先生.
藤村先生:「腰ぎんちゃくが」

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藤村先生の方に振り向く羽村先生.

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宮原先生:「羽村先生」

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羽村先生:「あ,はい」

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■校舎前のレンガ歩廊

宮原先生:「生徒数は,約420人.『約』というのは登校拒否の子や,中途退学の子がいて流動的なんです」
羽村先生:「ああ」

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宮原先生:「偏差値レベルとしては,そうですね,まあ中の上というところかしら.多摩にあるうちの短大の方に,そのままエスカレーターする子がほとんどなんで,受験指導はしなくていいんですけどね」

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校舎からこちらを見る生徒たちを見る羽村先生.
宮原先生:「独特の匂いがするでしょう.若いフェロモンと柑橘系の匂いがごっちゃになったような」

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羽村先生:「はあ」
宮原先生:「あ,生物の先生でしたら,詳しいですね」

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羽村先生:「いえ」

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宮原先生:「女子高ですから」

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宮原先生:「PTAや学年会議で一番問題なるのが,生徒の性的な問題なんです」

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新校舎に入って行く.

■生物準備室

宮原先生:「他校の男子生徒との付き合いはもちろんですけど」

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宮原先生と羽村先生,生物準備室に入る.

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■生物室

生物室の方に先にきていた繭が,教壇の下に隠れる.

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■生物準備室

生物準備室のカーテンを開けながら話す宮原先生.
宮原先生:「特に生徒と若い独身の先生との恋愛」
羽村先生:「あ,いや,僕は」

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宮原先生:「薬品戸棚のキーと,備品の目録はそこに置いてあります.責任は羽村先生ですからよろしく」
羽村先生:「はい」

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備品目録を手に取る羽村先生.
宮原先生:「今朝,正門で生徒と何かあったらしいですね」

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羽村先生:「あ,いや,あれば別に」

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宮原先生:「早いんですよ.そういう噂って」

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無視するように生物室に移動する羽村先生.

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あとをついて生物室に入ってくる宮原先生.

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宮原先生:「前の先生も,私はよく知らないんですけど,そういうことでクビになったらしいです」

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黙ってうなずく羽村先生.

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生物室のカーテンを開けてまわる宮原先生.

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羽村先生:「教科書は,どこらへんまで進んでるんでしょうか」
宮原先生:「あぁ,泉先生っていうもう一人の生物の先生にお聞きになった方が」

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羽村先生:「ああ,そうですね」

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教壇に立つ羽村先生.
ペンが床に落ちる.

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チラッと下を見て,足下の異変に気付く羽村先生.

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人体模型のカバーを取り付ける宮原先生.

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宮原先生:「高校生くらいの女の子って,異性としての対象が限られているから,若い先生にそういう感情を持つってことがごく当たり前なんですね」
羽村先生:「ええ」

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足下に隠れている繭が,羽村先生のつっかけを脱がす.

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宮原先生:「恋愛に,どちらが加害者かというのもおかしいんですけれども,そういう視界の狭さに付け込むというのは,やはり,教師の方に問題があると思うんです」

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繭が羽村先生の靴下も脱がす.

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羽村先生:「ええ」

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手を洗いながら話す宮原先生.
宮原先生:「今,教師になるのも割と狭き門になってますよね.中学高校大学って勉強勉強って押し付けられて,限られた世界しか知らない人間がなってるから,社会的なモラルというのが欠如してるのね.一番なくちゃならないのに」

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繭のイタズラに耐えかね噴き出す羽村先生.
羽村先生:「ぶふ」

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思わず,羽村先生の方を見る宮原先生.

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取り繕って平静を装う羽村先生.

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お構いなしに猫の絵を描く繭.

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宮原先生:「羽村先生はどう?」
羽村先生:「はい?」

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宮原先生:「やっぱり,若い子の方が好き?」

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やっぱりお構いなしに猫の絵を描く繭.

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羽村先生:「あ,いや,普通が」

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チャイムが鳴る.
猫の絵完成の繭.

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宮原先生:「何かわからないことがあったら,私に聞いて下さいね」
愛想笑顔の宮原先生.
羽村先生:「はい」

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愛想笑顔でドアを開けて出て行く宮原先生.
それに愛想笑顔で答える羽村先生.

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ブファ!という感じで生物室のドアにもたれかかる羽村先生.

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繭,教壇下から出てきて立ち上がり,羽村先生の前へ.
繭:「宮原,先生に目を付けたみたいね」
羽村先生:「え?」

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繭:「あたしも行かなくちゃ.じゃあね」
羽村先生に手を振って後ろのドアに向かって歩く繭.

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羽村先生:「ああ,キミ」

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繭,立ち止まって振り返り,笑顔で自己紹介.
繭:「二年B組,二宮繭,出席番号22,O型,蟹座」

羽村先生:「あ,いや」

ペンを投げて返す繭.
繭:「またね」

生物室を出て行く繭.
自分の右足を確認する羽村先生.

右足の甲に描かれた猫の絵.

『なんなんだあの子は?』という顔の羽村先生.

■放課後の学校

帰る生徒達と部活に走る生徒達.

 

◻️参考情報)時計は1410あたりを指してますね.今回は妥当かと思いますが,ドラマ内の時計に惑わされない事が肝要です.

■放課後の職員ロッカー

藤村先生が生徒達に囲まれながらやって来る.

藤村先生:「ん? 結婚ねえ.まだまだするわけないじゃないか」
テニス部員:「よかった」

テニス部員:「先生のウチ,今度遊びに行ってもいい?」
藤村先生:「それはちょっとまずいんじゃないか.ねえ,羽村先生」
なぜか紛れ込んでいる羽村先生.
羽村先生:「はあ」

職員ロッカーにやって来る生徒たち.

生徒:「今度テニス部に入ろうかな」
藤村先生:「不純な動機はパスだ」
生徒:「純粋な気持ちですよ」

藤村先生:「どうだか」
生徒の頭をぺちっとする藤村先生.
『ひゃあ』っと嬉しそうな生徒たち.

そこに学年主任がやってくる.
学年主任:「コラあ!お前ら! 何,やってるんだ,こんなところで.たまってないで!」
退散する生徒たち.

羽村先生:「アイドル並の人気ですね」

藤村先生:「羽村先生」

羽村先生:「はい」
藤村先生:「こっちこっち」
羽村先生:「あ」

ラブレターがいっぱい入った藤村先生の下足箱.

羽村先生:「おぉ」

藤村先生:「そのうち先生のところにも入りますよ.これほどじゃないにしろ」

藤村先生:「頑張って!」

羽村先生の方をポンと叩いて行く藤村先生.

■昭和理科大

羽村先生,昭和理科大の研究室を訪ねる.


教授:「はい,ここで一枚撮って」
助手:「はい」

教授:「で,どうだったね,高校教師初日の感想は」
羽村先生:「ああ,いやまだ,授業をしたわけではないですから」

教授:「はい,チャービル終わり.試料,イチゴの成長点に替えて」

◻️セイチュウテン? 聞き取れんというか,専門語っぽくてわからん.

羽村先生:「あ,僕がやります」

羽村先生,交換作業.
教授:「いやあ,教師になるというの昨今なかなか大変なんだよ」
羽村先生:「そうらしいですね」

教授:「あそこの理事長というのは,高校の先輩にあたってね.ちょうどうまい具合に空きがあった」

羽村先生:「しかし,僕は」

教授:「わかってるよ.研究室に残りたかったというキミの気持ちはね」

教授:「前のデータ持ってきてくれるか」
助手:「はい」

教授:「しかし,ここの卒業生を優先してしまうというのも,わかってくれるだろ」

羽村先生の方をポンと叩く教授.
教授:「心配しなくても,春にはまた戻れるようにするから」

羽村先生:「本当ですか?」
教授:「おいおい,私が未来の娘婿に嘘を言うはずはないだろう」

羽村先生:「(交換)終わりました」
教授,遮光カーテンを引いて,モニター前の椅子に座る.

教授:「それに,キミにはひとつ,大きな借りがあるしな」
教授の斜め後ろに立っている羽村先生.
羽村先生:「論文のことでしたら,僕は決して誰にも」

羽村先生を睨む教授.

羽村先生:「もちろん,先生の助言があって書き上げたようなものですけど」

教授:「ほんの三ヶ月だ.万物の霊長たる人間の,若いDNAを観察すると思えば,あながち無駄な期間でもないだろう」

何か言いたいことを言い出せない羽村先生.

■放課後のテニスコート

藤村先生,テニス部部員の指導中.

藤村先生:「グリップの持ち方が違う」

部員:「はい」
藤村先生:「相手と握手するように」
部員:「はい」
藤村先生:「身体を大きく開いて」
部員:「はい」

藤村先生:「相手をよおく見てな」
部員:「はい」

藤村先生:「よおく見て,このふりかた.このふりかた」

部員:「はい,わかりました.ありがとうございました」

藤村先生:「はい,次!」

■放課後の2B教室

繭と直子が教室に残って内職.

直子は藤村先生のマフラー手編み中.

直子:「ね,この色,藤村先生に合うと思わない?」
繭:「ちょっと,じじくさいけどね」

ちょっと不満げに口をとがらす直子.

直子:「けど,赤や青じゃバッティングしそうじゃない.何たって競争率高いから」
繭は足の甲に猫を書いている.

繭:「あ,できた」

直子:「いいなあ,繭は.あの生物の先生は,今のとこライバルいないから」

繭:「そんなんじゃないよ」

繭の足の甲の猫を指でなぞる直子.
直子:「あたしも乗換えよっかな」

繭:「だめ」

直子:「冗談よ.あたしは藤村先生の方が断然いいもん」

教室入口の三年生に気付く直子.

三年生三人組が教室に入ってくる.

◻️登校時の正門前の羽村先生との一件で3年生にからまれるようですな.

直子:「なんか用ですか」
三年生A:「アンタは関係ないの」
三年生B:「いいからあっちいってなよ」

繭の横に座る三年生ふたり.
三年生Cが廊下の様子を確認して,教室の戸を閉め,繭に近づいてくる.
三年生C:「アンタさあ,挨拶もろくにできないわけ?」

三年生A:「そのくせ,朝から色気づいちゃってさ.新任と早速いちゃついてんのかよ」

睨む繭.

三年生B:「睨むんじゃないよ!」
三年生Bが,繭の顔をつかんで突き倒す.
直子:「繭」

三年生Aが,なぜか直子の首根っこをひっつかまえて繭に近づいてくる.

繭の足の甲の猫の絵に気付く三人.
三年生A:「なにこれ?」
三年生C:「バカじゃない.こいつ」

繭の足を踏みつける三年生B.

三年生C:「ガキ」

繭,机にあったハサミを掴んで……

足を踏んできた三年生Bの足をそのハサミでビッ!

三年生B:「ああー」

三年生Bを見上げて睨み付ける繭.

三年生Bの足から血が滲む.

◻️三年生ABCのセリフ,誰がどのセリフを言ったか聞き間違いしてるかも知れん.

01月08日(金)

■生物室

◻️5時間目の授業だが,学年クラスはよくわからない.
◻️参考情報)13時30分に終了.
◻️1993年頃って『土曜日は午前中だけじゃないの? 土曜の午後に授業はあったのか?』と思ったのですが,私立なら土曜の午後にもあったようです[要出典].

羽村先生の初授業.実際に採血して血液型の判定テストをしている.

羽村先生:「ええ,6人の人に血液を採ってもらいましたが,どうかな.どうかな.何型かわかった?」

ひとつのグループの顕微鏡をのぞく羽村先生.

羽村先生:「ちょっと,うん,これは君のか? ちょっと覗いてごらん」
顕微鏡をのぞく生徒.

羽村先生:「ええ,B型血清を混ぜた方に凝集反応が見られます.ということは,A型か……」
◻️『凝集反応』で合ってるのかどうかわからん.
グループの生徒:「AB型」
羽村先生:「そう,AB型」
羽村先生:「凝集原としてのAが存在するということだからね.ええ,次は」

◻️『凝集元』で合ってるのかどうかわからん(2回目

ここで授業終了のチャイムが鳴る.
羽村先生:「あれ,もう時間かあ」

羽村先生:「説明の方が長過ぎたかな.ええ,じゃあ,今日はこれまで」

生徒:「先生,まだノート取ってないんですけど」
羽村先生:「ああ,そうだったよね.ええ,じゃあ,班で一人の人がノートを取って下さい.あとの人は……」

クラスのみんな不満のブーイング「ええーー」

羽村先生:「顕微鏡と,スライドグラスを片付けてもらいます.顕微鏡はカバーを掛けてそのままに,ええ,スライドグラスの方はこちらのビーカーにお願いします」

■職員室

◻️参考情報)ホワイトボードの週間行事予定表:08日3学期始業式,09日授業開始.

授業時間を大幅に過ぎてしまった羽村先生が職員室に戻ってくる.

宮原先生:「どうでした,初授業の感想は?」
羽村先生:「あは,あっという間に時間が過ぎて,大幅に延長しちゃいました」

藤村先生:「生徒が一番嫌う授業だな.それは」

羽村先生:「ノートを取る時間を計算しませんでした」

藤村先生:「プリントを刷ってね,あとで配ればいいんですよ」
羽村先生:「ああ」

新庄先生:「そこまで生徒に媚びる必要ないやろ」

藤村先生:「新庄先生のように嫌われたくないですからね」

黙って立ち上がり職員室をあとにする新庄先生.

羽村先生の机の横にきて話し始める藤村先生.
藤村先生:「ほら,例えば,大学入試前だと三年生は,体育の授業なんか自習にしてもらいたいでしょう」

羽村先生:「ええ」
藤村先生:「そういった頭が働かないから嫌われるんですよ」
苦笑いの羽村先生.
藤村先生:「まあ,もっとも,生理的にも女の子にも好かれる顔とはいえないんでしょうけどねえ」

羽村先生に顔を寄せて,ひそひそ声になる藤村先生.
藤村先生:「前の学校ね,体罰が原因でクビになったらしいんですよ」

無言でうなずく羽村先生.
机をコンコンとノックして場を去る藤村先生.

■放課後の掃除時間

繭と直子,校舎前掃除中.

直子,からんできた三年生の報復措置を心配中.

直子:「けどさあ,あんなことしておいて,このままあいつら繭のことほっとくわけないと思うよ.先生に言いつけたりしても,その場しのぎみたいなもんだからねえ」

繭は掃除しながら聞いている.

直子:「あーあ,だから女子高入るのイヤだったのよねえ.なかなか彼氏もできないしさ」
繭:「共学なら出来るの?」

直子:「うん,こういうとき,共学だったら,カッコイイ先輩とかが助けて.あ,いるじゃない,そういう先輩」

繭の手を引いて走り出す直子.
繭:「どこ行くのよ?」
直子:「いいから早く」

■体育館

◻️参考情報)体育館の時計:1415.

体育館ではバスケットボール部の紅白試合中.

二階で見学している生徒に割り込む直子と繭.

直子:「ね,カッコイイでしょ.受験前だってのにクラブ続けてるんだから.気合いが違うわよ.佐伯先輩に言えば一発よ.誰もあの人にはなんにも言えないんだから」

練習休憩タイム.

繭の存在に気付く佐伯先輩.
佐伯先輩:「ねえ,あそこにいる子なんていう子?」

部員:「え? ああ,どっちですか?」
佐伯先輩:「背の高い方」

部員:「2Bの二宮って.確か『繭』ってなんか難しい字の名前で」
繭の方をじっと見つめる佐伯先輩.

■帰りの職員下足室

羽村先生の下足箱に手紙が入っている.それを手に取る羽村先生.

そこに新庄先生がやってくる.

新庄先生に気付いた羽村先生.
羽村先生:「あ」

羽村先生,新庄先生の下足箱をのぞき込むが,手紙の類いは何も入っていない.

新庄先生:「なんや」

羽村先生:「あ,いえ」

羽村先生の手の手紙にチラッと目をやる新庄先生.

羽村先生:「あ,そういえば,土曜の夜の」

◻️『土曜の夜』とは言ってますが,それだと,見回りの日は01月16日になり,あとのタイムラインが合わなくななります(というか,日程を詰め込むのに難儀する).なので,見回りの日を01月14日としました(またも強引).

◻️⇧ 当初,そう思ったのですが,羽村先生の辞令の日付に合わせて,始業式の日付を01月07日(木)にした結果,見回りの日を01月09日(土)に設定できたので,上記の記述は撤回します.

新庄先生:「あ,盛り場の見回りやろ.ついてないの,俺とペアなんわ」

羽村先生:「はい」

『なんや?』という目で見る新庄先生.
羽村先生:「あ,いえ」

羽村先生:「それじゃあ,お先に」

そそくさと帰る羽村先生.

■放課後の校舎前

◻️参考情報)一応,学校の時計は1555です.

繭は体育館の入口で羽村先生の出待ち.

校舎から出てきた羽村先生を見つけた繭.

繭につけられることになるとは露とも思わない羽村先生.

羽村先生を目で追う繭.

■井の頭公園駅

繭,向かいのホームで羽村先生をうかがいつつ電車待ち.

羽村先生は『利己的な遺伝子』を読みながら電車待ち.

繭はマンガ雑誌を読みながら羽村先生をうかがう.

羽村先生の乗る電車がホームに入ってくる.

繭が走って羽村先生のいる向かいのホームに移動.

電車に乗り込む羽村先生.

繭が隣のドアに乗り込む.

電車発車.

■下北沢駅〜羽村先生のアパート

繭が羽村先生をアパートまで尾行.

下北沢駅出口の階段を下りて行く羽村先生.

あとを小走りで追う繭.

踏み切りを渡る羽村先生と後をつける繭.

駅前通りの雑踏を様子を窺いながら後を追う繭.

商店街を歩く羽村先生.

その後を小走りで追う繭.

羽村先生,途中のコンビニで買い物.

見つからないように腰をかがめて店内を移動する繭.

化粧品棚で品定め中の羽村先生.

一方,繭は……

……お菓子の棚で『エリーゼ』を手に取り……

……店内移動.

『エリーゼ』をこそっと羽村先生の買い物カゴに入れる.

羽村先生レジへ.

レジで初めてカゴの中の『エリーゼ』に気付く羽村先生.キョロキョロするが……

結局会計.

繭は店外でその様子を見て得意そうに二コ.

繭,その後も付かず離れず羽村先生の後を追う.

羽村先生,自販機でビール購入.

繭,その姿を少し離れた所から『バーン』

家路を急ぐ羽村先生.

繭,自販機の酒屋で缶入りドリンク購入.
繭:「すみません!」

繭,羽村先生を見失いそうになり,走って後を追いかけるところ……

タクシーに轢かれそうになってズッこける.

タクシーの運転手:「気をつけろ!」

タクシーの急ブレーキの音を聞いた羽村先生が走って引き返してくる.

繭,引き返して駆け寄ってきた羽村先生を見て笑顔.

羽村先生:「大丈夫?」
繭:「うん」

腕を引っ張って繭を立ち上がらせる羽村先生.

羽村先生,繭の鞄を拾い上げる.

繭に怪我がない様子を見て,ふーっと息を吐く羽村先生.
缶ドリンクを拾って,『これ』っという風に見せる繭.

ちょっと笑顔の羽村先生.

羽村先生の横を着いて行く繭.

羽村先生:「ウチ,この近所なの?」
繭:「うん」
羽村先生:「何丁目?」
繭:「え,あ,4丁目」
羽村先生:「そう」

さらに着いて行く繭.
羽村先生:「4丁目,向こうだよ」
繭:「え,そうだよ」

後戻りしかける繭.
羽村先生:「さよなら」

繭,やっぱり羽村先生の後をつける.

■羽村先生のアパート

外階段を上った羽村先生,あとをつけてきた繭を見つけて溜め息.

羽村先生,繭を部屋に案内.
羽村先生:「どうぞ」

笑顔の繭.
繭:「お邪魔します」

リビングのファンヒーターのスイッチを入れる羽村先生.

羽村先生:「越したばっかで,まだ整理してないんだ.どうぞ」

食卓テーブルの椅子に座る繭.

鞄を置いて座り直す繭.

ヤカンに水を入れてお湯を沸かす羽村先生.

繭,部屋を見回す.

繭:「本ばっかりね」
振り向いてうなずく羽村先生.

羽村先生:「コーヒー1杯飲んだら,帰るんだよ」

肝心のコーヒを切らしている.
羽村先生:「あれ,切らしてるわ」

繭:「ジュース持参しといた」
繭,鞄からさっき購入した缶ジュースを取り出す.
羽村先生:「ああ」

羽村先生:「じゃあ,それ飲んだらね」

羽村先生が買い物袋から取り出したエリーゼを見た繭.
繭:「あ,そのお菓子好き」
羽村先生:「うん?」

羽村先生:「そ?」
羽村先生,エリーゼを繭に手渡す.

部屋を興味深そうに見回る繭.

繭,容器に入った石を見つける.

繭:「この変な石なあに?」

羽村先生:「ああ,これは月のかけらだよ」

繭:「月って,ウサギがお餅付いてる月?」

羽村先生:「そっ」
繭:「へえ」

繭,石を水槽のライトにかざして見ている.

羽村先生:「知ってる? 月はね,毎年少しずつ地球から離れてるんだよ」
繭:「え?」

羽村先生:「つまりね,地球の引力が年々弱まってるらしいんだ」

繭:「そうなるとどうなるの?」

羽村先生:「だんだん体重が軽くなって」
繭:「空を飛べるよね」

デスクの椅子に座る羽村先生.
羽村先生:「僕たちは死んでるよ.5000億年以上もしたら,もしか……」

繭,石の入ったガラスケースを水槽のガラスでコンコンする.
羽村先生:「あ」
羽村先生,『それはやめて』というふうに繭の方を見る.
繭,それを見て『わかりました』の頷き.

羽村先生:「もしかしたら,そうなるかもって話しだからね」

◻️水槽のガラスで石の容器をコンコンするのは,アドリブだったのでしょうか?

繭:「それでもいい.なんか嬉しいもん」

羽村先生,上着を脱いで,内ポケットから下足箱に入っていた手紙を取り出す.
繭がそれに気付く.

繭:「なに?」
羽村先生:「いや」
繭が羽村先生から強引に手紙を取り上げる.

◻️しかし,こういうときの繭の行動って,猫パンチ並に素早いな.

羽村先生:「こら!」
繭,封筒から便せんを取り出して読み始める.

羽村先生,溜め息.
繭:「村上博美.知ってる.C組の子だ」

羽村先生:「ダメだよ,悪いだろ」
手紙を取り返そうとする羽村先生.
手紙を握りしめて渡さない繭.

繭:「こーんな顔してんだよ」

◻️繭の変顔は,まあ,貴重かもですよ奥さん.最終回までに,あと二回ぐらいあるはずなので,興味ある方は探して見ましょう.
◻️コマ送りで見ると,もっと変顔なコマがあるのですが,本人の名誉のため……

何とか取り返そうとする羽村先生.
羽村先生:「いーから,こら」

羽村先生が手紙を取り返そうとして,繭が離さなかったので,手紙が破けてしまう.
羽村先生:「あ」
繭:「あ」

繭:「ごめんなさい」

結局,手紙と封筒を羽村先生に渡す繭.

ヤレヤレという感じで溜め息の羽村先生.
バツの悪そうな繭.

羽村先生:「もう帰った方がいいよ」

繭:「まだ全部飲んでないもん」

食卓の椅子に腰掛ける羽村先生.
繭:「先生,お腹空かない?」

繭:「あたしねえ」
自分の鞄からお弁当を取り出そうとする繭.

そこにタイミング良くインターホンが鳴る.
玄関の方を振り向く繭.

羽村先生が対応にでる.
羽村先生:「ああ,随分早かったね」
急に無表情になる繭.

千秋:「思ったより道空いてたの.車,外に止めておいても平気かしら」
羽村先生:「ああ」

千秋:「あら,どなたかいらっしゃるの?」
羽村先生:「生徒が遊びに来てるんです」

羽村先生:「こちら三沢千秋さん」
軽く会釈してリビングに入ってくる千秋.

羽村先生:「それと,にの,二宮……」

繭:「まゆ」
無表情で答える繭.
羽村先生:「あ」

千秋:「初めまして.いいの? 女生徒引っぱりあげて」
羽村先生:「そんなんじゃないですよ」

二人のやり取りを見ている繭.

千秋:「式場のパンフレット集めてきたの.隆夫さんそういうとこルーズだから」

羽村先生:「ああ」

千秋:「夕食ねえ,用意してきたの.どうせ何も揃ってないと思ったから,うちで作ってきたのよ」
無表情に二人の様子を見ている繭.

羽村先生:「こりゃ凄いや」

千秋:「よかったら,あなたも一緒にどう? いっぱい作ったのよ」
羽村先生:「ああ」

繭:「帰る」

鞄を持ってさっと玄関の方へ行く繭.
羽村先生:「おい」

繭を追いかけようとする羽村先生.千秋に断りを入れる.
羽村先生:「あ,ちょっとごめん」

■アパート前

小走りにアパートの外階段を下りて行く繭.

繭,鞄を千秋の車のボンネットに置き,車にもたれかかる.
羽村先生は,二階の廊下から繭を見ている.
繭:「結婚するんだ」

羽村先生:「ああ,うん」

繭:「好きなの?」

なぜかちょっと間を取る羽村先生.
羽村先生:「ああ」

行こうとする繭を見る羽村先生.
羽村先生:「気をつけて帰りな」

繭:「バカ」

走って帰って行く繭.

■羽村先生のアパート

玄関に入って,溜め息をついて,部屋に入る羽村先生.

千秋:「意外.若い子に人気あるのね」

羽村先生:「そんなんじゃないですよ」
紙袋に入れて持ってきたクッションをリビングで取り出す千秋.
千秋:「これ買ったの」

羽村先生:「ああ」
クッションに寝っ転がる羽村先生.
千秋:「さ,食べましょ」

起きがって椅子に座る羽村先生.
羽村先生:「よしと.ああ,こりゃ,ほんとにうまそうだ」

■アパート近くの住宅街

◻️割りばしが二本.まあ,そういう事よね.

羽村先生と一緒に食べるはずだったお弁当を野良犬とわけあって食べてる.

繭:「おいしいね」
わんこ:「きゃうん」

■二宮家近くの階段

自宅前の階段を上って家に帰る繭.

◻️しかし,こういう絵になる階段,よく見つけてくるものだと感心します.しかも住宅街の中にあるっていう.

■二宮宅

耕介,アトリエで彫刻製作中.

繭が帰宅.

アトリエの様子をチラッと見て……

無言で自室へ.

モデルの姿勢を正す耕介.

耕介:「妊娠してるねえ」
モデル:「え?」

耕介:「何ヶ月だ?」

モデル:「あの,あたし」
耕介:「どうして」
モデル:「契約違反なのはわかってます.すみません.けど,ほとんど見た目には」
耕介:「おめでと」
モデルの足をポンと叩く耕介.
モデル:「先生」

耕介,モデルが妊娠してると知り(契約違反),彫刻を引き倒して壊し始める.

繭,アトリエの音に気付いて,自室から小走りでアトリエに.

モデルが控室に逃げるように駆け込む.

ソファに腰掛けウイスキーを口にする耕介.

◻️参考情報)なお,家の時計は2150.

繭が彫刻の破片を拾い集める.

耕介:「明日,事務所に電話して,すぐに代わりの子をよこすように言ってくれないか」

無言で頷く繭.

耕介:「随分遅かったじゃないか」

01月09日(土)

■朝の登校風景

羽村先生出勤中.

■朝の職員下足室

羽村先生の下足箱に『助けて』の手紙が入っている.

手紙を見つつ,『どういうことだろうか?』という表情の羽村先生.

■盛り場のラーメン屋さん

羽村先生と新庄先生,夜の盛り場の補導見回り.

ふたり,ラーメンをすすっている.

羽村先生:「補導なんて,中学だけじゃなくて,高校でもあるんですね」
新庄先生:「マスコミでよう騒がれとるやろ.テレクラの売春とか.覚せい剤とか」

◻️テレグラム? テレクラじゃないの?

羽村先生:「まさか,うちの生徒がそんな」
新庄先生:「学年懇談会で決まったことや」
店の前の通りを生徒たちが通り過ぎて行く.

新庄先生:「あ,あれ,うちの生徒や」

新庄先生,ラーメンのスープをズズッとすすって,カウンターへ.
羽村先生:「随分変わるもんですね」
新庄先生:「味噌と,塩な.ごっそうさん」

羽村先生,自分の分のお金を出そうとするが,先に新庄先生が二人分の勘定を済ます.
羽村先生:「ごちそうさま」

ふたり,店を出る.

■繁華街

ふたり,通りへ出て,さっきの生徒達を探す.
新庄先生:「あいつらどこ行きよったんや」

ゲーセンに生徒らしい子を見つけた羽村先生.
新庄先生:「おい,うちの制服ちゃう.行こ」

通りを探す二人.
羽村先生:「なんか,刑事みたいですね」

さらにあちこち探す二人.
羽村先生:「新庄先生,ご結婚は?」
新庄先生:「離婚した」
羽村先生:「ああ」

■ファストフード店

繭と直子,そろそろお店を出るところ.

直子:「ねえ,うちのクラスの斎藤,この間,原宿でスカウトされたんだって.けどね,よく聞いたら,AVなんだってさ.あーあ,なんか面白いことないかな.ねえ,映画でも観る?」

繭が何かに気付いて……

店の入り口に走ると……

千秋の車が.

千秋と樋口が近隣の店から出てくる.

繭,店の入り口でふたりの様子をうかがう.

千秋と樋口が車に乗り込む.

その様子をじっと見ている繭.

走り出す車.

繭が歩道まで出て車を確認.

繭を追いかけて店から出てくる直子.
直子:「どうしたのよ」

車道まで出て,タクシーを止める繭.

タクシーに乗り込む繭と直子.

◻️しかし,こういうときの繭の行動の素早さよ.

■カラオケボックス

新庄先生と羽村先生,カラオケボックスの外螺旋階段を上って店内へ.

中ではノリノリで歌唱中.

新庄先生を見つけた男子「やばいやばい」
慌ててタバコや酒を片付ける仲間たち.

部屋に乗り込む新庄先生.
新庄先生:「おい,お前ら,うちの二年生やな.エエから来い」

生徒二人の腕を引っつかんで無理から連れ出す新庄先生.
生徒:「いや,もう離してよ!」

お構いなしに連れて行く新庄先生.
生徒:「冗談じゃないよ,みっともない」
生徒:「こんなとこまで,来るなんて,信じらんない」

生徒二人を店の外に連れ出した新庄先生.
新庄先生:「校則は知っとるやろ.喫煙は退学になるって」

男:「先生,そんな堅苦しい事言うなよ」
男:「今どき,中学生だってカラオケぐらい来るよ」
新庄先生:「こんなんとつき合うてんやったら,学校やめてまえ.ほら行け」

男:「ちょっと待てよ.こんなんってどういう意味だよ」
男:「教師がそんな事言っていいのかよ」

男を突き飛ばす新庄先生.
新庄先生:「やかましわい!」

男:「なにしやがるんだ,このやろう」
男を突き飛ばす新庄先生.

新庄先生:「エエからはよいけ」
男を突き飛ばす新庄先生.

羽村先生が止めに入る.
羽村先生:「先生,前の学校でも,暴力沙汰を起こしたんでしょう.こんどやったら,免許なくなりますよ」
新庄先生:「はなせ,ええから,はなせ」
男:「なに,ゴチャゴチャ言ってんだよ」

新庄先生に殴りかかる男.

◻️アカンアカン! 元本職に殴りかかったらアカンて!

やり返す新庄先生.

⇧羽村先生は,そのとばっちりを受けて鼻血☟

新庄先生,結局,相手の男子全員をフルボッコ.

■ファミレス(カフェ?)

繭と直子,ラブホテル斜め向かいのカフェで千秋の車を見張る.

直子:「いきなりタクシーなんか乗るんだもん,びっくりしちゃったよ」

カップルがホテルから出てくる.

直子:「あ,見て見てあのカップル.あのハゲオヤジじゃ,不倫というより,お金絡みだな,やっぱ.ねえ,今ってひと月の相場ってどのくらいなのかな?」
繭は笑ってる.

直子:「ねえ,いつまでいるの?」
繭:「先帰っていいよ」
直子:「つき合うよ.つき合うけどさ.家に帰っても面白いことないし.けど,繭にこんな趣味があると思わなかったな」

『あっ』という表情でホテルの出口を見る繭.

千秋と樋口がホテルから出てくる.

無表情にそれを見ている繭.

直子:「あれは割とノーマルのカップルって感じだね.うちですればいいのにね.ああ,中でカラオケとか歌っちゃたりとかしてるんだね.きっと」

千秋と樋口が車で走って行く.

怒りとショックが同時に来たような顔で見ている繭.

■新庄先生宅

羽村先生,見回りの帰りに新庄先生宅に寄る.

缶詰めをつまみに飲んでる羽村先生と新庄先生.

鼻にティッシュを詰めている羽村先生.

新庄先生:「災難やったなあ」
大きく頷く羽村先生.
羽村先生:「えぇ」

貴広君の足を見ている羽村先生.

新庄先生:「ああ,すべり台から落ちてしもうてなあ.複合損傷とかいうて,神経がいかれたらしいわ」
羽村先生:「はあ」

貴広君:「焼けたよ」

コンロのところに行く羽村先生.
貴広君:「自分で持って行けるよ」

こたつに持ってくる途中でこけてしまう貴広君.
羽村先生:「ああ,大丈夫?」
貴広君:「堪忍な」
新庄先生:「もう遅いんや.布団入って寝え,もう」

貴広君:「まだええやん.明日休みやねんから.なあ,ペンギンの話,もっと聞かせてえな」

羽村先生:「あ,いいよ.ね,もうちょっといいでしょ」
新庄先生:「うん.ほな,毛布取ってきて,冷えたらあかんやろ」
貴広君:「ほな,取ってくるわ」

松葉杖で器用に戸を開ける貴広君.

新庄先生:「貴広,すべり台から突き落としたん,俺の生徒やった」
羽村先生:「え?」
新庄先生:「信じられへんかもしれんけどな.これでも前までは,生徒に好かれる教師やった.生徒がタバコ吸うとったら,火ぃ貸したるぐらいの物分かりのええ教師やった」

黙って話を聞く羽村先生.
新庄先生:「生徒が登校拒否起こして,公園ブラブラしてても,黙って見逃すようなとこあったんや」

つまみの缶詰めを食べる羽村先生.

タバコで一服する新庄先生.
新庄先生:「新聞は書いとったわ.幼児虐待って」

黙って話を聞く羽村先生.
新庄先生:「俺があれの足,一生ダメにしたんや」

毛布を持ってきた貴広君.

新庄先生:「大人はな,子供をわかる必要ないねん.教師はな,好かれようとしたらあかん.嫌われるぐらいがちょうどええ」

◻️『わかる』と言ってるのかどうか,聞き取りに自信なしです.

羽村先生:「ああ,僕はずっと教師を続けるつもりはないんです」
鼻のティッシュを取る羽村先生.

ゴミ箱を羽村先生に差し出す貴広君.
羽村先生:「ああ,ありがと」
ティッシュをゴミ箱に入れる羽村先生.

羽村先生:「春には,研究室に戻るんです」

新庄先生:「ああ,なんや,そうか」

羽村先生:「ええ」
新庄先生:「それやったら,なんか,くどくど要らん事言うてしもうたな」
羽村先生:「いえ」
羽村先生に酒を注ぐ新庄先生.

羽村先生:「あ,ねえ,どこまで話したっけ」

貴広君:「えーっと」
羽村先生:「じゃ,ペンギンの話はそれぐらいにして,勇敢なミツバチの話しをしてあげるね」
貴広君:「うん」

新庄先生:「あ,それ,俺知ってるわ」
羽村先生:「え? いや,これは奥が深いんですよ.本当は」

羽村先生:「あの,ほら,よく蜂に刺されて,こんなに腫れる人がいるでしょ」
貴広君:「いるいる」

■団地下

外は雨が降っている.

羽村先生:「すみません.じゃ,傘,借りて行きます」
新庄先生:「お」

新庄先生に会釈して帰りかける羽村先生.
上から貴広君が呼ぶ声.
貴広君:「羽村先生!」

少し後戻って見上げる羽村先生.
貴広君:「また,遊びに来てな」

羽村先生:「ああ,また違う話を聞かせてあげるよ」
貴広君:「約束やで!」
指切りの小指を立てる貴広君.

指切りの小指に笑顔で応じる羽村先生.

羽村先生,もう一度新庄先生に会釈.
軽く手を挙げて応える新庄先生.

駅に向かう羽村先生.

■帰りの電車内

自分のかつて出会った教師たちの事を,思い出していた.しかし,それもほんの一瞬だった.理想の教師像を模索するなど,自分には,どうでもよいことだから.

空いた座席に座る羽村先生.

羽村先生,『助けて』の手紙をポケットから取り出す.

ちょっと溜め息交じり.

羽村先生,手紙を握りつぶす.

できれば無難に時を過ごし,春からは,自分の研究と,平凡で穏やかな家庭を築くんだ.平凡.それこそが僕の理想だ.優しいときの流れは,いつも,そこに用意されているのだから.

■アパート前

雨の中,羽村先生がアパート近くの坂を登ってくる.

繭,外階段の踊り場の下で雨宿りしながら羽村先生の帰りを待っている.

アパートの入り口まで来た羽村先生が,階段下で待っている繭に気付く.

羽村先生が帰ってきたのに気付いた繭が,階段の横にでてスッと立ち上がる.

繭:「待ってたの」

羽村先生:「キミ!」

びっくりした表情で繭の元に駆け寄る羽村先生.
羽村先生:「一体いつから?」

傘を繭の方へ掲げる羽村先生.
繭:「いっぱい待ったの」

羽村先生:「どうして?」

繭:「わかんない」

心配そうに繭の顔を見る羽村先生.

繭:「けど……」

繭:「会いたかったの」

繭:「先生に会いたかったの!」

思い詰めた様子で羽村先生の顔を見つめる繭.


サポートして頂けると,ベランダで踊ります.

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集合論の勉強を始めたところ,「集合と位相」というタイトルの教科書が件並み位相メインであり,集合論の項目が端折られていること,また,証明の省略やその読者への丸投げ,その上で解答を付けないことに違和感を感じて,自分用の教科書を書き始める.
VOL. 01 禁断の愛と知らずに|タナカ@数学で行こう
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