PyCon JPはいますぐ生まれ変わるべき
2024-09-24T15:51:30+0900
昨年からトラブルが続いているPyCon JPですが、9月27日のPyCon JP 2024を前にして、また新しい火種が生まれました。
2024年9月22日、PyCon JPの技術に対する不正の告発、並びに技術者と大衆に対しての警鐘(以下、怪文書2)というタイトルの記事が突如として公開されたためです。
この記事は、python_bokume2というアカウントで公開されていることから、およそ4ヶ月前の2024年5月31日にpython_bokumetsuというアカウントで投稿された採択されるプロポーザルを書こう!!(現在はアカウントごと削除されている。以下、怪文書1)を書いた人と同じ人物による投稿であることがうかがえます。
最初に記事に関しては、インターネットでいうところのいわゆる完全なる怪文書であったのに対して、今回の怪文書2では、具体的な登場人物の名前やSlackのログなど、実際におこなわれた内容のリファレンスが上げられており、タイトルもPyCon JPへの告発となっていることから、PyCon JPに対する明確な意見だという違いがあります。
ただ、この怪文書2の内容が指摘する内容は主に2023年に開催されたPyCon APAC 2023の出来事で、PyCon JP 2024開催直前に公開されたことについてはPyCon JPにたいしての攻撃的意思を感じざるをえません。
この件に関しては、個人的に色々と思うところがあったので、ブログの記事として自分の考えを残しておこうと思います。
なお、WiFi騒動の件については今回の件と一切関係がなく、WiFi騒動の当事者の方がこれみよがしにPyCon JPのFUDをおこなっていることは恥じるべき行為だと思いますので、もしWiFi騒動とごっちゃ混ぜにして考えている人がいるとしたら、それはいますぐやめるべきだと思います。
ちゃんとした意見があれば、自分の名前をだして意見を述べるべき #
まず、python_bokume2について思うところが3点あります。
- 匿名での意見はやめるべき
- python_bokume2という名前は悪趣味
- 登場人物の名前をマスクしているのに特定できる情報を入れるのは卑怯
大前提として、自分は匿名で投稿しておきながら、登場人物については記事中の情報から名前が特定できるように作成されており、僕としては卑怯かつ卑劣なやり方であるという認識を持っているということを明示しておきます。また、python_bokume2(以下、bokume2氏)というアカウント名は、一見して シュールさもありますが、あまりに攻撃的すぎるため、悪趣味だと言わざるをえません。
その上で、怪文書2にたいしての率直な感想ですが、タイトルに「告発」とセンセーショナルなワードが使われていますが、その内容の実態は単なる個人の感想であるため、タイトルを「PyCon JPのプロポーザル選考にボランティア参加してみた件について」のようにした上で公平な議論を提示すべきだと思いました。
ですが、bokume2氏が技術至上主義をかかげてプロポーザル選考に参加したものの、実際の選考プロセスにおいて、非常に内輪的な判断を見せつけられ、失意により闇落ちして怪文書作成に情熱を注ぐ怪文書作成マシーンに生まれかわってしまったとするならば、それは憂うべき事態であると感じました。
PyCon JPの公式発表は不十分 #
さて、PyCon JPは上記の怪文書2を受けて、翌日の2024年9月23日にPyCon JPにおける登壇者採択に関する見解という公式な発表(以下、公式発表)をおこないました。
公式発表では、徹底して怪文書2についての内容にはふれず、主に以下の2つの主張を説明する内容となっていました。
- PyCon JP 2024は透明性・公正性を重視したプロセスで選定している
- 特定の企業や個人を優遇する選定は一切おこなっていない
ただ、この主張だけでは、私達は何も悪いことはしていないので信じて欲しいとお気持ちに訴えているだけであり、残念ながら怪文書2が指摘した内容の否定にはならず、これを見た多く人達の印象としては、何も言ってないに等しいと感じたのではないかと思います。
bokume2氏も同日にPyCon JPが不正をしていない理由(以下、怪文書3)を公開しており、これだけの怪文書を書く怪文書作成マシーンを止めるには至らないのは明白でしたし、今後第2、第3の矢が放たれることも可能性として十分高いと思います。
それではPyCon JPはどうするべきだったのでしょうか。
今回の件はただの内部衝突 #
冷静な目で見れば今回の件は本来はただの内部衝突です。
プロポーザル選考のプロセスにおいて、内部レビュアーと外部レビュアー、そして決定責任者との間に不和があり、結果として怪文書が公開されるに至ったという理解です。
つまり、PyCon JPの対応として必要なのは、本来的にはこの不和を起こしているbokume2氏との対話で、怪文書が公開された後であっても、内部から見ればbokume2氏が誰かは一目瞭然のはずなので、ちゃんと対話した上で、その内容を公式に発表するべきだったと思います。
怪文書2が公開されてから、翌日の公式発表というのはスピード感としてはなかなか良かったのですが、スピード感を優先するのであれば、「現在、bokume2氏と対話中であり、話し合いが終わったらきっちりと報告します」でよかったのではないでしょうか。
ですが、関係者であるkoyhogeさんが怪文書を「誹謗中傷」と表現していることから、PyCon JPの中では、bokume2氏は内部ではなくすでに敵対者として扱っていることが見てとれます。
つまり、今回の発表は不和を起こした元内部のbokume2氏との対話が成り立っていないということを示すものであり、ガバナンスが機能していないということを外部に知らしめるだけだということをPyCon JPは理解するべきでしょうし、koyhogeさんには奥歯に物が2つくらい挟まったと感じているのであれば、個人的には率直な意見を言ってもらいたかったところです。
透明性をうたうなら選考時のSlackログを公開するべき #
公式発表ではPyCon JP 2024 プロポーザル採択の裏側という記事を参照して、PyCon JP APAC 2023と同様、PyCon JP 2024は透明性・公正性を重視したプロセスで選定していると述べているわけですが、もし、本当に透明性・公正性を重視したプロセスで選定しているのであれば、PyCon JP 2024 プロポーザル採択の裏側みたいな記事ではなく、PyCon JPはAPAC 2023プロポーザル選考時のSlackログを公開して潔癖を証明するべきだと思います。
すでに怪文書2で一部のSlackログが公開されていますが、切り取りのスクショであるため、第三者から見ればbokume2氏の一方的な意見だけ伝えられた状態となっているので、不正がないということであれば、すでに一部が公開されていまっている以上、公式からすべて公開してしまえば良いと思います(もちろん個人情報や秘密情報があるのであればそこはマスクして)。
逆に考えられる最悪のケースは、このSlackログに外部に見られるとまずい発言があり、それを隠蔽しようとした場合です。証拠隠滅などをはかろうとした場合、おそらくbokume2氏はすでにすべてのログをひかえているはずなので、証拠隠滅をトリガーとして逆に公開するというアクションを取る可能性も考えられます。
証拠隠滅などせずにログを公開するのがもっとも透明性の高いおこないであり、もしそこに何かしら公正性を欠くような発言が含まれているのであれば、それを素直に認めて謝罪することで、結果として周囲からの信頼性が高まる方向に進めるかと思います。
訴訟をにおわせるのは悪手 #
公式発表では「Pythonコミュニティの多様性と当法人の挑戦」という見出しの最後に、
私たちは皆様からの建設的な意見や提案を真摯に受け止め、コミュニティの成長に活かしたいと考えています。しかし、もし攻撃的な言動がエスカレートし、私たちやコミュニティの健全な運営が脅かされる場合には、残念ながら弁護士など専門家の協力を得て、法的措置を検討せざるを得ません。このような事態は避けたいと考えておりますので、皆様には引き続き、建設的なご意見でのご協力をお願い申し上げます。
という一文があるのですが、現代のリスクマネジメントでは、「訴訟のにおわせ」は僕の中では結構な悪手だという認識があります。
攻撃を受けてそれに対応するというのであれば、におわせる必要なく粛々と法的対応をすべればいいだけであり、訴訟をにおわせるのは、単純に相手を威圧することでしかないためです。
もし攻撃的な言動がエスカレートし、私たちやコミュニティの健全な運営が脅かされる場合
という条件ですが、例えばこの文章はどうとらえられるのでしょうか?建設的な意見や提案
の方に含まれるのでしょうか?法治国家において、訴える権利がある以上、それは本人達の匙加減ひとつであるため、この一文によって意見を出すことを萎縮する人もでてくるのではないかと思います。
ですので、やはりわざわざ訴訟をにおわせる必要はなかったと思います。
PyCon JPはいますぐ生まれ変わるべき #
Pythonという4大LL言語(Perl, PHP, Ruby, Python)の中でもっとも日本でマイナーだった言語の頃からコミュニティを支えてきた一般社団法人PyCon JP Associationの貢献はたしかに大きいものだと思います。
ですが、Pythonは機械学習という翼を得て、一躍時流に乗り、気がつけば日本でも一番人気のある言語の地位へと駆け上がりました。そして、それの人気を象徴するように、PyCon JP 2024のスポンサー企業はSilverが12、Goldが28、Platinumが3の計43社、そのスポンサーフィーの合計は資料の通りであれば2310万円となります。
このように、多数の企業がスポンサーを連ねる超大規模テックカンファレンスであるPyCon JPですが、このような状況の中でスポンサーおよびイベントの参加者は笑顔で参加できるのでしょうか。
PyCon JPのメンバー、参加者、スポンサー、ぞれぞれに知り合いのいる僕の立場から見ても、いまのこの状態は残念ながら心から楽しめる状態ではないと思います。それでは、どうすればすべての参加者が心から楽しめる状態になれるのでしょうか。
その大きな要因としては、PyCon JPが生まれ変わるということが必要不可欠だと感じています。そこで、PyCon JPがどのように生まれ変われば今後良くなっていくためにはどうすればよいのかについて私見を述べていきたいと思います。
PyCon JP理事会のメンバーを入れ替えて再出発する、あるいはPyCon JPは一度解散するべき #
リスクマネジメントの観点でいうと、怪文書1が公開されたタイミングで、すでに個人を特定できたわけなので、そのときに本気で動いて、きちんと対応をおこなっていれば、今回の怪文書2が公開されること自体を未然に防げたはずです。それができなかったのは、残念ながらマネジメント、つまりのPyCon JP理事会の落ち度だと言えるでしょう。
今後もっとPyCon JPをよくしていきたい、PyCon JPを守っていきたいと考えるのであれば、一般社団法人PyCon JP Associationは理事会のメンバーを入れ替えてゼロから再出発するべきだと思います。
@yutakashinoさんもこのように述べており、再出発は客観的に見て無茶な意見ではなく、かぎりなく現実的な解だと思われます。
なので、適切な理事会メンバーを集めて、その上で初心表明ができれば、一旦いま上がっている問題については鎮静化して、PyCon JPを応援してくれる人も増えることが十分期待できます。
ですが、もしそれが難しいのであれば、PyCon JPを一度解散してしまうのも手です。
PyCon JPの中から見れば、自分達がいなくなれば、Pythonコミュニティの発展がうしなわれてしまうと考えているかもしれませんが、外部から見れば、Pythonほどの言語であれば、おそらくいまのPyCon JPでなくても、すぐにまた新しいコミュニティが作られていま以上の盛り上がりを見せることも容易だと思います。
過去の実績は偉大ではあり、そのことについてのリスペクトは忘れてはいけませんが、同時に新しい光にバトンを渡して次の世代へと繋いでいくことも、先駆者の使命ではないでしょうか。
プロポーザル選定基準はどうすればよいのか #
今回の騒動で大きな論点となっているのはプロポーザル選考基準です。
怪文書が大きく注目されたのも、透明性と公平性をうたった選考基準に偽りがあるとうたった怪文書に一定の説得力があったためだと思います。
実際に僕もPyCon JPのプロポーザル選考の関係者から、プロポーザル選考は公平に選ばれるという幻想をもってしまっているレビュアーがいるけど、それは建前であって本音は別であるみたいなことを聞いたことがあります。この人の意見を真に受けるわけでありませんが、結局のところつまり、この問題の本質は、古参のPyCon JPのメンバーの基準と、新参の外部レビュアーの基準にギャップがあるにも関わらず、表向きには透明性・公平性をうたっていて、綺麗な部分のみをクローズアップしているのがよくないわけです。
つまるところ、プロポーザル先行基準について、僕の意見としてはこれでよいと思っています。
これを周知徹底した上で、できるだけ面白いプロポーザルを選びたいけど数が多過ぎるので、レビュアー各自が面白いと思うものを選んで代理でプレゼンしてください、というフローにすれば、ギャップは発生しなかったのではないでしょうか。
理想を高く掲げるのは大事かもしれませんが、もし現実がそうなっていないのであれば、できるだけ現実に寄せていくほうが、無用な隙を作って叩かれる心配もなくなり、健全な運営がおこなえるようになるでしょう。
怪文書2のC氏は自分の意見を言うべき #
怪文書2でC氏とされた人物は知り合いなのですが、個人が特定できる状態でここまで言われた以上、違う部分については素直に反論するべきだと思います。その主張が正しいと周囲に伝われば、PyCon JPへの見方も好転するはずです。
もしかすると、PyCon JP内でお前は何も言うなという箝口令がしかれているかもしれませんが、それは反町隆史のPOISONであり、言いたいことがあれば、箝口令など無視して当事者が発言することに価値があると思います。
もちろんこれは強制ではなく、そうすればいいのにと僕は思っているという意見を述べているだけです。
まだまだ若い上、色々な年長者とつきあっているため、年長者の振舞いを見ていて、同じように振る舞うのが正しいと思っているかもしれませんが、言うべきときに本音を伝える意義と勇気を持つことで、いまの限界を越えて成長できるようになるということをこの記事を通じて伝えておきたいと思います。
ハンロンの剃刀と今後への期待 #
この件について「ぶっちゃけハンロンの剃刀案件なんだとは思う」という意見を見ましたが、僕もかぎりなく同意です。
つまるところ、PyCon JPに別段の悪意があるわけでもなく、一生懸命走り続けた結果、いまこうなっているというだけにすぎないのです。
怪文書に踊らされてPyCon JPを攻撃するのは筋違いですが、PyCon JPも自分達は何も悪くないし攻撃されているだけと、もし捉えているのであれば、結局根本的な改善がなされず、今後同じような問題が出続ける未来が容易に見えます。
幸いにして、今回の件、いま時点では誰も大きな損失はしていないという認識です。ですので、これを好機ととらえて、PyCon JPが変わるきっかけにすることで、マイナスがプラスに転じる未来が十分あると思います。
技術者コミュニティで生きている身としても、今後より明い未来が到来することを信じて、このブログを公開したいと思います。
大変だと思いますが、みなさん頑張りましょう。