『人民の星』 5159号1面

ミートホープ事件 構造改革で「安ければよい」の行き着く先
 北海道苫小牧市の食肉加工会社ミートホープ(社長・田中稔)の食肉偽装事件は、対米従属のもとでの日本資本主義がいかに病んでいるか、また構造改革がいかに反動的なものであるかを暴露する事件となった。構造改革のもとで食肉加工産業においてもし烈な競争がおこなわれ、食品大手はミートホープなどの中小の食肉業者の商品を買いたたき巨額の利益をあげてきた。ミートホープもこの構造のなかで偽装による劣悪・安価な材料と低賃金で生き残りをはかってきた。だが、ついにかくしおおせなくなると企業は倒産し、労働者の全員首切りが宣言された。
 ミートホープ社がおこなった典型的な不法行為は「牛ミンチ」に豚肉や鶏肉、カモ肉などをまぜるというもので、〇六年七月からの一年間で五道県一六社に三六八㌧出荷されたという。七~八年前から恒常的にこうした偽装ミンチが出荷されていた。

大手食品会社が大量に仕入れる
 ミート社は一九七六年創業で、八三年ころにはやくも異肉混入などの最初の偽装をおこない、構造改革が本格化する一九八八年ころから食肉偽装がつよまり、小泉内閣登場後、産地偽装、賞味期限改ざんなどと手口も拡大された。苦情がでた商品はひきとって「過失」を主張して保険金をだましとった。
 ミート社と取引のあった企業はつぎのとおりである。
 道内では、ディスカウントスーパー大手カウボーイ、スーパー最大手のアークス、イオン、食品卸の日本アクセス北海道、冷凍食品大手のサンマルコ食品、日本冷食など。全国大手では、加ト吉、ニチロ、JT(日本たばこ産業)、味の素、明治乳業、紀文食品、日本水産、日本生活協同組合連合会、米久、ローソン、ケイエス冷凍食品などの名があがっている。

農水省など告発をにぎりつぶす
 偽「牛ミンチ」については〇六年二月にミート社元役員が、農林水産省北海道農政事務所にたいして内部告発をおこなった。牛ミンチの実物を持参しての告発だったが、農政事務所はうけつけず「具体的な疑義が特定できない」として放置した。
 しかし、食肉の専門家が見れば判断はむずかしくないはずで、業界ではうわさにさえなっていた。ミート社から牛ミンチを仕入れていた北海道の食品メーカーのある社員は「昨年、まがい物のミンチをつくっているといううわさを聞いた」と語っている。
 ミート社との取引が大きかった加ト吉は、同社でつかう肉の八割をミート社から仕入れるだけでなく、北海道の工場長が、安全性を確保するため廃棄する取り決めになっているコロッケのあまりものをミート社に横流しするという関係にあった。
 日本水産などは、業界内のよくないうわさがあったので、かかわりを恐れて昨年末に取引を停止していたが、おおかたの企業は、問題になるまでは安いミート社の食肉をつかおうという対応であった。

アメリカ産牛肉輸入で競争激化
 牛肉は一九九一年に輸入自由化されアメリカ産などの安い牛肉が大量に国内にはいり、価格競争が激化した。二〇〇一年には国内で初のBSE(牛海綿状脳症)が発生し、〇三年にはBSE汚染でアメリカ産牛肉が輸入禁止となった。BSE問題は一転して牛肉の消費量の低下をまねき、業界のいきのこり競争をいっそう激化させた。このなかで〇二年には雪印食品の国産牛肉偽装事件がおきている。
 〇六年にはアメリカ産牛肉が条件付きで輸入再開されたが、すぐさま危険部位に指定された骨片などの混入が発見されて、ふたたび停止となった。アメリカは猛烈な輸入自由化の圧力をかけ、いまでは牛の年齢に関係なく輸入せよと日本にせまっている。
 こうした構造改革のなかで、食肉加工業界も再編統合しなければいきのこってゆけないといわれ、中小のミート社は安価な別の肉を牛肉に混入したり、さまざまな偽装をこらして利益をあげ、延命をはかってきたのである。大手の食品会社はミート社の安価な肉をつかって利益を享受してきた。
 そして問題が暴露されると、大手食品会社は被害者のような顔をしてミート社との取引を停止し、つぎの卸売会社をさがすのである。
 農産物や食料品の輸入自由化をすすめれば、食肉産業の競争は激化し、「合理化」と原料価格をさげるための不法行為を必然的によびおこすのである。米日独占資本による輸入自由化と構造改革の政策がつづくかぎり、こうした食品業界の問題は再生産される。
 また、今回の問題は労働運動の課題もあきらかにしている。ミート社の本工、臨時の一〇〇人の労働者は、全国の勤労人民の食卓にあがる食材に古くなった肉をいれるなど健康を害するような危険なものを混入しての生産に従事させられてきた。しかし、こうしたミート資本のやり方と人民の根本的利益をまもるところから集団的組織的ににたたかうことができなかった。
 そして、さんざん抑圧され搾取されたあげく、会社廃業、全員解雇を通告され、ボロ雑巾のようにすてられようとしている。これらのことは、労働者が人民の利益をかかげて団結してたたかうことにのみ展望があることを教えている。




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