全盲の息子に付き添った母親死亡の事故 飲酒運転の被告に判決
去年(令和5年)、大阪・岸和田市で80代の母親と全盲の息子が飲酒運転の車にはねられて母親が死亡した事故で、危険運転致死傷の罪に問われた31歳の被告に大阪地方裁判所堺支部は、「飲酒運転を軽視する態度は明らかだ」として懲役12年を言い渡しました。
去年12月の早朝、岸和田市小松里町で、51歳の全盲の息子と、付き添っていた母親の大久保春江さん(当時82)が車にはねられ、大久保さんが死亡し、息子が大けがをしました。
この事故で岸和田市の無職、岩井拓弥被告(31)が、酒を飲んで車を運転して2人を死傷させたとして、危険運転致死傷の罪に問われました。
これまでの裁判で、弁護側は起訴内容を認め、「運転代行を呼ぶつもりだった」と主張し、検察は「新車を見せたいという理由で車で忘年会に向かい、朝まで酒を飲んだ」などとして懲役12年を求刑しています。
24日の判決で、大阪地方裁判所堺支部の武田正 裁判長は「事故を起こすまでの間にも蛇行を繰り返すなど、酒の影響で正常な運転ができないことを認識できたにもかかわらず運転を続けたのは危険極まりない」と指摘しました。
そのうえで「安易に自動車を利用し、飲酒運転を軽視する態度は明らかで、なんら落ち度のない母と全盲の子どもを巻き込んだ結果は重大だ」などとして懲役12年を言い渡しました。
【息子“母に報告したい”】
亡くなった春江さんとともに事故に遭った息子の大久保孝之さん(51)が判決のあと、取材に応じました。
孝之さんは、大阪市内の公園でマラソンの練習をするために春江さんに駅まで付き添ってもらう途中に事故に遭いましたが、けがの影響で、事故の記憶はないということです。
24日の判決について「家に帰ってから求刑どおりの判決が出たと母親に報告したいと思います」と涙を流しながら話していました。
また、被告に対しては、「事故に対して向き合っている姿勢が感じられません。飲酒運転は絶対しないということをしっかりと心得てほしいと思います」と訴えました。