柘植外務副大臣は先週、中国南部の深※センで日本人学校に通う10歳の男子児童が刃物を持った男に襲われ、死亡する事件が起きたことを受け22日から北京を訪れています。※「セン」は「土」へんに「川」。
柘植副大臣は23日、中国外務省の孫衛東次官と会談しました。
会談で、柘植副大臣は事件の動機を含む事実関係の解明と説明、それに日本人の安全確保のための具体的な措置を強く求めました。
また、再発防止の観点から、日本人学校に関連するものを含む根拠のない悪質で反日的なSNS上の投稿について、取締りを徹底するよう求めました。
さらに、柘植副大臣は日本人学校の安全確保のための対策の強化を日中両国が協力して進めていく必要性を強調しました。
これに対し、孫次官は遺憾の意を表明したうえで「児童はすべての国において優先的に守られるべき対象で、われわれは今回起きたことに驚がくしており、いかなる暴力にも断固反対し、断固取り締まる」と述べ、日本人を含む外国人の安全を守っていく考えを示しました。
中国 日本人学校の男児死亡事件 外務副大臣が中国側と会談
中国で日本人学校に通う男子児童が登校中に刃物を持った男に襲われ死亡した事件を受けて、北京を訪れている柘植外務副大臣は23日、中国外務省の幹部と会談し、動機などの解明のほか、根拠のない反日的なSNS上の投稿の取締りを徹底するよう求めました。
中国外務省「日本を恨むような教育はない」
会談について中国外務省の林剣報道官は23日の記者会見で「双方は今回の不幸な事件に適切かつ冷静に対応し、意思疎通を保って偶発的な個別の事案が両国関係に影響しないようにすることを確認した」と述べました。
また深セン日本人学校に多くの中国人が献花に訪れていることについて「多くの中国国民のありのままの感情や命への尊重の念を反映している」と述べました。
一方で、会談で柘植外務副大臣がSNS上での根拠のない反日的な投稿を取り締まるよう求めたことについては「中国には、いわゆる日本を恨むような教育はない。われわれは歴史を教訓にすることを主張している。それは、恨み続けるためではなく、戦争の悲劇が繰り返されないようにするためだ」と述べたうえで、日本と、戦略的互恵関係を推進し、建設的で安定した関係を築きたいと強調しました。
柘植外務副大臣 “容疑者の動機や背景に関する説明なし”
柘植外務副大臣は北京にある日本大使館で取材に応じ、事件について、会談した中国外務省の孫衛東次官から容疑者の動機や背景に関する明確な回答はなかったと説明しました。
また、根拠のない悪質で反日的なSNS上の投稿についても、非常に大きな問題だと指摘しましたが、中国側から取り締りを徹底するという明確な回答はなかったということです。
柘植副大臣は、中国側に対して、「再発防止のためにも、動機の解明は極めて重要で、これが解決されない限り前に進めない」と、真相解明と詳細な説明を強く求めたと明らかにしました。
柘植外務副大臣 在留邦人と面会
また、柘植副大臣は23日午後6時半すぎから、北京の日本大使館で北京日本人学校や進出する日系企業でつくる「中国日本商会」の関係者などと面会しました。
冒頭、出席者は亡くなった男子児童を悼み、黙とうをささげました。
このあと柘植副大臣は「保護者や子どもたち、在留邦人の不安や動揺はいかばかりかと察する。日本政府に対するさまざまな要請や要望はできることから実施していきたい」と述べました。そのうえで、外務省の予算からおよそ4300万円をあて、日本人学校の警備を強化することを説明しました。
続いて、中国日本商会の本間哲朗会長が「日本企業の従業員と家族の安心、安全は中国で事業を継続するための基本中の基本だ。在留邦人10万人の安全確保を改めてお願いしたい」と、協力を要請しました。
会合では、安全対策の強化や中国の日本人社会で広がる不安への対応などについて意見を交わしたものとみられます。