「都市部と地方で、子どもの体験費こんなに違うの!?」親が知っておくべき「体験格差」のリアルとは?

SHARE


より細かく「地域」を見ていくと

地域と体験格差という観点に立ったとき、今回の調査だけでは見えてこない、より細かな地域ごとの実情があるだろう。
まず、今回の集計で「都市部」とした三大都市圏の中には、実際には、政令市のような人口規模の大きな自治体から、山間部の小規模な自治体までが含まれてしまっている。
こうしたざっくりとした分類が有効でないわけではもちろんないが、もし都道府県レベルではなく、より細かな自治体のレベルで「都市部」と「地方」の分類を行うことができれば(それに足るサンプル数の調査を実施することができれば)、「体験」の機会やそれに対する支出の程度の違いは、より明確に見えてくるだろう。

さらに言えば、同じ自治体の中でも、地域ごとの違いが存在する。首都圏のとある自治体では、JRの駅周辺には高級マンションが建ち並び、スポーツクラブや音楽教室などが多くある一方で、駅から離れたエリアに行くほど民間事業者は少なくなり、公共施設で活動する地域のボランティアによる体験の場が増えていく。
これらのエリアは互いに隣接していて、徒歩や自転車でも移動できるほど近い。だが、どちらのエリアに住んでいるかによって、子どもたちが選び得る「体験」のあり方は変わってくるだろう。

地域によっては、そもそも「体験」の選択肢自体が乏しい場合も少なくない。東京都内で子どもの居場所づくりをしているNPO法人 Chance For All 代表理事の中山勇魚(なかやま・いさな)氏は、次のように語る。

経済的に困難な家庭の多い地域に行けば行くほど、地域の「体験」の担い手そのものが少ないですね。お金を払って体験に参加しようとする人が少ないうえ、家庭に経済力もないので、民間事業者による習い事などが成り立ちにくいからです。地域の住民たち自身もスポーツや文化活動に触れてきた経験が少なく、ボランティアなどの市民活動の担い手も育ちにくいのだと思います。

教育社会学者の松岡亮二(まつおか・りょうじ)氏が著書『教育格差』の中で紹介しているある自治体のデータによると、1種類以上の習い事をしている公立小学校4年生の割合は、その自治体全体で84%だった。だが、その同じ割合を学校ごとに見ると、100%の学校もあれば、45%の学校もあったのだという。学校ごとに明確な差があったわけだ。

松岡氏は同著の中で、異なる学校や地域の間で、親の社会経済的地位(Socio-economicStatus:SES)や文化資本の格差が存在していると指摘する。たとえ学習指導要領などによって日本の義務教育が全国で標準化されていても、細かな地域ごとに規範や価値、子どもや教育に対する期待のあり方には差異があり、それが「隠れたカリキュラム」として機能しているというのだ。

今回紹介したのはこちら!

『体験格差』
今井 悠介 (著)/ 講談社

習い事や家族旅行は贅沢?
子どもたちから何が奪われているのか?
この社会で連鎖する「もうひとつの貧困」の実態とは?
日本初の全国調査が明かす「体験ゼロ」の衝撃!

〈著者プロフィール〉今井 悠介
公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事。1986年生まれ。兵庫県出身。小学生のときに阪神・淡路大震災を経験。学生時代、NPO法人ブレーンヒューマニティーで不登校の子どもの支援や体験活動に携わる。公文教育研究会を経て、東日本大震災を契機に2011年チャンス・フォー・チルドレン設立。6000人以上の生活困窮家庭の子どもの学びを支援。2021年より体験格差解消を目指し「子どもの体験奨学金事業」を立ち上げ、全国展開。本書が初の単著となる。

こちらの記事もオススメ

33 件

子育てトピックス

「子育てトピックス」に関する記事をまとめたページはこちら。 with classでは、教育・住まい・時短術をメインに、暮らしをラクに豊かにする、共働き夫婦向けのトピックを発信中。

こちらもおすすめ

About 家族の時間をもっと楽しく

結婚しても、子供を持っても、自分らしく働き続ける女性にエールを!仕事と家庭を上手く両立させるコツ、忙しくも楽しい共働きライフを支えるライフハックが充実!

LINE 公式アカウント

お友達登録で、ファッション・ライフスタイルなどのお役立ち情報が毎週届きます!

QRコード

withmemberアンケート隊「with会員」募集中!

withのアンケートやプレゼントキャンペーン等にご参加いただく会員組織。会員限定のイベントへのご案内や、withからのお得な情報を受け取ることができます!