家庭の経済的な理由で子どもの体験の機会に格差が生じる「体験格差」の解消に向けて、認定NPO法人フローレンスはこのほど、企業・団体などと連携し、経済的に厳しい家庭などに年間を通じて体験プログラムを提供するプラットフォーム「こども冒険バンク」を設立すると発表した。LINEに登録すると、企業などが提供する無料の体験プログラムに申し込むことができる仕組みで、フローレンスでは今後、対象となる家庭や体験プログラムを提供する企業・団体を拡大していくことも視野に入れる。
フローレンスは昨年、夏休みの体験格差を埋めようと、企業・団体と連携して「#夏休み格差をなくそうプロジェクト」を展開。当初用意した1000世帯の枠に対して、数日で3000世帯を超える応募があり、2885世帯に体験プログラムを提供した。
このプロジェクトでの成果を基に、さらに年間を通して体験プログラムを提供する新規事業として立ち上げたのが「こども冒険バンク」で、賛同する企業が無料の体験プログラムを提供し、「こども冒険バンク」を運営するフローレンスがその情報を登録している家庭にLINEで提供。各家庭では月に1度発行される「冒険チケット」を使うことで、体験プログラムに申し込むことができる。
8月1日のスタート時点で、18社から1700枠の提供を受けた。対象は、18歳以下の子どもを養育している世帯年収が400万円以下の世帯か、ひとり親家庭としているが、対象家庭や体験プログラムを提供する企業・団体は今後拡大していくことも検討している。
全8回の探究学習のオンライン講座を提供する探究学舎の宝槻泰伸代表取締役は「私たちがやっていることは、新しい教育の市場形成や、通常の学校ではなかなかアプローチできない新分野への開拓だが、それが教育格差の是正ではなく、むしろ拡大につながっているかもしれないという自己矛盾があった」と指摘。「自社だけでは何ともしがたい構造的な問題で、クオリティーの高いものを提供するために当社もコストをかけているので、やはり受益者負担は外せない。そういうときに声を掛けていただいて、これは突破口になると期待している」と、参画した理由を明かした。
フローレンスの赤坂緑代表理事は「『こども冒険バンク』だけで体験格差の全てを解消するのは難しいし、それで全てが解決するとは、私たちも考えていない。ただ、やはり一度の体験であっても、子どもたちが、こういうふうに認められた、自分にもこういうことができるんだ、という機会を与えられることで、その後の自己肯定感に大きく影響する可能性は十分にあると思っている」と強調した。