子どもが経済事情や居住地域に影響され、塾や習い事、旅行といった学校外での活動ができない体験格差の問題が深刻だ。
格差解消に取り組む公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンの調査では、年収300万円未満の世帯にいる小学生の3割が直近1年間、学校外の体験活動をしていないと答えた。
子ども時代に味わう、わくわくする体験は一生の思い出となる。さらに子どもの可能性を見いだし、将来の進路につながることもあるだろう。境遇によってその機会を失うことがあってはならない。社会全体で格差を埋めていくことが求められる。
貧困家庭を支援するNPO法人キッズドアが今年5~6月に行った調査では、小中学生のいる困窮世帯のほぼ半数が夏休みの短縮を求めた。廃止を希望する意見もあった。
主な理由は「生活費がかかる」「特別な体験をさせる経済的余裕がない」が上位で、自由回答では「家族旅行した友達の話を聞きうらやましそうにしている」などの声が寄せられた。
夏休み中の今、そんな思いを抱える子どもが確実にいる。通常の授業がある期間も放課後に同じ悩みを抱える家庭は多い。物価高で状況は一層深刻だ。
都市と地方の地域差も見逃せない。スポーツや芸術などを習い、または観戦・鑑賞する場は都市部に集中する。人口の少ない地方では集団で行う部活動も難しく、その機会を求め都市部に通わねばならない。ひいては若年層の流出を招きかねない。
学力という尺度で評価されがちな学校だけでなく、興味や特性に合う場所でさまざまな体験を積めば、子どもは刺激を受け視野も広がるだろう。
人口減少が加速し、体験を支える地域の担い手の確保も難しくなっている。官民さまざまな立場からの取り組みが重要だ。
NPOや企業の間では、クラウドファンディングで資金を集めて体験の費用に充てるなどの支援活動が広がっている。
道内の小規模自治体から委託され、全国の大学生を派遣して学習支援や進路相談を行う札幌の教育事業会社コエルワは「子どもにさまざまな選択肢を示すことは、地域を守ることにもつながる」と指摘する。
道内には自然体験や農業体験のフィールドが豊富だ。国や自治体はこの特色を生かし、都市部の子どもも含め有意義な機会を提供してもらいたい。
一方、地域の図書館や公民館など公共施設で行われている各種の体験講座も、積極的に周知していく必要があろう。
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