※日経エンタテインメント! 2023年12月号の記事を再構成
日本エンタ拡大の中心に位置する「アニメ」。2014年から増加を続ける「配信」が、20~21年に新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要でブーストがかかり成長を後押し。直近のデータで「海外」は前年比11%増。エンタテインメント企業の海外進出も活発化するなか、「ゲーム」と「リアル」が今後のカギとなりそうだ。
直近のアニメ産業市場は、一般社団法人 日本動画協会の『アニメ産業レポート2023』によると、史上最高の年だった2021年に続いて22年も増加。3兆円に迫る2兆9277億円と過去最高額となった。
伸長を担っているのが、1兆4592億円を占め、前年比111.1%の「海外」だ(図1)。「配信」で同時視聴や視聴地域が拡大、「IP(グッズ)」「ゲーム」が連動する効果も大きく、横ばいの国内と海外がほぼ並んだ形だ(図2)。「Netflixなどの 国内・海外が同時の配信売り上げは統計上では国内市場に含むため、海外市場をもっと大きく考えることもできます」(日本動画協会の長谷川雅弘氏)。
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映画市場も海外の興行収入が増大。なかでも日本を代表するアニメ会社・東映アニメーションは絶好調で、22年は『ONE PIECE FILM RED』が海外興収122億円、23年は『THE FIRST SLAM DUNK』が中国で131億円超えもの興収を記録した。
こうした傾向を受け、海外事業に注力する企業も増えている。「東宝では、『呪術廻戦』『僕のヒーローアカデミア』などジャンプ系作品が躍進、同社アニメレーベルのTOHO animationの23年3~8月の海外売り上げが前年同期比85.8%増の約50.4億円を記録しました。今年7月には国際事業の海外拠点を統括し、TOHO Globalを設立。海外展開においても、アニメが成長ドライバーの1本に位置づけられています」(長谷川氏)。同じくKADOKAWAも海外事業を強化中だ。
日本のIPやスタジオの強さ
海外からの権利収入の割合は正確には分からないが、スマートフォンのモバイルゲームの貢献は大きいと考えられる。各国のモバイルゲームのランキングでは『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』『ONE PIECE バウンティラッシュ』『七つの大罪 ~光と闇の交戦(グランドクロス)~』などのアニメと関連したモバイルゲームの人気も目立つ。
「もともと日本IPは、ソニック、スーパーマリオ、ハローキティ、ジャンプ系、ガンダムなどゲームとの相互作用が大きいうえ、『ポケットモンスター(ポケモン)』がゲーム・アニメ・グッズ・カード連動のお手本になっています」(同協会の増田弘道氏)
さらに新たな連動例が、『サイバーパンク:エッジランナーズ』(Netflix)だ。
「原作はポーランドのゲームですが、日本のスタジオがアニメ化して配信したところ、米国を含む世界38カ国でデイリーTOP10入り。この影響でゲームの同時接続数が約7倍(22年9月時点)、楽曲もSpotifyバイラルチャートで1位となりました。海外のゲーム会社から日本のアニメへの注目が高まり、新しいビジネスモデルにつながるのではと期待しています」(長谷川氏)
日本のアニメ表現が世界から高く評価されるなか、新たなビジネスチャンスも生まれ、いよいよ本格的な始動が望めそうだ。
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