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大型犬脱走!のニュースでNHKが誤報

飼われている動物が逃げ出すのはよくあることですが、大型犬の場合はシャレになりません。

つい最近、「アメリカン・ピットブルテリア」という、闘犬にも使われる犬種の脱走がニュースになりました。茨城県小美玉市で飼われていた犬が9月8日に行方不明になり、 17日に自宅に戻ってきたそうです。大事に至らなかったのは何よりでした。

問題なのは、この件を報じたNHKのニュースに誤りが含まれていたこと。誤報というよりも虚報フェイクニュースではないか? とすら思いました。あやふやだったり辻褄が合わなかったりする箇所が、複数箇所にわたって見られたからです。

以下はNHK NEWS WEBの茨城版に、9月17日に掲載された記事の一部です。訂正文、いわゆる ”おことわり” です。ただ、訂正したニュースの具体的な内容や取材の経緯などは、この記事には書かれていません【注1】。

当初、飼い主が「おり」で飼育していなかったとお伝えしましたが、実際は「おり」で飼育していました。県と市による飼い主への指導も犬の登録の届け出についてのみでした。確認が不十分でした。

9月17日NHK NEWS WEB茨城の記事より

ちなみにこれ以前の記事(9月11日9月12日)にも、「おり」のことは出てこないんですよ【注2】。

いっぽう17日のNHKラジオ第一では、午後1時のニュースで「おり」のことに言及していました【注3】。以下はそのニュースの書き起こし(全文)です。

茨城県小美玉市でゆくえがわからなくなっていた大型犬が、けさ市内の飼い主の自宅に戻っていたことが確認されました。市は大型犬を飼う場合、鍵のついた檻の中で飼育するよう呼びかけています①

ゆくえがわからなくなっていた犬は、体長がおよそ80センチの、闘犬に使われることもあるアメリカンピットブルテリアという種類で、大型犬の中でも噛む力が強いということです。

小美玉市によりますと、今月8日の夜、市内の住宅の庭からいなくなっていることに飼い主が気づきました②。市や警察は周辺の住民に、見かけても近づかないよう注意を呼びかけていましたが、今日午前5時ごろ、飼い主が自宅の庭を見たところ、犬が戻っていたことが確認できたということです。

この間、犬を見かけて近づいた男性が、左手に犬の歯が当たってかすり傷を負いましたが、他にけが人はいなかったということです。

飼い主は、法律にもとづく犬の登録の届け出を市にしていなかった他、県の条例で義務付けられた檻の中での飼育もしていなかったということで、市と県はこの飼い主を指導しました③。市は大型犬を飼う場合、十分な強度をもち鍵のついた檻の中で飼育するよう呼びかけています④。

9月17日のNHKラジオ第一午後1時台のニュースの文字起こし。強調とナンバリングは筆者


「おり」のことをよっぽど強調したかったのか、「鍵のついたおりの中で飼育するよう呼びかけています。」という文言が、最初と最後に二度も出てくる。飼い主が行政から受けた指導にも、「おりの中での飼育をしていない」ことが含まれていたと報じています。

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茨城県ではピットブルテリア他8犬種を「特定犬」とし、檻の中で飼うことを義務付けている。茨城県動物指導センターのパンフレットより

同日午後4時のラジオニュースでも同じネタを取り上げています。前報の削除と修正がなされ、最後に「おことわり」をしています。

茨城県小美玉市でゆくえがわからなくなっていた大型犬が、けさ市内の飼い主の自宅に戻っていたことが確認されました。①’

ゆくえがわからなくなっていた犬は、体長がおよそ80センチの、闘犬に使われることもあるアメリカン・ピットブルテリアという種類で、大型犬の中でも噛む力が強いということです。

小美玉市によりますと、今月8日の夜、飼い主が犬を檻から出して散歩に連れ出そうとしたところ、逃げ出したということです②’。市や警察は周辺の住民に、見かけても近づかないよう注意を呼びかけていましたが、今日午前5時ごろ、飼い主が自宅の庭を見たところ、犬が戻っていたことが確認できたということです。

この間、犬を見かけて近づいた男性が、左手に犬の歯が当たってかすり傷を負いましたが、他にけが人はいなかったということです。飼い主は、法律にもとづく犬の登録の届け出を市にしていなかったということで、市と県はこの飼い主を指導しました③’。④’

今日午後1時などのニュースで、このニュースをお伝えした際、飼い主が犬を檻の中で飼育していなかったとお伝えしましたが、実際には檻の中で飼育していたということです。県と市による飼い主への指導も、犬の登録の届け出についてのみでした。確認が不十分でした。失礼いたしました。

9月17日のNHKラジオ第一午後4時台のニュースの文字起こし。強調とナンバリングは筆者

「おりの中で飼っていなかった」という話は、いったいどこから湧いてきたのでしょうね。NHK以外にそのような「エピソード」をニュースに盛り込んでいるメディアは、さしあたり見当たらないのです。NHKの独自ネタ(ただしフェイクニュース)というわけです。

4時のニュースでは、「実際には檻の中で飼育していた」と訂正したうえで、行政による飼い主への指導も「犬の登録の届け出についてのみ」に訂正。それとあわせて、「鍵のついた檻の中で飼育するよう呼びかけています」が削除されています。

さらに、もう一つ重要な訂正がされています。犬が逃げ出した時の状況が、午後1時と午後4時では大きく異なっているのです。

小美玉市によりますと、今月8日の夜、市内の住宅の庭からいなくなっていることに飼い主が気づきました②
 ↓
小美玉市によりますと、今月8日の夜、飼い主が犬を檻から出して散歩に連れ出そうとしたところ、逃げ出したということです②’

②の表現だと、飼い主が知らないうちに犬がいなくなっていた、という印象を受けます。ところが、訂正後の②’では、犬は飼い主の目の前でいなくなっている。しかも「おりから出して」散歩にいこうとするタイミングで……。どうしてこんなに食い違うのか、不可解さがぬぐえません。

犬が逃げ出した時の様子は、犬の飼い主に聞けばわかります(飼い主が嘘をついていない限り)。飼い主に対する行政の指導内容は、市や県など行政機関に聞けば教えてもらえるでしょう。裏を取るのが難しいとは思えないんですよね。

にもかかわらず、事実とかけ離れたことを報じているのだから、「こたつ記事疑惑」が持ち上がっても不思議ではありません。どの方面にも取材しないで、ネット上で公開されている情報のみを頼りに、ニュース原稿を書いた可能性が考えられるのです。

ウェブ記事もラジオニュースも、「小美玉市によりますと」とありますが、市に取材したにしてはNHKの報道内容はあまりに不正確です。もちろん、市側が状況を正確に把握していなかったとも考えられますけどね。いずれにせよ、NHKが裏取りをおろそかにしていたことは確かです。

「おり」で飼育されていたかどうかという点と、犬が逃げ出した時の状況については、NHK以外のメディアでは言及されていません。また、小美玉市の公式リリースにいたっては、ごくシンプルなものです。↓

これではニュースにならないと見たNHKの人が細部を付け加え、墓穴を掘ったとは考えられないでしょうか? 軽い気持ちで話を盛ってしまった結果、放送後にクレームを受け、訂正・謝罪に至ったのでは? 彼らは実に気軽に、罪悪感なしに、話を ”演出" します。自分たちの言いたいことを伝えるためには事実を曲げてもかまわない、と思っているふしがある。虚実の境い目があいまいなのです。

そして、「確認不足でした」の言い訳は定番中の定番。たとえ意図的な虚報であっても「過失」で押し通すのが、彼らのセオリーです。はじめから確認する気などなく、話をでっちあげた場合でも、「確認不足」と言い張りますからね。

おそらく報道する側にとっては、「おり」があろうがなかろうが、たいした違いではないのでしょう。でも、報道される側にとってはそうではない。ありもしないことを全国放送で報じられ、いわれのない非難を浴びるおそれがあります。今回の大型犬脱走事件では、犬の登録をしていなかったなど、飼い主の側に落ち度があったようです。そのうえさらに「大型犬をおりに入れていなかった」などとネガティブな報道をされたら、どんな目に遭うかわかりません。

このニュースは地元の人以外にとって、さほど関心をひかないローカルなネタかもしれない。私も当初はそう思っていました。でも、引っかかりを感じて調べていくうちに、矛盾点がいくつも出てきたのです。他社の報道内容と比べても、NHKは突出して質が悪いというか、事実を正しく報じていません。そういう姿勢がもともとないのかもしれませんね。

今回の件も、形ばかりの謝罪ですませて、あとはすぐ忘れてまた同じことを繰り返すでしょう。過ちを犯してもペナルティがないから、反省しないのかも……。そうやって日々をやり過ごしているうちに、不誠実な報道姿勢が常態化して、大きな不祥事を引き起こすのです。先月に起こったラジオ国際放送電波ジャックのように。

嘘つきは泥棒の始まりと言いますが、小さな嘘やごまかしを軽視するのはとても危険なことなのです。それらが習慣化すると不正に対する感受性が麻痺して、組織ぐるみで巨悪に手を染めてしまう。公共放送に携わる人たちは誠実であってほしいと思うのですが、そう期待するのは間違っているのでしょうか?


【注1】ちなみにこのネタは、午後1時台のトップニュースでした。いくら大型犬とはいえ、犬が逃げたというニュースを全国放送で流す必要があるのでしょうか。現にここ最近、大型犬の脱走が他の地域でも何件か発生していますが、いずれも近場で発見されるか、自力で帰ってきています。脱走してもそう遠くには行かないケースが大半ということ。注意喚起のためには、該当する地域で放送すれば十分でしょう。

【注2】犬の飼い主が外国人であることや、犬を見つけた人が女性であることは、このニュースに必要な情報とは思えない。余計な偏見やネガティブな感情を書き立てるだけです。

【注3】NHKのNEWS WEBでは檻を「おり」と表記していますが、漢字表記の方がわかりやすいですね。わざわざカギカッコでひらがな表記するくらいなら、最初から漢字を使えばいいのに……


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大型犬脱走!のニュースでNHKが誤報|はむた@捏造報道と闘う会
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