呪術廻戦 全巻売った理由
今年に入り、呪術廻戦の単行本を全巻売った。
理由を一言で表すと、「読むのが面倒になったから」である。
なにその理由と言われそうだが、本当にそうなのだ。
実は自分はこの作品が好きではない。
ではなぜ全巻持っていたかというと、流行りに乗ってしまったからだ。
アニメ第一期を観て本作を知ったのだが、作画や演出は素晴らしい反面、キャラやストーリー、世界観を好きになれなかった。
特に、主人公の虎杖の言動には全くもって共感・感情移入が出来なかった。
だが、当時の自分は少しでも気になった漫画は集めたい謎の欲求が強くあり、爆発的人気となっていた本作の単行本を必然的に買う流れとなる。
なぜ「読むのが面倒」と感じるようになったのか。
それは、内容を理解することが出来なくなったからである。
特に、以下の二つの要素が理由として挙げられる。
①に関して言えば、理解していない自分の問題が大きいとも言える。
例えば、「反転術式」と「術式反転」、「領域展開」と「領域展延」、「生得術式」と「生得領域」の違いを正確に説明できる読者がどれくらいいるだろうか?
また、死滅回遊のルールと変更内容の経過、実施された目的や、なぜ終幕を迎えたのか、全体像を正確に把握してる人がどれくらいいるだろうか?
もちろん、作品が好きで相当読み込んでいる読者であれば、それらを説明することは容易なのかもしれない。
しかし、おそらく大半の読者はなんとなくのノリで読んでいることと思う。
自分も漏れ無くその一人であり、先程も触れたように、そもそも作品を好きになれなかった為、読み込んでまで内容を理解したいという熱量が無かったのだ。
②に関しては、これは作者側の問題と断定できる。
最初に強い違和感を覚えたのが、18巻に初登場した星綺羅羅(ほしきらら)の術式である。
内容の詳細は省くが、とにかく小難しく分かりづらい。
もちろん、ナレーションや伏黒による説明が入っている為、何度か読んだ上で、ある程度のイメージは持っており、その確実性をネットで調べたりしたこともあったが、当時は人によって細かい部分で解釈が異なる意見が散見された。
つまり、この時点で10人が読めば10人同じ解釈が出来るような仕様では無いことが分かる。
さらに問題はその後だ。
「ジャンプ新世界漫画賞」という企画に、作者の芥見先生のインタビューが掲載されていた。
その中で、「キャラの能力をどのように発想しているか」といった主旨の質問を受けた際、星綺羅羅の術式に触れながら、以下のように回答している。
なん……だと……!?
要は、作者が失敗したと認めた設定を読者は見せられていた訳である。
そりゃ分かるわけねぇ……
能力バトルを扱う漫画において、その能力がどういったものなのかを把握出来なければ、作品の醍醐味、面白さを感じ取ることは出来ない。
しかし、あえて擁護するとしたら、週刊連載という過酷な環境下で、新しいオリジナルの能力を考え、それを幅広い世代の読者が理解出来るよう文章に起こす作業は、自分が想像するより果てしなく難しい作業なのかもしれない。
本来なら、読者の視点を持つ編集がそういった点を指摘する立場にあるはずだが、物申せなかったのか、或いは作者を信じていたのか、結果的に失敗設定をそのまま通してしまう形となった。
自分としては、この18巻あたりから少しずつ読むのが怪しくなってきた訳である。
さらに、その後の秤の無駄に複雑な能力や、25巻から始まった五条vs.伏黒宿儺戦での高専サイドによる実況観戦等、ツッコミどころを挙げればキリがないのだが、全巻売る決め手になったのが、実は比較的最近の246話にある。
宿儺vs.虎杖&日車&日下部が行われており、日下部の簡易領域を見た宿儺が次のように発言している。
冷静に状況を分析している描写なのだが、やはり問題は巻末に掲載された作者コメントにあった。
もうやめてくれ……
バトルの肝である「領域」と「術式」の設定も曖昧なんか……
これが決定打である。
当然ながら、作者が理解出来ていないものは、読者も理解することが出来ない。
宿儺戦で頻繁に挟み込まれるナレーションや高専サイドの回想もそうだが、これだけ作者による「言い訳」を見てしまうと、これまで披露されてきた設定の信ぴょう性も懐疑的になってしまう。
そういう意味では、作品内でのリアリティや整合性を失い、読者の信頼を裏切りかねない状況となっている訳だ。
平たく言えば、「作者自身もよく分かってないから、読者が考えるだけ無駄」と思えてしまい、冒頭の「読むのが面倒になってきた」との表現に至ったのである。
唯一の救いは、某フリマサイトで出品した際、一日も経たずに高値で売れたこと。
古本屋で売ったとしたら、おそらくワンコイン以下だと思うが、フリマはその20倍以上の値がついても、状態が良ければ購入者がいるので有り難い。
しかし、全巻売ったとはいえ、やはり結末は気になるもの。
今後も一応は流し読み程度には目を通すつもりである。
ただ正直なところ、キャラの誰にも感情移入出来ていないので、バッドエンドでも全然OKという立場であり、どのような結末を迎えようと驚くことは無いだろう。
実際に、五条が死亡した際も特に感情の起伏は無く、勝敗よりも内容が面白くなかったという感想が自分の中に強くあった。
そのような意味では、自分は本作に関する見方でいえば、「人の心ないんか?」と直哉に言われても否定出来ない状態にあったのかもしれない。
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