概要
本文章は、一般社団法人PyCon JP Associationが主催したPyCon APAC 2023の開催に際し、そのプロポーザル選考過程において行われていた不正行為の告発を目的とするものです。
本文章が対象とする読者は技術者、及び、公衆です。技術者は技術『愛好家』との付き合い方について一考をするべきであり、公衆は「専門家ではないにも関わらず技術の専門家のフリをする不正な愛好家」に対して無自覚であるべきではない、という警鐘を鳴らすため、及びに、一般社団法人PyCon JP Associationの公衆に対する不正を告発するため、本文章を公開します。
本文章は、Qiitaが目指す、学びのある情報を技術者に共有することで、よりよい技術者コミュニティの形成を目指す内容であるため、Qiitaのガイドラインに沿った形式でQiita.com上で公開します。
告発する内容
- PyCon APAC 2023の準備活動中に発生した一連の事案
- 公益性を標榜する当該団体の活動における公益性の欠如の指摘
- 「技術愛好家」を名乗る人物らによる不正行為の実態
用語解説
PyCon APAC 2023について
PyCon APACとは、一般社団法人PyCon JP Associationが2011年以降、毎年開催しているPyCon JPを、2023年度にアジア規模の国際カンファレンスとして発展させたイベント。実質的には、例年開催されてきたPyCon JPと同じものである。
PyCon について
「PyCon」は、2000年代に米国でPythonの開発者が言語仕様などの解説を行うイベントとして始まりました。Pythonの世界的な普及に伴い、各国でローカル版が開催されるようになり、日本では一般社団法人PyCon JP Associationが主催し、日本ローカル版のPyCon JPが2011年から毎年開催されている。
PyCon JPについて
主催団体の説明は以下の通りである。
『Python ユーザが集まり、Python や Python を使ったソフトウェアについて情報交換、交流をするためのカンファレンスです。PyCon JP の開催を通じて、Python の使い手が一堂に集まり、Python にまつわる様々な分野の知識や情報を交換し、新たな友達やコミュニティとのつながり、仕事やビジネスチャンスを増やせる場所とすることが目標です。』
PyCon JPのイベント自体は登壇発表が中心である。登壇内容は事前に応募された「プロポーザル」(登壇企画案)の中から、審査基準に基づいた選考が行われ、採択が決定すると主催団体より発表されている。イベント当日は、運営団体が会場をレンタルし、選考を通過した登壇者が発表を行う。一般参加者は12,000円から18,000円の参加費を支払い、それを聴講する。
一般社団法人PyCon JP Associationの関係者は、PyCon JPやその参加者を「Python愛好家の集まり」と表現している。(参考: https://x.com/pyconjapan/status/1802658699044892805)
「カンファレンス」の呼称について
一般社団法人PyCon JP Associationは、PyCon JPを「カンファレンス」と呼称している。一般的に、カンファレンスは専門家が集まり情報交換を行う公共の場を指し、技術カンファレンスや学術カンファレンスなどの種類がある。ただし、PyCon JP自体は「技術カンファレンス」とは明言してない。(B社の関連企業などはPyCon JPを「Pythonの技術カンファレンス」と形容しているが、これはPyCon JP自身の声明なのかは不明)
審査について
2023年のPyCon APACでは、プロポーザルに232件の応募があり、採択の競争率は約5倍となった。そのため、査読プロセスによる厳格な審査が行われた。査読は2023年5月31日から7月3日にかけて実施され、7月9日に採択会議が開催された。ここで仮採択が決まり、その後、一般社団法人PyCon JP Associationの関係者による調整を経て、本採択されるプロポーザルが決定した。
査読基準は以下で確認することができます。
https://web.archive.org/web/20240919180342/https://pyconjp.blogspot.com/2023/05/pyconapac2023-review-points-ja.html
審査項目として、7つの評価指標が主催団体のメンバーから提示されていた。7つの内容は重複しており、4項目が「初心者向けであること」と同義で、残りの3項目が「予稿の内容を査読者が読みやすいこと」(タイムスケジュール記載の有無)と解釈されていました。
略称について
以降、本文章では以下の略称を用います。
- 一般社団法人PyCon JP Association を PyConJPとし
- PyCon APAC 2023 を APAC とし
- PyCon JPの代表理事 を A氏 とし
- A氏が取締役を務める企業 を B社 とし
- PyCon JPの運営メンバー、APACの副座長、並びにプロポーザル審査の責任者を C氏 とする
PyCon JPの主催団体は登壇企画案を「プロポーザル」と呼称してるが、これは技術者にとって誤解を招く表現であるため、本文章では実際の発言を除き、「プロポーザル」を「予稿」と表記する。
一連の不正の概要と時系列
私は、プロポーザルの査読者としてPyCon APAC 2023の予稿の査読と予稿の採択会議とに参加しました。その過程で発生した一連の不正行為の事案を時系列順に以下の3つに分類する
①. 2023年6月9日:査読審査の責任者による機密情報の漏洩
査読者が適切な審査の継続のため査読審査の責任者に送付した、秘匿性の高い相談内容が、本来共有されるべきではないにも関わらず、団体全体に共有された事案が発生した。
②. 2023年6月9日~7月3日:不適切な評価基準と異議申立ての拒否
査読期間中、不適切な評価基準や、特定の予稿に対する0点評価の連投が行わた。これに対し、査読者から異議が申し立てられたが、責任者は拒否した。
③. 2023年7月9日:審査プロセスの不履行と恣意的な採択
採択会議において、適切な審査プロセスが履行されず、恣意的な予稿採択が公然と行われた。
①. 査読審査の責任者による機密情報の漏洩
時系列順の概要
- 予稿の募集:B社の関係者から、B社の本とサービスの販促を目的とした予稿が提出される
- 2023年5月31日:予稿の査読開始
- 2023年6月6日:査読者によるC氏への相談
- 査読者が評価を開始し、同日、査読審査の責任者であるC氏に対して「B社の予稿に、内容を批判するコメントを書くべきか迷っている」という趣旨の質問をSlackのダイレクトメッセージ機能で行う
- 2023年6月9日:個人宛相談内容の団体全体への共有
- C氏への相談内容が、事前に通知されることなく、B社の取締役であるA氏を含むPyCon JPの関係者全体に、質問者である査読者の名前を含めて共有される
- 2023年6月9日:査読者が考える不採択に値する理由をコメントとして記載する
- C氏による秘密の暴露によって、穏当な解決への道が閉ざされたため、やむを得ず、B社の予稿に対しネガティブな意見をコメントする
- 2023年7月9日:採択会議にてA氏の前でB社の予稿が不採択となる
- 2023年7月9日:採択会議で口頭恐喝が行われる
- B社からの予稿に対してネガティブな意見を書いた査読者が、採択会議にてB社の取締役であるA氏から口頭で恫喝を受ける
詳細
1. 予稿査読における不審な採択評価
予稿の査読は5月31日から7月4日までの期間で開始され、私は6月6日に着手しました。査読システム上では、予稿に通し番号が割り振られ、若い番号順に自動表示されるようになっていました。私が最初に評価した最も若い番号の予稿には、既に3人の査読者が評価を付けていました。
この予稿はB社の関係者から提出されたもので、その内容は次の通りでした。
- APACの初日の他の登壇をキャンセルさせ、イベント会場を丸一日B社が占有する
- B社の社員が講師として、B社が出版している本の解説、本の争奪じゃんけん大会、サイン会、書籍販売を行う
- B社が連携しているウェブサービスと資格試験の宣伝を行う
私は「これは明らかに販促目的であり、コミュニティに貢献するものではない」とコメントを書き「不採択」の評価を下しました。PyConJPは、Pythonに関する投稿者の知見を共有する場であり、企業の宣伝の場ではないと考えたからです。
他の査読者も同様に不採択に票を入れているだろうと考えていましたが、実際には他の査読者は「採択」に票を入れていました。彼らの採択理由のコメントは以下の通りでした。
- 「書籍をベースに教えられるので内容としてはまとまっていそう 私は関係者なので採択にする」(A氏)
- 「内容が非常に具体的でよい」
- 「よく書けたプロポーザルで評価できる」
これらのコメントと、明らかに販促目的である予稿が採択されている事実は、査読過程における公正性と透明性に疑問を抱きました。
2. 予稿審査の責任者への問い合わせ
他の査読者が本予稿の不採択理由を十分に理解していない可能性があるため、不採択理由と採択した場合の影響について詳細な説明を追加すべきか検討いたしました。しかし、かかる行為が他の査読者やPyCon JP関係者との間に不和を生じさせる可能性も懸念されました。
そこで予稿審査担当者C氏に対し、以下の内容をダイレクトメッセージにて問い合わせいたしました。
- 他の査読者が閲覧可能な状態で、強い主張を含むコメント(例:「これは明らかに販促目的のプレゼンであり、コミュニティに寄与するものではないためStrong Rejectとすべき」)を記載しておりましたが、かかるコメントは他の査読者の意見に影響を与える可能性があるため、今後は控えめな表現に留めるべきでしょうか。
この問い合わせは、事前の認識合わせと価値観の確認を目的として行ったものでした。また、すでに後述する予稿審査プロセスにおける違和感を感じていたため、APACの予稿審査の責任者であるC氏の価値観を把握することも目的の一つでした。
3. 機密性のあるメッセージの漏洩
C氏は、上記ダイレクトメッセージの内容を、私の事前の承諾を得ることなくPyCon JPの全体チャットに転載し、返信を行いました。この行為により、私が特定の予稿に対して抱いた懸念が、他の査読者。及びB社の取締役のA氏を含むPyCon JP関係者全員に共有される結果となりました。
4. 漏洩による影響
後日開催された採択会議の最中、A氏から「人のプロポーザルにふざけた難癖をつけやがって。『採択するべきでない』とは何だ」と口頭で恫喝を受ける事態となりました。
5. ネガティブなコメントを書くに至った経緯と審査に与えた影響
C氏によるダイレクトメッセージの公開を受け、私は後戻りできない状況に追い込まれ、コメント欄でB社の予稿を不採択とすべき理由を詳細に説明するアジテーションを行いました。その結果、A氏を除く他の査読者の採択に対する積極的な意見が消極的なものへと変化していきました。
採択会議当日、B社の予稿審査の際、A氏は「これは自分が企画した内容だ」と繰り返し主張しましたが、他の査読者は反応せず、評価が覆ることはありませんでした。結果としてB社の予稿は不採択となり、初日のイベントはB社単独の宣伝活動にはならず、通常の登壇予稿が採択されました。なお、B社の社員によるサイン会、物販などの企画は会場の一部で行われました。
②. 不適切な評価基準と異議申立ての拒否
概要
不適切な審査、事前のルールに反する不正な行為、そしてそれらに対する改善提案に対し、PyCon JPのメンバーおよび責任者は対応を放棄した。結果として、歪な審査結果を放置したまま採択会議が実施された。
前提情報
- 採点基準は0から5で、0は不採択を意味し、採択プロセスから除外される
- 査読者は0(不採択)をつけた場合は、理由を説明するコメントを記載する必要があった
- 査読者は他の査読者の採点評価とコメントを閲覧可能だった
以下の画像、予稿審査に際して、査読者が確認を求められた文章の本文になります。
詳細
1. 審査開始と最初の査読審査の改善要求
私は6月9日に審査を始め、約17時間をかけて9割の予稿を審査しました。その後、専門外の分野の予稿は後日個別に精査し、6月前半までに全ての投稿を評価しました。
その際、他の査読者の評価点のつけ方、および、コメントの大半に違和感を覚えたため、①での経験から、明確な主張が必要だと判断し、Slackに以下の改善要求を投稿しました。
この投稿に対し、A氏からは「見ないようにすればいい」などの返信がありましたが、具体的な対策や該当査読者からの対応はありませんでした。
2. 不正な査読者の登場と二度目の改善要求と改善策の否決に関する対話
日を追うごとにレビュワーは増加しましたが、最終的に日本語で書かれた予稿の大部分を審査したのは、私、A氏、そして私が名前を挙げずに上記の投稿で言及した2名の合計4名で、全体の73%の査読を行いました。
他は後述するPSFメンバーを除くと、数名の査読者が数枚の予稿に「よくわかりませんでした。2(weak reject)です」のようなコメントを残して離脱した程度で、そこに専門的なコメントをする査読者は存在しませんでした。(10~100程度の予稿を評価した査読者も若干名いました)
英語で書かれた予稿には、コメントなしに0と5の評価のみを繰り返す査読者が複数いました。これらの査読者は世界中のPyConに参加し続けている人物であり、その経歴からPSF(Python Software Foundation)のボードメンバーに選出された方々でした。ボードメンバー達は、自分達を含む世界のPyConイベントの常連には5を、そうでない人物の予稿には0を無言で連投していました。
一つの予稿に3人以上が査読を行うことを目標としていましたが、上述の状況の影響で、評価点は内容よりも担当した査読者によって左右される傾向が強くありました。
この状況下での採択方法を確認したところ、査読者の評価の平均点のみを参考にしてPyCon JPの運営メンバーが決定するとのことでした。A氏以外の運営メンバーは予稿審査に一切参加していなかったため、なぜ予稿を読まない審査の部外者に最終決定権があるのかC氏に質問しました。以下はその後のやり取りと回答です。
その後、私はPyCon JPから下記の内容を回答として受け取りました。
この回答により、予稿の内容を読まずに評価の平均点のみで採択を決定することが明確になったため、そのことへの懸念を以下のように表明しました。
続いて、その問題の解決策として、私は少数の予稿にのみ評価をしている査読者と0を連投しているPSFの査読者を除外して平均評価を算出することを提案しました。
その理由として、少数の査読のみによる評価は安定せず、専門性のあるコメントがない場合は除外した方が審査の公平性が高まると主張しました。また、「よくわからなかった」という評価や評価理由のない不当な「0(不採択)」の投票によって採択結果が決まることは許容できないと訴えました。
それに対するA氏とC氏の返答は以下のものでした。
それに対する私の回答は以下のものでした。(その後、実際の歪な状況を示すスクリーンショットを複数投稿しました)
少数の評価のみを行った査読者の取り扱いは、価値観の相違と解釈される余地があるかもしれません。しかし、少なくとも0点評価の連投は、査読プロセスの規定に明確に違反しており、C氏、そしてC氏を監督する立場にあるA氏には、公正な審査を確保するための対策を講じる責任がありました。しかしながら、そのような対策は実施されず、私の提案は却下されました。
3. 歪な査読審査が放置されたまま行われた平均評価点の算出
その結果、応募された232件全ての予稿に対し、概ね4名の評価が付与されましたが、そのうち2名以上の評価に審査基準から逸脱している疑いのあるコメントや評価が含まれているケースが多数見受けられました。にもかかわらず、これらの問題が未解決のまま、採択会議が行われ、平均評価点によって予稿の採択が決まりました。
③. 審査プロセスの不履行と恣意的な採択
概要
- 予稿の採択は、内容の評価ではなく、担当者が起案者の所属企業を認識しているか否かで決定された。
- A氏は、C氏の予稿を「仲間だから」という理由で、その有害性を認識しながらも強行採決した。
- PyCon JP関係者が集まる場で、A氏は公然と恣意的な採択を行った
審査プロセスの説明
2023年7月9日に、採用する登壇企画の仮決定を行う審査会が開催されました。
https://pyconjp-staff.connpass.com/event/288671/
https://x.com/pyconjapan/status/1677977645034930176
審査員は参加し意見を述べる権利があるとされていたため、私も参加しました。
採択会議では、スプレッドシート上に査読者による評価の平均点順に並べられた予稿について、高評価のものから順に仮採択を進めていく形式で進行いたしました。仮採択数が予定数に達した時点で会議は終了となる運びでした。スプレッドシート上には、以下の情報が表示されておりました。
- 評価点の平均値
- 評価点の中央値
- 0点評価の数
- 5点評価の数
- 企画名
- ジャンル
- 投稿者名
同じ体裁のシートがPyCon JP 2024の採択作業の作業写真に写っているのが主催団体の公式ブログの写真から確認できます。
詳細
採択会議では、基本的に評価平均点の高い順に仮採択が行われましたが、以下の例外的手続きがありました。
- 私の意見表明による採択判断の変更
- 採択すべきと考える予稿と、採択すべきでないと考える予稿に対し意見を表明しました
- 投稿者名による採択
- 投稿者名によって採択を決定する行為が複数回ありました
1. 採択すべき予稿に対する私の意見表明
私が最も強く推したのは、『ハイパーパラメータ最適化フレームワークOptunaの最新機能紹介』でした。この予稿は、私の意見表明によって下位評価から逆転採択に至った唯一のものであり、その詳細な議論を以下に示します。
当該の予稿について私が抱いていた感想
- 不備や減点要素なし: 内容に不備はなく、減点対象となる要素もありませんでした。
- Optuna開発者による解説: Pythonライブラリの開発者自身が、新機能と幅広い活用方法を解説し、Python開発者の作業効率化を促す内容でした。
- 間口の広さと技術レベルの高さ: 発表される機能はプログラマーの能力を拡張するツールであり、間口が広く、技術レベルも高く、革新性もありました。
- 幅広いユーザー層への訴求: 技術的な詳細だけでなく、幅広いユーザー層の獲得も目指した内容でした。
以上の点から、私は当該予稿を高く評価しました。技術的な示唆に富む予稿に対して、他の審査員は「初心者向けではない」というコメントとともに低い評価を付与する傾向にありましたが、私はこの予稿に対するそのような評価は不適切であると考え、採択に値するだろうと判断していました。
不採用に至った経緯の確認と不採用の撤回の請求
しかし、スプレッドシート上で確認したところ、当該予稿は他の査読者からの評価が極めて低く、自動的に落選する順位にあり、このままでは採択会議において審議される可能性すら低いと考えられました。
採択会議の途上、私はこの予稿を取り上げ、「なぜこの予稿がこれほど低評価で落選予定となっているのでしょうか。私には減点する要素が思い当たりません」と、確認と再評価を要請いたしました。これに対し、予稿の題名と登壇者名のみを確認した、他の査読者およびPyCon JPメンバーからは、以下のような口頭での意見が表明されました。
- 「この登壇者が所属する(社名)など聞いたこともない。よって、採択するべきではない」
- 「調べたらこの会社は社員が過去にPyConJPに登壇したことがある。だから二度も採択する必要はない」
- 「当該ツールはPythonではないため、採択しない」
- 「この会社名は、SNSで聞いたことがあるかもしれない。採択にする?」(C氏)
結果として、選考責任者であるC氏が起案者の所属する会社の名前を認知していた(あるいは、認知していた可能性があった)という理由により、当該予稿は採択に至りました。
以下のリンク先にイベント当日の登壇内容の動画があります。
https://youtu.be/ttMJCG1ivcE?si=SfObO2wP6MkYFdNw
当該予稿は機械学習関連の予稿として、一般枠での唯一の採択となりました。仮に私が声を上げなかった場合、機械学習関連の応募が一般枠で採択されることはなかったと考えられます。(Optunaは数理最適化計算を行うライブラリであり、厳密には機械学習に分類されないかもしれませんが、PyCon JPではWeb系以外のものは機械学習とみなす傾向がありました)
2. 採択するべきではない予稿に対する私の意見表明
一方、技術者として私が阻止を試みたにもかかわらず、採択に至った予稿も存在します。それは、C氏によって投稿された『Pythonパッケージ管理ツール比較 2023』と『Comparison of Packaging Tools in 2023』です。
C氏の予稿内容の概要
これらの予稿は、主張の内容が完全に同一であり、日本語版の本文は「次のうち、どれが一番いい選択でしょうか? poetry, pipenv, pdm, hatch pip-tools, それとも pip (+ venv) だけ?」という問いかけから始まります。A氏が各ツールでDjangoをインストールした経験に基づき、各ツールの長所と短所を「本音をポロリ」しながら3分で説明し、最後の一番優れたツールを決定する、という内容でした。
他の査読者の評価点は、PSFメンバーからのものを含め非常に高いものでしたが、私は技術者としてこの内容に賛同できず、採択すべきでないと強く主張しました。その主張に対し異議が出されたため、私は以下の点を順に主張し、反対の立場を明確にしました。
C氏の予稿に対する私の意見
- 技術に関連するトークではない:
「これは技術に関連する内容ではない。技術に関連する私的な経験の比較であって、カテゴリーは技術に関わるものではなく、知見や認識を深めることには繋がらない」 - 根拠のない主観的評価:
- 「『○○がお勧め』といった個人的な意見ではなく、アルゴリズム、実装、理論に基づいた客観的な説明が必要だが、それは3分では不可能であり、登壇者にもその知見があるとは思えない」
- パッケージマネージャーの役割の誤解:
- 「パッケージマネージャーの役割は、Djangoの高速インストールではなく、パッケージ管理全般に渡る。この比較は、パッケージのインストールという限定的な側面にのみ焦点を当てており不適切。またパッケージマネージャーのインストールの手続きはダウンロードだけではなく複雑な側面もあるが投稿者はまだそれに気づいていない」
- 技術コミュニティへの悪影響:
- 「このような無意味な比較は、Pythonコミュニティにとって無益どころか有害である。特定個人の貢献度が高いPythonのパッケージマネージャー開発において、技術的な誤解や偏見に基づく誹謗中傷が、開発者の離脱や開発停滞を招いた歴史的経緯がある。『このパッケージマネージャーにはこんな欠点がある』ではなく、技術に対する誤った認識に基づく情報の拡散、開発者に対する誹謗行為がパッケージマネージャーの欠点を本当に生じさせる原因となってきた、が真実である」
- より適切な技術関連予稿の提案:
- 「パッケージマネージャーの実装に関する他のプロポーザルはすべて「マニアックな内容だから0(Reject)」と評価され不採択となっている。技術に精通しているこれらの投稿者からの予稿を採択するべきだ」
私の主張に対する反応
私の主張に対する反応は以下の通りでした。
- 「話が長い。もう黙れ。お前のせいで終わるのが遅くなる」
- 「PythonはDjangoだから、Djangoのインストールでパッケージマネージャーを比較するのは正しい」
- 「全くこの内容に悪いところがあるようには思えない」
- 「英語版なら日本語版と違って表現に強い癖がないから採択できる」
- 「人のプロポーザルにふざけた難癖をつけやがって。何が採択するべきでないだ」(A氏)
- 「PyConに提出されるプロポーザルは有害ではありません。何故ならPyConは技術者を大事にしていて、催要項にもそう書いてあります」(C氏)
「悪いところがない」という意見に対しては、私は強く反対し、有害な内容であることを詳細に説明し続けました。結果として、他の参加者の一部も有害であることに同意しました。
A氏による強制採択
しかし、主催団体のトップであるA氏から「C氏は私たちの仲間で『良い人』であるため採択する」という声明が出て、採択に至りました。私の役割は、技術的な観点から予稿の有害性を運営メンバーに伝えることでしたので、PyCon JPが保留の決定をしたことに対して反論はしませんでしたし、する立場でもありませんでした。
当日のC氏の発表内容はこちらから確認できます。
https://2023-apac.pycon.jp/timetable?id=XEGZUD
3. 投稿者名による採択
次に明確に恣意的な採択が行われたのは、投稿者名によるものでした。
平均評価が低かったことから不採択リストに入っていたにも関わらず、PyCon JP運営メンバーにとって「良い人」とされる人物の予稿が、選考過程で複数回選抜され、採択される事例が確認されました。
「良い人」とは、運営メンバー、関係者、運営メンバーの友人、世界のPyConコミュニティにおける著名人、スポンサー関係者などを指すようでした。
A氏は「良い人」を落選者の名簿から見つける度に「危ない危ない。この人は『良い人』だから採択しないと。でも、複数投稿してるけど、どれを採択しようか」と言い、私は査読者として「この人のプロポーザルは根幹の部分で主張内容が間違えているものばかりですが、あえて一つ選ぶとしたらこのプロポーザルなら炎上せずに済むと思います」と丁寧に協力する、そのような場面が何度もありました。
恣意的な採択の証拠として、平均評価点が著しく低いにも関わらず、関係者のみが仮採択となった審査会当日のデータの開示が可能です。ただし、下位からの仮採択となったのは、それを行ったPyCon JP運営メンバーに限らないため、ここではデータの提示は控えさせていただきます。
A氏の弁明
A氏は弁明のつもりなのか、その手続きの最中「これはどこもやっていることだから」と口頭で何度も繰り返していました。不正だと認識せずに行っているようではなさそうでしたので、ただの査読者として参加していた私は特に反応しませんでした。
包括
①②③が選考プロセスに査読者として立ち合い、目撃した査読プロセスにおける一連の不正です。
事例①
事例①において、PyCon JPは内部通報者保護の措置を適切に講じず、権力者による不適切な予稿に対し技術者として正当な懸念を表明した行為が秘匿されませんでした。査読プロセスの責任者により、外部参加者である私の不利な情報や主張が他の関係者全体に共有された結果、私は穏当な手段での意思表示を断念せざるを得なくなりました。自身の安全確保と穏当な手段による解決を諦め、強硬な手段を用いてB社の予稿を不採択に導くという選択に至ったことは、通常のプロセスでは不正を含む予稿を排除できない組織構造であったことを示唆しています。それが原因で、私は権力者であるA氏から恫喝を受ける事態に発展しました。
これらの事実に鑑み、PyCon JPという組織は、技術者が正当な活動を遂行することが極めて困難な環境であると判断せざるを得ません。
事例②
事例②を通じて、PyCon JPの査読プロセスが深刻な欠陥を抱えており、組織として改善する意思がないと判断できます。事前の査読ルールに違反する「無言での0点評価の連投」が横行しているにも関わらず、何ら改善措置が講じられていません。この結果、著しく歪められた査読結果に基づいて平均評価が算出され、最終審査が強行されました。
技術者が技術を正当に評価することは、専門家としての倫理的責務です。技術者としての能力を有しながら、正当な技術的成果を不当に貶める行為は、公衆に対する背信行為であり、断じて許されるものではありません。同様に、技術者が下した正当な評価を不当に無視することも、技術者倫理に反する行為です。
しかしながら、PyCon JPでは、技術に関する予稿が技術的価値とは全く無関係な恣意的な基準で評価され、技術者からの反対意見は黙殺されました。
PyCon JPの技術者ではなく「愛好家」の集団によって行われるものですが、このような組織運営は、技術に対する誠実さや倫理を著しく欠くものであり、PyCon JPは技術者が関与すべき団体ではないと断言せざるを得ません。
事例③
事例③では、実際の採択審査プロセスに問題があることを関係者自身が認識していながらも、A氏による恣意的な採択が公然と行われました。A氏の行為を制止できる立場にありながら、抗議することなく容認する関係者の姿勢も見られました。
これらの行為は倫理的な問題があるだけでなく、PyCon JPに関わった予稿の査読者、予稿の応募者、参加者、そして技術者、公衆に対する背信行為と言えます。また公益を掲げる非営利団体の代表が、特定個人の利益のために公正な審査を歪め、団体の存在意義を自ら否定する行動を取ったことは極めて深刻な事態であり強い非難に値します。
遺憾の意
なお、本告発に至る前、2024年度の予稿審査開始前に、PyCon JP運営団体に対して事前の警告と改善要求を出しました。しかしながらPyConJP運営者は2024年度のイベント開催に際し、事実を歪曲する行為を継続し、審査プロセスにも抜本的な改善が見られませんでした。そのため、やむを得ずこれらの事実を公表するに至りました。PyCon JP関係者に自浄作用がなかったことは誠に遺憾と言わざるを得ません。
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