アメリカ利下げで「円高」が進みそうもない諸事情 やがて見える「利下げの終わり」と構造的な円安の今

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アメリカが利下げに転じた一方、日銀は経済・物価が見通し通りなら利上げするスタンスを改めて示した。ただし、「金利差縮小で円高」と連想するのは早計だ。

インフレに対して後手に回ったパウエル議長、利下げでは後手に回りたくない?(写真:Bloomberg)
※本記事は2024年9月22日中まで無料で全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。

9月17~18日に開催されたFOMC(アメリカ連邦公開市場委員会)は、政策金利であるFF金利誘導目標を5.25~5.50%から4.75〜5.00%へ0.5%pt引き下げることを決定した。

この利下げをもって円高局面の号砲も鳴ったのかどうかという照会が非常に多いので、筆者なりの考察を伝えておきたい。

筆者はアメリカ経済の現状と展望を踏まえれば、利下げは0.25%ptが妥当と予想していたが、パウエルFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)議長の会見を見る限り、「本当は0.25%ptで十分だが、7月にやらなかった分を加味して0.5%ptにした」というロジックが垣間見られた。

0.25%ptペースに戻る公算大

具体的にパウエル議長は今回の利下げ幅を「後手に回らないというわれわれの決意」と表現し、また「新しい利下げペースと考えるべきではない」とも述べている。さらにはベースシナリオのイメージとして「われわれは利下げを急いでおらず、ゆっくりと中立金利水準に戻していく」とも加えている。

こうした情報発信に基づく限り、今後の利下げが0.25%ptペースに戻る公算は大きく、それゆえに会合後の為替市場ではドル買いが優勢となっている。

FOMCの議論もどうやら一枚岩ではない。

ボウマンFRB理事が0.5%ptではなく0.25%ptの利下げ幅を主張し、理事としては2005年以来の反対票を投じている。

注目されたメンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)を見ても、年内残り2回の会合に関しては「利下げなし」から「3回(0.25%pt×3回で0.75%pt)利下げ」まで予想が散っている。中央値である2回(0.5%pt)を支持したのは19名中9名、1回(0.25%pt)を支持したのは7名であった(そのほか2名はゼロ回、1名は0.75%ptであった)。

利下げ幅に関しては足並みがそろわない中、単月の経済指標を受けてその都度、可変的な情勢と考えるべきだろう。

実際、パウエル議長は会見で、仮に7月FOMCの前に7月雇用統計が入手できていたら利下げしていた可能性に言及している。

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