アメリカ利下げで「円高」が進みそうもない諸事情 やがて見える「利下げの終わり」と構造的な円安の今
今後の利下げの有無や幅に関しては、日々の経済指標や内外情勢でいくらでも変わるので決め打ちはできないが、筆者は年内2回、年明け1~3月期で1~2回の利下げが実施されるまでは既定路線としても、その後の見通しはまったく予断を許さないと思っている(つまり最大であと4回の利下げはあるとしても5回目以降は不透明という考え方だ)。
というのも、今次局面はあくまで「普通の景気減速(ないし後退)」を受けた利下げ対応であるからだ。その意味で「〇〇ショック」に対する政策運営とは異なる。
ショック対応ではない利下げは久しぶり
過去20年弱の間に金融市場は、リーマンショック、欧州債務危機、そしてパンデミックなど「〇〇ショック」を重ねて経験し、その都度、中央銀行が大幅な金融緩和を強いられる歴史を目にしてきた。「極端なショック」に「極端な対応」が割り当てられる構図は昔よりも想起されやすい雰囲気がある。
しかし、パウエル議長も会見で「アメリカ経済はいい状態にあり、今日の決定はそれを維持するためのもの」と述べていたように、「ショックに対する利下げ」というよりも「ショックを起こさないための利下げ」が企図されているのが実情である。
現状のアメリカ経済は景気後退に至るかどうかもわからず、CPI(消費者物価指数)やPCE(個人消費支出)デフレーターが安定的に前年比2%を割り込んでいるわけでもない。かかる状況下、初手から0.5%pt引き下げたのは驚きであったが、あくまで7月のビハインドザカーブを取り戻しただけというロジックならば辛うじて理解はできる。
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