アメリカ利下げで「円高」が進みそうもない諸事情 やがて見える「利下げの終わり」と構造的な円安の今

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今回、思い返したいのは懐かしの「のりしろ論」というフレーズだ。

2015~2018年のFRBの利上げ局面では「いずれ到来する不況で利下げできるように(利下げののりしろ=余地を確保するために)、利上げが必要」という考え方が頻繁に言及され、「のりしろ論」と呼ばれて注目された。明らかに倒錯した理屈だが、当時は支持を得ていた。

このような経緯を踏まえれば、現在のアメリカの経済情勢において0.5%ptの利下げを連発し、稀少なのりしろを費消すべきではないように思える。

確かに、フォワードルッキングな対応と言えば聞こえはいい。だが、そもそもFRBに限らず、各国中銀のスタッフ経済見通しの精度はそれほど高くはない。中銀とて「神の目」を持っているわけではないのだから、不幸中の幸いにして手にしたのりしろを保守的に使っていくほうがずっと現実的に思える。

こうした認識に立ち、FRBは定期的な0.25%pt引き下げを模索するのが基本ではないかと筆者は考えている。

「利下げ打ち止め」が争点化する近未来

現在明らかになっているドットチャートに従えば年内2回、来年4回というイメージになるが、来年に関しては新大統領の下での1~3月期を見極めないことには確たることは言えまい。

なお、すでにドットチャートの終盤では政策金利がロンガーランの金利(≒中立金利)に接近する展開が視野に入っている。遠くない将来、「利下げの打ち止めはいつか」が争点化してくるはずだ。

パウエル議長の会見からも、かつてのような超低金利に回帰することはないという意思が色濃く見えた。必然、日米金利差の急縮小を織り込んだ円高・ドル安は修正が進みやすいであろうし、現に今回の会合後のドル/円相場はそうなっている。

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